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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100646
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】超音波造影剤を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/22 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61K49/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064866
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2018568907の分割
【原出願日】2017-07-05
(31)【優先権主張番号】15/602,580
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/461,469
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/359,181
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508240937
【氏名又は名称】ランセウス メディカル イメージング, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ピー・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ダブリュー・シーグラー
(72)【発明者】
【氏名】ニュン・トゥエ・グエン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・シー・オンサンク
(72)【発明者】
【氏名】タラケシュワル・ビシュワナト・アンクレカル
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・チェスター・バン・カーク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リン脂質UCA配合物を含むリン脂質配合物を製造するための改善された方法を提供する。
【解決手段】DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、前記DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、前記DPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、
前記DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、
前記DPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項2】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、
前記DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、
合わせて測定されたカルシウム濃度が低いDPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項3】
その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、前記MPEG5000-DPPEストック、前記DPPAストック、前記DPPCストック、および前記非水性溶媒の合わされた特徴のあるカルシウム濃度が低いカルシウム濃度である、ステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項4】
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックであり、そのうちの1つ、2つ、または3つ全てが、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップであって、合わされた特徴のあるカルシウム濃度が低いカルシウム濃度である、ステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項5】
その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップであって、合わせて特徴のあるカルシウム濃度が低いカルシウム濃度である、ステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項6】
MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度が低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項7】
DPPCストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いDPPCストックをDPPAストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項8】
DPPAストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いDPPAストックをDPPCストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項9】
非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低い非水性溶媒をDPPAストック、DPPCストック、およびMPEG5000-DPPEストックと合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項10】
カルシウム濃度を有さないか、またはカルシウム濃度の低い、特徴のあるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項11】
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないか、またはカルシウム濃度の低い、特徴のあるリン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項12】
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
前記超音波造影剤を対象に投与するステップと、
前記対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、前記リン脂質懸濁液は、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法によって製造される、対象を画像化する方法。
【請求項13】
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
前記超音波造影剤を対象に投与するステップと、
前記対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、ここで前記リン脂質懸濁液が、
MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
【請求項14】
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
前記超音波造影剤を対象に投与するステップと、
前記対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、ここで前記リン脂質懸濁液が、
カルシウム濃度を有さないかまたはカルシウム濃度の低い、特徴のあるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
【請求項15】
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
前記超音波造影剤を対象に投与するステップと、
前記対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、ここで前記リン脂質懸濁液が、
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないかまたはカルシウム濃度の低い、特徴のあるリン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
【請求項16】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをカルシウムの低いまたはカルシウム不含の条件においてプロピレングリコール(PG)含有非水性溶媒と個々に合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項17】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを低カルシウムまたはカルシウム不含の条件において順序非依存方式でPG含有非水性溶媒と連続的に組み合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項18】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをメタノールおよびトルエン不含条件において合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
前記リン脂質ブレンドを低カルシウムまたはカルシウム不含の条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項19】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
前記ブレンド溶媒を蒸発させて、乾燥リン脂質ブレンドを形成するステップと、
前記乾燥リン脂質ブレンドを低カルシウムまたはカルシウム不含の条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項20】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
前記リン脂質ブレンドを、第2のブレンド溶媒を使用して、MTBE不含条件において沈殿させるステップと、
前記沈殿したリン脂質ブレンドを低カルシウムまたはカルシウム不含の条件において非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【請求項21】
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
前記超音波造影剤を対象に投与するステップと、
前記対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、ここで前記リン脂質懸濁液が、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法によって製造される、対象を画像化する方法。
【請求項22】
非水溶媒中においてDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含み、かつカルシウム濃度の低い、リン脂質溶液を含む組成物。
【請求項23】
非水性溶媒中においてDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含むリン脂質溶液を含む、組成物であって、ここで前記DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE、ならびに前記非水性溶媒が、合わされた特徴のあるカルシウムイオン含量が低い、組成物。
【請求項24】
(a)リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップであって、ここで前記リン脂質懸濁液が、1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を有するリン脂質溶液を含み、そのうちの1つまたは複数が、特徴のあるカルシウム濃度の低い、ステップと、
(b)前記脂質封入ガス微小球を対象に投与するステップと、
(c)前記対象の超音波画像を得るステップと
を含む、対象を超音波コントラスト画像化する方法。
【請求項25】
(a)リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップであって、ここで前記リン脂質懸濁液が、1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を有し、かつメタノールおよびトルエン不含条件ならびにメチルt-ブチルエーテル不含条件下で生成されたリン脂質溶液を含み、ここで前記リン脂質および非水性溶媒の1つまたは複数が、カルシウム濃度の低い、ステップと、
(b)前記脂質封入ガス微小球を対象に投与するステップと、
(c)前記対象の超音波画像を得るステップと
を含む、対象を超音波コントラスト画像化する方法。
【請求項26】
1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、ここで前記リン脂質および/または前記非水性溶媒の1つまたは複数が、特徴のある低いカルシウム濃度を有する、ステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶液と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと、
前記リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップと
を含む、脂質封入ガス微小球を製造する方法。
【請求項27】
1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒をメタノールおよびトルエン不含ならびにメチルt-ブチルエーテル不含条件において合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、ここで前記リン脂質および/または前記非水性溶媒の1つまたは複数が、低いカルシウム濃度を有する、ステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶液と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと、
前記リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップと
を含む、脂質封入ガス微小球を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波造影剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質封入ガス微小球(microsphere)は、超音波画像化用途における造影剤として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示はリン脂質ベースの超音波造影剤を製造するための改善された方法を提供する。本開示は、特定のリン脂質ベースの超音波造影剤配合物が二価金属カチオンの影響を受け易いという予期せぬ発見に部分的に基づいている。これらのカチオンの特定の具体的なレベルの存在下では、配合物中のリン脂質および場合により他の成分が沈殿し、配合物を使用不能にする。特定の二価金属カチオンが超音波造影剤配合物に悪影響を及ぼす能力を有することは、これまで認識されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの知見に基づき、本開示は、このような望ましくないリン脂質沈殿を防止するこのような配合物を合成するための改善された方法およびこのような方法から得られる配合物を検討する。改善された超音波造影剤の合成において、これらの改善された配合物を使用する方法およびそれを必要とする対象の画像化におけるそれらの使用も提供される。
【0005】
したがって、一態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つ、または複数、または全てのカルシウム濃度を測定するステップと、DPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、DPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックの合わされたカルシウムの測定濃度は低い(すなわち、そのように測定したストックが、DPPA単独、DPPC単独、MPEG5000-DPPE単独、DPPAおよびDPPC、DPPAおよびMPEG5000-DPPE、DPPCおよびMPEG5000-DPPE、またはDPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEであるかどうかに関わりなく、測定されたストックの総カルシウム濃度または合わせたカルシウム濃度は低い)。
【0006】
いくつかの実施形態では、DPPA、DPPC、および/またはMPEG-DPPEストック、ならびに非水性溶媒の合わされた測定カルシウム濃度は低い(すなわちDPPA単独またはDPPAおよび非水性溶媒、DPPC単独またはDPPAおよび非水性溶媒、MPEG5000-DPPE単独またはMPEG5000-DPPEおよび非水性溶媒、DPPAおよびDPPCまたはDPPA、DPPCおよび非水性溶媒、DPPAおよびMPEG5000-DPPEまたはDPPA、MPEG5000-DPPEおよび非水性溶媒、DPPCおよびMPEG5000-DPPEまたはDPPC、MPEG5000-DPPEおよび非水性溶媒、DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEまたはDPPA、DPPC、MPEG5000-DPPEおよび非水性溶媒であるかどうかに関わりなく、測定された成分の総カルシウム濃度または総カルシウム濃度の合計が低い)。
【0007】
いくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度が測定される。
【0008】
いくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度が測定され、DPPA、DPPC、MPEG-DPPEストックおよび非水性溶媒の合わされた測定カルシウム濃度が低い。
【0009】
したがって、実施形態次第では、DPPAのカルシウム濃度のみが測定され、またはDPPCのカルシウム濃度のみが測定され、またはMPEG5000-DPPEのカルシウム濃度のみが測定され、またはDPPAおよびDPPCのカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPAおよびMPEG5000-DPPEのカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPCおよびMPEG5000-DPPEのカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEのカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPAおよび非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPCおよび非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはMPEG5000-DPPEおよび非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPA、DPPC、および非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPA、MPEG5000-DPPE、および非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPC、MPEG5000-DPPE、および非水性溶媒のカルシウム濃度のみが測定され(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)、またはDPPA、DPPC、MPEG5000-DPPE、および非水性溶媒のカルシウム濃度が測定される(かつこのような濃度を加算して合わされた測定カルシウム濃度を得る)。合わされた測定または特徴のある(下で考察されるように)カルシウム濃度に到達するために、成分のあらゆる組み合わせが検討されることは明らかである。DPPA、DPPA脂質、DPPAリン脂質、DPPAストック、DPPA脂質ストック、およびDPPAリン脂質ストックという用語は、特に断りのない限り同義的に使用されるものと理解される。DPPCおよびMPEG5000-DPPEについても同様の相互交換可能な用語が使用される。
【0010】
別の態様では、前述の方法の変法が提供される。このような方法は、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックの一方または両方のカルシウム濃度を測定するステップと、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップをさらに含む。前述の実施形態の様々なものがこの方法に等しく適用されるものと理解されるべきである。
【0011】
別の態様では、本開示は、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つ、または複数、または全てのカルシウム濃度を測定するステップと、低い合わせて測定されたカルシウム濃度が低いDPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、方法は、非水性溶媒およびDPPA、DPPC、MPEG500-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップをさらに含み、非水性溶媒は、合わせて測定されたカルシウム濃度が低い。
【0012】
本開示は、別の態様では、その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供し、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒の合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である。
