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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100635
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】HER2陽性転移性乳癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230711BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230711BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20230711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 C ZNA
A61K39/395 N
A61K31/337
A61K31/5386
A61K47/68
A61P15/00
A61P35/00
A61P35/04
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064033
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021001246の分割
【原出願日】2016-05-27
(31)【優先権主張番号】62/168,809
(32)【優先日】2015-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガーディノ, アリス エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】サマント, メグナ
(72)【発明者】
【氏名】ストラサク, アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】スミット, メラニー
(72)【発明者】
【氏名】パトレ, モニカ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】HER2陽性進行性もしくは再発性局所進行性の、または未治療の転移性乳癌の治療のために、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体を使用する方法を提供する。
【解決手段】HER2陽性の局所進行性のまたは未治療の転移性乳癌の治療方法であって、抗HER2-メイタンシノイド複合体の治療有効量を、前記乳癌を有する患者に投与することを含み、前記患者が、タキサンによる前治療を受けている、前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HER2陽性の局所進行性のまたは未治療の転移性乳癌の治療方法であって、抗HER2-メイタンシノイド(maytansinoid)複合体の治療有効量を、前記乳癌を有する患者に投与することを含み、前記患者が、タキサンによる前治療を受けている、前記方法。
【請求項2】
前記投与が、前記タキサンによる前治療から6ヶ月以上経過した後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、タキサンによる前治療及び少なくとも1つのHER2標的療法を受けている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が、タキサン及びトラスツズマブによる前治療を受けている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、タキサン、トラスツズマブ、及びペルツズマブによる前治療を受けている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記前治療が、アジュバント療法で施されている、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記前治療が、非アジュバント療法で施されている、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記タキサンがパクリタキセルである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パクリタキセルが、80mg/m2にて毎週静脈内投与されていた、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パクリタキセルが、最短で18週間投与されていた、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タキサンが、ドセタキセルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ドセタキセルが、75mg/m2または100mg/m2にて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ドセタキセルが、最短で6サイクルの間投与されていた、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トラスツズマブが、サイクル1で8mg/kgにて、続いてその後のサイクルで6mg/kgにて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記トラスツズマブが、サイクル1の1日目に4mg/kgにて、続いてサイクル1の8日目から毎週2mg/kgにて静脈内投与されていた、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記トラスツズマブが、サイクル1の1日目に840mgにて静脈内投与され、続いてその後のサイクルで420mgにて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項5~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗HER2-メイタンシノイド複合体が、トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体が、トラスツズマブ-DM1複合体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記トラスツズマブ-DM1複合体が、トラスツズマブ-MCC-DM1である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記トラスツズマブ-MCC-DM1が、3.6mg/kgで3週間毎に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記トラスツズマブ-MCC-DM1が、2.4mg/kgで毎週投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記乳癌が、未治療の転移性乳癌である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
HER2陽性の局所進行性のまたは未治療の転移性乳癌の治療方法であって、(1)患者が、タキサンによる前治療を受けているかどうかを判定することと、(2)前記患者タキサンによる前治療を受けている場合には、抗HER2-メイタンシノイド複合体の治療有効量を、前記乳癌を有する患者に投与することとを含む、前記方法。
【請求項24】
前記投与が、前記タキサンによる前治療から6ヶ月以上経過した後に行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、タキサンによる前治療及び少なくとも1つのHER2標的療法を受けている、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、タキサン及びトラスツズマブによる前治療を受けている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、タキサン、トラスツズマブ、及びペルツズマブによる前治療を受けている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記前治療が、アジュバント療法で施されている、請求項23~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記前治療が、非アジュバント療法で施されている、請求項23~27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記タキサンが、パクリタキセルである、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記パクリタキセルが、80mg/m2にて毎週静脈内投与されていた、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記パクリタキセルが、最短で18週間投与されていた、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記タキサンが、ドセタキセルである、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ドセタキセルが、75mg/m2または100mg/m2にて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ドセタキセルが、最短で6サイクルの間投与されていた、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記トラスツズマブが、サイクル1で8mg/kgにて、続いてその後のサイクルで6mg/kgにて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項26~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記トラスツズマブが、サイクル1の1日目に4mg/kgにて、続いてサイクル1の8日目から毎週2mg/kgにて静脈内投与されていた、請求項26~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記トラスツズマブが、サイクル1の1日目に840mgにて静脈内投与され、続いてその後のサイクルで420mgにて3週間毎に静脈内投与されていた、請求項27~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗HER2-メイタンシノイド複合体が、トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体である、請求項23~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体が、トラスツズマブ-DM1複合体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記トラスツズマブ-DM1複合体が、トラスツズマブ-MCC-DM1である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記トラスツズマブ-MCC-DM1が、3.6mg/kgで3週間毎に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記トラスツズマブ-MCC-DM1が、2.4mg/kgで毎週投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記乳癌が、未治療の転移性乳癌である、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年5月30日に出願された米国特許仮出願第62/168,809号の利益を、米国特許法119条の下で主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ASCIIテキストファイルは、2016年5月20日に作成され、GNE-0423R1-WO Sequence_Listing.txtという名称であり、30,476バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、HER2陽性進行性もしくは再発性局所進行性の、または未治療の転移性乳癌の治療のために、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド(maytansinoid)複合体を使用する方法であって、患者は、タキサンによる前治療を受けている、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
乳癌及びHER2標的治療
乳癌は、世界中で罹患率及び死亡率の非常に大きな原因となっている。毎年、世界中で130万症例を超える乳癌が診断され、その疾患に関連する死亡は450,000件を超える(Jemal A,Bray F,Center M,et al.Global cancer statistics.CA Cancer J Clin,2011;61(2):69-90)。
【0005】
HER2(ErbB2)受容体チロシンキナーゼは、膜貫通受容体の上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーである。HER2の過剰発現は、ヒト乳癌のおよそ20%に観察され(以降、HER2-陽性乳癌と称される)、これらの腫瘍に関連する侵攻性の増殖及び臨床転帰不良に関連付けられている(Slamon et al(1987)Science 235:177-182)。HER2タンパク質過剰発現は、固定腫瘍ブロックの免疫組織化学に基づく評価を使用して判定され得る(Press MF,et al(1993)Cancer Res 53:4960-70)。
【0006】
トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、Genentech)は、細胞ベースのアッセイにおいて、HER2の細胞外ドメインに高親和性で選択的に結合する(Kd=5nM)マウス抗HER2抗体(4D5)のヒト化バージョンである、組換えDNA由来のIgG1κ、モノクローナル抗体である(米国特許第5677171号、同第5821337号、同第6054297号、同第6165464号、同第6339142号、同第6407213号、同第6639055号、同第6719971号、同第6800738号、同第7074404号、Coussens et al(1985)Science 230:1132-9、Slamon et al(1989)Science 244:707-12、Slamon et al(2001)New Engl.J.Med.344:783-792)。トラスツズマブは、in vitroアッセイ及び動物の両方において、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された(Hudziak et al(1989)Mol Cell Biol 9:1165-72、Lewis et al(1993)Cancer Immunol Immunother;37:255-63、Baselga et al(1998)Cancer Res.58:2825-2831)。トラスツズマブは、抗体依存的細胞性細胞傷害性、ADCCの媒介因子である(Lewis et al(1993)Cancer Immunol Immunother 37(4):255-263、Hotaling et al(1996)[abstract].Proc.Annual Meeting Am Assoc Cancer Res;37:471、Pegram MD,et al(1997)[abstract].Proc Am Assoc Cancer Res;38:602、Sliwkowski et al(1999)Seminars in Oncology 26(4),Suppl 12:60-70、Yarden Y. and Sliwkowski,M.(2001)Nature Reviews:Molecular Cell Biology,Macmillan Magazines,Ltd.,Vol.2:127-137)。
