(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100411
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】侵入防止装置
(51)【国際特許分類】
G08B 15/00 20060101AFI20230711BHJP
G08B 13/22 20060101ALI20230711BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20230711BHJP
E06B 5/11 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G08B15/00
G08B13/22
E06B7/28 A
E06B5/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001072
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】508281354
【氏名又は名称】富士防災警備株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514081715
【氏名又は名称】富士S-CAST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】田代 亮介
(72)【発明者】
【氏名】池野 信昭
【テーマコード(参考)】
5C084
【Fターム(参考)】
5C084AA02
5C084AA07
5C084AA13
5C084CC02
5C084CC03
5C084CC07
5C084CC08
5C084DD09
5C084EE02
5C084GG01
5C084HH17
(57)【要約】
【課題】侵入者が屋内、屋外を問わず不法侵入を実行する前に侵入をあきらめさせることが可能な侵入防止装置を提供すること。
【解決手段】 侵入防止装置1は、侵入に対する防護が要求される防護領域とこの防護領域の外側とを仕切る壁に設けられたドア60又は窓70よりも外側の空間であって少なくともドア60又は窓70に手が届く距離の範囲の対象空間に向けて、この対象空間にある物体を帯電させるようにマイナスイオンを放射する、負電荷放射装置11と、負電荷放射装置11に、負電荷放射装置からマイナスイオンを放射可能な電圧を供給する第1電源装置12と、を備え、侵入者の手がドア60又は窓70に近接又は接触した場合に放電現象を発生させることで、侵入者に電気ショックを与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入に対する防護が要求される防護領域と前記防護領域の外側とを仕切る壁に設けられたドア又は窓よりも外側の空間であって少なくとも前記ドア又は前記窓に手が届く距離の範囲の対象空間に向けて、前記対象空間にある物体を帯電させるように第1極性の電荷を放射する、電荷放射装置と、
前記電荷放射装置に、前記電荷放射装置から電荷を放射可能な電圧を供給する第1電源装置と、を備えることを特徴とする侵入防止装置。
【請求項2】
前記ドア若しくは前記窓の枠部材、前記ドア若しくは前記窓の開閉操作部材、又はそれらの組合せに対し、前記第1極性とは逆の第2極性の電圧を付与する第2電源装置を、更に備えることを特徴とする請求項1記載の侵入防止装置。
【請求項3】
前記ドア又は前記窓は開閉自在であり、当該ドア又は前記窓は施錠手段によって施錠することによって閉鎖状態を維持する可能であり、
前記ドア又は前記窓の枠及び前記施錠手段を前記第1極性とは逆の第2極性に帯電させる帯電手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の侵入防止装置。
【請求項4】
前記電荷放射装置は、前記ドア又は前記窓よりも外側の空間に配置され、前記対象空間内の侵入者にマイナスイオンを振りかけるイオン発生手段からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の侵入防止装置。
【請求項5】
侵入者の前記ドア又は前記窓への接近を検知する接近検知手段と、
前記接近検知手段が侵入者の接近を検知した場合に、前記第1電源装置を作動させる制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の侵入防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窃盗を試みようとする者による外部から建物への侵入を防止する侵入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の窃盗においては、建物への侵入から引き上げまでの時間が、凡そ5分間と短くなっているため、窃盗犯が引き上げるまでに、警察官や警備員が現場に到着できない場合がある。そこで、従来、窃盗を試みようとする者に対して電気ショックを加える装置が提案されている。これにより、侵入者が窃盗を行う前に犯行をあきらめる場合がある。