【0013】
本開示は、別の態様では、その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供し、MPEG5000-DPPEストック、DPPCストック、および非水性溶媒の合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である。
【0014】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックであって、そのうちの1つ、2つ、または3つ全ては、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップと、前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供し、合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である。リン脂質ストックおよび/または非水性溶媒などの成分は、個々のまたは合わされた特徴のあるカルシウム濃度を有することに基づいて選択される。
【0015】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPEストックおよびDPPCストックであって、その一方または両方は、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストックおよびDPPCストックを選択するステップと、前記MPEG5000-DPPEストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供し、合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である。リン脂質ストックおよび/または非水性溶媒などの成分は、個々のまたは合わされた特徴のあるカルシウム濃度を有することに基づいて選択される。
【0016】
本開示は、別の態様では、その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップと、前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供し、合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である。いくつかの実施形態では、非水性溶媒は、特徴のあるカルシウム濃度を有し、MPEG5000-DPPE、DPPA、およびDPPCストック、および非水性溶媒の合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低い。
【0017】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、115ppm未満である。
【0018】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPCストックおよび非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、115ppm未満である。
【0019】
本開示は、別の態様では、DPPCストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いDPPCストックをDPPAストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、90ppm未満である。
【0020】
本開示は、別の態様では、DPPCストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いDPPCストックをMPEG5000-DPPEストックおよび非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、90ppm未満である。
【0021】
本開示は、別の態様では、DPPAストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いDPPAストックをDPPCストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、780ppm未満である。
【0022】
本開示は、別の態様では、非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低い非水性溶媒をDPPAストック、DPPCストック、およびMPEG5000-DPPEストックと合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である。
【0023】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPE、DPPAおよびDPPCストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液のカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いリン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。
【0024】
本開示は、別の態様では、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、MPEG5000-DPPEストックは、二価金属カチオン含量を有さないかまたは低い二価金属カチオン含量を有するとしてさらに特徴付けられる。
【0025】
本開示は、別の態様では、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるリン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。
【0026】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含む、対象を画像化する方法をさらに提供し、リン脂質懸濁液は、前述の方法のいずれかによって製造される。
【0027】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含む、対象を画像化する方法をさらに提供し、リン脂質懸濁液は、MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む方法によって製造される。
【0028】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含み、リン脂質懸濁液は、MPEG5000-DPPE、DPPAおよびDPPCストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液のカルシウム濃度を測定するステップと、測定されたカルシウム濃度の低いリン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む方法によって製造される、対象を画像化する方法をさらに提供する。
【0029】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含み、リン脂質懸濁液は、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む方法によって製造される、対象を画像化する方法をさらに提供する。
【0030】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含み、リン脂質懸濁液は、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるリン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む方法によって製造される、対象を画像化する方法をさらに提供する。
【0031】
本開示は、別の態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをPG含有非水性溶媒と個々に合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、カルシウムなしまたは低カルシウム条件は、0.7ppm未満である。
【0032】
本開示は、別の態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件において順序非依存方式でPG含有非水性溶媒と連続的に合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、カルシウムなしまたは低カルシウム条件は、0.7ppm未満である。
【0033】
本開示は、別の態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをメタノールおよびトルエン不含条件において合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、リン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、カルシウムなしまたは低カルシウム条件は、0.7ppm未満である。
【0034】
本開示は、別の態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、ブレンド溶媒を蒸発させて、乾燥リン脂質ブレンドを形成するステップと、乾燥リン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、カルシウムなしまたは低カルシウム条件は、0.7ppm未満である。
【0035】
本開示は、別の態様では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、リン脂質ブレンドを、第2のブレンド溶媒を使用して、MTBE不含条件において沈殿させるステップと、沈殿されたリン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件において非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップとを含む、リン脂質懸濁液を製造する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、カルシウムなしまたは低カルシウム条件は、0.7ppm未満である。
【0036】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップをさらに含む。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波画像を得るステップとをさらに含む。
【0037】
本開示は、別の態様では、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップとを含む、対象を画像化する方法をさらに提供し、リン脂質懸濁液は、前述の方法のいずれか1つによって製造される。
【0038】
本開示は、他の態様では、非水溶媒中においてDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含み、かつ低いカルシウム濃度を有するリン脂質溶液、ならびにDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを非水性溶媒中に含むリン脂質溶液を含む組成物を含む組成物をさらに提供し、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE、ならびに非水性溶媒は、低い、合わされた特徴のあるカルシウムイオン含量を有する。いくつかの実施形態では、非水性溶媒は、プロピレングリコールを含む(例えば、プロピレングリコールは、唯一の非水性溶媒であり得、またはそれは、1つもしくは複数の他の溶媒と合わせて使用されて非水性溶媒を与え得る)。いくつかの実施形態では、非水性溶媒は、プロピレングリコールおよびグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、非水性溶媒は、緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、酢酸緩衝液である。いくつかの実施形態では、組成物は、パーフルオロカーボンガスを含む。いくつかの実施形態では、パーフルオロカーボンガスは、パーフルトレンである。したがって、場合により、組成物は、バイアルなどの容器内で提供され、ガスが容器のヘッドスペース内に供給される。リン脂質溶液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成する方法も提供される。方法は、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波画像を得るステップとをさらに含み得る。
【0039】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、非水性溶媒は、(i)プロピレングリコール、または(ii)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む。
【0040】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、非水性溶媒は、緩衝液を含む。本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、非水性溶媒は、酢酸緩衝液を含む。
【0041】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、水性溶媒は、緩衝液を含む。本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、水性溶媒は、リン酸塩緩衝液を含む。
【0042】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、個々に非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する。
【0043】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、非水性溶媒と、順序非依存方式で連続的に組み合わされて、リン脂質溶液を形成する。
【0044】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、互いに組み合わされてリン脂質混合物を形成し、リン脂質混合物は、次に非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する。リン脂質混合物は、不均質または均質であり得る。
【0045】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、互いに組み合わされてリン脂質ブレンドを形成し、リン脂質ブレンドは、次に非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する。本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、リン脂質ブレンドは、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックをメタノールおよびトルエンの混合物に溶解するステップと、任意選択的にリン脂質/メタノール/トルエン混合物を濃縮するステップと、次に濃縮されたリン脂質/メタノール/トルエン混合物をメチルt-ブチルエーテル(MTBE)に接触させてリン脂質を沈殿させて、リン脂質ブレンドを形成するステップとを含む、有機溶媒溶解沈殿工程を用いて形成される。本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、リン脂質ブレンドは、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックをメタノール/トルエン溶媒系以外のブレンド溶媒系に溶解するステップと、任意選択的にリン脂質/溶媒混合物を濃縮するステップと、次に濃縮されたリン脂質/溶媒混合物をメチルt-ブチルエーテル(MTBE)に接触させてリン脂質を沈殿させて、リン脂質ブレンドを形成するステップとによって形成される。本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、リン脂質ブレンドは、メタノール/トルエン溶媒系などであるが、これに限定されるものではない、ブレンド溶媒系にDPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックを溶解するステップと、次に混合物を凍結乾燥または別の方式で乾燥させて溶媒を除去し、リン脂質ブレンドを残すステップとによって形成される。
【0046】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は、リン脂質懸濁液をバイアルに入れるステップと、パーフルオロカーボンガスをバイアルのヘッドスペースに導入するステップをさらに含む。
【0047】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は、リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップをさらに含む。
【0048】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は、超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波画像を得るステップとをさらに含む。
【0049】
本明細書で提供される様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は、DPPAストック、および/またはDPPCストック、および/またはリン脂質混合物、および/またはリン脂質ブレンドのカルシウム濃度を測定するステップをさらに含む。
【0050】
本開示のこれらおよび他の態様および実施形態は、本明細書においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】異なる沈殿程度を有する4つのリン脂質溶液の写真である。図は、実施例で使用された+、++、および+++の外観尺度定義を示す。
図2】DPPC、MPEG5000-DPPE、DPPA、および酢酸カルシウム溶液の連続添加時の外観を示す写真である。
図3】実施例に記載される、試験4の力価測定された溶液の外観を示す写真である。
図4】MPEG5000-DPPEと、高カルシウム(Ca+2)レベルを含有するMPEG5000-DPPEとの異なる比率を用いて製造された溶液の外観を示す写真である。
図5】高カルシウムまたは低カルシウムのいずれかを含有する、個々のリン脂質またはリン脂質ブレンドを使用して生成されたリン脂質水性配合物の濾過流速を示すグラフである。試験19および23が低カルシウム成分を使用して行われたのに対して、試験20および24は、高カルシウムレベルを含有する(詳細については表6を参照されたい)。各グラフ化された点は、各試験内の対応する時間を有する3回の連続濾過速度測定値の平均である。
図6】高カルシウムまたは低カルシウムのいずれかを含有する、個々のリン脂質またはリン脂質ブレンドを使用して生成されたリン脂質非水性配合物の濾過流速を示すグラフである。試験33および35が低カルシウム成分を使用して行われたのに対して、試験34および36は、高カルシウムレベルを含有する(詳細については表9を参照されたい)。各グラフ化された点は、各試験内の対応する時間を有する3回の連続濾過速度測定値の平均である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書では、リン脂質ベースの超音波造影剤(UCA)を製造するための改善された方法が提供される。これらの改良は、超音波造影剤の製造で使用することを意図した特定のリン脂質ベースの配合物が特定の二価金属カチオンの存在および量に影響を受けやすいという驚くべき発見に部分的に基づいている。具体的には、カルシウムなどの二価金属カチオンが、特定の濃度において、主力の超音波造影剤であるDEFINITY(登録商標)を作製するのに使用されるリン脂質ベースの配合物に導入された場合、リン脂質および場合により他の配合物成分の溶液からの析出を引き起こし、それによって配合物を使用不能にすることが意外にも見いだされた。このような配合物は、典型的には、大規模なバッチで製造され、したがって、例えば、カルシウムの不注意な添加は、バッチ全体を使用不能にする。これは、製造能力の低下をもたらし得る。
【0053】
驚くべきことに、特定のリン脂質は、カルシウムなどの二価金属カチオンの存在によって誘導される沈殿の影響をより受け易いことも見いだされている。具体的には、プロピレングリコールなどの非水性溶媒中のDPPAは、特定の濃度のカルシウムなどの二価金属カチオンの存在下において沈殿する可能性が高い。この同じ感受性は、DPPCおよびDPPEなどの他のリン脂質では観察されず、または同程度には観察されなかった。この示差的な沈殿プロファイルは、リン脂質配合物を、最終的には、計画されたまたは所望の組成と異なるリン脂質組成を有するUCAを容易にもたらし得る。したがって、二価金属カチオンの存在は、(例えば、本明細書に記載のリン脂質懸濁液などの沈殿物含有リン脂質配合物の非濾過性のために)UCAの全収率を低下させ得るだけでなく、それは、UCAのリン脂質分布も妨害し得る。これは、完全に未知のリン脂質含量のUCA配合物をもたらすこともあることから、問題である。製薬分野で周知のように、このようなUCA配合物の組成は、一定であり堅固に再現可能でなくてはならず、バッチ間変動性は、できるだけ回避するかまたは最小化されなければならない。
【0054】
したがって、本開示は、本明細書に記載されるようなリン脂質溶液およびリン脂質懸濁液などのリン脂質配合物を製造するための改善された方法を提供する。これらの方法は、リン脂質沈殿の可能性を低下させることにより、このような配合物の収率を改善する。それらはまた、より強固で再現可能な方式において、意図されたリン脂質プロファイルおよび分布を有するリン脂質配合物を製造する。これらの方法は、本明細書に記載の新規で驚くべき知見を活用し、沈殿物の検出に依存せずに所望のリン脂質含量および比率のリン脂質配合物を提供する。
【0055】
リン脂質配合物、一般的
