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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100526
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230711BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20230711BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20230711BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20230711BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20230711BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04029
H01M8/0606
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001265
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寒川 太郎
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA17
5H127BA34
5H127BA47
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127EE24
(57)【要約】
【課題】液体燃料を気化及び改質することにより燃料ガスを生成し、生成した燃料ガスから不純物を除去する燃料電池システムにおいて、より効率良くシステムを稼働させることができる技術を提供する。
【解決手段】 燃料電池システムは、水槽に貯留された水との熱交換により液体燃料を気化させる気化器と、気化器により気化した気体燃料を改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、改質器により生成された燃料ガスに含まれる不純物を、水槽に貯留された水により除去する除去器と、改質器により生成された燃料ガス及び空気により発電する燃料電池と、を備える。改質器は、気体燃料を改質する改質部と、気体燃料を燃焼させることにより改質部を加熱する燃焼部と、を有している。燃焼部から排出される燃焼ガスが、気化器の水槽および/または除去器の水槽に供給されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
水槽に貯留された水との熱交換により液体燃料を気化させる気化器と、
前記気化器により気化した気体燃料を改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記改質器により生成された前記燃料ガスに含まれる不純物を、水槽に貯留された水により除去する除去器と、
前記改質器により生成された前記燃料ガス及び空気により発電する燃料電池と、
を備え、
前記改質器は、前記気体燃料を改質する改質部と、前記気体燃料を燃焼させることにより前記改質部を加熱する燃焼部と、を有しており、
前記燃焼部から排出される燃焼ガスが、前記気化器の水槽および/または前記除去器の水槽に供給されるように構成されている、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出された排ガスが、前記燃焼部に供給されるように構成されている、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出された前記排ガスに含まれる水分が、前記燃焼部に供給される前に除去されるように構成されている、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出された前記排ガスから除去された前記水分が、前記気化器の水槽および/または前記除去器の水槽に供給されるように構成されている、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽とが、水を共用している、
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽は、一体である、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽は、別体であるとともに連通しており、
