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特開2023-100843動き補償用の改善されたプレディクタ候補
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100843
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】動き補償用の改善されたプレディクタ候補
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/52 20140101AFI20230711BHJP
   H04N 19/54 20140101ALI20230711BHJP
【FI】
H04N19/52
H04N19/54
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076495
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2020519428の分割
【原出願日】2018-10-04
(31)【優先権主張番号】17306335.5
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518338149
【氏名又は名称】インターデジタル ヴイシー ホールディングス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】ロベール,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルリアネック,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ポワリエ,タンギ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビデオエンコーダ又はビデオデコーダ用のモーションモデルに基づいて、プレディクタ候補を選択する方法及び装置を提供する。
【解決手段】方法は、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定し、空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有するプレディクタ候補の組を判定し、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルおよび複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別しているモーションフィールドを判定し、モーションフィールドに応答して、予測の間のレート歪判定に基づいて、プレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択し、選択されたプレディクタ候補用のモーションフィールドに基づいてブロックをエンコーディングする。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオエンコーディング用の方法であって、
ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定することと、
前記エンコーディングされるブロックについて、前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定することであって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、判定することと、
前記エンコーディングされるブロックについて、且つ、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルに基づいて、且つ、前記プレディクタ候補の前記1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定することであって、前記モーションフィールドは、前記エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、判定することと、
それぞれのプレディクタ候補について判定された前記モーションフィールドに応答して、予測の間のレート歪判定に基づいて、前記プレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択することと、
前記選択されたプレディクタ候補用の前記モーションフィールドに基づいて前記ブロックをエンコーディングすることと、
を有する方法。
【請求項2】
ビデオデコーディング用の方法であって、
デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定することと、
前記デコーディングされるブロックについて、前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定することであって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、判定することと、
前記デコーディングされるブロックについて、特定のプレディクタ候補から1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルを判定することと、
前記デコーディングされるブロックについて、モーションモデルに基づいて、且つ、前記デコーディングされるブロック用の前記1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定することであって、前記モーションフィールドは、前記デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、判定することと、
前記判定されたモーションフィールドに基づいて前記ブロックをデコーディングすることと、
を有する方法。
【請求項3】
ビデオエンコーディング用の装置であって、
ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定する手段と、
前記エンコーディングされるブロックについて、前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定する手段であって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、判定する手段と、
前記エンコーディングされるブロックについて、且つ、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルに基づいて、且つ、前記プレディクタ候補の前記1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定する手段であって、前記モーションフィールドは、前記エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、判定する手段と、
それぞれのプレディクタ候補ごとに判定された前記モーションフィールドに応答して、予測の間のレート歪判定に基づいて、前記プレディクタ候補の組からプレディクタ候補を選択する手段と、
前記プレディクタ候補の組からの前記選択されたプレディクタ候補用の前記モーションフィールドに基づいて前記ブロックをエンコーディングする手段と、
を有する装置。
【請求項4】
ビデオデコーディング用の装置であって、
デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定する手段と、
前記デコーディングされるブロックについて、前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディング用の前記プレディクタ候補の組を判定する手段であって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、判定する手段と、
前記デコーディングされるブロックについて、特定のプレディクタ候補から1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルを判定する手段と、
前記デコーディングされるブロックについて、モーションモデルに基づいて、且つ、前記デコーディングされるブロック用の前記1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定する手段であって、前記モーションフィールドは、前記デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、判定する手段と、
前記判定されたモーションフィールドに基づいて前記ブロックをデコーディングする手段と、
を有する装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックは、隣接上部左コーナーブロック、隣接上部右コーナーブロック、及び隣接下部左コーナーブロックのうちの、前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックを有する請求項1又は2に記載の方法又は請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記空間的隣接ブロックの前記少なくとも1つのものに関連するモーション情報は、平行移動モーション情報を有する請求項1、2、又は5に記載の方法又は請求項3、4、又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの空間的隣接ブロックのすべてに関連するモーション情報は、アファインモーション情報を有する請求項1、2、又は5に記載の方法又は請求項3、4、又は5に記載の装置。
【請求項8】
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用の前記プレディクタ候補の組を判定することは、
隣接上部左コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部左リスト、隣接上部右コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部右リスト、隣接下部左コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストを判定することと、
空間的隣接ブロックの少なくとも1つのトリプレットを選択することであって、前記トリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックは、それぞれ、前記上部左リスト、前記上部右リスト、及び前記下部左リスト、に属しており、且つ、前記トリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックの予測のために使用される前記参照ピクチャは、同一である、選択することと、
前記エンコーディング及びデコーディングされるブロックについて、空間的隣接ブロックのそれぞれの選択されたトリプレットに関連するモーション情報に基づいて、前記ブロックの上部左コーナー、上部右コーナー、及び下部左コーナー用の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルを判定することと、
を有し、且つ、
前記プレディクタ候補は、前記判定された1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び前記参照ピクチャを有する請求項1、2、5、6、又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用の前記プレディクタ候補の組を判定することは、
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて判定された前記1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて1つ又は複数の基準に従って空間的隣接ブロックの前記少なくとも1つの選択されたトリプレットを評価すること、
を更に有し、且つ、
前記プレディクタ候補は、前記評価することに基づいてインターコーディングモード用の前記プレディクタ候補の組内においてソートされている請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用の前記プレディクタ候補の組を判定することは、
隣接上部左コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部左リスト、隣接上部右コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックのトップリストを判定することと、
空間的隣接ブロックの少なくとも1つのペアを選択することであって、前記ペアのそれぞれの空間的隣接ブロックは、それぞれ、前記上部左リスト及び前記上部右リストに属しており、且つ、前記ペアのそれぞれの空間的隣接ブロックの予測のために使用される前記参照ピクチャは、同一である、選択することと、
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、前記上部左リストの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報に基づいて前記ブロックの前記上部左コーナー用の制御ポイント動きベクトルを判定し、前記上部左リストの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報に基づいて前記ブロックの前記上部左コーナー用の制御ポイント動きベクトルを判定することと、
を有し、且つ、
前記プレディクタ候補は、前記上部左及び上部右制御ポイント動きベクトル及び前記参照ピクチャを有する請求項1、2、5、6、又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
下部左リストが前記上部右リストの代わりに使用されており、前記下部左リストは、隣接下部左コーナーブロックのうちの前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的な隣接ブロックを有し、且つ、下部左制御ポイント動きベクトルが判定されている請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モーションモデルは、アファインモデルであり、且つ、前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの内側のそれぞれの位置(x,y)について前記モーションフィールドは、次式によって判定され、
【数1】
ここで、(v0x,v0y)及び(v2x,v2y)は、前記モーションフィールドを生成するべく使用される前記制御ポイント動きベクトルであり、(v0x,v0y)は、前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの前記上部左コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに対応しており、(v2x,v2y)は、前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの前記下部左コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに対応しており、且つ、hは、前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックの高さである請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【請求項13】
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックのために使用される前記モーションモデルの通知をエンコーディング又は取得することであって、前記モーションモデルは、前記上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び前記下部左コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに基づいており、或いは、前記モーションモデルは、前記上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び前記上部右コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに基づいている、エンコーディング又は取得すること、