本明細書では、改善されたリン脂質溶液、リン脂質懸濁液、および最終的にUCA配合物を製造するための方法が提供される。より詳細に記載されるように、場合により、UCA配合物は、パーフルトレンのようなガスと組み合わされた非水性リン脂質溶液から形成され得る。他の場合、UCA配合物は、非水性リン脂質溶液を水性溶媒と合わせてリン脂質懸濁液を形成し、それをパーフルトレンなどのガスと合わせることによって形成され得る。これらおよび他のリン脂質含有組成物は、本明細書中でリン脂質配合物と総称される。特定の配合物のそれぞれについて、以下でより詳細に記載される。本開示のリン脂配合物は、FDA承認DEFINITY(登録商標)微小球の製造で使用される3種のリン脂質を含み得る。これらの3種のリン脂質は、以下の通りである。
(1)1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(本明細書でDPPCと称される)、
(2)1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(本明細書でDPPAと称される)、および
(3)N-(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(本明細書でMPEG5000-DPPEと称される)。
【0056】
本開示のリン脂質配合物は、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEを含み得る。
【0057】
場合により、これらのリン脂質の1つまたは複数の修飾形態が使用され得る。例えば、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)は、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされ得る。DPPEまたは別のリン脂質にコンジュゲートされているPEGは、いくつかの非限定的な例では、1000~10,000から選択される分子量(MWまたは長さ)を有し得る。より典型的には、PEGは、約5000の分子量を有し得、その場合、それは、PEG5000と称され、DPPEにコンジュゲートされている場合、それは、PEG5000-DPPEと称される。PEGは、典型的に、脂肪族鎖末端でなくむしろリン脂質頭部基でDPPEなどのリン脂質にコンジュゲートされている。PEGは、ヒドロキシまたはメトキシ末端を有し得、それぞれHO-PEG5000またはMPEG5000と称され得る。
【0058】
一例として、DPPEにコンジュゲートされている場合、コンジュゲートは、HO-PEG5000-DPPEまたはMPEG5000-DPPEと称され得る。後者のコンジュゲートの完全化学名は、N-(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン、モノナトリウム塩(本明細書ではMPEG5000-DPPEと称される)である。
【0059】
DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEは、約77~90モル%のDPPC、約5~15モル%のDPPA、および約5~15モル%のDPPE(MPEG5000-DPPEを含めて)などのモル濃度百分率で使用され得る。各リン脂質の好ましい比率としては、6.0対53.5対40.5(DPPA:DPPC:MPEG5000-DPPE)の重量%比、または10対82対8(10:82:8)(DPPA:DPPC:MPEG5000-DPPE)のモル%比が挙げられる。
【0060】
本開示の残りの部分は、便宜上および簡潔さのためにDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを具体的に指すが、本明細書で提供される教示は、単独で、またはDPPCおよびMPEG5000-DPPEの組み合わせなどであるが、これに限定されるものではない組み合わせで、これらのまたは他のリン脂質を利用する方法および/またはこれらを含む組成物を包含することを意図するものと理解される。
【0061】
本明細書で提供される様々な方法は、本明細書に記載のリン脂質配合物を製造するために使用される成分の二価金属濃度を測定することを伴う。特に、沈殿は、リン脂質懸濁液ステップでなく、リン脂質溶液ステップにおいて最初に観察される現象のようであることから、特に重要なのは、リン脂質溶液を作製するために使用される成分である。カルシウムおよびマグネシウム濃度のような二価金属カチオン濃度を測定するために使用され得る方法が実施例をはじめとして本明細書でより詳細に記載される。いくつかの方法は、例えば、MPEG5000-DPPEなどの1つの成分のみの二価金属カチオン濃度を測定することを伴い得る。他の方法は、例えば、2種または3種のリン脂質などの2つ以上の成分の二価金属カチオン濃度を測定することを伴い得る。いくつかの実施形態では、成分は、測定が行われる前に一緒に組み合わされ得る。なおも他の方法は、リン脂質配合物を製造するために使用される、リン脂質溶液などの非水性溶媒を含めた全ての成分の二価金属カチオン濃度を測定することを伴う。このような測定は、成分を合わせる前または後に行われ得る。例えば、リン脂質溶液を作製するために使用される個々の成分が測定され得、またはリン脂質溶液自体が測定され得る。
【0062】
本明細書で提供される様々な他の方法は、リン脂質配合物を製造するために使用されるリン脂質溶液などの成分を二価金属カチオン濃度に基づいて選択することを伴う。より具体的には、方法は、カルシウム濃度なしもしくは低いカルシウム濃度またはマグネシウム濃度なしもしくは低いマグネシウム濃度など、二価金属カチオン濃度を有さないかまたは低い二価金属カチオン濃度を有するとして特徴付けられるかまたは同定された1つまたは複数の成分を選択することを伴う。いくつかの方法は、カルシウム濃度なしもしくは低いカルシウム濃度またはマグネシウム濃度なしもしくは低いマグネシウム濃度など、二価金属カチオン濃度を有さないかまたは低い二価金属カチオン濃度を有するとして特徴付けられるかまたは同定されたMPEG5000-DPPEなどの1つの成分を選択することを伴い得る。いくつかの方法は、それらの組み合わされた二価金属カチオン濃度に基づいて2つ以上または全ての成分を選択することを伴い得る。したがって、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE、ならびに非水性溶媒および/またはその個々の成分などであるが、これに限定されるものではない他の成分は、二価金属カチオン濃度を有さないかまたは低い二価金属カチオン濃度を有することを個々の特徴とし得るが、それらが一緒に使用される場合、それらの合わされた二価金属カチオン濃度は、二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度の要件をもはや満さなくなり、沈殿を引き起こすことが想定される。したがって、これらおよび他の場合、2種または3種のリン脂質などの成分の2つ、3つまたは全ては、それらの合わされた二価金属カチオン濃度が二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度として特徴付けられるように選択され得る。
【0063】
リン脂質溶液
本明細書の用法では、リン脂質溶液は、非水性溶媒中に1つまたは複数のリン脂質を含む組成物を指す。リン脂質溶液は、非水性溶媒中にDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを最低限含み得る。リン脂質溶液は、非水性溶媒中にDPPCおよびMPEG5000-DPPEを最低限含み得る。
【0064】
非水性溶媒は、本明細書の用法では、リン脂質の熔解を引き起こし、それによって溶液(すなわちリン脂質溶液)を形成する溶媒である。好ましくは、リン脂質溶液中に存在する非水性溶媒は、特にそれがヒト対象などの対象に投与される最終UCA配合物まで持続することから、薬学的に許容可能なものである。特定の実施形態では、リン脂質溶液を作製するために使用される非水性溶媒は、メタノール、もしくはトルエン、もしくはメチルt-ブチルエーテル(MTBE)でなく、またはそれを含まない。
【0065】
リン脂質溶液の非水性溶媒は、単一の溶媒であり得、またはそれは溶媒の組み合わせであり得る。非水性溶媒としては、プロピレングリコール(本明細書でPGと称されることもある)およびグリセロール(本明細書でGと称されることもある)が挙げられるが、これに限定されるものではない。いずれも液体ストックとして提供される。場合により、リン脂質溶液の非水性溶媒は、PG単独であり得、またはそれは、PGおよびG(PG/Gと称されることもある)の混合物であり得る。少なくともPGを含む非水性溶媒は、本明細書でPG含有非水性溶媒と称されることもある。PG/G混合物は、5:1~1:5(重量比)の範囲の比率を含む。いくつかの実施形態では、1:1のPG:Gw/w比が使用される(かつ本明細書では1:1混合物と称される)。
【0066】
リン脂質溶液は、1つまたは複数の緩衝剤をさらに含み得る。このような緩衝液は、上記のものなどの非水性溶媒を緩衝化できるものである。例としては、限定なしに、酢酸緩衝液(例えば、酢酸ナトリウムおよび酢酸の組み合わせ)、安息香酸緩衝液(例えば、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸の組み合わせ)、およびサリチル酸緩衝液(例えば、サリチル酸ナトリウムおよびサリチル酸の組み合わせ)が挙げられる。使用され得る他の緩衝液としては、ジエタノールアミン緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、グルタミン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、グルタル酸緩衝液、トリカブト(aconite)緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、グリセリン酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、およびトリス緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態では、酢酸緩衝液が使用される。非水性溶媒で使用される緩衝液は、それがリン酸緩衝液ではないことを意図した非リン酸緩衝液であり得る。
【0067】
緩衝液の濃度は、当業者によって理解されるように緩衝液のタイプによって変動し、その決定は、当業者の技術範囲内である。非水性溶媒中の緩衝液濃度は、約5mMなど、約1mM~約50mM、または約1mM~約20mM、または約1mM~約10mM、または約1mM~約5mMなどの約1mM~約100mMの範囲であり得る。
【0068】
したがって、リン脂質溶液は、DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEなどの1つまたは複数のリン脂質、PGであるかまたはPGを含む非水性溶媒、および任意選択的に酢酸緩衝液などの緩衝液を含み得る。
【0069】
リン脂質溶液は、いくつかの方式で作製され得、そのいくつかが以下でより詳細に記載される。一般に、非水性溶媒は、リン脂質との接触前に加温され得、使用される場合、緩衝液がリン脂質との接触前に最初に溶媒中に存在し得る。溶媒および次に溶液は、リン脂質の溶解を促進するために撹拌され得る。
【0070】
重要なことに、二価金属カチオンに関連するリン脂質沈殿は、非水性溶媒中で、したがってリン脂質溶液を作製する過程で生じることが見いだされた。したがって、本明細書に記載されているように、様々な方法は、個々のまたは集合的なリン脂質、PGおよびGなどの非水性溶媒、使用される場合には酢酸緩衝液などの緩衝液などをはじめとする、リン脂質溶液を作製するために使用される様々な成分の二価金属カチオン濃度を測定するステップを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、リン脂質溶液の二価金属カチオン濃度の測定の代わりにまたはそれに加えて、リン脂質懸濁液の二価金属カチオン濃度が測定され得る。
【0072】
沈殿物を検出するためにリン脂質溶液を目視で観察できるが、これは必須ではない。図1は、異なる沈殿程度を有する様々なリン脂質溶液を示す写真である。
【0073】
いくつかの実施形態では、次にリン脂質溶液を使用して、以下でより詳細に記載されるリン脂質懸濁液が製造される。
【0074】
いくつかの実施形態では、最初にリン脂質溶液を水性溶媒と接触させることなく、リン脂質溶液がパーフルオロカーボンガスなどの気体と直接接触されて、リン脂質封入ガス微小球が作製される。すなわち、場合により、リン脂質封入ガス微小球は、(非水性)リン脂質溶液およびガスの接触および激しい振盪(活性化と称される)によって作製される。次に、このような微小球は、水性溶媒と接触されてUCAを形成し得る。
【0075】
リン脂質懸濁液
本明細書の用法では、リン脂質懸濁液は、リン脂質溶液と水性溶媒とを含む水性リン脂質配合物を指す。リン脂質懸濁液は、DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEなどの1つまたは複数のリン脂質を含み得る。リン脂質懸濁液は、1つまたは複数のリン脂質、PGなどの非水性溶媒、および水性溶媒などの1つまたは複数のリン脂質を最低限含むであろう。
【0076】
本明細書の用法では、水性溶媒は、水であり、または主成分(重量基準)として水を含む。水性溶媒は、1つまたは複数の塩をさらに含み得、したがって生理食塩水溶媒と称され得る。それに加えてまたは代案として、それは、緩衝液を含み得、したがって緩衝生理食塩水溶媒または水性緩衝溶媒と称され得る。好ましくは、水性溶媒は、塩または緩衝液を含むかどうかに関わりなく、リン脂質溶液と同じく、それがヒト対象などの対象に投与される最終UCA配合物まで持続することから、薬学的に許容可能なものである。
【0077】
水性溶媒に含まれる塩としては、塩化ナトリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0078】
水性溶媒に含まれ得る緩衝剤としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、安息香酸緩衝液、サリチル酸緩衝液、ジエタノールアミン緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、ホウ酸塩衝液、炭酸塩緩衝液、グルタミン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、グルタル酸緩衝液、トリカブト緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、グリセリン酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、およびトリス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)緩衝液が挙げられるが、これに限定されるものではない。典型的には、非水性溶媒または水性溶媒のいずれかが緩衝液を構成するが、両方ではない。緩衝液の濃度は、当業者によって理解されるように緩衝液のタイプによって変動し、その決定は、当業者の技術範囲内である。水性溶媒中の緩衝液濃度は、約25mMなど、約1mM~約50mM、または約10mM~約30mM、または約20mM~約30mM、または約20mM~約25mMなどの約1mM~約100mMの範囲であり得る。
【0079】
したがって、リン脂質懸濁液は、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEなどの1つまたは複数のリン脂質、PGであるかまたはそれを含む非水性溶剤、塩化ナトリウムなどの1つまたは複数の塩を含み得る水性溶媒、任意選択的に酢酸緩衝液またはリン酸緩衝液などの緩衝液を含み得る。リン脂質懸濁液は、水性溶媒中に溶解するのではなく懸濁したリン脂質として物理的に特徴付けられ得る。
【0080】
リン脂質懸濁液は、一般に、非水性であるリン脂質溶液を水性溶媒と接触させることによって作製される。水性溶媒は、既に任意の塩および/または任意の緩衝液を含み得、または代案としてリン脂質溶液との接触後に添加され得る。水性溶媒を撹拌して、リン脂質溶液と水性溶媒との混合を確実にし得る。水性溶媒はまた、場合により、これも加温され得るリン脂質溶液との接触前に加温され得る。
【0081】
驚くべきことに、水性溶媒の二価金属カチオン濃度は、非水性リン脂質溶液(およびその合わされた成分)の二価金属カチオン濃度ほど重要ではない。例えば、沈殿物を含まないリン脂質溶液が製造されると、それは、いかなる識別可能なリン脂質沈殿物も誘発することなく、高い二価金属カチオン濃度を有する水性溶媒と組み合わせ得ることが意外にも見いだされている。したがって、高い二価金属カチオン含量に対するリン脂質感受性は、リン脂質溶液中のみまたは非水性溶媒の存在下でのみ存在するが、その点を超えて存在しないことが驚くべきことに見いだされている。同様に、沈殿物がリン脂質溶液中に形成されると、水性溶媒との接触は、たとえ加温されたとしても、その溶解をもたらさないことが見いだされている。リン脂質、特にDPPAの例えば高いカルシウムレベルなどの2価の金属カチオンレベルに対するこの示差的感受性は、これまで認識されておらず、驚くべき発見であると考えられた。
【0082】
水性溶媒の二価金属カチオン濃度は、1つまたは複数のリン脂質の沈殿を誘発するようには見えないが、それは、驚くべきことに、最も顕著にはリン酸緩衝液が水性溶媒中で使用される場合に存在し得るリン酸塩をはじめとする他の成分の沈殿を誘発する。したがって、場合により、本明細書で提供される方法は、リン酸塩を含む水性リン脂質懸濁液を作製するために使用される成分の二価金属カチオン濃度を測定することをさらに含み得る。代案として、方法は、二価金属カチオン濃度を有さないかまたは低い二価金属カチオン濃度を有するとして個々にまたは組み合わせで特徴付けられる個々の成分または合わせされた成分を選択することを含み得る。
【0083】
次に、リン脂質懸濁液を使用してリン脂質封入ガス微小球が製造され得る。
【0084】
リン脂質封入ガス微小球、およびそれらを構成するUCA配合物
明らかにされるように、本開示のリン脂質ベースの超音波造影剤は、リン脂質封入ガス微小球である。これらの微小球は、いくつかの方式で製造され得る。例えば、リン脂質溶液が水性溶媒と接触されてリン脂質懸濁液が形成され得、リン脂質懸濁液がパーフルオロカーボンガスなどのガスと接触されてリン脂質封入ガス微小球が形成され得る。別の例として、非水性リン脂質溶液がパーフルオロカーボンガスなどのガスと接触されて、リン脂質封入ガス微小球が形成され得る。いずれの場合も、それが非リン脂質溶液または水性リン脂質懸濁液であるかどうかに関わらず、リン脂質配合物は、リン脂質封入ガス微小球を作製するのに十分な方式でガスと組み合わされる。これは、通常、激しい振動または他の撹拌を伴う。十分な振盪または撹拌は、典型的には、VIALMIX(登録商標)などの装置を用いて達成され、典型的には手動では達成されない。
【0085】
リン脂質溶液またはリン脂質懸濁液は、ガスヘッドスペースを有するバイアルなどの容器内に提供される。パーフルトレンなどのパーフルオロカーボンガスが、通常、ガス交換工程により、このような容器のヘッドスペース内に導入される。次に、このバイアルは、リン脂質封入ガス微小球を形成するために激しく振盪される。この工程は、活性化として知られており、最終使用者または医療関係者が対象に投与する直前に実施される。
【0086】
微小球は、それらの内部空洞において、パーフルトレンガスをはじめとするが、これに限定されるものではない、パーフルオロカーボンガスなどのガスを含む。ガスを封入するリン脂質シェルは、単層または多層の二重層をはじめとする単層または二重層として配置され得る。微小球は、10ミクロン未満、または6ミクロン未満、または3ミクロン未満、またはより好ましくは2ミクロン未満の平均径を有し得る。これらの平均直径は、微小球の集団が分析された場合、集団の平均直径が10ミクロン未満、または6ミクロン未満、または3ミクロン未満、またはより好ましくは2ミクロン未満であることを意図する。微小球は、0.5~3ミクロン、または1~2ミクロン、または1.4~1.8ミクロン、または1.4~1.6ミクロンの範囲の平均径を有し得る。平均直径は、約1.4ミクロンであり得る。
【0087】
リン脂質封入ガス微小球を作製する工程は、活性化として知られている。十分な濃度のリン脂質封入ガス微小球を含む配合物は、本明細書で活性化配合物と称されることもある。
【0088】
「十分な」ガス微小球の濃度は、ガス微小球が(水性溶媒の介在使用なしで)リン脂質溶液を使用して製造されるか、またはリン脂質懸濁液を使用して作製されるかどうかに左右されることが理解されるであろう。典型的に、対象に投与されるUCA配合物は、投与される配合物1ml当たり少なくとも約1×10個の微小球、または1ml当たり少なくとも5×10個の微小球、または1ml当たり少なくとも7.5×10個の微小球、または1ml当たり少なくとも1×10個の微小球、または1ml当たり少なくとも1×10個の微小球、または1ml当たり約5×10個程度の微小球を含む。微小球濃度の範囲は、場合により、投与される配合物1ml当たり1×10~1×1010個の微小球、より典型的には1ml当たり5×10~5×10個の微小球であり得る。
【0089】
それらがどのように作製されるか次第で、ガス微小球は、非水性溶媒中または水性溶媒中に存在し得る。いずれにせよ、対象に投与される前に、それらは、典型的には、生理食塩水、緩衝水性溶液、または緩衝生理食塩水であり得る水性溶液中で希釈される。
【0090】
ヒト対象をはじめとする対象に典型的には静脈内投与されるUCA製剤は、4~8の範囲または4.5~7.5の範囲のpHを有し得る。場合により、pHは、約6~約7.5の範囲、または6.2~約6.8の範囲であり得る。なおも他の場合、pHは、約6.5(例えば、6.5±0.5または±0.3)であり得る。場合により、pHは、5~6.5の範囲、または5.2~6.3の範囲、または5.5~6.1の範囲、または5.6~6の範囲、または5.65~5.95の範囲であり得る。なおも別の場合、pHは、約5.7~約5.9の範囲(例えば、範囲の一端または両端の±0.1、または±0.2、または±0.3)であり得る。別の場合、pHは、約5.8(例えば、5.8±0.15または5.8±0.1)であり得る。
【0091】
