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特開2023-100405生活反応検知システム、生活反応検知装置および生活反応検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100405
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】生活反応検知システム、生活反応検知装置および生活反応検知方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230711BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230711BHJP
   G01R 21/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G06Q50/06
G08B25/04 K
G01R21/00 Q
G01R21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001063
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】500175325
【氏名又は名称】学校法人愛知学院
(71)【出願人】
【識別番号】516355597
【氏名又は名称】トーマステクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516355601
【氏名又は名称】CPソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】楳本 龍夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 時夫
【テーマコード(参考)】
5C087
5L049
【Fターム(参考)】
5C087DD03
5C087DD24
5C087DD33
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG09
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】居住者の生活反応が無いのに有るとする誤判定をできるだけ回避する。
【解決手段】測定した総消費電力の時間的変動を分析することにより、仮想上の個別機器の消費電力を推定する個別電力分解部21と、個別消費電力に基づいて、個別機器の電源の状態を表す電源状態パラメータを算出する電源状態パラメータ算出部23と、個別消費電力に基づいて電気機器の種類を特定する電気機器種別タグ付け部24と、電源状態パラメータおよび電気機器の種類に基づいて生活反応の有無を判定する生活反応判定部25とを備え、個別機器について算出された電源状態パラメータに加えて電気機器の種類も考慮して生活反応を判定することにより、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する性質の電気機器が特定されていない場合に居住者の生活反応が「有り」と判定される可能性が低くなるようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住者の生活反応を検知するための生活反応検知システムであって、
上記生活反応を検知する対象空間の総消費電力を測定する総電力測定部と、
上記総電力測定部により測定された総消費電力の時間的変動を分析して、同種の性質の機器群を示す仮想上の個別機器の消費個別機器の消費電力である個別消費電力を推定し、当該個別消費電力の上記総消費電力に対する構成比率を上記個別機器の状態変数として一定周期毎に算出する個別電力分解部と、
上記個別電力分解部により分解された上記個別機器について推定された上記個別消費電力と、電気機器の一般的な消費電力および使用状態と上記電気機器の種類との関連付けに係る情報としてあらかじめ用意された関連付け情報とに基づいて、上記個別電力分解部により分解された上記個別機器に対応する上記電気機器の種類を特定する電気機器種別タグ付け部と、
上記個別電力分解部により算出された上記個別機器の状態変数を整数化し、整数化された値を、上記個別機器の電源がオンになった台数/電源がオフになった台数を表すスイッチ変数とするスイッチ変数生成部と、
上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源の状態を表すパラメータを所定の時間単位で算出する電源状態パラメータ算出部と、
上記電源状態パラメータ算出部により算出された電源状態パラメータおよび上記電気機器種別タグ付け部により特定された上記電気機器の種類が所定の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する生活反応判定部とを備えた
ことを特徴とする生活反応検知システム。
【請求項2】
上記生活反応判定部は、上記電源状態パラメータ算出部により算出された電源状態パラメータが所定の第1の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する第1の生活反応判定部と、
上記電気機器種別タグ付け部により特定された上記電気機器の種類が所定の第2の条件を満たすか否かに基づいて、上記第1の生活反応判定部による判定の結果を補正する第2の生活反応判定部とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の生活反応検知システム。
【請求項3】
上記第2の条件は、上記所定の時間単位の中で、上記電気機器の種類が1つも特定されていないという条件であり、
上記第2の生活反応判定部は、上記第2の条件を満たす上記所定の時間単位について、上記第1の生活反応判定部により上記居住者の生活反応が「有り」と判定されている場合に、上記居住者の生活反応を「無し」に補正することを特徴とする請求項2に記載の生活反応検知システム。
【請求項4】
上記第2の条件は、上記所定の時間単位の中で、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する電気機器の種類が1つも特定されていないという条件であり、
上記第2の生活反応判定部は、上記第2の条件を満たす上記所定の時間単位について、上記第1の生活反応判定部により上記居住者の生活反応が「有り」と判定されている場合に、上記居住者の生活反応を「無し」に補正することを特徴とする請求項2に記載の生活反応検知システム。
【請求項5】