【0007】
HERCEPTIN(登録商標)は、HER2を過剰発現する転移性乳癌を有する、広範な前抗癌療法を受けた患者の治療のために1998年に承認され(Baselga et al,(1996)J.Clin.Oncol.14:737-744)、それ以来300,000名を超える患者において使用されてきた(Slamon DJ,et al.N Engl J Med 2001;344:783-92、Vogel CL,et al.J Clin Oncol 2002;20:719-26、Marty M,et al.J Clin Oncol 2005;23:4265-74、Romond EH,et al.T N Engl J Med 2005;353:1673-84、Piccart-Gebhart MJ,et al.N Engl J Med 2005;353:1659-72、Slamon D,et al.[abstract].Breast Cancer Res Treat 2006,100(Suppl 1):52)。2006年にFDAは、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ、Genentech Inc.)を、HER2陽性、リンパ節転移陽性乳癌を有する患者のアジュバント治療のためのドキソルビシン、シクロホスファミド、及びパクリタキセルを含む治療レジメンの一部として承認した。
【0008】
抗体標的療法の代替的なアプローチは、抗原発現癌細胞へ細胞傷害性薬物を特異的に送達するために抗体を利用することである。抗体-薬物複合体、すなわちADCは、非常に強力な細胞傷害剤が結合しているモノクローナル抗体である。ADCは、全身的に投与された抗腫瘍腫治療薬に腫瘍選択性を付与するための新規アプローチを示す。腫瘍特異的なかつ/または過剰発現されている表面抗原を利用して、ADCは、非常に強力な細胞傷害剤の腫瘍細胞への送達に焦点を当てて設計される。このアプローチは、かかる薬剤に対して、遊離薬物としてのそれらの投与によって達成され得るものよりも好ましい治療濃度域を作り出す可能性がある。
【0009】
抗有糸分裂薬のメイタンシンの誘導体であるメイタンシノイドは、ビンカアルカロイド薬と同様な方法で微小管に結合する(Issell BF et al(1978)Cancer Treat.Rev.5:199-207;Cabanillas F et al.(1979)Cancer Treat.Rep,63:507-9。DM1は、自然発生のエステルアンサミトシンP3に由来するチオール含有メイタンシノイドである(Remillard S,Rebhun LI,Howie GA,et al.(1975)Science 189(4207):1002-1005.3;Cassady JM,Chan KK,Floss HG.(2004)Chem Pharm Bull 52(1):1-26.4)。関連する植物エステルのメイタンシンは、化学療法剤として、およそ800人の患者に2.0mg/m2の用量で3週間毎に単回投与して、または3日間連続で投与して試験されている(Issell BF,Crooke ST.(1978)Maytansine.Cancer Treat Rev 5:199-207)。前臨床的活性にもかかわらず、臨床現場におけるメイタンシンの活性は、安全に送達され得る用量では適度なものであった。用量制限毒性(DLT)は、吐き気、嘔吐、及び下痢(多くの場合、便秘が続く)からなる胃腸関連のものであった。これらの毒性は、用量依存性であり、スケジュール依存性ではなかった。末梢神経障害(主として感覚)が報告されており、既存の神経障害を有する患者において最も明白であった。肝トランスアミナーゼ、アルカリホスファターゼ、及び総ビリルビンの潜在性一過性評価が報告されている。衰弱、無気力、神経不安、及び不眠症を含む全身毒性は一般的であった。あまり一般的ではない毒性には、注入-部位の静脈炎及び軽度の骨髄抑制が含まれた。狭い治療濃度域のために、1980年代にはさらなる薬物の開発が断念された。
【0010】
HER2-陽性乳癌の治療のための新規の抗体-薬物複合体(ADC)である、トラスツズマブ-MCC-DM1(T-DM1、トラスツズマブエムタンシン、アド-トラスツズマブエムタンシン、KADCYLA(登録商標))は、MCCリンカーを介してリシン側鎖においてトラスツズマブに結合された細胞傷害性薬剤DM1(チオール-含有メイタンシノイド抗-微小管剤)で構成され、約3.5の平均薬物負荷(薬物対抗体比)を有する。腫瘍細胞上で発現したHER2に結合した後、T-DM1は、受容体-媒介性内部移行を経て、DM1を含有する細胞傷害性カタボライトの細胞内放出、及びその後細胞死がもたらされる。
【0011】
T-DM1(TDM3569g)の第I相試験において、IV注入により3週間毎(q3w)に投与されたT-DM1の最大耐量(MTD)は3.6mg/kgであった。DLT(用量制限毒性)は、4.8mg/kgで治療された患者における一過性血小板減少症からなった。3.6mg/kgでq3wによる治療は、忍容性が良好であり、重要な臨床活性に関連した(Krop(2010)J.Clin.Oncol.28(16):2698-2704)。この同じ試験は、2.4mg/kgによる毎週投与もまた、忍容性が良好であり、また抗腫瘍活性を有することも示したBeeram(2012)Cancer 118(23):5733-5740)。
【0012】
第II相試験(TDM4374g)は、3.6mg/kgにてq3wで投与されたT-DM1が、治療前歴が多い、HER2陽性転移性乳癌を有する患者集団において単一薬剤の抗腫瘍活性を有することを立証した(Krop(2012)30(26):3234-3241)。第III相試験(TDM4370g、「EMILIA」)は、トラスツズマブ及びタキサンで以前に治療された、HER2陽性進行性乳癌(二次及び三次治療の転移性乳癌)を有する患者において、3.6mg/kgでq3wにて投与されたT-DM1が、ラパチニブとカペシタビンの併用による治療と比べて、少ない毒性で、無進行生存期間及び全生存期間を著しく延長させることを立証した(Verma(2012)New England Journal of Medicine 367:1783-1791)。
【0013】
米国食品医薬品局は、2013年2月22日、トラスツズマブ及びタキサンによる治療歴のあるHER2陽性転移性乳癌患者の治療のために、商品名KADCYLA(登録商標)で市販されるアドトラスツズマブエムタンシンを承認した。
【0014】
ペルツズマブ(組換えヒト化モノクローナル抗体2C4、rhuMAb 2C4、PERJETA(登録商標)(Genentech,Inc、South San Francisco)としても知られる)は、HER二量体化阻害剤(HDI)として知られる薬剤の新たなクラスの筆頭であり、HER2が、他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3、及びHER4)との活性ヘテロ二量体またはホモ二量体を形成する能力を阻害するように機能する。例えば、Harari and Yarden Oncogene 19:6102-14(2000)、Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol 2:127-37(2001)、Sliwkowski Nat Struct Biol 10:158-9(2003)、Cho et al.Nature 421:756-60(2003)、及びMalik et al.Pro Am Soc Cancer Res 44:176-7(2003)を参照されたい。
【0015】
腫瘍細胞内のHER2-HER3ヘテロ二量体の形成がペルツズマブにより遮断されることがで、重大な細胞シグナル伝達が阻害され、腫瘍増殖が低下して生存がもたらされることが実証された(Agus et al.Cancer Cell 2:127-37(2002))。
【0016】
ペルツズマブに対して臨床現場において単一薬剤としての試験を行い、進行癌を有する患者において第Ia相臨床試験を、卵巣癌及び乳癌ならびに肺癌及び前立腺癌を有する患者において第II相臨床試験を行った。第I相試験では、標準治療中またはその後に進行した治療不能の局所進行性、再発性もしくは転移性固形腫瘍を有する患者が、ペルツズマブを3週間毎に静脈内投与することにより処置された。ペルツズマブは、忍容性が概ね良好であった。腫瘍退縮が、奏功に対して評価可能な20人の患者のうち3人で達成された。2人の患者では、部分奏功を確認した。2.5ヶ月を超えて継続する安定な疾患が、21人の患者のうち6人で観察された(Agus et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:192(2003))。2.0~15mg/kgの用量において、ペルツズマブの薬物動態は、線形であり、平均クリアランスは、2.69~3.74mL/日/kgの範囲であり、平均終末相排出半減期は、15.3~27.6日であった。ペルツズマブに対する抗体は検出されなかった(Allison et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:197(2003))。
【0017】
US2006/0034842は、ErbB発現癌を抗ErbB2抗体との併用で治療するための方法を記載している。US2008/0102069は、トラスツズマブ及びペルツズマブの、乳癌等のHER2陽性転移性癌の治療における使用を記載している。Baselga et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I,Col.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1004は、トラスツズマブによる治療、トラスツズマブ及びペルツズマブの併用による治療中に進行した、前治療されたHER2陽性乳癌を有する患者の治療を報告している。Portera et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I,Vol.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1028は、トラスツズマブによる治療、トラスツズマブベースの治療で進行性疾患を有した、HER2陽性乳癌患者におけるトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法の有効性及び安全性を評価した。著者らは、併用治療の有効性のさらなる評価が、この治療レジメンの全体的なリスク及び有益性を規定するために必要とされることを結論付けている。
【0018】
ペルツズマブは、第II相試験において、転移性疾患のためにトラスツズマブを以前に投与されたHER2陽性転移性乳癌を有する患者において、トラスツズマブと併せて評価された。国立癌研究所(NCl)によって行われた、ある試験は、以前に治療された、HER2陽性転移性乳癌を有する11名の患者を登録した。11人の患者のうちの2人は、部分奏功(PR)を示した(Baselga et al.,J Clin Oncol 2007 ASCO Annual Meeting Proceedings;25:18 S(June 20 Supplement):1004。CTRC-AACRサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)、2010年12月8~12日で提示された初期HER2陽性乳癌を有する女性におけるペルツズマブ及びトラスツズマブ+化学療法(ドセタキセル)の新規併用レジメンの効果を評価する第II相ネオアジュバント試験の結果は、手術に先立ってネオアジュバント療法で投与された2つのHER2抗体+ドセタキセルが、トラスツズマブ+ドセタキセル(29.0パーセントのpCR)と比べて、乳房における完全腫瘍消失速度を、半分を超えるまで有意に改善したことを示した(45.8パーセントの病理学的完全奏功、pCR)、p=0.014。
【0019】
商品名PERJETA(登録商標)で市販されるペルツズマブは、2012年、進行性または末期(転移性)HER2陽性乳癌を有する患者の治療のために承認された。HER2陽性乳癌では、癌細胞成長及び生存に寄与するHER2タンパク質の量が増加している。
【0020】
2013年9月30日に、米国食品医薬品局は、早期乳癌(EBC)を有する患者のための、手術前(ネオアジュバント療法)の完全治療レジメンの一部として、PERJETA(登録商標)(ペルツズマブ)に対して迅速承認を付与した。PERJETA(登録商標)は、乳癌のネオアジュバント治療のための最初のFDA承認薬である。
【0021】
