(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100821
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】動脈硬化重症度診断マーカーおよびこれを利用した診断方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20230711BHJP
C07K 11/00 20060101ALI20230711BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20230711BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61K38/10
C07K11/00 ZNA
A23L33/18
A61P9/10 101
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076079
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021526307の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0140320
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0140180
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2018年11月5日に臨床試験データベースウェブサイト(URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03730038)において公開された「Effects of Pitavastatin Treatments on the Plasma Lgi3 Level in the Patients With Dyslipidemia」と称する臨床試験情報
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518357128
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ-インダストリー コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY - INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】52, Ewhayeodae-gil Seodaemun-gu Seoul 03760, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ、ク テグ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、セジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヤンス
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヘ-ヨン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動脈硬化の予防または治療用組成物を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む、動脈硬化の予防または治療用薬学組成物を提供する。LGI3拮抗剤を投与して他の新陳代謝表現型に影響を及ぼさずに、動脈硬化を治療することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む、動脈硬化の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記動脈硬化は、冠状動脈疾患(coronary artery disease,CAD)または末梢動脈疾患(peripheral artery disease,PAD)であることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む、動脈硬化の予防または改善用食品組成物。
【請求項4】
動脈硬化の治療または予防のための、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化重症度診断用マーカー組成物、動脈硬化重症度診断用組成物、前記組成物を含む動脈硬化重症度診断用キット、動脈硬化重症度の予防または治療用物質をスクリーニングする方法および動脈硬化重症度診断に関する情報を提供する方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年11月14日に出願された韓国特許出願第10-2018-0140320号および2019年11月5日に出願された韓国特許出願第10-2019-0140180号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
動脈硬化(atherosclerosis)は、粥状硬化症または粥状動脈硬化とも言い、主に血管の最も内側を覆っている内膜(endothelium)にコレステロールが沈着し、内皮細胞の増殖が起きた結果、「粥腫(atheroma)」が形成される血管疾患をいう。長期間にかけて徐々に進行され、冠状動脈、頚動脈、下腹部大動脈、膝窩動脈等に好発し、発生部位によって狭心症、脳梗塞、脳出血、腎不全、虚血性四肢疾患、脳卒中または心筋梗塞等の致命的疾患を誘発することができる。
【0004】
動脈硬化は、重症度によって血管が狭くなり、詰まり、当該血管が担当する部位に血液循環障害が発生し、狭くなった血管により症状が現れる。危険因子が多いほど動脈硬化の進行も速くなることが知られており、主要危険因子としては、高コレステロール血症、HDLコレステロール不足、LDLコレステロール過多、高い中性脂肪、高血圧、喫煙、糖尿病、心血管疾患の家族歴、年齢増加、運動不足、体重過剰および腹部肥満等がある。しかしながら、前記主要危険因子と動脈硬化の重症度が比例しないところ、主要危険因子の確認だけで動脈硬化の重症度を確認できないという難点がある
【0005】
動脈硬化重症度は、治療方法(例:手術方式等)を決定する重要な要素である。さらに、重症度によって主要心臓および脳血管疾患無病生存率(MACCE(major adverse cardiac and cerebrovascular event)-free survival rate)が決定され、脳卒中または心筋梗塞症のような非常に危険な臨床症状発生の可能性が急増する。これにより、動脈硬化重症度を診断することは非常に重要である。動脈硬化重症度診断方法の一環として、冠動脈狭窄の程度を確認する方法がある。しかしながら、冠動脈狭窄の程度と症状が一致しないという点から、症状を起こす程に狭窄がひどくないか、徐々に進行される冠状動脈疾患の早期発見と力学的調査、危険因子の調節による冠動脈粥状硬化症の減少等を評価するにあたって冠動脈造影術の限界点が提起されている。
【0006】
これより、動脈硬化を確認し、ひいては、動脈硬化重症度を正確に診断する方法を開発する必要性が台頭している。
【0007】
一方、LGI3(leucine rich repeat LGI family member 3またはleucine rich glioma inactivated 3)は、ヒトをはじめとする脊椎動物にのみ存在する分泌タンパク質であり、神経細胞での分泌とその分化の調節、皮膚角質形成細胞の生存と移動調節、メラニン細胞の色素生成調節、脂肪細胞の分化および肥満脂肪組織の炎症調節等の機能が知られている。LGI3遺伝子は、ヒト染色体8p21.3に位置し、Gene ID:203190であり、エクソン(exon)の個数は8個であり、548個のアミノ酸(NCBI Reference Sequence:NP_644807,配列番号1)で構成される。また、マウス(Mus musculus)の脳cDNA libraryからクローニングされたLGI3 cDNAは、2931個のヌクレオチドで構成され、マウスも、ヒトと同様に、548個のアミノ酸(NCBI Reference Sequence:NP_660254.1,配列番号2)で構成される。
