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特開2023-100399行動推定システムおよび行動推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100399
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】行動推定システムおよび行動推定装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20230711BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20230711BHJP
【FI】
G06Q10/06
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001051
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 雄介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】位置検出手段が設置されていない領域においても、医療従事者の行動を推定することができるようにする。
【解決手段】情報処理装置100が、所定領域の境界地点に設置された無線受信機120Eにより取得される検出情報に基づいて、境界地点に存在する医療従事者MSまたは施設利用者FUを特定する機能と、一の医療従事者MSが特定されたときに施設利用者FUも特定されているか否かの第1の情報と、その後に一の医療従事者MSが再度特定されたときに施設利用者FUも特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側における一の医療従事者MSの行動を推定する機能とを備え、医療従事者MSが境界地点において特定されたときに施設利用者FUも特定されているかに応じて、医療従事者MSが施設利用者FUと共に行った可能性のある所定領域外での移送行動を推定できるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設における医療従事者および施設利用者の存在の判定に用いる情報を取得する検出装置と、
上記施設の所定領域の境界地点に設置されている上記検出装置により取得された検出情報に基づいて、上記所定領域の外側で上記検出装置が設置されていない領域における上記医療従事者の行動を推定する処理を行う情報処理装置とを備え、
上記情報処理装置は、
上記検出装置により取得された上記検出情報に基づいて、上記境界地点に存在する上記医療従事者または上記施設利用者を特定する存在者特定部と、
上記存在者特定部により一の医療従事者が特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第1の情報と、その後に上記存在者特定部により上記一の医療従事者が再度特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、上記所定領域の外側における上記一の医療従事者の行動を推定する行動推定部とを備えた
ことを特徴とする行動推定システム。
【請求項2】
上記医療従事者が保持し、上記医療従事者を識別可能な第1の識別情報を送信する第1の無線送信機と、
上記施設利用者が保持し、上記施設利用者を識別可能な第2の識別情報を送信する第2の無線送信機とを更に備え、
上記検出装置は、上記第1の識別情報および上記第2の識別情報を上記検出情報として受信する無線受信機により構成され、
上記情報処理装置の上記存在者特定部は、上記無線受信機が受信した上記第1の識別情報および上記第2の識別情報に基づいて、上記境界地点に存在する上記医療従事者または上記施設利用者を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項3】
上記無線受信機は、上記所定領域の境界地点および他の地点を含めて複数設置されており、
上記存在者特定部は、複数の上記無線受信機により上記第1の識別情報が受信される毎に上記医療従事者を特定し、上記境界地点において上記一の医療従事者が特定されたときに、上記一の医療従事者が上記境界地点において特定されるまでの特定の順番に基づいて、上記一の医療従事者が上記所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを更に特定し、
上記行動推定部は、上記所定領域の内側から外側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第1の情報と、その後に上記所定領域の外側から内側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、上記所定領域の外側における上記一の医療従事者の行動を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の行動推定システム。
【請求項4】
上記存在者特定部は、複数の上記無線受信機により上記第2の識別情報が受信される毎に上記施設利用者を特定し、上記境界地点において上記施設利用者が特定されたときに、上記施設利用者が上記境界地点において特定されるまでの特定の順番に基づいて、上記施設利用者が上記所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを更に特定し、
