(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100533
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】コネクタ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01R 12/88 20110101AFI20230711BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H01R12/88
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001281
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】萬場 洋輔
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB05
5E021FB08
5E021FB14
5E021FB20
5E021FC09
5E021FC40
5E021HC16
5E223AA11
5E223AA21
5E223AB06
5E223AB28
5E223AB45
5E223AC21
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB29
5E223CB39
5E223CC15
5E223CD01
5E223CD24
5E223DA05
5E223DA23
5E223DB09
5E223DB11
5E223DB23
5E223DB25
5E223EA04
5E223EA14
5E223EC07
5E223EC22
5E223EC34
5E223EC47
(57)【要約】
【課題】低背化しても信頼性を維持可能なコネクタを提供する。
【解決手段】本開示に係るコネクタ10は、接続対象物70が挿入される挿入部23を有するインシュレータ20と、インシュレータ20に対して回転可能なアクチュエータ50と、を備え、アクチュエータ50は、アクチュエータ50におけるコネクタ10の長手方向の両端部にそれぞれ形成されてインシュレータ20に対するアクチュエータ50の取り付けを可能にする一対の取付部53bと、アクチュエータ50の第1外面51aにおいて一対の取付部53bの間に形成されている操作部55と、アクチュエータ50において第1外面51aと反対側に位置する第2外面51bにおいて一対の取付部53bの間に形成されている被係合部と、を有し、インシュレータ20は、少なくともアクチュエータ50が開位置にあるときに、被係合部と開位置側から係合する係合部を有する。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物を挿抜可能なコネクタであって、
前記接続対象物が挿入される挿入部を有するインシュレータと、
前記インシュレータに対して閉じたときの閉位置と、前記インシュレータに対して開いたときの開位置と、の間で前記インシュレータに対して回転可能なアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータにおける前記コネクタの長手方向の両端部にそれぞれ形成されて前記インシュレータに対する前記アクチュエータの取り付けを可能にする一対の取付部と、
前記コネクタに対する前記接続対象物の挿抜方向を向く前記アクチュエータの第1外面において前記一対の取付部の間に形成されている操作部であって、前記閉位置から前記開位置へと前記アクチュエータを開く操作を受ける前記操作部と、
前記アクチュエータにおいて前記第1外面と反対側に位置する第2外面において前記一対の取付部の間に形成されている被係合部と、
を有し、
前記インシュレータは、少なくとも前記アクチュエータが開位置にあるときに、前記被係合部と前記開位置側から係合する係合部を有する、
コネクタ。
【請求項2】
前記被係合部は、前記係合部に向けて前記第2外面から突出する凸部を含み、
前記係合部は、前記凸部を受け入れる凹部又は孔部を含む、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記被係合部は、前記凸部において前記第2外面から連続して傾斜する傾斜面を含み、
前記傾斜面は、前記係合部における前記開位置側の内面と対向する、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記凸部の前記開位置側における前記第2外面との隣接部分は、前記係合部により前記開位置側に形成されている前記インシュレータの角部と対向する、
請求項2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記インシュレータは、前記アクチュエータが前記開位置にあるときに、前記第2外面と接触する規制面を有する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記被係合部は、前記アクチュエータが前記開位置にあるときに前記係合部と係合し、前記アクチュエータが前記閉位置にあるときに前記係合部から離間して前記係合部と係合しない、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記被係合部は、前記アクチュエータが前記開位置にあるときに前記係合部における前記開位置側の内面と前記長手方向及び前記挿抜方向に直交する方向に対向し、前記アクチュエータが前記閉位置にあるときに前記内面と対向しない、
請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記被係合部及び前記係合部の組は、前記操作部における前記長手方向の両端部の少なくとも一方に対応する位置に形成されている、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記アクチュエータが前記開位置にあるときに前記アクチュエータを前記閉位置に向けて付勢する押圧部材を備え、
前記取付部は、前記押圧部材による前記開位置側からの付勢力を受けて前記インシュレータに対する前記アクチュエータの取り付けを可能にする、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のコネクタを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器及び車載部品などにおいて、フレキシブルフラットケーブル(FFC)及びフレキシブルプリント回路基板(FPC)などを含む接続対象物とこのような接続対象物と接続されるコネクタとが使用されていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、接続対象物の接続状態を保持するためのロック部材を小さい付勢力でロック方向に回転付勢した場合においても、接続対象物が不意にインシュレータから引き抜かれてしまうおそれを効果的に抑制できるケーブル用コネクタが開示されている。このようなケーブル用コネクタは、接続対象物を挿入する動作のみでロック部材によるロック状態を実現可能であり、優れた作業性を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器及び車載部品などの小型化に伴い、接続対象物と接続されるコネクタに対しても低背化が要求されている。例えば特許文献1に記載のようなケーブル用コネクタを低背化するためには、当該コネクタの一部を構成するロック部材としてのアクチュエータを薄型化する必要がある。アクチュエータが薄型化されると、アクチュエータを閉位置から開位置へと開く動作により接続対象物に対するロック状態を解除するときに、アクチュエータの操作部でアクチュエータが開方向に撓みやすくなる。これにより、アクチュエータの回動安定性の低下、アクチュエータの破損、及びコネクタからのアクチュエータの外れなどといった問題が生じやすかった。したがって、コネクタとしての信頼性が低下していた。特許文献1では、このような問題について十分に考慮されていなかった。
【0006】
このような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、低背化しても信頼性を維持可能なコネクタ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係るコネクタは、
接続対象物を挿抜可能なコネクタであって、
前記接続対象物が挿入される挿入部を有するインシュレータと、
前記インシュレータに対して閉じたときの閉位置と、前記インシュレータに対して開いたときの開位置と、の間で前記インシュレータに対して回転可能なアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータにおける前記コネクタの長手方向の両端部にそれぞれ形成されて前記インシュレータに対する前記アクチュエータの取り付けを可能にする一対の取付部と、
前記コネクタに対する前記接続対象物の挿抜方向を向く前記アクチュエータの第1外面において前記一対の取付部の間に形成されている操作部であって、前記閉位置から前記開位置へと前記アクチュエータを開く操作を受ける前記操作部と、
前記アクチュエータにおいて前記第1外面と反対側に位置する第2外面において前記一対の取付部の間に形成されている被係合部と、
を有し、
前記インシュレータは、少なくとも前記アクチュエータが開位置にあるときに、前記被係合部と前記開位置側から係合する係合部を有する。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る電子機器は、
上記のコネクタを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係るコネクタ及び電子機器によれば、低背化しても信頼性を維持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】非挿入状態にある一実施形態に係るコネクタ及び接続対象物を上面視で示した外観斜視図である。
【
図2】
