(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100462
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】フェンス用胴縁
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20230711BHJP
E04H 17/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
E04H17/16 105Z
E04H17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001168
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】伊場 絵梨香
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142CC14
2E142CC19
(57)【要約】
【課題】胴縁の角度を容易に変化させることができるフェンス用胴縁を提供する。
【解決手段】長手方向に沿って延びる水平辺と垂直辺を有する第1の胴縁、及び第2の胴縁を備え、第1の胴縁の一方の端部には、垂直辺又は水平辺のいずれか一方が内側に窪むと共に略平行に延びる長辺部と、垂直辺又は水平辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、第2の胴縁の他方の端部には、水平辺又は垂直辺のいずれか一方が内側に窪むと共に略平行に延びる長辺部と、水平辺又は垂直辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、第1の胴縁と第2の胴縁は、第1の胴縁の長辺部が第2の胴縁の短辺部の内側に重なると共に、第2の胴縁の長辺部が第1の胴縁の短辺部の内側に重なり、長手方向に連結される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延びる水平辺と垂直辺を有する第1の胴縁、及び長手方向に沿って延びる水平辺と垂直辺を有する第2の胴縁を備え、
前記第1の胴縁の一方の端部には、
前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか一方が内側に窪むと共に、前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか一方と略平行に延びる長辺部と、
前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、
前記第2の胴縁の他方の端部には、
前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか一方が内側に窪むと共に、前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか一方と略平行に延びる長辺部と、
前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、
前記第1の胴縁と前記第2の胴縁は、
前記第1の胴縁の長辺部が、前記第2の胴縁の短辺部の内側に重なると共に、
前記第2の胴縁の長辺部が、前記第1の胴縁の短辺部の内側に重なり、長手方向に連結されることを特徴とするフェンス用胴縁。
【請求項2】
請求項1に記載するフェンス用胴縁において、
前記第1の胴縁の長辺部には、前記第1の胴縁の短辺部との境界部に、長手方向に延びるスリットが形成され、
前記第2の胴縁の長辺部には、前記第2の胴縁の短辺部との境界部に、長手方向に延びるスリットが形成されることを特徴とするフェンス用胴縁。
【請求項3】
請求項1または2に記載するフェンス用胴縁において、
前記第1の胴縁の一方の端部と、前記第2の胴縁の一方の端部は、同一形状であり、
前記第1の胴縁の他方の端部と、前記第2の胴縁の他方の端部は、同一形状であることを特徴とするフェンス用胴縁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載するフェンス用胴縁において、
前記第1の胴縁の水平辺の外側面と、前記第2の胴縁の水平辺の外側面とが、同一の仮想平面内に位置し、
前記第1の胴縁の垂直辺の外側面と、前記第2の胴縁の垂直辺の外側面とが、同一の仮想平面内に位置するように、連結されることを特徴とするフェンス用胴縁。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載するフェンス用胴縁において、
前記第1の胴縁の長辺部、及び前記第2の胴縁の長辺部には、第1の貫通孔が形成され、
前記第1の胴縁の短辺部、及び前記第2の胴縁の短辺部には、第2の貫通孔が形成され、
前記第1の貫通孔は、長手方向に交差する方向に延びる長孔であって、
