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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100899
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230711BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20230711BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230711BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20230711BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K45/06
A61P43/00 121
A61P35/04
C12N15/12
C12Q1/6869 Z
C07K16/28
C12N5/09
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077460
(22)【出願日】2023-05-09
(62)【分割の表示】P 2020030449の分割
【原出願日】2017-02-27
(31)【優先権主張番号】62/301,510
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】517192663
【氏名又は名称】ファウンデーション・メディシン・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515178513
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フランプトン,ギャレット・ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】イエリンスキー,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】サン,ジェームズ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ダグラス・バックナー
(72)【発明者】
【氏名】ロブリー,クリスティーン・マリエ
(72)【発明者】
【氏名】ソスマン,ジェフリー・アラン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌、例えばメラノーマを治療するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重(TMB)の尺度を含み、(b)応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加に応じて、療法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答
状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ
由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重(TMB)の尺度を含み、
(b)応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加に応
じて、療法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する
対象の治療方法。
【請求項2】
PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法を対象に投与し、それにより対象
を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法であって、
対象は、例えば応答状態の基準値と比較した場合の、応答状態の値の増加を示し、また
は該増加を示すことが確認されており、
応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
腫瘍突然変異荷重の尺度を含む、方法。
【請求項3】
対象のための療法に対する応答状態の値を得、それにより療法を選択することを含む、
メラノーマを有する対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法の
選択方法であって、
応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加は、対象が
、療法に対する応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又は
その可能性が高いことを示す、方法。
【請求項4】
(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答
状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ
由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定することを含む、メラノーマを有する対象の評価方法であって、
応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に対する応
答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高い
ことを示し、あるいは、
応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体である又は
その可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示す、
方法。
【請求項5】
腫瘍突然変異荷重の尺度が、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方
法。
【請求項6】
対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)のレベルの増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基
準数と比較した場合の、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞
変異)の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較した場合の、表1に記載されている遺伝子
の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の数の増

の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する、請求項6記載の方法。
【請求項7】
(a)対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおいて、以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存
在もしくは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異
)の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(
例えば、1以上のCからTへの変化)の数
の1以上を決定し、
(b)以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のそ
の増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存
在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異
)の数の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞
変異)の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(
例えば、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子
の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数
と比較した場合のその増加
の1以上に応じて、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法を対象に投与し
、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法。
【請求項8】
応答状態の基準値が療法に対する非応答体に関する応答状態の値である、請求項1~4
のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
腫瘍突然変異荷重の基準レベルと比較した場合の、対象からのサンプルにおける腫瘍突
然変異荷重のレベルの増加に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択す
る、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
腫瘍突然変異荷重の基準レベルが療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルまた
はメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重のレベルである、請求項9記載の方
法。
【請求項11】
対象からのサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する応答体として特定する
、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
対象からのサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較して減少した又は不変の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較して類似した、同
じ又は減少した、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較して類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の所定セット
におけるCからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する非応答体として特定す
る、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
遺伝子の所定セットが、表1に記載されている遺伝子の少なくとも約50個以上、約1
00個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上または
全てを含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルが、療法に
対する非応答体からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける、表1
に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルである、請求項1~4
のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルが、療法に対する非応答体からのメ
ラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける、LRP1B遺伝子における体
細胞変異のレベルである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レベルが、
療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
CからTへの変化のレベルである、請求項6記載の方法。
【請求項17】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルが、表1に記載
されている遺伝子の所定セットを配列決定すること、例えば、表1に記載されている遺伝
子の所定セットのコード領域を配列決定することを含む方法により決定される、請求項5
記載の方法。
【請求項18】
NF1遺伝子における体細胞変異の存在または非存在が、NF1遺伝子を配列決定する
こと、例えば、NF1遺伝子のコード領域を配列決定することを含む方法により決定され
る、請求項5記載の方法。
【請求項19】
LRP1B遺伝子における体細胞変異の数が、LRP1B遺伝子を配列決定すること、
例えば、LRP1B遺伝子のコード領域を配列決定することを含む方法により決定される
、請求項5記載の方法。
【請求項20】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数が、表1に記
載されている遺伝子の所定セットを配列決定することを含む方法により決定される、請求
項5記載の方法。
【請求項21】
腫瘍突然変異荷重の尺度に応じて、以下のもの、すなわち、
(a)療法の改変用量を対象に投与すること、
(b)対象に対する療法のスケジュールまたは時間経過を改変すること、
(c)療法と組合される追加的物質を、例えば非応答体または部分応答体に投与するこ
と、あるいは
(d)対象におけるメラノーマの進行における時間経過を予後決定すること
の1つ、2つ、3つまたは全てを行うことを更に含む、請求項1~4のいずれか1項記載
の方法。
【請求項22】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの決定が、表1
に記載されている遺伝子の約25個以上、例えば約50個以上、約100個以上、約15
0個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上または全てにおける体細胞
変異のレベルの決定を含む、請求項5記載の方法。
【請求項23】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの決定が、予め
選択された単位当たり(例えば、遺伝子の所定セットのコード領域における、例えば、配
列決定された遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり)の体細胞変異
の数の決定を含む、請求項5記載の方法。
【請求項24】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比較した
場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの増加、
例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍
、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍
または少なくとも約50倍の増加に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために
選択する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上、例えば約5個以上
、約10個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約35個
以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定に応じて、療法
を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~4のいずれか1項記載の方
法。
【請求項26】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.1個以上、例えば約25個
以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上で
あるという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項
1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3~約23.1個、例えば約
5~約20個、約10~約20個、または約15~約20個であるという決定に応じて、
療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~4のいずれか1項記載
の方法。
【請求項28】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比較した
場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの増加、
例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍
、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍
または少なくとも約50倍の増加が、対象が療法に対する応答体であることを示す、請求
項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比較して
類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞
変異のレベルが、対象が療法に対する非応答体であることを示す、請求項1~4のいずれ
か1項記載の方法。
【請求項30】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上、例えば約5個以上
、約10個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約35個
以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定が、対象が療法
に対する応答体、例えば完全応答体または部分応答体であることを示す、請求項1~4の
いずれか1項記載の方法。
【請求項31】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個未満であるという決定が
、対象が療法に対する非応答体であることを示す、請求項1~4のいずれか1項記載の方
法。
【請求項32】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所定セッ
トのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.1個以上、例えば約25個
以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上で
あるという決定が、対象が療法に対する応答体、例えば完全応答体であることを示す、請
求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が、表1に記載され
ている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.1
個未満であるという決定が、対象が療法に対する部分応答体または非応答体であることを
示す、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が、表1に記載され
ている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3~
約20個、例えば約5~約20個、約10~約20個、または約15~約20個であると
いう決定が、対象が療法に対する部分応答体であることを示す、請求項1~4のいずれか
1項記載の方法。
【請求項35】
体細胞変異がNF1遺伝子のコード領域に存在するという決定に応じて、療法を対象に
投与する、または対象のために選択する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在が、対象が療法に対する応答体で
ある又はその可能性が高いこと、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高いこ
とを示す、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
(a)体細胞変異がNF1遺伝子のコード領域に存在する、および
(b)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルが、表1
に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異
約35個以上、約38.5個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であ
るという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1
~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
(a)NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在、ならびに
(b)BRAF遺伝子における体細胞変異、NRAS遺伝子における体細胞変異を含む
、またはBRAF、NRASおよびNF1遺伝子に関して三重WT(野生型)であるメラ
ノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける表1に記載されている遺伝子の所
定セットにおける体細胞変異のレベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の
所定セットにおける体細胞変異のレベルの増加、例えば少なくとも約2倍、少なくとも約
3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加
の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~4の
いずれか1項記載の方法。
【請求項39】
LRP1B遺伝子における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上または約
5個以上の体細胞変異の存在の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のため
に選択する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
LRP1B遺伝子における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上または約
5個以上の体細胞変異の存在が、対象が療法に対する応答体である又はその可能性が高い
、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高いことを示す、請求項1~4のいず
れか1項記載の方法。
【請求項41】
LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数と比較した場合の、LRP1Bにおける
体細胞変異の数の増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも
約2.8倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍または少なく
とも約5倍の増加の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する
、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数が療法に対する非応答体からのメラノー
マサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおけるLRP1B遺伝子における体細胞変異
の数である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数が体細胞変異0個または1個である、請
求項41記載の方法。
【請求項44】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個以上、約25個以上、約3
0個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変化の存在の決定に応じて、
療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~4のいずれか1項記載
の方法。
【請求項45】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個以上、約25個以上、約3
0個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変化の存在の決定が、対象が
、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答体であることを示す
、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準数と比較し
た場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数の増
加、例えば、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約12倍、少なくとも
約15倍または少なくとも約20倍の増加の決定に応じて、療法を対象に投与する、また
は対象のために選択する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
CからTへの変化の基準数が療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルまたはメ
ラノーマ由来サンプルにおけるCからTへの変化の数である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
CからTへの変化の基準数がCからTへの変化の約2個である、請求項46記載の方法
【請求項49】
対象が、PD-1またはPD-L1のインヒビター以外の治療用物質または治療方法を
含む異なる療法を受けている、または受けたことがある、請求項1~4のいずれか1項記
載の方法。
【請求項50】
以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定に応じて、前記の異なる療法を中断する、請求項4
9記載の方法。
【請求項51】
前記の異なる療法の中断の後、療法を投与する、請求項49記載の方法。
【請求項52】
療法を、前記の異なる療法と組合せて投与する、請求項49記載の方法。
【請求項53】
前記の異なる療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、放射免疫療法、腫瘍溶解性ウ
イルス療法、外科手技またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項49記載の方
法。
【請求項54】
前記の異なる療法が、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾロミド(te
mozolomide)、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン、イピリ
ムマブ(ipilimumab)、BRAFインヒビター、MEKインヒビター、タリモ
ジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepvec)、
養子細胞移入またはそれらの任意の組合せの1以上を含む、請求項49記載の方法。
【請求項55】
インターフェロンが組換えインターフェロンアルファ2bまたはペグインターフェロン
アルファ2bである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
BRAFインヒビターがベムラフェニブ(vemurafenib)またはダブラフェ
ニブ(dabrafenib)である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
MEKインヒビターがコビメチニブ(cobimetinib)またはトラメチニブ(
trametinib)である、請求項54記載の方法。
【請求項58】
養子細胞移入が修飾T細胞または修飾樹状細胞を含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
PD-1のインヒビターが抗PD-1抗体である、請求項1~4のいずれか1項記載の
方法。
【請求項60】
PD-1のインヒビターが、ニボルマブ(nivolumab)(ONO-4538、
BMS-936558またはMDX1106)、ペンブロリズマブ(pembroliz
umab)(MK-3475またはランブロリズマブ(lambrolizumab))
、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011)、MEDI0680(AM
P-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、BGB-A317、
SHR-1210(HR-301210、SHR1210またはSHR-1210)、P
F-06801591またはAMP-224から選択される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
PD-L1のインヒビターが抗PD-L1抗体である、請求項1~4のいずれか1項記
載の方法。
【請求項62】
PD-L1のインヒビターが、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPD
L3280A、RG7446またはRO5541267)、YW243.55.S70、
MDX-1105、デュルバルマブ(durvalumab)(MEDI4736)また
はアベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)から選択される、請求項
61記載の方法。
【請求項63】
体細胞変異が、サイレント突然変異(例えば、同義変異)、癌表現型に関連しているこ
とが確認されていない体細胞変異、パッセンジャー変異(例えば、クローンの適応度に対
する検出可能な影響を有さない変異)、意義不明な変異体(VUS)(例えば、病原性が
確認可能でなく除外可能でもない変異)、点突然変異、コーディングショート(codi
ng short)変異体(例えば、塩基置換またはインデル)、非同義一塩基変異体(
SNV)、スプライス変異体の1以上を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
変異(例えば、体細胞変異)が、転位(rearrangement)(例えば、転座
(トランスロケーション))、機能的変異または生殖細胞系列変異の1以上を含まない、
請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
体細胞変異がサイレント突然変異、例えば同義変異である、請求項1~4のいずれか1
項記載の方法。
【請求項66】
体細胞変異が癌表現型に関連していることが確認されていない、請求項1~4のいずれ
か1項記載の方法。
【請求項67】
体細胞変異がパッセンジャー変異、例えば、クローンの適応度に対する検出可能な影響
を有さない変異である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項68】
体細胞変異が、意義不明な変異体(VUS)、例えば、病原性が確認可能でなく除外可
能でもない変異である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
体細胞変異が点突然変異である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
体細胞変異が、転位以外、例えば転座以外のものである、請求項1~4のいずれか1項
記載の方法。
【請求項71】
体細胞変異がコーディングショート変異体、例えば塩基置換またはインデルである、請
求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
体細胞変異が非同義一塩基変異体(SNV)である、請求項1~4のいずれか1項記載
の方法。
【請求項73】
体細胞変異がスプライス変異体である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項74】
体細胞変異が機能的変異ではない、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項75】
変異が生殖細胞系列変異ではない、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項76】
メモリーに機能的に接続された少なくとも1つのプロセッサを含む、メラノーマを有す
る対象を評価するための系であって、前記の少なくとも1つのプロセッサは、実行される
と、
(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答
状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのメラノーマサンプルまたはメラノー
マ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定するように設計されており、
応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に対する応
答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高い
ことを示し、あるいは、
応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体である又は
その可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示し、
それにより対象を評価する、系。
【請求項77】
腫瘍突然変異荷重の尺度が、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む、請求項76記載の系。
【請求項78】
対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する、請求項76または77記載の系。
【請求項79】
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)

(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬、
(b)メラノーマサンプルもしくはメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重
の決定における、および/または対象におけるメラノーマの治療における使用説明、なら
びに
(c)所望により含まれうる、PD-1もしくはPD-L1のインヒビターまたはその
組成物
を含むキット。
【請求項80】
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含む、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸の精
製または単離調製物であって、
該調製物は、配列決定装置内またはそのような装置において使用されるサンプルホルダ
ー内に配置された該サンプルの腫瘍突然変異荷重を決定するために使用される、調製物。
【請求項81】
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬と、
(b)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸とを含
む反応混合物であって、
該反応混合物は、配列決定装置内またはそのような装置において使用されるサンプルホ
ルダー内に配置された該サンプルの腫瘍突然変異荷重を決定するために使用される、反応
混合物。
【請求項82】
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬を、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸と一緒
にし、それにより反応混合物を得ることを含む、反応混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は2016年2月29日付け出願の米国仮特許出願第62/301,510号の
利益を主張するものである。前記出願の内容の全体を参照により本明細書に組み入れるこ
ととする。
【0002】
発明の分野
本発明は、がん(以下、癌と称される)、例えばメラノーマを治療するための方法およ
び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
プログラム死(programmed death)-1/リガンド(PD-1/PD
-L1)系を標的とする物質は抗腫瘍T細胞応答の抑制を解除して、多数の癌において顕
著な臨床活性をもたらす(Wolchok,Cell 162:937,2015)。ニ
ボルマブおよびペンブロリズマブは、進行性メラノーマ患者の25~45%において臨床
応答を誘導し、現在、規制当局の承認を得て広く使用されている(Topalianら,
N Engl J Med 366:2443-54,2012;Hamidら,N E
ngl J Med 369:134-44,2013;Herbstら,Nature
515:563-7,2014;Robertら,N Engl J Med,372
:2521-32,2015;Robertら,N Engl J Med,372:3
20-30,2014;Larkinら,N Engl J Med,373:1270
-1,2015)。この活性にもかかわらず、応答を予測し、治療の意思決定を導くため
の臨床的に利用可能な検証されたマーカーは理解困難なままである。最近、浸潤性T細胞
のクローン増殖および腫瘍または免疫細胞によるPD-L1発現が治療応答の潜在的マー
カーとして関連づけられた(Topalianら,N Engl J Med 366:
2443-54,2012;Herbstら,Nature 515:563-7,20
14;Tumehら,Nature 515:568-71,2014;Weberら,
Lancet Oncol,16:375-84,2015)。
【0004】
これらの知見にもかかわらず、PD-1またはPD-L1を抑制する物質に応答するメ
ラノーマにおける突然変異荷重および特異的発癌性突然変異の影響は体系的に調べられて
いない。更に、ゲノム研究を日常の臨床実施に移すことには尚も問題がある。なぜなら、
全エクソーム解析(WES)は広範には利用可能でなく、高価であり、非常に時間がかか
り、技術的に困難だからである。
【0005】
したがって、癌、例えばメラノーマを治療および診断するための、免疫療法およびゲノ
ム試験を含む新規治療および診断アプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概括
本発明は、少なくとも部分的には、突然変異荷重が、メラノーマにおけるPD-1また
はPD-L1のインヒビターを含む療法からの治療利益と相関するという知見に基づく。
1つの実施形態においては、例えば、ハイブリッド捕捉に基づく次世代シーケンシング(
NGS)プラットフォームを使用して、患者のサンプルからのゲノムまたはエクソームの
一部をプロファイリングすることは全突然変異荷重の分析のための有効な代用法として役
立つ。もう1つの実施形態においては、単一遺伝子(例えば、NF1またはLRP1B遺
伝子)において検出される変異(変化)は、治療に対する応答を予測するための全突然変
異荷重の代替物または更なる代用物として役立つ。突然変異荷重を検出するために標的化
NGSプラットフォームを含む方法を用いることは幾つかの利点を有し、該利点には、例
えば全ゲノムまたは全エクソーム配列決定と比較して、より速い、例えば、より臨床的に
扱いやすいターンアラウンド時間(約2週間)、標準化された情報科学パイプライン(i
nformatics pipeline)、およびより扱いやすいコストが含まれるが
、これらに限定されるものではない。本明細書に開示されている方法は、PD-L1発現
のようなマーカーに優る他の利点を有する。なぜなら、それらは、主観的尺度(例えば、
病理学的スコア化)ではなく客観的尺度(例えば、突然変異荷重)をもたらすからである
。本明細書に開示されている方法は標的化療法のための利用可能な変化および免疫療法の
ための突然変異荷重の同時検出をも可能にする。これらの方法は、進行性メラノーマを有
する患者における抗PD-1および/または抗PD-L1療法に対する応答の臨床的に利
用可能な予測因子を提供しうる。
【0007】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、PD-1経路を標的化および/または
抑制する物質(例えば、治療用物質)の有効量を対象に投与することによる、癌、例えば
メラノーマを有する又はそのリスクを有する対象の治療方法を提供する。ある実施形態に
おいては、治療用物質はPD-1またはPD-L1のインヒビターである。ある実施形態
においては、治療用物質、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビターを、治療用物
質に対する応答状態の値に応じて投与する。ある実施形態においては、応答状態の値は対
象からのサンプル(例えば、腫瘍サンプル)における突然変異荷重の尺度を含む。ある実
施形態においては、突然変異荷重の尺度は、本明細書に開示されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異のレベル、NF1遺伝子における体細胞変異の存在、LRP1B遺
伝子における体細胞変異の数、もしくは本明細書に開示されている遺伝子の所定セットに
おけるCからTへの変化の数、またはそれらの任意の組合せの1以上の決定結果を含む。
【0008】
治療方法
1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象の治療方法に関
する。該方法は、
(a)対象に対する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのサンプル、例えばメ
ラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける突然変異荷重の尺度を含み、
(b)応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加に応
じて、療法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む。
【0009】
ある実施形態においては、応答状態の基準値は療法に対する非応答体に関する応答状態
の値である。
【0010】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在もし
くは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0011】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその増加

(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定
セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較
した場合のその増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する。
【0012】
もう1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象の治療方法
に関する。該方法は、療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含み、ここで、対象は、例えば応答
状態の基準値と比較した場合の、応答状態の値の増加を示し、または該増加を示すことが
確認されており、応答状態の値は、対象からのサンプル、例えばメラノーマサンプルまた
はメラノーマ由来サンプルにおける突然変異荷重の尺度を含む。
【0013】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在もし
くは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0014】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその増加

(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定
セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較
した場合のその増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する。
【0015】
更にもう1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象の治療
方法に関する。該方法は、
(a)対象からのサンプル、例えばメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプル
において、以下のもの、すなわち、
(i)例えば表1に記載されている、遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例
えば、1以上の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在
もしくは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)の数
の1以上を決定し、
(b)以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1
以上の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セット
における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在

(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の数の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変
異)の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の
所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と
比較した場合のその増加
の1以上に応じて、療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法
を対象に投与することを含む。
【0016】
療法の選択方法
1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象に対する療法、
例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法の選択方法に関する。該方
法は、対象に対する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法
に対する応答状態の値を得、それにより療法を選択することを含み、ここで、応答状態の
値は、対象からのサンプル、例えばメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに
おける突然変異荷重の尺度を含み、応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比
較した場合のその増加は、対象が、療法に対する応答体である又はその可能性が高い、あ
るいは対象が療法に応答する又はその可能性が高いことを示す。
【0017】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在もし
くは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0018】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその増加

(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定
セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較
した場合のその増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する。
【0019】
対象または癌の評価方法
更にもう1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象の評価
方法に関する。該方法は、
(a)対象に対する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのサンプル、例えばメ
ラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける突然変異荷重の尺度を含み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定することを含み、
ここで、応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に
対する応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能
性が高いことを示し、あるいは、
ここで、応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体で
ある又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いこと
を示す。
【0020】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在もし
くは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0021】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその増加

(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定
セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較
した場合のその増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法、例えば、PD-1またはPD-L1のイ
ンヒビターを含む療法を対象に投与する。
【0022】
ある実施形態においては、該方法は更に、T細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、1
以上のTCR遺伝子)を配列決定することを含む。ある実施形態においては、該方法は更
に、TCR遺伝子のクローン性を決定することを含む。
【0023】
関連態様においては、患者または患者集団の評価方法を提供する。該方法は、患者また
は患者集団が臨床試験に参加しているという情報または知見を確認し、選択し、または入
手し、該患者または患者集団に対する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒ
ビターを含む療法に対する応答状態の値を得、本明細書に記載されているとおりに、該患
者または患者集団を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または
非応答体として特定し、あるいは該患者または患者集団が療法に応答する又はその可能性
が高いかどうかを特定することを含む。
【0024】
もう1つの態様においては、本発明は、対象における癌、例えばメラノーマの評価方法
に関する。該方法は、
(a)対象に対する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのサンプル、例えばメ
ラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける突然変異荷重の尺度を含み、
(b)療法に対する癌の応答性を決定することを含み、
ここで、応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、該癌が療法に
応答する又はその可能性が高いことを示し、あるいは、
ここで、応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、該癌が療法に応答しない又はそ
の可能性が高いことを示す。
【0025】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在もし
くは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0026】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のその増加

(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定
セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較
した場合のその増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する。
【0027】
ある実施形態においては、該方法は更に、T細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、1
以上のTCR遺伝子)を配列決定することを含む。ある実施形態においては、該方法は更
に、TCR遺伝子のクローン性を決定することを含む。
【0028】
本発明の追加的な態様または実施形態は以下の1以上を含む。
【0029】
応答状態および突然変異荷重
本明細書に記載されている本発明は、例えば、癌、例えばメラノーマを有する対象に対
する療法、例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答状
態の値を得ることを含みうる。
【0030】
ある実施形態においては、応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した
場合のその増加に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。ある実
施形態においては、応答状態の基準値は療法に対する非応答体に関する応答状態の値であ
る。
【0031】
ある実施形態においては、応答状態の値は、サンプル、例えばメラノーマサンプルまた
はメラノーマ由来サンプルにおける突然変異荷重の尺度を含む。
【0032】
ある実施形態においては、対象からのサンプルにおける突然変異荷重のレベルの増加、
例えば、突然変異荷重の基準レベルと比較した場合のその増加に応じて、療法を対象に投
与する、または対象のために選択する。ある実施形態においては、突然変異荷重の基準レ
ベルは療法に対する非応答体からのサンプルにおける突然変異荷重のレベルである。
【0033】
ある実施形態においては、対象からのメラノーマサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数と比較した場合の、LRP1
B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準数
と比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化
の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する応答体として特定する
【0034】
ある実施形態においては、対象からのサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較して減少した又は不変の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数と比較して類似した、同じ又
は減少した、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準数
と比較して類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
けるCからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する非応答体として特定す
る。
【0035】
ある実施形態においては、遺伝子の所定セットは、表1に記載されている遺伝子の少な
くとも約50個以上、約100個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以
上、約300個以上または全てを含む。
【0036】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の基準レベルは、療法に対する非応答体からのサンプルにおける、表1に記載されてい
る遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルである。
【0037】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数は、療法に対
する非応答体からのサンプルにおける、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数である
【0038】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからT
への変化の基準数は、療法に対する非応答体からのサンプルにおける、CからTへの変化
の数である。
【0039】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベルは、表1に記載されている遺伝子の所定セットを配列決定すること、例えば、
表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域を配列決定することを含む方法に
より決定される。ある実施形態においては、NF1遺伝子における体細胞変異の存在また
は非存在は、NF1遺伝子を配列決定すること、例えば、NF1遺伝子のコード領域を配
列決定することを含む方法により決定される。ある実施形態においては、LRP1B遺伝
子における体細胞変異の数は、LRP1B遺伝子を配列決定すること、例えば、LRP1
B遺伝子のコード領域を配列決定することを含む方法により決定される。ある実施形態に
おいては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数は、
表1に記載されている遺伝子の所定セットを配列決定することを含む方法により決定され
る。
【0040】
ある実施形態においては、該方法は更に、突然変異荷重の尺度に応じて、以下のもの、
すなわち、
(a)療法の改変用量を対象に投与すること、
(b)対象に対する療法のスケジュールまたは時間経過を改変すること、
(c)療法と組合される追加的物質を、例えば非応答体または部分応答体に投与するこ
と、あるいは
(d)対象における癌の進行における時間経過を予後決定すること
の1つ、2つ、3つまたは全てを行うことを含む。
【0041】
ある実施形態においては、該方法は更に、対象からのサンプル(例えば、メラノーマサ
ンプルまたはメラノーマ由来サンプル)を、例えば直接的または間接的に得、本明細書に
記載されているとおりに、突然変異荷重または変異(変化)に関して該サンプルを評価す
ることを含む。
【0042】
遺伝子の所定セットにおける体細胞変異
本明細書に記載されている療法(例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを
含む療法)は、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(
例えば、1以上の体細胞変異)のレベルの増加に応じて、癌(例えば、メラノーマ)を有
する対象に投与され、または該対象のために選択されうる。
【0043】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベルの決定は、表1に記載されている遺伝子の約25個以上、例えば約50個以上
、約100個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上
または全てにおける体細胞変異のレベルの決定を含む。
【0044】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベルの決定は、予め選択された単位当たり(例えば、遺伝子の所定セットのコード
領域における、例えば、配列決定された遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベ
ース当たり)の体細胞変異の数の決定を含む。
【0045】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体
細胞変異のレベルの増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約
5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約3
0倍、少なくとも約40倍または少なくとも約50倍の増加に応じて、療法を対象に投与
する、または対象のために選択する。
【0046】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3
個以上、例えば約5個以上、約10個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上
、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上である
という決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0047】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.
