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特開2023-100697高濃度の分析物等、分析物を測定するための用量反応曲線の減少信号部分を使用したサンドイッチ型アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100697
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】高濃度の分析物等、分析物を測定するための用量反応曲線の減少信号部分を使用したサンドイッチ型アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 581V
【審査請求】有
【請求項の数】74
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023068521
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2019571045の分割
【原出願日】2018-06-25
(31)【優先権主張番号】62/526,051
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】レン フイミャオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分析物が試料中に高濃度で存在する場合を含めて、試料中の分析物の濃度を正確に測定するラテラルフローアッセイの提供。
【解決手段】本明細書に記載のサンドイッチ型ラテラルフローアッセイデバイス、システム、および方法は、試料中の目的分析物の濃度を測定し、分析物が高濃度で存在する場合に分析物の正確な濃度を決定することができる。試料中の目的分析物の濃度がゼロであるとき、最大強度の信号が生成される。低濃度の分析物について、本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、最大強度信号と同じまたは実質的に同等の信号を生成する。高濃度の目的分析物は、最大強度信号よりも小さい信号を生成する。本開示のラテラルフローアッセイは、信号が増加する用量反応曲線の位相を排除することにより、サンドイッチ型ラテラルフローアッセイのフック効果に関連する欠点を解決する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料を受け取るように構成された流路と;
前記流路に連結された試料受取ゾーンと;
前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に連結され、目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む、捕捉ゾーンと;
第1のフェーズにおいて前記流路に連結され、第2のフェーズにおいて前記流体試料の存在下で前記流路にて前記捕捉ゾーンに流れるように構成された複合体であって、
標識、
前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物、
を含む複合体と
を含む、アッセイ試験片。
【請求項2】
前記流路が、非標識の目的分析物を含む流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、前記第1のフェーズまたは前記第2のフェーズにおいて前記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項3】
前記複合体が、前記第2のフェーズにおいて前記流路にて前記非標識の目的分析物とともに前記捕捉ゾーンに流れるように構成されている、請求項2に記載のアッセイ試験片。
【請求項4】
前記複合体が、第3のフェーズにおいて、前記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成されている、請求項3に記載のアッセイ試験片。
【請求項5】
前記流体試料中の非標識の目的分析物の濃度が増加するにつれて、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した複合体から放出される光信号が減少する、請求項4に記載のアッセイ試験片。
【請求項6】
前記流路が、目的分析物を含むかまたは含まない流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、前記流体試料が目的分析物を含まない場合、前記第2のフェーズにおいて前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤のすべてまたは実質的にすべてに特異的に結合する、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項7】
前記流体試料が目的分析物を含まない場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される光信号が、前記アッセイ試験片から放出され得る最大光信号となる、請求項6に記載のアッセイ試験片。
【請求項8】
前記流体試料が目的分析物を含む場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される光信号が、前記最大光信号よりも小さくなる、請求項7に記載のアッセイ試験片。
【請求項9】
前記固定化された捕捉剤が、前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片を含む、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項10】
前記複合体が、第1のフェーズにおいて前記試験片の表面に組み込まれている、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項11】
前記複合体が、前記複合体を含む溶液を前記試験片の表面に噴霧し、前記溶液を乾燥させることにより、前記試験片の表面に組み込まれている、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項12】
前記流体試料が、血液、血漿、尿、汗、または唾液試料からなる群から選択される、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項13】
前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記複合体が、前記CRPに結合した抗CRP抗体またはその断片を含む、請求項1に記載のアッセイ試験片。
【請求項14】
請求項1に記載のアッセイ試験片と;
光源および検出器を含む読取り装置と;
データ分析器と
を含む、診断試験システム。
【請求項15】
前記読取り装置が、前記試験片の用量反応曲線の最大光信号である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に目的分析物がないという指標を出力する、請求項1に記載の診断試験システム。
【請求項16】
前記読取り装置が、前記最大光信号から1%の範囲内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項15に記載の診断試験システム。
【請求項17】
前記読取り装置が、前記最大光信号から5%の範囲内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項15に記載の診断試験システム。
【請求項18】
前記読取り装置が、前記最大光信号から10%の範囲内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項15に記載の診断試験システム。
【請求項19】
前記読取り装置が、前記最大光信号の90%または90%未満である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に高濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項15に記載の診断試験システム。
【請求項20】
前記読取り装置が、前記最大光信号未満である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記試料中の目的分析物の濃度の指標を出力する、請求項15に記載の診断試験システム。
【請求項21】
アッセイ試験片を使用して流体試料中の目的分析物の濃度を決定する方法であって、前記アッセイ試験片が、流体試料を受け取るように構成された流路と、前記流路に連結された試料受取ゾーンと、前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に連結され、目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む、捕捉ゾーンと、第1のフェーズにおいて前記流路に連結され、第2のフェーズにおいて前記流体試料の存在下で前記流路にて前記捕捉ゾーンに流れるように構成された複合体であって、標識、前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および前記目的分析物を含む複合体とを含み、該方法が、
前記複合体が前記第1のフェーズにおいて前記流路に連結されたときに、前記流体試料を前記アッセイ試験片に適用する工程と;
前記流路から前記複合体の連結を離す工程と;
前記第2のフェーズにおいて前記流路内で前記流体試料および前記複合体を前記捕捉ゾーンに流す工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に前記複合体を結合させる工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した前記複合体からの信号を検出する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
検出信号が、光信号、蛍光信号、または磁気信号である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体の連結を離す工程が、前記複合体を前記流体試料で可溶化することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、前記第1のフェーズまたは前記第2のフェーズにおいて前記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、第3のフェーズにおいて、前記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記流体試料が、目的分析物を含まず、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号を検出することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記流体試料中の分析物の濃度がゼロであると決定する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記目的分析物が前記流体試料中に存在しないという指標を表示する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記流体試料が、目的分析物を含み、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号よりも小さい、前記試験片からの信号を検出することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記流体試料中の分析物の濃度がゼロより大きいと決定する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記目的分析物が前記流体試料中に存在するという指標を表示する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
検出信号が前記最大光信号から10%の範囲内であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に低濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
検出信号が前記最大信号の90%または90%未満であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に高濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
アッセイ試験片を製造する方法であって、
流体試料を受け取るように構成された流路に試料受取ゾーンを連結する工程と;
前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に捕捉ゾーンを連結する工程と;
前記流路に複合体を連結する工程であり、前記複合体が、
標識、
目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物
を含む工程と
を含む、方法。
【請求項35】
前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記抗体が、抗CRP抗体または抗CRP抗体の断片を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記目的分析物が、約50ngのCRPを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記目的分析物が、約100ngのCRPを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記目的分析物に特異的な捕捉剤を前記捕捉ゾーンに固定する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記複合体を前記流路に連結する工程が、前記複合体と前記流路との間に、前記流路内の流体試料の存在下で切断される結合を形成することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記複合体を連結する工程が、前記複合体を含む溶液を前記試料受取ゾーンの表面に噴霧することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記複合体を連結する工程が、前記複合体を含む溶液を、前記試料受取ゾーンと前記捕捉ゾーンの間の前記アッセイ試験片の表面に噴霧することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記複合体を連結する工程が、
前記複合体を含む流体溶液を前記アッセイ試験片の表面に適用する工程と;
前記流体溶液を乾燥させる工程と
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記複合体を連結する工程が、前記複合体を前記アッセイ試験片の表面に組み込むことを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記複合体を含む溶液を提供する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記溶液を提供する工程が、前記標識および前記抗体または前記抗体の断片を含む第1の液体を、前記目的分析物を含む第2の液体と混合することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記溶液を提供する工程が、前記第1の液体と前記第2の液体の混合物を約30分間インキュベートすることをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記複合体を前記流路に連結する工程が、前記アッセイ試験片の表面に前記溶液を噴霧することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
請求項34~47のいずれかに記載の方法により作製されたアッセイ試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年6月28日に出願された米国仮出願第62/526,051号の利益を主張する。
本開示は、一般に、ラテラルフローアッセイデバイス、試験システム、および方法に関する。より詳細には、本開示は、目的分析物(analyte of interest)が高濃度で存在する場合を含む、試料中の分析物の濃度を決定するためのラテラルフローアッセイデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載のラテラルフローアッセイを含むイムノアッセイ系は、信頼性が高く、安価で、移動可能で、迅速かつ簡単な診断試験を可能にする。ラテラルフローアッセイは、試料中の目的分析物(analyst of interest)の有無を迅速かつ正確に検出し、場合によっては定量化することができる。有利なことに、ラテラルフローアッセイは、最小限に侵襲的であり、ポイントオブケア(point-of-care)試験システムとして使用することができる。ラテラルフローアッセイは、多種多様な医療または環境分析物を検出するために開発された。サンドイッチ形式のラテラルフローアッセイでは、目的分析物に対する標識化抗体が、試料受取ゾーン内またはその付近の試験片(test strip)上に付着する。標識化抗体は、例えば、抗体に結合した検出分子または「標識」を含んでよい。試料が試験片に適用されると、試料中に存在する分析物は、標識化抗体に結合し、標識化抗体は試験片に沿って捕捉ゾーンに流れる。分析物に対する固定抗体は、標識化抗体-分析物複合体と結合する。捕捉ラインに固定された抗体は、試料受取ゾーン内または試料受取ゾーン付近に付着した標識化抗体とは異なっていてよい。捕捉された複合体が検出され、分析物の存在が判定される。分析物が存在しない場合、標識化抗体は試験片に沿って流れるが、捕捉ゾーンを通過する。捕捉ゾーンでの信号の欠如は、分析物が存在しないことを示す。ただし、サンドイッチラテラルフローアッセイには、偽陰性、不正確に低い結果、目的分析物が試料中に高濃度で存在する場合における、分解能の欠如を含む、多くの欠点がある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本開示の態様は、分析物が試料中に高濃度で存在する場合を含めて、試料中の目的分析物の濃度を正確に測定する、改善されたラテラルフローアッセイを提供することである。
