IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2023-100608N-ヘテロ環に基づいて、水素を付加および排出するための可逆的な液体有機システム、方法、およびプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100608
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】N-ヘテロ環に基づいて、水素を付加および排出するための可逆的な液体有機システム、方法、およびプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/22 20060101AFI20230711BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20230711BHJP
   C07C 23/10 20060101ALI20230711BHJP
   C07D 211/12 20060101ALI20230711BHJP
   C07D 213/133 20060101ALI20230711BHJP
   C07D 213/16 20060101ALI20230711BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C01B3/22 Z
C01B3/00 B ZAB
B01J23/44 M
B01J23/46 M
B01J31/28 M
C07C23/10
C07D211/12
C07D213/133
C07D213/16
B01J31/22 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050820
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2021545674の分割
【原出願日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】264702
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(71)【出願人】
【識別番号】500018608
【氏名又は名称】イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science,PO Box 95,7610002 Rehovot,Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルステイン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】シェ、インジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】要求に応じて水素を貯蔵および放出するための可逆的プロセスを提供する。
【解決手段】プロセスは、a.水素貯蔵が所望されるとき、HリッチN-ヘテロ環を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下において、HリーンN-ヘテロ環を分子状水素と反応させる工程と、b.水素放出が所望されるとき、水素を放出するのに十分な条件下で、HリッチN-ヘテロ環を第2の触媒及び触媒量の少なくとも1つの弱酸と反応させ、それにより対応するHリーンN-ヘテロ環および分子状水素を生成する工程と、を含み、第1の触媒および第2の触媒が、同じであり、プロセスが、いかなる溶媒も含まず、プロセスが、穏やかな温度および水素圧下で実施される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆的な水素付加および排出システムであって、少なくとも1つのN-ヘテロ環、および1つの遷移金属触媒、遷移金属触媒前駆体、及び触媒量の少なくとも1つの弱酸を含み、前記システムが、いかなる溶媒も含まず、穏やかな温度および圧力下で機能する、可逆的な水素付加および排出システム。
【請求項2】
前記穏やかな温度が、50℃~180℃であるか、前記圧力が、1~80バールであるか、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記温度が、130℃~180℃であるか、前記圧力が、1.5~8バールであるか、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記N-ヘテロ環が、Hリッチ化合物、Hリーン化合物、またはそれらの組み合わせであり、前記Hリッチ化合物が、置換または非置換ピペリジンであり、前記Hリーン化合物が、置換または非置換ピリジンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記N-ヘテロ環が、広い液体範囲を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記N-ヘテロ環が、15℃を下回る融点を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記N-ヘテロ環が、100℃を上回る沸点を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記N-ヘテロ環が、少なくとも15℃~100℃の温度で液体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記置換または非置換ピペリジンおよび前記置換または非置換ピリジンの両方が、室温で液体である、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
置換ピペリジンおよび/または置換ピリジンの置換が、CH、CHCH、CHF、CHF、CF、OCH、F、Cl、OH、NH、NH(CH)、N(CH、およびCNから選択される、少なくとも1つである、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
置換または非置換ピペリジンが、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、3,4-ジメチルピペリジン2,4-ジメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、および2,6-ジメチルピペリジンから選択される、請求項4に記載のシステム。
【請求項12】
置換ピペリジンが、2,6-ジメチルピペリジン、または2-メチルピペリジンである、請求項4に記載のシステム。
【請求項13】
遷移金属が、Mn、Fe、Co、Ru、Rh、Pd、Pt、Cu、Ag、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記遷移金属触媒が、不均一である、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記遷移金属触媒が、活性炭上のパラジウムである、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記遷移金属触媒が、市販のものか、または前記遷移金属触媒前駆体からその場で生成される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記遷移金属触媒前駆体が、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba)から選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記遷移金属触媒前駆体が、Pd(OAc)である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記遷移金属触媒が、不溶性マトリックスに担持されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記不溶性マトリックスが、活性炭、乾燥酸性活性炭、SiO、BaSO、BN、γ-Al、またはCeOから選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
同じ触媒が、水素付加および水素排出プロセスの両方に使用される、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記酸が、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記遷移金属触媒または前記遷移金属触媒前駆体が、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
水素の排出が、少なくとも1つの置換または非置換ピペリジンを少なくとも1つの前記遷移金属触媒と反応させ、それにより少なくとも3つの水素分子および少なくとも1つの置換または非置換ピリジンを形成することによって達成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項25】
水素の付加が、前記遷移金属触媒の存在下で、置換または非置換ピリジンを少なくとも3つの水素分子と反応させ、それにより少なくとも1つの置換ピペリジンを形成することによって達成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項26】
少なくとも4重量%の水素貯蔵量を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記水素貯蔵量が、少なくとも5重量%である、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
要求に応じて、水素を貯蔵および放出するための可逆的プロセスであって、
a.水素貯蔵が所望されるとき、置換または非置換ピペリジン誘導体を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下において、置換または非置換ピリジン誘導体を分子状水素と反応させる工程と、
b.水素放出が所望されるとき、前記水素を放出するのに十分な条件下で、置換または非置換ピペリジン誘導体を第2の触媒及び触媒量の少なくとも1つの弱酸と反応させ、それにより対応する置換または非置換ピリジン誘導体および分子状水素を生成する工程と、を含み、
前記第1の触媒および前記第2の触媒が、同じであり、前記プロセスが、いかなる溶媒も含まず、前記プロセスが、穏やかな温度および水素圧下で実施される、プロセス。
【請求項29】
前記置換または非置換ピペリジンおよび前記置換または非置換ピリジンの両方が、室温で液体である、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記置換または非置換ピペリジンが、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、3,4-ジメチルピペリジン2,4-ジメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、および2,6-ジメチルピペリジンから選択される、請求項28または29に記載のプロセス。
【請求項31】
触媒が、活性炭上のパラジウムである、請求項28~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
触媒が、市販のものか、または触媒前駆体からその場で生成される、請求項28~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記触媒前駆体が、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba)から選択される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記酸が、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項35】
触媒または触媒前駆体が、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する、請求項28~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求に応じて水素(H)を貯蔵し、水素を放出し、液体有機水素キャリア(LOHC)としてN-ヘテロ環を含み、それらを使用する、システム、プロセス、および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
工業化のプロセスは、過去数世紀の間に人類の大部分に繁栄および富をもたらした。しかしながら、これらのプロセスに関連する1つの根本的な障害は、廃棄物および排出物の生成に加えて、増え続ける化石資源の枯渇である。これは直接環境への悪影響を及ぼし、将来、地球の生活状況を大きく脅かす可能性がある。したがって、現在の化石燃料ベースの技術に取って代わる代替の持続可能なエネルギーシステムの探求は、我々の社会の中心的な科学的課題の1つになっている。これに関連して、水素は、非常に高い重量エネルギー密度(より低い発熱量:33.3kWh/kg)を有し、燃焼時に唯一の副産物として水を生成する、理想的な代替のクリーンエネルギーベクトルと長い間見なされてきた。水素のこれらの固有の特性により、水素は固定式および移動式の用途の両方にとって特に魅力的な候補になる。