図1のコネクタ及び接続対象物を下面視で示した外観斜視図である。
【
図4】挿入状態でかつ閉状態にある一実施形態に係るコネクタ及び接続対象物を上面視で示した外観斜視図である。
【
図5】挿入状態でかつ開状態にある一実施形態に係るコネクタ及び接続対象物を上面視で示した外観斜視図である。
【
図7】
図3のアクチュエータ単体を下面視で示した外観斜視図である。
【
図8】
図1のVIII-VIII矢線に沿う断面図である。
【
図11】
図1のXI-XI矢線に沿う断面図である。
【
図12】
図4のXII-XII矢線に沿う断面図である。
【
図13】
図5のXIII-XIII矢線に沿う断面図である。
【
図14】
図1のXIV-XIV矢線に沿う断面図である。
【
図15】
図4のXV-XV矢線に沿う断面図である。
【
図16】
図5のXVI-XVI矢線に沿う断面図である。
【
図17】
図1のXVII-XVII矢線に沿う断面図である。
【
図18】
図4のXVIII-XVIII矢線に沿う断面図である。
【
図19】
図5のXIX-XIX矢線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について詳細に説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、異なる図面同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、後述する回路基板CBの図示を省略する。
【0012】
図1は、非挿入状態にある一実施形態に係るコネクタ10及び接続対象物70を上面視で示した外観斜視図である。
図2は、
図1のコネクタ10及び接続対象物70を下面視で示した外観斜視図である。
図3は、
図1のコネクタ10の分解斜視図である。
図4は、挿入状態でかつ閉状態にある一実施形態に係るコネクタ10及び接続対象物70を上面視で示した外観斜視図である。
図5は、挿入状態でかつ開状態にある一実施形態に係るコネクタ10及び接続対象物70を上面視で示した外観斜視図である。
図1乃至
図5を参照しながら、一実施形態に係るコネクタ10の構成及び接続対象物70の構成について主に説明する。
【0013】
図3に示すとおり、コネクタ10は、インシュレータ20と、第1コンタクト30と、第2コンタクト40aと、金具40bと、アクチュエータ50と、押圧部材60と、を有する。第1コンタクト30、第2コンタクト40a、金具40b、アクチュエータ50、及び押圧部材60は、インシュレータ20に取り付けられる。アクチュエータ50は、閉位置において、押圧部材60の先端部分がアクチュエータ50の直上に位置した状態でインシュレータ20により下方から支持される。
【0014】
本明細書において、「非挿入状態」は、例えばコネクタ10に対して接続対象物70が挿入されていない状態であって、コネクタ10の第1コンタクト30が弾性変形していない状態を含む。「半挿入状態」は、例えばコネクタ10に対して接続対象物70が挿入されている途中の状態であって、第1コンタクト30の後述する除去部36のみが接続対象物70と接触して第1コンタクト30が弾性変形している状態を含む。「挿入状態」は、例えばコネクタ10に対して接続対象物70が挿入された状態であって、第1コンタクト30の後述する接触部35のみが接続対象物70と接触して第1コンタクト30が弾性変形している状態を含む。
【0015】
本明細書において、「閉位置」は、例えばインシュレータ20に対してアクチュエータ50が閉じたときのアクチュエータ50の位置を含む。コネクタ10及び接続対象物70が挿入状態にあり、かつアクチュエータ50が閉位置にあることで、コネクタ10は接続対象物70を保持する。「開位置」は、例えばインシュレータ20に対してアクチュエータ50が所定の角度で傾斜して開いたときのアクチュエータ50の位置を含む。アクチュエータ50は、例えば、閉位置と開位置との間でインシュレータ20に対して回転可能である。
【0016】
本明細書において、「閉状態」は、例えばアクチュエータ50が閉位置にあるときのコネクタ10の状態を含む。「開状態」は、例えばアクチュエータ50が開位置にあるときのコネクタ10の状態を含む。
【0017】
以下で使用する「挿抜方向」は、一例として前後方向を意味する。「挿入方向」は、一例として後方向を意味する。「接触部35が突出している方向」は、一例として上方向を意味する。「接触部35が突出している方向と反対方向」は、一例として下方向を意味する。「接触部35が突出している方向及び挿入方向に直交する方向」は、一例として左右方向を意味する。一実施形態に係るコネクタ10では、接触部35が突出している方向及び挿入方向に直交する方向は、第1コンタクト30の板厚方向に対応する。「コネクタ10の長手方向」は、一例として左右方向を意味する。「コネクタ10の長手方向及び挿抜方向に直交する方向」は、一例として上下方向を意味する。「抜去側」は、一例として前側を意味する。「挿入側」は、一例として後側を意味する。「挿入口23a側」は、一例として前側を意味する。「開位置側」は、一例として上側を意味する。「閉位置側」は、一例として下側を意味する。
【0018】
一実施形態に係るコネクタ10は、回路基板CBに実装されている。回路基板CBは、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。コネクタ10は、コネクタ10に挿入された接続対象物70と回路基板CBとを、第1コンタクト30及び第2コンタクト40aを介して電気的に接続する。コネクタ10は、接続対象物70を挿抜可能であり、挿入状態で接続対象物70と接続される。
【0019】
以下では、接続対象物70は、コネクタ10が実装されている回路基板CBに対して平行方向にコネクタ10に挿入されるとして説明する。すなわち、接続対象物70は、一例として前後方向に沿ってコネクタ10に挿入される。これに限定されず、接続対象物70は、コネクタ10が実装されている回路基板CBに対して直交方向にコネクタ10に挿入されてもよい。すなわち、接続対象物70は、上下方向に沿ってコネクタ10に挿入されてもよい。
【0020】
接続対象物70は、一例として、フレキシブルフラットケーブル(FFC)である。しかしながら、これに限定されず、接続対象物70は、コネクタ10を介して回路基板CBと電気的に接続されるものであれば、任意のケーブルであってよい。例えば、接続対象物70は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。接続対象物70は、上記のようなケーブルに限定されず、任意の対象物を含んでもよい。例えば、接続対象物70は、リジッド基板又はそれ以外の任意の回路基板を含んでもよい。
【0021】
図1及び
図2を参照すると、接続対象物70は、接続対象物70の挿入側に位置しかつ挿入状態においてコネクタ10に収容される先端部71を有する。接続対象物70は、先端部71において接続対象物70の挿入側の端面を構成する先端面72を有する。接続対象物70は、コネクタ10に対する挿抜方向に沿って直線的に延びかつ先端面72まで延びる複数の信号線73を有する。接続対象物70は、接続対象物70の抜去側で信号線73を覆う外装74を有する。信号線73は、接続対象物70の抜去側で外装74によって覆われている一方で、先端部71において下方に露出している。
【0022】
接続対象物70は、先端部71における挿入側の左右両側部に形成されている保持部75を有する。接続対象物70は、保持部75と抜去側で隣接し、先端部71の左右両側縁部を切り欠いて形成されている被ロック部76を有する。接続対象物70は、保持部75の挿入側の角部においてR形状として形成されている誘い込み部77を有する。
【0023】
図3を参照すると、コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。すなわち、インシュレータ20の後方から第1コンタクト30をインシュレータ20の内部に圧入する。インシュレータ20の前方から第2コンタクト40a及び金具40bをインシュレータ20の内部に圧入する。インシュレータ20に対してアクチュエータ50を上方から閉位置に配置して、インシュレータ20により下方からアクチュエータ50が支持されている状態でインシュレータ20の後方から押圧部材60をインシュレータ20に圧入する。このとき、押圧部材60の先端部分は、インシュレータ20に支持されているアクチュエータ50の直上に位置する。
【0024】
図6は、
図3のインシュレータ20単体の上面図である。
図3及び
図6を参照しながらインシュレータ20の構成について主に説明する。
【0025】
インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した左右対称の箱形の部材である。これに限定されず、インシュレータ20は、左右非対称に形成されていてもよい。インシュレータ20は、上下左右方向の4つの外壁を有し、全体として矩形状に形成されている外周壁21を有する。外周壁21は、天井壁21aと、底壁21bと、一対の側壁21cと、を有する。インシュレータ20は、インシュレータ20の後部を構成する後壁22を有する。
【0026】
インシュレータ20は、天井壁21a、底壁21b、一対の側壁21c、及び後壁22によって囲まれる挿入部23を有する。インシュレータ20は、前端部において開口として形成されている挿入部23の挿入口23aを有する。インシュレータ20は、側壁21cの前端部において前後方向の外側から内側に向かうほど左右方向の内側に傾斜し挿入部23と連続する第1傾斜面23bを有する。インシュレータ20は、挿入部23の前端部に形成され、前後方向の外側から内側に向かうほど上下方向の内側に傾斜する第2傾斜面23cを有する。挿入部23は、例えば後述する
図17において示すとおり、挿入状態で挿入方向における接続対象物70の先端面72の位置決めの基準となる内面23dを有する。
【0027】
