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特開2023-100868骨髄増殖性白血病(MPL)タンパク質に結合する多特異性分子およびその使用
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  • 特開-骨髄増殖性白血病(MPL)タンパク質に結合する多特異性分子およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100868
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】骨髄増殖性白血病(MPL)タンパク質に結合する多特異性分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230711BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K16/46
C07K16/28
C07K16/40
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 P
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076846
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019566237の分割
【原出願日】2018-05-31
(31)【優先権主張番号】62/512,867
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/522,480
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/555,843
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521131317
【氏名又は名称】マレンゴ・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ロウ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシュ, ブライアン エドワード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨髄増殖性白血病(MPL)タンパク質のアンタゴニストを提供する。
【解決手段】MPLに結合する第1の標的化部分およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む、多重特異性分子を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPLに結合する第1の標的化部分およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む、多重特異性分子。
【請求項2】
前記ホスファターゼおよびMPLが、同じ細胞、例えば骨髄線維症細胞で発現される、請求項1に記載の多重特異性分子。
【請求項3】
前記ホスファターゼが、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる、請求項1または2に記載の多重特異性分子。
【請求項4】
前記ホスファターゼが、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項5】
前記ホスファターゼがCD45であり、場合により、ホスファターゼに結合する前記標的化部分が、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、またはCD45R(ABC)のうちの1つ以上に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項6】
MPLに結合する前記第1の標的化部分が、
(i)表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項7】
ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がCD45に結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表3の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3、5、または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項8】
ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がCD148に結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表4の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3.または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項9】
ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がLARに結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメ
イン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表5の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3、または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項10】
前記多重特異性分子が、エフェクター部分をさらに含み、例えば、前記エフェクター部分が、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、サイトカインアンタゴニスト、例えばTGF-βアンタゴニスト、酵素、毒素、または標識剤のうちの1つ以上から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項11】
前記エフェクター部分が、免疫細胞エンゲージャー(例えば、抗CD3抗体分子)である、請求項10に記載の多重特異性分子。
【請求項12】
前記エフェクター部分が、TGF-βアンタゴニスト、例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体、またはその機能的断片もしくは変異型、例えばTGFβ受容体I型の細胞外ドメインまたはTGFβ受容体II型の細胞外ドメインを含むポリペプチドである、請求項10に記載の多重特異性分子。
【請求項13】
前記TGFβアンタゴニストが、表6の任意のアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと75%、8-0%、85%、90%、95%、または99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、15、または20個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存置換)であるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の多重特異性分子。
【請求項14】
第1のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分がMPLに結合する、多重特異性分子(例えば、多重特異性または多機能性抗体分子)。
【請求項15】
前記多重特異性分子が、MPL活性を低減、例えば阻害する、請求項14に記載の多重特異性分子。
【請求項16】
MPLに結合する第2のMPL標的化部分を含む、請求項14または15に記載の多重特異性分子。
【請求項17】
前記第1および前記第2のMPL標的化部分が、同じエピトープに結合する(例えば、重複するエピトープに結合する)、請求項16に記載の多重特異性分子。
【請求項18】
前記第1および前記第2のMPL標的化部分が、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)、請求項16に記載の多重特異性分子。
【請求項19】
二重パラトープ抗体分子である、請求項18に記載の多重特異性分子。
【請求項20】
単一のMPL標的化部分、例えばMPLに対するハーフアーム抗体(例えば第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば第1のFc定常領域(例えば第1のCH2-CH3)に融合したFabまたは単鎖Fv)を含む、MPL結合分子であって、MPL活性を低減する、例えば阻害する、MPL結合分子。
【請求項21】
一価である、請求項20に記載のMPL結合分子。
【請求項22】
第2の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば第2の重鎖定常領域、例えば第2のFc定常領域、例えば第2のCH2-CH3をさらに含む、請求項20または21に記載のMPL結合分子。
【請求項23】
免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項24】
前記腫瘍標的化分子が、抗CD41抗体分子または抗CD177抗体分子である、請求項23に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項25】
抗PDL1抗体分子、抗CD3抗体分子、抗TGFβ抗体分子、TGFβトラップポリペプチド(例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体の一部を含むポリペプチド)、抗IL1β抗体分子、IL1βトラップポリペプチド(例えば、IL1βに結合することができるIL1β受容体の一部を含むポリペプチド)、抗CXCL10抗体分子、抗MS4A3抗体分子、抗OLFM4抗体分子、抗CD66b抗体分子、抗cKit抗体分子、抗FLT3抗体分子、または抗CD133抗体分子(またはそれらの任意の組み合わせ)をさらに含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項26】
MPLの前記細胞外ドメインに結合する、請求項14~25のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項27】
前記分子に結合した前記MPLと第2のMPLタンパク質との会合を防止する、請求項14~26のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項28】
MPLタンパク質の二量体化、細胞内リン酸化、またはJAK2キナーゼ経路の活性化のうちの1つ、2つ以上を低減する(例えば防止する)、請求項14~27のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項29】
前記MPL活性がMPLリガンド、例えばTPOの存在下で低減する、請求項15~28のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項30】
前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記MPLに対する親和性、例えば合わせた親和性が、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分の前記親和性(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)以上である、請求項16~19または23~29のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項31】
前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記MPLに対する前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)の前記親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい、請求項30に記
載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項32】
MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対するリガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の前記親和性以上である、請求項16~19または23~29のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項33】
MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記リガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の前記親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい、請求項32に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項34】
前記MPL標的化部分が、全長抗体、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab‘)、Fv、単鎖Fv、単一ドメイン抗体、ハーフアーム抗体、ダイアボディ(dAb)、二価の抗体、一価の抗体、または二重特異性抗体もしくはその断片、その単一ドメイン変異型、またはラクダ抗体)である、請求項14~33のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項35】
前記免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)が、2つのMPL標的化部分、例えば非重複抗原結合部位を有するMPL標的化部分に結合、例えば共有結合される、請求項14~19または23~34のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項36】
前記MPL標的化部分が、カッパもしくはラムダの軽鎖定常領域、またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む、請求項14~35のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項37】
第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分が、カッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記第2のMPL標的化部分が、ラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む、請求項14~19または23~36のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項38】
第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分および前記第2のMPL標的化部分が、共通の軽鎖可変領域を含む、請求項14~19または23~37のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項39】
二量体化ドメイン、例えば、第1および第2の免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の界面を含む、請求項14~38のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項40】
前記二量体化ドメインが、例えば、操作されていない界面と比べて二量体化を増加または減少させるように操作、例えば突然変異される、請求項39に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項41】
前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の前記二量体化が、例えば操作されていない界面と比べて、ヘテロ多量体:ホモ多量体の比が大きくなるように、空洞-突起の対合(「ノブ・イン・ホール」)、静電相互作用、または鎖交換のうちの1つ以上で、第1および第2のFc領域のFc界面を提供することにより増強される、請求項40に記
載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項42】
前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)が、例えばヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つ以上から選択される位置にアミノ酸置換を含む、請求項39または40に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項43】
前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)が、T366S、L368A、またはY407V(例えば空洞またはホールに対応)、もしくはT366W(例えば突起またはノブに対応)、またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項39~42のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項44】
第1の抗原結合ドメインと、第2の抗原結合ドメインと、を含む、多重特異性分子であって、
i)前記第1および前記第2の抗原結合ドメインが、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)か、または
ii)前記第1の抗原結合ドメインがMPLに結合し、前記第2の抗原結合ドメインがMPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、
前記第1の抗原結合ドメインが、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、第3のポリペプチドおよび第4のポリペプチドを含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)、第1の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含み、
c)前記第3のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2の重鎖可変領域(VH)、第2の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含み、
d)前記第4のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含む、多重特異性分子。
【請求項45】
第1の抗原結合ドメインと、第2の抗原結合ドメインと、を含む、多重特異性分子であって、
i)前記第1および前記第2の抗原結合ドメインが、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)か、または
ii)前記第1の抗原結合ドメインがMPLに結合し、前記第2の抗原結合ドメインがMPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、
前記第1の抗原結合ドメインが、第1のポリペプチドを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、第2のポリペプチドを含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第1のscFv領域、ならびに場合により、前記第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2のVHおよび第2のVLを含む第2のscFv領域、ならびに場合により、前記第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3
)を含む、多重特異性分子。
【請求項46】
MPL結合分子であって、
i)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む単一のMPL標的化部分と、
ii)第3のポリペプチドと、を含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域1(CH1)、ならびに場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含み、
b)前記第3のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含む、MPL結合分子。
【請求項47】
重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むscFvを含む単一のMPL標的化部分を含む、MPL結合分子であって、
i)免疫グロブリン定常ドメイン、例えばFc定常領域、例えばCH2-CH3をさらに含み、かつ/または
ii)MPL活性を低減、例えば阻害する、MPL結合分子。
【請求項48】
1つまたは2つのMPL標的化部分を含むMPL結合分子であって、前記MPL結合分子がMPL活性を低減し、前記1つまたは2つのMPL標的化部分が、
(i)表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(ii)表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、MPL結合分子。
【請求項49】
前記1つまたは2つのMPL標的化部分が、
(i)表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(ii)表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列をさらに含む、請求項48に記載のMPL結合分子。
【請求項50】
野生型JAK2に関連するMPLよりも、突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する、請求項14~49のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項51】
i)前記多重特異性分子またはMPL結合分子が、前記多重特異性分子またはMPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合し、
ii)前記多重特異性分子またはMPL結合分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない、請求項50に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項52】
野生型JAK2に関連するMPLよりも、突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する、MPL結合分子。
【請求項53】
i)前記MPL結合分子は、前記MPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合し、
ii)前記MPL結合分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない、請求項52に記載のMPL結合分子。
【請求項54】
ホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する標的化部分をさらに含む、請求項14~53のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項55】
前記ホスファターゼおよびMPLが、同じ細胞、例えば骨髄線維症細胞で発現される、請求項54に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項56】
前記ホスファターゼが、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる、請求項54または55に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項57】
前記ホスファターゼが、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される、請求項54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項58】
前記ホスファターゼがCD45であり、場合により、ホスファターゼに結合する前記標的化部分が、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、またはCD45R(ABC)のうちの1つ以上に結合する、請求項54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項59】
前記ホスファターゼがCD148である、請求項54~56のいずれか一項に記載の多
重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項60】
前記ホスファターゼがLARである、請求項54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
【請求項61】
請求項1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子をコードする、単離された核酸分子。
【請求項62】
請求項61に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター、例えば発現ベクター。
【請求項63】
請求項61に記載の核酸分子または請求項62に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項64】
請求項1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子を作製、例えば産生する方法であって、好適な条件下、例えば、遺伝子発現および/またはホモまたはヘテロ二量体化に好適な条件下で、請求項63に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項65】
請求項1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項66】
がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に請求項1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子を投与することを含み、前記多重特異性抗体が、前記がんの治療に有効な量で投与される、方法。
【請求項67】
前記がんが、血液癌、B細胞またはT細胞悪性腫瘍、例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病)、骨髄線維症、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、または急性リンパ球性白血病(ALL)から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記がんが骨髄線維症である、請求項66に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月31日に提出されたUS第62/512,867号、2017年6月20日に提出されたUS第62/522,480号、および2017年9月8日に提出されたUS第62/555,843号の優先権を主張し、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年5月24日に作成された上記のASCIIコピーの名称はE2070-7010WO_SL.txtであり、サイズは150,404バイトである。
【背景技術】
【0003】
トロンボポエチン受容体(TPOR)またはCD110(分化抗原群110)としても知られる骨髄増殖性白血病(MPL)タンパク質は、その天然リガンドであるトロンボポイエチン(TPO)の、MPLの細胞外ドメイン(ECD)への結合によって活性化される二量体タンパク質である。リガンドが結合すると、MPL受容体の二量体化が誘導され、MPLの立体構造変化が起こり、細胞内リン酸化およびJAK2キナーゼ経路の活性化を含む細胞内プロセシングシグナルの活性化が続く。
【0004】
MPLアゴニストは当該技術分野で既知であり、MPLタンパク質の2つの受容体細胞外ドメイン(ECD)を架橋することにより機能すると考えられている。しかしながら、本明細書に開示されるものなどのMPLアンタゴニストの必要性は依然として出る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、とりわけ、第1のMPL標的化部分を含む多重特異性分子(例えば、多重特異性または多機能性抗体分子)が提供され、この第1のMPL標的化部分はMPLに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、MPL活性を低減、例えば阻害する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、MPLに結合する第2のMPL標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のMPL標的化部分は、同じエピトープに結合する(例えば、重複するエピトープに結合する)。いくつかの実施形態では、第1のMPL標的化部分の第1のMPLタンパク質への結合は、第2のMPL標的化部分の第2のMPLタンパク質への結合を低減(例えば、防止)する。いくつかの実施形態では、第1および第2のMPL標的化部分は、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、二重パラトープ抗体分子である(例えば、同じMPLタンパク質上の2つの異なるエピトープ(例えば、非重複エピトープ)に結合する)。
【0006】
実施形態では、多重特異性分子は、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。実施形態では、多重特異性分子は、腫瘍標的化分子を含み、この腫瘍標的化分子は、抗CD41抗体分子または抗CD177抗体分子である。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、抗PDL1抗体分子、抗CD3抗体分子、抗TGFβ抗体分子、TGFβトラップポリペプチド(例えば、TGFβに結合するこ
とができるTGFβ受容体の一部を含むポリペプチド)、抗IL1β抗体分子、IL1βトラップポリペプチド(例えば、IL1βに結合することができるIL1β受容体の一部を含むポリペプチド)、抗CXCL10抗体分子、抗MS4A3抗体分子、抗OLFM4抗体分子、抗CD66b抗体分子、抗cKit抗体分子、抗FLT3抗体分子、または抗CD133抗体分子(またはそれらの任意の組み合わせ)をさらに含む。
【0007】
別の実施形態では、多重特異性分子またはMPL結合分子は、単一のMPL標的化部分、例えばMPLに対するハーフアーム抗体(例えば第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば第1のFc定常領域(例えば第1のCH2-CH3)に融合したFabまたは単鎖Fv)であるか、またはそれを含む。場合により、ハーフアーム抗体は、第2の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば第2の重鎖定常領域、例えば第2のFc定常領域、例えば第2のCH2-CH3)に二量体化(例えばホモまたはヘテロ二量体化)される。実施形態では、MPL標的化部分および/または第2の免疫グロブリン定常ドメインは、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。加えて、前述の多重特異性分子をコードする核酸、前述の分子を産生する方法、および前述の分子を使用してがんを治療する方法が開示される。
【0008】
したがって、一態様では、本開示は、MPLに結合する(例えば、それを標的とする)、例えばMPLの1つ以上の領域に結合する多重特異性または多機能性分子(例えば、多重特異性または多機能性ポリペプチド)を特徴とする。実施形態では、多重特異性分子は、MPLに結合する部分、例えば、抗体分子またはリガンド(本明細書では「MPL標的化部分」とも呼ばれる)を含む。一実施形態では、多重特異性分子はMPLの細胞外ドメインに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、単一のMPLタンパク質に結合し、第2のMPLタンパク質との会合を防止する。実施形態では、多重特異性分子は、MPL活性を低減、例えば阻害し、例えば、MPLタンパク質の二量体化、細胞内リン酸化、またはJAK2キナーゼ経路の活性化のうちの1つ、2つ以上を低減(例えば、防止)する。実施形態では、MPL活性は、MPLリガンド、例えばTPOの存在下で低減される。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、TPOのMPLへの結合を遮断する。
【0009】
実施形態では、多重特異性分子は、単一のMPLタンパク質(例えば、同じMPLタンパク質)上の2つ以上のエピトープ(例えば、2つ以上の非重複エピトープ)に結合する。
【0010】
一実施形態では、多重特異性分子は、2つのMPL標的化部分、例えば、MPLタンパク質の細胞外ドメイン上の第1のエピトープに結合する第1のMPL標的化部分、および同じMPLタンパク質の細胞外ドメイン上の第2のエピトープに結合する第2のMPL標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のエピトープは異なる。いくつかの実施形態では、2つのMPL標的化部分、例えば、第1および第2のMPL標的化部分は、MPLタンパク質の細胞外ドメイン上の異なるエピトープに結合する。一実施形態では、多重特異性分子は、同じMPLタンパク質上の2つの異なるエピトープ(例えば、非重複エピトープ)に結合し、例えば、二重パラトープ分子であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、2つの結合特異性または機能を含み、例えば、それは二重特異性または二機能性分子である。
【0011】
本明細書に開示される多重特異性分子のいずれかのいくつかの実施形態では、第1および第2のMPL標的化部分のMPLに対する親和性、例えば合わせた親和性は、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)の親和性以上である。例えば、第1および第2のMPL標的化部分のMPLに対す
る親和性、例えば合わせた親和性は、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)の親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい。
【0012】
前述の多重特異性分子のいずれかのさらに他の実施形態では、MPLタンパク質発現細胞、例えば、がん細胞または造血細胞に対する第1および第2のMPL標的化部分の親和性、例えば合わせた親和性は、第1のMPL標的化部分または第2のMPL標的化部分の一方のみを有する類似の多重特異性または多機能性分子の親和性以上である。例えば、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する第1および第2のMPL標的化部分の親和性、例えば合わせた親和性は、第1のMPL標的化部分または第2のMPL標的化部分の一方のみを有する類似の多重特異性または多機能性分子の親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい。
【0013】
前述の多重特異性分子のいずれかのさらに他の実施形態では、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する第1および第2のMPL標的化部分の親和性、例えば合わせた親和性は、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対するリガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の親和性以上である。例えば、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する第1および第2のMPL標的化部分の親和性、例えば合わせた親和性は、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対するリガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい。
【0014】
他の実施形態では、多重特異性分子は、単一のMPL標的化部分、例えば、MPLに対するハーフアーム抗体を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、免疫グロブリン定常ドメイン(例えば、第1のFc定常領域(例えば、第1のCH2-CH3))に結合、例えば融合したFabを含む。場合により、ハーフアーム抗体は、第2の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば第2の重鎖定常領域、例えば第2のFc定常領域、例えば第2のCH2-CH3に二量体化(例えばホモまたはヘテロ二量体化)される。
【0015】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、約10nM未満、より典型的には10~100pMの解離定数でMPL抗原に結合するMPL標的化抗体分子を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、MPL抗原上の立体構造または線状エピトープに結合するMPL標的化抗体分子を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、単一特異性抗体分子、二重特異性抗体分子、または三重特異性抗体分子であるMPL標的化抗体分子を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、一価の抗体分子、二価の抗体分子、または三価の抗体分子であるMPL標的化抗体分子を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、例えば同じMPL分子上の2つまたは3つの異なるエピトープに結合する、二重パラトープ抗体分子または三重パラトープ抗体分子であるMPL標的化抗体分子を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、MPL標的化抗体分子は、全長抗体(例えば、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、および少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖を含む抗体)、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab‘)、Fv、単鎖Fv
、単一ドメイン抗体、ハーフアーム抗体、ダイアボディ(dAb)、二価の抗体、一価の抗体、または二重特異性抗体もしくはその断片、その単一ドメイン変異型、またはラクダ科抗体)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子、例えばMPL標的化抗体分子は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはそれらの断片から選択される重鎖定常領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子、例えばMPL標的化抗体分子は、カッパもしくはラムダの軽鎖定常領域、またはそれらの断片から選択される軽鎖定常領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、IgG1、IgG2、およびIgG4の重鎖定常領域、より具体的にはヒトIgG1、IgG2、またはIgG4の重鎖定常領域から選択される免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)は、MPL標的化部分に結合、例えば共有結合される。
【0024】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)は、2つのMPL標的化部分、例えば非重複抗原結合部位を有するMPL標的化部分に結合、例えば共有結合される。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)は、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるように操作、例えば突然変異される。
【0025】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、カッパもしくはラムダの軽鎖定常領域、またはそれらの断片から選択される軽鎖定常領域を含むMPL標的化部分を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分を含み、この第1のMPL標的化部分は、カッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、第2のMPL標的化部分は、ラムダ軽鎖定常領域、またはその断片を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、第1のMPL部分および第2のMPL標的化部分を含み、この第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分は、共通の軽鎖可変領域を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、二量体化ドメイン、例えば、第1および第2の免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の界面を含む。実施形態では、二量体化ドメインは、例えば、操作されていない界面と比べて二量体化を増加または減少させるように操作、例えば突然変異される。実施形態では、二量体化ドメインは、例えば、操作されていない界面と比べて二量体化を増加させるように操作、例えば突然変異される。
【0029】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の二量体化は、例えば操作されていない界面と比べて、ヘテロ多量体:ホモ多量体の比が大きくなるように、空洞-突起の対合(「ノブ・イン・ホール」)、静電相互作用、または鎖交換のうちの1つ以上で、第1および第2のFc領域のFc界面を提供することにより増強される。
【0030】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)は、例えばヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうち
の1つ以上から選択される位置にアミノ酸置換を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)は、T366S、L368A、またはY407V(例えば空洞またはホールに対応)、もしくはT366W(例えば突起またはノブに対応)、またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、少なくとも2つ、例えば少なくとも2つ、3つ、または4つの非隣接ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性MPLアンタゴニスト分子は、2つの非隣接ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性MPLアンタゴニスト分子は、3つの非隣接ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性MPLアンタゴニスト分子は、4つの非隣接ポリペプチド鎖を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドと、
ii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じ抗原)に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第2のポリペプチドと、
iii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第2の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第3のポリペプチドと、
