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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100422
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001102
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】日野 正登
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137AB05
2H137AB06
2H137CC28
2H137DA13
2H137DA39
(57)【要約】
【課題】長尺化した外形を有する場合でも係合解除を適切に行うことができる光トランシーバを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光トランシーバは、第1方向に沿って装置に挿入されて装置と係合する光トランシーバである。光トランシーバは、装置と係合している状態において、装置の外部に露出する露出部と、装置の内部に収容される本体部と、を有する筐体と、第1方向に回動動作が可能となるように露出部に取り付けられた回動部と、第1方向に沿って移動が可能となるように露出部に取り付けられた移動部と、を備える。露出部は、回動動作の中心となる中心軸を有する。移動部は、回動部に係合する外端に可動軸を有する。回動部は、中心軸と係合する第1円形部と、可動軸と係合する第2円形部と、第1円形部と第2円形部とを互いに接続する直線部と、を含む貫通孔を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って装置に挿入されて前記装置と係合する光トランシーバであって、
前記装置と係合している状態において、前記装置の外部に露出する露出部と、前記装置の内部に収容される本体部と、を有する筐体と、
前記第1方向に回動動作が可能となるように前記露出部に取り付けられた回動部と、
前記第1方向に沿って移動が可能となるように前記露出部に取り付けられた移動部と、
を備え、
前記露出部は、前記回動動作の中心となる中心軸を有し、
前記移動部は、前記回動部に係合する外端に可動軸を有し、
前記回動部は、前記中心軸と係合する第1円形部と、前記可動軸と係合する第2円形部と、前記第1円形部と前記第2円形部とを互いに接続する直線部と、を含む貫通孔を有する、
光トランシーバ。
【請求項2】
前記可動軸は、前記回動部の回動動作によって前記第1方向に沿って移動する、
請求項1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記移動部は、前記外端から前記第1方向に延在し、前記本体部まで延びた位置に内端を有し、
前記内端は、前記回動動作に応じて前記装置のケージタブを移動させる、
請求項1又は請求項2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記露出部の中心を通ると共に前記第1方向に沿って延びる基準線から前記可動軸までの距離は、前記基準線から前記中心軸までの距離よりも長い、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記中心軸の直径は前記可動軸の直径より大きく、
前記第1円形部の直径は前記第2円形部の直径よりも大きい、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
前記露出部は、前記回動部の回動動作によって移動した前記可動軸が当接する凸状のストッパを有し、
前記露出部の中心とを通ると共に前記第1方向に沿って延びる基準線から前記可動軸の中心までの距離は、前記基準線から前記本体部の端部までの距離よりも短い、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示には、光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベース部と、導電パネル部と、回路基板と、ケーブルと、ガスケットと、装置に対する抜去機構とを備えたエレクトロニックモジュールが記載されている。回路基板は、ベース部と導電パネル部の間に収容されている。抜去機構は、スライド部材と、アクチュエータ部材と、締結部材と、引き抜き部材とを有する。引き抜き部材が引かれると、アクチュエータ部材が回転すると共にスライド部材が移動する。スライド部材の移動に伴ってエレクトロニックモジュールが装置から抜去される。
