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特開2023-100758カルバモイルフェニルアラニノール類縁体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100758
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】カルバモイルフェニルアラニノール類縁体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 333/04 20060101AFI20230711BHJP
   C07C 381/00 20060101ALI20230711BHJP
   C07C 275/14 20060101ALI20230711BHJP
   C07C 237/20 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C07C333/04 CSP
C07C381/00
C07C275/14
C07C237/20
A61K31/165
A61K31/17
A61K31/255
A61K31/18
A61K31/27
A61K9/20
A61K9/48
A61P25/20
A61P25/30
A61P15/10
A61P25/14
A61P25/24
A61P25/18
A61P3/04
A61P25/34
A61K31/16
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072520
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2020505344の分割
【原出願日】2018-07-31
(31)【優先権主張番号】62/539,088
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519426911
【氏名又は名称】ジャズ ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハーレー,フィオン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カルバモイルフェニルアラニノール類縁体、および障害を処置するために同物質を使用する方法を提供する。
【解決手段】式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。

(式中、Xは、CH、O、NH、S;Yは、C=O、C=S、SO;Rは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、チオアルコキシ;nは、0~3;R、Rは、水素、アルキル、アミド、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル;あるいはRとRが結合して複素環を形成してもよく、ここで、当該環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含んでもよく、前記窒素原子は、互いに直接結合しておらず、前記酸素原子とも直接結合しておらず;YがC=Oの場合、XはOではない。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
の化合物であって、式中、
Xは、CH、O、NH、またはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
Rは、置換されていてもよいC1-8アルキル、ハロゲン、置換されていてもよいC1-4アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいトリフルオロメチル、またはC1-4チオアルコキシであり;
nは、0、1、2、または3であり、ただしRは、xが2または3である場合には同じであっても異なっていてもよく;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC1-8アルキル、置換されていてもよいアミド、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、および置換されていてもよいC3-7シクロアルキルからなる群から独立に選択されるか;あるいは
およびRが結合して、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい5~7員の複素環を形成してもよく、ここで、当該環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含んでもよく、前記窒素原子は、互いに直接結合しておらず、前記酸素原子とも直接結合しておらず;
YがC=Oの場合、XはOではない、
化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式Ia:
【化2】
を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式II:
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式IIa:
【化4】
を有する、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式III:
【化5】
を有する、請求項1に記載の化合物であって、式中、Wは、CHまたはNHである、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
式IIIa:
【化6】
を有する、請求項5に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
化合物1または2:
【化7】
である、請求項6に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式IV:
【化8】
を有する、請求項5に記載の化合物であって、式中、Wは、CHまたはNHである、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
式IVa:
【化9】
を有する、請求項8に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
化合物3または4:
【化10】
である、請求項9に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
式V:
【化11】
を有する、請求項1に記載の化合物であって、式中、
Zは、OまたはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
YがC=Oである場合、ZはOではない、
化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
式Va:
【化12】
を有する、請求項11に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
化合物5、6、または7:
【化13】
である、請求項12に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
式VI:
【化14】
を有する、請求項11に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
式VIa:
【化15】
を有する、請求項14に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
化合物8、9、または10:
【化16】
である、請求項15に記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項17】
塩酸塩である、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が剤形である、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、即時放出型の経口剤形である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が錠剤またはカプセル剤である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物を含む、キット。
【請求項24】
その必要がある対象のナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、特発性過眠症、薬物依存症、性機能障害、疲労、線維筋痛症、注意欠陥/多動障害、レストレスレッグス症候群、うつ病、双極性障害、非定型うつ病、むちゃ食い障害、もしくは肥満から選択される障害もしくは病態を処置する方法、またはその必要がある対象の禁煙を促進させる方法であって、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物の治療有効量を前記対象に投与することにより前記障害もしくは病態を処置するかまたは禁煙を促進させることを含む、方法。
