(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100715
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】箔押し用エネルギー硬化型熱活性化インクジェット接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 4/00 20060101AFI20230711BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230711BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230711BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C09J4/00
C09J201/00
C09J4/02
B41M5/00 120
B41M5/00 134
B41M5/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】47
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069484
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2019572528の分割
【原出願日】2018-06-26
(31)【優先権主張番号】62/525,507
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519460395
【氏名又は名称】アイエヌエックス インターナショナル インク カンパニー
【氏名又は名称原語表記】INX INTERNATIONAL INK CO.
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラウンケ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストローム,リック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インクジェットプリントヘッドを用いて基材に塗布し、硬化されて固化した不粘着状態となり、熱と圧力を加えることで容易に粘着性となり、基材に対する箔の正確な転写を可能とする接着剤組成物を提供する。
【解決手段】接着剤組成物は、1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型モノマと、このモノマに可溶な1種類又はそれ以上のオリゴマと1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂を含むオリゴマ・樹脂組成物成分と、必要に応じて、1種類又はそれ以上のフリーラジカル光開始剤とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマを含むモノマ成分と、
前記1種類又はそれ以上の単官能モノマに可溶な1種類又はそれ以上のオリゴマ、1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂、又はそれらの組み合わせを含むオリゴマ・樹脂成分と、
UV又はLED照射で前記1種類又はそれ以上の単官能モノマを硬化させるための1種類又はそれ以上のフリーラジカル光開始剤と、
を含み、
UV又はLED照射により硬化すると固化した不粘着性固体を室温で形成し、硬化後に熱と圧力が加えられると粘着性を呈することを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマ成分は、前記モノマ成分の総量に対して約20重量%以下の濃度で二官能性及び/又は三官能性フリーラジカル硬化型モノマを更に含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記モノマ成分は、前記モノマ成分の総量に対して約10重量%以下の濃度で二官能性及び/又は三官能性フリーラジカル硬化型モノマを更に含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂のみからなる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上のオリゴマのみからなる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上のオリゴマと前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂の組み合わせからなる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、そのガラス転移温度Tgが、前記1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマのガラス転移温度の±40%以内である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、そのガラス転移温度Tgが、前記1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマのガラス転移温度の±10%以内である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、組成物中の他の成分と組み合わさることで、前記組成物中のガラス転移温度Tgが約20~100℃の範囲となるように選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記不活性熱可塑性樹脂は、分子量が約800g/mol~200000g/molの範囲内であり、ロジンエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、尿素-アルデヒド樹脂、塩化ビニル共重合体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂及びフタル酸樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記不活性熱可塑性樹脂は、前記接着剤組成物の約1~8重量%の濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度Tgが約-20℃~250℃であり、分子量が約800g/mol~60000g/molである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、ガラス転移温度Tgが約-45℃~175℃であり、分子量が約100000g/mol未満であり、粘度が約100000cps未満である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記オリゴマは、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記単官能モノマは、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、芳香族モノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モノアクリル酸、N-ビニル化合物及びアクリルアミド化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記二官能性モノマは、脂肪族ジ(メタ)アクリレート、芳香族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化芳香族ジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートなどのハイブリッドモノマからなる群から選択される、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記三官能性モノマは、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート及びプロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレートからなる群から選択される、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
前記1種類又はそれ以上のモノマは、分子量が約1000g/mol未満であり、粘度が約100cps未満である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項19】
前記モノマ成分は、前記接着剤組成物の重量に対して約45~95重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項20】
前記モノマ成分は、前記接着剤組成物の重量に対して約60~80重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項21】
前記1種類又はそれ以上のモノマは、イソボルニルアクリレート及び/又はt-ブチルシクロヘキシルアクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項22】
重合禁止剤、安定剤、湿潤剤/流動剤、脱気剤、消泡剤及びワックスのうち1種類又はそれ以上を更に含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項23】
前記単官能モノマは、前記接着剤組成物に約45~95重量%の濃度で存在し、前記不活性樹脂は、前記接着剤組成物に約10重量%までの濃度で存在し、前記オリゴマは、前記接着剤組成物に約10重量%までの濃度で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項24】
電子線照射により硬化する1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマを含むモノマ成分と、
前記1種類又はそれ以上の単官能モノマに可溶な1種類又はそれ以上のオリゴマ、1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂、又はそれらの組み合わせを含むオリゴマ・樹脂成分と、
を含み、
電子線照射により硬化すると固化した不粘着性固体を室温で形成し、硬化後に熱と圧力が加えられると粘着性を呈することを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項25】
前記モノマ成分は、前記モノマ成分の総量に対して約20重量%以下の濃度で二官能性及び/又は三官能性フリーラジカル硬化型モノマを更に含む、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項26】
前記モノマ成分は、前記モノマ成分の総量に対して約10重量%以下の濃度で二官能性及び/又は三官能性フリーラジカル硬化型モノマを更に含む、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項27】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂のみからなる、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項28】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上のオリゴマのみからなる、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項29】
