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特開2023-100596埋込型血管内デバイスの動きを最小限に抑えるために固定ワイヤに摩擦力を付与する送達及び脱離システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100596
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】埋込型血管内デバイスの動きを最小限に抑えるために固定ワイヤに摩擦力を付与する送達及び脱離システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000447
(22)【出願日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】17/569,620
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ソラウン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・アレス
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ブルームンズティック
(72)【発明者】
【氏名】ズーシアオ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ガレラーニ
(72)【発明者】
【氏名】タイソン・モンティドロ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160MM33
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムを提供すること。
【解決手段】システムは、内側支持管の通路内に固定ワイヤを含む。固定ワイヤには、(i)内側支持管内のサイドポート開口部を通った、通路内への外側スリーブのリフロー、又は(ii)内側支持管の内壁と物理的に直接接触する関連点を形成する屈曲部を有する固定ワイヤによって生成される、意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与される。標的部位への埋込型血管内治療デバイスの送達中に、付与された制御された摩擦力は、内側支持管に対する固定ワイヤの動きを最小限に抑え、標的部位に到達すると、付与された制御された摩擦力を克服する力が加えられ、埋込型血管内デバイスを解放する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムであって、前記システムは、
近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管と、
前記内側支持管の前記通路を通って延在する固定ワイヤと、を備え、
前記固定ワイヤには、前記内側支持管の前記遠位端と、前記内側支持管のそれぞれの前記近位端と前記遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与される、送達及び脱離システム。
【請求項2】
前記内側支持管の外面を囲む外側スリーブを更に備え、前記外側スリーブは、リフロー可能材料で作製され、前記内側支持管は、前記通路と交差する、少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を内部に画定し、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料は、前記内側支持管内に画定された、前記少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を通って、前記内側支持管の前記通路内へと漏出可能であって、前記固定ワイヤとの物理的な直接接触の関連点を形成する、請求項1に記載の送達及び脱離システム。
【請求項3】
前記内側支持管と前記外側スリーブとの間に配設されたコイルを更に備え、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料は、前記コイルを通って漏出可能である、請求項2に記載の送達及び脱離システム。
【請求項4】
前記固定ワイヤは真っすぐである、請求項2に記載の送達及び脱離システム。
【請求項5】
前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、各屈曲部は、前記内側支持管の前記通路内へと漏出した前記外側スリーブの前記リフロー可能材料に物理的に直接接触する、請求項2に記載の送達及び脱離システム。
【請求項6】
前記内側支持管の前記通路は、均一の内径を有し、前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、各屈曲部は、前記内側支持管の前記通路の前記内壁に物理的に直接接触する、請求項1に記載の送達及び脱離システム。
【請求項7】
前記埋込型血管内デバイスは、前記固定ワイヤによって前記送達及び脱離システムの遠位端に解放可能に固定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
近位端、反対側の遠位端、及びそれらの間に軸方向に延在するチャネルを有する主送達管であって、前記内側支持管の前記近位端は、前記主送達管の前記遠位端において前記チャネル内に伸縮自在に受け入れられている、主送達管と、
近位端、反対側の遠位端、及びそれらの間で軸方向に延在する管腔を有する近位保持管であって、前記固定ワイヤは、前記管腔を通って延在し、前記近位保持管の前記近位端に固定され、前記近位保持管の前記遠位端は、前記主送達管の前記近位端内に伸縮自在に受け入れられている、近位保持管と、を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムを製造するための方法であって、前記方法は、
近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管を提供するステップと、
固定ワイヤが前記内側支持管の前記通路に通されるときに、前記内側支持管の前記遠位端と、前記内側支持管のそれぞれの前記近位端と前記遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力を前記固定ワイヤに付与するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記付与するステップが、
前記内側支持管内に少なくとも1つのサイドポート開口部を形成するステップであって、前記少なくとも1つのサイド開口部のそれぞれは、径方向内向きに延在し、前記内側支持管の前記通路と交差する、ステップと、
リフロー可能材料で作製された外側スリーブを前記コイルの周りで組み立てて、アセンブリを作製するステップと、