を更に有する請求項1、2、5乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記エンコーディング又はデコーディングされるブロックに使用される前記モーションモデルは、黙示的に導出され、前記動きベクトルは、前記上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び前記下部左コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに基づいており、或いは、前記モーションモデルは、前記上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び前記上部右コーナーの前記制御ポイント動きベクトルに基づいている請求項1、2、5乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記インターコーディングモードは、マージモード又は高度動きベクトル予測モードのうちの1つである請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【請求項16】
前記プレディクタ候補の組からの前記選択されたプレディクタ候補用のインデックスがエンコーディングされている請求項1に記載の方法又は請求項3に記載の装置。
【請求項17】
前記プレディクタ候補の組からの前記特定のプレディクタ候補用のインデックスがデコーディングされている請求項2に記載の方法又は請求項4に記載の装置。
【請求項18】
前記先行する記述のいずれかのものの方法又は装置に従って生成されたデータコンテンツを含む、一時的ではないコンピュータ可読媒体が提示されている。
【請求項19】
上述の方法のいずれかのものに従ってビデオデータをエンコーディング又はデコーディングするための命令をその上部において保存された状態において有するコンピュータ可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[1] 本実施形態のうちの少なくとも1つは、一般に、例えば、ビデオエンコーディング又はデコーディング用の方法又は装置に関し、且つ、更に詳しくは、ビデオエンコーダ又はビデオデコーダ用の、例えば、アファインモデル(アフィンモデル)などの、モーションモデルに基づいて、インターコーディングモード(マージモード又はAMVP)における動き補償(モーション補償)用の複数のプレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[2] 高圧縮効率を実現するべく、画像及びビデオコーディング方式は、通常、ビデオコンテンツ内の空間的且つ時間的冗長性を活用するべく、動きベクトル(モーションベクトル)予測を含む予測を利用すると共に変換している。一般には、イントラ又はインターフレーム相関を活用するべく、イントラ又はインター予測が使用され、次いで、予測誤差又は予測残差としばしば表記される、オリジナルの画像と予測画像の間の差が、変換され、量子化され、且つ、エントロピーコーディングされている。ビデオを再構築するべく、圧縮されたデータは、エントロピーコーディング、量子化、変換、及び予測に対応する逆プロセスにより、デコーディングされる。
【0003】
[3] 高圧縮技術に対して最近追加されたものには、アファインモデリングに基づいたモーションモデルの使用が含まれる。具体的には、アファインモデルは、ビデオピクチャのエンコーディング及びデコーディング用の動き補償のために使用されている。一般に、アファインモデリングは、例えば、回転及び相似(ズーム)をシミュレートするべく、例えば、ピクチャのブロック全体のモーションフィールドの導出を許容する、ピクチャのブロックの個々のコーナーにおけるモーションを表す2つの制御ポイント動きベクトル(CPMV:control point motion vector)などの、少なくとも2つのパラメータを使用するモデルである。但し、マージモードにおいてプレディクタとして潜在的に使用される制御ポイント動きベクトル(CPMV)の組は、限られている。従って、アファインマージ及び高度動きベクトル予測(AMVP:Advanced Motion Vector Prediction)モードにおいて使用されるモーションモデルの性能を改善することにより、対象の高圧縮技術の全体的な圧縮性能を向上させることになる方法が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
概要
[4] 本発明の目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服する、という点にある。これを目的として、少なくとも1つの実施形態の一般的な一態様によれば、ビデオエンコーディングの方法が提示され、方法は、ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定することと、エンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定することであって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、ことと、エンコーディングされるブロックについて、且つ、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルに基づいて、且つ、プレディクタ候補の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定することであって、モーションフィールドは、エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、ことと、それぞれのプレディクタ候補について判定されたモーションフィールドに応答して予測の間のレート歪判定に基づいて、プレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択することと、選択されたプレディクタ候補のモーションフィールドに基づいてブロックをエンコーディングすることと、プレディクタ候補の組からの選択されたプレディクタ候補用のインデックスをエンコーディングすることと、を有する。1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び参照ピクチャは、ブロックに関連するモーション情報に基づいたエンコーディングされるブロックの予測のために使用されている。
【0005】
[5] 少なくとも1つの実施形態のうちの別の一般的な態様によれば、ビデオデコーディング用の方法が提供され、方法は、ピクチャ内のデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用のプレディクタ候補の組のうちの特定のプレディクタ候補に対応するインデックスを受け取ることと、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定することと、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定することであって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、ことと、特定のプレディクタ候補について、デコーディングされるブロック用の1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルを判定することと、特定のプレディクタ候補について、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルに基づいて、動きベクトルに基づいた対応するモーションフィールドを判定することであって、対応するモーションフィールドは、デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、ことと、対応するモーションフィールドに基づいてブロックをデコーディングすることと、を有する。
【0006】
[6] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、ビデオコーディング用の装置が提示され、装置は、ピクチャ内においてエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定する手段と、エンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定する手段であって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、手段と、プレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択する手段と、エンコーディングされるブロックについて、且つ、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルに基づいて、且つ、プレディクタ候補の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定する手段であって、モーションフィールドは、エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、手段と、それぞれのプレディクタ候補について判定されたモーションフィールドに応答して、予測の間のレート歪判定に基づいてプレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択する手段と、プレディクタ候補の組からの選択されたプレディクタ候補の対応するモーションフィールドに基づいてブロックをエンコーディングする手段と、プレディクタ候補の組からの選択されたプレディクタ候補用のインデックスをエンコーディングする手段と、を有する。
【0007】
[7] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、ビデオデコーディング用の装置が提示され、装置は、ピクチャ内のデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用のプレディクタ候補の組のうちの特定のプレディクタ候補に対応するインデックスを受け取る手段と、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定する手段と、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定する手段であって、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する、手段と、デコーディングされるブロックについて、特定のプレディクタ候補から1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルを判定する手段と、デコーディングされるブロックについて、モーションモデルに基づいて、且つ、デコーディングされるブロック用の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定する手段であって、モーションフィールドは、デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している、手段と、対応するモーションフィールドに基づいてブロックをデコーディングする手段と、を有する。
【0008】
[8] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、ビデオエンコーディング用の装置が提供され、装置は、1つ又は複数のプロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を有する。この場合に、1つ又は複数のプロセッサは、ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定し、エンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいて、インターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定し、この場合に、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有し、エンコーディングされるブロックついて、且つ、それぞれのプレディクタ候補ごとに、モーションモデルに基づいて、且つ、プレディクタ候補の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションフィールドを判定し、モーションフィールドは、エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別し、それぞれのプレディクタ候補について判定されたモーションフィールドに応答して、予測の間のレート歪判定に基づいてプレディクタ候補の組から1つのプレディクタ候補を選択し、選択されたプレディクタ候補のモーションフィールドに基づいてブロックをエンコーディングし、且つ、プレディクタ候補の組からの選択されたプレディクタ候補用のインデックスをエンコーディングする、ように構成されている。少なくとも1つのメモリは、エンコーディングされたブロック及び/又はエンコーディングされたインデックスを少なくとも一時的に保存するためのものである。
【0009】
[9] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、ビデオデコーディング用の装置が提供され、装置は、1つ又は複数のプロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を有する。この場合に、1つ又は複数のプロセッサは、ピクチャ内のデコーディングされるブロックについて、インターコーディングモード用のプレディクタ候補の組のうちの特定のプレディクタ候補に対応するインデックスを受け取り、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定し、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組を判定し、プレディクタ候補は、1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有し、特定のプレディクタ候補について、デコーディングされるブロック用の1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルを判定し、特定のプレディクタ候補について、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルに基づいて、モーションモデルに基づいたモーションフィールドを判定し、モーションフィールドは、デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別しており、且つ、モーションフィールドに基づいてブロックをデコーディングする、ように構成されている。少なくとも1つのメモリは、デコーディングされたブロックを少なくとも一時的に保存するためのものである。
【0010】
[10] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、少なくとも1つの空間的隣接ブロックは、隣接する上部左コーナーブロック、隣接する上部右コーナーブロック、及び隣接する下部左コーナーブロックのうちの、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックを有する。
【0011】
[11] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、空間的隣接ブロックの少なくとも1つのものに関連するモーション情報は、非アファインモーション情報を有する。非アファインモーションモデルは、平行移動モーションモデルであり、この場合には、平行移動を表す1つの動きベクトルのみがモデル内においてコーディングされている。