1個以上、例えば約25個以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個
以上または約50個以上であるという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象
のために選択する。
【0048】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3
~約23.1個、例えば約5~約23個、約10~約23個、または約15~約23個で
あるという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0049】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体
細胞変異のレベルの増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約
5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約3
0倍、少なくとも約40倍または少なくとも約50倍の増加は、対象が療法に対する応答
体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高いこ
とを示す。
【0050】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の基準レベルと比較して類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の
所定セットにおける体細胞変異のレベルは、対象が療法に対する非応答体である又はその
可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示す。
【0051】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が、表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当
たり体細胞変異約3.3個以上、例えば約5個以上、約10個以上、約15個以上、約2
0個以上、約25個以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上ま
たは約50個以上であるという決定は、対象が療法に対する応答体、例えば完全応答体ま
たは部分応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可
能性が高いことを示す。
【0052】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が、表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当
たり体細胞変異約3.3個未満であるという決定は、対象が療法に対する非応答体である
又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示
す。
【0053】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が、表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当
たり体細胞変異約23.1個以上、例えば約25個以上、約30個以上、約35個以上、
約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定は、対象が療法に対す
る応答体、例えば完全応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答す
る又はその可能性が高いことを示す。
【0054】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が、表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当
たり体細胞変異約23.1個未満であるという決定は、対象が療法に対する部分応答体ま
たは非応答体である又はその可能性が高い(あるいは部分的に応答する、または応答しな
い、または部分的に応答する可能性が高い、または応答しない可能性が高い)ことを示す
【0055】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異の数が、表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当
たり体細胞変異約3.3~約23.1個、例えば約5~約23個、約10~約23個、ま
たは約15~約23個であるという決定は、対象が療法に対する部分応答体である又はそ
の可能性が高い(あるいは部分的に応答する、または部分的に応答する可能性が高い)こ
とを示す。
【0056】
NF1遺伝子における変異
本明細書に記載されている療法(例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを
含む療法)は、例えば、NF1遺伝子(例えば、NF1遺伝子のコード領域)における体
細胞変異の数の決定に応じて、癌(例えば、メラノーマ)を有する対象に投与され、また
は該対象のために選択されうる。
【0057】
ある実施形態においては、体細胞変異がNF1遺伝子(例えば、NF1遺伝子のコード
領域)に存在するという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択
する。
【0058】
ある実施形態においては、NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在は、対
象が療法に対する応答体である又はその可能性が高いことを示す。
【0059】
ある実施形態においては、(a)体細胞変異がNF1遺伝子のコード領域に存在する、
および(b)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルが、
表1に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞
変異約23.1個以上、例えば、25個以上、約30個以上、約35個以上、約38.5
個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定に応じて、療
法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0060】
ある実施形態においては、(a)NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在
、および(b)BRAF遺伝子における体細胞変異、NRAS遺伝子における体細胞変異
、またはBRAF、NRASおよびNF1遺伝子に関する三重WT(野生型)を含むサン
プル(例えば、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプル)における表1に記載
されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルと比較した場合の、表1に記
載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの増加、例えば少なくとも
約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加の決定に
応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0061】
LRP1B遺伝子の変異
本明細書に記載されている療法(例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを
含む療法)は、例えば、LRP1B遺伝子(例えば、LRP1B遺伝子のコード領域)に
おける体細胞変異の存在の決定に応じて、癌(例えば、メラノーマ)を有する対象に投与
され、または該対象のために選択されうる。
【0062】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子(例えば、LRP1B遺伝子のコード領域
)における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上または約5個以上の体細胞
変異の存在の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0063】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子(例えば、LRP1B遺伝子のコード領域
)における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上または約5個以上の体細胞
変異の存在は、対象が療法に対する応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が
療法に応答する又はその可能性が高いことを示す。
【0064】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子のコード領域における体細胞変異の基準数
と比較した場合の、LRP1B遺伝子のコード領域における体細胞変異の数の増加、例え
ば、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約2.8倍、少なくとも約3
倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍または少なくとも約5倍の増加の決定に応
じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0065】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子のコード領域における体細胞変異の基準数
は療法に対する非応答体からのサンプル(例えば、メラノーマサンプルまたはメラノーマ
由来サンプル)におけるLRP1B遺伝子のコード領域における体細胞変異の数である。
【0066】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子のコード領域における変異の基準数は体細
胞変異0個または1個である。
【0067】
CからTへの変化
本明細書に記載されている療法(例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを
含む療法)は、例えば、遺伝子の所定セット、例えば、表1に記載されている遺伝子の所
定セットにおけるCからTへの変化の数の決定に応じて、癌(例えば、メラノーマ)を有
する対象に投与され、または該対象のために選択されうる。
【0068】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個
以上、約30個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変化の存在の決定
に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0069】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個
以上、約24個以上、約30個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変
化の存在の決定は、対象が療法に対する応答体である又はその可能性が高いことを示す。
【0070】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからT
への変化の基準数と比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける
CからTへの変化の数の増加、例えば、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なく
とも約12倍、少なくとも約15倍または少なくとも約20倍の増加の決定に応じて、療
法を対象に投与する、または対象のために選択する。
【0071】
ある実施形態においては、CからTへの変化の基準数は療法に対する非応答体からのサ
ンプル(例えば、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプル)におけるCからT
への変化の数である。
【0072】
ある実施形態においては、CからTへの変化の基準数は、表1に記載されている遺伝子
の所定セットにおけるCからTへの変化の約2個である。
【0073】
変異のタイプ
本明細書に記載されているとおり、種々のタイプの変異(変化)、例えば体細胞変異が
、サンプルにおける突然変異荷重を測定するために使用されうる。
【0074】
ある実施形態においては、変異は以下のものの1以上を含む:サイレント突然変異(例
えば、同義変異)、癌表現型に関連していることが確認されていない体細胞変異、パッセ
ンジャー変異(例えば、クローンの適応度に対する検出可能な影響を有さない変異)、意
義不明な変異体(VUS)(例えば、病原性が確認可能でなく除外可能でもない変異)、
点突然変異、コーディングショート(coding short)変異体(例えば、塩基
置換またはインデル)、非同義一塩基変異体(SNV)またはスプライス変異体。
【0075】
代替的に、または組合せとして、幾つかの実施形態においては、変異は以下のものの1
以上を含まない:転位(rearrangement)(例えば、転座(トランスロケー
ション))、機能的変異または生殖細胞系列変異。
【0076】
ある実施形態においては、体細胞変異はサイレント突然変異、例えば同義変異である。
ある実施形態においては、体細胞変異は癌表現型に関連していることが確認されていない
。ある実施形態においては、体細胞変異はパッセンジャー変異、例えば、クローンの適応
度に対する検出可能な影響を有さない変異である。ある実施形態においては、体細胞変異
は意義不明な変異体(VUS)、例えば、病原性が確認可能でなく除外可能でもない変異
である。ある実施形態においては、体細胞変異は点突然変異である。ある実施形態におい
ては、体細胞変異は、転位以外、例えば転座以外のものである。ある実施形態においては
、ある実施形態においては、体細胞変異はコーディングショート変異体、例えば塩基置換
またはインデルである。ある実施形態においては、体細胞変異は非同義一塩基変異体(S
NV)である。ある実施形態においては、体細胞変異はスプライス変異体である。ある実
施形態においては、体細胞変異は機能的変異ではない。
【0077】
ある実施形態においては、変異は生殖細胞系列変異ではない。他の実施形態においては
、体細胞変異は生殖細胞系列変異と同一ではなく、または類似していない(例えば、区別
可能である)。ある実施形態においては、体細胞変異のレベルの増加は、1以上のクラス
またはタイプの体細胞変異(例えば、転位、点突然変異、インデルまたはそれらの任意の
組合せ)のレベルの増加である。ある実施形態においては、体細胞変異のレベルの増加は
、1つのクラスまたはタイプの体細胞変異(例えば、転位のみ、点突然変異のみ、または
インデルのみ)のレベルの増加である。ある実施形態においては、体細胞変異のレベルの
増加は、予め選択された位置の体細胞変異(例えば、本明細書に記載されている変異、例
えば、BRAFにおけるV600変異)のレベルの増加である。ある実施形態においては
、体細胞変異のレベルの増加は、予め選択された位置の体細胞変異(例えば、本明細書に
記載されている変異、例えば、BRAFにおけるV600変異(例えば、BRAFにおけ
るV600K変異))のレベルの増加である。
【0078】
治療用物質および治療方法
本明細書に記載されている癌を有する対象は、療法、例えば免疫療法、例えば、PD-
1またはPD-L1のインヒビターを含む療法で治療されうる。
【0079】
ある実施形態においては、PD-1のインヒビターは抗PD-1抗体である。ある実施
形態においては、PD-1のインヒビターは、ニボルマブ(nivolumab)(ON
O-4538、BMS-936558またはMDX1106)、ペンブロリズマブ(pe
mbrolizumab)(MK-3475またはランブロリズマブ(lambroli
zumab))、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011)、MEDI
0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、BG
B-A317、SHR-1210(HR-301210、SHR1210またはSHR-
1210)、PF-06801591またはAMP-224から選択される。
【0080】
ある実施形態においては、PD-L1のインヒビターは抗PD-L1抗体である。ある
実施形態においては、PD-L1のインヒビターは、アテゾリズマブ(atezoliz
umab)(MPDL3280A、RG7446またはRO5541267)、YW24
3.55.S70、MDX-1105、デュルバルマブ(durvalumab)(ME
DI4736)またはアベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)から
選択される。
【0081】
ある実施形態においては、PD-1またはPD-L1のインヒビターはPD-1受容体
、例えばPD-1受容体Fc融合体、PD-L1受容体、例えばPD-L1受容体Fc融
合体である。
【0082】
ある実施形態においては、対象は、PD-1またはPD-L1のインヒビター以外の治
療用物質または治療方法を含む異なる療法を受けている、または受けたことがある。
【0083】
ある実施形態においては、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数と比較した場合の、LRP1
B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準数
と比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化
の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定に応じて、前記の異なる療法は中断される。
【0084】
ある実施形態においては、前記の異なる療法の中断の後、療法を投与する。他の実施形
態においては、療法を、前記の異なる療法と組合せて投与する。
【0085】
ある実施形態においては、前記の異なる療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、放
射免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、外科手技またはそれらの任意の組合せから選択さ
れる。
【0086】
ある実施形態においては、前記の異なる療法は、ダカルバジン(dacarbazin
e)、テモゾロミド(temozolomide)、インターロイキン2(IL-2)、
インターフェロン、イピリムマブ(ipilimumab)、BRAFインヒビター、M
EKインヒビター、タリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene lah
erparepvec)、養子細胞移入またはそれらの任意の組合せの1以上を含む。
【0087】
ある実施形態においては、インターフェロンは、組換えインターフェロンアルファ2b
またはペグインターフェロンアルファ2bである。ある実施形態においては、BRAFイ
ンヒビターはベムラフェニブ(vemurafenib)またはダブラフェニブ(dab
rafenib)である。ある実施形態においては、MEKインヒビターはコビメチニブ
(cobimetinib)またはトラメチニブ(trametinib)である。ある
実施形態においては、養子細胞移入は修飾T細胞または修飾樹状細胞を含む。
【0088】
ある実施形態においては、対象は、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビターを
含む免疫療法を受けている、または受けたことがある。ある実施形態においては、対象は
、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む免疫療法を受けていない、また
は受けたことがない。
【0089】
メラノーマ
本明細書に記載されている本発明は、癌、例えばメラノーマを治療するために、または
癌、例えばメラノーマを有する対象を評価するために使用されうる。
【0090】
メラノーマは、当業者に公知の任意の適切なメラノーマ分類系に従い定義されるメラノ
ーマの任意の病期またはリスク群でありうる。
【0091】
幾つかの実施形態においては、メラノーマは病期(ステージ)0、病期IA、病期IB
、病期IIA、病期IIB、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラノーマのいず
れかのもの、例えば、米国癌合同委員会(American Joint Commit
tee on Cancer)(AJCC)のメラノーマの病期診断および分類系により
定義される病期0、病期IA、病期IB、病期IIA、病期IIB、病期IIC、病期I
IIまたは病期IVのメラノーマのいずれかのものである。1つの実施形態においては、
メラノーマは、本明細書に記載されている表2Aおよび2Bに従い病期診断または分類さ
れる。
【0092】
幾つかの実施形態においては、メラノーマは、例えばBalchら,J Clin O
ncol.2009;27(36):6199-6206に記載されている原位置(in
situ)のメラノーマ(例えば、病期0のメラノーマ)、限局性メラノーマ(例えば
、病期IまたはIIのメラノーマ)、局所性転移性メラノーマ(例えば、病期IIIのメ
ラノーマ)または遠隔転移性メラノーマ(例えば、病期IVのメラノーマ)のいずれかの
ものである。幾つかの実施形態においては、メラノーマは進行性メラノーマ、例えば病期
IIIまたはIVのメラノーマである。
【0093】
他の実施形態においては、メラノーマは、Clarkのレベル(Weedon,Ski
n pathology.2nd Edition.2002.Sydney:Chur
chill-Livingstone)に基づくレベル1、レベル2、レベル3、レベル
4またはレベル5のメラノーマのいずれかのもの、例えば、レベル1(例えば、上皮に限
局したメラノーマ(原位置のメラノーマ))、レベル2(例えば、真皮乳頭層内への浸潤
)、レベル3(例えば、真皮乳頭層と真皮網状層との接合部への浸潤)、レベル4(例え
ば、真皮網状層内への浸潤)またはレベル5(例えば、皮下脂肪内への浸潤)のメラノー
マのいずれかのものである。
【0094】
幾つかの実施形態においては、メラノーマは、Breslowの深さ(Breslow
(1970)Annals of Surgery 172(5):902-908)に
基づく病期I、病期II、病期III、病期IVまたは病期IVのメラノーマのいずれか
のもの、例えば、病期I(例えば、0.75mm以下の深さ)、病期II(例えば、0.
