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  • 特開-コンドーム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100356
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】コンドーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 6/04 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61F6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000957
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶山 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 巌
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA06
4C098EE07
4C098EE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】性交時の発汗又は挿入圧力やピストン運動などによる第一潤滑剤の粘度低下を防止して陰茎と高い密着性を得るコンドームを提供する。
【解決手段】コンドーム本体1に潤滑剤2が付着されるコンドームAであって、潤滑剤は、第一潤滑剤21と第二潤滑剤22を含み、第一潤滑剤は、第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなり、コンドーム本体の少なくとも先端部11の内周面11aに設けられ、第二潤滑剤は、コンドーム本体の少なくとも先端部の外周面11bに設けられることを特徴とするコンドーム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンドーム本体に潤滑剤が付着されるコンドームであって、
前記潤滑剤は、第一潤滑剤と第二潤滑剤を含み、
前記第一潤滑剤は、前記第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなり、前記コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面に設けられ、
前記第二潤滑剤は、前記コンドーム本体の少なくとも前記先端部の外周面に設けられることを特徴とするコンドーム。
【請求項2】
前記潤滑剤は、第三潤滑剤をさらに含み、
前記第三潤滑剤は、前記第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなり、前記第二潤滑剤の外側に設けられることを特徴とする請求項1記載のコンドーム。
【請求項3】
前記第二潤滑剤は、前記コンドーム本体の外面と内面に亘り浸透したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンドーム。
【請求項4】
コンドーム本体に潤滑剤が付着されるコンドームの製造方法であって、
前記コンドーム本体を巻き込んで扁平状に形成する巻き付け工程と、
巻き込まれた前記コンドーム本体に対して前記潤滑剤を供給する充填工程と、を含み、
前記充填工程では、前記コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面に第一潤滑剤が充填され、前記コンドーム本体の少なくとも前記先端部の外周面に第二潤滑剤が充填され、前記第一潤滑剤が前記第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなることを特徴とするコンドームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性向け避妊具で潤滑剤が付着されたコンドーム、及び、コンドームを生産するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンドームとして、亀頭被装部の内側にゼリーが塗布され、コンドーム全体には、シリコーン油が塗布されて、コンドーム外側表面及び装着時における潤滑性を確保するものがある(例えば、特許文献1参照)。
ゼリーは、ポリオール系化合物とカルボキシビニルポリマーとを含み、使用者の亀頭とコンドームの亀頭被装部内側とがゼリーを介して密着されることにより、密着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-093283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、特許文献1では、ゼリーに含まれるポリオール系化合物が水に溶け易いため、発汗などの水分と混ざることでゼリーの粘度が低下し、使用者の亀頭とコンドームの亀頭被装部内側との密着性が大きく損なわれてしまう。このような密着性の低下は、性交時にコンドームが位置ズレし易くなって脱落などの危険性が高まるという問題があった。
