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特開2023-100454着用具、および身体に電流を供給する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100454
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】着用具、および身体に電流を供給する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/06 20060101AFI20230711BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20230711BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20230711BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20230711BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20230711BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230711BHJP
   H02N 1/04 20060101ALI20230711BHJP
   A61F 5/02 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
A61F13/06 A
A61N1/36
A61N1/04
A41D13/12 136
A41D13/06 105
A41D13/05 156
H02N1/04
A61F5/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001151
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
【テーマコード(参考)】
3B011
4C053
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA09
3B011AA12
3B011AA13
3B011AB09
3B011AC08
3B011AC17
3B011AC22
4C053BB23
4C053JJ01
4C053JJ11
4C053JJ24
4C053JJ27
4C098AA10
(57)【要約】
【課題】身体に装着して適切に身体に電流を流すことができる着用具を実現する。
【解決手段】着用具(1)は、身体に装着される。着用具は、着用具における身体の動きに応じて伸縮する部分に設けられた、摩擦帯電で発生する静電気によって発電する摩擦発電機(10)と、摩擦発電機からの電流を身体に流すために皮膚に接触する複数の接触電極(11)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に装着される着用具であって、
前記着用具における前記身体の動きに応じて伸縮する部分に設けられた、摩擦帯電で発生する静電気によって発電する摩擦発電機と、
前記摩擦発電機からの電流を前記身体に流すために直接的あるいは間接的に皮膚に接触する複数の接触電極とを備える、着用具。
【請求項2】
前記摩擦発電機と前記接触電極との間に、前記摩擦発電機に対するインピーダンス整合回路を備える、請求項1に記載の着用具。
【請求項3】
前記インピーダンス整合回路は、前記摩擦発電機の内部インピーダンスに対して、前記身体に流れる電流の経路のインピーダンスを整合させる回路である、請求項2に記載の着用具。
【請求項4】
前記身体に流れる電流の経路のインピーダンスは調整可能である、請求項3に記載の着用具。
【請求項5】
支持具と、
前記支持具に対して分離可能であり、前記支持具を前記身体に固定する固定具とを備え、
前記摩擦発電機は前記固定具に設けられており、
前記複数の接触電極は、前記支持具に設けられており、
前記支持具に前記固定具を取り付けた状態において、前記摩擦発電機は前記複数の接触電極に電気的に接続されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項6】
前記支持具に前記固定具を取り付けた状態において、前記固定具は身体に直接接触しないよう構成されている、請求項5に記載の着用具。
【請求項7】
前記摩擦発電機は、水分の浸入を妨げるように密封されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項8】
