(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100471
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230711BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20230711BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R1/40 330
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001180
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正昭
(72)【発明者】
【氏名】宮城 武史
(72)【発明者】
【氏名】多木 真
【テーマコード(参考)】
2G047
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
2G047AC13
2G047BA03
2G047EA07
2G047GB02
2G047GB22
4C601EE16
4C601GB06
4C601GB18
4C601GB19
4C601GB20
4C601GB30
5D019AA17
5D019FF04
(57)【要約】
【課題】放熱性を向上させること。
【解決手段】超音波プローブは、音響素子部と、集積回路と、中継基板と、を備える。前記音響素子部は、超音波を送受信する複数の音響素子が並べて配置される。前記集積回路は、複数の前記音響素子によって送受信される前記超音波に関するデータ処理を実行する。前記中継基板は、前記音響素子部と前記集積回路との間に配置され、前記音響素子部と前記集積回路とを接続する配線を有する。前記中継基板は、音響減衰層と、熱伝導層と、を備える。前記音響減衰層は、前記音響素子からの超音波を減衰させる。前記熱伝導層は、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、前記音響減衰層よりも前記集積回路に近い位置に位置し、前記中継基板の外部に設けられた部品に接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する複数の音響素子が並べて配置された音響素子部と、
複数の前記音響素子によって送受信される前記超音波に関するデータ処理を実行する集積回路と、
前記音響素子部と前記集積回路との間に配置され、前記音響素子部と前記集積回路とを接続する配線を有する中継基板と、
を備え、
前記中継基板は、
前記音響素子からの超音波を減衰させる音響減衰層と、
金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、前記音響減衰層よりも前記集積回路に近い位置に位置し、前記中継基板の外部に設けられた部品に接続された熱伝導層と、
を備える超音波プローブ。
【請求項2】
前記中継基板は、前記音響素子部と接続するための接続部と、前記集積回路と接続するための接続部との配置の差異を補正する、導体により形成された導体層を有し、
前記配線は、前記導体層を介して、前記音響素子部又は前記集積回路による面に対して垂直に直交する方向に形成される、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記導体層は、前記音響減衰層又は前記熱伝導層の表面に形成される、
請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記導体層は、前記音響減衰層と前記熱伝導層との間に形成される、
請求項2又は請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記導体層は、前記音響素子部と前記音響減衰層との間、又は前記熱伝導層と前記集積回路との間に形成される、
請求項2又は請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記導体層は、前記音響減衰層内に形成される、
請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記熱伝導層は、前記導体層及び前記配線を覆う絶縁体により形成された絶縁部を備える、
請求項2から請求項5の何れか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記音響減衰層は、絶縁体により前記配線が覆われている、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波プローブに関する。
【0002】
従来、超音波診断装置の超音波プローブは、被検体に対して超音波を送受信する音響素子を有する。また、超音波プローブは、被検体の反対方向に伝搬した超音波を減衰させる音響減衰層と、音響素子が送受信した超音波に関するデータ処理を実行する集積回路とを備える。集積回路は、データ処理に伴い発熱する。
【0003】