上記行動推定部は、上記所定領域の内側から外側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に、上記所定領域の内側から外側に移動しようとする上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第1の情報と、その後に上記所定領域の外側から内側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に、上記所定領域の外側から内側に移動しようとする上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、上記所定領域の外側における上記一の医療従事者の行動を推定する
ことを特徴とする請求項3に記載の行動推定システム。
【請求項5】
上記行動推定部は、上記医療従事者による上記施設利用者の移送行動を推定することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の行動推定システム。
【請求項6】
上記検出装置はカメラにより構成され、
上記情報処理装置の存在者特定部は、上記カメラにより撮影された画像に基づいて、上記境界地点に存在する上記医療従事者または上記施設利用者を特定するとともに、上記一の医療従事者が上記所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定し、
上記行動推定部は、上記所定領域の内側から外側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第1の情報と、その後に上記所定領域の外側から内側に移動しようとする上記一の医療従事者が上記存在者特定部により特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、上記所定領域の外側における上記一の医療従事者の行動を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項7】
施設内の所定領域の境界地点に設置された検出装置により取得される、当該境界地点における医療従事者および施設利用者の存在の判定に用いる検出情報に基づいて、上記境界地点に存在する上記医療従事者または上記施設利用者を特定する存在者特定部と、
上記存在者特定部により一の医療従事者が特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第1の情報と、その後に上記存在者特定部により上記一の医療従事者が再度特定されたときに、所定の時間差以内に上記施設利用者が上記存在者特定部により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、上記所定領域の外側で上記検出装置が設置されていない領域における上記一の医療従事者の行動を推定する行動推定部とを備えた
ことを特徴とする行動推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動推定システムおよび行動推定装置に関し、特に、施設内における医療従事者の行動を推定するシステムおよび装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、施設内における看護師や介護士(以下、これらをまとめて医療従事者という)の移動の軌跡である動線を検出して表示できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の動線・滞留分析システムでは、施設内の複数のエリアおよびエリア間を移動する際に通過する通過ポイント毎に屋内測位センサを設けるとともに、屋内測位センサが発信した電波を受信し、受信した電波の強度および識別情報を送信する携帯情報端末を各医療従事者が携帯し、携帯情報端末から送信された情報を用いて、医療従事者の滞留エリアおよび動線を判定して出力する。
【0004】
医療従事者の動線を導出することにより、看護業務や介護業務において医療従事者が施設内でどのような動きをするのかを正確に把握することができる。そして、例えば医療従事者の無駄な動きを見出すことにより、業務効率の改善を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-215684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、屋内測位センサが設置されている所定領域の外では医療従事者の位置を検出することができない。そのため、所定領域の外に医療従事者が出た場合に、医療従事者が何をしているかを判定することができないという問題があった。医療従事者の行動を判定する対象領域を拡大するためには、屋内測位センサの設置エリアを広げる必要があるが、そうすると設置コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、位置検出手段が設置されていない領域においても、医療従事者の行動を推定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、施設内の所定領域の境界地点に設置された検出装置により取得される検出情報に基づいて、境界地点に存在する医療従事者または施設利用者を特定するように構成し、検出情報に基づいて一の医療従事者が特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者が特定されているか否かの第1の情報と、その後に一の医療従事者が再度特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者が特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側で検出装置が設置されていない領域における一の医療従事者の行動を推定するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、施設内の所定領域の境界地点において、医療従事者の存在が特定されるだけでなく、医療従事者が特定された時点に対して所定の時間差以内における施設利用者の存在も特定される。