インシュレータ20は、後壁22を貫通して、底壁21bの上下方向の内側で前後方向の全体にわたり延設されている第1コンタクト取付溝24を有する。インシュレータ20は、天井壁21a及び底壁21bで前後方向の全体にわたり延設されている第2コンタクト取付溝25を有する。第2コンタクト取付溝25は、天井壁21aの上下方向の内側に凹設されている。第2コンタクト取付溝25は、底壁21bの上下方向の内側に凹設されている。
【0028】
複数の第1コンタクト取付溝24は、互いに所定の間隔で離間して左右方向に配列されている。複数の第2コンタクト取付溝25は、互いに所定の間隔で離間して左右方向に配列されている。互いに隣り合う一対の第2コンタクト取付溝25の左右方向の間隔は、互いに隣り合う一対の第1コンタクト取付溝24の左右方向の間隔よりも大きい。第2コンタクト取付溝25は、一対の第1コンタクト取付溝24によって左右方向の両側から挟まれている。
【0029】
インシュレータ20は、側壁21cの前側の下端部において内側に凹設されている金具取付溝26を有する。インシュレータ20は、天井壁21aの全体及び側壁21cの一部にわたり凹設されている取付部27を有する。インシュレータ20は、取付部27内に位置し、天井壁21aの外面において下方に凹設されている複数の凹部27aを有する。
【0030】
インシュレータ20は、取付部27と隣接する後壁22の前面において、前方から後方に向けて斜め上方に傾斜する規制面27bを有する。規制面27bは、天井壁21aの外面から連続して斜め上方に立ち上がるように後壁22において形成されている。インシュレータ20は、取付部27と隣接する後壁22の前面から後壁22の後面に至るまで前後方向に沿って貫設されている孔部27cを有する。孔部27cは、後壁22の左右方向の中央部を挟んで左右両側にそれぞれ3つずつ対称的に形成されている。孔部27cは、特許請求の範囲に記載の「係合部」に対応する。
【0031】
インシュレータ20は、側壁21cの左右方向の内側に凹設されている取付溝28を有する。インシュレータ20は、取付溝28の前部から挿入部23の内部まで上下方向に貫通する貫通孔28aを有する。インシュレータ20は、側壁21cの左右方向の中央部に凹設されている受入部29を有する。インシュレータ20は、受入部29の下端において、側壁21cにおける左右方向の最外部を左右方向の内側から外側に切り欠くように凹設されている凹部29aを有する。
【0032】
第1コンタクト30は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図3に示す形状に成形加工したものである。第1コンタクト30は、例えば抜き加工の工程のみで形成されている。第1コンタクト30の加工方法はこれに限定されず、例えば抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。第1コンタクト30の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫などによる表層めっきが施されている。複数の第1コンタクト30は、互いに所定の間隔で離間して左右方向に配列されている。
【0033】
第1コンタクト30は、上下前後方向に幅広に形成されている係止部31を有する。第1コンタクト30は、係止部31の前側の上端部から前方に向けて直線状に延出する延出部31aを有する。第1コンタクト30は、係止部31の下端部から後側に向けてL字状に延出する実装部32を有する。第1コンタクト30は、係止部31の前側の下端部から前方に向けて延出する弾性変形可能な弾性部33を有する。弾性部33は、係止部31の前側の下端部から前方の挿入口23aに向けて斜め上方に直線状に延出する。弾性部33は、上下方向に沿って弾性変形可能である。
【0034】
第1コンタクト30は、弾性部33と接続されている接触片34を有する。接触片34は、弾性部33の前端部から鈍角で屈曲しながら挿入部23の挿入口23a側に延出する。接触片34は、弾性部33側で上方に山状に突出する接触部35と、接触部35よりも挿入部23の挿入口23a側に位置する除去部36と、を有する。除去部36は、接触片34の前端部において上方に山状に突出する。接触部35と除去部36とは、前後方向に沿って互いに所定の間隔で離間する。接触片34は、接触片34において接触部35が突出している方向と反対方向に弾性部33から屈曲しながら挿入口23a側に延出する。接触片34は、弾性部33と同様に弾性変形可能に形成されていてもよい。
【0035】
後述の
図17乃至
図19に示すとおり、接触部35は、前側で後方に向けて斜め上方に傾斜する第1傾斜面35aと、第1傾斜面35aと連続してR形状で形成されている頂点部35bと、頂点部35bから後方に向けて斜め下方に傾斜する第2傾斜面35cと、を有する。除去部36は、前側で後方に向けて斜め上方に傾斜する第1傾斜面36aと、第1傾斜面36aと連続してR形状で形成されている頂点部36bと、頂点部36bから後方に向けて斜め下方に傾斜する第2傾斜面36cと、を有する。
【0036】
第2コンタクト40aは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図3に示す形状に成形加工したものである。第2コンタクト40aは、例えば抜き加工の工程のみで形成されている。第2コンタクト40aの加工方法はこれに限定されず、例えば抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。複数の第2コンタクト40aは、互いに所定の間隔で離間して左右方向に配列されている。
【0037】
第2コンタクト40aは、第2コンタクト40aの下端部を構成する実装部41aを有する。第2コンタクト40aは、実装部41aから後方に向けてJ字状に延出する基部42aを有する。第2コンタクト40aは、基部42aの後端部で幅広に形成されている係止部43aを有する。第2コンタクト40aは、係止部43aの前側の上端部から前方に向けて直線状に延出する接触片44aを有する。基部42aの先端部、すなわち接触片44aの先端部は、下方に向けて山状に突出するように形成されている。
【0038】
金具40bは、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図3に示す形状に成形加工したものである。金具40bは、例えば抜き加工の工程のみで形成されている。金具40bの加工方法はこれに限定されず、例えば抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。一対の金具40bは、コネクタ10の左右両端にそれぞれ配置されている。
【0039】
金具40bは、金具40bの下端部を構成する実装部41bを有する。金具40bは、実装部41bと連続して形成され、金具40bの前半部を構成するように上下前後方向に幅広に形成されている基部42bを有する。金具40bは、基部42bの上下方向の中央部から後方に向けて直線状に延出する係止部43bを有する。
【0040】
図7は、
図3のアクチュエータ50単体を下面視で示した外観斜視図である。
図3及び
図7を参照しながらアクチュエータ50の構成について主に説明する。
【0041】
アクチュエータ50は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、
図3及び
図7に示すような左右方向に延びる左右対称の板状部材である。これに限定されず、アクチュエータ50は、左右非対称に形成されていてもよい。アクチュエータ50は、左右方向に板状に延びる基部51を有する。アクチュエータ50は、基部51の前面を構成する第1外面51aと、基部51の後面を構成する第2外面51bと、を有する。第1外面51a及び第2外面51bは、コネクタ10に対する接続対象物70の挿抜方向を向く。
【0042】
アクチュエータ50は、基部51の前端部の左右両側から下方に向けて突出する一対のロック部52を有する。ロック部52は、前側の下部において後方に向けて斜め下方に傾斜する傾斜面52aを有する。アクチュエータ50は、ロック部52の直上において基部51が切り欠かれて形成されている凹部53aを有する。アクチュエータ50は、ロック部52の上側であって、かつ凹部53aの下側で前後方向に延在する取付部53bを有する。取付部53bは、アクチュエータ50におけるコネクタ10の長手方向の両端部にそれぞれ形成されている。
【0043】
アクチュエータ50は、基部51の左右両端部に形成されている軸部54を有する。アクチュエータ50は、軸部54の最下部において左右方向の外面から左右方向の外側に突設されている円形状の突起54aを有する。アクチュエータ50は、基部51の前端の中央部において前方に突出する操作部55を有する。操作部55は、第1外面51aにおいて一対の取付部53bの間に形成されている。アクチュエータ50は、基部51の下面から下方に向けて突出する複数の突出部56を有する。
【0044】
アクチュエータ50は、第1外面51aと反対側に位置する第2外面51bにおいて一対の取付部53bの間に形成されている凸部57を有する。凸部57は、特許請求の範囲に記載の「被係合部」に対応する。凸部57は、第2外面51bの左右方向の中央部を挟んで左右両側にそれぞれ3つずつ対称的に突設されている。凸部57は、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部の両方に対応する位置に形成されている。より具体的には、第2外面51bの左右方向の中央部の左右両側に位置する一対の凸部57の左右方向の形成位置は、操作部55の左右方向の両端部の形成位置とそれぞれ略同一である。アクチュエータ50は、凸部57において第2外面51bから連続して傾斜する傾斜面57aを有する。被係合部としての凸部57に含まれる傾斜面57aは、凸部57における上方の外面に対応する。
【0045】
押圧部材60は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図3に示す形状に成形加工したものである。押圧部材60は、例えば抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させることで全体としてL字状に形成されている。押圧部材60の加工方法はこれに限定されず、例えば抜き加工の工程のみを含んでもよい。一対の押圧部材60は、コネクタ10の左右両端にそれぞれ配置されている。