【0003】
近年、水素を動力源とする燃料電池が大幅に進歩した。それにもかかわらず、エネルギーベクトルとしての水素はまだ一般に応用されておらず、これは、その貯蔵および輸送に関連する問題が原因である可能性がある。水素の効率的な貯蔵は、その体積エネルギー密度が低いため、重大かつ困難である。伝統的に、水素は、高圧下でガスタンクに物理的に貯蔵されるか、または極低温で液体として貯蔵される。しかしながら、貯蔵に必要な高エネルギー投入、低い体積エネルギー密度、および潜在的な安全性の問題により、水素分子を使用する用途は大幅に制限される。水素をナノ構造材料、金属有機フレームワーク、および金属水素化物中に貯蔵するために多大な努力が成されてきたが、これらのシステムは、低い水素貯蔵量(HSC)、過酷な条件、低いエネルギー効率、および高いコストに悩まされている。
【0004】
近年、化学結合において水素を貯蔵することが、注目されており、将来の「水素経済」の有望な道と考えられている。この点に関して、いくつかの種類の金属水素化物、金属錯体、および有機化合物が研究されてきた。特に興味深いのは、水素キャリアとしての液体有機化合物であり、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE of US、5.5重量%水素貯蔵量)および欧州連合(EU、5重量%水素貯蔵量)の2020年の目標に近い、高い水素容量を有することができる。さらに、液体有機水素キャリア(LOHC)は、良好な安定性を有することができ、長期間貯蔵することができ、かつ容易に輸送することができ、および車両内の車載使用に適用できる可能性を有し得る。
【0005】
LOHCシステムは、水素リッチ有機液体の接触脱水素化に基づき、H2リーン化合物を形成し、H2リーン化合物は、接触水素化すると、Hリッチ化合物を再生することができる。初期の研究では、芳香族炭化水素およびそれらの水素化物は、Hリーン化合物およびHリッチ化合物の結合として調査された。これらのLOHCシステムは、広い液体範囲、優れた熱安定性を低価格で有することができる。しかしながら、Hを生成するため、およびH欠損芳香族炭化水素に対応するためのHリッチ炭化水素の脱水素化は、過酷な反応条件(250℃を上回る温度)を必要とし、熱力学的に好ましくない。
【0006】
N-ヘテロ環に基づくLOHCシステム内の窒素原子の存在は、水素化および脱水素化のエンタルピーを低減させる可能性があるため、いくつかのN-ヘテロ環LOHCシステムが調査される。最も魅力的な例のうち1つは、Pezおよび彼の同僚によって開発された5.80重量%の理論水素貯蔵量(HSC)を有する、N-エチルカルバゾール(NEC)/ドデカヒドロ-N-エチルカルバゾール(H12-NEC)システムである(図1A)。しかしながら、NEC/H12-NECシステムはまた、重大な欠点を有する:逆水素化は、異なる触媒のRu/LiAlOおよび高いH圧力(68バール)を必要とし、Hリーン化合物N-エチルカルバゾールは、室温で固体である(融点70℃)、およびN-エチル基の熱不安定性により、望ましくない副産物につながる。
【0007】
2017年、Fujitaおよび彼の同僚は、5.3重量%の理論上の水素貯蔵量を有する、p-キシレン/HOまたは無溶媒中の2,5-ジメチルピラジン/2,5-ジメチルピペラジンに基づく、興味深い均質系Ir錯体触媒LOHCシステムを報告した(図1B)。しかしながら、無溶媒条件下で、2,5-ジメチルピラジンの2,5-ジメチルピペラジンへの水素化は、30バールを下回るHを完全に達成することができなかった(78%の変換)。さらに、2,5-ジメチルピペラジンの高融点もまた、不利である。いくつかの最近報告されたNベースのヘテロ芳香族/ヘテロ脂環式LOHCシステムは、2,6-ジメチル-1,5-ナフチリジン/2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジン(Fujita et.al.J.Am.Chem.S℃.2014,136,4829-4832)、フェナジン/テトラデカヒドロフェナジン(Forberg et.al.Nat.Commun.2016,7,13201)、4-アミノピペリジン/4-アミノピリジン(Cui et.al.New J.Chem.,2008,32,1027-1037)、2,6-ジ-tert-ブチルピペリジン/2,6-ジ-tert-ブチルピリジン(Dean et.al.New J.Chem.,2011,35,417-422)、および2-(N-メチルベンジル)ピリジン/2-[(n-メチルシクロヘキシル)メチル]ピペリジン(Oh et.al.ChemSusChem 2018,11,661-665)である。しかしながら、それらのほとんどすべてが、高融点に苦しむ。その上、2,6-ジメチル-1,5-ナフチリジン/2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジンおよびフェナジン/テトラデカヒドロフェナジンシステムは、高価な触媒および溶媒を使用し、4-アミノピペリジン/4-アミノピリジンシステムは、変換および選択性のバランスをとることに問題を有し、6-ジ-tert-ブチルピペリジン/2,6-ジ-tert-ブチルピリジンシステムは、低い水素貯蔵量を有し、2-[(n-メチルシクロヘキシル)メチル]ピペリジン/2-(N-メチルベンジル)ピリジンは、低い融点を有するが、脱水素化に対する高温(>230℃)を必要とする。
【0008】
2015年には、熱力学的に有利な脱水素化アミド結合形成に基づく新しいLOHCが開発されたが、溶媒を必要とした(Hu et.al.Nat.Commun.2015,6,6859)。高い水素貯蔵量を有し、無溶媒であり、穏やかな条件下で、水素化および脱水素化の両方に対して触媒される単一の触媒を理想的に使用する状態で、安価な有機液体(広い液体範囲、低融点)に基づく、LOHCシステムを開発することは、非常に重要であり、挑戦である。
【0009】
ピペリジンは、図1Cに示されるように、豊富かつ安価であり、低い融点、広い液体範囲、高い理論的水素貯蔵量(アメリカ合衆国エネルギー省および欧州連合の目標を超える)を有する、LOHCの潜在的に理想的な候補として考えられた。これまでのピペリジンのアクセプタレス脱水素化は、表1に列挙されるように、過酷な条件を必要とする。
【0010】
【表1】
【0011】
ピペリジン(Horrobin et.al.US2765311A,1956)、3-メチルピペリジン(Cordier et.al.US4401819,1983、Pianzola et.al.US0092711A1,2011)、および4-メチルピペリジン(Patil et.al.Int.J.Hydrogen Energy.2017,42,16214-16224)をピリジン、3-メチルピリジン、および4-メチルピリジンそれぞれへの接触脱水素化は、不均一系PdまたはPt触媒を使用して、300℃以上を必要とする(表1、エントリ1、3、および4)。2-メチルピペリジンの2-ピコリンへのアクセプタレス脱水素化は、報告されていない(表1、エントリ2)。2,6-ジメチルピペリジンの2,6-ルチジンへの接触脱水素化は、均一系Feによって溶媒中でのみ達成される(Chakraborty et.al.J.Am.Chem.S℃.2014、136、8564-8567)、Ir(Fujita et.al.Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,10886-10889)、またはOs(Esteruelas et.al.Organometallics 2017,36,2996-3004)触媒(エントリ5)、および無溶媒システムは、まだ報告されていない。明白に、溶媒を使用することは、理論上の水素貯蔵量を低下させる。
【0012】
明らかに、理想的には比較的穏やかな条件下で水素の付加および排出の両方に同じ触媒を使用して、水素を貯蔵および放出する潜在的に高い容量を有する、安価かつ豊富な有機化合物の開発は、現時点で既知の受け入れ可能な解決策の無い主要な課題である。したがって、ピペリジン/ピリジンの穏やかな、無溶媒の、可逆的脱水素化/水素化のために、好適な触媒システムを開発することは、理論的に重要であるだけでなく、実用的な関心でもあり、高い水素貯蔵量を備えた穏やかな条件下での脱水素化および水素化の両方に対する、単一の不均一系触媒を使用する、ピペリジンに基づくLOHCシステムが、非常に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえ、本発明の第1の態様では、本発明は、少なくとも1つのNーヘテロ環、および1つの遷移金属触媒、または遷移金属触媒前駆体を含む、可逆的な水素付加および排出システムを提供し、システムは、いかなる溶媒も含まず、穏やかな温度および圧力下で機能する。いくつかの実施形態では、温度は、50℃~180℃であるか、圧力は、1~80バールであるか、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、温度は、130℃~180℃であるか、圧力は、1.5~8バールであるか、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、Nーヘテロ環は、Hリッチ化合物、Hリーン化合物、またはそれらの組合せであり、Hリッチ化合物が、置換または非置換ピペリジンであり、Hリーン化合物が、置換または非置換ピリジンである。いくつかの実施形態では、Hリッチ化合物は、置換ピペリジンであり、Hリーン化合物は、置換ピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環は、少なくとも15℃~100℃の温度で液体である。いくつかの実施形態では、置換または非置換ピペリジンおよび置換または非置換ピリジンの両方は、室温で液体である。いくつかの実施形態では、置換ピペリジンは、2,6-ジメチルピペリジンまたは2-メチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、活性炭上のパラジウム(Pd/C)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、触媒は、市販のものか、または触媒前駆体からその場で生成される。いくつかの実施形態では、触媒前駆体は、Pd(OAc)である。いくつかの実施形態では、同じ触媒は、水素付加(水素化)および水素排出(脱水素化)プロセスの両方に使用される。いくつかの実施形態では、システムは、触媒量の少なくとも1つの酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される。いくつかの実施形態では、触媒または触媒前駆体は、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する。
【0015】
本発明の第2の態様では、本発明は、要求に応じて水素(H)を貯蔵および放出するための可逆的プロセスを提供し、
a.水素貯蔵が所望されるとき、置換または非置換ピペリジン誘導体を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下で、置換または非置換ピリジン誘導体を分子状水素(H)と反応させる工程と、
b.水素放出が所望されるとき、水素を放出するのに十分な条件下で、置換または非置換ピペリジン誘導体を第2の触媒と反応させ、それにより、対応する置換または非置換ピリジン誘導体および分子状水素(H)を生成する工程と、を含み、
第1の触媒および第2の触媒は、同じであり、プロセスは、いかなる溶媒も含まず、プロセスは、穏やかな温度および水素圧下で実施される。いくつかの実施形態では、置換/非置換ピペリジンおよび置換/非置換ピリジンの両方は、室温で液体である。いくつかの実施形態では、置換ピペリジンは、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、3,4-ジメチルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、および2,6-ジメチルピペリジンから選択される。いくつかの実施形態では、触媒は、活性炭上のパラジウム(Pd/C)である。いくつかの実施形態では、触媒は、市販のものか、または触媒前駆体からその場で生成される。いくつかの実施形態では、触媒前駆体は、Pd(OAc)である。いくつかの実施形態では、プロセスは、少なくとも1つの酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される。いくつかの実施形態では、触媒前駆体は、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、操作構成および方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最良に理解され得る。
【0017】
図1A】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、N-エチルカルバゾール/ドデカヒドロ-N-エチルカルバゾールに基づく、確立された液体有機水素キャリア(Pez他)を示す。
図1B】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、p-キシレン/H2Oまたは無溶媒中の2,5-ジメチルピラジン/2,5-ジメチルピペラジンに基づく、均質系Ir錯体触媒LOHCシステム(Fujita他)を示す。