【0008】
ただし、LGI3について現在まで研究されたところによれば、LGI3の発現または活性レベルが動脈硬化重症度によって比例して増加することについては全く知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、LGI3の発現または活性レベルを利用する、動脈硬化重症度診断用マーカー組成物、動脈硬化重症度診断用組成物、前記組成物を含む動脈硬化重症度診断用キット、動脈硬化の予防または治療用物質をスクリーニングする方法および動脈硬化重症度診断に関する情報を提供する方法を提供することにある。
【0010】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、
本発明は、下記段階を含む、動脈硬化重症度診断のための情報提供方法を提供する:
(a)試料で配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)の発現または活性レベルを確認する段階;および
(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが、対照群での配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルと比較して増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する段階。
【0012】
本発明の一具現例として、前記動脈硬化は、冠状動脈疾患または末梢動脈疾患でありうる。
【0013】
本発明の一具現例として、前記対照群は、前記(a)段階で試料を採取した患者の他の時期に採取した試料でありうる。
【0014】
本発明の他の具現例として、
前記情報提供方法は、動脈硬化重症度とともに主要心臓および脳血管疾患(major adverse cardiac and cerebrovascular event,MACCE)無病生存率(disease free-survival rates)を診断することを特徴とする方法を提供する:
【0015】
ここで、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルが、対照群での配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルと比較して増加した場合、主要心臓および脳血管疾患無病生存率が低いものと診断する。
【0016】
本発明の他の具現例として、前記主要心臓および脳血管疾患は、心筋梗塞症または脳卒中でありうる。
【0017】
本発明のさらに他の具現例として、前記冠状動脈疾患の重症度診断のために、前記情報提供方法は、シンタックス(SYNTAX,the Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery)を代替または並行することができる。
【0018】
本発明のさらに他の具現例として、前記末梢動脈疾患の重症度診断のために、前記情報提供方法は、TASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)を代替または並行することができる。
【0019】
また、本発明は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3を含む動脈硬化(atherosclerosis)重症度診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルを測定する製剤を含む動脈硬化重症度診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記組成物を含む、動脈硬化重症度診断用キットを提供する。
【0022】
また、本発明は、下記段階を含む、動脈硬化の予防または治療用物質のスクリーニング方法を提供する:
(a)候補物質の処理後、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)の発現または活性レベルを確認する段階;および
(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが下向きになった場合、候補物質を動脈硬化の予防または治療用物質として選択する段階。
【0023】
また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む動脈硬化予防および/または治療用途を提供する。
【0024】
より具体的に、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む動脈硬化の予防または治療用薬学組成物を提供する。また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効量で動脈硬化患者に投与して動脈硬化を治療する方法を提供する。また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤の動脈硬化治療または予防用途を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、LGI3の発現または活性レベルを確認することだけで動脈硬化の重症度を正確に手軽に診断でき、これは、動脈硬化患者の状態(好転の有無または再発の有無等)を把握し、現在治療方法の適切性等を判断できる重要な指標として使用して、オーダーメード医学および予測医学の実現が可能である。また、本発明によれば、動脈硬化重症度を改善するための治療物質の開発が可能であり、本発明は、このような治療物質を医薬用、医薬外用、食品添加物用組成物など多様な方面に利用するための踏み台を提供することが期待される。ひいては、本発明によれば、代謝表現型に影響を及ぼさずに、動脈硬化の治療だけが可能で、副作用なしに動脈硬化の治療が可能であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】LGI3欠乏が粥状動脈硬化プラークの形成を減少させることを示す図である。
【
図2】LGI3欠乏が大動脈洞の病変形成を減少させることを示す図である。
【
図3】LGI3欠乏により体重増加量が減少し、inguinal white fatの重さが減少することを示す図である。
【
図4】LGI3が動脈硬化マウスモデルの血しょうで増加することを示す図である。
【
図5】LGI3拮抗剤(LGI3 p34)がApoe
-/-マウスでアテローム性プラーク形成を減少させることを示す図である。
【
図6】LGI3拮抗剤(LGI3 p34)の処理により新陳代謝表現型が変動しないことを示す図である。
【
図7】LGI3発現量と冠状動脈疾患(coronary artery disease,CAD)間の関係を示す図である。
【
図8】LGI3発現量と末梢動脈疾患(peripheral artery disease,PAD)間の関係を示す図である。
【
図9】LGI3発現量と主要心臓および脳血管疾患(major adverse cardiac and cerebrovascular event,MACCE)危険因子間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0028】
本発明は、動脈硬化重症度診断のためのバイオマーカーとしてLGI3の用途に関する。
【0029】
より具体的に、