さらに、ゼリーに含まれるカルボキシビニルポリマーが、チキソトロピー性(一定の力を受けることで粘度が低下する性質)に優れるため、性交時の挿入圧力やピストン運動などでゼリーの粘度が低下し、性交中にコンドームが位置ズレや脱落し易くなって危険性がより高まるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係るコンドームは、コンドーム本体に潤滑剤が付着されるコンドームであって、前記潤滑剤は、第一潤滑剤と第二潤滑剤を含み、前記第一潤滑剤は、前記第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなり、前記コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面に設けられ、前記第二潤滑剤は、前記コンドーム本体の少なくとも前記先端部の外周面に設けられることを特徴とする。
また、このような課題を解決するために本発明に係るコンドームの製造方法は、コンドーム本体に潤滑剤が付着されるコンドームの製造方法であって、前記コンドーム本体を巻き込んで扁平状に形成する巻き付け工程と、巻き込まれた前記コンドーム本体に対して前記潤滑剤を供給する充填工程と、を含み、前記充填工程では、前記コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面に第一潤滑剤が充填され、前記コンドーム本体の少なくとも前記先端部の外周面に第二潤滑剤が充填され、前記第一潤滑剤が前記第二潤滑剤の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係るコンドームの全体構成を示す説明図であり、(a)が製造直後の巻き込み状態で一部を切欠した正面図、(b)が同巻き戻し状態で一部を切欠した正面図である。
図2】製造直後から所定時間経過後を示し、(a)が巻き込み状態で一部を切欠した正面図、(b)が同巻き戻し状態で一部を切欠した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るコンドームAは、図1図2に示すように、性交時の避妊や性感染症予防の目的で男性側性器(陰茎,ペニス)に装着される避妊具であり、コンドーム本体1に対して潤滑剤2が塗布などにより付着された(設けられた)ものである。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係るコンドームAは、コンドーム本体1の少なくとも先端内側に設けられる第一潤滑剤21と、コンドーム本体1の少なくとも先端外側に設けられる第二潤滑剤22と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、第二潤滑剤22の外側に設けられる第三潤滑剤23を備えることが好ましい。
【0008】
コンドーム本体1は、天然ゴム(ラテックス),ポリウレタン,イソプレンラバー,シリコーンゴム,ニトリルゴムなどの伸縮性がある材料で、陰茎の形状と対応した薄膜の袋状に形成される。
コンドーム本体1は、陰茎の先端部位(亀頭部)と対向する先端部11と、陰茎の中間部位と対向する胴部12と、陰茎の根本部位と対向する開口部13と、を有する。コンドーム本体1の形状,肉厚,径サイズや長さサイズなどは、それぞれの目的に応じて多種類用意される。
コンドーム本体1の具体例として図示される場合には、コンドーム本体1の形状が全体的に長さ方向へ略同じ円筒状に形成され、先端部11に液溜め部1rを有し、開口部13にリング部13aを有している。
また、その他の例として図示しないが、コンドーム本体1の径サイズを陰茎の外形状に合わせて部分的に異なるように形成することや、径サイズをコンドーム本体1の基端側から先端側に向かって徐々に拡径するように形成するなど、図示例以外のサイズに変更することが可能である。さらに、特開2008-093283号などに記載されるように、コンドーム本体1の先端に液溜め部1rが無くてもよい。
【0009】
潤滑剤2は、シリコーン油(シリコーンオイル)からなり、コンドーム本体1の部位毎に対応して粘度が異なる第一潤滑剤21,第二潤滑剤22及び第三潤滑剤23をそれぞれ有している。シリコーンオイルは、油性であるため、水に溶けず発汗などの水分と混ざらない性質を有するが、身体などに付着した際には洗剤などを用いることで容易に洗い流すことが可能である。
第一潤滑剤21は、第二潤滑剤22や第三潤滑剤23の粘度よりも高い粘度に設定され、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の内周面11aに向けて、所定量の高粘度シリコーン油を供給することにより、先端部11の内周面11aに沿って充填される。
第二潤滑剤22は、第一潤滑剤21や第三潤滑剤23の粘度よりも低い粘度に設定され、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の外周面11bに向けて、所定量の低粘度シリコーン油を供給することにより、先端部11の外周面11bに沿って充填され、第二潤滑剤22を膜状に塗布している。
