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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100421
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20230711BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20230711BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20230711BHJP
   H05B 45/345 20200101ALI20230711BHJP
   H05B 45/34 20200101ALI20230711BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B45/375
H05B45/38
H05B45/345
H05B45/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001098
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相場 明穂
(72)【発明者】
【氏名】阿野 康則
(72)【発明者】
【氏名】平本 雄也
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA10
3K273QA03
3K273QA07
3K273QA17
3K273QA19
3K273QA20
3K273RA02
3K273RA03
3K273RA12
3K273RA13
3K273SA08
3K273SA09
3K273SA32
3K273SA34
3K273SA35
3K273SA45
3K273SA46
3K273SA50
3K273SA53
3K273SA54
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA27
3K273TA46
3K273TA62
3K273UA17
3K273UA22
3K273UA27
3K273UA28
(57)【要約】
【課題】本開示は照明装置に関し、調光率変化量に対して短いフェード時間が設定された場合でも、光源に流れる電流がオーバーシュートせず、自然な調光を実現できる照明装置の提供を目的とする。
【解決手段】本開示の照明装置は、光源と、前記光源を制御する制御装置を備え、制御装置は、記憶部と制御回路を有し、記憶部は、ユーザにより指定された調光指令値及びフェード時間設定値を記憶し、制御回路は、記憶部に記憶された調光指令値に基づいてフェード時間制限を決定する処理と、フェード時間設定値とフェード時間制限を比較する処理と、比較で長い方の時間を、光源を制御するフェード時間に決定する処理とを実行するよう構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、記憶部と制御回路を有し、
前記記憶部は、
ユーザにより指定された調光指令値及びフェード時間設定値を記憶し、
前記制御回路は、
前記記憶部に記憶された前記調光指令値に基づいてフェード時間制限を算出する処理と、
前記フェード時間設定値と前記フェード時間制限を比較する処理と、
前記比較で長い方の時間を、前記光源を制御するフェード時間に決定する処理と
を実行するよう構成されている照明装置。
【請求項2】
前記フェード時間制限は、調光率変化量と正の相関関係にあることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記調光指令値及びフェード時間設定値が、
ユーザが操作する調光器から送信される請求項1または2に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源の調光率を変化させるフェード時間の設定を用いる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザ操作に基づいて連続的な調光を実現する照明システムが開示されている。照明器具が所定の時間でしか連続的な調光を行えないことから、所定時間に対して長いフェード時間が設定された場合、ステップ的で不自然な調光となる課題があった。そこで、所定時間より長いフェード時間が設定された場合、フェード時間及び調光率の変化幅を分割したフェードコマンドを作成することで、連続的で自然な調光を実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6478152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の方法は、照明器具の調光率変化量に対して長いフェード時間が設定された場合は良好な調光を実現するが、短いフェード時間が設定された場合は光源に流れる電流が一時的にオーバーシュートすることにより、不自然な調光となる課題を有していた。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するため、調光率変化量に対して短いフェード時間が設定された場合でも、光源に流れる電流がオーバーシュートせず、自然な調光を実現できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、光源と光源を制御する制御装置を備え、制御装置は記憶部と制御回路を有し、記憶部は、ユーザにより指定された調光指令値及びフェード時間設定値を記憶し、制御回路は、記憶部に記憶された調光指令値に基づいてフェード時間制限を決定する処理と、フェード時間設定値とフェード時間制限を比較する処理と、比較で長い方の時間を、光源を制御するフェード時間に決定する処理とを実行するよう構成されている照明装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様によれば、照明装置の調光率変化量に対して短いフェード時間が設定された場合でも、光源に流れる電流がオーバーシュートせず、自然な調光を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態1に係る回路図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る制御装置の処理を説明するフローチャートである。
