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特開2023-100456モータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置
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  • 特開-モータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100456
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】モータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20230711BHJP
   E04H 6/18 20060101ALI20230711BHJP
   E04H 6/06 20060101ALI20230711BHJP
   H02P 3/06 20060101ALI20230711BHJP
   H02P 3/12 20060101ALI20230711BHJP
   H02P 3/16 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/18 603
E04H6/06 W
H02P3/06 B
H02P3/12 F
H02P3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001153
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 淳
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530CE02
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しながら、非常電源によるモータ及びブレーキの駆動時に、非常電源に対する損傷を防止する。
【解決手段】通常時は商用電源32を、停電時は非常電源34を駆動電源30として、モータ40及びブレーキ42を駆動し、駆動電源30とモータ40との間を第1の開閉器12を介して接続すると共に、駆動電源30とブレーキ42との間を第2の開閉器14を介して接続し、駆動電源30が非常電源34のとき、第1の開閉器12と第2の開閉器14とを別個に制御して、ブレーキ42を開放した状態でモータ40を駆動することで物体を上昇させ、ブレーキ42を作動させた状態でモータ40を駆動することで物体を下降させる。これにより、モータ40が電力回生状態になることはないため、制動抵抗器などを要することなくコストを抑制しながら、非常電源34に対する損傷を防止することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを、通常時は商用電源を駆動電源として駆動し、停電時は非常電源を前記駆動電源として駆動する方法であって、
前記駆動電源と前記モータとの間を第1の開閉器を介して接続すると共に、前記駆動電源と前記ブレーキとの間を第2の開閉器を介して接続し、
前記駆動電源が前記非常電源のとき、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とを別個に制御して、前記ブレーキを開放した状態で前記モータを駆動することで前記物体を上昇させ、前記ブレーキを作動させた状態で前記モータを駆動することで前記物体を下降させることを特徴とするモータ及びブレーキの駆動方法。
【請求項2】
前記物体として、前記立体駐車装置において車両を収容するパレットを昇降させることを特徴とする請求項1記載のモータ及びブレーキの駆動方法。
【請求項3】
立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを、通常時は商用電源を駆動電源として駆動し、停電時は非常電源を前記駆動電源として駆動する装置であって、
前記駆動電源と前記モータとの間の配線上に設置される第1の開閉器と、前記駆動電源と前記ブレーキとの間の配線上に設置される第2の開閉器と、前記第1の開閉器及び前記第2の開閉器を制御する制御部と、を含み、
該制御部は、前記駆動電源が前記非常電源のとき、前記ブレーキが開放された状態で前記モータが駆動されることで前記物体が上昇し、前記ブレーキが作動した状態で前記モータが駆動されることで前記物体が下降するように、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とを別個に制御することを特徴とするモータ及びブレーキの駆動装置。
【請求項4】
前記物体が、前記立体駐車装置において車両を収容するパレットであることを特徴とする請求項3記載のモータ及びブレーキの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図4に示されるような立体駐車装置70では、車両を収容するパレット72(72a~72i)や車両を入出庫する高さ位置にある開閉ゲート76(76a~76c)などの物体の各々を、昇降させるための複数のモータ及びブレーキが設置されている。これらのモータ及びブレーキは、通常は商用電源からの電力により駆動される。しかしながら、停電時であっても車両を出庫したい、といった使用者のニーズに応えるために、停電時にモータ及びブレーキを駆動するための非常電源を備えた立体駐車装置が存在する。