前記燃焼部から排出される前記燃焼ガスが、前記気化器の水槽に貯留された水と熱交換された後に前記除去器の水槽に貯留された水を通過するように構成されている、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記除去器の水槽に貯留された水を中和する中和器をさらに備える、燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記中和器は、酸または塩基による中和反応を利用して水を中和する、燃料電池システム。
【請求項10】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記中和器は、緩衝液による緩衝作用を利用して水を中和する、燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃焼部から排出された前記燃焼ガスとの熱交換により、前記気化器により気化した前記気体燃料を昇温させる熱交換器をさらに備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炭化水素を含む原料ガスを改質して水素含有ガス(燃料ガス)を生成する改質器と、燃料ガス及び空気により発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムが開示されている。特許文献1の改質器は、原料ガスが供給される改質部と、改質部を加熱するための燃焼部を有している。燃焼部には、燃料電池から排出される排ガス(水素)、及び燃料電池の冷却に利用された空気(酸素)が供給される。これにより、燃焼部において触媒燃焼を生じさせ、改質部を加熱する。改質器の燃焼部において発生した燃焼ガスは、排気ガスラインを介して外部に排出される。
【0003】
特許文献2には、液体アンモニアを気化する気化器と、気化されたアンモニアを改質して燃料ガスを生成する改質器と、燃料ガスと空気とにより発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムが開示されている。特許文献2では、燃料電池から排出される排ガスを昇温して気化器に供給し、排ガスの熱により液体アンモニアを気化させる。
【0004】
特許文献3には、炭化水素を含む原料ガスを改質して水素含有ガスを生成する改質器と、水素含有ガス中のアンモニアを除去する除去器と、アンモニアが除去された水素含有ガスと空気とにより発電する燃料電池と、を備える、燃料電池システムが開示されている。特許文献3では、燃料電池内部の触媒の被毒を軽減するために、除去器において水素含有ガスを水と接触させることにより、アンモニアを水中に溶解させて、水素含有ガスからアンモニア(すなわち、不純物)を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-290901号公報
【特許文献2】特開2016-134278号公報
【特許文献3】国際公開第2011/111400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書では、液体燃焼を気化及び改質することにより燃料ガスを生成し、生成した燃料ガスから不純物を除去する燃料電池システムにおいて、より効率良くシステムを稼働させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する燃料電池システムは、水槽に貯留された水との熱交換により液体燃料を気化させる気化器と、前記気化器により気化した気体燃料を改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器により生成された前記燃料ガスに含まれる不純物を、水槽に貯留された水により除去する除去器と、前記改質器により生成された前記燃料ガス及び空気により発電する燃料電池と、を備える。前記改質器は、前記気体燃料を改質する改質部と、前記気体燃料を燃焼させることにより前記改質部を加熱する燃焼部と、を有している。前記燃焼部から排出される燃焼ガスが、前記気化器の水槽および/または前記除去器の水槽に供給されるように構成されている。
【0008】
上記の燃料システムでは、燃焼部から排出される燃焼ガスが、気化器の水槽および/または除去器の水槽に供給される。気体燃料を燃焼させることにより生成される燃焼ガスには、燃焼により生じる水分が含まれる。このため、当該燃焼ガスを気化器の水槽に供給することにより、気化器の水槽に水を補給する頻度を低減することができる。また、当該燃焼ガスを除去器の水槽に供給することにより、除去器の水槽に水を補給する頻度を低減することができる。また、燃焼部から排出される燃焼ガスは比較的高温であるため、燃焼ガスが気化器の水槽に供給される場合には、液体燃料の気化に要する水温を維持することができ、ヒータ等により水を昇温するためのエネルギーを低減することができる。以上のように、上記の燃料電池システムでは、燃焼部から排出される燃焼ガスを効果的に利用することができ、効率良くシステムを稼働させることができる。
【0009】