iv)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原(例えば第2のVH-CH1により結合される同じ抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第2の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第4のポリペプチドと、を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばscFv分子の第1のVH)、および例えばMPL抗原(例えば第1のVHにより結合される同じ抗原)に同様に結合する第1の抗原ドメインの第2部分、例えばscFv分子の第1のVL)、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドと、
ii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第2の抗原ドメインの第2の部分、例えばscFv分子の第2のVH)、および例えばMPL抗原(例えば第2のVHにより結合される同じ抗原)に同様に結合する第2の抗原ドメインの第2部分、例えばscFv分子の第2のVL)、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第2のポリペプチドと、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイ
ン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドと、
ii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じ抗原)に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第2のポリペプチドと、
iii)例えば、N-からC-の配向で、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第3のポリペプチドと、を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばscFv分子の第1のVH)、および例えばMPL抗原(例えば第1のVHにより結合される同じ抗原)に同様に結合する第1の抗原ドメインの第2部分、例えばscFv分子の第1のVL)、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドを含む。
【0037】
一態様では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性分子が本明細書に開示され、この第1および第2の抗原結合ドメインは、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合し(例えば、非重複エピトープに結合する)、第1の抗原結合ドメインは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、第2の抗原結合ドメインは、第3のポリペプチドおよび第4のポリペプチドを含み、
a)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)、第1の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含み、
c)第3のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2の重鎖可変領域(VH)、第2の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含み、
d)第4のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0038】
一態様では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性分子が本明細書に開示され、この第1の抗原結合ドメインはMPLに結合し、第2の抗原結合ドメインは、MPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、第1の抗原結合ドメインは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、第2の抗原結合ドメインは、第3のポリペプチドおよび第4のポリペプチドを含み、
a)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)、第1の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含み、
c)第3のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2の重鎖可変領域(VH)、第2の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含み、
d)第4のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2の軽鎖可変領域(V
L)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0039】
一態様では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性分子が本明細書に開示され、この第1および第2の抗原結合ドメインは、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合し(例えば、非重複エピトープに結合する)、第1の抗原結合ドメインは、第1のポリペプチドを含み、第2の抗原結合ドメインは、第2のポリペプチドを含み、
a)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第1のscFv領域、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2のVHおよび第2のVLを含む第2のscFv領域、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含む。
【0040】
一態様では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含む多重特異性分子が本明細書に開示され、この第1の抗原結合ドメインはMPLに結合し、第2の抗原結合ドメインは、MPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、第1の抗原結合ドメインは、第1のポリペプチド含み、第2の抗原結合ドメインは、第2のポリペプチドを含み、
a)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第1のscFv領域、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、第2のVHおよび第2のVLを含む第2のscFv領域、ならびに場合により、第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含む。
【0041】
一態様では、
i)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む単一のMPL標的化部分と、
ii)第3のポリペプチドと、を含み、
a)第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域1(CH1)、ならびに場合により、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含み、
c)第3のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1と第3のポリペプチ
ドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含むMPL結合分子が本明細書に開示される。
【0042】
一態様では、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むscFvを含む単一のMPL標的化部分を含む、MPL結合分子が開示され、
i)MPL結合分子は、免疫グロブリン定常ドメイン、例えばFc定常領域、例えばCH2-CH3をさらに含み、かつ/または
ii)MPL結合分子は、MPL活性を低減、例えば阻害する。
【0043】
一態様では、野生型JAK2に関連するMPLよりも、突然変異したJAK2(例えば
、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する、多重特異性分子またはMPL結合分子が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、多重特異性分子またはMPL結合分子は、多重特異性分子またはMPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性分子またはMPL結合分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F変突然異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない。
【0044】
例示的なMPL標的化部分
一実施形態では、MPL標的化部分は、MPLに結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0045】
あるいは、または本明細書に開示されるMPLに対する重鎖と組み合わせて、MPLに対する抗体分子は、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0046】
一実施形態では、MPL標的化部分は、MPLに結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号1の重鎖可変ドメイン配列(表1を参照されたい)に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号1のCDR配列に由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。
【0047】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号1の重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0048】
実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、配列番号69のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9
%同一)の、もしくは配列番号69のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域(CH1)をさらに含む。
【0049】
あるいは、または本明細書に開示されるMPLに対する重鎖と組み合わせて、MPLに対する抗体分子は、配列番号2の軽鎖可変ドメイン配列(表1を参照されたい)に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号2のCDR配列に由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号2の軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、アミノ酸配列の配列番号70(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号70のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域(CL(カッパ))をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、配列番号71のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号71のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域(CL(ラムダ))をさらに含む。
【0053】
他の実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1に示される可変ドメインの対のいずれか、例えば、同じ抗体分子に由来する可変重および可変軽ドメイン、例えば、配列番号3の可変重ドメインおよび配列番号4の可変軽ドメインの、重鎖可変ドメインに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、および軽鎖可変ドメイン配列に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む。
【0054】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号3の重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、および配列番号4の軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0055】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号49の配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号49のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下
の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む単鎖Fvである。
【0056】
実施形態では、抗体分子は、
(i)配列番号69のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号69のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、重鎖定常領域(CH1)、
(ii)配列番号70のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号70のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域(CL(カッパ))、あるいは
(iii)配列番号71のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号71のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域(CL(ラムダ))をさらに含む。
【0057】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号50~56のいずれか、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号50~56のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む単鎖Fvである。
【0058】
MPLおよびホスファターゼに結合する多重特異性分子
JAK/STAT経路の調節解除は、骨髄線維症を含むいくつかの血液腫瘍における腫瘍発生の主要なメディエーターである。CD45はMPLの下流のJAK/STAT経路を負に調節する。一態様では、本発明は、CD45とMPLとを同時ライゲートする多重特異性分子(例えば、MPLに結合する第1の標的化部分およびCD45に結合する第2の標的化部分を含む多重特異性分子)を開示する。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような多重特異性分子は、MPL細胞内ドメインの内側に固定されたJAK2キナーゼの脱リン酸化を増強し、したがって、悪性細胞のMPL/JAK2経路を下方調節する。
【0059】
一態様では、MPLに結合する第1の標的化部分、およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む多重特異性分子が本明細書に開示される。一実施形態では、ホスファターゼおよびMPLは、同じ細胞、例えば骨髄線維症細胞で発現される。
【0060】
一実施形態では、ホスファターゼ(例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP))は、MPL/JAK2経路を調節することができる。一実施形態では、ホスファターゼは、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、ホスファターゼ(例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)、例えば、CD45、CD148、またはLAR)が本明細書に開示される多重特異性分子によりMPLに近接する場合、ホスファタ
ーゼは、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化し、それにより、下流シグナル伝達経路を負に調節する。
【0061】
一実施形態では、ホスファターゼは、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される。一実施形態では、ホスファターゼはCD45である。一実施形態では、ホスファターゼはCD148である。一実施形態では、ホスファターゼは白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)である。
【0062】
一実施形態では、第2の標的化部分はCD45の細胞外ドメインに結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、またはCD45R(ABC)のうちの1つ以上に結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、1つのCD45アイソフォームに特異的に結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、2つ以上のCD45アイソフォームに結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、全てのCD45アイソフォームに結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、骨髄線維症細胞で発現されるCD45アイソフォームに結合する。一実施形態では、第2の標的化部分は、MPLと同じ細胞により発現されるCD45アイソフォームに結合する。
【0063】
一実施形態では、MPLに結合する第1の標的化部分は、
(i)表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
一実施形態では、ホスファターゼに結合する第2の標的化部分はCD45に結合し、第2の標的化部分は、
(i)表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、
3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表3の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0065】
一実施形態では、ホスファターゼに結合する第2の標的化部分はCD148に結合し、第2の標的化部分は、
(i)表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表4の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0066】
一実施形態では、ホスファターゼに結合する第2の標的化部分はLARに結合し、第2の標的化部分は、
(i)表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の軽鎖可変ドメイン配列のいず
れかのCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表5の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0067】
追加の部分
本明細書に開示される多重特異性分子は、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、サイトカインアンタゴニスト、例えばTGF-βアンタゴニスト、間質修飾因子、酵素、毒素、標識剤、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0068】
一態様では、
(i)2つのMPL標的化部分、例えば、MPLタンパク質の細胞外ドメイン上の第1のエピトープに結合する第1のMPL標的化部分、およびMPLタンパク質の細胞外ドメイン上の第2のエピトープに結合する第2のMPL標的化部分(第1および第2のエピトープは重複しない)、ならびに
(ii)免疫細胞エンゲージャー、例えば、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、もしくはマクロファージ細胞エンゲージャー、または例えば、少なくとも2つの非隣接ポリペプチドを含むサイトカイン分子(例えば多鎖サイトカイン)(例えば、サイトカイン分子は、2つの鎖、例えば、アルファおよびベータ鎖(例えばIL-12)を含む)、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的分子)から選択される任意の2つまたはそれらの組み合わせを含む多重特異性分子が本明細書に提供される。
【0069】
一態様では、
(i)MPLに結合する第1の標的化部分、
(ii)ホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)、例えば、CD45、CD148、またはLARに結合する第2の標的化部分、および
(iii)免疫細胞エンゲージャー、例えばT細胞エンゲージャー、例えば抗CD3抗体分子を含む多重特異性分子が本明細書に提供される。
【0070】
一態様では、
(i)MPLに結合する第1の標的化部分、
(ii)ホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)、例えば、CD45、CD148、またはLARに結合する第2の標的化部分、および
(iii)TGF-βアンタゴニスト、例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体、またはその機能的断片もしくは変異型、例えばTGFβ受容体I型の細胞外ドメインまたはTGFβ受容体II型の細胞外ドメインを含むポリペプチドを含む多重特異性分子が本明細書に提供される。
【0071】
いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、表6の任意のアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと75%、8-0%、85%、90%、95%、または99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、15、または20個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、NK細胞への結合およびその活性化を媒介するNK細胞エンゲージャーを含む。他の実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、NK細胞への結合を媒介するが、その活性化は媒介しないNK細胞エンゲージャーを含む。例示的なNK細胞エンゲージャーは、抗体分子、例えば、抗原結合ドメイン、またはNKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、CD16(例えば、CD16a、CD16b、またはその両方)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(SLAMF4または2B4とも呼ばれる)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2E、もしくはCD160に結合(例えばそれ
らを活性化するリガンドから選択され得る。いくつかの実施形態では、NK細胞エンゲージャーは、抗体分子、例えばNKp30またはNKp46に結合する抗原結合ドメインである。
【0073】
いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、T細胞への結合およびその活性化を媒介するT細胞エンゲージャーを含む。他の実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、T細胞への結合を媒介するが、その活性化は媒介しないT細胞エンゲージャーを含む。
【0074】
多重特異性分子の他の実施形態では、NK細胞エンゲージャーはリガンドであり、場合により、リガンドは免疫グロブリン定常領域、例えばFc領域をさらに含む。例えば、NKp44またはNKp46のリガンドはウイルスHAであり、DAP10のリガンドはNKG2Dの共受容体であり、CD16のリガンドは、CD16a/bリガンド、例えば抗体Fc領域をさらに含むCD16a/bリガンドである。
【0075】
他の実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、B細胞、T細胞、マクロファージ、または樹状細胞のうちの1つ以上への結合、またはそれらの活性化、またはその両方を媒介する。
【0076】
多重特異性分子の他の実施形態では、T細胞エンゲージャーは、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRζ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226のアゴニストである。他の実施形態では、T細胞エンゲージャーは、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRζ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226に結合するが、それらを活性化しない。
【0077】
いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、CD40リガンド(CD40L)もしくはCD70リガンド、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子、OX40に対する抗体分子、OX40リガンド(OX40L)、Toll様受容体のアゴニスト(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4)またはTLR9アゴニスト)、41BB、CD2アゴニスト、CD47、またはSTINGアゴニスト、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるB細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞エンゲージャーを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、B細胞エンゲージャーは、CD40L、OX40L、もしくはCD70リガンド、またはOX40、CD40、もしくはCD70に結合する抗体分子である。
【0079】
他の実施形態では、マクロファージ細胞エンゲージャーは、CD2アゴニスト、CD40L、OX40L、OX40、CD40、もしくはCD70に結合する抗体分子、Toll様受容体(TLR)のアゴニスト(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4)またはTLR9アゴニスト)、CD47、またはSTINGアゴニストである。
【0080】
さらに他の実施形態では、樹状細胞エンゲージャーは、CD2アゴニスト、OX40抗体、OX40L、41BBアゴニスト、Toll様受容体アゴニストもしくはその断片(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4))、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニストである。例えば、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド、例えば、環状ジGMP(cdGMP)、環状ジAMP(cdAMP)、またはそれらの組み合わせを、場合により2’,5’または3’,5’リン酸結合とともに含み得る。STINGアゴニストは、例えば既知の技法により、多重特異性または多機能性MPLアンタゴニスト分子に共有結合され得る。
【0081】
他の実施形態では、多重特異性分子は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-21(IL-21)、もしくはインターフェロンガンマ、またはそれらの断片もしくは変異型、または前述のサイトカインのいずれかの組み合わせから選択されるサイトカイン分子を含み得る。サイトカインは、単量体または二量体であり得る。例えば、サイトカイン分子は、受容体二量体化ドメイン、例えばIL15Rアルファ二量体化ドメインをさらに含み得る。他の実施形態では、サイトカイン分子(例えばIL-15)および受容体二量体化ドメイン(例えばIL15Rアルファ二量体化ドメイン)は共有結合されず、例えば、非共有結合される。
【0082】
本明細書に開示される多重特異性分子のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の腫瘍標的化部分、例えばMPL以外の標的を標的とする腫瘍標的化部分は、メソセリン、PDL1、HER3、IGF1R、FAP、CD47、またはCD123から選択されるがん抗原に対する抗体分子から選択される。例えば、腫瘍標的化部分は、メソセリンまたはPDL1に結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含み得る。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化部分はPDL1に結合し、PDL1とPD1との相互作用を阻害する。他の実施形態では、腫瘍標的化部分はPDL1に結合し、PD L1とPD1との相互作用を阻害しない。
【0083】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、3つまたは4つの結合特異性または機能を含み、例えば三重特異性または四重特異性分子である。いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性分子は、(i)少なくとも2つの腫瘍標的化部分、免疫細胞エンゲージャー、およびサイトカイン分子、(ii)腫瘍標的化部分、免疫細胞エンゲージャー、および間質修飾部分、あるいは(iii)MPL、メソセリン、PDL1、HER3、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、またはインスリン成長因子1R(IGF1R)、CD47もしくはCD123から選択される2つのがん抗原に結合する少なくとも2つの腫瘍標的化部分(但し、2つのがん抗原はFAPおよびIGF1Rではないことを条件とする)、ならびにサイトカイン分子を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)は、MPL標的化部分、免疫細胞エンゲージャー、またはサイトカイン分子のうちの1つ以上に結合、例えば共有結合される。
【0085】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、リンカー、例えば、MPL標的化部分とサイトカイン分子、MPL標的化部分と免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子もしくはおよび免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)、標的化部分と免疫グロブリン鎖定常領域、または免疫細胞エンゲージャーと免疫グロブリン鎖定常領域のうちの1つ以上との間にリンカーをさらに含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカー、切断不可能なリンカー、ペプチドリンカー、柔軟なリンカー、剛性リンカー、らせんリンカー、または非らせんリンカーから選択される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーはGlyおよびSerを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドは、第1および第2の非隣接ポリペプチドを含む二重特異性分子であり、
(i)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、場合によりリンカーを介して、サイトカイン分子、間質修飾部分、もしくは免疫細胞エンゲージャー、例えば抗体分子、例えば免疫細胞抗原に結合するscFvに接続される、例えばがん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、もしくは血液学的抗原に結合する、腫瘍標的化部分、例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)を含み、
(ii)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、例えばがん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、もしくは血液学的抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じ腫瘍または間質抗原)に結合する第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFabの第1のVL-CLを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドは、第1および第2の非隣接ポリペプチドを含む二重特異性分子であり、
(i)第1のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、場合によりリンカーを介して、第1と第2のポリペプチドとの間の会合を促進する第1のドメイン(例えば第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば本明細書に記載される第1のFc分子)に接続される、例えばがん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、もしくは血液学的抗原に結合する、腫瘍標的化部分、例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)を含み、
(ii)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、場合によりリンカーを介して、第1と第2のポリペプチドとの間の会合を促進する第2のドメイン(例えば第2の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば本明細書に記載される第2のFc分子)に接続される、サイトカイン分子、間質修飾部分、もしくは免疫細胞エンゲージャー(例えば免疫細胞抗原に結合する抗体分子、例えばscFv)を含み、
(iii)第3のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、がん抗原に結合する第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFabの第1のVL-CLを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、
a)第1と第2のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む第1のポリペプチド、ならびにMPL標的化部分または免疫細胞エンゲージャーから選択されるポリペプチドと、
b)MPL標的化部分または免疫細胞エンゲージャーから選択される第2のポリペプチドと、
c)第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む第3のポリペプチド、ならびにMPL標的化部分、免疫細胞エンゲージャー、またはサイトカイン分子から選択されるポリペプチドと、
d)場合により、MPL標的化部分または免疫細胞エンゲージャーから選択される第4
のポリペプチドと、を含み、
この多重特異性または多機能性MPLアンタゴニスト分子は、1つのMPL標的化部分および免疫細胞エンゲージャーもしくはサイトカイン分子、または2つのMPL標的部分を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、
MPL標的化部分および免疫細胞エンゲージャー、
MPL標的化部分およびサイトカイン分子、または
2つのMPL標的化部分を含み、
二量体化ドメインをさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、1つのMPL標的化部分および免疫細胞エンゲージャーを含み、このMPL標的化部分はMPLに結合する抗体分子であり、免疫細胞エンゲージャーはNKp46またはNKp30に結合する。
【0092】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、1つのMPL標的化部分およびサイトカイン分子を含み、このMPL標的化部分はMPLに結合する抗体分子であり、サイトカインはIL2である。
【0093】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は2つのMPL標的化部分を含み、このMPL標的化部分は、非重複抗原結合部位を有する2つの抗体分子、例えばMPLタンパク質上の非重複エピトープに結合する抗体分子である。
【0094】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドと、
ii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じ抗原)に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第2のポリペプチドと、
iii)例えば、N-からC-の配向で、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子およびサイトカイン分子を含む第3のポリペプチドと、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、以下の非隣接ポリペプチド:
i)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第1のポリペプチドと、
ii)例えば、N-からC-の配向で、MPL標的化部分、例えばMPL抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じ抗原)に結合する例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第2のポリペプチドと、
iii)例えば、N-からC-の配向で、免疫細胞エンゲージャー、例えば免疫細胞エンゲージャーに結合する例えば抗体分子(例えば第2の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、第1と第3のポリペプチドとの会合を促進するドメイン、例えばFc分子を含む、第3のポリペプチドと、
iv)例えば、N-からC-の配向で、免疫細胞エンゲージャー、例えば免疫細胞エン
ゲージャー(例えば第2のVH-CH1により結合される同じ抗原)に結合する例えば抗体分子(例えば、第2の抗原ドメインの第2の部分、例えばFab分子の第1のVL-CL)を含む、第4のポリペプチドと、を含む。
【0096】
核酸、宿主細胞、ベクター、および方法
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される任意の多重特異性分子をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0097】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される多重特異性分子のいずれかをコードするヌクレオチド配列、またはそれと実質的に相同(例えば、それに少なくとも95%同一)なヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0098】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される任意の核酸分子のうちの1つ以上を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。
【0099】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0100】
別の態様では、本開示は、好適な条件下、例えば、遺伝子発現および/またはホモもしくはヘテロ二量体化に好適な条件下で、本明細書に記載される宿主細胞を培養することを含む、本明細書に記載される多重特異性分子を作製、例えば産生する方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される多重特異性分子および薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む医薬組成物を提供する。
【0102】
別の態様では、本開示は、がんを治療する方法を提供し、それを必要とする対象に本明細書に記載される多重特異性または多機能性分子を投与することを含み、この多重特異性抗体は、がん、例えば血液癌、例えば骨髄線維症を治療するのに有効な量で投与される。
【0103】
本明細書に記載される多重特異性分子を使用して治療することができる例示的ながんとしては、B細胞またはT細胞悪性腫瘍、例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病)、骨髄線維症、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、および急性リンパ球性白血病(ALL)を含むがこれらに限定されない、腫瘍、例えば血液癌が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、がんは骨髄線維症である。
【0104】
他の実施形態では、がんは、固形腫瘍癌、または転移病変である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍癌は、膵臓癌(例えば膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞または非小細胞肺癌)、皮膚癌、卵巣癌、または肝臓癌のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、がんは血液癌である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本方法は、第2の治療処置を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療処置は、治療薬(例えば、化学療法薬、生物学的薬剤、ホルモン療法)、放射線、または手術を含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、化学療法薬、または生物学的薬剤から選択される。
【0106】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記
載されるものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および例は、単に例示であり、限定することを意図していない。