前記オリゴマ・樹脂成分は、前記1種類又はそれ以上のオリゴマと前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂の組み合わせからなる、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項30】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、そのガラス転移温度Tgが、前記1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマのガラス転移温度の±40%以内である、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項31】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、そのガラス転移温度Tgが、前記1種類又はそれ以上のフリーラジカル硬化型単官能モノマのガラス転移温度の±10%以内である、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項32】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂及び前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、前記組成物中の他の成分と組み合わさることで、前記組成物のガラス転移温度Tgが約20~100℃の範囲となるように選択される、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項33】
前記不活性熱可塑性樹脂は、分子量が約800g/mol~200000g/molの範囲内であり、ロジンエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、尿素-アルデヒド樹脂、塩化ビニル共重合体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂及びフタル酸樹脂からなる群から選択される、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項34】
前記不活性熱可塑性樹脂は、前記接着剤組成物の約1~8重量%の濃度で前記組成物中に存在し、前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、前記接着剤組成物の約1~8重量%の濃度で存在する、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項35】
前記1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度Tgが約-20℃~250℃であり、分子量が約800g/mol~60000g/molである、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項36】
前記1種類又はそれ以上のオリゴマは、ガラス転移温度Tgが約-45℃~175℃であり、分子量が約100000g/mol未満であり、粘度が約100000cps未満である、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項37】
前記オリゴマは、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項38】
前記単官能モノマは、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、芳香族モノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モノアクリル酸、N-ビニル化合物及びアクリルアミド化合物からなる群から選択される、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項39】
前記二官能性モノマは、脂肪族ジ(メタ)アクリレート、芳香族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化芳香族ジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートなどのハイブリッドモノマからなる群から選択される、請求項26に記載の接着剤組成物。
【請求項40】
前記三官能性モノマは、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート及びプロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレートからなる群から選択される、請求項26に記載の接着剤組成物。
【請求項41】
前記1種類又はそれ以上のモノマは、分子量が約1000g/mol未満であり、粘度が約100cps未満である、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項42】
前記モノマ成分は、前記接着剤組成物の重量に対して約45~95重量%の濃度で存在する、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項43】
前記モノマ成分は、前記接着剤組成物の重量に対して約60~80重量%の濃度で存在する、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項44】
前記1種類又はそれ以上のモノマは、イソボルニルアクリレート及び/又はt-ブチルシクロヘキシルアクリレートを含む、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項45】
重合禁止剤、安定剤、湿潤剤/流動剤、脱気剤、消泡剤及びワックスのうち1種類又はそれ以上を更に含む、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項46】
前記単官能モノマは、前記接着剤組成物に約45~95重量%の濃度で存在し、前記不活性樹脂は、前記接着剤組成物に約10重量%までの濃度で存在し、前記オリゴマは、前記接着剤組成物に約10重量%までの濃度で存在する、請求項24に記載の接着剤組成物。
【請求項47】
インクジェットプリントヘッドを用いて画像パターンに合わせて請求項1~24のいずれか1項に記載の前記接着剤組成物を基材に塗布し、
前記画像パターンにUV、LED、又は電子線を照射し、前記接着剤組成物を硬化させて固化した不粘着状態とし、
フォイル軸受のウェブの箔に対向して前記硬化した画像パターンを保持する前記基材を配置し、熱と圧力を加えて前記接着剤組成物を粘着性にすると共に、前記箔を前記画像パターンに転写することを含む、
基材に箔を転写する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不活性樹脂、官能性オリゴマ、モノマ及びその他の添加剤を含むエネルギー硬化型インクジェット接着剤組成物に関する。この接着剤は、とりわけ、紙、カートン用板紙、プラスチックフィルム、プラスチックシートを含む基材に塗布することができる。UV、LED又は電子線のうちの1つを照射することにより、接着剤は完全に硬化し、粘着性(べたつき、タック)がない表面となる。硬化した接着剤表面は、加熱及び加圧されることにより粘着性となる。硬化した接着剤の粘着面に箔押しすることにより、効率的かつ正確に金型不要の箔転写を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
〔コールドフォイル加工〕
コールドフォイル加工やホットフォイル加工は、様々な基材の金属箔装飾に一般的に用いられている。コールドフォイル加工は、基本的に以下の工程で行われる。(1)所望の画像形状に合わせて基材に接着剤を塗布し、(2)裏当て支持材上の箔と基材を共にプレスし、裏当て支持材から基材の接着剤画像部分へと箔を移し、(3)接着剤が印刷されていない領域の箔を剥離する。
【0003】
現在利用できるコールドフォイル加工用接着剤には、溶剤系、水性、油性及び紫外線硬化性の配合物がある。コールドフォイル加工は、インラインオフセット印刷やインラインフレキソ印刷などのインラインプロセスにより行うことができる。近年では、インクジェット印刷が箔押しに用いられている。UV硬化性インクジェット接着剤も、インラインコールドフォイル加工用に用いられている。
【0004】
インクジェット印刷プロセスでは低粘度であることが求められるため、従来技術においてインクジェットノズルから噴射される接着剤は、一般に、基材に到達して堆積した際の粘度と粘着性が十分に高いとはいえない。しかし、箔押し工程で箔をスムーズに転写するには、高い粘度と高い表面粘着性が不可欠である。従来技術の方法では、接着剤の粘度を操作し、接着剤の粘着性発現を開始するためのUV硬化線量は、接着剤の完全硬化及び固化に要する線量よりも短い。これは、プロセスの複雑さと費用を大幅に増大させる。また、接着剤層の表面に箔が貼り付いた際の接着剤層の硬度不足から、基準以下の画像形成を招く。
【0005】
従来技術では、画像形状となった接着剤は、基材への塗布後に完全硬化及び固化しない。このため、接着剤を噴射して形成した画像を有する基材は、互いに接着しやすいため、ウェブ形態であってもシート形態であっても箔貼付け前には保管が困難であり、また、圧力がかかると延びやすく、その上非常に湿気の影響を受けやすいため、画像が軟化して劣化する、又は、画像が硬化不足状態になることがある。また、従来技術では、硬化した接着剤の画像は、箔に圧力をかけた際に延びや劣化がない程度まで十分硬化されていないため、箔押し画像が基準以下のものとなることも多い。更に、このような従来技術のシステムの多くは、接着剤画像をまず部分的に乾燥又は部分的に硬化及び固化させて箔にあててから完全に硬化及び固化させる必要があり、この場合、完全硬化及び固化の前の画像が延びたり、未硬化又は部分的に硬化及び固化した接着剤がローラやその他のシステム部品上に堆積したりするため、これによっても箔押し画像が基準以下のものとなる。
【0006】
コールドフォイルプロセスは、印刷によりインラインで行われる。通常、このインラインプロセスでは、箔の正確な位置決めができないため、箔の無駄が生じることがある。粘着性があり、部分的には硬化していても固化が不完全な接着剤画像形状に対しては、通常、箔の正確な位置決めができないため、インラインプロセスでは箔の無駄が増えることになる。基材の小さな空所のない領域のみに接着剤画像が形成されている場合には、基材に対して正確な位置決めを行わなければ過剰な量の箔が無駄になる。
【0007】
コールドフォイル加工は(例えば、コンバータによる)印刷によりオフラインで行うことはできない。基材に塗布された接着剤画像が粘着性で軟質であるため、印刷施設への基材の輸送及び保管が実用的でなく望ましくないからである。
【0008】
〔ホットフォイル加工〕
ホットフォイル加工は、様々な基材に金属箔の装飾を施す際に用いられる別の手法である。ホットスタンピングとも称されるホットフォイル加工は、従来、デザインされた模様の画像が刻まれた金属板/金型を使ったホットスタンピング装置により行われる。
【0009】
このプロセスで使用できるホットフォイル加工用ウェブ材料は周知で広く入手可能である。この材料は一般に、ワックス層と、ラッカー層と、箔層と、箔層上に形成された接着剤層とを備えたポリエステル又は他のプラスチックのキャリアフィルムからなる。箔層上の接着剤層は、箔押しされる基材上の接着剤画像に対向して配置される。
【0010】