【0003】
特許文献2には、ホスト装置のケージに挿抜可能なプラガブル光送受信モジュールが記載されている。プラガブル光送受信モジュールは、本体部と、前面ベースと、抜去バーと、スライダとを備える。抜去バーは、抜去バーの端部に位置する把持部と、抜去バーの把持部とは反対側の端部に位置するカム板とを有する。スライダは、スライダの端部に位置する解除突起と、スライダの解除突起とは反対側の端部に位置するカム突起とを有する。抜去バーが回動するとカム板がカム突起を押すことによってスライダが移動し、スライダの移動によってケージに対するプラガブル光送受信モジュールの係合が解除される。
【0004】
特許文献3には、ホストケージのラッチに係合するラッチ機構を備えた光モジュールが記載されている。ラッチ機構は、回動操作が可能なベイルと、ベイルの回動操作に伴って移動するラッチキーとを有する。ベイルの端部には、ラッチキーに接触するカム面を有するシャフトが形成されている。ベイルが回動操作されると、カム面がラッチキーを押圧する。ラッチキーの押圧に伴ってラッチキーがスライドし、ラッチキーがラッチを押し下げることにより、ラッチに対する光モジュールの係合が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0091467号明細書
【特許文献2】特開2016-186542号公報
【特許文献3】米国特許第6929403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光トランシーバの業界標準規格を定めたMSA(Multi Source Agreement)は、光トランシーバの外形について規定している。MSAの規格の種類によっては、光トランシーバの外形が長尺化することがある。長尺化した外形を有する光トランシーバでは、ホストシステム等の装置のケージに対する係合解除を適切に行えることが求められる。
【0007】
本開示は、長尺化した外形を有する場合でも係合解除を適切に行うことができる光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る光トランシーバは、第1方向に沿って装置に挿入されて装置と係合する光トランシーバである。光トランシーバは、装置と係合している状態において、装置の外部に露出する露出部と、装置の内部に収容される本体部と、を有する筐体と、第1方向に回動動作が可能となるように露出部に取り付けられた回動部と、第1方向に沿って移動が可能となるように露出部に取り付けられた移動部と、を備える。露出部は、回動動作の中心となる中心軸を有する。移動部は、回動部に係合する外端に可動軸を有する。回動部は、中心軸と係合する第1円形部と、可動軸と係合する第2円形部と、第1円形部と第2円形部とを互いに接続する直線部と、を含む貫通孔を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、長尺化した外形を有する場合でも係合解除を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る光トランシーバを示す側面図である。
図2】実施形態に係る光トランシーバの回動部を示す斜視図である。
図3図1の光トランシーバを示す正面図である。
図4図2の回動部を示す側面図である。
図5】実施形態に係る光トランシーバの移動部及び回動部を示す斜視図である。
図6図1の光トランシーバの筐体を示す縦断面図である。
図7図4の回動部を回動させている状態を示す側面図である。
図8図7の状態における移動部を示す斜視図である。
図9図7の状態における移動部を示す縦断面図である。
図10図7の回動部を更に回動させている状態を示す側面図である。
図11図10の状態における移動部を示す斜視図である。