前記アセンブリを加熱して、その結果、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料が前記少なくとも1つのサイドポート開口部を通って前記内側支持管の前記通路内へと漏出し、前記意図的な摩擦ゾーンを形成するステップであって、関連点に沿って、前記固定ワイヤは、前記通路内へと漏出した前記外側スリーブの前記リフロー可能材料と物理的に直接接触している、ステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コイルが、前記少なくとも1つのサイドポート開口部が内部に形成された、前記内側支持管の周りで径方向に位置付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記内側支持管の前記通路は均一であり、前記固定ワイヤは、内部に少なくとも1つの屈曲部を有し、前記少なくとも1つの屈曲部のそれぞれは、前記内側支持管の前記通路の内壁に物理的に直接接触して、前記制御された摩擦力を生成する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内治療又は処置中に使用される埋込型血管内デバイスの送達及び脱離のためのシステムに関する。具体的に言えば、本発明は、軸方向の通路を有し、その内部に固定ワイヤが通されている内側支持管を含む送達及び展開システムを対象とする。体内の標的部位への埋込型血管内デバイスの送達中、送達及び脱離システムの内側支持管の通路内での固定ワイヤの動きは、意図的な摩擦ゾーンによって最小限に抑えられるか、又は阻止される。
【背景技術】
【0002】
埋込型血管内デバイスは、様々な血管障害、例えば、脳動脈瘤の血管内処置又は治療において一般的に使用されている。カテーテルは、患者の脚の大腿動脈に挿入され、画像によって誘導されて、動脈瘤が位置する脳内の標的部位まで血管を通してナビゲートされる。カテーテルの遠位端が動脈瘤の近位側に適切に位置付けられた状態で、マイクロカテーテルが、カテーテルを通して動脈瘤の近位側まで追跡される。埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)が装填された送達及び展開システムが、マイクロカテーテルを介して標的部位に導入される。標的部位への送達中、埋込型血管内デバイスは、典型的にはワイヤ(例えば、固定ワイヤ又はプルワイヤ)によって送達システム内で機械的に固定される。標的部位に(例えば、動脈瘤の場所に)適切に位置付けられると、ワイヤは切断されて、動脈瘤内に配置されるべき埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)を解放する。固定ワイヤからの塞栓コイルの切断は、典型的には、ワイヤに小さな電流を通すことによって達成される。このプロセスは、弱化した壁を有する血管のエリアが、当該エリアへのバースト流を閉塞させる多数の塞栓コイルでしっかりと充填され、それによって破裂が防止されるまで繰り返される。
【0003】
動脈又は血管内の標的部位への埋込型血管内デバイスの送達中、従来の送達及び脱離システムは、その内部を通って延在する固定ワイヤに摩擦力が意図的に付与されるように設計される。このような従来のデバイスの目的及び意図は、固定ワイヤに摩擦力を付与することを完全に回避することである。そのような従来の摩擦のない構成に関連する問題又は欠点は、送達中に、固定ワイヤが望ましくない移動、動き、又は並進の対象となり、その結果、動脈内の標的部位における埋込型血管内デバイスの不正確な送達又は取り外しが生じる可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、固定ワイヤに対する、制御された量の摩擦力を意図的に導入して、埋込型血管内デバイスを動脈内の標的部位に送達する間の望ましくない移動、動き、又は並進を最小限に抑えるか、又は阻止する、埋込型血管内デバイスの送達及び脱離のための改善されたシステムを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固定ワイヤに対する、制御された量の摩擦力を意図的に導入して、埋込型血管内デバイスを動脈内の標的部位に送達する間の望ましくない移動、動き、又は並進を最小限に抑えるか、又は阻止する、埋込型血管内デバイスの送達及び脱離のための改善されたシステムを対象とする。
【0006】
本発明の別の態様は、近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管を含む、埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムに関する。システムは、内側支持管の通路を通って延在する固定ワイヤを更に含む。固定ワイヤには、内側支持管の遠位端と、内側支持管のそれぞれの近位端と遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与される。
【0007】
本発明の更に別の態様は、前述の段落に記載したように、埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムを製造するための方法を対象とする。最初に、近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管が提供される。次に、固定ワイヤが内側支持管の通路に通され、内側支持管の遠位端と、内側支持管のそれぞれの近位端と遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が固定ワイヤに付与される。
【0008】
本発明の更に別の態様は、埋込型血管内治療デバイスのための送達及び脱離システムを使用する方法に関する。送達及び脱離システムは、近位端と反対側の遠位端との間で軸方向に延在する通路を有する内側支持管を含み、送達及び脱離システムは、内側支持管の通路を通って延在する固定ワイヤを更に含み、固定ワイヤには、内側支持管の遠位端と、内側支持管のそれぞれの近位端と遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与される。システムを使用する方法は、標的部位への埋込型血管内治療デバイスの送達中に、付与された制御された摩擦力が、内側支持管に対する固定ワイヤの動きを最小限に抑えることである。一方、埋込型血管内治療デバイスが標的部位に到達すると、付与された制御された摩擦力を超えるのに十分な力が固定ワイヤに対して近位方向に加えられ、埋込型血管内デバイスは、送達及び脱離システムから解放される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の上記及び他の特徴は、本発明を例示する以下の発明を実施するための形態及び図面からより容易に明らかになるものであり、いくつかの図面にわたり類似の参照番号は類似の要素を示す。
図1】真っすぐな固定ワイヤが複数の点において物理的に直接接触するか、又は物理的に直接係合する、内部を通るように画定された長手方向/軸方向通路の内壁の遠位部分に沿って形成された意図的な摩擦ゾーンを有する内側支持管を含む、本発明による埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)の送達及び脱離のための例示的な組み立てられたシステムの長手方向/軸方向断面図である。
図2A】遠位部分に沿って内部に形成された複数のサイドポート開口部を有する、本発明による、変更された内側支持管の例示的な構成の側面図である。