ここで、医療従事者が特定された時点に対して所定の時間差以内に施設利用者も特定されている場合は、医療従事者と施設利用者とが共に行動をしている可能性があることが推認され得る。このため、医療従事者が境界地点において一度特定されたときおよびその後に再度特定されたときのそれぞれの時点において施設利用者も特定されているかに応じて、医療従事者が所定領域の境界地点から外側に出て戻るまでの間に医療従事者が施設利用者と共に行った可能性のある行動を推定することが可能である。これにより本発明によれば、位置検出手段としての検出装置が設置されていない領域においても、医療従事者の行動を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による行動推定システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の検出情報記憶部に記憶される情報の一例を模式的に示す図である。
図4】本実施形態の行動推定部による推定の内容を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による行動推定システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の行動推定システムは、医療従事者MSが保持し、個々の医療従事者MSを識別可能な第1の識別情報を送信する第1の無線送信機110Aと、施設利用者FUが保持し、個々の施設利用者FUを識別可能な第2の識別情報を送信する第2の無線送信機110Bと、第1の識別情報および第2の識別情報を受信する無線受信機120と、情報処理装置(行動推定装置)100とを備えて構成される。
【0012】
本実施形態の行動推定システムが適用される施設は、例えば病院または介護施設である。医療従事者MSおよび施設利用者FUが保持する無線送信機110A,110Bは、例えば無線ICタグである。この場合、無線受信機120はタグリーダである。この無線受信機120は、施設における医療従事者MSおよび施設利用者FUの存在の判定に用いる情報を取得する検出装置であり、施設内の複数の地点に設置されている。
【0013】
図1の例は、施設内にある1つの病棟における1Fのフロアレイアウトを示している。フロア内には複数の部屋および廊下が存在し、各部屋および廊下に無線受信機120が設置されている。また、1Fのフロアには病棟の出入口ETが存在し、この出入口の地点にも無線受信機120が設置されている。本実施形態において、図1に示す病棟の内部が、施設利用者FUが普段利用する所定領域であるものとする。病棟の外側には、無線受信機120は設置されていない。
【0014】
図1の例において、出入口ETの地点に設置された無線受信機120は、施設の所定領域の境界地点に設置されている検出装置に相当する。以下では、この境界地点に設置されている無線受信機120を特に境界地点無線受信機120Eという。図1の例では、この境界地点無線受信機120Eの近傍で、出入口ETから見て境界地点無線受信機120Eよりも遠い側(所定領域の内部側)の地点にも無線受信機120が設定されている。以下では、この近傍地点に設置されている無線受信機120を特に近傍地点無線受信機120Nという。
【0015】
境界地点無線受信機120Eと近傍地点無線受信機120Nとの間隔は、無線送信機110A,110Bから送信された電波が無線受信機120E,120Nの何れか一方のみで受信されるような距離、あるいは、無線受信機120E,120Nの両方で受信されたとしても受信強度に有意な差が生じるような距離とするのが好ましい。このようにすることにより、医療従事者MSまたは施設利用者FUが境界地点無線受信機120Eと近傍地点無線受信機120Nのどちらの近くに存在するのかが識別可能となる。
【0016】
複数の無線受信機120と情報処理装置100との間は、有線または無線のLAN(Local Area Network)で接続されている。図1では、一部の無線受信機120が情報処理装置100に有線で接続された状態を示しているが、残りの無線受信機120についても有線で情報処理装置100に接続されている。無線LANで接続する場合、複数の無線受信機120は、無線送信機110A,110Bから送信される信号を受信する無線受信機能に加え、信号を送信する無線送信機能を備える。この無線送信機能により送信された信号に含まれる情報は、図示しないアクセスポイントを介して情報処理装置100に送信される。
【0017】
第1の無線送信機110Aは、第1の識別情報を含んだ信号を一定間隔で定期的に送信する。第1の無線送信機110Aは、例えばWi-Fi(登録商標)による無線送信機能を有しており、内部メモリにあらかじめ記憶されている第1の識別情報を一定間隔で送信する。
【0018】
第2の無線送信機110Bは、第2の識別情報を含んだ信号を一定間隔で定期的に送信する。第2の無線送信機110Bは、例えばWi-Fi(登録商標)による無線送信機能を有しており、内部メモリにあらかじめ記憶されている第2の識別情報を一定間隔で送信する。
【0019】
無線受信機120は、自身を識別可能な受信機IDを記憶している。無線受信機120は、第1の無線送信機110Aまたは第2の無線送信機110Bから第1の識別情報または第2の識別情報を受信すると、当該受信した識別情報を受信機IDと共に情報処理装置100に送信する。無線受信機120が受信する第1の識別情報および第2の識別情報が、医療従事者MSおよび施設利用者FUの存在の判定に用いる検出情報に相当する。
【0020】