図12図10の状態における移動部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光トランシーバの実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光トランシーバは、第1方向に沿って装置に挿入されて装置と係合する光トランシーバである。光トランシーバは、装置と係合している状態において、装置の外部に露出する露出部と、装置の内部に収容される本体部と、を有する筐体と、第1方向に回動動作が可能となるように露出部に取り付けられた回動部と、第1方向に沿って移動が可能となるように露出部に取り付けられた移動部と、を備える。露出部は、回動動作の中心となる中心軸を有する。移動部は、回動部に係合する外端に可動軸を有する。回動部は、中心軸と係合する第1円形部と、可動軸と係合する第2円形部と、第1円形部と第2円形部とを互いに接続する直線部と、を含む貫通孔を有する。
【0012】
この光トランシーバでは、筐体が露出部と本体部とを有し、露出部に回動部と移動部が取り付けられている。露出部は、回動部の回動動作の中心となる中心軸を有する。移動部は、回動部に係合する可動軸を有する。回動部は貫通孔を有する。貫通孔は、露出部の中心軸に係合する第1円形部と、移動部の可動軸が係合する第2円形部と、第1円形部及び第2円形部を互いに接続する直線部とを有する。回動部が中心軸を中心として回動すると、移動部の可動軸が第2円形部と直線部との間で移動すると共に筐体の本体部側に移動する。回動部の回動動作に伴って移動部が本体部側に移動し、移動部がケージタブに当接してケージタブを押し下げる。その結果、ケージタブの係合を解除することができる。従って、露出部が第1方向に長く延びる長尺化した外形を有する場合であっても、回動部の回動、及び移動部の移動によって係合解除を適切に行うことができる。
【0013】
可動軸は、回動部の回動動作によって第1方向に沿って移動してもよい。この場合、回動部の回動動作に伴って可動軸が第1方向に沿って移動することにより、移動部をスムーズに筐体の本体部側に移動できる。
【0014】
移動部は、外端から第1方向に延在し、本体部まで延びた位置に内端を有してもよい。内端は、回動動作に応じて装置のケージタブを移動させてもよい。この場合、移動部の外端とは反対側に位置する内端によって係合解除を適切に行うことができる。
【0015】
露出部の中心を通ると共に第1方向に沿って延びる基準線から可動軸までの距離は、基準線から中心軸までの距離よりも長くてもよい。この場合、基準線から可動軸までの距離が基準線から中心軸までの距離よりも長いことにより、移動部の可動軸を基準線から離れた位置で第1方向に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0016】
中心軸の直径は可動軸の直径より大きくてもよい。第1円形部の直径は第2円形部の直径よりも大きくてもよい。この場合、中心軸を中心とした回動部の回動、及び移動部の第1方向への移動をよりスムーズに行うことができる。
【0017】
露出部は、回動部の回動動作によって移動した可動軸が当接する凸状のストッパを有してもよい。露出部の中心とを通ると共に第1方向に沿って延びる基準線から可動軸の中心までの距離は、基準線から本体部の端部までの距離よりも短くてもよい。移動した可動軸が当接するストッパが設けられることにより、ケージタブのバネ力で可動軸が戻ることを抑制できる。基準線から可動軸の中心までの距離が基準線から本体部の端部までの距離よりも短いことにより、移動部の移動をより安定させることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光トランシーバの具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、実施形態に係る光トランシーバ1を示す側面図である。光トランシーバ1は、例えば、SFP-DD(Small Factor Pluggable Double Density)規格に準拠している。ここでいう規格は、例えば、業界規格の一つであるMSA(Multi Source Agreement)である。SFP-DD規格の光トランシーバ1は、長尺版外形を呈する。光トランシーバ1は、一例として、SFP-DD規格のType2モジュールである。すなわち、光トランシーバ1の長手方向である第1方向D1の長さは、SFP規格の光トランシーバの長手方向の長さよりも長い。
【0020】