【0107】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1図1A~1Dは、その不活性型(図1A)の、またはリガンドもしくは抗体断片によって結合された(図1B~1D)TPO受容体としても知られるMPL受容体の模式図を示す。本明細書に記載される例示的なMPL結合分子は、図1C~1Dに示される。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本明細書では、1つ以上の結合特異性(または機能性)を含む多重特異性分子(本明細書では「多機能性分子」とも呼ばれる)が開示され、この分子は、MPL発現細胞、例えばがん細胞に選択的に局在する結合特異性を含む(例えば、それはMPL標的化部分を含む)。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される多重特異性または多機能性分子は、単一のMPLタンパク質に結合し、例えばTPOの存在下でもMPL二量体化を阻害し、これによりMPL生物活性を低減することができる。実施形態では、本明細書に記載される多重特異性または多機能性分子は、単一のMPLポリペプチドのECD上の1つ以上のエピトープに結合することにより、MPL二量体化、例えばTPO媒介MPL二量体化を拮抗する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子またはMPL結合分子は、1つのMPLタンパク質ECD上の1つのエピトープにのみ結合する単一のハーフアーム抗体を含む(図1Cを参照されたい)。他の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子またはMPL結合分子は、同じMPLタンパク質ECD上の2つのエピトープに結合する二重特異性、例えば二重パラトープ抗体分子を含む(図1Dを参照されたい)。理論に拘束されることを望むものではないが、多重特異性分子またはMPL結合分子は、天然のリガンドTPOの存在下でも、その後の活性化に必要な立体構造変化を遮断することができると予想される。本明細書に開示される多重特異性分子またはMPL結合分子は、二価の抗MPL抗体、例えば二価のアゴニスト抗体を一価(ハーフアーム)の抗体分子に変換するか、または2つの異なる抗体、例えばMPL上の2つの異なるエピトープに結合するアゴニスト抗体を組み合わせ、それらを単一の二重特異性、例えば、二重パラトープのアンタゴニスト抗体分子に変換することによるいずれかによって設計することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、図1Cおよび1Dに示される多重特異性分子またはMPL結合分子は、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えばMPL以外の腫瘍標的を標的とする腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、図1Cおよび1Dに示される多重特異性分子またはMPL結合分子は、抗CD41抗体分子、抗CD177抗体分子、抗PDL1抗体分子、抗CD3抗体分子、抗TGFβ抗体分子、TGFβトラップポリペプチド(例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体の一部を含むポリペプチド)、抗IL1β抗体分子、IL1βトラップポリペプチド(例えば、IL1βに結合することができるIL1β受容体の一部を含むポリペプチド)、抗CXCL10抗体分子、抗MS4A3抗体分子、抗OLFM4抗体分子、抗CD66b抗体分子、抗cKit抗体分子、抗FLT3抗体分子、
または抗CD133抗体分子のうちの1つ以上をさらに含む。
【0112】
したがって、本明細書では、とりわけ、単一のMPLタンパク質(例えば、同じMPLタンパク質)上の1つ以上の領域、例えば1つ以上のエピトープに結合する多重特異性分子(例えば、多重特異性または多機能性抗体分子)が提供される。一実施形態では、多重特異性分子は、2つのMPL標的化部分であるか、またはそれを含み、例えば、それは二重パラトープ分子であり、例えば、同じMPLタンパク質上の2つの異なるエピトープ(例えば、非重複エピトープ)に結合する。実施形態では、二重パラトープ分子は、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0113】
別の実施形態では、多重特異性分子は、単一のMPL標的化部分、例えば、MPLに対するハーフアーム抗体(例えば免疫グロブリン定常ドメイン(例えば第1のFc定常領域(例えば第1のCH2-CH3)に融合したFab)であるか、またはそれを含む。場合により、ハーフアーム抗体は、第2の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば第2の重鎖定常領域、例えば第2のFc定常領域)に二量体化(例えばホモまたはヘテロ二量体化)される。実施形態では、MPL標的化部分および/または第2の免疫グロブリン定常ドメインは、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする第2の腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0114】
JAK2のいくつかの異なる点突然変異、欠失、または挿入が血液疾患に関連している。Haan C,et al.,J Cell Mol Med.2010;14(3):504-527(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。JAK2のJH2ドメインにおける突然変異は、エクソン14、エクソン16、およびエクソン12によってコードされた3つの領域に集中している。JAK2のJH1ドメインにおける疾患関連突然変異も同定されている。1つの突然変異、V617F(位置617でのバリンからフェニルアラニンへの変化)は、TPOなどのサイトカインに対して造血細胞をより敏感にする。JH2-JH1自己抑制相互作用を不安定化することに加えて、V617Fは、シグナル伝達に重要なJH2媒介の正の相互作用も促進する可能性があると仮定されている。Silvennoinen and Hubbard,Blood.2015 May 28;125(22):3388-3392(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。理論に拘束されることを望むものではないが、V617F突然変異などのJAK2における突然変異は、MPLなどのサイトカイン受容体の立体構造変化を引き起こす可能性があり、そのような立体構造変化は、本明細書に開示されるMPL結合分子または多重特異性分子によって認識され得る。一実施形態では、本明細書に開示されるMPL結合分子または多重特異性分子は、非がん性細胞上で発現されるMPLよりもがん細胞上で発現されるMPLに優先的に結合する(例えば、より大きい親和性で、例えば、MPL結合分子または多重特異性分子が非がん性細胞上で発現されるMPLに結合する場合よりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性でがん細胞上で発現されるMPLに結合する)。一実施形態では、本明細書に開示されるMPL結合分子または多重特異性分子は、野生型JAK2に関連するMPLよりも突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する(例えば、多重特異性分子またはMPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合する)。一実施形態では、本明細書に開示されるMPL結合分子または多重特異性分子は、野生型JAK2を発現する細胞上で発現されるMPLよりも突然変異したJAK2(例えばV617F突然変異を含むJAK2)を
発現する細胞上で発現されるMPLに優先的に結合する(例えば、多重特異性分子またはMPL結合分子が野生型JAK2を発現する細胞上で発現されるMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)を発現する細胞上で発現されるMPLに結合する)。一実施形態では、本明細書に開示されるMPL結合分子または多重特異性分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない。
【0115】
加えて、前述の多重特異性分子をコードする核酸、前述の分子を産生する方法、および前述の分子を使用してがんを治療する方法が開示される。
【0116】
定義
ある特定の用語を以下に定義する。
【0117】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上、例えば、少なくとも1つを指す。本明細書で「含む」という用語とともに使用される場合の「a」または「an」という用語の使用は「1つ」を意味する場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」は、一般に、測定値の性質または精度を所与として、測定された量について許容可能な誤差の程度を意味する。例示的な誤差の程度は、所与の値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0119】
本明細書で使用される場合、例えば、抗体分子、サイトカイン分子、受容体分子で使用される「分子」という用語は、未修飾(例えば天然に存在する)分子の少なくとも1つの機能および/または活性が残存する限り、全長の天然に存在する分子、ならびに変異型、例えば機能変異型(例えば、切り詰め、断片、突然変異(例えば実質的に類似の配列)、またはそれらの誘導体化形態を含む。
【0120】
「機能性変異体」という用語は、天然に存在する配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するか、または実質的に同一のヌクレオチド配列によってコードされ、かつ天然に存在する配列の1つ以上の活性を有することができるポリペプチドを指す。
【0121】
本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、タンパク質、例えば免疫グロブリン鎖またはその断片を指す。抗体分子は、抗体(例えば、全長抗体)および抗体断片を包含する。一実施形態では、抗体分子は、全長抗体の抗原結合断片もしくは機能性断片、または全長免疫グロブリン鎖を含む。例えば、全長抗体は、天然に存在するか、または正常な免疫グロブリン遺伝子断片の組換えプロセス)によって形成される免疫グロブリン(Ig)分子(例えばIgG抗体)である。実施形態では、抗体分子は、抗体断片などの、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部分を指す。抗体断片、例えば機能断片は、抗体の一部、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab)、可変断片(Fv)、ドメイン抗体(dAb)、または単鎖可変断片(scFv)である。機能抗体断片は、インタクトな(例えば全長)抗体によって認識されるものと同じ抗原に結合する。「抗体断片」または「機能断片」という用語は、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、または軽および重可変領域がペプチドリンカーによって接続される組換え単鎖ポリペプチド分子(「s
cFvタンパク質」)などの、可変領域からなる単離された断片も含む。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fc断片または単一のアミノ酸残基などの抗原結合活性を有しない抗体の部分を含まない。例示的な抗体分子には、全長抗体および抗体断片、例えば、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)断片、ならびに単鎖可変断片(scFv)が含まれる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「二重パラトープ抗体」という用語は、同じ標的受容体上の2つの異なるエピトープに結合する抗体分子、例えばMPL受容体上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0123】
「非重複結合部位」、例えば「非重複エピトープ」という用語は、互いに異なる結合部位、例えばエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)を含む。いくつかの実施形態では、非重複結合部位、例えばエピトープは、互いに結合について競合しない2つの異なる結合剤、例えば抗体分子によって結合される。他の実施形態では、非重複結合部位、例えばエピトープは、部分的に重複する、例えば、互いに結合するために競合する2つの異なる抗体分子によって結合される。
【0124】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成し得るアミノ酸配列を指す。例えば、この配列は、天然に存在する可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を含んでもよい。例えば、この配列は、1つ、2つ、またはそれ以上のN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸を含む場合も含まない場合もあり、あるいはタンパク質構造の形成と適合する他の改変を含んでもよい。
【0125】
実施形態では、抗体分子は単一特異性であり、例えば、単一のエピトープに対する結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、抗体分子は、多重特異性であり、例えば、それは複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対して結合特異性を有し、第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対して結合特異性を有する。いくつかの実施形態では、抗体分子は二重特異性抗体分子である。本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体分子」は、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ以上)のエピトープおよび/または抗原に対して特異性を有する抗体分子を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、「抗原」(Ag)は、例えば、ある特定の免疫細胞の活性化および/または抗体生成を伴う免疫応答を誘発することができる分子を指す。ほとんど全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原であり得る。抗原は、ゲノム組換えまたはDNAから得ることができる。例えば、免疫応答を誘発することができるタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは「抗原」をコードする。実施形態では、抗原は、遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はなく、また抗原は遺伝子によってコードされる必要も全くない。実施形態では、抗原は合成され得るか、または生物学的試料、例えば組織試料、腫瘍試料、細胞、もしくは他の生物学的成分を有する流体から得ることができる。本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」または交換可能に「がん抗原」は、免疫応答を誘発することができるがん、例えばがん細胞もしくは腫瘍微小環境上に存在するか、またはそれと関連する任意の分子を含む。本明細書で使用される場合、「免疫細胞抗原」には、免疫応答を誘発することができる免疫細胞上に存在するか、またはそれと関連する任意の分子が含まれる。
【0127】
抗体分子の「抗原結合部位」または「結合部分」は、抗原結合に関与する抗体分子の一部、例えば免疫グロブリン(Ig)分子を指す。実施形態では、抗原結合部位は、重鎖(H)および軽鎖(L)の可変(V)領域のアミノ酸残基によって形成される。超可変領域
と呼ばれる重鎖および軽鎖の可変領域内の高度に多岐にわたる3つのストレッチは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された隣接ストレッチ間に配置される。FRは、免疫グロブリンの超可変領域の間、およびそれに隣接して天然に見られるアミノ酸配列である。実施形態では、抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、3次元空間で互いに対して配置されて、結合抗原の3次元表面に相補的な抗原結合表面を形成する。重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。フレームワーク領域およびCDRは、例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human
Services,NIH Publication No.91-3242およびChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917において定義および記載されている。各可変鎖(例えば、可変重鎖および可変軽鎖)は典型的には、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、アミノ酸順にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4に配置される。
【0128】
本明細書で使用される場合、「がん」は、あらゆる種類の発がんプロセスおよび/またはがん性成長を包含し得る。実施形態では、がんには、原発腫瘍、ならびに転移組織、または悪性に形質転換された細胞、組織、もしくは臓器が含まれる。実施形態では、がんは、がんの全ての組織病理学および病期、例えば侵襲性/重症度の病期を包含する。実施形態では、がんには、再発性および/または耐性がんが含まれる。「がん」および「腫瘍」という用語は交換可能に使用され得る。例えば、両方の用語は、固形および液性腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、「がん」または「腫瘍」という用語には、前悪性ならびに悪性のがんおよび腫瘍が含まれる。
【0129】
本明細書で使用する場合、「免疫細胞」は、免疫系で機能する、例えば感染および異物の物質から保護するための様々な細胞のいずれかを指す。実施形態では、この用語には、白血球、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、および単球が含まれる。自然白血球には、食細胞(例えば、マクロファージ、好中球、および樹状細胞)、マスト細胞、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞が含まれる。自然白血球は、病原体を同定し、接触により大きな病原体を攻撃するか、または微生物を飲み込んで殺傷するかのいずれかによって排除し、適応免疫応答の活性化のメディエーターである。適応免疫系の細胞は、リンパ球と呼ばれる特殊な種類の白血球である。B細胞およびT細胞は重要な種類のリンパ球であり、骨髄の造血幹細胞に由来する。B細胞は体液性免疫応答に関与しているが、T細胞は細胞媒介免疫応答に関与している。「免疫細胞」という用語には、免疫エフェクター細胞が含まれる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫応答、例えば免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例としては、T細胞、例えばアルファ/ベータT細胞およびガンマ/デルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NK T)細胞、ならびにマスト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
「エフェクター機能」または「エフェクター応答」という用語は、細胞の特殊機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。
【0132】
本発明の組成物および方法は、特定の配列、またはそれと実質的に同一または類似の配列、例えば特定の配列と少なくとも85%、90%、95%以上同一の配列を有するポリ
ペプチドおよび核酸を包含する。アミノ酸配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書では、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列の整列されたアミノ酸残基と、i)同一、またはii)その保存的置換である十分なまたは最小数のアミノ酸残基を含む第1のアミノ酸を指すように使用される。例えば、参照配列、例えば本明細書に提供される配列と少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含むアミノ酸配列。
【0133】
ヌクレオチド配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書では、第1および第2のヌクレオチド配列が共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通の構造的ポリペプチドドメインもしくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第2の核酸配列の整列されたヌクレオチドと同一である十分なまたは最小数のヌクレオチドを含む第1の核酸配列を指すように使用される。例えば、参照配列、例えば本明細書に提供される配列と少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するヌクレオチド配列。
【0134】
配列間の相同性または配列同一性の計算(これらの用語は本明細書では交換可能に使用される)は、次のように行われる。
【0135】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、最適な比較目的のために配列を整列させる(例えば、最適な整列のために、ギャップが第1および第2のうちの1つまたは両方のアミノ酸または核酸に導入され得、比較目的のための非相同配列は無視され得る)。好ましい実施形態では、比較目的のために整列された参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。
【0136】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な整列のために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列で共有される同一の位置の数の関数である。
【0137】
配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、もしくは4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズムを使用して決定される。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、または80のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを使用して決定される。特に好ましいパラメータのセット(および特に指定のない限り使用されるべきもの)は、ギャップペ
ナルティ12、ギャップ拡張ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5のBlossum62スコアリングマトリックスである。
【0138】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller((1989) CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0139】
本明細書に記載される核酸およびタンパク質配列は、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公共データベースに対して検索を行うための「クエリ配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行い、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行い、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップのある整列を得るには、Altschul et al.,(1997)Nucleic
Acids Res.25:3389-3402に記載されるように、ギャップのあるBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップのあるBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0140】
本発明の分子は、追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有してもよく、それらはそれらの機能に実質的な影響を及ぼさないことが理解される。
【0141】
「アミノ酸」という用語は、天然または合成にかかわらず、アミノ官能性および酸官能性の両方を含み、天然に存在するアミノ酸のポリマーに含まれることができる、全ての分子を包含することを意図している。例示的なアミノ酸としては、天然に存在するアミノ酸、その類似体、誘導体、および同族体、変異型側鎖を有するアミノ酸類似体、ならびに前述のいずれかのいずれかの全ての立体異性体が挙げられる。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、D-またはL-光学異性体およびペプチド模倣物の両方を含む。
【0142】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で代置されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0143】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」(単鎖の場合)という用語は、本明細書では交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、線状または分岐していてもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。本用語には、修飾されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフ
ィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲートなどの任意の他の操作も包含される。ポリペプチドは、天然源から単離することができるか、真核生物または原核生物の宿主から組換え技術により産生することができるか、または合成手順の産物であり得る。
【0144】
「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」という用語は交換可能に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得、一本鎖の場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどにより、重合後にさらに修飾され得る。核酸は、組換えポリヌクレオチド、または天然に存在しないか、もしくは非天然の配置で別のポリヌクレオチドに結合されるかのいずれかのゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドであり得る。
【0145】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、その元のまたは自生の環境(例えば、それが天然に存在する場合は天然の環境)から取り出された物質を指す。例えば、生きている動物中にある天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然系において共存する物質のいくつかまたは全てから人間の介入によって分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離される。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得、かつ/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり、かつそのようなベクターまたは組成物が、それが天然に見出される環境の一部ではないという点で、やはり単離され得る。
【0146】
本発明の様々な態様を以下でさらに詳細に記載する。追加の定義は、本明細書全体を通して詳述される。
【0147】
MPL標的化部分
本開示は、とりわけ、細胞、例えば腫瘍または造血細胞に分子を指向する1つ以上のMPL特異的標的化部分を含む、例えば含むように操作される、多重特異性分子(例えば二重特異性体、例えば二重パラトープ分子)を提供する。
【0148】
「MPL」は、CD110またはTPOR(トロンボポイエチン受容体)としても知られる骨髄増殖性白血病タンパク質(MPL)を指し、ヒトMPLタンパク質ならびにその種、アイソフォーム、および他の配列変異型に関する。したがって、MPLは、天然の全長タンパク質であり得るか、または天然タンパク質の少なくとも1つの生物活性、例えば血小板産生を保持する切り詰められた断片または配列変異型(例えば、天然に存在するアイソフォーム、または組換え変異型)であり得る。MPLタンパク質には、2つの細胞外サイトカイン受容体ドメインおよび2つの細胞内サイトカイン受容体ボックスモチーフを有する。MPLは、主にヒト造血細胞上で発現し、例えば巨核球形成を調節する(reviewed in Ng et al.,“Mpl expression on megakaryocytes and platelets is dispensable for thrombopoiesis but essential to prevent myeloproliferation”,PNAS,Vol.111,Issue 16,5884-5889,doi:10.1073/pnas.1404354111において概説される)。
【0149】
MPLの天然リガンドであるトロンボポエチン(TPO)のMPLの細胞外ドメインへ
の結合は、細胞内リン酸化およびJAK2キナーゼ経路の活性化をもたらす立体構造変化をもたらすMPL二量体化を誘導する。MPL生物活性は、抗MPL抗体、例えば、US7,993,642、US6,342,220、US8,034,903、およびUS2012/0269814A1(それらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される抗体で調節することができる。
【0150】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、MPL標的化部分を含む。MPL標的化部分は、抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗原結合ドメイン)、受容体もしくは受容体断片、またはリガンドもしくはリガンド断片、またはそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、MPL標的化部分は、がんまたは造血細胞(例えばがんまたは造血細胞の表面上に存在する分子、例えば抗原)と会合する、例えばそれに結合する。ある特定の実施形態では、MPL部分は、本明細書に開示される多重特異性分子をがんまたは造血細胞に標的化、例えば指向する。いくつかの実施形態では、がんは血液癌、例えば骨髄線維症である。
【0151】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子、例えばMPL標的化部分は、細胞、例えばがんまたは造血細胞の表面上のMPL抗原に結合する。MPL抗原は、原発腫瘍細胞またはその転移病変上に存在し得る。いくつかの実施形態では、がんは血液癌、例えば骨髄線維症である。例えば、MPL抗原は、腫瘍、例えば、制限された腫瘍灌流、圧迫血管、または線維性腫瘍間質のうちの1つ以上を有することにより代表されるクラスの腫瘍上に存在し得る。
【0152】
例示的なMPL標的化部分
本明細書に記載の多重特異性分子は、US7,993,642、US6,342,220、US8,034,903、およびUS2012/0269814A1(それらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される抗MPL抗体またはその抗原結合断片を含むMPL標的化部分を含み得る。
【0153】
一実施形態では、MPL標的化部分は、MPLに結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1のアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0154】
あるいは、または本明細書に開示されるMPLに対する重鎖と組み合わせて、MPLに対する抗体分子は、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1のアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0155】
一実施形態では、MPL標的化部分は、MPLに結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号1の重鎖可変ドメイン配列(表1を参照されたい)に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号1のCDR配列に由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。
【0156】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号1)の重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0157】
実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、配列番号69のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号69のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する重鎖定常領域(CH1)をさらに含む。
【0158】
あるいは、または本明細書に開示されるMPLに対する重鎖と組み合わせて、MPLに対する抗体分子は、配列番号2の軽鎖可変ドメイン配列(表1を参照されたい)に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、配列番号2のCDR配列に由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号2の軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、アミノ酸配列の配列番号70(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号70のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域(CL(カッパ))をさらに含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、MPLに対する抗体分子はFabであり、配列番号71のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号71のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域(CL(ラムダ))をさらに含む。
【0162】
他の実施形態では、MPLに対する抗体分子は、表1に示される可変ドメインの対のいずれか、例えば、同じ抗体分子に由来する可変重および可変軽ドメイン、例えば、配列番号3の可変重ドメインおよび配列番号4の可変軽ドメインの、重鎖可変ドメインに由来す
る1つ、2つ、もしくは3つのCDR、および軽鎖可変ドメイン配列に由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDRを含む。
【0163】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号3の重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、および配列番号4の軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0164】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号49の配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号49のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む単鎖Fvである。
【0165】
実施形態では、抗体分子は、
(i)配列番号69のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号69のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、重鎖定常領域(CH1)、
(ii)配列番号70のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号70のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域(CL(カッパ))、あるいは
(iii)配列番号71のアミノ酸配列(表2を参照されたい)、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号71のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域(CL(ラムダ))をさらに含む。
【0166】
実施形態では、MPLに対する抗体分子は、配列番号50~56のいずれか、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは配列番号50~56のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む単鎖Fvである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表2-1】
【表2-2】
【0167】
ホスファターゼ標的化部分
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、ホスファターゼ標的化部分を含む。一実施形態では、多重特異性分子は、MPLに結合する第1の標的化部分(例えば本明細書に開示されるMPL標的化部分)、およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む。一実施形態では、ホスファターゼおよびMPLは同じ細胞で発現される。一実施形態では、ホスファターゼは、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる。一実施形態では、ホスファターゼは、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される。一実施形態では、ホスファターゼはCD45である。一実施形態では、ホスファターゼはCD148である。一実施形態では、ホスファターゼはLARである。
【0168】
CD45標的化部分
受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼC、白血球共通抗原(LCA)、またはT200としても知られるCD45は、遺伝子PTPRCによりコードされる。CD45には、代替スライスによって産生されるいくつかのアイソフォーム、例えば、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、およびCD45R(ABC)がある。
【0169】
一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、CD45アイソフォームに結合する標的化部分を含む。一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、1つのCD45アイソフォームに特異的に結合する標的化部分を含む。一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、2つ以上のCD45アイソフォームに結合する標的化部分を含む。一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、全てのCD45アイソフォームに結合する標的化部分を含む。
【0170】
例示的なCD45標的化部分
例示的なCD45標的化部分は、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、US5273738、US7265212、US7825222、US2004/0096901、WO2005/026210、WO2016/187514、およびWO2017/009473に開示されている。
【0171】
一実施形態では、CD45標的化部分は、CD45に結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。
【0172】
一実施形態では、CD45標的化部分は、抗体BC8または9.4のCDR配列、重鎖
もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列、あるいはそれらと70、75、80、85、90、もしくは99%の同一性を共有する配列のうちの1つ以上を含む。抗体BC8または9.4を産生するハイブリドーマは、それぞれ受託番号HB10507およびHB10508でATCCに寄託された。一実施形態では、CD45標的化部分は、抗体クローン30-F11または5B1(Miltenyi Biotec)のCDR配列、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列、あるいはそれらと70、75、80、85、90、もしくは99%の同一性を共有する配列のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、CD45標的化部分は、抗体YTH-24、YTH-24/54、YTH-25.4、またはYTH-54.12のCDR配列、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列、あるいはそれらと70、75、80、85、90、もしくは99%の同一性を共有する配列のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、CD45標的化部分は、抗体YAML568のCDR配列、重鎖もしくは軽鎖可変領域配列、または重鎖もしくは軽鎖配列、あるいはそれらと70、75、80、85、90、もしくは99%の同一性を共有する配列のうちの1つ以上を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、CD45標的化部分は、表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD45標的化部分は、表3のアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0174】
あるいは、または本明細書に開示されるCD45に対する重鎖と組み合わせて、CD45標的化部分は、表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD45標的化部分は、表3のアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それに95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0175】
CD148標的化部分
受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼeta(R-PTP-eta)または密度増強ホスファターゼ1(DEP-1)としても知られるCD148は、遺伝子PTPRJによってコードされる。
【0176】
一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、CD148に結合する標的化部分を含む。
【0177】
例示的なCD148標的化部分
例示的なCD148標的化部分は、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、US2009/0263383およびUS7195762に開示されている。
【0178】
一実施形態では、CD148標的化部分は、CD148に結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、CD148標的化部分は、表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例
えば、表4のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD148標的化部分は、表4のアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0180】
あるいは、または本明細書に開示されるCD148に対する重鎖と組み合わせて、CD148標的化部分は、表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、CD148標的化部分は、表4のアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それに95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【表4-1】
【表4-2】
【0181】
LAR標的化部分
受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼFとしても知られる白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)は、遺伝子PTPRFによってコードされる。
【0182】
一実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、LARに結合する標的化部分を含む。
【0183】
例示的なLAR標的化部分
例示的なLAR標的化部分は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、US7858086、US6846912、およびUS6852486に開示されている。
【0184】