図2B】外側スリーブのリフロー可能材料を溶融させて、内部に画定されたサイドポート開口部を通って長手方向/軸方向通路に入れる前の、本発明の内側支持管の部分長手方向/軸方向断面図である。
図2C】外側スリーブのリフロー可能材料が側部ポート開口部を通って長手方向/軸方向通路内へと漏出し、それによってそれらの位置において内径を縮小させ、その遠位部分に沿って摩擦ゾーンを形成する、本発明の内側支持管の部分長手方向/軸方向断面図である。
図2D】内側支持管の通路内へと部分的に漏出した外側スリーブのリフロー可能材料を示す、図2Cの線II(D)-II(D)に沿った径方向断面図である。
図3A図2Aの内側支持管内で径方向内向きのサイドポート開口部を作成するための例示的な支持及び切削構造の斜視図である。
図3B】内側支持管内の1つのサイドポート開口部の第1のスカイブカット(skived cut)を形成している、図3AのブレードのZ軸に平行な拡大図である。
図3C】第2のスカイブカットを形成して、内側支持管内での1つのサイドポート開口部の形成を完了する、ブレード(図3Bの第1のスカイブカットに対して180°反転した)のZ軸に平行な拡大図である。
図3D】クランプによって所定の位置に固定されている間の、図3Aの支持及び切削構造の波形/波形状プラットフォーム及びサイドポートテンプレートによって支持された内側支持管の拡大図である。
図3E図3Aの支持及び切削構造のサイドポートテンプレートに関連するトラフを通って/横切って摺動した2つの内側支持管の拡大図であり、下側の内側支持管は、その長手方向/軸方向通路を通って部分的に挿入された保護ワイヤを有する。
図3F】サイドポート開口部を内部に形成した後に内側支持管の通路から引き出されている保護ワイヤの拡大図である。
図4】内部に画定され、その通路を露出させる、単一の径方向内向きのサイドポート開口部を備える内部支持管を示す。
図5】固定ワイヤが複数の屈曲部又はキンク(例えば、台形形状)を有し、各屈曲部又はキンクが内側支持管の通路の内壁と関連点において物理的に直接接触している、代替実施形態における内側支持管の部分長手方向断面図である。
図6A】内部支持管の通路に保護ワイヤが挿入されており、内部支持管は、25%の深さ(径方向内向き)の切り込みで単一のサイドポート開口部を内部に画定している例示的な内部支持管の一部の長手方向断面図及び底部端面図をそれぞれ示す。
図6B】内部支持管の通路に保護ワイヤが挿入されており、内部支持管は、25%の深さ(径方向内向き)の切り込みで単一のサイドポート開口部を内部に画定している例示的な内部支持管の一部の長手方向断面図及び底部端面図をそれぞれ示す。
図6C】内部支持管の通路に保護ワイヤが挿入されており、内部支持管は、50%の深さ(径方向内向き)の切り込みで単一のサイドポート開口部を内部に画定している例示的な内部支持管の一部の長手方向断面図及び底部端面図をそれぞれ示す。
図6D】内部支持管の通路に保護ワイヤが挿入されており、内部支持管は、50%の深さ(径方向内向き)の切り込みで単一のサイドポート開口部を内部に画定している例示的な内部支持管の一部の長手方向断面図及び底部端面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明において、「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明では、治療する医師又は医療インターベンショナリストに対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」は、医師若しくはインターベンショナリストから遠い位置又は医師若しくはインターベンショナリストから離れた方向にある位置である。「近位」又は「近位に」又は「近傍」は、医師若しくは医療インターベンショナリストに近い位置又は医師若しくは医療インターベンショナリストに向かう方向にある位置である。「閉塞物」、「血塊」又は「妨害物」という用語は、互換的に使用される。
【0011】
血管内治療処置(例えば、コイル塞栓)の間、システムは、血管又は動脈内の正確な位置又は標的部位(例えば、動脈瘤)に埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)を確実に送達し、脱離/展開/配置/解放することが望ましい。埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)は、ユニットとして一緒に血管又は動脈内の所望の標的部位へと前進させられる送達及び脱離システムの遠位端に解放可能に装填される(例えば、固定される)。埋込型血管内デバイスの解放可能な固定は、送達及び脱離システムを通って近位方向で軸方向に延在する固定ワイヤ(例えば、プルワイヤ)によって行われる。埋込型血管内デバイスが動脈又は血管内の標的部位に正確に位置付けられると、インターベンション医師は、動脈内の当該位置に配置するために埋込型血管内デバイスを解放する(例えば、係合解除する)のに十分な近位方向の力を固定ワイヤに加える。埋込型血管内デバイスの送達中の固定ワイヤの任意の移動、並進、又は動きは、不正確な位置決め及び動脈又は血管内の意図された標的部位からの配置オフセットをもたらし得る。
【0012】
本発明の送達システムは、意図的な摩擦ゾーン内で、固定ワイヤに対する、制御された摩擦力を意図的に導入するか、又は付与することによって、動脈内の標的部位への埋込型血管内デバイスの送達中の固定ワイヤの望ましくない並進、移動、又は動きを最小限に抑えるか、又は阻止する。
【0013】
図1は、埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)130が装填された、本発明による例示的な組み立てられた送達及び脱離システム100の長手方向/軸方向断面図である。送達及び脱離システム100は、近位端105と、埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)130が解放可能に固定される、反対側の遠位端110と、を有する。システム100は、長手方向/軸方向に内部を通って延在するチャネル113を有する主送達管、すなわち外側送達管115を含む。主送達管115のチャネル113の遠位端には、内側支持管140の近位端が挿入可能であり、内側支持管自体は、長手方向/軸方向に内部を通って画定された通路143を有する。コイル120(例えば、螺旋コイル)は、内側支持管140の外面の径方向外向きに配設される。外側スリーブ135は、好ましくは、滑らかなリフロー可能材料又は滑らかな外側コーティングを有するリフロー可能材料で作製され、コイル120の外面を覆う。例として、外側スリーブは、PEBAX(登録商標)の商品名で知られているポリエーテルブロックアミド(PEBA)など熱可塑性エラストマー(TPE)である。好ましい実施形態では、送達及び脱離システム100の遠位端110に、コイル本体120よりも大きい外径を有する圧縮性構成要素(例えば、螺旋状離脱式コイル)125が配設され、外側スリーブ135は、近位で停止する(圧縮性構成要素125の任意の部分を超えて軸方向に延在しないか、又は圧縮性構成要素125の任意の部分を被覆しない)。同様に、内側支持管140は、圧縮性構成要素125の近位で終結する(すなわち、空洞内へと延在しない)。
