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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010055
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】人工いぐさの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/34 20060101AFI20230113BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230113BHJP
   A01N 41/04 20060101ALI20230113BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20230113BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20230113BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A01N25/34 B
A01P1/00
A01N41/04 Z
A01N59/16 A
D02G3/36
D02G3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113853
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】横田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】稲津 明
(72)【発明者】
【氏名】島田 隼人
【テーマコード(参考)】
4H011
4L036
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB07
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA10
4H011DF03
4H011DH02
4L036MA04
4L036PA09
4L036PA18
4L036RA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗ウィルス性の優れた人工いぐさの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなるオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを製造する第1の工程、得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳んで紐状体を製造する第2の工程、及び、紐状体の直径より細い貫通孔を有する加熱部材の貫通孔を、得られた紐状体を通過させて、紐状体の周囲に融着被膜を形成する第3の工程からなることを特徴とする人工いぐさの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなるオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを製造する第1の工程、得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳んで紐状体を製造する第2の工程、及び、紐状体の直径より細い貫通孔を有する加熱部材の貫通孔を、得られた紐状体を通過させて、紐状体の周囲に融着被膜を形成する第3の工程からなることを特徴とする人工いぐさの製造方法。
【請求項2】
更に、融着被膜の表面に擦り傷を形成する第4の工程からなることを特徴とする請求項1記載の人工いぐさの製造方法。
【請求項3】
無機充填剤に、抗ウィルス剤の一部又は全部が担持されていることを特徴とする請求項1または2記載の人工いぐさの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウィルス性の優れた人工いぐさの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いぐさは、通気性、肌触り感、クッション性、香り等が優れており、建築材料として古くから畳表や茣蓙等に使用されているが、天然物であるので、それゆえ耐候性が悪い、変色し易い、雑菌、ダニ、害虫などが繁殖し易い、供給が不安定である等の欠点も有しており、近年、合成樹脂製の人工いぐさ及びその製造方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、「長手方向に延伸された熱可塑性樹脂よりなるテープ状体を、狭い空隙を形成する加熱部材中に通過させることによって不規則に収束形成し、かつ表面に融着皮膜を形成させたものであることを特徴とする模造イグサ。」(例えば、特許文献1参照。)、「長手方向に延伸した熱可塑性合成樹脂フィルム原糸(18)を加熱収束ノズル(20)に挿通し、ノズルの絞り部(20M)では、フィルム原糸(18)と共に喰い込んだ空気を放出して空気のノズル成形部(20D)内での爆発を抑制しながら合成樹脂フィルム原糸(18)を成形し、柔軟な多孔質芯部(1C)の外周に均斉な融着表皮(1S)を形成した、極細模造イ草。」(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0004】