前記第2の貫通孔は、長手方向に延びる長孔であることを特徴とするフェンス用胴縁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンス等に用いられる胴縁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、敷地境界部に沿って取り付けられるフェンスは、間隔をあけて地面に立設した支柱の間に、アングル材等で形成された複数の胴縁を掛け渡し、胴縁にネットを張ることで構成される。また、1本の胴縁の全長が、フェンスの設置長さよりも短い場合には、複数の胴縁を長手方向に連結させて、フェンスの構築が行われる。
【0003】
従来の胴縁は、
図11に示すように、隣り合う2本の胴縁の端面を突き合わせ、胴縁の側辺よりも辺長の短い側辺を有する継手ピースを介し、複数のボルト及びナットを締め付けて連結されている。
【0004】
また、特許文献1には、胴縁の連結作業において、隣り合う2本の胴縁のボルト孔を合わせる作業の簡便化を図ることができ、連結後の胴縁の直線性と、がたつきの無い締結性を確保することができるフェンス用胴縁等のアングル材接続構造について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すフェンス用胴縁等のアングル材接続構造は、一方のアングル材に設けられた係合用折曲片を、他方のアングル材に設けられた抜き孔に係合させることで、フェンスを設置する工事の手間を軽減することができ、尚且つ、連結に要するボルト本数の節約を可能とすることができる。
【0007】
従来、フェンス用胴縁は、直線的な長尺な部材であって、特許文献1に示すフェンス用胴縁の接続構造についても、連結後の直線性が求められていた。しかしながら、実際にフェンスを設置する現場においては、地面に傾斜があり、場所によっては傾斜角度が変化するような場合もある。このような場所において、従来の直線的なフェンス用胴縁を設置する場合、地面と胴縁の間隔が一定でなくなり、美観が損なわれるという問題があった。また、地面と胴縁の間隔が、部分的に広くなるような場合には、敷地を境界するというフェンスの機能自体が損なわれるという恐れがあった。
【0008】
また、従来、傾斜した地面に対応するようにフェンスを設置する場合には、あらかじめ屈曲された胴縁を準備する、若しくは、胴縁の角度を変更したい位置に合わせて支柱を立設し、直線的な胴縁をこれらの支柱に架設してフェンスを構築する必要があり、設置環境に素早く対応させることが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、胴縁の角度を変更するための支柱を必要とせず、隣り合う2本の胴縁の連結部の角度を変更して、胴縁の角度を容易に変化させることができるフェンス用胴縁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るフェンス用胴縁は、長手方向に沿って延びる水平辺と垂直辺を有する第1の胴縁、及び長手方向に沿って延びる水平辺と垂直辺を有する第2の胴縁を備え、前記第1の胴縁の一方の端部には、前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか一方が内側に窪むと共に、前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか一方と略平行に延びる長辺部と、前記垂直辺又は前記水平辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、前記第2の胴縁の他方の端部には、前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか一方が内側に窪むと共に、前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか一方と略平行に延びる長辺部と、前記水平辺又は前記垂直辺のいずれか他方の先端部に逃げ部を有する短辺部と、が形成され、前記第1の胴縁と前記第2の胴縁は、前記第1の胴縁の長辺部が、前記第2の胴縁の短辺部の内側に重なると共に、前記第2の胴縁の長辺部が、前記第1の胴縁の短辺部の内側に重なり、長手方向に連結されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るフェンス用胴縁において、前記第1の胴縁の長辺部には、前記第1の胴縁の短辺部との境界部に、長手方向に延びるスリットが形成され、前記第2の胴縁の長辺部には、前記第2の胴縁の短辺部との境界部に、長手方向に延びるスリットが形成されると好適である。
【0013】
本発明に係るフェンス用胴縁において、前記第1の胴縁の一方の端部と、前記第2の胴縁の一方の端部は、同一形状であり、前記第1の胴縁の他方の端部と、前記第2の胴縁の他方の端部は、同一形状であると好適である。
【0014】
本発明に係るフェンス用胴縁において、前記第1の胴縁の水平辺の外側面と、前記第2の胴縁の水平辺の外側面とが、同一の仮想平面内に位置し、前記第1の胴縁の垂直辺の外側面と、前記第2の胴縁の垂直辺の外側面とが、同一の仮想平面内に位置するように、連結されると好適である。
【0015】