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、流体試料を受け取るように構成された流路と;流路に連結された試料受取ゾーンと;捕捉ゾーンと;複合体とを含む、アッセイ試験片に関する。捕捉ゾーンは、試料受取ゾーンの下流の流路に連結され、目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む。複合体は、第1のフェーズにおいて流路に連結され、第2のフェーズにおいて流体試料の存在下にて流路内で捕捉ゾーンに流れるように構成される。複合体は、標識、目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および目的分析物を含む。場合によって、流路は非標識の目的分析物を含む流体試料を受け取るように構成され、複合体は第1のフェーズまたは第2のフェーズにおいて非標識の目的分析物に特異的に結合しない。場合によって、複合体は、第2のフェーズにおいて流路内で非標識の目的分析物とともに捕捉ゾーンに流れるように構成される。いくつかの例では、複合体は、非標識の目的分析物と競合して、第3のフェーズにおいて捕捉ゾーン内の固定化された捕捉剤に結合するように構成される。場合によって、流体試料中の非標識の目的分析物の濃度が増加するにつれて、捕捉ゾーン内の固定化された捕捉剤に結合した複合体から放出される光信号が減少する。
【0004】
いくつかの例において、流路は、目的分析物を含むかまたは含まない流体試料を受け取るように構成される。複合体は、流体試料が目的分析物を含まない場合、第2のフェーズにおいて捕捉ゾーン内の固定化された捕捉剤のすべてまたは実質的にすべてに特異的に結合する。場合によって、流体試料が目的分析物を含んでいない場合、捕捉ゾーンに結合した複合体から放出される光信号は、アッセイ試験片から放出され得る最大光信号となる。流体試料が目的分析物を含んでいる場合、捕捉ゾーンに結合した複合体から放出される光信号は、最大光信号よりも小さくなる。
場合によって、固定化された捕捉剤は、目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片を含む。いくつかの例において、複合体は、第1のフェーズにおいて試験片の表面に組み込まれる。場合によって、複合体は、複合体を含む溶液を試験片の表面に噴霧し、溶液を乾燥させることにより、試験片の表面に組み込まれる。流体試料としては、血液、血漿、尿、汗、または唾液試料が挙げられる。1つの非限定的な例において、目的分析物はC反応性タンパク質(CRP)を含み、複合体はCRPに結合した抗CRP抗体またはその断片を含む。
【0005】
本明細書に開示される他の実施形態は、上記のアッセイ試験片を含む診断試験システム;光源および検出器を含む読取り装置;ならびにデータ分析器に関する。場合によって、読取り装置が、試験片の用量反応曲線の最大光信号である、アッセイ試験片からの光信号を検出すると、データ分析器は、流体試料中に目的分析物がないという指標を出力する。一例において、データ分析器は、読取り装置が最大光信号から1%の範囲内にあるアッセイ試験片からの光信号を検出すると、流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する。別の例において、データ分析器は、読取り装置が最大光信号から5%の範囲内にあるアッセイ試験片からの光信号を検出すると、流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する。さらに別の例において、データ分析器は、読取り装置が最大光信号から10%の範囲内にあるアッセイ試験片からの光信号を検出すると、流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する。さらなる例において、データ分析器は、読取り装置が最大光信号の90%または90%未満であるアッセイ試験片からの光信号を検出すると、流体試料中に高濃度の目的分析物があるという指標を出力する。さらに別の例において、データ分析器は、読取り装置が最大光信号未満であるアッセイ試験片からの光信号を検出すると、試料中の目的分析物の濃度の指標を出力する。
【0006】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、流体試料中の目的分析物の濃度を決定する方法に関する。本方法は、複合体が第1のフェーズにおいて流路に連結されたときに、流体試料を上記のアッセイ試験片に適用する工程と;流路から複合体の連結を離す工程と;第2のフェーズにおいて流路内の流体試料および複合体を捕捉ゾーンに流す工程と;捕捉ゾーン内の固定化された捕捉剤に複合体を結合させる工程と;捕捉ゾーン内の固定化された捕捉剤に結合した複合体からの信号を検出する工程とを含む。検出信号は、光信号、蛍光信号、または磁気信号であり得る。場合によって、複合体の連結を離す工程は、複合体を流体試料で可溶化することを含む。場合によって、流体試料は非標識の目的分析物を含み、複合体は第1のフェーズまたは第2のフェーズにおいて非標識の目的分析物に特異的に結合しない。別の例において、流体試料は非標識の目的分析物を含み、複合体は非標識の目的分析物と競合して、第3のフェーズにおいて捕捉ゾーンの固定化された捕捉剤に結合するように構成される。一例において、流体試料は目的分析物を含まず、検出は試験片の用量反応曲線の最大光信号を検出する工程を含む。
【0007】
場合によって、本方法は、流体試料中の分析物の濃度がゼロであると決定する工程を含む。場合によって、本方法は、目的分析物が流体試料中に存在しないという指標を表示する工程をさらに含む。
一例において、流体試料は目的分析物を含み、検出は、試験片の用量反応曲線の最大信号よりも小さい、試験片からの信号を検出する工程を含む。場合によって、本方法は、流体試料中の分析物の濃度がゼロより大きいと決定する工程をさらに含む。場合によって、本方法は、目的分析物が流体試料中に存在するという指標を表示する工程をさらに含む。一例において、本方法は、検出信号が最大光信号から10%の範囲内であると決定する工程と;目的分析物が流体試料中に低濃度で存在するという指標を表示する工程とをさらに含む。別の例において、本方法は、検出信号が最大信号の90%または90%未満であると決定する工程と;目的分析物が流体試料中に高濃度で存在するという指標を表示する工程とをさらに含む。
【0008】
本明細書で開示される追加の実施形態は、アッセイ試験片の製造方法であって、流体試料を受け取るように構成された流路に試料受取ゾーンを連結する工程と;試料受取ゾーンの下流の流路に捕捉ゾーンを連結する工程と;複合体を流路に連結する工程とを含む、方法に関する。複合体は、標識、目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および目的分析物を含む。場合によって、目的分析物はC反応性タンパク質(CRP)を含み、抗体は抗CRP抗体または抗CRP抗体の断片を含む。一例において、目的分析物は約50ngのCRPを含む。別の例において、目的分析物は約100ngのCRPを含む。場合によって、本方法は、目的分析物に特異的な捕捉剤を捕捉ゾーンに固定する工程をさらに含む。場合によって、複合体を流路に連結する工程は、複合体と流路との間に、流路内の流体試料の存在下で切断される結合を形成することを含む。一例において、複合体を連結する工程は、複合体を含む溶液を試料受取ゾーンの表面に噴霧することを含む。別の例において、複合体を連結する工程は、複合体を含む溶液を、試料受取ゾーンと捕捉ゾーンの間のアッセイ試験片の表面に噴霧することを含む。さらなる例において、複合体を連結する工程は、複合体を含む流体溶液をアッセイ試験片の表面に適用する工程と;流体溶液を乾燥させる工程とを含む。さらに別の例において、複合体を連結する工程は、複合体をアッセイ試験片の表面に組み込むことを含む。
【0009】
場合によって、本方法は、複合体を含む溶液を用意する工程をさらに含む。場合によって、溶液を用意する工程は、標識および抗体または抗体の断片を含む第1の液体を、目的分析物を含む第2の液体と混合することを含む。いくつかの例において、溶液を用意する工程は、第1の液体と第2の液体の混合物を約30分間インキュベートすることをさらに含む。場合によって、複合体を流路に連結する工程は、アッセイ試験片の表面に溶液を噴霧することを含む。本明細書に開示されるさらなる実施形態は、上記の方法により作製されたアッセイ試験片に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、例示的なサンドイッチ型ラテラルフローアッセイを示す図である。
図1B】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、例示的なサンドイッチ型ラテラルフローアッセイを示す図である。
図2図1Aおよび図1Bのラテラルフローアッセイの例示的な用量反応曲線を示すグラフである。
図3A】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、例示的な競合型ラテラルフローアッセイを示す図である。
図3B】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、例示的な競合型ラテラルフローアッセイを示す図である。
図4図3Aおよび図3Bの競合ラテラルフローアッセイの例示的な用量反応曲線を示すグラフである。
図5A】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、本開示による例示的なラテラルフローアッセイを示す図である。
図5B】流体試料が試料受取ゾーンに適用される前および後の、本開示による例示的なラテラルフローアッセイを示す図である。
図5C図5Aおよび図5Bのラテラルフローアッセイの例示的な用量反応曲線を示すグラフである。
図6A図1Aおよび1Bに示されるようなサンドイッチ型ラテラルフローアッセイの例示的な用量反応曲線、および本開示によるラテラルフローアッセイの例示的な用量反応曲線を示すグラフである。分析物の濃度は、対数目盛のx軸に沿って測定される。
図6B】分析物の濃度が非対数目盛でx軸に沿って測定される、本開示によるラテラルフローアッセイに関する図6Aの例示的な用量反応曲線を示すグラフである。
図7A】本開示の一実施形態によるラテラルフローアッセイによって測定されたCRPの濃度を、ELISAによって決定されたCRPの濃度と相関させる、実験データの表である。
図7B】本開示の一実施形態によるラテラルフローアッセイによって測定されたCRPの濃度を、ELISAによって決定されたCRPの濃度と相関させる、実験データを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で説明するデバイス、システム、および方法は、試料内中の目的分析物の量、例えば既知の体積の試料中の分析物の濃度を正確に決定する。有利なことに、本開示によるラテラルフローデバイス、試験システム、および方法は、目的分析物が、上昇した濃度または「高」濃度で試料中に存在する状況において、目的分析物の量を正確に決定する。本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、試料中の目的分析物の濃度がゼロのときに、最大強度の信号を生成することができる。本開示によるアッセイによって生成された信号は、反射型標識(例えば、限定されないが、金ナノ粒子標識)によって生成された光信号の文脈で本明細書に記載されている。本開示の実施形態は、「光」信号に言及することにより本明細書に記載されているが、本明細書に記載のアッセイは、限定されないが、蛍光信号を生成する蛍光型ラテックスビーズ標識およびアッセイに伴う磁場の変化を示す信号を生成する磁気ナノ粒子標識を含む標識に、任意の適切な材料を使用して、検出可能な信号を生成することが理解されよう。低濃度の分析物について、本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、最大強度信号と同じまたは実質的に同等の(最大強度信号からの変動が限定的範囲にある)光信号を生成する。本開示によるラテラルフローアッセイは、目的分析物の上昇した濃度または「高」濃度に対する最大強度信号よりも低い信号を生成する。
【0012】
本開示によれば、標識-抗体-分析物複合体を含む標識された薬剤は、最初に、ラテラルフローアッセイ試験片の表面、例えばコンジュゲートパッド(conjugate pad)に組み込まれる。標識-抗体-分析物複合体は、流体試料を試験片に適用すると標識ゾーンから非結合になり、流体試料および試料中の任意の目的分析物(存在する場合)とともに、試験片の捕捉ゾーンに移動する。試料中の標識-抗体-分析物複合体および目的分析物(存在する場合)は、捕捉ゾーンの捕捉剤に結合する。標識-抗体-分析物複合体と競合する目的分析物が試料中に存在しない場合、捕捉剤は標識-抗体-分析物複合体に完全に結合し、最大強度の信号を生成する。目的分析物が低濃度で試料中に存在する場合、標識-抗体-分析物複合体は、比較的少量の非標識分析物と競合して捕捉剤に結合し、最大強度信号と同じまたは実質的に同等の(最大強度信号からの変動が限定的範囲にある)信号をもたらす。目的分析物が高濃度で試料中に存在する場合、標識-抗体-分析物複合体は、比較的多量の非標識分析物と競合して捕捉剤に結合し、最大強度信号よりも低い信号をもたらす。
何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、標識ゾーンに組み込まれる標識-抗体-分析物複合体の形態での標識付き分析物を追加すると、信号が増加するとき(分析物濃度が低いとき)、サンドイッチ型ラテラルフローアッセイの用量反応曲線の部分がマスクされ、それにより、ゼロ濃度において最大強度信号で始まり、次いで、比較的一定のままになる(低濃度での分析物)か、または減少する(高濃度での分析物)、改善された用量反応曲線が生成される。本開示のラテラルフローアッセイは、信号が増加する用量反応曲線の位相を排除することにより、サンドイッチ型ラテラルフローアッセイのフック効果に関連する欠点を解決する。
【0013】
分析物が高濃度である場合、本明細書に記載のラテラルフローアッセイにより生成される信号は、多くの有利な特徴を含む。光信号を生成する例示的な実施形態において、分析物が高濃度のときに生成される信号は、容易に検出可能であり(例えば、従来の読取り装置が通常識別でき、十分な間隔がある、光信号の範囲内の強度を有しており)、ゼロまたは低濃度で生成された信号と用量反応曲線上で重ならず、これらの信号を使用して、高濃度および非常に高い濃度において高精度の濃度示度を計算することができる。本明細書で説明するラテラルフローアッセイの実施形態では、特定の検出信号を分析物(特に高濃度の分析物)の量と相関させることに関連する不確実性、例えば、フック効果により、低濃度と高濃度の分析物の両方に対応する単一の光信号を生成するサンドイッチ型ラテラルフローアッセイを読み取る際に生じる不確実性が回避される。対照的に、本開示によるラテラルフローアッセイは、ゼロまたは低濃度の分析物に明確かつ明瞭に対応する光信号(最大強度信号と同じまたは実質的に同等の光信号)、または高濃度の分析物に明確かつ明瞭に対応する光信号(最大強度信号より小さい光信号)を生成する。場合によって、ゼロまたは低濃度は、対象における分析物の正常なまたは「健康」レベルと直接相関することがあり、分析物の高濃度は、対象における分析物の正常でないまたは「不健康」レベルと直接相関することがある。
【0014】
さらに、本開示によるラテラルフローアッセイの実施形態は、酵素結合性免疫吸着アッセイ(ELISA)などの、試料中の分析物の量を決定するための現在の至適基準アッセイと強く相関する。有利であることに、本明細書に記載のラテラルフローアッセイの実施形態により決定されるCRPの濃度は、ELISAにより決定されるCRPの濃度と強く相関することが発見された。以下に記載する1つの実施例において、本開示によるアッセイの実施形態を使用して測定されたCRPの濃度とELISAにより決定されたCRPの濃度との間で93%の相関が得られた。
本明細書に記載のラテラルフローアッセイの実施形態は、健康な個体では低濃度で自然に発生するが疾患状態または障害を有する個体では高濃度に上昇する目的分析物の診断試験で特に有利である。最大強度信号からの分散が比較的少ない光信号は、ゼロ濃度から低濃度の範囲で生成され、操作者は、分析物が低濃度で存在していること(健康レベルの指標)を確認しようとするだけで、光信号の特異性または分解能は必要としていないが、分析物が高濃度で存在すること(異常または疾患状態の指標)を操作者が確認しようとする場合、特に、目的分析物が高濃度で生成されるとき常に目的分析物の定量化を試みる場合、最大強度信号からの分散が大きく容易に検出可能な高分解能光信号が生成される。高濃度の範囲内にある目的分析物の正確な濃度を精密に特定する能力により、操作者は、対象の疾患または他の病状について、軽度の段階または重度の段階などの段階または進行を把握することができる。
【0015】
ラテラルフローアッセイの様々な側面は、既存のラテラルフローアッセイに対する利点をもたらす。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、複数の試験ラインを必要とせず、代わりに、分析物の濃度を正確に決定する能力と、1つの捕捉ラインのみを使用して試験が適切に機能したかどうかを決定する能力の両方を有する。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、最初に試料を希釈することを必要とせずに、試料中の上昇した分析物の濃度を正確に決定することができる。加えて、いくつかの実施形態において、ラテラルフローアッセイに配置される、事前に形成された標識-抗体-分析物複合体の量は、分析物の異なる濃度範囲の要求事項に対応するために変えることができる。
添付の図面を参照しながら、デバイス、試験システム、および方法の様々な態様について、以下で詳細に説明する。ただし、本開示は、多くの異なる形態で具体化され得る。本明細書の教示に基づいて、当業者は、本開示の範囲が、本開示の任意の態様とは独立して実施されるか、または本開示の任意の他の態様と組み合わされるかを問わず、本明細書に開示されているデバイス、試験システム、および方法の任意の態様を網羅することを意図していることを理解するはずである。例えば、本明細書に記載されている任意の数の態様を使用して、デバイスを実装するか、または方法を実施してよい。
【0016】