上記電源状態パラメータ算出部は、上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源をオンまたはオフしたスイッチ回数を上記電源状態パラメータとして上記所定の時間単位で算出し、
上記第1の生活反応判定部は、上記電源状態パラメータ算出部により算出された上記スイッチ回数が閾値を超えているという上記第1の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する
ことを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の生活反応検知システム。
【請求項6】
上記電源状態パラメータ算出部は、上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源をオンまたはオフするタイミングのバラツキ度合を表す分散値を上記電源状態パラメータとして上記所定の時間単位で算出し、
上記第1の生活反応判定部は、上記電源状態パラメータ算出部により算出された上記分散値が閾値を超えているという上記第1の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する
ことを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の生活反応検知システム。
【請求項7】
上記電源状態パラメータ算出部は、上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源がオンからオフになるまでの1回当たりの平均オン時間を上記電源状態パラメータとして上記所定の時間単位で算出し、
上記第1の生活反応判定部は、上記電源状態パラメータ算出部により算出された上記平均オン時間が閾値を超えているという上記第1の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定することを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の生活反応検知システム。
【請求項8】
生活反応を検知する対象空間について上記総電力測定装置により測定された総消費電力の時間的変動を分析して、同種の性質の機器群を示す仮想上の個別機器の消費個別機器の消費電力である個別消費電力を推定し、当該個別消費電力の上記総消費電力に対する構成比率を上記個別機器の状態変数として一定周期毎に算出する個別電力分解部と、
上記個別電力分解部により分解された上記個別機器について推定された上記個別消費電力と、電気機器の一般的な消費電力および使用状態と上記電気機器の種類との関連付けに係る情報としてあらかじめ用意された関連付け情報とに基づいて、上記個別電力分解部により分解された上記個別機器に対応する上記電気機器の種類を特定する電気機器種別タグ付け部と、
上記個別電力分解部により算出された上記個別機器の状態変数を整数化し、整数化された値を、上記個別機器の電源がオンになった台数/電源がオフになった台数を表すスイッチ変数とするスイッチ変数生成部と、
上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源の状態を表すパラメータを所定の時間単位で算出する電源状態パラメータ算出部と、
上記電源状態パラメータ算出部により算出された電源状態パラメータおよび上記電気機器種別タグ付け部により特定された上記電気機器の種類が所定の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する生活反応判定部とを備えたことを特徴とする生活反応検知装置。
【請求項9】
居住者の生活反応を検知するための生活反応検知方法であって、
総電力測定装置が、上記生活反応を検知する対象空間の総消費電力を測定する第1のステップと、
上記生活反応検知装置の個別電力分解部が、上記総電力測定装置により測定された総消費電力の時間的変動を分析して、同種の性質の機器群を示す仮想上の個別機器の消費個別機器の消費電力である個別消費電力を推定し、当該個別消費電力の上記総消費電力に対する構成比率を上記個別機器の状態変数として一定周期毎に算出する第2のステップと、
上記生活反応検知装置の電気機器種別タグ付け部が、上記個別電力分解部により分解された上記個別機器について推定された上記個別消費電力と、電気機器の一般的な消費電力および使用状態と上記電気機器の種類との関連付けに係る情報としてあらかじめ用意された関連付け情報とに基づいて、上記個別電力分解部により分解された上記個別機器に対応する上記電気機器の種類を特定する第3のステップと、
上記生活反応検知装置のスイッチ変数生成部が、上記個別電力分解部により算出された上記個別機器の状態変数を整数化し、整数化された値を、上記個別機器の電源がオンになった台数/電源がオフになった台数を表すスイッチ変数とする第4のステップと、
上記生活反応検知装置の電源状態パラメータ算出部が、上記スイッチ変数生成部により生成された上記スイッチ変数に基づいて、上記個別機器の電源の状態を表すパラメータを所定の時間単位で算出する第5のステップと、
上記生活反応検知装置の生活反応判定部が、上記電源状態パラメータ算出部により算出された電源状態パラメータおよび上記電気機器種別タグ付け部により特定された上記電気機器の種類が所定の条件を満たすか否かに基づいて、上記所定の時間単位で上記居住者の生活反応の有無を判定する第6のステップとを有することを特徴とする生活反応検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活反応検知システム、生活反応検知装置および生活反応検知方法に関し、特に、電気機器の消費電力に基づいて居住者の生活反応を検知するためのシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の消費電力に基づいて居住者の生活反応の有無を判定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の生活反応検知システムでは、測定した総消費電力を仮想上の個別機器(推定分解電力の大きさに対応した仮想上の電気機器であり、具体的な機器の種類を特定するものではない)の消費電力に分解し、当該個別機器の消費電力の変動状況を解析することによって居住者の生活反応を監視する。
【0003】
ここで、電気機器の中には、冷蔵庫や温水器などのように、居住者による電源スイッチの操作の有無によらず電力を消費するものがあり、また、その消費電力量が電気機器自身の自動制御により変動するものもある。そのため、単純に消費電力の測定値と閾値とを比較したり、測定値の変動パターンを分析したりするだけでは、居住者の生活反応の有無を正確に判定することが難しい。
