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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100565
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】触感伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/018 20130101AFI20230711BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G10L19/018
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001339
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】503061485
【氏名又は名称】株式会社テック技販
(71)【出願人】
【識別番号】505195384
【氏名又は名称】国立大学法人奈良国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克成
(72)【発明者】
【氏名】和田 潤
(72)【発明者】
【氏名】天川 良太
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA46
5E555AA61
5E555BA01
5E555BA11
5E555BB01
5E555BB11
5E555BD06
5E555CA47
5E555DA23
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】音声を伝送できるようにした既存のシステムにおいて、触感も伝送させることができるとともに、また、音声信号と同時に触感信号を伝送させることができるシステムを提供する。
【解決手段】送信者側では、振動信号と熱信号などの触感信号を取得し、この触感のうち、熱信号をAM変調して、一般的な会話の音声帯域よりも高周波領域の熱信号として音声信号に乗せる。このとき、2チャンネルで信号を伝送する場合は、1チャンネルに音声信号、もう片方のチャンネルに振動信号や熱信号を乗せる。また、1チャンネルのみで伝送する場合は、音声信号と重ならないように、熱信号や振動信号をAM変調して音声信号に乗せ、1Vの基準信号とともに受信者側に伝送する。そして、受信者側では、基準信号をもとに振幅補正を行い、音声信号と触感信号を分離して、音声と振動、熱を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を取得する音声取得手段と、
触感信号を取得する触感取得手段と、
当該触感取得手段で取得され触感信号を変調する変調手段と、
当該変調手段で変調された信号を、前記音声取得手段で取得された音声信号に合成させる合成手段と、
当該合成手段で合成された信号を伝送する伝送手段と、
当該伝送手段で伝送された信号を受信する受信手段と、
当該受信手段で受信された信号を音声信号と触感信号とに分離する分離手段と、
当該分離手段で分離された触感信号を出力する触感出力手段と、
前記分離手段で分離された音声信号を出力する音声出力手段と、
を備えたことを特徴とする触感伝送システム。
【請求項2】
前記触感信号が、熱信号を含むものであり、
前記変調手段が、当該熱信号をAM変調させるものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【請求項3】
前記変調手段が、人間の会話時における音声帯域外に設定された特定の周波数帯域を超える周波数でAM変調させるものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【請求項4】
前記音声取得手段が、少なくとも2チャンネルで音声信号を取得するものであり、
前記合成手段が、前記2チャンネルのうち片側のチャンネルに前記変調手段で変調された触感信号を乗せるものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【請求項5】
前記変調手段が、人間の会話時における音声帯域外に設定された特定の周波数帯域を超える周波数でAM変調されるものであり、
前記合成手段が、当該変調手段によって変調された触感信号を、前記音声取得手段で取得された音声信号と同一チャネルに合成させるものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【請求項6】
前記伝送手段が、一定の大きさの基準値を示す基準信号を含めて伝送するものであり、
前記受信手段が、受信した信号に含まれる基準信号を、受信側で保有している一定の大きさの基準値となるように、受信した信号を補正するものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【請求項7】
前記音声出力手段が、ボリュームによって音量を調整して出力するものであり、
前記触感出力手段が、前記ボリュームに依存することなく触感信号を出力するものである請求項1に記載の触感伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が感じる振動や熱、圧感などの触感を遠隔地に伝送して出力できるようにした触感伝送システムに関するものであって、より詳しくは、音声信号とともに触感信号を伝送させるようにした触感伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、遠隔地に存在するコンピューター間で会話できるようにしたシステムが存在している。