本発明は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3を含む動脈硬化(atherosclerosis)重症度診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0030】
また、本発明は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルを測定する製剤を含む動脈硬化重症度診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記組成物を含む、動脈硬化重症度診断用キットを提供する。
【0032】
また、本発明は、下記段階を含む、動脈硬化重症度診断のための情報提供方法を提供する:
(a)試料で配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)の発現または活性レベルを確認する段階;および
(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが、対照群での配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルと比較して増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する段階。
【0033】
本発明の明細書で、「動脈硬化(atherosclerosis)」は、粥腫(atheroma)が形成されることと関連した血管疾患を言い、粥状硬化症または粥状動脈硬化とも称し、例えば冠状動脈、頚動脈、下腹部大動脈、膝窩動脈等に好発するが、これに制限されない。前記「動脈硬化」には、これに制限されないが、冠状動脈疾患または末梢動脈疾患が含まれる。また、不整脈、狭心症、心筋梗塞症、心不全症、脳卒中等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の明細書で、「冠状動脈疾患(coronary artery disease,CAD)」は、心臓に血液を供給する血管、特に冠状動脈が詰まったり狭くなって、心臓筋肉に血液を十分に供給しない疾患をいう。
【0035】
本発明の明細書で、「末梢動脈疾患(peripheral artery disease,PAD)」は、冠状動脈と大動脈を除いた全身の末梢動脈に発生する閉塞疾患をいう。
【0036】
本発明の明細書で、「狭心症」は、心臓筋肉が一時的に十分な血液の供給を受けなくて、胸部圧迫感または胸痛を感じるのであり、心臓に血液を供給する冠状動脈が部分的に狭くなって発生する冠状動脈疾患の1つであり、安定狭心症、不安定狭心症および異型狭心症(プリンツメタル狭心症)等に分ける。安定狭心症は、動脈硬化症等が主要原因であり、運動をしたり食べすぎるとき、情緒的に不安だったり興奮状態にあるとき、または寒い冬期に室内から出て急に冷たい空気に露出したとき、主に痛みが現れる。不安定狭心症は、休んでいたり夜間睡眠中にも痛みが発生したり、既に存在した胸痛の頻度や強度が次第に増加するのであり、心臓まひの危険があるので、不安定狭心症が疑われるときには、必ず医師の診察および検査を受けて適切な措置を取らなければならない。異型狭心症は、冠状動脈がけいれんのように収縮して胸痛が発生する場合であり、夜間睡眠中や夜明けに胸痛が発生し、昼間に活動中にはまともな場合が多く、心筋梗塞症、突然死の原因となる恐れがあり、喫煙が重要な危険要因として男性に多く発生する。
【0037】
本発明の明細書で、「心筋梗塞症」は、心臓へ行く血液の供給が不円滑となり、ある瞬間血管が血栓等で完全に詰まると、血が通わなくて、心臓筋肉の一部分が破壊されて死ぬことをいう。心臓マヒで急死する場合は、たいてい心筋梗塞症に起因する。
【0038】
本発明の明細書で、「心不全症」は、心臓のポンプ作用が低下して必要な量の血液を身体の他の器官に送らないようになった状態を言い、多くの心臓疾患が心臓の収縮能力と弛緩能力に障害を起こして心不全を起こすことができる。心不全は、普通数年にかけてゆっくり進行され、心臓が次第にポンプする能力を失うことになる。
【0039】
本発明の明細書で、「脳卒中」は、脳の血流障害によって発生する脳の損傷を言い、出血性脳卒中、血栓性脳卒中および塞栓性脳卒中に区分される。出血性脳卒中は、脳実質内または脳および頭蓋骨の間で出血が発生すると、出血周囲の血管がけいれんにより収縮し、周辺地域の血流量が不足することになって発生する脳損傷をいう。血栓性脳卒中は、脳血管内に生じた血栓が血流を塞いで発生するが、普通脂肪成分が血管壁にひっつく動脈硬化症により狭くなった動脈内で発生する。塞栓性脳卒中は、血栓や小さい塊りが血管に沿って脳に移動して脳血管を塞いで発生するが、普通心臓内で遅くなった血流によって生成された血栓に起因して発生する。
【0040】
本発明の明細書で、「動脈硬化の重症度」は、動脈硬化の発病危険の増減程度、病変の進行程度および再発危険の増減程度を含む意味でありうる。前記発病危険の増減程度は、動脈硬化が発病する危険があるか、発病する可能性がある程度を含む意味である。前記病変の進行程度というのは、動脈硬化が発病して病変が進行されて動脈硬化が軽微な程度乃至深刻な程度を含む意味である。また、前記再発危険の増減程度というのは、動脈硬化の完治判定後、再発危険があるか、再発する可能性がある程度を含む意味である。前記動脈硬化の重症度は、定性的および/または定量的に示すことができ、重症度は、その程度によって分類され得る。
【0041】
本発明による動脈硬化重症度診断方法は、当業界に公知となった重症度診断方法の代わりに使用されることもでき、当業界に公知となった重症度診断方法と並行して使用されることもできる。例えば、冠状動脈疾患の重症度診断のためにシンタックス(SYNTAX,the Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery)スコアを測定することが当業界に公知となっており、シンタックススコアが高いほど、冠状動脈疾患の重症度が深刻なものと診断する。本発明の具体的実施例によれば、LGI3の発現量とシンタックススコアは、正比例の相関関係を有することを確認した。また、例えば、末梢動脈疾患の重症度診断のためにTASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)を測定することが当業界に公知となっており、TASCに分類された比率が高いほど末梢動脈疾患の重症度が深刻なものと診断する。当業界では、TASCの分類の中でも、TASC AからTASC Dに行くほど深刻なものと判断する。本発明の具体的実施例によれば、LGI3の発現量とTASCに分類された比率は、正比例の相関関係を有することを確認した。
【0042】
本発明の明細書で、「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味する。前記診断は、発病の有無だけでなく、予後、動脈硬化の経過、病期等を確認することを全部含む意味である。本発明の目的上、診断は、動脈硬化の重症度を正確に区別して診断することである。
【0043】
本発明において、「LGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)」は、動脈硬化重症度診断のためのバイオマーカーとして使用される。前記LGI3は、本タンパク質を有する動物のLGI3であれば、限定せず、例えばヒトまたはマウスのLGI3を称することができる。好ましくは、本発明に使用されるLGI3アミノ酸配列は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すことができる。また、本発明の目的達成が可能な、前記LGI3は、全体およびその断片を含む。また、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列と相同性を有するタンパク質またはペプチドが含まれる。ここで、「ペプチド」は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。前記LGI3由来のペプチドは、LGI3タンパク質を断片化して獲得することができ、当業界に公知となった化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)または液相合成技術により製造され得る。