【0012】
[12] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、少なくとも1つの空間的隣接ブロックのすべてのものに関連するモーション情報は、アファインモーション情報を有する。
【0013】
[13] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、プレディクタ候補の組は、単方向プレディクタ候補及び双方向プレディクタ候補を有する。
【0014】
[14] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、方法は、隣接する上部左コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部左リスト、隣接する上部右コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部右リスト、隣接する下部左コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストを判定することと、空間的隣接ブロックの少なくとも1つのトリプレットを選択することであって、トリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックは、それぞれ、前記上部左リスト、前記上部右リスト、及び前記下部左リストに属しており、且つ、前記トリプレットの前記空間的隣接ブロックの予測のために使用される参照ピクチャは、同一である、ことと、エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、選択されたトリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックに対してそれぞれ関連付けられたモーション情報に基づいて、ブロックの上部左コーナー、上部右コーナー、及び下部左コーナー用の1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルを判定することを更に有していてもよく、この場合に、プレディクタ候補は、判定された1つ又は複数の制御ポイント動きベクトル及び参照ピクチャを有する。
【0015】
[15] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、方法は、エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて判定された1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルに基づいて、1つ又は複数の基準に従って空間的隣接ブロックの少なくとも1つの選択されたトリプレットを評価することを更に有することができると共に、この場合には、プレディクタ候補は、評価に基づいてインターコーディングモード用のプレディクタ候補の組内においてソートされている。
【0016】
[16] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、1つ又は複数の基準は、式3による有効性チェック及び式4による費用を有する。
【0017】
[17] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、双方向プレディクタ候補の費用は、その第1参照ピクチャリストに関係する費用とその第2参照ピクチャリストに関係する費用の平均である。
【0018】
[18] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、方法は、隣接する上部左コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部左リスト、隣接する上部右コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックの上部右リストを判定することと、空間的隣接ブロックの少なくとも1つのペアを選択することであって、ペアのそれぞれの空間的隣接ブロックは、それぞれ、前記上部左リスト及び前記上部右リストに属しており、且つ、前記ペアのそれぞれの空間的隣接ブロックの予測のために使用される参照ピクチャは、同一である、ことと、エンコーディング又はデコーディングされるブロックについて、上部左リストの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報に基づいてブロックの上部左コーナー用の制御ポイント動きベクトル、上部左リストの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報に基づいてブロックの上部左コーナー用の制御ポイント動きベクトルを判定することであって、プレディクタ候補は、前記上部左及び上部右制御ポイント動きベクトル及び参照ピクチャを有する、ことと、を更に有することができる。
【0019】
[19] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、下部左リストが、上部右リストの代わりに使用されており、下部左リストは、隣接する下部左コーナーブロックのうちのエンコーディング又はデコーディングされるブロックの空間的隣接ブロックを有し、且つ、下部左制御ポイント動きベクトルが判定されている。
【0020】
[20] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、モーションモデルは、アファインモデルであり、且つ、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの内側のそれぞれの位置(x,y)におけるモーションフィールドは、次式により、判定されている。
【数1】
【0021】
[21] ここで(v0x,v0y)及び(v2x,v2y)は、モーションフィールドを生成するべく使用される制御ポイント動きベクトルであり、(v0x,v0y)は、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの上部左コーナーの制御ポイント動きベクトルに対応しており、(v2x,v2y)は、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの下部左コーナーの制御ポイント動きベクトルに対応しており、且つ、hは、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの高さである。
【0022】
[22] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、方法は、エンコーディング又はデコーディングされるブロック用に使用されるモーションモデルの通知をエンコーディング又は取得することを更に有していてもよく、前記モーションモデルは、上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び下部左コーナーの制御ポイント動きベクトルに基づいており、或いは、前記モーションモデルは、上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び上部右コーナーの制御ポイント動きベクトルに基づいている。
【0023】
[23] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、エンコーディング又はデコーディングされるブロック用に使用されるモーションモデルは、黙示的に導出され、前記モーションモデルは、上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び下部左コーナーの制御ポイント動きベクトルに基づいており、或いは、前記モーションモデルは、上部左コーナーの制御ポイント動きベクトル及び上部右コーナーの制御ポイント動きベクトルに基づいている。
【0024】
[24] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、対応するモーションフィールドに基づいてブロックをデコーディング又はエンコーディングすることは、それぞれ、サブブロック用のプレディクタに基づいてデコーディング又はエンコーディングすることを有し、プレディクタは、動きベクトルによって通知されている。
【0025】
[25] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、空間的隣接ブロックの数は、少なくとも5つ又は少なくとも7つである。
【0026】
[26] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、先行する説明のうちの任意のものの方法又は装置に従って生成されるデータコンテンツを含む、一時的ではないコンピュータ可読媒体が提示されている。
【0027】
[27] 少なくとも1つの実施形態の別の一般的な態様によれば、先行する説明のうちの任意のものの方法又は装置に従って生成されたビデオデータを有する信号が提供されている。
【0028】
[28] また、本実施形態のうちの1つ又は複数は、上述の方法のうちの任意のものに従ってビデオデータをエンコーディング又はデコーディングするための命令をその上部において保存された状態において有するコンピュータ可読ストレージ媒体を提供している。また、本実施形態は、上述の方法に従って生成されたビットストリームをその上部において保存された状態において有するコンピュータ可読ストレージ媒体を提供している。また、本実施形態は、上述の方法に従って生成されたビットストリームを送信するための方法及び装置を提供している。また、本実施形態は、記述されている方法のうちの任意のものを実行するための命令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提供している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
図1】[29]HEVC(High Efficiency Video Coding)ビデオエンコーダの一実施形態のブロック図を示す。
図2A】[30]HEVCの基準サンプルの生成を描く描画例である。
図2B】[31]HEVCにおけるイントラ予測方向を描く描画例である。
図3】[32]HEVCビデオデコーダの一実施形態のブロック図を示す。
図4】[33]圧縮されたHEVCピクチャを表すためのコーディングツリーユニット(CTU:Coding Tree Unit)及びコーディングツリー(CT:Coding Tree)概念の一例を示す。
図5】[34]コーディングユニット(CU:Coding Unit)、予測ユニット(PU:Prediction Unit)、及び変換ユニット(TU:Transform Unit)へのコーディングツリーユニット(CTU)の分割の一例を示す。
図6】[35]JEM(Joint Exploration Model)において使用されるモーションモデルとしてのアファインモデルの一例を示す。
図7】[36]JEM(Joint Exploration Model)において使用される4×4サブCUに基づいたアファイン動きベクトルフィールドの一例を示す。
図8A】[37]アファインインターCU用の動きベクトル予測候補の一例を示す。
図8B】[38]アファインマージモードにおける動きベクトル予測候補の一例を示す。
図9】[39]アファインマージモードモーションモデルのケースにおけるアファイン制御ポイント動きベクトルの空間的導出の一例を示す。
図10】[40]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様による例示用のエンコーディング方法を示す。
図11】[41]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様によるエンコーディング方法の別の例を示す。
図12】[42]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様によるアファインマージモードCU用の動きベクトル予測候補の一例を示す。
図13】[43]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様によるモーションモデルとしてのアファインモデル及びその対応する4×4サブCUに基づいたアファイン動きベクトルフィールドの一例を示す。
図14】[44]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様によるモーションモデルとしてのアファインモデル及びその対応する4×4サブCUに基づいたアファイン動きベクトルフィールドの別の例を示す。
図15】[45]JEMにおけるCUのアファインマージモードを評価するための既知のプロセス/シンタックスの一例を示す。
図16】[46]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様による例示用のデコーディング方法を示す。
図17】[47]少なくとも1つの実施形態の一般的な態様によるエンコーディング方法の別の例を示す。
図18】[48]実施形態の様々な態様が実装されうる例示用の装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
[49] 図及び説明は、わかりやすさを目的として、通常のコーディング及び/又はデコーディング装置において見出される多くのその他の要素を除去しつつ、本原理の明瞭な理解のために適する要素を示すべく、簡略化されていることを理解されたい。「第1(first)」及び「第2(second)」という用語は、様々な要素を記述するべく、本明細書において使用されている場合があるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるものではないことを理解されたい。これらの用語は、要素を相互に弁別するべく使用されるものに過ぎない。
【0031】
[50] 様々な実施形態は、HEVC規格との関係において記述されている。但し、本原理は、HEVCに限定されるものではなく、且つ、例えば、フォーマットレンジ(RExt)、スケーラビリティ(SHVC)、マルチビュー(MV-HEVC)拡張版、及びH.266のような、HEVC又はHEVC拡張版を含む、その他の規格、推奨、及びその拡張版に適用することができる。様々な実施形態は、スライスのエンコーディング/デコーディングとの関係において記述されている。これらは、ピクチャの全体又はピクチャのシーケンスの全体をエンコーディング/デコーディングするべく適用することができる。
【0032】
[51] 様々な方法が上述されており、且つ、方法のそれぞれは、記述されている方法を実現するための1つ又は複数のステップ又はアクションを有する。ステップ又はアクションの特定の順序が方法の適切な動作のために必要とされていない限り、特定のステップ及び/又はアクションの順序及び/又は使用法は、変更されてもよく、或いは、組み合わせられてもよい。
【0033】
[52] 図1は、例示用の高効率ビデオコーディング(HEVC)エンコーダ100を示している。HEVCは、Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)によって開発された圧縮規格である(例えば、“ITU-T H.265 TELECOMMUNICATION STANDARDIZATION SECTOR OF ITU (10/2014), SERIES H: AUDIOVISUAL AND MULTIMEDIA SYSTEMS, Infrastructure of audiovisual services - Coding of moving video, High efficiency video coding, Recommendation ITU-T H.265”を参照されたい)。
【0034】