ガスは、好ましくは、リン脂質溶液およびリン脂質懸濁液をはじめとする本明細書で提供されるリン脂質配合物に実質的に不溶性である。ガスは、六フッ化硫黄またはパーフルオロカーボンガスなどの非可溶性フッ素化ガスであり得る。パーフルオロカーボンガスの例としては、パーフルオロプロパン、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンが挙げられる。使用され得るガスの例は、米国特許第5,656,211号明細書に記載され、参照により本明細書に援用される。重要な実施形態では、ガスは、パーフルオロプロパンである。
【0092】
二価金属カチオン、および同物質を測定する方法
二価金属カチオンは、価数2の二価の金属イオンである。これらとしては、バリウム(2+)、ベリリウム(2+)、カドミウム(2+)、カルシウム(2+)、クロム(2+)、コバルト(2+)、銅(2+)、ユウロピウム(2+)、ガドリニウム(2+)、ゲルマニウム(2+)、鉄(2+)、ランタン(2+)、鉛(2+)、マグネシウム(2+)、マンガン(2+)、水銀(2+)、ニッケル(2+)、オスミウム(2+)、白金(2+)、ルテニウム(2+)、ストロンチウム(2+)、スズ(2+)、ウラン(2+)、バナジウム(2+)、イットリウム(2+)、および亜鉛(2+)が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、関心のある二価金属カチオンは、カルシウム、マグネシウム、およびマンガンである。いくつかの実施形態では、関心のある二価金属カチオンは、カルシウムおよびマグネシウムであり、したがってカルシウムおよびマグネシウムのみが測定され、またはそれらのカルシウムおよびマグネシウム含量のみに基づいて成分が選択される。いくつかの実施形態では、関心のある二価金属カチオンは、カルシウムであり、したがってカルシウムのみが測定され、またはそれらのカルシウム濃度に基づいて成分が選択される。
【0094】
二価金属カチオンの影響
本明細書に記載されるように、二価金属カチオンは、UCA配合物を製造するために使用される成分の1つまたは複数に存在し得る。それらの存在は、例えば、その時点でリン脂質沈殿が誘発され得る、このような成分が非水性溶媒と組み合わされてリン脂質溶液を形成する時点まで、または例えば、その時点でリン酸塩沈殿が誘発され得る、このような成分が水性溶媒と組み合わされてリン脂質懸濁液を形成する時点まで認識されなくてもよい。驚くべきことに、本開示に従って、MPEG5000-DPPEリン脂質ストックは、組み合わされると、DPPAリン脂質の沈殿を少なくとも引き起こすのに十分に高い濃度でカルシウムおよびマグネシウムを含有することが発見された。したがって、二価金属カチオンは、異なるリン脂質に対して異なる影響を有し得、リン脂質(または他の成分)が沈殿を誘導するのに十分な濃度でこのようなカチオンを含有するかどうかは、使用者に容易に分からないこともある。
【0095】
本発明者らは、様々なUCA配合物を製造する工程において、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含むリン脂質ブレンドと合わせた場合、非水性溶媒が濁ることを発見した。さらに、濁った外観は、DPPAリン脂質の沈殿による可能性が高いと判定された。しかし、本発明者らに知られていなかったのは、MPEG5000-DPPEが高濃度のカルシウムおよびマグネシウムイオンを含有し、これらのカルシウムおよびマグネシウム濃度がDPPA沈殿の原因である可能性が高いという事実であった。興味深いことに、このようなカチオンは、溶液中に留まるMPEG5000-DPPEの能力に影響を及ぼさないようであり、したがって、使用者は、このようなリン脂質が非水性混合物中の他の成分と組み合わされるまで、その事実を認識しないであろう。本明細書中でより詳細に記載されているさらなる試験は、DPPCおよびDPPAのような他のリン脂質などの他の成分の添加順序または存在に関わらず、その後に高カルシウム濃度を有するとして特徴付けられするMPEG5000-DPPEストックをDPPAと合わせた場合に沈殿が生じることを見いだした。十分に高いカルシウムおよびマグネシウム濃度などの二価金属カチオン濃度の存在下でPGを含む非水性溶媒中では沈殿するが、同様に高濃度のカルシウムおよびマグネシウムのいずれかまたは両方を有する水性溶媒では沈殿しない、DPPAの感受性は、さらに驚くべきことである。換言すれば、PGを含む非水性溶媒中でDPPA沈殿を引き起こしたカルシウムの濃度は、水性溶媒中ではDPPA沈殿を引き起こさず、これも驚くべきことであった。
【0096】
二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度
本明細書の用法では、カルシウム濃度なしまたは低いカルシウム濃度をはじめとする、二価金属カチオン濃度を有さないかまたは低い二価金属カチオン濃度を有するとして特徴付けられるかまたは同定された成分が選択される。このような二価金属カチオン濃度は、重量測定値(すなわち関心のある成分がその中に存在する、基礎マトリックスまたは溶媒の単位重量当たりの二価金属陽イオンの重量)として表される。1グラムあたりのマイクログラム濃度は、代案として百万分の1またはppmと称される。
【0097】
このような成分のカルシウム濃度なしまたは低いカルシウム濃度は、リン脂質溶液またはリン脂質懸濁液を形成するために、その成分がどの程度使用されるか、換言すれば、このような成分がどの程度希釈されるかにさらに左右される。
【0098】
最も単純な状況では、1つの成分のみが関心対象であり、そのカルシウム濃度のみが測定され、またはそのカルシウム濃度に基づいてその成分のみが選択される。本開示に基づいて、当業者は、リン脂質溶液またはリン脂質懸濁液中の沈殿を避けるために、その成分中でどの程度カルシウムが許容されるかを理解して決定できるであろう。
【0099】
一例として、リン脂質ストック(典型的に粉末などの固体として提供される)中のカルシウム濃度は、リン脂質1グラム当たりのカルシウム重量で表される。一例は、MPEG5000-DPPEの1グラム当たりのカルシウム重量、またはDPPCの1グラム当たりのカルシウム重量である。2種のリン脂質などの2つの成分を合わせる場合、測定値は、MPEG5000-DPPEとDPPCとを合わせた1グラムあたりのカルシウムの重量であり得る。
【0100】
カルシウムなしなど、二価の金属カチオンがないことは、当該技術分野で公知の方法および/または本明細書で提供される方法を用いて検出不能なカチオンの濃度を指す。
【0101】
リン脂質ストック中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、特定の成分に左右される。
【0102】
MPEG5000-DPPEリン脂質ストック中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、345ppm未満、230ppm未満、115ppm未満、57.5ppm未満、および11.5未満などの510マイクログラム/グラム(すなわちMPEG5000-DPPEの1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(510ppm未満とも称される)である。
【0103】
DPPCリン脂質ストック中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、270ppm未満、180ppm未満、90ppm未満、45ppm未満、および9ppm未満などの390マイクログラム/グラム(すなわちDPPCの1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(390ppm未満とも称される)である。
【0104】
DPPAリン脂質ストック中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、2340ppm未満、1560ppm未満、780ppm未満、390ppm未満、および78ppm未満などの3440マイクログラム/グラム(すなわちDPPAの1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(3440ppm未満とも称される)である。
【0105】
リン脂質ブレンド中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、150ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、および5ppm未満などの210マイクログラム/グラム(すなわちリン脂質ブレンド1グラム当たり、またはMPEG5000-DPPEおよびDPPCおよびDPPAの合わされた重量1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(210ppm未満とも称される)である。
【0106】
プロピレングリコール中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、2.1ppm未満、1.4ppm未満、0.7ppm未満、0.35ppm未満、および0.07ppm未満などの3.1マイクログラム/グラム(すなわちプロピレングリコールの1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(3.1ppm未満とも称される)である。
【0107】
1:1(重量対重量)のプロピレングリコールおよびグリセロール混合物中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、7.8ppm未満、5.2ppm未満、2.6ppm未満、1.3ppm未満、および0.26ppm未満などの10.4マイクログラム/グラム(すなわちプロピレングリコールおよびグリセロールを合わせた1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(10.4ppm未満とも称される)である。
【0108】
グリセロール中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、15.3ppm未満、10.2ppm未満、5.10ppm未満、2.6ppm未満、および0.51ppm未満などの20.4マイクログラム/グラム(すなわちグリセロールの1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(20.4ppm未満とも称される)である。
【0109】
非水性溶媒としてプロピレングリコールのみを含むリン脂質溶液中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、2.1ppm未満、1.4ppm未満、0.7ppm未満、0.35ppm未満、および0.07ppm未満などの3.1マイクログラム/グラム(すなわちリン脂質溶液の全成分1グラム当たりの二価金属カチオンのマイクログラム)未満(3.1ppm未満とも称される)である。リン脂質溶液の組成に基づいて理解されるように、重量基準による主成分は、非水性溶媒であり、この具体的事例ではプロピレングリコールである。
【0110】
同一の濃度限界がカルシウム濃度およびマグネシウム濃度ならびにカルシウムおよびマグネシウム濃度の合計に適用されるものと理解される。
【0111】
本開示は、リン脂質溶液の性質に応じて、任意選択的に、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールなどの非水性溶媒の二価金属カチオン濃度の測定と一緒に、例えば、リン脂質ストックの1つ、2つまたは3つ全てなど、リン脂質溶液中の1つまたは複数の成分中の二価金属カチオン濃度の測定を検討する。これらの成分のいずれかが、上記のレベルを超える二価金属カチオン濃度を含有する場合、このような成分を用いてリン脂質溶液を作製すると、このようなリン脂質溶液は沈殿を起こし易いことが予測される。
【0112】
いくつかの実施形態は、単一の成分をその二価金属カチオン濃度について分析すること、およびこのような濃度が「二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度」であれば、たとえ残りの成分がその二価の金属カチオン濃度について分析されていなくても、成分を残りの成分と組み合わされ得ることを検討する。リン脂質溶液の成分は、個々にまたはブレンドとして提供されるかどうかに関わらず、リン脂質ストック、プロピレングリコールおよびグリセロールなどの非水性溶媒、および任意選択的に緩衝液を含む。
【0113】
いくつかの実施形態は、リン脂質溶液の1つ以上であるが全てでない成分をそれらの二価金属カチオン濃度について測定することを検討する。場合により、成分の1つが、上に列挙される「二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度」の限界を超える二価の金属カチオン濃度を有する場合、それは、リン脂質溶液(またはリン脂質ブレンド)を製造するために使用されないこともある。いくつかの例では、いかなる成分も、「二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度」を超える二価の金属カチオン濃度を有するとして特徴付けられずまたは同定されないこともある。しかし、このような成分が組み合わされて使用される場合、合わされた二価金属カチオン濃度は、それぞれがリン脂質溶液に寄与する量に基づいて決定され得る。合わされた二価金属カチオン濃度は、リン脂質溶液について上記で定義された「二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度」を超えても超えなくてもよいことが検討される。
【0114】
全体を通して考察されるように、本明細書に記載される様々なレベルは、二価金属カチオンを指す一方、カルシウムに等しく適用される。これらの実施例は、リン脂質の沈殿が明白である最も低いカルシウム濃度が、さもなければ約0.7ppmとも称される、非水性溶媒1グラム当たり約0.7マイクログラムのカルシウムであることを実証する(実施例1および2参照)。したがって、非水性リン脂質溶液中のカルシウム濃度なしまたは低いカルシウム濃度などの二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、0.7ppm未満、0.35ppm未満、または0.07ppm未満である。リン脂質溶液中の0.7ppm未満の二価金属カチオン濃度も、二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価の金属イオン濃度と見なされるものと理解される。
【0115】
水性リン脂質懸濁液中の二価金属カチオン濃度は、水性溶媒1グラム当たりの二価金属カチオン重量として提供され得る。典型的には、リン脂質懸濁液は、非水性リン脂質溶液を水性溶媒中で約20倍に希釈することによって形成される。したがって、リン脂質懸濁液中の二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価の金属イオン濃度は、リン脂質懸濁液1グラム当たり0.035マイクログラム未満である。同様に、リン脂質溶液に由来するリン脂質懸濁液中のカルシウム濃度は、リン脂質懸濁液1グラム当たり0.035マイクログラム未満である。
【0116】
二価金属カチオンがリン脂質を沈殿させる濃度は、温度依存性であり得る。より高い温度では、より高い濃度のカチオンが、沈殿が観察される前に耐容され得る。より低い温度では、より低い濃度のカチオンが沈殿の発生を引き起こし得る。
【0117】
一例として、約55℃(例えば、50~60℃)の温度では、二価金属カチオン濃度なしまたは低い二価金属カチオン濃度は、リン脂質溶液または非水性溶媒1グラム当たり0.7マイクログラム未満のカルシウムの二価金属カチオン濃度である。このレベルは、リン脂質溶液がより低い温度で製造される場合、わずかに低いことができる。あるいは、リン脂質溶液がより高い温度で製造される場合、このレベルは、わずかに高いことができる。
【0118】
カルシウム源
実施例に示されているように、リン脂質溶液は、意外かつユニークにカルシウムレベルに対して感受性である。このユニークな感受性は、これまで認識されていなかった。リン脂質溶液の製造に対する、究極的にはUCAに対するカルシウムの影響を考慮すると、リン脂質溶液のカルシウム濃度を測定し、制御することが重要である。カルシウムは、下述されるように、リン脂質ストックおよび非水性溶媒をはじめとするリン脂質溶液の各成分中に存在し得る。
【0119】
カルシウムおよびマグネシウムは、周期表第II族の二価のアルカリ土類金属である。カルシウムは、地球の地殻中に5番目に多く存在する元素であり、カチオンCa2+は、海水中でも5番目に豊富な溶存イオンである。それは、「硬度」に応じて水道水中に様々なレベルで見られる。総水硬度は、Ca2+およびMg2+のモル濃度の合計であり、0~60ppmの軟質から非常に硬質の硬度≧181に及ぶ。
【0120】
カルシウムおよびマグネシウムは、バイオディーゼル由来の粗製グリセロール抽出物でも様々な濃度で見いだされる。カルシウムおよびマグネシウムのレベルは、バイオディーゼル製造のための種子油次第で、それぞれ12ppm~163ppmおよび4ppm~127ppmの範囲にあると報告された(J.C.Thompson 2006 Applied Engineering in Agriculture Vol.22(2):261-265)。グリセロールの主要な供給源は、このバイオディーゼル副産物に由来する。粗製グリセロール抽出物は、有機不純物を除去する活性炭、未反応グリセロールエステルを除去するアルカリ、および塩類を除去するイオン交換での処理によって精製され得る。高純度グリセロール(>99.5%)は、多段階蒸留により得られ、グリセロールは、沸点が高い(290℃)ため、真空が役立つ。
【0121】
工業的に、プロピレングリコールは、酸化プロピレンから製造される。製造業者により、200℃(392°F)~220℃(428°F)での非触媒高温プロセス、またはイオン交換樹脂または少量の硫酸またはアルカリの存在下において150℃(302°F)~180℃(356°F)で進行する触媒法を用いる。最終製品は、20%のプロピレングリコール、1.5%のジプロピレングリコール、および少量の他のポリプロピレングリコールを含有する。さらなる精製は、典型的には99.5%以上の完成工業グレードまたは米国薬局方/日本国薬局方/欧州薬局方/英国薬局方グレードのプロピレングリコールを製造する。プロピレングリコールはまた、バイオディーゼル副生成物であるグリセロールから変換され得る。
【0122】
薬局方グレードのプロピレングリコールおよびグリセリンのカルシウムおよびマグネシウム含量は、米国薬局方、欧州薬局方、英国薬局方または日本薬局方の分析要求事項の証明として定量されていない。
【0123】
リン脂質DPPAは、適切なpHでイオン化され得るリン酸塩を含有する。リン酸塩の2つのヒドロキシル基に対するpKaは、それぞれ6.2および1.8である(Tatulian Ionization and Binding,511-552 Phospholipid Handbook,Ed.G Ceve 1993)。DPPAは、異なる塩形態として市販されている。通常、Na塩が使用されるが、Ca塩も利用可能である。
【0124】
DPPCは、両性イオンであり、したがって対イオンを必要としない。
【0125】
MPEG5000-DPPEは、リン酸塩のヒドロキシルおよびエタノールアミンのアミンについて、1.9および9.3のpKaを有する修飾DPPEである(Tatulian Ionization and Binding,511-552 Phospholipid Handbook,Ed.G Ceve 1993)。MPEG500-DPPEは、Na塩形態で入手できる。
【0126】
二価金属カチオン濃度を測定する方法
二価金属カチオン濃度の定量は、いくつかの既知の技術の1つを用いて実施され得る。これらとしては、原子吸光分析(AAS)、火炎測光法または火炎原子発光分光法(FAES)、誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP-AES)などの原子分光法と、誘導結合プラズマ質量分光分析または錯滴定などの他の方法とが挙げられる。分光学的アプローチは、火炎源によって提供される熱エネルギーによって解離された際の、アルカリ金属(第I族)およびアルカリ土類金属(第II族)の金属イオンの吸収または放出特性を利用する。ICP-MSは、非常に低い濃度で金属を検出できる質量分析法の一タイプである。これは、サンプルを誘導結合プラズマでイオン化し、次に質量分光計を用いて、これらのイオンを分離し定量することによって達成される。これらの方法のいくつかは、実施例で使用される。
【0127】
錯滴定は、二価金属カチオン濃度を検出する別の方法である。この方法は、色指示薬と競合する、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のカルシウムおよびマグネシウムイオンとの錯体形成を用いる。これにより、迅速な比色定量が可能になる。EDTAは、カルシウムおよびマグネシウムイオンと錯体を形成する。Eriochrome BlackT(ErioT)と称される青色色素が指示薬として使用される。この青色染料もカルシウムおよびマグネシウムイオンと錯体を形成し、その過程で青色からピンク色に変色する。染料-金属イオン錯体は、EDTA-金属イオン錯体よりも不安定である。滴定では、カルシウムおよびマグネシウムイオンを含有するサンプル溶液が過剰のEDTAと反応される。指示薬が添加され、存在する全てのCa2+およびMg2+イオンEDTAと錯体形成するため、青色のままである。
【0128】
逆滴定は、塩化マグネシウムの溶液を使用して実施される。これは、全ての過剰なEDTAが錯体形性する終点まで過剰なEDTA分子と錯体を形成する。次に、塩化マグネシウム溶液の残りのマグネシウムイオンは、ErioT指示薬と錯体を形成し、その色を直ちに青色からピンク色に変化させる。
【0129】
合成法
本開示は、リン脂質封入ガス微小球を含むUCA配合物を形成するために、パーフルオロカーボンガスと使用することが意図される、リン脂質溶液およびリン脂質懸濁液を製造するための方法を提供する。好ましい実施形態では、リン脂質は、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEなどのDPPEである。
【0130】
リン脂質溶液は、下述されるように、いくつかの方式で作製され得る。これらの方法は、ブレンド法および非ブレンド法として広義に特徴付けられる。出発リン脂質ストックは、固体(例えば、粉末)形態または液体形態であり得る。
【0131】
ブレンド法