前記燃料電池から排出された排ガスが、前記燃焼部に供給されるように構成されていてもよい。燃料電池から排出される排ガスには、燃料電池において消費されずに(反応せずに)残留する水素や酸素が含まれ得る。上記の構成では、排ガスに含まれる未反応の水素や酸素を燃焼部で利用することができるため、燃焼部で燃焼させる気体燃料の量を低減させることができるとともに、燃焼部に供給すべき酸素の量を低減することができる。
【0010】
前記燃料電池から排出された前記排ガスに含まれる水分が、前記燃焼部に供給される前に除去されるように構成されていてもよい。このような構成では、燃焼部において、水を昇温させるエネルギーを要さないため、効率良く改質部を加熱することができる。
【0011】
前記燃料電池から排出された前記排ガスから除去された前記水分が、前記気化器の水槽および/または前記除去器の水槽に供給されるように構成されていてもよい。このような構成では、気化器の水槽や除去器の水槽に水を補給する頻度をより低減することができる。
【0012】
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽とが、水を共用していてもよい。このような構成では、液体燃料の気化に利用される水と不純物の除去に利用される水とが、気化器と除去器とで共用される。このため、比較的高温である燃料ガスが除去器に導入されると、燃料ガスから不純物を除去することができるとともに、水槽に貯留された水を昇温することができる。燃料ガスと燃焼ガスとにより気化器の水温が昇温されるため、より効率良くシステムを稼働させることができる。
【0013】
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽は、一体であってもよい。このような構成では、気化器と除去器の水槽が、1つの水槽で兼用されるため、システム構成が簡素化される。
【0014】
前記気化器の水槽と前記除去器の水槽は、別体であるとともに連通していてもよい。前記燃焼部から排出される前記燃焼ガスが、前記気化器の水槽に貯留された水と熱交換された後に前記除去器の水槽に貯留された水を通過するように構成されていてもよい。このような構成では、燃焼ガスが、液体燃料を気化させるための水槽に先に導入される。すなわち、気化器の水槽の水温を効率良く上昇させることができる。
【0015】
前記除去器の水槽に貯留された水を中和する中和器をさらに備えてもよい。除去器の水槽には、不純物が溶解する。これにより、水槽中の水のpHが変動する。上記の構成では、水槽中の水を中和する中和器を備えることにより、システムの腐食や水の異臭を抑制することができる。なお、前記中和器は、例えば、酸または塩基による中和反応を利用して水を中和してもよいし、緩衝液による緩衝作用を利用して水を中和してもよい。
【0016】
前記燃焼部から排出された前記燃焼ガスとの熱交換により、前記気化器により気化した前記気体燃料を昇温させる熱交換器をさらに備えてもよい。このような構成では、気化した気体燃料を改質器に導入する前に予め昇温することができる。また、燃焼ガスは降温されるため、水槽に貯留された水が過度に昇温されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の燃料電池システムの構成を示す概略図。
図2】実施例2の燃料電池システムの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)
以下、図面を参照して、実施例1の燃料電池システム(以下、単にシステムということがある。)1について説明する。図1に示すように、システム1は、液体燃料タンク4と、ポンプ6と、気化器12と、熱交換器14と、改質器16と、燃料電池20と、除去器22と、水素透過膜24と、水分分離器42と、を備えている。
【0019】
液体燃料タンク4は、液体燃料5を貯蔵する。本実施例では、液体燃料5として液体アンモニア(液体燃料の一例)が用いられる。液体燃料タンク4は、液体アンモニアを、例えば常温(20~25℃)かつ数気圧(8~10気圧)で貯蔵する。液体燃料タンク4は、アンモニアを液体状態で貯蔵するため、アンモニアの貯蔵効率が高い。
【0020】
ポンプ6は、液体燃料タンク4と気化器12との間を接続する液体アンモニア供給管30に配設されている。ポンプ6は、液体燃料タンク4に貯蔵された液体アンモニアを、気化器12に向けて送り出す。
【0021】
気化器12は、液体アンモニア供給管30に接続されている。気化器12は、液体アンモニア供給管30から流入する液体アンモニアを気化させ、気体アンモニア供給管32に送り出す。気化器12は、水槽12aと、蒸発器12bを有している。水槽12aには、水60が貯留されている。水槽12a内に貯留された水60の温度は、約70℃である。後述するが、本実施例では、気化器12の水槽12aと除去器22の水槽22aが、一体となっている。すなわち、水槽12aと水槽22aとが、水を共用している。気化器12に流入した液体アンモニアは、蒸発器12bを通過する過程で水槽12a内の水60との熱交換により気化され、気体アンモニア供給管32に送り出される。