HER2抗体に関する特許公報には、米国特許第5,677,171号;同第5,720,937号;同第5,720,954号;同第5,725,856号;同第5,770,195号;同第5,772,997号;同第6,165,464号;同第6,387,371号;同第6,399,063号;同第6,015,567号;同第6,333,169号;同第4,968,603号;同第5,821,337号;同第6,054,297号;同第6,407,213号;同第6,639,055号;6,719,971号;同第6,800,738号;同第8,075,890号;同第5,648,237号;同第7,018,809号;同第6,267,958号;同第6,685,940号;同第6,821,515号;同第7,060,268号;同第7,682,609号;同第7,371,376号;同第6,127,526号;同第6,333,398号;同第6,797,814号;同第6,339,142号;同第6,417,335号;同第6,489,447号;同第7,074,404号;同第7,531,645号;同第7,846,441号;同第7,892,549号;同第8,075,892号;同第6,573,043号;同第6,905,830号;同第7,129,051号;同第7,344,840号;同第7,468,252号;同第7,674,589号;同第7,919,254号;同第6,949,245号;同第7,485,302号;同第7,498,030号;同第7,501,122号;同第7,537,931号;同第7,618,631号;同第7,862,817号;同第7,041,292号;同第6,627,196号;同第7,371,379号;同第6,632,979号;同第7,097,840号;同第7,575,748号;同第6,984,494号;同第7,279,287号;同第7,811,773号;同第7,993,834号;同第8,076,066号;同第8,044,017号;同第7,435,797号;同第7,850,966号;同第7,485,704;同第7,807,799;同第8,142,784;同第7,560,111号;同第7,879,325号;同第8,241,630号;同第7,449,184号;同第8,163,287号;同第7,700,299号;同第7,981,418号;同第8,247,397号;及びUS2010/0016556;US2005/0244929;US2001/0014326;US2003/0202972;US2006/0099201;US2010/0158899;US2011/0236383;US2011/0033460;US2008/0286280;US2005/0063972;US2006/0182739;US2009/0220492;US2003/0147884;US2004/0037823;US2005/0002928;US2007/0292419;US2008/0187533;US2011/0250194;US2012/0034213;US2003/0152987;US2005/0100944;US2006/0183150;US2008/0050748;US2009/0155803;US2010/0120053;US2005/0244417;US2007/0026001;US2008/0160026;US2008/0241146;US2005/0208043;US2005/0238640;US2006/0034842;US2006/0073143;US2006/0193854;US2006/0198843;US2011/0129464;US2007/0184055;US2007/0269429;US2008/0050373;US2006/0083739;US2009/0087432;US2006/0210561;US2002/0035736;US2002/0001587;US2008/0226659;US2002/0090662;US2006/0046270;US2008/0108096;US2007/0166753;US2008/0112958;US2009/0239236;US2012/0034609;US2012/0093838;US2004/0082047;US2012/0065381;US2009/0187007;US2011/0159014;US2004/0106161;US2011/0117096;US2004/0258685;US2009/0148402;US2009/0099344;US2006/0034840;US2011/0064737;US2005/0276812;US2008/0171040;US2009/0202536;US2006/0013819;US2012/0107391;US2006/0018899;US2009/0285837;US2011/0117097;US2006/0088523;US2010/0015157;US2006/0121044;US2008/0317753;US2006/0165702;US2009/0081223;US2006/0188509;US2009/0155259;US2011/0165157;US2006/0204505;US2006/0212956;US2006/0275305;US2012/0003217;US2007/0009976;US2007/0020261;US2007/0037228;US2010/0112603;US2006/0067930;US2007/0224203;US2011/0064736;US2008/0038271;US2008/0050385;US2010/0285010;US2011/0223159;US2008/0102069;US2010/0008975;US2011/0245103;US2011/0246399;US2011/0027190;US2010/0298156;US2011/0151454;US2011/0223619;US2012/0107302;US2009/0098135;US2009/0148435;US2009/0202546;US2009/0226455;US2009/0317387;US2011/0044977;US2012/0121586が挙げられる。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、HER2陽性進行性もしくは再発性の局所進行性の、または未治療の転移性乳癌(一次治療における転移性乳癌)の治療のために、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体を使用する方法であって、患者が、タキサンによる前治療を受けている、方法に関する。アジュバント、ネオアジュバント及び転移性乳癌療法においてHER2陽性癌患者に対する治療選択肢が存在するが、「一次治療」における転移性乳癌療法を含む、すなわち、未治療の転移性乳癌を有する患者、または局所進行性乳癌を有する患者のためのさらなる選択肢が必要とされる。
【0023】
本発明は、トラスツズマブ-MCC-DM1が、一次治療において転移性HER2陽性乳癌を有する患者であって、タキサンによる前治療を受けている患者の治療で、以前にタキサンを受けていなかった患者と比べて予想外に有効であったとの観察に一部基づいている。
【0024】
一態様では、本発明は、HER2陽性局所進行性のまたは未治療の転移性乳癌の治療方法であって、抗HER2-メイタンシノイド複合体の治療有効量を、該乳癌を有する患者に投与することを含み、患者が、タキサンによる前治療を受けている、方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、抗HER2-メイタンシノイド複合体の治療有効量の、対象におけるHER2陽性の局所進行性のまたは未治療の転移性乳癌の治療のための医薬品の製造における使用であって、この対象が、タキサンによる前治療を受けている、使用を提供する。
【0026】
ある特定の実施形態では、投与は、タキサンによる前治療から6ヶ月以上経過した後に行われる。いくつかの実施形態では、患者は、タキサンによる前治療及び少なくとも1つのHER2標的療法を受けている。一実施形態では、患者は、タキサン及びトラスツズマブによる前治療を受けている。別の実施形態では、患者は、タキサン、トラスツズマブ、及びペルツズマブによる前治療を受けている。いくつかの実施形態では、前治療は、アジュバント療法で施されている。さらに他の実施形態では、前治療は、ネオアジュバント療法で施されている。
【0027】
ある特定の他の態様では、本発明は、HER2陽性局所進行性の、または未治療の転移性乳癌の治療方法であって、(1)患者がタキサンによる前治療を受けているかどうかを判定することと、(2)患者がタキサンによる前治療を受けていた場合、抗HER2-メイタンシノイド複合体の治療有効量を、該乳癌を有する患者に投与することとを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、投与は、タキサンによる前治療から6ヶ月以上経過した後に行われる。いくつかの実施形態では、患者は、タキサンによる前治療及び少なくとも1つのHER2標的療法を受けている。一実施形態では、患者は、タキサン及びトラスツズマブによる前治療を受けている。別の実施形態では、患者は、タキサン、トラスツズマブ、及びペルツズマブによる前治療を受けている。一実施形態では、前治療は、アジュバント療法で施されている。他の実施形態では、前治療は、ネオアジュバント療法で施されている。
【0028】
上記態様のある特定の実施形態では、タキサンはパクリタキセルである。いくつかの実施形態では、パクリタキセルは、80mg/m2にて毎週静脈内投与されていた。ある特定の実施形態では、パクリタキセルは、最短で18週間投与されていた。
【0029】
他の実施形態では、タキサンはドセタキセルである。いくつかの実施形態では、ドセタキセルは、75mg/m2または100mg/m2にて3週間毎に静脈内投与されていた。ある特定の実施形態では、ドセタキセルは、最短で6サイクルの間投与されていた。
【0030】
患者がタキサン及びトラスツズマブによる前治療を受けていた実施形態、及び一実施形態では、トラスツズマブは、サイクル1で8mg/kgで、続いて後続のサイクルで6mg/kgで3週間毎に静脈内投与されてもよいか、または静脈内投与されていた。別の実施形態では、トラスツズマブは、サイクル1の1日目に4mg/kgで、続いてサイクル1の8日目から毎週2mg/kgで静脈内投与されていた。
【0031】
患者がタキサン、トラスツズマブ及びペルツズマブによる前治療を受けていた実施形態、及び一実施形態では、ペルツズマブは、サイクル1の1日目に840mg/kgで、続いて後続のサイクルで420mgで3週間毎に静脈内投与されてもよいか、または静脈内投与されていた。
【0032】
全ての実施形態では、抗HER2メイタンシノイド複合体は、トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体であってもよい。ある特定の実施形態では、トラスツズマブ-メイタンシノイド複合体は、トラスツズマブ-DM1複合体である。ある特定の実施形態では、トラスツズマブ-DM1複合体は、トラスツズマブ-MCC-DM1複合体である。いくつかの実施形態では、前記トラスツズマブ-MCC-DM1は、3.6mg/kgで3週間毎に投与される。他の実施形態では、トラスツズマブ-MCC-DM1は、2.4mg/kgで毎週投与される。
【0033】
本発明のある特定の実施形態では、乳癌は、未治療の転移性乳癌である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】HER2タンパク質構造の概略図、及びその細胞外ドメインのドメインI~IVについてのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1~4)を提供する。
図2A図2A及び2Bは、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V)(図2A)及び可変重鎖(V)(図2B)ドメイン(それぞれ、配列番号5及び6);変異体574/ペルツズマブのV及びVドメイン(それぞれ、配列番号7及び8)、ならびにヒトV及びVコンセンサスフレームワーク(hum id、軽鎖カッパサブグループI;humIII、重鎖サブグループIII)(それぞれ、配列番号9及び10)のアミノ酸配列のアライメントを描写する。星印は、ペルツズマブ及びモノクローナル抗体2C4の可変ドメイン間の差異、またペルツズマブ及びヒトフレームワークの可変ドメイン間の差異を特定している。相補性決定領域(CDR)は、括弧内に示されている。
図2B図2A及び2Bは、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V)(図2A)及び可変重鎖(V)(図2B)ドメイン(それぞれ、配列番号5及び6);変異体574/ペルツズマブのV及びVドメイン(それぞれ、配列番号7及び8)、ならびにヒトV及びVコンセンサスフレームワーク(hum id、軽鎖カッパサブグループI;humIII、重鎖サブグループIII)(それぞれ、配列番号9及び10)のアミノ酸配列のアライメントを描写する。星印は、ペルツズマブ及びモノクローナル抗体2C4の可変ドメイン間の差異、またペルツズマブ及びヒトフレームワークの可変ドメイン間の差異を特定している。相補性決定領域(CDR)は、括弧内に示されている。
図3A図3A及び3Bは、ペルツズマブ軽鎖(図3A;配列番号11)及び重鎖(図3B;配列番号12)のアミノ酸配列を示す。CDRは、太字で示されている。軽鎖及び重鎖の計算された分子質量は、23,526.22Da及び49,216.56Daである(還元型のシステイン)。炭水化物部分は、重鎖のAsn299に結合されている。
図3B図3A及び3Bは、ペルツズマブ軽鎖(図3A;配列番号11)及び重鎖(図3B;配列番号12)のアミノ酸配列を示す。CDRは、太字で示されている。軽鎖及び重鎖の計算された分子質量は、23,526.22Da及び49,216.56Daである(還元型のシステイン)。炭水化物部分は、重鎖のAsn299に結合されている。
図4A図4A及び4Bは、トラスツズマブ軽鎖(図4A;配列番号13)及び重鎖(図4B;配列番号14)のアミノ酸配列をそれぞれ示す。可変軽鎖及び可変重鎖ドメインの境界線は、矢印で示されている。
図4B図4A及び4Bは、トラスツズマブ軽鎖(図4A;配列番号13)及び重鎖(図4B;配列番号14)のアミノ酸配列をそれぞれ示す。可変軽鎖及び可変重鎖ドメインの境界線は、矢印で示されている。
図5A図5A及び5Bは、変異体ペルツズマブ軽鎖配列(図5A;配列番号15)及び変異体ペルツズマブ重鎖配列(図5B;配列番号16)をそれぞれ描写する。
図5B図5A及び5Bは、変異体ペルツズマブ軽鎖配列(図5A;配列番号15)及び変異体ペルツズマブ重鎖配列(図5B;配列番号16)をそれぞれ描写する。
図6】実施例1に記載されるMARIANNE臨床治験デザインのスキーマを描写する。局所進行性または再発性であり、治癒目的で切除を受けてはならないこと;ペルツズマブプラセボ。LD、負荷量。
図7】実施例1に記載されるMARIANNE臨床治験からの結果を示す。全般的に、T-DM1(KADCYLA(登録商標))は、標準治療のトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))+タキサン(HT)と比べて非劣性の無進行生存(PFS)を立証したが、これは、HTよりも優れているとは言えなかった。しかしながら、データ(影付きボックス)は、以前にタキサン療法を受けている患者に対しては、HTを超えるKADCYLA(登録商標)の優れた効果を示唆しており、このような患者では、局所的に進行性かつ一次治療における転移性Her2陽性乳癌に対して、KADCYLA(登録商標)よる治療が選択されるべきであることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
これより本発明のある特定の実施形態を詳細に参照するが、それらの例は、添付の構造及び式に例示されている。本発明は、列挙される実施形態と併せて説明されるが、それらは、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。反対に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る、全ての代替例、修正、及び均等物を網羅することを意図するものである。当業者であれば、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載されるものに類似または同等である多数の方法及び材料を理解するであろう。本発明は、決して記載される方法及び材料に限定されるものではない。
【0036】
本開示全体で引用される全ての参照文献は、参照によりそれら全体が本明細書に明示的に組み込まれる。組み込まれる文献、特許、及び同様の資料のうちの1つ以上が、本出願(定義される用語、用語の用法、記載される技法等を含むがそれらに限定されない)と異なるか、または矛盾する場合は、本出願が優先される。
【0037】
定義
用語「comprise、comprising、include、including及びincludes(含む)」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、述べられた特徴、整数、成分、または工程の存在を特定することを意図しているが、その他の特徴、整数、成分、工程またはそのグループの1つ以上の存在または追加を排除しない。
【0038】