本発明に係るフェンス用胴縁において、前記第1の胴縁の長辺部、及び前記第2の胴縁の長辺部には、第1の貫通孔が形成され、前記第1の胴縁の短辺部、及び前記第2の胴縁の短辺部には、第2の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔は、長手方向に交差する方向に延びる長孔であって、前記第2の貫通孔は、長手方向に延びる長孔であると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣り合う2本の胴縁の連結部の角度を変更して、フェンスの設置環境に合わせた胴縁の屈曲を容易に行うことができる。また、本発明によれば、これまで必要とされていた胴縁を屈曲させる位置に立設される支柱を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るフェンス用胴縁を用いて設置されたフェンスの一形態を示す参考図
【
図2】本実施形態に係る第1の胴縁、及び第2の胴縁の全体を示す参考斜視図
【
図3】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、隣り合う胴縁が連結され、フェンス上縁において使用される状態を示す斜視図
【
図4】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、隣り合う胴縁を連結する前の状態を示す斜視図
【
図5】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、
図5(a)は、隣り合う胴縁を連結する前の状態を示す幅方向外側から見た正面図、
図5(b)は、高さ方向外側から見た平面図
【
図7】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、
図7(a)は、フェンス用胴縁の連結準備段階の状態を示す幅方向外側から見た正面図、
図7(b)は、高さ方向外側から見た平面図
【
図8】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、
図8(a)は、フェンス用胴縁を高さ方向外側に向かって屈曲させた状態を示す幅方向外側から見た正面図、
図8(b)は、フェンス用胴縁を高さ方向内側に向かって屈曲させた状態を示す幅方向外側から見た正面図
【
図9】本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、
図9(a)は、フェンス用胴縁を幅方向外側に向かって屈曲させた状態を示す高さ方向外側から見た平面図、
図9(b)は、フェンス用胴縁を幅方向内側に向かって屈曲させた状態を示す高さ方向外側から見た平面図
【
図10】本実施形態に係るフェンス用胴縁にネットを固定する方法を示す参考図
【
図11】従来のフェンス用胴縁の連結方法を示す参考斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係るフェンス用胴縁を用いて設置されたフェンスの一形態を示す参考図、
図2は、本実施形態に係る第1の胴縁、及び第2の胴縁の全体を示す参考斜視図である。なお、本明細書において、長手方向における先端側、後端側とは、
図2に示す矢印の方向と向きと定義する。また、本明細書において、高さ方向、幅方向、及びフェンス用胴縁の内側、外側とは、
図2に示す矢印の方向と向きと定義する。また、本明細書において、フェンス用胴縁を示す正面図及び平面図とは、
図2に示す矢印の方向から見た図と定義する。
【0021】
本実施形態に係るフェンス用胴縁1は、
図1に示すように、フェンス100の上部と下部の縁となる高さにおいて、間隔をあけて地面に立設した支柱2の間に架設され、ネット3を固定する。
【0022】
支柱2には、一例として
図1に示すように、支柱の両側にネット3を備え、断面形状が略V字形の主柱2aと、支柱の片側にネット3を備え、断面形状が略L字形の端柱2bとがある。主柱2a、及び端柱2bは、共に、一例として一般構造用圧延鋼材等によって形成される。また、主柱2a、及び端柱2bには、フェンス100の上部と下部の縁となる高さにおいて、ボルトを貫通する貫通孔が設けられており、フェンス用胴縁1は、当該貫通孔を貫通するボルトと、図示しない留め金具によって、支柱2に架設される。
【0023】
ネット3は、一例として、鉄線からなり、鉄線を山が連なるように加工し、編み合わせて菱形の網目を形成した金網である。網目の接合点には溶接等による固定がないため、衝撃吸収性を備える。ネット3は、
図10に示すように、上部と下部の縁となる部分に鉄線54が通され、後述するフェンス用胴縁1のネット用爪部51に、鉄線54を引っ掛けることにより取付けられる。
【0024】
フェンス用胴縁1は、
図3に示すように、隣り合うフェンス用胴縁である第1の胴縁1aの先端部(特許請求の範囲における、一方の端部)と、第2の胴縁1bの後端部(特許請求の範囲における、他方の端部)を長手方向に連結することにより、フェンス100の上部と下部の縁を構成する。また、