第三潤滑剤23は、第一潤滑剤21の粘度よりも低く且つ第二潤滑剤22の粘度よりも高い粘度に設定され、コンドーム本体1の先端部11の外周面11bにおいて第二潤滑剤22の外側に向け、所定量の中粘度シリコーン油を供給することにより、第二潤滑剤22に沿って充填され、第三潤滑剤23を膜状に塗布している。
さらに、潤滑剤2のうち第一潤滑剤21及び第三潤滑剤23としては、コンドーム本体1の外面と内面の間を厚み方向に染み通らない未浸透のシリコーン油が用いられる。また、第二潤滑剤22としては、巻き込み状態のコンドーム本体1の外面と内面に亘り厚み方向に染み通る浸透用シリコーン油を用いることが好ましい。
【0010】
コンドーム本体1の部位毎に設けられる第一潤滑剤21,第二潤滑剤22及び第三潤滑剤23は、コンドーム本体1の各部位において適度な密着性や潤滑性が得られるように、それぞれの粘度と充填量(塗布量)を適正値に設定している。
なお、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22及び第三潤滑剤23の粘度は、JIS K2283「原油及び石油製品―動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に規定される試験方法により測定した。測定温度は「25℃」とした。粘度の単位は「cP(センチポアズ=1mPa・s)」とした。
第一潤滑剤21の粘度は、約5,000cP未満であると、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の内周面11aと亀頭部の間で適度な密着性が得られない。また第一潤滑剤21の粘度が約20,000cPを超えると、第一潤滑剤21の流動性が著しく低下して、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の内周面11aと亀頭部の間で、第一潤滑剤21が伸展し難くなるとともに滑り難くになる。このため、第一潤滑剤21の粘度は、5,000~20,000cPに設定することが好ましい。
第二潤滑剤22の粘度は、約100cP未満であると、体内に吸収される恐れがあるため、使用できず好ましくない。また第二潤滑剤22の粘度が約300cPを超えると、流動性が著しく低下して、巻き込まれたコンドーム本体1の胴部12の隙間に浸入し難くなる。このため、第二潤滑剤22の粘度は、100~300cPに設定することが好ましい。
第三潤滑剤23の粘度は、約500cP未満であると、コンドーム本体1の先端部11の外周面11bに保持されず、女性側性器(膣)に対する挿入時の抵抗緩和の機能(効果)が減少する。また第三潤滑剤23の粘度が約2,000cPを超えると、流動性が著しく低下して、コンドーム本体1の先端部11の外周面11bと膣の表面の間で伸展し難くなる。このため、第三潤滑剤23の粘度は、500~2,000cPに設定することが好ましい。
つまり、第一潤滑剤21と第二潤滑剤22と第三潤滑剤23の粘度比率は、5,000~20,000:100~300:500~2,000=50~200:1~3:5~20に設定される。詳しくは、第一潤滑剤:第二潤滑剤:第三潤滑剤の粘度比率=50:1:5に設定することが好ましい。この場合には、第一潤滑剤21の粘度が約10,000cP、第二潤滑剤22の粘度が約200cP、第三潤滑剤23の粘度が約1,000cPとなる。
【0011】
第一潤滑剤21の充填量は、約100mg未満であると、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の内周面11aと亀頭部の間全体に第一潤滑剤21が十分に伸展せず、適度な密着性が得られない。また第一潤滑剤21の粘度が約1,000mgを超えると、陰茎に対するコンドーム本体1の装着時に開口部13から第一潤滑剤21が漏れ出し易くなる。このため、第一潤滑剤21の充填量は、100~1,000mgに設定することが好ましい。
第二潤滑剤22の充填量は、約100mg未満であると、コンドーム本体1の胴部12の内側面と陰茎の中間部位との間全体に第二潤滑剤22が伸展せず、適度な潤滑性(潤いや滑らかさ)が得られない。また第二潤滑剤22の充填量が約1,000mgを超えると、陰茎に対するコンドーム本体1の装着時に第二潤滑剤22が漏れ出し易くなる。このため、第二潤滑剤22の充填量は、100~1,000mgに設定することが好ましい。
第三潤滑剤23の充填量は、約100mg未満であると、コンドーム本体1の先端部11の外周面11bと女性側性器(膣の表面)との間全体に第三潤滑剤23が伸展せず、適度な潤滑性(潤いや滑らかさ)が得られない。また第三潤滑剤23の充填量が約1,000mgを超えると、膣に対するコンドーム本体1の挿入時に第三潤滑剤23が漏れ出し易くなる。このため、第三潤滑剤23の充填量は、100~1,000mgに設定することが好ましい。
つまり、第一潤滑剤21と第二潤滑剤22と第三潤滑剤23の充填比率は、100~1,000:100~1,000:100~1,000=1~10:1~10:1~10に設定される。詳しくは、第一潤滑剤:第二潤滑剤:第三潤滑剤の充填比率=1:1:1に設定することが好ましい。この場合には、第一潤滑剤21の充填量が約550mg、第二潤滑剤22の充填量が約550mg、第三潤滑剤23の充填量が約550mgとなる。