[53] HEVCにおいては、1つ又は複数のピクチャを有するビデオシーケンスをエンコーディングするべく、ピクチャは、1つ又は複数のスライスにパーティション化されており、この場合に、それぞれのスライスは、1つ又は複数のスライスセグメントを含みうる。スライスセグメントは、コーディングユニット、予測ユニット、及び変換ユニットとして編成される。
【0035】
[54] 本出願においては、「再構築された(reconstructed)」及び「デコーディングされた(decoded)」という用語は、相互交換可能に使用されてもよく、「エンコーディングされた(encoded)」又は「コーディングされた(coded)」という用語も、相互交換可能に使用されてもよく、且つ、「ピクチャ(picture)」及び「フレーム(frame)」という用語も、相互交換可能に使用されてもよい。通常、「再構築された」という用語は、エンコーダ側において使用される一方において、「デコーディングされた」という用語は、デコーダ側において使用されているが、これは、必須ではない。
【0036】
[55] HEVC仕様は、「ブロック」と「ユニット」の間を弁別しており、この場合に、「ブロック」は、サンプルアレイ内の特定のエリア(例えば、luma、Y)をアドレス指定しており、且つ、「ユニット」は、すべてのエンコーディングされた色成分(Y、Cb、Cr、又はモノクローム)、シンタックス要素、及びブロックと関連する予測データ(例えば、動きベクトル)の一纏めにされたブロックを含む。
【0037】
[56] コーディングの場合には、ピクチャは、構成可能なサイズを有する正方形形状のコーディングツリーブロック(CTB:coding three block)としてパーティション化され、且つ、コーディングツリーブロックの連続的な組は、スライスとしてグループ化される。コーディングツリーユニット(CTU)は、エンコーディングされた色成分のCTBを含む。CTBは、コーディングブロック(CB:Coding Block)内への四分木パーティション化(quadtree partitioning)のルートであり、且つ、コーディングブロックは、1つ又は複数の予測ブロック(PB:Prediction Block)としてパーティション化されてもよく、且つ、変換ブロック(TB:Transform Block)内への四分木パーティション化のルートを形成している。コーディングブロック、予測ブロック、及び変換ブロックに対応することにより、コーディングユニット(CU)は、予測ユニット(PU)及び変換ユニット(TU)のツリー構造化された組を含み、PUは、すべての色成分用の予測情報を含み、且つ、TUは、それぞれの色成分用の残留コーディングシンタックス構造を含む。luma成分のCB、PB、及びTBのサイズは、対応するCU、PU、及びTUに適用される。本出願においては、「ブロック」という用語は、例えば、CTU、CU、PU、TU、CB、PB、及びTBのうちの任意のものを意味するべく使用されうる。また、これに加えて、「ブロック」は、H.264/AVC又はその他のビデオコーディング規格において規定されているマクロブロック及びパーティションを意味するべく、且つ、更に一般的には、様々なサイズのデータのアレイを意味するべく、使用されうる。
【0038】
[57] 例示用のエンコーダ100においては、ピクチャは、後述するように、エンコーダ要素により、エンコーディングされている。エンコーディング対象のピクチャは、CUのユニット内において処理されている。それぞれのCUは、イントラ又はインターモードを使用することにより、エンコーディングされている。CUは、イントラモードにおいてエンコーディングされる際には、イントラ予測(160)を実行している。インターモードにおいては、モーション推定(175)及び補償(170)が実行されている。エンコーダは、CUのエンコーディングのために使用するべく、イントラモード又はインターモードのうちの1つを決定しており(105)、且つ、予測モードフラグにより、イントラ/インター決定を通知している。予測残差は、オリジナルの画像ブロックから、予測されるブロックを減算することにより(110)、算出されている。
【0039】
[58] イントラモードにおけるCUは、同一のスライス内の再構築された隣接サンプルから予測されている。HEVCにおいては、1つのDC予測モード、プレーナー予測モード、及び33個の角度予測モードを含む、35個のイントラ予測モードの組が利用可能である。イントラ予測基準は、現時点のブロックに隣接する行及び列から再構築される。基準は、予め再構築されたブロックからの利用可能なサンプルを使用することにより、水平及び垂直方向において、ブロックサイズの2倍にわたって延在している。角度予測モードがイントラ予測のために使用される際には、基準サンプルは、角度予測モードによって通知される方向に沿って複写することができる。
【0040】
[59] 現時点のブロック用の適用可能なlumaイントラ予測モードは、2つの異なる選択肢を使用することにより、コーディングすることができる。適用可能なモードが、3つの最も確率の高いモード(MPM:most probable mode)の構築されたリスト内に含まれている場合には、モードは、MPMリスト内において、インデックスにより、シグナリングされる。さもなければ、モードは、モードインデックスの固定長の二値化により、シグナリングされる。3つの最も確率の高いモードは、上部及び左隣接ブロックのイントラ予測モードから導出されている。
【0041】
[60] インターCUの場合には、対応するコーディングブロックは、1つ又は複数の予測ブロックとして更にパーティション化されている。インター予測は、PBレベルにおいて実行され、且つ、対応するPUは、インター予測が実行される方式に関する情報を含む。モーション情報(即ち、動きベクトル及び参照ピクチャインデックス)は、2つの方法、即ち、「マージモード」及び「高度動きベクトル予測(AMVP)」、により、シグナリングすることができる。
【0042】
[61] マージモードにおいては、ビデオエンコーダ又はデコーダは、既にコーディング済みのブロックに基づいて候補リストを編集し、且つ、ビデオエンコーダは、候補リスト内の候補のうちの1つのもの用のインデックスをシグナリングする。デコーダ側においては、シグナリングされた候補に基づいて、動きベクトル(MV:motion vector)及び参照ピクチャインデックスが再構築されている。
【0043】
[62] マージモードにおける可能な候補の組は、空間的隣接候補、時間的候補、及び生成された候補から構成されている。図2Aは、現時点のブロック21用0の5つの空間的候補{a,b,b,a,b}の位置を示しており、この場合に、a及びaは、現時点のブロックの左側に位置しており、且つ、b、b、bは、現時点のブロックの上部に位置している。それぞれの候補位置ごとに、利用可能性が、a、b、b、a、bの順序に従ってチェックされ、且つ、次いで、候補内の冗長性が除去される。
【0044】
[63] 時間的候補の導出のために、参照ピクチャ内の一纏めにされた場所の動きベクトルを使用することができる。適用可能な参照ピクチャは、スライスに基づいて選択されると共にスライスヘッダ内において通知され、且つ、時間的候補用の基準インデックスがiref=0に設定される。一纏めにされたPUのピクチャと一纏めにされたPUがそれから予測された参照ピクチャの間のPOC距離(td)が、現時点のピクチャと一纏めにされたPUを含む参照ピクチャの間の距離(tb)と同一である場合には、一纏めにされた動きベクトルmvcolを時間的候補として直接的に使用することができる。さもなければ、スケーリングされた動きベクトルtb/td*mvcolが、時間的候補として使用される。現時点のPUが配置されている場所に応じて、現時点のPUの下部右又は中心におけるサンプル場所により、一纏めにされたPUが判定される。
【0045】
[64] マージ候補の最大数Nは、スライスヘッダ内において規定されている。マージ候補の数がN超である場合には、最初のN-1個の空間的候補及び時間的候補のみが使用される。そうではなくて、マージ候補の数がN未満である場合には、候補の組は、既に存在している候補の組合せとしての生成された候補により、或いは、ヌル候補により、最大数Nまで充填される。マージモードにおいて使用される候補は、本出願においては、「マージ候補」と呼称されている場合がある。
【0046】
[65] CUがスキップモードを通知している場合には、マージ候補用の適用可能なインデックスは、マージ候補のリストが1超である場合にのみ、通知され、且つ、更なる情報は、CUについては、コーディングされない。スキップモードにおいては、動きベクトルは、残差更新を伴うことなしに適用されている。
【0047】
[66] AMVPにおいては、ビデオエンコーダ又はデコーダは、既にコーディング済みのブロックから判定された動きベクトルに基づいて候補リストを編集している。次いで、ビデオエンコーダは、動きベクトルプレディクタ(MVP:motion vector predictor)を識別するべく、候補リスト内においてインデックスをシグナリングし、且つ、動きベクトル差(MVD:motion vector difference)をシグナリングしている。デコーダ側においては、動きベクトル(MV)は、MVP+MVDとして再構築される。また、適用可能な参照ピクチャインデックスは、AMVP用のPUシンタックスにおいて明示的にコーディングされている。
【0048】
[67] AMVPにおいては、2つの空間的モーション候補のみが選択されている。第1空間的モーション候補は、2つの組内において通知されているサーチ順序を維持しつつ、左位置{a,a}から選択され、且つ、第2のものは、上方位置{b,b,b}から選択されている。動きベクトル候補の数が2に等しくない場合には、時間的MV候補を含むことができる。候補の組が依然として十分に充填されていない場合には、ゼロ動きベクトルが使用される。
【0049】
[68] 空間的候補の参照ピクチャインデックスが、現時点のPU用の参照ピクチャインデックスに対応している(即ち、参照ピクチャリストとは独立的に、同一の参照ピクチャインデックスを使用している、或いは、両方の長期参照ピクチャを使用している)場合には、空間的候補動きベクトルが直接的に使用される。そうではなくて、両方の参照ピクチャが短期のものである場合には、候補動きベクトルは、現時点のピクチャと現時点のPUの参照ピクチャの間の距離(tb)及び現時点のピクチャと空間的候補の参照ピクチャの間の距離(td)に従って、スケーリングされる。AMVPにおいて使用されている候補は、本出願においては、「AMVP候補」と呼称される場合がある。
【0050】
[69] 表記の容易性を目的として、エンコーダ側において「マージ」モードによって試験されたブロック又はデコーダ側において「マージ」モードによってデコーディングされたブロックは、「マージブロック」として表記され、且つ、エンコーダ側においてAMVPモードによって試験されたブロック又はデコーダ側においてAMVPモードによってデコーディングされたブロックは、「AMVP」ブロックと表記される。
【0051】
[70] 図2Bは、AMVPを使用した例示用の動きベクトル表現を示している。エンコーディング対象の現時点のブロック240の場合には、動きベクトル(MVcurrent)は、モーション推定を通じて取得することができる。左ブロック230からの動きベクトル(MVleft)及び上方ブロック220からの動きベクトル(MVabove)を使用することにより、MVleft及びMVaboveから、MVPcurrentとして、動きベクトルプレディクタを選択することができる。次いで、動きベクトル差をMVDcurrent=MVcurrent-MVPcurrentとして算出することができる。
【0052】
[71] 予測用の1つ又は複数の参照ピクチャを使用することにより、動き補償予測を実行することができる。P個のスライスにおいては、単一の予測基準のみをインター予測のために使用することにより、予測ブロック用の単方向予測を可能にすることができる。B個のスライスにおいては、2つの参照ピクチャリストが利用可能であり、且つ、単方向予測又は双方向予測を使用することができる。双方向予測においては、参照ピクチャリストのそれぞれからの1つの参照ピクチャが使用される。
【0053】
[72] HEVCにおいては、動き補償用のモーション情報の精度は、luma成分の場合には、4分の1サンプルであり(4分の1ペル又は1/4ペルとも呼称される)、且つ、4:2:0構成用のクロマ成分の場合には、8分の1サンプルである(1/8ペルとも呼称される)。lumaの場合には、7タップ又は8タップ補間フィルタが、端数のサンプル位置の補間のために使用され、即ち、水平方向及び垂直方向の両方におけるフルサンプル場所の1/4、1/2、及び3/4をアドレス指定することができる。
【0054】
[73] 次いで、予測残差が変換され(125)、且つ、量子化されている(130)。ビットストリームを出力するべく、量子化された変換係数のみならず、動きベクトル及びその他のシンタックス要素も、エントロピーコーディングされる(145)。また、エンコーダは、変換をスキップすることができると共に、4×4TU方式により、量子化を変換されていない残留信号に対して直接的に適用することができる。また、エンコーダは、変換及び量子化の両方をバイパスしてもよく、即ち、変換又は量子化プロセスの適用を伴うことなしに、残差が直接的にコーディングされる。直接的なPCMコーディングにおいては、予測が適用されず、且つ、コーディングユニットサンプルが、ビットストリーム内に直接的にコーディングされている。
【0055】
[74] エンコーダは、更なる予測用の基準を提供するべく、エンコーディング済みのブロックをデコーディングしている。予測残差をデコーディングするべく、量子化された変換係数が、逆量子化され(140)、且つ、逆変換される(150)。デコーディングされた予測残差及び予測されたブロックを組み合わせることにより(155)、画像ブロックが再構築されている。例えば、エンコーディングアーチファクトを低減するために、デブロッキング/SAO(Sample Adaptive Offset)フィルタリングを実行するべく、インループフィルタ(165)が、再構築済みのピクチャに適用されている。フィルタリング済みの画像は、参照ピクチャバッファにおいて保存されている(180)。
【0056】
[75] 図3は、例示用のHEVCビデオデコーダ300のブロック図を示している。例示用のデコーダ300においては、ビットストリームは、後述するデコーダ要素により、デコーディングされている。ビデオデコーダ300は、一般に、ビデオデータのエンコーディングの一部分としてビデオデコーディングを実行する、図1において記述されているエンコーディングパスとは反対のデコーディングパスを実行している。
【0057】
[76] 具体的には、デコーダの入力は、ビデオエンコーダ100によって生成されうるビデオビットストリームを含む。ビットストリームは、変換効率、動きベクトル、及びその他のコーディング済みの情報を取得するべく、まずは、エントロピーデコーディングされている(330)。予測残差をデコーディングするべく、変換係数が、逆量子化され(340)、且つ、逆変換されている(350)。デコーディングされた予測残差及び予測されたブロックを組み合わせることにより(355)、画像ブロックが再構築されている。予測されたブロックは、イントラ予測(360)又は動き補償された予測(即ち、インター予測)(375)から取得することができる(370)。上述のように、基準ブロックのサブ整数サンプル用の補間された値を算出するべく補間フィルタを使用しうる動き補償用の動きベクトルを導出するべく、AMVP及びマージモード技法を使用することができる。インループフィルタ(365)が、再構築された画像に適用されている。フィルタリング済みの画像は、参照ピクチャバッファ(380)において保存される。
【0058】
[77] 上述のように、HEVCにおいては、ビデオの連続的なピクチャの間に存在している冗長性を活用するべく、動き補償された時間的予測が使用されている。これを実行するべく、動きベクトルは、それぞれの予測ユニット(PU)と関連付けられている。上述のように、それぞれのCTUは、圧縮されたドメインにおいて、コーディングツリーによって表されている。これは、CTUの四分木分割であり、この場合に、それぞれのリーフは、コーディングユニット(CU)と呼称され、且つ、CTU410及び420について、図4においても示されている。次いで、それぞれのCUには、予測情報として、いくつかのイントラ又はインター予測パラメータが付与されている。これを実行するべく、CUは、1つ又は複数の予測ユニット(PU)として空間的にパーティション化されてもよく、この場合に、それぞれのPUには、なんらかの予測情報が割り当てられている。イントラ又はインターコーディングモードが、CUレベルにおいて割り当てられている。これらの概念は、図5において、例示用のCTU500及びCU510について更に示されている。