【0003】
この種の技術としては、従来、特許文献1或いは特許文献2に記載された技術が提案されている。特許文献1には、侵入者の身体又は被服に引っ掛かることが可能なフックを防犯スペースに配置し、フックに引っ掛かった侵入者を感電させる防犯装置について開示されている。特許文献2には、ガラス戸の非金属処理面上に金属電極を取付け、高周波数の非常に低い電流を生じる変圧器を介して高電圧をこの金属電極に加えることにより、ガラス戸から侵入しようと試みる場合、ガラスが簡単に割れ、直ちにアークが点弧されて、侵入者に急激なショックが与えられるガラス戸について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6518970号公報
【特許文献2】特表平08-511366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている防犯装置は、複数のフックがぶら下げられたワイヤを防犯スペースに複数本配置し、フック又はワイヤに触れた者に通電するというものである。しかし、この装置によれば、侵入者が訪れる防犯スペースにフック及びワイヤが適度に分布するように配置することが求められる。また、ワイヤを介してフックに通電されるため、複数のフック或いはワイヤ同士が、風によって動いて互いに接触して短絡しないようにする必要がある。このため、屋内の使用に適しているが、屋外での使用は困難である。
【0006】
また、特許文献2に記載されている装置においては、ガラスが割られたときに侵入者に急激なショックが与えられることから、建物の所有者はガラスを割られるという被害にあうことになる。このため、被害を最小限に抑えるためにも、犯行を試みる者がガラスを割る前に、建物への不法侵入をあきらめさせるような装置の出現が望まれる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、侵入者が屋内、屋外を問わず侵入を実行する前に侵入をあきらめさせることが可能な侵入防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は以下のような構成を備えている。
【0009】
(1) 侵入に対する防護が要求される防護領域と前記防護領域の外側とを仕切る壁に設けられたドア又は窓よりも外側の空間であって少なくとも前記ドア又は前記窓に手が届く距離の範囲の対象空間に向けて、前記対象空間にある物体を帯電させるように第1極性の電荷を放射する、電荷放射装置(マイナスイオン発生装置、コロナ放電装置)と、
前記電荷放射装置に、前記電荷放射装置から電荷を放射可能な電圧を供給する第1電源装置と、を備えることを特徴とする侵入防止装置。
【0010】
一般にドア又は窓を通って外側から防護領域へ侵入しようとする侵入者は、外側でドア又は窓に接近し、ドア又は窓に手が届く距離の範囲の対象空間で、ドア又は窓を開けるため又は破壊するために直接的又は用具を介して間接的にドア又は窓の一部に接触する。
(1)によれば、放射電源装置から電圧を供給された電荷放射装置が、対象空間に向けて第1極性(例えば、負極性)の電荷を放射する。このため、対象空間にいる侵入者及び侵入者が持っている金属製の破壊用具(例えば、バール)は第1極性に帯電する。即ち、侵入者及び破壊用具に電荷が蓄積する。侵入者がドア又は窓の一部に接触或いは近接するとき、蓄積した電荷が、放電現象によって瞬間的にドア又は窓の一部と侵入者との間で流れる。つまり、侵入者がドア又は窓に接触或いは近接したとき、或いは侵入者が持っている金属製の破壊用具(例えば、バール)がドア又は窓に接触或いは近接したときに、放電現象が発生し、侵入者に電気ショックが与えられる。これにより、侵入者が防護領域と外側とを仕切る壁に設けられたドア又は窓を破壊する前に、侵入者に対して電気ショックを与えることができるため、侵入を試みようとする侵入者の意欲を減退させることが可能になる。また、電荷放射装置は対象空間に向けて電荷を放射することで電気ショックを与える。このため、(1)によれば、例えばドア又は窓の特定箇所に配線を敷設する場合と比べて設置が容易であり、また、ドア又は窓の美観を損ねたり、ドア又は窓に注目する侵入者に容易に発見されたりする事態が抑制される。また、(1)によれば、防護領域の空間に電線を分布配置する場合と比べて、風で電線が揺れたり、防護領域へ侵入しようとする侵入者に容易に発見されたりする事態が抑制される。このため、(1)によれば、屋内、屋外を問わず防護領域へ侵入しようとする侵入者が、ドア又は窓を開けること又は破壊することを躊躇するようになる。また、ドア又は窓を開けること又は破壊を継続しようと考える場合でも、侵入に要する時間が長くなることが予想される。この結果、侵入を実行する前に侵入をあきらめさせることが可能になる。