【0012】
[製造方法]
本発明の実施形態に係るコンドームAの製造方法は、コンドーム本体1の製造過程は、陰茎の外形と同じ形状に作製された成形型(図示しない)による浸漬成形工程と、浸漬成形されたコンドーム本体1の乾燥工程と、乾燥したコンドーム本体1を巻き込んで扁平状に形成する巻き付け工程と、巻き込まれたコンドーム本体1を被包する包装工程と、を主要な工程として含む。
巻き付け工程と包装工程の間には、巻き込まれたコンドーム本体1に対して潤滑剤2が供給される充填工程を含むことが好ましい。コンドーム本体1に対する潤滑剤2の供給方法としては、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23が貯留されたタンクなどの供給源から、ポンプやノズルなどにより第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23をそれぞれ噴射することで、コンドーム本体1の部位毎に所定量ずつ充填することが好ましい。
潤滑剤2の充填工程では、図1(a)に示されるように、コンドーム本体1の巻き込み状態で、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23がそれぞれ順次充填される。
充填工程の後の包装工程では、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23が充填されたコンドーム本体1を、包装材(図示しない)で密封状に被包する。
【0013】
このため、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23の充填直後(製造直後)は、コンドーム本体1を巻き戻しても、図1(b)に示されるように、コンドーム本体1の胴部12に対する第二潤滑剤(浸透用シリコーン油)22の浸透が不十分である。
これに対して、第一潤滑剤21,第二潤滑剤22,第三潤滑剤23を充填してから所定時間経過後(商品発売前の時点)では、図2(a)に示されるコンドーム本体1の巻き込み状態で、第二潤滑剤22となる浸透用シリコーン油がコンドーム本体1の外面から内面に浸透する。
このため、図2(b)に示されるコンドーム本体1の巻き戻し状態(使用時)では、第二潤滑剤22となる浸透用シリコーン油がコンドーム本体1の胴部12の外側面から内側面に浸透している。
【0014】
このような本発明の実施形態に係るコンドームA及びその製造方法によると、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の内周面11aに、第二潤滑剤22の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなる第一潤滑剤21が設けられる。これにより、男性側性器(陰茎)に対するコンドーム本体1の装着状態では、互いに対向する亀頭部と先端部11の内周面11aとの間に、高粘度な第一潤滑剤21が留まる。
第一潤滑剤21のシリコーン油は、水に溶けないため、発汗などの水分と混ざることがないとともに、一定の力を受けても粘度が変化(低下)しない。
したがって、性交時の発汗又は挿入圧力やピストン運動などによる第一潤滑剤21の粘度低下を防止して陰茎と高い密着性を得ることができる。
その結果、ゼリーとして水に溶け易いポリオール系化合物とチキソトロピー性に優れたルボキシビニルポリマーが含まれる従来のものに比べ、性交時においてコンドーム本体1の先端部11の内周面11aが第一潤滑剤21で亀頭部と密着し続け、強力なグリップ力を維持できる。これにより、亀頭部に対する先端部11の位置ズレや、シワなどの発生や、空気の侵入などを確実に防ぐことができる。このため、性交時の摩擦による先端部11の破損,脱落を防止できて、安全性の向上が図れる。
さらに、性交時に使用者(男性)は、コンドーム本体1の位置ズレ,ごわつきや引っ掛かりによる違和感が低減されるとともに密着感の増加で、陰茎と女性側性器(膣)の間に一体感が生じて性感の向上が図れる。
【0015】
特に、第二潤滑剤22の外側に設けられる第三潤滑剤23を備え、第三潤滑剤23は、第二潤滑剤22の粘度よりも高い粘度のシリコーン油からなることが好ましい。
この場合には、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の外周面11bに、第二潤滑剤22を挟んで第二潤滑剤22の粘度よりも高い粘度(中粘度)のシリコーン油からなる第三潤滑剤23が設けられる。これにより、コンドーム本体1が装着された陰茎の挿入時には、互いに対向する女性側性器(膣の表面)と先端部11の外周面11bとの間に、粘度の高い第三潤滑剤23が留まる。
第三潤滑剤23の中粘度シリコーン油は、水に溶けないため、女性側分泌液などの水分と混ざることがないとともに、一定の力を受けても粘度が変化(低下)しない。
したがって、女性側分泌液又は挿入圧力やピストン運動などによる第三潤滑剤23の粘度低下を防止して膣表面との摩擦抵抗を低減することができる。
その結果、性交時に使用者(男性及び女性)は、より滑らかでスムーズな挿入感が得られる。
