(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010080
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】フレアツール
(51)【国際特許分類】
B21D 41/02 20060101AFI20230113BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20230113BHJP
B21D 19/08 20060101ALI20230113BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B21D41/02 A
F16B2/12 B
B21D19/08 A
B21D43/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113902
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】396003216
【氏名又は名称】株式会社イチネンTASCO
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】衣川 興
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA32
3J022EB14
3J022FB12
3J022GA06
3J022GA13
3J022GB32
(57)【要約】
【課題】金属管を保持する保持具の位置調整を容易に行うことができるフレアツールを提供する。
【解決手段】フレアツールは、金属管を保持した保持具を支持する支持部と、金属管の端部を拡径するコーンと、支持部に対する保持具の位置を固定するための位置決め部とを備える。支持部には、保持具が嵌め込まれるガイド溝、および支持部の外面から前記ガイド溝へ貫通する貫通孔が形成されている。位置決め部は、上記貫通孔の軸方向に移動可能に貫通孔に挿入され、かつ貫通孔に螺合された第1状態と貫通孔との螺合が解除された第2状態とに設定可能な位置決めピン、および上記軸方向において位置決めピンをガイド溝側に向かって付勢する付勢部材を有する。第1状態における位置決めピンは第2状態における位置決めピンよりも上記軸方向においてガイド溝側に位置付けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管を保持した保持具を支持するための支持部と、
前記保持具に保持された金属管の端部を拡径するためのコーンと、
前記支持部に対する前記保持具の位置を固定するための位置決め部と、を備え、
前記支持部には、前記保持具が嵌め込まれるガイド溝、および前記支持部の外面から前記ガイド溝へ貫通する貫通孔が形成されており、
前記位置決め部は、
前記貫通孔の軸方向に移動可能に前記貫通孔に挿入され、かつ前記貫通孔に螺合された第1状態と前記貫通孔との螺合が解除された第2状態とに設定可能な位置決めピン、および
前記軸方向において前記位置決めピンを前記ガイド溝側に向かって付勢する付勢部材、を有し、
前記第1状態における前記位置決めピンは前記第2状態における前記位置決めピンよりも前記軸方向において前記ガイド溝側に位置付けられている、フレアツール。
【請求項2】
前記保持具は、前記ガイド溝に挿入された際に前記貫通孔に対向する側面を有し、
前記側面には、平面部と、前記平面部から凹むように形成された凹部とが設けられており、
前記第1状態において前記位置決めピンの先端部が前記保持具の前記凹部に押し付けられることによって前記支持部に対する前記保持具の位置が固定され、
前記第2状態において前記位置決めピンは、前記保持具が前記ガイド溝内を前記支持部に対して移動する際に、前記付勢部材によって前記平面部に押し付けられる、請求項1に記載のフレアツール。
【請求項3】
前記第2状態において前記位置決めピンが前記貫通孔から前記支持部の外側に抜け落ちることは、前記位置決めピンが前記付勢部材を介して前記支持部に係止されることによって防止される、請求項1または2に記載のフレアツール。
【請求項4】
前記位置決めピンは、前記貫通孔に挿入された軸部と、前記軸部よりも前記軸方向において前記ガイド溝側に設けられかつ前記軸方向に直交する方向において前記軸部から外側に突出する突出部とを有し、
前記貫通孔の内面は、第1内面部と、前記軸方向において前記第1内面部から見て前記ガイド溝とは反対側に設けられかつ前記軸方向に直交する方向において前記第1内面部よりも前記貫通孔の中心側に突出する第2内面部とを有し、
前記付勢部材は、前記第1内面部の内側において前記軸部に嵌められたコイルばねであり、