一実施形態では、LAR標的化部分は、LARに結合する抗体分子(例えばFabまたはscFv)を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、LAR標的化部分は、表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、LAR標的化部分は、表5のアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【0186】
あるいは、または本明細書に開示されるLARに対する重鎖と組み合わせて、LAR標的化部分は、表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5のCDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDRを含む。いくつかの実施形態では、LAR標的化部分は、表5のアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それに95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む。
【表5】
【0187】
TGFβアンタゴニスト
本開示は、TGFβアンタゴニスト、例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体、またはその機能断片もしくは変異型を含むポリペプチドを含む多重特異性分子も提供する。一実施形態では、TGFβアンタゴニストはTGFβ受容体の細胞外ドメインを含む。一実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体I型の細胞外ドメイン、またはその機能断片もしくは変異型を含む。アクチビン受容体様キナーゼ5(ALK-5)またはセリン/スレオニン-プロテインキナーゼ受容体R4(SKR4)としても知られるTGFβ受容体I型は、遺伝子TGFBR1によってコードされる。一実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ受容体II型の細胞外ドメイン、またはその機能断片もしくは変異型を含む。TGFβ受容体II型は遺伝子TGFBR2によってコードされる。一実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3からなる群から選択されるTGFβに結合する。一実施形態では、TGFβアンタゴニストは、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の全てに結合する。一実施形態では、TGFβアンタゴニストはTGFβ1およびTGFβ3に結合する。
【0188】
例示的なTGFβアンタゴニスト
例示的なTGFβアンタゴニストは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、US8993524、US9676863、US9611306、US8318135、およびWO2017/0377634に開示されている。
【0189】
いくつかの実施形態では、TGFβアンタゴニストは、表6の任意のアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと75%、8-0%、85%、90%、95%、または99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、15、または20個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存置換)であるアミノ酸配列を含む。
【表6-1】
【表6-2】
【0190】
腫瘍標的化部分
本開示は、とりわけ、分子を腫瘍細胞に指向する、1つまたは2つの腫瘍特異性標的化部分、例えばMPLおよびMPL以外の標的に結合する腫瘍標的化部分を含むか、または含むように操作される多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性)分子を提供する。
【0191】
本明細書で使用される場合、「腫瘍標的化部分」は、がん細胞内の標的を認識またはそれと会合する、例えばそれに結合する結合剤を指す。腫瘍標的化部分は、がん抗原(例え
ば、MPL、腫瘍、および/または間質抗原)に結合する、抗体分子、受容体分子(例えば、全長受容体、その受容体断片、または融合体(例えば、受容体-Fc融合体))、またはリガンド分子(例えば、全長リガンド、そのリガンド断片、もしくは融合体(例えば、リガンド-Fc融合体))であり得る。実施形態では、腫瘍標的化部分は、標的腫瘍に特異的に結合する、例えば、標的腫瘍に優先的に結合する。例えば、腫瘍標的化部分が抗体分子である場合、それは、約10nM未満、より典型的には10~100pMの解離定数でがん抗原(例えば、MPL、腫瘍抗原、および/または間質抗原)に結合する。
【0192】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、腫瘍標的化部分、例えば、MPL以外の標的に結合する腫瘍標的化部分を含む。腫瘍標的化部分は、抗体分子(例えば、本明細書に記載される抗原結合ドメイン)、受容体もしくは受容体断片、またはリガンドもしくはリガンド断片、またはそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化部分は、腫瘍細胞(例えば腫瘍細胞の表面上に存在する分子、例えば抗原)と会合する、例えばそれに結合する。ある特定の実施形態では、腫瘍標的化部分は、例えば、本明細書に開示される多重特異性分子をがん(例えば、がんまたは腫瘍細胞)に標的化、例えば指向する。いくつかの実施形態では、がんは、血液癌、固形癌、転移癌、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0193】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子、例えば腫瘍標的化部分は、固形腫瘍抗原または間質抗原に結合する。固形腫瘍抗原または間質抗原は、固形腫瘍またはその転移病変上に存在し得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵臓癌(例えば膵臓腺癌)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌(例えば、小細胞または非小細胞肺癌)、皮膚癌、卵巣癌、または肝臓癌のうちの1つ以上から選択される。一実施形態では、固形腫瘍は線維性または線維形成性固形腫瘍である。例えば、固形腫瘍抗原または間質抗原は、腫瘍、例えば、制限された腫瘍灌流、圧迫血管、または線維性腫瘍間質のうちの1つ以上を有することにより代表されるクラスの腫瘍上に存在し得る。
【0194】
ある特定の実施形態では、固形腫瘍抗原は、PDL1、CD47、メソセリン、ガングロシド2(GD2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、前立腺特異的抗原(PSA)、がん胎児性抗原(CEA)、Ronキナーゼ、c-Met、未成熟ラミニン受容体、TAG-72、BING-4、カルシウム活性化クロライドチャネル2、サイクリン-B1、9D7、Ep-CAM、EphA3、Her2/neu、テロメラーゼ、SAP-1、サバイビン、NY-ESO-1/LAGE-1、PRAME、SSX-2、メラン-A/MART-1、Gp100/pmel17、チロシナーゼ、TRP-1/-2、MC1R、β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、Ras、TGF-Β受容体、AFP、ETA、MAGE、MUC-1、CA-125、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、β-カテニン、CDK4、CDC27、CD47、αアクチニン-4、TRP1/gp75、TRP2、gp100、メラン-A/MART1、ガングリオシド、WT1、EphA3、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD20、MART-2、MART-1、MUC1、MUC2、MUM1、MUM2、MUM3、NA88-1、NPM、OA1、OGT、RCC、RUI1、RUI2、SAGE、TRG、TRP1、TSTA、葉酸受容体アルファ、L1-CAM、CAIX、EGFRvIII、gpA33、GD3、GM2、VEGFR、インターグリン(インテグリンアルファVベータ3、インテグリンアルファ5ベータ1)、炭水化物(Le)、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、またはRANKLのうちの1つ以上から選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍抗原は、PDL1、メソセリン、CD47、GD2、PMSA、PSCA、CEA、Ronキナーゼ、またはc-Metから選択される。
【0196】
他の実施形態では、多重特異性分子、例えば腫瘍標的化部分は、血液癌、例えば白血病またはリンパ腫の表面上に存在する分子、例えば抗原に結合する。いくつかの実施形態では、血液癌はB細胞またはT細胞の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、血液癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、多発性骨髄腫、または急性リンパ球性白血病のうちの1つ以上から選択される。実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群(MDS)以外のものである。実施形態では、血液学的抗原は、CD19、CD33、CD123、またはCD20から選択される。実施形態では、血液学的抗原はCD33以外のものである。CD19、実施形態では、血液学的抗原は、CD19、CD20、CD33、CD47、CD123、CD20、CD99、CD30、BCMA、CD38、CD22、SLAMF7、またはNY-ESO1から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子のいずれかも、
(I)
(a)メソセリン、GD2、PMSA、CEA、Ronキナーゼ、もしくはc-Metから選択される固形腫瘍抗原に対する抗体分子、および/または
(b)間質抗原に対する抗体分子は、FAP、ヒアルロン酸、コラーゲンIV、テネイシンC、もしくはテネイシンWから選択されるか、あるいは
(c)固形腫瘍抗原に対する抗体分子と間質抗原に対する抗体分子との組み合わせを含む腫瘍標的化部分をさらに含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、多機能性分子は間質修飾部分を含む。本明細書で使用される場合、「間質修飾部分」は、間質の成分を改変する、例えば分解させることができる薬剤、例えばタンパク質(例えば酵素)を指す。実施形態では、間質の成分は、例えばECM成分、例えばグリコサミノグリカン、例えばヒアルロナン(ヒアルロン酸またはHAとしても知られる)、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、エンタクチン、テネイシン、アグリカンおよびケラチン硫酸、または細胞外タンパク質、例えば、コラーゲン、ラミニン、エラスチン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、およびビトロネクチンから選択される。
【0199】
サイトカイン分子
いくつかの実施形態では、多重特異性分子はサイトカイン分子をさらに含む。本明細書で使用される場合、「サイトカイン分子」は、サイトカインの全長、断片、または変異型を指し、サイトカインは、受容体ドメイン、例えばサイトカイン受容体二量体化ドメイン、または天然に存在するサイトカインの少なくとも1つの活性を誘発する、サイトカイン受容体のアゴニスト、例えばサイトカイン受容体に対する抗体分子(例えばアゴニスト抗体)をさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン分子は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-21(IL-21)、もしくはインターフェロンガンマ、またはそれらの断片もしくは変異型、または前述のサイトカインのいずれかの組み合わせから選択される。サイトカイン分子は、単量体または二量体であり得る。実施形態では、サイトカイン分子は、サイトカイン受容体二量体化ドメインをさらに含み得る。他の実施形態では、サイトカイン分子は、サイトカイン受容体のアゴニスト、例えば、IL-15RaまたはIL-21Rから選択されるサイトカイン受容体に対する抗体分子(例えばアゴニスト抗体)である。
【0200】
サイトカインは一般に、例えばシグナル伝達経路を介して細胞活性に影響を与えるポリペプチドである。したがって、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカインは有用であり、細胞膜の外側からシグナルを伝達して細胞内の応答を調節する受容体媒介シグナル伝達と関連付けることができる。サイトカインは、免疫応答のメディエーターであるタンパク質性シグナル伝達化合物である。それらは、増殖、分化、および細胞生存/アポトーシスを含む多くの異なる細胞機能を制御し、サイトカインは、ウイルス感染および自己免疫疾患を含むいくつかの病態生理学的プロセスにも関与する。サイトカインは、自然(単球、マクロファージ、樹状細胞)および適応(TおよびB細胞)免疫系の両方の様々な細胞によって、様々な刺激下で合成される。サイトカインは、炎症促進性および抗炎症性の2つのグループに分類され得る。IFNγ、IL-1、IL-6、およびTNF-アルファを含む炎症促進性サイトカインは、主に自然免疫細胞およびTh1細胞に由来する。IL-10、IL-4、IL-13、およびIL-5を含む抗炎症性サイトカインは、Th2免疫細胞から合成される。
【0201】
本開示は、とりわけ、1つ以上のサイトカイン分子、例えば免疫調節性(例えば炎症促進性)サイトカインおよびその変異型、例えば機能変異型を含む、例えばそれを含むように操作された多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性)タンパク質を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、サイトカイン分子はインターロイキンまたはその変異型、例えばその機能変異型である。いくつかの実施形態では、インターロイキンは炎症促進性インターロイキンである。いくつかの実施形態では、インターロイキンは、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-7(IL-7)、またはインターフェロンガンマから選択される。いくつかの実施形態では、サイトカイン分子は炎症促進性サイトカインである。
【0202】
ある特定の実施形態では、サイトカインは単鎖サイトカインである。ある特定の実施形態では、サイトカインは多鎖サイトカインである(例えば、サイトカインは2つ以上(例えば2つ)のポリペプチド鎖を含む)。例示的な多鎖サイトカインはIL-12である。
【0203】
有用なサイトカインの例としては、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-21、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TNF-α、およびTNFβが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカインは、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-α、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、およびTGF-βの群から選択されるサイトカインである。
【0204】
一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカインは、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IFN-α、およびIFN-γの群から選択されるサイトカインである。ある特定の実施形態では、サイトカインは、N-および/またはO-グリコシル化部位を除去するために突然変異される。グリコシル化の排除により、組換え産生で得られる産物の均一性が増加する。
【0205】
一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカインはIL-2である。具体的な実施形態では、IL-2サイトカインは、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞における増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、お
よびNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞傷害性からなる群から選択される細胞応答のうちの1つ以上を誘発することができる。別の特定の実施形態では、IL-2サイトカインは、IL-2受容体の.アルファ.-サブユニットに対する結合親和性が低減した変異体IL-2サイトカインである。
【0206】
上記の実施形態のいずれかによるIL-2または変異体IL-2サイトカインは、発現または安定性の増加などのさらなる利点を提供する追加の突然変異を含み得る。例えば、125位のシステインをアラニンなどの中性アミノ酸で代置して、ジスルフィド架橋IL-2二量体の形成を回避することができる。したがって、ある特定の実施形態では、本発明による多重特異性または多機能性ポリペプチドのIL-2または変異体IL-2サイトカインは、ヒトIL-2の残基125に対応する位置に追加のアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、上記追加のアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換C125Aである。
【0207】
別の実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカインはIL-15である。具体的な実施形態では、上記IL-15サイトカインは、IL-15受容体のα-サブユニットに対する結合親和性が低減した変異体IL-15サイトカインである。理論に拘束されることを望むものではないが、IL-15受容体の.アルファ.-サブユニットへの結合が低減した変異体IL-15ポリペプチドは、身体全体の線維芽細胞への結合能が低減し、野生型IL-15ポリペプチドと比較して薬物動態および毒性プロファイルが改善される。記載される変異体IL-2および変異体IL-15のエフェクター部分などの毒性が低減したサイトカインの使用は、Fcドメインの存在により長い血清半減期を有する本発明による多重特異性または多機能性ポリペプチドにおいて特に有利である。一実施形態では、本発明による多重特異性または多機能性ポリペプチドの変異体IL-15サイトカインは、突然変異していない変異体IL-15サイトカインと比較して、変異体IL-15サイトカインの、IL-15受容体の.アルファ.-サブユニットに対する親和性を低減または消失させるが、変異体IL-15サイトカインの中間親和性IL-15/IL-2受容体(IL-15/IL-2受容体の.ベータ.-サブユニットおよび.ガンマ.-サブユニットからなる)に対する親和性を保持する少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、アミノ酸突然変異はアミノ酸置換である。具体的な実施形態では、変異体IL-15サイトカインは、ヒトIL-15の残基53に対応する位置にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、変異体IL-15サイトカインは、アミノ酸置換E53Aを含むヒトIL-15である。一実施形態では、変異体IL-15サイトカインは、ヒトIL-15の位置79に対応する位置にアミノ酸突然変異をさらに含み、これはIL-15のN-グリコシル化部位を排除する。特に、上記追加のアミノ酸突然変異は、アスパラギン残基をアラニン残基に代置するアミノ酸置換である。一実施形態では、IL-15サイトカインは、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞における増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、およびNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞傷害性からなる群から選択される細胞応答のうちの1つ以上を誘発することができる。
【0208】
多重特異性または多機能性ポリペプチドのエフェクター部分として有用な変異体サイトカイン分子は、当該技術分野で周知の遺伝的または化学的方法を使用して、欠失、置換、挿入、または修飾により調製することができる。遺伝的方法には、コード化DNA配列の部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。正しいヌクレオチド変化は、例えば配列決定により検証することができる。置換または挿入には、天然および非天然のアミノ酸残基伴う場合がある。アミノ酸修飾には、グリコシル化部位または炭水化物付着などの付加または除去などの化学修飾の周知の方法が含まれる。
【0209】
一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはGM-CSFである。具体的な実施形態では、GM-CSFサイトカインは、顆粒球、単球、または樹状細胞の増殖および/または分化を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはIFN-αである。具体的な実施形態では、IFN-αサイトカインは、ウイルス感染細胞におけるウイルス複製の阻害、および主要組織適合性複合体I(MHC I)の発現の上方調節からなる群から選択される細胞応答のうちの1つ以上を誘発することができる。別の具体的な実施形態では、IFN-αサイトカインは腫瘍細胞の増殖を阻害することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはIFNγである。具体的な実施形態では、IFN-γサイトカインは、マクロファージ活性の増加、MHC分子の発現の増加、およびNK細胞活性の増加の群から選択される細胞応答のうちの1つ以上を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはIL-7である。具体的な実施形態では、IL-7サイトカインはTおよび/またはBリンパ球の増殖を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはIL-8である。具体的な実施形態では、IL-8サイトカインは好中球の走化性を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはMIP-1αである。具体的な実施形態では、MIP-1αサイトカインは、単球およびTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはMIP-1βである。具体的な実施形態では、MIP-1βサイトカインは単球およびTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドのサイトカイン、特に単鎖サイトカインはTGF-βである。具体的な実施形態では、TGF-βサイトカインは、単球における走化性、マクロファージにおける走化性、活性化マクロファージにおけるIL-1発現の上方調節、および活性化B細胞におけるIgA発現の上方調節からなる群から選択される細胞応答のうちの1つ以上を誘発することができる。
【0210】
一実施形態では、本発明の多重特異性または多機能性ポリペプチドは、対照サイトカインよりも少なくとも約1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、または10倍大きい解離定数(K)でサイトカイン受容体に結合する。別の実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドは、2つ以上のエフェクター部分を含む対応する多重特異性または多機能性ポリペプチドよりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいKでサイトカイン受容体に結合する。別の実施形態では、多重特異性または多機能性ポリペプチドは、2つ以上のサイトカインを含む対応する多重特異性または多機能性ポリペプチドよりも約10倍大きい解離定数Kでサイトカイン受容体に結合する。
【0211】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子はサイトカイン分子を含む。実施形態では、サイトカイン分子は、サイトカインの全長、断片、もしくは変異型、サイトカイン受容体ドメイン、例えばサイトカイン受容体二量体化ドメイン、またはサイトカイン受容体のアゴニスト、例えばサイトカイン受容体に対する抗体分子(例えばアゴニスト抗体)を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、サイトカイン分子は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、IL-21、もしくはインターフェロンガンマ、またはそれらの断片もしくは変異型、または前述のサイトカインのいずれかの組み合わせから選択される。サイトカイン分子は、単量体または二量体であり得る。実施形態では、サイトカイン分
子は、サイトカイン受容体二量体化ドメインをさらに含み得る。
【0213】
他の実施形態では、サイトカイン分子は、サイトカイン受容体のアゴニスト、例えば、IL-15RaまたはIL-21Rから選択されるサイトカイン受容体に対する抗体分子(例えばアゴニスト抗体)である。
【0214】
免疫細胞エンゲージャー
本明細書に開示される多重特異性分子の免疫細胞エンゲージャーは、免疫細胞、例えば免疫エフェクター細胞への結合および/またはその活性化を媒介することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、NK細胞、B細胞、樹状細胞、またはマクロファージ細胞エンゲージャー、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、T細胞エンゲージャー、NK細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャー、またはそれらの組み合わせのうちの1つ、2つ、3つ、または全てから選択される。免疫細胞エンゲージャーは、免疫系のアゴニストであり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、抗体分子、リガンド分子(例えば、免疫グロブリン定常領域、例えば、Fc領域をさらに含むリガンド)、小分子、ヌクレオチド分子であり得る。
【0215】
「免疫細胞エンゲージャー」は、免疫細胞、例えば免疫応答に関与する細胞に結合し、かつ/またはそれを活性化する1つ以上の結合特異性を指す。実施形態では、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、および/またはマクロファージ細胞から選択される。免疫細胞エンゲージャーは、免疫細胞抗原(例えば、NK細胞抗原、B細胞抗原、樹状細胞抗原、および/またはマクロファージ細胞抗原)に結合する、抗体分子、受容体分子(例えば、全長受容体、その受容体断片、または融合体(例えば、受容体-Fc融合体))、またはリガンド分子(例えば、全長リガンド、そのリガンド断片、もしくは融合体(例えば、リガンド-Fc融合体))であり得る。実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、標的免疫細胞に特異的に結合し、例えば、標的免疫細胞に優先的に結合する。例えば、免疫細胞エンゲージャーが抗体分子である場合、約10nM未満、より典型的には10~100pMの解離定数で免疫細胞抗原(例えば、NK細胞抗原、B細胞抗原、樹状細胞抗原、および/またはマクロファージ細胞抗原)に結合する。
【0216】
ナチュラルキラー細胞エンゲージャー
ナチュラルキラー(NK)細胞は、抗体非依存様式で腫瘍およびウイルス感染細胞を認識し破壊する。NK細胞の調節は、NK細胞表面上の受容体を活性化および阻害することにより媒介される。活性化受容体の1つのファミリーは、NKp30、NKp44、およびNKp46を含む天然の細胞傷害性受容体(NCR)である。NCRは、がん細胞上のヘパラン硫酸を認識することにより、腫瘍の標的化を開始する。NKG2Dは、活性化キラー(NK)細胞に刺激性および共刺激性両方の自然免疫応答を提供し、細胞傷害活性をもたらす受容体である。DNAM1は、細胞間接着、リンパ球シグナル伝達、細胞傷害性、ならびに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびNK細胞により媒介されるリンホカイン分泌に関与する受容体である。DAP10(HCSTとしても知られる)は、KLRK1と会合してリンパ球および骨髄細胞で活性化受容体KLRK1-HCSTを形成する膜貫通アダプタータンパク質である。この受容体は、MHCクラスI鎖関連MICAおよびMICBなどの細胞表面リガンド、およびU(場合によりL1)6結合タンパク質(ULBP)を発現する標的細胞に対する細胞傷害性の誘発において主要な役割を果たし、KLRK1-HCST受容体は、腫瘍に対する免疫監視において役割を果たし、また腫瘍細胞の細胞溶解に必要である。実際、KLRK1リガンドを発現しないメラノーマ細胞は、NK細胞により媒介される免疫監視から免れる。CD16はIgGのFc領域の受容体であり、複合または凝集したIgGおよび単量体IgGにも結合し、それによって抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および食作用などの他の抗体依存性応答を媒介する。
【0217】
いくつかの実施形態では、NK細胞エンゲージャーは、ウイルス血球凝集素(HA)であり、HAはインフルエンザウイルスの表面上に見られる糖タンパク質である。上気道の細胞または赤血球など、膜にシアル酸を含む細胞へのウイルスの結合に関与する。HAは少なくとも18の異なる抗原を有する。これらのサブタイプは、H1~H18と名づけられている。NCRはウイルスタンパク質を認識することができる。NKp46は、インフルエンザのHAおよびセンダイウイルスおよびニューカッスル病ウイルスを含むパラミクソウイルスのHA-NAと相互作用することができることが示されている。NKp46に加えて、NKp44は異なるインフルエンザサブタイプのHAと機能的に相互作用することもできる。
【0218】
本開示は、とりわけ、NK細胞への結合および/またはその活性化を媒介する1つ以上のNK細胞エンゲージャーを含むように操作される多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性)タンパク質を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、NK細胞エンゲージャーは、NKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、DAP12、CD16(例えば、CD16a、CD16b、またはその両方)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(SLAMF4または2B4としても知られる)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2E、またはCD160に結合する(例えば活性化する)抗原結合ドメインまたはリガンドから選択される。
【0219】
T細胞エンゲージャー
本開示は、とりわけ、T細胞への結合および/またはその活性化を媒介する1つ以上のT細胞エンゲージャーを含むように操作される多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性)タンパク質を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージャーは、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRζ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226のうちの1つ以上に結合する(例えば、いくつかの実施形態では活性化する)抗原結合ドメインまたはリガンドから選択される。他の実施形態では、T細胞エンゲージャーは、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRζ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226のうちの1つ以上に結合し、それらを活性化しない抗原結合ドメインまたはリガンドから選択される。いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージャーはCD3に結合する。
【0220】
B細胞、マクロファージ、および樹状細胞のエンゲージャー
概して、Bリンパ球としても知られるB細胞は、リンパ球のサブタイプの白血球の一種である。それらは、抗体を分泌することにより、適応免疫系の体液性免疫成分において機能する。加えて、B細胞は抗原を提示し(プロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)としても分類される)、サイトカインを分泌する。マクロファージは白血球の一種で、食作用により細胞残屑、異物、微生物、がん細胞を飲み込み消化する。食作用に加えて、それらは、非特異的防御(自然免疫)において重要な役割を果たし、リンパ球などの他の免疫細胞を動員することにより特定の防御機構(適応免疫)を開始するのにも役立つ。例えば、それらはT細胞に対する抗原提示者として重要である。炎症の増加および免疫系の刺激以外に、マクロファージは重要な抗炎症の役割も果たし、サイトカインの放出を通じて免疫反応を減少させることができる。樹状細胞(DC)は、抗原材料のプロセシングの際に機能し、それを細胞表面上で免疫系のT細胞に提示する抗原提示細胞である。
【0221】
本開示は、とりわけ、B細胞、マクロファージ、および/もしくは樹状細胞への結合および/またはそれらの活性化を媒介する1つ以上のB細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞エンゲージャーを含む、例えば、それらを含むように操作される多重特異性(例えば、二重、三重、四重特異性)タンパク質を提供する。
【0222】
したがって、いくつかの実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、CD40リガンド(CD40L)もしくはCD70リガンド、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子、OX40に対する抗体分子、OX40リガンド(OX40L)、Toll様受容体のアゴニスト(例えば、本明細書に記載される、例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4)またはTLR9アゴニスト)、41BB、CD2、CD47、またはSTINGアゴニスト、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるB細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞エンゲージャーを含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、B細胞エンゲージャーは、CD40L、OX40L、もしくはCD70リガンド、またはOX40、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子である。
【0224】
いくつかの実施形態では、マクロファージエンゲージャーはCD2アゴニストである。いくつかの実施形態では、マクロファージエンゲージャーは、CD40L、またはCD40に結合する抗原結合ドメインもしくはリガンド、Toll様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるような)、例えばTLR9もしくはTLR4(例えば、caTLR4(構成的に活性なTLR4)、CD47、またはSTINGアゴニストに結合する抗原結合ドメインである。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド、例えば環状ジ-GMP(cdGMP)または環状ジ-AMP(cdAMP)である。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストはビオチン化される。
【0225】
いくつかの実施形態では、樹状細胞エンゲージャーはCD2アゴニストである。いくつかの実施形態では、樹状細胞エンゲージャーは、OX40L、41BB、TLRアゴニスト(例えば本明細書に記載されるような)(例えば、TLR9アゴニスト、TLR4(例えばcaTLR4(構成的に活性なTLR4))、CD47、またはおよびSTINGアゴニストのうちの1つ以上に結合するリガンド、受容体アゴニスト、または抗体分子である。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド、例えば環状ジ-GMP(cdGMP)または環状ジ-AMP(cdAMP)である。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストはビオチン化される。
【0226】
他の実施形態では、免疫細胞エンゲージャーは、B細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞のうちの1つ以上への結合またはそれらの活性化を媒介する。例示的な、B細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞エンゲージャーは、CD40リガンド(CD40L)もしくはCD70リガンド、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子、OX40に対する抗体分子、OX40リガンド(OX40L)、Toll様受容体アゴニスト(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4)またはTLR9アゴニスト)、41BBアゴニスト、CD2、CD47、またはSTINGアゴニスト、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0227】
いくつかの実施形態では、B細胞エンゲージャーは、CD40L、OX40L、もしくはCD70リガンド、またはOX40、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子のうちの1つ以上から選択される。
【0228】
他の実施形態では、マクロファージ細胞エンゲージャーは、CD2アゴニスト、CD40L、OX40L、OX40、CD40もしくはCD70に結合する抗体分子、Toll
様受容体アゴニストもしくはその断片(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4))、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニストのうちの1つ以上から選択される。
【0229】
他の実施形態では、樹状細胞エンゲージャーは、CD2アゴニスト、OX40抗体、OX40L、41BBアゴニスト、Toll様受容体アゴニストもしくはその断片(例えばTLR4、例えば構成的に活性なTLR4(caTLR4))、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニストのうちの1つ以上から選択される。
【0230】
さらに他の実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド、例えば、環状ジGMP(cdGMP)、環状ジAMP(cdAMP)、またはそれらの組み合わせを、場合により2’,5’または3’,5’リン酸結合とともに含む。
【0231】
Toll様受容体
Toll様受容体(TLR)は、進化的に保存された受容体であり、DrosophilaのTollタンパク質のホモログであり、病原性微生物により排他的に発現される病原体関連微生物パターン(PAMP)、または壊死細胞または死細胞から放出される内因性分子である損傷関連分子パターン(DAMP)として知られる高度に保存された構造モチーフを認識する。PAMPには、リポポリサッカライド(LPS)、ペプチドグリカン(PGN)、およびリポペプチドなどの様々な細菌細胞壁成分、ならびにフラジェリン、細菌DNA、およびウイルス二本鎖RNAが含まれる。DAMPには、熱ショックタンパク質などの細胞内タンパク質、ならびに細胞外マトリックスからのタンパク質断片が含まれる。対応するPAMPまたはDAMPによるTLRの刺激は、AP-1、NF-κB、インターフェロン調節因子(IRF)などの転写因子の活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始する。TLRによるシグナル伝達は、適応免疫応答を指向するインターフェロン(IFN)、炎症促進性サイトカイン、およびエフェクターサイトカインの産生を含む、様々な細胞応答をもたらす。TLRはいくつかの炎症性および免疫障害に関係しており、がんにおいて役割を果たす(Rakoff-Nahoum S.& Medzhitov R.,2009.Toll-like receptors and cancer.Nat Revs Cancer 9:57-63。)
【0232】
TLRは、ロイシンリッチリピート(LRR)を含む細胞外ドメインと、Toll/IL-1受容体(TIR)ドメインと呼ばれる保存領域を含む細胞質尾部を特徴とするI型膜貫通タンパク質である。10のヒトTLRおよび12のマウスTLRが特徴付けられており、TLR1~TLR10はヒトであり、TLR1~TLR9、TLR11、TLR12、およびTLR13はマウスであり、TLR10のホモログは偽遺伝子である。TLR2は、細菌のリポタンパク質、リポマンナン、およびリポテイコ酸を含む、グラム陽性菌由来の様々なPAMPの認識に不可欠である。TLR3は、ウイルス由来の二本鎖RNAに関係している。TLR4は、主にリポ多糖によって活性化される。TLR5は細菌のフラジェリンを検出し、TLR9は非メチル化CpG DNAへの応答に必要である。最後に、TLR7およびTLR8は小さな合成抗ウイルス分子を認識し、一本鎖RNAがそれらの天然のリガンドであると報告された。TLR11は、尿路病原性E.coliおよびToxoplasma gondiiのプロフィリン様タンパク質を認識することが報告されている。TLRの特異性のレパートリーは、TLRが互いにヘテロ二量体化する能力によって明らかに拡張される。例えば、TLR2およびTLR6の二量体は、ジアシル化リポタンパク質への応答に必要であるが、TLR2およびTLR1は相互作用してトリアシル化リポタンパク質を認識する。TLRの特異性は、LPSに応答してTLR4と複合体を形成するMD-2およびCD14など、様々なアダプターおよびアクセサリー分子によっても影響を受ける。
【0233】
TLRシグナル伝達は、少なくとも2つの異なる経路:炎症性サイトカインの産生をもたらすMyD88依存性経路と、IFN-βの刺激および樹状細胞の成熟に関連するMyD88非依存性経路とからなる。MyD88依存性経路は、TLR3を除く全てのTLRに共通である(Adachi O.et al.,1998.Targeted disruption of the MyD88 gene results in loss of IL-1- and IL-18-mediated function.Immunity.9(1):143-50)。PAMPまたはDAMPによる活性化により、TLRはヘテロまたはホモ二量体化して、細胞質TIRドメインを介したアダプタータンパク質の動員を誘導する。個々のTLRは、異なるアダプター分子の使用により異なるシグナル伝達応答を誘導する。TLR4およびTLR2シグナル伝達には、アダプターTIRAP/Malが必要であり、これは、MyD88依存性経路に関与している。TLR3は、アダプターTRIF/TICAM-1を介して、MyD88非依存様式で、二本鎖RNAに応答してIFN-βの産生を誘発する。TRAM/TICAM-2は、MyD88非依存性経路に関与する別のアダプター分子であり、機能はTLR4経路に制限される。
【0234】
TLR3、TLR7、TLR8、およびTLR9はウイルス核酸を認識し、I型IFNを誘導する。I型IFNの誘導をもたらすシグナル伝達機構は、活性化されたTLRに応じて異なる。それらは、抗ウイルス防御、細胞成長、および免疫調節に重要な役割を果たすことが知られている転写因子のファミリーであるインターフェロン調節因子IRFを伴う。3つのIRF(IRF3、IRF5、およびIRF7)は、ウイルス媒介TLRシグナル伝達の直接的なトランスデューサーとして機能する。TLR3およびTLR4はIRF3およびIRF7を活性化し、TLR7およびTLR8はIRF5およびIRF7を活性化する(Doyle S.et al.,2002.IRF3 mediates a