しかしながら、超音波プローブは、患者などの被検体に当てて使用される医療機器であるため、表面温度が電気安全規格などにより定められている。そのため、超音波プローブは、表面温度が規定値以上にならないように、集積回路のデータ処理を制限して使用している。言い換えると、超音波プローブの放熱性が、画質の向上を妨げる要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、放熱性を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波プローブは、音響素子部と、集積回路と、中継基板と、を備える。前記音響素子部は、超音波を送受信する複数の音響素子が並べて配置される。前記集積回路は、複数の前記音響素子によって送受信される前記超音波に関するデータ処理を実行する。前記中継基板は、前記音響素子部と前記集積回路との間に配置され、前記音響素子部と前記集積回路とを接続する配線を有する。前記中継基板は、音響減衰層と、熱伝導層と、を備える。前記音響減衰層は、前記音響素子からの超音波を減衰させる。前記熱伝導層は、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、前記音響減衰層よりも前記集積回路に近い位置に位置し、前記中継基板の外部に設けられた部品に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブの内部構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る中継基板の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例1に係る中継基板の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例2に係る中継基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に関する超音波プローブについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
まず、第1の実施形態に係る超音波プローブ20が適用された超音波診断装置1の構成の一例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の一例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、装置本体10と、超音波プローブ20と、ディスプレイ30と、入力装置40とを有する。
【0010】
超音波プローブ20は、装置本体10と着脱自在に接続される。超音波プローブ20から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。そして、反射された超音波は、エコー(反射波)として超音波プローブ20で受信される。例えば、超音波プローブ20は、2次元アレイプローブである。
【0011】
ディスプレイ30は、超音波診断装置1のユーザが入力装置40を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ30は、液晶モニタやOLED(Organic Light Emitting Diode)モニタ等によって実現される。
【0012】
入力装置40は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、ジョイスティック等により実現される。入力装置40は、超音波診断装置1のユーザからの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して、受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置40は、超音波プローブ20を制御するための各種設定要求を受け付けて、制御回路16に転送する。
【0013】
装置本体10は、超音波プローブ20による超音波の送受信を制御して、超音波プローブ20が受信したエコーに基づくエコー信号に基づいて、超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、
図1に示すように、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、画像生成回路14と、記憶回路15と、制御回路16とを有する。
【0014】
送受信回路11は、制御回路16による制御を受けて、超音波プローブ20と装置本体10との間で各種データ等の送受信を行う。例えば、送受信回路11は、A/D変換器と受信ビームフォーマとを有する。送受信回路11が超音波プローブ20から出力されたサブアレイごとのエコー信号を受信すると、まず、A/D変換器が、エコー信号をデジタルデータに変換する。受信ビームフォーマは、サブアレイごとのデジタルデータに対して整相加算処理を行ってエコーデータを生成し、生成したエコーデータをBモード処理回路12及びドプラ処理回路13に送信する。