なお、第1の識別情報および第2の識別情報は、個々の医療従事者MSおよび個々の施設利用者FUをそれぞれ識別可能な情報であれば何でもよいが、医療従事者MSであるか施設利用者FUであるかを区別可能な情報であってもよい。本実施形態では、説明の便宜上、第1の識別情報は医療従事者MSであることを識別可能な情報として“MS〇〇〇”のように表記し、第2の識別情報は施設利用者FUであることを識別可能な情報として“FU〇〇〇”のように表記することとする。
【0021】
情報処理装置100は、所定領域の境界地点および他の地点を含めて複数の地点に設置されている複数の無線受信機120により取得された検出情報に基づいて、所定領域の外側の領域(無線受信機120が設置されていない領域)における医療従事者MSの行動を推定する処理を行う。この処理の具体的な内容については、図2を用いて以下に説明する。
【0022】
図2は、本実施形態による情報処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の情報処理装置100は、機能構成として、検出情報受信部11、存在者特定部12および行動推定部13を備えている。また、本実施形態の情報処理装置100は、記憶媒体として、検出情報記憶部10A、ユーザ情報記憶部10Bおよび受信機情報記憶部10Cを備えている。
【0023】
上記機能ブロック11~13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック11~13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0024】
ユーザ情報記憶部10Bは、医療従事者MSおよび施設利用者FUに関する情報をあらかじめ記憶する。例えば、ユーザ情報記憶部10Bは、医療従事者MSの氏名と、医療従事者MSが保持する第1の無線送信機110Aから送信される第1の識別情報とを関連付けた情報を記憶する。また、ユーザ情報記憶部10Bは、施設利用者FUの氏名と、施設利用者FUが保持する第2の無線送信機110Bから送信される第2の識別情報とを関連付けた情報を記憶する。
【0025】
受信機情報記憶部10Cは、複数の無線受信機120に関する情報をあらかじめ記憶する。例えば、受信機情報記憶部10Cは、無線受信機120が設置されている場所と受信機IDとを関連付けた情報を記憶する。
【0026】
検出情報受信部11は、複数の無線受信機120から送信されてくる検出情報および受信機IDを受信し、受信時刻と共に検出情報記憶部10Aに逐次記憶する。図3は、検出情報記憶部10Aに記憶される情報の一例を模式的に示す図である。図3に示すように、検出情報記憶部10Aは、検出情報の受信時刻と、検出情報(第1の識別情報および第2の識別情報)と、受信機IDとを関連付けて1レコードずつ記憶する。
【0027】
例えば、レコードR1には、受信時刻“2021/12/08 10:45:28”と、施設利用者FU-3を識別可能な第2の識別情報“FU003”と、何れかの場所に設置された無線受信機120を識別可能な受信機ID“WR008”とが記憶されている。レコードR2には、受信時刻“2021/12/08 10:45:31”と、医療従事者MS-5を識別可能な第1の識別情報“MS005”と、何れかの場所に設置された無線受信機120を識別可能な受信機ID“WR003”とが記憶されている。他のレコードについても同様である。なお、以下の説明において、境界地点無線受信機120Eの受信機IDを“WR001”とし、近傍地点無線受信機120Nの受信機IDを“WR002”とする。
【0028】
後述するように、検出情報記憶部10Aに記憶される検出情報(第1の識別情報および第2の識別情報)に基づいて医療従事者MSおよび施設利用者FUが特定され、受信機IDに基づいて無線受信機120の場所が特定される。よって、検出情報記憶部10Aに記憶される情報は、病棟内で医療従事者MSおよび施設利用者FUが移動した位置の履歴を示す行動履歴情報として利用可能な情報である。
【0029】
存在者特定部12は、検出情報記憶部10Aに記憶された検出情報(無線受信機120が受信した第1の識別情報および第2の識別情報)および受信機IDに基づいて、所定領域の境界地点に存在する医療従事者MSまたは施設利用者FUを特定する。すなわち、存在者特定部12は、検出情報記憶部10Aに記憶された受信機IDに基づいて、受信機情報記憶部10Cを参照することにより、その受信機IDに対応する無線受信機120が境界地点無線受信機120Eであるか否かを判定する。境界地点無線受信機120Eであると判定された場合、存在者特定部12は、検出情報記憶部10Aにその受信機IDと共に記憶された検出情報に基づいて、ユーザ情報記憶部10Bを参照することにより、所定領域の境界地点に存在する医療従事者MSまたは施設利用者FUを特定する。
【0030】
ここで、存在者特定部12は、複数の無線受信機120により第1の識別情報が受信される毎に(検出情報記憶部10Aに対して第1の識別情報が記憶される毎に)医療従事者MSを特定する。そして、境界地点において一の医療従事者MSが特定されたときに、一の医療従事者MSが境界地点において特定されるまでの特定の順番に基づいて、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する。
【0031】
本実施形態では、存在者特定部12は、境界地点無線受信機120Eの受信機IDと共に検出情報記憶部10Aの或るレコードに記憶された第1の識別情報により一の医療従事者MSが特定されたときに、それより前の所定時間以内に近傍地点無線受信機120Nの受信機IDと共に一の医療従事者MSに対応する第1の識別情報が検出情報記憶部10Aに記憶されているか否かを判定する。ここで、所定時間は、境界地点無線受信機120Eと近傍地点無線受信機120Nとの間の距離と、医療従事者MSについて想定される通常の歩行速度との関係で適切に設定される。例えば、境界地点無線受信機120Eと近傍地点無線受信機120Nとの距離が1mである場合、所定時間は1~2秒程度に設定される。