図4は、第1の胴縁1aと、第2の胴縁1bとを連結する前の状態を示した斜視図である。本実施形態において、第1の胴縁1aの先端部と、第2の胴縁1bの先端部は同一形状であり、第1の胴縁1aの後端部と、第2の胴縁1bの後端部もまた同一形状である。このため、第1の胴縁1aと、第2の胴縁1bとを連続的に長手方向に連結して、必要とする長さの一続きの胴縁を構成することができる。
【0025】
第1の胴縁1a、及び第2の胴縁1bは、
図4に示すように、辺長A、Bと板厚tを有する断面形状が略L字形であって、任意の長さL1、L2に設定される長尺な部品である。第1の胴縁1a、及び第2の胴縁1bは、一例として一般構造用圧延鋼材等によって形成され、錆等による腐食を防ぐために、亜鉛メッキや、ポリエステル樹脂をベース塗料とする静電粉体塗装等が施されると好適である。なお、本明細書において、第1の胴縁1a及び第2の胴縁1bの各側辺は、フェンス100への取付姿勢に応じて、水平に配置される側辺を水平辺10a、10bと称し、垂直に配置される側辺を垂直辺20a、20bと称する。また、本実施形態において、水平辺10a、10bの辺長Aと垂直辺20a、20bの辺長Bは同じ長さであると好適である。以下の説明においては、
図3に示すように、フェンス用胴縁1を、フェンス100の上縁に取付けた状態を基に説明を行う。
【0026】
図5(a)は、本実施形態に係るフェンス用胴縁であって、隣り合う胴縁を連結する前の状態を示す胴縁の幅方向外側から見た正面図、
図5(b)は、胴縁の高さ方向外側から見た平面図である。
【0027】
第1の胴縁1aの先端部には、
図5(a)、(b)に示すように、垂直辺20aが幅方向内側に窪むと共に、垂直辺20aの板厚tと同じ板厚で略平行に延びる長辺部12が形成される。長辺部12の外側面と、幅方向内側への窪みが施されていない垂直辺20aの外側面とは、テーパ部11によって滑らかに接続されている。
【0028】
長辺部12の外側面は、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結時において、後述する第2の胴縁1bの後端部に形成される短辺部23の内側面と当接する。第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結させた際、
図5(b)に示すように、垂直辺20aと垂直辺20bが同一な仮想平面F内に位置していると、連結後のフェンス用胴縁1の美観を保つことができる。そのため、長辺部12は、その外側面が、垂直辺20aの外側面よりも板厚tだけ、幅方向内側に窪むように形成されると好適である。
【0029】
長辺部12には、
図5(a)に示すように、後述する短辺部13との境界部にスリット15が形成される。また、長辺部12の先端側には、長手方向と交差する方向に延びる長孔であって、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結する際に使用するボルトを貫通させる第1の貫通孔16が形成される。
【0030】
スリット15は、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結時において、後述する第2の胴縁1bの後端部に形成される長辺部22との干渉を避けるように形成される。本明細書において、スリット15の溝幅を寸法S1とする。寸法S1は、少なくとも長辺部22の板厚tより大きくなるように形成される。
【0031】
また、第1の胴縁1aの先端部には、
図5(a)、(b)に示すように、水平辺10aの先端面が、長辺部12の先端面よりも長手方向において後端側に位置する短辺部13が形成される。本明細書において、短辺部13の先端面から長辺部12の先端面までの範囲を、
図5(b)に示すように、逃げ部14と称する。
【0032】
短辺部13には、長手方向に延びる長孔であって、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結する際に使用するボルトを貫通させる第2の貫通孔17が形成される。
【0033】
第2の胴縁1bの後端部には、
図5(a)、(b)に示すように、水平辺10bが高さ方向内側に窪むと共に、水平辺10bの板厚tと同じ板厚で略平行に延びる長辺部22が形成される。長辺部22の外側面と、高さ方向内側への窪みが施されていない水平辺10bの外側面とは、テーパ部21によって滑らかに接続されている。
【0034】
長辺部22の外側面は、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結時において、第1の胴縁1aの先端部に形成される短辺部13の内側面と当接する。第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結させた際、
図5(a)、(b)に示すように、水平辺10aと水平辺10bが同一な仮想平面G内に位置していると、連結後のフェンス用胴縁1の美観を保つことができる。そのため、長辺部22は、その外側面が、水平辺10bの外側面よりも板厚tだけ、幅方向内側に窪むように形成されると好適である。
【0035】
長辺部22には、