【0044】
本発明の明細書で、「バイオマーカー」というのは、診断用マーカーまたは診断マーカーとして使用され得、試料で動脈硬化重症度を区分して診断できる物質をいう。
【0045】
本発明の目的上、本発明の動脈硬化診断用バイオマーカーは、正常対照群に比べて動脈硬化症患者の試料においてLGI3が特異的に高いレベルの発現または活性レベルを示すこと;動脈硬化重症度が軽微な患者の試料に比べて動脈硬化重症度が深刻な患者の試料においてLGI3が特異的に高いレベルの発現または活性レベルを示すこと;または動脈硬化再発の可能性が低い患者の試料に比べて動脈硬化再発可能性が高い患者の試料においてLGI3が特異的に高いレベルの発現または活性レベルを示すことを意味する。
【0046】
本発明による「動脈硬化重症度診断用キット」には、LGI3の発現または活性レベルを測定する製剤だけでなく、分析に使用される当該分野において一般的に使用されるツール、試薬等が含まれ得る。前記ツールまたは試薬の一例として、適合した担体、検出可能な信号を生成できる標識物質、発色団(chromophores)、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤等が含まれ得るが、これに制限されない。標識物質が酵素である場合には、酵素活性レベルを測定できる基質および反応停止剤を含むことができる。担体は、可溶性担体、不溶性担体があり、可溶性担体の一例として当該分野において公知となった生理学的に許容される緩衝液、例えばPBSがあり、不溶性担体の一例としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子のような高分子、その他、紙、ガラス、金属、アガロースおよびこれらの組合せでありうる。
【0047】
以下、本発明による動脈硬化重症度診断のための情報提供方法の各段階を段階別に説明する。ただし、本発明の目的を達成できる限り、下記段階は、変形、追加乃至代替されて実施され得る。
【0048】
「(a)試料で配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)の発現または活性レベルを確認する段階」
【0049】
本発明の明細書で、「試料」は、動脈硬化重症度を診断するための客体(患者)のLGI3が含まれた組織、血液、血清、血しょう、尿または唾液等を意味するが、これに制限されない。
【0050】
本発明において、LGI3の発現または活性レベルを確認するために、LGI3の発現または活性レベルを測定する製剤が使用される。
【0051】
前記「LGI3の発現または活性レベルを測定する製剤」は、LGI3のタンパク質またはこれをコードするmRNAに特異的に結合して、LGI3の発現または活性レベルを確認することによって、LGI3の検出に使用され得る物質を意味する。例えば、LGI3に特異的に結合するオリゴペプチド、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、キメラ(chimeric)抗体、リガンド、PNA(Peptide nucleic acid)、アプタマー(aptamer)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プライマーペアまたはプローブでありうるが、これに制限されない。
【0052】
前記「抗体」とは、当該分野において公知となった用語であり、抗原性部位に対して標識される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体は、本発明のマーカーに対して特異的に結合する抗体を意味し、このような抗体は、各遺伝子を通常の方法によって発現ベクターにクローニングして前記マーカー遺伝子によりコードされるタンパク質を得、得られたタンパク質から通常の方法により製造され得る。これには、前記タンパク質で作られることができる部分ペプチドも含まれ、本発明の部分ペプチドとしては、少なくとも7個のアミノ酸、好ましくは、9個のアミノ酸、より好ましくは、12個以上のアミノ酸を含む。本発明の抗体の形態は、特に制限されず、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体または抗原結合性を有するものであれば、それの一部も本発明の抗体に含まれ、すべての免疫グロブリン抗体が含まれる。ひいては、本発明の抗体には、ヒト化抗体等の特殊抗体も含まれる。本発明のマーカーの検出に使用される抗体は、2個の全体長さの軽鎖および2個の全体長さの重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFv等がある。
【0053】
前記「プライマー」は、短いフリー3末端水酸化基(free 3’ hydroxyl group)を有する核酸配列であり、相補的なテンプレート(template)と塩基対(base pair)を形成することができ、テンプレートストランドコピーのための開始地点として機能をする短い核酸配列を意味する。プライマーは、適切な緩衝溶液および温度で重合反応(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)のための試薬および異なる4種のヌクレオシドトリホスフェートの存在下でDNA合成が開始することができる。本発明では、LGI3のポリヌクレオチドのセンスおよびアンチセンスプライマーを利用してPCR増幅を実施して、所望の生成物の生成の有無を通じて診断することができる。PCR条件、センスおよびアンチセンスプライマーの長さは、当業界に公知となったものを基礎として変形することができる。
【0054】
前記「プローブ」とは、mRNAと特異的結合を成すことができる数個の塩基~数百個の塩基に該当するRNAまたはDNA等の核酸断片を意味し、ラベリングされていて、特定のmRNAの存在有無を確認することができる。プローブは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プローブ、一本鎖DNA(single stranded DNA)プローブ、二本鎖DNA(double stranded DNA)プローブ、RNAプローブ等の形態で製作され得る。本発明では、LGI3と相補的なプローブを利用してハイブリダイゼーションを実施して、ハイブリダイゼーションの有無を通じて診断することができる。適当なプローブの選択およびハイブリダイゼーション条件は、当業界に公知となったものを基礎として変形することができる。
【0055】
本発明のプライマーまたはプローブは、ホスホロアミダイト固体支持体方法、またはその他広く公知となった方法を使用して化学的に合成することができる。このような核酸配列は、また、当該分野に公知となった多くの手段を利用して変形させることができる。このような変形の非制限的例としては、メチル化、キャップ化、天然ヌクレオチド1つ以上の同族体への置換、およびヌクレオチド間の変形、例えば、荷電しない連結体(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、カルバメート等)または荷電した連結体(例:ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)への変形がある。
【0056】