なお、特許文献1には、停電時に情報処理装置や通信装置などに対して電力を供給するための非常用電源を備えた駐車装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-074781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図4の立体駐車装置70が上記のような非常電源を備えている場合について言及すると、例えばパレット72を昇降させるためのモータ及びブレーキは、停電時に非常電源から電力を受ける。このとき、パレット72の下降時には、パレット72の自重と車両の重さとにより下降するが、これによってモータが電力回生状態になると、モータで発生した電力により非常電源にダメージが与えられる虞がある。これを回避するために、インバータ制御や制動抵抗器などを利用して、回生電力が非常電源へ流れないようにすることも考えられるが、それらのためにコストが大幅に高くなってしまう。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コストを抑制しながら、非常電源によるモータ及びブレーキの駆動時に、非常電源に対する損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを、通常時は商用電源を駆動電源として駆動し、停電時は非常電源を前記駆動電源として駆動する方法であって、前記駆動電源と前記モータとの間を第1の開閉器を介して接続すると共に、前記駆動電源と前記ブレーキとの間を第2の開閉器を介して接続し、前記駆動電源が前記非常電源のとき、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とを別個に制御して、前記ブレーキを開放した状態で前記モータを駆動することで前記物体を上昇させ、前記ブレーキを作動させた状態で前記モータを駆動することで前記物体を下降させるモータ及びブレーキの駆動方法。
【0007】
本項に記載のモータ及びブレーキの駆動方法は、立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを対象とするものである。具体的には、これらのモータ及びブレーキを、通常時は商用電源を駆動電源として駆動し、商用電源が使用できない停電時は、駆動電源を非常電源へと切り替えて駆動する。また、駆動電源とモータとの間、すなわち、商用電源と非常電源との接続の切替部分とモータとの間に、第1の開閉器を設置して、第1の開閉器を介してそれらの間を接続する。更に、駆動電源とブレーキとの間、すなわち、商用電源と非常電源との接続の切替部分とブレーキとの間に、第2の開閉器を設置して、第2の開閉器を介してそれらの間を接続する。これにより、モータに対する駆動電源からの電力供給と、ブレーキに対する駆動電源からの電力供給とが、別個に切り替えられるものとなる。
【0008】
そして、非常電源による駆動時には、第1の開閉器と第2の開閉器とを別個に制御して、モータ及びブレーキにより物体を昇降させる。すなわち、物体を上昇させる際には、ブレーキが開放された状態でモータが駆動されるように、第1の開閉器及び第2の開閉器を制御する。例えば、モータが電力の印加により駆動され、ブレーキが電力の印加により開放される仕様の場合は、第1の開閉器及び第2の開閉器の双方を閉じて、モータ及びブレーキの双方に電力を供給することで、ブレーキを開放すると共に、物体が上昇する方向にモータを駆動する。これにより、非常電源を使用した場合での物体の上昇が、ブレーキの制動力を受けることなく円滑に行われるものとなる。
【0009】
他方、物体を下降させる際には、ブレーキが作動した状態でモータが駆動されるように、第1の開閉器及び第2の開閉器を制御する。例えば、モータ及びブレーキが上記のような仕様の場合は、第1の開閉器を閉じてモータへ電力を供給し、第2の開閉器を開放してブレーキへの電力供給を遮断することで、ブレーキを作動させると共に、物体が下降する方向にモータを駆動する。これにより、物体の自重による下降方向への移動がブレーキにより抑制された状態で、モータの駆動力により物体が下降するため、モータが電力回生状態になることはない。このため、モータで電力が発生することなく、そのような電力で非常電源が損傷することが防止されるものとなる。しかも、回生電力を消費するための制動抵抗器やその制御回路などが不要であるため、コストが抑制されることとなる。なお、商用電源が駆動電源として用いられる通常時には、モータが電力回生状態になっても特に問題はないため、物体の自重による下降がブレーキにより減速されながら物体が下降するように、第1の開閉器及び第2の開閉器を制御すればよい。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記物体として、前記立体駐車装置において車両を収容するパレットを昇降させるモータ及びブレーキの駆動方法。
本項に記載のモータ及びブレーキの駆動方法は、立体駐車装置において車両を収容するパレットを、昇降対象の物体として昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを駆動するものである。このため、非常電源を駆動電源としてパレットを下降させる際には、ブレーキが作動した状態で、パレットを下降させる方向にモータが駆動されるように、第1の開閉器及び第2の開閉器を制御する。これにより、パレットの自重(及びパレットに車両が収容されている場合はその車両の重さも加わる)による下降方向への移動がブレーキにより抑制された状態で、モータの駆動力によりパレットが下降し、モータが電力回生状態にはならない。従って、パレットの昇降に用いられるモータ及びブレーキを対象とした場合であっても、制動抵抗器などを要することなくコストが抑制されながら、非常電源に対する損傷が防止されるものとなる。