前記軸方向において、前記コイルばねの一端部は前記突出部に支持され、前記コイルばねの他端部は前記第2内面部に支持されている、請求項1から3のいずれかに記載のフレアツール。
【請求項5】
前記位置決めピンの軸部に雄ねじが形成され、前記貫通孔の前記第2内面部に雌ねじが形成されている、請求項4に記載のフレアツール。
【請求項6】
前記第2状態において前記位置決めピンが前記ガイド溝側に移動することは、前記位置決めピンの外周面に形成された雄ねじが前記支持部に係止されることによって規制される、請求項1から5のいずれかに記載のフレアツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管の端部にフレア加工を行うためのフレアツールに関する。
【背景技術】
【0002】
冷暖房器具の室内機と室外機とを金属管によって接続する際には、金属管の端部に対してフレア加工(拡径加工)を行う必要がある。このフレア加工を行うために、従来、種々のフレアツールが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたフレア工具は、金属配管を挟持するゲージバーと、ゲージバーが挿通されるヨーク本体と、金属配管の端部を押圧するコーンと、ゲージバーをヨーク本体の側壁部に押し付けて固定する締付クランプと、ゲージバーに挟持された金属配管の軸心とコーンの回転中心とを一致させる芯合わせ手段とを備えている。ゲージバーには、サイズの異なる金属配管を選択的に挟持するための複数のワーク受孔が形成されている。芯合わせ手段は、締付クランプに形成された位置決めピン収容穴と、位置決めピン収容穴に収容された位置決めピンと、位置決めピンと位置決めピン収容穴の穴底との間に介装された弾発バネと、ゲージバーの外側面に形成された位置決め穴とからなる。位置決め穴は、各ワーク受孔に対応する位置に形成されている。
【0004】
特許文献1のフレア工具では、位置決めピンが位置決め穴に嵌まり込むことによって、対応するワーク受孔の軸心とコーンの回転中心とが一致する。したがって、金属配管を挟持しているワーク受孔に対応する位置決め穴に位置決めピンが嵌るようにゲージバーの位置を調整することによって、金属配管の軸心とコーンの回転中心とを一致させることができる。その状態で、締付クランプによってゲージバーをヨーク本体に固定し、コーンによって金属配管の端部を押圧することによって、金属配管に対して適切にフレア加工を行うことができる。
【0005】
また、特許文献1のフレア工具では、作業者がゲージバーの位置を調整する際に、位置決めピンが位置決め穴に到達すると、位置決めピンは弾発バネの弾発力によって位置決め穴に嵌まり込む。この際に発生する衝撃が作業者の手に伝わることによって、作業者は、ゲージバーが所望の位置に移動したことを容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のフレア工具では、ゲージバーの位置を調整する際には、締付クランプを緩めて、ヨーク本体に対してゲージバーを移動させる必要がある。しかしながら、締付クランプが十分に緩められていない場合には、位置決めピンの先端が位置決め穴から抜け出ることができず、ゲージバーをヨーク本体に対して移動させることができない。
【0008】
一方で、締付クランプを必要以上に緩めると、位置決めピンの先端が位置決め穴に届かなくなり、位置決めピンの本来の機能が発揮されなくなる。
【0009】
このように、特許文献1のフレア工具では、ゲージバーの位置調整を円滑に行うためには、締付クランプを適切に操作しなければならず、作業者の熟練を要する。
【0010】
そこで、本発明は、金属管を保持する保持具の位置調整を容易に行うことができるフレアツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記のフレアツールを要旨とする。
【0012】
(1)金属管を保持した保持具を支持するための支持部と、
前記保持具に保持された金属管の端部を拡径するためのコーンと、
前記支持部に対する前記保持具の位置を固定するための位置決め部と、を備え、
前記支持部には、前記保持具が嵌め込まれるガイド溝、および前記支持部の外面から前記ガイド溝へ貫通する貫通孔が形成されており、
前記位置決め部は、
前記貫通孔の軸方向に移動可能に前記貫通孔に挿入され、かつ前記貫通孔に螺合された第1状態と前記貫通孔との螺合が解除された第2状態とに設定可能な位置決めピン、および
前記軸方向において前記位置決めピンを前記ガイド溝側に向かって付勢する付勢部材、を有し、
前記第1状態における前記位置決めピンは前記第2状態における前記位置決めピンよりも前記軸方向において前記ガイド溝側に位置付けられている、フレアツール。