【0046】
押圧部材60は、後部において左右方向に幅広に形成されている係止部61を有する。押圧部材60は、係止部61の後端部から屈曲しながら下方にJ字状に延出する実装部62を有する。押圧部材60は、係止部61の前端部から前後方向に沿って直線状に延出する接触部63を有する。
【0047】
コネクタ10では、第1コンタクト30は、インシュレータ20に取り付けられている。例えば、第1コンタクト30は、係止部31がインシュレータ20の第1コンタクト取付溝24に係止することで後壁22に取り付けられている。同様に、第2コンタクト40aは、係止部43aがインシュレータ20の第2コンタクト取付溝25に係止することでインシュレータ20に取り付けられている。金具40bは、係止部43bがインシュレータ20の金具取付溝26に係止することでインシュレータ20に取り付けられている。押圧部材60は、係止部61がインシュレータ20の取付溝28に係止することでインシュレータ20に取り付けられている。
【0048】
コネクタ10では、アクチュエータ50は、インシュレータ20の取付部27に配置されている。アクチュエータ50は、閉位置において、インシュレータ20によって下方から支持されている。例えば、アクチュエータ50の軸部54は、インシュレータ20の受入部29に収容され、受入部29の底面と接触する。このとき、アクチュエータ50の軸部54に突設されている突起54aは、インシュレータ20の受入部29の凹部29aと係合する。アクチュエータ50が上方へと移動しようとすると突起54aが凹部29aの上面に引っ掛かり、インシュレータ20に対するアクチュエータ50の抜けが抑制される。例えば、アクチュエータ50の突出部56は、インシュレータ20の凹部27aと嵌合し、凹部27aの底面と接触する。
【0049】
このとき、後述する
図8にも示すとおり、アクチュエータ50の取付部53bの下面は、インシュレータ20の取付溝28の前後方向の中央部であって、貫通孔28aの後側に位置する取付溝28の底面と対向する。一対の取付部53bは、インシュレータ20に対するアクチュエータ50の取り付けを可能にする。
【0050】
より具体的には、取付部53bは、押圧部材60による開位置側からの付勢力を受けてインシュレータ20に対するアクチュエータ50の取り付けを可能にする。コネクタ10では、アクチュエータ50は、インシュレータ20に取り付けられている押圧部材60によって上方から押さえられると共に、インシュレータ20によって下方から支持される。例えば、押圧部材60の接触部63は、アクチュエータ50の凹部53a内に位置し、凹部53aの底面、例えば取付部53bの上面と上方から接触する。
【0051】
図1などを参照すると、コネクタ10は、挿抜方向に対して略平行に配置される回路基板CBの上面に形成されている回路形成面に実装される。より具体的には、第1コンタクト30の実装部32は、回路基板CB上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。第2コンタクト40aの実装部41aは、回路基板CB上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。金具40bの実装部41bは、回路基板CB上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。押圧部材60の実装部62は、回路基板CB上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。
【0052】
リフロー炉などにおいて各はんだペーストを加熱溶融することで、実装部32、実装部41a、実装部41b、及び実装部62は、上記パターンにはんだ付けされる。結果、コネクタ10の回路基板CBへの実装が完了する。回路基板CBの回路形成面には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コントローラ、又はメモリなどのコネクタ10とは別の電子部品が実装される。
【0053】
以下では、
図8乃至
図19を参照しながら、一実施形態に係るコネクタ10の機能について主に説明する。
図8は、
図1のVIII-VIII矢線に沿う断面図である。
図9は、
図4のIX-IX矢線に沿う断面図である。
図10は、
図5のX-X矢線に沿う断面図である。
図8乃至
図10では、アクチュエータ50のロック部52及び押圧部材60に関連する構成の断面が示されている。
【0054】
図8に示すとおり、押圧部材60の係止部61は、インシュレータ20の取付溝28に係止することでインシュレータ20に取り付けられている。非挿入状態でアクチュエータ50が閉位置にあるとき、押圧部材60の接触部63の下面は、アクチュエータ50の凹部53aの底壁、すなわち取付部53bの上面と開位置側から接触する。このとき、押圧部材60の接触部63は弾性変形していないか、又はわずかに弾性変形する。アクチュエータ50の取付部53bにおいてロック部52の後方に位置する部分は、インシュレータ20の天井壁21aの上面と対向する。アクチュエータ50のロック部52は、インシュレータ20の貫通孔28aから挿入部23の内部に突出する。
【0055】
接続対象物70がコネクタ10の挿入部23に挿入されるとき、例えば、接続対象物70の先端がインシュレータ20の第1傾斜面23b及び第2傾斜面23cに沿って挿入部23内に侵入する。このとき、仮に接続対象物70の挿入位置が挿入部23に対して左右方向に若干ずれていたとしても、接続対象物70の誘い込み部77がインシュレータ20の第1傾斜面23b上を摺動して、接続対象物70が挿入部23の内部に誘い込まれる。同様に、仮に接続対象物70の挿入位置が挿入部23に対して上下方向に若干ずれていたとしても、接続対象物70の先端がインシュレータ20の第2傾斜面23c上を摺動して、接続対象物70が挿入部23の内部に誘い込まれる。
【0056】
接続対象物70が挿入部23の内側へとさらに移動して半挿入状態が実現されると、接続対象物70の保持部75とアクチュエータ50のロック部52とが接触する。このとき、ロック部52の抜去側の傾斜面52aを介したロック部52と接続対象物70との接触によってアクチュエータ50の開位置に向けた抗力が発生する。したがって、アクチュエータ50に対して開位置に向けた力のモーメントが生じる。
【0057】
ロック部52と保持部75とが接触した状態で挿入部23のさらに内側へと接続対象物70が移動すると、開位置に向けた力のモーメントによってアクチュエータ50が開位置側へ回転する。アクチュエータ50が開位置側へ回転すると、押圧部材60の接触部63の弾性変形量がより大きくなる。したがって、押圧部材60の接触部63によるアクチュエータ50への閉位置側への付勢力がより大きくなる。このとき、アクチュエータ50のロック部52は、接続対象物70の保持部75の上面に一度乗り上げる。接続対象物70の後側への移動に伴って、保持部75は、ロック部52の先端部分に対して摺動する。このとき、ロック部52は、半挿入状態で接続対象物70を第1コンタクト30に向けて押圧する。ロック部52は、第1コンタクト30の接触部35よりも除去部36側に位置する。
【0058】
図9に示すとおり、挿入状態では、接続対象物70の保持部75がアクチュエータ50のロック部52を通り過ぎて挿入部23の内部に収容される。例えば、接続対象物70の先端面72がインシュレータ20の挿入部23の内面23dに突き当たる。このとき、ロック部52と保持部75とが上下方向で非接触状態となり、押圧部材60からの付勢力によってアクチュエータ50が閉位置へと自動的に回転する。このようなアクチュエータ50の閉位置において、ロック部52は接続対象物70の被ロック部76と係合する。これにより、アクチュエータ50は、挿入部23に挿入された接続対象物70を抜止保持する。このような状態で、仮に接続対象物70を無理に抜去しようとしても、接続対象物70の保持部75がロック部52に接触する。したがって、接続対象物70がより効果的に抜止保持される。
【0059】
このように、コネクタ10は、作業者又は組立装置などによるアクチュエータ50の操作部55に対する任意の操作を必要とすることなく、接続対象物70を挿入するという1つの動作のみによって挿入状態で接続対象物70を抜止保持する。
【0060】
一方で、
図10に示すとおり、コネクタ10から接続対象物70を抜去する場合、作業者又は組立装置などは、アクチュエータ50の操作部55を操作して、アクチュエータ50を開位置に維持させる。すなわち、操作部55は、閉位置から開位置へとアクチュエータ50を開く操作を受ける。このとき、押圧部材60の接触部63は、上方に向けて大きく弾性変形する。押圧部材60は、アクチュエータ50が開位置にあるときにアクチュエータ50を閉位置に向けて付勢する。押圧部材60の接触部63によるアクチュエータ50への閉位置側への付勢力は、さらに大きくなる。
【0061】
アクチュエータ50は、このような付勢力と、操作部55に働く開位置側へとアクチュエータ50を移動させようとする力及びインシュレータ20からアクチュエータ50に働く抗力と、が互いにつり合うことで開位置を維持する。
【0062】
コネクタ10が開状態にあるとき、アクチュエータ50のロック部52と接続対象物70の被ロック部76とが互いに係合しなくなる。すなわち、ロック部52と被ロック部76との間のロックが解除される。結果として、接続対象物70は、コネクタ10から抜去可能となる。
【0063】
図11は、
図1のXI-XI矢線に沿う断面図である。
図12は、
図4のXII-XII矢線に沿う断面図である。
図13は、
図5のXIII-XIII矢線に沿う断面図である。
図11乃至
図13では、アクチュエータ50の軸部54及びインシュレータ20の受入部29に関連する構成の断面が示されている。
【0064】
図11乃至