76mm~1.50mmの深さ)、病期III(例えば、1.51mm~2.25mmの
深さ)、病期IV(例えば、2.26mm~3.0mmの深さ)または病期V(例えば、
3.00mmを超える深さ)のメラノーマのいずれかのものである。
【0095】
ある実施形態においては、メラノーマは進行性メラノーマである。幾つかの実施形態に
おいては、進行性メラノーマは、AJCCの病期診断および分類系に基づく病期IIIま
たは病期IVのメラノーマである。1つの実施形態においては、進行性メラノーマは、表
2Aおよび2Bに記載されている病期診断および分類に基づく病期IIIまたは病期IV
のメラノーマである。1つの実施形態においては、進行性メラノーマは病期IIIのメラ
ノーマ、例えば、本明細書に記載されている病期IIIのメラノーマである。もう1つの
実施形態においては、進行性メラノーマは病期IVのメラノーマ、例えば、本明細書に記
載されている病期IVのメラノーマである。
【0096】
ある実施形態においては、メラノーマは転移性メラノーマである。幾つかの実施形態に
おいては、転移性メラノーマは、例えばAJCCの病期診断および分類系に基づく、病期
IIIまたは病期IVのメラノーマである。1つの実施形態においては、転移性メラノー
マは、表2Aおよび2Bに記載されている病期診断および分類に基づく病期IIIまたは
病期IVのメラノーマである。1つの実施形態においては、転移性メラノーマは病期II
Iのメラノーマ、例えば、本明細書に記載されている病期IIIのメラノーマである。も
う1つの実施形態においては、転移性メラノーマは病期IVのメラノーマ、例えば、本明
細書に記載されている病期IVのメラノーマである。
【0097】
他の実施形態においては、メラノーマ、例えば進行性メラノーマは、本明細書に記載さ
れている遺伝子の1以上、例えば、表1に記載されている遺伝子の1以上における変異(
変化)、例えば本明細書に記載されている変異を含み、または有することが確認もしくは
決定されている。ある実施形態においては、メラノーマは、NF1、LRP1B、BRA
F、NRAS、TP53、MYC、APC/CTNNB1、IGF1R/HGF、PTE
N、CDKN2A、CDK4、CDK6および/またはRB1から選択される遺伝子の1
以上における変異を含み、または有することが確認されている。
【0098】
ある実施形態においては、メラノーマはNF1遺伝子における変異を含み、または有す
ることが確認されている。ある実施形態においては、メラノーマはLRP1B遺伝子にお
ける変異を含み、または有することが確認されている。ある実施形態においては、メラノ
ーマはBRAF遺伝子における変異を含み、または有することが確認されている。ある実
施形態においては、メラノーマはNRAS遺伝子における変異を含み、または有すること
が確認されている。ある実施形態においては、メラノーマはNF1遺伝子における変異お
よびLRP1B遺伝子における変異を含み、または有することが確認されている。ある実
施形態においては、メラノーマはNF1遺伝子における変異を含み、または有することが
確認されているが、BRAF遺伝子における変異、NRAS遺伝子における変異またはそ
れらの両方を含まず、または有することが確認されていない。ある実施形態においては、
メラノーマはLRP1B遺伝子における変異を含み、または有することが確認されている
が、BRAF遺伝子における変異、NRAS遺伝子における変異またはそれらの両方を含
まず、または有することが確認されていない。ある実施形態においては、メラノーマは三
重野生型(WT)メラノーマとして特定されており、例えば、メラノーマはNF1遺伝子
における変異、BRF遺伝子における変異およびNRAS遺伝子における変異のいずれを
も含まず、または有することが確認されていない。
【0099】
ある実施形態においては、NF1遺伝子における変異は、NF1の野生型活性と比較し
た場合の、NF1遺伝子産物(例えば、NF1タンパク質)の活性の低下をもたらす。例
えば、該変異はNF1タンパク質のGTPアーゼアクチベーター活性、ホスファチジルコ
リン結合活性および/またはホスファチジルエタノールアミン結合活性の変化(例えば、
低下)をもたらしうる。1つの実施形態においては、NF1の変異は、突然変異(例えば
、体細胞突然変異)、例えば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失である、あるい
はそれを含む。
【0100】
ある実施形態においては、BRAF遺伝子における変異は、BRAFの野生型活性と比
較した場合の、BRAF遺伝子産物(例えば、BRAFタンパク質)の活性の低下をもた
らす。例えば、該変異はBRAFタンパク質のキナーゼ活性の変化(例えば、増強)をも
たらしうる。1つの実施形態においては、BRAFの変異は、突然変異(例えば、体細胞
突然変異)、例えば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失である、あるいはそれを
含む。ある実施形態においては、該変異は塩基置換である。
【0101】
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はコドンV600に位置する。ある実
施形態においては、BRAFにおける変異はV600E変異である。ある実施形態におい
ては、BRAFにおける変異はV600K変異である。ある実施形態においては、BRA
Fにおける変異はV600R変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変
異はV600D変異である。
【0102】
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はV600変異以外の変異である。あ
る実施形態においては、BRAFにおける変異はK601変異である。ある実施形態にお
いては、BRAFにおける変異はK601E変異である。ある実施形態においては、BR
AFにおける変異はG469変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変
異はG469E変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変異はD594
変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変異はD594G変異である。
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はL597変異である。ある実施形態に
おいては、BRAFにおける変異はL597S変異である。ある実施形態においては、B
RAFにおける変異はS467変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける
変異はS467L変異である。
【0103】
対象
ある実施形態においては、対象はメラノーマ、例えば、本明細書に記載されている進行
性メラノーマを有し、ここで、該メラノーマは、例えば、表1に記載されている遺伝子の
1以上における変異、例えば、本明細書に記載されている変異を含む。ある実施形態にお
いては、メラノーマは、NF1、LRP1B、BRAF、NRAS、TP53、MYC、
APC/CTNNB1、IGF1R/HGF、PTEN、CDKN2A、CDK4、CD
K6および/またはRB1から選択される遺伝子の1以上における変異を含み、または有
することが確認されている。他の実施形態においては、対象は、CからTへの変化を含む
メラノーマ、例えば、進行性メラノーマを有することが確認されており、または過去に確
認されたことがある。
【0104】
メラノーマは、任意の病期、例えば、本明細書に記載されている任意の病期、例えば、
進行性、再発性、再燃性または難治性(これらに限定されるものではない)のものであり
うる。メラノーマの癌病期分類系には、例えば、米国癌合同委員会(American
Joint Committee on Cancer)(AJCC)のメラノーマの病
期診断および分類系が含まれる。例えば、メラノーマは、病期0、病期IA、病期IB、
病期IIA、病期IIB、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラノーマのいずれ
かのもの、例えば、本明細書に記載されている表2Aおよび2Bに基づく病期0、病期I
A、病期IB、病期IIA、病期IIB、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラ
ノーマのいずれかのものでありうる。
【0105】
1つの実施形態においては、対れべるれれべ象はヒト、例えば、本明細書に記載されて
いるメラノーマ(例えば、進行性メラノーマ)を有するヒト患者である。
【0106】
1つの実施形態においては、対象は、異なる(例えば、非PD-1および/または非P
D-L1)治療用物質または治療方法での治療を受けている、または受けたことがある。
1つの実施形態においては、前記の異なる治療用物質または治療方法は化学療法、放射線
療法、免疫療法、放射免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、外科手技またはそれらの任意
の組合せから選択される。1つの実施形態においては、前記の異なる治療用物質または治
療方法は、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾロミド(temozolo
mide)、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン(例えば、組換えイン
ターフェロンアルファ2bまたはペグインターフェロンアルファ2b)、イピリムマブ(
ipilimumab)、BRAFインヒビター[例えば、ベムラフェニブ(vemur
afenib)またはダブラフェニブ(dabrafenib)]、MEKインヒビター
[例えば、コビメチニブ(cobimetinib)またはトラメチニブ(tramet
inib)]、タリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laher
parepvec)、および/または養子細胞移入(例えば、修飾T細胞または修飾樹状
細胞)の1以上を含む。
【0107】
1つの実施形態においては、本明細書に記載されているとおりの突然変異荷重および/
または変異の存在の決定に応じて、前記の異なる(例えば、非PD-1および/または非
PD-L1チェックポイント)治療用物質または治療方法は中断される。更に他の実施形
態においては、対象は、前記の異なる治療用物質または治療方法に応答する可能性が高い
又は可能性が低いことが確認されている。
【0108】
ある実施形態においては、対象は、PD-1またはPD-L1のインヒビターに関する
臨床試験に参加しているメラノーマ患者である。ある実施形態においては、対象は、異な
る(例えば、非PD-1および/または非PD-L1)治療用物質または治療方法に関す
る臨床試験に参加しているメラノーマ患者である。
【0109】
1つの実施形態においては、対象は60歳以上である。もう1つの実施形態においては
、対象は45~60歳である。更にもう1つの実施形態においては、対象は45歳以下で
ある。更にもう1つの実施形態においては、対象は30才以下である。もう1つの実施形
態においては、対象は45歳以上であり、男性である。もう1つの実施形態においては、
対象は45歳以下であり、女性である。1つの実施形態においては、対象は白人(コーカ
サス人種)である。1つの実施形態においては、対象はメラノーマの家族歴を有する。
【0110】

1つの態様においては、本発明は、癌、例えばメラノーマを有する対象を評価するため
の系に関する。該系は、メモリーに機能的に接続された少なくとも1つのプロセッサを含
み、前記の少なくとも1つのプロセッサは、実行されると、
(a)対象に対する療法(例えば、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法)に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのサンプル(例えば
、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプル)における突然変異荷重の尺度を含
み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定するように設計されており、
ここで、応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に
対する応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能
性が高いことを示し、あるいは、
ここで、応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体で
ある又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いこと
を示す。
【0111】
ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、対象からのサンプルにおける以下の
もの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む。
【0112】
ある実施形態においては、対象からのメラノーマサンプルにおける以下のもの、すなわ
ち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)のレベルの増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基
準レベルと比較した場合の、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体
細胞変異)の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺
伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の数
の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する。
【0113】
キット、核酸調製物および反応混合物
1つの態様においては、本発明はキットに関する。該キットは、
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)

(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬、ならびに
(b)メラノーマサンプルにおける突然変異荷重の決定における、および/または対象
におけるメラノーマの治療における使用説明を含む。
【0114】
ある実施形態においては、該キットは更に、(c)PD-1もしくはPD-L1のイン
ヒビターまたはその組成物を含む。
【0115】
もう1つの態様においては、本発明は、サンプル、例えばメラノーマサンプルまたはメ
ラノーマ由来サンプルに由来する核酸の精製または単離調製物に関する。該調製物は、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含む。
【0116】
ある実施形態においては、該調製物は、配列決定装置内またはそのような装置において
使用されるサンプルホルダー内に配置されたメラノーマサンプルの突然変異荷重を決定す
るために使用される。
【0117】
更にもう1つの態様においては、本発明は反応混合物に関する。該反応混合物は、
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬と、
(b)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むサンプル(例えば、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプル)
に由来する核酸とを含む。
【0118】
ある実施形態においては、該反応混合物は、配列決定装置内またはそのような装置にお
いて使用されるサンプルホルダー内に配置されたサンプルの突然変異荷重を決定するため
に使用される。
【0119】
関連態様においては、本発明は反応混合物の製造方法に関する。該方法は、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬を、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルに由来する核酸と一緒にすることを含む。
【0120】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が属する
技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載さ
れているものと類似または同等の方法および材料が本発明の実施または試験において使用
されうるが、適切な方法および材料を以下に説明する。本明細書において挙げられている
全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献の全体を参照により本明細書に組み入
れることとする。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先する。また、材料、方
法および具体例(実施例)は単なる例示に過ぎず、限定的なものではない。
【0121】
本発明において注目される1以上の実施形態の詳細が添付図面および以下の説明に記載
されている。本発明において注目される他の特徴、目的および利点は該説明および図面か
ら、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【0122】
詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、例えばハイブリッド捕捉ベースNGSプラットフォ
ームにより数百個の遺伝子において検出された突然変異の数が、PD-1またはPD-L
1を含む療法からの治療利益と相関するという知見に基づく。ある実施形態においては、
幾つかの群、例えば3つの群への患者の分類はほとんどの患者に関する「高」および「低
」突然変異荷重コホートへの正確な予測を可能にして、進行性メラノーマおよび他の癌に
おける抗PD-1および/または抗PD-L1療法に対する応答の臨床的に実施可能なマ
ーカーをもたらした。他の実施形態においては、幾つかの遺伝子(例えば、NF1、LR
P1B)における変異(変化)も全突然変異荷重および抗PD-1または抗PD-L1療
法からの利益と相関していた。
【0123】
理論により束縛されるものではないが、免疫原性腫瘍新生抗原を生成する可能性は、突
然変異が発生するにつれて確率的様態で増加して、免疫認識の可能性を増大させると考え
られている(GubinおよびSchreiber,Science 350:158-
9,2015)。しかし、全突然変異荷重の評価は全エクソーム配列決定(WES)を要
する。このアプローチは専門的な組織処理、同等の正常検体を必要とし、現在では主に研
究手段として行われる。臨床場面でWESを実施することが技術的および情報学的に困難
であることを考慮すると、突然変異荷重を検出する代替法が必要である。本明細書に記載
されている検証されたハイブリッド捕捉ベースNGSプラットフォームを含む方法は幾つ
かの実用上の利点を有し、それらの利点には、例えば、より臨床的に扱いやすいターンア
ラウンド時間(約2週間)、標準化された情報科学パイプライン(informatic
s pipeline)、およびより扱いやすいコストが含まれる。このアプローチは、
PD-L1発現のようなマーカーに優る他の利点を有する。なぜなら、それは、主観的尺
度(例えば、免疫組織化学的スコア化)ではなく客観的尺度(突然変異荷重)をもたらす
からである(HansenおよびSiu,JAMA Oncol 2(1):15-6,
2016)。更に、このプラットフォームは、標的化療法に適した利用可能な変異の同時
検出を容易にする。
【0124】
抗PD-1または抗PD-L1療法に関する正確な予測用バイオマーカーの特定は幾つ
かの直接的臨床用途を有する。メラノーマにおいては、高突然変異荷重を有する患者は例
えば抗PD-1単独療法を受けることが可能であり、一方、中等度/低突然変異荷重を有
する患者は、例えば、ニボルマブおよびイピリムマブの、より活性な(しかし、より毒性
の)組合せで治療されうると予想されうる(Larkinら,N Engl J Med
,2015)。他の癌(例えば、NSCLC)は、抗PD-1に対する、より低い全応答
率を示しうる(Rizviら,Lancet Oncol 16:257-65,201
5;Garonら,N Engl J Med,2015)。これらの疾患においては、
このアプローチは抗PD-1および他の活性物質、例えば細胞毒性化学療法に患者を分類
しうるであろう。更に、「外れ値」(例えば、応答しない高い突然変異荷重の腫瘍)のゲ
ノム特性および免疫特性を特定することが大いに必要とされる。
【0125】
したがって、本発明は、少なくとも部分的には、PD-1経路を標的化および/または
抑制する物質(例えば、治療用物質)の有効量を対象に投与することによる、癌、例えば
メラノーマを有する又はそのリスクを有する対象の治療方法を提供する。ある実施形態に
おいては、該治療用物質はPD-1またはPD-L1のインヒビターである。ある実施形
態においては、該治療用物質、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビターを、該治
療用物質に対する応答状態の値に応じて投与する。ある実施形態においては、応答状態の
値は対象からの癌サンプル、例えばメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに
おける突然変異荷重の尺度を含む。ある実施形態においては、突然変異荷重の尺度は、本
明細書に開示されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベル、NF1遺伝子
における体細胞変異の存在、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数、もしくは本明細
書に開示されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数、またはそれらの
任意の組合せの決定結果を含む。対象を評価するための、または療法を選択するための方
法および系、核酸の調製物、キット、反応混合物、ならびに反応混合物の製造方法も開示
する。
【0126】
ある用語は以下において、および本明細書の全体において定義されている。
【0127】
本明細書中で用いる単数形表現は単数または複数(例えば、少なくとも1つ)のものを
指す。
【0128】
「または」なる語は、本明細書においては、文脈に明らかに矛盾しない限り、「および
/または」を意味し、「および/または」と交換可能である。本明細書中の幾つかの箇所
での「および/または」なる語の使用は、文脈に明らかに矛盾しない限り、「または」な
る語の使用が「および/または」なる語と交換可能でないことを意味するものではない。
【0129】
「約」および「およそ」は、一般に、測定値の性質または精度を考慮した、測定量に関
する誤差の許容可能な度合を意味するものとする。誤差の典型的な度合は、与えられた値
または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5
%以内である。
【0130】
本明細書中で用いる「得る」または「取得する」なる語は、物理的実体または値を「直
接的に得る」または「間接的に得る」ことにより、物理的実体または値、例えば数値の所
有を得ることを意味する。「直接的に得る」は、物理的実体または値を得るためのプロセ
スを行うこと(例えば、合成的または分析的方法を行うこと)を意味する。「間接的に得
る」は、別の関係者または供給元(例えば、物理的実体または値を直接的に得た第三者の
研究所)から物理的実体または値を受領することを意味する。物理的実体を直接的に得る
ことには、物理的物質、例えば出発物質における物理的変化を含むプロセスを行うことが
含まれる。典型的な変化には、2以上の出発物質から物理的実体を製造すること、物質を
切断または断片化すること、物質を分離または精製すること、2以上の別個の実体を混合
物へと一緒にすること、共有結合または非共有結合の切断または形成を含む化学反応を行
うことが含まれる。値を直接的に得ることには、サンプルまたは別の物質における物理的
変化を含むプロセスを行うこと、例えば、物質(例えば、サンプル、アナライトまたは試
薬)における物理的変化を含む分析的プロセス(本明細書においては「物理的分析」と称
されることもある)を行うこと、分析方法、例えば、以下の1以上を含む方法を行うこと
が含まれる:物質、例えばアナライトまたはその断片もしくは他の誘導体を別の物質から
分離または精製すること、アナライトまたはその断片もしくは他の誘導体を別の物質、例
えばバッファー、溶媒または反応物と一緒にすること、あるいはアナライトまたはその断
片もしくは他の誘導体の構造を、例えば、アナライトの第1原子と第2原子との間の共有
結合または非共有結合の切断または形成により、変化させること、あるいは、試薬または
その断片もしくは他の誘導体の構造を、例えば、試薬の第1原子と第2原子との間の共有
結合または非共有結合の切断または形成により、変化させること。
【0131】
本明細書中で用いる「配列を得る」なる語は、配列を「直接的に得る」または「間接的
に得る」ことにより、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の所有を得ることを意味する
。「配列を直接的に得る」は、配列を得るためのプロセスを行うこと(例えば、合成的ま
たは分析的方法を行うこと)、例えば、配列決定方法(例えば、次世代シーケンシング(
NGS)方法)を行うことを意味する。「配列を間接的に得る」は、別の関係者または供
給元(例えば、配列を直接的に得た第三者の研究所)から配列の情報または知識を、ある
いは配列を受領することを意味する。得られた配列は完全配列である必要はなく、例えば
、少なくとも1つのヌクレオチドの配列決定、または本明細書に開示されている突然変異
が対象において存在することを確認する情報もしくは知識の取得は、配列を得ることに含
まれる。
【0132】
配列を直接的に得ることには、物理的物質、例えば出発物質、例えば組織サンプル、例
えば生検、または単離された核酸(例えば、DNAまたはRNA)サンプルにおける物理
的変化を含むプロセスを行うことが含まれる。典型的な変化には、2以上の出発物質から
物理的実体を製造すること、物質、例えばゲノムDNA断片を切断または断片化すること
、物質を分離または精製すること(例えば、核酸サンプルを組織から単離すること)、2
以上の別個の実体を混合物へと一緒にすること、共有結合または非共有結合の切断または
形成を含む化学反応を行うことが含まれる。値を直接的に得ることには、サンプルまたは
別の物質(前記のとおり)における物理的変化を含むプロセスを行うことが含まれる。
【0133】
本明細書中で用いる「サンプルを得る」なる語は、サンプルを「直接的に得る」または
「間接的に得る」ことにより、サンプル、例えば組織サンプルまたは核酸サンプルの所有
を得ることを意味する。「サンプルを直接的に得る」は、サンプルを得るためのプロセス