本明細書では特定の態様が記載されているが、これらの態様の多くの変種および変更は本開示の範囲内に含まれる。いくつかの利益および利点が述べられているが、本開示の範囲が特定の利益、用途、または目的に限定されることを意図してはいない。むしろ、本開示の態様は、一部が図および以下の説明において例示されている、様々な検出技術およびデバイス構成に、広く適用可能であることを意図している。詳細な説明および図面は、限定を加えるものではなく本開示の単なる例示であり、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、ラテラルフロークロマトグラフィーで使用される分析デバイスである。ラテラルフローアッセイは、本明細書に記載のラテラルフローデバイスで実行できるアッセイである。ラテラルフローデバイスは試験片上に実装することができるが、他の形式が好適である場合がある。試験片形式では、分析物を含むと推測される試験試料液が(例えば毛細管現象により)試験片を通過して流れる。試験片は、紙、ニトロセルロース、セルロースなどの吸湿性材料で作製されていてよい。試料流体は試料リザーバーで受け取られる。試料流体は、試験片に沿って捕捉ゾーンに流れることができ、捕捉ゾーンにおいて、分析物(存在する場合)が捕捉剤と相互作用して、分析物の有無および/または量を示す。捕捉剤は、捕捉ゾーンに固定された抗体を含むことができる。
【0017】
サンドイッチ型および競合型ラテラルフローアッセイ
ラテラルフローアッセイは、サンドイッチ形式または競合形式で実行できる。本明細書に記載のサンドイッチおよび競合形式のアッセイは、光信号を生成する反射型標識(金ナノ粒子標識など)の文脈で説明されるが、アッセイは、蛍光信号を生成するように構成されたラテックスビーズ標識、磁気信号を生成するように構成された磁気ナノ粒子標識、または検出可能な信号を生成するように構成された他の標識を含むことが理解される。サンドイッチ型ラテラルフローアッセイは、固体基材上の試料リザーバーに付着した標識化抗体を含む。試料が試料リザーバーに適用された後、標識化抗体は試料中に溶解し、そこで、抗体は試料中の分析物上の第1のエピトープを認識して結合し、標識-抗体-分析物複合体を形成する。この複合体は、流体前方に沿って、試料リザーバーから固体基材を通って、固定抗体(「捕捉剤」と呼ばれることがある)が配置された捕捉ゾーン(「試験ライン」と呼ばれる)に流れる。分析物がマルチマーであるか、同じモノマー上に複数の同一のエピトープを含有する場合、試料リザーバーに付着した標識化抗体は、捕捉ゾーンに固定された抗体と同じであり得る。固定抗体は、分析物上のエピトープを認識して結合し、それにより、捕捉ゾーンにおいて標識-抗体-分析物複合体を捕捉する。捕捉ゾーンにおける標識化抗体の存在は、捕捉ゾーンにおいて検出可能な光信号をもたらす。1つの非限定的な例において、金ナノ粒子は、抗体が比較的安価で安定しており、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴特性に基づいて容易に観察できる色指標を提供するため、抗体の標識に使用される。場合によって、この信号は、試料中に分析物が存在するかどうかなどの定性的情報を与える。場合によって、この信号は、試料中の分析物の量の測定値などの定量的情報を与える。
【0018】
図1Aおよび図1Bは、例示的なサンドイッチ型ラテラルフローデバイス10を示す。ラテラルフローデバイス10は、試料リザーバー12、標識ゾーン14、捕捉ゾーン16、および制御ライン18を含む。図1Aおよび図1Bは、流体試料24が試料リザーバー12に適用される前および後のラテラルフローデバイス10を示す。図1Aおよび図1Bに示した例において、試料24は目的分析物26を含む。試料リザーバー12の中または付近にある標識ゾーン14は、標識された薬剤28を含む。この例示的なサンドイッチ型ラテラルフローデバイスでは、標識された薬剤28は、標識32に結合した抗体または抗体断片30を含む。捕捉剤34は、捕捉ゾーン16に固定されている。制御剤35は、制御ライン18に固定されている。
【0019】
流体試料24が試料リザーバー12に適用されると、試料24は標識された薬剤28を可溶化し、標識された薬剤28は分析物26に結合し、標識-抗体-分析物複合体20を形成する。したがって、例示的なサンドイッチ型ラテラルフローデバイス10では、目的分析物26を含有する流体試料24がラテラルフローデバイスに適用されるまで、標識-抗体-分析物複合体20は形成されない。さらに、例示的なサンドイッチ型ラテラルフローデバイス10において、標識-抗体-分析物複合体20中の分析物は、流体試料24に由来する分析物である。図1Bに示されるように、この複合体20は、試験片を通って捕捉ゾーン16に流れ、そこで捕捉剤34により結合される。今結合した複合体20(および具体的には、今結合した複合体20上の標識32)は、捕捉ゾーン16で検出可能な光信号を発する。
【0020】
分析物26に結合しなかった標識された薬剤28は、(捕捉ゾーン16内の捕捉剤34に結合する分析物26はないため)捕捉ゾーン16を通過し、ラテラルフローデバイス10を下流に流れ続ける。本明細書に示されているような制御ライン18を含むラテラルフローアッセイでは、付着した制御剤35は、分析物26に結合せず捕捉ゾーン16を通過して制御ライン18に到達した標識された薬剤28を捕捉する。いくつかの実施形態において、制御剤35は、抗体のFc領域で標識された薬剤28を捕捉する。いくつかの実施形態において、制御剤35は、抗体のFab領域で標識された薬剤28を捕捉する。制御ライン18に結合した、この標識された薬剤28は、アッセイが意図したとおりに動作した(例えば、試料24が、試料リザーバー12から流れ、ラテラルフローアッセイの通常の動作中に、意図したように捕捉ゾーン16を通過した)ことを示すために測定および使用できる検出可能な光信号を発する。例示的なサンドイッチ型ラテラルフローデバイス10の1つの欠点は、制御ライン18において生成される信号の強度が、捕捉ゾーン16において生成される信号の強度に依存することである(なぜなら、制御ライン18における制御剤35は、捕捉ゾーン16において分析物26に結合せず、次いで制御ライン18に送られた、標識された薬剤28を捕捉するからである)。例えば、比較的大量の分析物26が捕捉ゾーン16内で結合する場合、比較的少量の分析物26が捕捉ゾーン16を通過し、制御ライン18において制御剤35に結合するために利用可能になり、制御ライン18において比較的弱い強度信号をもたらす。
【0021】
ラテラルフローアッセイは、試料中の目的分析物の有無に関する情報などの定性的情報を与えることができる。例えば、捕捉ゾーン16における任意の測定可能な光信号の検出は、目的分析物が試料中に(幾分かの未知の量で)存在することを示し得る。捕捉ゾーンに測定可能な光信号がないことは、目的分析物が試料中に存在しないか、または検出限界以下であることを示し得る。例えば、試料24が目的分析物26を含んでいなかった場合(図示せず)、試料24は依然として標識された薬剤28を可溶化し、標識された薬剤28は依然として捕捉ゾーン16に流れる。しかし、標識された薬剤28は、捕捉ゾーン16において捕捉剤34に結合しないであろう。代わりに、標識された薬剤28は、捕捉ゾーン16を通過して流れ、制御ライン18を通過し、場合によっては、任意の吸収ゾーンに至るであろう。いくつかの標識された薬剤28は、制御ライン18上に付着した制御剤35に結合し、検出可能な光信号を発することがある。これらの状況において、捕捉ゾーン16から発せられる測定可能な光信号がないことは、目的分析物が試料24中に存在しないという指標であり、制御ライン18から発せられる測定可能な光信号の存在は、試料24が、ラテラルフローアッセイの通常の動作中に、意図されたように、試料受取ゾーン12から捕捉ゾーン16を通過して捕捉ライン18に移動したという指標である。
【0022】
いくつかのラテラルフローデバイスは、試料中の目的分析物の量の測定値などの定量的情報を与えることができる。ラテラルフローデバイスから得られる定量的測定値は、所定量の試料中に存在する分析物の濃度であってもよい。図2は、図1Aおよび図1Bに示したサンドイッチ型ラテラルフローアッセイから得た例示的な定量的測定値を示す。図2は、捕捉ゾーンで検出された信号の強度(y軸に沿って測定)と試料中の分析物の濃度(x軸に沿って測定)の関係をグラフで表した用量反応曲線である。信号の例としては、光信号、蛍光信号、および磁気信号が挙げられる。
【0023】
図2におけるゼロ濃度の最初のデータポイントで示されるように、試料が目的分析物を含んでいない場合、試料中の分析物の濃度はゼロであり、標識化抗体に結合して標識-抗体-分析物複合体を形成する分析物はない。この状況では、捕捉ゾーンに流れて捕捉抗体に結合する複合体はない。したがって、捕捉ゾーンで検出可能な光信号は観察されず、信号の大きさはゼロである。
試料中の分析対象物の濃度がゼロ濃度から増加すると、信号が検出される。フェーズAにおけるデータポイントで示されているように、試料中の分析対象物の濃度が高くなると信号が増加する。このことは、分析物濃度が増加するにつれて、標識-抗体-分析物複合体の形成が増加するために起こる。捕捉ゾーンに固定された捕捉剤は、捕捉ゾーンに流れる複合体に結合し、その数は増加して、捕捉ゾーンにおいて検出される信号の増加をもたらす。フェーズAでは、試料中の分析物の濃度が増加するにつれて、信号は増加し続ける。
【0024】
場合によって、試料中に、分析物に結合するために利用可能な標識された薬剤の量を超える、分析物の濃度がある場合、過剰な分析物が存在する。これらの状況では、標識された薬剤に結合されていない過剰な分析物は、標識-抗体-分析物複合体と競合して、捕捉ゾーン内の捕捉剤に結合する。捕捉ゾーン内の捕捉剤は、非標識分析物(言い換えると、標識された薬剤に結合していない分析物)と標識-抗体-分析物複合体に結合する。ただし、捕捉剤に結合する非標識分析物は、検出可能な信号を発しない。試料中の分析物の濃度がフェーズBで増加すると、(検出可能な信号を発する標識-抗体-分析物複合体の代わりに)捕捉剤に結合する非標識分析物の量が増加する。標識-抗体-分析物複合体の代わりに、より多くの非標識分析物が捕捉剤に結合するにつれて、フェーズBのデータポイントで示されるように、捕捉ゾーンで検出される信号が減少する。
フェーズAで検出信号が増加し、フェーズBで検出信号が減少するこの現象は、「フック効果」と呼ばれる。フェーズAで分析物の濃度が増加するほど、より多くの分析物が標識された薬剤に結合し、信号強度が増加する。「Conc飽和」の点で、標識された薬剤は試料由来の分析物で飽和し(例えば、標識された薬剤の利用可能な量は、すべてまたはほぼすべてが試料由来の分析物に結合し)、検出信号は最大値Signal最大に達している。試料中の分析物の濃度がフェーズBにおいて増加し続けると、標識された薬剤飽和点を超える過剰な分析物が標識された薬剤-分析物と競合して捕捉剤に結合するため、検出信号が減少する。
【0025】
「プロゾーン効果(prozone effect)」とも呼ばれるフック効果は、特に目的分析物がフェーズBにおける濃度で試料中に存在する状況で、ラテラルフローアッセイに悪影響を及ぼす。フック効果は、不正確な試験結果につながることがある。例えば、フック効果は、偽陰性または不正確に低い結果をもたらすことがある。具体的には、試料が、試験片上に付着した標識された薬剤の濃度を超える上昇したレベルの分析物を含有している場合、不正確な結果が生じる。このケースでは、試料が試験片上に置かれると、標識された薬剤は飽和状態になり、分析物のすべてが標識されるわけでない。非標識分析物はアッセイを通過して流れ、捕捉ゾーンで結合し、競合において標識複合体を排除し、それによって検出可能な信号を減少させる。したがって、単一の検出信号は低濃度と高濃度の両方に対応するため、デバイス(またはデバイスの操作者)は、光信号が低濃度に対応するか高濃度に対応するかを区別できない。分析物のレベルが十分に大きい場合、分析物は競合において標識複合体を排除し、捕捉ゾーン内で信号は観察されず、結果として偽陰性の試験結果になる。
【0026】
不正確な試験結果は、競合型ラテラルフローアッセイからも生じる場合がある。サンドイッチ型ラテラルフローアッセイとは対照的に、競合型ラテラルフローアッセイでは、試料由来の非標識目的分析物が標識目的分析物と競合して、捕捉ゾーン内で捕捉剤に結合する。図3Aおよび図3Bは、例示的な競合型ラテラルフローアッセイ22を示す。ラテラルフローデバイス22は、試料リザーバー12、標識ゾーン14、および捕捉ゾーン16を含む。図3Aおよび図3Bは、流体試料24が試料リザーバー12に適用される前および後のラテラルフローデバイス22を示す。図3Aおよび図3Bに示した例において、流体試料24は目的分析物26を含む。試料リザーバー12の中または付近にある標識ゾーン14は、標識された薬剤29を含む。この例示的な競合型ラテラルフローデバイスにおいて、標識された薬剤29は、標識32に結合した目的分析物26を含む。捕捉剤34は、捕捉ゾーン16に固定されている。
【0027】
非標識分析物26を含む試料24は、試料リザーバー12に適用される。試料24は、標識された薬剤29を可溶化する。試料24中の非標識分析物26および標識された薬剤29は一緒に捕捉ゾーン16に流れ、そこで試料24由来の非標識分析物26と標識された薬剤29の両方が、捕捉ゾーン16に固定された捕捉剤34に結合する。図3Bに示されるように、標識された薬剤および非標識分析物26は、互いに競合して、一定量の捕捉剤34に結合する。捕捉剤34に結合した標識された薬剤29(および具体的には標識された薬剤29の標識32)は検出可能な光信号を発するが、試料24に由来して捕捉剤34に結合した非標識分析物26は検出可能な光信号を発しない。
【0028】
捕捉ゾーン16からの光信号の検出は、目的分析物26に関する定性的または定量的情報を与えることができる。流体試料24が分析物26を含まない場合(図示せず)、試料24は依然として標識された薬剤29を可溶化し、標識された薬剤29は依然として捕捉ゾーン16に流れる。捕捉ゾーン16内の捕捉剤34は、(試料由来の非標識分析物と競合しない)標識された薬剤29と結合し、最大強度の検出光信号または最大強度に近い検出光信号をもたらす。試料24が非常に低い濃度または低濃度の分析物26を含む場合にも、最大強度の光信号または最大強度に近い光信号が検出されることがある。これは、捕捉剤34に結合した非標識分析物26の、捕捉剤34に結合した標識された薬剤29に対する割合が低いためである。したがって、最大強度での検出光信号が試料24中の分析物26のゼロ濃度または低濃度と相関するかどうかを決定することは難しい場合がある。
【0029】
試料24中の非標識分析物26の濃度が増加するにつれて、捕捉ゾーン16から放出され検出される光信号は減少する。これは、試料中の分析物濃度の増加とともに捕捉剤34の競合が増加し、捕捉剤34に結合した非標識分析物26の、捕捉剤34に結合した標識された薬剤29に対する割合が、漸進的に増加するためである。しかしながら、分析物が高濃度または非常に高い濃度で試料中に存在する場合、捕捉ゾーン16で検出される光信号は、低強度の信号へと急速に減少する。試料中の分析対象物の濃度が高く、非常に高い濃度に増加することに伴う、この光信号の強度の急激な減少により、分析対象物の濃度を正確に決定することは不可能ではないにしても困難になり、場合によっては、デバイスが分析物の濃度を決定することが一切できなくなる。図3Aおよび図3Bに示すような競合型ラテラルフローデバイスは、目的分析物が高濃度で存在する場合(例えば、非標識分析物の、標識された薬剤に対する比率が高い場合)、目的分析物の正確な濃度を正確に決定することは事実上できない。図4は、図3Aおよび図3Bを参照して上述したような例示的な競合型ラテラルフローデバイスにおいて生成された用量反応曲線を示している。図4に示すように、競合型ラテラルフローアッセイの用量反応曲線は、約1~20μg/mLの範囲における、分析対象物の濃度の信号の急激な減少を示している。曲線の急激に減少のため、分解能は低く、高濃度の分析物の量を決定する際の精度は低下し、場合によって、試料中に高濃度で存在する分析物の量をある程度の精度で決定することは、実行不可能または事実上不可能になる。
【0030】
試料中に高濃度で存在する分析物を正確に定量化する例示的なラテラルフローデバイス
本明細書に記載のラテラルフローアッセイ、試験システム、および方法は、図2A図2B図3A、および図3Bに示したような、サンドイッチ型および競合型ラテラルフローアッセイの、上記および他の欠点に対処する。図5Aおよび図5Bは、試料中に高濃度で存在する目的分析物の量を正確に測定することができる例示的なラテラルフローアッセイ100を示す。図5Cは、ラテラルフローアッセイ100から測定された光信号、および特に捕捉ゾーンで検出された光信号の大きさ(y軸に沿って測定)と、アッセイに適用された試料中の分析物濃度(x軸に沿って測定)の関係をグラフで示す、例示的な用量反応曲線である。本開示によるアッセイは光信号を生成する反射型標識の文脈で説明されるが、本開示によるアッセイは、蛍光信号、磁気信号、またはその他の検出可能な信号を生成するように構成される任意の適切な材料の標識を含んでよいことが理解されるであろう。
ラテラルフローアッセイ100は、試料受取ゾーン112、標識ゾーン114、および捕捉ゾーン116を有する、試験片110を含む。図5Aおよび図5Bは、流体試料124が試料リザーバー112に適用される前および後のラテラルフローデバイス100を示している。図示された例において、標識ゾーン114は、試験片110内の試料流118の方向に沿って試料受取ゾーン112の下流にある。場合によって、試料受取ゾーン112は、標識ゾーン114内に配置され、かつ/または標識ゾーン114と同一の広がりを有する。捕捉剤134は、捕捉ゾーン116に固定されている。
【0031】
標識された薬剤128は、標識ゾーン114に組み込まれている。図5Aおよび図5Bを参照して説明した非限定的な例などの、本開示によるラテラルフローデバイスにおいて、標識された薬剤128は、一緒に結合して複合体を形成する少なくとも3つの成分:標識(検出分子)132と、目的分析物126と、目的分析物126に特異的な抗体または抗体断片130とを含む。標識された薬剤128は、標識-抗体-分析物複合体128である。場合によって、標識された薬剤128は形成され、操作者によって試験片110の使用前に試験片110に適用される。例えば、標識された薬剤128は、試験片110の製造中に標識ゾーン114に組み込むことができる。別の例において、標識された薬剤128は、製造後に、ただし試験片110への流体試料の適用前に、標識ゾーン114に組み込まれる。標識された薬剤128は、以下で、より詳細に検討される多くの方法により、試験片110に組み込むことができる。