このプロセスでは、加熱した板/金型を箔付きフィルムのロール又はウェブの裏側に当てて剥離層を活性化させ、基材の箔押し領域に箔を転写させる。ホットフォイル加工とエンボス加工/デボス加工を組み合わせることで、触覚的効果を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このホットフォイル技術によれば、基材に張り付けられる箔の模様は、金型に刻まれたデザインにより決定される。所望のデザインを金型に彫り込み、印刷ユニットに金型を取り付けて箔を基材に箔押しできるよう準備を整えるには、数日から数週間かかることもある。金型彫刻プロセスには非常に費用がかかるが、特に、それぞれに新たな画像デザインが必要となるような短期作業が複数ある場合には高価となる。ホットフォイル加工では、高圧力と高温が必要であり、正確な位置合わせと高画質を維持することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る独自の接着剤組成物は、インクジェットプリントヘッドを用いて基材に容易に塗布することができ、完全硬化することにより固化した、粘着性のない、乾いた感触の湿気に強い状態となり、その後必要であれば、熱と圧力を加えることで容易に粘着性になるものであり、箔を基板に正確に転写することが可能となる。これらの独自の接着剤組成物の実施形態では、インクジェットプリントヘッドを用いて接着剤を所望の画像形状に塗布することにより、金型を用いることなく、便利で、効率的で、正確な、信頼性のあるホットフォイル技術が可能となる。
【0013】
本発明の実施形態は、従来技術におけるコールドフォイル及びホットスタンピングシステムにおける課題に対処する。
【0014】
本発明の実施形態は、インクジェット印刷における非接触印刷プロセスを用いて所望の接着剤画像形状で基材に塗布される接着剤組成物を使った箔印刷システムを含む。基材は、紙、カートン用板紙、プラスチックフィルム(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)、及び、非接触印刷プロセスで用いられるウェブ形態又はシート形態の他の材料であってもよい。
【0015】
本実施形態の接着剤組成物は、所望の画像形状で基材に塗布された後、画像にUV又はLED照射、又は、電子線(「EB」)イオン化放射線照射により完全硬化することにより、固化した、粘着性のない、乾いた感触の湿気に強い状態となる。UV、LED又はEBを画像に照射すると、接着剤組成物は、液体から固化した不粘着性固体に室温でほぼ瞬時に変化する。このシステムでは、固化した接着剤組成物画像を更に硬化する必要性はない又はその必要性は生じない。
〔モノマ成分〕
本発明の実施形態の接着剤組成物は、UV、LED又はEBの照射により完全硬化及び固化するが、箔押し中に熱と圧力が加えられると、その露出面に沿って軟化し、正確に箔転写をするために十分な接着面性を呈することができるという独特の特性を有する。
このUV、LED又はEBの照射により完全硬化及び固化するが、熱と圧力が加えられると塗布された接着剤画像の露出面に沿って軟化し、正確に箔転写をするために十分な接着面性を呈することができるという独特の特性を達成するためには、組成物のモノマ成分は、純粋に又は最初は放射線硬化性単官能モノマであり、二官能性又は三官能性モノマが存在すれば、その濃度が慎重に制限され、その他の多官能性モノマ(三官能性モノマより大きい官能性)が組成物に含まれないようにする必要がある。より詳細には、二官能性及び/又は三官能性放射線硬化性モノマの濃度が、組成物中のモノマ成分の約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下であり、残りのモノマ成分が1種類又はそれ以上の放射線硬化性単官能モノマでなければならない。また、低官能性フリーラジカル硬化型モノマは、組成物の不活性樹脂成分を可溶化することができなければならない、すなわち、不活性樹脂成分はモノマに可溶でなければならない。
〔オリゴマ/樹脂成分〕
組成物におけるこの成分は、1種類又はそれ以上の官能性オリゴマのみ、1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂のみ、又は、1種類又はそれ以上の官能性オリゴマと1種類又はそれ以上の不活性熱可塑性樹脂の組み合わせを含んでもよい。「不活性熱可塑性樹脂」とは、UV、LED又はEBを照射されても重合しない熱可塑性樹脂である。使用される不活性熱可塑性樹脂(1又は複数)及びオリゴマ(1又は複数)は、最大100%固体であってもよいが、オリゴマ(1又は複数)及び樹脂(1又は複数)のガラス転移温度Tgが、使用される低官能性フリーラジカル硬化型モノマのガラス転移温度の40%以内、好ましくは、10%以内であることが望ましい。好適な実施形態ではないが、完成品としての接着剤組成物のTgが約20~100℃、好ましくは、約40~80℃の範囲にある限り、ガラス転移温度が上記以外の不活性熱可塑性樹脂及びオリゴマを使用してもよい。
更に、固化もするが画像表面に沿って軟化もするという独自の能力を実現するためには、オリゴマ及び/又は樹脂は、更にガラス転移温度Tgが約-45℃~250℃である必要があり、また、軟化点が約0℃~190℃、好ましくは60℃~120℃でなければならない。
〔フリーラジカル光開始剤〕
フリーラジカル光開始剤は、UV及びLED硬化型組成物のフリーラジカル硬化を達成するためには必要であるが、EB硬化型組成物には必要ではない。
本発明の実施形態の目的の1つは、EB硬化技術の適用により硬化可能であり、光開始剤の使用を必要としない接着剤組成物の提供することにある。EB硬化型接着剤組成物は、一般に、UV/LED硬化型組成物よりも臭いが少なく、より厚いコーティングや凸状画像の形成に用いることができ、転写箔により見栄えの良い画像とすることができるため、多くの用途において好ましい。EB硬化型熱活性化接着剤の実施形態は、コールドフォイル及びホットフォイルの両プロセスにおいて、食品、医薬品及び日用品の容器に対する使用にも特によく適している。
【0016】
UV硬化型接着剤に用いられる光開始剤は、従来の水銀UVランプによって生成・放射される帯域の化学線(例えば、220~410nm)を吸収しなければならない。
【0017】
LED硬化型接着剤に用いられる光開始剤は、LEDランプから放射される帯域がより長い化学線(例えば、395nm、365nm)を吸収しなければならない。
【0018】
〔接着剤組成物の表面張力及び粘度〕
好適な実施形態においては、接着剤組成物は、25℃での表面張力が約22mN/m~34mN/m、好ましくは約25mN/m~32mN/m、より好ましくは約28mN/m~30mN/mである。また、好適な実施形態においては、25℃での粘度が約5cps~200cpsの間、好ましくは約10cps~100cpsの間、より好ましくは15cps~40cpsの間である。
【0019】
UV硬化型及びLED硬化型インクジェット熱活性化接着剤の実施形態では、以下が含まれる。
(1)不活性樹脂約 0~10%
(2)低官能性オリゴマ 約0~10%
(3)単官能モノマ 約45~95%
(4)二官能性モノマ 約0~10%
(5)三官能性モノマ 約0~10%
(6)光開始剤 約1~20%
(7)アミン相乗剤 約0~20%
(8)消泡剤 約0.01~2.5%
(9)湿潤・流動剤 約0.01~5.0%
(10)ワックス添加剤 約0~3%
(11)安定剤 約0.05~3.0%
【0020】
EB硬化型インクジェット熱活性化接着剤の実施形態では、以下が含まれる。
(1)不活性樹脂約 0~10%
(2)低官能性オリゴマ 約0~10%
(3)単官能モノマ 約40~95%
(4)二官能性モノマ 約0~10%
(5)三官能性モノマ 約0~10%
(6)アミン相乗剤 約0~20%
(7)消泡剤 約0.01~2.5%
(8)湿潤・流動剤 約0.01~5.0%
(9)ワックス添加剤 約0~3%
(10)安定剤 約0.05~3.0%
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示及び説明のみを意図するものであり、本明細書で請求又は保護される主題を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0022】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書で用いられる「モノマ」とは、オリゴマよりも粘度が低く、分子量が約1000g/mol未満であり、25℃における粘度が500cps以下である材料のことをいう。モノマは、重合によりオリゴマ又はポリマを形成することができる1つ以上の不飽和基を含む。
【0024】
本明細書で用いられる「単官能アクリレートモノマ」という用語は、1つのアクリレート官能基又は1つのC=C二重結合を含むモノマのことをいう。
【0025】
本明細書で用いられる「二官能性アクリレートモノマ」という用語は、2つのアクリレート官能基又は2つのC=C二重結合を含むモノマのことをいう。
【0026】
本明細書で用いられる「三官能性アクリレートモノマ」という用語は、3つのアクリレート官能基又は3つのC=C二重結合を含むモノマのことをいう。
【0027】
本明細書で用いられる「高官能性アクリレートモノマ」という用語は、4つ以上のアクリレート官能基又は4つ以上のC=C二重結合を含むアクリレートモノマのことをいう。
【0028】
本明細書で用いられる「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「エトキシ化」という用語は、エチレンオキシドを用いて鎖を延長した化合物のことをいう。
【0030】
本明細書で用いられる「プロポキシ化」という用語は、酸化プロピレンを用いて鎖を延長した化合物のことをいう。
【0031】
本明細書で用いられる「アルコキシル化」という用語は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのいずれか又は両方を用いて鎖を延長した化合物のことをいう。
【0032】
本明細書で用いられる「オリゴマ」とは、粘度がモノマの粘度よりも高く、分子量が約5000g/mol~200000g/molであり、1つ以上の不飽和基を有し、重合してより高分子量ポリマを形成することができる材料のことをいう。「官能性オリゴマ」は、本発明の実施形態で用いられるモノマに溶解し、UV、LED又はEBの照射により迅速に硬化し、硬化後は柔軟であり、また、硬化後に加熱されると粘着性を呈する上述したオリゴマである。
【0033】
本明細書で用いられる「分子量」という用語は、特に明記しない限り、数平均分子量を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「ポリマ」とは、主に又は全体が多数の同様の分子単位を結合してなる分子構造を有する巨大分子のことをいう。
【0035】
本明細書で用いられる「不活性樹脂」という用語は、C=C結合又は他の反応基を含まず、UV、LED又はEBを照射してもモノマ/オリゴマと反応しない樹脂のことをいう。
【0036】
本明細書で用いられる「熱可塑性樹脂」という用語は、特定の温度以上ではしなやか又は成形可能であり、冷却すると凝固するプラスチック材料又はポリマのことをいう。
【0037】
本明細書で用いられる「エネルギー硬化型」とは、紫外線(UV)照射、発光ダイオード(LED)照射及び電子線照射を含む適切なエネルギー源への曝露に反応して起こる硬化のことをいう。
【0038】
本明細書で用いられる「硬化(cure、curing)」とは、モノマ及び/又はオリゴマ単位を重合、固化及び/又は架橋してポリマを形成するプロセスのことをいう。
【0039】
本明細書で用いられる「室温」という用語は、23℃~25℃の周囲温度のことをいう
【0040】
本明細書で用いられる「熱活性化可能な又は熱活性化された」とは、加熱及び加圧に応じた硬化樹脂又は硬化接着剤の活性のことをいう。