ブレンド法は、そのリン脂質含量およびリン脂質分布に関してより均一(したがってより均質)である、場合により単純なリン脂質混合物と比較してより高い純度を有する固体リン脂質混合物を提供するために、リン脂質が互いに密接にブレンドされる方法を指す。
【0132】
この方法は、適切なブレンド溶媒系にそれらを溶解または懸濁することにより、3種のリン脂質の均質分散液を作製し、次に均等に分布したリン脂質を溶媒から分離する。リン脂質からのブレンド溶媒の分離は、乾燥、凍結乾燥、蒸留などを伴い得、またはそれは追加的なブレンド溶媒を使用した沈殿を含み得る。中性脂肪のためのブレンド溶媒は、ジエチルエーテルまたはクロロホルムなどの比較的非極性の溶媒である。それ自体がより極性である膜結合脂質には、アルコール(例えば、メタノールおよびエタノール)などのより極性のブレンド溶媒が必要である。クロロホルムも特に中間極性の脂質に使用され得る。メタノールと混合すると、クロロホルムは、一般的な溶媒となる。ジクロロメタン(またはメチレンジクロライド)は、同様の抽出剤であるが、より酸化されにくい。ヘキサンは、極性の低い脂質に使用され得る。これは、水/アルコール混合物から中性脂質を抽出するために使用され得る。石油エーテルは、5~8個の炭素原子を有する様々な炭化水素の混合物であり、場合によりヘキサンの代わりに使用され得る。他のブレンド溶剤としては、限定なしにシクロヘキサンおよびトルエンが挙げられる。
【0133】
本明細書でより詳細に記載されるように、特定のブレンドは、1つまたは複数の所望のリン脂質(例えば、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE)をブレンド溶媒系中で接触させて、最初にこのようなリン脂質を溶解させ、次に任意選択的にこのような溶液を濃縮し、次にブレンド溶媒を除去することまたはこのような溶媒からリン脂質ブレンドを沈殿させることのいずれかによって形成される。ブレンド溶媒は、リン脂質を溶解し、それによってリン脂質溶液を形成させるために、後に使用される非水性溶媒と混同されるべきでない。この沈殿が所望の事象であることも明らかであり、カルシウム、別の二価カチオン、または二価カチオンの組み合わせの存在により、リン脂質溶液を形成する後のステップ中に起こり得る望ましくないリン脂質沈殿と混同されるべきでない。
【0134】
リン脂質溶液を製造するいくつかの方法は、リン脂質ブレンドを非水性溶媒と接触させることを伴う。有機溶媒(または本明細書の用法ではブレンド溶媒)、溶解沈殿法、および水性懸濁凍結乾燥法をはじめとするが、これに限定されるものではない、リン脂質ブレンドを作製する様々な方式がある。
【0135】
有機溶媒溶出沈殿法は、いずれもその内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,084,056号明細書および国際公開第99/36104号パンフレットで詳述される。この方法の一実施形態は、以下のステップを伴う:
(a)所望のリン脂質(例えば、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE、またはDPPCおよびMPEG5000-DPPE)を第1のブレンド溶媒系と接触させる。この溶媒系は、典型的には、例えば、CHCl/MeOH、CHCl/MeOH、およびトルエン/MeOHなどの溶媒の組み合わせである。得られた溶液を完全な溶解を達成するのに十分な温度に加温することが望ましいことがあり得る。このような温度は、好ましくは、約25~75℃、より好ましくは約35~65℃である。溶解後、熱濾過によりまたは室温まで冷却してからの濾過により、不溶解異物が除去され得る。公知の濾過法が使用され得る(例えば、重力濾過、真空濾過、または加圧濾過)。
(b)溶液は、次に、高粘度ゲル/半固体に濃縮される。濃縮は、好ましくは、真空蒸留によって実施される。回転蒸発などの溶液を濃縮する他の方法も使用され得る。このステップの温度は、好ましくは、約20~60℃、より好ましくは30~50℃である。
(c)高粘度ゲル/半固体は、次に、第2のブレンド溶媒に分散される。混合物は、好ましくは、周囲温度付近(例えば、15~30℃)でスラリー化される。有用な第2のブレンド溶媒は、リン脂質を沈殿させるものである。第2のブレンド溶媒は、好ましくは、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)である。他のエーテルおよびアルコールが使用され得る。
(d)次に、第2のブレンド溶媒の添加に際して生じる固体を収集する。好ましくは、収集された固体は、第2のブレンド溶媒(例えば、MTBE)の別の部分で洗浄される。収集は、真空濾過または遠心分離を通じて、好ましくは周囲温度で行われ得る。収集後、固体を約20~60℃の温度において真空中で乾燥させることが好ましい。
【0136】
得られた固体は、本明細書でリン脂質ブレンドと称される。
【0137】
本明細書に記載の方法のいくつかは、上記のブレンド法のいずれかに従って作製されたリン脂質ブレンドをはじめとする、リン脂質ブレンド形態のリン脂質を使用する。いくつかの方法は、メタノールおよびトルエン混合物が第1のブレンド溶媒として使用され、MTBEが第2のブレンド溶媒として使用される、上記のメタノール/トルエン/MTBE法によって作製されたリン脂質ブレンド以外のリン脂質ブレンドを使用する。明確さのために、上記の方法は、本明細書でメタノール/トルエン/MTBEリン脂質ブレンド法と呼ばれる。
【0138】
本明細書の用法では、リン脂質ブレンドは、本明細書に記載されるように、リン脂質をそれらの固体(粉末など)形態で単に合わせることから作製される混合物などの他のリン脂質混合物とは区別される。
【0139】
水性懸濁-凍結乾燥法では、リン脂質が高温で水に懸濁され、次に凍結乾燥によって濃縮される。
【0140】
米国特許第8,084,056号明細書および国際公開第99/36104号パンフレットで概説されているように、有機溶解法を用いて得られる均一に分布したリン脂質固体をはじめとするいくつかの理由から、水性懸濁液/凍結乾燥工程よりも有機溶媒溶解沈殿工程が好ましい。
【0141】
上記のメタノール/トルエン/MTBEリン脂質ブレンド法ではないいくつかのブレンド法は、メタノールおよびトルエン以外のブレンド溶媒系を使用する。これらの方法では、リン脂質がメタノール不含およびトルエン不含条件(メタノールおよびトルエン不含条件とも称される)で組み合わされて、リン脂質ブレンドが形成する。したがって、メタノールおよびトルエン不含条件は、これらの溶剤のいずれも含まない条件を指す。
【0142】
いくつかのブレンド法は、リン脂質をブレンド溶媒中で合わせてリン脂質ブレンドを形成し、次にブレンド溶媒を例えば乾燥または蒸留のいずれかによって完全に蒸発させ、乾燥リン脂質ブレンドを形成する。この乾燥リン脂質ブレンドは、次に、本明細書で提供される方法においてPGなどの非水性溶媒と接触される。
【0143】
いくつかのブレンド法は、リン脂質を水性溶媒中で組み合わせ、次に、混合物を凍結乾燥して凍結乾燥リン脂質組成物を形成する。他のブレンド法は、リン脂質を水の代わりに、(1)エタノールおよびシクロヘキサン(例えば、1:1、v:v)混合物、および(2)第三級ブタノール(t-ブタノールまたは1,1ジメチルエタノール)などであるが、これに限定されるものではない他の溶媒系と合わせる。これらの様々な溶媒に溶解した後、組成物が凍結乾燥される。凍結乾燥は、イソプロパノール/CO2浴またはアセトン/CO2浴上で凍結させ、生成物が乾燥して外観が綿状になるまで、Virtis凍結乾燥機上で乾燥させることによって実施され得る。
【0144】
上記のメタノール/トルエン/MTBEリン脂質ブレンド法ではない様々なブレンド法は、その内容全体が参照により本明細書に援用される公開された欧州特許第0923383号明細書(国際公開第1997040858号パンフレット)に記載されている。
【0145】
上記のメタノール/トルエン/MTBEリン脂質ブレンド法ではないいくつかのブレンド法は、トルエンおよびメタノールの混合物であり得るブレンド溶媒中でリン脂質を合わせて、リン脂質ブレンドを形成し、次にMTBEの非存在下でこのようなリン脂質ブレンドを沈殿させる。これらの方法では、MTBE不含条件で沈殿が生じる。
【0146】
他のブレンド法では、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE(またはDPPCおよびMPEG5000-DPPE)がそれらの乾燥固体形態で組み合わされ得、次に、このような組み合わせは、リン脂質の均一なブレンド(例えば、混合物全体にわたる均一なリン脂質分散液)を製造することを目的として、例えば、手動で粉末を撹拌して、またはタンブラーサイロミキサー、旋回スクリューミキサー、リボンミキサー、押出機、サイクロミックス、ヘンシェルミキサー、ロディゲ型ミキサー、アイリッヒ型ミキサーなどの混合装置、または製薬粉末混合のために設計された他のタイプの装置を用いて、乾燥形態で活発にかつ密接に混合され得る。均一な乾燥製品を作製するための追加的な方法論については、Deveswaran et al.Research J.Pharm.and Tech.2(2):April.-June.2009が参照され得る。
【0147】
非ブレンド法
ブレンド法とは対照的に、特定の非ブレンド法は、固体リン脂質の単純な混合を伴い、これは、より均一ではない(したがって、より均一に分散しないか、またはより不均一に分散する)混合物をもたらす傾向がある。これらの後者の混合物は、本明細書では、リン脂質ブレンドと区別するためにリン脂質混合物(または非ブレンドリン脂質混合物)と称される。
【0148】
リン脂質溶液を製造するいくつかの方法は、その固体形態のリン脂質を非水性溶媒と単に接触させることを伴う。リン脂質は、非水性溶媒と同時にまたは連続的に接触され得る。連続的である場合、任意の添加順序が使用され得る。リン脂質は、個々に非水性溶媒に添加され得、またはそれらは、最初に一緒に任意の組み合わせで組み合わされてから、非水性溶媒に添加され得る。したがって、リン脂質は、個々にかつ同時に、個々にかつ連続的に、合わせて同時に、および部分的に合わせて連続的に非水性溶媒に添加され得ることが検討される。後者の一例は、残ったリン脂質が非水性溶媒と接触される前または後に2つのリン脂質が固体形態で一緒に組み合わされ、次に非水性溶媒と接触される場合である。
【0149】
したがって、一例として、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE(またはDPPCおよびMPEG5000-DPPE)リン脂質は、個々に非水性溶媒に添加され得る。このような個々の添加は、逐次または同時添加であり得る。逐次の場合、添加順序は任意の順序であり得るが、場合により、DPPAは最も存在量が最も不溶性であり、その溶解は、他のリン脂質の1つの存在によって促進され得るため、それは、2番目または最後に添加され得る。場合により、リン脂質が個々に、または単純な混合物、またはリン脂質ブレンドとして提供されるかどうかに関わりなく、それらは、次に上記のようにPGまたはaPG/G混合物を含む非水性溶媒に溶解されて、リン脂質溶液が形成する。リン脂質溶液は、ガスと組み合わされ得、またはそれは、水性溶媒と組み合わされてリン脂質懸濁液が形成され、それが次にガスと接触され得る。
【0150】
他の場合、リン脂質ブレンドは、リン脂質を例えば水中、またはエタノールおよびシクロヘキサン(例えば、1:1、v:v)混合物中、または第三級ブタノール(t-ブタノールまたは1,1ジメチルエタノール)中に合わせることによって製造され得、次に、このような混合物は、凍結乾燥され、乾燥生成物が水性溶媒に再懸濁される。これらの場合、最終的な再懸濁された生成物は、パーフルトレンなどのガスと組み合わされ得る。本開示は、この調製物で使用される任意のまたは全ての成分がそれらの二価金属カチオン濃度について分析され得、このような個々のまたは合わされた二価金属カチオン濃度が定量され得、UCAの選択および/または製造のために使用され得ることを検討する。
【0151】
活性化を含む、超音波造影剤を製造する方法
リン脂質封入ガス微小球は、リン脂質溶液またはリン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスなどのガスと合わせて、激しく振盪することによって形成される。この工程は、本明細書で活性化と称される。このようにして形成されたUCA配合物は、リン脂質、PGなどの非水性溶媒、およびガスを最低限含み、したがって、活性化は、ガス充填リン脂質微小球を最低限もたらす。リン脂質は、DEFINITY(登録商標)の場合と同様に水性溶液中に存在し得、またはそれらは、例えば、本明細書でより詳細に記載されるDEFINITY-IIをはじめとする新規UCA配合物の場合と同様に、非水性溶液中に存在し得る。したがって、場合により、活性化は、パーフルオロカーボンガス(例えば、パーフルトレン)などのガスの存在下で水性リン脂質懸濁液を振盪することを含む。他の場合、活性化は、ガス、パーフルオロカーボンガス(例えば、パーフルトレン)の存在下でリン脂質溶液を振盪することを含む。パーフルトレン、パーフルトレンガス、およびオクタフルオロプロパンは、本明細書で同義的に使用されるものと理解される。
【0152】
振盪は、本明細書の用法では、水性溶液または非水性を問わず、溶液をかき混ぜる動作を指し、その結果ガスが容器(例えば、バイアル)内の局所周囲環境から溶液中に導入される。溶液をかき混ぜてガスの導入をもたらす、あらゆるタイプの動作が振動のために使用され得る。振盪は、一定時間後に気泡の形成を可能にするのに十分な力または速度でなければならない。好ましくは、振盪は、特定のUCA配合物によって規定されるように、短時間内に気泡が形成されるような十分な力または速度のものである。したがって、場合により、このような振盪は、例えば、30秒間、または45秒間、または60秒間、または75秒間、または90秒間、または120秒間など、約30秒間、または約45秒間、または約60秒間、または約75秒間、または約90秒間、または約120秒間行われる。場合により、活性化は、60~120秒の範囲または90~120秒の範囲の時間で起こることもある。
【0153】
本開示は、場合により、活性化されるUCA配合物のタイプ次第で、振盪時間(または持続時間)が変動することを検討する。例えば、場合により、水性UCA配合物は、非水性UCA配合物よりも短時間振盪され得る。本開示は、このような場合、振盪速度(shaking rate)(またはこれらの用語が本明細書で同義的に使用されるように振盪速度(shaking speed))が一定であり得ることを検討する。したがって、活性化または振盪装置のような活性化または振盪手段は、2つ以上の異なる所定の時間にわたり、1つの速度(例えば、毎分の振盪動作の数に関して定義される)で振盪されるように設定され得る。
【0154】
本開示は、場合により、活性化されるUCA配合物のタイプ次第で振盪速度が変動することをさらに検討する。例えば、場合により、(水性)リン脂質懸濁液は、(非水性)リン脂質溶液よりも緩慢な振盪速度で振盪され得る。本開示は、このような場合、振盪時間(またはこれらの用語が本明細書で同義的に使用されるように振盪持続時間)が一定であり得ることを検討する。
【0155】
DEFINITY(登録商標)は、下述されるように、VIALMIX(登録商標)を用いて活性化され得る。パーフルトレン存在下における(水性)リン脂質懸濁液の激しい振盪を伴うDEFINITY(登録商標)活性化は、VIALMIX(登録商標)を用いて約45秒間持続する。特に断りのない限り、活性化時間に関する「約」という用語は、表記される時間の±20%の時間(すなわち45±9秒間)を意図する。
【0156】
DEFINITY-IIもVIALMIX(登録商標)で活性化され得る。パーフルトレン存在下における(非水性)リン脂質溶液の激しい振盪を伴うDEFINITY-II活性化は、約60~120秒間持続する。場合により、DEFINITY-IIは、約75秒間(すなわち75±15秒間)にわたり活性化される。DEFINITY-IIは、90~120秒間などのより長い時間にわたり活性化され得る。
【0157】
振盪は、旋回(ボルテックスなどによる)、左右または上下の動作であり得る。さらに、異なるタイプの動作が組み合わされ得る。振盪は、水性または非水性リン脂質溶液を保持する容器(例えば、バイアル)を振盪することで、または容器(例えば、バイアル)それ自体は振盪せずに、容器(例えば、バイアル)内の水性または非水性溶液を振盪することで起こし得る。工程を標準化するために機械によって振盪が実施される。機械式振盪機は、当技術分野で公知であり、それらの振盪機構または手段を本開示の装置で使用され得る。例としては、歯科用途で使用されるもののようなアマルガム機が挙げられる。激しい振盪は、毎分少なくとも1000回、少なくとも2000回、少なくとも3000回、少なくとも4000回、少なくとも4500回、少なくとも5000回またはそれ以を超える振盪動作を包含する。場合により、激しい振盪は、毎分4000~4800回の振盪動作の範囲の振盪を含む。例えば、VIALMIX(登録商標)は、毎分回転数4530の「8の字形」を目標とし、毎分回転数4077~4756の範囲の振盪速度を許容する。ボルテックスは、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000以上の毎分回転数を包含する。毎分回転数が少なくとも1000の速度であるボルテックスは、激しい振盪の一例であり、場合により、より好ましい。毎分回転数1800のボルテックスが最も好ましい。
【0158】
振盪速度は、必要な振盪持続時間に影響を及ぼし得る。より速い振盪速度は、最適な微小気泡形成を達成するのに必要な振盪時間の長さを短縮する傾向がある。例えば、VIALMIX(登録商標)上での5秒間にわたる4530rpmでの振盪は、合計3398回転を達成する。3000rpmでの振盪は、同一回転数を達成するために68秒を要する。必要な持続時間と振盪速度とは、移動経路の形状と振盪の振幅によっても影響を受ける。容器内の液体が到達する速度、および方向の変化時に加えられる力がガスの組み込みに影響を及ぼすこれらの態様は、振盪機アーム長さおよび経路、容器形状およびサイズ、充填容量、および配合物粘度に基づく影響を受ける。水は、15℃でおよそ1.14cpsの粘度を有する(Khattab,I.S.et al.,Density,viscosity,surface tension,and molar volume of propylene glycol+water mixtures from 293 to 323 K and correlations by the Jouyban-Acree model Arabian Journal of Chemistry(2012)。対照的に、プロピレングリコールは、25℃で42cpsの粘度を有し(Khattab,I.S.et al.,Density,viscosity,surface tension,and molar volume of propylene glycol+water mixtures from 293 to 323 K and correlations by the Jouyban-Acree model Arabian Journal of Chemistry(2012)、グリセロールは、15℃で2200cpsの粘度を有する(Secut JB,Oberstak HE Viscosity of Glycerol and Its Aqueous Solutions.Industrial and Engineering Chemistry 43.9 2117- 2120 1951)。DEFINITY-IIは、15℃で1150cpsの高粘度を有する。DEFINITY(登録商標)は、大部分が水であるため、DEFINITY-IIよりもはるかに低い粘度を有する。
【0159】
活性化時のガス充填微小球の形成は、水性または非水性溶液上部の気泡の存在と、溶液が白色になることによって検出され得る。
【0160】
活性化は、使用されるリン脂質のゲル状態から液晶状態の相転移温度未満の温度で実施される。「ゲル状態から液晶状態への相転移温度」とは、リン脂質層(脂質単層または二重層など)がゲル状態から液晶状態に転移する温度を意味する。この転移は、例えば、Chapman et al.,J.Biol.Chem.1974 249,2512-2521に記載される。様々なリン脂質のゲル状態から液晶状態への相転移温度は、当業者には容易に明らかであり、例えばGregoriadis, ed.,Liposome Technology,Vol.I,1-18(CRC Press,1984)およびDerek Marsh,CRC Handbook of Lipid Bilayers(CRC Press,Boca Raton,Fla.1990),p.139に記載される。激しい振盪は、振盪速度、持続時間、振盪機アーム長および経路、容器形状およびサイズ、充填容量、および製剤粘度に基づいて配合物の加熱を引き起こし得る。
【0161】
リン脂質またはリン脂質ミクロスフェア微小球が、本明細書で提供される方法に供される前または後に操作され得ることは、本開示に照らして、当業者によって理解されるであろう。例えば、振盪が完了した後、ガス充填微小球は、それらの容器(例えば、バイアル)から抜き取られ得る。抜き取りは、シリンジの針をまたは無針スパイク(例えば、PINSYNC(登録商標))を適切に場合には気泡中などの容器内に挿入し、プランジャを引き抜くことによって所定量の液体をシリンジのバレル内に吸い込むことにより、または水性液体を添加し、混合して、プランジャを引き抜くことによってシリンジのバレル内に所定量の液体を吸い込むことにより達成され得る。別の例として、ガス充填微小球を濾過して、実質的に均一なサイズの微小球が得られてもよい。濾過アセンブリは、互いに直接隣接していてもいなくてもよい2つ以上のフィルターを含み得る。
【0162】
超音波造影剤を使用して対象を画像化する方法
本明細書では、リン脂質封入ガス微小球およびその配合物を使用する方法も提供される。ガス微小球およびその配合物は、ヒトまたは非ヒト対象において生体内で使用され得、またはそれらは生体外で使用され得る。それらは、診断または治療目的のために、または診断および治療目的の組み合わせのために使用され得る。
【0163】
ヒト対象で使用される場合、リン脂質封入ガス微小球およびその配合物は直接(無希釈)使用され得、または薬学的に許容可能な溶液などの溶液中でさらに希釈されて、1回または複数回のボーラス注入または持続注入によって投与され得る。投与は、典型的には静脈内注射である。画像化は、その直後に実施される。画像化アプリケーションは、心臓を対象にし得、またはそれは超音波画像化に対する感受性が高い身体の別の領域を伴い得る。画像化は、限定なしに、心臓、血管、心臓血管系、肝臓、腎臓および頭部をはじめとする身体の1つまたは複数の臓器または領域の画像化であり得る。
