(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100531
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】異材接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
B23K11/11 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001274
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康平
(72)【発明者】
【氏名】関口 智彦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 克浩
(72)【発明者】
【氏名】足立 裕
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 大祐
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 真
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AA32
4E165AB03
4E165AB04
4E165AB23
4E165BB02
4E165BB12
4E165BB25
(57)【要約】
【課題】貫通穴を有する金属板を接合する場合にも、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することが可能な異材接合方法を提供する。
【解決手段】笠部31と軸部33とを備えるリベット30と、軸部33よりも大きな径の貫通穴40aを有するアルミニウム板40および鉄板50,60と、上部電極3および下部電極5と、を用意する。笠部31、アルミニウム板40および鉄板50がこの順で並ぶように、軸部33が貫通穴40aに挿入されたリベット30並びにアルミニウム板40および鉄板50,60を、上部電極3と下部電極5との間に挟む工程と、リベット30並びにアルミニウム板40および鉄板50,60を加圧通電する加圧通電工程と、を含んでいる。加圧通電工程では、軸部33と鉄板50との間にナゲット71が生成され且つ軸部33と貫通穴40aとの隙間Cが埋まるように、高電流値で短時間の通電を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リベットを用いて、異なる金属材料からなる金属板を含む複数の金属板を抵抗溶接により接合する異材接合方法であって、
笠部と軸部とを備える金属製のリベットと、
上記リベットの軸部の外径よりも大きな径の貫通穴を有する、当該リベットと異なる金属材料で形成された第1の金属板、および、当該リベットと同じ金属材料で形成された第2の金属板を含む複数の金属板と、
第1および第2の電極と、を用意し、
上記笠部、第1の金属板および第2の金属板がこの順で並ぶように、上記軸部が上記貫通穴に挿入された上記リベットおよび積層された上記複数の金属板を、上記第1の電極と上記第2の電極との間に挟む工程と、
上記第1および第2の電極により上記リベットおよび複数の金属板を加圧通電する加圧通電工程と、を含み、
上記加圧通電工程では、上記軸部と上記第2の金属板との間にナゲットが生成されるとともに、上記第1の金属板を溶融させることで上記軸部と上記貫通穴との隙間が埋まるように、上記第1の金属板に上記軸部を貫通させるのに必要な電流値と同程度の電流値で短時間の通電を行うことを特徴とする異材接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異材接合方法に関し、特に、リベットを用いて複数の金属板を抵抗溶接により接合する異材接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、笠部と軸部とを備える金属製のリベットを用いて、異種金属部材を抵抗溶接により接合する異材接合方法が知られている。この異材接合方法では、例えば、笠部、軸部、アルミニウム板、鉄板の順で並ぶように、リベット、アルミニウム板および鉄板を2つの電極の間に挟み、これらを加圧通電して、アルミニウム板を貫通した軸部と鉄板との間にナゲットを生成し、笠部と鉄板との間にアルミニウム板を挟むことで、溶接が困難なアルミニウム板と鉄板とを接合する。
【0003】
ところで、例えば接合が不完全だったためアルミニウム板と鉄板とが離れたような場合には、古いリベットを除去した後、最初の接合時にリベットが貫通することで形成された穴に、新しいリベットを挿入して補修(再溶接)を行うことが知られている。そうして、かかる再溶接の際には、既にアルミニウム板に貫通孔が形成されていることから、リベットと鉄板との間にナゲットを形成するだけでよいので、通常の鉄スポットの溶接条件(相対的に低い電流値)を適用するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、このような通常の鉄スポットの溶接条件を適用した再溶接では、アルミニウム板(より正確には貫通穴を区画する壁面)と挿入したリベットとの間に隙間が存在するため、強度を十分に確保することが困難になるという問題がある。
【0005】
ここで、再溶接に関するものではないが、例えば特許文献1には、孔が形成された部品をボルトによって基本部品に取り外し不能に固定するための方法として、孔に挿入したボルトの先端面を基本部品の表面に電気溶接するとともに、加熱されて軟化したボルトの軸部を潰して(軸直行方向に膨らむように塑性変形させて)、孔との隙間を埋める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の手法を、再溶接に適用すれば、潰れた軸部によってアルミニウム板とリベット(ボルト)との間の隙間が埋められることから、強度を確保することが可能とも思える。