前記着用具は、前記身体の関節部分に装着されるサポータである、請求項1から7のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項9】
前記摩擦発電機は、
正に帯電する正極摩擦層と、前記正極摩擦層と対向する負極摩擦層とを有し、
前記正極摩擦層と前記負極摩擦層との接触面積が変化することで帯電し、発電する請求項1から8のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項10】
前記正極摩擦層は、導電ファイバーを正に帯電する樹脂で被覆した撚糸で構成されている請求項9に記載の着用具。
【請求項11】
前記負極摩擦層は、導電ファイバーを負に帯電する樹脂で被覆した撚糸で構成されている請求項9または10に記載の着用具。
【請求項12】
前記摩擦発電機は、導電ファイバーを正に帯電する樹脂で被覆した正極撚糸と、導電ファイバーを負に帯電する樹脂で被覆した負極撚糸とが編まれた織物である請求項1から8のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項13】
前記複数の接触電極、および前記複数の接触電極と前記摩擦発電機とを導通する配線は、導電ファイバーを含む布部材で構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の着用具。
【請求項14】
身体に装着される着用具を用いて前記身体に電流を供給する方法であって、
前記着用具における前記身体の動きに応じて伸縮する部分に設けられた摩擦発電機によって摩擦帯電で発生する静電気により発電するステップと、
直接的あるいは間接的に皮膚に接触する複数の接触電極を介して、前記摩擦発電機から電流を前記身体に流すステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着用具、および身体に電流を供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動後の筋肉の鎮痛またはコンディショニングのために、マイクロカレントを体表面に流し電気刺激を与えるマイクロカレント療法が知られている。しかし、マイクロカレント療法には、電流を流すための電源が必要であり、電源コードまたは電池によって電源を確保するため、長時間に渡る利用が難しかった。
【0003】
特許文献1には、熱電対または圧電素子を用いて発電し、微弱電流の電気的刺激を体表面に加える健康サポータが記載されている。
【0004】
特許文献2には、発電装置を膝用サポータに取り付けた構成が記載されている。
【0005】
非特許文献1には、靴底に圧電素子を組み込み、歩行によって発電した電流によって足裏に電気刺激を与えること、および、これにより疲労軽減できる可能性があることが記載されている。
【0006】
非特許文献2には、摩擦発電機をモルモットに装着し、発生した電場を傷口に印加することで傷の治癒が促進されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-054329号公報
【特許文献2】特開2016-220191号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mi-Suk Cho et al., J. Phys. Ther. Sci., 19(2007), 165-170
【非特許文献2】Yin Long et al., ACS Nano 2018, 12, 12533-12540
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1または非特許文献1に示すような熱電対または圧電素子を用いた発電では、十分な発電量が得られないという問題がある。また、セラミック製の圧電素子を用いると、サポータを装着して歩いた、または走ったとき、伸縮で圧電素子が破損する可能性がある。樹脂製の圧電素子を用いた場合、圧電特性がよくないため十分な発電量が得られない。また、特許文献2の構成は、発電を行うことが目的であり、身体に電流を流すものではない。さらに、非特許文献2の構成では十分な発電量が得られない。
【0010】
本発明の一態様は、身体に装着して適切に身体に電流を流すことができる着用具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る着用具は、身体に装着される着用具であって、前記着用具における前記身体の動きに応じて加圧・除圧される部分(伸縮する部分)に設けられた、摩擦帯電で発生する静電気によって発電する摩擦発電機と、前記摩擦発電機からの電流を前記身体に流すために直接的あるいは間接的に皮膚に接触する複数の接触電極とを備える。