本発明の明細書において、「LGI3の発現または活性レベルを測定」とは、動脈硬化を診断するために、試料でLGI3タンパク質またはこれをコードするmRNAの存在有無と発現レベルまたは活性レベルを確認する過程であり得、例えば前記LGI3タンパク質またはこれをコードするmRNAに対して特異的に結合する分子を利用してタンパク質またはこれをコードするmRNAの量または活性レベルを確認する方法が適用され得る。
【0057】
LGI3タンパク質の発現または活性レベルを確認するための方法としては、例えばウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈降分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACSおよびタンパク質チップ(protein chip)等があるが、これに制限されるものではない。また、LGI3タンパク質をコードするmRNAの発現または活性レベルを確認するための方法としては、例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ反応(RT-PCR)、競争的逆転写酵素ポリメラーゼ反応(competitive RT-PCR)、リアルタイムポリメラーゼ反応(real time RT-PCR)、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ反応(real time quantitative RT-PCR)、RNase保護分析法(RNase protection method)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)および遺伝子チップ等があるが、これに制限されるものではない。
【0058】
「(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが、対照群での配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルと比較して増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する段階」
【0059】
本発明において、上述したところによって、LGI3の発現または活性レベルを確認し、対照群と比較してLGI3の発現または活性レベルが増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する。
【0060】
前記(b)段階において、用語「対照群」には、動脈硬化でなく、正常対照群、同一患者から他の時期に採取した試料群または他の動脈硬化患者から採取した試料群が含まれる。
【0061】
本発明の明細書において、「動脈硬化重症度が深刻(である)」は、動脈硬化重症度が上位レベルであることを意味する。
【0062】
本発明によれば、対照群と比較してLGI3の発現または活性レベルが増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する。例えば、対照群別に、動脈硬化でなく、正常対照群に比べて動脈硬化症患者の試料においてLGI3の発現または活性レベルが増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する。また、同一患者から他の時期に採取した試料群に比べて本方法の実施例で採取した試料群においてLGI3の発現または活性レベルが増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する。ここで、用語「他の時期」には、動脈硬化患者の治療開始前、治療中、治療後に完治後、完治後に再発可能性がある時期等が含まれ得る。また、他の動脈硬化患者から採取した試料群に比べて本方法の実施例で採取した試料群においてLGI3の発現または活性レベルが増加した場合、動脈硬化重症度が深刻なものと診断する。
【0063】
また、本発明は、下記段階を含む、動脈硬化の予防または治療用物質のスクリーニング方法を提供する:
(a)候補物質の処理後、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3(leucine rich repeat LGI family member 3)の発現または活性レベルを確認する段階;および
(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが下向きになった場合、候補物質を動脈硬化の予防または治療用物質として選択する段階。
【0064】
本方法によれば、動脈硬化重症度によって、治療または予防物質を適切に選別することができる。
【0065】
以下、本発明による動脈硬化の予防または治療用物質のスクリーニング方法の各段階を段階別に説明する。ただし、本方法は、上述したLGI3の発現または活性レベルを確認する段階を構成として含むので、重複した内容は、本明細書での過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。そして、本発明の目的を達成できる限り、下記段階は、変形、追加乃至代替されて実施され得る。
【0066】
「(a)候補物質の処理後、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3の発現または活性レベルを確認する段階」
【0067】
本発明の明細書において、「候補物質」は、ヌクレオチド、DNA、RNA、アミノ酸、アプタマー、タンパク質、化合物、天然物、天然抽出物等であり得、動脈硬化の予防または治療用に使用可能な物質であれば、これに制限されない。
【0068】
「(b)前記(a)段階での発現または活性レベルが下向きになった場合、候補物質を動脈硬化の予防または治療用物質として選択する段階」
【0069】
本発明の明細書で、LGI3の発現または活性レベルが下向きになると、動脈硬化重症度が軽微な(下向きになった)ものと見ることができる。
【0070】
本発明の明細書において、「予防」は、動脈硬化を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0071】
本発明の明細書において、「治療」は、動脈硬化の疾患の症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0072】
また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列(DEGRQKFVRFQELAV)で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む動脈硬化の予防、改善および/または治療用途を提供する。
【0073】
より具体的に、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効成分として含む動脈硬化の予防または治療用薬学組成物を提供する。また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を有効量で動脈硬化患者に投与して動脈硬化を治療する方法を提供する。また、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤の動脈硬化治療または予防用途を提供する。
【0074】
特に、本願発明によるLGI3拮抗剤は、代謝表現型に影響を及ぼさず、動脈硬化の治療にのみ効果を示すところ、副作用なしに治療が可能である。
【0075】
本発明による配列番号3のアミノ酸配列で示すLGI3拮抗剤を利用して動脈硬化を予防および/または治療する前に、上述した本発明によって動脈硬化疾患または/および重症度を確認する段階を経ることもできる。
【0076】