【0164】
本発明の対象としては、ヒトおよび動物が挙げられるが、これに限定されるものではない。場合により、ヒトが好ましい。動物としては、犬および猫などのコンパニオンアニマル、ならびに雄牛および馬などの農業動物または賞玩動物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0165】
UCAは、有効量で投与される。有効量は、意図される生体内応答および/または適用を促進するかまたはそれをもたらす量であろう。超音波用途などの画像化用途に関連して、有効量は、対象のまたは対象の領域の画像化を可能にするリン脂質封入ガス微小球の量であり得る。
【実施例0166】
1 例示的方法
1.1 リン脂質およびリン脂質ブレンドおよび試薬
リン脂質は、個々の粉末として使用され、粉末として一緒に合わせて混合物として使用され、または溶解および乾燥させることによって一緒にブレンドされた(詳細は後述される)。ブレンドの直接測定がなされている場合を除いて、測定された個々のリン脂質含量を使用して、非水性濃縮物または水性調製物中の最終的カルシウムまたはマグネシウム濃度を推定した。低カルシウムの溶媒を全ての試験で使用した。
【0167】
1.1.1リン脂質ブレンド
DPPC、DPPA、MPEG5000-DPPE(0.401:0.045:0.304[wt:wt:wt])をトルエン/メタノールに溶解し、真空で加温して濃縮し、次にメチルt-ブチルエーテル(MTBE)を添加することによってスラリー化し、1つのリン脂質ブレンド(LB)を製造した。固体物質を収集し、MTBEで洗浄して乾燥した(米国特許第8084056号明細書と一致する)。代案として、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE(0.401:0.045:0.304[wt:wt:wt])を55℃においてメタノール中で可溶化した。次に、メタノールを蒸発させ、リン脂質ブレンドとして固体を回収した。同様に、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE(0.401:0.045:0.304[wt:wt:wt])を固体粉末として一緒に組み合せ、粉末をスパチュラで一緒に混合した。
【0168】
1.1.1.1 リン脂質ブレンドの残留溶媒法
リン脂質ブレンド中の残留溶媒は、GCヘッドスペースを用いてFIDによって判定した。サンプルを秤量し、別の20ccヘッドスペースバイアルに移し入れ、N-メチルモルホリン中で溶解した。一連の残留溶剤標準をN-メチルピロリドン中で製造した。標準およびサンプルを、GCヘッドスペースを用いてFIDによって分析した。各溶媒の濃度は、その溶媒の検量線から計算した。
【0169】
1.1.2 カルシウム測定
ICP-MSまたはAAのいずれかを用いて、個々の脂質、脂質混合物、グリセロールおよびプロピレングリコール中のカルシウムレベルを定量した。いくつかのサンプルでは、マグネシウムおよび他の金属イオンもこれらの方法で測定した。
【0170】
1.1.1.2 ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)法
サンプルは、予め清浄化した石英消化容器内に秤量することによって製造した。マトリックススパイクを添加し、次に硝酸および塩酸と混合した。サンプルを密閉容器マイクロ波消化システムで消化した。冷却後、内部標準溶液を添加し、希釈し、He衝突モードを用いてICP-MSによって分析した。
【0171】
1.1.1.3 AA(原子吸光分析)法
サンプルは、乾燥した「微量金属清浄化」消化容器内に秤量し、硝酸と塩酸で溶解し、Hで還流させることによって製造した。サンプル溶液を水洗し濾過した。標準の組を用いて、AAを、次に検量線から読み取ったサンプルの吸光度を較正した。個々の脂質、リン脂質混合物、および配合物溶媒の結果は、表1に示される。
【0172】
【表1】
【0173】
1.2 水性配合物製造
1.2.1 非水性リン脂質濃縮物:
リン脂質濃縮物は、個々の脂質(DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE低Ca+2、またはMPEG5000-DPPE高Ca+2、または組み合わせ)を任意の順序で添加し、リン脂質ブレンド(LB)または高レベルのCa+2を含有するLBを25~115mlのプロピレングリコール(PG)、または1:1v/vのプロピレングリコール/グリセロール(PG/G)、またはグリセロールビヒクルに常に撹拌しながら55℃~70℃で添加することによって製造した。場合により、DPPAなしでまたは脂質添加前に酢酸カルシウムを添加して脂質濃縮物を製造した。
【0174】
1.2.2 水性配合物:
水性製剤は、二塩基性リン酸ナトリウム、七水和物;塩基性リン酸ナトリウム、一水和物;塩化ナトリウム;プロピレングリコール;グリセロール;最後に非水性リン脂質濃縮物を400~500mlの水に常に撹拌しながら55℃~70℃で添加することによって製造した。場合により、酢酸カルシウムを非水性リン脂質濃縮物のバルク配合溶液への添加前または後に添加した。他の場合、リン酸緩衝液は含まれなかった。
【0175】
1.3 非水性配合物製造
1.3.1 非水性配合物
任意の順序の個々の脂質(DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE低Ca+2またはMPEG5000-DPPE高Ca+2、または両方の組み合わせ)、LB、または高レベルのCa+2を含有するLBを、0.005M酢酸緩衝液(90/10、酢酸ナトリウム/氷酢酸)ビヒクルを含有する25~100mlのプロピレングリコール(PG)に常に撹拌しながら60℃±5℃で添加した。溶解に続いて、グリセロールを添加し、非水性配合物を作製した。
【0176】
1.4 ストック溶液を使用したカルシウムおよび/またはマグネシウム添加
1.4.1 初期の試験
酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム単独、および両方の混合物のストック溶液をプロピレングリコール中で製造した(それぞれ25.4μg Ca+2/g、28.0μg Mg+2/g、および14.0μg Ca+2/g+12.7μg Mg+2/g)。個々のストック溶液を33mlのプロピレングリコール含有脂質ブレンド(15mg/mL)中に合計1mLまでのアリコートで添加した。溶液をプロピレングリコール単独と比較し、最初に濁りを示す溶液を記録した。
【0177】
1.4.2 基準尺度によるフォローアップ試験
プロピレングリコール(299Ca+2μg/g)、プロピレングリコールおよびグリセロール(299Ca+2μg/g)、または水(6085Ca+2μg/g)中において、プロピレングリコール、非水性リン脂質濃縮物または水性処方物に添加したときにビヒクル適合する酢酸カルシウム、一水和物のストック溶液を製造した。添加されたカルシウムストックの最大値は、常に総容積の<12%であった。
【0178】
いくつかの非水性リン脂質濃縮物を酢酸カルシウムで滴定した。外観は、目視検査により0、+、++、+++の尺度で評価した。図1は、判定のために使用された尺度を提供し、低Ca+2脂質(DPPC、DPPAおよびMPEG5000-DPPE;0.401:0.045:0.304[wt:wt:wt])を使用して作製され、15mg総脂質/mLでプロピレングリコール中に配合された。
【0179】
1.5 濾過:
1.5.1 水性配合物
リン脂質水性懸濁液の製造サンプルは、濾過前に55℃に保持した。13mmの親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)0.22μmメンブレンシリンジフィルターを取り付けた55℃の恒温60mLシリンジにサンプルを入れた。5psiの窒素ヘッド圧力をシリンジに適用した。流量は、30秒毎の読み取りで、経時的に、濾過された溶液を秤量することによって判定された。時間点当たりの流速を計算して、9~10分間の平均流量を初期流量(0~1分間)と比較し、百分率として表した。リン脂質濃度分析のために、サンプルと並んで濾過前サンプルを収集した。
【0180】
1.5.2 非水性配合物
リン脂質非水性懸溶液の製造サンプルは、濾過前に60℃に保持した。25mmのポリエーテルスルホン(PES)0.2μmメンブレンシリンジフィルターを取り付けた60℃の恒温60mLシリンジにサンプルを入れた。10psiの窒素ヘッド圧力をシリンジに適用した。流量は、30秒毎の読み取りで、経時的に、濾過された溶液を秤量することによって判定された。時間点当たりの流速を計算して、8~9分間の平均流量を初期流量(0~1分間)と比較し、百分率として表した。透明な溶液中の流速は、フィルターが加温するにつれて増加することが見られた。サンプルを上に概説されるように収集した。
【0181】
1.6 リン脂質アッセイ:
場合により、サンプルをリン脂質含量についてアッセイした。サンプルをHPLCバイアルに移し、逆相HPLC分離およびコロナ帯電エアロゾル検出によって分析し(CAD;HPLC With Charged Aerosol Detection for the Measurement of Different Lipid Classes,I.N.Acworth,P.H.Gamache,R.McCarthy and D.Asa,ESA Biosciences Inc.,Chelmsford,MA,USA;J.Waraska and I.N.Acworth,American Biotechnology Laboratory,January 2008)、参照標準との対比で定量化した。
【0182】
1.7 製品の製造および試験
1.7.1 水性配合物
濾過された水性処方調合物(セクション1.5.1を参照されたい)を2cc Wheatonバイアル内に分取し(1.76mL)、ヘッドスペース空気をペルフルオロプロパン(PFP)ガスで置換し、バイアルをウエスト・グレイ(West grey)ブチルストッパーでシールし、アルミニウムシールで圧着した。
【0183】
1.7.2 非水性配合物
濾過された水性処方調合物(セクション1.5.2を参照されたい)を2cc Wheatonバイアル内に分取し(0.35mL)、ヘッドスペース空気をペルフルオロプロパン(PFP)ガスで置換し、バイアルをウエスト・グレイ・ブチルストッパーでシールし、アルミニウムシールで圧着した。
【0184】
1.7.3 Sysmex微小球粒径分析:
粒子サイザー粒径分析計(Malvern FPIA-3000 Sysmex)を使用して、サンプルの数および粒度分布を分析した。水性または非水性サンプルを、VIALMIX(登録商標)を用いて最適に活性化し、活性化生成物の一部を生理食塩水で希釈し、次にSysmexのサンプル容器に移した。現在の試験Sysmexは、適切なシース液を使用し、低および高出力フィールドの両方を使用してサンプルを分析し、規定のサイズ範囲(現在の試験では1~80μm)の粒径分析データを作成する。
【0185】
1.7.4 活性化された生成物の超音波コントラスト:
Philips Sonos 5500臨床超音波画像化システムを使用して、選択されたサンプルについて音響減衰を測定した。VIALMIX(登録商標)を用いた最適な活性化に続いて、10マイクロリットルのサンプルを、200mlの0.9%生理食塩水を含有する250mlのビーカーに室温においてピペットで移した。直径38mmの円形羽根付き撹拌棒が溶液の均一性を維持し、音響反射器の役割を果たした。超音波システムのs3臨床トランスデューサーをビーカーの上部に、溶液中に、かつ撹拌棒の上端から4.8cm上方に配置した。次に、サンプルの導入から10秒後、5秒間の120Hz画像をデジタルで取得し、ディスクに書き込んだ。超音波システムは、IBSモードで用いて、TGCは、全ての深度について最小値に固定し、LGCは、無効にした。最大値より18dB低く設定された出力では、メカニカルインデックス(MI)は、0.2であった。受信ゲインは、90に固定し、圧縮は、0に固定した。試験された各サンプルについて、サンプル注入前(空試験)および後に超音波データの収集がなされた。
【0186】
画像解析は、超音波システムによって作成されたファイルを読み込んでIBSモードについてdB単位で計算する、Philips QLabバージョン2.0を用いて実行した。関心のある領域を撹拌棒上に抜き出し、dB値をExcelにエクスポートした。次に、これらを完全な5秒間(およそ360ビデオフレーム)取得にわたり、平均化した。減衰測定は、平均化空試験ROI値から平均化サンプルROI値(いずれもdB単位)を減算することによって得た。これをUSトランスデューサーと撹拌棒の上部マージンとの間の距離の2倍で除して、dB/cm単位の減衰を得た。次に、値をビーカー内の計算された微小気泡濃度で除して、百万個の微小気泡/mL当たりの1センチメートル当たりのdB減衰で表した。
【0187】
実施例1.非水性リン脂質溶液へのカルシウム添加の影響
本実施例は、リン脂質沈殿に対するカルシウムおよびマグネシウムイオンの影響を実証する。
【0188】
実施例1.1:非水性溶液へのカルシウムおよびマグネシウム添加に関する初期の試験
初期の試験では、低い二価金属イオン濃度を有するとして特徴付けられる脂質ブレンド(LB、ロット1)(例示的方法の表1)をプロピレングリコールに55°±5℃で添加し、撹拌した。目視により、リン脂質が完全に溶解し、得られた溶液が透明であることを確認した。このLB溶液を、カルシウム(25.4μg Ca+2/g)、マグネシウム(28.0μg Mg+2/g)、または組み合わせ(14.0μg Ca+2/gおよび12.7μg Mg+2/gを含有する溶液を生じる1:1)で滴定したところ、それぞれ3.60μg Ca+2/g、4.23μg Mg+2/g、および2.35μg/gの合わされた金属イオン/g非水性リン脂質溶液で濁りを示した。
【0189】
実施例1.2:非水性溶液へのカルシウム添加の影響に関するフォローアップ試験
実験は、以下の通りに実施した:低二価金属イオン濃度を有するとして特徴付けられ(例示的方法の表1)、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE粉末を個々に(表2に示される順序で)または混合物としてまたはブレンドとしてのいずれかで、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるプロピレングリコール(PG)またはプロピレングリコールとグリセロール(PG/G)との1:1混合物に添加した。目視により、リン脂質が完全に溶解し、得られた溶液が透明であることを確認した(=0:格付け尺度については、セクション1.4.2の例示的方法、図1を参照されたい)。図2は、DPPC、MPEG5000-DPPE、DPPA、および酢酸カルシウムストックの連続添加時におけるプロピレングリコール中の脂質濃縮物の外観を示す(1mLのストック当たり1mLの299μgCa+2を添加し、溶液1g当たり11.1μgのCa+2を有する脂質濃縮物を生成した)。脂質濃縮物は、カルシウムが添加されるまで濁らなかった。
【0190】
PG中のまたはPG/Gの1:1混合物中のリン脂質溶液を一連の少量のカルシウム添加によって滴定した。各添加後、溶液を透明度について評価し(格付け尺度については、セクション1.4.2の例示的方法、図1を参照されたい)、+、++、および+++のスコアを生じる、最も低いカルシウム濃度が表2に示される。図3は、試験4の滴定の代表的な溶液を示す。
【0191】
【表2】
【0192】
カルシウム滴定は、リン脂質がどのようにプロピレングリコールに添加されたか(個々に、混合物としてまたはブレンドとして)に関わりなく、リン脂質溶液中に明確な濃度依存性の沈殿を生じた(表2を参照されたい)。脂質は、グリセロール単独または25mLの1:1のPG/Gのいずれにも溶解しなかったが、100mLの1:1のPG/G(試験8)に添加すると透明な溶液を達成した。カルシウムは、初期の知見と一致して、この脂質溶液中に濃度依存性の沈殿を生じた(表2を参照されたい)。全体的に、これらの滴定試験は、沈殿を生じさせる最も低いカルシウム濃度、マグネシウム濃度、および合わされた濃度が、1.5μg Ca+2/g、4.23μg Mg+2/g、および2.35μgの合わされた金属イオン/g非水性リン脂質溶液であったことを示した。
【0193】
実施例2.カルシウムを含有するリン脂質溶液成分の混合時の影響
実施例2.1:PG中のカルシウム
試験9は、以下の通りに実施した:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられ(例示的方法の表1を参照されたい)、DPPC、MPEG5000-DPPE、およびDPPA粉末を個別に(表3に示される順序で)、加熱され(55℃±5℃)撹拌される、11μg/gカルシウムを含有するPGに添加した。透明度が評価され(セクション1.4を参照されたい)、溶液は、DPPCの溶解後に透明であり、DPPAの添加後に濁りかつそのままであり、MPEG5000-DPPEの添加後に濁ったままであった。観察された濁りは、+++としてスコアされた(図1、セクション1.4)。これは、これらのリン脂質(DPPAをはじめとする)を低カルシウム含有PG(試験1の出発溶液)に添加した際に生成した透明な溶液と対照的であった。これは、カルシウム存在下であっても、リン脂質DPPCおよび高いCa+2レベルを有するMPEG5000-DPPEのみが溶解されて、この溶液が透明なままであった、試験12によってさらに強調された。
【0194】
実施例2.2:MPEG5000-DPPEからの脂質混合物中のカルシウム
初期実験は、DPPCと、DPPAと、低い(不検出のCa+2および1μg Mg+2/g、MPEG5000-DPPE)または高い(980μg Ca+2/gおよび150μg Mg+2/g、MPEG5000-DPPEロット1)のいずれかのカルシウムおよびマグネシウムを含有するMPEG5000-DPPEとを含有するリン脂質ブレンド(トルエンおよびメタノールを使用して溶解し、MTBEを添加して脂質ブレンドを沈殿させて作製された)に対して実施し、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるプロピレングリコールに添加した。2つの脂質ブレンドを混合して、およそ0、1.75、4.11、および12.9μgの合わされたCa+2およびMg+2/g非水性リン脂質溶液を有するサンプルを提供した。1.75μgの合わされたCa+2およびMg+2/g非水性リン脂質溶液は、濁りを示した。
【0195】
フォローアップ試験10および11は、以下の通りに実施した:DPPCと、DPPAと、高(980ppm Ca+2、150ppm Mg+2、ロット1)または低(4ppm Ca+2)カルシウムのいずれかを含有するMPEG5000-DPPEとを含有するリン脂質ブレンド(トルエンおよびメタノールを使用して溶解し、MTBEを添加してリン脂質ブレンドを沈殿させて作製された)を、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。透明性が評価され(セクション1.4を参照されたい)、高いカルシウム(370ppm Ca+2および54ppm Mg+2と測定された)を含有するリン脂質ブレンドでわずかな濁りが観察された(+;セクション1.4の例示的方法を参照されたい)。これは、低カルシウム(検出不能レベルのCa+2およびMg+2)を含有するリン脂質ブレンドを溶解することによって生成した透明な溶液と対照的であった(表3を参照されたい)。
【0196】
【表3】
【0197】
実施例2.3:個別に添加されたMPEG5000-DPPEからのカルシウム
試験13~17は、以下の通りに実施した:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられる(例示的方法の表1を参照されたい)DPPAおよびDPPCを個々に(表4に示される順序で)、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。異なる比率の「低」および「高」カルシウムおよびマグネシウム材料を含有するMPEG5000-DPPEを添加した。透明度が評価され(セクション1.4の例示的方法、図1を参照されたい)、カルシウムおよびマグネシウム濃度依存性の沈殿が観察された(表4および図4を参照されたい)。
【0198】
【表4】
【0199】
実施例2の概要
全体的に、これらの試験は、非水性溶媒中でもしくはリン脂質ブレンドを通じてのいずれか、または個々の化合物としてMPEG5000-DPPEとして添加された場合、でのカルシウムの添加が全て沈殿を引き起こしたことを実証している。影響が見られた濃度は、実施例1のものと比較して実施例2でも同様であった。濁り(+)を生じた最も低いカルシウム濃度は、0.7μg/g Ca+2(0.8μg/g全Ca+2およびMg+2)であった。これは、1.5~2.6μg/gと同様の濃度であり、実施例1を参照されたい。
【0200】
実施例3:水性溶媒への非水性リン脂質溶液の添加
実施例3.1:水性溶媒への添加に対する非水性リン脂質溶液中のカルシウムの影響
水性配合物に移す前に一連の試験を行って、非水性リン脂質溶液中のカルシウムの影響を調べた。これらは、1)非水性リン脂質溶液を製造するステップと、2)水性溶液を製造するステップと、3)1および2の溶液を合わせるステップとを伴う。
【0201】
実施例3.1.1:非水性溶液の製造:リン脂質の溶解後に非水性溶液に添加されたカルシウム
実施例2と一致して、試験19、20、および22の第1段階は、以下の通りであった:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるDPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE粉末(例示的方法の表1を参照されたい)を個々に(表5に示される順序で)、加熱され(55℃±5℃、70℃に加熱された試験22を除く)撹拌されるプロピレングリコールに添加した。目視により、リン脂質が完全に溶解し、得られた溶液が透明であることを確認した(セクション1.4の例示的方法、表1を参照されたい)。表5に示されるように、プロピレングリコール中の酢酸カルシウム[Ca(OAc)]の溶液を添加し、溶液を撹拌し、溶媒空試験と比較して外観の変化を観察し、透明度の評価を記録した。酢酸カルシウムを添加すると、溶液は濁った。これらのプロピレングリコール濃縮物を下述されるように水相に移した。