【0041】
本明細書で用いられる「被覆量」という用語は、基材の所定の側面又は表面に塗布される接着剤の量のことをいう。これは通常、基材の1平方メートルあたりの組成物のグラム(「gsm」)で表される。
【0042】
本明細書で用いられる「インライン」という用語は、印刷装置と箔押し装置が互いに水平に取り付けられて共通に駆動される別個のユニットである箔押しシステムのことをいう。
【0043】
本明細書で用いられる「オフライン」という用語は、印刷装置と箔押し装置が、異なる場所に設置された又は互いに水平に設置された、共通に駆動されない別個のユニットである箔押しシステムのことをいう。
【0044】
本開示では、特に指定されない限り、全てが重量部及び重量パーセンテージ(総重量に対する重量%)で示されており、温度は全て℃である。
【0045】
〔不活性熱可塑性樹脂〕
接着剤組成物の実施形態で使用される樹脂は不活性であり、実施形態の組成物中でモノマ又はオリゴマと反応しない。これらの慎重に選択された不活性熱可塑性樹脂は、フィルムの柔軟性にも寄与し、硬化プロセス中のフィルム収縮を軽減し、表面の軟化、粘着性及び接着性を向上させ、硬化した接着剤組成物が基材に強固に接着するのに役立つ。しかし、熱硬化性樹脂は使用しなくてもよい。
【0046】
不活性熱可塑性樹脂は、ロジンエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、尿素-アルデヒド樹脂、塩化ビニル共重合体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂及びフタル酸樹脂から選択されてもよい。現在のところ、メタクリル樹脂が好ましい。不活性樹脂は、分子量が約800g/mol~200000g/molの範囲内、好ましくは約10000g/mol~60000g/molの範囲内でなければならない。
【0047】
使用してもよいアクリル、メタクリル、アクリレート及びメタクリレート樹脂としては、Dow社製のParaloid DM-55(メチルメタクリレート共重合体:分子量6000、Tg70℃)、Paraliod B44(MMA/EA共重合体:分子量140000、Tg60℃)、Lucite社製のElvacite4036(当時Ineos Acrylics社、分子量60000、Tg50℃)、Elvacite2046(イソブチル/n-ブチルメタクリレート共重合体:分子量165000、Tg35℃)、Elvacite2013(メチルメタクリレート/n-ブチルメタクリレート共重合体:分子量34000、Tg76℃)、Elvacite2043(エチルメタクリレート共重合体:分子量50000、Tg66℃)、DSM社製のNeoCryl B735(メチルメタクリレート共重合体:分子量40000、Tg74℃), NeoCryl B300(MMA/BMA共重合体:分子量16000、Tg45℃)、NeoCryl B302(MMA共重合体:分子量5000、Tg80℃)、DAI社製のDianal BR 106(n-ブチルメタクリレート共重合体:分子量60000、Tg60℃、Evonik社製のDegalan64/12(アクリル樹脂:分子量68000、Tg58℃)、オルネクス社製のEbecryl168(酸性メタクリル酸塩共重合体、分子量及びTgの詳細不明)、Ebecryl170(酸性メタクリル酸塩共重合体、分子量及びTgの詳細不明)、Ebecryl745(アクリルポリマ、分子量の詳細不明、Tg30℃)、及び、Estron Chemical社製のLUMICRYL1000(アクリル樹脂、分子量及びTgの詳細不明)が挙げられる。
【0048】
使用してもよいアルデヒド樹脂としては、BASF社のLaropal A 81(アルデヒド樹脂:分子量の詳細不明、Tg57℃)、Laropal A 101(アルデヒド樹脂:分子量の詳細不明、Tg73℃)、及び、Evonik社の樹脂SK(水素化アセトフェノンホルムアルデヒド樹脂:Tg90℃)が挙げられる。
【0049】
使用してもよいビニル樹脂としては、Wacker社製のVinnol E15/48H(塩化ビニル(VC)約84重量%とアクリル酸エステル約16重量%のヒドロキシル含有共重合体)、DuPont社製のELVAX150(エチレン酢酸ビニル共重合体:融点63℃)、ELVAX40L-03(エチレン酢酸ビニル共重合体、融点58℃)、ELVAX CE9619-1(エチレン酢酸ビニル共重合体、融点87℃)、及び、Dow社製のVYHH(分子量27000、Tg72℃)、VMCC(分子量19000、Tg72℃)、VWCH(分子量27000、Tg74℃)が挙げられる。
【0050】
使用してもよいロジンエステル樹脂としては、Arizona Chemical社製のSylvatac RE 40(分子量及びTgの詳細不明)、及び、Akzo社製のFiltrez526(フマル酸変性ロジンエステル、分子量の詳細不明、Tg72℃)、Filtrez 629(フェノール変性ロジンエステル、分子量の詳細不明、融点155℃)が挙げられる。
【0051】
使用してもよいポリエステル樹脂としては、Sartomer社製のCN-790(Tg55℃)、及び、Eastman社製のSAIB100(スクロース酢酸イソブチル:分子量856)が挙げられる。
【0052】
使用してもよいセルロース系樹脂としては、Eastman社製のCAB551-0.01(酢酸酪酸セルロース:分子量16000、Tg85℃)が挙げられる。
【0053】
使用してもよい炭化水素樹脂としては、Cray Valley社製のNorsolene S135(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg81.7℃)、Norsolene S125(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg71.1℃)、Norsolene S105(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg53.5℃)、Norsolene S95(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg46.3℃)、Norsolene S85(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg45℃)、Norsolene A90(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg46.4℃)、Wingtack 86(不活性芳香族炭化水素樹脂:Tg52℃)、Wingtack 98(脂肪族C-5炭化水素樹脂:Tg48℃)、及び、Neville Chemical社製のNEVTAC 100(C5脂肪族炭化水素樹脂:分子量2850)が挙げられる。
【0054】
本実施形態においては、1種類の熱可塑性樹脂又は2種類以上の熱可塑性樹脂の組み合わせを使用することができる。多くの用途において、2種類以上の異なる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
接着剤組成物の実施形態において、オリゴマ/樹脂成分中の不活性樹脂の濃度は、0~100重量%、好ましくは約50重量%~100重量%であり、樹脂/オリゴマ成分の残部はオリゴマであり、その量は好ましくは約80~100重量%である。接着剤組成物中に存在する不活性樹脂の総量は、約0~10重量%、好ましくは約1~8重量%、また、より好ましくは約2~6重量%である。
【0056】
好ましい不活性熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が約-20℃~250℃、好ましくは約10℃~100℃、より好ましくは約20℃~90℃であり、分子量が800g/mol~200000g/mol、好ましくは約7000g/mol~80000g/mol、より好ましくは約10000g/mol~60000g/molとなる熱可塑性樹脂である。
【0057】
現在のところ好ましい不活性熱可塑性樹脂は、Paraloid B44(固形アクリル樹脂(MMAコポリマ):Tg60℃)、Elvacite 2013(固形メタクリレート樹脂:Tg76℃)、Dianal BR 106(固形メタクリレート樹脂:Tg58℃)、Laropal A 81(アルデヒドケトン樹脂:Tg73℃)、及び、SK樹脂(水素化アセトフェノン-ホルムアルデヒド樹脂:Tg90℃)である。
【0058】
〔オリゴマ〕
1種類又はそれ以上の官能性オリゴマを使用してもよい。本実施形態の接着剤組成物に含まれるオリゴマは、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートから選択される。
【0059】
オリゴマは、分子量が約100000g/mol未満であり、室温における粘度が約100000cps未満でなければならない。更により好ましいオリゴマは、分子量が約75000g/mol未満であり、室温における粘度が約50000cps未満の単官能ポリウレタンアクリレートである。別の好ましいオリゴマは、分子量が約10000g/mol未満であり、室温における粘度が10000cps未満の単官能ポリウレタンアクリレートである。
【0060】
オリゴマは、1種類のアクリレート樹脂であっても、2種類以上のアクリレート樹脂の組み合わせであってもよい。オリゴマは、ガラス転移温度(Tg)が、約-45℃~約175℃、好ましくは約10℃~100℃、より好ましくは約20℃~80℃であってもよい。
【0061】
使用できるエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、オルネクス社製のEbecryl 3702(脂肪酸変性ビスフェノールA型エポキシジアクリレート:Tg56℃)、Ebecryl 3703(アミン変性ビスフェノールA型エポキシジアクリレート:Tg57℃)、Ebecryl 3720(ビスフェノールA型エポキシジアクリレート:Tg67℃)、Ebecryl 3721(変性ビスフェノールA型エポキシジアクリレート樹脂)が挙げられる。
【0062】
使用できるポリエステル(メタ)アクリレートの例としては、Sartomer社製のCN-299(四官能性アクリル化ポリエステルオリゴマ:Tg15℃)、Rahn社製のGenorad 40(メタクリル化リン酸エステル:Tgの詳細不明)、オルネクス社製のEbecryl 83(アミン変性ポリエステルアクリレート:Tg6℃)、Ebecryl 436(反応性希釈剤トリメチロールプロパントリアクリレートで40%希釈した反応性塩素化ポリエステル樹脂:Tg54℃)、Ebecryl 438(反応性希釈剤OTA―480で40%希釈した反応性塩素化ポリエステル樹脂:Tg37℃)、Ebecryl 450(脂肪酸変性ポリエステルヘキサアクリレート:Tg17℃)、Ebecryl 452(低粘度ポリエステルアクリレートオリゴマ:Tgの詳細不明)、Ebecryl 810(ポリエステルテトラアクリレート:Tg31℃)、Ebecryl 812(低粘度ポリエステルアクリレート:Tg72℃)、Ebecryl 820(低粘度ポリエステルアクリレート:Tgの詳細不明)、Ebecryl 870(脂肪酸変性ポリエステルヘキサアクリレート:Tg41℃)、Ebecryl 4744(ポリエステルアクリレート:Tg23℃)及びEbecryl 5849(バイオ由来のポリエステルアクリレート、Tg84℃)が挙げられる。
【0063】
使用できるポリエーテル(メタ)アクリレートの例としては、オルネクス社製のEbecryl 80(アミン変性ポリエーテルテトラアクリレート:Tg50℃)、Ebecryl 81(アミン変性ポリエーテルアクリレート:Tg-18℃)及びEbecryl 85(低粘度アミン変性ポリエーテルアクリレート:Tgの詳細不明)が挙げられる。