光トランシーバ1は、金属製の筐体2と、筐体2の一端に位置するレセプタクル4と、筐体2に回動可能に取り付けられるベイル10(回動部)と、筐体2に移動可能に取り付けられるスライダ20(移動部)とを備える。筐体2は、例えば、上筐体6及び下筐体7を含む。なお、以下の説明では、光トランシーバ1のレセプタクル4を有する側を前、前側又は前方、レセプタクル4を有する側の反対側を後、後側又は後方と称することがある。下筐体7から上筐体6を見た方向を上、上側又は上方、上筐体6から下筐体7を見た方向を下、下側又は下方と称することがある。しかしながら、これらの方向は説明の便宜のためのものであり、物の配置位置等を限定するものではない。
【0021】
図2は、光トランシーバ1の前側の部分を拡大した斜視図である。図1及び図2に示されるように、筐体2は、第1方向D1、光トランシーバ1の幅方向である第2方向D2、及び光トランシーバ1の高さ方向である第3方向D3に延びている。第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3は、それぞれ互いに直交している。筐体2は、直方体の形状を呈し、例えば、第1方向D1に垂直な平面で筐体2を切断したときの筐体2の断面の外形は長方形状である。光トランシーバ1は、第1方向D1に沿って、ホストシステム(装置)に設けられたケージに挿抜(挿入及び抜去)される。
【0022】
筐体2は、光トランシーバ1の後側がケージに挿入されてホストシステムと係合している状態においてホストシステムの外部に露出する露出部2Aと、ホストシステムの内部に収容される本体部2Bとを有する。例えば、第1方向D1において、露出部2Aは、光トランシーバ1の前側の一端に位置し、本体部2Bは、露出部2Aよりも後方に位置する。露出部2A及び本体部2Bは直方体状を呈する。露出部2Aの第1方向D1の長さは本体部2Bの第1方向D1の長さよりも短く、露出部2Aの第3方向D3の長さは本体部2Bの第3方向D3の長さよりも長い。例えば、本体部2Bの第3方向D3の長さは、ケージの第3方向D3の長さより小さく、露出部2Aの第3方向D3の長さはケージの第3方向D3の長さより大きい。ところで、上述の長尺化とは、露出部2Aの第1方向D1の長さが長くなることを表している。例えば、SFP規格では、露出部2Aの第1方向D1の長さは、最大10mmと規定されている。また、SFP-DD規格では、露出部2Aの第1方向D1の長さは、最大25mmと規定されている。それらにより、露出部2Aの第1方向D1の長さが10mmよりも大きい外形を長尺版外形ということがある。また、露出部2Aの第1方向D1の長さが10mm以下の外形を短尺版外形あるいは通常版外形ということがある。図1は、長尺版外形の一例を示している。図2は、通常版外形の一例を示している。後述する図3から図12は、説明の都合上、いずれも通常版外形の例を示している。長尺化によって、ベイル10は第1方向D1において本体部2Bから離れた位置に配置される。したがって、長尺化によってベイル10と本体部2Bとの間の距離は大きくなる。
【0023】
図3は、光トランシーバ1を前方から第1方向D1に沿って見た正面図である。図2及び図3に示されるように、筐体2の露出部2Aは、本体部2Bより上方に突出する第1段部2bと、本体部2Bより下方に突出する第2段部2cと、第1段部2bにおいて下方に窪むと共にレセプタクル4の内側を画成する一対の穴部2dとを有する。一対の穴部2dは、第2方向D2に沿って並んでいる。穴部2dの底部2rにおける筐体2の肉厚Tは、筐体2の剛性及び製造性を考慮して定められ、例えば、1mm程度である。肉厚Tが大きいと、筐体2の剛性は強くなるが、筐体2の内部空間の容積が小さくなり、筐体2の内部に収容できる部品が制限される虞がある。他方、肉厚Tが小さいと、筐体2の内部に収容できる部品の制約が緩和されるが、筐体が外力によって変形する虞が生じる。
【0024】
露出部2Aは、それぞれ第2方向D2に沿って外側を向くと共に互いに第2方向D2に沿って並ぶ一対の側面2fを有する。各側面2fの前側には第2方向D2に沿って内側に凹む窪み2gが形成されている。露出部2Aは第2方向D2に沿って並ぶ一対の窪み2gを有し、一対の窪み2gのそれぞれにベイル10が入り込む。露出部2Aは、窪み2gにおいて第2方向D2に沿って外側に突出する中心軸2hを有する。中心軸2hにはベイル10が係合する。
【0025】