本発明の明細書において、「拮抗剤(antagonist)」は、標的物の生物学的活性中の1つ以上を部分的でも完全に遮断、抑制または中和させるすべての分子を含む概念と解釈される。拮抗剤は、リガンドに対する受容体の結合により、受容体リン酸化(phosphorylation)を減少させたり、リガンドにより活性化した細胞を無能力化させたり、または死滅させる作用ができる。また、拮抗剤は、受容体-リガンド間の相互作用を完全に断絶させたり、受容体の3次構造の変化、または減少調節(down regulation)により前記相互作用を実質的に減少させることができる。
【0077】
本発明において、薬学的組成物には、LGI3拮抗剤を有効成分として含み、動脈硬化の予防または治療のために通常的に使用される1種以上の物質をさらに含むことができ、抗ヒスタミン剤、消炎鎮痛剤、抗癌剤、および/または抗生剤等の薬剤とともに製剤化したり併用して使用することができる。
【0078】
本発明において薬学的組成物(pharmaceutical composition)は、薬学的組成物の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤、および希釈剤をさらに含むことができる。
【0079】
本発明において「担体(carrier)」とは、ビークル(vehicle)とも呼ばれ、細胞または組織内への化合物の付加を容易にする化合物を意味し、例えば、ジチメルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞または組織内への多くの有機化合物の投入を容易にする通常使用される担体である。
【0080】
本発明で「希釈剤(diluent)」とは、対象化合物の生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解させる水で希釈される化合物と定義される。バッファー溶液に溶解している塩は、当該分野において希釈剤として使用される。通常使用されるバッファー溶液は、ホスフェートバッファー食塩水であり、これは、ヒト溶液の塩状態を模倣しているためである。バッファー塩は、低い濃度で溶液のpHを制御できるので、バッファー希釈剤が化合物の生物学的活性を変形することは珍しい。ここに使用された化合物は、ヒト患者にそれ自体として、または結合療法のように他の成分と共にまたは適当な担体や賦形剤とともに混合された薬学的組成物として、投与され得る。
【0081】
また、本発明による組成物には、1つ以上の動脈硬化に対する治療的活性を有する物質または化合物をさらに含むことができる。
【0082】
また、本発明による薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の外用剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得、前記組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチン等を混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステル等が使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用され得る。
【0083】
本発明の薬学的組成物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。投与は、1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。また、1回投与のための有効量は、単位用量形態で1つの製剤で製剤化されたり、適切に分量して製剤化されたり、多用量容器内に内入させて製造され得る。
【0084】
本発明による薬学的組成物は、マウス、ラット、家畜、ヒト等の哺乳動物に非経口、経口等の多様な経路で投与され得、投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射により投与され得る。ただし、経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。好ましくは、下行胸部大動脈に投与することができる。または前記組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置により投与され得る。
【0085】
また、経口型剤形の場合も、患者の年齢、性別、体重によって変わり得るが、0.1~100mg/kgの量を1日1回~数回投与することができる。また、その投与量は、投与経路、病気の程度、性別、体重、年齢等によって増減することができる。したがって、前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
本発明でLGI3拮抗剤の他に他の成分が添加された混合物として提供される場合、前記組成物は、組成物の総重量に対して前記LGI3拮抗剤を0.001重量%~99.9重量%、好ましくは、0.1重量%~99.0重量%、より好ましくは、30重量%~50重量%で含むことができる。
【0087】
本発明は、LGI3拮抗剤を有効成分として含む、動脈硬化の予防または改善用食品組成物を提供する。また、LGI3拮抗剤は、動脈硬化の改善または血管疾患の改善を目的に食品に添加され得る。本発明のLGI3拮抗剤を食品添加物として使用する場合、前記LGI3拮抗剤をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。ただし、食品として経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適合するように決定され得る。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明のLGI3拮抗剤は、原料に対して15重量%以下、好ましくは、10重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であり得、安全性の面において何らの問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも使用され得る。
【0088】
本発明で食品は、機能性食品および健康機能食品を含み、「機能性食品」とは、一般食品に本発明のLGI3拮抗剤(Azelaic Acid)を添加することによって、一般食品の機能性を向上させた食品を意味する。機能性は、物性および生理機能性に大別され得るが、本発明のLGI3拮抗剤(Azelaic Acid)を一般食品に添加する場合、一般食品の物性および生理機能性が向上し、本発明は、このような向上した機能の食品を包括的に「機能性食品」と定義する。
【0089】
本発明の機能性食品は、動脈硬化の予防または改善のための薬剤、食品および飲料等に多様に利用され得る。前記食品の種類には特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤等があり、通常の意味での食品を全部含む。
【0090】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のようなモノサッカライド、マルトースおよびスクロースのようなジサッカライド、デキストリンおよびシクロデキストリンのようなポリサッカライド、およびキシリトール、ソルビトールおよびエリトリトール等の糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤等を使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01~20g、好ましくは、約5~12gである。
【0091】
前記の他に本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等を含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率は、大きく重要なことではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0092】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。本発明を説明するに際して、関連した公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【実施例0093】