一方、最近、重症呼吸器感染症(SARS)ウィルス、インフルエンザウィルス、新型コロナウィルス等のウィルスが次々と社会問題となっており、これらウィルスは容易に人から人に伝染するため、人が多く集まる場所で使用する人工いぐさも抗ウィルスの向上が望まれていた。
【0005】
そのため、多くの抗ウィルス性の優れた抗ウィルス性材料が提案されている。例えば、「抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料であって、イオンの銅の微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、ポリマー材料。」(例えば、特許文献3参照。)、「樹脂と、抗ウィルス剤と、カチオン系界面活性剤からなる表面電位制御剤を含む抗ウィルス性樹脂部材であって、前記表面電位制御剤は前記抗ウィルス性樹脂部材の表面の電位を前記樹脂単体の表面の電位よりもプラス方向に変化させることを特徴とする抗ウィルス性樹脂部材。」(例えば、特許文献4参照。)、「合成樹脂に、無機充填剤100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤3~100重量部を担持された合成樹脂添加用の抗ウィルス剤を添加した抗ウィルス性合成樹脂組成物」(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。
【0006】
そこで、本発明者等は、長期間抗ウィルス性が優れている人工いぐさの製造方法を鋭意研究した結果、前述の抗ウィルス性の優れた抗ウィルス性材料を用いて、前述のいぐさの製造方法で製造しただけでは長期間抗ウィルス性が優れているという効果は得られず、特定の工程を通過することで、人工いぐさの抗ウィルス性が向上し、且つ、長期間にわたって向上した効果を維持することを発見し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-92443号公報
【特許文献2】特開2005-113336号公報
【特許文献3】特開2012-229424号公報
【特許文献4】WO2013/522479号公報
【特許文献5】特開2017-218516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、抗ウィルス性の優れた人工いぐさの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
[1]ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなるオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを製造する第1の工程、得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳んで紐状体を製造する第2の工程、及び、紐状体の直径より細い貫通孔を有する加熱部材の貫通孔を、得られた紐状体を通過させて、紐状体の周囲に融着被膜を形成する第3の工程からなることを特徴とする人工いぐさの製造方法、
[2]更に、融着被膜の表面に擦り傷を形成する第4の工程からなることを特徴とする上記[1]記載の人工いぐさの製造方法、及び、
[3]無機充填剤に、抗ウィルス剤の一部又は全部が担持されていることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の人工いぐさの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人工いぐさの製造方法の構成は上述の通りであり、人工いぐさは抗ウィルス性が優れており、且つ、抗ウィルス性は長期間低下することなく維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の人工いぐさの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなるオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを製造する第1の工程、得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳んで紐状体を製造する第2の工程、及び、紐状体の直径より細い貫通孔を有する加熱部材の貫通孔を、得られた紐状体を通過させて、紐状体の周囲に融着被膜を形成する第3の工程からなることを特徴とする。
【0012】
本発明における第1の工程は、ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなるオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを製造する工程である。
【0013】
上記オレフィン系樹脂フィルムは、ポリオレフィン系樹脂100重量部、無機充填剤10~50重量部及び抗ウィルス剤0.1~25重量部よりなる。
【0014】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体等が挙げられ、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリプロピレン樹脂であり、透明性の優れたホモポリプロピレン樹脂及びランダムポリプロピレン樹脂が最も好ましい。又、2種類以上がブレンドされてもよい。
【0015】