【0011】
(2) (1)において、前記ドア若しくは前記窓の枠部材、前記ドア若しくは前記窓の開閉操作部材、又はそれらの組合せに対し、前記第1極性(例えば、負極性)とは逆の第2極性(例えば、正極性)の電圧を付与する第2電源装置を、更に備えることを特徴とする侵入防止装置。
【0012】
(2)によれば、侵入者がドア又は窓に接触したとき、或いは侵入者が持っている金属製の破壊用具がドア又は窓に接触したときに、第2電源装置からの電圧(例えば、正電圧)によって、侵入者に電気ショックが与えられる。従って、例えば侵入者が導電性の履き物を履いているといった場合のように、電荷放射装置から放射された電荷がドア又は窓に接触又は近接する前に侵入者から大地に逃げやすい状況でも、より確実に電気ショックを与える。また、この逆に電荷放射装置から放射された電荷が侵入者に蓄積されやすい場合、侵入者は、第1極性に帯電する。ドア若しくは窓は、第2極性の電位であるので、効率良く電気ショックを与えることができる。従って、侵入者による被害を低く抑えられる可能性がより高くなる。
【0013】
(3) (1)、(2)において、前記ドア又は前記窓は開閉自在であり、当該ドア又は前記窓は施錠手段(カギ)によって施錠することによって閉鎖状態を維持する可能であり、
前記ドア又は前記窓の枠及び前記施錠手段を前記第1極性とは逆の第2極性に帯電させる帯電手段を更に備えることを特徴とする侵入防止装置。
【0014】
(3)によれば、侵入者が、例えば、建物の外部から窓のガラスやドアを破壊しようとしたときに、侵入者に対して電気ショックを与えることができるため、侵入者による被害を低く抑えられる可能性が高くなる。
【0015】
(4) (1)~(3)において、前記電荷放射装置は、前記ドア又は前記窓よりも外側の空間に配置され、前記対象空間内の侵入者にマイナスイオンを振りかけるイオン発生手段からなることを特徴とする侵入防止装置。
【0016】
(4)によれば、侵入者を短時間で負帯電させることが可能になる。
【0017】
(5) (1)~(4)において、侵入者の前記ドア又は前記窓への接近を検知する接近検知手段と、
前記接近検知手段が侵入者の接近を検知した場合に、前記第1電源装置を作動させる制御手段と、を更に備えることを特徴とする侵入防止装置。
【0018】
(5)によれば、侵入者であると特定された場合に第1電源装置を作動させて侵入者を帯電させることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、侵入者が屋内、屋外を問わず侵入を実行する前に侵入をあきらめさせることが可能な侵入防止装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における侵入防止装置の概要を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における侵入防止装置の制御系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における侵入防止装置1の概要を模式的に示す側面図である。
侵入防止装置1は、建物100に設けられている。本実施形態における建物100の内部は、侵入に対する防護が要求される防護領域の一例である。侵入防止装置1は、建物100の外部から内部の防護領域に近づいた侵入者に対し、作用する。建物100の壁102は、防護領域とその外側とを仕切る。建物100の壁102に、ドア60及び窓70が設けられている。ドア60及び窓70は、開閉自在である。また、建物100内部には、金庫110が設置されている。
【0022】
ドア60は、ドア枠61に回動自在に支持されている。ドア枠61は、建物100の壁102に設けられている。ドア60には、ドアノブ62が設けられており、このドアノブ62の操作によってドア60がドア枠61に対し回動可能となることにより、ドア枠61によって囲まれた空間を開閉することが可能になる。また、ドアノブ62は、施錠機能を有しており、施錠することによってドア60の閉鎖状態が維持される。
【0023】
窓70は窓枠71の内側にスライド移動自在に支持される。窓枠71は、建物100の壁102に設けられている。窓70は、矩形の板ガラス70aと、この板ガラス70aの周囲を囲む内枠70bとを備えている。窓枠71において、上下に対向する内側の枠面には、それぞれ水平方向に延びる2本のレールが並列配置されている。2枚の窓70をスライド移動させることにより、窓枠71によって囲まれた空間を開閉することが可能になる。
