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  • 特開-建物の排熱利用装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100478
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】建物の排熱利用装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20220101AFI20230711BHJP
【FI】
F24H1/00 631Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001190
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】509172402
【氏名又は名称】株式会社ワンワールド
(71)【出願人】
【識別番号】512049971
【氏名又は名称】伊藤 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 信宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA26
(57)【要約】
【課題】建物から排出される排熱を利用して水蒸気を大気中に放出しないようにし、かつ蒸留水を再生水として生成するようにした建物の排熱利用装置を提供する。
【解決手段】建物内の熱源からの排熱により暖まった空気を回収する回収管13と、回収管13から供給される暖められた空気を冷却水により冷却して液化する第一のコンデンサ2と、第一のコンデンサ2に供給され熱交換された後の温度の高くなった冷却水を導入し、吸い込んだ外気と接触させて潜熱を放出して冷却するとともに、第一のコンデンサ2に冷却された冷却水として循環供給するクーリングタワー3と、クーリングタワー3から吐出される水蒸気を含んだ空気を供給し、この空気を冷却して液化する第二のコンデンサ4とからなり、第二のコンデンサ4にもクーリングタワー3により冷却される冷却水を循環供給するようにして第二のコンデンサにより液化させた蒸留水を抽出するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の熱源から排出される排熱により暖まった空気を回収する回収手段と、
前記回収手段から供給される空気を冷却水により冷却して液化する第一の凝縮手段と、
前記第一の凝縮手段に供給され熱交換された後の温度の高くなった冷却水を導入し、吸い込んだ外気と接触させて潜熱を放出して冷却するとともに、前記第一の凝縮手段に冷却された冷却水として循環供給する冷却手段と、
前記冷却手段から吐出される水蒸気を含んだ空気を供給し、この空気を冷却して液化する第二の凝縮手段とからなり、
前記第二の凝縮液化手段にも前記冷却手段により冷却される冷却水を循環供給するようにして前記第二の凝縮液化手段により液化させた蒸留水を抽出するように構成したことを特徴とする建物の排熱利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の建物内の熱源から排出される排熱を回収して有効に利用することで地球温暖化防止対策となり得る建物の排熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球は、太陽からの放射熱により暖められており、大気中の二酸化炭素やメタン、フロンガス等の所謂温室効果ガスが、暖められた地球から放熱される熱を吸収して再び地表に放出し、地表の生物にとって一定の温暖状態が保持されてきたものである。つまり、温室効果ガスが存在しないと、太陽からの得た熱がすべて宇宙へ放出されることになり、地球の気温は極端に下がることになり、生物が生存できない環境を招くことになる。
【0003】
しかしながら、産業革命以降に生じた、生産と消費の拡大に伴う石炭や石油等の化石燃料の大量消費並びに天然ガスの採掘等により、二酸化炭素やメタンガスが発生し、これらが、規制を受けないまま大気中に大量に排出されてきた。一方、温室効果ガスの主となる二酸化炭素を吸収してくれる森林が無秩序な環境破壊ともいうべき開発により年々減少している実態がある。
【0004】
このような状況下において、温室効果ガスの排出と吸収のバランス崩れが生じ、大気から宇宙への熱放出が遮断された状態となり、地球温暖化を加速するという事態が生じている。地球温暖化が促進されることで、異常と指摘される水害や干ばつなどの気象変動をきたし、動植物の生存環境の変動危機のみならず、突き詰めると食糧生産の問題等も生じるなどして人類の生存危機をも招来するという地球規模の非常に危機的な大問題を惹起するという事態に陥っている。
【0005】
そこで、かかる地球規模の温暖化を防止する方法が、従来から色々と提案され、特許技術として提案されている(特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4212234号
【特許文献2】特許第3742868号
【特許文献3】特許第5504393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の防止方法は、温室効果ガスとして問題となりうる亜酸化窒素の発生を化学的な処理により低減しようとするものであり、本来問題とされるべき温室効果ガスの排出・吸収のバランス崩れを改善するという効果が期待されるほどのものではない。また、特許文献2,3に記載の防止方法は、地球上の吸熱と放熱のバランスをとる方法として提案されているが、前者は、夜間の熱放射を阻害している低い雲よりも高く数100m以上の高さで略垂直にパイプを設置し、このパイプの上下部を密閉する際に内部に気化しやすい液体を封入してヒートパイプとして機能させることで、地表の熱を上空へ放射するという構成を採用する。