【0202】
実施例3.1.2 非水性溶液を製造する:MPEG5000-DPPE中のカルシウム
試験21および25の第1段階は、以下の通りであった:DPPC、DPPA(試験25には含まれない)、およびカルシウム含有MPEG5000-DPPE粉末(980ppm、MPEG5000-DPPEロット1;例示的方法の表1を参照されたい)を個々に(表5に示される順序で)、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。透明度が評価され、DPPAの添加後、試験21で著しい濁りが観察され(+++;セクション1.4の例示的方法、図1を参照されたい)、MPEG5000-DPPEの添加後に濁ったままであったのに対して、DPPAを含有しない試験25では濁りは観察されなかった。これらの非水性リン脂質溶液を下述されるように水相に移した。
【0203】
実施例3.1.3:非水性溶液を製造する:MPEG5000-DPPEからの脂質ブレンド中のカルシウム
実施例2と一致して、試験23および24の第1段階は、以下のように実施した:DPPCと、DPPAと、低(4ppm、ロット2)または高(980ppm、MPEG5000-DPPEロット1)カルシウムのいずれかを含有するMPEG5000-DPPEとを含有するリン脂質ブレンド(トルエンおよびメタノールを使用して溶解し、MTBEを添加して脂質ブレンドを沈殿させて作製された)を、それぞれ加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。透明度が評価され、高カルシウムを含有するリン脂質ブレンドで著しい濁りが観察された(+++;セクション1.4の例示的方法、図1を参照されたい)。これは、低カルシウム含有リン脂質ブレンドを溶解することによって生成した透明な溶液と対照的であった(表5を参照されたい)。これらの非水性リン脂質溶液を下述されるように水相に移した。
【0204】
実施例3.1.4:非水性溶液を製造する:リン脂質添加前のPG中のカルシウム
実施例2と一致して、試験28および30の第1段階は、以下のように実施した:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられる(例示的方法の表1を参照されたい)DPPC、MPEG5000-DPPE、およびDPPA粉末を個々に(表5に示される順序で)、11μg/gカルシウムを含有するか、またはカルシウムがリン脂質添加後に添加されるかのいずれかで、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。透明度が評価され(セクション1.4の例示的方法、図1を参照されたい)、試験28では、DPPCおよびMPEG5000-DPPEが溶解された後に溶液は、透明であったが、DPPAの添加後に濁りかつそのままであった。試験30では、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEが溶解されたた後に溶液は透明であり、Ca+2の添加後に濁った。いずれの試験の濁りも+++とスコアされた(表5を参照されたい)。これらの非水性リン脂質溶液を下述されるように水相に移した。
【0205】
実施例3.2:水性溶液を製造する:
全ての試験において、水性溶液は、以下の通りに製造した:別個の容器内で塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)、およびリン酸一ナトリウム(NaHPO・HO)を水に添加して、容器内で撹拌し、溶解するまで混合した。プロピレングリコールおよびグリセロールも必要に応じて添加し、リン脂質濃縮物の最終添加は、8:1:1の水:グリセロール:プロピレングリコール組成物に再構成される。この撹拌される溶液を55℃±5℃に保った(水性溶液を70℃に保った試験22を除く)。
【0206】
実施例3.3:非水性および水性溶液を合わせる
全ての試験において、非水性リン脂質濃縮物の水性溶液への添加は、以下の通りに行った:プロピレングリコール中の温かいリン脂質を加え、100~150rpmで撹拌した。視覚的観察を記録し、完全分散または溶解の時間(透明または曇り)を記録した。次に、これらの水性懸濁液を収集し、5psiのヘッド圧力下、55℃で0.2μmのフィルターを通して濾過した。流速を測定し、リン脂質測定のためにサンプルを採取した(手順については例示的方法を参照されたい)。濾過前および濾過後サンプルをアッセイして、濾過に伴うリン脂質損失レベルを判定した。
【0207】
【表5】
【0208】
先の実施例と一致して、これらの試験は、高カルシウムまたはカルシウムおよびマグネシウムが存在する場合に非水性リン脂質溶液中に沈殿が生じたことを示した。これは、カルシウムがリン脂質添加前にプロピレングリコール中に存在したか、リン脂質添加後に添加されたか、またはリン脂質成分の1つと共に(MPG5000DPPEと共にまたはリン脂質ブレンド中で)添加されたかどうかに関わりなく生じた。沈殿物が形成すると、それは、水性溶媒と混合した際に分散しなかった。これは、初期の濾過率が低く、多くの場合に0.2μmのフィルターをブロックする濁った水性調製物をもたらした(表5;図5)。濁った水性調製物の濾液は、透明であったが、リン脂質測定は、DPPAのレベルが一貫して低下したことを示した。この影響は、個々に添加されたリン脂質、およびブレンドとして添加されたリン脂質の両方において明らかであった。
【0209】
実施例3.4:カルシウムを含有する水性溶媒への非水性リン脂質溶液添加の影響
一連の試験を行って、リン脂質懸濁液製造に対する水性溶液中のカルシウムの影響を調べた。これらは、1)非水性リン脂質溶液を製造するステップと、2)水性溶液を製造するステップと、3)1および2の溶液を合わせるステップとを伴う。
【0210】
実施例3.4.1:非水性溶液を製造する
実施例1と一致して、試験26、27、および29の第1段階は、以下のように実施した:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられる(例示的方法の表1を参照されたい)DPPC、DPPAおよびMPEG5000-DPPE粉末を個々に(表6に示される順序で)、加熱され(55℃±5℃)撹拌されるPGに添加した。目視により、リン脂質が完全に溶解し、得られた溶液が透明であることを確認した。これらのプロピレングリコール濃縮物を下述されるように水相に移した。
【0211】
実施例3.4.2:水性溶液を製造する
別個の容器内で塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸二ナトリウム七水和物(NaHPO・7HO)、およびリン酸一ナトリウム(NaHPO・HO)を水に添加して、容器内で撹拌し、溶解するまで混合した(試験29ではリン酸塩は配合物から除外された)。プロピレングリコールおよびグリセロールも必要に応じて添加し、非水性リン脂質溶液の最終添加は、8:1:1の水:グリセロール:プロピレングリコール組成物に再構成される。いくつかの試験では、水中の酢酸カルシウム[Ca(OAc)]溶液を表6に示されるように添加した。この水性溶液を撹拌し、55℃±5℃に保った。48.4μg/gのカルシウムの添加は、リン脂質の非存在下で水性溶液中に顕著な軟凝集を引き起こすことが確認された(表6、試験Aを参照されたい)。12.2μg/gのカルシウムでは、水性溶液中に沈殿は生じなかった(表6、試験Bを参照されたい)。
【0212】
実施例3.4.3:非水性および水性溶液を合わせる
全ての試験において、非水性リン脂質濃縮物の水性溶液への添加は、以下の通りに行った:プロピレングリコールに溶解された暖かいリン脂質を添加して100~150rpmで撹拌した。視覚的観察を記録し、完全分散の時間または溶解の安定性(透明または曇り)を記録した。試験27では、水性配合物は、最初に透明であった。カルシウムを滴定し、≧30.4μg/gの濃度で濁った沈殿物が形成された(表6を参照されたい)。しかし、リン脂質を含まない水性溶液は、48.4μg/gで顕著に沈殿した(試験A:表6)ことが認識された。試験27では、水性溶液のみが影響されないカルシウムレベル(試験B、表6に基づいて12.2μg/g)では、水性リン脂質配合物の透明度に影響は見られなかった。これは、非水性リン脂質濃縮物と合わせる前にカルシウムが水性溶液に添加された(12.2μg/g)試験26で確認された。これは、リン酸緩衝液が水性溶液から除外された試験29においてさらに拡張された。最初に、非水性リン脂質濃縮物と混合される前にカルシウムが水溶液に添加され(12.2μg/g)、配合物は、透明であった。96μg/gまでの配合物へのリン脂質添加後、追加的なカルシウムが添加され、沈殿は観察されなかった。
【0213】
試験26および29の水性配合物を収集し、5psiのヘッド圧力下において55℃で0.2μmフィルターを通して濾過した。10分間での流速は、初期流量と比較して減少せず、全てのサンプルが濾過され、全体の濾過は、カルシウムを含有しない調製物と同様であった(試験19、23、および25を参照されたい)。濾過前および濾過後にサンプルを収集して比較し、濾過に伴うリン脂質損失を判定した。有意なリン脂質の損失は見られなかった(表6を参照されたい)。
【0214】
【表6】
【0215】
これらの試験は、さらに96μg/gまでのカルシウムが水性配合物中でリン脂質沈殿を引き起こさないことを実証する。しかし、12.2μg/gより高いカルシウムレベルではリン酸塩が沈殿し始める。
【0216】
実施例4:グリセロールが添加された緩衝化プロピレングリコール中に溶解するリン脂質に対する二価金属イオンの影響
実施例4.1:緩衝化非水性リン脂質濃縮物中のカルシウム滴定
試験31および32は、以下のように実施した:低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられる(例示的方法の表1を参照されたい)DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPE粉末を個々に(表7に示される順序で)、またはリン脂質ブレンド(トルエンおよびメタノールを使用して溶解し、MTBEを添加して脂質ブレンドを沈殿させて作製された)としてのいずれかで、加熱され(55℃±5℃)撹拌される酢酸緩衝化プロピレングリコールに添加した。目視により、脂質が完全に溶解し、得られた溶液が透明であることを確認した(セクション1.4の例示的方法を参照されたい)。プロピレングリコール中の酢酸カルシウム[Ca(OAc)]溶液を使用して、一連の少量のカルシウム添加によってリン脂質溶液を滴定した。溶液を撹拌し、各添加後、溶媒空試験と比較して滴定中の外観の変化を観察し、透明度の評価を記録した。この評価に基づいて濁りがスコア付けされ(方法についてはセクション1.4、図1を参照されたい)、+、++、および+++スコアを生じる最も低いカルシウム濃度が表7に示される。
【0217】
【表7】
【0218】
実施例4.2:MPEG5000-DPPEからの緩衝化非水性リン脂質濃縮物中のカルシウム滴定
試験33~36は、以下のように実施した:DPPCと、DPPAと、高(980ppm、ロット1)または低Ca+2(4ppm)のいずれかとを含有するMPEG5000-DPPEを個々に(表8に示される順序で)、またはリン脂質ブレンド(トルエンおよびメタノールを使用して溶解し、MTBEを添加して脂質ブレンドを沈殿させて作製された)として、加熱され(55℃±5℃)撹拌される酢酸緩衝化プロピレングリコールに添加した。透明度が評価され(セクション1.4の例示的方法、図1を参照されたい)、高カルシウムを含有するリン脂質ブレンドでは濁りが観察された(+または++;例示的方法、図1を参照されたい)。これは、低カルシウム含有リン脂質ブレンドを溶解することによって生成した透明な溶液と対照的であった(表8を参照されたい)。
【0219】
実施例4.3:グリセロール添加
これらの緩衝化非水性リン脂質溶液にグリセロールを300rpmで撹拌しながら移し入れた。多くの気泡が混合溶液中に捕捉されたが、撹拌機が停止すると消失した。視覚的観察を記録し、透明度レベル(透明または濁りのいずれか)を記録した。次に、これらのPG/G溶液を収集し、10psiのヘッド圧力下において60℃で0.2μmフィルターを通して濾過した。流速を測定し、リン脂質測定のためにサンプルを収集した。濾過前および濾過後サンプルを収集し比較し、濾過に伴うリン脂質損失を判定した。
【0220】
【表8】
【0221】
これらの試験は、沈殿が緩衝化非水性リン脂質溶液中でカルシウム濃度依存的に生じたことを示した。これは、緩衝化非水性リン脂質溶液が個々のリン脂質または脂質ブレンドを用いて作製されたかどうかに関わらず、有意差がない濃度で生じた。緩衝溶液が初期沈殿を引き起こす濃度(5.8~11.3μg/gCa+2)は、非緩衝溶液(1.5~2.3μgCa+2/g:表2、試験1~4を参照されたい)よりも高く、緩衝液の影響が示唆された。
【0222】
脂質ブレンドからのカルシウムは、非緩衝溶液で見られたのと同様に、緩衝化非水性リン脂質溶液中で沈殿を引き起こした。沈殿物が形成すると、それは、グリセロールと混合した際に分散しなかった。これは、初期の濾過率が低く、多くの場合に0.2μmのフィルターをブロックする濁った非水性配合物をもたらす(表8;図6)。濁った調製物の濾液は、透明であったが、リン脂質測定は、DPPAのレベルがわずかに低下したことを示した。
【0223】
実施例5:微小球形成および製造された製品の音響検出
実施例5.1:水性リン脂質懸濁液
試験37および38は、以下のように実施した:試験19および23からの濾過された材料をバイアル内で製造した(セクション1.7.1の例示的方法を参照されたい)。VIALMIX(登録商標)に続いて、活性化サンプルを微小球のサイズおよび数(方法セクション1.7.3を参照されたい)ならびに臨床超音波音響属性(方法セクション1.7.4を参照されたい)について分析した表9を参照されたい。
【0224】
【表9】
【0225】
これらの試験は、成分が低いカルシウム濃度を有する場合、水性リン脂質懸濁液が個々のリン脂質またはリン脂質ブレンドを使用して生成され得ることを実証する。いずれの製品もDEFINITY(登録商標)(DEFINITY(登録商標)添付文書を参照されたい)の仕様内の微小球直径を有し、臨床用超音波装置上で強力な超音波音響減衰を有する。
【0226】
態様および実施形態
本開示によって提供される様々な態様および実施形態が下に列挙される。
第1項
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、
DPPA、DPPCおよび/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第2項
非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップをさらに含む、第1項の方法。
第3項
DPPA、DPPC、および/またはMPEG-DPPEストックの合わされた測定カルシウム濃度は、低い、第1項の方法。
第4項
DPPA、DPPC、および/またはMPEG-DPPEストック、ならびに非水性溶媒の合わされた測定カルシウム濃度は、低い、第1または第3項の方法。
第5項
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度は、測定される、第1項の方法。
第6項
DPPC、DPPA、およびMPEG2-DPPEストックのカルシウム濃度は、測定され、およびDPPA、DPPC、MPEG-DPPEストックおよび非水性溶媒の合わされた測定カルシウム濃度は、低い、第2項の方法。
第7項
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、
合わせて測定されたカルシウム濃度が低いDPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第8項
非水性溶媒カルシウム濃度は、測定され、およびDPPA、DPPC、MPEG500-DPPEストック、および非水性溶媒は、合わせて測定されたカルシウム濃度が低い、第7項の方法。
第9項
その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒の合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である、ステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第10項
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックであって、そのうちの1つ、2つ、または3つ全ては、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップであって、合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である、ステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第11項
その各々が、特徴のあるカルシウム濃度を有する、MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、およびDPPCストックを選択するステップであって、合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低いカルシウム濃度である、ステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第12項
非水性溶媒は、特徴のあるカルシウム濃度を有し、およびMPEG5000-DPPE、DPPA、およびDPPCストック、および非水性溶媒の組み合わされた特徴のあるカルシウム濃度は、低い、第11項の方法。
第13項
MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第14項
非水性溶媒は、(i)プロピレングリコール、または(ii)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第11項の方法。
第15項
非水性溶媒は、緩衝液を含む、第13または第14項の方法。
第16項
非水性溶媒は、酢酸緩衝液を含む、第13または第14項の方法。
第17項
水性溶媒は、緩衝液を含む、第13または第14項の方法。
第18項
水性溶媒は、リン酸塩緩衝液を含む、第13または第14項の方法。
第19項
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、個々に非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する、第13~18項のいずれか1つの方法。
第20項
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックを順序非依存方式で非水性溶媒と連続的に合わせて、リン脂質溶液を形成する、第13~18項のいずれか1つの方法。
第21項
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、を互いに組み合わされて、リン脂質混合物を形成し、および次に、リン脂質混合物は、非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する、第13~18項のいずれか1つの方法。
第22項
DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックは、互いに組み合わされて、リン脂質ブレンドを形成し、およびリン脂質ブレンドは、非水性溶媒と組み合わされて、リン脂質溶液を形成する、第13~18項のいずれか1つの方法。
第23項
リン脂質ブレンドは、DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックをメタノールおよびトルエンの混合物に溶解するステップと、任意選択的にリン脂質/メタノール/トルエン混合物を濃縮するステップと、次に濃縮されたリン脂質/メタノール/トルエン混合物をメチルt-ブチルエーテル(MTBE)に接触させてリン脂質を沈殿させて、リン脂質ブレンドを形成するステップとを含む有機溶媒溶解沈殿工程を使用して形成される、第22項の方法。
第24項
低いカルシウム濃度は、115ppm未満である、第13~23項のいずれか1つの方法。
第25項
リン脂質懸濁液をバイアルに入れて、パーフルオロカーボンガスをバイアルのヘッドスペースに導入するステップをさらに含む、第13~24項のいずれか1つの方法。
第26項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップをさらに含む、第25項の方法。
第27項
超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波画像を得るステップとをさらに含み得る、第26項の方法。
第28項
DPPAストック、および/またはDPPCストック、および/またはリン脂質混合物、および/またはリン脂質ブレンドのカルシウム濃度を測定するステップをさらに含む、第13~27項のいずれか1つの方法。
第29項
DPPCストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いDPPCストックをDPPAストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第30項
低いカルシウム濃度は、90ppm未満である、第29項の方法。
第31項
DPPAストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いDPPAストックをDPPCストック、MPEG5000-DPPEストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第32項
低いカルシウム濃度は、780ppm未満である、第31項の方法。
第33項
非水性溶媒のカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低い非水性溶媒をDPPAストック、DPPCストック、およびMPEG5000-DPPEストックと合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第34項
低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第33項の方法。
第35項
カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第36項