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法では、軸部が塑性変形することで、アルミニウム板とリベットとの間の隙間を埋めるような補強用リベットを別途用意しなければならないことから、製造コストが嵩むという問題がある。
【0009】
なお、このような問題は、接合不良が生じた場合の再溶接に限らず、元々リベットの軸部の外径よりも大きな径の貫通穴を有する金属板を接合する場合にも、当て嵌まる問題である。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貫通穴を有する金属板を接合する場合にも、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することが可能な異材接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る異材接合方法では、補強用リベットを別途用意することなく、高電流値で短時間の通電を行うことで、ナゲットを生成させるとともに、リベットと貫通穴との隙間を埋めるようにしている。
【0012】
具体的には、本発明は、リベットを用いて、異なる金属材料からなる金属板を含む複数の金属板を抵抗溶接により接合する異材接合方法を対象としている。
【0013】
そして、この異材接合方法は、笠部と軸部とを備える金属製のリベットと、上記リベットの軸部の外径よりも大きな径の貫通穴を有する、当該リベットと異なる金属材料で形成された第1の金属板、および、当該リベットと同じ金属材料で形成された第2の金属板を含む複数の金属板と、第1および第2の電極と、を用意し、上記笠部、第1の金属板および第2の金属板がこの順で並ぶように、上記軸部が上記貫通穴に挿入された上記リベットおよび積層された上記複数の金属板を、上記第1の電極と上記第2の電極との間に挟む工程と、上記第1および第2の電極により上記リベットおよび複数の金属板を加圧通電する加圧通電工程と、を含み、上記加圧通電工程では、上記軸部と上記第2の金属板との間にナゲットが生成されるとともに、上記第1の金属板を溶融させることで上記軸部と上記貫通穴との隙間が埋まるように、上記第1の金属板に上記軸部を貫通させるのに必要な電流値と同程度の電流値で短時間の通電を行うことを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、貫通穴に挿入されたリベットの軸部と第2の金属板とを溶接する際に、第1の金属板に軸部を貫通させるのに必要な電流値と同程度の電流値で、換言すると、通常の鉄スポットの場合よりも高い電流値で通電を行うことから、軸部と第2の金属板との間にナゲットが生成されるのみならず、第1の金属板を溶融させて軸部と貫通穴との隙間を埋めることができる。
【0015】
このように、高電流値で通電を行うことで、補強用リベットを別途用意することなく、軸部と貫通穴との隙間を埋めることができるので、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することができる。
【0016】
加えて、高電流値での通電を短時間にとどめることから、溶融した第1の金属の体積膨張を、リベットの笠部で押さえることが可能となるので、溶融した第1の金属が放出してバリとなるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る異材接合方法によれば、貫通穴を有する金属板を接合する場合にも、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る異材接合方法の概要を模式的に説明する図である。
【
図2】
図2(a)は抵抗溶接装置の要部を模式的に示す図であり、
図2(b)は異材接合方法における通電パターンを模式的に示す図である。
【
図3】
図3(a)は一般的な通電パターンを模式的に示す図であり、
図3(b)は高電流を長時間印加した場合を模式的に説明する図である。
【
図4】せん断強度の試験結果を模式的に示すグラフ図である。
【
図5】従来の接合不良時の対応を模式的に説明する図である。
【
図6】従来の異材接合方法の一例を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1~
図6では、図を見易くするために、リベット30、アルミニウム板40および鉄板50,60等を断面図で表している。
【0020】
-装置構成-
図1は、本実施形態に係る異材接合方法の概要を模式的に説明する図である。また、
図2(a)は抵抗溶接装置1の要部を模式的に示す図であり、
図2(b)は異材接合方法における通電パターンを模式的に示す図である。この異材接合方法は、
図1(b)に示すように、抵抗溶接装置1を使用して、リベット30を用いて、異なる金属材料からなる金属板を含む複数の金属板40,50,60を抵抗溶接により接合するものである。なお、本実施形態では、「複数の金属板」として、アルミニウム板40および鉄板50,60を例示しているが、各金属板の材種は、アルミニウムと鉄に限定されない。
【0021】
抵抗溶接装置1は、
図2(a)に示すように、上部電極3と、下部電極5と、を備えている。上部電極(第1の電極)3は、円柱状に形成されていて、先端面が平坦なフラット電極として構成されている。この上部電極3は、積層されたアルミニウム板40および鉄板50,60に対して、リベット30を下方に押圧するようになっている。下部電極(第2の電極)5は、略円柱状に形成されていて、先端面が球面状のラジアス電極として構成されている。この下部電極5は、上下に積層されたアルミニウム板40および鉄板50,60を挟んで上部電極3と対向するように設けられていて、アルミニウム板40および鉄板50,60を上方へ押圧するようになっている。