【請求項25】
前記障害または病態が、ナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、特発性過眠症から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記日中の過剰な眠気が、特発性過眠症、多発性硬化症、非定型うつ病、または薬物に関連する過剰な眠気に関連する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物を含む組成物を投与することを含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を投与することを含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が剤形である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、即時放出型の経口剤形である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、錠剤またはカプセル剤である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
追加的な治療物質を投与することをさらに含む、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の陳述
本発明は、全内容が本明細書中参照により組み込まれている、2017年7月31日に出願の米国仮特許出願第62/539,088号の利益を、米国特許法第119条(e)の下主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、カルバモイルフェニルアラニノール類縁体、および障害を処置するために同物質を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルカルバマート(APC)は、日中の過剰な眠気、カタプレキシー、ナルコレプシー、疲労、うつ病、双極性障害、線維筋痛症、およびその他を含む様々な障害の処置に有用であることが例証されているフェニルアラニン類縁体である。たとえば、米国特許第8,232,315号;同第8,440,715号;同第8,552,060号;同第8,623,913号;同第8,729,120号;同第8,741,950号;同第8,895,609号;同第8,927,602号;同第9,226,910号;および同第9,359,290号;ならびに米国特許公開公報第2012/0004300号および同第2015/0018414号を参照されたい。APC(他の名称も有する)を生成するための方法および関連する化合物は、米国特許第5,955,499号;同第5,705,640号;同第6,140,532号および同第5,756,817号に見出すことができる。上記の特許および特許出願の全ては、全ての目的のためその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
本発明は、APCの類縁体、および障害を処置するために同物質を使用する方法を提供することにより、当該分野の欠点を克服する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、同様の薬理活性を有するAPCの類縁体の開発に関する。よって本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関する:
【化1】
(式中、
Xは、CH、O、NH、またはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
Rは、置換されていてもよいC1-8アルキル、ハロゲン、置換されていてもよいC1-4アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいトリフルオロメチル、またはC1-4チオアルコキシであり;
nは、0、1、2、または3であり、ただしRは、xが2または3である場合には同じであっても異なっていてもよく;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC1-8アルキル、置換されていてもよいアミド、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、および置換されていてもよいC3-7シクロアルキルからなる群から独立に選択されるか;あるいは
およびRが結合して、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい5~7員の複素環を形成してもよく、ここで、この環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含んでもよく、前記窒素原子は、互いに直接結合しておらず、前記酸素原子とも直接結合しておらず;
YがC=Oの場合、XはOではない)。
【0006】
本発明の別の態様は、本発明の化合物を含む組成物(たとえば医薬組成物)およびキットに関する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、その必要がある対象のナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、薬物依存症、性機能障害、疲労、線維筋痛症、注意欠陥/多動障害、レストレスレッグス症候群、うつ病、双極性障害、非定型うつ病、すくみ足歩行、軽度の認知障害、神経原性起立性高血圧、むちゃ食い障害、もしくは肥満から選択される障害もしくは病態を処置するか、またはその必要がある対象の禁煙を促進させる方法であって、本発明の化合物の治療有効量を上記対象に投与することにより、上記障害もしくは病態を処置するかまたは禁煙を促進させるステップを含む、方法に関する。
【0008】
本発明を、本明細書中の図面および以下に記載される明細書において、より詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書中に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろこれら実施形態は、本発明の完全な範囲の代表として本発明の態様を当業者に例示するために提供されている。たとえば、1つの実施形態に関して示されている特性は、他の実施形態に組み込むことができ、特定の実施形態に関して示されている特性は、当該実施形態から削除することができる。さらに、本明細書中示唆されている、実施形態に対して多くの変更および追加を行うことは、本開示の観点から当業者に明らかであり、本発明から逸脱するものではない。
【0010】
特段他の定義がない限り、本明細書中使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書中の発明の説明に使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためにあり、本発明を限定するようには意図されてはいない。
【0011】
文脈に特段他の記載がない限り、本明細書中記載される発明の様々な特性は、任意の組み合わせで使用され得ることが特に意図されている。
【0012】
さらにまた本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書中記載されるいずれかの特性または特性の組み合わせが排除または除外され得ることを企図している。
【0013】
例として、本明細書が、複合体が要素A、B、およびCを含むと述べている場合、A、B、もしくはC、またはそれらの組み合わせのいずれかが、単一または任意の組み合わせで、除外される場合または請求されない場合があることが特に意図されている。
【0014】
本明細書中言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、全ての目的のため、その全体が本明細書中参照により組み込まれている。
【0015】
本明細書中使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、1つまたは1超を意味し得る。たとえば「a」cellは、単一の細胞または細胞が複数あることを意味し得る。
【0016】
本明細書中使用される場合、「および/または」もまた、関連し列挙される項目のうち1つ以上の可能性のあるあらゆる組み合わせ、および別の意味(「or」)で解釈される場合は組み合わせの欠如を表し、包有する。
【0017】
さらに、用語「約」は、本発明の化合物または作用物質の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を表す際に本明細書中で使用される場合、明示された値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変分を含むことを意味する。
【0018】