【0011】
(3)立体駐車装置において物体を昇降させるために使用されるモータ及びブレーキを、通常時は商用電源を駆動電源として駆動し、停電時は非常電源を前記駆動電源として駆動する装置であって、前記駆動電源と前記モータとの間の配線上に設置される第1の開閉器と、前記駆動電源と前記ブレーキとの間の配線上に設置される第2の開閉器と、前記第1の開閉器及び前記第2の開閉器を制御する制御部と、を含み、該制御部は、前記駆動電源が前記非常電源のとき、前記ブレーキが開放された状態で前記モータが駆動されることで前記物体が上昇し、前記ブレーキが作動した状態で前記モータが駆動されることで前記物体が下降するように、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とを別個に制御するモータ及びブレーキの駆動装置。
【0012】
(4)上記(3)項において、前記物体が、前記立体駐車装置において車両を収容するパレットであるモータ及びブレーキの駆動装置。
そして、(3)項及び(4)項に記載のモータ及びブレーキの駆動装置は、各々、上記(1)項及び(2)項のモータ及びブレーキの駆動方法に利用されることで、上記(1)項及び(2)項のモータ及びブレーキの駆動方法と同様の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明はこのように構成したので、コストを抑制しながら、非常電源によるモータ及びブレーキの駆動時に、非常電源に対する損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法によりパレットを上昇させる場合のイメージ図である。
図3】本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法によりパレットを下降させる場合のイメージ図である。
図4図1のモータ及びブレーキの駆動装置が適用される立体駐車装置の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。また、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略するものとする。
本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置は、例えば図4に示されるような立体駐車装置70において、パレット72や開閉ゲート76といった、昇降移動を行う物体50(図2図3参照)を昇降させるために使用される、モータ40及びブレーキ42(図1図3参照)を駆動するものである。
【0016】
ここで、図4の立体駐車装置70は、9基のパレット72a~72iを備えた、地上4段3連基(高さ方向に4段、横方向に3列)の構造のものであって、入出庫位置にあるパレット72(図4の状態ではパレット72a~72c)の前面側に、3台の開閉ゲート76a~76cが設けられている。9基のパレット72a~72iのうち、2基のパレット72b、72cは、車両を入出庫する高さ位置で横方向に横行移動のみ行い、4基のパレット72d~72gは、入出庫位置まで高さ方向及び横方向に移動可能なものであり、残り3基のパレット72a、72h、72iは、高さ方向に昇降のみ行うものである。そして、パレット72a、72d~72i、及び開閉ゲート76a~76cの各々に対して、それらの昇降動作を実現するためのモータ40及びブレーキ42が設置されており、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法及び駆動装置は、そのようなモータ40及びブレーキ42を駆動対象とするものである。
【0017】
具体的に、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動装置10は、図1に示すように、商用電源32又は非常電源34を駆動電源30として、モータ40及びブレーキ42を駆動するものであって、第1の開閉器12、第2の開閉器14、及び制御部16を含んでいる。駆動電源30は、モータ40及びブレーキ42を駆動するための電力を供給するものであり、通常時は商用電源32が駆動電源30として用いられ、商用電源32の停電時には非常電源34が駆動電源30として用いられる。このため、図1における駆動電源30は、説明の便宜上、商用電源32及び非常電源34と、それらの何れかに電力の供給元を切り替えるための切替部分36と、を具備する構成として図示されている。
【0018】
第1の開閉器12は、駆動電源30からモータ40に対する電力供給の配線上に設置され、そのような電力供給をオン/オフするものである。同様に、第2の開閉器14は、駆動電源30からブレーキ42に対する電力供給の配線上に設置され、そのような電力供給をオン/オフするものである。第1の開閉器12及び第2の開閉器14には、これに限定されるものではないが、例えば電磁接触器が用いられる。また、制御部16は、第1の開閉器12及び第2の開閉器14の各々の開閉動作を制御するものである。ここでの詳細な説明は控えるが、例えば制御部16は、駆動電源30が商用電源32であるか或いは非常電源34であるか、物体50を上昇させるか或いは下降させるかなどに応じて、第1の開閉器12及び第2の開閉器14の開閉動作を制御する。制御部16は、各種のハードウェアやソフトウェアによって実現されるが、例えば、立体駐車装置70の動作制御を担う構成部位に組み込まれていてもよい。