内枠70bは窓70をスライド操作するための開閉操作部材70cを備えている。また、窓70には、2枚の窓70を連結して窓70の閉鎖状態を維持するクレセント錠72が設けられている。施錠機能を有するドアノブ62及びクレセント錠72は、施錠手段の一例である。
【0024】
侵入防止装置1は、対象空間S1,S2にいる侵入者を対象とする。対象空間S1,S2は、ドア60又は窓70よりも外側の空間であって、ドア60又は窓70に手が届く距離の範囲の空間である。
図1には、ドア60よりも外側にある対象空間S1と、窓70よりも外側にある対象空間S2とが示されている。この対象空間S1,S2は、例えばドア60又は窓70から約70cm以内の範囲である。ドア60又は窓70から約70cmの範囲内に人が立った場合、その人の手がドア60又は窓70に届く可能性が高い。
ただし、本発明における対象空間は、ドア60又は窓70に手が届く距離よりも広く設定されてもよい。
建物100の内部の防護領域に侵入しようとする侵入者は、ドア60又は窓70を開けるか破壊する場合が多い。この場合、侵入者は、まず、対象空間S1又は対象空間S2に入る。侵入者は、次に、ドア60又は窓70に直接的に又は間接的に接触する。例えば、侵入者は、ドア60とドア枠61の隙間にバールを差し込みこじ開ける。また例えば、侵入者は、ドアノブ62を操作する。また例えば、侵入者は、ドアノブ62にピッキングツールを挿入して施錠を解除しようとする。また例えば、侵入者は、窓枠71と窓70の隙間にバールを差し込みこじ開ける。また例えば、侵入者は、クレセント錠72の付近の板ガラス70aを破壊するため、窓70の内枠70bを手又は用具で押さえる。
侵入防止装置1は、対象空間S1又は対象空間S2に入ってドア60又は窓70に接触した侵入者に電気ショックを与える。
【0025】
侵入防止装置1は、負帯電装置10を備えている。侵入防止装置1は、監視カメラ30と、制御装置50(
図2参照)も、備えている。
【0026】
負帯電装置10は、負電荷放射装置11と、第1電源装置12と、を備えている。図には、2つの負電荷放射装置11が示されている
【0027】
負電荷放射装置11は、ドア60の外の対象空間S1及び窓70の外の対象空間S2にある物体を帯電させるように電荷を放射する。負電荷放射装置11は、建物100の外部に配置される。例えば、負電荷放射装置11は、建物100のドア60や窓70よりも上方で、且つ、ドア60や窓70の付近に配置されている。負電荷放射装置11は、対象空間S1,S2にある物体を負に帯電させるように負電荷を放射する。負は第1極性の一例である。また、対象空間S1にある物体には、対象空間S1,S2にいる人が含まれる。負電荷放射装置11は、対象空間S1,S2にマイナスイオンを放射する。負電荷放射装置11は、例えば、コロナ放電によってマイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生部を有する。負電荷放射装置11は、例えば、細い線状又は針状の図示しない金属電極を有し、この電極での空中放電によってマイナスイオンを生成する。負電荷放射装置11は、マイナスイオンを所定の範囲に放射する。負電荷放射装置11は、イオン発生手段の一例である。なお、コロナ放電は一例であって、マイナスイオンを発生させることができる装置であれば負電荷放射装置11として適用することが可能である。
【0028】
例えば、負電荷放射装置11は、ドア60や窓70よりも上方の庇101に設置され、下方に向けてシャワー状にマイナスイオンを振りかける姿勢で設置される。これにより、マイナスイオンによるシャワー空間に存在する物が負帯電する。上述したドア60又は窓70に手が届く距離の範囲の対象空間S1,S2は、このシャワー空間に含まれる。
【0029】
第1電源装置12は、負電荷放射装置11に、負帯電のためのマイナスイオンを放射可能な電圧を供給する。第1電源装置12は、例えば、500V~1000Vの負電圧(-500V~-1000V)を供給する。第1電源装置12が、例えば500V~1000Vの電圧を供給することで、負電荷放射装置11がマイナスイオンを放出できる。マイナスイオンの放射(シャワー)を受け帯電することで、接触時の電気ショックを生じることができる。例えば、第1電源装置12が、例えば1000V以上の負電圧を供給することで、マイナスイオンの放射(シャワー)を短い時間受け帯電する場合でも、接触時に電気ショックを生じることができる。なお、第1電源装置12は、負電荷放射装置11と一体に設けられてもよい。
【0030】