図1C】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、液体有機水素キャリアの例を示す。
図1D】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、液体有機水素キャリアの例を示す。
図1E】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、本発明の水素貯蔵に好適なピリジン/ピペリジン化合物の例を示す。
図1F】窒素含有有機化合物に基づく水素貯蔵システムを図示し、本発明による無溶媒LOHCシステムを示す。
図2A】Pd(OAc)/活性炭によって触媒された2-メチルピペリジンの脱水素化プロセスを図示し、2-メチルピペリジン脱水素化の条件および結果を示す。
図2B】Pd(OAc)/活性炭によって触媒された2-メチルピペリジンの脱水素化プロセスを図示し、異なる条件下での時間依存性H放出曲線を示す。
図3】実験に利用されたガス回収システムの概略図を図示する。
図4】Pd触媒により触媒される、本発明の2-メチルピペリジンおよび2-ピコリンプロセスの可逆的相互変換を図示する。
図5A】本発明のシステム/プロセスの副産物分析および選択性制御戦略を図示し、提案された副反応および副産物を示す。
図5B】本発明のシステム/プロセスの副産物分析および選択性制御戦略を図示し、イミンまたはエナミンの周りの立体障害を増加することにより、プロセスの選択性を制御するための提案された戦略を示す。
図6】パラジウムベースの触媒による2,6-ジメチルピプリジンおよび2,6-ルチジンの相互変換を図示する。(a):170℃での時間依存のH2放出曲線(浴温、内部温度は128℃)。(b):脱水素化(薄い灰色)と水素化(濃い灰色)の変換。
図7A】機構研究のために実施された対照実験を図示し、Pd(OAc)および活性炭による脱水素化(不均一系)を示す。
図7B】機構研究のために実施された対照実験を図示し、均一系触媒作用を確認するための固体のろ過を示す。
図7C】機構研究のために実施された対照実験を図示し、活性炭担持体を伴わないPd(OAc)触媒を示す。
図8】脱水素化プロセスにおける酸の添加の影響を図示する。右のパネルは、各実験について、90%の収率(ATOF90)以内の平均回転頻度(1時間当たりのmolPd当たりのmolH)を図示する。左のパネルは、(他の添加剤を有する、および伴わない)Pd/Cによって触媒された2,6-ジメチルピペリジン脱水素化のための時間依存性H放出曲線を図示する。実験条件:[Pd](0.3mol%)、酸(0.6mol%)、2,6-ジメチルピペリジン(10mmol)、オイル液槽(170℃)。(1)追加の酸の無い反応(中空四角形□)。(2)酢酸との反応(灰色の実線の三角形▲)。(3)BA:安息香酸との反応(黒い実線の四角形■)。(4)p-TsOH:4-メチルベンゼンスルホン酸との反応(灰色の実線の四角形■)。(5)CPS:カルボキシポリスチレンとの反応(実線の点●)。(6)PAA:ポリアクリル酸との反応(中空の三角形△)。(7)Pd(OAc)および活性炭との反応(中空の点○)。
図9A】妥当な脱水素化メカニズムを図示する。点線は、単結合または二重結合のいずれかの存在を示す。
図9B】2-ピコリンおよび2,6-ルチジン形成のための推奨経路を図示する。点線は、単結合または二重結合のいずれかの存在を示す。
図10】2-メチルピペリジン脱水素化の時間依存性H放出曲線を図示する。
図11】脱水素化活性に対するPd(OAc)および活性炭濃度の影響を図示する。条件:2,6-ジメチルピペリジン(10mmol)、170℃(オイル浴温)。
図12】実施例7に例示されるように触媒が再利用されるとき、2,6-ジメチルピペリジンおよび2,6-ルチジンの可逆的相互変換を提供するLOHCシステムとしての2,6-ジメチルピペリジンにおける触媒変換パーセンテージを図示する。
【0018】
実例を単純かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比較して誇張され得る。さらに、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号が図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細を伴わずに実行されてもよいということが、当業者によって理解されるであろう。他の事例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細に説明されていない。
【0020】
本明細書で企図されるように、潜在的に高い水素貯蔵量でHを付加および除去することができる根本的に新規の、可逆的なシステムが開発されている。
【0021】
したがって、本発明は、水素リッチNヘテロ環と少なくとも1つの遷移金属触媒との反応に基づいて、水素(H)を貯蔵し、それを要求に応じて放出して、対応する水素リーンN-ヘテロ環および(水素リッチN-ヘテロ環の各分子に対して)少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つの水素分子を形成するための方法、プロセスおよびシステムを提供し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、触媒は、活性炭上のパラジウム(Pd/C)である。他の実施形態では、(水素化および脱水素化のための)触媒は、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭である。いくつかの実施形態では、水素化のための触媒は、Ru/Alである。いくつかの実施形態では、システムは、いかなる溶媒も含まない。いくつかの実施形態では、水素貯蔵/付加は、穏やかな温度(例えば、50~200℃)で実施される。いくつかの実施形態では、水素貯蔵/付加は、穏やかな水素圧力(例えば、1.5~8バール)の下で実施される。いくつかの実施形態では、水素放出/除去は、穏やかな圧力(例えば、大気圧)の下で実施される。いくつかの実施形態では、水素放出/除去は、穏やかな温度(例えば、100~200℃)で実施される。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および放出のための可逆的プロセスにおいて(そのままで)再利用される。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および/または放出プロセスにおいてリサイクルされ、かつ使用される。
【0022】
水素分子を付加する際、水素リーンNヘテロ環は、少なくとも1つの水素分子と反応して、水素リッチNヘテロ環を形成する。好ましくは、水素リーンN-ヘテロ環は、置換または非置換ピリジンであり、水素リッチN-ヘテロ環は、置換または非置換ピペリジンである。別の実施形態では、水素リーンN-ヘテロ環は、置換ピリジンであり、水素リッチN-ヘテロ環は、置換ピペリジンである。
【0023】
したがって、本発明は、置換/非置換ピリジンの水素化および対応する置換/非置換ピペリジン液体有機水素キャリア(LOHC)の脱水素化に基づいて、水素(H)を貯蔵し、それを要求に応じて放出するための方法、プロセス、およびシステムをさらに提供する。より具体的には、本発明は、置換/非置換ピペリジンLOHCに関する。本発明の水素貯蔵のためのプロセスは、潜在的に高い水素貯蔵量を有する。
【0024】
図1A図1Fは、N-ヘテロ環中に水素分子を放出および付加するためのプロセスおよび方法のいくつかの例を表す。図1Fは、本明細書に記載されたプロセスおよび方法の例を表す。
【0025】
リッチN-ヘテロ環(例えば、置換/非置換ピペリジン)は、接触脱水素化を受けて、対応するHリーンN-ヘテロ環(例えば、置換/非置換ピリジン)を、水素の放出と共に形成する。HリーンN-ヘテロ環(例えば、置換/非置換ピリジン)は、水素化されて、水素貯蔵システムとして機能する、対応するHリッチN-ヘテロ環(例えば、置換/非置換ピペリジン)に戻されてもよい。これらの反応は、ポリマーおよび/または不溶性マトリックス担持体の有無にかかわらず、遷移金属、遷移金属ベースの化合物および錯体、不均一系および均一系触媒を含む、様々な触媒システムによって触媒され得る。好適な触媒の例は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ならびにこれらの金属を含有する化合物および錯体であり、とりわけ、好ましくは、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、およびルテニウム(Ru)、ならびにこれらの金属を含有する化合物および錯体である。好ましくは、触媒は、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭、Ru/Alなどの不均一系触媒である。いくつかの実施形態では、触媒は、代わりに触媒前駆体を使用することによってその場で形成され、これは、該システム、プロセス、または方法の反応混合物において可溶性(均一)または不溶性(不均一)のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、触媒前駆体は、反応混合物に入る際、および/またはN-ヘテロ環基質(HリッチまたはHリーン基質のいずれか)またはHとの相互作用の際に活性触媒になる。いくつかの実施形態では、触媒前駆体は、Pd(OAc)である。
【0026】
一実施形態では、「遷移金属触媒前駆体」は、その場で本発明の目的のために有用な活性触媒に変換することができる遷移金属化合物を指す。遷移金属触媒前駆体の例には、限定されるものではないが、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba) Pt(OAc)、Pt(TFA)、Pt(acac)、PtCl、PtO、Ru(OAc)、RuClが挙げられる。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環および固体担持体(例えば、活性炭)を含む反応混合物に入る際、Pd(OAc)触媒前駆体は、固体担持体上に担持されたパラジウム(例えば、Pd/C)にその場で変換する。他の実施形態では、Pd(OAc)触媒前駆体は、反応混合物が約100~200℃の温度に加熱されるとき、固体担持体上に担持されたパラジウム(例えば、Pd/C)にその場で変換する。
【0027】
他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および放出のための可逆的プロセスにおいて(そのままで)再利用される。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および/または放出プロセスにおいてリサイクルされ、かつ使用される。
【0028】
一実施形態では、「水素(H)の貯蔵および放出のための可逆的プロセスにおいて(そのまま)再利用される」触媒は、水素の貯蔵および放出が、要求に応じて発生し、同じ触媒が、任意のそれ以上の処理なしに、貯蔵および放出工程の両方で使用される、プロセスまたはシステムを指す。
【0029】
一実施形態では、「水素(H)の貯蔵および/または放出プロセスにおいてリサイクルおよび使用される」触媒は、水素の貯蔵および放出が要求に応じて発生し、触媒がリサイクルされ(すなわち、触媒は、例えば、不活性雰囲気下での遠心分離または濾過によって単離されている)、および要求に応じて再び使用される、プロセスまたはシステムを指す。
【0030】
それゆえ、いくつかの実施形態では、本発明は、水素(H)を貯蔵し、および要求に応じて放出するための液体有機水素キャリア(LOHC)として、Hリッチ置換N-ヘテロ環、例えば、2-メチルピペリジンおよび/または2,6-ジメチルピペリジンの使用に関する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、水素(H)を放出するためのプロセスに関し、本プロセスは、水素を放出するのに十分な条件下で、置換/非置換ピペリジン誘導体(例えば、2-メチルピペリジンまたは2,6-ジメチルピペリジン)を触媒(例えば、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭)と反応させ、それにより、対応する置換/非置換ピリジン誘導体(例えば、2-メチルピリジン(2-ピコリン)または2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン))および分子状水素(H)を生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、触媒量の酸を用いて実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、穏やかな温度(例えば、100~200℃)の下で実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、穏やかな圧力(例えば、大気圧)の下で実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、いかなる溶媒も含まない。
【0032】