【0013】
(2)前記保持具は、前記ガイド溝に挿入された際に前記貫通孔に対向する側面を有し、
前記側面には、平面部と、前記平面部から凹むように形成された凹部とが設けられており、
前記第1状態において前記位置決めピンの先端部が前記保持具の前記凹部に押し付けられることによって前記支持部に対する前記保持具の位置が固定され、
前記第2状態において前記位置決めピンは、前記保持具が前記ガイド溝内を前記支持部に対して移動する際に、前記付勢部材によって前記平面部に押し付けられる、上記(1)に記載のフレアツール。
【0014】
(3)前記第2状態において前記位置決めピンが前記貫通孔から前記支持部の外側に抜け落ちることは、前記位置決めピンが前記付勢部材を介して前記支持部に係止されることによって防止される、上記(1)または(2)に記載のフレアツール。
【0015】
(4)前記位置決めピンは、前記貫通孔に挿入された軸部と、前記軸部よりも前記軸方向において前記ガイド溝側に設けられかつ前記軸方向に直交する方向において前記軸部から外側に突出する突出部とを有し、
前記貫通孔の内面は、第1内面部と、前記軸方向において前記第1内面部から見て前記ガイド溝とは反対側に設けられかつ前記軸方向に直交する方向において前記第1内面部よりも前記貫通孔の中心側に突出する第2内面部とを有し、
前記付勢部材は、前記第1内面部の内側において前記軸部に嵌められたコイルばねであり、
前記軸方向において、前記コイルばねの一端部は前記突出部に支持され、前記コイルばねの他端部は前記第2内面部に支持されている、上記(1)から(3)のいずれかに記載のフレアツール。
【0016】
(5)前記位置決めピンの軸部に雄ねじが形成され、前記貫通孔の前記第2内面部に雌ねじが形成されている、上記(4)に記載のフレアツール。
【0017】
(6)前記第2状態において前記位置決めピンが前記ガイド溝側に移動することは、前記位置決めピンの外周面に形成された雄ねじが前記支持部に係止されることによって規制される、上記(1)から(5)のいずれかに記載のフレアツール。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属管を保持する保持具の位置調整を容易に行うことができるフレアツールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフレアツールを示す外観斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III部分を示す断面図である。
【
図4】
図4は、位置決めピンと貫通孔との螺合が解除された状態のフレアツールを示す断面図である。
【
図5】
図5は、位置決めピンと貫通孔との螺合が解除された状態のフレアツールを示す断面図である。
【
図6】
図6は、位置決めピンと貫通孔との螺合が解除された状態のフレアツールを示す断面図である。
【
図7】
図7は、位置決めピンと貫通孔との螺合が解除された状態のフレアツールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るフレアツールについて図面を用いて説明する。
【0021】
(フレアツールの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るフレアツールを示す外観斜視図であり、
図2は、
図1のフレアツールを示す一部断面図である。なお、
図2においては、
図1のII-II部分の一部を断面で示している。また、
図3は、
図1のIII-III部分を示す断面図である。
【0022】
図1~
図3を参照して、フレアツール10は、金属管100の端部に対してフレア加工(拡径加工)を行うための装置である。本実施形態に係るフレアツール10は、金属管100を保持する保持具12と、保持具12を支持する支持部14と、保持具12に保持された金属管100の端部を拡径するためのコーン16(
図2参照)と、保持具12の位置を固定するための位置決め部18とを備えている。
【0023】
本実施形態では、保持具12には、金属管100を保持するための複数の保持孔20a~20fが第1方向Xに並ぶように形成されている。複数の保持孔20a~20fの直径は互いに異なる。これにより、管径が異なる複数の金属管100を保持具12によって保持することができる。
【0024】
本実施形態では、保持具12は、一対の挟持部材12a,12bと、一対の挟持部材12a,12bを開閉可能に支持する支持軸12cとを有している。支持軸12cを支点として挟持部材12a,12bを開閉することによって、任意の保持孔20a~20fに金属管100を保持させることができる。なお、図示は省略するが、保持具12には、後述するガイド溝40から抜け落ちることを防止するための抜け止めが設けられている。