負電荷放射装置11が動作する結果、対象空間S1,S2にいる人又はその人が所持する用具の帯電電圧は、第1電源装置12の電圧、電極のタイプ、対象空間S1,S2における位置、湿度、服装、履き物の種類により異なる。第1電源装置12の出力電圧は、数秒間で人の帯電電位が500以上となるように設定される。第1電源装置12の出力電圧は、数秒間で人の帯電電位が2500V以下となるように設定される。人の帯電電位が500V~1000Vとなることで、接触した点が少し痛むようなショックが生じる。また、人の帯電電位が2500V以上となることで、例えば指が接触しても腕が痛むようなショックが生じる。
【0031】
なお、シャワー空間にある地面には、金属板のような導電性を有する物体が配置されていないことが望ましく、シャワー空間にある地面に、電気的に絶縁する絶縁板を配置することがより望ましい。これにより、シャワー空間内で負帯電した物体から負電荷が逃げることを抑えることができる。
【0032】
また、コロナ放電によって、オゾンが発生する場合がある。例えば無風状態で高濃度のオゾンが滞留することにより匂いで電荷の放射に気づかれる事態を抑制するため、負電荷放射装置11には、オゾンを流動又は拡散させる図示しないファンが設けられてもよい。また、負電荷放射装置11は、任意の種類に交換可能な芳香材を備えてもよい。
【0033】
侵入防止装置1は、更に第2電源装置22も備えている。第2電源装置22は、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72等に接続されている。
第2電源装置22は、ドア枠61、窓枠71、ドアノブ62、クレセント錠72に正極性の電圧を供給して正電位に保つ。第2電源装置22は、例えば、ドア枠61、窓枠71、ドアノブ62、クレセント錠72を1kV以上に保つ。正は、第2極性の一例である。第2電源装置22は、ドア枠61、窓枠71、ドアノブ62、クレセント錠72を正に帯電させる帯電手段の一例である。第2電源装置22は、例えば、500V~2500Vの正電圧を出力する。第2電源装置22は、例えば、500V~1000Vの正電圧を出力することで、接触した点が少し痛むようなショックを与える。第2電源装置22は、例えば、1mA以下の電流を出力するように設定される。第2電源装置22が、例えば、1mA以下の電流を出力することで、侵入者の身体に傷害等を与えることなくショックを与えることができる。また、第2電源装置22が、例えば、0.5mA以下の電流を出力することで、侵入者が不愉快に感じるショックを与えることができる。また、侵入者にショックを与える際に、電流の出力に伴い低下する出力電圧を短い時間で回復することができる。従って、侵入者がドア枠60又は窓枠70への接触を短い期間に複数回試みる場合でも、ショックを与え続けることができる。第1電源装置12及び第2電源装置22は、0.5mA以下の電流を出力する場合でも、出力電圧の変動を抑えるよう構成されている。これにより、繰返しショックを付与することができる。
【0034】
ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72は、金属材料で構成されている。ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72は、電気的に接地されていないことが望ましい。この場合、第2電源装置22の負極端子を設置にしても、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72からの電流の漏れが抑制される。消費電力が抑制される。
【0035】
なお、第2電源装置22は、金庫110のような室内の防護対象に対し電圧を供給してもよい。
【0036】
監視カメラ30は、ドア60や窓70のように侵入者が侵入を試みそうな場所に設置され、対象空間S1,S2、ドア60、及び窓70の付近の映像を撮影する。監視カメラ30は、撮影データを制御装置50(
図2参照)に送信する。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態における侵入防止装置の制御系統を示すブロック図である。
【0038】
制御装置50は、各種の処理を実行するCPU(図示せず)と、各種のデータ及びプログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備えている。制御装置50は、負電荷放射装置11、第1電源装置12、又は第2電源装置22と一体に配置されてもよい。また、制御装置50は、負電荷放射装置11、第1電源装置12、及び第2電源装置22のいずれからも独立して設けられてもよい。
【0039】