を行うこと(例えば、物理的方法、例えば、手術または摘出(抽出)を行うこと)を意味
する。「サンプルを間接的に得る」は、別の関係者または供給元(例えば、サンプルを直
接的に得た第三者の研究所)からサンプルを受領することを意味する。サンプルを直接的
に得ることには、物理的物質、例えば出発物質、例えば組織、例えばヒト患者における組
織、または患者から既に単離されている組織における物理的変化を含むプロセスを行うこ
とが含まれる。典型的な変化には、出発物質から物理的実体を製造すること、組織を解剖
する又はかき集めること、物質(例えば、サンプル組織または核酸サンプル)を分離また
は精製すること、2以上の別個の実体を混合物へと一緒にすること、共有結合または非共
有結合の切断または形成を含む化学反応を行うことが含まれる。サンプルを直接的に得る
ことには、サンプルまたは別の物質(例えば、前記のとおり)における物理的変化を含む
プロセスを行うことが含まれる。
【0134】
遺伝子または遺伝子産物(例えば、表1に記載されている遺伝子または遺伝子産物、N
F1遺伝子または遺伝子産物、あるいはLRP1B遺伝子または遺伝子産物)の、本明細
書中で用いる「変異(変化)」は、正常または野生型遺伝子と比較した場合の、遺伝子ま
たは遺伝子産物における突然変異、例えば、遺伝子または遺伝子産物の完全性、配列、構
造、量または活性に影響を及ぼす突然変異の存在を意味する。変異は、健常組織または細
胞(例えば、対照)におけるその量、構造および/または活性と比較した場合の、癌組織
または癌細胞における量、構造および/または活性におけるものであることが可能であり
、病態、例えば癌に関連している。例えば、癌に関連している、または抗癌療法に対する
応答性を予測する遺伝子または遺伝子産物は、健常組織または細胞と比較した場合の、癌
組織または癌細胞における変異ヌクレオチド配列(例えば、突然変異)、アミノ酸配列、
染色体転座、染色体内逆位、コピー数、発現レベル、タンパク質レベル、タンパク質活性
またはエピジェネティック修飾(例えば、メチル化またはアセチル化状態)、あるいは翻
訳後修飾を有しうる、またはそれから生じうる。典型的な突然変異には、点突然変異(例
えば、サイレント、ミスセンスまたはナンセンス)、欠失、挿入、逆位、重複、増幅、転
座、染色体間および染色体内転位が含まれるが、これらに限定されるものではない。突然
変異は遺伝子のコード領域または非コード領域内に存在しうる。ある実施形態においては
、変異は、表現型、例えば癌性表現型(例えば、癌リスク、癌進行、癌治療、または癌治
療に対する耐性の1以上)に関連している(または関連していない)。ある実施形態にお
いては、「変異」および「突然変異」は本明細書において互換的に用いられる。
【0135】
本明細書中で用いる「機能的変異(機能的変化)」は、基準配列、例えば野生型または
非突然変異配列と比較して、細胞分裂、成長または生存に影響を及ぼす、例えば細胞分裂
、成長または生存を促進する変異(変化)を含む。ある実施形態においては、機能的変異
は、機能的変異のデータベース、例えばCOSMICデータベース(cancer.sa
nger.ac.uk/cosmic;Forbesら,Nucl.Acids Res
.2015;43(D1):D805-D811)に含まれていることにより、そのよう
なものとして特定される。ある実施形態においては、機能的変異は、例えば、COSMI
Cデータベースにおいて公知体細胞変異として見出される、公知の機能状態を伴う変異で
ある。他の実施形態においては、機能的変異は、ありうる機能的状態を伴う変異、例えば
、腫瘍抑制遺伝子におけるトランケート化である。ある実施形態においては、機能的変異
は、ドライバー変異、例えば、細胞生存または再生を増強することによりクローンにその
微小環境における選択有利性を与える変異である。幾つかの実施形態においては、機能的
変異はクローン増殖を引き起こしうる。ある実施形態においては、機能的変異は、(a)
増殖シグナルにおける自給自足、(b)抗増殖シグナルの低減、例えばそれに対する不感
受性、(c)アポトーシスの低減、(d)複製能の増強、(e)血管新生の持続、または
(f)組織浸潤もしくは転移、の1以上を引き起こしうる変異である。他の実施形態にお
いては、機能的変異はパッセンジャー変異ではなく、例えば、細胞のクローンの適合度に
対して検出可能な影響を及ぼす変異である。他の実施形態においては、機能的変異は意義
不明な変異体(VUS)ではなく、例えば、変異体の病原性は確認可能でなく除外可能で
もない。
【0136】
「結合実体」は、分子タグが直接的または間接的に結合されうる任意の分子であって、
アナライトに特異的に結合しうるものを意味する。結合実体は核酸配列上のアフィニティ
タグでありうる。ある実施形態においては、結合実体は、アビジン分子またはハプテン結
合性抗体もしくはその抗原結合性フラグメントのような混合物からの核酸の分離を可能に
する。典型的な結合性実体には、ビオチン分子、ハプテン、抗体、抗体結合性フラグメン
ト、ペプチドおよびタンパク質が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
「相補的」は、2つの核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性に
関するものである。第1核酸領域のアデニン残基は、第1領域に対して逆平行であるチミ
ンまたはウラシルである第2核酸領域の残基と特異的水素結合(「塩基対形成」)を形成
しうることが公知である。同様に、第1核酸鎖のシトシン残基は、第1鎖に対して逆平行
であるグアニンである第2核酸鎖の残基と塩基対形成しうることが耕地である。核酸の第
1領域が、同じまたは異なる核酸の第2領域に対して相補的であると言えるのは、それら
の2つの領域が逆平行様態で配置された場合に、第1領域の少なくとも1つのヌクレオチ
ド残基が第2領域の残基と塩基対形成する場合である。ある実施形態においては、第1領
域は第1部分を含み、第2領域は第2部分を含み、ここで、第1部分および第2部分が逆
平行様態で配置された場合、第1部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なく
とも約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%は第2部分におけるヌクレ
オチド残基と塩基対形成しうる。他の実施形態においては、第1部分の全てのヌクレオチ
ド残基が第2部分におけるヌクレオチド残基と塩基対形成しうる。
【0138】
「癌(がん)」または「腫瘍」なる語は本明細書においては互換的に用いられる。これ
らの語は、発癌細胞に典型的な特性、例えば、無制御な増殖、不死性、転移能、急速な成
長および増殖速度ならびに或る特徴的な形態学的特徴を有する細胞の存在を意味する。
【0139】
「新生物(腫瘍)」または「新生物性(腫瘍性)」細胞なる語は、良性、前悪性、悪性
(癌)または転移段階を含みうる、細胞または組織における異常増殖段階、例えば過剰増
殖段階を意味する。
【0140】
癌が「抑制」されると言えるのは、癌の少なくとも1つの症状が軽減し、阻止され、減
速し、または予防される場合である。本明細書においては、癌の再発または転移が低減し
、減速され、遅延し、または予防される場合にも、癌は「抑制」されると言える。
【0141】
「抑制」または「インヒビター」なる語は、与えられた分子、例えば免疫チェックポイ
ントインヒビターの或るパラメーター、例えば活性の低下を含む。例えば、少なくとも5
%、10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上の、活性(例えば
、PD-LまたはPD-L1の活性)の抑制が、この語に含まれる。したがって、抑制は
100%であることを要さない。インヒビターは標的を直接的(例えば、標的に結合する
ことにより)または間接的(例えば、標的に関連した活性を妨げることにより)に抑制し
うる。インヒビターは、例えば多重特異性(例えば、二重特異性)を有する場合、(例え
ば、同時または逐次的に)2以上の異なる標的をも抑制しうる。本明細書に記載されてい
るPD-1またはPD-L1のインヒビターはPD-1、PD-L1またはそれらの両方
を抑制しうる。
【0142】
「プログラム死(Programmed Death)1」または「PD-1」なる語
は、アイソフォーム、哺乳類、例えばヒトPD-1、ヒトPD-1の種ホモログ、および
PD-1との少なくとも1つの共通エピトープを含む類似体を含む。PD-1、例えばヒ
トPD-1のアミノ酸配列は当技術分野で公知である(例えば、Shinohara T
ら(1994)Genomics 23(3):704-6;Finger LRら,G
ene(1997)197(1-2):177-87)。
【0143】
「PD-リガンド1」または「PD-L1」なる語は、アイソフォーム、哺乳類、例え
ばヒトPD-1、ヒトPD-L1の種ホモログ、およびPD-L1との少なくとも1つの
共通エピトープを含む類似体を含む。PD-L1、例えばヒトPD-L1のアミノ酸配列
は当技術分野で公知である。
【0144】
本明細書中で用いる「インデル」なる語は細胞の核酸における1以上のヌクレオチドの
挿入、欠失またはそれらの両方を意味する。ある実施形態においては、インデルは、挿入
および欠失の両方が核酸上で接近して存在する場合、1以上のヌクレオチドの挿入および
欠失の両方を含む。ある実施形態においては、インデルはヌクレオチドの総数の正味の変
化をもたらす。ある実施形態においては、インデルは約1~約50ヌクレオチドの正味の
変化をもたらす。
【0145】
本明細書中で用いる「化学療法剤」は、病態、特に癌を治療するために使用される細胞
毒性剤または細胞増殖抑制剤のような化学物質を意味する。
【0146】
本明細書中で用いる「癌療法」および「癌治療」は同義語である。
【0147】
本明細書中で用いる「化学療法」および「化学療法剤」および「化学療法物質」は同義
語である。
【0148】
本明細書において互換的に用いられる「相同性」または「同一性」なる語は2つのポリ
ヌクレオチド配列間または2つのポリペプチド配列間の配列類似性を意味し、同一性はよ
り厳密な比較である。「同一性または相同性の百分率」および「同一性または相同性(%
)」なる語は2以上のポリヌクレオチド配列または2以上のポリペプチド配列の比較にお
いて見出される配列類似性の百分率を意味する。「配列類似性」は、2以上のポリヌクレ
オチド配列間の(任意の適切な方法により決定される)塩基対配列における類似性(%)
を意味する。2以上の配列は0~100%のいずれか、またはそれらの間の任意の整数値
の類似性を有しうる。同一性または類似性は、比較目的で整列(アライメント)されうる
各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較配列における位置が同一ヌ
クレオチド塩基またはアミノ酸により占拠されている場合、それらの分子はその位置で同
一である。ポリヌクレオチド配列間の類似性または同一性の度合は、それらのポリヌクレ
オチド配列により共有される位置における同一または一致(マッチ)ヌクレオチドの数の
関数である。ポリペプチド配列の同一性の度合は、それらのポリペプチド配列により共有
される位置における同一アミノ酸の数の関数である。ポリペプチド配列の相同性または類
似性の度合は、それらのポリペプチド配列により共有される位置におけるアミノ酸の数の
関数である。本明細書中で用いる「実質的に同一」なる語は少なくとも75%、少なくと
も80%、少なくとも85%、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、9
5%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
【0149】
本明細書中で用いる「可能性が高い」または「可能性の増加」は、物品、物体、事物ま
たは人物が事象を引き起こす確率(可能性)が高いことを意味する。したがって、一例に
おいては、単独の又は組合されたPD-1またはPD-L1のインヒビターでの治療に応
答する可能性が高い対象は、単独の又は組合されたPD-1またはPD-L1のインヒビ
ターでの治療に応答する可能性が、基準の対象または対象群と比べて高い。
【0150】
「可能性が低い」は、事象、物品、物体、事物または人物が事象を引き起こす確率(可
能性)が、基準と比べて低いことを意味する。したがって、単独の又は組合されたPD-
1またはPD-L1のインヒビターでの治療に応答する可能性が低い対象は、単独の又は
組合されたキナーゼインヒビターでの治療に応答する可能性が、基準の対象または対象群
と比べて低い。
【0151】
核酸分子の「配列決定(シーケンシング)」は分子内の少なくとも1つのヌクレオチド
の同一性の決定を要する。幾つかの実施形態においては、分子内のヌクレオチドの全てよ
り少数の同一性が決定される。他の実施形態においては、分子内のヌクレオチドの大部分
または全ての同一性が決定される。
【0152】
本明細書中で用いる「次世代シーケンシング(次世代配列決定)またはNGSまたはN
G配列決定」は、個々の核酸分子(例えば、単一分子配列決定におけるもの)または個々
の核酸分子のクローン増殖プロキシのヌクレオチド配列をハイスループット様態(例えば
、10個を超える分子が同時に配列決定される)で決定する任意の配列決定方法を意味
する。1つの実施形態においては、ライブラリーにおける核酸種の相対存在量は、配列決
定実験により得られたデータにおけるそれらの同族(コグネイト)配列の存在の相対数を
計数することにより推定されうる。次世代シーケンシング方法は当技術分野で公知であり
、例えばMetzker,M.(2010)Nature Biotechnology
Reviews 11:31-46(これを参照により本明細書に組み入れることとす
る)に記載されている。次世代シーケンシングは、サンプルにおける核酸の5%未満で存
在する変異体を検出しうる。
【0153】
「サンプル」、「組織サンプル」、「患者サンプル」、「患者細胞または組織サンプル
」または「検体」はそれぞれ、対象または患者から得られた組織、細胞、例えば循環細胞
を意味する。組織サンプルの起源は、新鮮、凍結および/または保存器官、組織サンプル
、生検または吸引物からの固体組織;血液または任意の血液成分;体液、例えば脳脊髄液
、羊水、腹水または間質液;あるいは対象の妊娠または発生の任意の時点からの細胞であ
りうる。組織サンプルは、天然の組織と天然で混合されない化合物、例えば保存剤、抗凝
固剤、バッファー、固定剤、栄養剤、抗生物質などを含有しうる。1つの実施形態におい
ては、サンプルは、凍結サンプルとして、またはホルムアルデヒドもしくはパラホルムア
ルデヒド固定パラフィン包埋(FFPE)組織調製物として保存される。例えば、サンプ
ルはマトリックス内に包埋されうる(例えば、FFPEブロックまたは凍結サンプル)。
【0154】
本明細書中で用いる「腫瘍核酸サンプル」は腫瘍または癌サンプルからの核酸分子を意
味する。典型的には、それは腫瘍または癌サンプルからのDNA、例えばゲノムDNA、
またはRNA由来のcDNAである。ある実施形態においては、腫瘍核酸サンプルは精製
または単離されている(例えば、それはその天然状態から取り出されている)。
【0155】
本明細書中で用いる「対照」または「基準」「核酸サンプル」は対照または基準サンプ
ルからの核酸分子を意味する。典型的には、それは、遺伝子または遺伝子産物における変
化または変異を含有しない(例えば、突然変異を含有しない)DNA、例えばゲノムDN
A、またはRNA由来のcDNAである。ある実施形態においては、基準または対照核酸
サンプルは野生型または非突然変異配列である。ある実施形態においては、基準核酸サン
プルは精製または単離されている(例えば、それはその天然状態から取り出されている)
。他の実施形態においては、基準核酸サンプルは、非腫瘍サンプル、例えば血液対照、正
常隣接組織(NAT)、または同じ若しくは異なる被験者からの任意の他の非癌性サンプ
ルからのものである。
【0156】
本明細書中で用いる「問合せ(インタロゲーション)位置に隣接」は、部位が十分に近
くて、該部位に相補的な検出試薬が、標的核酸における基準配列(例えば、非突然変異体
または野生型配列)と突然変異(例えば、本明細書に記載されている変異)とを識別する
ために使用されうることを意味する。本明細書中で用いる、直接的に隣接していると言え
るのは、2つのヌクレオチドの間に介在ヌクレオチドが存在しない場合である。
【0157】
本明細書中で用いる「関連突然変異」は、定義突然変異(例えば、本明細書に記載され
ている突然変異体)から、ヌクレオチドまたは一次アミノ酸配列に関して、予め選択され
た距離内の突然変異を意味する。幾つかの実施形態においては、関連突然変異はn以内に
存在し、ここで、nは定義突然変異から2、5、10、20、30、50、100または
200ヌクレオチドである(nは、関連突然変異および定義突然変異を定めるヌクレオチ
ドを含まない)。幾つかの実施形態においては、関連突然変異は転座突然変異である。
【0158】
本明細書中で用いる「問合せ(インタロゲーション)位置」は、関心のある突然変異(
例えば、特定される突然変異)において突然変異した、または分析、例えば配列決定また
は回収される核酸(またはタンパク質)において突然変異したヌクレオチド(またはアミ
ノ酸残基)に対応する少なくとも1つのヌクレオチド(または、ポリペプチドの場合には
、アミノ酸残基)を含む。
【0159】
本明細書中で例えば突然変異配列に関する比較体として用いる「基準配列」は、問合せ
位置に、分析される突然変異体とは異なるヌクレオチドまたはアミノ酸を有する配列であ
る。1つの実施形態においては、基準配列は少なくとも問合せ位置に関しては野生型であ
る。
【0160】
例えば(a)、(b)、(i)などのような見出しは、単に本明細書および特許請求の
範囲を読み易くするために示されているに過ぎない。本明細書または特許請求の範囲にお
ける見出しの使用は、工程または要素がアルファベットもしくは数字順またはそれらが示
されている順序で実施されることを必要としない。
【0161】
本発明において注目される種々の態様を以下に更に詳細に説明する。追加的な定義は本
明細書の全体にわたって記載されている。
【0162】
治療方法および治療用物質
「治療する」、「治療」およびこの語の他の形態は、物質、例えば治療用物質を、単独
で、または第2の物質と組合せて、癌の成長を妨げるために、あるいは重量または体積に
おいて癌を縮小させるために、あるいは対象の予想生存期間または腫瘍の進行までの時間
を延長させるためなどに有効な量で投与することを意味する。それらの対象においては、
治療は、腫瘍成長の抑制、腫瘍量の減少、転移病巣のサイズもしくは数の減少、新たな転
移病巣の発生の抑制、生存延長、無進行生存期間の延長、進行までの時間の延長、および
/または生活の質の改善を含みうるが、これらに限定されるものではない。癌が「治療」
されたと言えるのは、癌の少なくとも1つの症状が軽減し、阻止され、減速し、または予
防された場合である。
【0163】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる「予防する」、「予防し」および「予防
」なる語は、対象が癌の再成長を被り始める前に行う行為、および/または癌の重症度を
抑制もしくは低減する行為を含む。
【0164】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる、物質の「治療的有効量」は、癌の治療
または処置において治療利益をもたらすのに、あるいは癌に関連した1以上の症状を遅延
させ又は最小にするのに十分な量である。化合物の治療的有効量は、癌の治療または処置
において治療利益をもたらす、単独の又は他の治療用物質と組合された治療用物質の量を
意味する。「治療的有効量」なる語は、全体的な療法を改善し、癌の症状または原因を軽
減または回避し、あるいは別の治療用物質の治療効力を増強する量を含みうる。
【0165】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる、物質の「予防的有効量」は、癌の再成
長を予防するのに、または癌に関連した1以上の症状を予防するのに、あるいはその再発
を予防するのに十分な量である。物質の予防的有効量は、癌の予防において予防利益をも
たらす、単独の又は他の治療用物質と組合された物質の量を意味する。「予防的有効量」
なる語は、全体的な予防を改善し、または別の予防用物質の予防効力を増強する量を含み
うる。
【0166】
「患者」または「対象(被験者)」なる語はヒト(例えば、任意の年齢群の男性または
女性)、例えば小児患者(例えば、乳児、小児、青年)、または成人患者(例えば、若年
成人、中年成人または高齢成人)を含む。ある実施形態においては、対象は、本明細書に
記載されているメラノーマを有する又はそのリスクを有する成人対象(例えば、男性また
は女性の成人対象)である。ある実施形態においては、対象は10歳以上、15歳以上、
20歳以上、25歳以上、30歳以上、35歳以上、40歳以上、45歳以上、50歳以
上、55歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85
歳以上、90歳以上の対象である。ある実施形態においては、対象は0~10歳、10~
20歳、20~30歳、30~40歳、40~50歳、50~60歳、60~70歳、7
0~80歳または80~90歳の対象である。ある実施形態においては、対象は25~2
9歳の対象である。他の実施形態では、対象は15~29歳の対象である。幾つかの実施
形態においては、対象は女性であり、15~29歳である。ある実施形態においては、対
象は65歳以上である。
【0167】
「患者」または「対象(被験者)」なる語が、化合物または薬物の投与に関して用いら
れる場合、患者は治療、観察および/または化合物もしくは薬物の投与の対象である。
【0168】
本明細書に記載されている物質、例えば治療用物質は、第2の治療用物質もしくは異な
る治療方法、例えば抗癌剤と組合せて、ならびに/または外科手技および/もしくは放射
線療法と組合せて投与されうる。
【0169】
「組合せて」は、療法もしくは治療用物質が同時に投与されなければならない、および
/または一緒に送達させるために製剤化(処方)されなければならないことを示唆すると
は意図されないが、これらの送達方法は本発明の範囲内である。医薬組成物は1以上の他
の追加的な療法または治療用物質と同時に、その前または後で投与されうる。一般に、各
物質は、その物質に関して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される
。組合せて使用される治療用物質は単一組成物において一緒に投与されうる、または異な
る組成物において別々に投与されうる、と更に理解される。レジメンにおいて使用する個
々の組合せは、第1の治療用物質の、追加的治療用活性物質に対する適合性、および/ま
たは達成される所望の治療効果を考慮したものである。
【0170】
本明細書中で用いる「応答体」なる語は、例えばRECIST1.1基準による定義に
従った場合に、治療に応答して腫瘍のサイズまたは体内の癌の度合の減少を示す対象、あ
るいは癌の徴候の1以上(例えば、ほとんどまたは全て)の消失を示す対象を含む。
【0171】
本明細書中で用いる「部分応答体」なる語は、例えばRECIST1.1基準による定
義に従った場合に、治療に応答して腫瘍のサイズまたは体内の癌の度合の減少を示す対象
を含む。
【0172】
本明細書中で用いる「完全応答体」なる語は、例えばRECIST1.1基準による定
義に従った場合に、治療に応答して癌のほとんどまたは全ての徴候の消失を示す対象を含
む。完全応答体において癌は治癒している必要はない。
【0173】
本明細書中で用いる「非応答体」なる語は、例えばRECIST1.1基準による定義
に従った場合に、腫瘍のサイズまたは体内の癌の度合の減少を示さない対象を含む。
【0174】
幾つかの実施形態においては、対象は、古典的な部分応答体もしくは完全応答体による
定義(RECIST1.1基準)または少なくとも12ヶ月間持続する非定型免疫関連応
答により、応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応答体として分類さ
れうる。幾つかの実施形態においては、12ヶ月以内に臨床的悪化(例えば、臨床医によ
り決定される)を引き起こす又は追加的な全身療法を要する混合応答を示す対象は非応答
体とみなされる(例えば、追加的な全身療法または臨床的悪化の前、その時点またはその
後)。ある実施形態においては、療法の応答は、イメージングおよび臨床家の記録の臨床
的精査に基づいて分類される。RECIST1.1基準は、例えば、Eisenhaue
rら,Eur J Cancer.2009;45(2):228-247に記載されて
いる。
【0175】
幾つかの実施形態においては、応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)は、遺
伝子の所定セットにおける、例えば、遺伝子の所定セットのコード領域における予め選択
された単位当たり、例えばメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上の、サンプル(例
えば、腫瘍サンプル)における突然変異荷重を有する。幾つかの実施形態においては、応
答体(例えば、完全応答体)は、遺伝子の所定セットにおける、例えば、遺伝子の所定セ
ットのコード領域における予め選択された単位当たり、例えばメガベース当たり体細胞変
異約23.1個以上の、サンプル(例えば、腫瘍サンプル)における突然変異荷重を有す
る。幾つかの実施形態においては、応答体(例えば、部分応答体)は、遺伝子の所定セッ
トにおける、例えば、遺伝子の所定セットのコード領域における予め選択された単位当た
り、例えばメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上かつ23.2個未満の、サンプル
(例えば、腫瘍サンプル)における突然変異荷重を有する。幾つかの実施形態においては
、非応答体は、遺伝子の所定セットにおける、例えば、遺伝子の所定セットのコード領域
における予め選択された単位当たり、例えばメガベース当たり体細胞変異約3.3個未満
の、サンプル(例えば、腫瘍サンプル)における突然変異荷重を有する。
【0176】
幾つかの実施形態においては、応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)は、少
なくとも約29%(例えば、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約5
0%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約8
5%、少なくとも約90%または少なくとも約95%)の客観的応答率(ORR)を有す
る患者群(例えば、臨床試験におけるもの)の一員である。幾つかの実施形態においては
、応答体(例えば、完全応答体)は、少なくとも約85%(例えば、少なくとも約90%
または少なくとも約95%)の客観的応答率(ORR)を有する患者群の一員である。幾
つかの実施形態においては、応答体(例えば、部分応答体)は、約29%~約85%(例
えば、約30~約80%、約40%~約70%、または約50%~約60%)の客観的応
答率(ORR)を有する患者群の一員である。幾つかの実施形態においては、非応答体は