【0014】
埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)130は、圧縮性構成要素125の遠位端と埋込型血管内デバイス130の近位端との間に配設された係合デバイス(例えば、近位キー)160に通されているループワイヤ155によって、送達及び脱離システム100の遠位端110に解放可能に接続されている。ループワイヤ155のそれぞれの自由近位端は、圧縮性構成要素125の内面に恒久的に貼着され、ループワイヤ155の反対側の遠位端は、閉ループを形成する。係合構成要素(例えば、近位キー)160は、開口部を有する。したがって、埋込型血管内デバイス130は、ループワイヤ155の閉ループ遠位端の一部を係合構成要素160の開口部を通して上向きに(例えば、送達及び脱離システムの軸方向に対して垂直に)曲げ、固定ワイヤ(例えば、プルワイヤ)150の遠位端を遠位方向にループワイヤ155の上向きに曲げられた閉ループ遠位端に通すことによって、送達及び脱離システム100の遠位端110に解放可能に貼着されるか、接続されるか、又は固定される。固定ワイヤ150は、真っすぐに示されている(すなわち、一方向にのみ均一に延在しているか、又は動いており、曲線部、キンク、又は屈曲部はない)が、更により大きな摩擦力を付与するために、真っすぐではない、ねじれている、屈曲部のある固定ワイヤが可能である。ループワイヤ155の閉ループ遠位端内での固定ワイヤ150の遠位端の係合は、係合構成要素(例えば、近位キー)160及びそれに遠位に貼着された埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)130を、送達及び脱離システム100の遠位端に固定する。
【0015】
埋込型血管内デバイス130は、固定ワイヤ150に近位方向の軸力を加える(例えば、近位方向に引く)ことによって、動脈内の標的部位において展開されるか、解放されるか、又は配置される。十分な軸力が近位方向に加えられると、結果として、固定ワイヤ150の遠位端がループワイヤ155から係合解除される(すなわち、ループワイヤから解放されるか、離れるか、又は拘束されなくなる)。ループワイヤ155から解放されたために、固定ワイヤ150は、係合構成要素(例えば、近位キー)160又はそれに貼着された埋込型血管内デバイス130に接続されなくなる。
【0016】
圧縮性構成要素125は、当初圧縮下にあり、固定ワイヤ150が、埋込型血管内デバイス(例えば、塞栓コイル)130の近位端に遠位方向の力を付与していたループワイヤ155から係合解除されると、圧縮の解除/拡張の対象となり得る。ループワイヤ155は、好ましくは、圧縮性構成要素125によって圧縮解除/拡張力が付与されると、ループワイヤ155が係合構成要素(例えば、近位キー)160の開口部から抜け出し、それによって、埋込型血管内デバイス130を送達システム100から脱離させる/解放するように、十分な可撓性を有する。更に、圧縮解除/拡張中に圧縮性構成要素125によって付与される力は、好ましくは、埋込型血管内デバイス130を送達システム100の遠位端110から離れるように遠位方向に押し、展開時にそれらの間に所定の分離距離を形成する。近位方向の軸力(例えば、引張力)の印加時に解放可能である、他の純粋に機械的(非熱的及び非電気的)構成は、埋込型血管内デバイスを送達及び脱離システムの遠位端に解放可能に固定するために企図され、これらは、本発明の意図される範囲内である。
【0017】
耐伸張性要素163は、好ましくは、埋込型血管内デバイス130の空洞内部に配設される。遠位端において、耐伸張性要素163は、埋込型血管内デバイス130の内部空洞内へと近位方向に向かうことを阻止する外径を有するビーズ又は他の阻止構成要素164によって固定され、その反対側の近位端は、係合構成要素160の遠位端に固定される(例えば、その開口部に通される)。
【0018】
使用中の追跡を可能にするために、撮像によって検出可能な1つ以上のマーカーバンドが、送達及び脱離システムの1つ以上の構成要素の領域に沿って設けられ得る。例えば、マーカーバンド195a、195b(例えば、fluor-saver marker(省蛍光体マーカー))が、主送達管115の近位部分及びコイル本体120の遠位部分の外面に沿って配設され得る(好ましくは、内側支持管140内に形成されたサイドポート開口部165a、165b、165cの外面と整列する)。マーカーバンドの配置、数、及び使用は全て任意選択である。
【0019】
本発明の送達及び脱離システム100の構成要素の組み立ての準備時には、内側支持管140の遠位部分に沿って、複数の径方向内向きの切り込みが、外面から通路143を通って(交差して)延在するように形成され、流体(例えば、外側スリーブのリフロー可能材料)が内部を通って流れる/漏出することを可能にする複数のサイドポート開口部165を形成する。「遠位部分」という用語は、以下の条件、すなわち、(i)内側支持管の対向する近位端/先端と遠位端/先端との間の中間点に対して遠位方向、及び(ii)内側支持管の遠位端/先端に対して近位方向を満たす、内側支持管に沿った任意の部分、領域、一部、又はエリアとして明確に定義される。換言すれば、選択された遠位部分(これに沿って意図的な摩擦ゾーンが形成される)は、遠位端/先端と内側支持管の中間点との間の領域(いずれも含まない)の任意の場所に位置する。
【0020】
図3Aは、内部に軸方向に画定された通路143を通って(交差して)内部支持管140の外面に径方向内向きのスカイブカットを形成するために使用される、例示的な支持及び切削構造300の斜視図である。サイド開口部が形成される内側支持管140は、構造300上に支持され、クランプ320(図3A及び図3D)によって所定の位置に保持される。
【0021】
互いにX方向で平行に配置された複数のトラフ(305a、305b、305c)を有するサイドポートテンプレート309は、所望の幾何学的断面形状(例えば、台形形状)を有するサイドポート開口部165を作成するために内側支持管140に対して行われる切り込みの位置、間隔、配置、及び角度を画定する。3つのトラフ(305a、305b、305c)が、図3A及び図3Dに表す実施例に示されており、全てが同一の断面形状(例えば、台形形状)を有する。しかしながら、各トラフの数、位置、間隔、配置、及び/又は断面形状は、所望に応じて設計され得る。
【0022】
例として、図2Aに示す内側支持管140内に画定された、隣接するサイドポート開口部は、長手方向/軸方向及び径方向の両方において互いから分離している。すなわち、サイドポート165aは、示した全ての隣接するサイドポートに該当するように、長手方向/軸方向及び径方向(約180°)の両方で、隣接するサイドポート165bのこれらの方向に対して分離しているように図示されている。3つのサイドポート開口部165a~165cを図2Aに示すが、所望に応じて、2つ以上の任意の数のサイドポート開口部を作製することができる。各サイドポート開口部の幾何学的形状は、各サイドポート開口部が内側支持管140を通って径方向内向きに(すなわち、その外面からその通路143まで)延在する限り、所望に応じて変更され得る。通路143に通されるときに固定ワイヤ150に付与される、制御された量の意図的に導入された摩擦力は、(i)サイドポート開口部の数、(ii)サイドポート開口部の位置及び配置(長手方向/軸方向及び径方向の両方)、並びに(iii)内側支持管内に形成された各サイドポート開口部の軸方向(Z方向)及び径方向(X方向)の寸法を選択することによって生成される。