MPEG5000-DPPEストックは、二価金属カチオン含量を有さないかまたは低い二価金属カチオン含量を有するとしてさらに特徴付けられる、第35項の方法。
第37項
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるリン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第38項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
超音波造影剤を対象に投与するステップと、
対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、リン脂質懸濁液は、第1~37項のいずれか1つの方法によって製造される、対象を画像化する方法。
第39項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
超音波造影剤を対象に投与するステップと、
対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、リン脂質懸濁液は、
MPEG5000-DPPEストックのカルシウム濃度を測定するステップと、
測定されたカルシウム濃度の低いMPEG5000-DPPEストックをDPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
第40項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
超音波造影剤を対象に投与するステップと、
対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、リン脂質懸濁液は、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるMPEG5000-DPPEストックを選択するステップと、
前記MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
第41項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
超音波造影剤を対象に投与するステップと、
対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、リン脂質懸濁液は、
MPEG5000-DPPEストック、DPPAストック、DPPCストック、および非水性溶媒を合わせて、カルシウム濃度を有さないかまたは低いカルシウム濃度を有するとして特徴付けられるリン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む方法によって製造される、対象を画像化する方法。
第42項
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックをプロピレングリコール(PG)含有非水性溶媒と個々に合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第43項
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件において順序非依存方式でPG含有非水性溶媒と連続的に合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第44項
DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックをメタノールおよびトルエン不含条件において合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
リン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第45項
DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
ブレンド溶媒を蒸発させて、乾燥リン脂質ブレンドを形成するステップと、
乾燥リン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件においてPG含有非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第46項
DPPA、DPPCおよびMPEG5000-DPPEストックをブレンド溶媒と合わせて、リン脂質ブレンドを形成するステップと、
リン脂質ブレンドを、第2のブレンド溶媒を使用して、MTBE不含条件において沈殿させるステップと、
沈殿されたリン脂質ブレンドを低カルシウム条件またはカルシウムなしの条件において非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
第47項
低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第42~46項のいずれか1つの方法。
第48項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップをさらに含む、第42~47項のいずれか1つの方法。
第49項
超音波造影剤を対象に投与するステップと、対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波画像を得るステップとをさらに含み得る、第48項の方法。
第50項
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスと合わせて、リン脂質封入ガス微小球を含む超音波造影剤を形成するステップと、
超音波造影剤を対象に投与するステップと、
対象の1つまたは複数のコントラスト強調された超音波コントラスト画像を得るステップと
を含み、リン脂質懸濁液は、第42~47項のいずれか1つの方法によって製造される、対象を画像化する方法。
第51項
非水溶媒中においてDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含み、かつ低いカルシウム濃度を有するリン脂質溶液を含む組成物。
第52項
非水性溶媒中においてDPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEを含むリン脂質溶液を含み、DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPE、および非水性溶媒は、低い、合わされた特徴のあるカルシウムイオン含量を有する、組成物。
第53項
非水性溶媒は、プロピレングリコールを含む、第51または52項の組成物。
第54項
非水性溶媒は、プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第51または52項の組成物。
第55項
非水性溶媒は、緩衝液を含む、第51~54項のいずれか1つの組成物。
第56項
緩衝液は、酢酸緩衝液である、第55項の組成物。
第57項
パーフルオロカーボンガスをさらに含む、第51~56項のいずれか1つの組成物。
第58項
パーフルオロカーボンガスは、パーフルトレンである、第57項の組成物。
第59項
(a)リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップであって、リン脂質懸濁液は、1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒であって、そのうちの1つまたは複数は、特徴のある低いカルシウム濃度を有する、1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を有するリン脂質溶液を含む、ステップと、
(b)脂質封入ガス微小球を対象に投与するステップと、
(c)対象の超音波画像を得るステップと
を含む、対象を超音波コントラスト画像化する方法。
第60項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEを含む、第59項の方法。
第61項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPA、DPPC、およびMPEG-5000-DPPEを含む、第59項の方法。
第62項
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEは、10対82対8(10:82:8)のモル%比で存在する、第61項の方法。
第63項
特徴のある低いカルシウム濃度は、DPPAでは780ppm未満であり、DPPCでは90ppm未満であり、かつMPEG5000-DPPEでは115ppm未満である、第60~62項のいずれか1つの方法。
第64項
非水性溶媒は、(a)プロピレングリコール、または(b)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第59~63項のいずれか1つの方法。
第65項
非水性溶媒の特徴のある低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第59~64項のいずれか1つの方法。
第66項
リン脂質溶液は、検出可能なリン脂質沈殿物を有しない、第59~65項のいずれか1つの方法。
第67項
(a)リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップであって、リン脂質懸濁液は、1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を有し、かつメタノールおよびトルエン不含条件ならびにメチルt-ブチルエーテル不含条件下で生成されたリン脂質溶液を含み、リン脂質および非水性溶媒の1つまたは複数は、低いカルシウム濃度を有する、ステップと、
(b)脂質封入ガス微小球を対象に投与するステップと、
(c)対象の超音波画像を得るステップと
を含む、対象を超音波コントラスト画像化する方法。
第68項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEを含む、第67項の方法。
第69項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPA、DPPC、およびMPEG-5000-DPPEを含む、第67項の方法。
第70項
DPPA、DPPC、およびMPEG-5000-DPPEは、10対82対8(10:82:8)のモル%比で存在する、第69項の方法。
第71項
低いカルシウム濃度は、DPPAでは780ppm未満であり、DPPCでは90ppm未満であり、かつMPEG5000-DPPEでは115ppm未満である、第67~70項のいずれか1つの方法。
第72項
非水性溶媒は、(a)プロピレングリコール、または(b)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第67~71項のいずれか1つの方法。
第73項
非水性溶媒の低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第67~72項のいずれか1つの方法。
第74項
リン脂質溶液は、検出可能なリン脂質沈殿物を有しない、第67~73項のいずれか1つの方法。
第75項
1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒を合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、リン脂質および/または非水性溶媒の1つまたは複数は、特徴のある低いカルシウム濃度を有する、ステップと、
リン脂質溶液を水性溶液と合わせ、てリン脂質懸濁液を形成するステップと、
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップと
を含む、脂質封入ガス微小球を製造する方法。
第76項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEを含む、第75項の方法。
第77項
1つまたは複数のリン脂質は、DPPA、DPPC、およびMPEG-5000-DPPEを含む、第75項の方法。
第78項
DPPA、DPPC、およびMPEG-5000-DPPEは、10対82対8(10:82:8)のモル%比で存在する、第77項の方法。
第79項
特徴のある低いカルシウム濃度は、DPPAでは780ppm未満であり、DPPCでは90ppm未満であり、かつMPEG5000-DPPEでは115ppm未満である、第75~78項のいずれか1つの方法。
第80項
非水性溶媒は、(a)プロピレングリコール、または(b)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第75~79項のいずれか1つの方法。
第81項
非水性溶媒の特徴のある低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第75~80項のいずれか1つの方法。
第82項
リン脂質溶液は、検出可能なリン脂質沈殿物を有しない、第75~81項のいずれか1つの方法。
第83項
1つまたは複数のリン脂質および非水性溶媒をメタノールおよびトルエン不含ならびにメチルt-ブチルエーテル不含条件において合わせて、リン脂質溶液を形成するステップであって、リン脂質および/または非水性溶媒の1つまたは複数は、低いカルシウム濃度を有する、ステップと、
リン脂質溶液を水性溶液と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと、
リン脂質懸濁液をパーフルオロカーボンガスで活性化して、脂質封入ガス微小球を形成するステップと
を含む、脂質封入ガス微小球を製造する方法。
第84項
1つまたは複数の脂質は、10対82対8(10:82:8)のモル%比で(a)DPPCおよびMPEG-5000-DPPE、または(b)DPPA、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEおよび/または(c)DPPA、DPPCおよびMPEG-5000-DPPEを含む、第83項の方法。
第85項
低いカルシウム濃度は、DPPAでは780ppm未満であり、DPPCでは90ppm未満であり、かつMPEG5000-DPPEでは115ppm未満である、第84項の方法。
第86項
非水性溶媒は、(a)プロピレングリコール、または(b)プロピレングリコールおよびグリセロールを含む、第83~85項のいずれか1つの方法。
第87項
非水性溶媒の低いカルシウム濃度は、0.7ppm未満である、第83~86項のいずれか1つの方法。
第88項
リン脂質溶液は、検出可能なリン脂質沈殿物を有しない、第83~87項のいずれか1つの方法。
第89項
リン脂質または非水性溶媒の1つまたは複数は、特徴のあるカルシウム濃度の低い、第67~74項のいずれか1つの方法。
第90項
特徴のあるカルシウム低濃度は、原子吸光分析を用いて測定される、第89項の方法。
第91項
カルシウム低濃度は、原子吸光分析を用いて測定される、第67~74項のいずれか1つの方法。
【0227】
均等物
本明細書では、いくつかの発明の実施形態が記載されかつ例証されたが、当業者は、機能を実行し、かつ/または結果および/もしくは本明細書に記載される利点の1つもしくは複数を得るための多様な別の手段および/または構造を容易に予見し、このような変形形態および/または修正形態のそれぞれは、本明細書に記載される発明の実施形態の範囲内と見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例証的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、それに対して本発明の教示が用いられる特定の用途に左右されることを容易に理解するであろう。当業者は、日常的実験のみを用いて、本明細書に記載される特定の発明の実施形態の多数の均等物を認識または確認することができる。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に記載されかつ特許請求されるのとは別の方式で実施され得ると理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、このような特徴、システム、物品、キット、および/または方法が相反しない場合、そのような特徴、システム、物品、キットおよび/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0228】
本明細書で定義され使用される全ての定義は、定義された用語の辞書定義、参照により援用される文献における定義、および/または通常の意味に優先すると理解されるべきである。
【0229】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許、および特許出願は、それぞれがそれに対して引用される主題に関して参照により援用されており、場合により文献全体を包含し得る。
【0230】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、相反することが明示される場合を除いて、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0231】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という語句は、そのように結合された要素の「一方または両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同一方式で、すなわちそのように結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。具体的に特定された要素と関連するかどうかに関わらず、「および/または」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「含む」などの開放型言語と併せて使用される場合、「Aおよび/またはB」は、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などに言及し得る。
【0232】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧中の項目が隔てられる場合、「または」または「および/または」は、包括的であり、すなわち要素の数または一覧の少なくとも1つの包含、その2つ以上の包含、任意選択的に追加的な一覧にない項目も含むと解釈されるべきである。「1つのみ」もしくは「正確に1つのみ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」などの相反することが明示される用語のみが要素の数または一覧の厳密に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「1つ」、「1つのみ」または「正確に1つのみ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な代替物(すなわち「そのいずれか一方であるが、両方ではない」)を示すとしてのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲で使用される場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0233】
本明細書および特許請求の範囲で使用される、1つまたは複数の要素の一覧を参照する「少なくとも1つの」という語句は、要素の一覧内の要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるが、必ずしも要素の一覧内に具体的に列挙された各要素および全要素の少なくとも1つを含む必要はなく、要素の一覧内の要素の任意の組み合わせを排除しない。この定義はまた、「少なくとも1つの」という語句が指し示す要素の一覧内で具体的に特定された要素以外の要素が、特定された要素に関連しているかどうかに関わらず、任意選択的に存在できるようにする。非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または均等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または均等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない(および場合によりB以外の要素を含む)少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のA;別の実施形態では、Aが存在しない(および場合によりA以外の要素を含む)少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のB;さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のA、および少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のB(および任意選択的に他の要素を含む)などを指し得る。
【0234】
相反することが明示される場合を除いて、2つ以上のステップまたは動作を含む本明細書で特許請求されるいずれの方法においても、方法のステップまたは動作の順序は、必ずしも方法のステップまたは動作が列挙される順序に限定されるものではないことを理解されるべきである。
【0235】
特許請求の範囲において、ならびに上記の明細書において、「含む」、「包含する」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「収容する」、「から構成される」などの全ての移行句は、開放型であり、すなわち含むが限定されるものではないことを意味すると理解される。「からなる」および「本質的にからなる」という移行句のみが、それぞれ米国特許庁特許審査手続便覧2111.03項に記載されるように閉鎖または半閉鎖移行句であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPPA、DPPC、およびMPEG5000-DPPEストックを提供するステップと、
前記DPPC、DPPA、およびMPEG5000-DPPEストックの1つまたは複数のカルシウム濃度を測定するステップと、
前記DPPA、DPPC、および/またはMPEG5000-DPPEストックを非水性溶媒と合わせて、リン脂質溶液を形成するステップと、
前記リン脂質溶液を水性溶媒と合わせて、リン脂質懸濁液を形成するステップと
を含む、リン脂質懸濁液を製造する方法。
【外国語明細書】