【0003】
このようなシステムは、コンピューターに備えられたカメラやマイクなどを介して映像や音声を取得し、インターネットを介して遠隔地のコンピューターに伝送して出力できるようにしたものであって、テレビ会議や家族間の会話などでよく使用されるものである。
【0004】
ところで、このようなシステムは、音声を映像とともに送信するだけのものであるため、遠隔地にいる人間との間で、ある物を持って会話している場合に、その物の触感については口頭で伝えざるを得なかった。
【0005】
これに対して、振動や熱などの触感を遠隔地に伝送して出力できるようにしたシステムも提案されている(下記の特許文献1参照)。
【0006】
このようなシステムは、送信者側コンピューターに備えられたセンサーを介して、人間が物を触った際に得られる振動や熱、硬度などをデータ化し、そのデータを受信者側コンピューターに接続されたデバイスで出力できるようにしたものである。
【0007】
このようなシステムを用いれば、会話している物に対する触感を相手方に伝えることができるため、会話している物に対する触感を共有することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-22004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような触感を伝送させるシステムを用いる場合、次のような問題を生ずる。
【0010】
すなわち、現在では、テレビ会議システムなどが市場に流通して使用されているものの、このような既存のシステムで触感を伝送させるには、新たに触感を伝送させるためのシステムに入れ替えなければならない。
【0011】
また、仮に、テレビ会議システムで触感も伝送させた場合であっても、物を触っている時刻と、その物を触りながら会話している時刻とのタイムラグを生じる可能性があるといった問題も生ずる。
【0012】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、音声を伝送できるようにした既存のシステムにおいて、触感も伝送させることができるとともに、また、音声信号と同時に触感信号を伝送させることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、音声信号を取得する音声取得手段と、触感信号を取得する触感取得手段と、当該触感取得手段で取得され触感信号を変調する変調手段と、当該変調手段で変調された信号を、前記音声取得手段で取得された音声信号に合成させる合成手段と、当該合成手段で合成された信号を伝送する伝送手段と、当該伝送手段で伝送された信号を受信する受信手段と、当該受信手段で受信された信号を音声信号と触感信号とに分離する分離手段と、当該分離手段で分離された触感信号を出力する触感出力手段と、前記分離手段で分離された音声信号を出力する音声出力手段とを備えるようにしたものである。
【0014】
このように構成すれば、既存のテレビ会議システムなどをそのまま利用して触感信号を伝送させることができるとともに、音声信号に乗せて触感信号を伝送させるため、出力時において、音声と触感のタイムラグを生じさせるようなことがなくなる。
【0015】
また、このような発明において、前記触感信号として熱信号を含むようにするとともに、前記変調手段で、当該熱信号をAM変調させる
【0016】
このように構成すれば、オーディオインターフェースや音声通話ソフトウェアにおけるフィルター処理で、大幅に信号が減衰されてしまうことがなくなる。
【0017】
さらに、前記変調手段を、人間の会話時における音声帯域外に設定された特定の周波数帯域を超える周波数で触感をAM変調させるように構成する。
【0018】
このように構成すれば、音声信号と触感信号を明確に分けて伝送させることができ、受信者側コンピューターで、周波数によって、音声信号と触感信号、および、この触感信号の種類ごとに信号を分離することができるようになる。
【0019】
また、前記音声取得手段が、少なくとも2チャンネルで音声信号を取得するように構成されている場合、前記合成手段を、前記2チャンネルのうち片側のチャンネルに前記変調手段で変調された触感信号を乗せるようにする。
【0020】
このように構成すれば、ステレオで音声信号を伝送するシステムを利用して、音声信号と触感信号を明確に分離して伝送させることができるようになる。
【0021】
もしくは、前記変調手段を、人間の会話時における音声帯域外に設定された特定の周波数帯域を超える周波数で触感信号をAM変調させるように構成し、前記合成手段を、当該変調手段によって変調された触感信号を、前記音声取得手段で取得された音声信号と同一チャネルに乗せるように構成する。
【0022】
このように構成すれば、1チャンネルで音声信号を伝送させる場合においても、周波数帯域で音声信号と触感信号を分離して伝送させることができるようになる。
【0023】
また、前記伝送手段で、一定の振幅の基準値を示す基準信号を含めて伝送させるとともに、受信手段で、受信した音声信号に含まれる基準信号を、受信側で保有している一定の振幅の基準値となるように受信した信号を補正する。
【0024】