本発明の組成物に使用される場合の用語「~から本質的になる(および文法上の異綴語)」は、本組成物を追加的な成分が実質的に変更しない限り、本組成物は追加的な成分を含み得ることを意味する。用語「実質的に変更した(materially altered)」は、組成物に使用される場合、記載される成分からなる組成物の治療上の有効性と比較して、少なくとも約20%以上の組成物の治療上の有効性の増加または減少を表す。
【0019】
用語「治療有効量」または「有効量」は、本明細書中使用される場合、調節作用、たとえば障害、疾患、もしくは疾病に罹患した対象の病態(たとえば1つ以上の症状)の改善、病態の進行の遅延もしくは低減、障害の発症の予防もしくは遅延、ならびに/または、当該分野でよく知られている臨床上のパラメータ、疾患、もしくは障害などの変化を含む、対象に対して有用な作用であり得る調節作用を与える本発明の組成物、化合物、または作用物質の量を表す。たとえば、治療有効量または有効量は、対象の病態を、少なくとも5%、たとえば少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%改善する、組成物、化合物、または作用物質の量を表し得る。
【0020】
「処置する(treat)」、「処置した(treating)」、または「処置(treatment)」は、調節作用、たとえば、障害、疾患、もしくは疾病を罹患した対象の病態(たとえば1つ以上の症状)の改善、病態の進行の遅延もしくは低減、ならびに/または当該分野でよく知られている臨床上のパラメータ、疾患、もしくは障害などの変化を含む、対象に対して有用な作用であり得る調節作用を与えるいずれかの種類のアクションを表す。
【0021】
「APCでの処置に適している障害」は、対象へのAPCの投与が、対象の障害の1つ以上の症状の処置をもたらすいずれかの障害を表す。障害の例は、上記の組み込まれている特許に示されている。
【0022】
「薬学的に許容される」は、本明細書中使用される場合、生物学的にまたはその他の意味で望ましくないものではない物質を意味し、すなわちこの物質は、実質的に有害な生体作用を引き起こすことなく、または、本組成物に含まれている他の成分のいずれとも有害な方法で相互作用することなく、本発明の組成物と共に個体に投与され得る。当然、この物質は、当業者によく知られているように、有効成分のいずれの分解をも最小限にするため、および対象へのいずれの有害な副作用をも最小限にするために選択される(たとえば、Remington’s Pharmaceutical Science; 21st ed. 2005を参照)。
【0023】
「同時に(concurrently)」は、複合効果をもたらすために、時間において十分近いことを意味する(すなわち、同時に(concurrently)は、同時に(simultaneously)であってもよく、または短期間の中で互いの前もしくは後に起こる2つ以上の事象であり得る)。一部の実施形態では、2つ以上の化合物の「同時の」投与は、2つの化合物が、そのうちの1つの存在が他の生体作用を変えるのに十分に近い時間で投与されることを意味する。2つの化合物は、同じまたは異なる製剤で投与することができ、または順次投与され得る。同時投与は、これら化合物を混合した後に投与を行うことにより行われてもよく、または、これら化合物を2つの異なる製剤で対象に投与すること、たとえば同じ時点であるが異なる解剖部位に投与するかもしくは異なる投与経路を使用して投与することにより行われてもよい。
【0024】
用語「アルキル」は、1~12個の炭素原子、たとえば1~8、1~6、または1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の炭化水素鎖を表す。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。
【0025】
「置換されているアルキル」は、アルキルの原子が、たとえば炭素、窒素、硫黄、酸素、ケイ素、もしくはハロゲンの原子、またはあるいは窒素、硫黄、酸素、もしくはハロゲンの原子で置換されているアルキルを意味する。この用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびシクロアルキル基の上の置換基を包有する。
【0026】
「置換されているアルキル」におけるアルキル基のいずれかの原子に結合し得る置換基の例として、シクリル基、ヘテロシクリル基;アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、アジド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、チオアルコキシ基、アシルチオアルコキシ基、ハロゲン基、スルホン酸基、スルホンアミド基、エステル基、カルボン酸、酸素(たとえば、カルボニル基)、および硫黄(たとえばチオカルボニル基)が挙げられる。また置換基は、分子の水溶性を改善するいずれかの化学的官能基(たとえばカルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボキサミド基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、チオモルフォリノ基、またはテトラゾリル基;置換されているものと置換されていないものの両方)を含む。
【0027】
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のラジカルのいずれかを表す。
【0028】
用語「アルコキシ」は、上記に定義されるアルキルまたは置換されているアルキルに結合した酸素を表す。
【0029】
用語「チオアルコキシ」は、上記に定義されるアルキルまたは置換されているアルキルに結合した硫黄を表す。
【0030】
用語「シクロアルキル」は、3~8個の炭素原子、たとえば3~6個の炭素原子を含む単環系の飽和炭素環基を表す。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。
【0031】
用語「アリール」は、各環の0、1、2、または3つの原子が置換基で置換され得る、芳香族の5~8員の単環系または8~12員の二環系を表す。この用語はまた、水素原子が環の1つ(たとえば部分飽和の環)における1、2、または3つの環炭素に付加されている芳香族の二環系を含む。アリール基の例として、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0032】
用語「アリールアルキル」は、上記に定義されるアルキルまたは置換されているアルキルに結合したアリール基を表す。
【0033】
用語「複素環」は、単環系の場合は1~3個のヘテロ原子を含み、あるいは二環系の場合は1~6個のヘテロ原子を含む、芳香族または非芳香族の5~8員の単環系または8~12員の二環系を表し、上記ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され、各環の0、1、2または3つの原子は置換基で置換され得る。またこの用語は、水素原子が環の1つ(たとえば部分飽和の環)における1、2、または3つの環炭素に付加されている芳香族および非芳香族の二環系を含む。複素環基の例として、ピリジル、フリルまたはフラニル、ベンゾフラニル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、ナフチリジニル、ジヒドロナフチリジニル、キナゾリニル、インドリル、インダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサジニル、ベンゾオキサジニル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニルなどが挙げられる。
【0034】
アリール基およびヘテロアリール基に適切な置換基は、アルキル基に関する置換基と同じである。
【0035】
本発明は、同等または同様の生体活性および治療活性を有することが予測されるAPCの類縁体の同定および特徴づけに関する。APC遊離塩基の構造を、以下に提供する。
【化2】
【0036】
よって、本発明の一態様は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関する:
【化3】
(式中、
Xは、CH、O、NH、またはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
Rは、置換されていてもよいC1-8アルキル、ハロゲン、置換されていてもよいC1-4アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいトリフルオロメチル、またはC1-4チオアルコキシであり;
nは、0、1、2、または3であり、ただしRは、xが2または3である場合に同じかまたは異なるものであってもよく;RおよびRは、同じかまたは異なるものであってもよく、独立して、水素、置換されていてもよいC1-8アルキル、置換されていてもよいアミド、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、および置換されていてもよいC3-7シクロアルキルからなる群から選択され;