[実施例および実験例]
[実施例1]
実施例1-1.実験動物
Macrogenが製作したLGI3ノックアウトマウス(韓国)をユン・ヘヨン博士(中央大学校、韓国)から寄贈を受けた。体細胞LGI3-/-は、C57B1/6バックグラウンドで>10世代の間さらに交配され、前記マウスは、脾臓と胸腺の重さまたは他の血液学的媒介変数に深刻な異常がないことを確認した。B6.129P2-Apoetm1Unc/J(JAXストック#002052,Apoe-/-)マウス系統は、Jackson Laboratoryから購入した。LGI3-/-マウスをApoe-/-マウスと交配させてLGI3-/-Apoe-/-マウスを製作した。16週間高脂肪、高コレステロール食餌を摂取したLGI3-/-Apoe-/-マウスとコンジニク
(congenic)Apoe-/-マウスを対照群として使用した。
【0094】
実施例1-2.プラーク形成検査
プラーク形成は、16週間高脂肪食餌をすることによって、雄同腹子(littermate)(8週齢、n=13-15)で誘導された。簡単に言うと、マウスをCO2で安楽死させた後、右心房を除去し、左心室を通じて心房と大動脈をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で灌流させた。OCT化合物(Sakura,USA)にハース(hearths)を挿入し、-80℃で冷凍させた。大動脈を近位上行大動脈から腸骨動脈分岐点に解剖し、外膜の脂肪を除去した。正面(en face)分析のために、大動脈を縦方向に開いて、平たい黒色シリコン板上で一晩PBSに10%中性緩衝ホルムアルデヒドで固定させた。固定された大動脈をオイルレッドOで一晩染色し、PBSで洗浄した後、固定倍率でデジタル方式で写真を撮影した。総大動脈面積と病変面積は、Axio Vision
(Carl Zeiss,Germany)を使用して計算された。
【0095】
実施例1-3.免疫ブロッティングおよびELISA
製造者の指示によって市販されるELISAキット(LGI3(CUSABIO CSB-EL012900MO))でマウス血しょうを測定した。
【0096】
実施例1-4.マウスLGI3拮抗剤ペプチド(LGI3 P34)注射
マウスLGI3拮抗剤ペプチドで製作されたLGI3 P34は、マウスLgi3のアミノ酸(aa)1~34(DEGRQKFVRFQELAV)を含有する15mer合成ペプチドである。合成LGI3ペプチドをPBSに溶解させ、濾過滅菌した。PBS注射は、マウス実験の対照群として使用された。すべてのペプチドは、Peptron(ソウル、韓国)により合成された。16週間高脂肪食餌の供給を受けたApoe-/-マウスに最後5週間PBSまたはLGI3拮抗剤ペプチドを週当たり2回腹腔内注射した。
【0097】
実施例1-5.統計分析
InStatを使用して統計分析を行った。両側Mann-Whitney U-testは、2つのグループ間の比較に使用され、一元ANOVAは、3つのグループ以上の比較に使用された。すべてのデータは、平均±s.e.mで提示され、≦0.05のP-値は、統計的に有意なものと見なされた。
【0098】
[実施例2]
実施例2-1.研究集団
本研究には、延世大学校の心血管遺伝体センターのデータベースで総68人の患者が含まれた。患者は、胸痛に対して冠状動脈造影術を受けたときに登録され、冠状動脈造影術を受けたとき、選別検査や下肢跛行(運動時に発生する痛み)あるいは安定時に痛みに対して末梢血管造影術を受けた。少なくとも1つの心外膜冠状動脈で50%以上の狭窄を有する30~70才の被実験者が含まれた。
【0099】
実施例2-2.臨床および血管造影術データ収集
登録当時、被実験者らは、個別的な病歴に関してインタビューをし、完全な身体検査を受けた。高血圧は、2回またはそれ以上で血圧が>140/90mmHgであるか、抗高血圧治療を受ける場合と定義された。糖尿病は、空腹血糖≧126mg/dL、食後血糖≧200mg/dLまたは現在低血糖薬物治療を受ける場合と定義された。高脂血症は、低密度低タンパクコレステロール≧160mg/dLと定義された。冠状動脈造影術および末梢血管造影術を検討して研究の目的に対して知らない(ブラインドされた)心臓学者が、冠状動脈疾患(CAD)および末梢動脈疾患(PAD)の特性を評価した。心臓病専門医は、初めには、患者の病歴で最もひどいCADの臨床的表現を評価した後、少なくとも50%以上の狭窄がある冠状動脈の数を評価した。CADの重症度と程度を評価するために、SYNTAX(PCI with Taxus and Cardiac Surgery)点数が決定された。PADの存在は、大動脈から腸骨動脈レベルで少なくとも50%以上の狭窄部位の存在と定義し、深刻度は、TASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)II定義によって決定された。
【0100】
実施例2-3.ヒト血清でLGI3レベル測定のためのELISA
一般的な化学およびその他心血管マーカーに関するデータは、心血管遺伝体センターのデータベースで得た。LGI3レベル測定のために、12時間の絶食期間後に収集された静脈サンプルを使用した。このサンプルは、被験者の登録時に収集されて遠心分離され、-80℃で保管された。ELISA分析のために、製造者の指示によって商業的に利用可能なELISAキットLGI3(CUSABIO CSB-EL012900HU)、ADIPONECTIN(R&DシステムDRP300)を使用してヒト血清を測定した。ELISAキット(Cusabio Biotech Corporation,USA)を使用して96ウェルプレートを1mg/ウェル補足抗体でコーティングした。コーティングされたプレートを0.05%ツイン(Tween)20を含有するPBSで洗浄し、培養培地とともに培養した後、ビオチン接合された2次抗体で培養した。プレートを450nmの吸光度で読み取りした。標的タンパク質は、製造社の規格によって分析された。適切な特異性対照群を含ませ、すべてのサンプルを二重で分析した。
【0101】
実施例2-4.臨床的追跡観察
臨床追跡は、臨床訪問時に実施した、退院後、義務記録検討を通じて評価された。臨床イベントは、アカデミックリサーチコンソーシアムと心筋梗塞に対する3番目の普遍的定義を定義した専門家合意文書によって定義された。明白な非心臓原因が確認されなければ、すべての死亡は心臓関連と見なした。病院退院後、心筋梗塞は、臨床症状の有無、心電図の変化、または心筋梗塞を示す非正常的な映像所見およびクレアチンキナーゼ心筋バンド分率が上限正常値を超過したり、troponin-T/troponin-Iが上限値の99番目の百分位数を超過する場合により定義した。脳卒中は、神経学的欠損が示し次第、映像医学研究に基づく神経学者により確認された。主要心臓および脳血管疾患(MACCE)は、心臓死、脳卒中および心筋梗塞の複合と定義された。
【0102】
[実験例1]
実験例1-1.LGI3欠乏は、粥状動脈硬化プラーク形成を改善した(図1)。
粥状硬化斑にLGI3欠失効果が及ぼす影響を調査するために、16週間マウスに高脂肪食餌をした後、プラーク形成を分析した。LGI3
-/-Apoe
-/-マウスがApoe
-/-マウスより大動脈全体で減少したプラーク形成を示した(19.7±2.17、n=13対13.34±1.26、n=15;%、P=0.0008)。また、上行大動脈(Ascending aorta and arch)、腹部大動脈(Abdominal aorta)および特に下行降胸部大動脈(Descending thoracic aorta)は、それぞれ、LGI3が欠乏した場合、非常に減少したプラーク形成を示した。