ベイル10は、中心軸2hに係合すると共に中心軸2hを中心として回動するように構成されている。露出部2Aは、窪み2gを画成する段差2tにおいて後方に窪む凹部2jを有する。凹部2jは、ベイル10の回動動作によってベイル10の一部が入り込む部位である。ベイル10は、中心軸2hが嵌合する貫通孔11を有する。貫通孔11は、ベイル10において第2方向D2に沿って貫通している。貫通孔11の構成については後に詳述する。ベイル10は、それぞれ貫通孔11を有すると共に互いに第2方向D2に沿って並ぶ一対の第1延在部12と、一対の第1延在部12を互いに接続する第2延在部13とを有する。第2延在部13は、第1延在部12が延在する方向と交差する方向に延在する。例えば、第1延在部12が第3方向D3に沿って延在しているとき、第2延在部13は、第2方向D2に沿って延在している。第2延在部13は、例えば、第2方向D2の中央を含む部分において第2方向D2と交差する方向に突出する突出部13bを有する。
【0026】
図4は、筐体2及びベイル10を第2方向D2に沿って見た側面図である。図5は、筐体2、ベイル10及びスライダ20を示す斜視図である。ベイル10は、中心軸2hを中心として前方且つ下方に回動動作する。図4及び図5は、ベイル10が回動動作していない状態を示している。回動動作は、光トランシーバ1のケージに対する係合を解除して光トランシーバ1をケージから抜去するときに行われる。図4及び図5は、光トランシーバ1がケージと係合している状態あるいは光トランシーバがケージに挿入されていない状態を示している。第1延在部12は、第2延在部13から中心軸2hに向かって延びている。第1延在部12は、第2延在部13とは反対側の端部に第1延在部12の幅が広がるように拡張する突出部12bを有する。例えば、突出部12bは第1延在部12の端部において円弧状を呈し、突出部12bには貫通孔11の一部が形成されている。
【0027】
スライダ20は、ベイル10の回動動作に伴って第1方向D1に沿って後方に移動し、後方への移動に伴ってホストシステムのケージに対する光トランシーバ1の係合を解除する。スライダ20は、第2方向D2に沿って延びると共に一対の第1延在部12のそれぞれの貫通孔11に入り込む可動軸21と、可動軸21から後方に延びると共に回動動作に伴って後方に移動してケージに対する光トランシーバ1の係合を解除する解除部22とを有する。一対の第1延在部12のそれぞれの貫通孔11は、互いに一対の貫通孔11として構成されている。
【0028】
可動軸21はベイル10に係合する外端21Aを有し、例えば、可動軸21は外端21Aを構成している。可動軸21は、例えば、円柱状を呈する。可動軸21の第2方向D2の一端部及び他端部は、一対の貫通孔11にそれぞれ挿通されている。解除部22は、可動軸21の第2方向D2の中央を含む領域において板状を呈する。解除部22は、例えば、可動軸21が接続された板状部22bと、板状部22bの可動軸21とは反対側の端部に位置するテーパ部22cとを有する。スライダ20は外端21Aよりも第1方向D1に沿って後方に内端21Bを有し、例えば、テーパ部22cは内端21Bを構成している。スライダ20は、外端21Aから第1方向D1に延在し、本体部2Bまで延びた位置に内端21Bを有する。
【0029】
例えば、第2段部2cは、第1方向D1に貫通する孔部2kを有し、孔部2kに板状部22bが通されている。孔部2kにおいて板状部22bは第1方向D1に沿って移動自在とされている。一例として、孔部2kは矩形状を呈する。解除部22は、第2方向D2に沿って並ぶ一対のテーパ部22cを有し、各テーパ部22cは板状部22bの後端に形成されている。テーパ部22cは、第1方向D1及び第3方向D3の双方に対して傾斜する傾斜面22dを有する。
【0030】
第2段部2cの後方には第3方向D3に沿って下向きに突出する凸部2pが形成されており、凸部2pの第2方向D2の両側において一対のテーパ部22cが回動動作に伴って第1方向D1に沿って移動する。ケージに光トランシーバ1が係合しているときに、凸部2pの第2方向D2の両側には当該ケージのケージタブC(図6等参照)が位置する。テーパ部22cが後方に移動すると、傾斜面22dがケージタブCに当接する。この当接によってケージタブCが第3方向D3に沿って下方へ押し下げられる(図5では押し上げられる)ことにより、ケージに対する光トランシーバ1の係合が解除される。
【0031】