またはRおよびRは、結合して、任意選択でアルキル基またはアリール基で置換されてもよい5~7員の複素環を形成し、前記環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含み得、窒素原子は、互いに直接結合していないかまたは酸素原子と直接結合しておらず;
YがC=Oの場合、XはOではない)。
【0037】
一部の実施形態では、Xは、CH、O、もしくはNHであるか;Xは、CH、O、もしくはSであるか;Xは、CH、NH、もしくはSであるか;Xは、O、NH、もしくはSであるか;Xは、CHもしくはSであるか;Xは、CHもしくはNHであるか;Xは、CHもしくはOであるか;Xは、OもしくはSであるか;Xは、NHもしくはSであるか;Xは、OもしくはSであるか;Xは、OもしくはNHであるか;XはCHであるか;XはOであるか;XはNHであるか;またはXはSである。
【0038】
一部の実施形態では、Yは、C=OもしくはSOであるか;Yは、C=OもしくはC=Sであるか;Yは、C=SもしくはSOであるか;YはC=Oであるか;YはC=Sであるか;またはYはSOである。
【0039】
一部の実施形態では、RまたはRは、C(O)NR(式中、RおよびRは、独立して、水素、置換されていてもよい1~8つの炭素原子の低級アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、または置換されていてもよい3~7つの炭素原子のシクロアルキルであり;または、RおよびRは、結合して、任意選択でアルキル基およびアリール基からなる群から選択されるメンバーで置換されてよい5~7員の複素環を形成し得、上記複素環は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含み得、窒素原子は、互いに直接結合していないかまたは酸素原子と直接結合していない)である。一部の実施形態では、RまたはRは、C(O)NHである。内容の全体が参照により組み込まれている米国特許出願番号第62/404,917号を参照されたい。
【0040】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、式Iaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化4】
【0041】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、式IIまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化5】
【0042】
特定の実施形態では、式IIの化合物は、式IIaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化6】
【0043】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、式IIIまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する:
【化7】
(式中、Wは、CHまたはNHである)。
【0044】
特定の実施形態では、式IIIの化合物は、式IIIaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化8】
【0045】
式IIIaの構造の範囲内の化合物の例として、限定するものではないが、化合物1および2またはそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【化9】
【0046】
一部の実施形態では、式IIIの化合物は、式IVまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する:
【化10】
(式中、Wは、CHまたはNHである)。
【0047】
特定の実施形態では、式IVの化合物は、式IVaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する:
【化11】
(式中、Wは、CHまたはNHである)。
【0048】
式IVaの構造の範囲内の化合物の例として、限定するものではないが、化合物3および4またはそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【化12】
【0049】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、式Vまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する:
【化13】
(式中、
Zは、OまたはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
YがC=Oである場合、ZはOではない)。
【0050】
特定の実施形態では、式Vの化合物は、式Vaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化14】
【0051】
式IVaの構造の範囲内の化合物の例として、限定するものではないが、化合物5、6、および7、またはそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【化15】
【0052】
一部の実施形態では、式Vの化合物は、式VIまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化16】
【0053】
特定の実施形態では、式VIの化合物は、式VIaまたはその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化17】
【0054】
式IVaの構造の範囲内の化合物の例として、限定するものではないが、化合物8、9、および10、またはそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【化18】
【0055】
本明細書中提供される化合物、製剤、および単位剤形は、たとえば本発明の化合物ならびに本化合物の薬学的に許容される塩、水和物、互変異性体を含む異性体、溶媒和物、および複合体の即時放出、制御された放出、および/または遅延放出を達成するために、利用され得る。
【0056】
本発明の化合物の適切な塩として、限定するものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynapthoate)、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル化物、およびウンデカノアートが挙げられる。それ自体では薬学的に許容されないシュウ酸などの他の酸が、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製で使用され得る。特定の実施形態では、この塩は塩酸塩である。
【0057】
本明細書中の式の化合物は、そのいずれかの塩基性窒素含有基の四級化を有する化合物を含む。
【0058】
本明細書における論述は、簡便性のため、立体異性または重水素原子の付加に言及することなく提供されている。当業者は、本発明の化合物が、1つ以上の不斉中心を含み得ること、よってラセミ体およびラセミ混合物および単一の光学異性体として存在し得ることを理解している。このような、これら化合物の異性体の形態および重水素化した形態の全てが、明らかに本発明に含まれている。一部の実施形態では、本化合物は、1つの立体異性体の形態にあるか、または1つの立体異性体がたとえば約60%、70%、80%、90%、95%、もしくはそれ以上優勢である混合物の形態にある。
【0059】
また本明細書における論述は、本化合物の多形、水和物、クラスレート、溶媒和物、包接化合物、異性体、または他の形態に言及することなく提供されている。このような、これら化合物の形態の全てが、明らかに本発明に含まれている。
【0060】
さらに本発明の化合物は、in vivoで有効な化合物へと変換される、本化合物のプロドラッグを含む。たとえば本化合物は、(たとえば極性基のエステル化により)細胞透過性を高めるように修飾され、その後、有効な作用物質をもたらすように細胞の酵素により変換され得る。プロドラッグとして荷電している部分または反応性部分を遮蔽する方法は、当業者に知られている(たとえばP. Korgsgaard-Larsen and H. Bundgaard, A Textbook of Drug Design and Development, Reading U.K., Harwood Academic Publishers, 1991を参照されたい)。
【0061】