【0022】
熱交換器14は、気化器12と改質器16との間を接続する気体アンモニア供給管32に配設されている。熱交換器14は、改質器16に導入される気体アンモニアを予熱するために設けられている。気体アンモニアは、改質器16から送出される燃料ガス及び燃焼ガス(後述)との熱交換により、約350~400℃まで昇温される。昇温された気体アンモニアは、改質器16に送り出される。
【0023】
改質器16は、気体アンモニア供給管32に接続されている。改質器16は、気体アンモニアを改質することで、水素を含有する燃料ガスを生成する。改質器16は、オートサーマル型の改質器である。改質器16は、気体アンモニアを改質する改質部16aと、気体アンモニアを燃焼させることにより改質部16aを加熱する燃焼部16bと、を有している。気体アンモニア供給管32を流通する気体アンモニアは、第1導入管32a及び第2導入管32bに分岐して、改質部16a及び燃焼部16bにそれぞれ導入される。改質部16a及び燃焼部16bに導入される気体アンモニアの量は、例えば、第1導入管32a及び第2導入管32bのそれぞれに設けられた開閉弁(不図示)によって適宜調整される。
【0024】
燃焼部16bは、不図示の空気供給管から供給される空気により、第2導入管32bから導入される気体アンモニアを酸化させることで熱を発生させる。改質部16aは、燃焼部16bで発生した熱によって気体アンモニアを改質し、気体アンモニアを水素及び窒素に分解する。改質部16aでは、約900℃まで昇温された燃料ガスが生成される。生成された燃料ガスは、第1送出管34aを通って燃料ガス流通管34に送り出される。なお、燃焼部16bでは、気体アンモニアを酸化させることにより、主に窒素と水分を含む燃焼ガスが発生する。燃焼部16bにおいて発生した燃焼ガスは、第2送出管34bを通って燃料ガス流通管34に送り出される。すなわち、燃料ガス流通管34には、改質部16aにおいて改質された燃料ガスと、燃焼部16bにおいて気体アンモニアの酸化により生成された燃焼ガスとの混合ガスが流通する。
【0025】
燃料ガスと燃焼ガスとの混合ガスは、燃料ガス流通管34を通って熱交換器14に導入される。当該混合ガスは、熱交換器14において、気化器12により気化された気体アンモニアとの熱交換により、降温される。降温された混合ガスは、燃料ガス流通管34を通って、除去器22に導入される。
【0026】
改質部16aで生成される燃料ガスには、改質部16aで改質(分解)されずに残存する残留アンモニア(不純物の一例)が存在する場合がある。除去器22は、燃料ガス(混合ガス)中に含有される残留アンモニアを水に溶解させることにより燃料ガスから除去する。除去器22は、水60が貯留された水槽22aを有している。本実施例では、除去器22の水槽22aと、気化器12の水槽12aとが、一体となって構成されている。すなわち、液体アンモニアを気化させるために利用される水60が、残留アンモニアを除去するための水60と共用される。燃料ガス流通管34は、水槽22aの水60の中まで延びており、燃料ガス流通管34を流通する混合ガスは、燃料ガス流通管34の先端部分に設けられた複数の排出孔34cから水槽22aの水60内に流出する。ここで、燃焼ガスに含まれる水分は、水槽22a内の水60として利用される。また、燃料ガスに含まれる残留アンモニアは、水60に溶解することにより、燃料ガス中から除去される。残留アンモニアが除去された混合ガスの大部分は、分離管38に導入される。
【0027】
水素透過膜24は、分離管38を介して除去器22に接続されている。水素透過膜24は、混合ガスに含有される気体の中から水素以外の成分を吸着する。水素以外の成分としては、窒素や窒素酸化物が含まれ得る。混合ガスが水素透過膜24を通過するときに、水素以外の成分が水素透過膜24に吸着され、水素のみが水素透過膜24を透過する。水素透過膜24を透過した水素は、水素供給管40に送り出される。水素供給管40は、燃料電池20のアノード20aに接続されており、当該水素は、燃料ガスとしてアノード20aに供給される。
【0028】
燃料電池20は、例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)である。燃料電池20は、複数のセルが積層されたスタック構造を有している。各セルは、アノード20aと、カソード20bと、アノード20aとカソード20bとの間に配置された電解質層(不図示)と、を有している。アノード20aは、水素供給管40に接続されている。アノード20aには、水素透過膜24を通過した水素(燃料ガス)が供給される。カソード20bは、空気供給管35を介して空気ブロワ26に接続されている。カソード20bには、空気ブロワ26により大気中から空気が供給される。燃料電池20は、水素供給管40から供給される燃料ガスと、空気供給管35から供給される空気とを利用して発電を行う。