【0025】
保持具12において、後述する貫通孔42(
図2参照)に対向する側面13には、平面部21と、位置決め用の複数の凹部22a~22fとが形成されている。本実施形態では、挟持部材12aに凹部22a~22fが形成されている。凹部22a~22fは、保持孔20a~20fにそれぞれ対応するように形成されている。本実施形態では、各保持孔20a~20fの第1方向Xにおける位置と各凹部22a~22fの第1方向Xにおける位置とが対応するように、保持孔20a~20fおよび凹部22a~22fが形成されている。なお、保持具12は、公知のフレアツールのゲージバーと同様に構成することができる。
【0026】
支持部14の下部には、保持具12を嵌め込むためのガイド溝40が形成されている。ガイド溝40は、保持具12が第1方向Xに移動できるように保持具12を支持する。本実施形態では、ガイド溝40は、支持部14を第1方向Xに貫通するように形成されている。また、ガイド溝40は、保持具12に保持された金属管100を通すことができるように、下方に向かって開口している。
【0027】
図2および
図3に示すように、支持部14の下部において、支持部14の外面からガイド溝40へ貫通するように貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、保持孔20a~20fの軸方向と第1方向Xとに直交する第2方向Yに延びるように形成されている。本実施形態では、支持部14は、本体部14aと、本体部14aに対して着脱可能な取付部材14bとを備えており、貫通孔42は、取付部材14bに形成されている。取付部材14bは、本体部14aに螺合されている。
【0028】
貫通孔42の内面は、第1内面部42aおよび第2内面部42bを有している。第1内面部42aおよび第2内面部42bはそれぞれ、断面円形状を有している。第2方向Y(貫通孔42の軸方向)において、第2内面部42bは、第1内面部42aから見てガイド溝40(保持具12)とは反対側に設けられている。また、第2内面部42bは、第2方向Yに直交する方向において第1内面部42aよりも貫通孔42の中心側に突出している。言い換えると、第2内面部42bの内径(最小径)は、第1内面部42aの内径(最小径)よりも小さい。本実施形態では、第2内面部42bに雌ねじが形成されている。
【0029】
図2を参照して、支持部14において、ガイド溝40から支持部14の上面まで貫通するように、空洞部44が形成されている。空洞部44に、シャフト30が挿入されている。シャフト30は、支持部14に支持されている。図示は省略するが、本実施形態では、シャフト30は、支持部14に螺合されている。シャフト30の上端部に、シャフト30を回転させる際に作業者に把持されるハンドル32が設けられている。
【0030】
シャフト30の下端部に、コーン16が取り付けられている。コーン16は、その軸心がシャフト30の軸心に対して傾斜するように設けられた、いわゆる偏心コーンである。作業者はシャフト30を回転させることによって、保持孔20a~20fのうちのいずれかに保持された金属管100の端部にコーン16を押し付けることができる。これにより、金属管100の端部に対してフレア加工を行うことができる。なお、シャフト30、ハンドル32およびコーン16は、公知のフレアツールと同様に構成されるので、シャフト30、ハンドル部32およびコーン16の詳細な説明は省略する。
【0031】
図2および
図3に示すように、位置決め部18は、位置決めピン80と、付勢部材82と、ハンドル84とを有している。位置決めピン80は、第2方向Yに移動可能に貫通孔42に挿入されている。位置決めピン80は、貫通孔42に螺合された第1状態(
図2および
図3に示す状態)と、貫通孔42との螺合が解除された第2状態(後述の
図4~
図7に示す状態)とに設定可能に設けられている。第1状態における位置決めピン80は、第2状態における位置決めピン80よりも、第2方向Yにおいてガイド溝40側(保持具12側)に位置付けられる。
【0032】
本実施形態では、位置決めピン80は、軸部80aと、突出部80bとを有している。軸部80aは円柱形状を有し、貫通孔42に挿入されている。第2方向Yにおいて、突出部80bは、軸部80aよりもガイド溝40側(保持具12側)に設けられている。突出部80bは、第2方向Yに直交する方向において軸部80aから外側に突出している。なお、本実施形態では、位置決めピン80の先端部は、円錐状に形成されており、当該先端部の一部が突出部80bを構成している。本実施形態では、軸部80aの一部に雄ねじ80cが形成されている。雄ねじ80cは、第2方向Yにおいて、突出部80bから離れた位置に形成されている。