、約25%未満(例えば、約20%未満または約10%未満)の客観的応答率(ORR)
を有する患者群の一員である。
【0177】
典型的な治療用物質および方法
該物質、例えば治療用物質は小分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体分子
、核酸(例えば、siRNA、アンチセンスまたはマイクロRNA)、小分子または免疫
細胞療法でありうる。典型的な物質および物質クラスは本明細書に記載されている。
【0178】
1つの実施形態においては、該物質、例えば治療用物質はPD-1またはPD-L1に
結合し、および/または抑制する。1つの実施形態においては、該物質は抗体分子である
。本明細書中で互換的に用いる「抗体」および「抗体分子」なる語は免疫グロブリン分子
、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合す
る抗原結合部位を含有する分子、例えば本発明において注目されるポリペプチドを意味す
る。本発明において注目される与えられたポリペプチドに特異的に結合する分子は、該ポ
リペプチドには結合するが、該ポリペプチドを天然で含有するサンプル、例えば生物学的
サンプル中の他の分子には実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学
的に活性な部分の例には、ペプシンのような酵素で抗体を処理することにより得られうる
F(ab)およびF(ab’)フラグメントが含まれる。本発明はポリクローナルおよ
びモノクローナル抗体を提供する。本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」または「
モノクローナル抗体組成物」なる語は、特定のエピトープと免疫反応しうる抗原結合部位
の1つの種のみを含有する抗体分子の集団を意味する。PD-1またはPD-L1に対す
る抗体は当技術分野で公知であり、ポリペプチド標的、例えばPD-1またはPD-L1
に対する抗体を得るための技術も当技術分野で公知である。
【0179】
典型的なPD-1インヒビター
ある実施形態においては、PD-1のインヒビターは抗PD-1抗体である。ある実施
形態においては、PD-1のインヒビターは、ニボルマブ(nivolumab)(ON
O-4538、BMS-936558またはMDX1106)、ペンブロリズマブ(pe
mbrolizumab)(MK-3475またはランブロリズマブ(lambroli
zumab))、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011)、MEDI
0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、BG
B-A317、SHR-1210(HR-301210、SHR1210またはSHR-
1210)、PF-06801591またはAMP-224から選択される。
【0180】
他の実施形態においては、PD-1インヒビターは、ニボルマブ(nivolumab
)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)またはピジリズマブ(pidil
izumab)から選択される抗PD-1抗体である。
【0181】
幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体はニボルマブ(Nivolumab)(
CAS Registry Number:946414-94-4)である。ニボルマ
ブの別名には、MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538またはB
MS-936558が含まれる。ニボルマブは、PD1を特異的に遮断する完全ヒトIg
G4モノクローナル抗体である。ニボルマブ(クローン5C4)、およびPD1に特異的
に結合する他のヒトモノクローナル抗体は、例えばUS8,008,449およびWO2
006/121168に開示されている。1つの実施形態においては、PD-1のインヒ
ビターは、US8,008,449およびWO2006/121168においてそれぞれ
配列番号2および3として開示されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列(またはそれらに
対して実質的に同一の若しくは類似したアミノ酸配列、例えば、特定されているアミノ酸
配列に対して少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一である配列)を有
するノボルマブである。
【0182】
幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体はペンブロリズマブ(pembroli
zumab)である。ペンブロリズマブ(ランブロリズマブ(Lambrolizuma
b)、MK-3475、MK03475、SCH-900475またはKEYTRUDA
(登録商標)(Merck)とも称される)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノ
クローナル抗体である。ペンブロリズマブおよび他のヒト化抗PD-1抗体はHamid
,O.ら(2013)New England Journal of Medicin
e 369(2):134-44、US8,354,509およびWO2009/114
335に開示されている。1つの実施形態においては、PD-1のインヒビターは、例え
ばUS8,354,509およびWO2009/114335に開示されているペンブロ
リズマブであって、US8,354,509およびWO2009/114335において
それぞれ配列番号4および5として開示されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列(または
それらに対して実質的に同一の若しくは類似したアミノ酸配列、例えば、特定されている
アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一である配
列)を有するものである。
【0183】
幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体はピジリズマブ(pidilizuma
b)である。ピジリズマブ(CT-011;Cure Tech)は、PD-1に結合す
る。ヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。ピジリズマブおよび他のヒト化抗PD
-1モノクローナル抗体はWO2009/101611に開示されている。
【0184】
他の抗PD-1抗体には、とりわけ、AMP514(アンプリミューン(Amplim
mune))、例えば、US8,609,089、US2010028330および/ま
たはUS20100114649に開示されている抗PD1抗体が含まれる。
【0185】
典型的なPD-L1インヒビター
ある実施形態においては、PD-L1のインヒビターは、アテゾリズマブ(atezo
lizumab)(MPDL3280A、RG7446またはRO5541267)、Y
W243.55.S70、MDX-1105、デュルバルマブ(durvalumab)
(MEDI4736)またはアベルマブ(avelumab)(MSB0010718C
)から選択される。
【0186】
幾つかの実施形態においては、PD-L1インヒビターは抗体分子である。幾つかの実
施形態においては、抗PD-L1インヒビターは、YW243.55.S70、MPDL
3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CまたはMDX-1105か
ら選択される。
【0187】
幾つかの実施形態においては、抗PD-L1抗体はMSB0010718Cである。M
SB0010718C(A09-246-2(Merck Serono)とも称される
)は、PD-L1に結合するモノクローナル抗体である。MSB0010718Cおよび
他のヒト化抗PD-L1抗体は、例えばWO2013/079174に開示されており、
WO2013/079174においてそれぞれ配列番号24および25として開示されて
いる重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列(またはそれらに対して実質的に同一の若しく
は類似したアミノ酸配列、例えば、特定されているアミノ酸配列に対して少なくとも85
%、90%、95%もしくはそれ以上同一である配列)を有する。
【0188】
1つの実施形態においては、PD-L1インヒビターはYW243.55.S70であ
る。YW243.55.S70抗体は、WO2010/077634(WO2010/0
77634のそれぞれ配列番号20および21に示されている重鎖および軽鎖可変領域ア
ミノ酸配列)に記載されている抗PD-L1であり、それにおいて開示されている配列(
またはそれらに対して実質的に同一の若しくは類似したアミノ酸配列、例えば、特定され
ているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一で
ある配列)を有する。
【0189】
1つの実施形態においては、PD-L1インヒビターはMDX-1105である。MD
X-1105はBMS-936559としても公知であり、WO2007/005874
に記載されている抗PD-L1抗体であり、それにおいて開示されている配列(またはそ
れらに対して実質的に同一の若しくは類似したアミノ酸配列、例えば、特定されているア
ミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一である配列
)を有する。
【0190】
1つの実施形態においては、PD-L1インヒビターはMDPL3280A(Gene
ntech/Roche)である。MDPL3280Aは、PD-L1に結合するヒトF
c最適化IgG1モノクローナル抗体である。MDPL3280A、およびPD-L1に
対する他のヒトモノクローナル抗体は、米国特許第7,943,743号および米国特許
公開第20120039906号に開示されている。
【0191】
追加的療法
本明細書に記載されている治療は、異なる療法、例えば非抗PD-1および/または非
抗PD-L1治療用物質または治療方法に対する不満足な応答を示した患者に対して行わ
れうる。1つの実施形態においては、対象は、異なる療法、例えば非抗PD-1および/
または非抗PD-L1治療用物質または治療方法で治療を受けている、または治療を受け
たことがある。前記の異なる療法は小分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体
分子、核酸(例えば、siRNA、アンチセンスまたはマイクロRNA)または細胞であ
りうる。
【0192】
1つの実施形態においては、前記の異なる療法は化学療法、放射線療法、免疫療法、放
射免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、外科手技またはそれらの任意の組合せから選択さ
れる。1つの実施形態においては、前記の異なる療法は、ダカルバジン(dacarba
zine)、テモゾロミド(temozolomide)、インターロイキン2(IL-
2)、インターフェロン、CTLA-4のインヒビター(例えば、抗CTLA-4抗体、
例えばイピリムマブ(ipilimumab))、BRAFインヒビター、MEKインヒ
ビター、タリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherpar
epvec)、養子細胞移入またはそれらの任意の組合せの1以上を含む。1つの実施形
態においては、前記の異なる療法は、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾ
ロミド(temozolomide)、インターロイキン2(IL-2)(例えば、組換
えインターフェロンアルファ2bまたはペグインターフェロンアルファ2b)、インター
フェロン、イピリムマブ(ipilimumab)、BRAFインヒビター[例えば、ベ
ムラフェニブ(vemurafenib)またはダブラフェニブ(dabrafenib
)]、MEKインヒビター[例えば、コビメチニブ(cobimetinib)またはト
ラメチニブ(trametinib)]、タリモジーン・ラハーパレプベック(tali
mogene laherparepvec)、養子細胞移入(例えば、修飾T細胞また
は修飾樹状細胞)またはそれらの任意の組合せの1以上を含む。
【0193】
本明細書に記載されている物質、例えば治療用物質は、単独で、または組合せて、例え
ば他の化学療法剤もしくは手技と組合せて、対象において腫瘍細胞成長を低減もしくは抑
制するのに、および/または癌を治療もしくは予防するのに十分な量で投与されうる。
【0194】
核酸インヒビター
もう1つの実施形態においては、該物質は、アンチセンス分子、リボザイム、二本鎖R
NA分子、三重らせん分子(変異をコードする核酸にハイブリダイズするもの)、または
変異のmRNA発現を遮断もしくは低減する転写調節領域から選択される核酸インヒビタ
ーである。
【0195】
1つの実施形態においては、核酸アンタゴニストは、突然変異をコードするmRNAを
標的とするsiRNAである。他のタイプのアンタゴニスト核酸、例えばdsRNA、リ
ボザイム、三重らせん形成物質またはアンチセンス核酸も使用されうる。したがって、突
然変異をコードする核酸分子に対する核酸インヒビター、例えばアンチセンス、RNAi
である単離された核酸分子を提供する。
【0196】
「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的である(例
えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的である、またはmRNA配列に相補的であ
る)ヌクレオチド配列を含みうる。アンチセンス核酸は、1以上の突然変異をコードする
ヌクレオチド配列全体またはその一部分のみに相補的でありうる。もう1つの実施形態に
おいては、アンチセンス核酸分子は、1以上の突然変異をコードするヌクレオチド配列の
コード鎖の「非コード領域」(例えば、5’および3’非翻訳領域)に対してアンチセン
スである。アンチセンス物質は、例えば約8~約80個の核酸塩基(すなわち、約8~約
80ヌクレオチド)、例えば約8~約50個の核酸塩基、または約12~約30個の核酸
塩基を含みうる。アンチセンス化合物には、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリ
ゴヌクレオチド(オリゴザイム)、および標的核酸にハイブリダイズしその発現を調節す
る他の短い触媒RNAまたは触媒オリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンス化合物は
、標的遺伝子における配列に相補的な少なくとも8個の連続核酸塩基の伸長を含みうる。
オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能となるためには、その標的核酸配列
に100%相補的である必要はない。オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリダイズ可能
であると言えるのは、標的への該オリゴヌクレオチドの結合が標的分子の正常な機能を妨
げて有用性の喪失を引き起こし、特異的結合が望まれる条件下、すなわち、インビボアッ
セイまたは治療的処置の場合には生理的条件下、あるいはインビトロアッセイの場合には
アッセイの実施条件下、非標的配列への該オリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避する
のに十分な度合の相補性が存在する場合である。
【0197】
mRNAとのアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションはmRNAの
正常機能の1以上を妨げうる。妨げられるmRNAの機能には、全ての中心的な機能、例
えば、タンパク質翻訳部位へのRNAの移行、RNAからタンパク質への翻訳、1以上の
mRNA種を与えるRNAのスプライシング、およびRNAが関わりうる触媒活性が含ま
れる。RNAへの特定のタンパク質の結合もRNAへのアンチセンスオリゴヌクレオチド
ハイブリダイゼーションにより妨げられうる。
【0198】
典型的なアンチセンス化合物には、標的核酸(例えば、本明細書に記載されている突然
変異をコードするmRNA)に特異的にハイブリダイズするDNAまたはRNA配列が含
まれる。相補領域は約8~約80ヌクレオチドにわたって伸長しうる。該化合物は1以上
の修飾核酸塩基を含みうる。修飾核酸塩基は当技術分野で公知である。修飾核酸物質の記
載も入手可能である。例えば、米国特許第4,987,071号、第5,116,742
号および第5,093,246号;Woolfら(1992)Proc Natl Ac
ad Sci USA;Antisense RNA and DNA,D.A.Mel
ton編,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold
Spring Harbor,N.Y.(1988);89:7305-9;Hasel
hoffおよびGerlach(1988)Nature 334:585-59;He
lene,C.(1991)Anticancer Drug Des.6:569-8
4;Helene(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27-36
;ならびにMaher(1992)Bioassays 14:807-15を参照され
たい。
【0199】
アンチセンス核酸分子は、典型的には、(例えば、組織部位における直接注射により)
対象に投与され、あるいはインサイチュ(in situ)で産生されて、それは、突然
変異をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAにハイブリダイズし、それに
より、例えば転写および/または翻訳を抑制することにより、タンパク質の発現を抑制す
る。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的化するように修飾される
ことが可能であり、ついで全身投与されうる。全身投与のためには、例えば、細胞表面受
容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体にアンチセンス核酸分子を連結することに
より、アンチセンス分子が、選択された細胞表面上で発現された受容体または抗原に特異
的に結合するように、アンチセンス分子が修飾されうる。アンチセンス核酸分子は、本明
細書に記載されているベクターを使用することによっても、細胞に送達されうる。アンチ
センス分子の十分な細胞内濃度を得るために、強力なpol IIまたはpol III
プロモーターの制御下でアンチセンス核酸分子が配置されたベクター構築物が好ましい。
【0200】
更にもう1つの実施形態においては、アンチセンス核酸分子はα-アノマー核酸分子で
ある。α-アノマー核酸分子は相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、この
場合、通常のβ単位とは逆に、該鎖は互いに平行に伸長する(Gaultierら(19
87)Nucleic Acids.Res.15:6625-6641)。アンチセン
ス核酸分子は2’-o-メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987)Nucle
ic Acids Res.15:6131-6148)またはキメラRNA-DNA類
似体(Inoueら(1987)FEBS Lett.215:327-330)をも含
みうる。
【0201】
siRNAは、所望により突出部を含みうる小さな二本鎖RNA(dsRNA)である
。例えば、siRNAの二本鎖領域は約18~25ヌクレオチド長、例えば約19、20
、21、22、23または24ヌクレオチド長である。典型的には、siRNA配列は標
的mRNAに対して厳密に相補的である。特にdsRNAおよびsiRNAは、哺乳類細
胞(例えば、ヒト細胞)における遺伝子発現をサイレンシングするために使用されうる。
siRNAは、29塩基対のステムおよび2-ヌクレオチド3’突出を有する短いヘアピ
ンRNA(shRNA)をも含む。例えば、Clemensら(2000)Proc.N
atl.Acad.Sci.USA 97:6499-6503;Billyら(200
1)Proc.Natl.Sci.USA 98:14428-14433;Elbas
hirら(2001)Nature.411:494-8;Yangら(2002)Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA 99:9942-9947;Siolas
ら(2005),Nat.Biotechnol.23(2):227-31;米国特許
公開第20040086884号、第20030166282号、第200301432
04号、第20040038278号および第20030224432号を参照されたい
【0202】
更にもう1つの実施形態においては、本発明において注目されるアンチセンス核酸はリ
ボザイムである。突然変異をコードする核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明
細書に開示されている突然変異cDNAのヌクレオチド配列に相補的な1以上の配列、お
よびmRNA切断をもたらす公知触媒配列を有する配列を含みうる(米国特許第5,09
3,246号またはHaselhoffおよびGerlach(1988)Nature
334:585-591を参照されたい)。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、
突然変異コード化mRNAにおける切断されるべきヌクレオチド配列に相補的である、テ
トラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体が構築されうる。例えば、Cechら,米
国特許第4,987,071号およびCechら,米国特許第5,116,742号を参
照されたい。あるいは、特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAをRNA分子の
プールから選択するために、突然変異mRNAが使用されうる。例えば、Bartel,
D.およびSzostak,J.W.(1993)Science 261:1411-
1418を参照されたい。
【0203】
突然変異遺伝子の抑制は、突然変異の調節領域に相補的なヌクレオチド配列を標的化し
て、標的細胞における突然変異遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成することによ
り達成されうる。全般的には、Helene,C.(1991)Anticancer
Drug Des.6:569-84;Helene,C.i(1992)Ann.N.
Y.Acad.Sci.660:27-36;およびMaher,L.J.(1992)
Bioassays 14:807-15を参照されたい。三重らせん形成のために標的
化されうる潜在的配列は、いわゆる「スイッチバック(switchback)」核酸分
子を作製することにより増加されうる。スイッチバック分子は交替性(alternat
ing)5’-3’,3’-5’様態で合成されて、それは最初に二本鎖の一方の鎖と塩
基対形成し、ついで他方の鎖と塩基対形成して、プリンまたはピリミジンのかなりの伸長
が二本鎖の一方の鎖上に存在する必要性を排除する
本発明はまた、検出可能な様態で標識されたオリゴヌクレオチドプライマーおよびプロ
ーブ分子を提供する。典型的には、そのような標識は化学発光性、蛍光製、放射性または
比色性である。
【0204】
突然変異核酸分子は、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解性を改
善するために、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において修飾されうる。修飾を有する
合成オリゴヌクレオチドの非限定的な例に関しては、Toulme(2001)Natu
re Biotech.19:17およびFariaら(2001)Nature Bi
otech.19:40-44を参照されたい。そのようなホスホラミダイトオリゴヌク
レオチドは有効なアンチセンス物質でありうる。
【0205】
例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格を修飾してペプチド核酸を得ることが
可能である(Hyrup B.ら(1996)Bioorganic & Medici
nal Chemistry 4:5-23)。本明細書中で用いる「ペプチド核酸」ま
たは「PNA」なる語は、デオキシリボースリン酸骨格が偽ペプチド骨格により置換され
ており、4つの天然核酸塩基のみが保持されている核酸模倣物、例えばDNA模倣物を意
味する。PNAの中性骨格は、低いイオン強度の条件下でDNAおよびRNAへの特異的
ハイブリダイゼーションを可能にしうる。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup B.
ら(1996)前掲およびPerry-O’Keefeら,Proc.Natl.Aca
d.Sci.93:14670-675に記載されている標準的な固相ペプチド合成法を
用いて行われうる。
【0206】
突然変異核酸分子のPNAは治療および診断用途に使用されうる。例えば、PNAは、
例えば、転写または翻訳停止を誘発すること、あるいは複製を抑制することにより、遺伝
子発現の配列特異的調節のためのアンチセンス物質または抗遺伝子物質として使用されう
る。突然変異核酸分子のPNAはまた、遺伝子における一塩基対突然変異の分析(例えば
、PNA指向性PCRクランピングによるもの)において、または他の酵素(例えば、S
1ヌクレアーゼ(Hyrup B.ら(1996)前掲))と併用される場合には「人工
制限酵素」として、またはDNA配列決定もしくはハイブリダイゼーションのためのプロ
ーブもしくはプライマー(Hyrup B.ら(1996)前掲;Perry-O’Ke
efe,前掲)として使用されうる。
【0207】
他の実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、他の付加基、例えばペプチド(例え
ば、インビボで宿主細胞受容体を標的化する場合)、または細胞膜(例えば、Letsi
ngerら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:655
3-6556;Lemaitreら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 84:648-652;W088/09810を参照されたい)もしくは血液
脳関門(例えば、WO 89/10134を参照されたい)を越える輸送を促進する物質
を含みうる。また、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発切断剤(例えば
、Krolら(1988)Bio-Techniques 6:958-976を参照さ
れたい)またはインターカレート剤(例えば、Zon(1988)Pharm.Res.