図3】本開示の実施の形態1に係る調光率変化量に対する適切なフェード時間を比較したグラフである。
図4】本開示の実施の形態1に係る調光率変化量とフェード時間制限の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
図1は本開示の実施の形態1に係る回路図である。LED照明装置100はパネルを有する調光器61を備える。調光器61はユーザが入力した調光指令値及びフェード時間設定値を点灯装置12に送信する。点灯装置12は受信した情報により、複数のLEDを有するLEDモジュール11を制御する。本実施形態1ではLEDを光源とした照明装置を示すが、他の種類の光源を用いても良い。
【0010】
点灯装置12は入力フィルタ回路1を有する。入力フィルタ回路1は、過電流を保護するためのヒューズ25と、交流用のコンデンサ26と、交流を直流に変換するダイオードブリッジ27を備える。ダイオードブリッジ27の出力は高電位側が直流電源回路3に接続され、低電位側が接地用端子に接続される。
【0011】
また点灯装置12は入力電圧検出回路2を有する。入力電圧検出回路2は、直列に接続された抵抗21と抵抗22から構成される。入力電圧検出回路2は、直流電源回路3が有するコンデンサ31と並列に接続される。抵抗21と抵抗22の分圧値は制御装置50に伝達され、これにより制御装置50は入力電圧を検出する。
【0012】
更に点灯装置12は直流電源回路3を有する。直流電源回路3は、商用電源から供給された電力を、バックコンバータ回路4に適した電圧に変換する。直流電源回路3ではダイオードブリッジ27の出力がコンデンサ31と並列に接続される。コンデンサ31の正極にはインダクタ33の一端が接続され、コンデンサ31の負極は接地用端子に接続される。インダクタ33の他端にはスイッチング素子32の第一端子及びダイオード34のアノードが接続される。ダイオード34のカソードには電解コンデンサ35の正極が接続され、電解コンデンサ35の負極は接地用端子に接続される。
【0013】
スイッチング素子32は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。スイッチング素子32がMOSFETの場合、第一端子はドレイン端子、第二端子はソース端子、制御端子はゲート端子である。スイッチング素子32では第一端子がインダクタ33、第二端子が接地用端子、制御端子が制御回路30に接続される。
【0014】
制御回路30はスイッチング制御用のドライバである。制御回路30は、直流電源回路3の出力電圧に基づいた制御装置50からの信号を受けて、スイッチング素子32を駆動させる。
【0015】
抵抗36及び抵抗37は直流電源回路3の出力端に設けられ、直流電源回路3の出力電圧検出に用いられる。分圧した電圧が入力されると、制御装置50がそれに基づき、直流電源回路3の出力電圧が一定となるようにスイッチング素子32をオンオフする。
【0016】
また点灯装置12はバックコンバータ回路4を有する。バックコンバータ回路4では、直流電源回路3の電解コンデンサ35の正極にスイッチング素子41の第一端子が接続され、スイッチング素子41の第二端子にダイオード42のカソード及びコンデンサ43の正極が接続される。コンデンサ43の負極にはセンス抵抗44の一端が接続され、センス抵抗44の他端及びダイオード42のアノードには接地用端子が接続される。
【0017】
スイッチング素子41は例えばMOSFETであり、この場合第一端子はドレイン端子、第二端子はソース端子、制御端子はゲート端子である。スイッチング素子41では第一端子が電解コンデンサ35の正極、第二端子が接地用端子、制御端子が制御回路40に接続される。
【0018】
センス抵抗44はLEDモジュール11に流れるLED電流の検出に用いられる。まずセンス抵抗44からのLED電流に対応した検出電圧が、制御回路40に入力される。制御回路40はその検出電圧に基づき、LEDモジュール11に流れる電流が一定電流となるようにスイッチング素子41をオンオフする。またセンス抵抗44からの電圧は制御装置50にも入力され、制御装置50はこの検出電圧に基づいて電流異常を検出する。
【0019】
抵抗45及び抵抗46はバックコンバータ回路4の出力端に設けられており、LEDモジュール11の電圧検出に用いられる。分圧した電圧が制御装置50に入力されると、制御装置50はこの検出電圧に基づき、LEDモジュール11の接続有無や電圧異常を検出する。
【0020】
制御装置50は、デジタル電源用制御装置として提供される公知のマイコンで構成できる他、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置で構成することもできる。例えば図1の制御装置50は、記憶部、処理装置、A/D変換回路及び制御回路を備えている。
【0021】
記憶部は不揮発性メモリを有し、処理装置で実行すべき演算プログラム及び演算に用いられる各種データを記憶する。回路内部から記憶部に入力されるのは以下の電圧値である。(1)抵抗36及び抵抗37で分圧された直流電源回路3の出力電圧に応じた電圧、(2)抵抗45及び46で分圧された直流電源回路3の出力電圧に応じた電圧、(3)抵抗21及び抵抗22で分圧された交流電源を整流した電圧に応じた電圧。これらの電圧値はA/D変換回路でデジタル値に変換され、それを用いて処理装置により演算処理が行われる。また回路外部からのデータの書き込み及び読み出しが行われる他、後述する通り本実施形態のフェード時間の設定にも関わる。
【0022】