【0032】
例えば、図3のように検出情報記憶部10Aに情報が記憶されている場合、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共にレコードR103に記憶された第1の識別情報“MS007”により一の医療従事者MS-7が特定されたときに、それより前の所定時間以内に、近傍地点無線受信機120Nの受信機ID“WR002”と共に一の医療従事者MS-7に対応する第1の識別情報“MS007”が検出情報記憶部10Aに記憶されているか否かを判定する。図3の例では、レコードR102に該当の情報が記憶されている。
【0033】
この判定は、近傍地点無線受信機120Nの設置位置において一の医療従事者MSが特定された後、それから所定時間以内に、境界地点無線受信機120Eの設置位置(境界地点)において同じ一の医療従事者MSが特定されているか否かを判定することに相当する。そして、この判定結果が「肯定」であれば、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしていることを特定する。一方、判定結果が「否定」であれば、一の医療従事者MSが所定領域の外側から内側に移動しようとしていることを特定する。
【0034】
行動推定部13は、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に境界地点に存在する施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第1の情報と、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に境界地点に存在する施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側における一の医療従事者MSの行動を推定する。本実施形態において、行動推定部13は、医療従事者MSによる施設利用者FUの移送行動を推定する。
【0035】
ここで、所定の時間差は、医療従事者MSが施設利用者FUを所定の場所へ移送する場合に、医療従事者MSと施設利用者FUとの間の距離として通常想定される距離と、移送時における医療従事者MSおよび施設利用者FUについて想定される歩行速度との関係で適切に設定される。例えば、医療従事者MSと施設利用者FUとの間の想定距離が1mである場合、所定の時間差は1~2秒程度に設定される。
【0036】
すなわち、行動推定部13は、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共に検出情報記憶部10Aの或るレコードに記憶された第1の識別情報により、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、そのレコードで示される受信時刻から前後の所定の時間差以内において、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共に施設利用者FUに対応する第2の識別情報が検出情報記憶部10Aに記憶されているか否かを判定し、その判定結果を示す第1の情報をメモリ等の一時記憶媒体に記憶する。
【0037】
図3のように検出情報記憶部10Aに情報が記憶されている場合、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共にレコードR103に記憶された第1の識別情報“MS007”により、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MS-7が特定されたときに、それより後の所定の時間差以内に、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共にレコードR104に記憶された第2の識別情報“FU009”により、境界地点に存在する施設利用者FU-9が特定される。この場合、行動推定部13は、境界地点において医療従事者MS-7と共に施設利用者FU-9が特定されたことを示す第1の情報を一時記憶媒体に記憶する。仮に、レコードR104に示すような情報が検出情報記憶部10Aに記憶されていなかった場合、行動推定部13は、境界地点において医療従事者MS-7と共に何れの施設利用者FUも特定されていないことを示す第1の情報を一時記憶媒体に記憶する。
【0038】
また、行動推定部13は、第1の情報を一時記憶媒体に記憶した後、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共に検出情報記憶部10Aの別のレコードに記憶された第1の識別情報(上記或るレコードに記憶されているものと同じ第1の識別情報)により、所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、そのレコードで示される受信時刻から前後の所定の時間差以内において、境界地点無線受信機120Eの受信機ID“WR001”と共に施設利用者FUに対応する第2の識別情報が検出情報記憶部10Aに記憶されているか否かを判定し、その判定結果を示す第2の情報をメモリ等の一時記憶媒体に記憶する。
【0039】
そして、行動推定部13は、一時記憶媒体に記憶した第1の情報と第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側における一の医療従事者MSによる施設利用者FUの移送行動を推定する。
【0040】