以下では、ベイル10、スライダ20、及び筐体2の各部における寸法の設計の例について説明する。露出部2Aの第3方向における中心を通ると共に第1方向D1に沿って延びる基準線Lから可動軸21までの距離K1は、基準線Lから中心軸2hまでの距離K2よりも長い。ベイル10が前方且つ下方に回動動作していないとき(図4の状態、以下では単に「回動動作していないとき」と称することがある)、及びベイル10が前方且つ下方に最も回動動作したとき(図10の状態、以下では単に「最も回動動作したとき」と称することがある)において、中心軸2hの中心から可動軸21の中心までの第3方向D3の距離K3は、例えば、1.70mmである。
【0032】
筐体2の第2段部2cの後端から、ベイル10が回動動作していないときにおけるスライダ20(解除部22のテーパ部22c)の後端までの第1方向D1における距離K4は、例えば、最長0.85mmである。また、中心軸2hの中心から第2段部2cの後端までの第1方向D1における距離K5は、スライダ20の第1方向D1における全長と合わせて任意に設定される。ベイル10が回動動作していないとき、及びベイル10が最も回動動作したときにおいて、基準線Lから可動軸21の中心までの距離K6は、基準線Lから本体部2Bの第3方向D3における端部(下端)までの距離K7よりも短い。ここで、可動軸21の中心と本体部2Bの端部(下端)との第3方向D3における距離(距離K7と距離K6との差)は、筐体2の剛性及び製造性を考慮して定められ、例えば、1mm程度である。また、筐体2の第1段部2b及び第2段部2cよりも前側の部分、及びベイル10の回動動作の軌跡における第3方向D3の長さの上限は、MSAによって規定されている。
【0033】
筐体2の中心軸2h及び可動軸21は、ベイル10の貫通孔11に係合している。貫通孔11は、中心軸2hが係合する第1円形部11bと、可動軸21が係合する第2円形部11cと、第1円形部11b及び第2円形部11cを互いに接続する直線部11dとを有する。第1円形部11b及び第2円形部11cは、直線部11dの一端及び他端のそれぞれに形成されている。すなわち、直線部11dは、第1円形部11bと第2円形部11cとの間に位置している。第1円形部11bは、直線部11dの一端において円形状に拡張している。例えば、第2円形部11cの直径は。直線部11dの幅と同一である。この場合、第2円形部11cは直線部11dの他端において拡張していない。よって、可動軸21は、貫通孔11に係合した状態で第2円形部11cと直線部11dの間で移動可能とされている。
【0034】
例えば、第1円形部11bの円形部分の直径は第2円形部11cの半円部分の直径よりも大きい。第2方向D2に沿って見た第1円形部11bの外形は、第2方向D2に沿って見た中心軸2hの外形と同一である。なお、第1円形部11b及び中心軸2hは、中心軸2hが第1円形部11bに嵌合できるように構成されている。第2方向D2に沿って見た第2円形部11cの外形は、第2方向D2に沿って見た可動軸21の外形と同一である。なお、第2円形部11c及び可動軸21は、可動軸21が第2円形部11cに嵌合できるように構成されている。従って、中心軸2hの直径は可動軸21の直径よりも嵌合可能な程度に大きい。
【0035】
図6は、第1方向D1及び第3方向D3の双方に延在する平面によって光トランシーバ1を切断したときの断面図である。前述したようにベイル10の前方且つ下方への回動動作によってスライダ20は後方に移動し、解除部22がケージタブCに当接する。露出部2Aは、ベイル10の回動動作によって移動した可動軸21が当接する凸状のストッパ2sを有する。
【0036】
ストッパ2sは下方に突出する湾曲面を有し、湾曲面によって可動軸が第1方向D1に沿って後方へ移動するのを阻止しようとする抵抗力が働く。ベイル10の回動動作に伴って当該抵抗力より大きい力で押されることにより当該湾曲面を可動軸21が後方に乗り越える。可動軸21がストッパ2sを乗り越えて後方へ移動して、ベイル10は最も回動した状態となる。ベイル10が最も回動した状態から回動していない状態に戻るときにも、可動軸21が前方へ移動するのを阻止しようとする抵抗力が働く。このように、ストッパ2sは、後方に乗り越えた可動軸21が前方に戻ることを抑制するために設けられる。スライダ20が後方に移動すると、解除部22がケージタブCに当接し、ケージタブCのバネ力でスライダ20を前方に押し戻す力が生じうる。この押し戻す力でスライダ20が前方に移動しないように当該抵抗力によってストッパ2sが可動軸21の前方への移動を阻止することとなる。これにより、光トランシーバ1は、ベイル10が最も回動した状態を維持することができる。