制御回路は、制御回路30及び制御回路40を制御するPWM信号を出力する。また制御装置50がスイッチング素子32のオンオフにより行っている定電圧制御は、予め記憶部に設定された目標電圧に一致するよう調整されている。一方制御装置50がスイッチング素子41のオンオフにより行っている定電流制御は、調光器61からの入力値に基づいて調整されている。まず調光器61から調光インターフェイス回路62を介して調光指令値及びフェード時間設定値が入力されると、この調光指令値に基づいた目標電流値が決定される。そしてLEDモジュール11に流れる電流がこの目標電流値に一致するよう、センス抵抗44で検知した電流に基づいてスイッチング素子41のオンオフを調整する。なお現在の調光率から目標の調光率に移行するまでの時間は、上記で入力されたフェード時間設定値に基づき、後述するフェード時間の設定方法により決定する。
【0023】
本実施形態におけるフェード時間の設定方法について説明する。調光率の変化量に対して短いフェード時間を設定すると、LEDモジュール11に流れる電流が一時的にオーバーシュートを起こすため、光源がフラッシュしているように見える課題がある。このオーバーシュートは、制御装置50が行う定電流フィードバックがフェード時間に追従しきれないため発生する。つまり、定電流フィードバックの応答を速くすればこのオーバーシュートを防止することができる。
【0024】
しかし定電流フィードバックの応答を速くすると、動作周波数に近くなるため位相余裕がなくなり、不安定な動作になりやすい。また外来ノイズ等にも敏感に反応してしまうようになるため、ちらつきが発生しやすい。以上により、応答を速くするには限界がある。
【0025】
そこで本開示では定電流フィードバックの応答性は変化させず、フェード時間に制限をかけるため、フェード時間制限の機能を使用する。フェード時間制限は点灯装置12毎に個別に設定する時間制限であり、この時間よりも短い時間をフェード時間に使用した場合、電流がオーバーシュートする可能性が高くなる。フェード時間制限の機能は、例えば調光器61から極端に短いフェード時間が送信された場合に、LEDモジュール11に流れる電流がオーバーシュートしなくなるよう、フェード時間を一定時間より長いフェード時間に変換するものである。
【0026】
上述のフェード時間制限をFade_Time_Limとする。調光指令値をDIM_Goal、現在の調光率をDIM_Nowとすると、それぞれの関係は下記の通りとなる。
【0027】
Fade_Time_Lim=R×|DIM_Goal-DIM_Now|…(数1)
【0028】
ここで係数Rは、点灯装置12の定電流フィードバック設定値等の要因から決定される変数とする。一例として、事前に点灯装置12の調光率変化幅及びフェード時間を変化させた際の電流値をグラフ化し、その波形を見て適切な係数Rを決定する方法が挙げられる。この場合フェード時間が適切だと判断する基準は下記の三点であり、三点全て満たす必要がある機種もあれば、(1)のみ満たせば十分である機種も存在する。(1)電流が各部品の定格を越えない、(2)電流が全光時の値を越えない、(3)滑らかに動作する。
【0029】
図2は、本開示の実施の形態1に係る制御装置の処理を説明するフローチャートである。制御装置50は図2に示すフローチャートに従い、点灯装置12のフェード時間を決定する。
【0030】
まず制御装置50は、ステップ100で調光器からDIM_Goal及びFade_Timeを受信する。ここで言うFade_Timeは、調光器61から送信されたフェード時間設定値を指す。このDIM_Goal及びFade_Timeは制御装置50の記憶部に記憶される。
【0031】
次に制御装置50は、ステップ102でFade_Time_Limを算出する。Fade_Time_LimはDIM_Goalや係数Rに基づき算出できる。DIM_Goalはステップ100で制御装置50の記憶部に記憶されている。係数Rは事前に点灯装置毎に決定された上で調光器61より入力済、または最初から制御装置50の記憶部に記憶されている。
【0032】
続けて、ステップ104でFade_TimeとFade_Time_Limの比較を行う。Fade_Timeの方が長い場合はステップ106に進み、Fade_Timeを実際のフェード時間に決定する。Fade_Timeの方が短い場合はステップ108に進み、Fade_Time_Limを実際のフェード時間に決定する。
【0033】
上記の処理により、実際のフェード時間がフェード時間制限、つまりオーバーシュートする可能性が高くなる一定時間よりも長い時間に制限される。そのため調光器61から送信されるフェード時間設定値が極端に短かったとしても、定電流フィードバックの応答性を変化させたり部品を追加したりすることなく、オーバーシュートを防止することができる。
【0034】
図3は、本開示の実施の形態1に係る調光率変化量に対する適切なフェード時間を比較したグラフである。横軸は時間を示す。縦軸はLEDに流れる電流と、それに伴い変動する調光率を示す。
【0035】
三つのグラフはそれぞれ調光率の変化量が異なり、調光率変化量A、B、Cの順に変化量が小さくなっていく。それぞれの変化量に対し、オーバーシュートを起こさない適切なフェード時間がフェード時間制限a、b、cとなる。
【0036】
前述した通り、本開示の照明装置は定電流フィードバックにより調光率を制御している。そのため調光率を変化させる際の電流は、変化量が大きいほどオーバーシュートしやすく、変化量が小さいほどオーバーシュートしにくい。つまり調光率変化量Aのように変化量が大きい場合、より長いフェード時間制限aを用いる必要があり、調光率変化量Cのように変化量が小さい場合、より短いフェード時間制限cでも十分となる。
【0037】
なお本開示におけるオーバーシュートの有無は官能評価により決定している。図3の三つのグラフはオーバーシュートの振れ幅が異なるが、いずれも官能評価では適切な範囲内と判断されている。
【0038】
図4は、本開示の実施の形態1に係る調光率変化量とフェード時間制限の関係を示すグラフである。上述した通り、定電流フィードバックの性質により、調光率変化量とフェード時間制限の長さは正の相関関係を持つ。本実施形態1の場合は横軸をフェード時間制限、縦軸を調光率変化量とすると、一次関数のグラフとなる。なお、定電流フィードバック以外にオーバーシュートを起こす要因がある場合は、他のグラフとなることもある。
【符号の説明】
【0039】
11 LEDモジュール
50 制御装置
61 調光器
図1
図2
図3
図4