図13に示すとおり、非挿入状態から半挿入状態を介して挿入状態へと移行するときに、アクチュエータ50は、閉位置から閉位置と開位置との間の位置を介して閉位置へと戻る。加えて、挿入状態においてコネクタ10から接続対象物70を抜去する場合、アクチュエータ50は、閉位置から開位置へとアクチュエータ50を開く操作を操作部55において受けることで開位置へと移動する。
【0065】
この間、アクチュエータ50の軸部54は、インシュレータ20の受入部29に収容され、受入部29の底面と常時接触する。軸部54と受入部29の底面とのこのような接触によってアクチュエータ50はインシュレータ20に対して回転可能となる。加えて、アクチュエータ50は、押圧部材60から受ける閉位置に向けた付勢力と、突起54a及び凹部29aによる係合構造と、によって、回転のときに上方への移動が規制され、インシュレータ20からの抜けが抑制される。
【0066】
図14は、
図1のXIV-XIV矢線に沿う断面図である。
図15は、
図4のXV-XV矢線に沿う断面図である。
図16は、
図5のXVI-XVI矢線に沿う断面図である。
図14乃至
図16では、第2コンタクト40aに関連する構成の断面が示されている。
【0067】
図14に示すとおり、第2コンタクト40aの係止部43aがインシュレータ20の第2コンタクト取付溝25に取り付けられると、接触片44aの一部が挿入部23の内部に露出する。例えば、非挿入状態では、接触片44aの山状の先端部が挿入部23の内部に露出する。第2コンタクト40aは、第2コンタクト取付溝25内で接触片44aによる上方への弾性変形を可能とする。
【0068】
図14乃至
図16に示すとおり、非挿入状態から挿入状態へと移行して接続対象物70の先端面72がインシュレータ20の挿入部23の内面23dに突き当たると、第2コンタクト40aは、J字状の基部42a内に接続対象物70の先端部71を受け入れる。すなわち、第2コンタクト40aは、基部42aの下部で前後方向に延在する部分と基部42aの上部に位置する接触片44aとの間に先端部71が位置するように接続対象物70を受け入れる。
【0069】
図15及び
図16に示すとおり、挿入状態では、第2コンタクト40aの接触片44aの先端部は、接続対象物70の外装74と接触する。このとき、接触片44aは、上方へと弾性変形し、接続対象物70に対して下方への付勢力を与える。第2コンタクト40aは、接触片44aと外装74との接触に基づいて接続対象物70を下方へと押さえる。
【0070】
図14及び
図15に示すとおり、コネクタ10が閉状態にあるとき、アクチュエータ50の基部51の下面は、インシュレータ20の取付部27の底面、すなわち天井壁21aの上面と若干の空隙を形成しながら対向する。
【0071】
図17は、
図1のXVII-XVII矢線に沿う断面図である。
図18は、
図4のXVIII-XVIII矢線に沿う断面図である。
図19は、
図5のXIX-XIX矢線に沿う断面図である。
図17乃至
図19では、第1コンタクト30に関連する構成の断面が示されている。
【0072】
図17に示すとおり、第1コンタクト30が第1コンタクト取付溝24に取り付けられると、接触片34の一部が挿入部23の内部に露出する。例えば、非挿入状態では、接触片34の接触部35及び除去部36が挿入部23の内部に露出する。このとき、接触片34は、弾性部33から略水平に延出した状態で維持される。すなわち、接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は略水平となる。第1コンタクト30は、第1コンタクト取付溝24内で弾性部33による下方への弾性変形を可能とする。
【0073】
除去部36は、挿入部23に接続対象物70が挿入されている半挿入状態で接続対象物70の信号線73と接触する。例えば、除去部36の頂点部36bが信号線73と接触する。このとき、接触部35は、接続対象物70と接触していない。半挿入状態では、信号線73と接触する除去部36の頂点部36b及び接触部35が挿入部23の内部に露出する。
【0074】
より具体的には、非挿入状態から接続対象物70が挿入部23の内側へと移動すると、接続対象物70の先端が除去部36の第1傾斜面36aと接触する。このとき、第1傾斜面36aを介した第1コンタクト30と接続対象物70との接触によって第1コンタクト30の弾性部33が下方へと弾性変形しようとする抗力が発生する。したがって、挿入部23における接続対象物70の内側への移動、すなわち接続対象物70が挿入される挿入方向への移動に伴って、第1コンタクト30の弾性部33が下方へと弾性変形し、除去部36の頂点部36bが信号線73と接触する。
【0075】
挿入部23において接続対象物70が内側へさらに移動すると、信号線73は除去部36の頂点部36bに対して摺動する。接触片34は、除去部36の頂点部36bが信号線73と接触してから接続対象物70の先端が接触部35の第1傾斜面35aと接触するまでの間、弾性部33から挿入口23aに向けて第1角度θ1で斜め下方に傾斜した状態で維持される。すなわち、接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は後方から前方に向けて水平方向から第1角度θ1で斜め下方に傾斜する。
【0076】
このとき、接触部35の頂点部35bは、接触片34において接触部35が突出している方向で除去部36の頂点部36bより接続対象物70側に位置する。例えば、接触部35の頂点部35bは、除去部36の頂点部36bより高い位置にある。すなわち、接触部35の頂点部35bは、除去部36の頂点部36bより上方に位置する。
【0077】
図18に示すとおり、接触部35は、挿入部23に接続対象物70が挿入された挿入状態で接続対象物70の信号線73と接触する。例えば、接触部35の頂点部35bが信号線73と接触する。挿入状態では、除去部36は、半挿入状態と比較して弾性部33が下方へとより大きく弾性変形することで接続対象物70と離間する。すなわち、除去部36は、接続対象物70と接触していない。挿入状態では、信号線73と接触する接触部35の頂点部35bのみが挿入部23の内部に露出する。
【0078】
より具体的には、半挿入状態から接続対象物70が挿入部23の内側へとさらに移動すると、接続対象物70の先端が接触部35の第1傾斜面35aと接触する。このとき、第1傾斜面35aを介した第1コンタクト30と接続対象物70との接触によって第1コンタクト30の弾性部33が下方へとさらに弾性変形しようとする抗力が発生する。したがって、挿入部23における接続対象物70の内側への移動に伴って、第1コンタクト30の弾性部33が下方へとさらに弾性変形し、除去部36の頂点部36bが信号線73から離間する。一方で、接触部35の頂点部35bが信号線73と接触する。
【0079】
挿入部23において接続対象物70が内側へさらに移動して先端面72が挿入部23の内面23dに突き当たるまでの間、信号線73は接触部35の頂点部35bに対して摺動する。接触片34は、接触部35の頂点部35bが信号線73と接触した後、弾性部33から挿入口23aに向けて第2角度θ2で斜め下方に傾斜した状態で維持される。すなわち、接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は後方から前方に向けて水平方向から第2角度θ2で斜め下方に傾斜する。接触片34は、接続対象物70の先端面72が内面23dに突き当たって挿入状態に完全に移行した後も第2角度θ2を維持する。挿入状態における第2角度θ2は、半挿入状態における第1角度θ1よりも大きい。
【0080】
半挿入状態における除去部36と信号線73との第1接点と、挿入状態における接触部35と信号線73との第2接点と、の間の挿入方向に沿った間隔d1は、第2接点と内面23dとの間の挿入方向に沿った間隔d2よりも大きい。
【0081】
第1コンタクト30の接触部35及び除去部36とアクチュエータ50との間にはインシュレータ20の天井壁21aが形成されている。挿入部23に接続対象物70が挿入されている半挿入状態において、除去部36と天井壁21aとは、接触片34において接触部35が突出している方向に沿って接続対象物70を挟む。挿入部23に接続対象物70が挿入された挿入状態において、接触部35と天井壁21aとは、接触片34において接触部35が突出している方向に沿って接続対象物70を挟む。
【0082】
図17乃至
図19に示す第1コンタクト取付溝24では、接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における幅は、前後方向に沿って均一である。すなわち、第1コンタクト取付溝24における除去部36側の幅及び接触部35側の幅は、互いに同一である。例えば、これらの幅は、第1コンタクト30の板厚よりも若干大きい程度であってもよい。
【0083】
接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における除去部36の幅は、同方向における接触部35の幅よりも大きいか、又は同程度である。
【0084】
第1コンタクト30を上方から見たとき、除去部36は、接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向において、接触部35の少なくとも一部と重畳する。例えば、接触部35と除去部36とは、互いを結ぶ直線が挿入方向と略平行になるように同一直線上で重畳する。すなわち、接触部35と除去部36とは、接続対象物70が挿入される挿入方向に略平行な同一の直線上に位置する。
【0085】
図18及び
図19に示すとおり、インシュレータ20の係合部は、アクチュエータ50の被係合部とアクチュエータ50の開位置側から係合する。ここで、アクチュエータ50の被係合部は、インシュレータ20の係合部に向けて第2外面51bから突出する凸部57を含む。凸部57は、接続対象物70が挿入される挿入方向に向けて第2外面51bから突出する。インシュレータ20の係合部は、凸部57を受け入れる孔部27cを含む。
【0086】