【0012】
前記着用具は、前記摩擦発電機と前記接触電極との間に、前記摩擦発電機に対するインピーダンス整合回路を備える構成であってもよい。
【0013】
前記インピーダンス整合回路は、前記摩擦発電機の内部インピーダンスに対して、前記身体に流れる電流の経路のインピーダンスを整合させる回路であってもよい。
【0014】
前記身体に流れる電流の経路のインピーダンスは調整可能であってもよい。
【0015】
前記着用具は、支持具と、前記支持具に対して分離可能であり、前記支持具を前記身体に固定する固定具とを備え、前記摩擦発電機は前記固定具に設けられており、前記複数の接触電極は、前記支持具に設けられており、前記支持具に前記固定具を取り付けた状態において、前記摩擦発電機は前記複数の接触電極に電気的に接続されている構成であってもよい。
【0016】
前記支持具に前記固定具を取り付けた状態において、前記固定具は身体に直接接触しないよう構成されていてもよい。
【0017】
前記摩擦発電機は、水分の浸入を妨げるように密封されている構成であってもよい。
【0018】
前記着用具は、前記身体の関節部分に装着されるサポータであってもよい。
【0019】
前記摩擦発電機は、正に帯電する正極摩擦層と、前記正極摩擦層と対向する負極摩擦層とを有し、前記正極摩擦層と前記負極摩擦層との接触面積が変化することで帯電し、発電する構成であってもよい。
【0020】
前記正極摩擦層は、導電ファイバーを正に帯電する樹脂で被覆した撚糸で構成されていてもよい。
【0021】
前記負極摩擦層は、導電ファイバーを負に帯電する樹脂で被覆した撚糸で構成されていてもよい。
【0022】
前記摩擦発電機は、導電ファイバーを正に帯電する樹脂で被覆した正極撚糸と、導電ファイバーを負に帯電する樹脂で被覆した負極撚糸とが編まれた織物であってもよい。
【0023】
前記複数の接触電極、および前記複数の接触電極と前記摩擦発電機とを導通する配線は、導電ファイバーを含む布部材で構成されていてもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る方法は、身体に装着される着用具を用いて前記身体に電流を供給する方法であって、前記着用具における前記身体の動きに応じて加圧・除圧される部分(伸縮する部分)に設けられた摩擦発電機によって摩擦帯電で発生する静電気により発電するステップと、直接的あるいは間接的に皮膚に接触する複数の接触電極を介して、前記摩擦発電機から電流を前記身体に流すステップとを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、身体に装着して適切に身体に電流を流すことができる着用具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る着用具の構成を模式的に示す平面図である。
図2】本実施形態に係る着用具を膝に装着した状態を模式的に示す図である。
図3】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の構成の一例を示す断面図である。
図4】本実施の形態の着用具を膝に装着し歩いた場合の摩擦発電機の出力電圧を示す図である。
図5】本実施の形態の着用具を膝に装着し走った場合の摩擦発電機の出力電圧を示す図である。
図6】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の構成の一例を示す断面図である。
図7】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の構成の一例を示す断面図である。
図8】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の正極撚糸の構成を示す図である。
図9】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の負極撚糸の構成を示す図である。
図10】本実施の形態の着用具における摩擦発電機の構成を示す図である。
図11】本実施形態の着用具の構成を模式的に示す平面図である。