TLR3/TLR4-specific antiviral gene program.Immunity.17(3):251-63)。さらに、TLR9リガンドCpG-Aにより刺激されるI型IFN産生は、PI(3)KおよびmTORにより媒介されることが示されている(Costa-Mattioli M.& Sonenberg N.2008.RAPping production of type I interferon in pDCs through mTOR.Nature Immunol.9:1097-1099)。
【0235】
TLR-9
TLR9は、DNA分子の非メチル化CpG配列を認識する。CpG部位は、細菌ゲノムまたはウイルスDNAと比較して脊椎動物ゲノムでは比較的まれである(約1%)。TLR9は、Bリンパ球、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、形質細胞様樹状細胞などの免疫系の多数の細胞によって発現される。TLR9は、エンドソームコンパートメント内で細胞内に発現し、CpGモチーフが豊富なDNAに結合することにより、ウイルスおよび細菌感染の免疫系に警告するように機能する。TLR9シグナルは、I型インターフェロンおよびIL-12などのサイトカインの産生をもたらす炎症促進性反応を開始する細胞の活性化をもたらす。
【0236】
TLRアゴニスト
TLRアゴニストは、1つ以上のTLR、例えば、ヒトTLR-1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のうちの1つ以上を作動させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の補助剤はTLRアゴニストである。いくつかの実施形態では、TLRアゴニストは、ヒトTLR-9を特異的に作動させる。いくつかの実施形態では、TLR-9アゴニストはCpG部分である。本明細書で使用される場合、CpG部分は、配列:5’-C-ホスフェート-G-3’、すなわち、1つのホスフェートのみによって分離されたシトシンおよびグアニンを有する線状ジヌクレオチドである。
【0237】
いくつかの実施形態では、CpG部分は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30以上のCpGジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CpG部分は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のCpGジヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、CpG部分は、1~5、1~10、1~20、1~30、1~40、1~50、5~10、5~20、5~30、10~20、10~30、10~40、または10~50 CpGジヌクレオチドを有する。
【0238】
いくつかの実施形態では、TLR-9アゴニストは合成ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)である。CpG ODNは、特定の配列構成(CpGモチーフ)において非メチル化CpGジヌクレオチドを含む短い合成一本鎖DNA分子である。CpG ODNは、ゲノム細菌DNAに見られる天然のホスホジエステル(PO)骨格とは対照的に、部分的または完全にホスホロチオエート化された(PS)骨格を有する。CpG ODNには、クラスA、B、およびCの3つの主要なクラスがあり、それらの免疫刺激活性は異なる。CpG-A ODNは、PO中心CpG含有パリンドロームモチーフおよびPS修飾された3’ポリ-Gストリングを特徴とする。それらはpDCからの高いIFN-α産生を誘導するが、TLR9依存性NF-κBシグナル伝達および炎症促進性サイトカイン(例えばIL-6)産生の弱い刺激因子である。CpG-B ODNは、1つ以上のCpGジヌクレオチドを有する完全なPS骨格を含む。それらは、B細胞およびTLR9依存性NF-κBシグナル伝達を強く活性化するが、IFN-α分泌を強く刺激しない。CpG-C
ODNは、クラスAおよびBの両方の機能を兼ね備える。それらは、完全なPS骨格およびCpG含有パリンドロームモチーフを含む。CクラスのCpG ODNは、pDCからの強いIFN-α産生ならびにB細胞刺激を誘導する。
【0239】
例示的な多重特異性分子
本開示は、とりわけ、第1のMPL標的化部分、および
(i)第2のMPL標的化部分、例えば、その結合部位が第1のMPL標的化部分の結合部位と重複しない第2のMPL標的化部分、
(ii)免疫細胞エンゲージャー(例えば、NK細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーのうちの1つ、2つ、3つ、または全てから選択される)、
(iii)サイトカイン分子、または
(iv)腫瘍標的化分子、例えば、MPL以外の標的に対する腫瘍標的化分子のうちのいずれも含まない、1つ、2つ、もしくは3つを含む新規多重特異性分子に関する。
【0240】
理論に拘束されることなく、本明細書に開示される多重特異性分子は、がん細胞で、免疫細胞(例えば、NK細胞、B細胞、樹状細胞、またはマクロファージから選択される免疫エフェクター細胞)を標的とする(例えば、局在化する、架橋する、および/または活性化する)ことが予想される。本明細書に記載される多重特異性分子を使用して免疫細胞の近接および/または活性を増加させることによって、がん細胞に対する免疫応答が増強され、それにより、より効果的ながん治療が提供されると予想される。したがって、本明細書では、とりわけ、前述の部分を含む多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体分子)、それをコードする核酸、前述の分子を産生する方法、および前述の分子を使用してがんを治療する方法が提供される。
【0241】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、単鎖抗体分子、例えば、単一ドメイン抗体、scFv、ラクダ科またはサメ抗体、および第2の部分を含む。いくつかの実施形態
では、多重特異性分子は、場合によりリンカーを介して第2の部分に接続されるscFvのNからCの配向のVHからVLを含み、scFvは第1の結合特異性を形成することができる。いくつかの実施形態では、第2部分は、N-からC-の配向のscFvのVH領域の前、またはN-からC-の配向のscFvのVL領域の後に位置し、第2の部分は、第2の結合特異性を形成することができる。他の実施形態では、多重特異性分子は、場合によりリンカーを介して第2の部分に接続されるscFvのNからCの配向のVLからVHを含み、scFvは第1の結合特異性を形成することができる。いくつかの実施形態では、第2の部分は、N-からC-の配向のscFvのVL領域の前、またはN-からC-の配向のscFvのVH領域の後に位置し、第2の部分は、第2の結合特異性を形成することができる。実施形態では、scFvは、腫瘍標的化部分(例えば、がん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、または血液学的抗原に結合する)であり得るか、または免疫細胞エンゲージャー(例えば、免疫細胞抗原に結合する)であり得る。他の実施形態では、第2の部分は、腫瘍標的化部分(例えば、scFvが腫瘍標的化部分ではない実施形態において)、免疫細胞エンゲージャー(例えば、scFvが免疫細胞エンゲージャーではない実施形態において)、またはサイトカイン分子(例えば、本明細書に記載されるような)である。実施形態では、パートナーAは、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)であり得る。一実施形態では、腫瘍標的化部分はがん細胞抗原に対するscFvであり、第2の部分はサイトカイン分子または免疫細胞エンゲージャーから選択される。いくつかの実施形態では、第2の部分は、第2の抗体分子(例えば、第2のscFvまたはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)である。
【0242】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、単鎖抗体分子、例えば、単一ドメイン抗体、scFv、ラクダ科またはサメ抗体、および第2の部分を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、場合によりリンカーを介して第2の部分および/または第3の部分に接続されるscFvのNからCの配向のVHからVLを含み、scFvは第1の結合特異性を形成することができる。いくつかの実施形態では、第2または第3の部分は、それぞれ、N-からC-の配向のscFvのVH領域の前に位置し、第3の部分はN-からC-の配向のscFvのVL領域の後に位置し、第2および第3の部分は、第2および第3の結合特異性を形成することができる。他の実施形態では、多重特異性分子は、場合によりリンカーを介して第2の部分および/または第3の部分に接続されるscFvのNからCの配向のVLからVHを含む。いくつかの実施形態では、第2の部分は、N-からC-の配向のscFvのVL領域の前に位置し、第3の部分はN-からC-の配向のscFvのVH領域の後に位置し、第2および第3の部分は、第2および第3の結合特異性を形成することができる。実施形態では、前述の多重特異性分子のいずれかのscFvは、腫瘍標的化部分(例えば、がん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、または血液学的抗原に結合する)であり得るか、または免疫細胞エンゲージャー(例えば、免疫細胞抗原に結合する)であり得る。実施形態では、第2の部分および第3の部分は、腫瘍標的化部分、免疫細胞エンゲージャー、またはサイトカイン分子(例えば、本明細書に記載されるような)から独立して選択される。実施形態では、パートナーAおよび/またはパートナーBは、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFvまたはFab)、受容体分子、またはリガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)であり得る。一実施形態では、腫瘍標的化部分はがん細胞抗原に対するscFvであり、第2の部分および第3の部分はサイトカイン分子または免疫細胞エンゲージャーから独立して選択される。いくつかの実施形態では、第2の部分および第3の部分は、第2の抗体分子(例えば、第2のscFvまたはFab)、受容体分子、またはリガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)から独立して選択される。
【0243】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、CD16(FcγRIII)に結合する
NK細胞エンゲージャーの単鎖ポリペプチド(すなわちscFv)、および腫瘍標的化部分、すなわちCD33を標的とするscFvからならない。他の実施形態では、多重特異性分子は、CD16に結合するscFvの単鎖ポリペプチド、IL-15サイトカイン、およびCD33を標的とするscFvからならない。
【0244】
実施形態では、多重特異性分子は二重特異性または二機能性分子であり、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は非隣接であり、例えば2つの別個のポリペプチド鎖である。
【0245】
実施形態では、第2の部分は、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)であり得る。一実施形態では、多重特異性分子はFab分子を含み、第2の部分は、第2の抗体分子(例えば、scFvまたは第2のFab)、受容体分子、もしくは受容体リガンド分子、またはサイトカイン分子から選択される。一実施形態では、腫瘍標的化部分はがん細胞抗原に対するFabであり、第2の部分はサイトカイン分子または免疫細胞エンゲージャーから選択される。いくつかの実施形態では、第2の部分は、第2の抗体分子(例えば、第2のscFvまたはFab)、受容体分子、もしくは受容体リガンド分子、またはサイトカイン分子である。
【0246】
実施形態では、多重特異性分子は二重特異性または二機能性分子であり、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は非隣接であり、例えば2つの別個のポリペプチド鎖である。実施形態では、第2の部分は、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、またはリガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)であり得る。一実施形態では、多重特異性分子はFab分子を含み、第2の部分は、第2の抗体分子(例えば、scFvまたは第2のFab)、受容体分子、またはリガンド分子(例えばサイトカイン分子)から選択される。一実施形態では、腫瘍標的化部分はがん細胞抗原に対するFabであり、第2の部分はサイトカイン分子または免疫細胞エンゲージャーから選択される。いくつかの実施形態では、第2の部分は、第2の抗体分子(例えば、第2のscFvまたはFab)、受容体分子、受容体リガンド分子、またはサイトカイン分子である。
【0247】
一実施形態では、多重特異性分子は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの非隣接ポリペプチドを含み、
(i)第1のポリペプチドは、N-からC-の配向に第1の免疫グロブリン定常領域(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第1のFc領域)を含み、
(ii)第2のポリペプチドは、N-からC-の配向に第2の免疫グロブリン定常領域(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第2のFc領域)を含む。
【0248】
実施形態では、多重特異性分子は二重特異性または二機能性分子であり、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は非隣接であり、例えば2つの別個のポリペプチド鎖である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド(i)および(ii)は、例えばヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つ以上から選択される位置に対合したアミノ酸置換を含む。例えば、第1の免疫グロブリン鎖定常領域(例えば、第1のFc領域)は、T366S、L368A、またはY407V(例えば空洞またはホールに対応する)から選択されるアミノ酸置換を含むことができ、第2の免疫グロブリン鎖定常領域(例えば第2のFc領域)は、T366W(例えば突起またはノブに対応する)を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、ヘテロ二量体の第1および第2のFc領域の第1および第2のメンバーである。
【0249】
実施形態では、第1および第2の結合特異性は各々、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)から独立して選択される。実施形態では、第1および第2の結合特異性は、第1もしくは第2のポリペプチドのいずれか、またはポリペプチドの各々(例えば、ヘテロ二量体Fc分子の一方または両方のメンバー)に接続される。一実施形態では、第1の結合特異性は、第1のポリペプチドのN末端(例えば第1のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続され、第2の結合特異性は、第2のポリペプチドのN末端(例えば第2のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続される。あるいは、第1の結合特異性(例えばバートナーA)は、第1のポリペプチドのC末端(例えば第1のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続され、第2の結合特異性は、第2のポリペプチドのC末端(例えば第2のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続される。あるいは、第1の結合特異性は、第1のポリペプチドのN末端(例えば第1のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続され、第2の結合特異性(例えばパートナーB)は、第2のポリペプチドのC末端(例えば第2のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続される。他の実施形態では、第2の結合特異性は、第1のポリペプチドのN末端(例えば第1のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続され、第1の結合特異性は、第2のポリペプチドのC末端(例えば第2のFc分子の-CH2-CH3-領域)に接続される。一実施形態では、第1の-CH2-CH3領域は突起またはノブを含み、第2の-CH2-CH3領域は空洞またはホール)を含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、二重特異性分子の第1および第2の結合特異性は各々、腫瘍標的化部分、サイトカイン分子、T細胞エンゲージャー、NK細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから独立して選択され得る。いくつかの実施形態では、第1の結合特異性は腫瘍標的化部分であり、第2の結合特異性は、サイトカイン分子、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから選択される。
【0251】
いくつかの実施形態では、第1の結合特異性は腫瘍標的化部分であり、第2の結合特異性は、サイトカイン分子、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから選択される。
【0252】
一実施形態では、多重特異性分子は、2つの非隣接の第1および第2のポリペプチドを含む二重特異性分子である。実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、それぞれ、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)から独立して選択される第1および第2の結合部位を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の結合特異性は各々、例えば本明細書に記載される、MPL、腫瘍標的化部分、サイトカイン分子、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから独立して選択される。
【0253】
別の実施形態では、多重特異性分子は、2つまたは少なくとも3つの非隣接の第1および第2のポリペプチドを含む二重特異性分子であり、
(i)第1のポリペプチドは、N-からC-の配向に第1の結合特異性、例えば、場合によりリンカーを介して第1の免疫グロブリン定常領域(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第1のFc領域)に接続された第1の抗体分子を含み、
(ii)第2のポリペプチドは、N-からC-の配向に第2の免疫グロブリン定常領域
(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第2のFc領域)を含み、
(場合により)(iii)第3ポリペプチドは、第1の抗体分子または第2の抗体分子の一部を含む。
【0254】
実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、それぞれ、例えば本明細書に記載される、抗体分子(例えば、単鎖抗体分子(例えば、scFv)またはFab)、受容体分子、リガンド分子(例えば、受容体リガンドまたはサイトカイン分子)から独立して選択される第1および第2の結合特異性(例えば部位)を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の結合特異性は各々、例えば本明細書に記載される、腫瘍標的化部分、サイトカイン分子、NK細胞エンゲージャー、T細胞エンゲージャー、B細胞エンゲージャー、樹状細胞エンゲージャー、またはマクロファージ細胞エンゲージャーから独立して選択される。
【0255】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、N-から-Cに以下の構成を有する:
(a)第1の抗原ドメインの第1の部分、例えば、場合によりリンカーを介して第1の免疫グロブリン定常領域(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第1のFc領域)に接続された、例えばがん抗原、例えば固形腫瘍、間質、または血液学的抗原(例えばMPL)に結合するFab分子の第1のVH-CH1、
(b)サイトカイン分子、または場合によりリンカーを介して第2の免疫グロブリン定常領域(例えばCH3領域に接続されたCH2)(例えば第2のFc領域)に接続された免疫細胞エンゲージャーから選択される第2の結合特異性(例えば第2の結合部位)、および
(c)第3のポリペプチドは、N-から-Cに以下の構成を有する:例えばがん抗原、例えば、固形腫瘍、間質、または血液学的抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じがん抗原)に結合する第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFabの第1のVL-CL。
【0256】
実施形態では、第1の免疫グロブリン定常領域(例えば第1のCH2-CH3領域)は、例えば本明細書に記載されるような突起またはノブを含む。
【0257】
実施形態では、第2の免疫グロブリン定常領域(例えば第2のCH2-CH3領域)は、空洞またはホールを含む。実施形態では、第1および第2の免疫グロブリン定常領域は、二重特異性分子のヘテロ二量体化を促進する。
【0258】
他の実施形態では、多重特異性分子は、第1、第2、および第3の非隣接ポリペプチドを含み、
場合によりリンカーを介して、第1と第2のポリペプチドとの間の会合を促進する第1のドメイン(例えば第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば本明細書に記載される第1のFc分子)に接続される、例えばMPL抗原に結合する、n MPL標的化部分、例えば抗体分子(例えば第1の抗原ドメインの第1の部分、例えばFab分子の第1のVH-CH1)、
(ii)第2のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、場合によりリンカーを介して、第1と第2のポリペプチドとの間の会合を促進する第2のドメイン(例えば第2の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば本明細書に記載される第2のFc分子)に接続される、サイトカイン分子または免疫細胞エンゲージャー(例えば免疫細胞抗原に結合する抗体分子、例えばscFv)を含み、
(iii)第3のポリペプチドは、例えば、N-からC-の配向で、例えばMPL抗原(例えば第1のVH-CH1により結合される同じMPL抗原)に結合する第1の抗原ドメインの第2の部分、例えばFabの第1のVL-CLを含む。
【0259】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、場合によりリンカーを介して第1のFc分子に接続されたFab分子標的化MPL、場合によりリンカーを介して第2のFc分子に接続されたサイトカインまたは免疫細胞エンゲージャー(例えばscFv)を含む。実施形態では、多重特異性分子は二重特異性分子である。
【0260】
実施形態では、第1のポリペプチドのMPL標的化部分は、腫瘍標的化分子の軽鎖可変ドメイン(例えばFab)を含み、第2のポリペプチドの腫瘍標的化部分は、MPL標的化分子の重鎖可変ドメイン(例えば、Fab)を含む。
【0261】
他の実施形態では、第1のポリペプチドの第1のMPL標的化部分は、MPL標的化分子の重鎖可変ドメイン(例えばFab)を含み、第2のポリペプチドの第2のMPL標的化部分は、MPL標的化分子の軽鎖可変ドメイン(例えば、Fab)を含む。
【0262】
他の実施形態では、第1のポリペプチドの第1のMPL標的化部分は、MPL標的化分子の軽鎖可変ドメイン(例えばFab)を含み、第2のポリペプチドの第2のMPL標的化部分は、MPL標的化分子の重鎖可変ドメイン(例えば、Fab)を含む。
【0263】
他の実施形態では、第1のポリペプチドのMPL標的化部分は、MPL標的化scFvを含み、第2のポリペプチドのMPL標的化部分は、MPL標的化scFvを含む。
【0264】
リンカー
本明細書に開示される多重特異性分子は、リンカー、例えば、標的化部分とサイトカイン分子、標的化部分と免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子と免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子と免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)、標的化部分と免疫グロブリン鎖定常領域、または免疫細胞エンゲージャーと免疫グロブリン鎖定常領域のうちの1つ以上との間にリンカーをさらに含み得る。実施形態では、切断可能なリンカー、切断不可能なリンカー、ペプチドリンカー、柔軟なリンカー、剛性リンカー、らせんリンカー、もしくは非らせんリンカー、またはそれらの組み合わせから選択されるリンカー。
【0265】
一実施形態では、多重特異性分子は、1つ、2つ、3つ、または4つのリンカー、例えばペプチドリンカーを含み得る。一実施形態では、ペプチドリンカーは、GlyおよびSer、例えば、GGGGS(配列番号117)、GGGGSGGGGS(配列番号118)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号119)、またはDVPSGPGGGGGSGGGGS(配列番号120)から選択されるペプチドリンカーを含む。
【0266】
抗体分子
一実施形態では、抗体分子は、がん抗原、例えば腫瘍抗原に結合する。いくつかの実施形態では、がん抗原は、例えば哺乳類、例えばヒトのがん抗原である。他の実施形態では、抗体分子は、免疫細胞抗原、例えば哺乳類、例えばヒトの免疫細胞抗原に結合する。例えば、抗体分子は、がん抗原または免疫細胞抗原上のエピトープ、例えば線状または立体構造エピトープに特異的に結合する。
【0267】
一実施形態では、抗体分子は、単一特異性抗体分子であり、単一のエピトープに結合する。例えば、それぞれが同じエピトープに結合する複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を有する単一特異性抗体分子。
【0268】
一実施形態では、抗体分子は、多重特異性抗体分子であり、例えば、これは複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、これら複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列のう
ちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対して結合特異性を有し、これら複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対して結合特異性を有する。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは重複する。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは重複しない。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、多重特異性抗体分子は、第3、第4、または第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子、または四重特異性抗体分子である。
【0269】
一実施形態では、多重特異性抗体分子は二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2つ以下の抗原に対して特異性を有する。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列とによって特徴付けられる。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは重複する。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは重複しない。一実施形態では、第1のエピトープと第2のエピトープとは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列とを含む。一実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する半抗体と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する半抗体とを含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する半抗体またはその断片と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する半抗体またはその断片とを含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有するscFvもしくはFabまたはそれらの断片と、第2のエピトープに対して結合特異性を有するscFvもしくはFabまたはそれらの断片とを含む。
【0270】
一実施形態では、抗体分子は、ダイアボディ、および一本鎖分子、ならびに抗体の抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)、およびFv)を含む。例えば、抗体分子は、重(H)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVHと略記する)および軽(L)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVLと略記する)を含み得る。一実施形態では、抗体分子は、重鎖および軽鎖(本明細書では半抗体と称する)を含むかまたはそれらからなる。別の例では、抗体分子は、2つの重(H)鎖可変ドメイン配列および2つの軽(L)鎖可変ドメイン配列を含み、それによって2つの抗原結合部位を形成し、これは、例えば、全抗体または組み換えDNA技術を使用してデノボ合成された抗体の修飾によって産生されてもよい、Fab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一可変ドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価および二重特異性)、およびキメラ(例えば、ヒト化)抗体である。これらの機能性抗体断片は、それらのそれぞれの抗原または受容体と選択的に結合する能力を保持している。抗体および抗体断片は、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含むがこれらに限定されない任意のクラスの抗体、ならびに任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)の抗体に由来し得る。抗体分子の調製物はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体分子はまた、ヒト、ヒト化、CDR移植、またはインビトロで生成された抗体であり得る。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される、重鎖定常領域を有し得る。抗体はまた、例えばカッパまたは
ラムダから選択される軽鎖を有し得る。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」という用語と互換的に使用される。
【0271】
抗体分子の抗原結合断片の例には以下が含まれる:(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるダイアボディ(dAb)断片、(vi)ラクダ科動物またはラクダ化可変ドメイン、(vii)一本鎖Fv(scFv)(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)、(viii)単一ドメイン抗体。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0272】
抗体分子は、インタクトな分子およびその機能断片を含む。抗体分子の定常領域は、抗体の特性を修飾するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるために)、改変、例えば突然変異させることができる。
【0273】
抗体分子は単一ドメイン抗体でもあり得る。単一ドメイン抗体は、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体を含み得る。例としては、重鎖抗体、軽鎖を天然に含まない抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が挙げられるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、当該技術分野の単一ドメイン抗体のうちのいずれかであっても、いずれかの将来の単一ドメイン抗体であってもよい。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含むがこれらに限定されない任意の種に由来し得る。本発明の別の態様によれば、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、例えば、WO9404678に開示されている。明確化を理由に、軽鎖を天然に含まない重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、本明細書では、それを四本鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するために、VHHまたはナノボディとする。そのようなVHH分子は、ラクダ科動物種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコにおいて作られた抗体に由来し得る。ラクダ科動物以外の他の種は、軽鎖を天然に含まない重鎖抗体を産生し得る。そのようなVHHは本発明の範囲内である。
【0274】
VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FRまたはFW)と呼ばれるより保存されている領域が散在する「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。
【0275】
フレームワーク領域およびCDRの範囲は、いくつかの方法(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、およびOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されているAbM定義によって、正確に定義されている。概して、例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In: Antibody Engi
neering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。
【0276】
本明細書で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原特異性および結合親和性を授ける抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域に3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、各軽鎖可変領域に3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。
【0277】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」付番スキーム)、Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」付番スキーム)に記載されるものを含むいくつかの既知のスキームのうちのいずれかを使用して決定され得る。本明細書で使用される場合、「Chothia」番号スキームに従って定義されるCDRは、「超可変ループ」とも称されることがある。
【0278】
例えば、Kabatの下では、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)と付番され、軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)と付番される。Chothiaの下では、VH中のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、および95~102(HCDR3)と付番され、VL中のアミノ酸残基は、26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、および91~96(LCDR3)と付番される。
【0279】
各VHおよびVLは典型的には、3つのCDRおよび4つのFRを含み、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される。
【0280】
抗体分子は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
【0281】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって、またはハイブリドーマ技術を使用しない方法(例えば、組み換え方法)によって作製することができる。
【0282】
抗体は、組換えによって産生される、例えば、ファージディスプレイによってまたはコンビナトリアル法によって産生され得る。
【0283】
抗体を生成するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアル法は当該技術分野において既知である(例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、Kangらの国際公開第WO92/18619号、Dowerらの国際公開第WO91/17271号、Winterらの国際公開第WO92/20791号、Marklandらの国際公開第WO92/15679号、Breitlingらの国際公開第WO93/01288号、McCaffertyらの国際公開第WO92/01047号、Garrardらの国際公開第WO92/09690号、Ladnerらの国際公開第WO90/02
809号、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370-1372、Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、Griffths et al.(1993)EMBO J 12:725-734、Hawkins et al.(1992)J Mol
Biol 226:889-896、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)PNAS 89:3576-3580、Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137、およびBarbas et
al.(1991)PNAS 88:7978-7982に記載されているとおりであり、これらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0284】
一実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン配列から抗体を産生するように遺伝子操作されたマウスで作製された抗体)、または非ヒト抗体、例えば、齧歯類(マウスまたはマウス)、ヤギ、霊長類(例えば、サル)、ラクダ抗体である。好ましくは、非ヒト抗体は齧歯類(マウスまたはラット抗体)である。齧歯類抗体を産生する方法は当該技術分野において既知である。
【0285】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを使用して生成することができる。目的の抗原で免疫したこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞を使用して、ヒトタンパク質由来のエピトープに特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生させる(例えば、Woodらの国際出願第WO91/00906号、KucherlapatiらのPCT公開第WO91/10741号、Lonbergらの国際出願第WO92/03918号、Kayらの国際出願第92/03917号、Lonberg,N.et al.1994 Nature 368:856-859、Green,L.L.et al.1994 Nature Genet.7:13-21、Morrison,S.L.et al.1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855、Bruggeman et al.1993 Year Immunol 7:33-40、Tuaillon et al.1993 PNAS 90:3720-3724、Bruggeman et al.1991 Eur J Immunol 21:1323-1326を参照されたい)。
【0286】
抗体分子は、可変領域、またはその一部、例えばCDRが、非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて生成されるものであり得る。キメラ抗体、CDR移植抗体、およびヒト化抗体は、本発明の範囲内である。非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて生成され、次いで例えば可変フレームワークまたは定常領域において修飾されて、ヒトにおける抗原性を減少させる抗体分子は、本発明の範囲内である。
【0287】
「事実上ヒト」のタンパク質は、中和抗体応答、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を実質的に引き起こさないタンパク質である。HAMAは、ある数の状況、例えば、抗体分子が繰り返し投与される場合、例えば、慢性または再発性の疾患状態の治療において、問題となり得る。HAMA応答は、血清からの抗体クリアランスの増大により(例えば、Saleh et al.,Cancer Immunol.Immunother.,32:180-190(1990)を参照されたい)、またアレルギー反応の可能性により(例えば、LoBuglio et al.,Hybridoma,5:5117-5123(1986)を参照されたい)、繰り返しの抗体投与を無効にする可能性がある。
【0288】
キメラ抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技法によって産生され得る(Robinsonらの国際特許公開第PCT/US86/02269号、Akiraらの欧州特許出願第184,187号、Taniguchi,M.の欧州特許出願第171,496号、Morrisonらの欧州特許出願第173,494号、Neubergerらの国際出願第WO86/01533号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願第125,023号、Betterら(1988 Science 240:1041-1043)、Liu et al.(1987)PNAS 84:3439-3443、Liu et al.,1987,J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)PNAS 84:214-218、Nishimura et al.,1987,Canc.Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、およびShaw et al.,1988,J.Natl Cancer
Inst.80:1553-1559を参照されたい)。
【0289】
ヒト化またはCDR移植抗体は、ドナーCDRで代置された少なくとも1つまたは2つ、しかし一般的には3つ全てのレシピエントCDR(重および/または軽免疫グロブリン鎖)を有することになる。抗体は、非ヒトCDRの少なくとも一部で代置されてもよく、またはCDRの一部のみが非ヒトCDRで代置されてもよい。必要なのは、抗原への結合に必要とされるCDRの数を代置することだけである。好ましくは、ドナーは、齧歯類抗体、例えば、ラットまたはマウス抗体となり、レシピエントは、ヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークとなる。典型的には、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態では、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば、齧歯類)である。アクセプターフレームワークは、天然に存在する(例えば、ヒト)フレームワークもしくはコンセンサスフレームワーク、またはそれと約85%以上、好ましくは90%、95%、99%、もしくはそれ以上同一の配列である。