【0015】
Bモード処理回路12は、送受信回路11から出力されたエコーデータを受信する。そして、Bモード処理回路12は、受信したエコーデータに対して対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路12は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0016】
ドプラ処理回路13は、送受信回路11から出力されたエコーデータを受信する。そして、ドプラ処理回路13は、受信したエコーデータから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ドプラ処理回路13は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0017】
画像生成回路14は、Bモード処理回路12及びドプラ処理回路13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成回路14は、Bモード処理回路12が生成したBモードデータからエコーの強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成回路14は、ドプラ処理回路13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。画像生成回路14は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0018】
記憶回路15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路15は、画像生成回路14が生成した超音波画像を記憶する。また、記憶回路15は、Bモード処理回路12やドプラ処理回路13が生成したデータを記憶してもよい。
【0019】
制御回路16は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。例えば、制御回路111は、送受信回路101を介して超音波プローブ20を制御することで、超音波走査を制御する。
【0020】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路15に保存されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することで機能を実現する。なお、記憶回路15にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0021】
次に、超音波診断装置1に接続された超音波プローブ20について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブ20の内部構成の一例を示す図である。
【0022】
超音波プローブ20は、音響素子部210と、中継基板220と、集積回路230とを備える。なお、
図2に示す超音波プローブ20には、音響レンズや筐体やケーブルなどの部材は省略されている。
【0023】
音響素子部210は、複数の音響素子212がプリント回路基板211にマトリクス状に並べて配置される。音響素子212は、超音波を送受信する素子である。例えば、音響素子212は、圧電素子と、整合層とを有する。圧電素子は、電圧がかけられた場合に変形することにより超音波を発生させ、超音波を受信した場合に電気信号に変換する。整合層は、圧電素子と被検体Pとの間の音響インピーダンスの差を小さくして超音波の反射を抑制する。プリント回路基板211は、マトリクス状に整列された複数の音響素子212が配置される基板である。
【0024】
中継基板220は、音響素子部210と集積回路230との間に配置され、音響素子部210と集積回路230とを接続する配線を有する。また、中継基板220は、音響減衰層240、及び熱伝導層250を備える。
【0025】
集積回路230は、複数の音響素子212によって送受信される超音波に関するデータ処理を実行する。更に詳しくは、集積回路230は、中継基板220を介して、音響素子212によって送受信される超音波に関する情報を取得する。そして、集積回路230は、超音波に関する情報に対して、超音波に関するデータ処理を実行する。
【0026】
音響減衰層240は、音響素子部210の背面に設けられ、音響素子212からの超音波を減衰させる層である。音響減衰層240は、音響減衰部241を有する。音響減衰部241は、例えばタングステンやタングステンカーバイドなどの金属の粒子を樹脂で固めることにより形成される。
【0027】
また、音響減衰層240は、音響減衰部241を貫通する貫通孔に第1配線242が挿入されている。第1配線242は、複数の音響素子212が整列された音響素子部210の接続Padなどの接続部と、集積回路230の接続Padなどの接続部とを電気的に接続するために、音響減衰部241を貫通する配線である。第1配線242は、半田などの導体により形成された第1バンプ243を介して、音響素子部210の接続部と接続される。また、第1配線242は、音響減衰部241に電流が漏れることを防止するために、配線絶縁被膜244に覆われていることが好ましい。配線絶縁被膜244は、絶縁体により形成された被膜である。