このように構成すれば、伝送時に信号が減衰した場合であっても、基準値をもとに受信した音声信号を元の状態に戻すことができ、触感を元の状態で出力させることができるようになる。
【0025】
また、前記音声出力手段で、ボリュームによって音量を調整して出力する場合であっても、前記触感出力手段で、前記ボリュームに依存することなく触感信号を出力させるようにする。
【0026】
このように構成すれば、ボリューム調整によって高温が出力されるようなことがなくなり、実際の温度に相当する温度を出力することができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、触感信号を変調して音声信号に乗せるようにしたため、既存のテレビ会議システムなどをそのまま利用して触感信号を伝送させることがでるとともに、出力時に、音声と触感のタイムラグを生じさせることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態を示す触感伝送システムの機能ブロック図
図2】同形態における2チャンネルで送信する場合の信号を示す図
図3】同形態における2チャンネルで送信する場合の信号を示す図
図4】2チャンネルで送信する場合の送信者側コンピューターの処理を示す図
図5】2チャンネルで受信する場合の受信者側コンピューターの処理を示す図
図6】1チャンネルで送信する場合の送信者側コンピューターの処理を示す図
図7】1チャンネルで受信する場合の受信者側コンピューターの処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
この実施の形態における触感伝送システム1は、既存のテレビ会議システムなどのように、インターネットなどを介して会話できるシステムに利用されるものであって、ある物を触って会話している状況の場合に、その音声信号に触感信号を乗せて相手方に伝送し、相手方で音声と触感を同時に出力させるようにしたものである。
【0031】
具体的には、この触感伝送システム1は、図1に示すように、インターネットなどの通信網を介して少なくとも2台以上の送信者側コンピューター1aと受信者側コンピューター1bで構成されるものであって、送信者側コンピューター1aに、音声取得手段2、触感取得手段3、変調手段4、合成手段5、伝送手段6などを備え、インターネットなどの通信網を介して接続された受信者側コンピューター1bに、受信手段7や分離手段8、出力手段9(触感出力手段91、音声出力手段92)などを備えるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
なお、本実施の形態における「触感」とは、人間が物に触ることによって感じ取ることができるものであって、例えば、生地を触った際における触り心地に相当する振動、その物から感じる熱、物を押圧する際に感じる硬さ・柔らかさなどの圧感などを含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
まず、送信者側コンピューター1aに備えられた音声取得手段2は、マイクなどで構成されるものであって、話者からの音声を取得する。この音声取得手段2では、ステレオで音声を取得する場合は、2チャンネルの振幅(電圧)―時間信号として取得され、また、モノラルで音声を取得する場合は、1チャンネルの振幅(電圧)-時間信号として取得される。
【0034】
一方、触感取得手段3は、送信者側コンピューター1aの本体に接続されたデバイス(図示せず)で構成されるものであって、複数のセンサーを備えて構成される。このとき、物を撫でることによって生ずる振動を取得する場合は、例えば、マウスやペンなどの下端に接触部(図示せず)を設けておき、それを物に接触させながら移動させることによって、接触部に設けられたロードセルから荷重の時系列の変化として振動信号を取得する。また、別の方法として、人間の指の爪近傍に接触部を取り付けておき、人間の指を介して間接的に伝わる振動を接触部を介して振動信号として取得するようにしてもよい。このとき、例えば、布などを撫でて振動信号を取得する場合、ノイズを除去した後の振動信号としては10Hzから1kHzの信号として得られる。
【0035】
一方、熱を取得する場合は、マウスの上面やペンの先端などに取り付けられたサーミスタを物に接触させ、そのサーミスタから熱信号を電圧の時系列の信号として取得する。なお、ここでは、接触によって熱を取得するようにしているが、これに限らず、非接触で熱を取得できるようにしてもよい。
【0036】
このように取得された触感信号は、変調手段4に出力される。この変調手段4は、伝送時における信号の減衰を防止するとともに、可聴帯域の音声信号と触感信号を干渉させないようにしたものであって、ここでは、人間が通常会話する際の周波数帯域(250Hzから3.5kHz)を超える4kHzの送信信号でAM変調する(図2図3参照)。このとき、2チャンネルで信号を伝送する場合、音声信号と触感信号を別チャンネルで伝送し、されに、振動信号についてはAM変調させることなく、そのまま1チャンネルに振動信号を乗せる。一方、熱信号については、時間変化が少なく、10Hz以下の低い周波数の情報となってしまうため、オーディオインターフェースや音声通話ソフトウェアにおけるフィルター処理で大幅に減衰される恐れがある。このため、4kHzでAM変調を行うようにしている。なお、ここでは、熱信号のみをAM変調させるようにしているが、振動信号についても、音声や熱と被らない周波数(例えば、6kHz)でAM変調して熱信号などと共に送信するようにしてもよい。また、圧感を伝送させる場合についても、圧感信号をAM変調させるようにするとよい。