【0004】
このことに鑑みて、特許文献1に記載の生活反応検知システムでは、分解した個別消費電力の変動状況をもとに、個別機器の電源オン/オフを表すスイッチ変数を生成し、当該スイッチ変数に基づいて個別機器の電源状態パラメータ(個別機器の電源をオンまたはオフしたスイッチ回数、個別機器の電源をオンまたはオフするタイミングのバラツキ度合を表す分散値、個別機器の電源がオンからオフになるまでの1回当たりの平均オン時間など)を算出して、この電源状態パラメータに基づいて居住者の生活反応の有無を判定するようにしている。
【0005】
この特許文献1に記載の生活反応検知システムにおいて消費電力が推定される個別機器は、具体的な機器の種類が特定されない仮想上の電気機器である。すなわち、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する電気機器なのか、居住者による電源スイッチの操作によらず消費電力量が自動的に変動する電気機器なのかを明確に区別できていない。
【0006】
そのため、消費電力量が自動的に変動する電気機器の影響を受けて算出される電源状態パラメータが所定の条件を満たすと、居住者の生活反応を「有り」と誤判定してしまうことがあるという問題があった。特に、居住者の安否を確認するという観点からすると、生活反応が無いのに有ると誤判定してしまうことをできるだけ回避できるようにすることが望まれる。
【0007】
なお、負荷の消費電力に基づいて負荷の種類を特定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のエネルギ消費監視システムでは、負荷の一般的なエネルギ消費量と使用時間帯とからなる負荷特定情報を負荷の種類ごとにあらかじめ記憶しておき、測定器により測定された電力消費量情報をもとに、負荷特定情報を参照して、使用された負荷の種類を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6793376号公報
【特許文献2】特開2012-168918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような問題を解決するために成されたものであり、消費電力に基づいて居住者の生活反応が無いのに有ると誤判定してしまうことをできるだけ回避できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、生活反応を検知する対象空間において測定した総消費電力の時間的変動を分析することにより、同種の性質の機器群を示す仮想上の個別機器の消費電力である個別消費電力を推定し、当該個別消費電力に基づいて、個別機器の電源の状態を表す電源状態パラメータを所定の時間単位で算出する。一方、個別機器について推定された個別消費電力と、電気機器の一般的な消費電力および使用状態と電気機器の種類との関連付けに係る情報としてあらかじめ用意された関連付け情報とに基づいて、個別機器に対応する電気機器の種類を特定する。そして、算出された電源状態パラメータおよび特定された電気機器の種類が所定の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、個別機器について算出された電源状態パラメータに加えて、個別機器について特定された電気機器の種類も考慮して居住者の生活反応が判定される。このため、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する性質の電気機器が特定されていない場合に居住者の生活反応が「有り」と判定される可能性を低くすることができる。これにより、消費電力に基づいて居住者の生活反応の有無を判定する際に、生活反応が無いのに有ると誤判定してしまうことをできるだけ回避することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による生活反応検知システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態による解析装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態による解析装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
図4】本実施形態による解析装置の動作例を説明するための模式図である。
図5】本実施形態による解析装置の動作例を説明するための模式図である。
図6】本実施形態による解析装置の動作例を説明するための模式図である。
図7】本実施形態による生活反応検知システムの動作例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態による解析装置の動作例を説明するための模式図である。
図9】本実施形態による解析装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による生活反応検知システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の生活反応検知システム100は、居住者の生活反応を検知するためのシステムであって、総電力測定装置10(本発明の総電力測定部に相当)と、解析装置20(生活反応検知装置に相当)と、サーバ30とを備えて構成されている。解析装置20とサーバ30との間は、インターネット等の通信ネットワークにより接続されている。
【0014】
総電力測定装置10は、生活反応を検知する対象空間の総消費電力を測定するものであり、例えばスマートメータなど、公知の測定器を用いることが可能である。生活反応を検知する対象空間とは、例えば、人が居住している空間であり、一戸建て住戸、集合住宅における一戸または複数戸などが該当する。
【0015】
解析装置20は、総電力測定装置10により測定された総消費電力を解析し、対象空間内における生活反応の有無を検知する。解析装置20は、解析結果のデータをサーバ30に送信する。サーバ30は、解析装置20から送信された解析結果のデータを保存し、これを外部からの要求に応じて提供する。
【0016】
以上のように構成した本実施形態の生活反応検知システム100は、例えば、独居高齢者の生活状況の見守り、宅配先における居住者の在宅/不在の推定、旅行など外出期間中における電気機器の稼動/非稼働の確認など、様々な用途に用いることが可能である。
【0017】