【0028】
熱伝導層250は、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、音響減衰層240よりも集積回路230に近い位置に位置し、中継基板220の外部に設けられた部品に接続される。すなわち、熱伝導層250は、集積回路230等が発生させた熱を外部まで移動させる層である。熱伝導層250は、熱伝導部251を有する。熱伝導部251は、例えば、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含むシートである。また、中継基板220の外部に設けられた部品に接続される。外部に設けられた部品とは、例えば、金属ブロックや、筐体や、ケーブルなどの放熱する部品である。これにより、熱伝導部251は、集積回路230等が発生させた熱を外部まで移動させる。よって、熱伝導層250は、超音波プローブ20が被検体Pと接触する面の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
また、熱伝導層250は、熱伝導部251を貫通する貫通孔に第2配線252が挿入されている。第2配線252は、複数の音響素子212が整列された音響素子部210と接続するための接続Padや端子などの接続部と、集積回路230と接続するための接続Padや端子などの接続部とを電気的に接続するために、熱伝導部251を貫通する配線である。第2配線252は、半田などの導体により形成された第2バンプ254を介して、集積回路230の接続部と接続される。
【0030】
ここで、熱伝導部251は、金属材料や炭素材料などの導体を含んでいる。そのため、熱伝導部251は、導体層260及び第2配線252を覆う絶縁体により形成された絶縁部253を備える。これにより、熱伝導部251は、第2配線252間で短絡してしまうことを防止する。
【0031】
中継基板220は、音響素子部210と接続するための接続部と、集積回路230と接続するための接続部との配置の差異を補正する、導体により形成された導体層260を有する。導体層260は、音響減衰層240又は熱伝導層250の表面に形成される。ここで、音響素子部210の端子が配置される箇所と、集積回路230の端子が配置される箇所とは、異なっている。言い換えると、音響素子部210及び集積回路230と平行な方向、つまりX軸方向において、音響素子部210の端子と、集積回路230の端子とは異なる位置に配置されている。そこで、導体層260は、音響減衰層240と熱伝導層250との間に形成される。そして、導体層260は、X軸方向に広がることにより第1配線242と第2配線252とを接続する。第1配線242と第2配線252とは、導体層260を介して、音響素子部210又は集積回路230による面に対して垂直に直交する方向に形成される。第1配線242と第2配線252とを接続するために、導体層260は、例えば、音響素子部210又は集積回路230による面と略平行に形成される。
【0032】
また、音響素子212及び音響減衰層240は、接地シート270に覆われている。接地シート270は、熱伝導層250において、第3バンプ255、第3配線256、及び第4バンプ257を介して、集積回路230に接続される。また、第3配線256は、絶縁部253に覆われている。
【0033】
次に、中継基板220について詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係る中継基板220の一例を示す断面図である。
図3(a)は、中継基板220の断面の一部を拡大した断面図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-A矢視の断面図である。
図3(c)は、
図3(a)のB-B矢視の断面図である。
図3(d)は、
図3(a)のC-C矢視の断面図である。
図3(e)は、
図3(a)のD-D矢視の断面図である。
【0034】
図3(a)に示すように、第1配線242は、音響素子部210の接続部から集積回路230の接続部に向かって、音響素子部210に対して略垂直に伸びている。また、第2配線252は、集積回路230の端子から音響素子部210に向かって、集積回路230に対して略垂直に伸びている。
【0035】
図3(a)に示すように、音響素子部210の端子部の位置と、集積回路230の端子部の位置とは異なっている場合がある。この場合、第1配線242と、第2配線252とは接続されない。そこで、
図3(c)に示すように、中継基板220は、音響減衰層240と熱伝導層250との間に導体層260を有する。そして、第1配線242と、第2配線252とは、導体層260を介して接続される。
【0036】
なお、
図3に示す導体層260は、音響減衰層240と熱伝導層250との間において、音響減衰層240側に設けられている。しかしながら、導体層260は、熱伝導層250側に設けられていてもよいし、音響減衰層240と熱伝導層250との中間に設けられていてもよい。