【0023】
図2Aの例示的な構成では、内側支持管の各サイドポート開口部は、約1mmの軸方向長さを有し、隣接するサイドポート開口部間で軸方向に少なくとも約1mm分離している。この例を続けると、第1のサイドポート開口サイドポート開口部の近位端及び隣接する/次の第2のサイドポート開口部の近位端から軸方向に、少なくとも約2mmの距離が存在するであろう。径方向の切り込み間隔は、切り込みの深さ(径方向内向き)及び内側支持管の残りの材料の量(すなわち、強度)などの要因に応じて、よりコンパクトであり得る。図6A図6Dを参照すると、内側支持管に様々な例示的な深さの切り込みが形成されている。具体的には、図6A及び図6Bは、それぞれ、25%の深さ(径方向内向き)の切り込みを有するサイドポート開口部165を有する内側支持管140の長手方向断面図及び底部端面図を示し、図6C及び図6Dは、50%の深さ(径方向内向き)の切り込みを有するサイドポート開口部の同様の図を示す。より小径の保護金属ワイヤ/マンドレル311が使用されるとき、より深い径方向の切り込み(50%の深さ)は、内側支持管140の通路143内のクリアランス、すなわち自由空間内へと更に径方向内向きに延在する。
【0024】
送達及び脱離システムを組み立てる前に、内側支持管は、支持及び切削構造上に機械的に支持され(所定の位置に保持され)、複数の径方向内向きの切り込みが、その遠位部分に沿ってサイドポート開口部を形成するように形成される。図3A及び図3Dは、基板301と、Z軸に沿って延在する、複数の長手方向に配置された平行な隆起部及び谷部303を有する波形/波形状プラットフォーム308と、を含む、例示的な支持及び切削デバイス300を示す。サイドポート開口部が形成される内側支持管140は、内側支持管140の長手方向軸がZ軸と平行に配置されるように、波形/波形状プラットフォーム308の谷部(隣接する隆起部の間)303のうちの関連する1つの内部に配置される。2つ以上の内側支持管内のサイドポート開口部は、同時に(simultaneously)同時に(at the same time)切削され得、各内側支持管140は、支持及び切削デバイス300の波形/波形状プラットフォーム308上の関連する谷部303内に配置される。支持及び切削デバイス300は、Z軸に平行に、波形/波形状プラットフォーム308の谷部303の数に等しい数の一連のチャネル307が内部に画定されたサイドポートテンプレート309を更に含む。サイドポートテンプレート309の各チャネル307は、波形/波形状プラットフォーム308の対応する谷部303とZ方向に整列している。
【0025】
サイドポートテンプレート309は、互いに平行にその内部で画定され、Z軸に垂直であるX軸に沿って延在する複数のトラフ(例えば、凹部)305a~305cを有する。トラフ305a~305cの数は、内側支持管に形成されるサイドポート開口部の所望の数に対応する。各トラフ305a、305b、305cは、Z軸に平行な同一断面を有することが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。Z軸に平行なサイドポートテンプレート309内で画定されたチャネル307は、複数のトラフ305a~305cのそれぞれの一方の側に出現し、それを横切って延在し、その後、その反対側まで続く。各トラフは、図3B及び図3Cに示すように、Z軸に平行な台形様の断面形状を有することが好ましい(すなわち、先細の側部は平坦な底面から反対方向に広がり、先細の側部の狭くなる自由端をつなぐ)。切り込みの先細の側部の角度の好ましい範囲は、チャネル307を通って垂直に延在するZ軸に対して鋭角α(例えば、90°未満)である。
【0026】
最初に、サイドポート開口部が形成される内側支持管140は、波形/波形状プラットフォーム308の谷部303のうちの1つの中に配置/支持され、サイドポートテンプレート309(図3D)を通って画定された、関連するチャネル307内へとZ方向に沿って摺動される。各トラフ305aとの遭遇時にZ方向への前進を続けると、内側支持管140の遠位端は、チャネル307から出現/退出し、関連するトラフを横切って前進し、もう一度、トラフの反対側に形成されたチャネルに受容される。最終の、すなわち最後のトラフを横切って前進した後、内側支持管の遠位端は、好ましくは、最終/最後のトラフの反対側にてチャネル内に再び通され/受け入れられて、サイドポート開口部の切削中に、内側支持管の最遠位端がチャネル内で確実に支持/保持されるようにする。
【0027】
サイドポートテンプレート309の対応するチャネル307内に完全に挿入されると、内側支持管140は、クランプ320によって支持及び切削デバイス300上の所定の位置に保持される。内側支持管140が支持及び切削デバイス300上の所定の位置に固定されると、ブレードでは貫通できない金属又は何らかの他の材料で作製された保護ワイヤ311が通路143に通され、スカイブカットの形成時にブレードが内側支持管の反対側(180°反対側)まで穿孔/貫通しないようにする。図3Eは、サイドポートテンプレート309の台形トラフ305aを横切って延在する内側支持管140の拡大図であり、その通路143を通って遠位方向に前進させられているときの保護ワイヤ311を示す。
【0028】
ブレード310(例えば、かみそりの刃)は、ヒンジ式取り付けアーム312の開口部内に受容可能であり、その角度は、回転ハンドル315によって所望に応じて調節され得る。好ましくは、ブレード310は、従来のロック機構を使用して(例えば、つまみねじを締めて)、台形トラフの先細の側面の角度に実質的に一致する鋭角α(Z軸に対して90°未満)で所定の位置に固定される。各サイドポート開口部165は、好ましくは、図3Aの例示的な支持及び切削デバイスを使用してブレードの2回のパス/切削によって作製され、1回の切削(切り込み)が行われた場合は、意図された摩擦ゾーンを形成するためには不十分な材料のリフローが内側支持管の通路に到達する。図3Bに示すように、サイドポート開口部の位置ごとに、鋭角α(Z軸に対して90°未満)に方向付けられたブレード310を用いて、第1のパス/切削がトラフのうちの1つの中で行われる。その後、回転ハンドル315が、(図3Cに示すように)180°に調節され(水平方向に反転され)、この位置で、ブレードを用いて第2のパス/切削が行われ、その特定のサイドポート開口部を完成させる。ブレードの第2のパス/切削では、それぞれのパス/切削によって両側にまとめられた内側支持管の一片(ウェッジ)が持ち上げられるか又は除去されて、その中に形成されたサイドポート(及び見えるようになった通路)を露出させる。このプロセスは、内側支持管の遠位部分において所望される複数のサイドポートごとに繰り返される。図3Aを参照すると、トラフ305a、305cは、それぞれ、サイドポート開口部165a、165cを形成するために使用され得、一方、サイドポート開口部165bは、トラフ305bを使用して、(内側支持管140を180°回転させた後に)形成され得る。サイドポート開口部のサイズは、十分な材料が内部を通って通路内へとリフロー/漏出できるために十分であることを確実にするために、台形形状の側部の切り込みが、X軸に対して垂直の切り込みよりも好ましい。