【0037】
次に、ケージに対する光トランシーバ1の係合の解除について説明する。まず、光トランシーバ1がケージに係合している状態において、可動軸21は貫通孔11の第2円形部11cに位置している(図4図5及び図6を参照)。この状態でベイル10が前方且つ下方に回動動作すると、図7図8及び図9に示されるように、中心軸2hを中心としてベイル10が回動動作すると共に、貫通孔11は中心軸2hを中心として回転して、貫通孔11の回転に伴って可動軸21が第1方向D1に沿って後方に移動する。このとき、貫通孔11が回転する際に、可動軸21は、第2円形部11cから直線部11dに移動すると共に直線部11dにおいて第1円形部11bに向かって移動する。
【0038】
更にベイル10が前方且つ下方に回動動作すると、図10図11及び図12に示されるように、可動軸21が第1方向D1に沿って更に後方に移動すると共にストッパ2sを後方に乗り越える。このとき、可動軸21は、直線部11dから第2円形部11cに移動する。そして、解除部22の後端に位置するテーパ部22cがケージタブCに当接し、傾斜面22dがケージタブCを下方へ押し下げることによって光トランシーバ1に対するケージタブCの係合が解除される。それにより、ユーザーは、ベイル10を前方へ引くことで光トランシーバ1をケージ(不図示)から抜去することができる。図10図11及び図12は、ベイル10が最も回動した状態を示している。上述のケージタブCの押し戻す力によってスライダ20が図10図11及び図12に示される位置よりも前方へ移動すると、ケージタブCの係合の解除が不完全となり、光トランシーバ1をケージから円滑に引き抜くことができないか、引き抜くことができなくなる虞がある。
【0039】
ケージタブCにテーパ部22cが当接するときに、テーパ部22cがケージタブCから前方へのバネ力を受けることとなる。しかしながら、前方へのバネ力を受けても可動軸21がストッパ2sに当接して、それによる抵抗力によって可動軸21の前方への移動が阻止されるので、意図せずスライダ20が前方に移動することを抑制できる。なお、第2段部2cの後端から、最も回動動作したときにおけるスライダ20(解除部22のテーパ部22c)の後端までの距離K8は、例えば、2.95±0.25mmである。ストッパ2sによって、スライダ20が距離K8を安定して維持することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る光トランシーバ1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。光トランシーバ1では、筐体2が露出部2Aと本体部2Bとを有し、露出部2Aにベイル10とスライダ20が取り付けられている。露出部2Aは、ベイル10の回動動作の中心となる中心軸2hを有する。スライダ20は、ベイル10に係合する可動軸21を有する。ベイル10は貫通孔11を有する。貫通孔11は、露出部2Aの中心軸2hに係合する第1円形部11bと、スライダ20の可動軸21が係合する第2円形部11cと、第1円形部11b及び第2円形部11cを互いに接続する直線部11dとを有する。
【0041】
ベイル10が中心軸2hを中心として回動すると、貫通孔11の回転に伴ってスライダ20の可動軸21が第2円形部11cと直線部11dとの間で移動すると共に解除部22が筐体2の本体部2B側(後側)に移動する。ベイル10の回動動作に伴ってスライダ20が本体部2B側に移動し、スライダ20のテーパ部22cがケージタブCに当接してケージタブCを押し下げる。その結果、ケージタブCの係合を解除することができる。従って、露出部2Aが第1方向D1に長く延びる長尺化した外形を有する場合であっても、長尺化に応じて解除部22の長さを適当な大きさに設定することによってベイル10の回動、及びスライダ20の移動によって係合解除を適切に行うことができる。
【0042】