用語「プロドラッグ」は、例えば血中での加水分解により、in vivoで迅速に変換されて上記の式の親化合物をもたらす化合物を表す。たとえば、T. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびEdward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987を参照されたい(両者は本明細書中参照により組み込まれている)。また、米国特許第6,680,299号を参照されたい。例示的なプロドラッグとして、本明細書中記載される化合物の活性を有する有効な医薬へと対象によりin vivoで代謝されるプロドラッグが挙げられ、上記プロドラッグは、たとえば米国特許第6,680,324号および同第6,680,322号に記載されるものなどのように、アルコール基もしくはカルボン酸基が化合物に存在する場合はアルコール基もしくはカルボン酸基のエステルであるか;アミン基もしくはカルボン酸基が化合物に存在する場合はアミン基もしくはカルボン酸基のアミドであるか;アミン基が化合物に存在する場合はアミン基のウレタンであるか;アルコール基が化合物に存在する場合はアルコール基のアセタールもしくはケタールであるか;アミン基が化合物に存在する場合は、アミン基のN-マンニッヒ塩基もしくはイミンであるか;または、カルボニル基が化合物に存在する場合は、カルボニル基のシッフ塩基、オキシム、アセタール、エノールエステル、オキサゾリジン、もしくはチアゾリジンである。
【0062】
用語「薬学的に許容されるプロドラッグ」(および同様の用語)は、本明細書中使用される場合、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答などを伴うことなく、ヒトおよび/または他の動物の組織と接触させる使用に適切であり、合理的な危険/便益比に相当し、意図する使用に有効であり、妥当な医学的判断の範囲内にある本発明の化合物のプロドラッグ、ならびに可能である場合は、本発明の化合物の双性イオンの形態を表す。
【0063】
本発明の化合物は、当該分野で知られており実施例に開示される方法により合成され得る。
【0064】
本発明の別の態様は、本発明の化合物を含む組成物、たとえば剤形に関する。一部の実施形態では、本組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。一部の実施形態では、剤形は、経口剤形、たとえば錠剤またはカプセル剤、たとえば即時放出型の剤形である。
【0065】
一部の実施形態では、剤形は、対象へ錠剤を投与してから15分未満の期間以内に、剤形に含まれる本発明の化合物の少なくとも85%、たとえば少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を放出する即時放出型の錠剤である。
【0066】
即時放出型の製剤を含む本発明の化合物の製剤は、経口投与に適切な単位剤形、たとえば充填されたカプセル剤、圧縮錠もしくはカプレット剤、または従来の技術を使用した経口投与に適切な他の剤形などへと処理され得る。記載されるように調製された即時放出型の剤形は、あらかじめ選択された間隔にわたり、経口投与において、本化合物の治療レベルを達成かつ維持するように適合され得る。特定の実施形態では、本明細書中記載される即時放出型の剤形は、丸、卵円、長方形、円筒形、または多角形を含む任意の所望の形状および大きさである固体の経口剤形を含み得る。このような一実施形態では、即時放出型の剤形の表面は、平坦であり得るか、円形であり得るか、凹型であり得るか、または凸型であり得る。一部の実施形態では、本製剤は、全体が本明細書中参照により組み込まれている米国特許出願番号第62/383,818号に記載される固体の経口剤形であり得る。
【0067】
特に、即時放出型の製剤が錠剤として調製される場合、即時放出型の錠剤は、比較的大きなパーセンテージおよび絶対量の本化合物を含むため、大量の液剤または液体/固体の懸濁剤を摂取する必要性にとって代わることにより、患者のコンプライアンスおよび簡便さを向上させることが予測されている。本明細書中記載される1つ以上の即時放出型の錠剤は、経口摂取、たとえば比較的短期間に本化合物の治療有効量を対象に提供するために狭い間隔での経口摂取により、投与され得る。
【0068】
望ましい場合または必要に応じて、即時放出型の剤形の外面は、たとえば当該分野で知られている物質および方法を使用して、着色コーティングまたは防湿層でコーティングされ得る。
【0069】
本明細書において、本明細書中記載の1つ以上の剤形の有効量を投与することによる、APCによる処置に適している病態を処置するための方法が、開示される。たとえば、本発明の剤形は、その必要がある対象のナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、特発性過眠症、薬物依存症、性機能障害(たとえば性欲低下障害)、疲労、線維筋痛症、注意欠陥/多動障害(ADHD)(たとえば処置抵抗性ADHD)、レストレスレッグス症候群、うつ病、双極性障害、非定型うつ病、むちゃ食い障害、もしくは肥満のためか、またはその必要がある対象の禁煙を促進させるための処置の必要がある対象を処置することにより、障害もしくは病態を処置するためまたは禁煙を促進させるために、投与され得る。処置される障害に関しては、たとえば、全体がそれぞれ参照により組み込まれている、米国特許第8,232,315号;同第8,440,715号;同第8,552,060号;同第8,623,913号;同第8,729,120号;同第8,741,950号;同第8,895,609号;同第8,927,602号;同第9,226,910号;同第9,359,290号;および同第9,610,274号、ならびに米国特許公開公報第2015/0018414号を参照されたい。
【0070】
特定の実施形態では、日中の過剰な眠気は、特発性過眠症、閉塞型睡眠時無呼吸、多発性硬化症、非定型うつ病、または薬物に関連する過剰な眠気(DAES)に関連している。
【0071】
特定の実施形態では、疲労は、多発性硬化症、癌、または他の病態に関連している。
【0072】
一部の実施形態では、障害または病態は、多発性硬化症、非定型うつ病、またはDAESである。
【0073】
一部の実施形態では、本方法は、対象、たとえば軽度の認知障害を有する対象の認知を改善するために使用される。
【0074】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ある障害の複数の症状を処置し得る。例として、限定するものではないが、ADHD(ここで本化合物は、過剰な眠気およびADHDの症状、たとえば覚醒状態を改善し得る);非定型うつ病(ここで本化合物は、過剰な眠気および/またはうつの症状を改善し得る);および多発性硬化症(ここで本化合物は、過剰な眠気および/または疲労を改善し得る)が挙げられる。
【0075】
本明細書中開示される剤形はまた、たとえば、別々にパッケージングされた、複数の即時放出型の錠剤またはカプセル剤を含む容器を含むキットとしても提供され得、ここで錠剤またはカプセル剤は、個別に、ホイル状の薬袋またはブリスターパックなどにパッケージングされ得る。錠剤またはカプセル剤は、水の侵入を予防するための乾燥剤または他の物質を伴うかまたは伴わない多くの構成でパッケージングされ得る。それらの投与について、たとえばあらかじめ選択された病態を処置するためにあらかじめ選択された期間の間、in vivoで望ましいレベルの本化合物をもたらすために、あらかじめ選択された期間および/またはあらかじめ選択された間隔にわたる連続的な投与についての印刷されたラベルなどの説明書の物品または手段もまた、含まれ得る。
【0076】
一日用量が約1~約2000mgの本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩が、本明細書中開示される治療上の結果を達成するために投与され得る。たとえば、単回投与または分割投与における約10~1000mg、たとえば約20~500mgの一日用量が、投与される。一部の実施形態では、一日用量は、約0.01~約150mg/kg体重、たとえば約0.2~約18mg/kg体重であり得る。
【0077】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物は、障害または病態を処置するために、必要に応じて対象に投与される。本化合物は、連続的にまたは断続的に投与され得る。一実施形態では、本化合物は、1日に1回超、たとえば1日あたり2、3、もしくは4回、または1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、もしくは7日ごとに1回、対象に投与される。別の実施形態では、本化合物は、1週間に1回以下、たとえば2週間ごとに1回以下、1ケ月に1回、2ケ月ごとに1回、3ケ月ごとに1回、4ケ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6ケ月ごとに1回、またはそれより長い期間に1回、対象に投与される。さらなる実施形態では、本化合物は、2つ以上の異なるスケジュール、たとえば最初は高頻度であり(たとえば特定のレベルに高めるため、たとえば1日に1回以上)その後は低頻度(たとえば1週間に1回以下)のスケジュールを使用して、投与される。他の実施形態では、本化合物は、何らかの不連続な投与レジメンにより投与され得る。一例では、本化合物は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、または10日後ごと、またはそれ以上長い日数ごとに1回以下で、投与され得る。投与は、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1ケ月、2ケ月、もしくは3ケ月、またはそれ以上長い間、続行され得る。任意選択で、休薬期間の後に、同じスケジュールまたは異なるスケジュールで、本化合物が投与され得る。休薬期間は、対象に及ぼす本化合物の薬力学的な効果にしたがい、1週間、2週間、3週間、または4週間、またはそれ以上長い期間であり得る。別の実施形態では、本化合物は、特定のレベルまで上げるように投与され、その後一定のレベルで維持され、その後用量を次第に減らしていくことができる。