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0016】
樹脂フィルム中に無機充填剤が添加されていると、樹脂フィルムを一軸延伸した際に、樹脂フィルム中に分散している無機充填剤とポリオレフィン系樹脂との界面に微細な空洞ができると共に、含まれる無機充填剤が樹脂フィルム表面に露出し、表面に凹凸が形成され重ね合わせる樹脂フィルム間に空隙が形成され、軽量になり、断熱性、クッション性等が向上するので、オレフィン系樹脂100重量部に対し10~50重量部が添加されている。
【0017】
又、上記ポリオレフィン系樹脂には、従来からポリオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等の添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0018】
上記抗ウィルス剤は、抗ウィルス性を有すればよく、従来公知の任意の抗ウィルス剤が使用可能であり、例えば、Cu、Ag、Sb、Ir、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn、In、Hgなどの周期律表の第4周期から第6周期かつ8族から15族の元素のヨウ化物、1価の銅の塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、チオシアン化物である銅化合物、界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
上記ヨウ化物としては、例えば、CuI、AgI、SbI、IrI、GeI、GeI、SnI、SnI、TlI、PtI、PtI、PdI、BiI、AuI、AuI、FeI、CoI、NiI、ZnI、HgI、InI等が挙げられる。
【0020】
又、上記銅化合物としては、例えば、CuCl、Cu(CHCOO)、CuBr、CuI、CuSCN、CuS、CuO等が挙げられる。
【0021】
又、上記界面活性剤としては、抗ウィルス性を有する、従来公知の任意の界面活性剤が挙げられ、例えば、4級カチオン系界面活性剤、4級カチオンポリマー及びスルホン酸系界面活性剤が好適に挙げられる。
【0022】
上記スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物及びそのナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられ、抗ウィルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物及びアルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に、抗ウィルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物及びその金属塩がより好ましい。
【0023】
上記抗ウィルス剤の添加量は、少なくなると抗ウィルス性が低下し、多くなると、成形性が低下したり、樹脂フィルムから抗ウィルス剤がマイグレーションし漏出したり、剥離脱落して得られた樹脂フィルムの表面性が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部重量部に対し0.1~25重量部であり、好ましくは0.1~5重量部である。
【0024】
上記ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗ウィルス剤よりなるオレフィン系樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗ウィルス剤よりなるオレフィン系樹脂組成物を、例えば、押出法、Tダイ法、キャスティング法、カレンダー法、インフレーション法、プレス法等の従来公知の製膜法があげられる。
【0025】
尚、ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗ウィルス剤よりなるオレフィン系樹脂組成物を得る方法も特に限定されず、単に、ポリオレフィン系樹脂に無機充填剤及び抗ウィルス剤を添加し混合されてもよいし、抗ウィルス剤が均一に分散され、抗ウィルス性が均一で長期間持続するように、抗ウィルス剤が無機充填剤に均一に分散され担持されている抗ウィルス性粒子としてポリオレフィン系樹脂に添加し混合されてもよい。
【0026】
又、この場合、添加すべき抗ウィルス剤の全てが無機充填剤に均一に分散され担持されている必要はない。即ち、抗ウィルス剤と、抗ウィルス剤が無機充填剤に均一に分散され担持されている抗ウィルス性粒子が1部分ずつ併用されてもよい。
【0027】
無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、上記無機充填剤の水懸濁液に、抗ウィルス剤を添加する湿式処理方法、無機充填剤の粉体と抗ウィルス剤を攪拌混合する乾式処理方法等が挙げられる。
【0028】
無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる量は、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部が好ましく、より好ましくは5~70重量部であり、更に好ましくは6~50重量部である。3重量部未満では抗ウィルス性が乏しくなり、100重量部以上では担持させるのが困難となる。
【0029】