【0064】
使用できるポリウレタン(メタ)アクリレートの例としては、Sartomer社製のCN-131(芳香族モノアクリレートオリゴマ:Tg4℃)、Rahn社製のGeneomer 4188/M22(IBOA(モノマ)35%の単官能ウレタンアクリレート:Tg-3℃)、オルネクス社製のEbecryl 271(二官能性脂肪族ウレタンアクリレート:Tg19℃)、Ebecryl 242(反応性希釈剤IBOAで30重量%希釈した脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマ:Tg46℃)、Ebecryl 1291(六官能性脂肪族ウレタンアクリレート:Tg80℃)、Ebecryl 4100(脂肪族ウレタントリアクリレート:Tg22℃)、Ebecryl 4200(脂肪族ウレタンアクリレート、Tg12℃)、Ebecryl 5129(六官能性脂肪族ウレタンアクリレート:Tg30℃)、Ebecryl 8210(脂肪族ウレタンアクリレート、Tg68℃)、Ebecryl 8296(脂肪族ウレタンアクリレート、Tg-1℃)、Ebecryl 8402(脂肪族ウレタンジアクリレート:Tg14℃)、Ebecryl 8411(反応性希釈剤イソボルニルアクリレートで20重量%希釈した脂肪族ウレタンジアクリレート:Tg-18℃)、Ebecryl 8465(脂肪族ウレタントリアクリレートオリゴマ:Tg36℃)、Eatecryl 8604(脂肪族ウレタンテトラアクリレート:Tg79℃)、Ebecryl 220(六官能性芳香族ウレタンアクリレート:Tg49℃)、Ebecryl 4500(芳香族ウレタンアクリレート:Tg9℃)及びEbecryl 4849(反応性希釈剤1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)で15重量%希釈した芳香族ウレタンジアクリレート:Tg29℃)が挙げられる。
【0065】
本実施形態の接着剤組成物に存在する官能性オリゴマの総量は、接着剤組成物の重量に対して0~10%、好ましくは約1%~8%、より好ましくは約2%~6%の濃度でなければならない。
【0066】
現在のところ好ましいオリゴマの例としては、Geneomer 4188(IBOA(モノマ)で希釈した単官能ウレタンアクリレート:Tg-3℃)、Ebecryl 242(IBOA(モノマ)で希釈した脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマ:Tg46℃)及びCN 131(芳香族モノアクリレートオリゴマ:Tg4℃)が挙げられる。
【0067】
〔単官能モノマ〕
単官能モノマは、1つのアクリレート官能基又は1つのC=C二重結合を含まなければならない。使用してもよい単官能モノマの例としては、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、芳香族モノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モノアクリル酸、N-ビニル化合物及びアクリルアミド化合物が挙げられる。これらはSartomer社、オルネクス社、BASF社、Rahn社などの供給業者から入手可能であり、例えば、以下のものがある。
(1)BASF社のLaromer TBCH:t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(分子量210、Tg84℃、粘度8cps、表面張力:28.5)
(2)Sartomer社のSR203:テトラヒドロフルフリルメタクリレート(分子量170、粘度5cps、表面張力:35)
(3)Sartomer社のSR285 T:テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156、Tg-15℃、粘度6cps、表面張力:36)
(4)Sartomer社のSR257:ステアリルアクリレート(分子量314、Tg35℃、粘度3cps、表面張力:30.9)
(5)Sartomer社のSR324:メタクリル酸ステアリル(分子量339、Tg38℃、粘度14cps、表面張力:30.6)
(6)Sartomer社のSR339:2-フェノキシエチルアクリレート(分子量192、Tg5℃、粘度12cps、表面張力:39)
(7)Sartomer社のSR340:メタクリル酸2-フェノキシエチル(分子量206、Tg54℃、粘度10cps、表面張力:38)
(8)Sartomer社のSR420:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(分子量196、Tg29℃、粘度6cps、表面張力:27)
(9)Sartomer社のCD421 A:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(分子量210、Tg145℃)
(10)Sartomer社のSR531:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(分子量200、Tg10℃、粘度15cps、表面張力:33)
(11)Sartomer社のSR423A:メタクリル酸イソボルニル(分子量222、Tg110℃、粘度10cps、表面張力:31)
(12)Sartomer社のSR506:イソボルニルアクリレート(分子量208、Tg88℃、粘度8cps、表面張力:32)
(13)BASF社の4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144、Tg-40℃、粘度11cps、表面張力:35)
(14)KJケミカルズ株式会社(日本)のACMO:N-アクリロイルモルホリン(分子量141、Tg145℃、粘度12cps、表面張力:45)
(15)BASF社のNVC:N-ビニルカプロラクタム(分子量139、Tg147℃、粘度5cps、表面張力:43.9)
(16)BASF社のNVP:N-ビニルピロリドン(分子量111、Tg150℃、粘度2.5cps、表面張力:32.5)
(17)Eastman社のDMAC:ジメチルアセトアミド(分子量87.2、MP14℃、粘度2.5cps、表面張力:32)
(18)日本化成株式会社のDAAM:ジアセトンアクリルアミド(分子量229、Tg77℃、粘度18cps、表面張力:30.6)
【0068】
〔二官能性モノマ〕
二官能性モノマを用いる場合、2つのアクリレート官能基又は2つのC=C二重結合が含まれていなければならない。これら二官能性モノマを含む接着剤の実施形態では、通常、単官能モノマのみを含む接着剤の実施形態よりも速く硬化する。使用してもよい二官能性モノマの例としては、脂肪族ジ(メタ)アクリレート、芳香族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化芳香族ジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらはSartomer社、オルネクス社、BASF社、Rahn社などの供給業者から入手可能であり、例えば、以下のものがある。
(1)CD564:アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、分子量401、粘度25cps、表面張力33、Tg14度
(2)PR01131:プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、粘度15cps、表面張力32、Tg32℃
(3)SR213:1,4-ブタンジオールジアクリレート、分子量198、粘度8cps、表面張力36、Tg45℃
(4)SR214:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、分子量226、粘度7cps、表面張力34、Tg55℃
(5)SR230:ジエチレングリコールジアクリレート、分子量214、粘度12cps、表面張力38、Tg100℃
(6)SR231:ジエチレングリコールジメタクリレート、分子量242、粘度8cps、表面張力35、Tg66℃
(7)SR238b:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、分子量118、粘度9cps、表面張力36、Tg43℃
(8)SR239:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、分子量254、粘度8cps、表面張力34、Tg30℃
(9)SR247:ネオペンチルグリコールジアクリレート、分子量212、粘度10cps、表面張力33、Tg107℃
(10)SR272:トリエチレングリコールジアクリレート、分子量259、粘度15cps、表面張力39、Tg48℃
(11)SR297:1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、分子量226、粘度7cps、表面張力32、Tg85℃
(12)SR306F:トリプロピレングリコールジアクリレート、分子量300、粘度15cps、表面張力33、Tg62℃
(13)SR349:エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、分子量469、粘度1600cps、表面張力44、Tg67℃
(14)SR508:ジプロピレングリコールジアクリレート、分子量242、粘度10cps、表面張力33、Tg104℃
(15)SR540:エトキシ化(4)ビスフェノールAジメタクリレート、分子量541、粘度555cps、表面張力35、Tg108℃
(16)SR541:エトキシ化(6)ビスフェノールAジメタクリレート、分子量629、粘度440cps、表面張力35、Tg54℃
(17)SR601:エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、分子量513、粘度1080cps、表面張力37、Tg60℃
(18)SR602:エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、分子量777、粘度610cps、表面張力38、Tg2℃
(19)SR833S:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、分子量304、粘度130cps、表面張力38、Tg186℃
(20)SR9003B:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、分子量212、粘度15cps、表面張力32、Tg32℃
(21)SR9209a:アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、粘度15cps、表面張力35、Tg48℃
【0069】
〔三官能性モノマ〕
三官能性モノマは、存在する場合、3つのアクリレート官能基又は3つのC=C二重結合を含む。三官能性モノマを含む接着剤の実施形態では、通常、二官能性モノマのみを含む接着剤の実施形態よりも速く硬化する。使用してもよい三官能性モノマの例としては以下が挙げられる。
(1)SR350:トリメチロールプロパントリメタクリレート、分子量338、粘度44cps、表面張力34、Tg27℃
(2)SR351H:トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量296、粘度106cps、表面張力36、Tg62℃
(3)SR368D:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、分子量375、粘度330cps、表面張力37、Tg61℃