【0032】
したがって、本開示のラテラルフローデバイスの実施形態において、任意の流体試料124がラテラルフローデバイスに適用される前に、標識-抗体-分析物複合体128が形成され、試験片110に組み込まれる。1つの非限定的な例において、任意の流体試料124がラテラルフローデバイスに適用される前に、標識-抗体-分析物複合体128が形成され、試験片110のコンジュゲートパッド上に組み込まれる。さらに、本開示のラテラルフローデバイスの実施形態において、標識-抗体-分析物複合体128中の分析物は、流体試料124由来の分析物ではない。
【0033】
試験片110を使用して試験を実施するために、目的分析物126を含んでも含まなくてもよい試料124が試料受取ゾーン112に付着される。標識ゾーン114が試料受取ゾーン112の下流にある、図示した実施形態において、試料124中の非標識の目的分析物126は次に標識ゾーン114に流れ、組み込まれた標識された薬剤128と接触する。試料124は、標識された薬剤128を可溶化する。非限定的な一例において、試料124は標識された薬剤128を溶解する。標識ゾーン114内で試験片110の表面に標識された薬剤128を保持していた結合は解かれ、その結果、標識された薬剤128は、もはや試験片110の表面に組み込まれていないようになる。次に、標識された薬剤128は、試料124中の非標識分析物126とともに、流体前方に沿って捕捉ゾーン116に移動する。捕捉ゾーン116の捕捉剤134は、標識された薬剤128、および試料124由来の分析物126(存在する場合)に結合する。試料124中の非標識分析物126の量に応じて、標識された薬剤128と非標識分析物126は互いに競合して、捕捉ゾーン内の捕捉剤134に結合する。
【0034】
したがって、本開示によるラテラルフローデバイスは、第1のフェーズにおいて(例えば、ラテラルフローデバイスに流体試料を適用する前に)ラテラルフローデバイスの標識ゾーンに結合され、次いで、後続の第2のフェーズにおいて(例えば、試料受取ゾーンに流体試料を適用したときに)試験片を通過して移動する、標識-抗体-分析物複合体を含む標識された薬剤を有する。本開示による標識された薬剤は、第3のフェーズにおいて(例えば、流体試料が捕捉ゾーンに流れた後に)捕捉ゾーン内の捕捉剤に結合することができる。したがって、本明細書に記載の標識された薬剤は、最初にラテラルフローデバイスの第1の領域(標識ゾーンなど)に配置され、次いで(流体と接触したとき)、流体とともに、第1の領域の下流にあるラテラルフローデバイスの他の領域に移動し、次に、捕捉ゾーンの捕捉剤に結合する。
【0035】
上述のように、流体試料124は標識された薬剤128を可溶化する。一実施形態において、試料124中の目的分析物126は、このプロセス中に標識された薬剤128と相互作用しないか、または実質的に相互作用しない。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書に記載のラテラルフローデバイスのこの実装では、試料124が標識ゾーン114を通過して流れる際に、非標識の目的分析物126は、標識された薬剤128と共役、結合、または会合しない。これは、図1Aおよび図1Bを参照して上述したサンドイッチ型ラテラルフローデバイスとは対照的であり、試料24が標識ゾーン14を通過して流れる際に、標識された薬剤28が非標識の目的分析物26に結合する。本明細書に記載のラテラルフローデバイスの別の実施態様では、流体試料124が標識された薬剤128を可溶化するとき、試料124中の目的分析物126が標識された薬剤128と相互作用する。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、この実装では、捕捉ゾーン116内の捕捉剤134は、複合体中の分析物が、試料124を介してデバイスに導入された目的分析物126である、少なくともいくつかの標識-抗体-分析物複合体に結合し得る。
【0036】
目的分析物126が試料124中に存在しない場合(図示せず)、標識された薬剤128は、捕捉ゾーン116で捕捉剤134を飽和させる(例えば、捕捉ゾーン135内の各捕捉剤134分子は、標識ゾーン114から流れた1つの標識された薬剤128に結合する)。捕捉ゾーン116に捕捉された標識された薬剤128は、ラテラルフローデバイス100から得ることができる最大強度信号である検出可能な光信号を放出する。目的分析物126が試料124中に存在しないケースで捕捉ゾーン116において検出される光信号は、利用可能な各捕捉剤134が捕捉ゾーン116において標識された薬剤128結合しているため、本明細書では「最大強度信号」と呼ばれる。図5Cに示されている非限定的な例において、目的分析物の濃度がゼロのときに得られる最大強度信号は、76AUまたは約76AU(任意の信号強度単位)である。
【0037】
ラテラルフローデバイス100の最大強度信号を決定するための多くの方法がある。1つの非限定的な例において、特定のラテラルフローデバイス100から得られる最大強度信号を経験的に決定し、索引テーブルに保存することができる。いくつかの場合において、最大強度信号は、既知の特徴および構造のラテラルフローデバイス100を試験することにより、例えば、ゼロまたはほぼゼロ濃度を有する目的分析物が、既知の仕様および構造のラテラルフローデバイス100に適用されるときに得られた最大強度信号を平均することにより、経験的に決定される。別の非限定的な例において、特定のラテラルフローデバイス100から取得できる最大強度信号は、ラテラルフローデバイス100の既知の仕様および構造(例えば、標識ゾーン114に組み込まれた標識された薬剤128の量および特定の特性)を与えられた論理的計算を用いて、決定することができる。
【0038】
さらに、本明細書では「最大強度信号」と称しているが、予想される最大強度の特定範囲内に入る信号は、「最大強度信号」と実質的に同等であると考えることができると理解される。さらに、「最大強度信号」とは、最大強度光信号、最大強度蛍光信号、最大強度磁気信号、または最大強度で発生する他の種類の信号を指し得ると理解される。1つの非限定的な例として、予想される最大強度信号の1%範囲内にある検出信号は、予想される最大強度信号と実質的に同等であると考えられる。最大強度信号が76AUまたは約76AUである場合、約75.24AU~約76.76AUの範囲内の検出信号は、76AUの最大強度信号と実質的に同等であると考えられる。別の例として、図5C図6A、および図6Bを参照して説明される非限定的な実施形態において、予想最大強度信号の10%範囲内にある検出信号は、予想最大強度信号と実質的に同等であると考えられる。したがって、最大強度信号が76AUまたは約76AUである図5Cに示す例において、約68.4AU~約83.6AUの範囲内の検出信号は、76AUの最大強度信号と実質的に同等であると考えられる。他の分散も許容されるため、これらの例は、例示のみを目的として提供されている。例えば、本開示によるラテラルフローアッセイデバイスでは、予想最大強度信号からの任意の適当な分散範囲内(例えば、限定されないが、予想最大強度信号の1.1%、1.2%、1.3%、1.4、1.5%、2.0%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、予想最大強度信号の%、10%、11%、12%、13%、14%、15%範囲内)にある検出信号は、予想最大強度信号と実質的に同等であると考えられる。
【0039】
目的分析物126が試料124中に存在する図5Aおよび図5Bに示されるようなケースでは、標識ゾーン114からの標識された薬剤128および試料由来の分析物126は、捕捉ゾーン116に流れ、そこで競合して捕捉剤134と結合する。一例において、目的分析物126は、試料124中に低濃度で存在する。目的分析物126は、捕捉ゾーン116において検出された光信号が同じ、実質的に同じ、かつ/または最大強度信号からの特定の変動範囲内にあるとき、試料124中に低濃度で存在すると考えることができる。1つの非限定的な例において、検出光信号が76AUの5%範囲内(または約72.2AU~約79.8AU以内)であるとき、目的分析物126は試料中に低濃度で存在すると考えられる。76AUの5%範囲内の光信号は、0~約1μg/mLの目的分析物の濃度と相関しており、この例では、0~約1μg/mLの濃度が目的分析物の低濃度であると考えられる。図5Cに示されている非限定的な例において、検出光信号が76AUの10%範囲内(または約68.4AU~約83.6AU以内)にあるとき、目的分析物126は試料中に低濃度で存在すると考えられる。76AUの10%範囲内の光信号は、0~約10μg/mLの目的分析物の濃度と相関しており、この例では、0~約10μg/mLの濃度が目的分析物の低濃度であると考えられる。試料124中に存在する目的分析物126が比較的少ない低濃度のケースでは、捕捉剤に結合した試料124由来の目的分析物126の、捕捉剤に結合した標識された薬剤128に対する割合は低い。このような低濃度のケースでは、捕捉ゾーン116において検出される光信号は、試料124中に目的分析物126がなかった場合に検出される最大強度信号と同じであるか、わずかに小さい。
【0040】
試料124中の分析物126の濃度が約1μg/mLから10μg/mLに増加し、次いで20μg/mL以上の濃度になると、より多くの分析物126が捕捉ゾーン116に存在するようになり、標識された薬剤128と競合して結合し、薬剤134を捕捉する。これにより、分析物126の濃度が増加するにつれて、捕捉ゾーン134において結合する標識された薬剤128が少なくなり、捕捉ゾーン116において検出される光信号が減少する。
図5Cに示すように、本開示によるラテラルフローデバイスの実施形態において、目的分析物の濃度の増加に伴う信号の減少は、有利に漸進的である。検出信号のこの漸進的な減少の結果として、本明細書に記載のラテラルフローデバイスの実施形態は、有利なことに、検出器が高分解能で信号を正確に測定し、濃度が高いときに、データ分析器が目的分析物の濃度を高精度で決定することを可能にする。この点は、図3A図3B、および図4を参照して上記で説明した競合型ラテラルフローデバイスとは対照的である。
【0041】
加えて、本開示によるラテラルフローデバイスの用量反応曲線は、有利なことに、最大強度信号で始まり、次いで、この最大強度信号から減少する。このことは、有利なことに、信号が減少している用量反応曲線の部分に、最大強度信号と同じ大きさを有する信号がないことを意味する。さらに、試料中の分析物の濃度が低い場合の信号は、最大強度信号と同じまたは実質的に同じになるため(例えば、これらの信号は上記の最大強度信号と実質的に同等と考えられる)、ゼロから低濃度の分析物について、比較的一定の値の光信号(「最大強度信号」)のプラトーがある(これについては非限定的な例を参照しながら以下で詳細に説明する)。このことは、有利なことに、信号が減少している用量反応曲線の部分に、最大強度信号とほぼ同じ大きさを有する信号がないことを意味する。したがって、本明細書に記載のラテラルフローデバイスの実施形態において、偽陰性および不正確に低い測定値は回避される。この点は、試料中の高濃度の分析対象物が、分析物の濃度が低いときに生成される信号と同じまたはほぼ同じ信号を生成する、図1A図1B、および図2を参照して上記で説明したサンドイッチ型ラテラルフローデバイスとは対照的である。
【0042】
有利なことに、本明細書に記載のラテラルフローデバイスの実施形態において、標識された薬剤128は、コンジュゲートパッド上に付着する前に、既知の量の目的分析物を含むように、事前に製剤することができる。いくつかの実施形態において、既知の濃度の目的分析物は、試験片とは別個の反応容器内で、抗体または抗体の断片および標識分子とともにインキュベートされる。インキュベーション中、目的分析物は、抗体および標識分子と共役、結合、または会合し、上記のような標識された薬剤128を形成するようになる。インキュベーション後、標識された薬剤128を、正確な既知の濃度で溶液に直接添加するか、単離して、コンジュゲートパッド上に噴霧する前に過剰の遊離CRPを除去する。標識された薬剤128を含む溶液は、上記の標識ゾーン114などの試験片に適用される。付着中に、標識された薬剤128は、試験片の表面に組み込まれる。1つの非限定的な例において、標識された薬剤は、試験片のコンジュゲートパッド上に組み込まれている。有利なことに、標識された薬剤128は、試験片の表面に物理的に結合し、操作者が流体試料を試験片に適用するまで、化学的に安定したままになり、その後、標識された薬剤128は試験片から外され、上記のように流体試料と共に流れる。
【0043】
いくつかの実施形態において、標識された薬剤128は、約0.1~20μm/試験片の範囲の量で付着する。いくつかの実施形態において、標識された薬剤128は、標識ゾーンにおいて、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20μm/試験片の量で付着する。
【0044】
標識された薬剤128を含む溶液は、多くの異なる方法で試験片に適用することができる。一例では、エアジェット技術で溶液を噴霧することにより、溶液を標識ゾーン114に適用する。別の例において、標識された薬剤128を含む溶液は、溶液を注ぐこと、溶液を噴霧すること、試験片上に配置されるかまたは擦り込まれる粉末(power)またはゲルとして溶液を製剤すること、または単離された標識された薬剤128を適用する他の適切な方法によって、付着させる。いくつかの実施形態において、付着後、コンジュゲートパッド上で加熱するかまたは空気を吹き付けることにより、付着後に試験片の表面上で、標識された薬剤128を乾燥させる。試験片の表面上の標識された薬剤128を乾燥させるための他の機構が適切である。例えば、真空または凍結乾燥を使用して、コンジュゲートパッド上で標識された薬剤128を乾燥させることもできる。いくつかの場合において、単離された標識された薬剤128は、付着前に溶液に添加されず、代わりに試験片に直接適用される。標識された薬剤128は、試験片の表面上の標識された薬剤128に圧縮もしくは真空圧力を適用すること、および/または凍結乾燥粒子の形態の標識された薬剤128を試験片の表面に適用することを含むが、これらに限定されない、任意の好適な方法を使用して、直接適用することができる。
【0045】
図5Aおよび図5Bに示されるラテラルフローアッセイの実施形態は、試料受取ゾーン112に適用された試料が意図したように捕捉ゾーン116に流れたことを確認するように構成された制御ラインまたはゾーンを含む必要はない。通常の動作環境では、試料が捕捉ゾーン116に流れると、いくらかの検出可能な信号が捕捉ゾーン116から必ず放出される。このことは目的分析物が試料中に極めて低い濃度で存在する場合でも当てはまる。なぜなら、本開示のラテラルフローデバイスは、低濃度の場合に最大強度信号またはその付近に留まる用量反応曲線を有するためである。したがって、試料が試料受取ゾーン112に適用された後に、捕捉ゾーン116に検出可能な信号がないことは、ラテラルフローアッセイが意図したとおりに動作しなかったこと(例えば、試料が意図した捕捉ゾーン116に流れなかったか、または別の例として、捕捉ゾーンの固定化された捕捉剤134は欠陥または欠陥があること)の指標として用いることができる。したがって、本開示によるラテラルフローデバイスの実施形態のさらなる利点は、捕捉ゾーンが制御ラインとして機能する能力であり、それにより、別個の制御ラインを試験片から完全に省くことができる。ただし、制御ラインは、限定されないが、ノイズを正規化したり、または血清中の分析物からの干渉を検出したりするための、観測ラインを含む、様々な目的のために、本明細書に記載のラテラルフローデバイスの実施形態に含まれ得ると理解される。
【0046】
いくつかの場合において、本開示によるラテラルフローアッセイは、図1Aおよび図1Bを参照して上記で説明した制御ライン18に類似した制御ラインなどの制御ラインを含む。一実施形態(図示せず)において、ラテラルフローアッセイは、捕捉ゾーン116において標識された薬剤128によって生成された信号の強度から独立した強度を有する信号を放出する捕捉試薬を含む、制御ラインを含む。一実施形態において、ラテラルフローアッセイは、(本開示に従って標識された薬剤128を捕捉するように構成された少なくとも1つの捕捉ゾーン116を含む)複数の捕捉ゾーンと、異なる目的分析物の有無および/または濃度、を示すように構成された各捕捉ゾーンと、試料が意図したとおりに複数の捕捉ゾーンを通過して流れたことを示す単一の制御ラインとを含む。図1Aおよび図1Bを参照して上記で説明した制御ライン18とは対照的に、この実装形態における制御ラインから発せられる信号の強度は、捕捉ゾーンのいずれかから発せられる信号の強度に関連または依存しない場合がある。制御ラインを含む実施形態は、目的分析物が試料中に極めて高い濃度で存在するとき、捕捉ゾーン116が比較的弱い強度の信号を発する実例においても有利であり得る。そのような場合、捕捉ゾーン116から発せられる信号は、アッセイが意図したとおりに動作したこと(例えば、試料が意図したとおりに捕捉ゾーン116を通過して流れたこと)を確認するには不十分な強度のものである場合がある。
【0047】
さらに、複数の異なる目的分析物の有無および/または量を試験する複合アッセイは、図1Aおよび図1Bを参照して上記で説明した1つ以上のサンドイッチ型ラテラルフローアッセイと同じ試験片上に、(図5Aおよび図5Bを参照して上記で説明した)本開示によるラテラルフローアッセイを含み得る。そのような複合アッセイでは、本開示によるラテラルフローアッセイに制御ラインは必要とされないが、試料がサンドイッチ型ラテラルフローアッセイに伴う制御ゾーンを通過して流れたことを確認するために、依然として有利に制御ラインを試験片に含めることができる。1つのアッセイのために制御ラインを含み、本開示によるアッセイのために制御ラインを省く、この選択肢は、試験片に配置できるラインまたはゾーンの数が限られている複合アッセイにおいて特に有益であり得る。
以下の非限定的な例は、本明細書に記載されるラテラルフローデバイス、試験システム、および方法の特徴を示すものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【実施例0048】
(例1)
上昇したタンパク質濃度を定量化するためのラテラルフローアッセイの用意
以下の例において、本明細書に記載の目的分析物を定量化するためのラテラルフローアッセイの準備について説明する。この非限定的な例において、目的分析物は、上昇した濃度または高濃度で血清試料中に存在するタンパク質、C反応性タンパク質(CRP)である。