本発明の文脈において、「放出」、「排出」および「除去」という用語は、交換可能に使用され、化合物の接触脱水素化プロセスによる、水素リッチ有機化合物からの水素分子の生成に対応する。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、水素の貯蔵のためのプロセスに関し、本プロセスは、水素貯蔵システムとして、置換/非置換ピペリジン誘導体(例えば、2-メチルピペリジンまたは2,6-ジメチルピペリジン)を生成するのに十分な条件下で、触媒(例えば、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭、Ru/Al)の存在下において、置換/非置換ピリジン誘導体(例えば、2-メチルピリジン(2-ピコリン)または2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン))を分子状水素(H)と反応させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、触媒量の酸を用いて実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、穏やかな温度(例えば、100~200℃)の下で実施される。いくつかの実施形態では、本プロセスは、穏やかな水素圧(例えば、1.5~8バール)の下で実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、任意の溶媒を含まない。
【0034】
本発明の文脈において、「貯蔵」、「装填」、および「付加」という用語は、交換可能に使用され、化合物の接触水素化プロセスによる水素リーン有機化合物への水素分子の組み込みに対応する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、要求に応じて水素(H)を貯蔵および放出するためのプロセスに関し、(a)水素貯蔵が所望されるとき、置換/非置換ピペリジン誘導体(例えば、2-メチルピペリジンまたは2,6-ジメチルピペリジン)を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒(例えば、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭、Ru/Al)の存在下において、置換/非置換ピリジン誘導体(例えば、2-メチルピリジン(2-ピコリン)または2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン))を分子状水素(H)と反応させる工程と、(b)水素放出が所望されるとき、水素を放出するのに十分な条件下で、置換/非置換ピペリジン誘導体(例えば、2-メチルピペリジンまたは2,6-ジメチルピペリジン)を第2の触媒(例えば、Pd/C、Pd(OAc)/活性炭)と反応させ、それにより、対応する置換/非置換ピリジン誘導体(例えば、2-メチルピリジン(2-ピコリン)または2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン))および分子状水素(H)を生成する工程と、を含む。第1および第2の触媒は、同じであっても異なっていてもよい。好ましい実施形態では、第1および第2の触媒は、同じである。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および放出のための可逆的プロセスにおいて(そのままで)再利用される。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および/または放出プロセスにおいてリサイクルされ、かつ使用される。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロセスは、触媒量の酸を用いて実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、穏やかな温度(例えば、100~200℃、130~180℃、150~170℃)で実施される。いくつかの実施形態では、水素を貯蔵するためのプロセスは、穏やかな水素圧力(例えば、1.5~8バール)の下で実施される。いくつかの実施形態では、水素を放出するためのプロセスは、穏やかな圧力(例えば、大気圧)の下で実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、いかなる溶媒も含まない。
【0037】
本発明は、少なくとも1つのN-ヘテロ環、および少なくとも1つの遷移金属触媒、または遷移金属触媒前駆体を含む可逆的水素付加および排出システムを提供する。
【0038】
本発明は、少なくとも1つのN-ヘテロ環、および1つの遷移金属触媒、または遷移金属触媒前駆体を含む可逆的水素付加および排出システムを提供する。
【0039】
本発明は、可逆的水素付加および排出方法をさらに提供し、
(a)水素放出プロセス:置換N-ヘテロ環Hリッチ化合物の脱水素化を可能にする条件下で、少なくとも1つの置換Nーヘテロ環Hリッチ化合物を少なくとも1つの遷移金属触媒と接触させ、それにより3つの水素分子および少なくとも1つの置換N-ヘテロ環Hリーン化合物を形成する工程と、
(b)水素付加プロセス:該置換Nーヘテロ環Hリーン化合物の水素化のための条件下で、該少なくとも1つの置換Nーヘテロ環Hリーン化合物を、該少なくとも1つの遷移金属触媒および3つの水素分子と接触させ、それにより、少なくとも一つの置換N-ヘテロ環Hリッチ化合物を形成する工程と、を含む。
【0040】
本発明は、可逆的水素付加および排出方法をさらに提供し、
(c)水素放出プロセス:置換/非置換ピペリジンの脱水素化を可能にする条件下で、少なくとも1つの置換/非置換ピペリジンを少なくとも1つの遷移金属触媒と接触させ、それにより3つの水素分子および少なくとも1つの置換ピリジンを形成する工程と、
(d)水素付加プロセス:該置換/非置換ピリジンの水素化の条件下で、該少なくとも1つの置換/非置換ピリジンを該少なくとも1つの遷移金属触媒および3つの水素分子と接触させ、それにより少なくとも1つの置換ピペリジンを形成する工程と、を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、および/または方法におけるN-ヘテロ環は、Hリッチ化合物である。他の実施形態では、Hリッチ化合物は、置換/非置換ピペリジンである。他の実施形態では、Hリッチ化合物は、置換ピペリジンである。他の実施形態では、N-ヘテロ環は、Hリーン化合物である。他の実施形態では、Hリーン化合物は、置換/非置換ピリジンである。他の実施形態では、Hリーン化合物は、置換ピリジンである。他の実施形態では、N-ヘテロ環は、Hリッチ化合物およびHリーン化合物の組み合わせである。他の実施形態では、N-ヘテロ環は、置換/非置換ピリジンおよび置換/非置換ピペリジンの組み合わせである。
【0042】
いくつかの実施形態では、「置換ピペリジン」および/または「置換ピリジン」という用語は、ピペリジンまたはピリジン誘導体を指し、これは、限定されるものではないが、C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)、Cハロアルキル(例えば、CF、CHF、CHF)、C-Cアルコキシル(OCH、OCHCH)、F、Cl、OH、NH、N(CH、CN、アリール、フェニルから選択される、少なくとも1つを含む、リング置換を有する。他の実施形態では、置換は、CH、OH、OCH、NHから選択される、少なくとも1つである。他の実施形態では、置換は、少なくとも1つのCHである。他の実施形態では、置換は、2つのCH基である。
【0043】
いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、2,3-ジメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、3,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,5-ジメチルピペリジン、2,4,6-トリメチルピペリジン、またはそれらの任意の組み合わせから選択され、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、ピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2-メチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,6-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、ピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、3-メチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、4-メチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,4-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,3-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,5-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、3,4-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、3,5-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,5-ジメチルピペリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリッチ化合物は、2,4,6-トリメチルピペリジンである。
【0044】
いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン)、2,4-ジメチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、3,5-ジメチルピプリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、またはそれらの任意の組み合わせから選択され、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、ピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2-メチルピリジン(2-ピコリン)である。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン)である。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、ピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、3-メチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、4-メチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2,4-ジメチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2,3-ジメチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2,5-ジメチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、3,4-ジメチルピリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、3,5-ジメチルピプリジンである。いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環Hリーン化合物は、2,5-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジンである。
【0045】
いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環は、広い液体範囲を有する。
【0046】
本発明によれば、物質の「液体範囲」は、液体が存在することを可能にする温度の可能な範囲を指す。その液体範囲の値は、その沸点から融点を引くことによって得られる。沸点がその融点よりも高い場合、液体範囲は、正であると言われ、沸点が、融点よりも低い場合、液体範囲は、負であり、つまり、物質上に適用された圧力が上昇しない限り、液体は形成することができないことを意味する。本発明によるいくつかの実施形態では、「広い液体範囲」は、物質の融点と沸点との間の少なくとも80度の温度範囲を指す。他の実施形態では、物質の融点と沸点との間の少なくとも90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、250、300度であり、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0047】
いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環は、-10℃を下回る、-5℃を下回る、0℃を下回る、5℃を下回る、10℃を下回る、15℃を下回る、20℃を下回る、25℃を下回る、30℃を下回る、35℃を下回る、40℃を下回る、45℃を下回る、50℃を下回る、55℃を下回る融点を有し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0048】