又、上記無機充填剤の大きさには、特に限定されないが、オレフィン系樹脂に添加した際の分散性が優れているのが好ましく、取り扱いやすさとの兼ね合いで、一般に、平均粒子径が0.01~100μmが好ましく、オレフィン系樹脂に添加した際の分散性が優れているのが好ましく0.02~30μmがより好ましく、更に、0.02~10μmが更に好ましい。
【0030】
第1の工程では、上記オレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸倍率2~10倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを得る工程であり、一軸延伸方法は、従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、ロール一軸延伸法、ゾーン一軸延伸法等が挙げられる。
【0031】
一軸延伸温度は、低くなると均一に延伸できず、高くなると樹脂フィルムが溶融切断するので、延伸する樹脂フィルムのオレフィン系樹脂の「融点-60℃」~融点の範囲が好ましく、より好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点-50℃」~「融点-5℃」である。
【0032】
一軸延伸倍率は、倍率が低くなると機械的強度が低下し大きくなると硬くなって畳表としての風合いが低下するので2~10倍が好ましい。又、上記一軸延伸フィルムの厚さは5~30μmが好ましい。
【0033】
本発明における第2の工程は、第1の工程で得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳んで結束し紐状体を製造する工程である。一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿ってランダムに折り畳むことにより、得られた紐状体においては、内部において、隣り合う一軸延伸フィルムの間には多数の空隙部が形成される共に表面部において、多数の一軸延伸フィルムの折り畳み部が露出している。又、紐状体の断面形状は、特に限定されないが、得ようとする人工いぐさの断面形状と略同一であればよく、例えば、円形、楕円形等が好ましい。
【0034】
本発明における第3の工程は、第2の工程で得られた紐状体をその直径より細い貫通孔(得ようとする人工いぐさの直径より細い貫通孔)を有する加熱部材の貫通孔を通過させて、紐状体の周囲に融着被膜を形成する工程である。
【0035】
上記加熱部材は、加熱可能であり、紐状体を通過させることが可能な狭い貫通孔を有するものであればよいが、紐状体をその直径より細い貫通孔を通過させることにより、一軸延伸フィルムを互いに不規則に融着収束させると共に表面に融着被膜を形成するのであるから、貫通孔の直径は紐状体の直径の50~80%が好ましい。又、貫通孔の断面形状は、得ようとする人工いぐさの断面形状と略同一であればよく、例えば、円形、楕円形等が好ましい。
【0036】
上記加熱部材の加熱温度は、紐状体を加熱部材の貫通孔を通過させることにより、一軸延伸フィルム互いに不規則に融着収束させると共に表面に融着被膜を形成するのであるから、テープ状体のオレフィン系樹脂の融点以上であり、好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点+100℃」~「融点+150℃」である。
【0037】
紐状体を加熱部材の貫通孔中を通過させる速度は、遅くなると一軸延伸フィルムの融着率が高くなって、空隙率が減少して、重くなると共に硬くなり、逆に早くなると表面に融着被膜が形成しにくくなるので、加熱温度にもよるが、一般に、15~75m/分が好ましい。
【0038】
又、上記人工いぐさの空隙率は低くなると重くなると共に硬くなりクッション性、断熱性、耐衝撃性等が低下し、逆に大きくなると機械的強度が低下するので、50~80%が好ましい。
【0039】
本発明における第3の工程において、得られた紐状体の周囲の融着被膜には表面に擦り傷が形成されているのが好ましい。融着被膜は表面に擦り傷が形成されると、融着表面の光沢が抑えられ艶消し効果が得られると共に、比表面積が増加し、得られた人工いぐさの抗ウィルス性効果の向上と均一性が向上すると共に、長期間にわたって効果を奏することができる。
【0040】
従って、第3の工程の次に、更に、融着被膜の表面に擦り傷を形成する第4の工程を含むのが好ましい。第4の工程は、第3の工程の後、針、錐、鈎、ナイフ等の治具により形成してもよいし、第3の工程における、加熱部材の貫通孔の出口付近に、貫通孔の径より大きい孔や突起や溝を形成し、融着被膜を形成すると同時に擦り傷を形成してもよい。
【実施例0041】
次に、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0042】
無機充填剤マスターバッチ(以下「無機充填剤MB」と言う。)の製造
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPPシリーズ」、MFR
5.0g/10min、密度0.9g/cm、融点155~165℃)100重量部、及び無機充填剤である炭酸カルシウム(竹原化学工業社製、商品名「MXシリーズ」、平均粒子径0.08μm)380重量部をヘンシェルミキサーに投入し、5分間撹拌した。撹拌後、二軸押出機に供給し、シリンダー温度約200℃で溶融混錬し、ストランドカット法により、直径約3mm、長さ訳5mmに切断して無機充填剤MBを得た。