【0033】
付勢部材82は、第2方向Yにおいて位置決めピン80をガイド溝40側(保持具12側)に向かって付勢している。本実施形態では、付勢部材82として、弾性部材が用いられる。より具体的には、付勢部材82として、コイルばねが用いられている。付勢部材(コイルばね)82は、貫通孔42の第1内面部42aの内側において位置決めピン80の軸部80aに嵌められている。本実施形態では、第2方向Yにおいて、付勢部材82の一端部は位置決めピン80の突出部80bに支持され、付勢部材82の他端部は貫通孔42の第2内面部42bに支持されている。
【0034】
ハンドル84は、位置決めピン80の後端部に取り付けられている。ハンドル84は、作業者が位置決めピン80を回転させて第2方向Yに移動させる際に用いられる。本実施形態では、位置決めピン80を回転させることによって、位置決めピン80の状態を、貫通孔42に螺合された第1状態と、貫通孔42との螺合が解除された第2状態とに切り替えることができる。
【0035】
図2および
図3に示すように、本実施形態に係るフレアツール10では、第1状態において、位置決めピン80の先端部を保持具12のうちの任意の凹部22a~22fに押し付けることができる。ここで、位置決めピン80が貫通孔42に螺合された第1状態では、位置決めピン80を回転させない限り、位置決めピン80が支持部14に対して第2方向Y(貫通孔42の軸方向)に移動することが防止される。したがって、第2方向Yにおいて保持具12が支持部14に押し付けられるように、第1状態の位置決めピン80の先端部を保持具12のうちの任意の凹部22a~22fに押し付けることによって、支持部14が保持具12に対して第1方向Xに移動することを防止することができる。すなわち、支持部14に対する保持具12の第1方向Xにおける位置を固定することができる。
【0036】
図4~
図7は、位置決めピン80が第2状態(貫通孔42との螺合が解除された状態)であるときのフレアツール10を示す断面図である。
図4~
図7に示すように、第2状態では、位置決めピン80を回転させなくても、位置決めピン80は支持部14に対して第2方向Yに移動することができる。したがって、位置決めピン80を第2状態に切り替えることによって、保持具12を支持部14に対して第1方向Xに移動させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、位置決めピン80の先端部が凹部内(
図3および
図4の例では凹部22d内)に位置付けられている状態において、位置決めピン80を第2状態に切り替えることによって、位置決めピン80の先端部が、第2方向Yにおいて、凹部から離れる方向に移動する。その状態で、
図4~
図6に示すように、保持具12を支持部14に対して第1方向Xに移動させると、位置決めピン80の先端部は、凹部の表面によって押されつつ平面部21に接触する位置まで相対的に移動する。
【0038】
また、第2状態において位置決めピン80は、保持具12が支持部14に対して第1方向Xに移動する際に、付勢部材82によって側面13の平面部21に押し付けられる。したがって、保持具12を第1方向Xに移動させる際に、凹部22a~22fのうちのいずれかの凹部が位置決めピン80に対向する位置に移動すると、位置決めピン80は、付勢部材82の付勢力によってその凹部に嵌まり込む。この際に発生する衝撃が作業者の手に伝わることによって、作業者は、保持具12が所望の位置に移動したことを把握することができる。作業者は、保持具12が所望の位置に移動したことを把握した後、位置決めピン80を回転させて位置決めピン80の先端部を凹部に押し付けることによって、保持具12を支持部14に固定することができる。
【0039】
(作用効果)
上述したように、本実施形態に係るフレアツール10では、位置決めピン80が第2状態に設定されている場合に、支持部14に対する保持具12の移動が可能になる。このため、作業者は、保持具12の位置を調整する際には、位置決めピン80を回転させて、貫通孔42と位置決めピン80との螺合を解除すればよい。この場合、保持具12を移動可能な状態にするために、位置決めピン80の操作量(回転量)を厳密に調整しなくてもよい。これにより、作業者は、保持具12の位置調整を容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、付勢部材82は、貫通孔42の軸方向において位置決めピン80をガイド溝40側(保持具12側)に向かって付勢している。