【0290】
本明細書で使用される場合、「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリー中で最も頻繁に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany 1987を参照されたい)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は、ファミリー中のその位置で最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が同じ頻度で存在する場合、いずれもコンセンサス配列に含めることができる。「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。
【0291】
抗体は、当該技術分野で既知の方法によってヒト化することができる(例えば、それらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる、Morrison,S.L.,1985,Science 229:1202-1207、Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214、およびQueenらのUS5,585,089、US5,693,761、およびUS5,693,762を参照されたい)。
【0292】
ヒト化またはCDR移植抗体は、CDR移植またはCDR置換によって産生することができ、免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、または全てのCDRを代置することができる。例えば、米国特許第5,225,539号、Jones et al.1986 Nature 321:552-525、Verhoeyan et al.1988 Science 239:1534、Beidler et al.1988J.Immunol.141:4053-4060、Winter US 5,225,539(それらの全ての内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)を参照されたい。Winter
は、本発明のヒト化抗体を調製するために使用され得るCDR移植法について記載している(その内容は参照により明示的に組み込まれる、1987年3月26日に出願された英国特許出願第GB2188638A号、WinterのUS5,225,539)。
【0293】
特定のアミノ酸が、置換、欠失、または付加されているヒト化抗体分子も、本発明の範囲内である。ドナーからアミノ酸を選択するための基準は、US5,585,089、例えば、US5,585,089の第12~16欄、例えば、US5,585,089の第12~16欄に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。抗体をヒト化するための他の技法は、1992年12月23日に公開されたPadlanらのEP519596A1に記載されている。
【0294】
抗体分子は一本鎖抗体であり得る。一本鎖抗体(scFV)は操作されてもよい(例えば、Colcher,D.et al.(1999)Ann N Y Acad Sci
880:263-80、およびReiter,Y.(1996)Clin Cancer Res 2:245-52を参照されたい)。一本鎖抗体を二量体化または多量体化して、同じ標的タンパク質の異なるエピトープに対して特異性を有する多価抗体を生成することができる。
【0295】
さらに他の実施形態では、抗体分子は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEの重鎖定常領域から選択される、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される、重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体分子は、例えばカッパまたはラムダの(例えば、ヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。定常領域は、抗体の特性を修正するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるために)、改変する、例えば、突然変異させることができる。一実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体結合することができる。他の実施形態では、抗体は、エフェクター細胞を動員せず、また補体結合もしない。別の実施形態では、抗体は、Fc受容体に結合する能力が低下しているか、または全く有しない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支持しない、アイソタイプもしくはサブタイプ、断片、または他の変異体であり、例えば、抗体は変異誘発されたまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0296】
抗体定常領域を改変するための方法は、当該技術分野において既知である。機能が改変された、例えば、細胞上のFcRなどのエフェクターリガンドまたは補体のC1成分に対する親和性が改変された抗体は、抗体の定常部分の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基で代置することによって産生させることができる(例えば、それらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる、EP388,151A1、米国特許第5,624,821号、および米国特許第5,648,260号を参照されたい)。マウスまたは他の種の免疫グロブリンに適用された場合にこれらの機能を低下させるかまたは排除し得る、類似の種類の変化が記載され得る。
【0297】
抗体分子は、誘導体化されるか、別の機能性分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に結合され得る。本明細書で使用される場合、「誘導体化」抗体分子は、修飾されたものである。誘導体化の方法には、蛍光部分、放射性ヌクレオチド、毒素、酵素、またはビオチンなどの親和性リガンドの添加が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の抗体分子は、免疫接着分子を含む、本明細書に記載される抗体の誘導体化およびその他の方法で修飾された形態を含むことを意図している。例えば、抗体分子は、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディ)、検出可能な薬剤、細胞障害剤、医薬品、および/または抗体もしくは抗体部分と別の分子(ストレプトアビジンコア領域
またはポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介することができるタンパク質もしくはペプチドなどの1つ以上の他の分子実体に機能的に(化学結合、遺伝子融合、非共有結合またはその他の方法によって)結合され得る。
【0298】
誘導体化抗体分子の1つの種類は、(例えば二重特異性抗体を創出するために、同じ種類または異なる種類の)2つ以上の抗体を架橋することによって産生される。適切な架橋剤には、好適なスペーサー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二官能性(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)によって分離された2つの明確な反応基を有するヘテロ二官能性のものが含まれる。そのようなリンカーは、Pierce Chemical Company,Rockford,Illから入手可能である。
【0299】
多重特異性抗体分子
本明細書で定義される多重特異性および多機能性分子の例示的な構造は、全体にわたって記載される。例示的な構造は、Weidle U et al.(2013) The
Intriguing Options of Multispecific Antibody Formats for Treatment of Cancer.Cancer Genomics & Proteomics 10:1-18 (2013)およびSpiess C et al.(2015) Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Molecular
Immunology 67:95-106にさらに記載されており、それらの各々の完全な内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0300】
実施形態では、多重特異性抗体分子は、異なる部位が異なる抗原に特異的である、2つ以上の抗原結合部位を含み得る。実施形態では、多重特異性抗体分子は、同じ抗原上の1つ超(例えば2つ以上)のエピトープに結合することができる。実施形態では、多重特異性抗体分子は、標的細胞(例えばがん細胞)に特異的な抗原結合部位と、免疫エフェクター細胞に特異的な異なる抗原結合部位とを含む。一実施形態では、多重特異性抗体分子は二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体分子は、5つの異なる構造群:(i)二重特異性免疫グロブリンG(BsIgG)、(ii)追加の抗原結合部分が付加されたIgG、(iii)二重特異性抗体断片、(iv)二重特異性融合タンパク質、および(v)二重特異性抗体コンジュゲートに分類することができる。
【0301】
BsIgGは各抗原に対して一価の形式である。例示的なBsIgGの形式としては、crossMab、DAF(2イン1)、DAF(4イン1)、DutaMab、DT-IgG、ノブ・イン・ホール共通LC、ノブインホールアセンブリ、電荷対、Fabアーム交換、SEEDbody、triomab、LUZ-Y、Fcab、κλ体、直交Fabが挙げられるが、これらに限定されない。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95-106を参照されたい。例示的なBsIgGとしては、抗CD3アームおよび抗EpCAMアームを含むカツマクソマブ(Fresenius Biotech,Trion Pharma,Neopharm)、およびCD3およびHER2を標的とするエルツマキソマブ(Neovii Biotech,Fresenius Biotech)が挙げられる。いくつかの実施形態では、BsIgGはヘテロ二量体化のために操作される重鎖を含む。例えば、「ノブイントゥホール」戦略、SEEDプラットフォーム、一般的な重鎖(例えばκλボディで)、およびヘテロ二量体Fc領域の使用を使用して、ヘテロ二量体化のために重鎖を操作することができる。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95-106を参照されたい。BsIgGのホモ二量体の重鎖対合を回避するために使用されてきた戦略には、ノブ・イン・ホール、duobody、azymetric、電荷対、HA-TF、S
EEDbody、および差次的プロテインA親和性が含まれる。同上を参照されたい。BsIgGは、異なる宿主細胞において成分抗体を別個に発現させ、その後BsIgGに精製/アセンブリすることにより産生され得る。BsIgGは、単一の宿主細胞での成分抗体の発現によっても産生することができる。BsIgGは、親和性クロマトグラフィーを使用して、例えばプロテインAおよび連続pH溶出を使用して精製することができる。
【0302】
追加の抗原結合部分が付加されたIgGは、二重特異性抗体分子の別の形式である。例えば、重鎖または軽鎖のいずれかのNまたはC末端に、単一特異性IgGに追加の抗原結合単位を付加することにより、二重特異性を有するように単一特異性IgGを操作することができる。例示的な追加の抗原結合単位としては、単一ドメイン抗体(例えば、可変重鎖または可変軽鎖)、操作されたタンパク質足場、および対合した抗体可変ドメイン(例えば、単鎖可変断片または可変断片)が挙げられる。同上を参照されたい。付加されたIgG形式の例としては、二重可変ドメインIgG(DVD-Ig)、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、zybody、およびDVI-IgG(4イン1)が挙げられる。Spiess et al.Mol.Immunol.67(2015):95-106を参照されたい。IgG-scFvの例は、IGF-1RおよびHER3に結合するMM-141(Merrimack Pharmaceuticals)である。DVD-Igの例としては、IL-1αおよびIL-1βに結合するABT-981(AbbVie)ならびにTNFおよびIL-17Aに結合するABT-122(AbbVie)が挙げられる。
【0303】
二重特異性抗体断片(BsAb)は、抗体定常ドメインの一部または全てを欠く二重特異性抗体分子の形式である。例えば、一部のBsAbはFc領域を欠く。実施形態では、二重特異性抗体断片は、単一の宿主細胞においてBsAbの効率的な発現を可能にするペプチドリンカーにより接続された重鎖および軽鎖領域を含む。例示的な二重特異性抗体断片としては、ナノボディ、ナノボディ-HAS、BiTE、ダイアボディ、DART、TandAb、scDiabody、scDiabody-CH3、ダイアボディ-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価のHCAb、scDiabody-Fc、Diabody-Fc、タンデム型scFv-Fc、およびイントラボディが挙げられるが、これらに限定されない。同上を参照されたい。例えば、BiTE形式はタンデム型scFvを含み、成分scFvはT細胞上のCD3およびがん細胞上の表面抗原に結合する。
【0304】
二重特異性融合タンパク質には、例えば、さらなる特異性および/または機能性を追加するために、他のタンパク質に結合された抗体断片が含まれる。二重特異性融合タンパク質の例は、HLA提示ペプチドを認識する親和性成熟T細胞受容体に結合した抗CD3 scFvを含むimmTACである。実施形態では、ドックアンドロック(DNL)法を使用して、より高い原子価の二重特異性抗体分子を生成することができる。また、アルブミン結合タンパク質またはヒト血清アルブミンへの融合により、抗体断片の血清半減期を延長することができる。同上を参照されたい。
【0305】
実施形態では、化学的コンジュゲーション、例えば、抗体および/または抗体断片の化学的コンジュゲーションを使用して、BsAb分子を創出することができる。同上を参照されたい。例示的な二重特異性抗体コンジュゲートとしては、低分子量薬物が各Fabアームまたは抗体もしくはその断片の単一の反応性リジンに部位特異的にコンジュゲートさ
れるCovX体形式が挙げられる。実施形態では、コンジュゲーションは、低分子量薬物の血清半減期を改善する。例示的なCovX体はCVX-241(NCT01004822)であり、これはVEGFまたはAng2のいずれかを阻害する2つの短いペプチドにコンジュゲートした抗体を含む。同上を参照されたい。
【0306】
抗体分子は、宿主系における、例えば少なくとも1つ以上の成分の組換え発現によって産生され得る。例示的な宿主系としては、真核細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、またはSF9もしくはS2細胞などの昆虫細胞)、および原核細胞(例えばE.coli)が挙げられる。二重特異性抗体分子は、異なる宿主細胞において成分を別個に発現させ、その後精製/アセンブリすることにより産生され得る。あるいは、抗体分子は、単一の宿主細胞において成分を発現させることにより産生され得る。二重特異性抗体分子の精製は、親和性クロマトグラフィーなどの様々な方法、例えばプロテインAおよび連続pH溶出を使用して行うことができる。他の実施形態では、親和性タグ、例えば、ヒスチジン含有タグ、mycタグ、またはストレプトアビジンタグを精製に使用することができる。
【0307】
CDRグラフト足場
実施形態では、抗体分子はCDRグラフト化足場ドメインである。実施形態では、足場ドメインは、フィブロネクチンドメイン、例えばフィブロネクチンIII型ドメインに基づく。フィブロネクチンIII型(Fn3)ドメインの全体的な折り畳みは、最小機能性抗体断片である抗体重鎖の可変ドメインの折り畳みと密接に関連している。Fn3の末端には3つのループがあり、BC、DE、およびFGループの位置は、抗体のVHドメインのCDR1、2、および3の位置にほぼ対応する。Fn3にはジスルフィド結合がなく、したがって、抗体およびそれらの断片とは異なり、Fn3は還元条件下で安定している(例えば、WO98/56915、WO01/64942、WO00/34784を参照されたい)。Fn3ドメインは、本明細書に記載される抗原/マーカー/細胞に結合するドメインを選択するために、(例えば、本明細書に記載されるCDRまたは超可変ループを使用して)修飾されるか、または変更され得る。
【0308】
実施形態では、足場ドメイン、例えば折り畳みドメインは、抗体、例えば、モノクローナル抗体の重鎖可変ドメインから3つのベータ鎖を削除することにより創出される「ミニボディ」足場に基づく(例えば、Tramontano et al.,1994,J Mol.Recognit.7:9およびMartin et al.,1994,EMBOJ.13:5303-5309を参照されたい)。「ミニボディ」を使用して、2つの超可変ループを提示することができる。実施形態では、足場ドメインは、V様ドメイン(例えば、Coia et al.WO99/45110を参照されたい)、または2つのジスルフィド結合によって一緒に保持された74残基の6本鎖ベータシートサンドイッチであるテンダミスタチン由来のドメインである(例えば、McConnell and
Hoess,1995,J Mol.Biol.250:460を参照されたい)。例えば、テンダミスタチンのループは、本明細書に記載されるマーカー/抗原/細胞に結合するドメインを選択するために、(例えば、CDRまたは超可変ループを使用して)修飾されるか、または変更され得る。別の例示的な足場ドメインは、CTLA-4の細胞外ドメインに由来するベータサンドイッチ構造である(例えば、WO00/60070を参照されたい)。
【0309】
他の例示的な足場ドメインとしては、T細胞受容体、MHCタンパク質、細胞外ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型リピート、EGFリピート)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、クニッツドメイン、エコチン、BPTIなど)、TPRリピート、トリフォイル構造、ジンクフィンガードメイン、DNA結合タンパク質、特に単量体のDNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、酵素、例えばプロテアーゼ(特に不活性化されたプ
ロテアーゼ)、RNase、シャペロン、例えばチオレドキシン、および熱ショックタンパク質、ならびに細胞内シグナル伝達ドメイン(SH2およびSH3ドメインなど)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS2004/0009530およびUS7,501,121を参照されたい。
【0310】
実施形態では、足場ドメインは、例えば、以下の基準:(1)アミノ酸配列、(2)いくつかの相同ドメインの配列、(3)3次元構造、および/または(4)pH、温度、塩分、有機溶媒、酸化剤濃度の範囲にわたる安定性データのうちの1つ以上によって評価および選択される。実施形態では、足場ドメインは、小さく、安定したタンパク質ドメイン、例えば、100、70、50、40、または30未満のアミノ酸のタンパク質である。ドメインは、1つ以上のジスルフィド結合を含み得るか、または金属、例えば亜鉛をキレート化してもよい。
【0311】
抗体ベースの融合
抗体のNまたはC末端に付加された追加の結合実体を含む様々な形式を生成することができる。単鎖またはジスルフィド安定化FvもしくはFabとのこれらの融合により、各抗原に対して二価の結合特異性を有する四価の分子が生成される。scFvおよびscFabとIgGとを組み合わせることより、3つ以上の異なる抗原を認識することができる分子の産生が可能になる。
【0312】
抗体-Fab融合体
抗体-Fab融合体は、第1の標的に対する従来の抗体と、抗体重鎖のC末端に融合した、第2の標的に対するFabとを含む二重特異性抗体である。一般的に、抗体およびFabは共通の軽鎖を有する。抗体融合体は、(1)標的融合体のDNA配列を操作し、(2)融合タンパク質を発現するために、好適な宿主細胞に標的DNAをトランスフェクトすることにより産生することができる。Coloma,J.et al.(1997) Nature Biotech 15:159により記載されるように、抗体-scFv融合体はCH3ドメインのC末端とscFvのN末端との間の(Gly)-Serリンカーにより結合され得るようである。
【0313】
抗体-scFv融合体
抗体-scFv融合体は、従来の抗体と、抗体重鎖のC末端に融合した独自の特異性のscFvとを含む二重特異性抗体である。scFvは、直接またはリンカーペプチドを介してのいずれかでscFvの重鎖を介してC末端に融合され得る。抗体融合体は、(1)標的融合体のDNA配列を操作し、(2)融合タンパク質を発現するために、好適な宿主細胞に標的DNAをトランスフェクトすることにより産生することができる。Coloma,J.et al.(1997) Nature Biotech 15:159により記載されるように、抗体-scFv融合体はCH3ドメインのC末端とscFvのN末端との間の(Gly)-Serリンカーにより結合され得るようである。
【0314】
可変ドメイン免疫グロブリンDVD
関連する形式は、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)であり、これは、短いリンカー配列によってVドメインのN末端上の第2の特異性のVHおよびVLドメインで構成される。
【0315】
他の例示的な多重特異性抗体形式には、例えば、以下のUS2016/0114057A1、US2013/0243775A1、US2014/0051833、US2013/0022601、US2015/0017187A1、US2012/0201746A1、US2015/0133638A1、US2013/0266568A1、US2016/0145340A1、WO2015/127158A1、US2015/02
03591A1、US2014/0322221A1、US2013/0303396A1、US2011/0293613、US2013/0017200A1、US2016/0102135A1、WO2015/197598A2、WO2015/197582A1、US9359437、US2015/0018529、WO2016/115274A1、WO2016/087416A1、US2008/0069820A1、US9145588B、US7919257、およびUS2015/0232560A1に記載されるものが含まれる。完全な抗体-Fab/scFab形式を利用する例示的な多重特異性分子には、以下のUS9382323B2、US2014/0072581A1、US2014/0308285A1、US2013/0165638A1、US2013/0267686A1、US2014/0377269A1、US7741446B2、およびWO1995/009917A1に記載されるものが含まれる。ドメイン交換形式を利用する例示的な多重特異性分子には、以下のUS2015/0315296A1、WO2016/087650A1、US2016/0075785A1、WO2016/016299A1、US2016/0130347A1、US2015/0166670、US8703132B2、US2010/0316645、US8227577B2、US2013/0078249に記載されるものが含まれる。
【0316】
Fc含有実体(ミニ抗体)
ミニ抗体としても知られるFc含有実体は、scFvを定常重領域ドメイン3のC末端(CH3-scFv)および/または特異性の異なる抗体のヒンジ領域(scFv-ヒンジ-Fc)に融合することにより生成することができる。IgGのCH3ドメインのC末端に融合したジスルフィド安定化可変ドメイン(ペプチドリンカーなし)を有する三価の実体も作製することができる。
【0317】
Fc含有多重特異性分子
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多重特異性分子は、免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)を含む。例示的なFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の重鎖定常領域、より具体的には、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の重鎖定常領域から選択され得る。
【0318】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)は、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上を増加または減少させるように改変、例えば突然変異される。
【0319】
他の実施形態では、第1および第2の免疫グロブリン鎖定常領域(例えば第1および第2のFc領域)の界面は、例えば、操作されていない界面、例えば天然に存在する界面と比べて、二量体化を増加または減少させるように改変、例えば突然変異される。例えば、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の二量体化は、例えば操作されていない界面と比べて、ヘテロ多量体対ホモ多量体の比が大きくなるように、突起-空洞の対合(「ノブ・イン・ホール」)、静電相互作用、または鎖交換のうちの1つ以上で、第1および第2のFc領域のFc界面を提供することにより増強され得る。
【0320】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、例えばヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つ以上から選択される位置に対合したアミノ酸置換を含む。例えば、免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)は、T366S、L368A、またはY407V(例えば空洞またはホールに対応する)から選択されるアミノ酸置換と、T366W(例えば突起またはノブに対応する)との対を含み得る。
【0321】
他の実施形態では、多機能性分子は、半減期拡張剤、例えばヒト血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンに対する抗体分子を含む。
【0322】
ヘテロ二量体化抗体分子および作製方法
誤った重鎖対合の問題に対処するために、多重特異性抗体を産生する様々な方法が開示されている。例示的な方法を以下に記載する。例示的な多重特異性抗体形式および上記多重特異性抗体の作製方法は、例えば、Speiss et al.Molecular Immunology 67(2015)95-106;およびKlein et al
mAbs 4:6,653-663;November/December 2012(それらの各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)にも開示されている。
【0323】
ヘテロ二量体化二重特異性抗体は、天然のIgG構造に基づいており、2つの結合アームは異なる抗原を認識する。定義された一価(および同時)抗原結合を可能にするIgG由来の形式は、軽鎖の誤対合を最小限に抑える技術(例えば一般的な軽鎖)と組み合わせた、強制重鎖ヘテロ二量体化によって生成される。強制重鎖ヘテロ二量体化は、例えば、ノブ・イン・ホールまたは鎖交換操作ドメイン(SEED)を使用して得ることができる。
【0324】
ノブ・イン・ホール
US5,731,116、US7,476,724、およびRidgway、Ridgway,J.et al.(1996) Prot.Engineering 9(7):617-621に記載されるように、ノブ・イン・ホールは、(1)抗体のうちの一方または両方のCH3ドメインを突然変異させてヘテロ二量体化を促進すること、および(2)ヘテロ二量体化を促進する条件下で突然変異させた抗体を組み合わせることを広く伴う。「ノブ」または「突起」は、典型的には、親抗体の小さなアミノ酸をより大きなアミノ酸(例えばT366YまたはT366W)で代置することによって創出され、「ホール」または「空洞」は、親抗体のより大きな残基をより小さなアミノ酸(例えば、Y407T、T366S、L368A、および/またはY407V)で代置することによって創出される。
【0325】
Fcドメインを含む二重特異性抗体の場合、特定の突然変異を重鎖の定常領域に導入して、Fc部分の正しいヘテロ二量体化を促進することが利用され得る。いくつかのそのようはな技術は、Klein et al.(mAbs(2012)4:6,1-11)において概説されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの技術には、抗体重鎖のうちの1つのCH3ドメインのうちの一方にかさ高い残基を導入することを伴う「ノブイントゥホール」(KiH)アプローチが含まれる。このかさ高い残基は、重鎖の正しい対合を促進するように、対合した重鎖の他方のCH3ドメインの相補的な「ホール」に収まる(例えばUS7642228を参照されたい)。
【0326】
例示的なKiH突然変異には、「ノブ」重鎖のS354C、T366W、および「ホール」重鎖のY349C、T366S、L368A、Y407Vが含まれる。追加の任意の安定化Fcシステイン突然変異とともに、他の例示的なKiH突然変異は表7に提供される。
【表7】
【0327】
他のFc突然変異は、一方の鎖のCH3ドメインの3つの負の荷電残基が他方の鎖のCH3ドメインの3つの正の荷電残基と対合することを同定したIgawaおよびTsunodaによって提供される。これらの特定の荷電残基対は、E356-K439、E357-K370、D399-K409、およびその逆も同様である。単独で、または新たに同定されたジスルフィド架橋と組み合わせて、鎖Aに次の3つの突然変異:E356K、E357KおよびD399Kのうちの少なくとも2つ、ならびに鎖BにK370E、K409D、K439Eを導入することにより、それらは、同時にホモ二量体化を抑制しながら、非常に効率的なヘテロ二量体化を優先することができた(Martens T et
al.A novel one-armed antic- Met antibody inhibits glioblastoma growth in vivo.Clin Cancer Res 2006;12:6144-52;PMID:17062691)。Xencorは、構造計算および配列情報の組み合わせに基づいて41の変異型対を定義し、その後、最大ヘテロ二量体化についてスクリーニングし、鎖AのS364H、F405A(HA)と鎖BのY349T、T394F(TF)との組み合わせを定義した(Moore GL et al.A novel bispecific antibody format enables simultaneous bivalent and monovalent co-engagement of distinct target antigens.MAbs 2011;3:546-57;PMID:22123055)。
【0328】
多重特異性抗体のヘテロ二量体化を促進する他の例示的なFc突然変異には、以下の参考文献:WO2016/071377A1、US2014/0079689A1、US2016/0194389A1、US2016/0257763、WO2016/071376A2、WO2015/107026A1、WO2015/107025A1、WO2015/107015A1、US2015/0353636A1、US2014/0199294A1、US7750128B2、US20160229915A1、US2015/0344570A1、US8003774A1、US2015/0337049A1、US2015/0175707A1、US2014/0242075A1、US2013/0195849A1、US2012/0149876A1、US2014/0200331A1、US9309311B2、US8586713、US2014/0037621A1、US2013/0178605A1、US2014/0363426A1、US2014/0051835A1、およびUS2011/0054151A1に記載されているものが含まれ、それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0329】
安定化システイン突然変異はまた、KiHおよび他のFcヘテロ二量体化促進変異型と組み合わせて使用されてきた。例えばUS7183076を参照されたい。他の例示的な
システイン修飾には、例えば、US2014/0348839A1、US7855275B2、およびUS9000130B2に開示されているものが含まれる。
【0330】
鎖交換操作ドメイン(SEED)
鎖交換操作ドメイン(SEED)C(H)3ヘテロ二量体を考案することによる、二重特異性および非対称融合タンパク質の設計を支持するヘテロ二量体Fcプラットフォームが知られている。これらのヒトIgGおよびIgA C(H)3ドメインの誘導体は、ヒトIgAおよびIgG C(H)3配列の交互セグメントで構成される相補的なヒトSEED C(H)3ヘテロ二量体を創出する。得られるSEED C(H)3ドメインの対は、哺乳類細胞で発現すると優先的に会合してヘテロ二量体を形成する。SEEDbody(Sb)融合タンパク質は、[IgG1ヒンジ]-C(H)2-[SEED C(H)3]からなり、1つ以上の融合パートナーに遺伝的に結合される場合がある(例えば、Davis JH et al.SEEDbodies:fusion proteins
based on strand exchange engineered domain (SEED) CH3 heterodimers in an Fc analogue platform for asymmetric binders or
immunofusions and bispecific antibodies.Protein Eng Des Sel 2010;23:195-202、PMID:20299542、およびUS8871912を参照されたい。それらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0331】
Duobody
正しい重鎖対合を有する二重特異性抗体を産生する「Duobody」技術が知られている。DuoBody技術には、産生後交換反応で安定した二重特異性ヒトIgG1抗体を生成するための3つの基本ステップを伴う。最初のステップでは、各々第3の定常(CH3)ドメインに単一の一致した突然変異を含む2つのIgG1が、標準の哺乳類組換え細胞株を使用して別個に産生される。その後、これらのIgG1抗体は、回収および精製のための標準的なプロセスに従って精製される。産生および精製(産生後)後、2つの抗体を調整された実験室条件下で組換えることにより、非常に高い収率(通常>95%)で二重特異性抗体産物が得られる(例えば、Labrijn et al,PNAS 2013;110(13):5145-5150およびLabrijn et al.Nature Protocols 2014;9(10):2450-63を参照されたい(それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0332】
静電相互作用
ホモ二量体の形成が静電気的に好ましくないような荷電アミノ酸によるCH3アミノ酸変化を使用して多重特異性抗体を作製する方法が開示されている。EP1870459およびWO2009/089004は、宿主細胞における異なる抗体ドメインの共発現によるヘテロ二量体形成を優先する他の戦略を記載している。これらの方法では、ホモ二量体の形成が静電気的に好ましくなく、ヘテロ二量体化が静電気的に好ましいように、重鎖定常ドメイン3(CH3)(両方のCH3ドメインのCH3-CH3界面)を構成する1つ以上の残基が荷電アミノ酸で代置される。静電相互作用を使用して多重特異性分子を作製するさらなる方法は、以下のUS2010/0015133、US8592562B2、US9200060B2、US2014/0154254A1、およびUS9358286A1を含む参考文献に記載されており、それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0333】
共通の軽鎖
二重特異性IgGの均一な調製物を生成するには、軽鎖の誤対合を避ける必要がある。これを達成する1つの方法は、共通の軽鎖の原理を使用することである。つまり、1つの
軽鎖を共有するがまだ別個の特異性のある2つのバインダーを組み合わせる。単量体の混合物からの所望の二重特異性抗体の形成を増強する例示的な方法は、二重特異性抗体のヘテロマー可変重鎖領域の各々と相互作用する共通の可変軽鎖を提供することによるものである。例えば、US7183076B2、US2011/0177073A1、EP2847231A1、WO2016/079081A1、およびEP3055329A1に開示されている、共通の軽鎖を有する二重特異性抗体を産生する組成物および方法が開示されており、それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0334】
CrossMab
軽鎖の誤対合を低減するもう1つのオプションは、二重特異性抗体の半分のFabのCH1およびCLドメインを交換することにより、非特異的なL鎖の誤対合を回避するCrossMab技術である。このような交差変異型は結合特異性および親和性を保持するが、2つのアームを非常に異なるものにし、L鎖の誤対合を防ぐ。CrossMab技術(上記のKlein et al.で概説される)は、正しい対合の形成を促進するために、重鎖と軽鎖との間のドメインスワッピングを伴う。簡潔に、2つの異なる軽鎖-重鎖の対を使用して2つの抗原に結合することができる二重特異性IgG様CrossMab抗体を構築するために、2段階の修飾プロセスを適用する。最初に、二量体化界面は、ヘテロ二量体化アプローチ、例えばノブイントゥホール(KiH)技術を使用して各重鎖のC末端内に操作されて、1つの抗体(例えば抗体A)および第2の抗体(例えば抗体B)からの2つの異なる重鎖のヘテロ二量体のみが効率的に形成されることを確実にする。次に、1つの抗体の定常重1(CH1)と定常軽(CL)ドメインを交換し(抗体A)、可変重(VH)ドメインと可変軽(VL)ドメインとを一致させる。CH1およびCLドメインの交換は、修飾された抗体(抗体A)の軽鎖が修飾された抗体(抗体A)の重鎖とのみ効率的に二量体化し、未修飾の抗体(抗体B)の軽鎖が未修飾の抗体(抗体B)の重鎖とのみ効率的に二量体化し、したがって、所望の二重特異性CrossMabのみが効率的に形成されることを確実にした(例えば、Cain,C.SciBX 4(28);doi:10.1038/scibx.2011.783を参照されたい、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0335】
共通の重鎖
単量体の混合物からの所望の二重特異性抗体の形成を増強する例示的な方法は、二重特異性抗体のヘテロマー可変軽鎖領域の各々と相互作用する共通の可変重鎖を提供することによるものである。例えば、US2012/0184716、US2013/0317200、およびUS2016/0264685A1に開示されている、共通の重鎖を有する二重特異性抗体を産生する組成物および方法が開示されており、それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0336】
アミノ酸修飾
正しい軽鎖対合を有する多重特異性抗体を産生する代替の組成物および方法には、様々なアミノ酸修飾が含まれる。例えば、Zymeworksは、CH1および/またはCLドメインに1つ以上のアミノ酸修飾、VHおよび/またはVLドメインに1つ以上のアミノ酸修飾、またはそれらの組み合わせを有するヘテロ二量体について説明しており、これは、軽鎖と重鎖との間の界面の一部であり、ヘテロ二量体対の2つの重鎖と2つの軽鎖が細胞内で同時発現される場合、第1のヘテロ二量体の重鎖が他方ではなく軽鎖のうちの一方と優先的に対合されるように各重鎖と所望の軽鎖との間に優先的な対合を創出する(例えばWO2015/181805を参照されたい)。他の例示的な方法は、WO2016/026943(Argen-X)、US2015/0211001、US2014/0072581A1、US2016/0039947A1、およびUS2015/0368352に記載されている。
【0337】
ラムダ/カッパ形式
ラムダ軽鎖ポリペプチドおよびカッパ軽鎖ポリペプチドを含む多重特異性分子(例えば多重特異性抗体分子)は、ヘテロ二量体化を可能にするように使用でされ得る。ラムダ軽鎖ポリペプチドおよびカッパ軽鎖ポリペプチドを含む二重特異性抗体分子を生成する方法は、2016年9月23日に出願されたUSSN62/399,319(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0338】
実施形態では、多重特異性分子は、多重特異性抗体分子、例えば2つの結合特異性を含む抗体分子、例えば二重特異性抗体分子を含む。多重特異性抗体分子は、
第1のエピトープに特異的なラムダ軽鎖ポリペプチド1(LLCP1)、
第1のエピトープに特異的な重鎖ポリペプチド1(HCP1)、
第2のエピトープに特異的なカッパ軽鎖ポリペプチド2(KLCP2)、および
第2のエピトープに特異的な重鎖ポリペプチド2(HCP2)を含む。
【0339】
「ラムダ軽鎖ポリペプチド1(LLCP1)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族重鎖可変領域と組み合わされたとき、そのエピトープへの特異的結合を媒介し、HCP1と複合体を形成するように、十分な軽鎖(LC)配列を含むポリペプチドを指す。一実施形態では、それはCH1領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、LLCP1は、LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、およびCH1、またはそのエピトープの特異的結合を媒介し、HCP1と複合体を形成するのに十分なそれらからの配列を含む。LLCP1は、そのHCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する(KLCP2は、そのHCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する)。本明細書の他の箇所に記載されるように、LLCP1はHCP2よりもHCP1に対してより高い親和性を有する。
【0340】
「カッパ軽鎖ポリペプチド2(KLCP2)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族重鎖可変領域と組み合わされたとき、そのエピトープへの特異的結合を媒介し、HCP2と複合体を形成することができるように、十分な軽鎖(LC)配列を含むポリペプチドを指す。一実施形態では、それはCH1領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、KLCP2は、LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、およびCH1、またはそのエピトープの特異的結合を媒介し、HCP2と複合体を形成するのに十分なそれらからの配列を含む。KLCP2は、そのHCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する(LLCP1は、そのHCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する)。
【0341】
「重鎖ポリペプチド1(HCP1)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族LLCP1と組み合わされたとき、そのエピトープへの特異的結合を媒介し、HCP1と複合体を形成することができるように、十分な重鎖(HC)配列、例えばHC可変領域配列を含むポリペプチドを指す。一実施形態では、それはCH1領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、それはCH2および/またはCH3領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、HCP1は、HC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、CH1、CH2、およびCH3、または(i)そのエピトープの特異的結合を媒介し、LLCP1と複合体を形成する、(ii)本明細書に記載されるように、KLCP2とは対照的にLLCP1に対して優先的に複合体を形成する、かつ(iii)本明細書に記載されるように、HCP1の別の分子とは対照的に対してHCP2に優先的に複合体を形成するのに十分なそれらからの配列を含む。HCP1は、そのLLCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する(KLCP2は、そのHCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する)。