図2は、解析装置20の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の解析装置20は、その機能構成として、個別電力分解部21、スイッチ変数生成部22、電源状態パラメータ算出部23、電気機器種別タグ付け部24および生活反応判定部25を備えて構成されている。生活反応判定部25は、より具体的な機能構成として第1の生活反応判定部25Aおよび第2の生活反応判定部25Bを備えている。
【0018】
これらの機能ブロック21~25は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック21~25は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0019】
個別電力分解部21は、総電力測定装置10により測定された総消費電力の時間的変動を分析して、仮想した個別機器の消費電力である個別消費電力を推定する。そして、その推定した個別消費電力の総消費電力に対する構成比率を、個別機器の状態変数として一定周期毎(例えば、1分毎)に算出する。
【0020】
ここで、仮想した個別機器とは、対象空間内に実際に存在する電気機器の1つ1つのことを言うのではなく、推定分解電力の大きさに対応した仮想上の電気機器(特許請求の範囲の「同種の性質の機器群を示す仮想上の個別機器」に相当)のことを言う。例えば、総電力測定装置10により測定された総消費電力がある周期において50W上昇している場合、50Wの消費電力を有する電気機器(具体的な機器を特定する必要はない)が稼働したと分析する。また、総電力測定装置10により測定された総消費電力がある周期において100W下降している場合、100Wの消費電力を有する電気機器が停止したと分析する。すなわち、この場合における仮想した電気機器とは、推定分解電力50Wの電気機器(以下、個別機器[50W]と表記する)、推定分解電力100Wの電気機器(以下、個別機器[100W]と表記する)を言う。
【0021】
個別電力分解部21は、以上のようにして推定した個別機器の個別消費電力の総消費電力に対する構成比率を一定周期毎に算出し、これを個別機器の状態変数Xjreal-kとする。ここで、jは仮想上の電気機器の識別符号を表す。すなわち、j=1~m(mは総消費電力から分解した各推定分解電力の電気機器の数)である。また、例えば周期を1分とし、1時間分の総消費電力から状態変数Xjreal-kを算出する場合は、k=1~60である。24時間分であれば、k=1~1440である。
【0022】
例えば、ある周期tkにおいて、3種類の推定分解電力p1,p2,p3の電気機器(仮想上の個別機器[p1]、個別機器[p2]、個別機器[p3])がそれぞれ稼働していることが個別電力分解部21により推定された場合、個別電力分解部21は、X1real*p1+X2real*p2+X3real*p3=Xreal*pを満たす状態変数を算出する。ここで、pは総消費電力、Xrealは総消費電力の状態変数である。ある周期tkにおける状態変数Xjreal-kは、例えば、1つ前の周期tk-1の状態をもとに、公知の収束アルゴリズム(例えば、カルマンフィルタを用いた収束アルゴリズム)により推定することが可能である。
【0023】
なお、この個別電力分解部21の機能は、特許第5870189号に記載された内容を適用することが可能である。
【0024】
スイッチ変数生成部22は、個別電力分解部21により算出された個別機器の状態変数を整数化し、整数化された値を個別機器の電源オン/オフを表すスイッチ変数とする。すなわち、スイッチ変数生成部22は、以下の式により個別機器の状態変数を四捨五入して整数化することにより、個別機器のスイッチ変数Xjkを算出する。
jk=round(Xjreal-k)
【0025】
これにより、個別機器[50W]に関して個別電力分解部21により算出された一定周期毎の状態変数Xjreal-kから、例えば次のような整数列のベクトルで表される一定周期毎のスイッチ変数Xjk[50W]が得られる。
jk[50W]={00111001222331100110・・・・}
ここで、“1”は個別機器[50W]の電源が1台オン、“2”は個別機器[50W]の電源が2台オンになっていることを意味する。他の推定分解電力の個別機器についても同様に、一定周期毎のスイッチ変数Xjkが生成される。
【0026】
電源状態パラメータ算出部23は、スイッチ変数生成部22により生成された一定周期毎のスイッチ変数Xjkに基づいて、個別機器の電源の状態を表すパラメータを所定の時間単位(例えば、1時間単位)で算出する。例えば、電源状態パラメータ算出部23は、スイッチ変数生成部22により一定周期毎に生成されたスイッチ変数Xjkに基づいて、個別機器の電源をオンしたスイッチ回数Noniまたはオフしたスイッチ回数Noffiを電源状態パラメータとして所定の時間単位で算出する。所定の時間単位が1時間の場合、i=1~24である。ここで、電源オンのスイッチ回数Noniは、1時間の中で各推定分解電力の個別機器の電源がスイッチオンとされた回数の合計値である。
【0027】
例えば、以下に示すスイッチ変数Xjk[50W]が得られている場合、
jk[50W]={00111001222331100110・・・・}
j2=0からXj3=1に変化するタイミングで1回スイッチオン、Xj7=0からXj8=1に変化するタイミングで1回スイッチオン、Xj8=1からXj9=2に変化するタイミングで1回スイッチオンがあったなどと判定して、最初の1時間分のスイッチ変数Xjk[50W](k=1~60)からスイッチオンの回数を算出する。
【0028】
他の推定分解電力の個別機器に関するスイッチ変数Xjkについても同様に、スイッチ変数Xjk(k=1~60)からスイッチオンの回数を算出する。そして、各推定分解電力の個別機器について算出したスイッチオンの回数を合計することにより、最初の1時間における電源オンのスイッチ回数Non1を算出する。これと同様の処理を次の1時間分のスイッチ変数Xjk(k=61~120)に対して行うことにより、次の1時間における電源オンのスイッチ回数Non2を算出する。以下同様にして、24時間分の電源オンのスイッチ回数Noni(i=1~24)を算出する。
【0029】
電源オフのスイッチ回数Noffi(i=1~24)の算出方法も以上と同様である。例えば、上述のスイッチ変数Xjk[50W]が得られている場合、Xj5=1からXj6=0に変化するタイミングで1回スイッチオフ、Xj13=3からXj14=1に変化するタイミングで2回スイッチオフがあったなどと判定して、最初の1時間分のスイッチ変数Xjk[50W](k=1~60)から個別機器[50W]のスイッチオフの回数を算出する。
【0030】