図5(b)に示すように、後述する短辺部23との境界部にスリット25が形成される。また、長辺部22の後端側には、長手方向と交差する方向に延びる長孔であって、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結する際に使用するボルトを貫通させる第1の貫通孔26が形成される。
【0036】
スリット25は、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結時において、第1の胴縁1aの先端部に形成される長辺部12との干渉を避けるように形成される。本明細書において、スリット25の溝幅は、スリット15の溝幅の寸法S1と等しく、少なくとも長辺部12の板厚tより大きくなるように形成される。
【0037】
また、第2の胴縁1bの後端部には、
図5(a)、(b)に示すように、垂直辺20bの後端面が、長辺部22の後端面よりも長手方向において先端側に位置する短辺部23が形成される。本明細書において、短辺部23の後端面から長辺部22の後端面までの範囲を、
図5(a)に示すように、逃げ部24と称する。
【0038】
短辺部23には、長手方向に延びる長孔であって、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結する際に使用するボルトを貫通させる第2の貫通孔27が形成される。
【0039】
次に、本実施形態における、連結部以外のフェンス用胴縁1の形状について説明を行う。
【0040】
図2に示すように、第1の胴縁1aの垂直辺20a、及び第2の胴縁1bの垂直辺20bには、幅方向内側に向かって突出するネット用爪部51が、一定の間隔をあけて複数形成される。
【0041】
ネット用爪部51は、
図6に示す断面図のように、垂直辺20a、20bの内側面から幅方向内側に向かって突出する立上り部52と、立上り部52から水平辺10a、10bの方向に向かって延びる係合部53を有する。ネット用爪部51は、例えばプレス加工によって垂直辺20a、20bの一部を剪断し、塑性変形させて成形される。
【0042】
立上り部52は、係合部53の幅方向外側を向く面を垂直辺20a、20bの内側面から、ネット3を取り付けるための鉄線54を架け渡すのに必要な距離だけ離すように形成される。本明細書において、係合部53の幅方向外側を向く面と垂直辺20a、20bの内側面との間の距離を寸法S2とする。寸法S2は、鉄線54の線径よりも大きくなるように形成される。また、立上り部52は、
図6に示すように、垂直辺20a、20bに対して傾斜するように形成されてもよく、垂直辺20a、20bに対して直角となるように形成されても構わない。
【0043】
係合部53と水平辺10a、10bの内側面との間は、ネット3を取り付ける際、鉄線54が通過する。そのため、鉄線54への傷付きを防止することを目的として、
図5(a)に示すように、係合部53は、先端部の形状が半円となるように形成されると好適である。本明細書において、係合部53の先端部から水平辺10a、10bの内側面までの距離を、
図6に示すように、寸法S3とする。寸法S3は、ネット3を取り付けるための鉄線54の線径よりも大きく、鉄線54を通過させるのに十分な距離だけ離れるように形成される。
【0044】
このようなネット用爪部51を、フェンス用胴縁1の全長に渡って複数備えることで、フェンス100の上部及び下部において、ネット3を固定することができる。
【0045】
本実施形態において、ネット用爪部51は、プレス加工によって垂直辺20a、20bの一部を剪断し、塑性変形させて成形されると説明したが、ネット用爪部51を備える方法はこれに限らず、第1の胴縁1a、及び第2の胴縁1bと同等の材料から形成され、溶接によって垂直辺20a、20bに取付けられても構わない。
【0046】
次に、上記のような特徴を備えるフェンス用胴縁1について、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを長手方向に連結する方法について説明する。
【0047】
図7は、フェンス用胴縁1の連結準備段階の状態を示し、
図7(a)は、幅方向外側から見た正面図、
図7(b)は、高さ方向外側から見た平面図である。
【0048】
まず、
図7に示すように、長辺部12が短辺部23の内側に位置するように、また、長辺部22が短辺部13の内側に位置するように、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを近づける。この時、長辺部12と長辺部22は、スリット15、25によって両者の干渉が避けられている。また、第1の胴縁1aまたは第2の胴縁1bのどちらか一方の胴縁は、既に立設されている支柱2に対して、図示しない止め金具や爪部によって仮固定されている。仮固定がされた第1の胴縁1aまたは第2の胴縁1bは、長手方向に移動可能であるが、連結作業中に地面に落下するおそれはない。
【0049】