図12】本実施形態の着用具を膝に装着した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る着用具の構成を模式的に示す平面図である。図2は、着用具を膝に装着した状態を模式的に示す図である。着用具1は、人の身体の膝4に装着され、膝関節をサポートするサポータである。着用具1は、本体2、複数の固定部3、摩擦発電機10、複数の接触電極11、複数の配線12、およびインピーダンス整合回路13を備える。本体2は、関節部分に巻かれることができるよう帯状に形成されている。例えば、本体2は、伸縮性を有する布部材で構成される。固定部3は、本体2の一端に配置されている。固定部3は、例えば面ファスナーである。固定部3は、本体2の他端に付着することで、着用具1を身体に固定する。
【0028】
摩擦発電機10は、摩擦帯電で発生する静電気によって発電する摩擦発電素子を含む。摩擦発電機10は、着用具1における身体の動きに応じて伸縮する部分(例えば関節に対応する部分)に設けられている。例えば、摩擦発電機10は、膝裏に対向する本体2の横方向における中央部に配置されている。摩擦発電機10は、身体の動きに応じて伸縮することで摩擦帯電をし、発電する。
【0029】
接触電極11は、身体の皮膚に接触するために少なくとも一部が外部に露出していることが好ましい。複数(ここでは2つ)の接触電極11は、それぞれ配線12を介して摩擦発電機10に接続されている。着用具1が身体に装着された状態において、複数の接触電極11は、摩擦発電機10からの電流を身体に流すために皮膚に接触する。本実施形態では、正極および陽極の2つの接触電極11は、膝4の上の両側面または膝4の下の両側面に接触する。
【0030】
なお、接触電極11は、直接的に皮膚に接触してもよいし、薄い布または導電シートなどを介して、間接的に皮膚に接触してもよい。
【0031】
配線12は、例えば導電ファイバーであってもよい。この場合、配線12と本体2とを簡易に一体の布部材として製作できる。
【0032】
インピーダンス整合回路13は、身体に流れる電流iの経路に設けられる。具体的には、インピーダンス整合回路13は、摩擦発電機10と接触電極11との間に(摩擦発電機10から接触電極11までの経路(配線12)の途中に)、摩擦発電機10に対して直列に設けられる。インピーダンス整合回路13は、摩擦発電機10の内部インピーダンスに対して、身体に流れる電流の経路(身体を含む経路)のインピーダンスを整合させる回路である。インピーダンス整合回路13は、例えば抵抗素子を含む。
【0033】
摩擦発電機10の内部インピーダンス(抵抗値)は、典型的には10MΩ程度である。一方、皮膚の接触抵抗を含む身体のインピーダンス(すなわち身体を通る2つの接触電極11間のインピーダンス)は、例えば数kΩ~300kΩ程度である。摩擦発電機10の内部インピーダンスは、身体のインピーダンスの10倍より大きい(数十倍以上である)。このようにインピーダンスに著しい差があると、摩擦発電機10の発電出力は低くなってしまう。
【0034】
そこで、インピーダンス整合回路13が、身体に流れる電流の経路のインピーダンスを摩擦発電機10の内部インピーダンスに(同程度のオーダーに)近づけるために設けられる。例えば、インピーダンス整合回路13のインピーダンスは、摩擦発電機10の内部インピーダンスの1/10以上、10倍以下であってもよい。インピーダンス整合回路13のインピーダンスは、より好ましくは、該内部インピーダンスの1/5以上、5倍以下であってもよく、さらに好ましくは、該内部インピーダンスの1/2以上、2倍以下であってもよい。典型的には、インピーダンス整合回路13のインピーダンスは、摩擦発電機10の内部インピーダンスと略同じであってもよい。また、インピーダンス整合回路13のインピーダンスは調整可能であってもよい。これにより、身体に流れる電流の経路のインピーダンスが調整可能になる。
【0035】
摩擦発電機10の内部インピーダンスと、身体を経由する摩擦発電機10の正極から負極までの経路のインピーダンスとが同程度であれば、摩擦発電機10の出力電圧ならびに出力電流が大きくなる。また、皮膚の接触抵抗は、湿度および発汗の有無等に応じて変化するが、インピーダンス整合回路13が存在することで、身体に流れる電流の経路のインピーダンスの変化を抑制し、出力電流の変化を小さくすることができる。すなわち、本実施形態に係る着用具1によれば、皮膚の表面抵抗が多少変化しても、その影響を受けにくい電流(マイクロカレント)を身体に流すことができる。また、各人による皮膚の表面抵抗の違い(個人差)にも対応できる。
【0036】