いくつかの実施形態では、Nヘテロ環は、50℃を上回る、70℃を上回る、90℃を上回る、100℃を上回る、120℃を上回る、130℃を上回る、150℃を上回る、170℃を上回る、200℃を上回る、230℃を上回る、250℃を上回る、300℃を上回る沸点を有し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0049】
いくつかの実施形態では、N-ヘテロ環は、少なくとも15℃~200℃、0℃~250℃、10℃~180℃、25℃~250℃、0℃~300℃、5℃~200℃、5℃~250℃、15℃~150℃、5℃~150℃、5℃~170℃、-10℃~250℃の温度で液体であり、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0050】
いくつかの実施形態では、HリーンN-ヘテロ環およびHリッチN-ヘテロ環の両方は、室温で液体である。いくつかの実施形態では、置換/非置換ピリジンおよび置換/非置換ピペリジンの両方は、室温で液体である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、または方法は、約130℃~約180℃、約50℃~約180℃、約100℃~約180℃、約100℃~約250℃、約140℃~約180℃、約100℃~約200℃、約130℃~約220℃、約150℃~約170℃、約130℃~約200℃の温度範囲下で機能しており、各々は、本発明による別個の実施形態である。いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、または方法は、170℃、150℃、119℃、117℃、または130℃の温度下で機能しており、各々は、本発明による別個の実施形態である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、または方法において実施される水素化プロセスは、低圧の水素の下で行われる。いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、または方法で実施される水素化プロセスは、約1バール~約80バール、約15バール~約60バール、約1.5バール~約59バール、約1バール~約59バール、約4バール~約50バール、約1.3バール~約50バール、約1.5バール~約20バール、約1.5バール~約10バール、約1.5バール~約8バール、約1.2バール~約6バール、約1バール~約8バール、約1.6バール~約5バール、約2.6バール~約5バール、約1.2バール~約8バール、約30バール~約50バール、約3.5バール~約5バール、約2.5バール~約5バール、約1.5バール~約5バール、約1.5~約7バールの水素圧下で行われ、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本発明によるシステム、プロセス、または方法で実施される水素化プロセスは、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、または8.0バールの水素圧下で行われ、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0053】
いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、本発明のシステム、プロセス、または方法における水素放出および水素付加反応において同じである。いくつかの実施形態では、同じ触媒が、水素付加(水素化)および水素排出(脱水素化)プロセスの両方に使用される。
【0054】
他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および放出のための可逆的プロセスにおいて(そのままで)再利用される。他の実施形態では、同じ触媒は、水素(H)の貯蔵および/または放出プロセスにおいてリサイクルされ、かつ使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、遷移金属は、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Cu、Agから選択される。いくつかの実施形態では、遷移金属は、Ru、Pd、およびPtから選択される。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、不均一である。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、均一である。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、活性炭上のパラジウム(Pd/C)である。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、Pd(OAc)である。いくつかの実施形態では、遷移金属触媒は、Ru/Alである。いくつかの実施形態では、触媒は、市販のものである。市販の触媒の例は、限定されるものではないが、5重量%のPt/C、10重量%のPt/C、1重量%のPt/C、3重量%のPt/C、30重量%のPt/C、0.5重量%のPt/Al、1重量%のPt/Al、4重量%のPd/MCM-48、5重量%のPd/SiO、0.5重量%のPd/Al、1重量%のPd/Al、5重量%のPd/Al、10重量%のPd/Al、0.6重量%のPd/C、1重量%のPd/C、3重量%のPd/C、5重量%のPd/C、10重量%のPd/C、20重量%のPd/C、30重量%のPd/C、5重量%のPd/BaSO、10重量%のPd/BaSO、5重量%のPd/BaCO、5重量%のPd/CaCO、10重量%のPd/CaCO、5重量%のPd/SrCO、5重量%のPd/TiO、5重量%のRu/C、5重量%のRu/Alなどを含む。いくつかの実施形態では、触媒は、触媒前駆体からその場で生成される。触媒前駆体の例は、限定されるものではないが、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba)を含む。いくつかの実施形態では、触媒は、無機酸化物(例えば、テザーを介して任意選択的に付着するアルミナもしくはシリカ)、または有機不溶性ポリマー(例えば、架橋ポリスチレンなど)などの不溶性マトリックス(または以下に記載される固体担持体)上で担持される。不溶性マトリックスのより多くの例は、限定されるものではないが、活性炭、乾燥酸性活性炭、SiO、BaSO、BN、γ-Al、またはCeOを含む。いくつかの実施形態では、本発明のシステム、方法、および/またはプロセスにおける活性触媒は、炭素上のパラジウム、またはPd/Cであり、パラジウム金属は、その表面積および活性を最大化するために活性炭上で担持される。
【0056】
いくつかの実施形態では、触媒または触媒前駆体は、各々、本発明による別個の実施形態を表し、Hリッチ化合物に基づいて、0.05重量%~5重量%、0.01重量%~1重量%、0.1重量%~1重量%、0.15重量%~0.5重量%、0.1重量%~0.7重量%、0.1重量%~0.5重量%、0.05重量%~0.5重量%、0.15重量%~0.3重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.3重量%の濃度の量で存在し、各々が、本発明による別個の実施形態を表す。
【0057】
いくつかの実施形態では、触媒または触媒前駆体は、各々、本発明による別個の実施形態を表し、Hリーン化合物に基づいて、0.05重量%~5重量%、0.01重量%~1重量%、0.1重量%~1重量%、0.15重量%~0.5重量%、0.1重量%~0.7重量%、0.1重量%~0.5重量%、0.05重量%~0.5重量%、0.15重量%~0.3重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.3重量%の濃度の量で存在し、各々が、本発明による別個の実施形態を表す。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、本発明の実施形態のいずれかのプロセス/方法は、原液のままの状態で実施される。いくつかの実施形態では、本発明の該システム、プロセス、および/または方法は、いかなる溶媒も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の前述のシステムおよび方法は、少なくとも1つの有機溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、前述の少なくとも1つの有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-、m-、またはp-キシレン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、ジオキサン、THF、DME、DMSO、ジグリム、DMF(ジメチルホルムアミド)、バレロニトリル、DMAC(ジメチルアセトアミド)、NMM(N-メチルモルホリン)、ピリジン、n-BuCN、アニソール、シクロヘキサン、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、本発明の前述のシステムおよび方法は、1つの有機溶媒をさらに含む。他の実施形態では、本発明の前述のシステムおよび方法は、少なくとも2つの有機溶媒の混合物をさらに含む。
【0059】
別の実施形態では、触媒は、固体担持体上で吸収され、水素の貯蔵/付加および放出/排出は、溶媒を伴わずに行われる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の該システムおよび方法は、少なくとも1つの酸をさらに含む。本発明のシステム、プロセス、および/または方法に含まれ得る酸の例は、限定されるものではないが、酢酸(HOAc)、安息香酸(BA)、カルボキシポリスチレン(CPS)、ポリアクリル酸(PAA)、4-メチルベンゼンスルホン酸(p-TsOH)、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、酸は、触媒量で存在する。いくつかの実施形態では、酸は、N-ヘテロ環(例えば、置換/非置換ピリジン、または置換/非置換ピペリジン)の量に基づいて、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、25重量%、35重量%の濃度の量で存在し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、酸は、弱酸である。
【0061】
いくつかの実施形態では、水素の排出は、置換/非置換ピペリジンを遷移金属触媒と反応させ、それにより3つの水素分子および置換ピリジンを形成することによって達成される。
【0062】
いくつかの実施形態では、水素の付加は、置換/非置換ピリジンを3つの水素分子および遷移金属触媒と反応させ、それにより、置換/非置換ピペリジンを形成することによって達成される。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の可逆的な水素付加および排出システム、プロセス、および/または方法は、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも5.2%、少なくとも5.3%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.1%の水素貯蔵量を有し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。他の実施形態では、本発明の可逆的水素付加および排出システム、プロセス、および/または方法は、約4%~約6.5%、約4%~約6.3%、約5%~約6.5%、約5.3%~約6.1%、約4%~約6.1%の水素貯蔵量を有し、各々は、本発明による別個の実施形態を表す。
【0064】
本発明の置換/非置換ピペリジンをLOHCとして利用するための反応経路は、図1Dに概説され、これは、N-ヘテロ環(置換/非置換ピペリジン/ピリジン)のPd触媒脱水素化および水素化に基づく、LOHCシステムを説明する。Hリーン/Hリッチ化合物は、将来の使用のために有望なLOHCsであることが見出された。一方は、2-ピコリン/2-メチルピペリジンシステムであり、これは、6.1重量%の理論上の水素貯蔵量を有し、米国エネルギー省が行う水素貯蔵目標2020を非常によく満たす。他方は、2,6-ルチジン/2,6-ジメチルピペリジンシステムであり、これは、5.3重量%の理論上の水素貯蔵量を有し、米国エネルギー省の目標に近い。すべての化合物は、広い液体範囲、0℃より低い融点を有する。脱水素化と水素化の両方は、穏やかな条件下で、同じ触媒を使用して、優れた収率で達成された。特に、2,6-ルチジン/2,6-ジメチルピペリジンシステムに関して、2,6-ジメチルピペリジンの完全な脱水素化は、高速かつ信頼性の高いH放出速度で、170℃で実行することができた。機構の研究により、活性炭の表面における酸および酸性基の特別な役割が明らかになった。注目すべきことに、逆水素化は、低圧のH(2-ピコリンに対して2~7バール、2,6-ルチジンに対して1.6~5バール)のみを必要とし、これは、既知の最低圧力である。触媒のリサイクルおよび相互変換実験は、触媒、2,6-ジメチルピペリジンおよび2,6-ルチジンが、良好な安定性を有することを明示した。