5:539-549を参照されたい)で修飾されうる。この目的で、オリゴヌクレオチド
は別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤またはハイ
ブリダイゼーション誘発切断剤)にコンジュゲート化されうる。
【0208】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている核酸インヒビターは、インビ
トロでの変異を含む核酸の発現の抑制のために提供される。
【0209】

本明細書に記載されている本発明は、癌を治療するために、または癌を有する対象を評
価するために使用されうる。
【0210】
典型的な癌には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:メラノー
マ、B細胞癌、例えば多発性骨髄腫、乳癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌またはNSCL
C)、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢
神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、子宮頸癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭癌
、肝臓癌、腎癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨
肉腫、軟骨肉腫、血液組織の癌、腺癌、炎症性筋線維芽細胞腫、消化管間質腫瘍(GIS
T)、結腸癌、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(
MPD)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄球性
白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ
腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、軟組織肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨肉
腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮
腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌
、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨
毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫
、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫
、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型Bリンパ腫、肝細胞
癌、甲状腺癌、胃癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、特発性骨髄性化生、好酸
球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、神経内
分泌癌、カルチノイド腫瘍およびそれらの転移病変。
【0211】
メラノーマ
本発明は、少なくとも部分的には、対象における癌、例えばメラノーマの治療方法を提
供する。ある実施形態においては、該方法は、本明細書に記載されている変異(例えば、
表1に開示されている遺伝子における変異、例えば、本明細書に記載されているNF1遺
伝子またはLRP1B遺伝子における変異)を含有する癌、例えばメラノーマの治療を含
む。該方法は、治療用物質、例えば免疫療法物質、例えばPD-1またはPD-L1のイ
ンヒビターを対象に投与することを含む。
【0212】
ある実施形態においては、癌はメラノーマである。ある実施形態においては、癌は進行
性メラノーマである。ある実施形態においては、癌は転移性メラノーマである。ある実施
形態においては、癌、例えばメラノーマは再発または再燃のリスクを有する。ある実施形
態においては、癌、例えばメラノーマは転移のリスクを有する。幾つかの実施形態におい
ては、メラノーマは、当業者に公知の任意の適切なメラノーマ分類系に従い定義される任
意の病期またはリスク群のメラノーマである。
【0213】
ある実施形態においては、メラノーマは病期(ステージ)0、病期IA、病期IB、病
期IIA、病期IIB、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラノーマのいずれか
のものである。他の実施形態においては、メラノーマは、米国癌合同委員会(Ameri
can Joint Committee on Cancer)(AJCC)のメラノ
ーマの病期分類系により定義される病期0、病期IA、病期IB、病期IIA、病期II
B、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラノーマのいずれかのものである。幾つ
かの実施形態においては、メラノーマは、当業者に公知の任意の適切なメラノーマ分類系
に従い定義される任意の病期のメラノーマである。他の実施形態においては、メラノーマ
は、表2A~2Bに記載されている病期0、病期IA、病期IB、病期IIA、病期II
B、病期IIC、病期IIIまたは病期IVのメラノーマのいずれかのものである。
【0214】
ある実施形態においては、メラノーマは病期IIIまたは病期IVのメラノーマである
。ある実施形態においては、メラノーマは病期IIIのメラノーマである。ある実施形態
においては、メラノーマは、当業者に公知の任意の適切なメラノーマ分類系による病期I
IIのメラノーマである。ある実施形態においては、癌は、表2A~2Bに記載されてい
る病期IIIのメラノーマである。ある実施形態においては、メラノーマは病期IVのメ
ラノーマである。ある実施形態においては、メラノーマは、当業者に公知の任意の適切な
メラノーマ分類系による病期IVのメラノーマである。ある実施形態においては、癌は、
表2A~2Bに記載されている病期IVのメラノーマである。
【0215】
ある実施形態においては、メラノーマは進行性メラノーマである。幾つかの実施形態に
おいては、進行性メラノーマは、例えば表2A~2Bに記載されている、病期IIIまた
は病期IVのメラノーマである。ある実施形態においては、メラノーマは転移性メラノー
マである。幾つかの実施形態においては、転移性メラノーマは、例えば表2A~2Bに記
載されている、病期IIIまたは病期IVのメラノーマである。
【表1】
【表2】
【0216】
ある実施形態においては、メラノーマは皮膚メラノーマである。他の実施形態において
は、メラノーマは非皮膚メラノーマである。
【0217】
ある実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノー
マは、例えば本明細書に記載されている遺伝子における、変異、例えば本明細書に開示さ
れている変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。ある実施形
態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノーマは、表1に
記載されている遺伝子における変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定さ
れている。他の実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性
メラノーマは、表1に記載されている遺伝子における複数の変異を含み、または該変異を
有すると確認もしくは決定されている。他の実施形態においては、癌、例えばメラノーマ
、例えば進行性または転移性メラノーマは、表1に記載されている複数の遺伝子における
複数の変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。
【0218】
ある実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノー
マは、NF1遺伝子における変異、例えば、本明細書に記載されているNF1遺伝子にお
ける変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。
【0219】
ある実施形態においては、NF1遺伝子における変異は、NF1の野生型活性と比較し
た場合の、NF1遺伝子産物(例えば、NF1タンパク質)の活性の低下をもたらす。例
えば、該変異は、NF1のGTPアーゼアクチベーター活性、ホスファチジルコリン結合
活性および/またはホスファチジルエタノールアミン結合活性の変化(例えば、減少)を
もたらしうる。ある実施形態においては、該変異はRASの活性化の上昇をもたらす。
【0220】
1つの実施形態においては、NF1遺伝子における変異は、突然変異(例えば、体細胞
変異)、例えば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失であり、あるいはそれを含む
。メラノーマに関連した典型的なNF1変異は、例えば、Wiesnerら,Am J
Surg Pathol.2015;39(10):1357-62;Krautham
merら,Nat Genet.2015;47(9):996-1002に記載されて
いる。NF1遺伝子における追加的な変異は、例えば、COSMICデータベース(ca
ncer.sanger.ac.uk/cosmic;Forbesら,Nucl.Ac
ids Res.2015;43(D1):D805-D811)に記載されている。
【0221】
ある実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノー
マは、LRP1B遺伝子における変異、例えば、本明細書に記載されているLRP1B遺
伝子における変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。
【0222】
ある実施形態においては、LRP1B遺伝子における変異は、LRP1Bの野生型活性
と比較した場合の、LRP1B遺伝子産物(例えば、LRP1Bタンパク質)の活性の低
下をもたらす。例えば、該変異は、LRP1Bのカルシウムイオン結合および/または低
密度リポタンパク質受容体活性の変化(例えば、減少)をもたらしうる。
【0223】
1つの実施形態においては、LRP1B遺伝子における変異は、突然変異(例えば、体
細胞変異)、例えば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失であり、あるいはそれを
含む。メラノーマに関連した典型的なLRP1B変異は、例えば、Nikolaevら,
Nat Genet.2011;44(2):133-9に記載されている。LRP1B
遺伝子における追加的変異は、例えば、COSMICデータベース(cancer.sa
nger.ac.uk/cosmic;Forbesら,Nucl.Acids Res
.2015;43(D1):D805-D811)に記載されている。
【0224】
ある実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノー
マは、BRAF遺伝子における変異、例えば、本明細書に記載されているBRAF遺伝子
における変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。
【0225】
ある実施形態においては、BRAF遺伝子における変異は、BRAFの野生型活性と比
較した場合の、BRAF遺伝子産物(例えば、BRAFタンパク質)の活性の上昇をもた
らす。例えば、該変異はBRAFの以下の活性の1以上における変化をもたらしうる:A
TP結合カルシウム、イオン結合、同一タンパク質結合、MAPキナーゼキナーゼキナー
ゼ活性、タンパク質キナーゼ活性、またはタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性。
ある実施形態においては、該変異はBRAFのキナーゼ活性の変化(例えば、上昇)をも
たらす。
【0226】
1つの実施形態においては、BRAF変異は、突然変異(例えば、体細胞変異)、例え
ば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失であり、あるいはそれを含む。ある実施形
態においては、該変異は塩基置換である。
【0227】
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はコドンV600に位置する。ある実
施形態においては、BRAFにおける変異はV600E変異である。ある実施形態におい
ては、BRAFにおける変異はV600K変異である。ある実施形態においては、BRA
Fにおける変異はV600R変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変
異はV600D変異である。
【0228】
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はV600変異以外の変異である。あ
る実施形態においては、BRAFにおける変異はK601変異である。ある実施形態にお
いては、BRAFにおける変異はK601E変異である。ある実施形態においては、BR
AFにおける変異はG469変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変
異はG469E変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変異はD594
変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける変異はD594G変異である。
ある実施形態においては、BRAFにおける変異はL597変異である。ある実施形態に
おいては、BRAFにおける変異はL597S変異である。ある実施形態においては、B
RAFにおける変異はS467変異である。ある実施形態においては、BRAFにおける
変異はS467L変異である。
【0229】
他の実施形態においては、癌、例えばメラノーマ、例えば進行性または転移性メラノー
マは、NRAS遺伝子における変異、例えば、本明細書に記載されているNRAS遺伝子
における変異を含み、または該変異を有すると確認もしくは決定されている。
【0230】
ある実施形態においては、NRAS遺伝子における変異は、NRASの野生型活性と比
較した場合の、NRAS遺伝子産物(例えば、NRASタンパク質)の活性の上昇をもた
らす。例えば、該変異は、NRASのGTPアーゼ活性の変化(例えば、減少)をもたら
しうる。ある実施形態においては、NRASタンパク質は、固有のGTP加水分解を低減
する、例えば構成的に活性なNRASをもたらす変異を含む。
【0231】
1つの実施形態においては、NRAS変異は、突然変異(例えば、体細胞変異)、例え
ば置換(例えば、塩基置換)、挿入または欠失であり、あるいはそれを含む。ある実施形
態においては、該変異は塩基置換である。
【0232】
ある実施形態においては、NRASにおける変異はコドンQ61に位置する。ある実施
形態においては、NRASにおける変異はQ61H変異である。ある実施形態においては
、NRASにおける変異はQ61K変異である。ある実施形態においては、NRASにお
ける変異はQ61L変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異はQ6
1P変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異はQ61Q変異である
。ある実施形態においては、NRASにおける変異はQ61R変異である。
【0233】
他の実施形態においては、NRASにおける変異はG12変異である。ある実施形態に
おいては、NRASにおける変異はG12A変異である。ある実施形態においては、NR
ASにおける変異はG12C変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変
異はG12D変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異はG12R変
異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異はG12S変異である。ある
実施形態においては、NRASにおける変異はG12Vの変異である。ある実施形態にお
いては、NRASにおける変異はG13変異である。ある実施形態においては、NRAS
における変異はG13C変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異は
G13D変異である。ある実施形態においては、NRASにおける変異はG13R変異で
ある。ある実施形態においては、NRASにおける変異はG13V変異である。ある実施
形態においては、NRASにおける変異はS17変異である。ある実施形態においては、
NRASにおける変異はS17N変異である。
【0234】
突然変異荷重
本明細書中で用いる「突然変異荷重」または「突然変異負荷」なる語は、遺伝子の所定
セット(例えば、遺伝子の所定セットのコード領域)における予め選択された単位当たり
(例えば、メガベース当たり)の変異(例えば、1以上の変異、例えば、1以上の体細胞
変異)のレベル、例えば数を意味する。突然変異荷重は、例えば全ゲノムまたはエクソー
ムに基づいて、あるいはゲノムまたはエクソームのサブセットに基づいて測定されうる。
ある実施形態においては、ゲノムまたはエクソームのサブセットに基づいて測定された突
然変異荷重を外挿して、全ゲノムまたはエクソームの突然変異荷重を決定することが可能
である。
【0235】
ある実施形態においては、突然変異荷重は、対象、例えば本明細書に記載されている対
象からのサンプル、例えば腫瘍サンプル(例えば、メラノーマサンプル、またはメラノー
マから得られた若しくはメラノーマに由来するサンプル)において測定される。ある実施
形態においては、突然変異荷重は、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の数、または
(iv)CからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全てを決定することにより測定される。
【0236】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベルは突然変異加重(例えば、全ゲノムまたはエクソーム突然変異荷重)と相関す
る。ある実施形態においては、NF1遺伝子における体細胞変異の存在は突然変異加重(
例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルに基づい
て測定された突然変異荷重、あるいは全ゲノムまたはエクソーム突然変異荷重)と相関す
る。ある実施形態においては、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数は突然変異加重
(例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルに基づ
いて測定された突然変異荷重、あるいは全ゲノムまたはエクソーム突然変異荷重)と相関
する。ある実施形態においては、CからTへの変化の数は突然変異加重(例えば、表1に
記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルに基づいて測定された突
然変異荷重、あるいは全ゲノムまたはエクソーム突然変異荷重)と相関する。
【0237】
「突然変異荷重」および「突然変異負荷」なる語は本明細書において互換的に用いられ
る。腫瘍の文脈においては、突然変異荷重は本明細書においては「腫瘍突然変異荷重」、
「腫瘍突然変異負荷」または「TMB」とも称される。
【0238】
癌に関連した典型的な遺伝子
本明細書に記載されている本発明は、癌に関連した遺伝子の所定セット(例えば、本明
細書に開示されているもの)における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)のレベ
ルを決定することにより、突然変異荷重を測定することを含む。
【0239】
ある実施形態においては、表1に記載されている遺伝子または遺伝子産物における体細
胞変異のレベルを決定する。ある実施形態においては、表1に示されている遺伝子のコー
ド領域における体細胞変異のレベルを決定する。
【表3】
【0240】
ニューロフィブロミン1(NF1)
本明細書に記載されている本発明は、例えば、NF1遺伝子における変異(例えば、体
細胞変異)の存在を決定すること、または例えばNF1遺伝子における変異(例えば、体
細胞変異)の存在を決定することにより、突然変異荷重を測定することを含む。
【0241】
WSS、NFNSまたはVRNFとしても公知であるニューロフィブロミン1(NF1
)遺伝子は、Rasシグナル伝達経路の負の調節因子として機能するタンパク質をコード
している。この遺伝子における突然変異は、例えば、神経線維腫症1型、若年性骨髄単球
性白血病およびワトソン症候群に関連づけられている。この遺伝子のmRNAは、早すぎ
る翻訳終結をもたらすRNA編集(CGA>UGA->Arg1306Term)に付さ
れる。あるいは、異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写
変異体もこの遺伝子に関して記載されている。
【0242】
ヒトNF1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は例えば以下のものに記載されている:
Wallaceら,Science.1990;249:181-186,Erratu
m:Wallaceら,Science.1990;250:1749-1749(アイ
ソフォーム1);Marchukら,Genomics.1991;11:931-94
0(アイソフォーム1);Cawthonら,Cell.1990;62:193-20
1(アイソフォーム1);Bernardsら,DNA Cell Biol.1992
;11:727-734(アイソフォーム1および2);Liら,Genomics.1
995;25:9-18(アイソフォーム1および2);Nishiら,Oncogen
e.1991;6:1555-1559(アイソフォーム1および2);Anderse
nら,Mol.Cell.Biol.1993;13:487-495(アイソフォーム
2);Suzukiら,Biochem.Biophys.Res.Commun.19
91;181:955-961(アイソフォーム2);Suzukiら,Biochem
.Biophys.Res.Commun.1992;187:984-990(アイソ
フォーム3);Martinら,Cell.1990;63:843-849(アイソフ
ォーム4);Suzukiら,Tohoku J.Exp.Med.1995;175:
225-233(アイソフォーム5);およびXuら,Cell.1990;62:59
9-608(アイソフォーム1および6)。
【0243】
ヒトNF1の追加的な変異体、突然変異および多型は例えば以下のものにも記載されて
いる:Upadhyayaら,Hum.Mutat.1994;4:83-101;Sh
enら,J.Med.Genet.1996;33:2-17;Liら,Cell.19
92;69:275-281(変異体Glu-1444);Upadhyayaら,Hu
m.Mol.Genet.1992;1:735-740(変異体NF1 Met-21
64およびAsn-2192);Tassabehjiら,Am.J.Hum.Gene
t.1993;53:90-95(変異体Gly-His-Glu-Gln-Gln-L
ys-Leu-Pro-Ala-Ala-Thr-Leu-Ala-Leu-1733
ins);Shenら,Hum.Mol.Genet.1993;2:1861-186
4(変異体Met-991 del);Purandareら,Hum.Mol.Gen
et.1994;3:1109-1115(変異体NF1 Asp-1166およびAr
g-1440);Abernathyら,Hum.Mutat.1994;3:347-
352(変異体NF1 2387-Asn-Phe-2388 del);Upadhy
ayaら,J.Med.Genet.1995;32:706-710(変異体NF1
Ala-2631);Gaspariniら,Hum.Genet.1996;97:4
92-495(変異体NF1 Arg-629);Wuら,Hum.Mutat.199
6;8:51-56(変異体NF1 Arg-1035);Upadhyayaら,Hu
m.Genet.1997;99:88-92(変異体NF1 Ser-1412;Gl
n-1440;Glu-1444およびGly-1489);Maynardら,Hum
.Genet.1997;99:674-676(変異体NF1 Arg-844および
Pro-898);Hudsonら,Hum.Mutat.1997;9:366-36
7(変異体NF1 Arg-1952);Upadhyayaら,Hum.Mutat.
1997;10:248-250(変異体NF1 GLY-338およびTRP-161
1);Kloseら,Hum.Mol.Genet.1998;7:1261-1268
(変異体NF1 Pro-1276);Krkljusら,Hum.Mutat.199
8;11:411-411(変異体NF1 Gly-1204,変異体His-765)
;Messiaenら,Genet.Med.1999;1:248-253(変異体N
F1 Pro-508);Petersら,Hum.Mutat.1999;13:33
7-337(変異体NF1 Pro-1446);Fahsoldら,Am.J.Hum
.Genet.2000;66:790-818(変異体NF1 Pro-216;Pr
o-357;Cys-491;Pro-549;Thr-581;Arg-583;Ph
e-665;Pro-695;Pro-763;Ser-777;Lys-780;Pr
o-781;Pro-847;Ser-1156;Pro-1250;Gln-1276
;Pro-1276;Pro-1446;Val-1605およびIle-2507,変
異体Glu-176);Arsら,Hum.Mol.Genet.2000;9:237
-247(変異体NF1 Ser-117;Trp-1204;Pro-1446および
2387-Asn-Phe-2388 del),Erratum Arsら,Hum.
Mol.Genet.2000;9:659-659;Boulandetら,Hum.
Mutat.2000;16:274-275(変異体NF1 Phe-844);Ka
ufmannら,Am.J.Hum.Genet.2001;69:1395-1400
(変異体spinal FSNF Pro-2088);Hanら,Hum.Genet
.2001;109:487-497(変異体NF1 Lys-780;Cys-784
;Pro-1147;Cys-1193;Arg-1444;Ser-1785;Asn
-2012およびLys-2357);Kluweら,Hum.Mutat.2002;
19:309-309(変異体NF1 Phe-82;Arg-784およびGlu-1
444);Baralleら,Am.J.Med.Genet.A 2003;119:
1-8(変異体NFNS Glu-1459 del);Wangら,Hum.Gene
t.2003;112:117-123(変異体NF1 Tyr-93;Val-604
;Arg-844およびPro-898,変異体Asp-74;Glu-176;Arg
-712およびGln-1276);De Lucaら,Hum.Mutat.2003
;21:171-172(変異体NF1 Lys-780;Pro-847;Glu-8
48およびArg-968;Asn-1444;Leu-1953 delおよびArg
-2001);Kluweら,J.Med.Genet.2003;40:368-37
1(変異体NF1 Arg-578;Pro-920およびAla-2221);Zat
kovaら,Hum.Mutat.24:491-501(変異体NF1 Val-18
6,変異体NF1 Val-186の特徴づけ);De Lucaら,Hum.Muta
t.2004;23:629-629(変異体NF1 Asn-157;Arg-629
;Ser-777;Lys-780;Arg-784;Pro-847;Glu-848
;Arg-968;Asn-1444;Leu-1953 delおよびArg-200
1,変異体Glu-176);Mattocksら,J.Med.Genet.2004
;41:E48-E48(変異体NF1 Arg-31;Pro-145;Arg-32
4;Val-337;Cys-489;Pro-532;Arg-574;Arg-62
9;Phe-665;Phe-844;Pro-844;Met-991 del;Va
l-1073;Arg-1196;Gly-1276;Gln-1276;Glu-14
30;Glu-1459 delおよびGly-1489,変異体Glu-176および
Cys-873);Fernerら,J.Med.Genet.2004;41:837
-841(変異体NF1 Pro-1243);Bertolaら,Am.J.Med.
Genet.A 2005;136:242-245(変異体NF1 Arg-844)
;De Lucaら,Am.J.Hum.Genet.2005;77:1092-11
01(変異体NFNS Arg-194;Glu-1444;Thr-1451;Leu
-1453およびGlu-1459 del);Sjoeblomら,Science.