【0037】
このように得られた触感信号は、合成手段5に出力され、音声取得手段2で取得された音声信号に、前記触感取得手段3で取得された触感信号を乗せるように合成する(図2図3参照)。
【0038】
合成手段5を用いて触感信号を音声信号に乗せる場合、音声取得手段2が2チャンネル(ステレオ)で構成されている場合には、図2に示すように、片側1チャンネル分の音声を破棄し、このチャンネルに、触感取得手段3で取得された振動信号や、AM変調された熱信号を乗せる。すなわち、2チャンネルのうち、1チャンネルについては音声信号のみとなり、もう片方のチャンネルについては触感信号が乗せられることになる。
【0039】
一方、音声取得手段2が、1チャンネルのみ(モノラル)で構成されている場合は、図3に示すように、会話の周波数帯域から外れる領域に触感信号を乗せる。
【0040】
さらに、この実施の形態では、音声信号に触感信号を乗せる他に、基準信号も乗せるようにしている(図2および図3参照)。この基準信号は、音声信号に触感信号を乗せて伝送する場合に、減衰による信号の補正を行えるようにしたものであって、ここでは、1Vの振幅信号を乗せるようにしている。この1Vの信号は、4kHzよりも高周波領域側の、例えば、9kHzで乗せられる。
【0041】
そして、このように合成手段5によって合成された音声信号や触感信号、基準信号などをインターネットなどの通信網を介して、受信者側コンピューター1bに伝送する。
【0042】
一方、受信者側コンピューター1bでは、受信手段7を介してこれらの信号を受信し、音声信号と触感信号を分離手段8を介して分離する。
【0043】
この分離手段8で音声信号と触感信号を分離する場合において、2チャンネルで音声信号と触感信号を受信した場合は、図2に示すように、それぞれのチャンネルごとに音声信号と触感信号に分離し、さらに、片側のチャンネルの触感信号については、周波数帯域によって熱信号や振動信号、基準信号を分離する。
【0044】
一方、1チャンネルで音声信号と触感信号とを受信した場合は、250Hzから3.5kHzの帯域から音声信号を分離し、また、4kHzの信号から熱信号を分離する。また、別の周波数(例えば、6kHz)でAM変調されている信号から振動信号を分離し、9kHzから基準信号を取得する。
【0045】
このように音声信号と触感信号を取得した受信者側コンピューター1bでは、取得した基準信号の振幅の大きさが、受信者側コンピューター1bの1Vの振幅信号と同じ大きさとなるように、受信した信号の振幅を調整し、音声、振動、熱の振幅を補正する。
【0046】
そして、振幅の調整された信号に対して、フィルターを介して音声信号と、振動信号、熱信号を分離し、音声信号については、スピーカーなどの音声出力手段92を介して音声として出力する。このとき、受信者側コンピューターにボリュームが設けられている場合は、そのボリュームに応じて音声を調整して出力する。
【0047】
一方、振動信号については、ボリュームの大きさに依存することなく、受信者側コンピューター1bに接続された振動子に振動信号を出力して振動子を振動させる。なお、ここでは音声のボリュームに依存することなく振動子を振動させるようにしているが、振動についても、振動子専用のボリュームを用意しておき、そのボリュームによって振動子の振幅を大きくして出力させてもよい。
【0048】
さらに、熱信号についても、音声のボリュームに依存することなく、受信者側コンピューター1bに接続されたサーミスタに温度信号を出力して熱を出力させる。なお、このとき、仮にボリュームの大きさに依存して熱を出力させると、高温の熱が出力されて、正確に熱による触感を伝えることができなくなる。このため、本実施の形態では、基準信号によって補正された熱信号をそのままサーミスタに出力させるようにしている。
【0049】
次に、このように構成された触感伝送システム1における処理フローについて、図4から図7の処理フローを用いて説明する。なお、図4および図5は、2チャンネルで伝送する場合の処理フローであり、図6および図7は、1チャンネルで伝送する場合の処理フローである。
【0050】
まず、送信者側では、ある物を触りながら会話をしている状況において、音声取得手段2を介して音声を取得する(ST1、ST21)。このとき、ステレオで音声を取得する場合は、2チャンネルで音声を取得し、モノラルで音声を取得する場合は、1チャンネルで音声を取得する。
【0051】
また、これと同時に、触感取得手段3を介して、送信者が触っている物から得られる触感信号を取得する(ST2、ST22)。このとき、物を撫でている際には、時系列の荷重を振動信号として取得し、また、物から伝わる熱については、サーミスタを介して熱信号として取得する。これらの取得された信号は、振幅(電圧)―時間の時系列の信号として取得される。
【0052】
次に、このように取得された触感信号について、2チャンネルで信号を送信する場合は(図4)、触感信号のうちの熱信号のみを4kHzでAM変調し(ST4)、一方、1チャンネルで信号を送信する場合は(図6)、振動信号と熱信号をAM変調する(ST24、ST25)。そして、これらの触感信号を音声信号に乗せるようにする。
【0053】
この触感信号を音声信号に乗せる場合において、2チャンネルで音声信号を伝送させる場合は(図4)、片側のチャンネルの音声信号を破棄し、図2に示すように、そのチャンネルに振動信号や熱信号を乗せる(ST5)。