CRPは、血漿に含まれるタンパク質である。炎症に反応してCRPのレベルが上昇する。したがって、CRPは炎症の選別に使用できる炎症用マーカーである。対象の血清中の上昇したCRPレベルは、対象の炎症、ウイルス感染、および/または細菌感染と相関し得る。健康なヒト対象のCRPの正常レベルは、約1μg/mLから約10μg/mLの範囲である。軽度の炎症およびウイルス感染中のCRPの濃度は、10~40μg/mLの範囲であり、活動性炎症および細菌感染中では40~200μg/mL、重度の細菌感染および火傷の場合には200μg/mL超である。CRPレベルの測定と図表化は、病気の進行または処置の効果を判断するのに有用であり得る。
【0049】
この非限定的な例に従って準備されたアッセイは、健康なヒト対象のCRPの正常レベル(約1μg/mL~約10μg/mL)を超える場合でも、血清試料中のCRP(目的分析物)の正確な濃度を決定するために使用できる。このアッセイは、フック効果に関連する欠点を含む、サンドイッチ型ラテラルフローアッセイのいくつかの欠点を回避する、抗体-標識-CRP複合体を含む標識された薬剤を含む。
アッセイを準備するために、抗C反応性タンパク質(抗CRP)抗体を金ナノ粒子とインキュベートして、標識抗CRP抗体を形成した。標識抗体をCRPとともにインキュベートして、CRPに結合した標識化抗体の複合体を形成した。複合体を含む溶液をエアジェットで噴霧することにより、複合体を1.8μL/試験片の量でコンジュゲートパッド(標識ゾーン)上に付着させた。コンジュゲートパッドを加熱して、コンジュゲートパッドに至る複合体を乾燥させた。
【0050】
コンジュゲートパッドに付着した抗体-標識-CRP複合体の量を慎重に検討し、必要な量の複合体を確保して、試験システムでCRPの上昇したレベルを定量化できるように、捕捉ゾーンで最適な範囲の光信号を提供した。コンジュゲートパッドに過剰な量の複合体を付着させると、用量反応曲線がシフトし、定量可能なCRP濃度が過度に高くなる(非常に高い濃度のCRP(存在する場合)の光信号を潜在的に生成するが、中程度から高濃度では光信号を生成しない)。コンジュゲートパッドに不十分な量の複合体を付着させると、用量反応曲線が他の方向にシフトし、非常に高いCRP濃度の定量化が不可能である信号が生じる。表1は、コンジュゲートパッドに付着する抗体-標識-CRP複合体の最適量を決定するための実験の結果を示す。コンジュゲートパッド上に付着する、事前に形成された標識-抗体-分析物複合体の量は、分析物の異なる濃度範囲の要求事項に対応して変わり得る。
【0051】
【表1】
【0052】
この例において、コンジュゲートパッドに追加する抗体-標識-CRP複合体の最適量は、70.06AUの信号に対応して、コンジュゲートパッド上に付着する50ngのCRPをもたらす。この量では、試料中の非標識CRPの、抗体-標識-CRP複合体に対する比率は、捕捉ゾーンにおいてそれらが競合して捕捉剤に結合するとき、最適な範囲の非標識CRP濃度を超える強い光信号を生成し、それによって、信号の適切な分解能、および試料中の上昇したCRP濃度を正確に定量化することができる。有利なことに、(コンジュゲートパッドに適切な量の抗体-標識-CRP複合体を付着させることにより)コンジュゲートパッドに50ngのCRPを付着させると、光信号が減少しているサンドイッチ型アッセイの用量反応曲線の部分(例えば、図2のフェーズB)に見られることがある、非標識CRPの標識された薬剤(抗体-標識-CRP複合体)に対する比をもたらす。非標識CRPの標識された薬剤(抗体-標識-CRP複合体)に対するこの比により、この例のラテラルフローアッセイは、光信号が増加しているサンドイッチ型アッセイの用量反応曲線の部分(例えば、図2のフェーズA)をマスクし得る。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、この例のラテラルフローアッセイの実施形態は、最適量(この例では50ng)のCRPをコンジュゲートパッドに添加することによって、信号強度の減少を示す用量反応曲線の部分(「フック効果」を示す曲線の部分)のみを使用して、光信号が増加しているサンドイッチ型ラテラルフローアッセイの部分を効果的にマスクし、それによって図1A図1B、および図2を参照して上記で説明した欠点を回避すると考えられる。
この例では、抗CRP抗体を2mg/mLの量で捕捉ゾーンに付着させた。ヤギ抗マウス抗体を2mg/mLの量で制御ゾーンに付着させた。
【0053】
(例2)
ラテラルフローアッセイを使用した高濃度C反応性タンパク質の定量
フック効果のため、図1Aおよび図1Bを参照して上記で説明したようなサンドイッチ型ラテラルフローアッセイは、CRPが試料中に上昇したレベルで存在する場合、CRPの濃度を定量化するには一般に不適当である。上昇した濃度を決定するには、以前は試料の連続希釈が必要であり、非効率的で面倒なプロセスが行われていた。しかし、本明細書に記載のラテラルフローデバイス、試験システム、および方法を使用すると、健康レベルを超えるCRPの濃度を正確、確実、かつ迅速に定量化することができる。
【0054】
以下の表2の最後の列に示すように、例1で準備したラテラルフローアッセイを、様々な濃度のCRPを含む試料と接触させた。この例において、コンジュゲートパッドに添加した抗体-標識-CRP複合体の量は、コンジュゲートパッドに付着した100ngのCRPをもたらした。図1Aおよび図1Bを参照して上記で説明したようなサンドイッチ型ラテラルフローアッセイを、表2の中央の列に示した同一の試料と接触させた。上記のように、中央の列で参照されているサンドイッチ型ラテラルフローアッセイには、コンジュゲートパッドに付着した標識抗体のみが含まれていた(抗体-標識-CRP複合体を介してコンジュゲートパッドに付着したCRPはなかった)。表2の最初の列に示した量のCRPを30μLのヒト血清に添加することによって、流体試料を準備した。ラテラルフローアッセイ上で試料を受け取り、15秒後に、45μLのHEPES緩衝液を用いて追跡した。10分後、光信号を測定した。すべての試料を六重にして流し、表2に平均値を報告した。図6Aは、コンジュゲートパッドに付着した標識化抗体を用いたラテラルフローアッセイ(菱形が付いた実線)、およびコンジュゲートパッドに付着した抗体-標識-CRP複合体を使用したラテラルフローアッセイ(四角形が付いた破線)について得られた用量反応曲線を示し、ここで、分析物の濃度は対数目盛のx軸に沿って測定されている。図6Bは、抗体-標識-CRP複合体を用いたラテラルフローアッセイについての図6Aの例示的な用量反応曲線を示し、ここで、分析物の濃度は非対数目盛のx軸に沿って測定されている。
【0055】
【表2】
【0056】
図6Aは、フック効果を伴うサンドイッチ型ラテラルフローアッセイと本開示によるラテラルフローアッセイとの間の有意差を強調している。フック効果を伴うサンドイッチ型ラテラルフローアッセイでは、10μg/mLを超えるCRPの濃度(対数目盛で1.00)は、10μg/mL未満のCRPの濃度と同じ強度の光信号を生成する。対照的に、本開示によるラテラルフローアッセイにより、10μg/mLを超える濃度においてCRPの濃度を正確に決定することが可能になる。目的分析物がCRPであり、炎症または疾患状態が存在するとき、CRPが10μg/mLを超える濃度に上昇する本例において、上記の点は特に有利である。本明細書に記載のラテラルフローアッセイの実施形態により、ユーザーは、被検対象におけるCRPの濃度が正常レベルを超えていることを確実に判断することができる。本開示による試験が実施され、健康レベルよりも高い(例えば、10μg/mLを超える)CRP濃度を示す場合、この情報は、炎症、ウイルス感染、および/または細菌感染状態と相関し得る。
【0057】
さらに、被検対象におけるCRPの正確な濃度を正確に特定できるため、試験結果を特定のタイプの疾患状態に相関させることができる。例えば、10μg/mL~20μg/mLの濃度は軽度の炎症と相関する場合があるが、40μg/mL~200μg/mLの濃度は細菌感染と相関する場合がある。さらに、被検対象におけるCRPの正確な濃度を正確に特定することができため、試験結果を疾患段階と相関させることができる。例えば、40μg/mL~200μg/mLの濃度は軽度の細菌感染と相関する場合があるが、200μg/mLを超える濃度は重度の細菌感染と相関する場合がある。これらの例は例示であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0058】
本明細書に開示されたラテラルフローアッセイデバイス、システム、および方法は、さらなる利点を提供する。例えば、本開示によるラテラルフローアッセイは、フック効果を示す用量反応曲線の部分を使用することにより、試料中の分析物の信頼できる定量化が可能である。図6Aに示すように、健康レベル以下(約10μg/mL以下)のCRPの濃度は、76AU(76.20AU~70.29AU)の最大強度の10%範囲内の信号をもたらす。したがって、低濃度の試料は、比較的一定の値の信号(この場合、76AUの最大強度信号の10%範囲内の信号)のプラトーを生成する。本開示によるラテラルフローアッセイの実施形態において、低濃度のCRP濃度の光信号におけるこの重複は欠点ではない。なぜなら、低濃度のCRPは健康な対象に常に存在し、試験は低レベルでのCRP濃度に対して高感度である必要がないためである。
【0059】
代わりに、本開示のラテラルフローアッセイは、有利なことに、高濃度で存在する目的分析物に特に高感度である。高濃度の分析物は、プラトー上またはプラトー付近にない信号、この場合、約70AU未満の信号を生成する。ラテラルフローアッセイは、CRPの濃度が健康レベルを超える(10μg/mLを超える)と、徐々に減少する信号を生成し、この場合、信号は容易に検出でき(識別可能な信号強度と十分な間隔を有し)、用量反応曲線上で他の信号と重ならない。これにより、フック効果により複数の分析物の量に対応できる信号値を生成するサンドイッチ型ラテラルフローアッセイの場合などの、特定の検出信号で分析物の量を決定する際の不確実性が排除される。このような状況では、ユーザーは分析物の濃度が低いか高いかを判断することができず、診断目的での場合の不確実性が生じる。対照的に、本開示によるラテラルフローアッセイは、ゼロまたは低濃度の分析物に明確かつ明瞭に対応する信号(最大強度信号と同じまたは実質的に同等の信号)、または高濃度の分析物に明確かつ明瞭に対応する信号(最大強度信号より小さい信号)を生成する。これらの信号は、次に、正常レベルの分析物(ゼロまたは低濃度の分析物)または非正常レベルの分析物(高濃度の分析物)と直接相関し得る。
さらに、本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、試料を希釈する必要なく、1回のアッセイで試料中の分析物の上昇した濃度を定量化する。対照的に、図1A図1B図3A、および図3Bを参照して説明したアッセイは、対照的に、高濃度の分析物を含む試料の希釈を必要とする。そうしなければ、用量反応曲線の高濃度部分の信号を区別することはできない。本開示のラテラルフローアッセイは、1回の試験後に捕捉ゾーンで得られた単一の信号に基づいて、上昇した分析物濃度のわずかな違いさえも決定することができる。
【0060】
(例3)
本開示のラテラルフローアッセイを使用して測定したCRP濃度はELISAアッセイとの相関が高い
さらに、本開示によるラテラルフローアッセイの実施形態は、酵素結合性免疫吸着アッセイ(ELISA)などの、試料中の分析物の量を決定するための現在の至適基準アッセイと強く相関する。有利であることに、本明細書に記載のラテラルフローアッセイの実施形態により決定されるCRPの濃度は、ELISAにより決定されるCRPの濃度と強く相関することが発見された。図7Aは、本開示によるラテラルフローアッセイを使用して測定された様々な血清試料中のCRPの濃度と、ELISAを使用して測定された同じ血清試料中のCRPの濃度をまとめた表である。図7Bは、本開示に従って得られたCRP濃度とELISAにより測定されたCRP濃度とを相関させたチャートである。図7Bに示したように、本開示によるアッセイの実施形態を使用して測定されたCRPの濃度とELISAにより決定されたCRPの濃度との間に、93%の相関が得られた。
【0061】
本開示によるラテラルフローアッセイを使用して病状を診断する方法
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、ラテラルフローアッセイを使用して病状を診断する方法に関する。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載のラテラルフローアッセイを用意する工程を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、ラテラルフローアッセイの試料リザーバーで試料を受け取る工程を含む。
いくつかの実施形態において、試料は、環境または生物学的供給源を含む供給源から得られる。いくつかの実施形態において、試料は、目的分析物を有すると推測される。いくつかの実施形態において、試料は、目的分析物を有すると推測されない。いくつかの実施形態では、試料を得て、分析物の有無を証明するために分析する。いくつかの実施形態では、試料を得て、試料中の分析物の量について分析する。いくつかの実施形態において、試料中の分析物の量は、健康な対象に存在する正常値よりも少ないか、健康な対象に存在する正常値またはその付近であるか、または健康な対象に存在する正常値を超える。
【0062】
いくつかの実施形態において、ラテラルフローアッセイの試料リザーバーで試料を受け取る工程は、試料をラテラルフローアッセイと接触させることを含む。スポイトまたは他のアプリケーターを使用する場合のように、外部適用によって試料を試料リザーバーに導入することにより、試料は、ラテラルフローアッセイと接触し得る。いくつかの実施形態において、試料を保持する容器に試験片を浸漬する場合などに、試料リザーバーを試料中に直接浸漬してもよい。いくつかの実施形態において、試料は、試料リザーバーに注入、滴下、噴霧、配置、あるいは接触させてよい。
本開示の実施形態における標識された薬剤は、抗体、標識、および目的分析物を含み、試料リザーバー内またはその下流のコンジュゲートパッド(または標識ゾーン)上に付着させることができる。標識された薬剤は、物理的または化学的結合によりコンジュゲートパッドに組み込むことができる。試料を試料リザーバーに添加した後、試料は標識された薬剤を可溶化し、標識された薬剤をコンジュゲートパッドに保持している結合を解く。分析物(存在する場合)および標識された薬剤を含む試料は、液体前方に沿ってラテラルフローアッセイを通過して捕捉ゾーンに流れる。捕捉ゾーンに固定された捕捉剤は、分析物(存在する場合)と標識された薬剤を結合する。標識された薬剤が捕捉ゾーンにおいて捕捉剤に結合すると、標識からの信号が検出される。信号は本明細書に記載の光信号を含んでよい。試料中に低濃度(例えば、健康レベル以下のレベル)の分析物が存在する場合、捕捉ゾーンで最大強度信号が検出される。分析物の上昇した濃度(例えば、健康値を超えるレベル)において、検出信号の強度は、試料中の分析物の量に比例した量で減少する。検出信号を、目的分析物の用量反応曲線上の値と比較し、試料中の分析物の濃度を決定する。
【0063】
いくつかの実施形態において、分析物は上昇した濃度で存在する。分析物の上昇した濃度とは、健康レベルを超える分析物の濃度を指す。したがって、分析物の上昇した濃度は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、または健康レベル超である。いくつかの実施形態において、目的分析物は、健康な個体の血清中に約1~約10μg/mLの量で存在するC反応性タンパク質(CRP)を含む。したがって、試料中のCRPの上昇した濃度としては、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μg/mL以上の量が挙げられる。目的分析物が上昇したと考えられるレベルは、特定の目的分析物に応じて異なる場合がある。
【0064】
いくつかの実施形態において、分析物が試料中に上昇した濃度で存在すると判断された場合、対象は特定の疾患を有すると診断される。いくつかの実施形態において、CRPの濃度が、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μg/mL以上であると決定されたとき、感染の診断が行われる。いくつかの実施形態において、濃度が200μg/mLよりも大きい、例えば400~500μg/mLであるという決定により、重度の細菌感染の診断がもたらされる。
【0065】
本開示によるラテラルフローアッセイを含む例示的な試験システム
本明細書に記載のラテラルフローアッセイ試験システムは、ラテラルフローアッセイ試験デバイス(例えば、限定されないが、試験片)と、試験デバイスの全部または一部を受け取るように構成されたポートを含むハウジングと、光源および光検出器を含む読取り装置と、データ分析器と、これらの組み合わせとを含み得る。ハウジングは、プラスチック、金属、または複合材料を含む多種多様な材料のいずれかで作製されていてよい。ハウジングは、診断試験システムのコンポーネントの保護エンクロージャを形成する。ハウジングは、読取り装置に対して試験片を機械的に合わせる受け器も画定する。受け器は、様々な種類の試験片のいずれかを受け入れるように設計することができる。いくつかの実施形態において、ハウジングは、家庭用、商業用、または環境用途での、屋外、室内、または施設内における、作業台上などを含む、様々な環境で、ラテラルフローアッセイを実行する能力を可能にする可搬型デバイスである。
【0066】