【0065】
システム
【0066】
本発明の可逆的水素付加および排出システムは、該システムにおいて実行される反応の反応物を保持することが可能な任意のタイプの配置を指し、水素分子の排出および付加は、上記明細書に記載されるように、Nーヘテロ環および少なくとも1つの遷移金属触媒を使用して実行され、好ましくは、Nーヘテロ環は、(水素排出に対して)置換/非置換ピペリジンであり、(水素付加に対して)置換/非置換ピリジンである。
【0067】
置換/非置換ピペリジンが該少なくとも1つの遷移金属触媒と反応する際、水素分子が、放出され、対応する置換/非置換ピリジンおよび水素分子を形成する。
【0068】
水素分子が付加される際、置換/非置換ピリジンは、水素分子と反応して、置換/非置換ピペリジンを形成する。
【0069】
一実施形態では、本発明は、要求に応じて、水素(H)の貯蔵/付加および放出/排出のためのLOHCシステムに関し、システムは、Nーヘテロ環、および少なくとも1つの遷移金属触媒を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明は、水素(H)の貯蔵のための液体有機水素キャリア(LOHC)システムに関し、本システムは、(i)置換/非置換ピリジンおよび(ii)遷移金属触媒を含み、該置換/非置換ピリジンは、水素貯蔵システムとして、対応する置換/非置換ピペリジンを生成するのに十分な条件下で、該触媒の存在下において水素(H)と反応することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明は、水素(H)を放出するための液体有機水素キャリア(LOHC)システムに関し、本システムは、(i)置換/非置換ピペリジンおよび(ii)遷移金属触媒を含み、該置換/非置換ピペリジンは、置換/非置換ピリジンおよび分子状水素を生成するのに十分な条件下で、該触媒の存在下において脱水素化することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明は、要求に応じて水素(H)を貯蔵および放出するための液体有機水素キャリア(LOHC)システムに関し、本システムは、(i)置換/非置換ピリジン、(ii)置換/非置換ピペリジン、および(iii)上記本明細書に記載されるように、第1の触媒および第2の触媒を含み、第1の触媒は、水素を貯蔵するのに十分な条件下で、置換/非置換ピリジンと反応することができ、第2の触媒は、所望の要求に応じて、水素を放出するのに十分な条件下で、置換/非置換ピペリジンと反応することができ、第1の触媒および第2の触媒は、同じであっても異なっていてもよい。
【0073】
一実施形態では、水素の排出/放出は、置換/非置換を該少なくとも1つの遷移金属触媒と反応させ、それにより水素および置換/非置換ピリジンの3つの分子を形成することによって達成される。
【0074】
一実施形態では、水素の付加/貯蔵は、該遷移金属触媒の存在下で、該置換/非置換ピリジンを水素の3つ分子と反応させ、それにより、置換/非置換ピペリジンを形成することによって達成される。
【0075】
一実施形態では、本発明は、LOHCシステムに関する。別の実施形態では、LOHCシステムは、水素燃料電池に使用される。別の実施形態では、LOHCシステムは、内燃機関に燃料を供給するために使用される。本発明のLOHCは、内燃機関のために、水素燃料電池を動力源とする車両に搭載された水素を放出するか、またはLOHCシステムは、サービスステーション、ガレージ、中央艦隊給油ステーション、および住宅の個人の家、または他の使用場所で水素を貯蔵および放出する。水素の放出は現場での生成であり、個人の家または他の使用場所で生成され得る。水素の放出後、脱水素化合物は、専用の水素化施設に運ばれ、LOHCは、加圧された水素および触媒での処理の際に回収される。
【0076】
一実施形態では、本発明のLOHCシステムは、車両内の水素ベースの燃料を分配および監視するために使用される。システムは、車両内で水素を貯蔵、放出、および分配するように構成されている。システムはまた、水素をエンジンに送達するように構成された車両上の燃料送達システムと、生成システムを制御し、車両による水素の使用を監視するように構成された制御システムとを含む。
【0077】
本発明は、本発明のLOHCから水素ガスを放出し、水素燃料電池を動力源とする車両および/または内燃機関のために水素ガスを使用するための方法を提供する。
【0078】
一実施形態では、LOHCは、保持タンクおよび貯蔵容器に分配するためにポンプで送り込まれ得るか、または注入され得る。液体は、液体輸送および分配のための従来の方法(パイプライン、鉄道車両、タンクローリー)を使用して容易に輸送される。水素は、車両内において現場で生成されるか、または水素を送達し、水素化反応器の現場で脱水素化された基質を回収する脱水素化反応器システムによって生成される。
【0079】
一実施形態では、車両内で使用するための本発明のLOHCシステムは、本発明のLOHCおよび触媒を回収するように構成された反応チャンバと、LOHCおよび触媒を加熱して、水素を放出するように構成された加熱要素と、水素を回収して一時的に貯蔵するように構成された、反応チャンバと流体連通しているバッファタンクと、水素を選択された圧力に加圧するように構成された、バッファタンクと流体連通している圧縮機システムと、選択された量の水素を選択された圧力に貯蔵するように構成された、圧縮機システムと流体連通している貯蔵システムと、水素を水素燃料電池または内燃機関に分配するように構成された、貯蔵システムと流体連通している分配システムと、を備える。使用済み反応物を使用済みタンクに分配するように構成された、反応チャンバと流体連通している第2の分配システムであって、脱水素化基質は、加圧水素の存在下で収集される。脱水素化された基質の回収は、船内または船外で行われる。
【0080】
プロセス
【0081】
本発明は、要求に応じて、水素(H)を貯蔵および放出するためのプロセスにさらに関し、
(a)水素貯蔵が所望されるとき、対応する置換/非置換ピペリジンを生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下において、置換/非置換ピリジンを水素(H2)と反応させる工程と、
(b)水素放出が所望されるとき、対応する置換/非置換ピリジンおよび水素(H)を生成するのに十分な条件下で、置換/非置換ピペリジンを第2の触媒と反応させる工程と、を含み、第1の触媒および第2の触媒は、同じであっても異なっていてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の触媒および第2の触媒は、同じである。いくつかの実施形態では、触媒は、Pd/Cである。いくつかの実施形態では、触媒は、Pd(OAc)である。いくつかの実施形態では、触媒は、Ru/Alである。いくつかの実施形態では、プロセスは、いかなる溶媒も含まない。いくつかの実施形態では、水素貯蔵は、穏やかな温度(例えば、50~180℃)で実施される。いくつかの実施形態では、水素貯蔵は、穏やかな水素圧力(例えば、1.5~8バール)の下で実施される。いくつかの実施形態では、水素放出は、穏やかな圧力(例えば、大気圧)で実施される。いくつかの実施形態では、水素放出は、穏やかな温度(例えば、100~180℃)で実施される。
【0083】
いくつかの実施形態では、触媒は固体担持体に付着するか、他の実施形態では、触媒は固体担持体に埋め込まれるか、または他の実施形態では、固体担持体の表面上に位置付けられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、固体担持体は、無機材料を含む。無機材料の例は、限定されるものではないが、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト、フィロケイ酸塩、ゼオライト、タルク、粘土、層状複水酸化物、アパタイト、シリカゲル、ガラス、ガラス繊維、酸化ニッケル、およびそれらの混合物を含む。他の実施形態では、固体担持体は、有機ポリマーを含む。有機ポリマーの例は、限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリスチレン、ポリメタクリレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエン-スチレンランダムコポリマー、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シクロオレフィンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ABS、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、クロロプレンポリマー、イソブチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリ(有機)シロキサン、およびそれらの混合物を含む。
【0085】
化学的定義
【0086】
本明細書で使用される際、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、一実施形態では、直鎖および分岐鎖基を示す、「C~Cアルキル」、「C~Cアルキル」、または「C~C10アルキル」を指し、非限定的な例は、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基(C~Cアルキル)、または1~4個の炭素原子を含有するアルキル基(C~Cアルキル)である。飽和アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、tert-アミル、およびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
アルキル基は、非置換であり得るか、またはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ナフチル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、カルバモイル、カルボキサミド、シアノ、スルホニル、スルホニルアミノ、スルフィニル、スルフィニルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、もしくはアルキルスルホニル基からなる群から選択される1つ異常の置換基で置換され得る。任意の置換基は、非置換であり得るか、またはこれらの前述の置換基のいずれか1つでさらに置換され得る。例示として、「アルコキシアルキル」は、アルコキシ基で置換されたアルキルである。
【0088】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0089】
実施例
【0090】
一般情報
金属錯体を用いたすべての実験を、MO 40-2不活性ガス精製器を装備した真空雰囲気グローブボックス内で、または標準のSchlenk技術を使用して、精製窒素の雰囲気下で実施した。すべての溶媒は、試薬グレード以上である。すべての非重水素化溶媒を、アルゴン雰囲気下で標準的な手順に従って精製した。重水素化溶媒を、受け取ったままの状態で使用した。全ての溶媒を、Nで脱気し、グローブボックス内で維持した。触媒反応で使用される化学物質のほとんどを、標準的な手順に従って精製した。
【0091】
H NMRスペクトルを、Bruker AMX-300 NMR分光計を使用して、300MHzで記録した。各実験で述べたように、測定は、周囲温度で行った。H NMR化学シフトは、重水素化溶媒の残留水素シグナルを基準とされる。GSMS分析は、MS検出器およびキャリアガスとしてヘリウムを備えたAgilent 7820A/5975C GCMSシステム上で実行した。EDSは、Zeiss Ultra 55 Scanning Electron Microscopeを使用して、EDS Bruker XFlash/60mmで記録した。透過型電子顕微鏡(TEM)は、JEM-2100 Electron Microscopeで記録した。
【0092】
実施例1
【0093】
2-メチルピペリジンの2-ピコリンへの脱水素化
【0094】
2メチルピペリジンを、それが6.1重量%の潜在的水素貯蔵量を有しているので、モデルHリッチ化合物として選択し、2位置における電子供与性メチル基は、電子および立体効果の両方に関して、いくつかの利点を提供することができる。いくつかの種類の不均一系触媒を、溶媒としてp-キシレン中でスクリーニングした(詳細は以下を参照)。活性炭上のパラジウム(Pd/C、4重量%)は、2-メチルピペリジンの2-ピコリンへのアクセプタレス脱水素化に最も効率的な触媒であることが見出された。次いで、Pd/Cを、2-メチルピペリジンの無溶媒脱水素化のための触媒として研究した。市販のPd/C(5重量%)を適用すると、サプライヤに応じて、42~48%の2-ピコリンの収率、および9~10%の副産物をもたらした(表2、エントリ1および2)。重要なことに、触媒量の酢酸の添加(エントリ3)により、収率(60%)および選択性(約3%の副産物のみが形成された)の両方で反応が改善された。