【0059】
[78] HEVCにおいては、1つの動きベクトルが、それぞれのPUに対して割り当てられている。この動きベクトルは、対象のPUの動き補償された時間的予測のために使用される。従って、HEVCにおいては、予測されたブロック及びその基準ブロックをリンクするモーションモデルは、基準ブロック及び対応する動きベクトルに基づいた平行移動又は計算から構成されている。
【0060】
[79] HEVCに対して改善を実施するべく、基準ソフトウェア及び/又は文献であるJEM(Joint Exporation Model)が、Joint Video Exploration Team(JVET)によって開発されている。1つのJEMバージョン(即ち、“Algorithm Description of Joint Exploration Test Model 5”, Document JVET-E1001_v2, Joint Video Exploration Team of ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, 5rd meeting, 12-20 January 2017, Geneva, CH)においては、時間的予測を改善するべく、いくつかの更なるモーションモデルがサポートされている。これを実行するべく、PUをサブPUに空間的に分割することが可能であり、且つ、専用の動きベクトルをそれぞれのサブPUに割り当てるべく、モデルを使用することができる。
【0061】
[80] JEMの更に最近のバージョン(例えば、“Algorithm Description of Joint Exploration Test Model 2”, Document JVET-B1001_v3, Joint Video Exploration Team of ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, 2rd meeting, 20-26 February 2016, San Diego, USA”)においては、CUは、もはや、PU又はTUに分割されるものとして規定されてはいない。その代わりに、相対的に柔軟なCUサイズが使用されてもよく、且つ、なんらかのモーションデータがそれぞれのCUに直接的に割り当てられている。JEMの相対的に新しいバージョンにおける、この新しいコーデック設計においては、CUは、サブCUに分割することができると共に、分割されたCUのそれぞれのサブCUについて、動きベクトルを演算することができる。
【0062】
[81] JEMにおいて導入された新しいモーションモデルの1つは、CU内の動きベクトルを表すための、モーションモデルとしてのアファインモデルの使用である。使用されるモーションモデルが、図6において示され、且つ、以下において示される式1により、表されている。アファインモーションフィールドは、図6の対象のブロック600の内側のそれぞれの位置(x,y)において以下の動きベクトルコンポーネント値を有しており、
【数2】
この場合に、
【数3】
及び
【数4】
は、対応するモーションフィールドを生成するべく使用される制御ポイント動きベクトル(CPMV)であり、(v0x,v0y)は、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの上部左コーナーの制御ポイント動きベクトルに対応し、(v1x,v1y)は、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの上部右コーナーの制御ポイント動きベクトルに対応し、且つ、wは、エンコーディング又はデコーディングされるブロックの幅である。
【0063】
[82] 複雑さを低減するべく、動きベクトルは、図7に示されているように、対象のCU700のそれぞれの4×4サブブロック(サブCU)ごとに、演算されている。アファイン動きベクトルは、それぞれのサブブロックのそれぞれの中心位置ごとに、制御ポイント動きベクトルから演算されている。得られたMVは、1/16ペルの精度において表されている。この結果、アファインモードにおけるコーディングユニットの補償は、その独自の動きベクトルによるそれぞれのサブブロックの動き補償された予測を有する。サブブロック用のこれらの動きベクトルは、図7のサブブロックのそれぞれにごとに矢印として個別に示されている。
【0064】
[83] アファイン動き補償は、JEMにおいては、アファインAMVP(AF_AMVP)モード及びアファインマージモードという、2つの方式により、使用することができる。以下の節においては、これらについて紹介する。
【0065】
[84] アファインAMVPモード:アファインAMVPモードにおいては、そのサイズが8×8超であるAMVPモードにおけるCUを予測することができる。これは、ビットストリーム内のフラグを通じてシグナリングされる。このAMVP-CU用のアファインモーションフィールドの生成は、制御ポイント動きベクトル(CPMV)を判定することを含み、これらのCPMVは、動きベクトル差及び制御動きベクトル予測(CPMVP)の追加を通じて、エンコーダ又はデコーダにより、取得される。CPMVPは、エンコーディング又はデコーディングされる現時点のCU800について図8Aに示されている組(A,B,C)及び(D,E)からそれぞれ取得された、動きベクトル候補のペアである。
【0066】
[85] アファインマージモード:アファインマージモードにおいては、CUレベルのフラグが、マージCUがアファイン動き補償を利用しているかどうかを通知している。利用している場合には、アファインモードにおいてコーディングされた最初の利用可能隣接CUが、エンコーディング又はデコーディングされる現時点のCU880用の図8Bの候補位置A、B、C、D、Eの順序付けされた組のうちにおいて選択される。JEMにおける候補位置の、この順序付けされた組は、図2Aにおいて示されている、且つ、上述した、HEVCのマージモードにおける空間的隣接候補と同一であることに留意されたい。
【0067】
[86] アファインモードにおける最初の隣接CUが取得されたら、隣接アファインCUの上部左、上部右、及び下部左コーナーからの3つのCPMV
【数5】
が、取得又は算出される。例えば、図9は、アファインモードにおけるこの最初の判定された隣接CU910が、エンコーディング又はデコーディングされる現時点のCU900の場合に、図8BのA位置にあることを示している。隣接CU910のこれら3つのCPMVに基づいて、現時点のCU900の上部左及び上部右コーナーの2つのCPMVは、以下のように導出される。
【数6】
【0068】
[87] 現時点のCUの制御ポイント動きベクトルである
【数7】
及び
【数8】
が取得された際に、エンコーディング又はデコーディングされる現時点のCUの内側のモーションフィールドは、図6との関連において上述したように、式1のモデルを通じて、4×4サブCU方式により、演算される。
【0069】
[88] 従って、少なくとも1つの実施形態の一般的な一態様は、対象のビデオコーデックの圧縮性能が改善されうるように、JEMにおけるアファインマージモードの性能を改善することを目的としている。従って、少なくとも1つの実施形態においては、改善された動き補償装置及び方法が、アファインマージモードにおいてコーディングされたコーディング/デコーディングユニットについて提示されている。提案されている改善されたアファインモードは、隣接CUがアファインモードにおいてコーディングされているかどうかとは無関係に、アファインマージモードにおいてプレディクタ候補の組を判定することを含む。
【0070】
[89] 上述のように、現時点のJEMにおいては、アファインマージモードにおいてエンコーディング又はデコーディングされる現時点のCUと関連するアファインモーションモデルを予測するべく、取り囲んでいるCUのうちのアファインモードにおいてコーディングされた第1隣接CUが選択されている。即ち、アファインマージモードにおいて現時点のCUのアファインモーションモデルを予測するべく、アファインモードにおいてコーディングされた図8Bの順序付けされた組(A,B,C,D,E)のうちの第1の隣接CU候補が選択される。
【0071】
[90] 従って、少なくとも1つの実施形態は、アファインマージ予測候補を改善し、これにより、CPMVPとして使用される隣接ブロックの動きベクトルから新しいモーションモデル候補を生成することにより、アファインマージモードにおいて現時点のCUをコーディングする際に、最良のコーディング効率を提供している。また、シグナリングされたインデックスからプレディクタを取得するべくマージにおいてデコーディングする際には、CPMVPとして使用される隣接ブロックの動きベクトルから生成された、対応する新しいモーションモデル候補も、判定されている。従って、一般的なレベルにおいて、この実施形態の改善は、例えば、
・隣接CUがアファインモードにおいて(エンコーダ/デコーダについて)コーディングされるかどうかとは無関係に、隣接CUモーション情報に基づいて、単方向又は双方向アファインマージプレディクタ候補の組を構築すること、
・例えば、(エンコーダ/デコーダについて)上部左(TL)ブロック及び上部右(TR)又は下部左(BL)などの、2つの隣接ブロックのみから制御ポイント動きベクトルを選択することにより、アファインマージプレディクタ候補の組を構築すること、
・プレディクタ候補を評価する際に、(エンコーダ/デコーダについて)双方向プレディクタ候補との比較において単方向プレディクタ候補用のペナルティを追加すること、
・(エンコーダ/デコーダについて)隣接ブロックがアファインコーディングされている場合にのみ、隣接ブロックを追加すること、
・及び/又は、
・(エンコーダ/デコーダについて)現時点のCUの制御ポイント動きベクトルプレディクタ用に使用されるモーションモデルの通知をシグナリング/デコーディングすること、
を有する。
【0072】
[91] マージモードに基づいたエンコーディング/デコーディング方法について記述されているが、本原理は、AMVP(即ち、アファイン_インター)モードにも適用される。有利には、プレディクタ候補の生成用の様々な実施形態は、アファインAMVPについて明白に導出可能である。
【0073】
[92] 本原理は、有利には、図1のモーション推定モジュール175及び動き補償モジュール170内のエンコーダ内において、或いは、図2の動き補償モジュール275内のデコーダ内において、実装される。
【0074】
[93] 従って、図10は、少なくとも1つの実施形態の一般的な一態様による例示用のエンコーディング方法1000を示している。1010において、方法1000は、ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定している。例えば、図12に示されているように、A、B、C、D、E、F、Gのうちの、エンコーディングされるブロックCUの隣接ブロックが判定される。1020において、方法1000は、ピクチャ内のエンコーディングされるブロックについて、空間的隣接ブロックからアファインマージモード用のプレディクタ候補の組を判定している。このような判定用の更なる詳細については、図11との関係において以下に付与されている。JEMアファインマージモードにおいては、アファインモードにおいてコーディングされた、図12において表されている、順序付けされたリストF、D、E、G、Aからの第1隣接ブロックが、プレディクタとして使用されている一方で、本実施形態の一般的な一態様によれば、複数のプレディクタ候補が、アファインマージモードについて評価されており、この場合に、隣接ブロックは、隣接ブロックがアファインモードにおいてコーディングされているかどうかとは無関係に、プレディクタ候補として使用することができる。本実施形態の特定の一態様によれば、プレディクタ候補は、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する。参照ピクチャは、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルとの関係における動き補償に基づいた少なくとも1つの空間的隣接ブロックの予測のために使用されている。参照ピクチャ及び1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルは、空間的隣接ブロックのうちの少なくとも1つと関連するモーション情報から導出されている。当然のことながら、動き補償予測は、単方向又は双方向予測に従って、予測用の1つ又は2つの参照ピクチャを使用することにより、実行することができる。従って、(非アファインモード、即ち、1つの動きベクトルを有する平行移動モード、のケースにおける)参照ピクチャ及び動きベクトル/(アファインモードのケースにおける)制御ポイント動きベクトルがそれから導出されたモーション情報を保存するべく、2つの参照ピクチャリストが利用可能である。非アファインモーション情報のケースにおいては、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルは、空間的隣接ブロックの動きベクトルに対応している。アファインモーション情報のケースにおいては、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルは、例えば、空間的隣接ブロックの制御ポイント動きベクトルである
【数9】
及び
【数10】
に対応している。有利には、本実施形態においては、動き補償が改善されており、その理由は、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報が非アファインモーション情報を更に有しているからである。1030において、方法1000は、エンコーディングされるブロックについて、それぞれのプレディクタ候補の1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルに基づいて、プレディクタ候補用のモーションモデルに基づいたモーションフィールドを判定しており、この場合に、モーションフィールドは、エンコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している。1040において、方法1000は、それぞれのプレディクタ候補について判定されたモーションフィールドに応答して、予測に関するレート歪判定に基づいてプレディクタ候補の組からプレディクタ候補を選択している。実際に、アファインマージモードについて、図15において、後から開示されるように、1040において、方法1000は、1つ又は複数の基準に従って、且つ、対応するモーションフィールドに基づいて、プレディクタ候補を選択している。例えば、方法1000は、1030において判定されたモーションフィールドを使用することにより、アファインマージモードにおいてブロックをエンコーディングするためのレート歪費用を推定すると共に、レート歪費用を選択されたプレディクタ候補との関連において保存している。方法は、プレディクタ候補の組のすべてのプレディクタ候補について推定を反復している。方法1000は、評価、即ち、レート歪判定、に基づいて、プレディクタ候補の組からプレディクタ候補を選択している。例えば、エンコーディングされるブロックについて最低のレート歪費用を提供するプレディクタ候補が選択される。当然のことながら、ここでは詳述されていない一変形においては、その選択されたプレディクタ用のアファインマージコーディングモードは、エンコーディング対象のブロックのコーディングモードを判定するべく、更なるRD競争に晒されている。1050において、方法1000は、1040において選択されたプレディクタ候補に基づいてブロックをエンコーディングしている。1060において、方法1000は、1040において選択されたプレディクタ候補のインデックスをエンコーディングしている。このインデックスは、プレディクタ候補の組からプレディクタ候補を取得するべく、デコーダによって使用される。