読取り装置は、試験片の捕捉ゾーンの露出領域を光学的に試験するための1つ以上の光電子部品を含んでいてよい。いくつかの実装形態において、読取り装置は、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの光検出器とを含む。いくつかの実施形態において、光源は半導体発光ダイオードを含んでいてよく、光検出器は半導体フォトダイオードを含んでいてよい。試験片によって使用される標識の性質に応じて、光源は特定の波長範囲の光または特定の偏光を伴う光を発するように設計されていてよい。例えば、標識が量子ドットなどの蛍光標識の場合、光源は、標識からの蛍光発光を引き起こす波長範囲の光により、試験片の捕捉ゾーンの露出領域を照明するように設計される。同様に、光検出器は、捕捉ゾーンの露出領域からの光を選択的に捕捉するように設計されていてよい。例えば、標識が蛍光標識である場合、光検出器は、標識または特定の偏光を有する光により放出される蛍光の波長範囲内の光を選択的に捕捉するように設計される。一方、標識が反射型標識である場合、光検出器は、光源から放出される光の波長範囲内の光を選択的に捕捉するように設計される。これらの目的のために、光検出器は、捕捉された光の波長範囲または偏光軸を画定する1つ以上の光学フィルターを含んでもよい。標識からの信号は、目視観測または分光光度計;放出線を検出するための放出線カウンター、例えば、125I検出用ガンマカウンター;または特定の波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を使用して、発色性基材からの色を検出して、分析することができる。酵素結合アッセイを使用する場合、分光光度計を使用して、目的分析物の量の定量分析を実行することができる。本明細書に記載のラテラルフローアッセイは、必要に応じて、自動化するか、またはロボットで実行することができ、複数の試料からの信号を同時に検出できる。さらに、2つ以上の目的分析物が検出、識別、または定量される複合型アッセイにおいて、複数の信号を検出することができる。
【0067】
複合アッセイとしては、例えば、ウイルス鑑別アッセイを含めることができる。例えば、本明細書に記載の複合ラテラルフローアッセイは、ウイルス感染症に罹患しているか、またはウイルス感染症に罹患している疑いのある(例えば、インフルエンザ様症状を示す)、対象に由来する試料中に、1つまたは複数のウイルスタンパク質が存在するかどうかを検出することができる。いくつかの実施形態において、この目的のための複合ラテラルフローアッセイは、上昇した濃度のCRPおよび低濃度のTRAILおよびIP-10を検出することができるだろう。
【0068】
データ分析器は、読取り装置によって得られた信号測定値を処理する。一般に、データ分析器は、デジタル電子回路またはコンピューターのハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアを含む、任意のコンピューティングまたは処理環境で実装されてよい。いくつかの実施形態において、データ分析器は、プロセッサ(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、またはASIC)とアナログ-デジタル変換器とを含む。データ分析器は、診断試験システムのハウジング内に組み込むことができる。他の実施形態において、データ分析器は、有線接続または無線接続を介して診断試験システムと通信することができる、コンピューターなどの別個のデバイス内に位置する。データ分析器はまた、データ分析または結果の評価のために、無線接続を介して外部ソースに結果を転送するための回路を含んでもよい。
【0069】
一般に、結果表示器は、アッセイ試験の1つ以上の結果を示すための多種多様なメカニズムのいずれか1つを含んでよい。いくつかの実装形態において、結果表示器は、例えばアッセイ試験の完了を示すために作動する1つ以上の光(例えば、発光ダイオード)を伴う。他の実施形態において、結果表示器は、アッセイ試験結果を提示するための英数字ディスプレイ(例えば、2文字または3文字の発光ダイオードアレイ)を含む。
本明細書に記載の試験システムは、読取り装置、データ分析器、および結果表示器を含む、診断試験システムのアクティブなコンポーネントに、電力を供給する電源を含むことができる。電源は、例えば、交換可能なバッテリーまたは再充電可能なバッテリーによって実装されてよい。他の実施形態において、診断試験システムは、外部ホストデバイス(例えば、USBケーブルで接続されたコンピューター)によって電力を供給されてもよい。
【0070】
例示的なラテラルフローデバイスの機能
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、試料リザーバー(試料受取ゾーンとも呼ばれる)を含むことができ、試料リザーバーにおいて、流体試料が、試験片、例えば、限定されないが、ラテラルフローデバイスに存在する免疫クロマトグラフィー試験片に導入される。一例において、試料は、スポイトまたは他のアプリケーターを使用する場合のように、外部適用により、試料リザーバーに導入されてよい。試料は、試料リザーバーに注入するか、または絞り出してよい。別の例において、試料を保持する容器に試験片を浸すときなどに、試料リザーバーを試料に直接浸してもよい。
【0071】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、固体支持体または基材を含み得る。好適な固体支持体としては、ニトロセルロース、反応トレイのウェルの壁、マルチウェルプレート、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、膜、および微小粒子(ラテックス粒子など)が挙げられるが、これらに限定されない。標識された薬剤によるアクセスを可能にするのに十分な多孔性を有し、捕捉剤を固定するための適切な表面親和性を有する、任意の好適な多孔質材料を、本明細書に記載のラテラルフローデバイスに使用することができる。例えば、ニトロセルロースの多孔質構造は、様々な試薬、例えば捕捉剤に対して優れた吸収および吸着特性を備えている。ナイロンも同様の特性を有しており、好適である。水和状態でゲル構造を持つ材料と同様に、微細孔構造が有用である。
【0072】
有用な固体支持体のさらなる例としては、天然高分子炭水化物およびそれらの合成修飾架橋または置換誘導体、例えば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋グアーガム、セルロースエステル、特に硝酸およびカルボン酸、混合セルロースエステル、ならびにセルロースエーテル;架橋ゼラチンまたは修飾ゼラチンを含む、タンパク質および誘導体などの、窒素含有天然ポリマー;ラテックスおよびゴムなどの天然炭化水素ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、上記重縮合物のコポリマーおよびターポリマー、例えば、ポリエステル、ポリアミド、および他のポリマー、例えば、ポリウレタンまたはポリエポキシドを含む、好適な多孔質構造により調製できる合成ポリマー、例えば、ビニルポリマー;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリおよびアルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩を含む、多孔性無機材料、例えば、アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩;および、アルミニウムまたはシリコン酸化物または水和物、例えば、粘土、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル、またはガラス(これらの材料は、上記の高分子材料とともにフィルターとして使用されることがある);ならびに上記のクラスの混合物またはコポリマー、例えば、既存の天然ポリマー上で合成ポリマーの重合を初期化することにより得られるグラフトコポリマーが挙げられる。
【0073】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、シートまたは細片の形態をとる多孔質固体支持体、例えば、ニトロセルロースを含むことができる。そのようなシートまたは細片の厚さは、例えば、約0.01~0.5mm、約0.02~0.45mm、約0.05~0.3mm、約0.075~0.25mm、約0.1~0.2mm、または約0.11~0.15mmなどの広い範囲内で変わり得る。そのようなシートまたは細片の孔径は、例えば、約0.025~15ミクロン、またはより具体的には約0.1~3ミクロンの広い範囲内で同様に変わり得る。ただし、孔径は、固体支持体の選択における制限因子となることを意図していない。固体支持体の流量は、適用可能な場合、例えば、約12.5~90秒/cm(すなわち、50~300秒/4cm)、約22.5~62.5秒/cm(すなわち、90~250秒/4cm)、約25~62.5秒/cm(すなわち、100~250秒/4cm)、約37.5~62.5秒/cm(すなわち、150~250秒/4cm)、または約50~62.5秒/cm(すなわち、200~250秒/4cm)の範囲内で変わり得る。本明細書に記載のデバイスの特定の実施形態において、流速は約35秒/cm(すなわち、140秒/4cm)である。本明細書に記載のデバイスの他の特定の実施形態において、流速は約37.5秒/cm(すなわち、150秒/4cm)である。
【0074】
固体支持体の表面は、薬剤(例えば、捕捉試薬)と支持体の共有結合を引き起こす化学プロセスにより活性化され得る。以下に記載されるように、固体支持体はコンジュゲートパッドを含み得る。限定されないが、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有相互作用等を含む、多くの他の好適な方法を使用して、薬剤(例えば、捕捉試薬)を固体支持体に固定することができる。
物理的に制約される場合を除き、固体支持体は、フィルム、シート、細片、プレートなどの好適な形状で使用してよく、または紙、ガラス、プラスチックフィルム、もしくは生地などの好適な不活性担体にコーティングするか、もしくは接着もしくはラミネートしてよい。
【0075】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、捕捉試薬を含む、膜または他の種類の材料などのコンジュゲートパッドを含み得る。コンジュゲートパッドは、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリアミド、ポリカーボネート、ガラス繊維、膜、ポリエーテルスルホン、再生セルロース(RC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート(例えば、4,4-ヒドロキシ-ジフェニル-2,2’-プロパン)、酸化アルミニウム、混合セルロースエステル(例えば、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物)、ナイロン(例えば、ポリアミド、ヘキサメチレン-ジアミン、およびナイロン66)、ポリプロピレン、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)+核剤「アルミニウムジベンゾエート」(DBS)(例えば、80 u 0.024 HDPE DBS(Porex))、ならびにHDPEであり得る。
【0076】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、高濃度で試料中に存在する目的分析物に対して非常に高感度である。上記のように、試料中の非標識の目的分析物が、標識化合物と競合して捕捉ゾーンの捕捉剤に結合するのに十分な量で存在する場合、高濃度が存在し、用量反応曲線の負の傾き部分で(例えば、従来のサンドイッチ型ラテラルフローアッセイの用量反応曲線の「フック効果」部分、または本開示のラテラルフローアッセイによる用量反応曲線の負の傾き部分で)、検出信号が得られる。「感度」とは、そのままのとおり正しく識別される実際の陽性の割合(例えば、病状を有すると正しく識別されている、感染対象、潜伏対象、または症候性対象の割合)を指す。感度は、真陽性の数を、真陽性の数と偽陰性の数の合計で割った値として計算することができる。
【0077】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、多くの異なる種類の試料中の目的分析物を正確に測定することができる。試料としては、任意の供給源から得た標本または培養物、ならびに生物学的試料および環境試料を挙げることができる。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から得られ、液体、固体、組織、およびガスを包含し得る。生物学的試料としては、尿、唾液、および血液製剤、例えば、血漿、血清等が挙げられる。ただし、そのような例は、本開示に適用可能な試料の種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0078】
いくつかの実施形態において、試料は、環境内の分析物を検出するための環境試料である。いくつかの実施形態において、試料は対象由来の生体試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液(broncheoalveolar lavage fluid)、精液(前立腺液を含む)、カウパー液または前射精液、腟液(female ejaculate)、汗、糞便、髪、涙、嚢腫液、胸膜および腹膜液、心膜液、リンパ液、粥状液、乳糜、胆汁、間質液、月経、膿、皮脂、吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、便水(stool water)、膵液、副鼻腔(sinus cavitiy)由来の洗浄液、気管支肺吸引液、またはその他の洗浄液を含み得る。
【0079】
本明細書で使用される「分析物」は、一般に、検出される物質を指す。例えば、分析物は、抗原性物質、ハプテン、抗体、およびこれらの組み合わせを含んでよい。分析物としては、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物(治療目的で投与されるもの、および不正目的で投与されるものを含む)、薬物中間物(drug intermediary)または副産物、細菌、ウイルス粒子、および上記物質のいずれかの代謝産物または抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの分析物の具体例としては、フェリチン;クレアチニンキナーゼMB(CK-MB);ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);ジゴキシン;フェニトイン;フェノバルビトール;カルバマゼピン;バンコマイシン;ゲンタマイシン;テオフィリン;バルプロ酸;キニジン;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;C反応性タンパク質(CRP);リポカリン;IgE抗体;サイトカイン;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);ビタミンB2ミクログロブリン;インターフェロンガンマ誘発タンパク質10(IP-10);糖化ヘモグロビン(Gly Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N-アセチルプロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹に対する抗体、例えば、風疹IgGおよび風疹IgM;トキソプラズマ症に対する抗体、例えば、トキソプラズマ症IgG(Toxo-IgG)およびトキソプラズマ症IgM(Toxo-IgM);テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);B型肝炎コア抗原に対する抗体、例えば、抗B型肝炎コア抗原IgGおよびIgM(抗HBC);ヒト免疫不全ウイルス1および2(HIV1および2);ヒトT細胞白血病ウイルス1および2(HTLV);B型肝炎e抗原(HBeAg);B型肝炎e抗原に対する抗体(抗HBe);インフルエンザウイルス;甲状腺刺激ホルモン(TSH);サイロキシン(T4);全トリヨードサイロニン(全T3);遊離トリヨードサイロニン(遊離T3);癌胎児性抗原(carcinoembryoic)(CEA);リポタンパク質、コレステロール、およびトリグリセリド;ならびにアルファフェトプロテイン(AFP)が挙げられる。乱用薬物および規制薬物としては、アンフェタミン;メタンフェタミン;バルビツール酸塩、例えば、アモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、およびバルビタール;ベンゾジアゼピン、例えば、リブリウムおよびバリウム;カンナビノイド、例えば、大麻およびマリファナ;コカイン;フェンタニル;LSD;メタクアロン;アヘン剤、例えば、ヘロイン、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルフォンおよびアヘン;フェンシクリジン;およびプロポキシヘンが挙げられるが、これらに限定する意図はない。生物学的または環境対象物質のために、追加の分析物が含まれてもよい。
【0080】
本明細書で説明されるラテラルフローデバイスは、標識を含み得る。標識は、分光学、光化学、生化学、免疫化学、電気、光学、または化学的手段によって検出可能である、分析物、分析物類似体、検出試薬、または結合パートナーに結合しているか、または結合することができる、分子または組成物を含む、多くの異なる形態をとり得る。標識の例としては、酵素、コロイド金粒子(金ナノ粒子とも呼ばれる)、着色ラテックス粒子、放出性同位体、補因子、リガンド、化学発光または蛍光薬剤、タンパク質吸着銀粒子、タンパク質吸着鉄粒子、タンパク質吸着銅粒子、タンパク質吸着セレン粒子、タンパク質吸着硫黄粒子、タンパク質吸着テルル粒子、タンパク質吸着炭素粒子、およびタンパク質結合色素嚢が挙げられる。標識への化合物(例えば、検出試薬)の付加は、共有結合、吸着プロセス、疎水性結合および/または静電結合(キレート等における結合)、またはこれらの結合および相互作用を介して行われ得、かつ/または連結基を含み得る。
【0081】
用語「特異的結合パートナー(または結合パートナー)」は、関与する分子の三次元構造に依存する特異的な非共有相互作用により相互作用する、分子の対の構成要素を指す。特異的結合パートナーの典型的な対としては、抗原/抗体、ハプテン/抗体、ホルモン/受容体、核酸鎖/相補的核酸鎖、基質/酵素、阻害剤/酵素、炭水化物/レクチン、ビオチン/(ストレプト)アビジン、受容体/リガンド、およびウイルス/細胞受容体、またはこれらの様々な組み合わせが挙げられる。
本明細書で使用される用語「免疫グロブリン」または「抗体」は、特異的抗原に結合するタンパク質を指す。免疫グロブリンとしては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、およびヒト化抗体、Fab断片、F(ab’)2断片が挙げられ、以下のクラス:IgG、IgA、IgM、IgD、IbE、および分泌型免疫グロブリン(sIg)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫グロブリンは一般に、2つの同一の重鎖と2つの軽鎖を含む。ただし、用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、一本鎖抗体および二本鎖抗体も包含する。