【0008】
また、後者は、海洋深層水の上流に向け、海洋深層水を流入させ、吐出口を上方に湾曲若しくは傾斜させる通水パイプにフィンを設け、通水パイプの流入口が海洋深層水の流れの上流側に向くようにし、冷熱源である海洋深層水を表層部に移動させる構成を講じ、海面に接する大気との間で気液間の熱量移送ることにより、表層部の海水面上の大気温度を低下させるというものである。これらの防止方法は、地球規模的な温暖化防止としての解決手段として成立するとしても、実際に実施するとなれば、相当なコストをかけ大規模なプロジェクトとして広域での緻密な準備、遂行が必要とされるものであり、より身近な解決手段として採用されにくいという問題があった。
【0009】
本出願人は、より身近な環境問題を解決するために、別途一般ごみを含む種々の廃棄物を炭化、油化する装置や、炭化、油化する際に生じる水の処理を行う装置を各種提案してきた。特に、係る水処理などを行う際に、大気中に放出されている水蒸気の取り扱いを考慮する上で、大気中の二酸化炭素の増加が地球温暖化の大きな原因であるという従来からの問題に加え、大気中の約半分を占める水蒸気も温室効果ガスとして機能することを問題視すべきとの知見を得たものである。
【0010】
つまり、石炭や石油といった化石燃料を使用して発電所の運転や工業製品の製造を行う場合など、近年における人類の活動に伴い発生していた二酸化炭素の大気への放出に加え、原子力発電や通常の一般的なビルやショッピングモールなどの大型施設、更には家庭における空調処理などの熱交換処理において生じる水蒸気も大気中に大量に放出されている。大気中に含まれる水蒸気の量が大量に増えると、排熱された熱エネルギーを有する水蒸気も、大気中においては温室効果ガスとして作用する一面があるということである。地球規模の温暖化が全体として進むほどに、海水から蒸発する水蒸気量も増加することになり、益々大気中の水蒸気量が増加するという悪循環が生じ、さらに地球温暖化を促進する原因の一つとなっているのである。
【0011】
そこで、本出願人は、水蒸気も温室効果ガスとして作用すると捉えた場合に、局所的ではあるものの、一般の建物内部の熱源から排出されている排熱の熱交換手段として設置されている所謂クーリングタワーにより大気中へ垂れ流す形で放出されていた水蒸気を回収して蒸留水に変換し、再生生活用水として利用できるようにした装置を提供しようとするものである。かかる装置を都市部などの広域における様々な建物に設置されている空調設備に付設導入することで、導入結果に伴って大局的に捉えた場合に、地球温暖化防止に実質的に資することができる装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、次のように構成した。すなわち、本発明に係る請求項1に記載の建物の排熱利用装置は、建物内の熱源から排出される排熱により暖まった空気を回収する回収手段と、回収手段から供給される空気を冷却水により冷却して液化する第一の凝縮手段と、前記第一の凝縮手段に供給され熱交換された後の冷却水を吸い込んだ空気と接触させ、潜熱を放出して冷却するとともに、前記第一の凝縮手段に冷却された冷却水として循環供給する冷却手段と、前記冷却手段から吐出される水蒸気を含んだ空気を供給し、この空気を冷却して液化する第二の凝縮手段とからなり、前記第二の凝縮手段にも前記冷却手段により冷却される冷却水を循環供給するようにし、前記第二の凝縮手段により液化された蒸留水を生成抽出するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる建物の排熱利用装置によれば、第一及び第二の凝縮手段と冷却手段とを構成要素としているが、これらの構成要素は、所謂、空調設備や冷凍機器において、コンデンサ、クーリングタワーとも呼ばれ、一般的に使用されているものであり、特別な構成要素を必要としない。本発明は、特に、このクーリングタワーにおいてコンデンサに供給する冷却水を冷却して循環利用する際に、蒸発熱を利用して大気に放出されていた水蒸気を、さらに凝縮させる第二の凝縮手段を設けることにより、蒸留水を生成抽出できるようにしているので、従来の建物の空調施設において無駄に大気中に放出していた水蒸気の量を減量するとともに、抽出される蒸留水を生活用水として再利用することができる。
【0014】
このため、一般のホテルや病院などの建物内の熱源となりうる器材等が設置された部屋や大型空間が多数存在するショッピングモールなどの大型施設において、本発明に係る建物の排熱利用装置を空調設備に付設することができるので、建物から大量に放出されていた水蒸気量を大幅に低減でき、さらに、生活用水として貯蔵し再利用することもできる。このような効果を奏するので、大きなコストも掛けず容易に多数の建物への導入設置を行うことが可能であり、導入設置の建物が増加するほどに、温室効果ガスとして機能している大気中へ放出されていた水蒸気量を大幅に減らすことができ、結果として地球温暖化防止策を講じることに資する。また、水蒸気を蒸留生成して再生生活用水として貯留することもできるので、水不足対策としての役割も果たすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例である建物の排熱利用装置の概略構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
【0017】