【0029】
ブレード(例えば、かみそりの刃、ナイフ、又は他の切削デバイス)310を使用して、複数の径方向内向きの切り込み、好ましくはスカイブカットが、内側支持管140の遠位部分又は領域に沿って形成され、サイドポート開口部165a~165cを形成する。各径方向内向きのスカイブカットは、内側支持管140の外面の一部を、その近位端/先端からその反対側の遠位端/先端まで延在する長手方向/軸方向通路143まで除去する。
【0030】
サイドポート開口部の数及び各サイドポート開口部の(Z軸に沿った)幅は、所望に応じて変更され得る。各サイドポート開口部は、所望に応じて、均一の形状及びサイズを有し得るか、又は様々であり得る。内側支持管140は、送達システム100内の固定ワイヤ150の耐伸張性を阻止するか、又は最小限に抑える。したがって、サイドポート開口部の形状及びサイズは、いくつかの相反する検討事項を考慮して選択される。一方では、サイドポート開口部は、リフロー可能な外側スリーブ材料をリフロー/漏出させ、固定ワイヤに対する制御された量の摩擦力を生成できるようにするのに十分なサイズである。しかしその一方では、サイドポート開口部が広くなるほど、そのような抵抗を提供する内側支持管の能力は低下する。
【0031】
本発明の内側支持管は、内部に画定された複数のサイドポート開口部を有し、各サイドポート開口部が2つのスカイブカットから形成されるものとして示され、説明されてきた。1回の切削の角度は、90°(Y軸に対して)≧α>0°の範囲内の任意の所望の角度αであり得る(図3C)。
【0032】
所望の数のサイドポート開口部が形成されると、続いて、(図3Fに示すように)通路143から保護ワイヤ311が引き抜かれ、本発明の送達及び脱離システムの一部を構成する内側支持管140の組み立て準備が整う。具体的には、サイドポートポート開口部165a、165b、165cが遠位部分又は領域に画定された内側支持管140が、コイル120によって形成された内部円筒形状空洞に挿入される。内側支持管140のいずれの部分も、圧縮性要素125の内側空洞の中へと長手方向に延在することはない。すなわち、サイドポート開口部165のそれぞれは、圧縮性要素125の近位に配設され、それに対して所定の距離だけ分離している。外側スリーブ、すなわち被覆135は、コイル120の外面の周囲に位置付けられるか、又はそれを被覆する。例示のみを目的として、内側支持スリーブ140は、最初にコイル120に挿入され、コイルは一緒にユニットとして外側スリーブ135内に受け入れられている。しかしながら、コイル120を外側スリーブ135に挿入して一緒にユニットを形成し、その後、内側支持管140を、外側スリーブ135と共にユニットを形成するコイル120によって形成された内側空洞に挿入することも、本発明の意図される範囲内である。したがって、これらの3つの構成要素(例えば、内側支持管140(その遠位部分又は領域に画定されたサイドポート開口部を備える)、コイル120、及び外側スリーブ135)の組み立て順序は、所望に応じて選択され得、これらは、本発明の意図される範囲内である。
【0033】
真っすぐなマンドレルが、コイル120及び外側スリーブ135と共に組み立てられた後に、内側支持管140の通路を通って長手方向に挿入される。真っすぐなマンドレルは所定の溶融温度に加熱されて、外側スリーブ135の材料(例えば、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)又は他の熱可塑性ポリマー)を、内側支持管140(ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの、当該温度では溶融しない熱可塑性ポリマー材料で作製される)の外面上で、サイドポート開口部165a~165cを通って径方向内向きに、部分的に通路143内へと(その内壁に沿って)リフローさせる。したがって、外側スリーブ材料が通路に漏出する領域では、内側支持管の通路の内径が縮小する。側部ポート開口部165a~165cの寸法は、外側スリーブ135の材料の十分なリフローが内側支持管140の通路143に漏出し、内部を通された固定ワイヤ150と物理的に直接接触するか、又は直接係合するときに、制御された量の摩擦力を生成することができるように選択される。例示の実施例として、マンドレルの外径の好ましい範囲は、内側支持管の通路の内径の約70%~約80%の範囲である。実験的試験では、マンドレルの外径は0.003インチであり、約10gF~約20gFの範囲内の意図的な摩擦ゾーンを作り出して、使用中の送達及び脱離システムにおいて固定ワイヤの位置を維持する。
【0034】
外側スリーブ材料がサイドポート開口部を通って通路内にリフローすることによって生じる内側支持管140の通路143の内径の縮小又は減少に起因する摩擦力に加えて、マンドレルの外面との接触時の外側スリーブのリフロー材料自体の摩擦特性が、固定ワイヤ150に付与される摩擦力に更に寄与し得る。この点に関して言えば、内側支持管に形成されたサイドポート開口部を通して外側スリーブ材料をリフローさせるために使用されるマンドレルは、コーティングされている(すなわち、潤滑性コーティングでコーティングされたマンドレル)、又はコーティングされていない(すなわち、潤滑性コーティングでコーティングされていないマンドレル)のいずれかであり得る。コーティングされていない(いかなる潤滑性コーティングも施されていない)マンドレルの場合、リフローされる外側スリーブ材料は、マンドレルの外面全体に沿って付着し、固定ワイヤの外面に付与される制御された摩擦力に望ましく寄与する、所定量のタック力をもたらす。潤滑性材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))でコーティングされたマンドレルを使用する場合であっても、露出した、又はコーティングされていないマンドレルの外面の一部、部分、又は領域が、それでもなお存在し、タック力が生成される区画を生み出す。コーティングされたマンドレルの場合、タック力は、コーティングがマンドレルの外面で期せずして除外されるか、失われるか、又は存在しないランダムな領域においてのみ生成されるが、コーティングされていないマンドレルを使用する場合に生成されるタック力は、実質的にマンドレルの外面全体に広がる。
【0035】
加熱温度に対する所定の曝露時間の経過後(例えば、5秒~30秒の期間に対して420°F)、3構成要素アセンブリ(外側スリーブ135、コイル120、及び内側支持管140)からマンドレルを引き抜くことにより、サイドポート開口部を通って内側支持管140の通路143内に漏出した外側スリーブ135の材料を冷却し、硬化させることできる。次に、脱離コイル125、近位キー160、及び埋込型血管内デバイス130を備える遠位アセンブリに遠位端において固定された固定ワイヤ143は、3構成要素アセンブリ(リフローされた外側スリーブ130、コイル120、及び内側支持管140)の通路143を近位方向に通される。