図4は、行動推定部13による推定の内容を説明するための模式図である。図4に示すマトリクスにおいて、縦軸が第1の情報を示し、横軸が第2の情報を示す。第1の情報は、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されている場合と、特定されていない場合との2種類がある。第2の情報は、所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されている場合と、特定されていない場合との2種類がある。これにより、第1の情報と第2の情報と組み合わせにより、4つの状態が表される。
【0041】
左上のマスは、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定され、かつ、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定された第1の状態を示している。この第1の状態から、医療従事者MSと施設利用者FUとが共に病棟から外に出た後、医療従事者MSと施設利用者FUとが共に外から病棟に戻ってきたことが推認され得る。この場合、行動推定部13は、医療従事者MSが施設利用者FUを病棟外の検査室等に連れていき、検査終了後に施設利用者FUを連れて戻ってきたと推定する(往復移送行動)。
【0042】
右上のマスは、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定され、かつ、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されていない第2の状態を示している。この第2の状態から、医療従事者MSと施設利用者FUとが共に病棟から外に出た後、医療従事者MSが一人で外から病棟に戻ってきたことが推認され得る。この場合、行動推定部13は、医療従事者MSが施設利用者FUを病棟外の検査室等に連れていき、そのまま一人で戻ってきたと推定する(往路移送行動)。
【0043】
左下のマスは、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されておらず、かつ、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定された第3の状態を示している。この第3の状態から、医療従事者MSが一人で病棟から外に出た後、医療従事者MSが施設利用者FUと共に外から病棟に戻ってきたことが推認され得る。この場合、行動推定部13は、医療従事者MSが施設利用者FUを病棟外の検査室等から連れ戻してきたと推定する(復路移送行動)。
【0044】
右下のマスは、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されておらず、かつ、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが特定されたときに、その時点から前後の所定の時間差以内に、境界地点に存在する施設利用者FUが特定されていない第4の状態を示している。この第4の状態から、医療従事者MSが一人で病棟から外に出た後、医療従事者MSが一人で外から病棟に戻ってきたことが推認され得る。この場合、行動推定部13は、医療従事者MSが施設利用者FUの移送行動をしていないと推定する(非移送行動)。
【0045】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、施設内の所定領域の境界地点に設置された境界地点無線受信機120Eにより取得される検出情報に基づいて、境界地点に存在する医療従事者MSまたは施設利用者FUを特定するように構成し、検出情報に基づいて一の医療従事者MSが特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者FUが特定されているか否かの第1の情報と、その後に一の医療従事者MSが再度特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者FUが特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側で無線受信機120が設置されていない領域における一の医療従事者MSの行動を推定するようにしている。
【0046】
上記のように構成した本実施形態によれば、施設内の所定領域の境界地点において、医療従事者MSの存在が特定されるだけでなく、医療従事者MSが特定された時点に対して所定の時間差以内における施設利用者FUの存在も特定される。このため、医療従事者MSが境界地点において一度特定されたときおよびその後に再度特定されたときのそれぞれの時点において施設利用者FUも特定されているかに応じて、医療従事者MSが所定領域の境界地点から外側に出て戻るまでの間に医療従事者MSが施設利用者FUと共に行った可能性のある移送行動を推定することが可能である。これにより本実施形態によれば、位置検出手段としての無線受信機120が設置されていない領域においても、医療従事者MSの行動を推定することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、境界地点無線受信機120Eの近傍に近傍地点無線受信機120Nを設置し、この2つの無線受信機120E,120Nにおいて医療従事者MSが特定される順番に基づいて、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する例について説明したが、近傍地点無線受信機120Nを設置することは必須ではない。すなわち、境界地点無線受信機120Eと他の無線受信機120において医療従事者MSが特定される順番に基づいて、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定するようにしてもよい。