用語「治療する」及び「治療」は、治療処置及び/または予防または防止対策の両方を意味し、その目的は、例えば、癌等の超増殖性病態の増殖、進行または拡散等の望ましくない生理学的変化または障害を防止もしくはスローダウン(軽減)することである。本発明では、有益または所望の臨床結果としては、検出できるか検出できないかに関係なく、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の緩和または一時的緩和、及び寛解(部分的もしくは完全なもの)が挙げられるがこれらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予測生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。治療が必要なものには、病態もしくは障害を既に有するもの、ならびに病態もしくは障害を有する傾向にあるもの、または病態もしくは障害を予防する必要があるものが挙げられる。
【0039】
用語「癌」及び「癌性」は、一般的に無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すかまたは説明する。「腫瘍」は1つ以上の癌細胞を含む。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ系の悪性病変が挙げられるがこれらに限定されない。当該癌のより具体的な例として、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、ならびに頭頸部癌が挙げられる。
【0040】
「0期」、「I期」、「II期」、「III期」、または「IV期」、及びこの分類内の様々な亜期の腫瘍または癌への言及は、当該技術分野において既知の全ステージグループ分けまたはローマ数字ステージング方法を使用する腫瘍または癌の分類を示す。一般に癌の実際の病期は癌の種類によって決定されるが、0期癌は上皮病変であり、I期癌は、小さい局在化腫瘍であり、II期及びIII期癌は、局所リンパ節の関与を示す局所進行腫瘍であり、IV期癌は、転移性癌を表す。各種の腫瘍に特定の病期は、熟練した臨床医に既知である。
【0041】
「転移性乳癌」という用語は、癌細胞が、血管またはリンパ腺によって元の部位から体内の1つ以上の他の部位に伝播し、乳房以外の1つ以上の臓器内で1つ以上の二次腫瘍を形成する乳癌の状態を意味する。
【0042】
「一次治療」における転移性乳癌または「未治療の」転移性乳癌という用語は、転移性乳癌療法(metastatic setting)において治療を受けていない転移性乳癌を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「局所進行」乳癌という用語は、進行性または再発性の局所進行性乳癌を指す。
【0044】
タキサンに関連する「前治療」という用語は、一次治療における転移性または局所進行性乳癌の治療の前に行われている治療を指す。例えば、「前治療」は、一次治療における転移性または局所進行性乳癌の治療より前のネオアジュバント、アジュバントまたは他の療法における治療を指してもよい。
【0045】
「進行」癌は、局所浸潤または転移のいずれかによって元の部位または臓器の外側に拡散しているものである。したがって、「進行」癌という用語は、局所的に進行した疾患及び転移性疾患の両方を含む。
【0046】
「難治性」癌は、化学療法等の抗腫瘍剤が癌患者に投与されても進行するものである。難治性癌の例は、プラチナ不応性のものである。
【0047】
「再発」癌は、手術等の初期療法への応答後に、初期部位または遠位部位のいずれかにおいて再成長したものである。
【0048】
「局所的再発性」癌は、治療後に以前に治療された癌と同じ場所で再発する癌である。
【0049】
「手術可能な」または「切除可能な」癌は、主要臓器に限定され、手術(切除)に適した癌である。
【0050】
「non-resectable(切除不可能な)」または「unresectable(切除不可能な)」癌は、手術によって除去(切除)することができない。
【0051】
「HER2陽性」癌は、正常レベルよりも高いHER2を有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。任意に、HER2陽性癌は、2+もしくは3+の免疫組織化学(IHC)スコア、及び/または2.0以上のin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅率を有する。
【0052】
本明細書では、「患者」または「対象」は、ヒト患者である。患者は「癌患者」、すなわち、癌、特に胃癌または乳癌の1つ以上の症状を罹患しているか、または罹患する危険性がある者であり得る。
【0053】
「患者集団」は、癌患者の群を指す。そのような集団を使用して、ペルツズマブ等の薬物の統計的に有意な有効性及び/または安全性を実証することができる。
【0054】
「再発」患者は、寛解後に癌の徴候または症状を有する者である。任意に、患者は、アジュバントまたはネオアジュバント療法後に再発した。
【0055】
「HER発現、増幅、または活性化を示す」癌または生体試料は、診断試験において、HER受容体を発現する(過剰発現を含む)、HER遺伝子が増幅する、かつ/またはさもなければHER受容体の活性化もしくはホスホリル化を実証するものである。
【0056】
「ネオアジュバント療法」または「術前療法」は、本明細書において、手術前に行われる療法を指す。ネオアジュバント療法の目標は、即時の全身治療を提供することであり、潜在的に、手術、それに続く全身療法の標準シーケンスに従った場合にさもなければ増殖することになる微小転移を根絶する。ネオアジュバント療法はまた、腫瘍サイズを低減し、それにより最初に切除不可能であった腫瘍を完全に切除するか、または臓器及びその機能の一部を保存するのに役立つ場合がある。さらに、ネオアジュバント療法は、薬効のin vivo評価を可能にし、これによって後続の治療の選択が導かれ得る。
【0057】
「アジュバント療法」は、本明細書において、疾患再発の危険性を低減するために、残留疾患の証拠を検出することができない根治手術後に行われる療法を指す。アジュバント療法の目標は、癌の再発を防止すること、したがって癌関連死の可能性を低減することである。アジュバント療法は、本明細書において、ネオアジュバント療法を具体的に除外する。
【0058】
「生存(率)」は、患者が依然として生存していることを指し、無病生存(DFS)、無進行生存(PFS)、及び全生存(OS)を含む。生存率は、カプラン-マイヤー方法によって推定することができ、生存率のいかなる相違も、層別ログランク検定を使用して計算される。
【0059】
「無進行生存」(PFS)は、治療の初日から、どちらが最初に起こるかに関わらず、記録された疾患進行(単離されたCNS進行を含む)または試験上のあらゆる原因による死亡までの期間である。
【0060】
「無病生存(DFS)」は、癌を再起することなく、治療の開始から、または最初の診断から例えば、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年の定義された期間にわたってなおも患者が生存していることを指す。本発明の一態様において、DFSは、治療企図(intent-to-treat)の原則に従って解析される。すなわち、患者は、割り付けられた療法に基づいて評価される。DFSの解析で使用される事象は、癌の局所的再発、局所再発、及び遠隔再発、二次癌の発生、及び先行事象(例えば、乳癌再発または第2の原発癌)のない患者の任意の原因による死亡を含み得る。
【0061】
「全生存」は、患者が、治療の開始から、または最初の診断から約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年等の定義された期間にわたってもなお生存していることを指す。本発明の根拠をなす試験において、生存分析に使用される事象は、任意の原因による死亡であった。
【0062】
「生存を延長させる」とは、未治療の患者と比較して、または対照治療治験実施計画書と比較して、治療された患者におけるDFS及び/またはOSを増加させることを意味する。生存は、治療の開始の後、または最初の診断の後、少なくとも約6ヶ月、または少なくとも約1年、または少なくとも約2年、または少なくとも約3年、または少なくとも約4年、または少なくとも約5年、または少なくとも約10年等にわたって監視される。
【0063】
生存分析における「ハザード比」は、2つの生存曲線間の差の要約であり、追跡期間にわたる、対照と比較した治療の際の死亡のリスクの低下を表す。ハザード比は、事象率についての統計的定義である。本発明では、ハザード比は、任意の特定の時点での、対照群における事象の確率で除算された実験群における事象の確率を表すものと定義される。
【0064】
「単剤療法」とは、一連の治療期間中の、癌または腫瘍の治療のための単一治療剤のみを含む治療レジメンを意味する。
【0065】
「維持療法」とは、疾患の再発または進行の可能性を低減するために行われる治療レジメンを意味する。維持療法は、対象の寿命までの長期間を含む、任意の期間にわたって提供され得る。維持療法は、初期療法後に提供されるか、または初期療法もしくは追加療法と併せて提供され得る。維持療法に使用される投薬量は異なる場合があり、他の種類の療法に使用される投薬量と比較して低減した投薬量を含み得る。
【0066】
「根治手術」は、その用語が医学コミュニティ内で使用されるように使用される。根治手術としては、例えば、腫瘍の除去または切除をもたらす手順、手術、またはさもなければ、腫瘍の除去または切除をもたらすもの、例えば、全ての肉眼視可能な腫瘍の除去または切除をもたらすものを含む。根治手術としては、例えば、腫瘍の完全もしくは治癒的切除、または肉眼的完全切除が挙げられる。根治手術は、1つ以上の段階で起こる手順を含み、例えば、腫瘍の切除前に1つ以上の手術または他の手順が行われる複数段階の手術手順を含む。根治手術は、関与する臓器、臓器及び組織の一部、ならびに周囲臓器、例えば、リンパ節、臓器の一部、または組織を含む腫瘍を除去する、または切除する手順を含む。
【0067】
本明細書で定義される場合、「トラスツズマブ」、「HERCEPTIN(登録商標)」、及び「huMAb4D5-8」という用語は、互換的に使用される。かかる抗体は、好ましくは、図4A(配列番号13)及び図4B(配列番号14)に、それぞれ示された軽鎖アミノ酸配列及び重鎖アミノ酸配列を含む。
【0068】
「エピトープ4D5」または「4D5エピトープ」または「4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近くにあり、HER2のドメインIV内にある。4D5エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and david Lane(1988)に記載されるもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイを行うことができる。代替として、エピトープマッピングを行い、抗体がHER2の4D5エピトープ(例えば、HER2を含む約残基529~約残基625に由来する領域内の任意の1つ以上の残基)に結合するかどうかを評価することができる。
【0069】
「エピトープ2C4」または「2C4エピトープ」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and david Lane(1988)に記載されるもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイを行うことができる。代替として、エピトープマッピングを行い、抗体がHER2の2C4エピトープに結合するかどうかを評価することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン内のドメインIIからの残基を含む。2C4抗体及びペルツズマブは、ドメインI、II、及びIIIの接合部でHER2の細胞外ドメインに結合する(Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004))。
【0070】
本明細書では、「ペルツズマブ」、「PERJETA(登録商標)」、及び「rhuMAb 2C4」は、互換的に使用される。かかる抗体は、好ましくは、配列番号7及び配列番号8のそれぞれの軽鎖アミノ酸配列及び重鎖アミノ酸配列を含む。ペルツズマブが完全な抗体であるとき、これは好ましくは、IgG1抗体を含み、一実施形態では、配列番号11または15の軽鎖アミノ酸配列と、配列番号12または16の重鎖アミノ酸配列とを含む。抗体は、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって任意に産生される。
【0071】
本明細書で定義されるように、「T-DM1」、「トラスツズマブ-MCC-DM1」、「アド-トラスツズマブエムタンシン」、「トラスツズマブエムタンシン」、及び「KADCYLA(登録商標)」という用語は、互換的に使用され、リンカー部分MCCによってメイタンシノイド薬物部分DM1に結合されたトラスツズマブを指し、1、2、3、4、5、6、7、及び8つの薬物部分が抗体トラスツズマブに共有結合される、様々に負荷及び結合された抗体-薬物複合体の全ての混合物を含む(US7097840、US2005/0276812、US2005/0166993)。
【0072】
本明細書では、「抗腫瘍剤」とは、癌を治療するために使用される薬物を指す。抗腫瘍剤の非限定的な例には、化学療法剤、HER二量体化阻害薬、HER抗体、腫瘍関連抗原を対象とする抗体、抗ホルモン化合物、サイトカイン、EGFR標的化薬物、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害薬、増殖阻害剤及び抗体、細胞傷害剤、アポトーシスを誘導する抗体、COX阻害薬、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、癌胎児タンパク質CA 125に結合する抗体、HER2ワクチン、Rafもしくはras阻害薬、リポソームドキソルビシン、トポテカン、タキサン、二重チロシンキナーゼ阻害薬、TLK286、EMD-7200、ペルツズマブ、トラスツズマブ、エルロチニブ、ならびにベバシズマブが挙げられる。
【0073】
「化学療法」は、癌の治療に有用な化学療法剤の使用である。
【0074】
「化学療法剤」は、作用機序に関わらず、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤のクラスとしては、アルキル化剤、抗代謝剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、及びキナーゼ阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi-Aventis)、5-FU(フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、CAS番号51-21-8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD-0325901(CAS番号391210-10-9、Pfizer)、シスプラチン(シス-ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663-27-1)、カルボプラチン(CAS番号41575-94-4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、テモゾロミド(4-メチル-5-オキソ-2,3,4,6,8-ペンタザビシクロ[4.3.0]ノナ-2,7,9-トリエン-9-カルボキサミド、CAS番号85622-93-1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブタ-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、及びドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti-1/2、HPPD、ならびにラパマイシンが挙げられる。