一例として、アクチュエータ50の被係合部は、アクチュエータ50が閉位置にあるときにインシュレータ20の係合部から離間して係合部と係合しない。すなわち、アクチュエータ50の凸部57は、アクチュエータ50が閉位置にあるときにインシュレータ20の孔部27cの外部に露出する。アクチュエータ50の被係合部は、アクチュエータ50が閉位置にあるときにインシュレータ20の係合部における開位置側の内面Sとコネクタ10の長手方向及び挿抜方向に直交する方向に対向しない。
【0087】
一方で、アクチュエータ50の被係合部は、アクチュエータ50が開位置にあるときにインシュレータ20の係合部と係合する。すなわち、アクチュエータ50の凸部57は、アクチュエータ50が開位置にあるときにインシュレータ20の孔部27cに受け入れられる。アクチュエータ50の被係合部は、アクチュエータ50が開位置にあるときにインシュレータ20の係合部における開位置側の内面Sとコネクタ10の長手方向及び挿抜方向に直交する方向に対向する。
【0088】
このように、アクチュエータ50は、閉位置から開位置へとアクチュエータ50を開く操作を操作部55において受けて開位置へと移動するときに、後方へと若干平行移動する。これにより、コネクタ10の閉状態において孔部27cから露出していた凸部57が、コネクタ10の開状態において孔部27cに受け入れられる。
【0089】
コネクタ10の開状態において凸部57が孔部27cに受け入れられると、凸部57に形成されている傾斜面57aは、孔部27cにおける開位置側の内面Sと対向する。傾斜面57aは、コネクタ10の開状態において、孔部27cにおける開位置側の内面Sに対し前方から後方に向けて斜め下方に傾斜するように配置されている。すなわち、傾斜面57aは、コネクタ10の開状態において、前方から後方に向かうほど孔部27cにおける開位置側の内面Sとの上下間隔が大きくなるように配置されている。
【0090】
凸部57の開位置側における第2外面51bとの隣接部分Rは、インシュレータ20の孔部27cにより開位置側に形成されているインシュレータ20の角部Cと対向する。隣接部分Rは、コネクタ10の開状態において、アクチュエータ50の閉位置側から角部Cと近接又は接触する。
【0091】
アクチュエータ50は、操作部55に加わるアクチュエータ50を開位置へと移動させようとする力によって、操作部55を中心に一対の取付部53bの間で上下方向に沿って上側に撓もうとする。インシュレータ20の係合部は、このような場合に、アクチュエータ50の被係合部と係合して開位置側から閉位置側への抗力をアクチュエータ50に加える。例えば、インシュレータ20は、孔部27cがアクチュエータ50の凸部57を受け入れ、角部Cがアクチュエータ50の隣接部分Rと接触することで、開位置側から閉位置側への抗力をアクチュエータ50に対して加える。
【0092】
これにより、インシュレータ20の係合部は、一対の取付部53bの間でアクチュエータ50の上方への撓みを規制するような力をアクチュエータ50の被係合部に対して加える。すなわち、インシュレータ20の係合部は、操作部55を中心に一対の取付部53bの間で生じ得るアクチュエータ50の上方への撓みを抑制する。
【0093】
図3及び
図7に示すとおり、アクチュエータ50の被係合部及びインシュレータ20の係合部の組は、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部の両方に対応する位置に形成されている。より具体的には、アクチュエータ50及びインシュレータ20の左右方向の中央部の左右両側に位置する2組の被係合部及び係合部の左右方向の形成位置は、操作部55の左右方向の両端部の形成位置とそれぞれ略同一である。加えて、アクチュエータ50の被係合部及びインシュレータ20の係合部の組は、操作部55と取付部53bとの間にさらに複数形成されている。これにより、上述したアクチュエータ50の撓みを抑制する効果がより顕著に発揮される。
【0094】
インシュレータ20の規制面27bは、アクチュエータ50が開位置にあるときにアクチュエータ50の第2外面51bと接触する。規制面27bは、操作部55に加わるアクチュエータ50を開位置へと移動させようとする力によってアクチュエータ50がインシュレータ20に対し過剰に開くことを抑制する。
【0095】
以下では、主にコネクタ10に着目してその効果に関する説明を行うが、コネクタ10を有する電子機器についても同様の説明が当てはまる。
【0096】
以上のような一実施形態に係るコネクタ10によれば、低背化しても信頼性を維持可能である。コネクタ10では、アクチュエータ50が一対の取付部53bの間で操作部55に対し被係合部を有し、インシュレータ20が当該被係合部とアクチュエータ50の開位置側から係合する係合部を有する。これにより、コネクタ10の低背化に伴うアクチュエータ50の薄型化によって開動作時に操作部55を中心に一対の取付部53bの間でアクチュエータ50が上方に撓もうとするような場合であっても、インシュレータ20の係合部がアクチュエータ50の被係合部と係合して開位置側から閉位置側への抗力をアクチュエータ50に加える。これにより、アクチュエータ50の操作部55を中心に一対の取付部53bの間で生じ得るアクチュエータ50の上方への撓みが抑制される。結果として、コネクタ10が低背化しても、アクチュエータ50の回動安定性の低下、アクチュエータ50の破損、及びコネクタ10からのアクチュエータ50の外れなどが抑制され、コネクタ10の信頼性が維持される。一般的に、アクチュエータ50の操作部55を操作する作業者は、開動作時にアクチュエータ50を過剰に押し込む傾向にあるが、このような場合であってもアクチュエータ50の破損などが抑制される。これにより、コネクタ10の製品としての信頼性が向上する。
【0097】
被係合部が凸部57を含み、係合部が凸部57を受け入れる孔部27cを含むことで、アクチュエータ50の開位置におけるアクチュエータ50とインシュレータ20との間の係合が容易に達成される。被係合部としての凸部57は、係合部に向けて第2外面51bから突出することで、開位置においてアクチュエータ50が斜め上方に傾斜したとしても、係合部としての孔部27cに容易に受け入れられる。
【0098】
被係合部に含まれる傾斜面57aが、係合部におけるアクチュエータ50の開位置側の内面Sと対向することで、アクチュエータ50の撓みの抑制に関する上述した効果と同様の効果が得られる。
【0099】
凸部57の開位置側における第2外面51bとの隣接部分Rが、係合部により開位置側に形成されているインシュレータ20の角部Cと対向することで、アクチュエータ50の撓みの抑制に関する上述した効果と同様の効果が得られる。
【0100】
インシュレータ20が、アクチュエータ50の開位置において第2外面51bと接触する規制面27bを有することで、インシュレータ20に対する設計値を超えたアクチュエータ50の過剰な開きが抑制される。一般的に、アクチュエータ50の操作部55を操作する作業者は、開動作時にアクチュエータ50を過剰に押し込む傾向にあるが、このような場合であってもアクチュエータ50の破損が抑制される。これにより、コネクタ10の製品としての信頼性が向上する。
【0101】
被係合部は、アクチュエータ50が開位置にあるときに係合部と係合し、アクチュエータ50が閉位置にあるときに係合部から離間して係合部と係合しない。これにより、コネクタ10の組立作業時に、アクチュエータ50をインシュレータ20に対し直上から下方に下して配置する工程のみでアクチュエータ50をインシュレータ20に対し配置可能である。すなわち、コネクタ10では、組立作業時に、インシュレータ20に対しアクチュエータ50を上方から下方に下し、続いて前方から後方に向けて平行移動させて凸部57を孔部27cに係合させる工程は不要となる。これにより、コネクタ10の組立性が向上する。
【0102】
被係合部及び係合部の組が、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部の両方に対応する位置に形成されていることで、一対の取付部53bを起点としてその間でアクチュエータ50の撓みによる上方への変位が最も大きくなり得る操作部55の位置で係合関係が確実に得られる。これにより、アクチュエータ50の上方への変位が最も大きくなり得る操作部55の位置で、インシュレータ20の係合部からアクチュエータ50の被係合部に開位置側から閉位置側への抗力を加えることが可能となる。結果として、操作部55を中心に一対の取付部53bの間で生じ得るアクチュエータ50の上方への撓みがより効果的に抑制される。
【0103】
取付部53bが、押圧部材60によるアクチュエータ50の開位置側からの付勢力を受けてインシュレータ20に対するアクチュエータ50の取り付けを可能にすることで、アクチュエータ50は、押圧部材60から受ける付勢力によりインシュレータ20に対し安定して取付可能である。押圧部材60からアクチュエータ50に働く付勢力が閉位置から開位置に向けて次第に増大することで、アクチュエータ50は、インシュレータ20に対する開動作及び閉動作を押圧部材60のばね弾性によって滑らかに行うことが可能となる。
【0104】
コネクタ10は、信頼性の向上を可能にする。例えば、一実施形態に係るコネクタ10によれば、接続対象物70に付着した異物の除去を可能にする。例えば、挿入部23に接続対象物70が挿入されている半挿入状態で除去部36が接続対象物70の信号線73と接触することで、接続対象物70の信号線73に付着した異物の除去が可能となる。より具体的には、異物は、半挿入状態で第1コンタクト30の除去部36に付着し、挿入状態で除去部36が信号線73から離間することで、接続対象物70の信号線73から除去される。半挿入状態において、接続対象物70の信号線73が除去部36の頂点部36bに対して摺動することで、接続対象物70の信号線73における挿入方向に沿った所定領域にわたり異物が除去される。
【0105】
半挿入状態において、接触片34において接触部35が突出している方向で接触部35の頂点部35bが除去部36の頂点部36bより接続対象物70側に位置することで、接続対象物70を挿入部23の内側にさらに移動させて挿入状態に移行したときに、接続対象物70の信号線73が頂点部35bに接触しやすくなる。