制御装置50は、CPUが各種のプログラムに基づく各種の処理を実行することにより、侵入者接近検知部51、機械警備制御部52、正帯電制御部53、負帯電制御部54、異常検知部55、警報器関連制御部56及び通信制御部57としての機能を備える。
【0040】
制御装置50は、監視カメラ30の撮影データを解析して侵入者の有無や位置を判断し、その判断結果に基づいて、負帯電装置10及び正帯電装置20の駆動制御や、警備員への通報等を行う。制御装置50は、監視カメラ30の撮影データに基づいて第1電源装置12及び第2電源装置22を制御する。例えば、建物100に監視カメラ30が複数設けられ、第1電源装置12が複数設けられ、また、第2電源装置22が複数設けられる場合、ドア60からの侵入の防止を担う第1電源装置12及び第2電源装置22は、ドア60付近に設けられている監視カメラ30の撮影データに基づいて駆動制御される。窓70からの侵入の防止を担う第1電源装置12及び第2電源装置22は、窓70付近に設けられている監視カメラ30の撮影データに基づいて駆動制御される。
【0041】
侵入者接近検知部51は、監視カメラ30からの撮影データに人物が映っているか否かを判断する。人物が映っていると侵入者接近検知部51が判断することが、防護領域(建物100に)に侵入者が接近していることを検知することに相当する。
【0042】
機械警備制御部52は、侵入防止及び侵入検知を含む機械警備の動作を制御する。機械警備制御部52は、監視カメラ30、第1電源装置12、及び第2電源装置22を動作させる。機械警備制御部52は、例えば、建物100に設けた図示しない侵入者検出センサから出力データに基づいて、侵入者が防護領域である建物100内に侵入した場合に警報を発する。機械警備制御部52は、建物100に設けられた警備スイッチ32が操作されることで、機械警備を実施する。例えば、機械警備制御部52は、警備スイッチ32が操作され、機械警備が実施されている場合に、第1電源装置12、及び第2電源装置22を動作させる。機械警備制御部52は、機械警備が実施されていない場合に、第1電源装置12、及び第2電源装置22を動作させない。ただし、第1電源装置12、及び第2電源装置22の動作はこれに限られず、警備スイッチ32の操作に関わらず、監視カメラ30からのデータに基づいて、第1電源装置12及び第2電源装置22を動作させてもよい。
なお、第1電源装置12及び第2電源装置22は、除電、すなわち対象の帯電極性とは逆の極性の電荷を付与することを目的していない。このため、機械警備制御部52は、侵入者の帯電極性を判別したりすることなく、第1電源装置12及び第2電源装置22に予め定められた極性の電圧を出力させる。
【0043】
正帯電制御部53は、侵入者接近検知部51が監視カメラ30からの撮影データに人物が映っていると判断した場合に、第2電源装置22を作動させる。
【0044】
負帯電制御部54は、侵入者接近検知部51が監視カメラ30からの撮影データに人物が映っていると判断した場合に、第1電源装置12を作動させる。第1電源装置12が作動すると負電荷放射装置11が作動して、マイナスイオンを発生する。これにより、侵入者が対象空間S1,S2にいる時に、侵入者に対してマイナスイオンを付着させて負帯電させることが可能になる。第1電源装置12及び第2電源装置22のいずれも、作動開始後の短時間で、規定の電圧を出力することができる。即ち、第1電源装置12及び第2電源装置22は、短時間で起動できる。例えば、第1電源装置12及び第2電源装置22の出力電圧は、作動開始後数秒で規定の電圧になる。侵入者は、短い期間でドア60又は窓70からの侵入を試みる場合が多い。侵入防止装置1によれば、侵入者の検出後、すぐにショックを与えることができる状態となる。また、第1電源装置12及び第2電源装置22は、ショックの付与に伴い電圧が低下する場合でも、短い期間で出力電圧を復帰させることができる。
【0045】
異常検知部55は、侵入防止装置1における各種の異常を検知する。例えば、監視カメラ30が故障したり破壊されたりするなど、動作しない場合に異常と判断する。異常検知部55が異常と判断することが、各種の異常を検知することに相当する。なお、異常検知部55は、侵入防止装置1以外の防犯装置の異常を検知してもよい。
【0046】
警報器関連制御部56は、異常検知部55が各種の異常を検知した場合に、警報器80を作動させる制御を行う。
【0047】
通信制御部57は、異常検知部55が各種の異常を検知した場合に、ネットワークを介して警備会社端末120に異常発生の情報を送信する制御を行う。また、監視カメラ30の撮影データを警備会社端末120に送信してもよく、更には、侵入防止装置1以外の防犯装置が取得した情報を送信してもよい。
【0048】
次に、侵入防止装置1の動作について説明する。
【0049】