【0095】
【表2】
【0096】
さらに、その場での触媒生成戦略を計画した。Pd(OAc)を、パラジウム前駆体として、乾燥酸性活性炭(Darco@KB、表面積:1500m/g、pHPZC=4.25:ゼロチャージの点でのpH値)を、予備的な試みの担持体として選択し、Pd/Cおよび2当量の酢酸(Pdに関して)が、生成される可能性がある。このその場で生成されたパラジウム触媒は、事前に調製された市販の触媒よりも活性が高く、72%の2-ピコリンの収率をもたらす(エントリ4)。PdCl、Pd(TFA)2、Pd(dba)、およびPd(acac)を含む他のパラジウム源は、Pd(OAc)(エントリ5~8)よりもかなり低い触媒活性を有する。次に、Pd(OAc)を、担持体の効果を研究するための最良のパラジウム前駆体として選択した(表2、エントリ9~12)。SiO、BN、γ-Al、またはCeOによる活性炭の交換により、2-ピコリンの非常に低い収率を得た。担持体がない場合、3%の2-ピコリンのみを検出し、パラジウムミラーを、Schlenkチューブの底に観察し、Pd種が、反応システム内で生成されたことを示す。それゆえ、Pd(OAc)および活性炭は、2-メチルピペリデン脱水素化のための最も効率的な触媒である。
【0097】
次に、この反応を、時間依存性H放出曲線を記録するために、ガス回収システム(図3)に接続した。図2A図2Bに示すように、Pd(OAc)/活性炭(Pd(OAc)=0.03mmol、AC=40mg)の触媒作用の下、170℃(浴温、内部温度は119℃)、27.1mmol(90%収率)のHを、51時間後に得た(エントリ1、三角形▲)。脱水素化をまた、より低い浴温、150℃(内部温度はまた119℃)で達成し、117時間後、84%の収率におけるHを回収した(エントリ2、四角形■)。さらに、同量の触媒で、2-メチルピペリジンのスケールを2倍にすると、脱水素化(エントリ3、点●)は、さらに高速であり、94時間後に、54.5mmol(91%収率)のHを生成した。喜ばしいことに、逆水素化は、同じ反応混合物をHで直接加圧することによって達成することができた。2~7バールのHの下で、混合物中の2-ピコリンを、90%の収率で2-メチルピペリジンに完全に変換した(図4)。これらの結果は、脱水素化および水素化が、同じ単一金属不均一系触媒によって触媒され、副産物の総量は10%未満であったことを示す。
【0098】
副反応のプロセスを理解するために、副産物の混合物を、GC-MSで分析した。これらの副産物は、同様の保持時間(一部は部分的に重複する、以下を参照)および同様の分子量、おそらくpy-pyおよびpy-pi、を有し、おそらくイミンへのエナミンのパラジウム触媒添加を介して形成された(図5A)。したがって、イミンへのエナミンの添加を抑制することは、選択性を改善するための効果的な方法であり得る。戦略は、求核性中間体および求電子性中間体の両方の立体障害を増加させることであった(図5B)。
【0099】
実験詳細:
【0100】
溶媒中の2-メチルピペリジンの2-ピコリンへの脱水素化:グローブボックス内で、触媒、t-BuOK(0.2mmol)、2-メチルピペリジン(1mmol)、および溶媒(1mL)を、Schlenkチューブに添加した。Schlenkチューブは、凝縮器を装備し、溶液を、凝縮器の上部におけるアルゴン流下で開放系において攪拌しながら、指定された時間還流した。室温まで冷却した後、変換率および収率を、内部標準としてn-ヘプタンを使用するGCによって判定した。
【0101】
【表3】
【0102】
2-メチルピペリジンの無溶媒脱水素化:グローブボックス内で、2-メチルピペリジン(10mmol)、43mgの5重量%Pd/Cまたは(4.5mgのPd(OAc)、および50mgの担持体)をSchlenkチューブに添加した。Schlenkチューブは、凝縮器を装備し、溶液を、アルゴン流下で指定された時間、開放系において撹拌しながら還流した。室温まで冷却した後、変換率および収率を、内部標準としてn-ヘプタンを使用するGCによって判定した(結果は、表2および表4に示される)。
【0103】
【表4】
【0104】
2-メチルピペリジンの無溶媒脱水素化(ガス回収システムに接続):グローブボックス内で、2-メチルピペリジンおよび触媒を、Schlenkチューブに添加した(表5を参照)。Schlenkチューブは、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備する(図3)。Hの体積を、回収システムによって記録し、時間依存性H放出曲線は、図10に示される。収率および変換率を、ピーク面積に基づいて、GCによって判定した。Hの収率を、2-メチルピペリジンの2-ピコリンへの完全な変換に関して、Hの体積に基づいて計算した(10mmolの2-メチルピペリジンが、30mmolのH、28℃で740mL、を生成することができる)。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
実施例2
【0108】
N-ヘテロ環ベースの無溶媒、液体から液体へのLOHCシステムの最適化
【0109】
脱水素化プロセス上の置換の影響
【0110】
立体障害を増加させるという考えで、置換基の影響を研究した。ピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、および2,6-ジメチルピペリジンを、調査した(表7)。Hリッチ化合物としてピペリジンまたは3-メチルピペリジンを使用すると、良好な選択性であるが、低いHリーン生成物の収率をもたらした(エントリ1および2)。4-メチルピペリジンの使用は、46%の収率の4-ピコリン、および約7%の副産物をもたらした(エントリ3)。
【0111】
【表7】
【0112】
2,6-ジメチルピペリジンを使用すると、99%以上の収率および100%の選択性を得た(エントリ4)。重要なことに、2,6-ジメチルピペリジンの定量的脱水素化もまた、アルゴン流なしで達成され、100%の収率の純粋なHガスを与えた(H純度>99.99%、熱伝導率検出器を用いてGCにより確認、いかなる不純物も観察されず)。それゆえ、同じ触媒システムを有する2,6-ルチジン/2,6-ジメチルピペイジンに基づくLOHCシステムを確立することも有望である。
【0113】
2,6-ルチジン/2,6-ジメチルピペリジンに基づくLOHCシステムは、最大5.3重量%の重量測定能力を有し、これは欧州連合の目標よりも高く、米国エネルギー省の目標に非常に近い。加えて、2,6-ルチジンおよび2,6-ジメチルピペリジンの物理化学的特性は、理想的なLOHCのすべての要件を満たす。それゆえ、2,6-ルチジン/2,6-ジメチルピエリジンベースのLOHCシステムに基づくLOHCシステムは魅力的である。
【0114】
2,6-ジメチルピペリジン脱水素化のための時間依存性H放出曲線を、ガス回収システムにより記録した(図6)。Pd(OAc)=6.7mg、0.3mol%、AC=40mgの触媒作用の下、2,6-ジメチルピペリジンの脱水素化は、非常に良好であり、13時間後、97%のH、23時間後、100%のHを産出する(図6(a))。興味深いことに、Hの放出速度は、12時間で95%のHの収率に達する前(図6(a)、挿入図)は一定であった。これらの結果は、2,6-ジメチルピペリジンによる触媒表面の飽和の結果として、2,6-ジメチルピペリジンのゼロ次反応を示唆する。さらに、異なる触媒付加を使用してH放出速度を測定することにより、Pdにおける1次速度依存性が起こり得る。
【0115】
さらに、2,6-ルチジンの2,6-ジメチルピペリジン再生への逆水素化は、混合物を1.6~5バールのHで、18時間、150℃で加圧することにより、100%の収率で達成された(図6(b)、右の列1)。得られた混合物は、2回目の脱水素化(93%収率、図6(b)、左の列2)および水素化(100%収率、図6(b)、右の列2)に再利用でき、2,6-ジメチルピペリジンおよび2,6-ルチジンの分解は、起こらなかった。追加的に、0.3mol%の触媒、30~50バールのH圧力、150℃の状態で、2,6-ルチジンの水素化は、1.5時間、2時間、および3時間後、それぞれ、87%、95%、および98%の収率の2,6-ジメチルピペリジンを産出し、高速のH付加が可能である(詳細は以下を参照)。
【0116】
それゆえ、比較的穏やかな条件下での脱水素化および水素化の両方のための単一の触媒によって触媒された、N-ヘテロ環ベースの無溶媒の、液体から液体へのLOHCシステムを確立した。
【0117】
実験データ:
【0118】
2,6-ジメチルピペリジンの2,6-ルチジンへの無溶媒脱水素化(ガス回収システムと接続):グローブボックス内で、2,6-ジメチルピペリジン(10mmol)および触媒を、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備したSchlenkチューブに添加した(図3)。溶液を、指定された時間、開放系において撹拌しながら還流した。Hの収率を、2,6-ジメチルピペリジンの2,6-ルチジンへの完全な変換に関して、形成されたHの体積に基づいて計算した(30mmolのH、20℃で721mL、28℃で740mL)。室温まで冷却した後、変換率および収率を、内部標準としてメシチレンを使用するH NMR、またはピーク面積に基づくGCによって判定した。
【0119】
GC条件(有機化合物の場合):HP6890またはAgilent 7890B Series GC System、カラム:HP-5、30m、320μm、注入口:280℃、検出器:FID 280℃、キャリアガス:He、流量:1mL/分、オーブン:50℃、8分間保持、15℃/分~280℃、2分間保持。
【0120】
【表8】
【0121】
【表9】
【0122】
GC条件(ガス分析用):HP 6890 Series GC System、カラム:SUPELCO 1-2382、5Ft×1/8In S.S.SUPPORT 45/60 CARBOXENTM 1000、パックドカラム。入口:87℃、検出器:TCD 250℃、キャリアガス:He、流量:29.1mL/分、オーブン:35℃、2分間保持、10℃/分~60℃、0分間保持、30℃/分~200℃。
【0123】
収率90%以内の平均回転頻度の計算(ATOF90)に関して:グローブボックス内で、2,6-ジメチルピペリジン(10mmol)、Pd/CHS([Pd]=0.03mmol)および酸(0.06mmol)を、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備したSchlenkチューブに添加した(図3)。溶液を、指定された時間、開放系において撹拌しながら還流した。Hの収率を、2,6-ジメチルピペリジンの2,6-ルチジンへの完全な変換に関して、形成されたHの体積に基づいて計算した(30mmolのH、20℃で721mL、28℃で740mL)。室温まで冷却した後、変換率および収率を、GCによって判定した。ATOF90の計算は、H放出速度に基づく(図示せず)。
【0124】
実施例3
【0125】
ピリジンの水素化に関する一般的な手順
【0126】
グローブボックス内で、攪拌棒を含むTeflon(登録商標)チューブ(または90mLFisher Porterチューブ)と並ぶ50mLステンレス鋼オートクレーブに、触媒(PdまたはRu)および2,6-ルチジンを付加した。H(10atm×2)でパージした後、オートクレーブを、Hで加圧した(圧力は表10を参照)。混合物を、150℃で攪拌し、Hを指定の圧力まで低減させ、次いで、室温まで冷却し、Hで再度加圧した(数回繰り返す)。表11は、水素化を5回繰り返した結果を提供する。圧力が低減しないとき、オートクレーブを、室温まで冷却し、Hを慎重に放出した。遠心分離は、触媒と生成物を分離するために、50μLの透明な溶液を、CDCl およびGC内でH NMRにより、取り出し、測定した。蒸留後、さらなる使用のために純粋な2,6-ジメチルピプリジンを得た。
【0127】
【表10】
【0128】
【表11】
【0129】
実施例4
【0130】
触媒プロセスの機構的調査-制御実験
【0131】
接触脱水素化が、均一系または不均一系触媒作用を伴うかどうかを調べるために、いくつかの対照実験を実施した。0.3mol%のPd(OAc)、40mgの活性炭、および10mmolの2,6-ジメチルピペリジンを、170℃(浴温、内部温度は128℃である)で5時間加熱したとき、46%の収率のHを回収し、これは、形成された2,6-ルチジンの収率(46.2%)と非常によく一致する(図7A)。混合物を、Teflon(登録商標)シリンジフィルター(孔径0.22μmPTFE)を使用して濾過して、2,6-ジメチルピペリジンおよび2,6-ルチジンの無色の混合物を生み出す。得られた混合物を、さらに20時間、170℃で加熱し、ガスは形成されず、2,6-ルチジンの量もまた変化しなかった(45.9%、図7B)。それゆえ、均一系触媒作用プロセスは、起こりそうにない。ICP-MSによる最終混合物の分析では、0.172ppmのPdのみを示し、これは、反応溶液へのPdの浸出が事実上発生しなかったことを示す。第3に、担持体を使用することのない反応では、5%のみの収率の2,6-ルチジンを与え、Pdミラーを生成した(図7C)。これらの結果を総合すると、均一系プロセスを除外できることを示す。
【0132】
実験詳細:
【0133】