図1は、建物の排熱利用装置1の全体構成を示す概略構成図である。建物の排熱利用装置1は、実施例では、設置する建物をホテル10としており、ホテル10内の厨房11やバスルームを備えた客室12等からの排熱を回収する手段となる排熱回収管13と、この排熱回収管13から回収された排熱を熱エネルギーとして暖められた空気が供給される第一の凝縮手段(以下、コンデンサと記す)2と、第一のコンデンサ2に冷却水を供給するとともに、第一のコンデンサ2で熱交換後の温度が上昇した冷却水を還流して冷却する冷却手段(以下、クーリングタワーと記す)3と、クーリングタワー3の上部開口を閉塞するように設置された連通管7を通じてこの開口部から放出される水蒸気を含んだ空気を導入し冷却して液化する第二のコンデンサ4とから構成されている。
【0018】
上記したコンデンサ2内へ供給された排熱空気は、クーリングタワー3から供給された冷却水により凝縮液化され、液化された水は液化槽8へ抽出される。また、上記したクーリングタワー3は、一般的な開放式冷却塔が使用されており、コンデンサ2へは、クーリングタワー3から冷却水が供給され、コンデンサ2内での熱交換後の温度が上昇した冷却水は、クーリングタワー3へ還流される。クーリングタワー3内では、図示しない送風機により強制的に送り込んだ外気と冷却水を接触させ一部の冷却水を蒸発させて、冷却水の温度を下げる。温度を下げた冷却水は再度コンデンサ2へ供給されて、コンデンサ2との間で循環供給されるように構成されている。かかるコンデンサ2とクーリングタワー3の構成動作は、従来の空調機器や冷凍機器において使用される場合と同様である。クーリングタワー3へは、液化槽8からの水が、補給されるようになっている。
【0019】
上記した開放式のクーリングタワー3の上部開口には、この開口部を閉塞するように連通管7が設置されており、その一方端部が第二のコンデンサ4に連通しており、導通管7を通じてクーリングタワー3から放出される水蒸気を含んだ空気が、凝縮ガスとして第二のコンデンサ4導入され、コンデンサ4内で冷却されて液化するように構成されている。コンデンサ4で液化された蒸留水は真水として貯水槽9へ抽出貯蔵される。
【0020】
第二のコンデンサ4へは、コンデンサ2と同様に、クーリングタワー3から冷却水が供給され、コンデンサ4内で熱交換後の温度が上昇した冷却水は、クーリングタワー3内へ還流される。クーリングタワー3内では、上記と同様に、還流された冷却水と図示しない送風機により強制的に送り込んだ外気とを接触させて一部の冷却水を蒸発させて、冷却水の温度が下がるように構成されている。温度を下げた冷却水は再度コンデンサ4へ供給されて、コンデンサ4とクーリングタワー3との間で循環供給されるように構成されている。
【0021】
本発明は、上記したように、本来、排熱空気を冷却する際に使用される第一のコンデンサ2と、コンデンサ2との間で循環供給される冷却水を再度冷却して冷却水の排熱を行うクーリングタワー3とを基本構成要素とし、クーリングタワー3で冷却水を排熱する際に生じる水蒸気を外気に放出することなく、かかる水蒸気をさらに第二のコンデンサ4によって凝縮させることで、所謂、復水器の機能を発揮するように構成されているものである。
【0022】
上記した実施例では、排熱利用装置1を、ホテルに設置した例を示したが、設置対象の建物としては、病院やショッピングモールなどの大型商業施設等、建物内に熱源となる設備が多い建物ほど、大気中への水蒸気の放出を低減することができる。また、コンデンサ2とクーリングタワー3とが、例えば、アンモニア冷凍装置やチラー等の凝縮器や排熱手段として機能する場合などでも、実施例装置と同様に構成して使用することができる。このように、身近な空調機器や冷凍機器における構成要素を前提として本装置を簡単に構成することができるので、従来、大気に放出していた水蒸気を無駄にしないで、コストのかからない装置として設置すれば、本装置により再生生活用水を得ることができ、建物ごとに水不足対策を講じることにもなる。
【0023】
このように、建物の排熱利用装置を構成すれば、一般の商業ビルや住居用ビルに身近に設置されている空調機器や冷凍機器において使用されているコンデンサと所謂冷却塔と呼ばれるクーリングタワーも利用して、従来、外気に放出されていた排熱空気を無駄にすることなく蒸留水を得ることがきるようになり、当該装置を特殊な機材を使用することなく構成設置できるので、エコ設備としての有用性を発揮できるとともに、設置ビルにおける生活用水として貯水備蓄することや、災害時等における非常用水等としても有効に利用することができるようになる。また、大気中に排出されていた水蒸気も温室効果ガスとして作用すると捉えた場合に、本装置によれば、水蒸気を排出させずに再循環させて蒸留水へと変換して利用されるので、設置導入数が増加すればする程、結果として地球温暖化防止策を講じることにもなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
上記した実施例装置は、ホテルなどの一般商業施設における設置例として説明したが、廃棄物処理工場や火力発電所、原子力発電所など、プラントの熱効率からみて排熱量の割合が大きく、特に原子力発電所では、さらに冷却水の気化熱としても排出されており、大気中への排出される水蒸気量は極めて多量と言える。したがって、これらの施設への本発明装置の設置導入は、上記した温暖化防止策として講じられ得る効果を考慮すると、大いに貢献し役立つものとなる。
【符号の説明】
【0025】
1 建物の排熱利用装置
2 第一のコンデンサ
3 クーリングタワー
4 第二のコンデンサ
7 導通管
8 液化槽
9 貯水槽
13 回収管
図1