【0022】
本実施形態では、リベット30として、
図2(a)に示すように、略円盤状の笠部31と、笠部31の中央部から下方へ延びる軸部33と、笠部31の周縁部から軸部33と同じ向きに延びて、軸部33との間に溝37を形成する外周壁部35と、を有する鉄製のものを用いる。リベット30は、笠部31が積層方向と直交するように抵抗溶接装置1にセットされる。
【0023】
以上のように構成された抵抗溶接装置1およびリベット30を用いて、異なる金属材であるアルミニウム板40と鉄板50,60とを接合する場合、通常は、笠部31、軸部33、アルミニウム板40、鉄板50、鉄板60の順で上から下に並ぶように、リベット30、アルミニウム板40、鉄板50および鉄板60を、上部電極3と下部電極5との間に挟み込んだ後、これらリベット30、アルミニウム板40、鉄板50および鉄板60に対して、上部電極3および下部電極5で圧を加えながら、電流を印加する。
【0024】
このとき、一般的には、
図3(a)に示すように、通電初期は相対的に高い電流を短時間印加することで、リベット30の軸部33をアルミニウム板40に貫通させる。そうして、通電中期以降は、リベット30の軸部33がアルミニウム板40を貫通しており、鉄同士(リベット30と鉄板50,60と)のスポット溶接となるため、相対的に低い電流を長時間印加することで、アルミニウム板40を貫通した軸部33と鉄板50,60との間に、
図2(a)に示すようなナゲット70を生成させる。
【0025】
このようにして、鉄製のリベット30の軸部33と鉄板50,60とを溶接し、リベット30の笠部31と鉄板50との間にアルミニウム板40を挟むことで、溶接が困難なアルミニウム板40と鉄板50とを接合するのが、一般的な異材接合方法である。
【0026】
もっとも、本実施形態では、
図1(a)および
図2(a)に示すように、抵抗溶接の前に、既にアルミニウム板40が貫通穴40aを有していることから、以下に説明するように、上述した一般的な異材接合方法とは異なる手法を用いて異材同士の接合を行うようにしている。
【0027】
-従来の接合不良時の対応-
ここで、本実施形態を理解し易くするために、従来の接合不良時の対応(補修)について説明する。
図5は、従来の接合不良時の対応を模式的に説明する図である。なお、
図5に示す従来の対応においても、本実施形態と同じ、抵抗溶接装置1およびリベット30を用いるものとする。
【0028】
図5(a)に示すように、リベット30’と鉄板50とに接合不良が生じた(例えば、鉄板50と鉄板60との間にナゲット70は形成されたが、リベット30’とナゲット70とが接合されなかった)ため、アルミニウム板40と鉄板50とに離れが発生してしまったと仮定する。
【0029】
この場合には、古いリベット30’を除去するとともに、新しいリベット30を用いて補修を行うが、古いリベット30’の除去時にアルミ母材もある程度除去するため、補修時には、
図5(b)に示すように、新しいリベット30の軸部33の外径よりも大きい内径の貫通穴40aが、アルミニウム板40に形成された状態となる。それ故、補修時には、貫通穴40aに挿入された新しいリベット30の軸部33と、貫通穴40aとの間に隙間Cが生じている。
【0030】
そうして、
図5(c)に示すように、上部電極3および下部電極5で圧を加えながら、電流を印加するが、この場合、鉄同士(リベット30と鉄板50,60と)のスポット溶接となるため、相対的に低い電流を、相対的に長い時間をかけて印加することで、鉄板50,60との間に生成されたナゲット70と軸部33とを溶接する。このように、相対的に低い電流を印加することから、アルミニウム板40には通電による影響が及ばないため、リベット30の軸部33と貫通穴40aとの間には隙間Cが生じたままである。
【0031】
以上のようにして、リベット30の軸部33と、鉄板50,60との間に生成されたナゲット70と、を再溶接することで補修が完了するが、補修後の異材接合部材110では、
図5(d)に示すように、リベット30の軸部33と貫通穴40aとの間には隙間Cが存在したままである。このため、従来の対応では、アルミニウム板40とリベット30との間から破断が生じるため、異材接合部材110の接合強度(せん断強度)が低下するという問題がある。
【0032】
ここで、再溶接に関するものではないが、
図6に示すような異材接合方法を採用することが考えられる。
図6に示す従来の異材接合方法は、孔140aが形成された部品140をボルト130によって基本部品150に取り外し不能に固定するための方法であり、孔140aに挿入したボルト130の先端面を基本部品150の表面に電気溶接するとともに、加熱されて軟化したボルト130の軸部133を潰して(軸直行方向に膨らむように塑性変形させて)、孔140aとの隙間を埋めるものである。この従来の異材接合方法を、再溶接に適用すれば、潰れた軸部によってアルミニウム板40とリベットとの間の隙間Cが埋められることから、強度を確保することが可能とも思える。
【0033】
しかしながら、この従来の異材接合方法では、軸部が塑性変形することで、アルミニウム板40とリベットとの間の隙間を埋めるような補強用リベットを別途用意しなければならないことから、製造コストが嵩むという問題がある。
【0034】
-異材接合方法-