【0106】
除去部36は、接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向において、接触部35の少なくとも一部と重畳する。これにより、接続対象物70の信号線73に付着した異物が除去部36により除去された後に、信号線73において異物が除去された面を第1コンタクト30の接触部35に対して確実に接触させることができる。
【0107】
接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における除去部36の幅は、同方向における接触部35の幅よりも大きいか、又は同程度である。これにより、接続対象物70の信号線73に付着した異物が除去部36により除去された後に、信号線73において異物が除去された面を第1コンタクト30の接触部35に対して確実に接触させることができる。
【0108】
接触片34が、接触片34において接触部35が突出している方向と反対方向に弾性部33から屈曲しながら挿入部23の挿入口23a側に延出することで、挿入状態において除去部36が信号線73から離間し、接触部35及び信号線73の一箇所での接触が可能となる。また、第1コンタクト30において除去部36が弾性部33及び接触部35から前方に離間し挿入口23a側の先端に位置することで、半挿入状態における除去部36から接続対象物70への過度の圧力が抑制される。接触片34の先端で除去部36が接続対象物70の信号線73と接触することで、第1コンタクト30は、接続対象物70の信号線73に付着した異物を除去するための必要最低限の圧力を接続対象物70に対して付加することができる。これにより、接続対象物70を挿入部23に挿入する過程での接続対象物70の破損が抑制される。除去部36がR形状の頂点部36bを有することで、このような破損抑制に関する効果がより顕著となる。
【0109】
逆に、第1コンタクト30において接触部35が弾性部33に隣接して位置することで、挿入状態において第1コンタクト30が接続対象物70を下方から押圧するために必要な圧力を得ることが可能となる。コネクタ10は、第1コンタクト30によるこのような下方からの圧力と、第2コンタクト40aに基づく上方からの圧力及びインシュレータ20の挿入部23の上面による抗力と、によって接続対象物70を保持することが可能となる。以上により、コネクタ10は、例えば産業機器及び車載機器などを含む電子機器のような振動が大きい環境下で用いられる場合であっても、十分な保持力を得て接続対象物70を安定して保持することができる。また、接触部35がR形状の頂点部35bを有することで、挿入状態においても接続対象物70の破損が抑制される。
【0110】
挿入部23が、挿入状態で挿入方向における接続対象物70の先端面72の位置決めの基準となる内面23dを有することで、コネクタ10に対する接続対象物70の前後方向の位置決めが容易となる。これにより、接続対象物70を挿入部23に対して挿入するときの作業性が向上する。
【0111】
挿入方向に沿った間隔d1が間隔d2よりも大きいことで、接続対象物70の信号線73において除去部36により異物が除去された面を第1コンタクト30の接触部35に対して確実に接触させることができる。これにより、信号線73に異物が付着したままの状態で接触部35が接触することで生じる、イオン化傾向の差異に基づく腐食が抑制される。より具体的には、異物が除去部36に付着して接続対象物70の信号線73から離間することで、信号線73と接触部35との間での異物の介在が抑制される。したがって、上記のような腐食が抑制される。
【0112】
アクチュエータ50のロック部52が、半挿入状態で接続対象物70を第1コンタクト30に向けて押圧することで、第1コンタクト30による下方からの圧力だけでは第1コンタクト30から接続対象物70へ及ぼす接圧が弱い場合であっても、アクチュエータ50による上方からの圧力も加えることで、接続対象物70が安定して保持される。これにより、第1コンタクト30の除去部36による異物除去の効果がさらに向上する。
【0113】
アクチュエータ50のロック部52が第1コンタクト30の接触部35よりも除去部36側に位置することで、コネクタ10に対する接続対象物70の挿入力の増大が抑制される。これにより、接続対象物70をコネクタ10に挿入するときの作業性が向上する。
【0114】
半挿入状態で第1コンタクト30の除去部36とインシュレータ20の天井壁21aとが接続対象物70を挟むことで、除去部36による異物除去の効果が安定して発揮される。例えば、一対のコンタクト同士で接続対象物を挟むとコンタクトの個体差によってばねの力が互いに異なったり、異物除去の性能が互いに異なったりする恐れがある。同様に、挿入状態で第1コンタクト30の接触部35とインシュレータ20の天井壁21aとが接続対象物70を挟むことで、接触部35と信号線73との接触が安定して維持される。
【0115】
第1コンタクト30の接触部35及び除去部36とアクチュエータ50との間にインシュレータ20の天井壁21aが形成されていることで、半挿入状態及び開状態にある場合であっても、上下方向でインシュレータ20と第1コンタクト30とが重なり第1コンタクト30の露出が抑制される。これにより、コネクタ10の外部からの異物が、コネクタ10の内部、特に第1コンタクト30が配置されている挿入部23及び第1コンタクト取付溝24へと入り込むことを容易に抑制可能である。したがって、コネクタ10の製品としての信頼性が向上する。接続対象物70の信号線73に付着した異物を除去する除去部36の構成と組み合わせることで、コネクタ10内部への異物の入り込みが十分に抑制される。
【0116】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0117】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数などは、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数などは、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0118】
上述したコネクタ10の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、第1コンタクト30、第2コンタクト40a、金具40b、及び押圧部材60の少なくとも1つは、圧入ではなくインサート成形によってインシュレータ20と一体的に成形されてもよい。
【0119】
上記実施形態では、被係合部が凸部57を含み、係合部が孔部27cを含むと説明したが、これに限定されない。被係合部及び係合部は、アクチュエータ50の撓みを抑制する任意の係合構造を含んでもよい。例えば、被係合部は、係合部に向けて第2外面51bから突出する凸部57を含み、係合部は、凸部57を受け入れる凹部を含んでもよい。例えば、係合部は、被係合部に向けてインシュレータ20の規制面27bから突出する凸部を含み、被係合部は、当該凸部を受け入れる凹部又は孔部を含んでもよい。
【0120】
上記実施形態では、被係合部は、凸部57において第2外面51bから連続して傾斜する傾斜面57aを含むと説明したが、これに限定されない。被係合部は、傾斜面57aに代えて、第2外面51bから垂直に延出する平面を凸部57において含んでもよい。このとき、このような平面が、係合部における開位置側の内面Sと対向してもよい。
【0121】
上記実施形態では、凸部57の開位置側における第2外面51bとの隣接部分Rは、係合部により開位置側に形成されているインシュレータ20の角部Cと対向すると説明したが、これに限定されない。隣接部分Rは、インシュレータ20の角部Cと対向しなくてもよい。インシュレータ20は、角部Cを有さなくてもよい。
【0122】
上記実施形態では、インシュレータ20は、アクチュエータ50が開位置にあるときに、第2外面51bと接触する規制面27bを有すると説明したが、これに限定されない。インシュレータ20は、規制面27bに代えて、アクチュエータ50の過剰な開きを抑制する任意の構造を有してもよい。例えば、インシュレータ20は、アクチュエータ50が開位置にあるときに、第2外面51bと接触する突起を有してもよい。
【0123】
上記実施形態では、被係合部は、アクチュエータ50が開位置にあるときに係合部と係合し、アクチュエータ50が閉位置にあるときに係合部から離間して係合部と係合しないと説明したが、これに限定されない。被係合部は、アクチュエータ50が閉位置にあるときにおいても係合部と係合してもよい。被係合部は、少なくともアクチュエータ50が開位置にあるときに係合部と係合していればよく、アクチュエータ50が閉位置にあるときには係合部と係合しなくてもよいし、係合してもよい。
【0124】
上記実施形態では、被係合部及び係合部の組は、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部の両方に対応する位置に形成されていると説明したが、これに限定されない。被係合部及び係合部の組は、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部のいずれか一方に対応する位置に形成されていてもよい。被係合部及び係合部の組は、操作部55におけるコネクタ10の長手方向の両端部の間に形成されていてもよい。すなわち、被係合部及び係合部は、一対の取付部53bの間の任意の位置で少なくとも一組形成されていればよい。例えば、被係合部は、基部51の第2外面51bにおいて左右方向の中央部に長く延在するように1つのみ形成されていてもよい。
【0125】
上記実施形態では、取付部53bは、押圧部材60による開位置側からの付勢力を受けてインシュレータ20に対するアクチュエータ50の取り付けを可能にすると説明したが、これに限定されない。アクチュエータ50は、このように押圧部材60を介して間接的にインシュレータ20に取り付けられる構成に代えて、又は加えてインシュレータ20に直接的に取り付けられてもよい。例えば、アクチュエータ50の取付部53bは、左右方向に弾性変形可能に構成され、取付部53bの左右方向の幅よりも若干狭いインシュレータ20の溝に弾性変形しながら係止することで、インシュレータ20に取り付けられてもよい。