他の推定分解電力の個別機器に関するスイッチ変数Xjkについても同様に、スイッチ変数Xjk(k=1~60)からスイッチオフの回数を算出する。そして、各推定分解電力の個別機器について算出したスイッチオフの回数を合計することにより、最初の1時間における電源オフのスイッチ回数Noff1を算出する。以下同様にして、24時間分の電源オフのスイッチ回数Noffi(i=1~24)を算出する。
【0031】
電気機器種別タグ付け部24は、個別電力分解部21により分解された仮想上の個別機器について推定された個別消費電力と、電気機器の一般的な消費電力および使用状態と電気機器の種類との関連付けに係る情報としてあらかじめ用意された関連付け情報とに基づいて、個別電力分解部21により分解された仮想上の個別機器に対応する電気機器の種類を特定する(以下、これをタグ付けまたはタギングということがある)。
【0032】
ここで、関連付け情報は、例えば、電気機器の一般的な消費電力および使用状態を示す情報と、電気機器の種類を示す情報とを関連付けて成るテーブル情報である。テーブル情報は、対象空間ごとに、当該対象空間内で生活する居住者の生活習慣に合わせた内容に任意に設定できるようにしてもよい。あるいは、関連付け情報は、電気機器の消費電力および使用状態を示す情報が入力されたときに、電気機器の種類を示す情報が出力されるように機械学習された分類モデルであってもよい。
【0033】
電気機器の一般的な使用状態とは、例えば電気機器の使用時間帯、使用頻度、連続使用時間、使用サイクル、使用季節のうち少なくとも1つである。使用時間帯は、例えば洗濯機は朝の時間帯に使用するのが一般的であるとか、部屋の照明は夜の時間帯に使用するのが一般的であるといった情報である。使用頻度は、所定期間内で同じ電気機器が何回使用されるかといった情報である。連続使用時間は、同じ電気機器が連続して稼働状態にある時間の長さを示す情報である。使用サイクルは、所定期間内で同じ電気機器が複数回使用される場合の時間間隔や、換気扇等のように毎日自動的にオン/オフされる電気機器の稼働期間などの情報である。使用季節は、例えばエアコンは夏季または冬季に使用するのが一般的であるといった情報である。
【0034】
電気機器の種類を示す情報は、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する電気機器(以下、手動機器という)なのか、居住者による電源スイッチの操作によらず消費電力量が自動的に変動する電気機器(以下、自動機器という)なのかを特定するための情報を含む。
【0035】
電気機器種別タグ付け部24の具体的な処理内容は、以下の通りである。すなわち、電気機器種別タグ付け部24は、個別電力分解部21により分解された推定分解電力pjの電気機器(仮想上の個別機器[pj])について、その使用状態を解析する。そして、仮想上の個別機器[pj]の個別消費電力pjおよび解析によって得られた使用状態を示す情報に基づいて、上述の関連付け情報を利用して仮想上の個別機器[pj]に対応する電気機器の種類を特定する。
【0036】
生活反応判定部25は、電源状態パラメータ算出部23により算出された電源状態パラメータおよび電気機器種別タグ付け部24により特定された電気機器の種類が所定の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定する。ここで、第1の生活反応判定部25Aは、電源状態パラメータ算出部23により算出された電源状態パラメータが所定の第1の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定する。例えば、第1の生活反応判定部25Aは、電源状態パラメータ算出部23により算出されたスイッチ回数NoniまたはNoffiが閾値を超えているという第1の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定する。
【0037】
ここで、第1の生活反応判定部25Aは、電源オンのスイッチ回数Noniのみを用いて、これが閾値を超えているか否かに基づいて生活反応の有無を判定するようにしてよい。または、電源オフのスイッチ回数Noffiのみを用いて、これが閾値を超えているか否かに基づいて生活反応の有無を判定するようにしてもよい。または、電源オンのスイッチ回数Noniおよび電源オフのスイッチ回数Noffiの両方を用いて、閾値を超えているか否かに基づいて生活反応の有無を判定するようにしてもよい。両方を用いる場合、例えば、Noni+Noffiの値が閾値を超えているか否かを判定するようにしてもよいし、電源オンのスイッチ回数Noniが第1の閾値を超え、かつ、電源オフのスイッチ回数Noffiが第2の閾値を超えているか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
以上の判定に用いる閾値は、あらかじめ定めた固定値であってもよいし、学習等によって最適化される可変値であってもよい。閾値を動的に設定する場合、解析装置20は、図3に示すように、その機能構成として閾値設定部26を更に備える。
【0039】
閾値設定部26は、例えば、電源状態パラメータ算出部23により所定期間内(例えば、数日または1週間)に算出される電源状態パラメータのうち、最小値からn番目(nは1以上の任意の数)の値を閾値として設定する。例えば、電源オンのスイッチ回数Noniを電源状態パラメータとして用いる場合、閾値設定部26は、1週間分として24×7個のスイッチ回数Noniのうち、最小値からn番目(例えば、n=3)の値を閾値として設定する。
【0040】
なお、閾値設定部26による閾値の設定は、定期的または非定期的に繰り替えし行うようにしてもよい。定期的に行う場合は、閾値設定部26の処理を行うインターバルを設定しておくことにより、自律的に閾値の設定を繰り返し行うようにすることが可能である。非定期的に行う場合は、ユーザが処理の実行を指示したときに閾値の設定を行うようにすることが可能である。
【0041】
第2の生活反応判定部25Bは、電気機器種別タグ付け部24により特定された電気機器の種類が所定の第2の条件を満たすか否かに基づいて、第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果を補正する。例えば、第2の条件は、所定の時間単位(例えば、1時間単位)の中で、電気機器の種類が1つも特定されていないという条件とする。そして、第2の生活反応判定部25Bは、第2の条件を満たす所定の時間単位について、第1の生活反応判定部25Aにより居住者の生活反応が「有り」と判定されている場合に、居住者の生活反応を「無し」に補正する。