なお、摩擦発電機10、複数の配線12およびインピーダンス整合回路13は、身体に触れられないように、本体2を構成する布部材の中に収納されていてもよい。また、摩擦発電機10の内部に水分(湿気)が侵入すると発電効率が落ちるため、水分の浸入を妨げるように摩擦発電機10は防水部材(防水フィルム等)で密封されていることが好ましい。摩擦発電機10が密封されていることにより、発汗等の影響を防ぎ、安定した出力電圧を得ることができる。また、摩擦発電機10が密封されていることにより、着用具1を洗濯することができる。なお、身体の複数箇所に電流を流すために、複数の接触電極11は、3つ以上の接触電極を含んでもよい。
【0037】
(摩擦発電機の構成例1)
図3は、摩擦発電機の構成の一例を示す断面図である。図3は、摩擦発電機10の一部の断面を模式的に示す。摩擦発電機10は、第1防水フィルム20a、第1導電性不織布21a、負極摩擦層23、正極摩擦層22、第2導電性不織布21b、および第2防水フィルム20bを備える。第1防水フィルム20a上に第1導電性不織布21aが接着されている。第1導電性不織布21a上に負極摩擦層23が導電性接着剤で接着されている。負極摩擦層23に対向するように正極摩擦層22が配置されている。正極摩擦層22は第2導電性不織布21b上に導電性接着剤で接着されている。第2導電性不織布21bは第2防水フィルム20b上に接着されている。第1防水フィルム20aおよび第2防水フィルム20bの周囲は防水テープ(図示せず)で密封かつ固定されている。複数の配線12は、それぞれ第1導電性不織布21aおよび第2導電性不織布21bに接続されている。摩擦発電機10は、正極摩擦層22と負極摩擦層23との接触面積が変化することで帯電し、発電する。
【0038】
以下の材質および寸法は例示であり、これに限定されない。第1防水フィルム20aおよび第2防水フィルム20bは、例えば厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。第1防水フィルム20aおよび第2防水フィルム20bの表面は、例えば高さ1mmの凹凸を有するようエンボス加工がされている。正極摩擦層22は、例えば厚さ15μmのポリアミドフィルムである。負極摩擦層23は、例えば厚さ40μmのポーラスポリイミドフィルムである。正極摩擦層22と負極摩擦層23とは、帯電列において互いに離れた材質で構成されていればよい。必要に応じて、出力電圧が大きくなる材質の組み合わせを用いることができる。
【0039】
図4は、膝に装着された着用具1の摩擦発電機10の歩いた時における出力電圧を示す図である。図5は、膝に装着された着用具1の摩擦発電機10の走った時における出力電圧を示す図である。図4、5において、縦軸は出力電圧[V]、横軸は時間[s]である。摩擦発電機10の構成は、上述した構成例1のものである。摩擦発電機10の大きさは、70mm×70mmであった。インピーダンス整合回路13のインピーダンスは、10MΩであった。
【0040】
歩いた場合、出力電圧のピークは約50Vであった。歩いた場合のピーク電圧に対応する出力電流は5μAであった。走った場合、出力電圧のピークは約90Vであった。走った場合のピーク電圧に対応する出力電流は9μAであった。このように、身体の動きに応じて摩擦発電機10が摩擦帯電で発生する静電気により発電する。そして、摩擦発電機10からのマイクロカレントが、接触電極11を介して身体に流れ、電気刺激を与えることが確認できた。
【0041】
図6は、摩擦発電機の構成の他の例を示す断面図である。図6は、摩擦発電機10bの一部の断面を模式的に示す。摩擦発電機10bは、図3に示す摩擦発電機10の第1導電性不織布21a、負極摩擦層23、正極摩擦層22、および第2導電性不織布21bの組を複数(ここでは2つ)有する。1つの組の第2導電性不織布21bと他の組の第1導電性不織布21aとの間には絶縁層24が設けられている。複数の第1導電性不織布21aは、互いに電気的に接続されている(図示せず)。複数の第2導電性不織布21bは、互いに電気的に接続されている(図示せず)。このように、摩擦発電機において、正極摩擦層22および負極摩擦層23の組を複数並列に接続することで、出力電圧および出力電流を増加させることが可能である。また、正極摩擦層22および負極摩擦層23の組を複数重ねて配置することで、摩擦発電機の面積の増加を抑えることができる。
【0042】
(効果)