【0126】
コネクタ10は、押圧部材60を有さなくても、インシュレータ20にアクチュエータ50が直接的に取り付けられるような任意の構造を有してもよい。例えば、コネクタ10は、押圧部材60を有さずに、アクチュエータ50の突起54aとインシュレータ20の凹部29aとの係合のみによってアクチュエータ50がインシュレータ20に取り付けられていてもよい。
【0127】
上記実施形態では、接続対象物70を挿入部23へ挿入するときに、アクチュエータ50のロック部52に抗する挿入力が必要とされると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、接続対象物70を挿入部23へ挿入するときに接続対象物70がアクチュエータ50と接触せずゼロに近い挿入力で接続対象物70を挿入可能な、いわゆるZIF(Zero Insertion Force)構造を有してもよい。
【0128】
上記実施形態では、接触部35の頂点部35bはR形状を有すると説明したが、これに限定されない。頂点部35bは、任意の形状で形成されていてもよい。例えば、頂点部35bは、エッジ状に形成されていてもよい。同様に、上記実施形態では、除去部36の頂点部36bはR形状を有すると説明したが、これに限定されない。頂点部36bは、任意の形状で形成されていてもよい。例えば、頂点部36bは、エッジ状に形成されていてもよい。
【0129】
上記実施形態では、第1コンタクト30の弾性部33及び接触片34は、挿入部23及び接続対象物70に対して下側に配置され、弾性部33の下方への弾性変形に伴って接触片34が下方に傾斜すると説明したが、これに限定されない。例えば、第1コンタクト30の弾性部33及び接触片34は、挿入部23及び接続対象物70に対して上側に配置されていてもよい。このとき、弾性部33の上方への弾性変形に伴って接触片34が上方に傾斜してもよい。
【0130】
上記実施形態では、接触片34は、弾性部33から屈曲しながら挿入部23の挿入口23a側に延出すると説明したが、これに限定されない。接触片34は、信号線73と除去部36との半挿入状態での接触、及び挿入状態での離間、並びに信号線73と接触部35との挿入状態での接触を実現可能な任意の構造で弾性部33と接続されていてもよい。例えば、接触片34が弾性部33の前端部から屈曲するときの角度は鈍角でなくてもよいし、接触片34は弾性部33から屈曲しなくてもよい。例えば、接触片34は、弾性部33の一部として形成されていてもよい。
【0131】
上記実施形態では、除去部36の幅が接触部35の幅よりも大きいか、又は同程度であると説明したが、これに限定されない。除去部36の幅は接触部35の幅よりも小さくてもよい。
【0132】
上記実施形態では、非挿入状態において、接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は略水平となると説明したが、これに限定されない。接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は略水平でなくてもよい。
【0133】
上記実施形態では、半挿入状態において、接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は斜め下方に傾斜すると説明したが、これに限定されない。接触部35の頂点部35bと除去部36の頂点部36bとを結ぶ直線は傾斜しなくてもよい。
【0134】
上記実施形態では、挿入口23a側から順に除去部36、接触部35、及び弾性部33が位置すると説明したが、これに限定されない。第1コンタクト30は、信号線73と除去部36との半挿入状態での接触、及び挿入状態での離間、並びに信号線73と接触部35との挿入状態での接触を実現可能な任意の構造を有してもよい。例えば、挿入口23a側から順に弾性部33、除去部36、及び接触部35が位置してもよい。例えば、挿入口23a側から順に除去部36、弾性部33、及び接触部35が位置してもよい。
【0135】
上記実施形態では、挿入部23は、挿入状態で挿入方向における接続対象物70の先端面72の位置決めの基準となる内面23dを有すると説明したが、これに限定されない。挿入部23は、このような内面23dを有さなくてもよい。このとき、例えば接続対象物70の左右方向の両端部に対して挿入方向の位置決めを行う任意の構造がインシュレータ20側に形成されていてもよい。
【0136】
上記実施形態では、挿入方向に沿った間隔d1が間隔d2よりも大きいと説明したが、これに限定されない。挿入方向に沿った間隔d1が間隔d2よりも小さくてもよい。
【0137】
上記実施形態では、コネクタ10は、接続対象物70を挿入するという1つの動作のみでアクチュエータ50を操作可能であると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、作業者又は組立装置などによるアクチュエータ50の直接的な任意の操作を必要とするものであってもよい。
【0138】
上記実施形態では、第1コンタクト取付溝24における除去部36側の幅及び接触部35側の幅が互いに同一であると説明したが、これに限定されない。接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における第1コンタクト取付溝24の幅は、除去部36側で大きく、接触部35側で小さくてもよい。これにより、接続対象物70に付着している異物の除去部36側での除去を容易としつつ、接続対象物70に付着していた異物が第1コンタクト30の接触部35側に入り込むことを抑制することができる。
【0139】
このとき、接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における第1コンタクト取付溝24の幅は、除去部36と接触部35との間で階段状に変化してもよい。このように、除去部36と接触部35との間で接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における第1コンタクト取付溝24の幅が急激に変化することで、第1コンタクト30の接触部35側への異物の入り込み抑制に関する上記の効果がより顕著となる。
【0140】
接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における第1コンタクト取付溝24の幅は、階段状に限定されず、除去部36と接触部35との間で任意の態様で変化してもよい。例えば、接触片34において接触部35が突出している方向及び接続対象物70が挿入される挿入方向に直交する方向における第1コンタクト取付溝24の幅は、除去部36と接触部35との間でテーパ状に変化してもよい。
【0141】
上記実施形態では、接触片34は、接触部35及び除去部36のみにおいて突起が形成されていると説明したが、これに限定されない。接触片34は、除去部36と接触部35との間で除去部36及び接触部35と同一方向に突出する突起をさらに有してもよい。このような場合であっても、挿入状態で、接触部35のみが接続対象物70の信号線73と接触する。以上により、接続対象物70に付着している異物の除去部36側での除去を可能としつつ、接続対象物70に付着していた異物が第1コンタクト30の接触部35側に入り込むことを抑制することができる。
【0142】
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ、及びエンジンコントロールユニットなどの任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム、及びセキュリティシステムなどの車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。これらに限定されず、電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、及び複合機などの任意の情報機器を含んでもよい。電子機器は、液晶テレビ、レコーダ、カメラ、及びヘッドフォンなどの任意の音響映像機器を含んでもよい。
【0143】
このような電子機器では、低背化しても信頼性を維持可能であるというコネクタ10の上述の効果により、電子機器の製品としての信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0144】
10 コネクタ
20 インシュレータ
21 外周壁
21a 天井壁
21b 底壁
21c 側壁
22 後壁
23 挿入部
23a 挿入口
23b 第1傾斜面
23c 第2傾斜面
23d 内面
24 第1コンタクト取付溝
25 第2コンタクト取付溝
26 金具取付溝
27 取付部
27a 凹部
27b 規制面
27c 孔部(係合部)
28 取付溝
28a 貫通孔
29 受入部
29a 凹部
30 第1コンタクト
31 係止部
31a 延出部
32 実装部
33 弾性部
34 接触片
35 接触部
35a 第1傾斜面
35b 頂点部
35c 第2傾斜面
36 除去部
36a 第1傾斜面
36b 頂点部
36c 第2傾斜面
40a 第2コンタクト
40b 金具
41a 実装部
41b 実装部
42a 基部
42b 基部
43a 係止部
43b 係止部
44a 接触片
50 アクチュエータ
51 基部
51a 第1外面
51b 第2外面
52 ロック部
52a 傾斜面
53a 凹部
53b 取付部
54 軸部
54a 突起
55 操作部
56 突出部
57 凸部(被係合部)
57a 傾斜面
60 押圧部材
61 係止部
62 実装部
63 接触部
70 接続対象物
71 先端部
72 先端面
73 信号線
74 外装
75 保持部
76 被ロック部
77 誘い込み部
CB 回路基板
C 角部
R 隣接部分
S 内面
d1 間隔
d2 間隔
θ1 第1角度
θ2 第2角度