【0043】
抗ウィルス性粒子(1)の製造
無機充填剤である炭酸カルシウム(竹原化学工業社製、粒子径0.08μm)100重量部の水懸濁液にスルホン酸系界面活性剤であるアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ50重量部を添加し撹拌した後に乾燥して無機充填剤にスルホン酸系界面活性剤を担持させた抗ウィルス性粒子(1)を得た。
【0044】
抗ウィルス性粒子(2)の製造
無機充填剤であるゼオライト(粒子径0.75μm)100重量部の水懸濁液に銀イオンを有する銀系抗ウィルス剤50重量部を添加し撹拌した後に乾燥して無機充填剤に銀系抗ウィルス剤を担持させた抗ウィルス性粒子(2)を得た。
【0045】
抗ウィルスマスターバッチ(以下「抗ウィルスMB(1)」と言う。)の製造
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPPシリーズ」、MFR
5.0g/10min、密度0.9g/cm、融点155~165℃)100重量部及び抗ウィルス性粒子(1)10重量部をヘンシェルミキサーに投入し、5分間撹拌した。撹拌後、二軸押出機に供給し、シリンダー温度約200℃で溶融混錬し、ストランドカット法により、直径約3mm、長さ訳5mmに切断して抗ウィルス性粒子(1)MBを得た。
【0046】
抗ウィルスマスターバッチ(以下「抗ウィルスMB(2)と言う。)の製造
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPPシリーズ」、MFR
5.0g/10min、密度0.9g/cm、融点155~165℃)100重量部及び抗ウィルス性粒子(2)10重量部をヘンシェルミキサーに投入し、5分間撹拌した。撹拌後、二軸押出機に供給し、シリンダー温度約200℃で溶融混錬し、ストランドカット法により、直径約3mm、長さ訳5mmに切断して抗ウィルス性粒子(2)MBを得た。
【0047】
(実施例1~5、比較例1)
表1に示した所定量のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPPシリーズ」、MFR 5.0g/10min、密度0.9g/cm、融点155~165℃)、無機充填剤MB、抗ウィルス性粒子(1)MB、抗ウィルス性粒子(2)MB及びアゾ系無機顔料(東洋インキ社製、商品名「PPM54700」)よりなる樹脂組成物をスクリュー70mmの一軸混錬押出機に供給して210℃で混錬押出して厚さ100μmのポリプロピレン樹脂フィルムを得た。
【0048】
得られたポリプロピレン樹脂フィルムを120℃に設定された熱板方式の一軸延伸装置に供給し、5倍に一軸延伸して、厚さ20μmの一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿って折り畳んで、直径2.0mmの貫通孔を通過させ直径約2.0mmの紐状体を成形した。次いで、得られた紐状体を、直径1.0mmの断面円形の貫通孔を有する加熱部材に供給し、貫通孔を65m/分の速度で通過させて直径約1.2mmの人工いぐさを得た。
【0049】
加熱部材は300℃に加熱されており、得られた人工いぐさは、一軸延伸フィルムが部分的に融着されていると共に表面に略光沢のある融着被膜が形成されていた。
【0050】
(実施例6~10、比較例2)
表2に示した所定量の樹脂組成物を使用し、実施例1~5及び比較例1で行ったと同様にして、直径約1.2mmの人工いぐさを得た。尚、加熱部材は300℃に加熱されており、貫通孔の出口付近に高さ0.05mmで先の尖った突起が45度間隔に8本立設されていた。得られた人工いぐさは、一軸延伸フィルムが部分的に融着されていると共に表面に融着被膜が形成され、融着被膜にはランダムに且つ多数の擦り傷が形成されており、融着被膜は光沢が抑えられた艶が消された状態であった。
【0051】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPPシリーズ」、MFR5.0g/10min、密度0.9g/cm、融点155~165℃)100重量部、無機充填剤MB27重量部及びアゾ系無機顔料(東洋インキ社製、商品名「PPM54700」)2重量部よりなる樹脂組成物をスクリュー30mmの一軸混錬押出機に供給して200℃で混錬押出し、パイプ成型用金型で押出、直径1.2mmのストロー状人工いぐさを得た。
【0052】
抗ウィルス性試験
得られた人工いぐさを横糸とし、直径0.5mmのポリエステル糸を縦糸とし、縦糸の間隔7mm、横糸の打ち込み数は152本/10cmで製織して畳表を得た。得られた畳表を180℃の熱プレスを行い板状へ加工し、5cm×5cmの正方形の試験サンプルを得た。
【0053】
試験ウィルスは、インフルエンザAウィルス A/Hong Kong /8/68/(H3N2)株及びネコカリシウィルスを使用した。
【0054】
上記試験サンプルと試験ウィルスを使用し、ISO 21702 に準拠して抗ウィルス性試験を行い、ウィルス接種直後と24時間放置後のウィルス感染値価を測定して結果を表1及び2に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の人工いぐさの製造方法は上記の通りであり、得られた人工いぐさは抗ウィルス性が優れており、且つ、長期間効果を維持することができる。従って、清潔であり、建築内装材等として好適に使用される。