【0103】
実験例1-2.LGI3の欠乏は大動脈の病変形成を改善した(図2)
大動脈洞でLGI3
-/-Apoe
-/-マウスの平均病変面積は、対照群マウスより有意に低かった(103484.9±15558.77,n=12対78329.36±14425.65、n=14;μm
2、P=0.0017)。
【0104】
実験例1-3.LGI3がアテローム性動脈硬化症の発病機序に及ぼす影響を確認した(図3)。
【0105】
本研究でLGI3がアテローム性動脈硬化症の発病機序に及ぼす影響を調べてみるために、Apoe-/-同腹子(littermate)対照群とともにLGI3-/-Apoe-/-を製作した。8週齢から16週間食餌を進める間、体重変化は、Lgi3が欠乏したApoe-/-マウスにおいてさらに小さかった。さらに興味深くにも、Lgi3-/-Apoe-/-は、高脂肪食で16週間摂取した後、対照群に比べて減少した体重増加率とともに、鼠蹊部の脂肪重量がさらに減少した。このようなデータは、粥状硬化症の発病中にLgi3欠乏によって病気に対する感受性が減る表現型を示すことを提示する。
【0106】
実験例1-4.LGI3は動脈硬化マウスモデルの血しょうで増加した(図4)。
【0107】
LGI3は、アディポカイン(adipokines)形態で提案された溶解性形態であり、主要に60kDaタンパク質と知られている。LGI3は、アディポネクチン(adiponectin)をネガティブに調節し、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)とポジティブな関係関係があることが報告された。TNF-αは、良く知られた炎症性アディポカインであり、アディポネクチンは、代表的な抗炎症性アディポカインと知られている。最近、血管周囲脂肪組織から放出されるアディポカイン(adipokines)は、粥状硬化症のような高脂質血症誘発疾患に影響を及ぼすことが報告された。しかしながら、LGI3と粥状動脈硬化症間の生理学的または病理学的関係は知られていない。LGI3発現は、動脈硬化マウスの白色脂肪組織(white adipose tissues(WAT))で増加したので、Apoe deficient(Apoe-/-)マウスで血しょうLGI3レベルを評価したところ、WATで分泌され、重症度とポジティブな関係関係があると見られる。13週間高脂肪食餌をしたApoe-/-マウスは、8w週目Apoe-/-対照群マウスと比較して、高いレベルの血しょうLGI3レベルを示した(127.31±15.19;n=4;versus 33.8±29.42;n=5、pg/ml、P=0.049)。また、高脂血症食餌をせずに、粥状動脈硬化症が発病した間、アテローム性動脈硬化性大動脈を有するApoe-/-マウスの血しょうでマウスの血しょうLGI3レベルは非常に増加した。これらのデータは、粥状動脈硬化症でLGI3が重要な役割をし、マウス粥状動脈硬化症でLGI3がバイオマーカーであることを示した。
【0108】
実験例1-5.LGI3拮抗剤(アンタゴニスト)はApoe
-/-
マウスのアテローム性動脈硬化症プラーク形成を減少させた(図5)。
【0109】
本データは、LGI3が慢性炎症性疾患、特に動脈硬化症で新しいバイオマーカーであることを立証した。LGI3は、粥状硬化症状態が誘導されるとき、WATから分泌され、受容体、ADAM22またはADAM23により媒介され得ると知られていないメカニズムを通じて前炎症信号伝達を促進させるという前提下に、LGI3抑制の効果およびこれを治療標的に開発する可能性をテストするために、PBSまたはLGI3拮抗剤ペプチドを16週間高脂肪食餌をする5週間Apoe-/-マウスに腹腔内注射した。興味深くにも、LGI3拮抗剤ペプチド注射グループは、対照群と比較して減少したプラーク形成を示した(11.42±0.97;n=9対14.76±1.26;n=9;%、P=0.04)。特に、下行胸部大動脈(4.44±0.58;n=9対7.52±1.26;n=9;%、P=0.01)でLGI3拮抗剤で処理した後、プラーク形成が顕著に減少したし、これは、LGI3が作用できることを示唆した。受容体ADAM23は、大動脈のすぐそばに位置する血管周囲脂肪組織により発現し、これらのデータは、また、LGI3抑制が粥状動脈硬化症を治療するための治療戦略として開発され得ることを立証した。
【0110】
実験例1-6.LGI3拮抗剤は、代謝表現型を変更することなく、プラーク減少効果を示した(図6)。
【0111】
体重および他の主要代謝器官の重量、特に副睾丸の脂肪重量は、PBS注射されたグループとLGI3拮抗剤注射されたグループとの間に差異を示さなかった(39.22±3.51;n=9対38.08±2.19;n=9;g,P=0.536 1.689±0.43;n=9対1.58±0.51;n=9;%、P=0.84)。これらのデータは、LGI3拮抗剤ペプチドの効果が脂肪を減少させたり肥満を緩和させるのではなく、粥状硬化性プラークの形成に支配的であることを示唆した。また、これらのデータは、LGI3拮抗剤ペプチドが、代謝パラメーターを変更することなく、粥状動脈硬化症を改善させ、粥状動脈生成の治療剤として使用され得ることを示した。
【0112】
[実験例2]
平均LGI3レベルは、13.04±8.03ng/mLであり、患者は、LGI3レベルの四分位数によって次のように分類された。Q1(n=17)4.34±1.58ng/mL、Q2(n=17)9.79±1.53ng/mL、Q3(n=17)14.19±1.82ng/mLおよびQ4(n=17)23.85±6.96ng/mL。LGI3レベル四分位数による臨床および検査結果は、表1に示した。統計的に有意でないが、BMIは、LGI3レベル四分位(P=0.083)で低かった。また、クレアチンとhsCRPは、LGI3レベル四分位でさらに高かった。
【0113】
【0114】
SYNTAX点数は、LGI3レベルの四分位数によって徐々に増加して、LGI3レベル四分位(P<0.001)でSYNTAX点数(25.9±14.3)であるとき、最も高かった(
図7の左側)。また、LGI3レベルが連続変数として扱われたとき、LGI3レベルとSYNTANX点数(R2=0.419、P<0.001)は、ポジティブな関係関係があることを確認することができた(
図7の右側)。
【0115】
また、高いLGI3レベルがCADの程度および重症度と関連があることが示された。CADの重症度の他に、PADの頻度も、5.9%、5.9%、11.8%、29.4%(
図8)のLGI3レベル四分位数によって徐々に増加した(
図8)。TASCII分類により定義されたPADの血管造影程度は、LGI3レベル四分位数(P=0.036)(
図8)によって有意にさらに深刻であった。
【0116】
中間値の追跡期間5.7年間(四分位間の範囲3.9-10.1年)、LGI3レベルが一分位である患者において心筋梗塞や脳卒中の発生がなかったが、LGI3レベル二分位数の患者において急性心筋梗塞が存在し、LGI3レベル三分位数で脳卒中が存在し、LGI3レベル四分位数で急性心筋梗塞症患者が存在した。したがって、8年間のMACCE生存率は、それぞれ、100%、93%、87%、68%であり(
図9)、これは、LGI3のレベルが高いほど心臓および脳血管疾患の頻度が高いことを示唆する。
【0117】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
本発明によれば、動脈硬化重症度を改善するための治療物質の開発が可能であり、本発明は、このような治療物質を医薬用、医薬外用、食品添加物用組成物など多様な方面に利用するための踏み台を提供するものと期待される。ひいては、本発明によれば、代謝表現型に影響を及ぼさず、動脈硬化治療だけが可能であり、副作用なしに動脈硬化治療が可能なものと期待される。