(4)SR444:ペンタエリスリトールトリアクリレート、分子量298、粘度520cps、表面張力39、Tg103℃
(5)SR454:エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量429、粘度110cps、表面張力40、Tg103℃
(6)SR501:プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量645、粘度125cps、表面張力33、Tg21℃
(7)SR9020:プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、分子量422、粘度95cps、表面張力36、Tg18℃
【0070】
接着剤組成物の実施形態において使用されるモノマは、分子量が約1000g/mol未満で粘度が約100cps未満、好ましくは分子量が約500g/mol未満で粘が度約50cps未満、より好ましくは分子量が約250g/mol未満で粘度が約20cps未満でなければならない。
【0071】
また、モノマは、表面張力が26~43dyn/cm、好ましくは26~36dyn/cm、より好ましくは26~32dyn/cmでなければならない。
【0072】
そして、モノマは、重合後のガラス転移温度(Tg)が約-20℃~175℃、好ましくは約10℃~100℃、より好ましくは約20℃~90℃でなければならない。
【0073】
接着剤組成物の実施形態で使用されるモノマ(1又は複数)の総濃度は、接着剤組成物の重量に対して約45~95%の範囲、より好ましくは約60%~80%の範囲でなくてはならない。
【0074】
接着剤組成物の実施形態で使用されるモノマは、100%が単官能モノマであってもよい。Sartomer社のSR506(分子量208、Tg88℃、粘度8cps、表面張力:32)などのイソボルニルアクリレートは、硬化速度、接着性及び箔の転写品質の観点から特に好ましい単官能モノマであることがわかっている。BASF社のLaromer TBCH(分子量210、Tg84℃、粘度8cps、表面張力:28.5)などのt-ブチルシクロヘキシルアクリレートは、硬化速度、接着性及び箔の転写品質の観点から特に好ましいもう1つの単官能モノマである。
【0075】
また、実施形態で使用されるモノマは、N-ビニルカプロラクタム(分子量139、Tg147℃、粘度5cps、表面張力:43.9)、N-ビニルピロリドン(分子量111、Tg150℃、粘度2.5cps、表面張力:32.5)、ジアセトンアクリルアミド(分子量229、Tg77℃、粘度18cps、表面張力:30.6)などのビニル含有モノマ又はアクリルアミドモノマを含んでもよく、硬化速度を増加させると共に硬化フィルムの表面特性を向上させるために、全モノマ組成の25%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは、10%未満の量で含まれてもよい。
【0076】
接着剤組成物の実施形態の一部の例では、最大20重量%、好ましくは10重量%以下の二官能性又は三官能性モノマ(例えば、SR-833:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びSR-454:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製)、VEEA(日本触媒製、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル)が含まれてもよい。
【0077】
多官能性モノマを加えないようにすることで、又は、好適ではないが多官能性モノマを二官能性及び三官能性モノマに限定し、その濃度を組成物中の全モノマ成分の20%以下、好ましくは10%以下に制限し、それより高官能性のモノマを加えないようにすることで、良好な硬化速度と望ましい印刷画像特性が得られることは、本発明の実施形態における予想外の発見である。この発見は、現在認められている従来の接着剤、インク及びコーティング製品において所望の迅速な硬化速度を達成するために一般に高官能性モノマを用いることもある現状とは相反している。
【0078】
〔その他の組成成分〕
本発明の実施形態において含まれる他の成分としては、一般に、光開始剤(UV及びLED硬化型組成物用)、相乗剤、安定剤、湿潤剤/流動剤、消泡剤及びワックス化合物がある。
【0079】
〔光開始剤〕
光開始剤は、UV又はLED硬化中にフリーラジカル光重合を開始させる。タイプI(開裂型)及びタイプII(水素引き抜き型)の両光開始剤を用いることができる。EB硬化型接着剤組成物には、光開始剤を使う必要はない。
【0080】
UV及びLED硬化型インクジェット組成物は、1種類又はそれ以上の光開始剤を含んでもよい。UV及びLED硬化型接着剤組成物に適用できる光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。これらには、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及び、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾインなどのアルキルベンゾインが含まれる。これら光開始剤は、Omnirad BP、Omnirad 4MBZ、Omnirad 4PBZ、Omnirad OMBB、Omnirad 4HBL、Omnirad BEM、Omnirad EMK、Omnirad MBF及びOmnirad BDKがIGM社から入手可能である。使用してもよい他の光開始剤には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノンなどのα-ヒドロキシケトンが含まれる。これら光開始剤は、Omnirad 73、Omnirad 481がIGM社から入手可能な製品である。使用してもよい更に他の光開始剤としては、IGM社の市販品であるIrgacure 369、907、1300などのα-アミノケトン及びその誘導体、IGM社の市販品であるOmnirad ITX及びOmnirad DETXなどのチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2-エチルチオキサントンを含むチオキサントン及びその誘導体、IGM社の市販品であるOmnirad TPO、Omnirad TPO-L及びOmnirad 380などのアシルホスフィン及びその誘導体が挙げられる。
【0081】
高分子ベンゾフェノン誘導体、高分子アミノ安息香酸塩、高分子チオキサントン誘導体、高分子α-ヒドロキシケトンもUV及びLED硬化型接着剤組成物用に適している光開始剤である。その市販製品としては、高分子ベンゾフェノン誘導体ではRahn社のGENOPOL BP-1及びIGM社のOmnipol BP、高分子アミノ安息香酸塩ではRahn社のGENOPOL AB-1及びIGM社のOmnipol ASA、高分子チオキサントン誘導体ではRahn社のGENOPOL TX-1及びIGM社のOmnipol TX、高分子α-ヒドロキシケトンではChitec社のChivacure 150及び70が挙げられる。
【0082】
UV硬化型接着剤の実施形態において使用される光開始剤は、従来の水銀UVランプによって生成される広帯域の化学線(例えば、220nmから410nmまで)を吸収する。LED硬化型接着剤の実施形態において使用される光開始剤は、LEDランプから放射される帯域がより長い化学線(例えば、395nm、365nm)を吸収する。
【0083】
接着剤中に存在する光開始剤の量は、通常、接着剤組成物の重量に対して20%未満でなければならず、接着剤組成物の重量に対して15%未満、10%未満、又は、5~10%の間であってもよい。現在のところ、約10~15%の濃度が好ましい。
【0084】
ホットフォイル加工のUV硬化型熱活性化インクジェット接着剤用の光開始剤としては、IGM社のOmnirad 481(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)及びOmnirad ITX(2-イソプロピルチオキサントン)が現在のところより好ましい。
【0085】
ホットフォイル加工のUV硬化型熱活性化インクジェット接着剤用の光開始剤としては、IGM社のIrgacure 907(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)、Omnirad ITX(2-イソプロピルチオキサントン)、Irgacure 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド)、Irgacure 369(2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン)及びOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)が好ましい。
【0086】
〔相乗剤〕
組成物の実施形態においては、光重合中の酸素阻害を抑制して硬化速度を向上させるために相乗剤が含まれることが好ましい。遊離アミン相乗剤が含まれていてもよい。適切な遊離アミン相乗剤の例としては、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチル安息香酸、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。単官能性アミンとアクリル酸アミンの相乗剤が、現在のところより好ましい相乗剤である。その例としては、IGM社のEHA(単官能アミン)や、Sartomer社のCN3175、Rahn社のGENOPOL AB-1がある。
【0087】
アクリル酸アミン相乗剤又は高分子アミン相乗剤も接着剤に配合されてもよい。市販品のアクリル酸アミン相乗剤としては、オルネクス社製のEbecryl 7100、Ebecryl 115及びEbecryl p116、Sartomer社製のCN374、CN381、CN-1002、CN3705、CN3715、CN3735、CN3755、BASF社製のLaromer PO 94F、Laromer P077Fが挙げられる。市販品の高分子アミン相乗剤としては、IGM社製のOmnipol ASA、Omnipol SZ、及び、Rahn社製のGENOPOL AB-1が挙げられる。
【0088】
相乗剤は、好ましくは、接着剤組成物の重量に対して0~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~10重量%の量で接着剤組成物に含まれる。
【0089】
〔安定剤/重合禁止剤〕
接着剤組成物の実施形態では、製造、保管及び輸送中の接着剤の凝集や従来のゲル化を防ぎ、硬化した組成物の表面クラックを抑制する/無くすのに役立つ1種類又はそれ以上の重合禁止剤又は安定剤が含まれる。適切な禁止剤の例としては、フェノール系材料(例えば、ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン)、フェノチアジン、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、ベンゾトリアゾールアルミニウム塩アミン錯体、芳香族アミン、ニトロキシル化合物が挙げられる。
【0090】
現在好ましい安定剤/重合禁止剤としては、Genorad-16(アクリル酸エステル中に禁止剤が入ったもの)が挙げられ、約0.05%~3.0%の濃度、好ましくは約0.1%~2.0%、最も好ましくは約0.2%~約0.2~1.0%の濃度とされる。
【0091】
〔湿潤剤/流動剤〕