【0078】
本発明の一態様では、本発明の化合物は、追加的な治療物質と同時に、対象に送達される。追加的な治療物質は、本化合物と同じ組成物でまたは別の組成物で送達され得る。追加的な治療物質は、本化合物と比較して異なるスケジュールであるかまたは異なる経路により、対象に送達され得る。追加的な治療物質は、対象に有用性を提供する任意の作用物質であり得る。さらなる作用物質として、限定するものではないが、刺激薬、向精神薬、抗うつ剤、神経障害用の作用物質、および化学療法剤が挙げられる。同じ期間の間に投与され得る治療物質の1つとして、ナルコレプシーおよびカタプレキシーを処置するために使用されている、Jazz Pharmaceuticalsが販売するXyrem(登録商標)が挙げられる。米国特許第8,952,062号および同第9,050,302号を参照されたい。
【0079】
本発明は、研究、ならびに獣医学的および医学的な応用での使用を見出している。全般的に、適切な対象は、哺乳類の対象である。用語「哺乳類」は、本明細書中使用される場合、限定するものではないが、ヒト、非ヒトの霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、げっ歯類(たとえばラットまたはマウス)などを含む。ヒトの対象は、新生児、乳幼児、若年、成年、および老人の対象を含む。
【0080】
特定の実施形態では、対象は、APCでの処置に適している障害を有するヒトの対象である。他の実施形態では、本発明の方法に使用される対象は、APCでの処置に適している障害の動物モデルである。
【0081】
対象は、本発明の方法「を必要とする」対象、たとえば本発明の方法の治療効果を必要とする対象であり得る。たとえば、対象は、APCでの処置に適している障害を経ているか、APCでの処置に適している障害を有する疑いがあるか、および/またはAPCでの処置に適している障害を経ると予測されている対象であり得、本発明の方法および組成物は、治療上および/または予防上の処置で使用される。
【実施例0082】
本発明を、以下の非限定的な実施例により詳細に説明する。
実施例1
化合物の合成
【化19】
【0083】
tert-ブチル(R)-(1-(カルバモチオイルオキシ)-3-フェニルプロパン-2-イル)カルバマート(1B):鉱物油中60%の水素化ナトリウム(0.36g、4.78mmol、1.2当量)の分散物を、THF(20mL)における化合物1A(1.0g、3.98mmol、1当量)に0℃で少しずつ添加した。1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.191g、4.78mmol、1.2当量)を0℃で添加した。さらに1時間攪拌した後、ヨウ化メチル(0.3mL、4.78mmol、1.2当量)を添加し、反応物を、室温に温めた。さらに2時間攪拌した後、濃縮した水酸化アンモニウム(1.6mL、7.98mmol、2当量)を添加し、反応物を室温で一晩攪拌した。反応物を水(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製の化合物1Bを得た。この固体を、ジエチルエーテル(20mL)において研和し、淡黄色の固体として化合物1B(0.17g、14%の収率)を得た。
【0084】
(R)-O-(2-アミノ-3-フェニルプロピル)カルバモチオアートジハイドロクロライド(110CR002):ジオキサン(0.68mL、2.74mmol、5当量)中4MのHClを、適切な化合物1B(0.17g、0.548mmol、1当量)に添加し、反応物を一晩攪拌した。溶液を、ジエチルエーテル(20mL)で希釈し、得られた懸濁液をろ過した。この固体を、ジエチルエーテル(20mL)において研和し、ろ過した固体を、真空下、室温で2時間乾燥させ、白色の固体として化合物110CR003(140mg、93%の収率、96.9%の純度)を得た。
【化20】
【0085】
(R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-フェニルプロピルスルファマート(2B):アセトニトリル(2mL)におけるスルファモイルクロリド(1.15g、9.95mmol、2.5当量)の溶液を、0℃で、N,N-ジメチルアセトアミド(20mL)における化合物2A(1.0g、3.98mmol、1当量)およびトリエチルアミン(2.1mL、14.95mmol、3.75当量)の溶液に滴下した。室温で4時間攪拌した後、さらに、アセトニトリル(2mL)におけるトリエチルアミン(2.1mL、14.95mmol、3.75当量)およびスルファモイルクロリド(1.15g、9.95mmol、2.5当量)を、0℃で添加した。反応物を室温で一晩攪拌し、この時点でLCMSは、3:2(生成物の混合物:出発物質)を示した。さらに、アセトニトリル(2mL)におけるトリエチルアミン(2.1mL、14.95mmol、3.75当量)およびスルファモイルクロリド(1.15g、9.95mmol、2.5当量)を0℃で添加し、反応物を室温でさらに6時間攪拌した。LCMSは、4:1(生成物の混合物:出発物質)を示した。この反応物を、飽和重炭酸ナトリウム(5mL)でクエンチし、さらに1時間室温で攪拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム(25mL)で希釈し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。生成物は未だに、容易に分離できない未反応の出発物質を含んでいた。アセトニトリル(2mL)におけるスルファモイルクロリド(1.15g、9.95mmol、2.5当量)を、0℃で、N,N-ジメチルアセトアミド(20mL)における粗製の化合物2B(0.9g)およびトリエチルアミン(2.1mL、14.95mmol、3.75当量)の溶液に滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応物を、飽和重炭酸ナトリウム(5mL)でクエンチし、反応物をさらに1時間室温で攪拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム(25mL)で希釈し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を、AnaLogixの自動化システム(Redisep 24gのシリカゲルカラム)で精製し、ヘプタン中25~50%の酢酸エチルの勾配で溶出し、白色の固体として化合物2B(0.37g、28%の収率)を得た。
【0086】
(R)-2-アミノ-3-フェニルプロピルスルファマートハイドロクロライド(110CR003):ジオキサン(1.4mL、5.6mmol、5当量)中4MのHClを、適切な化合物2B(0.37g、1.12mmol、1当量)に添加し、反応物を一晩攪拌した。この溶液を、ジエチルエーテル(20mL)で希釈し、得られた懸濁液をろ過した。固体をジエチルエーテル(20mL)において研和し、ろ過した固体を、真空下、室温で2時間乾燥し、白色の固体として化合物110CR003(250mg、84%の収率、97.8%の純度)を得た。
【化21】
【0087】
(ベンジル(R)-(1-フェニル-3-ウレイドプロパン-2-イル)カルバマート)(3B):濃塩酸(0.06mL、0.68mmol、0.12当量)を、窒素下で、トルエン(150mL)におけるベンジル(R)-(1-アミノ-3-フェニルプロパン-2-イル)カルバマート(1.5g、5.28mmol、1当量)および尿素(1.26g、21.21mmol、4当量)の溶液に添加した。一晩還流した後、LCMSは、反応物が完全であることを表した。この反応物を減圧下で濃縮し、水(150mL)で希釈し、30分間攪拌した。得られた固体をろ過し、水(25mL)で洗浄して、白色の固体として粗製の化合物3B(1.4g、4.27mmol、80%の収率)を入手し、順次使用した。
【0088】
((R)-1-(2-ミノ(mino)-3-フェニルプロピル)ウレア)(3C):メタノール(60mL)における化合物3B(0.5g、1.5mmol、1当量)および10%のパラジウム炭素(0.09g)を、30psiで1時間水素付加し、この時点でLC-MSは、反応が不完全であると決定した。この溶液をろ過し、未使用の触媒(0.09g)を添加した。溶液を、さらに45分間30psiで水素付加し、完全な変換がもたらされた。2つの同一の規模の反応を、それぞれ105分間行い、両者は完全な変換をもたらした。これら3つの反応物を組み合わせ、セライトを介してろ過し、メタノール(50mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して、粗製化合物3C(0.9g)を入手し、順次使用した。