【0075】
化学療法剤のさらなる例には、オキサリプラチン(oxaliplatin)(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(bortezomib)(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(sutent)(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(letrozole)(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(imatinib mesylate)(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL-518(MEK阻害薬、Exelixis、WO2007/044515)、ARRY-886(Mek阻害薬、AZD6244、Array BioPharma,Astra Zeneca)、SF-1126(PI3K阻害薬、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ-235(PI3K阻害薬、Novartis)、XL-147(PI3K阻害薬、Exelixis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、フルベストラント(fulvestrant)(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(leucovorin)(フォーリン酸(folinic acid))、ラパマイシン(rapamycin)(シロリムス(sirolimus)、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(lapatinib)(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(lonafarnib) (SARASAR(商標)、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(sorafenib)(NEXAVAR(登録商標)、BAY43-9006、Bayer Labs)、ソゲフィチニブ(gefitinib)(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(irinotecan)(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT-11、Pfizer)、チピファルニブ(tipifarnib)(ZARNESTRA(商標)、Johnson & Johnson)、ABRAXANE(商標)(Cremophorを含まない)、パクリタキセル(paclitaxel)のアルブミン-光学処理ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Il)、バンデタニブ(vandetanib)(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル(chloranmbucil)、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、テムシロリムス(temsirolimus)(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(pazopanib)(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(canfosfamide)(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパ(thiotepa)及びシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));アルキルスルホネート類、例えばブスルファン(busulfan)、イムプロスルファン(improsulfan)及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン類、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボクオン(carboquone)、メチュレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa);下記を含むエチレンイミン類ならびにメチラメラミン(methylamelamine)類:アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミン(trimethylomelamine);アセトゲニン(acetogenin)類(特に、ブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(camptothecin)(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン(bryostatin);カリスタチン(callystatin);CC-1065(それのアドゾレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びビゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)類(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8を含む);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチイン(sarcodictyin)類;スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード類、例えばクロラムブシル(chlorambucil)、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード(uracil mustard);ニトロソ尿素類、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、及びラニムヌスチン(ranimnustine);抗生物質、例えばエネジイン(enediyne)系抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、カリケアマイシンガンマ1I、カリケアマイシンオメガI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183-186);ダイネマイシン(dynemicin)、ダイネマイシンA;ビスホスホネート類、例えばクロドロネート(clodronate);エスペラマイシン(esperamicin)類;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素タンパク質エネジイン系抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)類、アクチノマイシン(actinomycin)、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycin)類、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類(chromomycinis)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、モルホリノ-ドキソルビシン(doxorubicin)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ネモルビシン(nemorubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycin)類、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycin)類、ペプロマイシン(peplomycin)、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、クエラマイシn(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルサイジン(tubercidin)、ウベニメックス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗薬、例えばメトトレキセート(methotrexate)及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine);ピリミジン類似体、例えばアンシタビン(ancitabine)、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロクスウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone);抗アドレナール類、例えばアミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane);葉酸再貯留薬(replenisher)、例えば葉酸;アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デモコルシン(demecolcine);ジアジクオン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone)類;エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン(lentinan);ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocin)類;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダンモル(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメト(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン(procarbazine);PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジクオン(triaziquone);2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecene)類(特に、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、
ロリジン(roridin)A及びアンギジン(anguidine));ウレタン(urethan);ビンデシン(vindesine);デカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ(thiotepa);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート(methotrexate);白金類似体、例えばシスプラチン(cisplatin)及びカルボプラチン(carboplatin);ビンブラスチン(vinblastine);エトポシド(etoposide)(VP-16);イホスファミド(ifosfamide);ミトキサントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン(vincristine);ビノレルビン(vinorelbine)(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);エダトレキセート(edatrexate);ダウノマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標)、Roche)イバンドロネート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼ阻害薬RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド類、例えばレチノイン酸;ならびに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩類、酸、及び誘導体が挙げられる。
【0076】
「治療有効量」という用語は、患者における癌を治療するのに有効な薬物の量を指す。薬物の有効量は、癌細胞の数の低減;腫瘍サイズの縮小;癌細胞が末梢器官に浸潤することの阻害(すなわち、ある程度の遅延及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;ならびに/または癌に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和を行うことができる。薬物が既存の癌細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。有効量によって、無進行生存率が上昇し(例えば、固体腫瘍の奏功評価基準(RECIST)もしくはCA-125変化によって測定される)、客観的奏功がもたらされ(部分奏功(PR)もしくは完全奏功(CR))、全生存が延長し、かつ/または癌の1つ以上の症状が改善される(例えば、FOSIによって評価される)。「有効量」という用語は、具体的には、実施例1に記載される臨床治験の主要評価項目または副次的評価項目のいずれかを達成するために適した量を含む。
【0077】
「タキサン」は、有糸分裂を阻害し、かつ微小管を妨害する化学療法である。タキサンの例としては、パクリタキセル(TAXOL(登録商標);Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.L.);パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルのクレモフォアを含まないアルブミン遺伝子操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標);American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois);及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標);Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)が挙げられる。
【0078】
「アントラサイクリン」は、真菌のストレプトコッカス・ペウセティウス(Streptococcus peucetius)に由来する抗生物質の一種であり、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びエピルビシン等が挙げられる。
【0079】
「アントラサイクリンベースの化学療法」とは、1つ以上のアントラサイクリンからなるか、または含む化学療法レジメンを指す。例としては、5-FU、エピルビシン、及びシクロホスファミド(FEC);5-FU、ドキソルビシン、及びシクロホスファミド(FAC);ドキソルビシン及びシクロホスファミド(AC);エピルビシン及びシクロホスファミド(EC)等が挙げられる。