【0036】
内部を通って長手方向/軸方向に画定されたチャネル113を有する主送達管115は、このように組み立てられた送達及び脱離システムの近位端に組み付けられる。具体的には、内側支持管140の近位端は、コイル120の近位端を越えて近位方向に延在し、主送達管115のチャネル113内に伸縮自在に受け入れ可能であるようにサイズ決めされる。固定ワイヤ150は、主送達管115のチャネル113、及び遠位端がチャネル113に受容される近位内側管145の管腔170を近位方向へと引き続き通される。近位内側管145の近位端の一部は、主送達管115の近位端に対して近位方向に延在する。近位内側管145の管腔170及び主送達管115のチャネル113を近位方向に通された固定ワイヤの近位端は、近位内側管145の近位端に解放不能に固定される(例えば溶接される)(175)。
【0037】
使用中、カテーテル又はマイクロカテーテルは、動脈を通って標的部位(例えば、動脈瘤)の近位側へとナビゲートされる。その後、組み立てられた(図1に示すような)送達及び脱離システムを使用して、その遠位端に解放可能に固定された埋込型血管内デバイス130を、カテーテル又はマイクロカテーテルを通して標的部位へと前進させる。インターベンション医師による埋込型血管内デバイス130の送達中、(展開前の)固定ワイヤの望ましくない移動、動き、又は並進は、固定ワイヤが、内側支持管120のサイドポート開口部165を通ってその通路143内へと漏出した外側スリーブ135のリフロー材料に物理的に直接接触する、固定ワイヤ150の遠位部分に沿った径方向外向き面に制御された摩擦力を意図的に付与することによって阻止されるか、又は最小限に抑えられる。付与される摩擦力の量は、送達中に通路内の固定ワイヤの移動、動き、又は並進を阻止するか、又は最小限に抑えるのに十分であり、埋込型血管内デバイスを送達及び脱離システムから展開(解放)して動脈内の標的部位に精密かつ正確に配置するときに、近位方向の十分な軸力を固定ワイヤに加えることによってのみ克服することができる。
【0038】
上記及び図示した設計は、内側支持管内に画定された通路の内径を、内部に画定されたサイドポート開口部を通して通路内へと外側スリーブ材料をリフローさせることによって狭めて、それらの領域に沿って内径を意図的に狭め、通された固定ワイヤの外面に制御された摩擦力を付与する。固定ワイヤの外面に制御された摩擦力を意図的に導入する他の機械的構成も企図され、これらは、本発明の意図される範囲内である。内側支持管の構造を変更する(例えば、サイドポート開口部を内部に形成し、その通路の内径を縮小する)のではなく、その遠位部分に沿った固定ワイヤの設計を変更することができる。この点に関して言えば、それ以外は実質的に直線状である屈曲部又はキンクは、固定ワイヤ150と内側支持管140の通路143の内壁との間に物理的に直接接触する1つ以上の点/部分/エリア/領域を意図的に作り出すために、固定ワイヤの遠位部分に沿って形成され得る。例えば、図5の固定ワイヤ140’は、固定ワイヤと通路の内壁とが物理的に直接接触する領域(互いから径方向に約180°)を確立する台形形状として構成され、意図的な制御された摩擦力の付与をもたらす、複数の屈曲部又はキンクを意図的に含む。様々な幾何学的形状を形成する固定ワイヤの屈曲又はよじれにおける代替的な構成が企図され、これらは、本発明の意図される範囲内である。固定ワイヤと内側支持管の管腔の内壁との間の強制的、すなわち意図的な、物理的な直接接触の点/部分/エリア/領域の数、総表面積、及び/又は間隔は、送達及び脱離システム内での組み立て時に固定ワイヤに対する制御された意図的な摩擦力を達成するように、所望に応じて選択され得る。一方では、内側支持管の通路の内壁と直接係合する、屈曲した、又はよじれた固定ワイヤによって付与される、意図的な制御された摩擦力は、埋込型血管内デバイスの送達中の固定ワイヤの移動、並進、又は動きを阻止するか、又は最小限に抑えるのに十分であることに再度留意されたい。しかし、その一方では、固定ワイヤ140に対して近位方向の十分な力が加えられると、意図的な制御された摩擦力が克服されて、埋込型血管内デバイス130が送達及び脱離システムから解放される。
【0039】
組み立てられた送達及び脱離システムが意図的な摩擦ゾーンを形成する、特定の機械設計法にかかわらず、送達及び脱離システム内で組み立てられたときに固定ワイヤに付与される、制御された摩擦力の量は、所望に応じて、埋込型血管内デバイスの送達及び脱離中の固定ワイヤの移動、並進、又は動きを阻止するか、又は最小限に抑えるものの、埋込型血管内デバイスを解放するために十分な力が固定ワイヤに対して近位方向に加えられたときに克服可能であるように変更され得る。本発明は、頭蓋内動脈瘤の治療におけるコイル塞栓処置中に塞栓コイルが装填される送達及び脱離システムに関して示し、説明してきた。本発明の送達及び脱離システムを他の血管内治療処置で使用される他のタイプの埋込型血管内デバイスのために利用することが企図され、これらは、本発明の意図される範囲内である。
【0040】
したがって、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、かつ指摘してきたが、当業者であれば、例示されたシステム/デバイスの形態及び詳細、並びにそれらの操作における様々な省略、置き換え、及び変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施し得ることが理解されよう。例えば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行して同じ結果を達成する要素及び/又は工程の組み合わせは全て、本発明の範囲内に包含されることが明らかに意図される。また、上述したある実施形態から別の実施形態への要素の置き換えも、完全に意図及び想定の範囲内である。また、図面は必ずしも一定の比例尺で描かれておらず、あくまでも概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されることが意図される。
【0041】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は他の参照文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に各々組み込まれる。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムであって、前記システムは、
近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管と、
前記内側支持管の前記通路を通って延在する固定ワイヤと、を備え、
前記固定ワイヤには、前記内側支持管の前記遠位端と、前記内側支持管のそれぞれの前記近位端と前記遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与される、送達及び脱離システム。