【0075】
[94] 図11は、特に、隣接ブロックが非アファインモーション情報を有する際に適合された、少なくとも1つの実施形態の一態様による、エンコーディング方法1000のマージモード用のプレディクタ候補の組の判定1020の例示用の詳細を示している。但し、方法は、アファインモーション情報を有する隣接ブロックとの間において互換性を有している。当業者は、隣接ブロックがアファインモデルによってコーディングされているケースにおいては、図9を参照して先程詳述したように、アファインモード用のプレディクタ候補を判定するべく、アファインコーディングされた隣接ブロックのモーションモデルが使用されうることを理解するであろう。1021において、エンコーディング対象のブロックのうちの少なくとも1つの隣接ブロックを考慮することにより、エンコーディング対象のブロックとの関係においてブロックの空間的位置に基づいて、3つのリストが判定されている。例えば、図12のブロックA、B、C、D、E、F、Gを考慮することにより、隣接する上部左コーナーブロックA、B、Cを有する、上部左リストと呼称される、第1リストが生成され、隣接する上部右コーナーブロックD、Eを有する、上部右リストと呼称される、第2リストが生成され、且つ、隣接する下部左コーナーブロックF、Gを有する、第3リストが生成される。少なくとも1つの実施形態の第1の態様によれば、空間的隣接ブロックのトリプレットが選択されており、この場合に、トリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックは、個々に、上部左リスト、上部右リスト、及び下部左リストに属しており、且つ、この場合に、前記トリプレットのそれぞれの空間的隣接ブロックの予測について使用される参照ピクチャは、同一である。従って、トリプレットは、{A,B,C}、{D,E}、{F,G}の選択に対応している。1022において、動き補償用のトリプレットのそれぞれの隣接ブロック用の同一の参照ピクチャの使用法に基づいて、12個の可能なトリプレット{A,B,C},{D,E},{F,G}のうちの第1の選択が適用されている。従って、トリプレットA、D、Fのみが選択されており、この場合に、(参照ピクチャリストにおいて、そのインデックスによって識別された)同一の参照ピクチャが、隣接ブロックA、D、及びFの予測のために使用されている。この第1の基準は、予測におけるコヒーレンスを保証している。1023において、現時点のCUの1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルである
【数11】
が、個々の隣接ブロックのモーション情報に基づいて取得されている。従って、エンコーディングされるブロックCUの上部左コーナーの制御ポイント動きベクトルである
【数12】
が、トリプレットの上部左隣接ブロック、即ち、A、B、又はC、のモーション情報に基づいて判定されている。エンコーディングされるブロックCUの上部右コーナーの制御ポイント動きベクトルである
【数13】
が、トリプレットの上部右隣接ブロック、即ち、D又はE、のモーション情報に基づいて判定されている。エンコーディングされるブロックCUの下部左コーナーの制御ポイント動きベクトルである
【数14】
が、トリプレットの下部左隣接ブロック、即ち、F又はG、のモーション情報に基づいて判定されている。エンコーディング対象のブロック用のプレディクタ候補として、隣接ブロックの異なる組合せが付与されている場合には、最大で12個のCPMVPが取得される。例えば、トリプレット内のブロックAが、アファインコーディングされていないケースにおいては、制御ポイント動きベクトルである
【数15】
は、(HEVCにおいて知られているように)ブロックAの動きベクトルである
【数16】
に基づいて導出され、即ち、
【数17】
である。ブロックAがアファインコーディングされている場合には、制御ポイント動きベクトルである
【数18】
は、例えば、式2によって記述されているように、ブロックAの制御ポイント動きベクトルに基づいて導出される。対応する隣接上部右及び下部左ブロックに基づいて現時点のCUの制御動きベクトルである
【数19】
及び
【数20】
を判定するべく、同一の原理が適用される。従って、第1の態様においては、3つの制御ポイント動きベクトルが、12個のCPMVPのうちのプレディクタ候補について生成される。当業者は、予測は、単方向又は双方向でありうることから、プレディクタ候補用の制御ポイント動きベクトルの判定は、それぞれの参照ピクチャリストL0及びL1について反復されることを理解するであろう。1025において、それぞれの候補用の(且つ、それぞれの参照ピクチャリストL0及びL1用の)これら3つのCPMVが、マージモードのためのCPMVP候補の組内において保存されている。一変形によれば、マージモード用のCPMVP候補の組内のCPMVP候補の数は、制限されており(例えば、5つのプレディクタ候補又は7つのプレディクタ候補)、従って、それぞれの候補用のCPMVは、組が一杯になっていない間に、トリプレットの既定の順序に従って判定されるのに伴って、保存されている。残りのトリプレットは、破棄される。
【0076】
[95] 1024においては、候補CPMVPのうちにおける任意選択の第2の選択が、1つ又は複数の基準に基づいて適用されている。第1基準に従って、候補CPMVPは、式3を使用した検証のために、高さH及び幅Wのエンコーディング対象のブロックについて更にチェックされており、且つ、この場合に、X及びYは、それぞれ、動きベクトルの水平方向及び垂直方向成分である。
【数21】
【0077】
[96] 従って、この変形においては、1025において、プレディクタ候補の組が一杯になっていない間は、これらの有効なCPMVPがマージモード用のCPMVP候補の組内において保存される。次いで、第2基準に従って、有効候補CPMVPは、(位置F又はGから取得される)下部左動きベクトルである
【数22】
の値に応じて、ソートされている。最も近接した
【数23】
は、
【数24】
と同一の位置における4×4サブブロック用のアファインモーションモデルによって付与されるベクトルに対するものであり、相対的に良好なものは、CPMVPである。この制約は、例えば、以下の式4によって実装される。
【数25】
【0078】
[97] 双方向予測のケースにおいては、式4を使用することにより、費用が、それぞれのCPMVP及びそれぞれの参照ピクチャリストL0及びL1について演算される。それぞれのプレディクタ双方向候補ごとに、単方向プレディクタ候補を双方向プレディクタ候補と比較するべく、CPMVPの費用は、そのリストL0に関係するCPMVP費用とそのリストL1に関係するCPMVP費用の平均である。この変形によれば、1025において、有効なCPMVPの順序付けされた組は、それぞれの参照ピクチャリストL0及びL1ごとに、マージモード用のCPMVP候補の組内において保存されている。
【0079】
[98] 図11に示されているエンコーディング方法1000のマージモード1020用のプレディクタ候補の組の判定の少なくとも1つの実施形態の第2の態様によれば、プレディクタ候補用の3つの制御モーションポイントベクトルを判定するための隣接ブロックのうちのトリプレットの使用の代わりに、判定は、2つの制御モーションポイントベクトルを判定するための隣接ベクトルのうちのペア、即ち、プレディクタ候補用の
【数26】
及び
【数27】
、或いは、
【数28】
及び
【数29】
を使用している。この場合にも、隣接ブロックの異なる組合せが付与された場合に、最大で12個のCPMVPが取得され、即ち、
【数30】
用の3に
【数31】
用の2を乗算したものと、
【数32】
用の3に
【数33】
用の2を乗算したものと、である。以前の態様におけると同様に、1022においては、(参照ピクチャリストにおいて、そのインデックスによって識別された)同一の参照ピクチャが、隣接ブロックA及びDの予測のために使用されているケースにおいては、ペア(例えば、A、D)が選択されている。1023においては、現時点のCUの2つの制御ポイント動きベクトルである
【数34】
及び
【数35】
が、ペアの個々の隣接するブロックA及びDのモーション情報に基づいて取得されている。従って、エンコーディングされるブロックCUの上部左コーナーの制御ポイント動きベクトルである
【数36】
が、ペアの上部左隣接ブロック、即ち、例においては、A、のモーション情報に基づいて判定される。エンコーディングされるブロックCUの上部右コーナーの制御ポイント動きベクトルである
【数37】
が、トリプレットの上部右隣接ブロック、即ち、この例においては、D、のモーション情報に基づいて判定される。式1から、本発明者らは、
【数38】
及び
【数39】
から
【数40】
を演算するべく、以下の式5を導出することができる。
【数41】
【0080】
[99] これに加えて、上部左リスト{A,B,C}及び下部左リスト{F,G}のうちのペアを考慮することにより、現時点のCUの2つの制御ポイント動きベクトルである
【数42】
及び
【数43】
が、ペアの上部左コーナー及び下部左コーナー隣接ブロックの個々の隣接ブロックのモーション情報に基づいて取得される。取得された
【数44】
及び
【数45】
に基づいて、本発明者らは、
【数46】
及び
【数47】
から
【数48】
を演算するべく、以下の式6を導出することができる。
【数49】
【0081】
[100] 式1によって記述されているように、且つ、図6及び図7において示されているように、標準的なアファインモーションモデルは、上部左及び上部右制御ポイント動きベクトルである
【数50】
及び
【数51】
に基づいていることから、2つの制御ポイント動きベクトルが上部左及び下部左CPMV
【数52】
及び
【数53】
である変形においては、図6及び図7において示されているように、CPMVを取得するべく、
【数54】
を演算する必要がある。但し、2つの制御ポイント動きベクトルが上部左及び上部右CPMV
【数55】
及び
【数56】
である変形においては、式5を使用した
【数57】
の演算は、破棄することができる。
【0082】
[101] これに加えて、2つのCPMVを判定するべく隣接ブロックのペアに基づいた第2の態様は、(式5又は式6による)第3CPMVが、第1の2つのCPMVとは独立的に判定されていないことから、その個々のCPMVに基づいたプレディクタ候補の評価1024とは互換性を有していないことに留意されたい。従って、式3の有効性チェック及び式4の費用関数は、スキップされ、且つ、1023において判定されたCPMVPは、なんらのソーティングをも伴うことなしに、アファインマージモードについては、プレディクタ候補の組に追加される。
【0083】
[102] これに加えて、2つのCPMVを判定するための隣接ブロックのペアに基づいた第2の態様の一変形によれば、まず、双方向アファインマージ候補の使用が、プレディクタ候補の組内において双方向候補を追加することにより、単方向アファインマージ候補よりも優先されている。この結果、アファインマージモード用のプレディクタ候補の組内において追加された双方向候補の最大値を得ることが保証されている。
【0084】
[103] マージモード用のプレディクタ候補の組の判定1020の少なくとも1つの実施形態の第1及び第2の態様の1つのバージョンにおいては、新しいアファインモーション候補を生成するべく、アファイン隣接ブロックのみが使用されている。換言すれば、上部左CPMV、上部右CPMV、及び下部左CPMVの判定は、個々の上部左隣接ブロック、上部右隣接ブロック、及び下部左隣接ブロックのモーション情報に基づいている。このケースにおいては、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに関連するモーション情報は、アファインモーション情報のみを有する。この変形は、選択されたアファイン隣接ブロックのモーションモデルが、エンコーディング対象のブロックに拡張されている、という点においてJEMアファインマージモードと異なっている。
【0085】
[104] マージモード1020用のプレディクタ候補の組の判定の少なくとも1つの実施形態の第1及び第2の態様の別の変形においては、1030において、上部左CPMV
【数58】
及び
上部右CPMV
【数59】
に基づいた標準的なアファインモーションモデルの代わりに、モーションフィールドを判定するべく、上部左CPMV
【数60】
及び下部左CPMV
【数61】
に基づいた新しいアファインモーションモデルが定義されている。図6及び図7は、式1によって記述されている、所謂、標準的アファインモーションを示している。図14は、それぞれの4×4サブブロック用の動きベクトルがCPMV
【数62】
及び
【数63】
から演算されうる、式7によって記述されている新しいアファインモーションモデルを示している。
【数64】
【0086】
[105] この変形は、上部左及び下部左隣接ブロックのペアに基づいた実施形態に対して特に十分に適合されており、この場合に、上部左及び下部左CMPV
【数65】
及び
【数66】
が、プレディクタ候補のために判定されている。有利には、上部右CMPV
【数67】
を演算するニーズが存在してはおらず、アファインモーションモデルは、CPMVとして
【数68】
を直接的に使用している。
【0087】
[106] これに加えて、この変形は、アファインマージモードにおけるプレディクタ候補の組用の更なるCPMVPを提供しており、CPMV
【数69】
を有するCPMVP及びCPMV
【数70】
を有するCPMVPがプレディクタ候補の組に追加されている。1040において、レート歪競争が、
【数71】
CPMVに基づいたプレディクタ候補と
【数72】
CPMVに基づいたプレディクタ候補の間において発生している。アファインマージモード用のCPMVPの導出が、CPMVP用の費用を演算するためにのみ、ベクトル
【数73】
を使用している、記述されている実施形態のいくつかの態様とは異なり、いくつかのケースにおいては、CPMVとして
【数74】
を使用することにより、相対的に良好な予測を取得することができる。従って、このようなモーションモデルは、使用されるCPMVを定義する必要がある。このケースにおいては、本発明者らが制御ポイント動きベクトルとして
【数75】
又は
【数76】
のいずれを使用するのかを通知するべく、フラグがビットストリームに追加される。
【0088】
【表1】
【0089】
[107] control_point_horizontal_l0_flag[ x0 ][ y0 ]は、エンコーディングされるブロック、即ち、現時点の予測ブロック、用のリストL0について使用される制御ポイントを規定している。アレイインデックスx0、y0は、ピクチャの上部左lumaサンプルとの関係における対象の予測ブロックの上部左lumaサンプルの場所(x0,y0)を規定している。フラグが1に等しい場合には、
【数77】
がCPMVとして使用され、それ以外の場合には、
【数78】
が使用されている。
【0090】
[108] マージモード用のプレディクタ候補の組の判定1020の少なくとも1つの実施形態の第1及び第2の態様の別の変形においては、1030において、上部左CPMV
【数79】
及び下部左CPMV
【数80】
に基づいた新しいアファインモーションモデル、或いは、上部左CPMV
【数81】
及び上部右CPMV
【数82】
に基づいた標準的なアファインモーションモデル、が、取り囲んでいる利用可能な情報から、黙示的に導出される。例えば、CPMVの相対的に高度な精度を得るべく、本発明者らは、ブロックの幅が高さ超である場合には、
【数83】
を使用することができると共に、ブロックの高さが幅超である場合には、
【数84】
を使用することができる。
【0091】
[109] 図15は、JEMの既存のアファインマージモードにおいてエンコーディング又はデコーディングされる現時点のCUのアファインモーションフィールドを予測するべく使用されるプロセスシンタックス1500の一実施形態の詳細を示している。このプロセス/シンタックス1500への入力1501は、図7に示されているサブブロックのアファインモーションフィールドの生成が所望されている現時点のコーディングユニットである。RD費用に基づいてプレディクタ候補を選択するべく、上述の少なくとも1つの実施形態の(双方向プレディクタである