【0080】
本明細書では、「カルボプラスチンベースの化学療法」とは、1つ以上のカルボプラスチンからなるか、またはそれを含む化学療法レジメンを指す。例は、TCH(ドセタキセル/TAXOL(登録商標)、カルボプラスチン、及びトラスツズマブ/HERCEPTIN(登録商標))である。
【0081】
「アロマターゼ阻害薬」は、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害薬の例には、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが挙げられる。一実施形態では、本明細書のアロマターゼ阻害薬は、レトロゾールまたはアナストロゾールである。
【0082】
「代謝拮抗薬化学療法」は、代謝産物と構造的に類似しているが、体内では生産的な方法では使用され得ない薬剤の使用である。多くの代謝拮抗薬化学療法剤は、核酸、RNA及びDNAの産生を妨害する。代謝拮抗薬化学療法剤の例には、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(XELODA(商標))、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、6-チオグアニン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アラビノシルシトシンARA-Cシタラビン(CYTOSAR-U(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-DOME(登録商標))、アザシトシン、デオキシシトシン、ピリドミデン(pyridmidene)、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、クラドラビン、2-デオキシ-D-グルコース等が挙げられる。
【0083】
癌が「化学療法耐性」であるとは、化学療法レジメンを受けながら患者の癌が進行したこと(すなわち、患者が「化学療法不応性」である)、または患者の癌が化学療法レジメンの完了後12ヶ月以内(例えば、6ヶ月以内)に進行したことを意味する。
【0084】
「プラチン」という用語は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンが挙げられるがこれらに限定されない、プラチナベースの化学療法を指す。
【0085】
「フルオロピリミジン」という用語は、カペシタビン、フロキシウリジン、及びフルオロウラシル(5-FU)が挙げられるがこれらに限定されない、代謝拮抗薬化学療法を指す。
【0086】
本明細書における治療剤の「固定」または「一定」用量は、患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関係なくヒト患者に投与される用量を指す。したがって、この固定用量または一定用量は、mg/kg用量またはmg/m用量として提供されないが、むしろ治療剤の絶対量として提供される。
【0087】
本明細書における「負荷」用量または「LD」は一般に、患者に投与される治療剤の初期用量を含み、その1つ以上の維持用量(複数可)が続く。一般に、単一負荷用量が投与されるが、本明細書において複数の負荷用量が企図される。通常、維持用量(複数可)で達成され得るより早く治療剤の所望の安定状態濃度を達成するように、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超え、かつ/または負荷用量(複数可)は、維持用量(複数可)より頻繁に投与される。
【0088】
本明細書における「維持」用量は、治療期間にわたって患者に投与される治療剤の1つ以上の用量を指す。通常、維持用量は、ほぼ毎週、約2週間毎、約3週間毎、または約4週間毎の治療間隔で投与されるが、3週間毎等の治療間隔で投与されることが好ましい。
【0089】
「点滴」または「点滴する」は、治療と目的として、静脈から体内に薬物含有溶液を導入することを指す。一般に、これは、静脈注射用(IV)バッグを介して達成される。
【0090】
「静脈注射用バッグ」または「IVバッグ」は、患者の静脈を介して投与され得る溶液を保持することができるバッグである。一実施形態において、溶液は、生理食塩液である(例えば、約0.9%または約0.45%のNaCl)。任意に、IVバッグは、ポリオレフィンまたはポリ塩化ビニルから形成される。
【0091】
「共投与」とは、2つ以上の薬物の連続点滴ではなく、同一投与中に2つ(以上)の薬物を静脈内投与することを意味する。一般に、これは、2つ(以上)の薬物を、その共投与前に同じIVバッグ内に合わせることを必要とする。
【0092】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同一治療サイクル中、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、任意に1つ以上の他の薬物と同時に投与される。例えば、3週間毎に行われる癌療法の場合、同時に投与される薬物はそれぞれ、3週間のサイクルの1日目に投与される。
【0093】
「心毒性」とは、心臓に影響を及ぼし、薬物投与または薬物併用投与に起因する任意の毒性副作用を指す。心毒性は、症候性左室収縮機能不全(LVSD)もしくはうっ血性心不全(CHF)の発生、または左室駆動分画(LVEF)の減少のうちのいずれか1つ以上に基づいて評価され得る。
【0094】
ペルツズマブを含む薬物の併用についての「心毒性を増加させることなく」というフレーズは、ペルツズマブ以外の薬物を併用して治療された患者で観察されるものと等しいか、またはそれより小さい(例えばトラスツズマブ及び化学療法剤、例えばドセタキセルの投与に起因するものと等しいか、またはそれよりも小さい)心毒性の発生を指す。
【0095】
「バイアル」は、液体または凍結乾燥調製物を保有するのに好適な容器である。一実施形態では、バイアルは、単回使用バイアル、例えば栓を有する20ccの単回使用バイアルである。
【0096】
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含む、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる説明書を指すように使用される。
【0097】
「有害事象」とは、属性に無関係に、治験薬(医薬品)または他の治験実施計画書に課せられた介入の使用に時間的に関連する、あらゆる好ましくないかつ意図しない徴候、症状、または疾患であり、AE報告期間の前には存在しなかった乳癌に関連する徴候または症状を含む、治験実施計画書で規定されたAE報告期間中に出現した、患者で以前には観察されなかったAE;治験実施計画書で義務付けられた介入(例えば、生検等の侵襲的処置)の結果として生じる合併症;該当する場合、休薬期間、治療が実行されない時期、または他の治験実施計画書に義務付けられた介入に関連する試験治療の割付け前に生じるAE;治験実施計画書に規定されたAE報告期間中に、重症度または頻度を悪化させたか、または性質を変化させたことが治験責任医師によって判断された既存の医学的病態(試験される病態以外の)が含まれる。
【0098】
有害事象は、下記の基準を満たす場合、「重篤な有害事象」(SAE)として分類される:死に至るもの(すなわち、AEが実際に死を引き起こすか、または死に至らせること);生命を脅かすもの(すなわち、治験責任医師の観点から、AEは患者を死の差し迫ったリスクに曝すが、より重症の形態で生じた場合に死因となり得るAEは含めない);入院または入院期間の延長が必要となるもの;永続的または顕著な障害/機能不全をもたらすもの(すなわち、AEが、正常な生活機能を行うための患者の能力の実質的な中断をもたらすこと);治験薬に曝された母親から生まれた新生児/乳児において子孫に先天異常/出生異常をもたらすもの;または医学的判断に基づいて治験責任医師が重要な医学的事象と見なすもの(例えば、患者を危険に曝し得るか、または上記に列挙された転帰のうちの1つを予防するために医学的/外科的介入を必要とし得ること)。重篤度に関する基準のいずれも満たさない全てのAEは、重篤ではないAEと見なされる。「重度の」及び「重篤な」という用語は同義ではない。重症度(または強度)は、特定のAEのグレード、すなわち、軽度の(グレード1)、中等度の(グレード2)、または重度の(グレード3)心筋梗塞(セクション5.2.2を参照)を指す。「重篤な」は、規制定義(前の定義を参照)であり、通常、患者の生命または機能に脅威となる事象に関連する患者もしくは事象転帰または行動基準に基づいている。重篤度(重症度ではなく)は、治験依頼者から適用される規制当局への規制上の報告義務を規定するための指針として役立つ。eCRF(電子症例報告書)でAE及びSAEを報告するとき、重症度及び重篤度は、独立して評価されるべきである。
【0099】
本発明は、トラスツズマブ-MCC-DM1が、一次治療において転移性HER2陽性乳癌を有する患者であって、タキサンによる前治療を受けている患者の治療で、以前にタキサンを受けていなかった患者と比べて予想外に有効であったとの観察に一部基づいている。本発明は、HER2陽性進行性もしくは再発性の局所進行性の、または未治療の転移性乳癌(一次治療における転移性乳癌)の治療のための、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体を使用する方法であって、患者が、タキサンで前治療されている、方法を提供する。アジュバント、ネオアジュバント及び転移性乳癌療法においてHER2陽性癌患者に対する治療選択肢が存在するが、「一次治療」における転移性乳癌療法を含む、すなわち、未治療の転移性乳癌を有する患者、または局所進行性乳癌を有する患者のためのさらなる選択肢が必要とされる。全般的に、T-DM1は、標準治療のHERCEPTIN+タキサン(HT)と比べて非劣性の無進行生存(PFS)を立証したが、これは、HTよりも優れているとは言えなかった。しかしながら、データは、以前にタキサン療法を受けている患者に対しては、HTを超えるT-DM1の優れた効果を示唆しており、このような患者では、局所進行かつ一次治療における転移性Her2陽性乳癌に対して、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体による治療が選択されるべきであることを示している。
【0100】
トラスツズマブ-MCC-DM1(T-DM1)
本発明は、構造:
を有する抗体-薬物複合体(Cas Reg.No.139504-50-0)であるトラスツズマブ-MCC-DM1(T-DM1)による治療的処置を含み、式中、Trは、リンカー部分MCCを介してメイタンシノイド薬物部分DM1に結合されたトラスツズマブである(US5208020、US6441163)。薬物対抗体の比または薬物負荷は、トラスツズマブ-MCC-DM1の上記構造においてpによって表され、1~約8の整数値の範囲である。トラスツズマブ-MCC-DM1は、様々に負荷されかつ結合された抗体-薬物複合体の全ての混合物を含むが、この場合1、2、3、4、5、6、7、及び8つの薬物部分が、抗体トラスツズマブに共有結合される(US7097840、US2005/0276812、US2005/0166993)。平均薬物負荷は、約3.5である。
【0101】
トラスツズマブは、哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣、CHO)懸濁培養によって産生され得る。HER2(またはc-erbB2)癌原遺伝子は、上皮成長因子受容体に構造的に関連する、185kDaの膜貫通受容体タンパク質をコードする。トラスツズマブは、マウス4D5抗体の、またはそれに由来する抗原結合残基を有する抗体である(ブダペスト条約下でATCC CRL 10463、American Type Culture Collection(12301 Parklawn Drive,Rockville,Md.20852)に1990年5月24日に寄託)。例示的なヒト化4D5抗体としては、US5821337に記載されるように、huMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7、及びhuMAb4D5-8(HERCEPTIN(登録商標))が挙げられる。
【0102】
トラスツズマブ-MCC-DM1は、例えば、米国特許出願公開第20110165155号の実施例1に従って調製されてもよい。
【0103】
抗HER2-メイタンシノイド複合体の製剤
トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体は、治療用の組み合わせで使用するための標準医薬品基準に従って製剤化され得る。医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤を伴って、トラスツズマブ-MCC-DM1を含む。
【0104】
適切な担体、希釈剤及び賦形剤は当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性及び/または膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水等の材料を含む。使用される特定の担体、希釈剤、または賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的によって決定されることになる。溶媒は、一般的に哺乳動物に投与しても安全(GRAS)であると当業者によって認識される溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水及び水に可溶性または混和性である他の非毒性溶媒等の非毒性水性溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 400、PEG 300)等、及びこれらの混合物が含まれる。製剤はまた、薬物(すなわち本発明の化合物またはその薬学的組成物)の的確な提示を提供するか、または医薬品(すなわち医薬)の製造を補助するために、1つ以上の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、オペーク剤(opaquing agent)、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤、及び他の既知の添加剤を含んでもよい。
【0105】
製剤は、従来の溶解手順及び混合手順を使用して調製されてもよい。例えば、バルク薬物物質(すなわち、本発明の化合物または化合物の安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の周知の錯化剤との複合体)は、上述の1つ以上の賦形剤の存在下で、適当な溶媒に溶解させる。本発明の化合物は、典型的には、容易に制御可能な薬物用量を提供し、所定のレジメンで患者コンプライアンスを可能にするように薬学的剤形に製剤化される。
【0106】
適用のための薬学的組成物(または製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に応じて多様な方法で包装されてもよい。一般に、分配用物品は、その中に薬学的製剤を適切な形態で配置した容器を含む。好適な容器は、当業者に周知であり、ボトル(プラスチック及びガラス)、小袋、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダー等の材料が挙げられる。容器はまた、パッケージの内容物への不用意なアクセスを防止するための不正開封防止アセンブリを含んでもよい。それに加えて、容器は、容器の内容物を説明するラベルをその上に配置している。ラベルはまた、適切な注意書き含んでいてもよい。