さらに、女性は、性交痛が軽減して、コンドーム本体1のズレ,ごわつきや引っ掛かりによる違和感が低減するため、より性感の向上が図れる。
【0016】
さらに、第二潤滑剤22がコンドーム本体1を浸透することが好ましい。
この場合には、コンドーム本体1が巻き込まれた製造時において、コンドーム本体1の少なくとも先端部11の外周面11bに第二潤滑剤22を設けることにより、第二潤滑剤22は、巻き込まれたコンドーム本体1(胴部12)の隙間に浸入するとともに、コンドーム本体1の先端部11の外周面11b及び胴部12の外面側から内周面11a及び胴部12の内面側に浸透する。
このため、陰茎に対する装着時にコンドーム本体1を巻き戻すと、コンドーム本体1の先端部11の外周面11b及び内周面11aから第二潤滑剤22が、それぞれ胴部外周面12bや胴部内周面12aに向けて広がる。
したがって、コンドーム本体1の装着時におけるコンドーム本体1の巻き戻しを容易にするとともに、陰茎の表面に対する胴部12の内側面の潤滑性と、性交時における膣の表面に対する胴部12の外側面の潤滑性とを同時に確保することができる。
その結果、陰茎に対するコンドーム本体1の装着時には、より滑らかでスムーズな装着感が得られる。女性は、性交痛がさらに軽減して、コンドーム本体1のズレ,ごわつきや引っ掛かりによる違和感が低減するため、更なる性感の向上が図れる。
【実施例0017】
以下に、本発明の実施例を説明する。
[実施例1~9及び比較例1~9]
表1に示す実施例1~9と表2に示す比較例1~9は、それらに記載された潤滑剤(第一潤滑剤,第二潤滑剤,第三潤滑剤)をコンドーム本体に充填して、同じサイズの評価試料をそれぞれ作製した。
実施例1~9及び比較例1~9では、コンドーム本体が天然ゴム(ラテックス)製で肉厚が0.05mmの円筒状に形成され、先端部に液溜め部を有しており、共通の構成にしている。
【0018】
実施例1~9では、粘度が5,000~20,000cPの第一潤滑剤を100~1,000mgそれぞれ充填し、粘度が100~300cPの第二潤滑剤を100~1,000mgそれぞれ充填し、粘度が500~2,000cPの第三潤滑剤を100~1,000mgそれぞれ充填している。
詳しくは、実施例1では、粘度が5,000cPの第一潤滑剤を550mg充填し、粘度が200cPの第二潤滑剤を550mg充填し、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を550mg充填している。
実施例2では、粘度が20,000cPの第一潤滑剤を550mg充填しており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例1と同じである。
実施例3では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を100mg充填し、粘度が200cPの第二潤滑剤を550mg充填し、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を550mg充填している。
実施例4では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を1,000mg充填しており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例3と同じである。
実施例5では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を550mg充填し、粘度が200cPの第二潤滑剤を550mg充填し、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を550mg充填している。
実施例6では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を550mg充填し、粘度が200cPの第二潤滑剤を550mg充填し、粘度が500cPの第三潤滑剤を550mg充填している。
実施例7では、粘度が2,000cPの第三潤滑剤を550mg充填しており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例6と同じである。
実施例8では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を550mg充填し、粘度が200cPの第二潤滑剤を550mg充填し、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を100mg充填している。
実施例9では、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を1,000mg充填しており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例8と同じである。
【0019】