摩擦発電機10は柔軟性を有するため、着用具1を膝等の屈曲または伸縮が大きい関節部分に装着した場合でも、着用具1および摩擦発電機10は破損しにくい。また、着用具1は、インピーダンス整合回路13を備えるため、実効的な大きさの出力電圧および出力電流を供給することができる。それゆえ、着用具1は、効果的に身体に電流(マイクロカレント)を与えることができる。よって、皮膚の表面抵抗が多少変化しても、その影響を受けにくい電流を身体に流すことができる。また、着用具1は、各人による皮膚の表面抵抗の違い(個人差)にも対応できる。さらに、摩擦発電機10は、着用具1の身体の動きに応じて伸縮する部分に設けられるため、運動の激しさに応じた大きさの電流を身体に与えることができる。そのため、着用具1は、電池、圧電素子、または特殊な回路などを用いることなく、運動による疲労を効率的に軽減することができる。このように、着用具1は、安価な構成で、かつ電源などを必要としない、疲労軽減に効果的なサポータを提供することができる。また、従来のマイクロカレントを用いた治療は、運動後のコンディショニングケアに用いられる場合が多いが、本実施形態の着用具は軽量に構成することができ、運動しながらでも使用することができる。すなわち、本実施形態の着用具を運動用のサポータとして用いることも可能である。
【0043】
(摩擦発電機の構成例2)
図7は、摩擦発電機の構成の一例を示す断面図である。図7は、摩擦発電機10aの一部の断面を模式的に示す。図8は、本実施形態の着用具における摩擦発電機の正極撚糸33の構成を示す図である。図8の(a)は正極撚糸33の断面図、図8の(b)は正極撚糸33の一部断面斜視図、図8の(c)は編まれた正極撚糸33の上面図を示している。図9は、本実施形態の着用具における摩擦発電機の負極撚糸36の構成を示す図である。図9の(a)は負極撚糸36の断面図、図9の(b)は負極撚糸36の一部断面斜視図、図9の(c)は編まれた負極撚糸36の上面図を示している。摩擦発電機10aは、互いに重ねられた正極摩擦層31および負極摩擦層32を備える。摩擦発電機10aは、さらに防水フィルムで挟まれていてもよい。
【0044】
正極摩擦層31は、正極撚糸33を用いて編まれた織物(布部材)である。正極撚糸33は、導電ファイバー34と正に帯電しやすい樹脂、例えば複数のポリアミド糸35とを備える。導電ファイバー34の周囲を3層のポリアミド糸35が覆っている。ポリアミド糸35は撚られている。
【0045】
負極摩擦層32は、負極撚糸36を用いて編まれた織物(布部材)である。負極撚糸36は、導電ファイバー37と負に帯電しやすい樹脂、例えば複数のポリエステル糸38とを備える。導電ファイバー37の周囲を負に帯電しやすい3層のポリエステル糸38が覆っている。ポリエステル糸38は撚られている。
【0046】
複数の導電ファイバー34は、一方の接触電極11(接触電極11a)に接続され、複数の導電ファイバー37は、(インピーダンス整合回路13を介して)他方の接触電極11(接触電極11b)に接続される(図1参照)。複数の導電ファイバー34、37を接触電極11に接続する配線12が設けられていてもよいし、配線自体が導電ファイバー34、37で構成されてもよい。また、接触電極11が導電ファイバー34、37を含む布部材で構成されてもよい。配線12と接触電極11とが、導電ファイバー34、37を含む布部材で構成されてもよい。このような構成では、摩擦発電機10を構成する多くの部材を布部材で構成することができる。そのため、身体への装着性および使用感がよい着用具を提供することができる。
【0047】
なお、正極撚糸33および負極撚糸36の一方は、導電ファイバーだけで構成されてもよい。
【0048】
図10に示すように、また、縦糸に正極撚糸33を用い、横糸に負極撚糸36を用いることで、正極撚糸33と負極撚糸36を用いて編まれた織物を摩擦発電機とすることもできる。
【0049】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0050】
図11は、本実施形態の着用具の構成を模式的に示す平面図である。図12は、本実施形態の着用具を膝に装着した状態を模式的に示す図である。着用具5は、人の身体の膝4に装着され、膝関節をサポートするサポータである。着用具5は、支持具6と固定具7とを備える。支持具6は、身体に直接接触するように装着される(巻かれる)サポータである。固定具7は、支持具6に対して分離可能であり、支持具6を身体により強固に固定する。固定具7は、支持具6の外側に取り付けられ、支持具6を締めるサポータベルトである。
【0051】
支持具6は、本体2、複数の固定部3、複数の接触電極11、複数の支持具端子14、および複数の配線16を備える。複数の支持具端子14は、それぞれ対応する接触電極11に配線16を介して電気的に接続されている。また、複数の支持具端子14は、本体2において複数の接触電極11が露出している側(身体側)とは反対側(外側)に露出している。複数の支持具端子14は、身体側には露出しておらず、身体には直接接触しない。配線16は、例えば導電ファイバーであってもよい。