【0029】
燃料電池20が発電すると、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが化学反応して生成された水(排出水)とともに、未反応の水素及び酸素を含む排ガスが排出される。このときの排ガスの温度は、約700℃である。排ガス及び排出水の混合物は、排出ガス流通管36を通って水分分離器42に導入される。水分分離器42は、排出ガス流通管36を流通する混合物から水分を除去する。すなわち、水分分離器42によって当該混合物から排出水が除去される。水分分離器42の構成は特に限定されない。例えば、冷却式エアドライヤ等によって排ガス及び排出水の混合物から、排出水を除去することができる。除去された水分は、矢印44に示すように、気化器12及び除去器22の水槽12a、22a内に供給される。
【0030】
排出ガス流通管36は、改質器16の燃焼部16bに接続されている。水分が除去された排ガスは、排出ガス流通管36を介して燃焼部16bに導入される。排ガスに含まれる水素は、改質部16aを加熱するための燃料として利用され、燃焼部16bにおいて燃焼される。また、排ガスに含まれる酸素は、燃焼部16bにおいて気体アンモニアの酸化反応に利用される。
【0031】
また、システム1は、中和器28を有している。上述したように、システム1を稼働させると、水槽12a、22aに貯留された水60には、アンモニアが溶解する。このため、システム1の稼働を継続すると、水60が塩基性を示すようになる。また、水槽12a、22a内には、燃焼部16bで発生した水分が供給されるため、水槽12a、22a内の水60の量が増加する。図1に示すように、中和器28は、水槽12a、22aから溢れた水62を中和する。具体的には、中和器28は、アンモニアが溶解した水62に対してクエン酸を投入することにより、中和反応を利用して水62を中和する。中和された水62は、排水として処理される。
【0032】
以上に説明したように、本実施例のシステム1では、気化器12の水槽12aと除去器22の水槽22aとが一体となっている。すなわち、液体アンモニアの気化に利用される水60を貯留する水槽12aと、残留アンモニアの除去に利用される水60を貯留する水槽22aとが1つの水槽で兼用されるため、システム構成を簡素化することができる。また、燃焼ガスには、気体アンモニアの燃焼により生じる水分が含まれる。このため、燃焼ガス(すなわち、燃料ガスと燃焼ガスとの混合ガス)を水槽12a、22aに供給することにより、水槽12a、22aに水を補給する頻度を低減することができる。
【0033】
また、燃料ガスと燃焼ガスとの混合ガスは、比較的高温(約900℃)であるため、当該混合ガスを水槽12a、22aに貯留された水60に導入すると、残留アンモニアが除去されるとともに、水60が昇温される。このように、本実施例では、燃焼部16bにおいて発生する燃焼ガスを効果的に利用することができ、燃焼ガス水槽12a、22aを一体とすることで、残留アンモニアの除去と、液体アンモニアの気化に要する水温を維持するためのエネルギーの供給とを同時に行うことができる。したがって、本実施例では、効率良くシステムを稼働させることができる。
【0034】
また、本実施例では、燃料電池20から排出された排ガスが、改質器16の燃焼部16bに供給される。燃料電池20から排出される排ガスには、燃料電池20において消費されずに(反応せずに)残留する水素や酸素が含まれる。このため、本実施例では、燃焼部16bにおいて、排ガスに含まれる未反応の水素を燃焼させることにより熱を発生させることができるとともに、排ガスに含まれる未反応の酸素を気体アンモニアの酸化反応に利用することができる。したがって、燃焼部16bで燃焼させる気体アンモニアの量を低減させることができるとともに、燃焼部16bに供給すべき酸素の量を低減することができる。
【0035】
また、本実施例では、燃料電池20から排出された排ガスに含まれる水分が、燃焼部16bに供給される前に水分分離器42によって除去される。すなわち、本実施例では、燃焼部16bにおいて、水(排ガスに含まれる水分)を昇温させるエネルギーを要さないため、効率良く改質部16aを加熱することができる。
【0036】
また、本実施例では、排ガスから除去された水分が、気化器12及び除去器22の水槽12a、22aに供給される。このため、水槽12a、22aに水を補給する頻度をより低減することができる。
【0037】
また、本実施例では、水槽12a、22aに貯留された水60を中和する中和器28を備えている。アンモニアが溶解した水60を中和器28により中和することができるため、システムの腐食や水の異臭を抑制することができる。また、中和された水62は略中性を示すため、排水として簡易に処理することができる。