侵入者は、建物100に侵入する場合、ドア60又は窓70に近づく。建物100が防護状態にある場合、基本的に、ドア60はドアノブ62の施錠機能によって閉鎖状態が維持された状態にあり、窓70はクレセント錠72によって閉鎖状態が維持された状態にある。また、機械警備が動作している。侵入者は、例えば、ドアノブ62を破壊するか或いはクレセント錠72付近を破壊するか、ドア60又は窓70をドア枠61又は窓枠71から外すために、破壊用具(例えば、バール又はピッキングツール)を持ってドア60又は窓70に近づく。
【0050】
侵入者がドア60又は窓70に近づき、監視カメラ30が侵入者を撮影した場合に、負電荷放射装置11が作動してマイナスイオンがシャワー空間に振りかけられる。また、正電荷発生装置21が作動してドアノブ62や窓枠71に正の電圧が印加される。
【0051】
侵入者がドア60或いは窓70に手が届く範囲にいるときに、侵入者自身又は侵入者が持っている用具(例えば、バール)にマイナスイオンが付着する。これにより、侵入者自身又は侵入者が持っている金属製の用具が負帯電する。例えば、侵入者或いは破壊用具は-1000V~-500Vの範囲で帯電する。
【0052】
そして、負に帯電した侵入者自身或いは侵入者が持っている金属製の用具がドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72等に触れたときに、ドア60又は窓70の一部に接触或いは近接するとき、侵入者自身或いは用具に蓄積された負の電荷が、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72に流れる。より詳細には、侵入者自身或いは用具に蓄積された負の電荷に起因する電流と、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72に印加された正の電圧に起因する電流とが流れる。これにより、侵入者に電気ショックが与えられる。
例えば、侵入者の身体に、0.5mA以下の電流が瞬間的に流れることで、侵入者に電気ショックが与えられる。流れる電流が、例えば、0.5mA以下であれば、侵入者にショックを与えるものの、侵入者に傷害を与えない。
【0053】
電気ショックを受けた侵入者は、ドア60又は窓70の破壊行動を躊躇する可能性が高い。侵入者は、破壊行動を直ちに中止するか、電気ショックを受けない方策を考えるか、或いは、別の侵入経路を探すことが考えられる。この結果、少なくとも侵入に要する時間が長くなる。例えば侵入者が建物100から引き上げる前に警備員や警察官が到着する可能性が増加する。少なくとも侵入に要する時間が長くなることによって、侵入者は、侵入を諦める可能性が高い。このように、侵入者がドア60又は窓70を破壊する前に、侵入者に対して電気ショックを与えることができるため、侵入を試みようとする侵入者の意欲を減退させることが可能になる。
【0054】
仮に、侵入者が、例えば、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、又は、クレセント錠72に触れず板ガラス70aのみを触って、板ガラス70aを破壊しても、侵入者は負帯電したままである。このため、侵入者が建物100への侵入する際、ドア枠61、ドアノブ62、窓枠71、クレセント錠72等に触れたときに、侵入者は電気ショックを受ける。
【0055】
ところで、防護領域への侵入防止が動作する条件は、例えば、ドア60又は窓70が施錠され、更に防護領域に対し侵入検知及び報知を行なう機械警備システムが有効に動作していることである。ただし、侵入防止装置が動作する条件はこれに限られず、例えば、単に、ドア60又は窓70が施錠されていることでもよい。また、侵入防止装置が動作する条件はこれに限られず、例えば、施錠がされなかったり、機械警備システムが存在しなかったりする場合でも、侵入防止装置1自体が動作していることでもよい。
【0056】
[作用効果]
以上説明したように構成された本実施形態によれば、次に記載する作用効果を奏する。
【0057】
本実施形態によれば、第1電源装置12から電圧を供給された負電荷放射装置11が、対象空間S1,S2に向けて負電荷(マイナスイオン)を放射する。このため、対象空間S1,S2にいる侵入者及び侵入者が持っている金属製の破壊用具(例えば、バール)は負帯電する。即ち、侵入者及び破壊用具に負電荷が蓄積する。侵入者がドア60又は窓70の一部に接触或いは近接するとき、負蓄積した電荷が、放電現象によって瞬間的にドア60又は窓70の一部と侵入者との間で移動する。つまり、侵入者がドア60又は窓70に接触或いは近接したとき、或いは侵入者が持っている金属製の破壊用具(例えば、バール)がドア60又は窓70に接触或いは近接したときに、放電現象が発生し、侵入者に電気ショックが与えられる。これにより、ドア60又は窓70を破壊する前に、侵入者に対して電気ショックを与えることができるため、侵入を試みようとする侵入者の意欲を減退させることが可能になる。