【0042】
図4は、上記のように構成した解析装置20の動作の一例を説明するための模式図である。図4(a)は、スイッチ変数生成部22により生成される個別機器のスイッチ変数Xjkを示す。ここでは、個別電力分解部21により分解された全ての仮想上の個別機器[pj] (j=1~m)に関するスイッチ変数Xjkがまとめて示されているものとする。また、ここでは、1日の中の或る1時間のうち、最初の20分のスイッチ変数Xjk(k=1~20)が示されている。説明の便宜上、k=21~60の期間中に仮想上の個別機器[pj])は1つもオンになっていないものとする。1つの四角は、何れかの個別機器[pj]のスイッチ変数Xjkの値が“1”であることを示す。すなわち、縦方向に四角が1つのみ示される時間は何れかの個別機器[pj]が1台オンになっており、縦方向に四角が2つ示される時間は何れかの個別機器[pj]が2台オンになっており、縦方向に四角が3つ示される時間は何れかの個別機器[pj]が3台オンになっていることを示している。
【0043】
図4(b)は、図4(a)のスイッチ変数Xjkに基づいて電源状態パラメータ算出部23により算出される電源状態パラメータ(スイッチ回数)Noni,Noffi(iは1~24の何れか)を示す。図4(c)は、個別電力分解部21により分解された仮想上の個別機器[pj]のそれぞれについてタギングされた電気機器の種類を示す。ここでは、3~5分の間にオンとなっている個別機器[pj]が照明、8~15分の間にオンとなっている個別機器[pj]が1つ目の照明、9~13分の間にオンとなっている個別機器[pj]が冷蔵庫、12~13分の間にオンとなっている個別機器[pj]が2つ目の照明、18~19分の間にオンとなっている個別機器[pj]が照明であるとタギングされている。
【0044】
図4(d)は、図4(b)に示すスイッチ回数Noni,Noffiに基づく第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果を示す。ここでは、例えばスイッチ回数Noni,Noffiの合計値が閾値を超えているという第1の条件を満たす結果、生活反応が「有り」と判定されている。図4(e)は、図4(c)に示すタギングの結果に基づく第2の生活反応判定部25Bによる判定の結果を示す。ここでは、1時間の中で電気機器の種類が1つも特定されていないという第2の条件を満たさないので、第1の生活反応判定部25Aによる判定結果に対する補正は行われず、居住者の生活反応は「有り」のままとなっている。
【0045】
図5は、解析装置20の動作の別例を説明するための模式図である。図5の例において、スイッチ変数生成部22により生成される個別機器のスイッチ変数Xjk図5(a)のようになっており、図4(a)に示したスイッチ変数Xjkと異なっている。これに伴い、電源状態パラメータ算出部23により算出されるスイッチ回数Noni,Noffi図5(b)のようになり、これも図4(b)に示したスイッチ回数Noni,Noffiと異なっている。このスイッチ回数Noni,Noffiに基づく第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果が図5(d)に示されている。ここでは、スイッチ回数Noni,Noffiの合計値が閾値を超えているという第1の条件を満たす結果、生活反応が「有り」と判定されている。
【0046】
図5(c)は、個別電力分解部21により分解された仮想上の個別機器[pj]のそれぞれについてのタギングの結果を示す。ここでは、何れの個別機器[pj]についても個別消費電力pjおよび使用状態に対応する電気機器の種類を関連付け情報から特定することができず、タギングが不能であった場合を示している。このタギングの結果に基づく第2の生活反応判定部25Bによる判定の結果が図5(e)に示されている。ここでは、1時間の中で電気機器の種類が1つも特定されていないという第2の条件を満たすので、第1の生活反応判定部25Aによる判定結果に対する補正が行われ、居住者の生活反応が「無し」と判定されている。
【0047】
タギングできない個別機器[pj]は、それが手動機器であるのか自動機器であるのかを明確に区別することができない。仮に、タギングできていない個別機器[pj]が自動機器であった場合、これに基づいて居住者の生活反応を「有り」と判定するのは好ましくない。一方、本実施形態では、何れの個別機器[pj]についてもタギング不能であった場合は、生活反応の判定結果が「有り」から「無し」に補正されるので、生活反応が実際は無いのに有ると誤判定してしまうことを回避することが可能である。
【0048】
図6は、解析装置20の動作の更に別の例を説明するための模式図である。図6において、図6(a)に示す個別機器のスイッチ変数Xjk図6(b)に示す電源状態パラメータNoni,Noffi図6(d)に示す第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果は何れも図5と同様である。
【0049】
図6の例において、仮想上の個別機器[pj]に対するタギングの結果は図6(c)のようになっており、この点で図5の例と異なっている。ここでは、6~8分の間にオンとなっている個別機器[pj]についてはタギング不能であるが、3~20分の間にオンとなっている個別機器[pj]が換気扇であるとタギングされている。
【0050】
この図6(c)に示すタギングの結果に基づく第2の生活反応判定部25Bによる判定の結果が図6(e)に示されている。ここでは、1時間の中で電気機器の種類が1つも特定されていないという第2の条件を満たさないので、第1の生活反応判定部25Aによる判定結果に対する補正は行われず、居住者の生活反応は「有り」のままとなっている。
【0051】
図7は、上記のように構成した本実施形態による生活反応検知システム100の動作例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、解析装置20の電源がオンとされたときに開始する。
【0052】
まず、総電力測定装置10は、生活反応を検知する対象空間の総消費電力を測定する(ステップS1)。そして、個別電力分解部21は、状態変数を算出する一定周期(例えば、1分)が経過したか否かを判定する(ステップS2)。まだ1分が経過していない場合、処理はステップS1に戻り、総消費電力の測定を継続する。
【0053】
一方、一定周期の1分が経過した場合、個別電力分解部21は、総電力測定装置10により測定された総消費電力の1分間における時間的変動を分析して、仮想した個別機器の個別消費電力を推定し、その推定した個別消費電力の総消費電力に対する構成比率を個別機器の状態変数として算出する(ステップS3)。続いて、スイッチ変数生成部22は、個別電力分解部21により算出された個別機器の状態変数を整数化して個別機器のスイッチ変数を生成する(ステップS4)。