次に、フェンス用胴縁1を屈曲させる方向に対して交差する方向とボルトの軸心方向が一致するように、第1の貫通孔16と第2の貫通孔27、または、第1の貫通孔26と第2の貫通孔17にボルトを貫通させる。この後、ボルトにナットを締め付けて、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結を完了させる。
図8(a)、(b)は、フェンス用胴縁1を高さ方向に屈曲できるように、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結した場合を示す。このように、フェンス用胴縁1を高さ方向に屈曲させる場合には、ボルトの軸心方向が幅方向と一致するように、ボルトを第1の貫通孔16と第2の貫通孔27に貫通させる。
【0050】
上記のように連結されたフェンス用胴縁1は、ボルトの軸心を回転軸として、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを相対的に高さ方向に屈曲することができる。
図8(a)は、第2の胴縁1bを第1の胴縁1aに対して高さ方向外側に屈曲させた状態を示す。この時、短辺部13の先端部には逃げ部14を有するため、短辺部13と長辺部22との干渉を避けることができる。また、短辺部23の先端部には逃げ部24を有するため、短辺部23とテーパ部11との干渉を避けることができる。また、ボルトの軸心を、長孔である第1の貫通孔16の内部で高さ方向内側にずらすことで、フェンス用胴縁1の屈曲角度をより大きくすることができる。なお、さらにフェンス用胴縁1の高さ方向外側への屈曲角度を大きくする場合には、逃げ部14を大きくし、短辺部13の先端面をより後端側に位置させることにより可能となる。また、
図8(b)は、第2の胴縁1bを第1の胴縁1aに対して高さ方向内側に屈曲させた状態を示す。この時、ボルトの軸心を、長孔である第1の貫通孔16の内部で高さ方向内側にずらすことで、短辺部13と長辺部22との干渉を避けることができる。なお、さらにフェンス用胴縁1の高さ方向内側への屈曲角度を大きくする場合には、第1の貫通孔16を高さ方向内側へ拡大することにより可能となる。
【0051】
なお、本実施形態において、第1の胴縁1aの長辺部12と第2の胴縁1bの長辺部22は同形状であり、第1の胴縁1aの短辺部13と第2の胴縁1bの短辺部23も同形状であると好適である。このような先端部と後端部を有する第1の胴縁1aと第2の胴縁1bは、
図9(a)、(b)に示すように、フェンス用胴縁1を水平方向に屈曲させることも可能である。
図9(a)、(b)は、フェンス用胴縁1を幅方向に屈曲できるように、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bを連結した場合を示す。このように、フェンス用胴縁1を幅方向に屈曲させる場合には、ボルトの軸心方向が高さ方向と一致するように、ボルトを第1の貫通孔26と第2の貫通孔17に貫通させる。
【0052】
以上のように、本発明に係るフェンス用胴縁1は、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結を、スリット15、25を有する長辺部12、22と、短辺部13、23とで行うことにより、容易に屈曲することができる。このように、第1の胴縁1aと第2の胴縁1bの連結部のみで屈曲が可能となるため、従来必要とされていた、胴縁を屈曲させる位置に立設される支柱を削減することができ、フェンス100を設置するコストの削減を図ることができる。また、本発明に係るフェンス用胴縁1は、従来の胴縁を連結する際に必要とされていた継手ピース等の連結用部品も削減することができる。
【0053】
なお、上記では、第1の胴縁1aの長辺部12は垂直辺20aに形成され、短辺部13は水平辺10aに形成され、第2の胴縁1bの長辺部22は水平辺10bに形成され、短辺部23は垂直辺20bに形成される場合について説明を行ったが、長辺部12、22及び短辺部13、23の位置はこれに限らず、第1の胴縁1aの長辺部12は水平辺10aに形成され、短辺部13は垂直辺20aに形成され、第2の胴縁1bの長辺部22は垂直辺20bに形成され、短辺部23は水平辺10bに形成されても構わない。また、テーパ部11は、水平辺10a、10b及び垂直辺20a、20bに対して傾斜するように形成され、長辺部12、22に接続する場合について説明を行ったが、テーパ部11は、水平辺10a、10b及び垂直辺20a、20bに対して直角となるような段差状に形成されても構わない。また、水平辺10a、10bの辺長Aと垂直辺20a、20bの辺長Bは、同じ長さである場合について説明を行ったが、辺長Aと辺長Bは異なる長さであっても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1 フェンス用胴縁
1a 第1の胴縁
1b 第2の胴縁
2 支柱
2a 主柱
2b 端柱
3 ネット
10a、10b 水平辺
11、21 テーパ部
12、22 長辺部
13、23 短辺部
14、24 逃げ部
15、25 スリット
16、26 第1の貫通孔
17、27 第2の貫通孔
20a、20b 垂直辺
51 ネット用爪部
52 立上り部
53 係合部
54 鉄線
100 フェンス