【0037】
ここで、熱伝導部251は、金属材料や炭素材料などの導体により形成されている。そのため、
図3(d)及び(e)に示すように、第2配線252及び導体層260は、絶縁部253により覆われている。絶縁部253は、第2配線252間で短絡が発生することを防止している。
【0038】
次に、中継基板220の製造方法について説明する。
【0039】
集積回路230の接続部に、スクリーン印刷やディスペンサ塗布などにより第2バンプ254を形成する。熱伝導層250を厚くするために第2バンプ254は高くまたは多段にすることが好ましい。
【0040】
第2バンプ254の第2配線252が貫通する開口が設けられ熱伝導層250を用意する。そして、熱伝導層250と、第2配線252とを組み立てる。この時、第2バンプ254の第2配線252と、熱伝導層250とが接触しないようにする。
【0041】
また、集積回路230の接続部と同一の位置に配線がレイアウトされたFPC(Flexible Printed Circuits)である第1FPCを用意する。第1FPCは、集積回路230と熱伝導層250との間に配置される。ただし、熱伝導を阻害する第1FPCのポリイミド層は、後述の方法で除去するため図示しない。第1FPCに対してスタッドバンプを立てることにより第2配線252を形成する。音響減衰層240を厚くするためにバンプは高くまたは多段にすることが好ましい。
【0042】
第1FPCのスタッドバンプ、つまり第2配線252に対して、導体層260との接続箇所を除いて、塗布スピンコート法や蒸着法などにより絶縁部253を形成する。
【0043】
また、音響素子部210の接続部と同一の位置に配線がレイアウトされたFPCである第2FPCを用意する。第2FPCに対してスタッドバンプを立てることにより第1配線242を形成する。第2FPCのスタッドバンプ、つまり第1配線242に対して、音響素子部210との接続箇所を除いて、塗布スピンコート法や蒸着法などにより絶縁体を塗布する。これにより、第1配線242は、配線絶縁被膜244が形成される。
【0044】
タングステンなどの金属粒子と樹脂材料と混合した音響減衰材料を第2FPCに塗布することにより音響減衰部241を形成する。音響減衰部241の塗布厚みはバンプ高さ相当とする。衰材料には、タングステンなどの混合した金属粒子の酸化物や、炭化物や、窒化物等の粒子を混合させてもよい。
【0045】
音響減衰層240の塗布面は凹凸があるので、研削や研磨などの方法で平坦化させる。
【0046】
平坦化加工面において、熱伝導層250の第2配線252と、導体層260とが繋がるように結線の導体層260を成膜やメッキで形成する。
【0047】
音響減衰層240を第2FPCの基材であるポリイミドは溶剤等を用いて除去する。なお、第2FPCの形態は、除去せずに残したままでも良い。
【0048】
塗布した音響減衰材料が硬化に至らない状態で、音響素子部210の接続部と、スタッドバンプ形成された第2FPCと、導体層260が形成された熱伝導層250とを、短絡しないように位置合わせを行い、非導電性の接着剤を塗布したうえで組み立てる。そして、加熱及び加圧により、集積回路230、熱伝導層250、音響減衰層240、第2FPC、及び音響素子部210を接着させる。本工程での接着により、熱伝導層250と第2配線252との短絡を防止する絶縁部253が形成される。このようにして、中継基板220を製造する。
【0049】
なお、第1FPC及び第2FPCのポリイミド層は、熱伝導層250、音響減衰層240と比較して1/10以下の厚さであり、且つ製造過程で除去することは可能である。また、第1FPC及び第2FPCのポリイミド層の有無により機能に影響はしないため図示していない。
【0050】
以上のように、第1の実施形態に係る超音波プローブ20は、音響素子部210と集積回路230との間に配置され、音響素子部210と集積回路230とを接続する配線を有する中継基板220を備える。中継基板220は、音響減衰層240と、熱伝導層250とを備える。音響減衰層240は、音響素子212による音響を減衰させる。熱伝導層250は、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、音響減衰層240よりも集積回路230に近い位置に位置し、中継基板220の外部に設けられた部品に接続される。このように、超音波プローブ20は、熱伝導層250を介して、集積回路230等により発生した熱を、中継基板220の外部に設けられた部品に移動させることができる。よって、超音波プローブ20は、放熱性を向上させることができる。
【0051】
(変形例1)
図4は、第1実施形態の変形例1に係る中継基板220aの一例を示す断面図である。
図4(a)は、中継基板220aの断面の一部を拡大した断面図である。
図4(b)は、
図4(a)のA-A矢視の断面図である。
図4(c)は、
図4(a)のB-B矢視の断面図である。
図4(d)は、