【0342】
「重鎖ポリペプチド2(HCP2)」は、その用語が本明細書で使用される場合、同族
LLCP1と組み合わされたとき、そのエピトープへの特異的結合を媒介し、HCP1と複合体を形成することができるように、十分な重鎖(HC)配列、例えばHC可変領域配列を含むポリペプチドを指す。一実施形態では、それはCH1領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、それはCH2および/またはCH3領域の全てまたは断片を含む。一実施形態では、HCP1は、HC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、FR1、FR2、FR3、FR4、CH1、CH2、およびCH3、または(i)そのエピトープへの特異的結合を媒介し、KLCP2と複合体を形成する、(ii)本明細書に記載されるように、LLCP1とは対照的にKLCP2に対して優先的に複合体を形成する、かつ(iii)本明細書に記載されるように、HCP2の別の分子とは対照的にHCP1に対して優先的に複合体を形成するのに十分なそれらからの配列を含む。HCP2は、そのKLCP2とともに、第2のエピトープに特異性を提供する(LLCP1は、そのHCP1とともに、第1のエピトープに特異性を提供する)。
【0343】
本明細書に開示される多重特異性抗体分子のいくつかの実施形態では、
LLCP1は、HCP2よりもHCP1に対してよりも高い親和性を有し、かつ/または
KLCP2は、HCP1よりもHCP2に対してより親和性を有する。
【0344】
実施形態では、HCP1に対するLLCP1の親和性は、HCP2に対するその親和性よりも十分に大きいため、予め選択された条件下、例えば水性緩衝液において、例えば生理食塩水においてpH7、例えばpH7で、または生理学的条件下で、少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5、または99.9%の多重特異性抗体分子は、LLCP1を、HCP1と複合体形成させるか、またはHCP1と相互作用させる。
【0345】
本明細書に開示される多重特異性抗体分子のいくつかの実施形態では、
HCP1は、HCP1の第2の分子よりもHCP2に対して大きい親和性を有し、かつ/または
HCP2は、HCP2の第2の分子よりもHCP1に対して大きい親和性を有する。
【0346】
実施形態では、HCP2に対するHCP1の親和性は、HCP1の第2の分子に対するその親和性よりも十分に大きいため、予め選択された条件下、例えば水性緩衝液において、例えば生理食塩水においてpH7、例えばpH7で、または生理学的条件下で、少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5、または99.9%の多重特異性抗体分子は、HCP1を、HCP2と複合体形成させるか、またはHCP1と相互作用させる。
【0347】
別の態様では、多重特異性抗体分子を作製または産生する方法が本明細書で開示される。本方法は、
(i)第1の重鎖ポリペプチド(例えば、第1の重鎖可変領域(第1のVH)、第1のCH1、第1の重鎖定常領域(例えば、第1のCH2、第1のCH3、またはその両方)のうちの1つ、2つ、3つ、または全てを含む重鎖ポリペプチド)を提供することと、
(ii)第2の重鎖ポリペプチド(例えば、第2の重鎖可変領域(第2のVH)、第2のCH1、第2の重鎖定常領域(例えば、第2のCH2、第2のCH3、またはその両方)のうちの1つ、2つ、3つ、または全てを含む重鎖ポリペプチド)を提供することと、
(iii)第1の重鎖ポリペプチド(例えば第1のVH)と優先的に会合するラムダ鎖ポリペプチド(例えば、ラムダ軽可変領域(VLλ)、ラムダ軽定常鎖(VLλ)、またはその両方)を提供することと、
(iv)第2の重鎖ポリペプチド(例えば第2のVH)と優先的に会合するカッパ鎖ポリペプチド(例えば、ラムダ軽可変領域(VLκ)、ラムダ軽定常鎖(VLκ)、または
その両方)を提供することとを、
(i)~(iv)が関連する条件下で含む。
【0348】
実施形態では、第1および第2の重鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体化を増強するFc界面を形成する。
【0349】
実施形態では、(i)~(iv)(例えば、(i)~(iv)をコードする核酸)は、単一の細胞、例えば単一の哺乳類細胞、例えばCHO細胞に導入される。実施形態では、(i)~(iv)は細胞内で発現される。
【0350】
実施形態では、(i)~(iv)(例えば、(i)~(iv)をコードする核酸)は、異なる細胞、例えば異なる哺乳類細胞、例えば2つ以上のCHO細胞に導入される。実施形態では、(i)~(iv)は細胞内で発現される。
【0351】
一実施形態では、本方法は、例えば、ラムダおよび/またはカッパ特異的精製、例えば親和性クロマトグラフィーを使用して、細胞発現抗体分子を精製することをさらに含む。
【0352】
実施形態では、本方法は、細胞発現多重特異性抗体分子を評価することをさらに含む。例えば、精製された細胞発現多重特異性抗体分子は、質量分析を含む当該技術分野で既知の技法により分析することができる。一実施形態では、精製された細胞発現抗体分子は、切断、例えばパパインで消化されてFab部分をもたらし、質量分析を使用して評価される。
【0353】
実施形態では、本方法は、例えば少なくとも75%、80、90、95、98、99、99.5または99.9%の高収率で、正しく対合したカッパ/ラムダ多重特異性、例えば二重特異性抗体分子を産生する。
【0354】
他の実施形態では、以下を含む多重特異性、例えば二重特異性抗体分子:
(i)第1の重鎖ポリペプチド(HCP1)(例えば、第1の重鎖可変領域(第1のVH)、第1のCH1、第1の重鎖定常領域(例えば、第1のCH2、第1のCH3、またはその両方)のうちの1つ、2つ、3つ、または全てを含む重鎖ポリペプチド)(例えば、HCP1は第1のエピトープに結合する)、
(ii)第2の重鎖ポリペプチド(HCP2)(例えば、第2の重鎖可変領域(第2のVH)、第2のCH1、第2の重鎖定常領域(例えば、第2のCH2、第2のCH3、またはその両方)のうちの1つ、2つ、3つ、または全てを含む重鎖ポリペプチド)(例えば、HCP2は第2のエピトープに結合する)、
(iii)第1の重鎖ポリペプチド(例えば第1のVH)と優先的に会合するラムダ鎖ポリペプチド(LLCP1)(例えば、ラムダ軽可変領域(VLl)、ラムダ軽定常鎖(VLl)、またはその両方)(例えば、LLCP1は第1のエピトープに結合する)、および
(iv)第2の重鎖ポリペプチド(例えば第2のVH)と優先的に会合するカッパ鎖ポリペプチド(KLCP2)(例えば、ラムダ軽可変領域(VLκ)、ラムダ軽定常鎖(VLκ)、またはその両方)(例えば、KLCP2は第2のエピトープに結合する)。
【0355】
実施形態では、第1および第2の重鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体化を増強するFc界面を形成する。実施形態では、多重特異性抗体分子は、Fc定常CH2-CH3ドメイン(ノブ修飾を有する)に接続された第1重鎖可変領域にヘテロ二量体化されたハイブリッドVL1-CL1を含む第1結合特異性と、Fc定常CH2-CH3ドメイン(ホール修飾を有する)に接続された第2の重鎖可変領域にヘテロ二量体化されたハイブリッドVLk-CLkを含む第2結合特異性とを有する。
【0356】
核酸
本発明はまた、本明細書に記載されるように、抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。例えば、本発明は、本明細書に開示される抗体分子のうちの1つ以上から選択される抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸を特徴とする。核酸は、本明細書の表に記載の、またはそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の配列、または本明細書の表に示される配列と3、6、15、30、または45ヌクレオチド以下異なるヌクレオチド配列を含み得る。
【0357】
ある特定の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または1つ以上の置換、例えば保存的置換を有する配列)を含み得る。他の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または1つ以上の置換、例えば保存的置換を有する配列)を含み得る。さらに別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または1つ以上の置換、例えば保存的置換を有する配列)を含み得る。
【0358】
ある特定の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、それと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または本明細書に記載される厳密な条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含み得る。別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または本明細書に記載される厳密な条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含み得る。さらに別の実施形態では、核酸は、本明細書の表に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖および軽鎖可変領域からの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDRまたは超可変ループをコードするヌクレオチド配列、あるいはそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%以上同一の、および/または本明細書に記載される厳密な条件下でハイブリダイズすることができる配列)を含み得る。
【0359】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載される核酸を含む宿主細胞およびベクターを特徴とする。核酸は、以下により詳細に記載されるように、同じ宿主細胞または別個の宿主細胞に存在する単一のベクターまたは別個のベクターに存在し得る。
【0360】
ベクター
本明細書に記載される抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むベクターが本明細書でさらに提供される。一実施形態では、ベクターは、本明細書に記載される抗体分子をコードするヌクレオチドを含む。一実施形態では、ベクターは本明細書に記載されるヌク
レオチド配列を含む。ベクターには、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージ、または酵母人工染色体(YAC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0361】
多数のベクター系を用いることができる。例えば、1つのクラスのベクターは、例えばウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTV、またはMOMLV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、およびフラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNA要素を利用する。
【0362】
加えて、DNAをそれらの染色体に安定して組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択され得る。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば抗生物質)、または銅などの重金属に対する耐性などを提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接結合されるか、または同時形質転換によって同じ細胞に導入されるかのいずれかであり得る。mRNAの最適な合成には、追加の要素が必要になる場合もある。これらの要素には、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルが含まれる場合がある。
【0363】
発現ベクターまたは構築物を含むDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターが適切な宿主細胞にトランスフェクトまたは導入され得る。これを達成するために、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクション、または他の従来の技法などの様々な技法を用いることができる。プロトプラスト融合の場合、細胞を培地で成長させ、適切な活性についてスクリーニングする。得られるトランスフェクトされた細胞を培養し、産生された抗体分子を回収する方法および条件は、当業者に既知であり、本説明に基づいて、用いられる特定の発現ベクターおよび哺乳類宿主細胞に応じて変更または最適化することができる。
【0364】
細胞
別の態様では、本出願は、本明細書に記載される核酸を含む宿主細胞およびベクターを特徴とする。核酸は、同じ宿主細胞または別個の宿主細胞に存在する単一のベクターまたは別個のベクターに存在し得る。宿主細胞は、真核細胞、例えば哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、または原核細胞、例えばE.coliであり得る。例えば、哺乳類細胞は、培養細胞または細胞株であり得る。例示的な哺乳類細胞には、リンパ球細胞系(例えば、NSO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、卵母細胞、およびトランスジェニック動物からの細胞、例えば乳腺上皮細胞が含まれる。
本発明はまた、本明細書に記載される抗体分子をコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0365】
一実施形態では、宿主細胞は、抗体分子をコードする核酸を含むように遺伝子操作される。
【0366】
一実施形態では、宿主細胞は、発現カセットを使用することにより遺伝子操作される。「発現カセット」という句は、そのような配列と適合性のある宿主における遺伝子の発現に影響を与えることができるヌクレオチド配列を指す。そのようなカセットは、プロモーター、イントロンを伴うまたは伴わないオープンリーディングフレーム、および終結シグナルを含み得る。例えば誘導性プロモーターなどの、発現をもたらすのに必要または有用な追加の因子も使用され得る。
【0367】
本発明は、本明細書に記載されるベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0368】
細胞は、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞、またはヒト細胞であり得るが、これらに限定されない。好適な真核細胞には、ベロ細胞、HeLa細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、およびMDCKII細胞が含まれるが、これらに限定されない。好適な昆虫細胞には、Sf9細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0369】
使用および併用療法
本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される多重特異性分子を使用して、例えば本明細書に記載される医薬組成物を使用して、対象のがんを治療することを含む。また、対象のがんの症状を低減または寛解させる方法、ならびにがんの成長を阻害し、かつ/または1つ以上のがん細胞を死滅させる方法も提供される。実施形態では、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載されるもので、または本明細書に記載される医薬組成物を投与された対象の腫瘍の大きさおよび/またはがん細胞の数を減少させる。
【0370】
実施形態では、がんは血液癌である。実施形態では、血液癌は白血病またはリンパ腫である。本明細書で使用される場合、「血液癌」とは、造血またはリンパ系組織の腫瘍、例えば、血液、骨髄、またはリンパ節に影響を及ぼす腫瘍を指す。例示的な血液悪性腫瘍としては、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、急性単球性白血病(AMoL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、または大顆粒リンパ球性白血病)、リンパ腫(例えば、AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(例えば古典的ホジキンリンパ腫または結節性リンパ球優勢ホジキンリンパ腫)、菌状息肉腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、またはマントル細胞リンパ腫)またはT細胞非ホジキンリンパ腫(菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫、または前駆Tリンパ芽球性リンパ腫))、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群、ワルデンストレームマクログロブリン血症)、慢性骨髄増殖性新生物、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、または骨髄異形成/骨髄増殖性新生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0371】
実施形態では、がんは固形癌である。例示的な固形癌としては、卵巣癌、直腸癌、胃癌、精巣癌、肛門領域のがん、子宮癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺の非小細胞癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、カポジ肉腫、内分泌系のがん、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮癌、子宮頸部扁平上皮癌のがん、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、外陰部癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓または尿管のがん、腎盂癌、脊椎軸腫瘍、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、上記がんの転移病変、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0372】
実施形態では、多重特異性分子(または医薬組成物)は、治療または予防される疾患に適切な様式で投与される。投与の量および頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定される。適切な投与量は臨床試験によって決定され得る。例えば、「有効量」または「治療量」が示される場合、投与される医薬組成物(または多重特異性分子)の正確な量は、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、対象の年齢、体重、および状態の個人差を考慮して医師により決定され得る。実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、10~10細胞/kg体重、例えば10~10細胞/k
g体重(これらの範囲内の全ての整数値を含む)の投与量で投与され得る。実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、これらの投与量で複数回投与することができる。実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、免疫療法に記載される注入技法を使用して投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照されたい)。
【0373】
実施形態では、多重特異性分子または医薬組成物は、対象に非経口投与される。実施形態では、細胞は、対象に静脈内、皮下、腫瘍内、結節内、筋肉内、皮内、または腹腔内投与される。実施形態では、細胞は、腫瘍またはリンパ節に直接投与、例えば注射される。実施形態では、細胞は、注入(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988に記載されているように)または静脈内プッシュとして投与される。実施形態では、細胞は、注射可能なデポ製剤として投与される。
実施形態では、対象は哺乳動物である。実施形態では、対象は、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、またはマウスである。実施形態では、対象はヒトである。実施形態では、対象は、例えば18歳未満、例えば17歳、16歳、15歳、14歳、13歳、12歳、11歳、10歳、9歳、8歳、7歳、6歳、5歳、4歳、3歳、2歳、1歳未満、またはそれ以下の小児対象である。実施形態では、対象は、例えば少なくとも18歳、例えば少なくとも19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、25~30歳、30~35歳、35~40歳、40~50歳、50~60歳、60~70歳、70~80歳、または80~90歳の成人である。
【0374】
併用療法
本明細書で開示される多重特異性分子は、第2の治療薬または手順と組み合わせて使用することができる。
【0375】
実施形態では、多重特異性分子および第2の治療薬または手順は、対象ががんと診断された後、例えばがんが対象から排除される前に投与/実施される。実施形態では、多重特異性分子および第2の治療薬または手順は、同時にまたは同時発生的に投与/実施される。例えば、第2の送達が開始されるとき、1つの治療の送達はまだ行われており、例えば、治療の施行が重複する。実施形態では、多重特異性分子および第2の治療薬または手順は、順次投与/実施される。例えば、1つの治療の送達は、他の治療の送達が始まる前に終わる。
【0376】
実施形態では、併用療法は、いずれかの薬剤単独での単独療法よりも効果的な治療をもたらし得る。実施形態では、第1および第2の治療の組み合わせは、第1または第2の治療単独よりも効果的である(例えば、症状および/またはがん細胞の大幅な低減をもたらす)。実施形態では、併用療法は、単独療法として投与されるとき、同様の効果を達成するために通常必要とされる第1または第2の治療の用量と比較して、より低い用量の第1または第2の治療の使用を可能にする。実施形態では、併用療法は、部分的に相加的な効果、完全に相加的な効果、または相加的な効果よりも大きい。
【0377】
一実施形態では、多重特異性分子は、療法、例えばがん療法(例えば、抗がん剤、免疫療法、光線力学療法(PDT)、手術、および/または放射線のうちの1つ以上)と組み合わせて投与される。「化学療法薬(chemotherapeutic)」、「化学療法薬(chemotherapeutic agent)」、および「抗がん剤」という用語は、本明細書で互換的に使用される。多重特異性分子および治療、例えばがん治療の投与は、順次(重複するかまたは重複しない)または同時であり得る。多重特異性分子の投与は、治療の過程(例えばがん治療)の間、継続的または断続的であり得る。本明細書に記載のある特定の療法は、がんおよび非がん性疾患の治療に使用することができる。例
えば、PDTの有効性は、本明細書に記載される方法および組成物を使用して、がん性および非がん性状態において増強され得る(例えば、Agostinis,P.et al.(2011) CA CancerJ.Clin.61:250-281に概説されている)。
【0378】
抗がん療法
他の実施形態では、多重特異性分子は、低分子量または小分子量の化学療法薬と組み合わせて投与される。例示的な低分子量または小分子量の化学療法薬としては、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノイン、ACCUTANE(登録商標))、2-CdA(2-クロロデオキシアデノシン、クラドリビン、LEUSTATIN(商標))、5-アザシチジン(アザシチジン、VIDAZA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU、フルオロウラシル、ADRUCIL(登録商標))、6-メルカプトプリン(6-MP、メルカプトプリン、PURINETHOL(登録商標))、6-TG(6-チオグアニン、チオグアニン、THIOGUANINE TABLOID(登録商標))、アブラキサン(パクリタキセルタンパク質-結合)、アクチノマイシン-D(ダクチノマイシン、COSMEGEN(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、オールトランスレチノイン酸(ATRA、トレチノイン、VESANOID(登録商標))、アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン、HMM、HEXALEN(登録商標))、アメトプテリン(メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、MTX、TREXALL(商標)、RHEUMATREX(登録商標))、アミフォスチン(ETHYOL(登録商標))、アラビノシルシトシン(Ara-C、シタラビン、CYTOSAR-U(登録商標))、三酸化ヒ素(TRISENOX(登録商標))、アスパラギナーゼ(Erwinia L-アスパラギナーゼ、L-アスパラギナーゼ、ELSPAR(登録商標)、KIDROLASE(登録商標))、BCNU(カルムスチン、BiCNU(登録商標))、ベンダムスチン(TREANDA(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))、ブレオマイシン(BLENOXANE(登録商標))、ブスルファン(BUSULFEX(登録商標)、MYLERAN(登録商標))、カルシウムロイコボリン(シトロボラム因子、フォリン酸、ロイコボリン)、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、カルボプラチン(PARAPLATIN(登録商標))、カルムスチンウエハー(カルムスチンインプラントを含むプロリフェプロスパン(prolifeprospan)20)、GLIADEL(登録商標)ウエハー)、CCI-779(テムシロリムス、TORISEL(登録商標))、CCNU(ロムスチン、CeeNU)、CDDP(シスプラチン、PLATINOL(登録商標)、PLATINOL-AQ(登録商標))、クロラムブシル(Lukeran)、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標))、ダカルバジン(DIC、DTIC、イミダゾールカルボキサミド、DTIC-DOME(登録商標))、ダウノマイシン(ダウノルビシン、ダウノルビシン塩酸塩、ルビドマイシン塩酸塩、CERUBIDINE(登録商標))、デシタビン(DACOGEN(登録商標))、デキサゾキサン(ZINECARD(登録商標))、DHAD(ミトキサントロン、NOVANTRONE(登録商標))、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、RUBEX(登録商標))、エピルビシン(ELLENCE(商標))、エストラムスチン(EMCYT(登録商標))、エトポシド(VP-16、リン酸エトポシド、TOPOSAR(登録商標)、VEPESID(登録商標)、ETOPOPHOS(登録商標))、フロクスウリジン(FUDR(登録商標))、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、フルオロウラシル(クリーム)(CARAC(商標)、EFUDEX(登録商標)、FLUOROPLEX(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ヒドロキシ尿素(HYDREA(登録商標)、DROXIA(商標)、MYLOCEL(商標))、イダルビシン(IDAMYCIN(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イクサベピロン(IXEMPRA(商標))
、LCR(ロイロクリスチン、ビンクリスチン、VCR、ONCOVIN(登録商標)、VINCASAR PFS(登録商標))、L-PAM(L-サルコリシン、メルファラン、フェニルアラニンマスタード、ALKERAN(登録商標))、メクロレタミン(メクロレタミン塩酸塩、ムスチン、ナイトロジェンマスタード、MUSTARGEN(登録商標))、メスナ(MESNEX(商標))、マイトマイシン(マイトマイシン-C、MTC、MUTAMYCIN(登録商標))、ネララビン(ARRANON(登録商標))、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ONXAL(商標))、ペガスパルガーゼ(PEG-L-アスパラギナーゼ、ONCOSPAR(登録商標))、PEMETREXED(ALIMTA(登録商標))、ペントスタチン(NIPENT(登録商標))、プロカルバジン(MATULANE(登録商標))、ストレプトゾシン(ZANOSAR(登録商標))、テモゾロミド(TEMODAR(登録商標))、テニポシド(VM-26、VUMON(登録商標))、TESPA(チオホスホアミド、チオテパ、TSPA、THIOPLEX(登録商標))、トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン、VLB、ALKABAN-AQ(登録商標)、VELBAN (登録商標))、ビノレルビン(酒石酸ビノレルビン、NAVELBINE(登録商標))、およびボリノスタット(ZOLINZA(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0379】
別の実施形態では、多重特異性分子は、生物製剤とともに投与される。がんの治療に有用な生物製剤は当該技術分野で既知であり、本発明の結合分子は、例えば、そのような既知の生物製剤とともに投与することができる。例えば、FDAは、乳癌の治療のために、以下の生物製剤を承認した:HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ、Genentech Inc.,South San Francisco,Calif.;HER2陽性乳癌において抗腫瘍活性を有するAヒト化モノクローナル抗体)、FASLODEX(登録商標)(フルベストラント、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP,Wilmington,Del.;乳癌の治療に使用されるエストロゲン-受容体アンタゴニスト)、ARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP;アロマターゼを遮断する非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、エストロゲンを作るために必要な酵素)、Aromasin(登録商標)(エキセメスタン、Pfizer Inc.,New York,N.Y.;乳癌の治療に使用される不可逆的なステロイド性アロマターゼ不活性化剤)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール、Novartis Pharmaceuticals,East Hanover,N.J.;乳癌の治療のための、FDAにより承認された非ステロイド性アロマターゼ阻害剤)、およびNOLVADEX(登録商標)(タモキシフェン、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP;乳癌の治療のための、FDAにより承認された非ステロイド性抗エストロゲン)。本発明の結合分子を組み合わせることができる他の生物製剤には、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ、Genentech Inc.;血管新生を阻害するために設計された最初のFDA承認療法)およびZEVALIN(登録商標) (イブリツモマブチウキセタン、Biogen Idec,Cambridge,Mass.;B細胞リンパ腫の治療用に現在承認されている放射性標識モノクローナル抗体)が含まれる。
【0380】
加えて、FDAは、結腸直腸癌の治療のために、以下の生物製剤を承認した:AVASTIN(登録商標)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ、ImClone Systems Inc.,New York,N.Y.,およびBristol-Myers Squibb,New York,N.Y.;上皮成長因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体である)、GLEEVEC(登録商標)(イマチニブメシレート;プロテインキナーゼ阻害剤)、およびERGAMISOL(登録商標)(レバミゾール塩酸塩、Janssen Pharmaceutica Products,LP,T
itusville,N.J.;デュークスステージCの結腸癌を有する患者における外科的切除後の5-フルオロウラシルと組み合わせた補助治療として1990年にFDAにより承認された免疫調節剤)。
【0381】
肺癌の治療のための例示的な生物製剤としては、TARCEVA(登録商標)(エルロチニブHCL、OSI Pharmaceuticals Inc.,Melville,N.Y.;ヒト上皮成長因子受容体1(HER1)経路を標的とするように設計された小分子)が挙げられる。
【0382】
多発性骨髄腫の治療のための例示的な生物製剤としては、VELCADE(登録商標)ベルケイド(ボルテゾミブ、Millennium Pharmaceuticals,Cambridge Mass.;プロテアソーム阻害剤)が挙げられる。さらなる生物製剤としては、THALIDOMID(登録商標)(サリドマイド、Clegene Corporation,Warren,N.J.;免疫調節剤であり、骨髄腫細胞の成長および生存ならびに抗血管新生を阻害する能力を含む複数の作用を有するようである)が挙げられる。
【0383】
さらなる例示的ながん治療用抗体としては、3F8、アバゴボマブ(abagovomab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ(afutuzumab)、アラシズマブペゴール、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標)、MABCAMPATH(登録商標))、アルツモマブペンテタート(altumomab pentetate)(HYBRI-CEAKER(登録商標))、アナツモマブマフェナトキス(anatumomab mafenatox)、アンルキンズマブ(IMA-638)、アポリズマブ、アルシツモマブ(CEA-SCAN(登録商標))、バビツキシマブ、ベクツモマブ(LYMPHOSCAN(登録商標))、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標)、LYMPHOSTAT-B(登録商標))、ベシレソマブ(SCINTIMUN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド(PROSTASCINT(登録商標))、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標))、CC49、セツキシマブ(C225、ERBITUX(登録商標))、シタツズマブボガトクス(citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、ダセツズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標))、デキズマブ、クリバツズマブテトラキセブマツ、エドコロマブ(PANOREX(登録商標))、デツモマブ、エクロメキシマブ、エドレコロマブ(PANOREX(登録商標))、エロツズマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルツマキソマブ(REXOMUN(登録商標))、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィギツムマブ、フレソリムマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブべドチン、イブリツモマブ(イブリツモマブチウキセタン、ZEVALIN(登録商標))、イゴボマブ(INDIMACIS-125(登録商標))、インテツムマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ(CEA-CIDE(登録商標))、レキサツムマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、ナコロマブタフェナトクス(nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス(naptumomab estafenatox)、ネシツムマブ、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標)、THERALOC(登録商標))、ノフェツモマブメルペンタン(VERLUMA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、オララツマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ(OVAREX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペムツモマブ(THERAGYN(登録商標))、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標))、ピンツモマブ、プリ
ツムマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、リロツムマブ、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標)、RITUXAN(登録商標))、ロバツムマブ、サツモマブペンデチド、シブロツズマブ、シルツキシマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン(AFP-CIDE(登録商標))、タプリツモマブパプトクス、テナツモマブ、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、TNX-650、トシツモマブ(BEXXAR(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ(HUMASPECT(登録商標))、ザルツムマブ(HUMAX-EGFR(登録商標))、およびザノリムマブ(HUMAX-CD4(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0384】
他の実施形態では、多重特異性分子は、ウイルス性がん治療薬と組み合わせて投与される。例示的なウイルス性がん治療薬としては、ワクシニアウイルス(vvDD-CDSR)、がん胎児性抗原発現麻疹ウイルス、組換えワクシニアウイルス(TK-欠失+GM-CSF)、セネカバレーウイルス-001、ニューカッスルウイルス、コクサッキーウイルスA21、GL-ONC1、EBNA1 C末端/LMP2キメラタンパク質発現組換え修飾ワクシニアアンカラワクチン、がん胎児性抗原発現麻疹ウイルス、G207腫瘍溶解性ウイルス、p53を発現する修飾ワクシニアウイルスアンカラワクチン、OncoVEX GM-CSF修飾単純ヘルペス1型ウイルス、鶏痘ウイルスワクチンベクター、組換えワクシニア前立腺特異抗原ワクチン、ヒトパピローマウイルス16/18 L1ウイルス様粒子/AS04ワクチン、MVA-EBNA1/LMP2 Inj.ワクチン、4価のHPVワクチン、4価のヒトパピローマウイルス(6型、11型、16型、18型)組換えワクチン(GARDASIL(登録商標))、組換え鶏痘CEA(6D)/TRICOMワクチン;組換えワクシニア-CEA(6D)-TRICOMワクチン、組換え修飾ワクシニアアンカラ-5T4ワクチン、組換え鶏痘-TRICOMワクチン、腫瘍溶解性ヘルペスウイルスNV1020、HPV L1 VLPワクチンV504、ヒトパピローマウイルス二価(16型および18型)ワクチン(CERVARIX(登録商標))、単純ヘルペスウイルスHF10、Ad5CMV-p53遺伝子、組換えワクシニアDF3/MUC1ワクチン、組換えワクシニア-MUC-1ワクチン、組換えワクシニア-TRICOMワクチン、ALVAC MART-1ワクチン、ヒトプレプロエンケファリン(NP2)を発現する複製欠損単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1 )ベクター、野生型レオウイルス、レオウイルス3型ディアリング(REOLYSIN(登録商標))、腫瘍溶解性ウイルスHSV1716、エプスタイン-バーウイルス標的抗原をコードする組換え修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ベースのワクチン、組換え鶏痘-前立腺特異的抗原ワクチン、組換えワクシニア前立腺特異的抗原ワクチン、組換えワクシニア-B7.1ワクチン、rAd-p53遺伝子、Ad5-delta24RGD、HPVワクチン580299、JX-594(チミジンキナーゼ欠損ワクシニアウイルス+GM-CSF)、HPV-16/18 L1/AS0 4、鶏痘ウイルスワクチンベクター、ワクシニアチロシナーゼワクチン、MEDI-517 HPV-16/18 VLP AS04ワクチン、単純ヘルペスウイルスTK99UNのチミジンキナーゼを含むアデノウイルスベクター、HspE7、FP253/フルダラビン、ALVAC(2)黒色腫多抗原治療用ワクチン、ALVAC-hB7.1、カナリアポックス-hIL-12黒色腫ワクチン、Ad-REIC/Dkk-3、rAd-IFN SCH 721015、TIL-Ad-INFg、Ad-ISF35、およびコクサッキーウイルスA21(CVA21、CAVATAK(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0385】
他の実施形態では、多重特異性分子はナノ医薬品(nanopharmaceutical)と組み合わせて投与される。例示的ながんナノ医薬品としては、ABRAXANE(登録商標)(パクリタキセル結合アルブミンナノ粒子)、CRLX101(線状シクロデキストリンベースのポリマーにコンジュゲートしたCPT)、CRLX288(ドセタ
キセルと生分解性ポリマーポリ(乳酸-コ-グリコール酸)とをコンジュゲートする)、シタラビンリポソーム(リポソームAra-C、DEPOCYT(商標))、ダウノルビシンリポソーム(DAUNOXOME(登録商標))、ドキソルビシンリポソーム(DOXIL(登録商標)、CAELYX(登録商標))、カプセル化ダウノルビシンクエン酸リポソーム(DAUNOXOME(登録商標))、およびPEG抗VEGFアプタマー(MACUGEN(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0386】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子はパクリタキセルまたはパクリタキセル製剤、例えばTAXOL(登録商標)、タンパク質結合パクリタキセル(例えばABRAXANE(登録商標))と組み合わせて投与される。例示的なパクリタキセル製剤としては、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標)、Abraxis Bioscienceにより販売)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン、Protargaにより販売)、ポリグルタメート結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、CT-2103、XYOTAX、Cell Therapeuticにより販売)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)、ANG105(Angiopep-2がパクリタキセルの3つの分子に結合、ImmunoGenにより販売)、パクリタキセルEC-1(パクリタキセルがerbB2認識ペプチドEC-1に結合;Li et al.,Biopolymers(2007) 87:225-230を参照されたい)、およびグルコースコンジュゲートパクリタキセル(例えば、2’-パクリタキセル2-グルコピラノシルコハク酸メチル、Liu et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters(2007) 17:617-620を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0387】