従来の湿潤剤/流動剤を接着剤組成物に含有させて、表面張力を変更し、流動特性/レベリング特性を制御し、基材を適切に湿潤させ、塗布時に接着剤が適切に流動・水平化するようにすることができる。湿潤剤/流動剤は、シリコーン非含有タイプ(例えば、アクリレートポリマ)としても、シリコーン含有タイプ(例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)としてもよい。湿潤剤/流動剤(例えば、Trilogy Groupから入手可能なRadadd 1116、オルネクス社から入手可能なEbecryl 1360)の濃度は、使用する特定の薬剤によって異なるが、一般的には、接着剤組成物の重量に対して少なくとも約0.1%から約5%以下の濃度で存在する。
【0092】
〔脱気剤/消泡剤〕
接着剤組成物の実施形態では、従来の抑泡剤や破泡剤を脱気剤及び/又は消泡剤として含有させてもよい。消泡剤は、一般に、液体表面における大きい泡の形成を抑制するために含まれている。脱気剤は、一般に、塗布中に塗布膜に混入した空気をできるだけ早く除去するために含まれている。これら材料の例としては、ポリアクリレート、ポリグリコール、ポリオール、ポリシロキサン、オキシアルキレンアミン、シリコーンの油及び流体、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、及び、それらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
使用できる脱気剤の例としては、Evonik社製のTEGO 910(シリコーンフリーポリマ)、TEGO 920(シリコーンフリー空気抜き剤)、TEGO 900(有機変性ポリシロキサン)、及び、Byk社製のByk-500(シリコーンフリー空気抜き剤)が挙げられる。
【0094】
使用できる消泡剤の例としては、Evonik社製のTEGO Foamex N(ジメチルポリシロキサン)、TEGO 810(ポリエーテルシロキサンコポリマー)、TEGO 845(有機変性ポリシロキサン)、BYK社製のByk-535(シリコーンフリーポリマ)、BYK-055(破泡性ポリマのシリコーンフリー溶液)、BYK-1790(シリコーンフリーポリマ系消泡剤)、BYK-1791(シリコーンフリー・芳香族フリーポリマ系消泡剤)、Emerald Performance Materials社製のFoam blast UVD(シリコーン/シリカ濃縮泡制御剤)が挙げられる。
【0095】
接着剤組成物の実施形態においては、接着剤組成物の重量に対して0.01%~2.5%、好ましくは0.1%~2.0%、より好ましくは0.25%~1.5%の量で、脱気剤のBYK-500(シリコーンフリーの空気抜き剤)、BYK-535(シリコーンフリーポリマ)、又は、BYK-1791(シリコーンフリー・芳香族フリーポリマ系消泡剤)を含有させてもよい。
【0096】
〔ワックス〕
接着剤組成物の実施形態においては、合成ワックス、半結晶性ワックス、石油ワックス、微結晶ワックス、パラフィンワックス、動物性ワックス、植物性ワックス、カルナバワックス、ミネラルワックスから選択されるワックスを含有させてもよい。分散させた後のワックス(使用する場合)は、組成物が安定し続け、接着剤をインクジェットプロセスで塗布する際にプリントヘッドが詰まることがないように、接着剤組成物の実施形態で用いられる他の成分との相溶性が必要とされる。
【0097】
例えば、カルナバワックスLanco(登録商標)1955 SF(Lubrizol社から入手可能)を含む実施形態では、接着剤組成物の重量に対して0.02%~1.0%、好ましくは0.05%~0.5%、より好ましくは0.10%~0.30%の量で存在しなければならない。また、実施形態では、例えば、接着剤組成物の重量に対して0.02%~1.0%、好ましくは0.05%~0.5%、より好ましくは0.10%~0.30%の量のポリエチレンワックスS-395-N5(Shamrock社から入手可能)も含んでもよい。
【0098】
〔フレキソ印刷用途〕
接着剤組成物の実施形態は、不活性樹脂及び/又はオリゴマの濃度を上げて粘度を約100~3000cps、好ましくは約400~2000cpsとすることにより、フレキソ印刷によるフォイル加工用に使用することができる。
【0099】
不活性樹脂は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、尿素-アルデヒド樹脂、ロジンエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂及びフタル酸樹脂のうちの1種類又はそれ以上であってもよい。これらのうち、接着剤/塗装/インク業界でより一般的に使用されるのは、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アルデヒド樹脂、ビニル樹脂、ロジンエステル樹脂、セルロース樹脂及び炭化水素樹脂である。
【0100】
不活性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-40℃~300℃、好ましくは10℃~150℃、より好ましくは20℃~100℃であり、分子量が約2000~300000g/mol、好ましくは約10000~200000g/mol、より好ましくは約20000~100000g/molでなければならない。
【0101】
不活性樹脂は、樹脂組成物の重量(すなわち、接着剤に配合されるオリゴマと不活性樹脂の合計)に対して0~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは80~100%の量で存在することができる。
【0102】
接着剤組成物中に存在する不活性樹脂組成物の総量は、接着剤組成物の重量対して約0~45%、好ましくは5%~30%、より好ましくは8%~20%である。
【0103】
〔オリゴマ〕
オリゴマは、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリウレタン(メタ)アクリレートのうちの1種類又はそれ以上であってもよい。
【0104】
上記のうち、好適に用いられるオリゴマは、分子量が約100000g/mol未満であり、室温における粘度が約100000cps未満のポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート及びエポキシアクリレートである。好適なオリゴマは、分子量が約75000g/mol未満であり、室温における粘度が約50000cps未満のポリウレタンアクリレートである。更に好適なオリゴマは、分子量が約20000g/mol未満であり、室温における粘度が20000cps未満のポリウレタンアクリレートである。
【0105】
接着剤に含まれるオリゴマは、1種類のアクリレート樹脂とすることも、2種類以上のアクリレート樹脂の組み合わせとすることもできる。これらは、ガラス転移温度(Tg)が、約-35℃~約250℃、好ましくは約10℃~120℃、より好ましくは約20℃
~100℃でなければならない。
【0106】
オリゴマは、樹脂組成物の重量(すなわち、接着剤に配合されるオリゴマと不活性樹脂の合計量)に対して0~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは80~100%の量で存在することができる。
【0107】
接着剤組成物中に存在する低官能性オリゴマの総量は、接着剤組成物の重量に対して約0~45%、好ましくは5%~30%、より好ましくは8%~20%である。
【実施例0108】
以下の実施例は例示のみの目的で示されるものであって、いかなる形でも特許請求の対象を限定するものとして解釈されるべきではない。
〔実施例1:UV硬化型熱活性化インクジェット接着剤〕
(1)UV硬化型熱活性化インクジェット接着剤の実施形態における配合と硬化特性 多くの不活性樹脂は、粉末又はペレットの形態となっている。接着剤の調製をしやすくするため、これらの樹脂を適切なモノマに溶かし、均一な溶液を形成することができる。不活性樹脂(この例では、Dianal BR-106を30g)を安定剤(この例では、Genorad 16を1g)と共に、単官能モノマ(この例では、BASF社製Laromer TBCH 105を69g)を入れた200mlの鉄製容器に投入した。この混合物を、均質な樹脂溶液が形成されるまで、60~90℃で約2~4時間(1000rpm~2500rpmで)撹拌しながら混合した。
使用した活性樹脂溶液は、Dianal BR-106樹脂の30%溶液である。Dianal BR-106樹脂自体は、分子量60000、ガラス転移温度(Tg)58℃のn-ブチルメタクリレート共重合体(DAI社製)である。
UV硬化型接着剤は、以下の表1に示す配合で調製した。特に明記しない限り、全ての量は重量パーセント(wt%)である。配合する各成分を、100mlのプラスチック容器に入れた。容器に蓋をして密閉し、均質な接着剤溶液が形成されるまで2500rpmで混合した。均質な接着剤溶液を0.5μmマイクロフィルターでろ過し、不溶解粒子を除去した。溶液の粘度は、Polystat Cole-ParmerのBrookfield DV-E粘度計を用い、25℃と45℃でそれぞれ記録した。
その後、接着剤組成物を、マイヤーロッド8番を用いて20gsm(グラム/平方メートル)の塗布量で供給して両面コーティング紙(Productolith C2S)上に印刷した。印刷した接着剤を、300w/インチのUVランプを備えたAMS(AIR Motion System)社製UV硬化装置によりUV硬化した。硬化直後と硬化後30分の両段階でプリント柄に指で触れることにより、その表面粘着性を評価した。表面粘着性のない硬化したプリント柄となるのに要した線量を記録した。
紙基材への硬化フィルムの接着性は、インク塗料分野でよく認識されている接着性のテストである810テープテストで評価した。以下に結果を「合格」又は「不合格」で示す。「合格」は基材から接着剤の剥離がないことを示し、「不合格」は基材からの接着剤の剥離が10%を超えることを示す。
表2の結果に示すように、本発明の接着剤は、線量350mj/cm2のUV照射により硬化してほぼ表面粘着性がなくなることを示している。硬化した表面は、30分以内に非粘着性となる。硬化したフィルムと810テープの接着は、満足なものであった。
【表1】
【表2】
上記明細書の教示の範囲内において他の不活性樹脂、オリゴマ、モノマ又は添加剤を使用又は含有させる、又は、やはり上記明細書の教示の範囲内においてこれら成分の比率を調整してテストを行ったとしても、即時に非粘着性表面を実現できることが確認されるであろう。組成の調整をすれば、即時に非粘着性表面とするのに必要な線量(UV-A、UV-B及びUV-Cの合計)を50mJ/cm2にまで低減できることが確認されるであろう。
上記のように調製され、硬化して表面粘着性のなくなった接着剤を有する基材(紙)を用い、箔押し試験を行った。
(2)UV硬化型熱活性化インクジェット接着剤の実験室試験における箔転写特性
テストを行った箔転写は、「オフライン」でのホットフォイル加工用途に関するものである。ラミネータSRL-2700 plus(Sircle Corp社製)を実験室内で操作し、「オフライン」のホットフォイル加工のシミュレーションを行った。まず、一片の冷たい箔CFR-4T035(ITW製)を、硬化して表面粘着性のない接着剤を有する紙基材上に配置した。次に、このサンドイッチ構造物(箔/硬化した接着剤/紙)をラミネータSRL-2700 plusに供給し、印圧ローラと熱ローラによって形成されたニップを通過させた。ニップにおいて約5psiの印圧と約104℃/220°Fの高温で箔が基材としっかりと接触するように押し付けて箔の転写を行った。箔押し品質は、この試験条件下では満足なものであった。転写された箔は、許容範囲内の810テープ接着特性を示した。
同じ条件下で熱い箔(ITW社製SFK-1067)を箔押しした際にも、良好な箔転写品質が得られた。転写された熱い箔もまた、良好な810テープ接着特性も示した。