(2) 前記内側支持管の外面を囲む外側スリーブを更に備え、前記外側スリーブは、リフロー可能材料で作製され、前記内側支持管は、前記通路と交差する、少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を内部に画定し、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料は、前記内側支持管内に画定された、前記少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を通って、前記内側支持管の前記通路内へと漏出可能であって、前記固定ワイヤとの物理的な直接接触の関連点を形成する、実施態様1に記載の送達及び脱離システム。
(3) 前記内側支持管と前記外側スリーブとの間に配設されたコイルを更に備え、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料は、前記コイルを通って漏出可能である、実施態様2に記載の送達及び脱離システム。
(4) 前記固定ワイヤは真っすぐである、実施態様2に記載の送達及び脱離システム。
(5) 前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、各屈曲部は、前記内側支持管の前記通路内へと漏出した前記外側スリーブの前記リフロー可能材料に物理的に直接接触する、実施態様2に記載の送達及び脱離システム。
【0043】
(6) 前記内側支持管の前記通路は、均一の内径を有し、前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、各屈曲部は、前記内側支持管の前記通路の前記内壁に物理的に直接接触する、実施態様1に記載の送達及び脱離システム。
(7) 前記埋込型血管内デバイスは、前記固定ワイヤによって前記送達及び脱離システムの遠位端に解放可能に固定される、実施態様1に記載のシステム。
(8) 近位端、反対側の遠位端、及びそれらの間に軸方向に延在するチャネルを有する主送達管であって、前記内側支持管の前記近位端は、前記主送達管の前記遠位端において前記チャネル内に伸縮自在に受け入れられている、主送達管と、
近位端、反対側の遠位端、及びそれらの間で軸方向に延在する管腔を有する近位保持管であって、前記固定ワイヤは、前記管腔を通って延在し、前記近位保持管の前記近位端に固定され、前記近位保持管の前記遠位端は、前記主送達管の前記近位端内に伸縮自在に受け入れられている、近位保持管と、を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(9) 埋込型血管内デバイスのための送達及び脱離システムを製造するための方法であって、前記方法は、
近位端から反対側の遠位端まで軸方向に延在する通路を有する内側支持管を提供するステップと、
固定ワイヤが前記内側支持管の前記通路に通されるときに、前記内側支持管の前記遠位端と、前記内側支持管のそれぞれの前記近位端と前記遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力を前記固定ワイヤに付与するステップと、を含む、方法。
(10) 前記付与するステップが、
前記内側支持管内に少なくとも1つのサイドポート開口部を形成するステップであって、前記少なくとも1つのサイド開口部のそれぞれは、径方向内向きに延在し、前記内側支持管の前記通路と交差する、ステップと、
リフロー可能材料で作製された外側スリーブを前記コイルの周りで組み立てて、アセンブリを作製するステップと、
前記アセンブリを加熱して、その結果、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料が前記少なくとも1つのサイドポート開口部を通って前記内側支持管の前記通路内へと漏出し、前記意図的な摩擦ゾーンを形成するステップであって、関連点に沿って、前記固定ワイヤは、前記通路内へと漏出した前記外側スリーブの前記リフロー可能材料と物理的に直接接触している、ステップと、を含む、実施態様9に記載の方法。
【0044】
(11) コイルが、前記少なくとも1つのサイドポート開口部が内部に形成された、前記内側支持管の周りで径方向に位置付けられる、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記内側支持管の前記通路は均一であり、前記固定ワイヤは、内部に少なくとも1つの屈曲部を有し、前記少なくとも1つの屈曲部のそれぞれは、前記内側支持管の前記通路の内壁に物理的に直接接触して、前記制御された摩擦力を生成する、実施態様9に記載の方法。
(13) 埋込型血管内治療デバイスのための送達及び脱離システムを使用する方法であって、前記送達及び脱離システムは、近位端と反対側の遠位端との間で軸方向に延在する通路を有する内側支持管を含み、前記送達及び脱離システムは、前記内側支持管の前記通路を通って延在する固定ワイヤを更に含み、前記固定ワイヤには、前記内側支持管の前記遠位端と、前記内側支持管のそれぞれの前記近位端と前記遠位端との間の中間点との間の任意の場所に位置する意図的な摩擦ゾーン内で確立された、制御された摩擦力が付与され、前記方法は、
標的部位への前記埋込型血管内治療デバイスの送達中に、付与された前記制御された摩擦力が、前記内側支持管に対する前記固定ワイヤの動きを最小限に抑えるステップと、
前記埋込型血管内治療デバイスが前記標的部位に到達すると、付与された前記制御された摩擦力を超えるのに十分な近位方向の力を前記固定ワイヤに加えて、前記埋込型血管内デバイスを、前記送達及び脱離システムから解放するステップと、を含む、方法。
(14) 前記送達及び脱離システムは、前記内側支持管の外面を囲む外側スリーブを含み、前記外側スリーブは、リフロー可能材料で作製され、前記内側支持管は、前記通路と交差する、少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を内部に画定し、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料は、前記内側支持管内に画定された、前記少なくとも1つの径方向内向きのサイドポート開口部を通って、前記内側支持管の前記通路内へと漏出して、前記固定ワイヤとの物理的な直接接触の関連点を形成する、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記送達及び脱離システムは、前記内側支持管と前記外側スリーブとの間に配設されたコイルを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0045】
(16) 前記固定ワイヤは真っすぐである、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、各屈曲部は、前記内側支持管の前記通路内へと漏出した、前記外側スリーブの前記リフロー可能材料に物理的に直接接触する、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記内側支持管の前記通路は均一の内径を有し、前記固定ワイヤは、少なくとも1つの屈曲部を内部に有し、前記少なくとも1つの屈曲部のそれぞれは、前記内側支持管の前記通路の前記内壁に物理的に直接接触して、前記制御された摩擦力を生成する、実施態様13に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
【外国語明細書】