がんを治療するための例示的なRNAiおよびアンチセンスRNA剤としては、CALAA-01、siG12D LODER(Local Drug EluteR)、およびALN-VSP02が挙げられるが、これらに限定されない。
【0388】
他のがん治療薬としては、サイトカイン(例えば、アルデスロイキン(IL-2、インターロイキン2、PROLEUKIN(登録商標))、アルファインターフェロン(IFN-アルファ、インターフェロンアルファ、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)、ROFERON-A(登録商標)(インターフェロンアルファ-2a))、エポエチンアルファ(PROCRIT(登録商標))、フィルグラスチム(G-CSF、顆粒球-コロニー刺激因子、NEUPOGEN(登録商標))、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、サルグラモスティム、LEUKINE(商標))、IL-11(インターロイキン-11、オプレルベキン、NEUMEGA(登録商標))、インターフェロンアルファ-2b(PEGコンジュゲート)(PEGインターフェロン、PEG-INTRON(商標))、およびペグフィルグラスチム(NEULASTA(商標))、ホルモン療法薬(例えば、アミノグルテチミド(CYTADREN(登録商標))、アナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、ビカルタミド(CASODEX(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、フルオキシメステロン(HALOTESTIN(登録商標))、フルタミド(EULEXIN(登録商標))、フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、ゴセレリン(ZOLADEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、ロイプロリド(ELIGARD(商標)、LUPRON(登録商標)、LUPRON DEPOT(登録商標)、VIADUR(商標))、メゲストロール(酢酸メゲストロール、MEGACE(登録商標))、ニルタミド(ANANDRON(登録商標)、NILANDRON(登録商標))、オクトレオチド(酢酸オクトレオチド、SANDOSTATIN(登録商標)、SANDOSTATIN LAR(登録商標))、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ロミプロスチム(NPLATE(登録商標))、タモキシフェン(NO
VALDEX(登録商標))、およびトレミフェン(FARESTON(登録商標))、ホスホリパーゼA2阻害剤(例えば、アナグレリド(AGRYLIN(登録商標))、生物学的反応調節剤(例えば、BCG(THERACYS(登録商標)、TICE(登録商標))、およびダルベポエチンアルファ(ARANESP(登録商標))、標的治療薬(例えば、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、ダサチニブ(SPRYCEL(商標))、デニロイキンジフチトクス(ONTAK(登録商標))、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、メシル酸イマチニブ(STI-571、GLEEVEC(商標))、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、およびSU11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標))、免疫調節薬および抗血管新生薬(例えば、CC-5013(レナリドマイド、REVLIMID(登録商標))、およびサリドマイド(THALOMID(登録商標))、グルココルチコステロイド(例えば、コルチゾン(ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸ナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、ALA-CORT(登録商標)、HYDROCORT ACETATE(登録商標))、リン酸ヒドロコルトンLANACORT(登録商標)、SOLU-CORTEF(登録商標))、デカドロン(デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、D EXASONE(登録商標)、DIODEX(登録商標)、HEXADROL(登録商標)、MAXIDEX(登録商標))、メチルプレドニゾロン(6-メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、DURALONE(登録商標)、MEDRALONE(登録商標)、MEDROL(登録商標)、M-PREDNISOL(登録商標)、SOLU-MEDROL(登録商標))、プレドニゾロン(DELTA-CORTEF(登録商標)、ORAPRED(登録商標)、PEDIAPRED(登録商標)、PRELONE(登録商標))、およびプレドニゾン(DELTASONE(登録商標)、LIQUID PRED(登録商標)、METICORTEN(登録商標)、ORASONE(登録商標))、ならびにビスホスホネート(例えば、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、およびゾレドロン酸(ZOMETA(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0389】
いくつかの実施形態では、多重特異性分子は、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤)と組み合わせて使用される。例示的なチロシンキナーゼ阻害剤としては、上皮成長因子(EGF)経路阻害剤(例えば上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤)、血管内皮成長因子(VEGF)経路阻害剤(例えばVEGF、VEGFトラップ、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)阻害剤(例えば、VEGFR-1阻害剤、VEGFR-2阻害剤、VEGFR-3阻害剤)に対する抗体)、血小板由来成長因子(PDGF)経路阻害剤(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)阻害剤(例えばPDGFR-β阻害剤))、RAF-1阻害剤、KIT阻害剤、およびRET阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、AHCM剤と組み合わせて使用される抗がん剤は、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(セマキサニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBI
TUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR-258)、BIBW2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF1120(VARGATEF(登録商標)、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、XL228、AEE788、AG-490、AST-6、BMS-599626、CUDC-101、PD153035、ペリチニブ(EKB-569)、バンデタニブ(zactima)、WZ3146、WZ4002、WZ8040、ABT-869(リニファニブ)、AEE788、AP24534(ポナチニブ)、AV-951(チボザニブ)、アキシチニブ、BAY73-4506(レゴラフェニブ)、ブリバニブアラニネート(BMS-582664)、ブリバニブ(BMS-540215)、セジラニブ(AZD2171)、CHIR-258(ドビチニブ)、CP673451、CYC116、E7080、Ki8751、マシチニブ(AB1010)、MGCD-265、二リン酸モテサニブ(AMG-706)、MP-470、OSI-930、パゾパニブ塩酸塩、PD173074、nソラフェニブトシレート(Bay43-9006)、SU5402、TSU-68(SU6668)、バタラニブ、XL880(GSK1363089、EXEL-2880)からなる群から選択される。選択されたチロシンキナーゼ阻害剤は、スニチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはソラフェニブから選択される。一実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤はスニチニブである。
【0390】
一実施形態では、多重特異性分子は、抗血管新生剤、または血管標的剤もしくは血管破壊剤のうちの1つ以上と組み合わせて投与される。例示的な抗血管新生剤としては、とりわけ、VEGF阻害剤(例えば抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ)、VEGF受容体阻害剤(例えばイトラコナゾール)、細胞増殖および/または内皮細胞の移動の阻害剤(例えばカルボキシアミドトリアゾール、TNP-470)、血管新生刺激因子の阻害剤(例えばスラミン)が挙げられるが、これらに限定されない。血管標的剤(VTA)または血管破壊剤(VDA)は、中心壊死を引き起こすがん腫瘍の脈管構造(血管)を損傷させるように設計される(例えば、Thorpe,P.E.(2004) Clin.Cancer Res.Vol.10:415-427に概説されている)。VTAは低分子であり得る。例示的な小分子VTAとしては、微小管不安定化薬(例えば、コンブレタスタチンA-4リン酸二ナトリウム(CA4P)、ZD6126、AVE8062、Oxi4503)およびバジメザン(ASA404)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0391】
免疫チェックポイント阻害剤
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、多重特異性分子と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤の使用を含む。本方法は、インビボでの治療プロトコルで使用され得る。
【0392】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はチェックポイント分子を阻害する。例示的なチェックポイント分子としては、CTLA4、PD1、PD-L1、PD-L2、TIM3、LAG3、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(TNFRSF14またはCD270)、BTLA、KIR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、およびA2aRが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Pardoll.Nat.Rev.Cancer 12.4(2012):252-
64(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0393】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピジリズマブなどの抗PD-1抗体である。ニボルマブ(MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、またはBMS-936558とも呼ばれる)は、PD1を特異的に阻害する完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。例えば、US8,008,449およびWO2006/121168を参照されたい。ペンブロリズマブ(ランブロリズマブ、MK-3475、MK03475、SCH-900475、またはKEYTRUDA(登録商標)とも呼ばれる;Merck)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。例えば、Hamid,O.et al.(2013) New England Journal of Medicine 369(2):134-44、US8,354,509、およびWO2009/114335を参照されたい。ピジリズマブ(CT-011またはCure Techとも呼ばれる)は、PD1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。例えば、WO2009/101611を参照されたい。一実施形態では、PD-1の阻害剤は、それと実質的に同一または同様の配列、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピジリズマブの配列と少なくとも85%、90%、95%以上同一の配列を有する抗体分子である。さらなる抗PD1抗体、例えばAMP 514(Amplimmune)は、例えば、US8,609,089、US2010/028330、および/またはUS2012/0114649に記載されている。
【0394】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン、例えば定常領域(例えば免疫グロブリンのFc領域)に融合されたPD-1リガンド(例えばPD-L1またはPD-L2)の細胞外/PD-1結合部分を含むイムノアドヘシンである。実施形態では、PD-1阻害剤は、B7-H1とPD-1との間の相互作用を遮断するPD-L2 Fc融合可溶性受容体であるAMP-224(B7-DCIg、例えばWO2011/066342およびWO2010/027827に記載される)である。
【0395】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤、例えば抗体分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、またはMDX-1105である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体はMSB0010718C(A09-246-2とも呼ばれる;Merck Serono)であり、これはPD-L1に結合するモノクローナル抗体である。例示的なヒト化抗PD-L1抗体は、例えばWO2013/079174に記載されている。一実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体、例えばYW243.55.S70である。YW243.55.S70抗体は、例えばWO2010/077634に記載されている。一実施形態では、PD-L1阻害剤はMDX-1105(BMS-936559とも呼ばれる)であり、これは、例えばWO2007/005874に記載されている。一実施形態では、PD-L1阻害剤はMDPL3280A(Genentech/Roche)であり、これはPD-L1に対するヒトFc最適化IgG1モノクローナル抗体である。例えば、米国特許第7,943,743号および米国特許公開第2012/0039906号を参照されたい。一実施形態では、PD-L1の阻害剤は、それと実質的に同一または同様の配列、例えば、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、またはMDX-1105の配列と少なくとも85%、90%、95%以上同一の配列を有する抗体分子である。
【0396】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L2阻害剤、例えばAMP-224(PD1とB7-H1との間の相互作用を遮断するPD-L2 Fc融合可溶性受容体であるである。例えば、WO2010/027827およびWO2011/06634
2を参照されたい。
【0397】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG-3阻害剤、例えば抗LAG-3抗体分子である。実施形態では、抗LAG-3抗体はBMS-986016(BMS986016とも呼ばれる;Bristol-Myers Squibb)である。BMS-986016および他のヒト化抗LAG-3抗体は、例えば、US2011/0150892、WO2010/019570、およびWO2014/008218に記載されている。
【0398】
実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば米国特許第8,552,156号、WO2011/155607、EP2581113、および米国特許公開第2014/044728号に記載される、TIM-3阻害剤、例えば抗TIM3抗体分子である。実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤、例えば抗CTLA-4抗体分子である。例示的な抗CTLA4抗体としては、トレメリムマブ(以前はチシリムマブとして知られていたPfizerから入手可能なIgG2モノクローナル抗体、CP-675,206)、イピリムマブ(MDX-010としても知られる、CAS番号477202-00-9)が挙げられる。他の例示的な抗CTLA-4抗体は、例えば米国特許第5,811,097号に記載されている。
【0399】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての出版物および特許は、各個々の出版物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0400】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] MPLに結合する第1の標的化部分およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む、多重特異性分子。
[項目2] 前記ホスファターゼおよびMPLが、同じ細胞、例えば骨髄線維症細胞で発現される、項目1に記載の多重特異性分子。
[項目3] 前記ホスファターゼが、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる、項目1または2に記載の多重特異性分子。
[項目4] 前記ホスファターゼが、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目5] 前記ホスファターゼがCD45であり、場合により、ホスファターゼに結合する前記標的化部分が、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、またはCD45R(ABC)のうちの1つ以上に結合する、項目1~3のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目6] MPLに結合する前記第1の標的化部分が、
(i)表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目7] ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がCD45に結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表3の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表3の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表3の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、項目1~3、5、または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目8] ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がCD148に結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表4の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表4の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表4の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、項目1~3.または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目9] ホスファターゼに結合する前記第2の標的化部分がLARに結合し、前記第2の標的化部分が、
(i)表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、
(ii)表5の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列、
(iii)表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表5の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(iv)表5の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、項目1~3、または6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目10] 前記多重特異性分子が、エフェクター部分をさらに含み、例えば、前記エフェクター部分が、免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、サイトカインアンタゴニスト、例えばTGF-βアンタゴニスト、酵素、毒素、または標識剤のうちの1つ以上から選択される、項目1~9のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目11] 前記エフェクター部分が、免疫細胞エンゲージャー(例えば、抗CD3抗体分子)である、項目10に記載の多重特異性分子。
[項目12] 前記エフェクター部分が、TGF-βアンタゴニスト、例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体、またはその機能的断片もしくは変異型、例えばTGFβ受容体I型の細胞外ドメインまたはTGFβ受容体II型の細胞外ドメインを含むポリペプチドである、項目10に記載の多重特異性分子。
[項目13] 前記TGFβアンタゴニストが、表6の任意のアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと75%、8-0%、85%、90%、95%、または99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、15、または20個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存置換)であるアミノ酸配列を含む、項目12に記載の多重特異性分子。
[項目14] 第1のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分がMPLに結合する、多重特異性分子(例えば、多重特異性または多機能性抗体分子)。
[項目15] 前記多重特異性分子が、MPL活性を低減、例えば阻害する、項目14に記載の多重特異性分子。
[項目16] MPLに結合する第2のMPL標的化部分を含む、項目14または15に記載の多重特異性分子。
[項目17] 前記第1および前記第2のMPL標的化部分が、同じエピトープに結合する(例えば、重複するエピトープに結合する)、項目16に記載の多重特異性分子。
[項目18] 前記第1および前記第2のMPL標的化部分が、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)、項目16に記載の多重特異性分子。
[項目19] 二重パラトープ抗体分子である、項目18に記載の多重特異性分子。
[項目20] 単一のMPL標的化部分、例えばMPLに対するハーフアーム抗体(例えば第1の免疫グロブリン定常ドメイン(例えば第1のFc定常領域(例えば第1のCH2-CH3)に融合したFabまたは単鎖Fv)を含む、MPL結合分子であって、MPL活性を低減する、例えば阻害する、MPL結合分子。
[項目22] 第2の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば第2の重鎖定常領域、例えば第2のFc定常領域、例えば第2のCH2-CH3をさらに含む、項目20または21に記載のMPL結合分子。
[項目23] 免疫細胞エンゲージャー、サイトカイン分子、または腫瘍標的化分子(例えば、MPL以外の腫瘍標的を標的とする腫瘍標的化分子)のうちの1つ以上をさらに含む、項目14~22のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目24] 前記腫瘍標的化分子が、抗CD41抗体分子または抗CD177抗体分子である、項目23に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目25] 抗PDL1抗体分子、抗CD3抗体分子、抗TGFβ抗体分子、TGFβトラップポリペプチド(例えば、TGFβに結合することができるTGFβ受容体の一部を含むポリペプチド)、抗IL1β抗体分子、IL1βトラップポリペプチド(例えば、IL1βに結合することができるIL1β受容体の一部を含むポリペプチド)、抗CXCL10抗体分子、抗MS4A3抗体分子、抗OLFM4抗体分子、抗CD66b抗体分子、抗cKit抗体分子、抗FLT3抗体分子、または抗CD133抗体分子(またはそれらの任意の組み合わせ)をさらに含む、項目14~24のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目26] MPLの前記細胞外ドメインに結合する、項目14~25のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目27] 前記分子に結合した前記MPLと第2のMPLタンパク質との会合を防止する、項目14~26のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目28] MPLタンパク質の二量体化、細胞内リン酸化、またはJAK2キナーゼ経路の活性化のうちの1つ、2つ以上を低減する(例えば防止する)、項目14~27のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目29] 前記MPL活性がMPLリガンド、例えばTPOの存在下で低減する、項目15~28のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目30] 前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記MPLに対する親和性、例えば合わせた親和性が、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分の前記親和性(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)以上である、項目16~19または23~29のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目31] 前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記MPLに対する前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、その対応する抗原結合部位に対する各標的化部分(単独または多重特異性分子の一部としてのいずれか)の前記親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい、項目30に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目32] MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対するリガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の前記親和性以上である、項目16~19または23~29のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目33] MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記第1および前記第2のMPL標的化部分の前記親和性、例えば前記合わせた親和性が、MPLタンパク質発現細胞、例えばがん細胞または造血細胞に対する前記リガンド、例えばMPLタンパク質の天然リガンド(例えばTPO)の前記親和性よりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい、項目32に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目34] 前記MPL標的化部分が、全長抗体、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab‘)、Fv、単鎖Fv、単一ドメイン抗体、ハーフアーム抗体、ダイアボディ(dAb)、二価の抗体、一価の抗体、または二重特異性抗体もしくはその断片、その単一ドメイン変異型、またはラクダ抗体)である、項目14~33のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目35] 前記免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)が、2つのMPL標的化部分、例えば非重複抗原結合部位を有するMPL標的化部分に結合、例えば共有結合される、項目14~19または23~34のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目36] 前記MPL標的化部分が、カッパもしくはラムダの軽鎖定常領域、またはその断片から選択される軽鎖定常領域を含む、項目14~35のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目37] 第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分が、カッパ軽鎖定常領域またはその断片を含み、前記第2のMPL標的化部分が、ラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む、項目14~19または23~36のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目38] 第1のMPL標的化部分および第2のMPL標的化部分を含み、前記第1のMPL標的化部分および前記第2のMPL標的化部分が、共通の軽鎖可変領域を含む、項目14~19または23~37のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
[項目39] 二量体化ドメイン、例えば、第1および第2の免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の界面を含む、項目14~38のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目40] 前記二量体化ドメインが、例えば、操作されていない界面と比べて二量体化を増加または減少させるように操作、例えば突然変異される、項目39に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目41] 前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)の前記二量体化が、例えば操作されていない界面と比べて、ヘテロ多量体:ホモ多量体の比が大きくなるように、空洞-突起の対合(「ノブ・イン・ホール」)、静電相互作用、または鎖交換のうちの1つ以上で、第1および第2のFc領域のFc界面を提供することにより増強される、項目40に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目42] 前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)が、例えばヒトIgG1のFc領域の347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、397、398、399、405、407、または409のうちの1つ以上から選択される位置にアミノ酸置換を含む、項目39または40に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目43] 前記免疫グロブリン鎖定常領域(例えばFc領域)が、T366S、L368A、またはY407V(例えば空洞またはホールに対応)、もしくはT366W(例えば突起またはノブに対応)、またはそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸置換を含む、項目39~42のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目44] 第1の抗原結合ドメインと、第2の抗原結合ドメインと、を含む、多重特異性分子であって、
i)前記第1および前記第2の抗原結合ドメインが、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)か、または
ii)前記第1の抗原結合ドメインがMPLに結合し、前記第2の抗原結合ドメインがMPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、
前記第1の抗原結合ドメインが、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、第3のポリペプチドおよび第4のポリペプチドを含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)、第1の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含み、
c)前記第3のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2の重鎖可変領域(VH)、第2の重鎖定常領域1(CH1)、および場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含み、
d)前記第4のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含む、多重特異性分子。
[項目45] 第1の抗原結合ドメインと、第2の抗原結合ドメインと、を含む、多重特異性分子であって、
i)前記第1および前記第2の抗原結合ドメインが、単一のMPLタンパク質上の異なるエピトープに結合する(例えば、非重複エピトープに結合する)か、または
ii)前記第1の抗原結合ドメインがMPLに結合し、前記第2の抗原結合ドメインがMPL以外の抗原、例えばMPL以外の腫瘍抗原に結合し、
前記第1の抗原結合ドメインが、第1のポリペプチドを含み、前記第2の抗原結合ドメインが、第2のポリペプチドを含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含む第1のscFv領域、ならびに場合により、前記第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、第2のVHおよび第2のVLを含む第2のscFv領域、ならびに場合により、前記第1と第2のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含む、多重特異性分子。
[項目46] MPL結合分子であって、
i)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む単一のMPL標的化部分と、
ii)第3のポリペプチドと、を含み、
a)前記第1のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域1(CH1)、ならびに場合により、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第1の領域、例えば第1のFc領域(例えば第1のCH2-CH3)を含み、
b)前記第2のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含み、
b)前記第3のポリペプチドが、例えば、N-からC-の配向で、前記第1と第3のポリペプチドとの会合を促進する第2の領域、例えば第2のFc領域(例えば第2のCH2-CH3)を含む、MPL結合分子。
[項目47] 重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むscFvを含む単一のMPL標的化部分を含む、MPL結合分子であって、
i)免疫グロブリン定常ドメイン、例えばFc定常領域、例えばCH2-CH3をさらに含み、かつ/または
ii)MPL活性を低減、例えば阻害する、MPL結合分子。
[項目48] 1つまたは2つのMPL標的化部分を含むMPL結合分子であって、前記MPL結合分子がMPL活性を低減し、前記1つまたは2つのMPL標的化部分が、
(i)表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の重鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(ii)表1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される重鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列を含む、MPL結合分子。
[項目49] 前記1つまたは2つのMPL標的化部分が、
(i)表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかに由来する1つ、2つ、もしくは3つのCDR、または密接に関連するCDR、例えば、表1の軽鎖可変ドメイン配列のいずれかの前記CDR配列のいずれかに由来する、少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、2つ、3つ、もしくは4つ以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるCDR、あるいは
(ii)表1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列のいずれかから選択される軽鎖可変ドメイン配列、またはそれと実質的に同一(例えば、それと95%~99.9%同一)の、もしくは少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが、5、10、または15個以下の改変(例えば、置換、欠失、または挿入、例えば保存的置換)であるアミノ酸配列をさらに含む、項目48に記載のMPL結合分子。
[項目50] 野生型JAK2に関連するMPLよりも、突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する、項目14~49のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目51] i)前記多重特異性分子またはMPL結合分子が、前記多重特異性分子またはMPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合し、
ii)前記多重特異性分子またはMPL結合分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない、項目50に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目52] 野生型JAK2に関連するMPLよりも、突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに優先的に結合する、MPL結合分子。
[項目53] i)前記MPL結合分子は、前記MPL結合分子が野生型JAK2に関連するMPLに結合する場合よりも大きい親和性、例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい親和性で突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)に関連するMPLに結合し、
ii)前記MPL結合分子は、MPLが突然変異したJAK2(例えば、V617F突然変異を含むJAK2)と関連する場合にMPLにのみ存在するエピトープに結合するが、MPLが野生型JAK2と関連する場合には結合しない、項目52に記載のMPL結合分子。
[項目54] ホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する標的化部分をさらに含む、項目14~53のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目55] 前記ホスファターゼおよびMPLが、同じ細胞、例えば骨髄線維症細胞で発現される、項目54に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目56] 前記ホスファターゼが、MPLまたはMPLと直接的または間接的に相互作用する分子(例えば、MPLと直接的または間接的に相互作用するチロシンキナーゼ、例えばJAK2またはSrc)を脱リン酸化することができる、項目54または55に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目57] 前記ホスファターゼが、CD45、RPTPμ、RPTPκ、RPTPρ、RPTPλ、白血球抗原関連チロシンホスファターゼ(LAR)、RPTPσ、RPTPδ、RPTPβ、CD148、SAP1、RPTPO、RPTPQ/PTPS31、RPTPα、RPTPε、RPTPζ、RPTPγ、PC-PTP、IA2、およびIA2βからなる群から選択される、項目54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目58] 前記ホスファターゼがCD45であり、場合により、ホスファターゼに結合する前記標的化部分が、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RO、またはCD45R(ABC)のうちの1つ以上に結合する、項目54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目59] 前記ホスファターゼがCD148である、項目54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目60] 前記ホスファターゼがLARである、項目54~56のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子。
[項目61] 項目1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子をコードする、単離された核酸分子。
[項目62] 項目61に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター、例えば発現ベクター。
[項目63] 項目61に記載の核酸分子または項目62に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[項目64] 項目1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子を作製、例えば産生する方法であって、好適な条件下、例えば、遺伝子発現および/またはホモまたはヘテロ二量体化に好適な条件下で、項目63に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
[項目65] 項目1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と、を含む、医薬組成物。
[項目66] がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に項目1~60のいずれか一項に記載の多重特異性分子またはMPL結合分子を投与することを含み、前記多重特異性抗体が、前記がんの治療に有効な量で投与される、方法。
[項目67] 前記がんが、血液癌、B細胞またはT細胞悪性腫瘍、例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病)、骨髄線維症、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、または急性リンパ球性白血病(ALL)から選択される、項目66に記載の方法。
[項目68] 前記がんが骨髄線維症である、項目66に記載の方法。
図1
【配列表】
2023100868000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPLに結合する第1の標的化部分およびホスファターゼ、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、例えば受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTP)に結合する第2の標的化部分を含む、多重特異性分子。
【外国語明細書】