可動軸21は、ベイル10の回動動作によって第1方向D1に沿って移動してもよい。この場合、ベイル10の回動動作に伴って可動軸21が第1方向D1に沿って移動することにより、スライダ20をスムーズに筐体2の本体部2B側に移動できる。従って、ベイル10とスライダ20との連携によって、ベイル10の回転動作がスライダ20の第1方向D1に沿った直線動作に変換されるため、長尺化によってベイル10の位置が本体部2Bから離れてもケージタブCの係合を解除することができる。
【0043】
スライダ20は、第1方向D1において外端21Aよりも後方に内端21Bを有してもよい。内端21Bは、回動動作に応じてホストシステム(装置)のケージタブCを移動させてもよい。この場合、スライダ20の外端21Aよりも後方に位置する内端21Bによって係合解除を適切に行うことができる。例えば、長尺化によってベイル10と本体部2Bとの間の距離が大きくなった場合でも、スライダ20の第1方向D1の長さを大きくすることによって、ベイル10の回動動作によってケージタブCを下方に押し下げて係合を解除することができる。
【0044】
露出部2Aの中心を通ると共に第1方向D1に沿って延びる基準線Lから可動軸21までの距離K1は、基準線Lから中心軸2hまでの距離K2よりも長くてもよい。この場合、基準線Lから可動軸21までの距離K1が基準線Lから中心軸2hまでの距離K2よりも長いことにより、スライダ20の可動軸21を基準線Lから離れた位置で第1方向D1に沿ってよりスムーズに移動させることができる。
【0045】
中心軸2hの直径は可動軸21の直径より大きくてもよい。第1円形部11bの円形部分の直径は第2円形部11cの半円部分の直径よりも大きくてもよい。この場合、中心軸2hを中心としたベイル10の回動、及びスライダ20の第1方向D1への移動をよりスムーズに行うことができる。
【0046】
露出部2Aは、ベイル10の回動動作によって移動した可動軸21が当接する凸状のストッパ2sを有してもよい。ベイル10が回動動作していないとき及びベイル10が最も回動動作したとき、露出部2Aの中心を通ると共に第1方向D1に沿って延びる基準線Lから可動軸21の中心までの距離K6は、基準線Lから本体部2Bの端部までの距離K7よりも短くてもよい。移動した可動軸21が当接するストッパ2sが設けられることにより、ケージタブCのバネ力で可動軸21がベイル10が最も回動したときの位置から前方へ戻ることを抑制できる。基準線Lから可動軸21の中心までの距離K6が基準線Lから本体部2Bの端部までの距離K7よりも短いことにより、スライダ20の移動を安定させることができる。
【0047】
以上、本開示に係る光トランシーバの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、光トランシーバの各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0048】
例えば、前述の実施形態では、筐体2の中心軸2hの直径がスライダ20の可動軸21の直径よりも大きい例について説明した。しかしながら、筐体の中心軸の直径は、スライダの可動軸の直径より小さくてもよく、これらの直径の大小関係は特に限定されない。また、前述した実施形態では、光トランシーバ1がSFP-DD規格のType2モジュールである例について説明した。しかしながら、本開示に係る光トランシーバは、SFP-DD規格以外の規格に準拠した光トランシーバであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…光トランシーバ
2…筐体
2A…露出部
2B…本体部
2b…第1段部
2c…第2段部
2d…穴部
2f…側面
2g…窪み
2h…中心軸
2j…凹部
2k…孔部
2p…凸部
2r…底部
2s…ストッパ
2t…段差
4…レセプタクル
6…上筐体
7…下筐体
10…ベイル(回動部)
11…貫通孔
11b…第1円形部
11c…第2円形部
11d…直線部
12…第1延在部
12b…突出部
13…第2延在部
13b…突出部
20…スライダ
21…可動軸
21A…外端
21B…内端
22…解除部
22b…板状部
22c…テーパ部
22d…傾斜面
C…ケージタブ
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
K1,K2,K3,K4,K5,K6,K7,K8…距離
L…基準線
T…肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12