一方、比較例1~8では、粘度が5,000cPよりも低い又は20,000cPよりも高い第一潤滑剤を100mg未満或いは1,000mgよりも多く充填し、粘度が100cPよりも低い又は300cPよりも高い第二潤滑剤を100mg未満或いは1,000mgよりも多く充填し、粘度が500cPよりも低い又は2,000cPよりも高い第三潤滑剤を100mg未満或いは1,000mgよりも多く充填している。
詳しく説明すると、比較例1では、粘度が4,000cPの第一潤滑剤を550mg充填しているところが異なっており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例1や実施例2と同じである。
比較例2では、粘度が21,000cPの第一潤滑剤を550mg充填しているところが異なっており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例1や実施例2と同じである。
比較例3では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を50mg充填しているところが異なっており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例3や実施例4と同じである。
比較例4では、粘度が10,000cPの第一潤滑剤を1,100mg充填しているところが異なっており、それ以外の第二潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例3や実施例4と同じである。
比較例5では、粘度が400cPの第三潤滑剤を550mg充填しているところが異なっており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例6や実施例7と同じである。
比較例6では、粘度が2,100cPの第三潤滑剤を550mg充填しているところが異なっており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例6や実施例7と同じである。
比較例7では、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を50mg充填しているところが異なっており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例8や実施例9と同じである。
比較例8では、粘度が1,000cPの第三潤滑剤を1,100mg充填しているところが異なっており、それ以外の第一潤滑剤及び第二潤滑剤の粘度と充填量は、実施例8や実施例9と同じである。
比較例9では、第二潤滑剤が全く充填されないところが異なっており、それ以外の第一潤滑剤及び第三潤滑剤の粘度と充填量は、実施例5などと同じである。
【0020】
[評価基準]
表1及び表2に示される評価結果(密着感,挿入感,グリップ感,巻き戻し感)は、以下の指標に基づくものである。
「密着感」は、陰茎の亀頭部に対する実施例1~9及び比較例1~9の密着性を確認するための試験である。
「密着感」の評価は、オナホールを使用したモニタリング試験であり、実施例1~9及び比較例1~9の評価試料を装着した複数(20人)の男性が、オナホールに対して挿入及びピストン運動を同じ条件でそれぞれ複数回ずつ行い、亀頭部に対する密着性を四段階で評価した。
この「密着感」の評価結果において、◎:第一潤滑剤の過不足が全く発生せず且つ亀頭部との密着性が非常に高い、○:第一潤滑剤の過不足が発生せず且つ亀頭部との密着性が高い、△:亀頭部との密着性がやや劣るものの支障が無い程度、×:第一潤滑剤の不足で密着性が劣る又は第一潤滑剤の過剰で漏れ出し、のように評価した。
「挿入感」は、膣に対する実施例1~9及び比較例1~9の挿入性を確認するための試験である。
「挿入感」の評価は、オナホールを使用したモニタリング試験であり、実施例1~9及び比較例1~9の評価試料を装着した複数(20人)の男性が、オナホールに対して挿入を同じ条件でそれぞれ複数回ずつ行い、オナホールに対する挿入性を四段階で評価した。
この「挿入感」の評価結果において、◎:第三潤滑剤の過不足が全く発生せず且つ挿入性が非常に良い、○:第三潤滑剤の過不足が発生せず且つ挿入性が良い、△:挿入性がやや劣るものの支障が無い程度、×:第三潤滑剤の不足で密着性が劣る又は第三潤滑剤の過剰で漏れ出し、のように評価した。
「グリップ感」は、陰茎に対する実施例1~9及び比較例1~9の位置ズレを確認するための試験である。
「グリップ感」の評価は、オナホールを使用したモニタリング試験であり、実施例1~9及び比較例1~9の評価試料を装着した複数(20人)の男性が、オナホールに対して挿入及びピストン運動を同じ条件でそれぞれ複数回ずつ行い、陰茎に対する位置ズレを三段階で評価した。
この「グリップ感」の評価結果において、○:第二潤滑剤の過不足が全く発生せず且つ位置ズレが全く生じない、△:位置ズレが若干生じるものの支障が無い程度、×:第二潤滑剤の不足で位置ズレする又は第二潤滑剤の過剰で漏れ出し、のように評価した。
「巻き戻し感」は、陰茎に対する実施例1~9及び比較例1~9の巻き戻し性を確認するための試験である。
「巻き戻し感」の評価は、モニタリング試験であり、実施例1~9及び比較例1~9の巻き付けられた評価試料を陰茎に沿って巻き戻す試験を、複数(20人)の男性が同じ条件でそれぞれ複数回ずつ行い、陰茎に対する巻き戻し性を三段階で評価した。