【0054】
その後、電源状態パラメータ算出部23は、電源状態パラメータを算出する所定の時間単位(例えば、1時間)が経過したか否かを判定する(ステップS5)。まだ1時間が経過していない場合、処理はステップS1に戻り、総消費電力の測定を継続する。
【0055】
一方、所定の時間単位である1時間が経過した場合、電源状態パラメータ算出部23は、スイッチ変数生成部22により各個別機器について生成された一定周期毎のスイッチ変数Xjkに基づいて、個別機器の電源状態パラメータ(電源オンのスイッチ回数Noni、電源オフのスイッチ回数Noffiの少なくとも一方)を算出する(ステップS6)。
【0056】
また、電気機器種別タグ付け部24は、個別電力分解部21により分解された個別機器に対するタギングを行い、個別機器に対応する電気機器の種類を特定する(ステップS7)。ここで、電気機器種別タグ付け部24は、直近の時間単位において分解された個別機器の個別消費電力だけでなく、それ以前の時間単位において分解された個別機器の個別消費電力も合わせて、これらの情報と関連付け情報とからタギングを行う。なお、ステップS6の処理とステップS7の処理とを逆順に行ってもよい。
【0057】
次に、第1の生活反応判定部25Aは、電源状態パラメータ算出部23により算出された電源状態パラメータが所定の第1の条件を満たすか否かに基づいて、該当の1時間における居住者の生活反応の有無を判定する(ステップS8)。次いで、第2の生活反応判定部25Bは、電気機器種別タグ付け部24により特定された電気機器の種類が所定の第2の条件を満たすか否かに基づいて、第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果を必要に応じて補正する(ステップS9)。そして、生活反応判定部25は、この判定結果のデータをサーバ30に送信する(ステップS10)。
【0058】
最後に、解析装置20は、自身の電源がオフにされたか否かを判定する(ステップS11)。解析装置20の電源がオフにされていない場合、処理はステップS1に戻り、総消費電力の測定を継続する。一方、解析装置20の電源がオフにされた場合、図7に示すフローチャートの処理は終了する。
【0059】
このフローチャートに示すように、本実施形態によれば、1時間毎に、ほぼリアルタイムに居住者の生活反応の有無を判定し、その結果のデータをサーバ30にアップロードすることができる。サーバ30にアップロードされたデータは、外部からの要求に応じていつでも閲覧することが可能となる。
【0060】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、生活反応を検知する対象空間において測定したアナログの総消費電力をそのまま閾値と比較したり、測定した総消費電力の変動パターンをそのまま分析したりするのではなく、測定した総消費電力が個別機器の電源のオン/オフに関する状態を表す電源状態パラメータに変換されて、当該パラメータに基づいて生活反応の有無が判定される。また、本実施形態では、個別機器について算出された電源状態パラメータに加えて、個別機器について特定された電気機器の種類も考慮して生活反応の有無が判定される。
【0061】
特に、仮想上の個別機器が、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する電気機器(手動機器)であるのか、居住者による電源スイッチの操作によらず消費電力量が自動的に変動する電気機器(自動機器)であるのかが不明な場合には、居住者の生活反応は「無し」と判定される。これにより、消費電力に基づいて居住者の生活反応の有無を判定する際に、生活反応が無いのに有ると誤判定してしまうことをできるだけ回避することができる。
【0062】
個別電力分解部21により分解された仮想上の個別機器の種類を電気機器種別タグ付け部24により特定した上で、自動機器による個別消費電力の変動に基づくスイッチ変数を除外して電源状態パラメータを算出し、これが第1の条件を満たすか否かに基づいて居住者の生活反応の有無を判定する(第2判定を行わない)ようにすることも考えられる。しかしながら、タギングできない個別機器が存在する場合には、タギングの結果を利用して電源状態パラメータを算出することができず、正確とは言えない電源状態パラメータに基づいて生活反応の有無を判定することになってしまう。よって、上記のように第1判定の結果を第2判定によって適宜補正する方法の方が好ましい。
【0063】
なお、上記実施形態では、電源状態パラメータの一例としてスイッチ回数Noni,Noffiを用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電源状態パラメータ算出部23は、スイッチ変数生成部22により生成されたスイッチ変数に基づいて、個別機器の電源をオンまたはオフするタイミングのバラツキ度合を表す分散値σを電源状態パラメータとして所定の時間単位で算出してもよい。この場合、第1の生活反応判定部25Aは、当該分散値σが閾値を超えているという第1の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定する。
【0064】
電気機器の中には、居住者が電源スイッチの操作を行わなくても、ほぼ一定の周期で消費電力の大きさが増減するものもある。このような電気機器の場合、消費電力が増減するタイミングのバラツキ度合を表す分散値σを計算すると、その値は比較的小さくなる。一方、居住者が電源スイッチの操作を行う場合、そのタイミングは任意で、一定の周期でオン/オフが繰り返されるものではないので、分散値σは比較的大きくなる。よって、分散値σが閾値を超えているか否かに基づいて、居住者の生活反応の有無を判定することが可能である。
【0065】
また、別の例として、電源状態パラメータ算出部24は、スイッチ変数生成部23により生成されたスイッチ変数に基づいて、個別機器の電源がオンからオフになるまでの1回当たりの平均オン時間Tonを電源状態パラメータとして所定の時間単位で算出してもよい。この場合、第1の生活反応判定部25Aは、当該平均オン時間Tonが閾値を超えているという第1の条件を満たすか否かに基づいて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定する。
【0066】
例えば、以下に示すスイッチ変数Xjk[50W]が得られている場合、