このため、貫通孔42と位置決めピン80との螺合が解除された第2状態においても、位置決めピン80が貫通孔42から支持部14の外側に抜け落ちることを防止することができる。特に、本実施形態では、位置決めピン80が付勢部材82を介して支持部14に係止されることによって、位置決めピン80が貫通孔42から支持部14の外側に抜け落ちることを確実に防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、第2状態において位置決めピン80がガイド溝40側に移動することは、雄ねじ80cが支持部14(より具体的には、貫通孔42の第2内面部42b)に係止されることによって規制される。これにより、ガイド溝40に保持具12が挿入されていない場合でも、位置決めピン80が貫通孔42から抜け落ちることを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、
図4および
図7に示すように、第2状態において位置決めピン80が凹部22a~22fに嵌った際には、位置決めピン80(より具体的には雄ねじ80c)が支持部14(より具体的には、貫通孔42の第2内面部42b)に係止されることによって、位置決めピン80の第2方向Yにおける位置が固定される。このため、本実施形態では、第2状態において位置決めピン80が凹部22a~22fに嵌った際の位置決めピン80の第2方向Yにおける位置は一定である。この場合、位置決めピン80を第2状態から第1状態に切り替えて、位置決めピン80の先端部を凹部22a~22fに押し付けるために必要な位置決めピン80の回転量も一定となる。言い換えると、保持具12を支持部14に固定する際の、作業者による位置決めピン80の操作量(回転量)を一定にすることができる。これにより、作業者が保持具12を支持部14に固定する際に、位置決めピン80から保持具12への押付力が過剰になったり、不足したりすることを容易に防止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、取付部材14bに位置決めピン80および付勢部材82を取り付けた後に、取付部材14bを本体部14aに取り付けることができる。これにより、支持部14に対する位置決めピン80および付勢部材82の取り付けが容易になる。
【0044】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、位置決めピン80および付勢部材82が取り付けられた取付部材14bを、本体部14aに取り付ける場合について説明したが、位置決めピン80および付勢部材82の設置方法は上述の例に限定されない。例えば、
図8に示すように、支持部14のうち第2方向Yにおいて貫通孔42に対向する位置に貫通孔46を設け、付勢部材82が取り付けられた状態の位置決めピン80を、当該貫通孔46からガイド溝40を介して貫通孔42に挿入してもよい。
【0045】
上述の実施形態では、付勢部材82としてコイルばねを用いる場合について説明したが、皿ばね等の他の付勢部材を用いてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、ハンドル32を用いて、シャフト30を手動で回転させる場合について説明したが、シャフト30の回転方法は上述の例に限定されない。例えば、電動ドライバー等の電動工具によってシャフト30を回転させることができるようにシャフト30を構成してもよい。
【0047】
上述の実施形態では、複数の保持孔を有するゲージバーを保持具として用いる場合について説明したが、本発明に係るフレアツールにおいて利用される保持具の構成は上述の例に限定されない。例えば、保持具において、金属管を保持するための保持孔が1つだけ形成されていてもよい。この保持具においても、側面には、上述の保持具12と同様に、平面部および保持孔に対応する位置決め用の凹部が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、金属管を保持する保持具の位置調整を容易に行うことができるフレアツールが得られる。
【符号の説明】
【0049】
10 フレアツール
12 保持具
12a,12b 挟持部材
12c 支持軸
13 側面
14 支持部
14a 本体部
14b 取付部材
16 コーン
18 位置決め部
20a~20f 保持孔
21 平面部
22a~22f 凹部
30 シャフト
32 ハンドル
40 ガイド溝
42 貫通孔
42a 第1内面部
42b 第2内面部
44 空洞部
46 貫通孔
80 位置決めピン
80a 軸部
80b 突出部
80c 雄ねじ
82 付勢部材
84 ハンドル