この「巻き戻し感」の評価結果において、○:陰茎との間に空気が混入することになくスムーズに巻き戻せる、△:陰茎との間に空気が若干混入するものの支障が無い程度に巻き戻せる、×:陰茎との間に空気が混入するなどスムーズに巻き戻せない、のように評価した。
「総合評価」とは、前述した「密着感」「挿入感」「グリップ感」「巻き戻し感」の評価結果に基づいて総合的に四段階で評価した。
この「総合評価」の評価結果において、◎:最適、○:良、△:やや劣るが許容範囲内、×:不向き、のように評価した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
[評価結果]
実施例1~9及び比較例1~9を比較すると、実施例1~9は、密着感,挿入感,グリップ感,巻き戻し感,総合評価の全てにおいて良好な評価結果が得られている。
この評価結果から明らかなように、実施例1~9は、優れた密着感と挿入感とグリップ感と巻き戻し感を併せ持ったコンドームであることが実証できた。その間でも実施例5は、特に優れた密着感と挿入感とグリップ感と巻き戻し感を併せ持ったコンドームであることが実証できた。
【0024】
これに対して、比較例1~9は、密着感,挿入感,グリップ感,巻き戻し感のいずれかで不良な評価結果になっている。
詳しく説明すると、比較例1は、第一潤滑剤の粘度が低過ぎるため、コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面に対して亀頭部が十分に密着せず、密着感で不良な評価結果になった。
比較例2は、第一潤滑剤の粘度が高過ぎるため、コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面と亀頭部の間で第一潤滑剤が十分に伸展せず、密着感で不良な評価結果になった。
比較例3は、第一潤滑剤の充填量が不足するため、コンドーム本体の少なくとも先端部の内周面と亀頭部の間で第一潤滑剤が十分に行き渡らず、密着感で不良な評価結果になった。この評価結果から第一潤滑剤の充填が無い場合においても、比較例3と同様に密着感で不良な評価結果になった。
比較例4は、第一潤滑剤の充填量が過剰であるため、陰茎に対するコンドーム本体の装着時に開口部から第一潤滑剤が漏れ出して、密着感で不良な評価結果になった。
比較例5は、第三潤滑剤の粘度が低過ぎるため、コンドーム本体の先端部の外周面と膣の表面との間に十分な潤滑性(潤いや滑らかさ)が生じず、挿入感で不良な評価結果になった。
比較例6は、第三潤滑剤の粘度が高過ぎるため、コンドーム本体の先端部の外周面と膣の表面の間で第三潤滑剤が十分に伸展せず、挿入感で不良な評価結果になった。
比較例7は、第三潤滑剤の充填量が不足するため、コンドーム本体の先端部の外周面と膣の表面の間で第三潤滑剤が十分に行き渡らず、挿入感で不良な評価結果になった。この評価結果から第三潤滑剤の充填が無い場合においても、比較例7と同様に挿入感で不良な評価結果になった。
比較例8は、第三潤滑剤の充填量が過剰であるため、膣に対するコンドーム本体の挿入時に第三潤滑剤が漏れ出して、挿入感で不良な評価結果になった。
比較例9は、第二潤滑剤が無いため、巻き戻し感で不良な評価結果になった。この評価結果から第二潤滑剤の充填量が100mg未満で不足する場合においても、コンドーム本体の胴部の内側面と陰茎の中間部位との間全体に第二潤滑剤が十分に行き渡らず、比較例9と同様に巻き戻し感で不良な評価結果になった。また第二潤滑剤の充填量が1,000mgを超えて過剰である場合には、膣に対するコンドーム本体の挿入時に第二潤滑剤が漏れ出して不良な評価結果になった。
さらに、比較例1~9では示さなかったが、第二潤滑剤の粘度が100cPよりも低い場合には、体内に吸収される恐れがあり、第二潤滑剤の粘度が300cPよりも高い場合においても、コンドーム本体の胴部の内側面と陰茎の中間部位との間全体に第二潤滑剤が十分に行き渡らず、比較例9と同様に巻き戻し感で不良な評価結果になった。
【0025】
なお、前示の実施例1~9及び比較例1~9では、共通の構成としてコンドーム本体が天然ゴム(ラテックス)製のものを用いたが、これに限定されず、天然ゴム(ラテックス)に代えてポリウレタン,イソプレンラバー,シリコーンゴム,ニトリルゴムなどを用いてもよい。さらに、の実施例1~9及び比較例1~9では、共通の構成として肉厚が中厚の円筒状に形成され、先端部に液溜め部を有しているが、これに限定されず、肉厚が中厚よりも薄いものや中厚よりも厚いものを用いることや、コンドーム本体の径サイズを陰茎の外形状に合わせて部分的に異なるように形成することや、コンドーム本体の形状が基端側から先端側に向かって徐々に拡径するもの、又はコンドーム本体の基端側から先端側に向かって徐々に拡径するものや、液溜め部が無いものであってもよい。
これらの場合も実施例1~9と同様な評価結果が得られた。
【符号の説明】
【0026】
A コンドーム 1 コンドーム本体
11 先端部 11a 内周面
11b 外周面 2 潤滑剤
21 第一潤滑剤 22 第二潤滑剤
23 第三潤滑剤
図1
図2