jk[50W]={00111001222331100110・・・・}
電源状態パラメータ算出部23は、Xj3~Xj5の3分間に1台の個別機器[50W]について電源オン状態が継続し、Xj8~Xj15の8分間に少なくとも1台の個別機器[50W]について電源オン状態が継続し、Xj9~Xj13の5分間に少なくとも2台の個別機器[50W]について電源オン状態が継続しているなどと判定して、1回当たりの平均オン時間Tonを算出する。平均オン時間Tonは、1時間における合計オン時間をスイッチオン回数で除算することによって算出することが可能である。
【0067】
また、電源オン/オフのスイッチ回数Noni,Noffi、電源オン/オフのタイミングに関する分散値σ、1回当たりの平均オン時間Tonの中の何れか複数または全ての組み合わせを用いて、所定の時間単位で居住者の生活反応の有無を判定するようにしてもよい。例えば、使用する複数の電源状態パラメータの全てにおいて、それぞれが閾値を超える場合に、居住者の生活反応が有ると判定することが考えられる。
【0068】
また、上記実施形態では、第2の生活反応判定部25Bが判定に用いる第2の条件として、所定の時間単位の中で電気機器の種類が1つも特定されていないという条件を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の条件として、所定の時間単位の中で、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する電気機器の種類が1つも特定されていないという条件を用いるようにしてもよい。この場合、第2の生活反応判定部25Bは、第2の条件を満たす所定の時間単位について、第1の生活反応判定部25Aにより居住者の生活反応が「有り」と判定されている場合に、居住者の生活反応を「無し」に補正する。
【0069】
図8は、第2の条件を上記のように設定した場合における解析装置20の動作例を説明するための模式図である。図8において、図8(a)に示す個別機器のスイッチ変数Xjk図8(b)に示す電源状態パラメータNoni,Noffi図8(c)に示す電気機器種別タグ付け部24によるタギングの結果、図8(d)に示す第1の生活反応判定部25Aによる判定の結果は何れも図6と同様である。
【0070】
図8の例において、第2の生活反応判定部25Bによる判定の結果は図8(e)のようになっており、この点で図6の例と異なっている。ここでは、図8(c)のように3~20分の間にオンとなっている個別機器[pj]に対してタグ付けされた「換気扇」という電気機器が、居住者による電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動する手動機器ではなく、自動的にオン/オフ動作をすることによって消費電力量が変動する自動機器であると関連付け情報により定義されている。そのため、手動機器が1つも特定されていないという第2の条件を満たし、第1の生活反応判定部25Aによる居住者の生活反応「有り」という判定結果が、第2の生活反応判定部25Bによって居住者の生活反応「無し」に補正されている。
【0071】
この例によれば、電気機器種別タグ付け部24によるタギングの結果が「タギング不能」または「自動機器」のみである場合(「手動機器」にタギングされた個別機器が1つも含まれていない場合)に、居住者の生活反応を「有り」から「無し」に補正することができる。これにより、手動機器に対する電源スイッチの操作に応じて消費電力量が変動していることが特定される場合のみ居住者の生活反応が「有り」と判定される可能性を高くすることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、居住者の生活反応の有無を所定の時間単位で判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、生活反応判定部25は、上記の判定に加えて、居住者の生活反応が有る状態または無い状態がいくつの時間単位続くかによって、生活反応が有る状態または無い状態のグレードを更に判定するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、電源状態パラメータと閾値とを比較することによって居住者の生活反応の有無を判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電源状態パラメータの所定の時間単位での変動パターンを分析して、その分析結果に基づいて居住者の生活反応の有無を判定するようにしてもよい。
【0074】
図9は、電源状態パラメータの変動パターンに基づいて居住者の生活反応の有無を判定する場合における解析装置20’の機能構成例を示すブロック図である。なお、この図9において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0075】
図9に示す解析装置20’は、教師データ記憶部27を更に備えている。また、生活反応判定部25に代えて生活反応判定部25’を備えている。生活反応判定部25’は、第1の生活反応判定部25Aに代えて第1の生活反応判定部25A’を備えている。教師データ記憶部27は、居住者の生活反応が有る状態または無い状態に関する電源状態パラメータの所定の時間単位での変動パターンを教師データとして記憶する。
【0076】
第1の生活反応判定部25A’は、電源状態パラメータ算出部23により算出された電源状態パラメータの所定の時間単位での変動パターンと、教師データ記憶部27に記憶されている教師データとの類似度が閾値を超えているという第1の条件を満たすか否かに基づいて、居住者の生活反応の有無を判定する。
【0077】
また、上記実施形態では、スマートメータ等の総電力測定装置10に対して解析装置20を接続する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スマートメータの中に解析装置20の機能を内蔵させるようにしてもよい。
【0078】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 総電力測定装置(総電力測定部)
20,20’ 解析装置(生活反応検知装置)
21 個別電力分解部
22 スイッチ変数生成部
23 電源状態パラメータ算出部
24 電気機器種別タグ付け部
25,25’ 生活反応判定部
25A,25A’ 第1の生活反応判定部
25B 第2の生活反応判定部
26 閾値設定部
27 教師データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9