【0019】
一方、モータ40は、物体50を昇降させるための駆動力を発生するものであり、駆動電源30からの電力供給を受けて、物体50を上昇或いは下降させる方向に回転する。例えば、物体50としてパレット72を昇降させる場合に、モータ40で発生した回転力は、図2及び図3に示されるような構造(チェーン60、ドラム62、ワイヤロープ64、シーブ66など)を介して、パレット72へ伝達される。他方、ブレーキ42は、物体50を静止させたり物体50の昇降速度を減速したりするための制動力を発生するものであり、駆動電源30からの電力供給を受けて、その仕様に応じて、制動力を発生或いは解除する。本実施形態では、駆動電源30からの電力供給を受けるとブレーキ42による制動力が解除される、という仕様の場合を例にして、以降の説明を行う。
【0020】
モータ40及びブレーキ42には、上述したような駆動力や制動力を発生するものであれば、任意の構造のものを用いてよく、例えば、ブレーキ付ギヤードモータとしてモータ40とブレーキ42とが一体になったものであってもよく、モータ40とブレーキ42とが別体であってもよい。なお、モータ40及びブレーキ42は、パレット72などの物体50毎に設置されるものであるため、図1に示されたモータ及びブレーキの駆動装置10の構成は、共用となる駆動電源30を除き、物体50毎に設けられるものである。しかしながら、制御部16は、立体駐車装置70において昇降する複数の物体50のうちの一部或いは全てに係る、第1の開閉器12や第2の開閉器14を別個に制御するように、1つのハードウェアなどに纏めて設けられてもよい。また、モータ及びブレーキの駆動装置10の構成は、図1のブロック図に限定されるものではなく、例えばモータ40及びブレーキ42や、物体50、状況などに応じて、図1に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。
【0021】
続いて、図2及び図3を参照して、図1に示したモータ及びブレーキの駆動装置10を使用して実現される、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法について説明する。まず、図2を参照すると、駆動電源30として非常電源34が用いられる停電時に、物体50としてパレット72が上昇される様子が図示されている。このとき、制御部16からの制御により、第1の開閉器12を閉じてモータ40へ電力を供給し、パレット72を上昇させる方向にモータ40を回転させる。具体的には、図2における左回り方向にモータ40を回転させることで、チェーン60を介してドラム62を左回り方向に回転させる。また、これと同時に、制御部16からの制御により、第2の開閉器14を閉じてブレーキ42へ電力を供給し、ブレーキ42による制動力を解除する。
【0022】
これにより、ブレーキ42の制動力が解除された状態で、ドラム62が図2における左回り方向に回転するため、パレット72を吊るしている複数のワイヤロープ64が、シーブ66を介して或いは介さずにドラム62により巻き取られ、パレット72が上昇する。ここで、図2のような状態は、パレット72を上昇させるための力を「F」、モータ40の駆動力を「P」、パレット72の重量(車両90の重量も含む)を「W」とすると、ブレーキ42の制動力が解除されているため、「F=P-W」の関係で表される。なお、図2に示したような物体50(パレット72)を上昇させるためのモータ40及びブレーキ42の駆動方法は、駆動電源30として商用電源32が用いられる通常時にも実行されるものである。
【0023】
次に、図3を参照すると、駆動電源30として非常電源34が用いられる停電時に、物体50としてパレット72が下降される様子が図示されている。このとき、制御部16からの制御により、第1の開閉器12を閉じてモータ40へ電力を供給し、パレット72を下降させる方向にモータ40を回転させる。具体的には、図3における右回り方向にモータ40を回転させることで、チェーン60を介してドラム62を右回り方向に回転させる。また、これと同時に、制御部16からの制御により、第2の開閉器14を開放してブレーキ42への電力供給を遮断し、ブレーキ42による制動力を付加する。
【0024】
すると、パレット72の重量(車両90の重量も含む)によるパレット72の下方向への移動が、ブレーキ42の制動力により抑制された状態で、そのブレーキ42の制動力に抗って、モータ40の駆動力によりドラム62が図3における右回り方向に回転する。これにより、パレット72を吊るしている複数のワイヤロープ64がドラム62を介して繰り出され、パレット72が下降する。図3のような状態は、パレット72を下降させるための力を「F」、モータ40の駆動力を「P」、ブレーキ42の制動力を「P´」、パレット72の重量(車両90の重量も含む)を「W」とすると、「F=W-P´+P」の関係で表される。
【0025】
ここで、図3に示したような物体50(パレット72)を下降させるためのモータ40及びブレーキ42の駆動方法は、ブレーキ42への負荷が考慮されて、あくまで非常電源34が用いられる停電時にのみ行われるものである。駆動電源30として商用電源32が用いられる通常時に物体50を下降させる場合は、制御部16からの制御により、第1の開閉器12及び第2の開閉器14の双方を閉じる。これによって、ブレーキ42への負荷がかからないようにブレーキ42の制動力を解除した状態で、モータ40を電力回生状態にしながら、パレット72の重量(車両90の重量も含む)により下降させる。従って、ブレーキ42への負荷が懸念される図3の方法は、その実行回数をカウントし、実行回数に応じてブレーキ42の点検を義務付ける、といった保守を行うものとする。