【0089】
(R)-1-(2-アミノ-3-フェニルプロピル)ウレアハイドロクロライド(110CR007):化合物3C(0.88g、4.58mmol、1当量)を、ジエチルエーテル(10mL)に溶解し、ジオキサン(2.31mL、9.27mmol、2当量)中4NのHClを添加した。反応物を一晩攪拌した後、減圧下で濃縮して、白色の固体としての粗製物110CR007を得た。この物質を、エタノール(30mL)中10%のメタノールから2回再結晶化させて、白色の固体として110CR007(0.163g、16%の収率、93.7%の純度)を得た。
【化22】
【0090】
エチル(R,E)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-フェニルペント-2-エノアート(4B):ジクロロメタン(40mL)における化合物4A(4.0g、16.1mmol、1当量)およびエチル(トリフェニルホス-ホラニリデン)アセタート(5.6g、16.1mmol、1当量)の溶液を、室温で一晩攪拌した。反応物を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、得られた残渣を、AnaLogixの自動化システム(40gのSorbtechシリカゲルカラム)で精製し、ヘプタン中50~100%の酢酸エチルの勾配で溶出して、白色の固体として化合物4B(4.8g、94%の収率)を得た。
【0091】
(R,E)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-フェニルペント-2-エン酸(4C):水酸化リチウム(1.4g、60mmol、4当量)水溶液(15mL)を、THF(60mL)における化合物4B(4.8g、15mmol、1当量)に室温で添加し、反応物を一晩攪拌した。16時間後に、反応物を、1Nの塩酸でpH4に調節した。有機層を除去し、水層を、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、飽和したブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、軽いクリーム状の固体として化合物4C(4.2g、97%の収率)を入手し、その後使用した。
【0092】
メチル(R,E)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-フェニルペント-2-エノアート(4D1):THF(4mL)におけるイソブチルクロロホルマート(1.3mL、10mmol、1当量)を、THF(12mL)における化合物4C(3.0g、10mmol、1当量)およびN-メチル-モルフォリン(1.1mL、10mmol、1当量)の溶液に、-15℃で滴下した。30分間攪拌した後、LCMSは、無水中間体への完全な変換を示した。メタノール(5mL、10mmol、1当量)中2Mのアンモニアを、内部温度を-25~-15℃に維持しつつ、20分間にわたり滴下した。30分間攪拌した後、反応物を室温まで温め、一晩攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、有機溶媒を除去した。得られた残渣を、酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(100mL)で洗浄した。水層を、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、飽和したブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を、AnaLogixの自動化システム(80gのSorbtechシリカゲルカラム)で精製し、ヘプタン中25~50%の酢酸エチルの勾配で溶出して、白色の固体として化合物4D1(1.1g、35%の収率)を得た。
【0093】
メチル(S)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-フェニルペンタノアート(4D2):メタノール(40mL)における化合物4D1(1.1g、3.6mmol、1当量)および10%のパラジウム炭素(0.33g、50%水湿潤)の混合物を、室温、40psiで4時間水素付加した。この混合物を、セライトを介してろ過し、メタノール(100mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮し、白色の固体として化合物4D2(1.1g、99%の収率)を得た。
【0094】
(S)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-フェニルペンタン酸(4D3):水酸化リチウム(73mg、3mmol、1.5当量)水溶液(1mL)を、THF(9mL)における化合物4B(0.6g、2mmol、1当量)に室温で添加した。一晩攪拌した後に、反応物を1Nの塩酸でpH4に調節した。有機層を除去し、水層を酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。組み合わせた有機層を飽和したブライン(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、白色の固体として化合物4D3(0.56g、98%の収率)を入手し、その後使用した。
【0095】
tert-ブチル(S)-(5-アミノ-5-オキソ-1-フェニルペンタン-2-イル)カルバマート(4E):THF(0.5mL)におけるイソブチルクロロホルマート(0.23mL、1.8mmol、1当量)を、-15℃で、THF(1mL)における化合物4C(0.54g、1.8mmol、1当量)およびN-メチルモルフォリン(0.2mL、1.8mmol、1当量)の溶液に滴下した。20分間攪拌した後に、LCMSは、無水中間体への完全な変換を示した。THF(9mL、3.6mmol、2当量)中0.4Mのアンモニアを、内部温度を-25℃~-15℃に維持しつつ、20分間にわたり滴下した。30分間攪拌した後に、反応物を室温まで温め、一晩攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、有機溶媒を除去した。得られた残渣を酢酸エチル(25mL)に溶解し、水(25mL)で洗浄した。有機層を分離し、水層を、酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、飽和したブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、白色の固体として化合物4E(0.5g、93%の収率)を入手し、その後使用した。
【0096】
(S)-4-アミノ-5-フェニルペンタンアミドハイドロクロライド(110CR009):ジオキサン(6mL、25mmol、10当量)中4MのHClを、化合物4E(0.73g、1.12mmol、1当量)に添加した。室温で一晩攪拌した後、反応物をジエチルエーテル(20mL)で希釈し、6時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、固体を、ジエチルエーテル(20mL)で洗浄した。ろ過した固体を、真空下、室温で2時間乾燥して、白色の固体として化合物110CR009(340mg、60%の収率、97.9%の純度)を得た。
【化23】
【0097】
tert-ブチル(R)-(1-(カルバモイルチオ)-3-フェニルプロパン-2-イル)カルバマート(5B):化合物5A(0.15g、0.56mmol、1当量)を、THF(8mL)に溶解し、窒素を15分間導入した。トリクロロアセチルイソシアナート(0.1mL、0.84mmol、1.5当量)を添加し、溶液を3時間攪拌し、この時点でTLC(ヘプタン中30%の酢酸エチル)は、出発物質が存在しないことを示した。反応物を0℃に冷却し、濃縮した水酸化アンモニウム(0.15mL)を添加した。室温で一晩攪拌した後、TLCは、反応物が完全であることを示した。反応物を10%の水酸化アンモニウム(10mL)で洗浄した。有機層を、減圧下で濃縮した。残渣を、AnaLogixの自動化システム(12gのシリカゲルカラム)で精製し、ヘプタン中0~30%の酢酸エチルの勾配で溶出して、化合物5Bを得た。この反応をさらに2回反復した(0.15gおよび0.18g)。これら生成物により、白色の固体としての化合物5B(0.35g、1.12mmol、62.2%の収率)を得た。
【0098】
(R)-S-(2-アミノ-3-フェニルプロピル)カルバモチオアートハイドロクロライド(110CR012):化合物5B(0.35g、1.12mmol、1当量)を、ジオキサン(2mL)中4NのHClに溶解した。反応物を2時間攪拌した後、減圧下で濃縮して、白色の固体として粗製物110CR012を得た。この物質を、ジエチルエーテル(15mL)において研和して、白色の固体として110CR012(0.215g、78%の収率、98.0%の純度)を得た。
【0099】
実施例2
結合プロファイルの特徴づけ