【0082】
本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、標識された薬剤を含む。場合によって、標識された薬剤は、検出剤に結合することができる検出剤を含む。標識された薬剤は、分析物に特異的であり得る。いくつかの実施形態において、標識された薬剤は、検出剤に共役、結合、または会合した抗体またはその断片であり得る。本開示によるラテラルフローアッセイの実施形態において、標識された薬剤は、検出剤および目的分析物に共役、結合、または会合した抗体またはその断片であり得、標識-抗体-分析物複合体を形成する。
【0083】
本開示によるラテラルフローデバイスは、捕捉剤を含む。捕捉剤は、遊離(非標識)分析物および/または標識分析物を含む、分析物に結合することができる、固定薬剤を含む。捕捉剤は、(i)標識された目的分析物、(ii)競合分析などにおける標識分析物または非標識分析物、または(iii)間接アッセイのように、それ自体が分析物に特異的である、補助的な特異的結合パートナーに特異的な非標識特異的結合パートナーを含む。本明細書で使用するとき、「補助的な特異的結合パートナー」とは、分析物の特異的結合パートナーに結合する特異的結合パートナーである。例えば、補助的な特異的結合パートナーは、別の抗体、例えば、ヤギ抗ヒト抗体に特異的な抗体を含んでもよい。本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、捕捉試薬が固定される、ラテラルフローデバイスの区域である「捕捉領域」を含み得る。本明細書に記載のラテラルフローデバイスは、2つ以上の捕捉領域、例えば「一次捕捉領域」、「二次捕捉領域」等を含むことができる。場合によって、一次、二次、および/または他の捕捉領域に、異なる捕捉試薬が固定される。複数の捕捉領域は、ラテラルフロー基材上で互いに対して任意の方向を持つことができる。例えば、一次捕捉領域は、流体の流れの経路に沿って、二次(または他の)捕捉領域の遠位または近位にあってよく、逆もまた同様である。あるいは、一次捕捉領域および二次(または他の)捕捉領域は、流体が捕捉領域に同時にまたはほぼ同時に接触するように、流体流れの経路に垂直な軸に沿って整列されてもよい。
【0084】
本開示によるラテラルフローデバイスは、ラテラルフローデバイスの通常の動作中に捕捉剤の動きが制限されるように固定される捕捉剤を含む。例えば、固定化された捕捉剤の移動は、流体試料がラテラルフローデバイスに適用される前および後に制限される。捕捉剤の固定は、障壁、静電相互作用、水素結合、生体親和性、共有相互作用またはこれらの組み合わせなどの物理的手段によって行うことができる。
本開示によるラテラルフローデバイスは、複合アッセイを含むことができる。複合アッセイとしては、複数の異なる目的分析物を、検出し、同定し、場合によっては定量化することができるアッセイが挙げられる。例えば、複合アッセイデバイスでは、一次、二次、またはそれ以上の捕捉領域が存在してよく、それぞれが複数の目的分析物における1つの目的分析物に特異的である。
【0085】
本開示によるラテラルフローデバイスは、生物製剤を、検出し、同定し、場合によっては定量化することができる。生物学的製剤としては、原核細胞系、真核細胞系、哺乳動物細胞系、微生物細胞系、昆虫細胞系、植物細胞系、混合細胞系、天然起源細胞株、または合成的に操作された細胞株を含み得る生体によって生成される、化学的または生化学的化合物が挙げられる。生物学的製剤は、タンパク質、多糖、脂質、核酸などの大きな巨大分子、ならびに一次代謝産物、二次代謝産物、天然物などの小分子を含み得る。
説明、特定の例およびデータは、例示的な実施形態を示しているが、例示として与えられており、本開示の各種実施形態を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示内の各種変更および修正は、本明細書に含まれる説明およびデータから、当業者に明らかになるものであり、したがって、本開示の各種実施形態の一部であると考えられる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテラルフローデバイスであって、
前記ラテラルフローデバイスに流体試料を適用する前に該ラテラルフローデバイスの第1の領域に配置されている複合体であって、
標識、
目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物、
を含む複合体と;
前記第1の領域の下流前記目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む、捕捉ゾーンと
を含み、
前記複合体は、前記流体試料と接触すると、前記第1の領域から前記捕捉ゾーンに移動し、前記固定化された捕捉剤に結合するように構成されている
ラテラルフローデバイス
【請求項2】
前記第1の領域が、前記ラテラルフローデバイスの標識ゾーンを含む、請求項1に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項3】
試料受取ゾーンを更に含み、前記標識ゾーンが前記試料受取ゾーンの下流にある、請求項2に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項4】
試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーン内に位置している、請求項2に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項5】
試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーンと同一の広がりを有する、請求項2に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項6】
前記ラテラルフローデバイスが、非標識の目的分析物を含む流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、請求項1~5のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項7】
前記複合体が、記非標識の目的分析物とともに前記捕捉ゾーンに移動するように構成されている、請求項に記載のラテラルフローデバイス
【請求項8】
前記複合体が、記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成されている、請求項に記載のラテラルフローデバイス
【請求項9】
前記流体試料中の非標識の目的分析物の濃度が増加するにつれて、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した複合体から放出される号が減少する、請求項に記載のラテラルフローデバイス
【請求項10】
前記信号が、光信号、蛍光信号、又は磁気信号を含む、請求項9に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項11】
前記ラテラルフローデバイスが、目的分析物を含むかまたは含まない流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、前記流体試料が目的分析物を含まない場合、記捕捉ゾーンにおいて前記固定化された捕捉剤のすべてまたは実質的にすべてに特異的に結合する、請求項1~5のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項12】
前記流体試料が目的分析物を含まない場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される号が、前記ラテラルフローデバイスから放出され得る最大光信号となる、請求項11に記載のラテラルフローデバイス
【請求項13】
前記流体試料が目的分析物を含む場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される号が、前記最大号よりも小さくなる、請求項12に記載のラテラルフローデバイス
【請求項14】
前記信号が、光信号、蛍光信号、又は磁気信号を含む、請求項12又は13に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項15】
前記固定化された捕捉剤が、前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片を含む、請求項1~14のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項16】
前記複合体が、ラテラルフローデバイスの表面に組み込まれている、請求項1~15のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項17】
前記複合体が、前記複合体を含む溶液を前記ラテラルフローデバイスの表面に噴霧し、前記溶液を乾燥させることにより、前記ラテラルフローデバイスの表面に組み込まれている、請求項16に記載のラテラルフローデバイス
【請求項18】
前記流体試料が、血液、血漿、尿、汗、または唾液試料からなる群から選択される、請求項1~17のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項19】
前記捕捉ゾーンの下流の、固定化された制御剤を含む制御ゾーンを更に含む、請求項1~18のいずれかに記載のラテラルフローデバイス。
【請求項20】
前記ラテラルフローデバイスへの前記流体試料の適用後、前記制御ゾーンから発せられる信号の強度が、前記捕捉ゾーンから発せられる信号の強度に依存しない、請求項19に記載のラテラルフローデバイス。
【請求項21】
前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記複合体が、前記CRPに結合した抗CRP抗体またはその断片を含む、請求項1~20のいずれかに記載のラテラルフローデバイス
【請求項22】
アッセイ試験片を構成する、請求項1~21のいずれかに記載のラテラルフローデバイス。
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載のラテラルフローデバイスと;
光源および検出器を含む読取り装置と;
データ分析器と
を含む、診断試験システム。
【請求項24】
前記読取り装置が、前記ラテラルフローデバイスの用量反応曲線の最大光信号である、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に目的分析物がないという指標を出力する、請求項23に記載の診断試験システム。
【請求項25】
前記読取り装置が、前記最大光信号から1%の範囲内にある、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項24に記載の診断試験システム。
【請求項26】
前記読取り装置が、前記最大光信号から5%の範囲内にある、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項24に記載の診断試験システム。
【請求項27】
前記読取り装置が、前記最大光信号から10%の範囲内にある、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項24に記載の診断試験システム。
【請求項28】
前記読取り装置が、前記最大光信号の90%または90%未満である、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に高濃度の目的分析物があるという指標を出力する、請求項24に記載の診断試験システム。
【請求項29】
前記読取り装置が、前記最大光信号未満である、前記ラテラルフローデバイスからの号を検出すると、前記データ分析器が、前記試料中の目的分析物の濃度の指標を出力する、請求項24に記載の診断試験システム。
【請求項30】
前記信号が、光信号、蛍光信号、又は磁気信号を含む、請求項24~29のいずれかに記載の診断試験システム。
【請求項31】
ラテラルフローデバイスを使用して流体試料中の目的分析物の濃度を決定する方法であって、前記ラテラルフローデバイスが、前記ラテラルフローデバイスに流体試料を適用する前に該ラテラルフローデバイスの第1の領域に配置されている複合体であって、
標識、
前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物、
を含む複合体
を含み前記ラテラルフローデバイスが、前記第1の領域の下流に捕捉ゾーンを更に含み、前記捕捉ゾーンが前記目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含、該方法が、
前記複合体が前記第1の領域配置されているときに、前記流体試料を前記ラテラルフローデバイスに適用する工程と;
前記第1の領域から前記複合体を前記捕捉ゾーンに移動させる工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に前記複合体を結合させる工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した前記複合体からの信号を検出する工程と
を含む、方法。
【請求項32】
前記複合体が、前記ラテラルフローデバイスに流体試料を適用する前に該ラテラルフローデバイスの前記第1の領域に連結されており、前記方法が、前記第1の領域から前記複合体の連結を離す工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複合体の連結を離す工程が、前記複合体を前記流体試料で可溶化することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成される、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記流体試料が、目的分析物を含まず、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号を検出することを含む、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記流体試料中の分析物の濃度がゼロであると決定する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記目的分析物が前記流体試料中に存在しないという指標を表示する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記流体試料が、目的分析物を含み、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号よりも小さい、前記試験片からの信号を検出することを含む、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記流体試料中の分析物の濃度がゼロより大きいと決定する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記目的分析物が前記流体試料中に存在するという指標を表示する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
検出信号が前記最大号から10%の範囲内であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に低濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
検出信号が前記最大信号の90%または90%未満であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に高濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記ラテラルフローデバイスが、前記捕捉ゾーンの下流の制御ゾーンを更に含み、前記制御ゾーンが、固定化された制御剤を含む、請求項31~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記ラテラルフローデバイスへの前記流体試料の適用後、前記制御ゾーンから発せられる信号の強度が、前記捕捉ゾーンから発せられる信号の強度に依存しない、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記制御ゾーンから発せられる前記信号を検出する工程を更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記複合体から検出される信号が、光信号、蛍光信号、または磁気信号である、請求項31~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記ラテラルフローデバイスが、アッセイ試験片を構成する、請求項31~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記抗体が、抗CRP抗体または抗CRP抗体の断片を含む、請求項31~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第1の領域が、標識ゾーンを含む、請求項31~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記標識ゾーンが前記試料受取ゾーンの下流にある、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーン内に位置している、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーンと同一の広がりを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
ラテラルフローデバイスを製造する方法であって、
第1の領域と、前記第1の領域の下流の捕捉ゾーン提供する工程と;
前記第1の領域上に複合体を提供する工程であり、前記複合体が、
標識、
目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物
を含む工程と
を含む、方法。
【請求項55】