そこで、本実施形態に係る異材接合方法では、補強用リベットを別途用意することなく、高電流値で短時間の通電を行うことで、ナゲット71を生成させるとともに、リベット30と貫通穴40aとの隙間Cを埋めるようにしている。
【0035】
具体的には、本実施形態の異材接合方法では、
図1(a)に示すように、笠部31、アルミニウム板(第1の金属板)40および鉄板(第2の金属板)50がこの順で並ぶように、軸部33が貫通穴40aに挿入された新たなリベット30並びに積層されたアルミニウム板40および鉄板50,60を、上部電極3と下部電極5との間に挟む工程と、上部電極3および下部電極5によりリベット30およびアルミニウム板40および鉄板50,60を加圧通電する加圧通電工程と、を含むようにしている。
【0036】
そうして、加圧通電工程では、
図1(b)に示すように、軸部33と鉄板50との間にナゲット71が生成されるとともに、アルミニウム板40における貫通穴40aの近傍を溶融させることで、溶融アルミニウム41によって軸部33と貫通穴40aとの隙間Cが埋まるように、相対的に高い電流値で短時間の通電を行うようにしている。
【0037】
ここで、軸部33と鉄板50との間にナゲット71を生成するために、
図3(a)に示すような、ナゲット70生成のための相対的に低い電流を印加した場合には、上述の如く、アルミニウム板40には通電による影響が及ばないので、リベット30の軸部33と貫通穴40aとの間に隙間Cが残ったままである。
【0038】
それ故、本実施形態における「相対的に高い電流値」とは、アルミニウム板40に軸部33を貫通させるのに必要な電流値と同程度の高い電流値を指す。このように、本実施形態の異材接合方法では、アルミニウム板40に軸部33を貫通させるのに必要な電流値と同程度の電流値で通電を行うことから、アルミニウム板40を溶融させて、
図1(b)に示すように、軸部33と貫通穴40aとの隙間Cを埋めることができる。これにより、
図1(c)に示すように、既に鉄板60との間にナゲット70が生成されている鉄板50と、アルミニウム板40の貫通穴40aに挿入されたリベット30の軸部33と、の間にナゲット71が生成されるとともに、軸部33と貫通穴40aとの隙間Cが埋められた異材接合部材10を製造することが可能となる。
【0039】
また、
図3(a)に示すような、ナゲット70生成のための相対的に長時間の通電において、仮に、相対的に高い電流値(アルミニウム板40に軸部33を貫通させるのに必要な電流値と同程度の電流値)を用いると、「溶融アルミニウム41の体積膨張」が「リベット30の笠部31で押さえる力」を超えてしまうため、
図3(b)の太線矢印で示すように、溶融アルミニウム41がリベット30の笠部31の外に放出されてしまい、バリになるおそれがある。
【0040】
この点、本実施形態の異材接合方法では、相対的に高い電流値で短時間の通電を行うことと、古いリベット30’の除去時にアルミ母材もある程度除去されていることとが相俟って、相対的に高い電流を流しても、膨張するアルミニウムの体積を小さくすることができる。それ故、「溶融アルミニウム41の体積膨張」が「リベット30の笠部31で押さえる力」を超えないことから、バリが発生するのを抑えることができる。
【0041】
-試験結果-
次に、本実施形態の異材接合方法の効果を確認するために行った試験について説明する。試験は、接合不良のない異材接合部材、
図5に示した従来の手法で補修した異材接合部材110(従来例)、および、本実施形態の異材接合方法で補修した異材接合部材10(実施例)の3水準について、JIS規格Z2201-5号に規定されている試験片に加工した後、引張試験を行った。
【0042】
図4は、せん断強度の試験結果を模式的に示すグラフ図である。
図4に示すように、軸部33と貫通穴40aとの隙間Cが残ったままの従来例では、接合不良のない異材接合部材に比して、引張せん断強度が約25%も低下したのに対し、実施例では接合不良のない異材接合部材と同程度の引張せん断強度を確保できることが確認された。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る異材接合方法によれば、貫通穴40aを有する金属板を接合する場合にも、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0045】
上記実施形態では、3枚の金属板(アルミニウム板40および鉄板50,60)を接合するようにしたが、これに限らず、例えば、4枚以上の金属板を接合するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、接合不良時の補修に本発明を適用したが、これに限らず、例えば貫通穴を有する金属板を新規に接合する場合に、本発明を適用してもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、金属板の積層方向および押圧方向が上下方向と一致するようにしたが、これに限らず、積層方向および押圧方向が、例えば上下方向から傾いた方向や水平方向と一致するようにしてもよい。
【0048】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によると、貫通穴を有する金属板を接合する場合にも、製造コストの増大を抑制しつつ、強度を十分に確保することができるので、リベットを用いて複数の金属板を抵抗溶接により接合する異材接合方法に適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0050】
3 上部電極(第1の電極)
5 下部電極(第2の電極)
30 リベット
31 笠部
33 軸部
40 アルミニウム板(第1の金属板)
40a 貫通穴
50 鉄板(第2の金属板)
71 ナゲット
C 隙間