【0107】
薬学的製剤は、投与の種々の経路及び種類に対して、医薬的に許容される希釈剤、担体、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutocal Sciences(1995)18th edition,Mack Publ.Co.,Easton,PA)と、凍結乾燥製剤、粉砕粉末、または水溶液の形態で調製されてもよい。製剤は、周囲温度で、適切なpHで、及び所望の度合いの純度で、生理学的に許容される担体、すなわち、用いられる用量及び濃度においてレシピエントに対して非毒性である担体と混合することによって行われてもよい。製剤のpHは、主に具体的な用途及び化合物の濃度により決定するが、約3~約8の範囲であってもよい。
【0108】
薬学的製剤は、好ましくは滅菌性である。特に、インビボ投与用に使用される製剤は、滅菌性でなければならない。かかる滅菌は、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成される。
【0109】
薬学的製剤は、通常、固体組成物、凍結乾燥製剤として、または水溶液として保存され得る。
【0110】
本発明の薬学的製剤は、十分な医学的実用性に合わせた様式で、すなわち、量、濃度、スケジュール、過程、ビヒクル、及び投与経路で処方され、投与されることになる。この文脈における考慮の要因には、治療されている特定の障害、個々の患者の臨床的病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、及び医療従事者に既知の他の要因が含まれる。
【0111】
許容される希釈剤、担体、賦形剤、及び安定剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、エタノール、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン等;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン等;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA等;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等;塩形成対イオン、例えばナトリウム等;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(Tween 80を含む)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)(PEG400を含む)が挙げられる。活性薬学的成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及び名のカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th edition(1995)Mack Publ.Co.,Easton,PAで開示されている。薬物性剤の他の例は、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,Vol 3,2nd Ed.,New York,NYで見出すことができる。
【0112】
薬学的製剤は、本明細書に詳述の投与経路に適したものを含む。本製剤は、好都合にも単位剤形で提供することができ、薬学の分野において周知である任意の方法のいずれかによって調製することができる。技術及び製剤は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th Ed.(1995)Mack Publishing Co.,Easton,PAで見出される。当該方法は、活性成分を、1つ以上の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または微粉化固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、産物を成形することによって調製される。
【0113】
薬学的製剤は、水性または油性の無菌注射用懸濁液等の無菌注射用製剤の形態としてもよい。当該懸濁液は、上述した適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて、既知の技術に従って配合されてもよい。滅菌注射用製剤は、1,3-ブタンジオール中のまたは凍結乾燥粉末から調製される溶液等の、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液であってもよい。利用されてもよい許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油が通常、溶媒または懸濁媒体として通常使用されてもよい。本目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油が利用されてもよい。さらに、オレイン酸等の脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用されてもよい。
【0114】
単一投与形態を作製するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に依存して変化する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した徐放性製剤は、適切で都合の良い量の担体物質と配合された約1~1000mgの活性物質を含んでもよく、これにより、全組成物の約5~約95%が変化し得る(重量:重量)。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入のために意図された水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な容量の注入を行うことができるように、溶液1ミリリットルあたり約3~500μgの活性成分を含んでもよい。
【0115】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよい水性無菌注射溶液及び非水性無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤及び増粘剤を含んでいてもよい水性滅菌注射溶液及び非水性滅菌注射溶液を含む。
【0116】
製剤は、単位用量容器または複数回の用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに包装されてもよく、使用直前に注射するために、例えば、水等の滅菌液体担体を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席の注射溶液及び懸濁液を、前述した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製する。好ましい単位投与製剤は、活性成分の本明細書に上記した一日用量または一日単位の副用量、またはその適切な画分を含むものである。
【0117】
一般命題として、1回の投与当たりに投与されるトラスツズマブ-MCC-DM1の最初の薬学的に有効な量は、患者の体重当たり約0.3~15mg/kg/日の範囲内となる。
【0118】
市販のT-DM1製剤(KADCYLA(登録商標)、アド-トラスツズマブエムタンシン)は、単回使用バイアル中の無菌の白色~オフホワイトの保存剤を含まない結乾燥粉末である。各バイアルは、100mgまたは160mgのアド-トラスツズマブエムタンシンを含有する。再構成に続いて、各単回使用バイアルは、アド-トラスツズマブエムタンシン(20mg/mL)、ポリソルベート20[0.02%(w/v)]、コハク酸ナトリウム(10mM)、及びスクロース[6%(w/v)]を含有し、pHは5.0で密度は1.026g/mLである。得られる溶液は、20mg/mLのアドトラスツズマブエムタンシンを含有し、希釈後に静脈内点滴によって投与される。
【0119】
ペルツズマブの製剤
ペルツズマブの市販の製剤(PERJETA(登録商標))は、IV点滴用の保存剤を含まない溶液の形態のペルツズマブ420mg/14mL(30mg/mL)を含有する。
【0120】
医薬組成物の投与
本明細書に記載される医薬組成物は、治療すべき病態に適切な任意の経路によって投与されてもよい。好適な経路としては、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、髄腔内、硬膜外、及び注入技術を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内、及び鼻腔内が挙げられる。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオン導入装置等の経皮投与の使用を伴うことができる。局所免疫抑制治療については、化合物は、移植前に移植片を潅流するさもなければ移植片を阻害薬と接触させることを含む、病巣内投与によって投与されてもよい。好ましい経路は、例えば、レシピエントの病態により異なり得ることが理解されるであろう。化合物は、経口投与される場合、薬学的に許容される担体、流動促進剤、または賦形剤と共に丸薬、カプセル、錠剤等として製剤化されてもよい。化合物は、非経口投与される場合、下記に詳述される通り、薬学的に許容される非経口ビヒクルまたは希釈剤と共に注射用単位剤形で製剤化されてもよい。
【0121】
製品
トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2-メイタンシノイド複合体を含有する製造物品、または「キット」は、本明細書の治療方法に有用であり、提供される。一実施形態において、このキットは、トラスツズマブ-MCC-DM1を含む容器を含む。このキットは、容器上の、または容器と関連したラベルまたは添付文書をさらに含んでもよい。「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含む、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる説明書を指すように使用される。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成されてもよい。容器は、トラスツズマブ-MCC-DM1等の抗HER2メイタンシノイド複合体、または本明細書における治療方法での使用に有効なその製剤を保有し得、また無菌アクセスポートを有し得る(例えば容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。ラベルまたは添付文書は、組成物が本明細書に記載されて特許請求される治療方法で使用されることを表示する。製品は、薬学的に許容される緩衝剤、例えば、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液を含む容器をさらに含んでもよい。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及びユーザの立場から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0122】
キットは、トラスツズマブ-MCC-DM1の投与のための指示書をさらに含んでもよい。例えば、キットが、トラスツズマブ-MCC-DM1を含む第1の組成物及び第2の薬学的製剤を含む場合、キットは、第1の組成物及び第2の薬学的組成物を、それを必要とする患者に同時に、順次に、または別個に投与するための指示書をさらに含んでもよい。
【実施例0123】
本発明を例証するために、実施例が、図、前述の図面の簡単な説明、及び以下の実施例で提供されるように含まれる。しかし、これらの実施例は本発明を限定せず、単に本発明の実施方法の提示に過ぎないことを理解されたい。
【0124】
実施例1
第III相臨床試験
本試験(clinicaltrials.gov識別子番号NCT01120184;試験番号BO22589)は、HER2陽性の進行性もしくは再発性の局所進行性の、または未治療の転移性乳癌を有する患者における、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)とペルツズマブとの併用、またはトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)単独(すなわち、ペルツズマブのプラセボとの併用)対トラスツズマブ(ハーセプチン)+タキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)の併用の有効性及び安全性を評価した無作為化、3群間、多施設の第III相試験である(図6を参照)。
【0125】
層別化因子:実施地域、以前にネオアジュバント療法を受けているか(受けている場合:以前にトラスツズマブ/ラパチニブを投与されているか)、内臓疾患。
【0126】
主要評価項目:独立した審査機関(IRF)による無進行生存(PFS)、非劣性及び優越性の検討。
【0127】
重要な副次的評価項目:全生存(Overall Survival)(OS)、治験責任医師によるPFS、客観的奏功率(Objective Respose Rte)(ORR)、安全性、患者報告治療結果(Patient-reported outcome)。
【0128】
本試験についての組み入れ基準及び除外基準は、以下の通りである。
【0129】
基準
組み入れ基準は、以下の通りである:1)18歳以上の成人患者であること;2)HER2陽性乳癌であること;3)局所的再発性または転移性疾患を有する乳房の組織学的もしくは細胞学的に確認された腺癌、ならびに化学療法の候補者であること。(局所的進行疾患を有する患者は、再発性または進行性疾患を有する必要があり、治癒目的で切除を受けてはならない);4)患者はRECIST1.1により評価可能であるべき測定可能な疾患及び/または測定不可能な疾患を有さねばならない;5)ECOGパフォーマンスステータスが0または1であること;6)検査結果によって決定される適切な臓器機能があること。
【0130】
除外基準は、以下の通りである:1)転移性乳癌または再発性局所進行性疾患に対する以前の(もしくは何らかの)化学療法の治療歴があること;2)ビンカアルカロイドまたはタキサンの細胞傷害性化学療法の最後の投与から転移性の診断時までの間隔が6ヶ月未満であること;3)無作為化より前7日未満にホルモン療法を受けていること;4)無作為化より前21日未満に、トラスツズマブ療法及び/またはラパチニブ(ネオアジュバント療法またはアジュバント療法)を受けていること;5)トラスツズマブエムタンシンまたはペルツズマブ療法の治療歴があること。
【0131】
転帰尺度は、以下の通りであった。
主要転帰を、以下の尺度を使用して評価した:1)独立審査機関(IRF)により実施された腫瘍評価に基づく無進行生存(PFS);及び2)有害事象(AE)発生率。
【0132】
副次的転帰を、以下の尺度を使用して評価した:1)2年で短縮された全生存(OS);2)1年目の生存率;3)全生存(OS)率;4)全体的または客観的奏功率;5)奏功持続期間;6)独立審査機関(IRF)により評価される治療成功期間;及び7)臨床的有用率。
【0133】
図7に示すように、データは、以前にタキサン療法を受けている一次治療において転移性HER2陽性乳癌を有する患者に対するT-DM1(Kadcyla(登録商標))の優れた効果を示唆している。
配列表
SEQUENCE LISTING