図4(a)のC-C矢視の断面図である。
図4(e)は、
図4(a)のD-D矢視の断面図である。
【0052】
図4(a)に示すように、中継基板220aは、中継基板220aの表面に導体層260aが設けられている。更に詳しくは、導体層260aは、音響素子部210と音響減衰層240aとの間、又は熱伝導層250aと集積回路230との間に形成される。これにより、音響減衰層240aの第1配線242と、熱伝導層250aの第2配線252とは、音響素子部210又は集積回路230に対して垂直に形成される。第1配線242と第2配線252とを接続するために、導体層260aは、例えば、音響素子部210a又は集積回路230aによる面と略平行に形成される。
【0053】
次に、中継基板220aの製造方法について説明する。
【0054】
まず、音響素子部210の接続部と同一の位置に配線がレイアウトされた第2FPCを用意する。また、第2FPCには、音響素子部210の接続部と、集積回路230の接続部との位置を補正する導体層260aが形成されている。すなわち、第2FPCには、音響素子部210の接続部から集積回路230の接続部に対応する位置まで、X軸方向に導体が配置された導体層260aを有する。
【0055】
第2FPCにスタッドバンプを立てることにより第1配線242を形成する。または、第2FPCに対して、スクリーン印刷やディスペンサ塗布などによりバンプを積み上げることで第1配線242を形成する。この時、スタッドバンプまたはバンプの面積の拡張を抑えながら多段に積みあげることにより、放熱効果をより高めることができる。
【0056】
また、スタッドバンプまたはバンプ、つまり第1配線242に対して、第1の実施形態と同様の方法により絶縁体で被覆する。これにより、第1配線242は、配線絶縁被膜244が形成される。その後、第2FPCに音響減衰材料を塗布する。塗布した音響減衰材料が硬化に至らない状態で、音響減衰層240aと、第1配線242が挿入される貫通孔を有する熱伝導層250aとを、加熱及び加圧により接着させる。
【0057】
ここで、音響素子部210の接続部と、集積回路230の接続部との位置の差異は、音響素子部210と音響減衰層240aとの間に設けられた熱伝導層250a、又は集積回路230と熱伝導層250aとの間に設けられた熱伝導層250aの少なくとも何れか一方により補正される。そのため、熱伝導層250aの貫通孔は、音響素子部210の接続部、又は集積回路230の接続部に対応した位置に形成される。また、熱伝導層250aの貫通孔は、楕円形の長孔であってもよいし、矩形の矩形孔であってもよい。また、長孔や矩形孔の場合、接着剤の充填不足が生じやすいが、後工程においてディスペンサ塗布などにより適量を補填すればよい。
【0058】
また、集積回路230の接続部と同一の位置に配線がレイアウトされた第1FPCを用意する。また、第1FPCには、音響素子部210の接続部と、集積回路230の接続部との位置を補正する導体層260aが形成されている。
【0059】
熱伝導層250aと、第1FPCと、集積回路230とを接着剤を塗布した上で組み立てる。さらに、音響素子部210と、第2FPCと、音響減衰層240aとを接着剤を塗布した上で組み立てる。このようにして、中継基板220aを製造する。
【0060】
以上のように、第1の実施形態の変形例1に係る超音波プローブ20は、中継基板220aを備える。中継基板220aは、金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、音響減衰層240aよりも集積回路230に近い位置に位置し、中継基板220aの外部に設けられた部品に接続される熱伝導層250aを有する。よって、超音波プローブ20は、放熱性を向上させることができる。
【0061】
また、第1の実施形態と、1の実施形態の変形例1とを組み合わせてもよい。すなわち、導体層260、260aは、音響減衰層240、240aと熱伝導層250、250aとの間に形成され、さらに、音響素子部210と前記音響減衰層240、240aとの間、又は熱伝導層250、250aと集積回路230との間に形成されてもよい。
【0062】
(変形例2)
図5は、第1実施形態の変形例2に係る中継基板220bの一例を示す断面図である。中継基板220bは、3次元プリンタなどにより第1配線242、導体層260b、及び第2配線252が製造される。導体層260bは、音響減衰層240b内に形成される。
【0063】
次に、中継基板220bの製造方法について説明する。3次元プリンティング等により第1配線242、導体層260b、及び第2配線252を製造する。そして、第1配線242、及び導体層260bに音響減衰材料を塗布した後に、第2配線252を熱伝導層250bに挿入することにより製造する。
【0064】
更に詳しくは、まず、第1仮部材281を用意する。第1仮部材281上の音響素子部210の接続部に対応する位置に、導体の3次元プリンティングにより第1配線242を配置する。
【0065】