2006;314:268-274(変異体Ile-1187;Leu-1951および
Arg-2745);Upadhyayaら,Am.J.Hum.Genet.2007
;80:140-151(変異体NF1 Met-991 del);Nystromら
,Clin.Genet.76:524-534(変異体NFNS Phe-1411)
;Pontiら,Hered.Cancer Clin.Pract.2011;9:6
-6(変異体NF1 Thr-160);Thomasら,Eur.J.Hum.Gen
et.2012;20:411-419(変異体Glu-176;Thr-330;As
p-393;Leu-393;Pro-519;Thr-776およびPhe-1484
);Nemethovaら,Ann.Hum.Genet.2013;77:364-3
79(変異体Nf1 Trp-93;Arg-1048;Arg-1189;Arg-1
661(アイソフォーム1)およびThr-1918(アイソフォーム1);ならびにB
en-Salemら,Childs Nerv.Syst.2014;30:1183-
1189(変異体NF1 Pro-2125)。
【0244】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1B(LRP1B)
本明細書に記載されている本発明は、例えば、LRP1B遺伝子における変異(例えば
、体細胞変異)の数を決定すること、または例えばLRP1B遺伝子における変異(例え
ば、体細胞変異)の存在を決定することにより、突然変異荷重を測定することを含む。
【0245】
LRP-DIT、LRP-1BまたはLRPDITとしても公知である低密度リポタン
パク質受容体関連タンパク質1B(LRP1B)遺伝子は低密度リポタンパク質(LDL
)受容体遺伝子ファミリーに属する。これらの受容体は、複数のリガンドとの相互作用ゆ
えに、正常な細胞の機能および発達において多種多様な役割を果たす。
【0246】
ヒトLRP1Bのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、例えば、Liuら,Cance
r Res.2000;60:1961-1967;Lieら,Genomics 20
00;69:271-274に記載されている。
【0247】
対象の評価
対象、例えば患者は、本明細書に記載されている療法、例えば癌免疫療法、例えばPD
-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答状態に関して評価されうる
。例えば、該評価は、癌、例えば本明細書に記載されている癌における突然変異荷重、お
よび/または変異、例えば本明細書に記載されている変異もしくは本明細書に記載されて
いる遺伝子における変異の存在を決定することを含みうる。患者は、例えば、患者からの
腫瘍サンプルにおける突然変異荷重の知見を得ることにより評価されうる。代替的または
追加的に、患者は、例えばNGS法により、例えば患者のゲノム配列を決定することによ
り評価されうる。代替的または追加的に、患者の評価は、例えば突然変異核酸(例えば、
DNAまたはRNA)を例えばサザンブロット、ノーザンブロットまたはRT-PCR、
例えばqRT-PCRにより検出するためのアッセイにより、患者における突然変異の存
在に関して直接的にアッセイすることを含みうる。代替的または追加的に、患者は、例え
ば免疫組織化学、ウエスタンブロット、免疫沈降または免疫磁気ビーズアッセイによりタ
ンパク質突然変異の存在に関して評価されうる。
【0248】
1つの態様においては、臨床試験の結果、例えば成功した又は不成功に終った臨床試験
の結果は、例えば患者集団の一部において、癌を治療するための物質を特定するために再
利用されうる。1つの典型的な方法により、臨床試験において使用された候補物質を再評
価して、該試験における物質が、特定のレベルの突然変異荷重を有する又は特定の突然変
異を含有する腫瘍を治療するのに有効であるかどうかを決定することが可能である。例え
ば、免疫チェックポイントモジュレータのような物質に関する臨床試験に参加した対象が
特定されうる。症状、例えば癌(例えばメラノーマ)の症状の改善、例えば腫瘍サイズの
減少または腫瘍成長速度の減少を示した患者が突然変異荷重および/または突然変異の存
在に関して評価されうる。癌の症状の改善を示さなかった患者も突然変異荷重および/ま
たは突然変異の存在に関して評価されうる。1つの実施形態においては、腫瘍サンプルに
おける所定レベルの突然変異荷重を有する患者が、そのような所定レベルの突然変異荷重
を有さない患者よりも、試験物質に応答する可能性が高かったことが判明している場合に
は、該物質は、所定レベルの突然変異荷重を有する患者のための適切な治療選択肢である
と決定される。もう1つの実施形態においては、突然変異を含有する患者が、そのような
突然変異を含有していなかった患者よりも、試験物質に応答する可能性が高かったことが
判明している場合には、該物質は、該突然変異を含有する患者のための適切な治療選択肢
であると決定される。
【0249】
患者の「再評価」は、例えば、対象からの腫瘍サンプル、例えばメラノーマサンプルに
おける突然変異荷重の知見を得ることを含みうる。代替的または追加的に、患者の再評価
は、例えばNGS法により、患者または臨床試験患者の一部のゲノム配列を決定すること
を含みうる。代替的または追加的に、患者の再評価は、例えば突然変異核酸(例えば、R
NA)を例えばRT-PCR、例えばqRT-PCRにより検出するためのアッセイによ
り、患者における突然変異の存在に関して直接的にアッセイすることを含みうる。代替的
または追加的に、患者は、例えば免疫組織化学、ウエスタンブロット、免疫沈降または免
疫磁気ビーズアッセイによりタンパク質突然変異の存在に関して再評価されうる。
【0250】
核酸およびポリペプチドの検出方法
変異遺伝子、突然変異および/または遺伝子産物を評価するための方法は当業者に公知
である。1つの実施形態においては、変異(例えば、突然変異)は、核酸ハイブリダイゼ
ーションアッセイ、PCRの選択的抑制(SSP)、HPLCまたは質量分析遺伝子型判
定の1以上から選択される方法により、核酸分子において検出される。
【0251】
使用されうる追加的な典型的な方法には、伝統的な「直接プローブ」法、例えばサザン
ブロット、および「比較プローブ」法、例えば比較ゲノムハイブリダイゼーション(CG
H)、例えばcDNAに基づく又はオリゴヌクレオチドに基づくCGHが含まれる。該方
法は、基体(例えば、膜またはガラス)結合法またはアレイに基づくアプローチ(これら
に限定されるものではない)を含む多種多様な形態で使用されうる。
【0252】
ある実施形態においては、該評価方法は、本明細書に記載されている変異に対するプロ
ーブ/プライマーを含む。
【0253】
1つの実施形態においては、プローブ/プライマーは、突然変異またはそのレシプロカ
ル(reciprocal;相互体)を検出するように設計されうる。これらのプローブ
/プライマーは例えばPCR増幅に適している。染色体の種々の部分に存在するDNA塩
基配列に実質的に相補的であるDNAセグメントを含有するプローブが使用される。本発
明において有用なプローブ、ならびにサンプルへのプローブのハイブリダイゼーションお
よびプローブの例は、Vysis,Inc.の2つの米国特許、Bittnerらの米国
特許第5,491,224号および第6,277,569号に記載されている。
【0254】
染色体プローブは、典型的には、約50~約10ヌクレオチド長である。より長いプ
ローブは、典型的には、約100~約500ヌクレオチド長の、より小さい断片を含む。
セントロメアDNAおよび遺伝子座特異的DNAにハイブリダイズするプローブは、例え
ば、Vysis,Inc.(Downers Grove,Ill.)、Molecul
ar Probes,Inc.(Eugene,Oreg.)またはCytocell(
Oxfordshire,UK)から商業的に入手可能である。あるいは、プローブは標
準的な技術により染色体またはゲノムDNAからから非商業的に作製されうる。例えば、
使用されうるDNAの起源には、ゲノムDNA、クローン化DNA配列、1つの染色体(
例えば、ヒト染色体)または1つの染色体の一部を宿主の正常染色体組と共に含有する体
細胞ハイブリッド、およびフローサイトメトリーまたは顕微解剖により精製された染色体
が含まれる。関心のある領域は、クローニングにより、またはポリメラーゼ連鎖反応(P
CR)を介した部位特異的増幅により単離されうる。例えば、NathおよびJohns
on,Biotechnic Histochem.,1998,73(1):6-22
、Wheelessら,Cytometry 1994,17:319-326および米
国特許第5,491,224号を参照されたい。
【0255】
使用されるプローブは染色体の特定の領域にハイブリダイズして、細胞遺伝学的異常が
この領域に存在するのかどうかを決定する。細胞遺伝学的異常の1つのタイプは欠失であ
る。欠失は1以上の染色体全体のものでありうるが、欠失は、通常、1以上の染色体の一
部の喪失を含む。プローブ内に含有される染色体の領域全体が細胞から欠失している場合
、該細胞からのDNAへのそのプローブのハイブリダイゼーションは通常起こらず、その
染色体上にシグナルは存在しない。プローブ内に部分的に含有される染色体の領域が細胞
から欠失している場合、該細胞からのDNAへのそのプローブのハイブリダイゼーション
は依然として生じうるが、シグナルの存在はより少なくなりうる。例えば、プローブが検
出しようとする遺伝子異常を含有しない対照細胞からのDNAへのプローブハイブリダイ
ゼーションと、シグナルの喪失を比較する。幾つかの実施形態においては、少なくとも1
、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、12
0、130、140、150、160、170、180、190、200個またはそれ以
上の細胞を細胞遺伝学的異常の存在に関して計数する。
【0256】
検出される細胞遺伝学的異常には、非相互転座、平衡転座、染色体内逆位、点突然変異
、欠失、遺伝子コピー数の変化、遺伝子発現レベルの変化および生殖系列突然変異が含ま
れうるが、これらに限定されるものではない。特に、1つのタイプの細胞遺伝学的異常は
重複である。重複は染色体全体、または染色体全体よりも小さい領域のものでありうる。
プローブ内に含有される染色体の領域が細胞において重複している場合、該細胞からのD
NAへのそのプローブのハイブリダイゼーションは通常、該プローブ内に含有される染色
体領域の異常を含有しない対照細胞に存在するシグナルの数と比べて少なくとも1つの追
加的なシグナルを生成する。
【0257】
染色体プローブは、それらがハイブリダイズする染色体領域が検出されうるように標識
される。プローブは、典型的には、より低い波長/より高いエネルギーの光を吸収した後
に蛍光を発する有機分子である発蛍光団で直接的に標識される。発蛍光団は、二次検出分
子の非存在下でプローブが視覚化されることを可能にする。発蛍光団をヌクレオチドに共
有結合させた後、該ヌクレオチドは、ニックトランスレーション、ランダムプライミング
およびPCR標識のような標準的な技術を用いて、プローブ内に直接的に組み込まれうる
。あるいは、プローブ内のデオキシシチジンヌクレオチドがリンカーでアミノ基転移され
うる。ついでアミノ基転移デオキシシチジンヌクレオチドに発蛍光団が共有結合される。
米国特許第5,491,224号を参照されたい。
【0258】
米国特許第5,491,224号は、蛍光標識が共有結合している幾つかのシトシン残
基としてのプローブ標識を記載している。蛍光標識されたシトシン塩基の数は、検出可能
な蛍光シグナルを生成するのに十分である一方で、そのように標識された個々のDNAセ
グメントは、検出されるべき染色体または染色体領域に対する特異的相補的結合(ハイブ
リダイズ)特性を本質的に保有する。未標識DNAプローブセグメントを採取し、該セグ
メントにおける幾つかのデオキシシチジンヌクレオチドを連結基でアミノ基転移させ、ま
たはアミノ基転移塩基の少なくとも一部に蛍光標識を共有結合させることにより、そのよ
うなプローブが作製される。
【0259】
プローブは、ニックトランスレーション、ランダムプライマー標識またはPCR標識に
よっても標識されうる。標識は、蛍光(直接的)またはハプテン(間接的)標識ヌクレオ
チドのいずれかを使用して行われる。標識の代表的な非限定的な例には、AMCA-6-
dUTP、カスケードブルー-4-dUTP、フルオレセイン-12-dUTP、ローダ
ミン-6-dUTP、テキサスレッド-6-dUTP、Cy3-6-dUTP、Cy5-
dUTP、ビオチン(BIO)-11-dUTP、ジゴキシゲニン(DIG)-11-d
UTPまたはジニトロフェニル(DNP)-11-dUTPが含まれる。
【0260】
プローブはまた、ビオチンまたはジゴキシゲニンで間接的に標識されること、または放
射性同位体、例えば32PおよびHで標識されることが可能であるが、プローブを視覚
化するために二次検出分子または更なる処理が必要である。例えば、ビオチンで標識され
たプローブは、検出可能なマーカーに結合したアビジンにより検出されうる。例えば、ア
ビジンは、酵素マーカー、例えばアルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダ
ーゼに結合されうる。酵素マーカーは、酵素のための基質および/または触媒を使用して
、標準的な比色反応において検出されうる。アルカリホスファターゼのための触媒には、
5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファートおよびニトロブルーテトラゾリウ
ムが含まれる。ジアミノベンゾアートは西洋ワサビペルオキシダーゼのための触媒として
使用されうる。
【0261】
ハイブリダイゼーションの前または途中には蛍光標識または他の標識がDNAの一部で
はなく、ハイブリダイゼーション後に、染色体にハイブリダイズしたプローブを検出する
ために蛍光標識または他の標識を加えるように、プローブを調製することも可能である。
例えば、DNA内に組み込まれた抗原分子を有するプローブが使用されうる。ハイブリダ
イゼーション後、これらの抗原分子は、抗原分子と反応する特異的抗体を使用して検出さ
れる。そのような抗体は、それ自体が蛍光色素を含むことが可能であり、あるいは、結合
蛍光色素を有する第2の抗体を使用して検出されうる。
【0262】
どのように処理または修飾されたとしても、プローブDNAは、ハイブリダイゼーショ
ンにおける使用の前に未反応の残留産物(例えば、DNA内に取り込まれていない蛍光色
素分子)を除去するために一般に精製される。
【0263】
ハイブリダイゼーションの前に、当技術分野でよく知られた方法に従い染色体プローブ
を変性させる。プローブはハイブリダイズ条件下で染色体DNAにハイブリダイズまたは
アニーリングされうる。「ハイブリダイズ条件」は、プローブと標的染色体DNAとの間
のアニーリングを促進する条件である。種々のプローブのアニーリングはプローブの長さ
、塩基濃度などに応じて変動するため、プローブ濃度、ハイブリダイゼーション温度、塩
濃度および当技術分野でよく知られた他の因子を変動させることによりアニーリングが促
進される。
【0264】
ハイブリダイゼーション条件は、プローブの濃度、塩基組成、複雑性および長さ、なら
びに塩濃度、温度およびインキュベーションの長さを変動させることによって促進される
。例えば、in situハイブリダイゼーションは、典型的には、1~2×SSC、5
0~65%ホルムアミドおよびブロッキングDNA(非特異的ハイブリダイゼーションを
抑制するためのもの)を含有するハイブリダイゼーションバッファー中で行われる。一般
に、前記のハイブリダイゼーション条件は約25℃~約55℃の温度および約0.5時間
~約96時間のインキュベーション時間を含む。
【0265】
標的領域外のDNAへの染色体プローブの非特異的結合は一連の洗浄により除去されう
る。各洗浄における温度および塩濃度は、洗浄のストリンジェンシーを制御するために変
動される。例えば、高ストリンジェンシー条件の場合には、約65℃~約80℃で、0.
2×~約2×SSC、および約0.1%~約1%の非イオン性界面活性剤、例えばNon
idet P-40(NP40)を使用して、洗浄を行うことが可能である。ストリンジ
ェンシーは、洗浄液の温度を低下させることにより、または洗浄液中の塩濃度を増加させ
ることにより低下しうる。幾つかの用途においては、反復配列のハイブリダイゼーション
能力を阻止することが必要である。したがって、幾つかの実施形態においては、非特異的
ハイブリダイゼーションを阻止するために、tRNA、ヒトゲノムDNAまたはCot-
1 DNAを使用する。洗浄後、スライドを排液および空気乾燥させ、ついでマウント媒
体、対比染色液、例えばDAPIおよびカバースリップをスライドに適用する。スライド
は直ちに観察可能であり、あるいは検査前に-20℃で保存されうる。
【0266】
CGH法においては、核酸の第1集合体(例えば、サンプル、例えば、可能性のある腫
瘍からのもの)を第1標識で標識し、核酸の第2集合体(例えば、対照、例えば、健常細
胞/組織)を第2標識で標識する。核酸のハイブリダイゼーションの比は、アレイにおけ
る各繊維に結合する2つの(第1および第2)標識の比により決定される。染色体の欠失
または多重性が存在する場合、それらの2つの標識からのシグナルの比の差が検出され、
該比はコピー数の尺度となる。アレイに基づくCGHは単色標識でも行われうる(一方、
対照および可能性のある腫瘍サンプルを2つの異なる色素で標識し、ハイブリダイゼーシ
ョンの前にそれらを混合すると、アレイ上のプローブの競合的ハイブリダイゼーションに
よる比が生じる)。単色CGHにおいては、対照を標識し、1つのアレイにハイブリダイ
ズさせ、絶対的シグナルを読取り、可能性のある腫瘍サンプルを標識し、第2のアレイ(
同一含有物)にハイブリダイズさせ、絶対的シグナルを読取る。それらの2つのアレイか
らの絶対的シグナルに基づき、コピー数の差を計算する。
【0267】
本発明において注目される方法での使用に適したハイブリダイゼーション法は、例えば
、Albertson(1984)EMBO J.3:1227-1234;Pinke
l(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:9138-91
42;EPO公開番号430,402;Methods in Molecular B
iology,Vol.33:In situ Hybridization Prot
ocols,Choo編,Humana Press,Totowa,N.J.(199
4)などに記載されている。1つの実施形態においては、Pinkelら(1998)N
ature Genetics 20:207-211、またはKallioniemi
(1992)Proc.Natl Acad Sci USA 89:5321-532
5(1992)のハイブリダイゼーション法が用いられる。アレイに基づくCGHは米国
特許第6,455,258号(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)
に記載されている。
【0268】
更にもう1つの実施形態においては、増幅に基づくアッセイを用いて、存在/非存在お
よびコピー数が測定されうる。そのような増幅に基づくアッセイにおいては、核酸配列は
、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))における鋳型として働く。定量
的増幅においては、増幅産物の量は元のサンプルにおける鋳型の量に比例する。適切な対
照、例えば健常組織との比較はコピー数の尺度をもたらす。
【0269】
「定量的」増幅の方法は当業者によく知られている。例えば、定量的PCRは、同じプ
ライマーを使用して既知量の対照配列を同時に共増幅することを含む。これは、PCR反
応を較正するために使用されうる内部標準をもたらす。定量的PCRのための詳細なプロ
トコールは、Innisら(1990)PCR Protocols,A Guide
to Methods and Applications,Academic Pre
ss,Inc.N.Y.に記載されている。定量的PCR分析を用いたマイクロサテライ
ト遺伝子座におけるDNAコピー数の測定はGinzongerら(2000)Canc
er Research 60:5405-5409に記載されている。遺伝子のいずれ
かの部分を増幅するためのプライマーを当業者が常套的に選択することが可能になるため
には、遺伝子の既知核酸配列で十分である。蛍光発生定量PCRも用いられうる。蛍光発
生定量PCRにおいては、定量は蛍光シグナル、例えばTaqManおよびsybrグリ
ーンの量に基づく。
【0270】
他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace(
1989)Genomics 4:560、Landegrenら(1988)Scie
nce 241:1077、ならびにBarringerら(1990)Gene 89
:117を参照されたい)、転写増幅(Kwohら(1989)Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 86:1173)、自家持続配列複製法(Guatelliら
(1990)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87:1874)、ドット
PCRおよびリンカーアダプターPCRなどが含まれるが、これらに限定されるものでは
ない。
【0271】
核酸サンプル
種々の組織サンプルが、本方法において使用される核酸サンプルの起源となりうる。ゲ
ノムまたはサブゲノムDNA断片は対象のサンプル(例えば、腫瘍サンプル、正常隣接組
織(NAT)、血液サンプルまたは任意の正常対照)から単離されうる。ある実施形態に
おいては、組織サンプルは、凍結サンプルとして、またはホルムアルデヒドまたはパラホ
ルムアルデヒド固定パラフィン包埋(FFPE)組織調製物として保存される。例えば、
サンプルはマトリックス内に包埋されうる(例えば、FFPEブロックまたは凍結サンプ
ル)。単離工程は個々の染色体のフローソーティング、および/または対象のサンプル(
例えば、腫瘍サンプル、NAT、血液サンプル)の顕微解剖が含まれうる。ある実施形態
においては、サンプルは循環腫瘍DNA(ctDNA)を含む。
【0272】
組織サンプルからのDNAの単離、断片化および処理のためのプロトコールは、例えば
、WO 2012/092426(発明の名称“Optimization of Mu
ltigene Analysis of Tumor Samples”)(その全体
を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、当技術分野で
公知である。ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド固定パラフィン包埋(FFP
E)組織から核酸(例えば、DNA)を単離する追加的方法は、例えば、Cronin
M.ら(2004)Am J Pathol.164(1):35-42;Masuda
N.ら(1999)Nucleic Acids Res.27(22):4436-
4443;Specht K.ら(2001)Am J Pathol.158(2):
419-429;Ambion RecoverAll(商標)Total Nucle
ic Acid Isolation Protocol(Ambionカタログ番号A
M1975,2008年9月);およびQIAamp(登録商標)DNA FFPE組織
ハンドブック(Tissue Handbook)(Qiagenカタログ番号3762
5,2007年10月)に開示されている。RecoverAll(商標)全核酸単離キ
ット(Total Nucleic Acid Isolation Kit)は、パラ
フィン包埋サンプルを可溶化するための高温のキシレン、および核酸を捕捉するためのガ
ラス繊維フィルターを使用する。QIAamp(登録商標)DNA FFPE組織キット
(Tissue Kit)はゲノムDNAおよびミトコンドリアDNAの精製のためのQ
IAamp(登録商標)DNAマイクロテクノロジー(Micro technolog
y)を用いる。
【0273】
ベイトの設計