<110> GENENTECH, INC.

<120> METHODS OF TREATING HER2-POSITIVE METASTATIC BREAST CANCER

<130> GNE-0423R1-WO

<140>
<141>

<150> 62/168,809
<151> 2015-05-30

<160> 16

<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 195
<212> PRT
<213> Homo sapiens

<400> 1
Thr Gln Val Cys Thr Gly Thr Asp Met Lys Leu Arg Leu Pro Ala Ser
1 5 10 15


Pro Glu Thr His Leu Asp Met Leu Arg His Leu Tyr Gln Gly Cys Gln
20 25 30


Val Val Gln Gly Asn Leu Glu Leu Thr Tyr Leu Pro Thr Asn Ala Ser
35 40 45


Leu Ser Phe Leu Gln Asp Ile Gln Glu Val Gln Gly Tyr Val Leu Ile
50 55 60


Ala His Asn Gln Val Arg Gln Val Pro Leu Gln Arg Leu Arg Ile Val
65 70 75 80


Arg Gly Thr Gln Leu Phe Glu Asp Asn Tyr Ala Leu Ala Val Leu Asp
85 90 95


Asn Gly Asp Pro Leu Asn Asn Thr Thr Pro Val Thr Gly Ala Ser Pro
100 105 110


Gly Gly Leu Arg Glu Leu Gln Leu Arg Ser Leu Thr Glu Ile Leu Lys
115 120 125


Gly Gly Val Leu Ile Gln Arg Asn Pro Gln Leu Cys Tyr Gln Asp Thr
130 135 140


Ile Leu Trp Lys Asp Ile Phe His Lys Asn Asn Gln Leu Ala Leu Thr
145 150 155 160


Leu Ile Asp Thr Asn Arg Ser Arg Ala Cys His Pro Cys Ser Pro Met
165 170 175


Cys Lys Gly Ser Arg Cys Trp Gly Glu Ser Ser Glu Asp Cys Gln Ser
180 185 190


Leu Thr Arg
195


<210> 2
<211> 124
<212> PRT
<213> Homo sapiens

<400> 2
Thr Val Cys Ala Gly Gly Cys Ala Arg Cys Lys Gly Pro Leu Pro Thr
1 5 10 15


Asp Cys Cys His Glu Gln Cys Ala Ala Gly Cys Thr Gly Pro Lys His
20 25 30


Ser Asp Cys Leu Ala Cys Leu His Phe Asn His Ser Gly Ile Cys Glu
35 40 45


Leu His Cys Pro Ala Leu Val Thr Tyr Asn Thr Asp Thr Phe Glu Ser
50 55 60


Met Pro Asn Pro Glu Gly Arg Tyr Thr Phe Gly Ala Ser Cys Val Thr
65 70 75 80


Ala Cys Pro Tyr Asn Tyr Leu Ser Thr Asp Val Gly Ser Cys Thr Leu
85 90 95


Val Cys Pro Leu His Asn Gln Glu Val Thr Ala Glu Asp Gly Thr Gln
100 105 110


Arg Cys Glu Lys Cys Ser Lys Pro Cys Ala Arg Val
115 120


<210> 3
<211> 169
<212> PRT
<213> Homo sapiens

<400> 3
Cys Tyr Gly Leu Gly Met Glu His Leu Arg Glu Val Arg Ala Val Thr
1 5 10 15


Ser Ala Asn Ile Gln Glu Phe Ala Gly Cys Lys Lys Ile Phe Gly Ser
20 25 30


Leu Ala Phe Leu Pro Glu Ser Phe Asp Gly Asp Pro Ala Ser Asn Thr
35 40 45


Ala Pro Leu Gln Pro Glu Gln Leu Gln Val Phe Glu Thr Leu Glu Glu
50 55 60


Ile Thr Gly Tyr Leu Tyr Ile Ser Ala Trp Pro Asp Ser Leu Pro Asp
65 70 75 80


Leu Ser Val Phe Gln Asn Leu Gln Val Ile Arg Gly Arg Ile Leu His
85 90 95


Asn Gly Ala Tyr Ser Leu Thr Leu Gln Gly Leu Gly Ile Ser Trp Leu
100 105 110


Gly Leu Arg Ser Leu Arg Glu Leu Gly Ser Gly Leu Ala Leu Ile His
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His Asn Thr His Leu Cys Phe Val His Thr Val Pro Trp Asp Gln Leu
130 135 140


Phe Arg Asn Pro His Gln Ala Leu Leu His Thr Ala Asn Arg Pro Glu
145 150 155 160


Asp Glu Cys Val Gly Glu Gly Leu Ala
165


<210> 4
<211> 142
<212> PRT
<213> Homo sapiens

<400> 4
Cys His Gln Leu Cys Ala Arg Gly His Cys Trp Gly Pro Gly Pro Thr
1 5 10 15


Gln Cys Val Asn Cys Ser Gln Phe Leu Arg Gly Gln Glu Cys Val Glu
20 25 30


Glu Cys Arg Val Leu Gln Gly Leu Pro Arg Glu Tyr Val Asn Ala Arg
35 40 45


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50 55 60


Thr Cys Phe Gly Pro Glu Ala Asp Gln Cys Val Ala Cys Ala His Tyr
65 70 75 80


Lys Asp Pro Pro Phe Cys Val Ala Arg Cys Pro Ser Gly Val Lys Pro
85 90 95


Asp Leu Ser Tyr Met Pro Ile Trp Lys Phe Pro Asp Glu Glu Gly Ala
100 105 110


Cys Gln Pro Cys Pro Ile Asn Cys Thr His Ser Cys Val Asp Leu Asp
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Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
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Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu
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Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr
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Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu
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Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val
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Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp
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Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His
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Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro
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Gly



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Val His Ser Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala
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Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Lys Ala Ser Gln Asp Val
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Ser Ile Gly Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys
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Leu Leu Ile Tyr Ser Ala Ser Tyr Arg Tyr Thr Gly Val Pro Ser Arg
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Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser
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Leu Gln Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Tyr Ile
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Tyr Pro Tyr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg Thr
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Val Ala Ala Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu
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Lys Ser Gly Thr Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro
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Arg Glu Ala Lys Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly
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Asn Ser Gln Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr
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Lys Val Tyr Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Thr Asp Tyr
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Thr Met Asp Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Ala Asp Val Asn Pro Asn Ser Gly Gly Ser Ile Tyr Asn Gln Arg Phe
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Lys Gly Arg Phe Thr Leu Ser Val Asp Arg Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
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Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
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Ala Arg Asn Leu Gly Pro Ser Phe Tyr Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly
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Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe
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Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu
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Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp
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Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu
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Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser
180 185 190


Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro
195 200 205


Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys
210 215 220


Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro
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Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser
245 250 255


Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp
260 265 270


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Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val
290 295 300


Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu
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Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys
325 330 335


Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr
340 345 350


Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr
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Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu
370 375 380


Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
385 390 395 400


Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys
405 410 415


Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu
420 425 430


Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
435 440 445


Lys
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された一発明。
【外国語明細書】