対照実験:グローブボックス内で、2,6-ジメチルピペリジン(1.13g、10mmol)、Pd(OAc)(6.7mg、0.03mmol)および活性炭(40mg)を、Schlenkチューブに添加した。Schlenkチューブは、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備した。溶液を、5時間、開放系において撹拌しながら還流した。Hを、回収した(331mL、46%収率)。室温まで冷却した後、反応混合物を、Teflon(登録商標)シリンジフィルター(孔径0.22μmPTFE)を使用して濾過して、2,6-ジメチルピペリジン(53.8%)および2,6-ルチジン(46.2%)の無色の混合物を生み出す。次いで、2,6-ジメチルピペリジンおよび2,6-ルチジンの混合物を、新しいSchlenkチューブに移し、さらに20時間還流したが、ガスは回収されなかった。室温まで冷却した後、GCおよびICP-MS分析のために試料を採取した。
【0134】
実施例5
【0135】
機構的調査-脱水素化プロセスに対する酸の影響
【0136】
Pd/CHS(Pd/CHS=水素貯蔵用活性炭上のパラジウム)を、Pd(OAc)および酸性活性炭(Darco@KB)から調製して、酸の影響を研究した。調製されたPd/CHSを、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および透過型電子顕微鏡(TEM)によって特徴づけた。活性炭表面のカルボキシル基に結合されたパラジウムナノ粒子が、均一に分布し、Pdナノ粒子の平均直径が、約1.93±0.44nmであることが見出された。
【0137】
次いで、2,6-ジメチルピペリジン脱水素化のためのPd/CHSの触媒活性を試験し、収率90%内の時間依存性H放出曲線および平均回転頻度(ATOF90=1時間当たりのmolPd当たり85molH)は、図8に示される。触媒としてPd/CHSを使用するATOF90は、Pd(OAc)/活性炭システム(ATOF90=91)のものに近い。
【0138】
酸の影響を、2当量(Pdに関して)の酢酸(pK=4.76)、安息香酸(pK=4.20)、4-メチルベンゼンスルホン酸(pK=1.99)、カルボキシポリスチレン(モノマーpK=4.35)またはポリアクリル酸(pK=4.75)を、反応混合物に添加することによって調査した(図8、エントリ2~6)。酢酸、安息香酸、およびポリマーカルボキシポリスチレンは、それぞれ、103、128、および107のATOF90をもたらし、脱水素化プロセスにおいて正の影響を示した。添加剤としてポリアクリル酸を使用すると、ATOF90は、80にわずかに低減し、強い酸、4-メチルベンゼンスルホン酸の使用は、ATOF90の45への低減をもたらし、負の影響を有した。しかしながら、使用前にPd/CHSをt-BuOKで処理すると、カルボキシル基とPdナノ粒子の相互作用が塩基によって破壊される可能性があり、触媒は、完全に不活性になった(図8、エントリ8)。これらの結果は、カルボン酸および活性炭表面上のカルボキシル基が、パラジウム触媒による2,6-ジメチルピペリジンの脱水素化を促進することを示す。さらに、Pd/CHSおよびカルボキシポリスチレンは、触媒活性を失うことなく、遠心分離によって容易に回収することができた(ATOF90=101、図8、エントリ9)。
【0139】
対照実験、予備的な機構研究、および文献に基づいて、2-ピコリンおよび2,6-ルチジン形成の妥当な脱水素化メカニズム(図9A)および経路(図9B)が、提案される。N-ヘテロ環のPd(II)ナノ粒子への配位は、NH基の酸性度における増加をもたらし、Pd 2+の対カルボン酸アニオンによって脱プロトン化されて、アミド-パラジウム種およびカルボン酸を生成する可能性がある(図9A)。次いで、β水素化物の脱離が発生して、イミンおよび水素化パラジウムの種を生成する。最後に、カルボン酸の援助により、Hが、放出され、活性触媒Pd 2+が、再生される。反応システムにおけるカルボン酸の別の役割は、主要な中間体エナミンへのイミンの互変異性化の加速である(図9B)。脱水素化および互変異性化のカスケード工程は、最終的なHリーン生成物2-ピコリンまたは2,6-ルチジン、およびHを生成する。
【0140】
実験詳細:
【0141】
Pd/CHSをt-BuOKで処理するための手順:グローブボックス内に、Pd/CHS(43mg、[Pd]=0.03mmol)、t-BuOK(16.8mg、0.15mmol)およびTHF(1mL)を、Schlenkチューブに添加した。室温で12時間攪拌した後、触媒を、遠心分離により分離し、THF(1mL×2)で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0142】
実施例6
【0143】
【化1】
【0144】
脱水素化:グローブボックス内で、2-メチルピペリジン(20mmol)、Pd(OAc)(6.7mg、0.03mmol)および活性炭(40mg)を、Schlenkチューブに添加した。Schlenkチューブは、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備する(図3)。溶液を、開放系において撹拌しながら還流した。ガスが発生しなくなったとき、反応を停止した。Hの収率(91%)を、2-メチルピペリジンの2-ピコリンへの完全な変換に関するH体積(1344mL)に基づいて、計算した(表11)。室温まで冷却した後、Schlenkチューブを、グローブボックスに入れ、混合物を、水素化のために90mLのFisher-Porterチューブに移した。
【0145】
水素化:Fisher-Porterチューブを、グローブボックスから取り出し、7バールのHで加圧し、150℃で加熱した。6時間後、H圧力は、2バールに低減し、反応混合物を、室温まで冷却し、次いで二回目のH(7バール)による加圧をし、室温に冷却し、さらに6時間、150℃で加熱した。Fisher-Porterチューブを、3回目のH(7バール)による加圧をし、12時間、150℃で加熱した。4回目の加圧(7バール)の後、Fisher-Porterチューブを、最後の12時間、150℃で加熱した。次いで、Fisher-Porterチューブを、室温まで冷却し、水素を、注意深く放出し、内部標準として950mgのn-ヘプタンを添加し、GC分析用に100μLの試料を採取(EtOで希釈)した(表12)。
【0146】
【表12】
【0147】
実施例7
【化2】
【0148】
脱水素化:2,6-ジメチルピペリジン(50mmol)、Pd(OAc)(33.6mg、0.15mmol)、および活性炭(200mg)を、Schlenkチューブに添加した。Schlenkチューブは、ガス回収システムに接続された、凝縮器を装備する(図3)。溶液を、23時間、開放系において撹拌しながら還流した。室温まで冷却した後、Schlenkチューブを、グローブボックスに入れ、混合物を、水素化のために90mLのFisher-Porterチューブに移した。
【0149】
水素化:Fisher-Porterチューブを、グローブボックスから取り出し、7バールのHで加圧し(1回目)、150℃で加熱した。6時間後、H圧力を、1.6バールに低減させ、Fisher-Porterチューブを、室温まで冷却し、二回目のH(7バール)で加圧した。8回加圧および加熱をした後、Fisher-Porterチューブを、室温まで冷却し、水素を注意深く放出し、次いで反応混合物を有するチューブを、グローブボックスに入れ、混合物を、脱水素化のためにSchlenkチューブに移した。
【0150】
触媒の再利用:3回の脱水素化および2回の水素化の後、固体触媒を、遠心分離(4000rpmで40分間)を介して分離し、n-ペンタン(4mL×4)で洗浄し、真空下で8時間乾燥させた。回収した触媒を、4回目および5回目の脱水素化に使用した。
【0151】
図12は、次の可逆的プロセス工程、脱水素化→水素化→脱水素化→水素化→脱水素化、における触媒の100%変換を明示し、触媒を、リサイクルせず、そのまま使用した。脱水素化の最後の工程に続いて、触媒を、リサイクルし、追加の2つの脱水素化工程のために再度使用した(触媒を、最後の脱水素化工程の各々の間にリサイクルした)。すべてのプロセスにおいて、触媒は、100%の変換を明示した。
【0152】
実施例8
【0153】
【化3】
【0154】
グローブボックス内で、Pd(OAc)(100.8mg)、活性炭(600mg、Darco@KB、表面積:1500m/g、pHPZC=4.25)、2,6-ジメチルピペリジン(170mg)、およびi-PrOH(15mL)を、90mLFisher-Porterチューブに添加した。Fisher-Porterチューブを、5バールのHで加圧し、混合物を、120℃で5時間攪拌し、次いで室温でさらに5日間撹拌した。溶媒を、真空下で除去し、残渣を、200℃で2時間、H流量(40mL/分)で処理した。得られた触媒Pd/CHSは、不活性雰囲気下に保たれなくてはならない。
【0155】
本明細書では本発明の特定の特徴が図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物がここで、当業者に思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神趣旨に収まるように、全てのそのような修正および変更を網羅することを意図することを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求に応じて、水素を貯蔵および放出するための可逆的プロセスであって、
a.水素貯蔵が所望されるとき、 リッチN-ヘテロ環を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下において、 リーンN-ヘテロ環を分子状水素と反応させる工程と、
b.水素放出が所望されるとき、前記水素を放出するのに十分な条件下で、 リッチN-ヘテロ環を第2の触媒及び触媒量の少なくとも1つの弱酸と反応させ、それにより対応する リーンN-ヘテロ環および分子状水素を生成する工程と、を含み、
前記第1の触媒および前記第2の触媒が、同じであり、前記プロセスが、いかなる溶媒も含まず、前記プロセスが、穏やかな温度および水素圧下で実施される、プロセス。
【請求項2】
前記 リッチN-ヘテロ環および前記 リーンN-ヘテロ環の両方が、室温で液体である、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記H リーンN-ヘテロ環が、置換ピリジン誘導体であり、前記H リッチN-ヘテロ環が、置換ピペリジン誘導体である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
触媒が、活性炭上のパラジウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
触媒が、市販のものか、または触媒前駆体からその場で生成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒前駆体が、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba)から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸が、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
触媒または触媒前駆体が、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求に応じて、水素を貯蔵および放出するための可逆的プロセスであって、
a.水素貯蔵が所望されるとき、HリッチN-ヘテロ環を生成するのに十分な条件下で、第1の触媒の存在下において、HリーンN-ヘテロ環を分子状水素と反応させる工程と、
b.水素放出が所望されるとき、前記水素を放出するのに十分な条件下で、HリッチN-ヘテロ環を第2の触媒及び触媒量の少なくとも1つの弱酸と反応させ、それにより対応するHリーンN-ヘテロ環および分子状水素を生成する工程と、を含み、
前記第1の触媒および前記第2の触媒が、同じであり、前記プロセスが、いかなる溶媒も含まず、前記プロセスが、穏やかな温度および水素圧下で実施される、プロセス。
【請求項2】
前記HリッチN-ヘテロ環および前記HリーンN-ヘテロ環の両方が、室温で液体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
触媒が、活性炭上のパラジウムである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
触媒が、市販のものか、または触媒前駆体からその場で生成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒前駆体が、Pd(OAc)、PdCl、Pd(TFA)、Pd(acac)、およびPd(dba)から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸が、酢酸、安息香酸、カルボキシポリスチレン、およびポリアクリル酸から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
触媒または触媒前駆体が、0.05重量%~5重量%の濃度の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。