第1配線242が所定の高さになった場合に、導体の3次元プリンティングにより導体層260bを作成する。第1配線242と第2配線252とを接続するために、導体層260bは、例えば、音響素子部210又は集積回路230による面と略平行に形成される。また、導体の3次元プリンティングにより第2配線252及び第2仮部材282を作成する。第2仮部材282は、第2配線252の位置精度を高めるために配置される部材である。なお、位置精度が求められていない場合には、第2仮部材282を配置しなくてもよい。
【0066】
必要に応じて絶縁体で第1配線242、第2配線252、第3配線256を配線絶縁被膜244で被覆した後に、音響減衰材料を塗布する。音響減衰材料が硬化した場合に、第1仮部材281及び第2仮部材282を除去する。そして、熱伝導層250bの貫通孔に第2配線252を挿入する。本工程では、絶縁性の接着剤を塗布した上で組み立てる。絶縁性の接着剤により熱伝導層250bと第2配線252との短絡を防止する絶縁部253が形成される。
【0067】
さらに、第1バンプ243及び接着剤を介して、音響素子部210と、音響減衰層240bとを接合させる。また、第2バンプ254及び接着剤を介して、熱伝導層250bと、集積回路230とを接合させる。このようにして、中継基板220bを製造する。
【0068】
以上のように、第1の実施形態の変形例2に係る中継基板220bは、3次元プリンタにより第1配線242、第2配線252、及び導体層260bが製造される。また、音響減衰層240bは、第1配線242、第2配線252、及び導体層260bに対して音響減衰材料を塗布することにより製造される。そして、中継基板220bは、音響減衰層240bから突出した第2配線252が、熱伝導層250bの貫通孔に挿入されることにより製造される。このように、3次元プリンタにより第1配線242、第2配線252、及び導体層260bを製造することにより寸法精度を向上させることができる。また、寸法精度が高い場合、熱伝導層250bの貫通孔を細くすることができる。すなわち、熱伝導層250bにおける金属材料又は炭素材料の体積が多くなる。よって、超音波プローブ20bは、放熱性を向上させることができる。
【0069】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、放熱性を向上させることができる。
【0070】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0071】
(付記1)
超音波を送受信する複数の音響素子が並べて配置された音響素子部と、
複数の前記音響素子によって送受信される前記超音波に関するデータ処理を実行する集積回路と、
前記音響素子部と前記集積回路との間に配置され、前記音響素子部と前記集積回路とを接続する配線を有する中継基板と、
を備え、
前記中継基板は、
前記音響素子からの超音波を減衰させる音響減衰層と、
金属材料及び炭素材料の少なくとも一方を含み、前記音響減衰層よりも前記集積回路に近い位置に位置し、前記中継基板の外部に設けられた部品に接続された熱伝導層と、
を備える超音波プローブ。
(付記2)
前記中継基板は、前記音響素子部と接続するための接続部と、前記集積回路と接続するための接続部との配置の差異を補正する、導体により形成された導体層を有し、
前記配線は、前記導体層を介して、前記音響素子部又は前記集積回路による面に対して垂直に直交する方向に形成されてもよい。
(付記3)
前記導体層は、前記音響減衰層又は前記熱伝導層の表面に形成されてもよい。
(付記4)
前記導体層は、前記音響減衰層と前記熱伝導層との間に形成されてもよい。
(付記5)
前記導体層は、前記音響素子部と前記音響減衰層との間、又は前記熱伝導層と前記集積回路との間に形成されてもよい。
(付記6)
前記導体層は、前記音響減衰層内に形成されてもよい。
(付記7)
前記熱伝導層は、前記導体層及び前記配線を覆う絶縁体により形成された絶縁部を備えてもよい。
(付記8)
前記音響減衰層は、絶縁体により前記配線が覆われていてもよい。
(付記9)
前記導体層は、前記音響素子部又は前記集積回路による面に対して平行な方向に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 超音波診断装置
10 装置本体
11 送受信回路
12 Bモード処理回路
13 ドプラ処理回路
14 画像生成回路
15 記憶回路
16 制御回路
20 超音波プローブ
30 ディスプレイ
40 入力装置
101 送受信回路
111 制御回路
210 音響素子部
211 プリント回路基板
212 音響素子
220、220a、220b 中継基板
230 集積回路
240、240a 240b 音響減衰層
241 音響減衰部
242 第1配線
243 第1バンプ
244 配線絶縁被膜
250、250a 250b 熱伝導層
251 熱伝導部
252 第2配線
253 絶縁部
254 第2バンプ
255 第3バンプ
256 第3配線
257 第4バンプ
260、260a、260b 導体層
270 接地シート
281 第1仮部材
282 第2仮部材
P 被検体