本発明の化合物を、薬理活性についてAPCと比較して試験した。ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポーター(NET)、セロトニン(5-HT)トランスポーター(SERT)、α2Aアドレナリン受容体(Alpha2A)、α2Cアドレナリン受容体(Alpha2C)、D2Sドーパミン受容体(D2S)、D2Lドーパミン受容体(D2L)、および小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)に対する結合を含む、各化合物に関する結合プロファイルを提供するために、8つの結合アッセイを行った。放射性標識したリガンドを使用する競合性結合アッセイを、各化合物を用いて10μMで行った。各標的に対する放射性リガンドは、以下の通りであった:DAT-BTCP、NET-ニソキセチン、SERT-イミプラミン、Alpha2A-ヨヒンビン、Alpha2C-ヨヒンビン、D2S-7-OH-DPAT、D2L-メチルスピペロン、VMAT2-テトラベナジン。受容体およびトランスポーターの供給源は、調製された細胞膜のフラクションであった。アッセイ条件を表1に示す。
【0100】
結果を表2に示す。個別の結果を表3に示す。APC、並びに化合物3および4の結合プロファイルの類似性(ドーパミントランスポーターに対する実質的な結合性、他の受容体およびトランスポーターに対する結合が最小限であること)は、同様の生体活性を表している。化合物8、9、および10は、実質的なドーパミントランスポーター結合活性を有することに加えて、アドレナリン受容体およびドーパミン受容体およびノルエピネフリントランスポーターに対する実質的な結合性を呈している。このことは、これら化合物が、APCが有用である同じ方法で有用であり得、またさらなる治療活性をも有し得ることを示唆している。
【0101】
上記は、本発明の例であり、本発明の限定と解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲および特許請求の範囲の中に含まれているその均等物により定義されている。本明細書中引用されている全ての刊行物、特許出願、特許、特許公報、および他のいずれかの参照文献は、これら参照文献が提示されている文章および/または段落に関連する教示について、全体が参照により組み込まれている。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式III:
【化1】
化合物であって、式中、
Wは、CHまたはNHであり;
Rは、置換されていてもよいC 1-8 アルキル、ハロゲン、置換されていてもよいC 1-4 アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいトリフルオロメチル、またはC 1-4 チオアルコキシであり;
nは、0、1、2、または3であり、ただしRは、nが2または3である場合には同じであっても異なっていてもよく;
およびR は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC 1-8 アルキル、置換されていてもよいアミド、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、および置換されていてもよいC 3-7 シクロアルキルからなる群から独立に選択されるか;あるいは
およびR が結合して、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい5~7員の複素環を形成してもよく、ここで、当該環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含んでもよく、前記窒素原子は、互いに直接結合しておらず、前記酸素原子とも直接結合していない;
化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
およびR が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式IIIa:
【化2】
を有する、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
化合物1または2:
【化3】
である、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
式IVa:
【化4】
を有する、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
化合物3または4:
【化5】
である、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式V:
【化6】
化合物であって、式中、
Zは、OまたはSであり;
Yは、C=O、C=S、またはSOであり;
Rは、置換されていてもよいC 1-8 アルキル、ハロゲン、置換されていてもよいC 1-4 アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいトリフルオロメチル、またはC 1-4 チオアルコキシであり;
nは、0、1、2、または3であり、ただしRは、nが2または3である場合には同じであっても異なっていてもよく;
およびR は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換されていてもよいC 1-8 アルキル、置換されていてもよいアミド、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、および置換されていてもよいC 3-7 シクロアルキルからなる群から独立に選択されるか;あるいは
およびR が結合して、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい5~7員の複素環を形成してもよく、ここで、当該環状化合物は、1~2個の窒素原子および0~1個の酸素原子を含んでもよく、前記窒素原子は、互いに直接結合しておらず、前記酸素原子とも直接結合しておらず;
YがC=Oである場合、ZはOではない、
化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
およびR が水素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
nが0である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
式Va:
【化7】
を有する、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
化合物5、6、または7:
【化8】
である、請求項11に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
式VIa:
【化9】
を有する、請求項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
化合物8、9、または10:
【化10】
である、請求項13に記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項15】
塩酸塩である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が剤形であり、即時放出型の経口剤形であってもよく、錠剤またはカプセル剤であってもよい、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物を含む、キット。
【請求項20】
その必要がある対象のナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、閉塞型睡眠時無呼吸、特発性過眠症、薬物依存症、性機能障害、疲労、線維筋痛症、注意欠陥/多動障害、レストレスレッグス症候群、うつ病、双極性障害、非定型うつ病、むちゃ食い障害、もしくは肥満から選択される障害もしくは病態を処置する方法またはその必要がある対象の禁煙を促進させる方法において使用するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記障害または病態が、ナルコレプシー、カタプレキシー、日中の過剰な眠気、閉塞型睡眠時無呼吸、および特発性過眠症から選択される、請求項20に記載の化合物
【請求項22】
前記日中の過剰な眠気が、特発性過眠症、閉塞型睡眠時無呼吸、多発性硬化症、非定型うつ病、または薬物に関連する過剰な眠気に関連する、請求項21に記載の化合物
【請求項23】
前記方法が、前記化合物を含む組成物を投与することを含み、前記組成物は、前記化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であってもよい、請求項20~22のいずれか1項に記載の化合物
【請求項24】
前記組成物が剤形であり、即時放出型の経口剤形であってもよく、錠剤またはカプセル剤であってもよい、請求項23に記載の化合物
【請求項25】
前記方法が、追加的な治療物質を投与することをさらに含む、請求項20~24のいずれか1項に記載の化合物