【0026】
なお、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法は、図2及び図3に示した構成に限定されるものではなく、例えば、駆動対象のモータ40及びブレーキ42が、開閉ゲート76の昇降に用いられるものであってもよい。また、駆動対象のモータ40やブレーキ42、及び物体50が設置される立体駐車装置70は、図4の構成に限定されるものではなく、パレット72の数量や開閉ゲート76の数量などが、図示の構成と異なっていてもよい。例えば、立体駐車装置70は、昇降するパレット72などを含むものであれば、地上だけではなく地下にパレット72を備えた構成であってもよく、前後方向(図4の右手前から左奥方向)に複数列のパレット72を備えた構成であってもよい。
【0027】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法は、図1に示すようなモータ及びブレーキの駆動装置10を用いて、物体50(図2及び図3参照)を昇降するためのモータ40及びブレーキ42を、通常時は商用電源32を駆動電源30として駆動し、商用電源32が使用できない停電時は、駆動電源30を非常電源34へと切り替えて駆動する。また、駆動電源30とモータ40との間、すなわち、商用電源32と非常電源34との接続の切替部分36とモータ40との間に、第1の開閉器12を設置して、第1の開閉器12を介してそれらの間を接続する。更に、駆動電源30とブレーキ42との間、すなわち、切替部分36とブレーキ42との間に、第2の開閉器14を設置して、第2の開閉器14を介してそれらの間を接続する。これにより、モータ40に対する駆動電源30からの電力供給と、ブレーキ42に対する駆動電源30からの電力供給とを、別個に切り替えることができる。
【0028】
そして、非常電源34による駆動時には、制御部16からの制御により、第1の開閉器12と第2の開閉器14とを別個に制御して、モータ40及びブレーキ42により物体50を昇降させる。すなわち、物体50を上昇させる際には、ブレーキ42が開放された状態でモータ40が駆動されるように、第1の開閉器12及び第2の開閉器14を制御する。例えば、モータ40が電力の印加により駆動され、ブレーキ42が電力の印加により開放される仕様の場合は、第1の開閉器12及び第2の開閉器14の双方を閉じて、モータ40及びブレーキ42の双方に電力を供給することで、ブレーキ42を開放すると共に、物体50が上昇する方向にモータ40を駆動する。これにより、例えば図2に示すように、非常電源34を使用した場合での物体50の上昇を、ブレーキ42の制動力を受けることなく円滑に行うことが可能となる。
【0029】
他方、物体50を下降させる際には、ブレーキ42が作動した状態でモータ40が駆動されるように、制御部16からの制御により、第1の開閉器12及び第2の開閉器14を制御する。例えば、モータ40及びブレーキ42が上記のような仕様の場合は、第1の開閉器12を閉じてモータ40へ電力を供給し、第2の開閉器14を開放してブレーキ42への電力供給を遮断することで、ブレーキ42を作動させると共に、物体50が下降する方向にモータ40を駆動する。これにより、例えば図3に示すように、物体50の自重による下降方向への移動がブレーキ42により抑制された状態で、モータ40の駆動力により物体50が下降するため、モータ40が電力回生状態になることはない。このため、モータ40で電力が発生することなく、そのような電力で非常電源34が損傷することを防止することが可能となる。しかも、回生電力を消費するための制動抵抗器やその制御回路などが不要であるため、コストを抑制することもできる。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動方法は、図4に示すような立体駐車装置70において車両90(図2及び図3参照)を収容するパレット72を、昇降対象の物体50として昇降させるために使用されるモータ40及びブレーキ42を駆動するものである。このため、非常電源34を駆動電源30としてパレット72を下降させる際には、ブレーキ42が作動した状態で、パレット72を下降させる方向にモータ40が駆動されるように、制御部16からの制御により、第1の開閉器12及び第2の開閉器14を制御する。これにより、パレット72の自重(及びパレット72に車両90が収容されている場合はその車両90の重さも加わる)による下降方向への移動がブレーキ42により抑制された状態で、モータ40の駆動力によりパレット72が下降し、モータ40が電力回生状態にはならない。従って、パレット72の昇降に用いられるモータ40及びブレーキ42を対象とした場合であっても、制動抵抗器などを要することなくコストを抑制しながら、非常電源34に対する損傷を防止することが可能となる。
【0031】
他方、本発明の実施の形態に係るモータ及びブレーキの駆動装置10は、上述したようなモータ及びブレーキの駆動方法に利用されることで、モータ及びブレーキの駆動方法と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0032】
10:モータ及びブレーキの駆動装置、12:第1の開閉器、14:第2の開閉器、16:制御部、30:駆動電源、32:商用電源、34:非常電源、40:モータ、42:ブレーキ、50:物体、70:立体駐車装置、72:パレット、90:車両
図1
図2
図3
図4