前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記抗体が、抗CRP抗体または抗CRP抗体の断片を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記目的分析物が、約50ngのCRPを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記目的分析物が、約100ngのCRPを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記目的分析物に特異的な捕捉剤を前記捕捉ゾーンに固定する工程をさらに含む、請求項54~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記第1の領域上に前記複合体を提供する工程が、前記複合体を前記第1の領域に連結することを含む、請求項54~58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記複合体を前記第1の領域に連結する工程が、前記複合体と前記第1の領域との間に、前記第1の領域内の流体試料の存在下で切断される結合を形成することを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の領域上に前記複合体を提供する工程が、前記複合体を含む溶液を前記第1の領域の表面に噴霧することを含む、請求項54~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記複合体を提供する工程が、
前記複合体を含む流体溶液を前記ラテラルフローデバイスの表面に適用する工程と;
前記流体溶液を乾燥させる工程と
を含む、請求項54~60のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記複合体を提供する工程が、前記複合体を前記ラテラルフローデバイスの表面に組み込むことを含む、請求項54~60のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記複合体を含む溶液を提供する工程をさらに含む、請求項54~63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記溶液を提供する工程が、前記標識および前記抗体または前記抗体の断片を含む第1の液体を、前記目的分析物を含む第2の液体と混合することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記溶液を提供する工程が、前記第1の液体と前記第2の液体の混合物を約30分間インキュベートすることをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第1の領域上に前記複合体を提供する工程が、前記第1の領域の表面に前記溶液を噴霧することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記捕捉ゾーンの下流に制御ゾーンを提供する工程を更に含み、前記制御ゾーンが、固定化された制御剤を含む、請求項54~67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記ラテラルフローデバイスが、アッセイ試験片を構成する、請求項54~68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記第1の領域が、標識ゾーンを含む、請求項54~69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記標識ゾーンが前記試料受取ゾーンの下流にある、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーン内に位置している、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記ラテラルフローデバイスが、試料受取ゾーンを更に含み、前記試料受取ゾーンが前記標識ゾーンと同一の広がりを有する、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
請求項5473のいずれかに記載の方法により作製されたラテラルフローデバイス
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
本開示によるラテラルフローデバイスは、生物製剤を、検出し、同定し、場合によっては定量化することができる。生物学的製剤としては、原核細胞系、真核細胞系、哺乳動物細胞系、微生物細胞系、昆虫細胞系、植物細胞系、混合細胞系、天然起源細胞株、または合成的に操作された細胞株を含み得る生体によって生成される、化学的または生化学的化合物が挙げられる。生物学的製剤は、タンパク質、多糖、脂質、核酸などの大きな巨大分子、ならびに一次代謝産物、二次代謝産物、天然物などの小分子を含み得る。
説明、特定の例およびデータは、例示的な実施形態を示しているが、例示として与えられており、本開示の各種実施形態を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示内の各種変更および修正は、本明細書に含まれる説明およびデータから、当業者に明らかになるものであり、したがって、本開示の各種実施形態の一部であると考えられる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕流体試料を受け取るように構成された流路と;
前記流路に連結された試料受取ゾーンと;
前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に連結され、目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む、捕捉ゾーンと;
第1のフェーズにおいて前記流路に連結され、第2のフェーズにおいて前記流体試料の存在下で前記流路にて前記捕捉ゾーンに流れるように構成された複合体であって、
標識、
前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物、
を含む複合体と
を含む、アッセイ試験片。
〔2〕前記流路が、非標識の目的分析物を含む流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、前記第1のフェーズまたは前記第2のフェーズにおいて前記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔3〕前記複合体が、前記第2のフェーズにおいて前記流路にて前記非標識の目的分析物とともに前記捕捉ゾーンに流れるように構成されている、前記〔2〕に記載のアッセイ試験片。
〔4〕前記複合体が、第3のフェーズにおいて、前記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成されている、前記〔3〕に記載のアッセイ試験片。
〔5〕前記流体試料中の非標識の目的分析物の濃度が増加するにつれて、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した複合体から放出される光信号が減少する、前記〔4〕に記載のアッセイ試験片。
〔6〕前記流路が、目的分析物を含むかまたは含まない流体試料を受け取るように構成され、前記複合体が、前記流体試料が目的分析物を含まない場合、前記第2のフェーズにおいて前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤のすべてまたは実質的にすべてに特異的に結合する、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔7〕前記流体試料が目的分析物を含まない場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される光信号が、前記アッセイ試験片から放出され得る最大光信号となる、前記〔6〕に記載のアッセイ試験片。
〔8〕前記流体試料が目的分析物を含む場合、前記捕捉ゾーンに結合した前記複合体から放出される光信号が、前記最大光信号よりも小さくなる、前記〔7〕に記載のアッセイ試験片。
〔9〕前記固定化された捕捉剤が、前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片を含む、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔10〕前記複合体が、第1のフェーズにおいて前記試験片の表面に組み込まれている、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔11〕前記複合体が、前記複合体を含む溶液を前記試験片の表面に噴霧し、前記溶液を乾燥させることにより、前記試験片の表面に組み込まれている、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔12〕前記流体試料が、血液、血漿、尿、汗、または唾液試料からなる群から選択される、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔13〕前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記複合体が、前記CRPに結合した抗CRP抗体またはその断片を含む、前記〔1〕に記載のアッセイ試験片。
〔14〕前記〔1〕に記載のアッセイ試験片と;
光源および検出器を含む読取り装置と;
データ分析器と
を含む、診断試験システム。
〔15〕前記読取り装置が、前記試験片の用量反応曲線の最大光信号である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に目的分析物がないという指標を出力する、前記〔1〕に記載の診断試験システム。
〔16〕前記読取り装置が、前記最大光信号の1%以内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、前記〔15〕に記載の診断試験システム。
〔17〕前記読取り装置が、前記最大光信号の5%以内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、前記〔15〕に記載の診断試験システム。
〔18〕前記読取り装置が、前記最大光信号の10%以内にある、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に低濃度の目的分析物があるという指標を出力する、前記〔15〕に記載の診断試験システム。
〔19〕前記読取り装置が、前記最大光信号の90%または90%未満である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記流体試料中に高濃度の目的分析物があるという指標を出力する、前記〔15〕に記載の診断試験システム。
〔20〕前記読取り装置が、前記最大光信号未満である、前記アッセイ試験片からの光信号を検出すると、前記データ分析器が、前記試料中の目的分析物の濃度の指標を出力する、前記〔15〕に記載の診断試験システム。
〔21〕アッセイ試験片を使用して流体試料中の目的分析物の濃度を決定する方法であって、前記アッセイ試験片が、流体試料を受け取るように構成された流路と、前記流路に連結された試料受取ゾーンと、前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に連結され、目的分析物に特異的な固定化された捕捉剤を含む、捕捉ゾーンと、第1のフェーズにおいて前記流路に連結され、第2のフェーズにおいて前記流体試料の存在下で前記流路にて前記捕捉ゾーンに流れるように構成された複合体であって、標識、前記目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および前記目的分析物を含む複合体とを含み、該方法が、
前記複合体が前記第1のフェーズにおいて前記流路に連結されたときに、前記流体試料を前記アッセイ試験片に適用する工程と;
前記流路から前記複合体の連結を離す工程と;
前記第2のフェーズにおいて前記流路内で前記流体試料および前記複合体を前記捕捉ゾーンに流す工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に前記複合体を結合させる工程と;
前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合した前記複合体からの信号を検出する工程と
を含む、方法。
〔22〕検出信号が、光信号、蛍光信号、または磁気信号である、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記複合体の連結を離す工程が、前記複合体を前記流体試料で可溶化することを含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔24〕前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、前記第1のフェーズまたは前記第2のフェーズにおいて前記非標識の目的分析物に特異的に結合しない、前記〔21〕に記載の方法。
〔25〕前記流体試料が、非標識の目的分析物を含み、前記複合体が、第3のフェーズにおいて、前記非標識の目的分析物と競合して、前記捕捉ゾーン内の前記固定化された捕捉剤に結合するように構成される、前記〔21〕に記載の方法。
〔26〕前記流体試料が、目的分析物を含まず、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号を検出することを含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔27〕前記流体試料中の分析物の濃度がゼロであると決定する工程をさらに含む、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記目的分析物が前記流体試料中に存在しないという指標を表示する工程をさらに含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔29〕前記流体試料が、目的分析物を含み、検出が、前記試験片の用量反応曲線の最大信号よりも小さい、前記試験片からの信号を検出することを含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔30〕前記流体試料中の分析物の濃度がゼロより大きいと決定する工程をさらに含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記目的分析物が前記流体試料中に存在するという指標を表示する工程をさらに含む、前記〔30〕に記載の方法。
〔32〕検出信号が前記最大光信号の10%以内であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に低濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔33〕検出信号が前記最大信号の90%または90%未満であると決定する工程と;
前記目的分析物が前記流体試料中に高濃度で存在するという指標を表示する工程と
をさらに含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔34〕アッセイ試験片を製造する方法であって、
流体試料を受け取るように構成された流路に試料受取ゾーンを連結する工程と;
前記試料受取ゾーンの下流で前記流路に捕捉ゾーンを連結する工程と;
前記流路に複合体を連結する工程であり、前記複合体が、
標識、
目的分析物に特異的に結合する抗体または抗体の断片、および
前記目的分析物
を含む工程と
を含む、方法。
〔35〕前記目的分析物が、C反応性タンパク質(CRP)を含み、前記抗体が、抗CRP抗体または抗CRP抗体の断片を含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記目的分析物が、約50ngのCRPを含む、前記〔35〕に記載の方法。
〔37〕前記目的分析物が、約100ngのCRPを含む、前記〔35〕に記載の方法。
〔38〕前記目的分析物に特異的な捕捉剤を前記捕捉ゾーンに固定する工程をさらに含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔39〕前記複合体を前記流路に連結する工程が、前記複合体と前記流路との間に、前記流路内の流体試料の存在下で切断される結合を形成することを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔40〕前記複合体を連結する工程が、前記複合体を含む溶液を前記試料受取ゾーンの表面に噴霧することを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔41〕前記複合体を連結する工程が、前記複合体を含む溶液を、前記試料受取ゾーンと前記捕捉ゾーンの間の前記アッセイ試験片の表面に噴霧することを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔42〕前記複合体を連結する工程が、
前記複合体を含む流体溶液を前記アッセイ試験片の表面に適用する工程と;
前記流体溶液を乾燥させる工程と
を含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔43〕前記複合体を連結する工程が、前記複合体を前記アッセイ試験片の表面に組み込むことを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔44〕前記複合体を含む溶液を提供する工程をさらに含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔45〕前記溶液を提供する工程が、前記標識および前記抗体または前記抗体の断片を含む第1の液体を、前記目的分析物を含む第2の液体と混合することを含む、前記〔44〕に記載の方法。
〔46〕前記溶液を提供する工程が、前記第1の液体と前記第2の液体の混合物を約30分間インキュベートすることをさらに含む、前記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記複合体を前記流路に連結する工程が、前記アッセイ試験片の表面に前記溶液を噴霧することを含む、前記〔44〕に記載の方法。
〔48〕前記〔34〕~〔47〕のいずれかに記載の方法により作製されたアッセイ試験片。
【外国語明細書】