【0052】
固定具7は、固定具本体8、複数の固定部3、摩擦発電機10、複数の配線12、インピーダンス整合回路13、および複数の固定具端子15を備える。固定具本体8は、弾性および伸縮性を有する布部材で構成される。固定具本体8は、帯状の部材である。複数の固定部3は、固定具本体8の長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。固定具7の固定部3は、本体2の外側に付着することで、固定具7を本体2に固定する。これにより、固定具7は、支持具6を締めることで、支持具6を身体に強固に固定する。
【0053】
摩擦発電機10は、固定具7における身体の動きに応じて伸縮する部分に設けられている。複数の固定具端子15は、固定具本体8における支持具6側(身体側)に露出している。複数の固定具端子15は、複数の支持具端子14に対応する位置にそれぞれ形成されている。複数の固定具端子15は、それぞれ配線12を介して摩擦発電機10に接続されている。インピーダンス整合回路13は、摩擦発電機10と固定具端子15との間に、摩擦発電機10に対して直列に設けられる。
【0054】
着用具5が身体に装着された状態(固定具7を支持具6に取り付けた状態)において、複数の固定具端子15は、複数の支持具端子14にそれぞれ接触し、複数の接触電極11は、摩擦発電機10からの電流を身体に流すために皮膚に接触する。このように、着用具5が身体に装着された状態において、摩擦発電機10は、複数の接触電極11に電気的に接続されている。摩擦発電機10によって生成された出力電流は、固定具端子15および支持具端子14を介して、接触電極11から身体に流れる。
【0055】
一方で、固定具7を支持具6に取り付けて、着用具5が身体に装着された状態において、固定具7は身体に直接接触しなくてもよい。それゆえ、摩擦発電機10が発汗等の影響を受けにくい。
【0056】
摩擦発電機10は、水分の浸入を妨げるように防水部材(防水フィルム等)で密封されていることが好ましい。なお、インピーダンス整合回路13は、支持具6における支持具端子14と接触電極11との間(配線16の途中)に設けられてもよい。
【0057】
着用具5は、支持具6と固定具7とに分離できるため、摩擦発電機10を含まず身体と直接接触する支持具6のみを容易に洗濯することができる。そのため、水分の浸入による摩擦発電機10の性能低下を防止することができる。
【0058】
なお、本体2は、例えば弾性および伸縮性を有する筒状のサポータであってもよい。固定具7は、筒状のサポータを部分的に締める構成であってもよい。
【0059】
以上では、膝用サポータを例に挙げて説明したが、本発明の一態様の着用具は、肘または首まわりなど、他の部位に装着される形状であってもよい。摩擦発電機10および複数の接触電極11の位置も、部位に応じて適宜位置を変更すればよい。例えば、2つ以上の正極の接触電極11と2つ以上の負極の接触電極11とを、適宜配置してもよい。
【0060】
また、本発明の一態様の着用具は、疲労軽減用だけではなく、傷または怪我の治療に用いることもできる。着用具は、絆創膏であってもよく、傷口に貼り付け可能なように、本体には接着剤が塗布されていてもよい。着用具は、包袋であってもよく、身体に巻いて固定できる構造であってもよい。本発明の一態様の着用具は軽量であり、着用したまま動くことが可能であるので、治療用のサポータとして用いることにより、治療とリハビリテーションを同時に行うことができる。
【0061】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1、5 着用具
2 本体
3 固定部
6 支持具
7 固定具
8 固定具本体
10、10a 摩擦発電機
11、11a、11b 接触電極
12、16 配線
13 インピーダンス整合回路
14 支持具端子
15 固定具端子
20a 第1防水フィルム
20b 第2防水フィルム
21a 第1導電性不織布
21b 第2導電性不織布
21c 第3導電性不織布
22、31 正極摩擦層
23、32 負極摩擦層
24 絶縁層
33 正極撚糸
34、37 導電ファイバー
35 ポリアミド糸
36 負極撚糸
38 ポリエステル糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12