【0054】
一方、1チャンネルで音声信号を伝送させる場合は、図3に示すように、一般的な会話の周波数帯域よりも高周波領域である4kHzに熱信号を乗せ、また、6kHzの部分に振動信号を乗せるように合成する(ST26)。
【0055】
さらに、このように合成された信号における9kHzの部分に、基準信号として1Vの振幅の信号を生成して(ST3、ST23)、音声信号と合成し(ST5、ST26)、伝送手段6を介して受信者側コンピューター1bに伝送する(ST6、ST27)。
【0056】
このように伝送された信号は、受信手段7を介して受信者側コンピューター1bで受信される(ST7、ST27)。
【0057】
そして、受信者側コンピューター1bでは、伝送されてきた信号から基準信号を抽出する(ST8、ST28)。そして、受信した基準信号を受信者側コンピューター1bで生成された基準信号である1Vの振幅信号と比較し、受信した信号を基準信号の1Vとなるように補正する(ST9、ST29)。
【0058】
そして、このように振幅の補正された信号について、分離手段8を介して、触感信号を分離手段8を介して分離して抽出する(ST10~11、ST30~32)。
【0059】
このとき、音声信号について、2チャンネルで音声信号を受信した場合は(図5)、2チャンネルのうち、音声信号のみが乗せられたチャンネルから音声信号を取得し、一方、1チャンネルのみで音声信号が送信されている場合は(図7)、フィルターを介して250Hzから3.5kHzの音声信号を抽出する(ST30)。
【0060】
また、触感信号について、2チャンネルで受信した場合は(図5)、振動信号をフィルターを介してそのまま取得し、熱信号のみを復調する(ST12)。一方、1チャンネルで受信した場合は(図7)、フィルターを介して振動信号と熱信号を抽出して復調する(ST33、ST34)。
【0061】
そして、このように分離手段8で分離して抽出された信号をそれぞれ出力手段9である音声出力手段92や触感出力手段91に出力し(ST13~15、ST35~37)、音声と同時に、振動や熱を出力させるようにする。このとき、音声出力手段92では、音声のボリュームに応じて音量を変えて出力し、触感出力手段91では、音声のボリュームに依存することなく、振動や熱をそのまま出力させる。
【0062】
このように上記実施の形態によれば、音声信号を取得する音声取得手段2と、触感信号を取得する触感取得手段3と、当該触感取得手段3で取得された触感信号を音声信号に変調する変調手段4と、当該変調手段4で変調された音声信号を、前記音声取得手段2で取得した音声信号に合成させる合成手段5と、当該合成手段5で合成された信号を伝送する伝送手段6と、当該伝送手段6で伝送された信号を受信する受信手段7と、当該受信手段7で受信された信号を音声信号と触感信号に分離する分離手段8と、当該分離手段8で分離された触感信号を出力する触感出力手段91と、前記分離手段で分離された音声信号を出力する音声出力手段92とを備えるようにしたので、既存のテレビ会議システムなどをそのまま利用して触感を伝送させることがでるとともに、出力時における音声と触感のタイムラグを生じさせるようなこともなくなる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0064】
例えば、上記実施の形態では、テレビ会議システムのように映像も送信できるようにしたシステムを利用するようにしたが、テレビなどのように一方的に映像と音声を送信するようなシステムにも利用することができる。あるいは、映像を送信するのではなく、音声だけを送信するような電話やラジオにも適用することができる。
【0065】
また、上記実施の形態では、触感取得手段3や、触感出力手段91として、マウスやペンなどのようなデバイスを想定して説明したが、これに限らず、手袋にセンサーやサーミスタ、振動子などを取り付けたデバイスや、パッドなどのデバイスを用いるようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記実施の形態では、触感として振動や熱などを用いて説明したが、物を押し込んだ際の硬さや柔らかさなどの圧感も送信させるようにしてもよい。この場合、押し込み量に対する時系列の反発力が硬さや柔らかさの触感信号は、低周波の信号となり、オーディオインターフェースや音声通話ソフトウェアにおけるフィルター処理で大幅に減衰される可能性がある。このため、熱信号と重ならないようにAM変調させるか、もしくは、2チャンネルのうち、音声信号を乗せるチャンネルに熱信号か押圧信号のいずれか一方を乗せ、もう片方のチャンネルに熱信号か押圧信号の片方の信号を乗せるようにするとよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、基準信号を元に、送信されてきた音声信号や触感信号の全てを補正するようにしたが、例えば、送信されてきた信号から振動信号や熱信号を分離し、その後、基準信号を元に熱信号などの触感信号を補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・触感伝送システム
2・・・音声取得手段
3・・・触感取得手段
4・・・変調手段
5・・・合成手段
6・・・伝送手段
7・・・受信手段
8・・・分離手段
9・・・出力手段
91・・・触感出力手段
92・・・音声出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7