【0038】
また、本実施例では、熱交換器14により、改質部16aにおいて生成された燃料ガスと、燃焼部16bにおいて発生した燃焼ガスとの混合ガスを降温させるとともに、気化器12により気化した気体アンモニアを昇温させる。このため、気体アンモニアを改質器16に導入する前に予め昇温することができる。また、混合ガスは降温されるため、水槽12a、22aに貯留された水60が過度に昇温されることを抑制することができる。
【0039】
(実施例2)
図2に示すように、実施例2の燃料電池システム100は、実施例1と異なり、気化器112の水槽112aと、除去器122の水槽122aが別体となっている。水槽112aと水槽122aとは、連通管114によって接続されている。すなわち、水槽112a及び水槽122a内の水は、連通管114を介して流通可能である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0040】
実施例2では、燃料ガス流通管34が気化器112の水槽112a内の水60を通過した後に、除去器122の水槽122aに導入される。すなわち、燃料ガス流通管34は、まず水槽112a内に進入し、連通管114を通って水槽122a内に導かれる。燃料ガス流通管34の排出孔34cは、除去器122の水槽122a内に位置するように設けられている。
【0041】
実施例2のシステム100では、燃料ガスと燃焼ガスとの混合ガスが、液体アンモニアを気化させるための水槽112a内に先に導入される。比較的高温の状態である混合ガスが水槽122aよりも先に水槽112a内に導入されるため、混合ガスと水槽112a内の水60との熱交換により、液体アンモニアの気化に要する水温を効率良く維持することができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下、上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0043】
(変形例)
上述した実施例では、液体燃料として液体アンモニアを使用する例について説明したが、例えば、炭化水素を含有する化合物や、アルコール等を液体燃料として使用してもよい。
【0044】
また、上述した実施例において、燃料電池20から排出される排ガスは、燃焼部16bに供給されなくてもよく、例えば、システムの外部に排出されてもよい。また、上述した実施例において、水分分離器42によって排ガスから除去された水分が、水槽12a、22aに供給されなくてもよいし、排出ガス流通管36に水分分離器42が設けられていなくてもよい。
【0045】
また、上述した実施例1において、気化器12の水槽12aと除去器22の水槽22aの水が共用されなくてもよい。すなわち、気化器12の水槽12aと除去器22の水槽22aの水が互いに流通不可能に構成されてもよい。このような構成であっても、気化器12の水槽12aの水または除去器22の水槽22aの水のいずれかに燃焼部16bにおいて発生した燃焼ガスが供給されることで、当該燃焼ガスを効果的に利用することができる。実施例2においても同様である。
【0046】
また、中和器28では、中和反応を利用して水62を中和する態様に代えて、緩衝液を投入し、緩衝液の緩衝作用を利用して水62を中和してもよい。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液を用いることができる。なお、中和器は設けられなくてもよい。
【0047】
また、上述した実施例において、熱交換器14は設けられなくてもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、改質部16aにおいて改質された燃料ガスと、燃焼部16bにおいて生成された燃焼ガスとが、燃料ガス流通管34内を共に流通して水槽12a、22aに導入されるように構成されていた。しかしながら、燃料ガスと燃焼ガスとが、別個の管を流通してそれぞれが水槽12a、22aに別々に導入されるように構成されてもよい。
【0049】
また、各実施例において、水素供給管40に水素を昇圧する昇圧機構を配置してもよい。例えば、水素供給管40にエゼクタやブロワ等を配置して、昇圧した水素を燃料電池20に供給してもよい。このような構成では、燃料電池20に燃料ガス(水素)を効率良く供給することができる。
【0050】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
1、100:燃料電池システム、4:液体燃料タンク、5:液体燃料、6:ポンプ、12:気化器、12a:水槽、14:熱交換器、16:改質器、16a:改質部、16b:燃焼部、20:燃料電池、22:除去器、22a:水槽、24:水素透過膜、26:空気ブロワ、28:中和器、42:水分分離器、60:水
図1
図2