(3)インクジェットプロセスにおけるUV硬化型熱活性化インクジェット接着剤の噴射、硬化及び箔転写特性
インクジェット印刷装置SLED(Inx International社製)を用い、上記のUV硬化型熱活性化インクジェット接着剤の噴射能力と硬化特性を評価した。この装置は、Xaar1002プリントヘッド(印刷対象の基材から3mmの距離)と100w/インチのUVランプを備えている。プリンタは、5500HZで全てのノズルから噴射した場合に液滴サイズが最大(42ピコリットル)となる。接着剤は、異なる温度(25℃、45℃及び60℃)と異なる印刷解像度(360dpi×1080dpi、360dpi×720dpi及び360dpi×360dpi)の全てのテスト条件下で問題なく噴射された。
解像度360dpi×1080dpiで紙(Mactac社製TT9502熱転写紙)に所望の画像パターンで印刷されたUV接着剤は、UV照射(100w/インチのランプで2回)で硬化し、ほぼ粘着性のない表面状態に達した。細い線、塗りつぶした四角や丸、型、会社のロゴを含む画像パターンであった。硬化した接着剤により、基板上に浮き彫り深さ約15~20μmの凸状の画像が形成された。
ホットフォイル加工は、ラミネータSRL-2700(Sircle Corp社製)を用いて行った。まず、冷たい箔(CFR-4T035、ITW製)を、硬化して表面粘着性のない接着剤を有する紙上に配置した。次に、サンドイッチ構造物(箔/硬化した接着剤/紙)をラミネータ供給し、印圧ローラ(約5psi)と熱ローラ(約104℃/220°F)の間のニップを通過させた。
その後、同じ条件下で熱い箔(ITW社製SFK-1067)の箔押しを行った。
転写された箔(冷たい箔と熱い箔の両方)の画質は、許容範囲内であった。「凸状の」鮮明な画像が、塗りつぶし領域と細かい模様の領域の両方で得られた。転写箔の模様は、810テープ接着特性も許容範囲内であった。
〔実施例2:LED硬化型熱活性化インクジェット接着剤〕
(1)LED硬化型熱活性化インクジェット接着剤の配合と硬化特性
LED硬化型熱活性化接着剤は、以下の表3に示す配合で調製した。これにも、Dianal BR-106の不活性樹脂を使用した。LED硬化型熱活性化接着剤の調製は、UV硬化型熱活性化接着剤の調製に用いた方法と同じ方法で行った。接着剤の粘度は、Polystat Cole-ParmerのBrookfield DV-E粘度計を用い、25℃と45℃でそれぞれ記録した。
次に、LED硬化型接着剤を、マイヤーロッドバー8番を用いて両面コーティング紙(Productolith C2S)上に印刷した。印刷した接着剤を、17w/cm LEDランプを備えたAMS(AIR Motion System)社製LED硬化装置によりUV硬化した。硬化直後と硬化後30分の両段階でプリント柄に指で触れることにより、その表面粘着性を評価した。表面粘着性のない硬化したプリント柄となるのに要した線量を記録した。
紙基材への硬化フィルムの接着性は、810テープテストで評価した。以下に結果を「合格」又は「不合格」で示す。「合格」は基材から接着剤の剥離がないことを示し、「不合格」は基材からの接着剤の剥離が10%を超えることを示す。
この結果(表4)、LED硬化型インクジェット接着剤が完全硬化するためには、長い帯域の化学線(主にUV-A2から)を500mJ/cm2の線量で照射する必要があることが明らかとなった。完全硬化したフィルムと810テープの接着は、満足なものであった。
【表3】
【表4】
上記明細書の教示の範囲内において他の不活性樹脂、オリゴマ、モノマ又は添加剤を使用又は含有させる、又は、やはり上記明細書の教示の範囲内においてこれら成分の比率を調整してテストを行ったとしても、即時に非粘着性表面が得られることが確認されるであろう。また、テストを行ったとすれば、非粘着性表面とするのに必要な線量(UV-A2の合計)を更に100mJ/cm2にまで低減できることが確認されるであろう。
硬化して表面粘着性のなくなった接着剤を有する基材を用い、以下に記載する箔押しを行った。
(2)LED硬化型熱活性化インクジェット接着剤の実験室試験における箔転写特性 箔転写は、ラミネータSRL-2700(Sircle Corp社製)を用いて行った。これは、箔転写がラミネータの熱ローラと印圧ローラにより実現されたため、金型を用いないホットフォイル加工のシミュレーションとなった。印圧ローラの圧力を約5psiに事前設定し、熱ローラの温度は140°F~300°Fの範囲内で調整可能とした。
冷たい箔(CFR-4T035、ITW製)を、硬化した接着剤を有する紙基材上に配置した。次に、このサンドイッチ構造物(箔/硬化した接着剤/紙)をラミネータに供給し、印圧ローラと熱ローラの間のニップを通過させた。ニップにおいて約5psiの印圧と約104℃又は220°Fの高温で箔が基材としっかりと接触するように押し付けて箔の転写を行った。箔押し品質は、この試験条件下では満足なものであった。転写された箔は、良好な810テープ接着特性を示した。
冷たい箔の転写に続き、同じ条件下で熱い箔(ITW社製SFK-1067)の箔押しを行った。熱い箔でも良好な箔転写品質が得られた。熱い箔も良好な810テープ接着特性を示した。
(3)インクジェットプロセスにおけるLED硬化型熱活性化インクジェット接着剤の噴射、硬化及び箔転写特性
Inx International社製の印刷装置SLEDを用い、LED硬化型熱活性化インクジェット接着剤の噴射能力と硬化特性を評価した。この装置は、Xaar1002プリントヘッド(印刷対象の基材から3mmの距離)とPhoseon社製16w/cmのLEDランプ(基材から10mmの距離)を備えている。
プリンタは、5500HZで全てのノズルから噴射して液滴サイズが最大(42ピコリットル)となった。接着剤は、室温での噴射、25℃での噴射、45℃での噴射及び60℃での噴射の全ての試験条件で噴射することができた。印刷解像度を様々に変えることで、例えば、解像度360dpi×1080dpi、解像度300dpi×720dpi、解像度360dpi×360dpiとすることで、塗布量を調整できた。
解像度360dpi×1080dpiで紙(Mactac社製TT9502熱転写紙)に所望の画像パターンで印刷されたLED接着剤は、LEDランプの電力(16w/cm)の75%で出力した際に、1回の照射で硬化し、ほぼ粘着性のない表面状態に達した。細い線、塗りつぶした四角や丸、型、会社のロゴを含む画像パターンであった。
ホットフォイル加工は、ラミネータSRL-2700(Sircle Corp社製)を用いて行った。まず、冷たい箔(CFR-4T035、ITW製)を、硬化して表面粘着性のない接着剤を有する紙基材(Mactac社製TT9502熱転写紙)上に配置した。次に、サンドイッチ構造物(箔/硬化した接着剤/紙)をラミネータ供給し、印圧ローラ(約5psi)と熱ローラ(約104℃/220°F)の間のニップを通過させた。
金型を用いないホットフォイル加工において、許容範囲内の画質が得られた。冷たい箔と熱い箔による「凸状の」画像パターンは、鮮明で滑らかなものであった。箔押し画像は、810テープ接着特性も望ましいものであった。
〔実施例3:EB硬化型熱活性化インクジェット接着剤〕
(1)EB硬化型熱活性化インクジェット接着剤の配合と硬化特性
本発明の実施形態に係るEB硬化型熱活性化接着剤を、以下の表5に示す配合で調製した。EB硬化型熱活性化接着剤の調製は、上述したUV硬化型熱活性化接着剤の調製に用いた方法と同じ方法で行った。接着剤の粘度は、Polystat Cole-ParmerのBrookfield DV-E粘度計を用い、25℃と45℃でそれぞれ記録した。
次に、EB硬化型接着剤を、マイヤーロッドバー8番を用いて両面コーティング紙(Productolith C2S)上に印刷した。印刷した接着剤を、EB装置(Comet Technologies USA Inc.社製)により硬化した。空隙、電圧、硬化速度は、それぞれ10mm、125Kv、50fpmに設定した。硬化チャンバ内の酸素濃度は、窒素流を適切に制御することにより200ppmに維持した。硬化直後と硬化後30分の両段階で硬化したプリント柄に指で触れることにより、その表面粘着性を評価した。表面粘着性のない硬化したプリント柄となるのに要した線量を記録した。
紙基材への硬化フィルムの接着性は、周知の810テープテストで評価した。以下に結果を「合格」又は「不合格」で示す。「合格」は基材から接着剤の剥離がないことを示し、「不合格」は基材からの接着剤の剥離が10%を超えることを示す。
表6の結果に示すように、EB硬化型接着剤は、30KGyの照射量で完全硬化した。
完全硬化した接着剤フィルムと810テープの接着は良好であった。
【表5】
【表6】
上記明細書の教示の範囲内において他の不活性樹脂、オリゴマ、モノマ又は添加剤を使用又は含有させる、又は、やはり上記明細書の教示の範囲内においてこれら成分の比率を調整してテストを行ったとしても、即時に非粘着性表面を実現できることが確認されるであろう。上記教示の範囲内において適切な配合の変更を行うことにより、非粘着性表面とするのに必要な照射線量を更に10KGyにまで低減できることが確認されるであろう。
上述した硬化して表面粘着性のなくなった接着剤を有する基材を用い、箔押しを行った。
(2)EB硬化型熱活性化インクジェット接着剤の実験室試験における箔転写特性 箔転写は、ラミネータSRL-2700 plus(Sircle Corp社製)を用いて行った。冷たい箔CFR-4T035(ITW製)を、硬化して表面粘着性のない接着剤を有する紙基材上に配置した。次に、サンドイッチ構造物(箔/硬化した接着剤/紙)をラミネータに供給し、印圧ローラと熱ローラの間のニップを通過させた。約5psiの印圧と約104℃又は220°Fの高温で箔の転写を行った。箔の品質は、この試験条件下では満足なものであった。転写された箔は、良好な810テープ接着特性を示した。
冷たい箔の転写に続き、同じ条件下で熱い箔(ITW社製SFK-1067)の箔押しを行った。熱い箔でも良好な箔転写品質が得られた。紙基材に転写された熱い箔も良好な810テープ接着特性を示した。
(3)インクジェットプロセスにおけるEB硬化型熱活性化インクジェット接着剤の噴射、硬化及び箔転写特性
上記EB硬化型組成物の噴射能力と硬化特性を、UV及びLED硬化型組成物について説明したように評価すれば、金型を用いないホットフォイル加工において、許容範囲内の画質を得ることができることが確認されるであろう。
以下の特許請求の範囲を含む本発明の実施形態で使用される用語「a」、「an」及び「the」及び類似の対象用語は、特に指示がない限り、あるいは、文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むと解釈されるものとする。数値範囲の記述は、特に明記しない限り、その範囲内にある個々の値を個別に言及する省略表現として提供されることが意図されおり、個々の値は本明細書に個々に記載されているものとみなして明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、特に指示がない限り、あるいは、文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。全ての実施例又は典型例の使用は、本発明の実施形態を理解し易くするために役立てることを意図しており、特に主張されない限り、本発明の範囲に対する限定に使用することは意図していない。明細書中のいずれ用語についても、クレームされていない要素が本発明の実施形態の実施に不可欠であるかのように解釈されるべきではない。示された実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。