【数85】
及び
【数86】
CPMVなどの)それぞれの態様に適合されたプロセス/シンタックス1500のプロセス/シンタックスをアファインマージモード用のプレディクタ候補の組のそれぞれのプレディクタ候補について使用することができる。従って、1510においては、例えば、図13及び図14との関連において上述したように、現時点のブロック用のアファインマージCPMVが、プレディクタ候補について取得されている。次いで、1520においては、現時点のCUと関連するアファインモーションフィールドを演算するべく、上部左及び上部右制御ポイント動きベクトルである
【数87】
及び
【数88】
が使用されている。これは、上述のように、式1に従ってそれぞれの4×4サブブロックについて動きベクトルを演算することを有する。1530及び1540においては、モーションフィールドが現時点のCUについて取得されたら、4×4サブブロックに基づいた動き補償と、その後の、OBMC(Overlapped Block Motion Compensation)と、を伴う、現時点のCUの時間的予測が発生している。1550及び1560においては、残差データと共に、又はこれを伴うことなしに、現時点のCUが連続的にコーディング及び再構築されている。例えば、1550においては、まず、現時点のCUが、残差コーディングを伴うことなしに、イントラモードを使用することにより、コーディングされている。次いで、1560において、現時点のCUをエンコーディングするための最良の方法(例えば、最小のレート歪費用を有する方法)が選択されており、この結果、アファインマージモードにおける現時点のCUのコーディングが提供される。次いで、アファインマージコーディングモードは、対象のビデオコーディングシステム内の現時点のCUにとって利用可能である(例えば、残留コーディングを有するAMVPモードを含む)その他のコーディングモードとの間におけるレート歪(RD)競争に晒される。RD競争に基づいて、モードが選択され、且つ、このモードは、現時点のCUをエンコーディングするべく使用され、且つ、様々な実施形態においては、このモード用のインデックスも、エンコーディングされている。
【0092】
[110] 少なくとも1つの実装形態においては、残差フラグが使用されている。1550において、フラグが起動され、これにより、コーディングが残差データを伴って実行されていることを通知している。1560においては、現時点のCUが、十分に(残差を伴って)コーディング及び再構築され、これにより、対応するRD費用が付与されている。次いで、フラグが無効化され、これにより、コーディングが残差データを伴うことなしに実行されていることが通知され、且つ、プロセスは、1560に戻り、ここで、CUが(残差を伴うことなしに)コーディングされ、これにより、対応するRD費用が付与されている。2つの以前のものの間の最低のRD費用は、残差をコーディングしなければならないかどうか(ノーマル又はスキップ)を通知している。次いで、この最良のRD費用は、その他のコーディングモードとの間における競争に晒される。レート歪判定については、更に詳細に後述することとする。
【0093】
[111] 図16は、少なくとも1つの実施形態の一般的な一態様による例示用のデコーディング方法1600を示している。1610において、方法1600は、ピクチャ内のデコーディングされるブロックについて、プレディクタ候補の組のうちの特定のプレディクタ候補に対応するインデックスを受け取っている。様々な実施形態においては、特定のプレディクタ候補は、プレディクタ候補の組のうちからエンコーダにおいて選択されており、且つ、インデックスは、プレディクタ候補のうちの1つが選択されることを許容している。1620において、方法1600は、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックを判定している。1630において、方法1600は、デコーディングされるブロックについて、少なくとも1つの空間的隣接ブロックに基づいてプレディクタ候補の組を判定している。プレディクタ候補は、デコーディングされるブロック用の1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトル及び1つの参照ピクチャを有する。エンコーディング方法1000との関連においてプレディクタ候補の組の判定のために記述されている変形の任意のものが、例えば、図17において示されたデコーダ側においてミラーリングされる。1640において、方法1600は、特定のプレディクタ候補から1つ又は複数の制御ポイント動きベクトルを判定している。1650において、方法1600は、特定のプレディクタ候補について、1つ又は複数の対応する制御ポイント動きベクトルに基づいて対応するモーションフィールドを判定している。様々な実施形態においては、モーションフィールドは、モーションモデルに基づいており、この場合に、対応するモーションフィールドは、デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを識別している。モーションフィールドは、上部左及び上部右制御ポイント動きベクトルである
【数89】
及び
【数90】
又は上部左及び下部左制御ポイント動きベクトルである
【数91】
及び
【数92】
に基づいて、デコーディングされるブロックのサブブロックの予測のために使用される動きベクトルを導出するアファインモーションモデルに基づいたものであってもよい。有利には、この実施形態においては、1610において、方法1600は、デコーディングされるブロックについて、デコーディングされるブロックに使用されるモーションモデルに対応する通知を更に受け取っている。この実施形態用の別の変形においては、デコーディングされるブロックに使用されるモーションモデルに対応する通知は、デコーディングされるブロックの空間的情報から黙示的に導出されている。1660において、方法1600は、対応するモーションフィールドに基づいてブロックをデコーディングしている。
【0094】
[112] 図17は、少なくとも1つの実施形態の一態様によるデコーディング方法1600のマージモード用のプレディクタ候補の組の判定1020の例示用の詳細を示している。エンコーディング方法の詳細について図11との関係において記述されている様々な実施形態が、ここでは反復されている。
【0095】
[113] 本発明者らは、上述の既存のアファインマージプロセスの一態様は、取り囲んでいる過去の且つ隣接するCUから現時点のCUに向かってアファインモーションフィールドを伝播させるべく、1つの且つ唯一の動きベクトルをシステマチックに利用している、というものであることを認識した。様々な状況において、本発明者らは、この態様は、不利である可能性があることを更に認識しており、その理由は、例えば、これが最適な動きベクトルプレディクタを選択してはいないからである。更には、このプレディクタの選択は、既に上述したように、順序付けされた組(A,B,C,D,E)における、アファインモードにおいてコーディングされた第1の過去の且つ隣接するCUのみ、から構成されている。様々な状況において、本発明者らは、この制限された選択は、不利である可能性があることを更に認識しており、その理由は、例えば、更に良好なプレディクタが利用可能でありうるからである。従って、現時点のJEMにおける既存のプロセスは、現時点のCUの周りのいくつかの潜在的な過去の且つ隣接するCUも、アファインモーションを使用している場合があり、且つ、アファインモーションを使用したものと見出された第1のものとは別の異なるCUが現時点のCUのモーション情報用の更に良好なプレディクタでありうる、という事実を考慮してはいない。
【0096】
[114] 従って、本発明者らは、いくつかの方法により、既存のJEMコーデックによって活用されてはいない現時点のCUアファイン動きベクトルの予測を改善するための潜在的な利点を認識した。
【0097】
[115] 図18は、例示用の実施形態の様々な態様が実装されうる例示用のシステム1800のブロック図を示している。システム1800は、後述する様々なコンポーネントを含む装置として実施されてもよく、且つ、上述のプロセスを実行するように構成されている。このような装置の例は、限定を伴うことなしに、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、デジタルマルチメディアセットトップボックス、デジタルテレビ受像機、パーソナルビデオ録画システム、接続されたホームアプライアンス、及びサーバーを含む。システム1800は、図18に示されているように、通信チャネルを介して、その他の類似のシステムに、且つ、ディスプレイに、通信自在に結合されてもよく、且つ、当業者には既知のように、上述の例示用のビデオシステムのすべて又は一部分を実装するべく、通信自在に結合されてもよい。
【0098】
[116] システム1800の様々な実施形態は、上述のように、様々なプロセスを実装するべくその内部に読み込まれる命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ1810を含む。プロセッサ1810は、組込み型のメモリ、入出力インターフェイス、及び当技術分野において既知の様々なその他の回路を含みうる。また、システム1800は、少なくとも1つのメモリ1820(例えば、揮発性メモリ装置、不揮発性メモリ装置)をも含みうる。システム1800は、これに加えて、ストレージ装置1840を含んでいてもよく、これは、限定を伴うことなしに、EEPROM、ROM、PROM、RAM、DRAM、SRAM、フラッシュ、磁気ディスクドライブ、及び/又は光ディスクドライブを含む不揮発性メモリを含みうる。ストレージ装置1840は、非限定的な例として、内部ストレージ装置、装着されたストレージ装置、及び/又はネットワークアクセス可能なストレージ装置を有しうる。また、システム1800は、エンコーディングされたビデオ及び/又はデコーディングされたビデオを提供するべくデータを処理するように構成されたエンコーダ/デコーダモジュール1830を含むことができると共に、エンコーダ/デコーダモジュール1830は、その独自のプロセッサ及びメモリを含むことができる。
【0099】
[117] エンコーダ/デコーダモジュール1830は、エンコーディング及び/又はデコーディング機能を実行するべく、装置内において含まれうる1つ又は複数のモジュールを表している。既知のように、このような装置は、エンコーディング及びデコーデイングモジュールのうちの1つ又は両方を含みうる。これに加えて、エンコーダ/デコーダモジュール1830は、システム1800の別個の要素として実装されていてもよく、或いは、当業者には既知のように、ハードウェア及びソフトウェアの組合せとして、1つ又は複数のプロセッサ1810内において内蔵されていてもよい。
【0100】
[118] 上述の様々なプロセスを実行するべく1つ又は複数のプロセッサ1810上に読み込まれるプログラムコードは、ストレージ装置1840内において保存することができると共に、その後に、プロセッサ1810による実行のためにメモリ1820上に読み込むことができる。例示用の実施形態によれば、1つ又は複数のプロセッサ1810、メモリ1820、ストレージ装置1840、及びエンコーダ/デコーダモジュール1830のうちの1つ又は複数は、上述のプロセスの実行の際に、限定を伴うことなしに、入力ビデオ、デコーディングされたビデオ、ビットストリーム、等式、定式、行列、変数、動作、及び動作ロジックを含む様々な項目のうちの1つ又は複数を保存することができる。
【0101】
[119] また、システム1800は、通信チャネル1860を介したその他の装置との間の通信を可能にする通信インターフェイス1850を含むこともできる。通信インターフェイス1850は、限定を伴うことなしに、通信チャネル1860との間においてデータを送受信するように構成されたトランシーバを含みうる。通信インターフェイス1850は、限定を伴うことなしに、モデム又はネットワークカードを含むことができると共に、通信チャネル1850は、有線及び/又は無線媒体内において実装することができる。システム1800の様々なコンポーネントは、限定を伴うことなしに、内部バス、ワイヤ、及び印刷回路基板を含む、様々な適切な接続を使用することにより、接続されていてもよく、或いは、通信自在に結合されていてもよい(図18には示されていない)。
【0102】
[120] 例示用の実施形態は、プロセッサ1810又はハードウェアによって実装されたコンピュータソフトウェアにより、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組合せにより、実行することができる。非限定的な例として、例示用の実施形態は、1つ又は複数の集積回路によって実装することができる。メモリ1820は、技術的環境に適した任意のタイプでありうると共に、非限定的な例として、光メモリ装置、磁気メモリ装置、半導体に基づいたメモリ装置、固定されたメモリ、及び着脱自在のメモリなどの、任意の適切なデータストレージ技術を使用することによって実装することができる。プロセッサ1810は、技術的環境に適した任意のタイプでありうると共に、非限定的な例として、マイクロプロセッサ、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、及びマルチコアアーキテクチャに基づいたプロセッサのうちの1つ又は複数を包含することができる。
【0103】
[121] 本明細書において記述されている実装形態は、例えば、方法又はプロセス、装置、ソフトウェアプログラム、データストリーム、又は信号において実装することができる。また、単一の実装形態の文脈においてのみ記述されている(例えば、方法としてのみ記述されている)場合にも、記述されている特徴の実装形態は、その他の形態(例えば、装置又はプログラム)において実装することができる。装置は、例えば、適切なハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアにおいて実装することができる。方法は、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、又はプログラム可能な論理装置を含む、例えば、一般的な処理装置を意味する、例えば、プロセッサなどの、装置において実装することができる。また、プロセッサは、例えば、コンピュータ、セル電話機、携帯型/パーソナルデジタルアシスタント(「PDA:portable/personal digital assistant」)、及びエンドユーザーの間の情報の通信を促進するその他の装置などの、通信装置を含む。
【0104】
[122] 更には、当業者は、図1に示されている例示用のHEVCエンコーダ100及び図3に示されている例示用のHEVCデコーダは、相対的に良好な圧縮/圧縮解除を実現するために、開示されている改善を既存のHEVC規格に対して実装するべく、本開示の上述の教示内容に従って変更されうることを容易に理解しうる。例えば、図1の例示用のエンコーダ100内の動き補償170及びモーション推定175、並びに、図3の例示用のデコーダ内の動き補償375は、改善されたアファインマージ予測を既存のJEMに提供することを含む、本開示の1つ又は複数の例示用の態様を実装するべく、開示されている教示内容に従って変更することができる。
【0105】
[123] 「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」又は「一実装形態(one implementation)」又は「一実装形態(an implementation)」のみならず、これらのその他の変形に対する参照は、実施形態との関連において記述されている特定の特徴、構造、及び特性などが、少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味している。従って、本明細書の全体を通じて様々な場所において出現している「一実施形態において(in one embodiment)」又は「一実施形態において(in an embodiment)」又は「一実装形態において(in one implementation)」又は「一実装形態において(in an implementation)」というフレーズのみならず、任意のその他の変形の出現は、必ずしも、そのすべてが同一の実施形態を参照しているものではない。