【0058】
以上の実施形態では、第1電源装置12及び第2電源装置22の組合せについて説明した。ただし、本発明は上記構成に限られない。例えば、ドア枠61、ドアノブ62、内枠70b、窓枠71、クレセント錠72等に対し、正極性の電圧を付与する第2電源装置22は備えられなくてもよい。この場合、第1電源装置12及び負電荷放射装置11による侵入者又は用具の帯電のみに起因して、電気ショックが生じる。この場合、ドア60又は窓70の特定箇所に配線する場合と比べて設置が容易である。また、ドア60又は窓70の美観を損ねたり、ドア60又は窓70に注目する侵入者に容易に発見されたりする事態が抑制される。
【0059】
ただし、本実施形態のように、ドア枠61、ドアノブ62、内枠70b、窓枠71、クレセント錠72等に対し、正極性の電圧を付与する第2電源装置22を備える場合、例えば、侵入者が導電性の履き物を履いているといった場合のように、負電荷放射装置11から放射された電荷が侵入者から大地に逃げやすい状況でも、より確実に電気ショックを与えることができる。
【0060】
また本実施形態によれば、侵入者接近検知部51が、侵入者の接近を検知した場合に、第1電源装置12を作動させることで、侵入者の侵入が確認された場合に第1電源装置12を作動させて侵入者を帯電させることが可能になる。
【0061】
また、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、侵入者を負帯電させ、ドア60又は窓70を正帯電させているが、侵入者を正帯電させ、ドア60又は窓70を負帯電させてもよい。具体的に、ドア60、ドア枠61及びドアノブ62が負帯電し易い材質である場合には、ドア60、ドア枠61及びドアノブ62を負帯電させて、ドア60近くにプラスイオンをシャワー空間に振りかけるようにして、侵入者を正帯電させてもよい。
【0062】
また上述した実施形態によれば、侵入者の接近の検知を、監視カメラ30の撮影データに基づいて行っているが、それに限らず、他の検知センサを用いてもよい。例えば、赤外線センサやサーモセンサを用いてもよく、更にはそれらを併用してもよい。
【0063】
また上述した実施形態において、
図1に示す例によれば、ドア60又は窓70に対して負電荷放射装置11をそれぞれ1つ設けているが、例えば、1つのドア60に負電荷放射装置11を複数設置してマイナスイオンを振りかけるシャワー空間を拡げてもよい。これにより、例えば、ドア60に複数人の侵入者が近づいた場合に、それぞれの侵入者を負帯電させることが可能になる。この場合、制御装置50は、監視カメラ30の撮影データに基づいて侵入者の人数や位置を判定し、その判定結果に基づいて駆動させる負電荷放射装置11を選択してもよい。
【0064】
また上述した実施形態においては、負電荷放射装置11のシャワー空間が、ドア60又は窓70に手が届く距離の範囲の対象空間S1,S2よりも大きいが、シャワー空間と対象空間S1,S2は一致してもよく、負電荷放射装置11によってマイナスイオンを振りかけ可能なシャワー空間の大きさは、特に限定されない。
【0065】
また、制御装置50が動作を制御する場合、例えば顔認識機能によって監視カメラ30で撮影された人物を認識し、関係者のデータベースと照合できた場合に負帯電装置10及び正帯電装置20の動作を停止してもよい。これにより、例えば、見回り警備員が巡回する場合に、負帯電装置10及び正帯電装置20を動作させることをできる。
【0066】
また、第2電源装置22が電圧を印加する部分は、材質によって使い分けてもよい。例えば、ドア枠61が導電性の金属であり、接地されている場合には正電荷発生装置21からドア枠61に電圧を供給しないように構成し、ドア枠61が導電性の金属であるがその周囲が絶縁部材によって覆われておりなおかつ接地されていない場合には、正電荷発生装置21から電圧を供給するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 侵入防止装置
10 負帯電装置
11 負電荷放射装置
12 第1電源装置
20 正帯電装置
21 正電荷発生装置
22 第2電源装置
30 監視カメラ
50 制御装置
51 侵入者接近検知部
52 機械警備制御部
53 正帯電制御部
54 負帯電制御部
55 異常検知部
56 警報器関連制御部
57 通信制御部
60 ドア
61 ドア枠
62 ドアノブ
70 窓
70a 板ガラス
70b 内枠
70c 操作部
71 窓枠
72 クレセント錠
80 警報器
100 建物
101 庇
102 壁