【0048】
あるいは、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する処理を省略するようにしてもよい。すなわち、行動推定部13は、存在者特定部12により一の医療従事者MSが特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第1の情報と、その後に存在者特定部12により一の医療従事者MSが再度特定されたときに、所定の時間差以内に施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側における一の医療従事者MSの行動を推定するようにしてもよい。例えば、一の医療従事者MSが図示しない勤怠システムに出勤の登録をした後、存在者特定部12により一の医療従事者MSが奇数回目に特定されたときにおける施設利用者FUの特定に関する情報を第1の情報とし、一の医療従事者MSが偶数回目に特定されたときにおける施設利用者FUの特定に関する情報を第2の情報とするようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、医療従事者MSについてのみ、所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する例について説明したが、施設利用者FUについても、所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを更に特定し、この特定結果も踏まえて行動推定部13が医療従事者MSの行動を推定するようにしてもよい。
【0050】
この場合、存在者特定部12は、複数の無線受信機120により第2の識別情報が受信される毎に施設利用者FUを特定し、境界地点において施設利用者FUが特定されたときに、施設利用者FUが境界地点において特定されるまでの特定の順番に基づいて、施設利用者FUが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する。
【0051】
行動推定部13は、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときに、所定の時間差以内に、所定領域の内側から外側に移動しようとする施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第1の情報と、その後に所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときに、所定の時間差以内に、所定領域の外側から内側に移動しようとする施設利用者FUが存在者特定部12により特定されているか否かの第2の情報との組み合わせに基づいて、所定領域の外側における一の医療従事者の行動を推定する。
【0052】
このようにすれば、所定領域の内側から外側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときや、所定領域の外側から内側に移動しようとする一の医療従事者MSが存在者特定部12により特定されたときに、境界地点無線受信機120Eの近くに偶然に居ただけの施設利用者FUが存在者特定部12により特定されることの影響を受けて、医療従事者MSの行動を誤って推定してしまうことを抑制することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、検出装置の一例として無線受信機120を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、検出装置はカメラであってもよい。この場合、全ての無線受信機120をカメラに置き換える必要はなく、境界地点無線受信機120Eのみをカメラに置き換えるようにしてもよい。この場合、近傍地点無線受信機120Nは不要である。
【0054】
検出装置をカメラにより構成した場合、存在者特定部12は、例えば、カメラにより撮影された画像に基づいて、所定領域の境界地点に存在する医療従事者MSまたは施設利用者FUを特定するとともに、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する。
【0055】
例えば、存在者特定部12は、撮影画像に写っている人物の容姿に関する特徴情報を検出し、あらかじめ医療従事者MSおよび施設利用者FUの画像情報を与えて機械学習されたニューラルネットワークモデルに特徴情報を入力することにより、撮影画像に写っている人物がどの医療従事者MSまたは施設利用者FUであるかを特定する。また、特定した一の医療従事者MSの移動方向を撮影画像から検出することにより、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定する。
【0056】
なお、境界地点無線受信機120Eの近傍にカメラを更に備え、境界地点における医療従事者MSおよび施設利用者FUの存在は境界地点無線受信機120Eの検出情報に基づいて特定する一方、カメラの撮影画像を解析することにより、一の医療従事者MSが所定領域の内側から外側に移動しようとしているか、外側から内側に移動しようとしているかを特定するようにしてもよい。
【0057】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
11 検出情報受信部
12 存在者特定部
13 行動推定部
100 情報処理装置(行動推定装置)
110A 第1の無線送信機
110B 第2の無線送信機
120 無線受信機(検出装置)
120E 境界地点無線受信機
120N 近傍地点無線受信機
MS 医療従事者
FU 施設利用者
図1
図2
図3
図4