【0106】
[124] これに加えて、本出願又はその請求項は、様々な情報片を「判定すること」を参照している場合がある。情報を判定することは、例えば、情報を推定すること、情報を算出すること、情報を予測すること、又はメモリから情報を取得すること、のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0107】
[125] 更には、本出願及びその請求項は、様々な情報片に「アクセスすること」を参照している場合がある。情報にアクセスすることは、例えば、情報を受け取ること、情報を(例えば、メモリから)取得すること、情報を保存すること、情報を処理すること、情報を送信すること、情報を移動させること、情報を複写すること、情報を消去すること、情報を算出すること、情報を判定すること、情報を予測すること、又は情報を推定すること、のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0108】
[126] これに加えて、本出願又はその請求項は、様々な情報片を「受け取ること」を参照している場合がある。「受け取ること」は、「アクセスすること」と同様に、広い意味の用語となるべく意図されている。情報を受け取ることは、例えば、情報にアクセスすること又は情報を(例えば、メモリから)取得することのうちの1つ又は複数を含みうる。更には、「受け取ること」は、通常、1つの方式又は別の方式より、例えば、情報を保存すること、情報を処理すること、情報を送信すること、情報を移動させること、情報を複写すること、情報を消去すること、情報を算出すること、情報を判定すること、情報を予測すること、又は情報を推定することなどの、動作の際に関与している。
【0109】
[127] 当業者には明らかとなるように、実装形態は、例えば、保存又は送信されうる情報を搬送するべくフォーマッティングされた様々な信号を生成することができる。情報は、例えば、方法を実行するための命令又は記述されている実装形態のうちの1つによって生成されたデータを含みうる。例えば、信号は、記述されている実施形態のビットストリームを搬送するべくフォーマッティングすることができる。このような信号は、例えば、(例えば、スペクトルの高周波数部分を使用した)電磁波として、或いは、ベースバンド信号として、フォーマッティングすることができる。フォーマッティングすることは、例えば、データストリームをエンコーディングすること及びエンコーディングされたデータストリームによって搬送波を変調することを含みうる。信号が搬送する情報は、例えば、アナログ又はデジタル情報であってよい。信号は、既知のように、様々な異なる有線又は無線リンク上において送信することができる。信号は、プロセッサ可読媒体上において保存することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオコーディング用の方法であって、
アファインマージモードにおいてデコーディングされるブロックについて、
前記ブロックの空間的隣接ブロックの上部左リストであって、前記ブロックの上部左コーナーの隣接ブロックを含む、上部左リスト、及び
前記ブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストであって、前記ブロックの下部左コーナーの隣接ブロックを含む、下部左リスト
を判定することと、
アファインモーションモデルの第1の制御ポイント動きベクトル、
前記アファインモーションモデルの第2の制御ポイント動きベクトル、及び
参照ピクチャ
を有する、前記ブロック用の構築されたアファインマージプレディクタ候補を判定することであって、前記上部左リストの第1の空間的隣接ブロックの参照ピクチャが前記下部左リストの第2の空間的隣接ブロックの参照ピクチャと同一である場合、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルが、前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用され、
前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトル及び前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが、前記第2の制御ポイント動きベクトルを導出するために使用され、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記参照ピクチャが、構築されたアファインマージプレディクタ候補の参照ピクチャとして使用される、判定することと、
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の前記アファインモーションモデルに基づいて、前記ブロックの予測を判定することと、
前記判定された予測に基づいて前記ブロックをコーディングすることと、
を有する方法。
【請求項2】
前記ブロック用の前記第2の制御ポイント動きベクトルは、次式によって導出され、
【数1】
ここで、
(v 0x ,v 0y )は、前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
(v 2x ,v 2y )は、前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
hは、前記ブロックの高さであり、
wは、前記ブロックの幅である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の使用を示すインデックスがデコーディングされて前記ブロックの前記予測を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のビデオデータをデコーディングする方法をコンピュータに実行させる命令を格納する、コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項7】
少なくともメモリ及び1つ又は複数のプロセッサを有するビデオデコーディング用の装置であって、前記1つ又は複数のプロセッサは、
アファインマージモードにおいてデコーディングされるブロックについて、
前記ブロックの空間的隣接ブロックの上部左リストであって、前記ブロックの上部左コーナーの隣接ブロックを含む、上部左リスト、及び
前記ブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストであって、前記ブロックの下部左コーナーの隣接ブロックを含む、下部左リスト
を判定することと、
アファインモーションモデルの第1の制御ポイント動きベクトル、
前記アファインモーションモデルの第2の制御ポイント動きベクトル、及び
参照ピクチャ
を有する、前記ブロック用の構築されたアファインマージプレディクタ候補を判定することであって、前記上部左リストの第1の空間的隣接ブロックの参照ピクチャが前記下部左リストの第2の空間的隣接ブロックの参照ピクチャと同一である場合、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルが、前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用され、
前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトル及び前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが、前記第2の制御ポイント動きベクトルを導出するために使用され、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記参照ピクチャが、前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の参照ピクチャとして使用される、判定することと、
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の前記アファインモーションモデルに基づいて、前記ブロックの予測を判定することと、
前記判定された予測に基づいて前記ブロックをデコーディングすることと、
を行うように構成されている、装置。
【請求項8】
前記ブロック用の前記第2の制御ポイント動きベクトルは、次式によって導出され、
【数1】
ここで、
(v 0x ,v 0y )は、前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
(v 2x ,v 2y )は、前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
hは、前記ブロックの高さであり、
wは、前記ブロックの幅である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の使用を示すインデックスがデコーディングされて前記ブロックの前記予測を判定する、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
ビデオエンコーディング用の方法であって、
アファインマージモードにおいてピクチャ内でエンコーディングされるブロックについて、
前記ブロックの空間的隣接ブロックの上部左リストであって、前記ブロックの上部左コーナーの隣接ブロックを含む、上部左リスト、及び
前記ブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストであって、前記ブロックの下部左コーナーの隣接ブロックを含む、下部左リスト
を判定することと、
アファインモーションモデルの第1の制御ポイント動きベクトル、
前記アファインモーションモデルの第2の制御ポイント動きベクトル、及び
参照ピクチャ
を有する、前記ブロック用の構築されたアファインマージプレディクタ候補を判定することであって、前記上部左リストの第1の空間的隣接ブロックの参照ピクチャが前記下部左リストの第2の空間的隣接ブロックの参照ピクチャと同一である場合、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルが、前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用され、
前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトル及び前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが、前記第2の制御ポイント動きベクトルを導出するために使用され、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記参照ピクチャが、構築されたアファインマージプレディクタ候補の参照ピクチャとして使用される、判定することと、
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の前記アファインモーションモデルに基づいて、前記ブロックの予測を判定することと、
前記判定された予測に基づいて前記ブロックをエンコーディングすることと、
を有する方法。
【請求項13】
前記ブロック用の前記第2の制御ポイント動きベクトルは、次式によって導出され、
【数1】
ここで、
(v 0x ,v 0y )は、前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
(v 2x ,v 2y )は、前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
hは、前記ブロックの高さであり、
wは、前記ブロックの幅である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブロックの前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の使用を示すインデックスがエンコーディングされて前記ブロックの前記予測を判定する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法に従ってビデオデータをエンコーディングする方法をコンピュータに実行させる命令を格納する、コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項18】
少なくともメモリ及び1つ又は複数のプロセッサを有するビデオエンコーディング用の装置であって、前記1つ又は複数のプロセッサは、
アファインマージモードにおいてピクチャ内でエンコーディングされるブロックについて、
前記ブロックの空間的隣接ブロックの上部左リストであって、前記ブロックの上部左コーナーの隣接ブロックを含む、上部左リスト、及び
前記ブロックの空間的隣接ブロックの下部左リストであって、前記ブロックの下部左コーナーの隣接ブロックを含む、下部左リスト
を判定することと、
アファインモーションモデルの第1の制御ポイント動きベクトル、
前記アファインモーションモデルの第2の制御ポイント動きベクトル、及び
参照ピクチャ
を有する、前記ブロック用の構築されたアファインマージプレディクタ候補を判定することであって、前記上部左リストの第1の空間的隣接ブロックの参照ピクチャが前記下部左リストの第2の空間的隣接ブロックの参照ピクチャと同一である場合、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルが、前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用され、
前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトル及び前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが、前記第2の制御ポイント動きベクトルを導出するために使用され、
前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの前記参照ピクチャが、構築されたアファインマージプレディクタ候補の参照ピクチャとして使用される、判定することと、
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の前記アファインモーションモデルに基づいて、前記ブロックの予測を判定することと、
前記判定された予測に基づいて前記ブロックをエンコーディングすることと、
を行うように構成されている、装置。
【請求項19】
前記ブロック用の前記第2の制御ポイント動きベクトルは、次式によって導出され、
【数1】
ここで、
(v 0x ,v 0y )は、前記上部左リストの前記第1の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
(v 2x ,v 2y )は、前記下部左リストの前記第2の空間的隣接ブロックの動きベクトルであり、
hは、前記ブロックの高さであり、
wは、前記ブロックの幅である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ブロックの前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルが平行移動モーション情報を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第1の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有するか、又は前記第2の制御ポイント動きベクトルとして使用される前記第2の空間的隣接ブロックの前記動きベクトルがアファインモーション情報を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記構築されたアファインマージプレディクタ候補の使用を示すインデックスがエンコーディングされて前記ブロックの前記予測を判定する、請求項18に記載の装置。
【外国語明細書】