ベイト(bait)は、標的核酸にハイブリダイズ可能である(例えば、相補的であり
うる)ことにより標的核酸の捕捉を可能にする核酸分子、例えばDNAまたはRNA分子
でありうる。1つの実施形態においては、ベイトはRNA分子である。他の実施形態にお
いては、ベイトは、ベイトにハイブリダイズした核酸とベイトとにより形成されるハイブ
リッドの捕捉および分離を、例えば結合体への結合により可能にする結合体、例えばアフ
ィニティタグを含む。1つの実施形態においては、ベイトは溶液相ハイブリダイゼーショ
ンに適している。
【0274】
ベイトは、US 2010/0029498、Gnirke,A.ら(2009)Na
t Biotechnol.27(2):182-189およびWO 2012/092
426(発明の名称“Optimization of Multigene Anal
ysis of Tumor Samples”)(これらのそれぞれを参照により本明
細書に組み入れることとする)に記載されている方法およびハイブリダイゼーション条件
により製造され、使用されうる。
【0275】
配列決定(シーケンシング)
本発明は核酸の配列決定方法も含む。1つの実施形態においては、当技術分野で公知の
種々の配列決定反応のいずれかを用いて、突然変異の少なくとも一部を直接的に配列決定
することが可能である。1つの実施形態においては、突然変異配列を対応基準(対照)配
列と比較する。
【0276】
1つの実施形態においては、本明細書に記載されている変異を含む核酸分子の配列は、
以下の1以上を含む方法により決定される:オリゴヌクレオチド、例えば、本明細書に記
載されている1つの突然変異に関する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを該核酸分子
にハイブリダイズさせること;該対立遺伝子の突然変異を含む領域を増幅するプライマー
またはプライマーセット(例えば、プライマーペア)をハイブリダイズさせること;該対
立遺伝子の突然変異を含む領域を増幅する、例えば特異的に増幅すること;該対立遺伝子
の突然変異を含む核酸の一端にアダプターオリゴヌクレオチドを結合させること;該突然
変異の存在に特異的な光学的シグナル、例えば比色シグナルを生成させること;該突然変
異を含む核酸を、第2の核酸、例えば、基体に結合した第2の核酸にハイブリダイズさせ
ること;該突然変異の存在に特異的なシグナル、例えば、電気または蛍光シグナルを生成
させること;および該突然変異を含有する核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド
内にヌクレオチドを組み込むこと。
【0277】
もう1つの実施形態においては、該配列は、以下の1以上を含む方法により決定される
:個々の核酸分子からのヌクレオチド配列を決定すること(例えば、複数のクローン増殖
分子からのシグナルの合計からではなく、例えば、該配列に対応するシグナルが単一分子
に由来する場合);個々の核酸分子に関するクローン増殖プロキシのヌクレオチド配列を
決定すること;大規模並列ショートリード配列決定;鋳型に基づく配列決定;ピロシーケ
ンシング;DNA合成中の色素標識ヌクレオチドの連続的取り込みをイメージングするこ
とを含むリアルタイム配列決定;ナノポア配列決定;ハイブリダイゼーションによる配列
決定;ナノトランジスタアレイに基づく配列決定;ポロニー(polony)配列決定;
走査トンネル顕微鏡(STM)に基づく配列決定;またはナノワイヤ-分子センサーに基
づく配列決定。
【0278】
当技術分野で公知の任意の配列決定方法が用いられうる。典型的な配列決定反応には、
MaxamおよびGilbert(Proc.Natl Acad Sci USA(1
977)74:560)またはSanger(Sangerら(1977)Proc.N
at.Acad.Sci 74:5463)により開発された技術に基づくものが含まれ
る。アッセイを行う際には(Biotechniques(1995)19:448)、
質量分析による配列決定を含む種々の自動化配列決定法が用いられうる(例えば、米国特
許第5,547,835号および国際特許出願公開番号WO 94/16101(H.K
osterによる、発明の名称:DNA Sequencing by Mass Sp
ectrometry);米国特許第5,547,835号および国際特許出願公開番号
WO 94/21822(H.Kosterによる、発明の名称:DNA Sequen
cing by Mass Spectrometry Via Exonucleas
e Degradation);ならびに米国特許出願第5,605,798号および国
際特許出願番号PCT/US96/03651(H.Kosterによる、発明の名称:
DNA Diagnostics Based on Mass Spectromet
ry);Cohenら(1996)Adv Chromatogr 36:127-16
2;ならびにGriffinら(1993)Appl Biochem Biotech
nol 38:147-159を参照されたい)。
【0279】
核酸分子の配列決定は、次世代シーケンシング(NGS)(次世代配列決定)を用いる
ことによっても行われうる。次世代シーケンシングは、個々の核酸分子(例えば、単一分
子配列決定におけるもの)または個々の核酸分子のクローン増殖プロキシのヌクレオチド
配列を高並列様態(例えば、10個を超える分子が同時に配列決定される)で決定する
任意の配列決定方法を含む。1つの実施形態においては、ライブラリーにおける核酸種の
相対存在量は、配列決定実験により得られたデータにおけるそれらの同族(コグネイト)
配列の存在の相対数を計数することにより推定されうる。次世代シーケンシング方法は当
技術分野で公知であり、例えばMetzker,M.(2010)Nature Bio
technology Reviews 11:31-46(これを参照により本明細書
に組み入れることとする)に記載されている。
【0280】
1つの実施形態においては、次世代シーケンシングは個々の核酸分子のヌクレオチド配
列の決定を可能にする(例えば、Helicos BioSciencesのHeliS
cope Gene SequencingシステムおよびPacific Biosc
iencesのPacBio RSシステム)。他の実施形態においては、該配列決定方
法は個々の核酸分子に関するクローン増殖プロキシのヌクレオチド配列を決定する(例え
ば、Solexaシーケンサー,Illumina Inc.,San Diego,C
alif;454 Life Sciences(Branford,Conn.)およ
びIon Torrent)。例えば、大規模並列ショートリード配列決定(例えば、S
olexaシーケンサー,Illumina Inc.,San Diego,Cali
f.)は、より少数の且つより長いリードを生成する他の配列決定法より多数の配列塩基
を配列決定単位当たりに生成する。次世代シーケンシングのための他の方法または装置に
は、454 Life Sciences(Branford,Conn.)、Appl
ied Biosystems(Foster City,Calif.;SOLiDシ
ーケンサー)およびHelicos BioSciences Corporation
(Cambridge,Mass.)により提供されるシーケンサーが含まれるが、これ
らに限定されるものではない。
【0281】
次世代シーケンシングのためのプラットフォームには、Roche/454のGeno
me Sequencer(GS)FLX System、Illumina/Sole
xaのGenome Analyzer(GA)、Life/APGのSupport
Oligonucleotide Ligation Detection (SOLi
D)システム、PolonatorのG.007システム、Helicos BioSc
iencesのHeliScope Gene Sequencingシステム、および
Pacific BiosciencesのPacBio RSシステムが含まれるが、
これらに限定されるものではない。NGS技術には、WO 2012/092426(発
明の名称“Optimization of Multigene Analysis
of Tumor Samples”)(これを参照により本明細書に組み入れることと
する)に記載されている工程、例えば鋳型調製、配列決定およびイメージング、ならびに
データ分析の1以上を含みうる。
【0282】
種々のタイプの変異、例えば体細胞変異および生殖系列突然変異が、本明細書に記載さ
れている方法(例えば、配列決定方法)により検出されうる。ある実施形態においては、
生殖系列突然変異は更に、SGZアルゴリズムを使用する方法により特定される。SGZ
アルゴリズムは、国際出願公開番号WO2014/183078および米国特許出願公開
第2014/0336996号(それらの内容の全体を参照により本明細書に組み入れる
こととする)に記載されている。
【0283】
データ分析
NGSリードが生成された後、それらを既知基準配列に対して整列(アライメント)さ
せ、または新たに構築すること(デノボ・アセンブリー)が可能である。
【0284】
例えば、NGSリードを基準配列(例えば、野生型配列)に整列させることにより、サ
ンプル(例えば、腫瘍サンプル)における一塩基多型および構造変異体のような遺伝子変
異の特定が達成されうる。NGSに関する配列アライメントの方法は、例えば、Trap
nell C.およびSalzberg S.L.,Nature Biotech.,
2009,27:455-457に記載されている。デノボ・アセンブリーの例は、例え
ば、Warren R.ら,Bioinformatics,2007,23:500-
501;Butler J.ら,Genome Res.,2008,18:810-8
20;ならびにZerbino D.R.およびBirney E.,Genome R
es.,2008,18:821-829に記載されている。配列アライメントまたはア
センブリーは、1以上のNGSプラットフォームからのリードデータを使用して、例えば
、Roche/454およびIllumina/Solexaリードデータを混合して、
行われうる。データ分析のためのアルゴリズムおよび方法はWO 2012/09242
6(発明の名称:“Optimization of Multigene Analy
sis of Tumor Samples”)(これを参照により本明細書に組み入れ
ることとする)に記載されている。
【0285】
報告
本明細書に記載されている方法は、患者または別の者もしくは組織機関、例えば介護者
、例えば医師、例えば腫瘍専門医、病院、診療所、第三者支払人、保険会社または官公庁
への報告、例えば、電子的、ウェブベースまたは紙形態の報告を含みうる。該報告は、該
方法からの出力、例えば、療法に対する応答状態の値の特定、突然変異荷重に関する値の
特定、本明細書に記載されている遺伝子における変異の数の特定、および/または本明細
書に記載されている変異の存在もしくは非存在、または野生型配列の表示を含みうる。1
つの実施形態においては、療法に対する応答状態の値、突然変異荷重に関する値、本明細
書に記載されている遺伝子における変異の数、または本明細書に記載されている変異の存
在もしくは非存在を特定する、そして所望により、該値、数または変異含有配列が得られ
た患者の識別子を含む報告を、例えば紙または電子形態で作成する。
【0286】
該報告はまた、癌、例えばメラノーマにおける、本明細書に記載されている変異、また
は野生型配列の役割に関する情報を含みうる。そのような情報は、予後、耐性または可能
な若しくは推奨される治療選択肢、例えば本明細書に記載されている物質、例えば癌治療
(例えば癌免疫療法、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビター)に関する情報を
含みうる。該報告は、治療選択肢の可能な有効性、治療選択肢の許容性、または患者(例
えば、療法に対する応答状態の所定値、突然変異荷重の所定レベル、本明細書に記載され
ている遺伝子における変異の所定数を有する患者)への治療選択肢の適用の適否、あるい
は試験において特定された、そして幾つかの実施形態においては該報告において特定され
ている配列、変異または突然変異に関する情報を含みうる。例えば、該報告は、患者に対
する薬物の投与、例えば、予め選択された投与量または予め選択された治療レジメン(例
えば、他の薬物と組合されたもの)における投与に関する情報または推奨を含みうる。1
つの実施形態においては、該方法において特定された全ての突然変異が該報告において特
定されているわけではない。例えば、該報告は、癌の発生、予後、病期または治療感受性
に対する、例えば予め選択された治療選択肢に対する予め選択されたレベルの相関性を有
する遺伝子における突然変異に限定されうる。該報告は、該方法を実施した組織機関によ
り、サンプルの受領から7、14または21日以内に、本明細書に記載されている組織機
関に送達されうる。
【0287】
もう1つの態様においては、本発明は、サンプル、例えば腫瘍サンプル(例えば、メラ
ノーマサンプル)を対象から得ること、療法に対する応答状態の値を得ること、サンプル
における突然変異荷重を決定すること、遺伝子における変異の数を決定すること、または
サンプルにおける本明細書に記載されている突然変異を検出すること、および療法に対す
る応答状態の値、突然変異荷重に関する値、遺伝子における変異の数または検出された突
然変異に基づいて治療を選択することによる、報告、例えば個別化癌治療報告の作成方法
に関する。1つの実施形態においては、療法に対する応答状態の値、突然変異荷重に関す
る値、遺伝子における変異の数または検出された突然変異に基づいて、選択された治療に
に注釈を付けている、または、2以上の治療選択肢を、例えば好ましい順序で一覧してい
る報告を作成する。もう1つの実施形態においては、対象、例えば患者に更に、選択され
た治療方法を実施する。
【0288】
キット
1つの態様においては、本発明は、例えば、本明細書に記載されている変異、例えば、
本明細書に記載されている遺伝子における変異を有するオリゴヌクレオチドを含有するキ
ットに関する。所望により、キットは、突然変異オリゴヌクレオチドの野生型対応物であ
るオリゴヌクレオチドをも含有しうる。
【0289】
ある実施形態においては、キットは、
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異、または
(iv)CからTへの変化
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬、および
(b)メラノーマサンプルにおける突然変異荷重および/または前記変異の1以上の存
在もしくは非存在の決定における使用説明を含む。
【0290】
幾つかの実施形態においては、キットは更に、PD-1もしくはPD-L1のインヒビ
ターまたはその組成物を含む。幾つかの実施形態においては、キットは更に、対象におけ
るメラノーマの治療における使用説明を含む。
【0291】
キットは、担体、例えば、1以上の容器手段を密閉して収容するように区画化された手
段を含みうる。1つの実施形態においては、該容器は、オリゴヌクレオチド、例えば前記
のプライマーまたはプローブを含有する。キットの成分は、例えば、患者における腫瘍サ
ンプルにおける突然変異を診断または特定するのに有用である。キットのプローブまたは
プライマーは、当技術分野で公知の任意の配列決定またはヌクレオチド検出アッセイ、例
えば、配列決定アッセイ、例えば、NGS法、RT-PCRまたはin situハイブ
リダイゼーションにおいて使用されうる。
【0292】
幾つかの実施形態においては、キットの成分は、例えば、突然変異の診断もしくは特定
、および/または患者の腫瘍サンプルにおける突然変異荷重の評価、ならびにそれに応じ
た、癌治療のための適切な治療用物質の特定に有用である。
【0293】
本発明において注目されるキットは、例えば、アッセイ陽性および陰性対照、ヌクレオ
チド、酵素(例えば、RNAまたはDNAポリメラーゼまたはリガーゼ)、溶媒またはバ
ッファー、安定剤、保存剤、二次抗体、例えば抗HRP抗体(IgG)、および検出試薬
を含みうる。
【0294】
オリゴヌクレオチドは、任意の形態、例えば液体、乾燥、半乾燥または凍結乾燥形態、
あるいは凍結条件での保存のための形態で提供されうる。
【0295】
典型的には、オリゴヌクレオチドおよびキットにおける他の成分は無菌形態で提供され
る。オリゴヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されている突然変異を含有するオリゴ
ヌクレオチド、または本明細書に記載されている変異に相補的なオリゴヌクレオチドは液
体溶液中で提供され、液体溶液は一般に水溶液、例えば滅菌水溶液である。オリゴヌクレ
オチドが乾燥形態で提供される場合、一般に、適切な溶媒の添加により再構成(還元)が
行われる。溶媒、例えば滅菌バッファーは、所望により、キットにおいて提供されうる。
【0296】
キットは、アッセイでの使用に適した濃度のオリゴヌクレオチドを含有する組成物用の
1以上の容器を含むことが可能であり、あるいはアッセイでの使用のための希釈に関する
説明を伴いうる。幾つかの実施形態においては、キットは、オリゴヌクレオチドおよびア
ッセイ成分のための別個の容器、仕切りまたは区画、ならびに情報資料を含む。例えば、
オリゴヌクレオチドはボトルまたはバイアル内に含有されることが可能であり、情報資料
はプラスチックスリーブまたはパケット内に含有されることが可能である。他の実施形態
においては、キットの別々の要素が、単一の非分割容器内に含有されている。例えば、オ
リゴヌクレオチド組成物は、ラベルの形態の情報資料を伴うボトルまたはバイアルに含有
されている。幾つかの実施形態においては、キットは複数の個々の容器を含み、それらの
それぞれは、オリゴヌクレオチドの、1以上の単位形態(例えば、1つのアッセイでの使
用のためのもの)を含有する。例えば、キットは複数のアンプル、フォイルパケットまた
はブリスターパックを含み、それらのそれぞれは、腫瘍サンプルにおける突然変異の配列
決定または検出において使用されるオリゴヌクレオチドの単一単位を含有する。キットの
容器は気密性および/または防水性を有しうる。容器は使用のためにラベルを伴いうる。
【0297】
抗体に基づくキットの場合、キットは、(1)突然変異ポリペプチドに結合する第1の
抗体(例えば、固体支持体に結合しているもの)、および所望により、(2)検出可能な
物質に結合(コンジュゲート化)しており、該ポリペプチドまたは第1の抗体のいずれか
に結合する第2の異なる抗体を含みうる。
【0298】
1つの実施形態においては、キットは、配列決定または診断を実施し解釈するための情
報資料を含みうる。もう1つの実施形態において、キットはアッセイ結果の報告先(例え
ば、治療施設または医療提供者)に関する指示を示しうる。キットは、本明細書に記載さ
れている配列決定または診断アッセイの結果の報告の形態、ならびにそのような形態また
は他の関連情報の送り先に関する住所および連絡先の情報、または結果をオンラインデー
タベースもしくはオンラインアプリケーション(例えば、アプリ)で報告するためのUR
L(ユニフォーム・リソース・ロケーター(Uniform Resource Loc
ator))アドレスを含みうる。もう1つの実施形態においては、情報資料は、アッセ
イの結果に応じて患者が特定の化学療法薬での治療を受けるべきかどうかに関する指針を
含みうる。
【0299】
キットの情報資料はその形態において限定されない。多くの場合、情報資料、例えば指
示は、印刷物、例えば活字、図面および/または写真、例えばラベルまたは印刷シートと
して提供される。しかし、情報資料は、他の形態、例えばコンピュータ可読資料、ビデオ
録画または音声録音としても提供されうる。もう1つの実施形態においては、キットの情
報資料は連絡先情報、例えば物理アドレス、電子メールアドレス、ウェブサイトまたは電
話番号であり、それらにおいて、キットの使用者は、配列決定もしくは診断アッセイおよ
び/または本明細書に記載されている方法におけるその使用に関する実質的な情報を得る
ことが可能である。また、情報資料は形態の任意の組合せで提供されうる。
【0300】
幾つかの実施形態においては、生物学的サンプルはアッセイ提供者、例えばサービス提
供者(例えば、第三者施設)または医療提供者に提供され、これらはアッセイにおけるサ
ンプルを評価し、読出し情報を提供する。例えば、1つの実施形態においては、アッセイ
提供者は、対象からの生物学的サンプル、例えば血液または組織サンプル、例えば生検サ
ンプルを受領し、本明細書に記載されているアッセイ(例えば、配列決定アッセイまたは
in situハイブリダイゼーション)を用いてサンプルを評価し、該サンプルが突然
変異を含有することを決定する。ついでアッセイ提供者、例えばサービス提供者または医
療提供者は、対象が個々の薬物または個々の癌治療レジメンのための候補である、または
候補ではないと結論づけることが可能である。
【0301】
検出試薬
もう1つの態様においては、本発明は検出試薬、例えばその精製または単離調製物に関
する。検出試薬は、例えば、本明細書に記載されている変異(例えば、表1に記載されて
いる遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、NF1遺伝子における体細胞変異、LRP
1B遺伝子における体細胞変異、またはCからTへの変化)を含む核酸分子の、本明細書
に記載されている変異を有する核酸またはタンパク質配列を識別しうる。
【0302】
検出試薬、例えば、核酸に基づく検出試薬は、標的核酸、例えば、サンプル(例えば、
メラノーマ、例えば、進行性または転移性メラノーマから得られた又はそれに由来する核
酸のサンプル)におけるDNA、例えばゲノムDNAもしくはcDNAまたはRNAにお
ける変異を特定するために使用されうる。検出試薬、例えば、抗体に基づく検出試薬は、
例えば、サンプル(例えば、メラノーマ細胞、例えば、進行性または転移性メラノーマ細
胞から得られた又はそれに由来する又はそれにより産生されたタンパク質のサンプル)に
おける標的タンパク質における変異を特定するために使用されうる。
【0303】
1つの実施形態においては、検出試薬は、標的核酸上の核酸配列に相補的な配列を含む
核酸分子、例えばDNA、RNAまたは混合DNA/RNA分子を含む(検出試薬に結合
する標的核酸上の配列は本明細書においては「検出試薬結合部位」と称され、検出試薬結
合部位に対応する検出試薬の部分は「標的結合部位」と称される)。1つの実施形態にお
いては、検出試薬結合部位は問合せ(インタロゲーション)位置と関連づけて配置されて
おり、その結果、検出試薬結合部位への検出試薬の結合(または幾つかの実施形態におい
ては結合の欠如)は、本明細書に記載されている突然変異体(本明細書に記載されている
変異、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、NF1遺
伝子における体細胞変異、LRP1B遺伝子における体細胞変異および/またはCからT
への変化を含む核酸分子)に関する突然変異体および基準配列の識別を可能にする。検出
試薬は、例えば、標識または他の部分、例えば、捕捉を可能にする部分で修飾されうる。
【0304】
1つの実施形態においては、検出試薬は、核酸分子、例えば、DNA、RNAまたは混
合DNA/RNA分子を含み、これは、例えばその標的結合部位において、問合せ位置を
含み、突然変異、例えば本明細書に記載されている変異と基準配列とを(例えば、標的核
酸への検出試薬の結合のアフィニティにより、または反応、例えば検出試薬との連結もし
くは伸長反応の能力により)識別しうる。幾つかの実施形態においては、問合せ位置は、
検出試薬または標的結合部位の末端ヌクレオチド、例えば3’もしくは5’末端ヌクレオ
チド、3’もしくは5’末端ヌクレオチドに直接隣接するヌクレオチド、または別の内部
ヌクレオチドに対応しうる。
【0305】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている変異を含む標的核酸と、基準
配列を含む標的核酸とに対する検出試薬のアフィニティにおける相違は、突然変異(また
は基準)配列の存在または非存在の決定を可能にする。典型的には、アッセイ条件下のそ
のような検出試薬は、突然変異体に対してのみ、または基準配列に対してのみ、実質的に
、より高いレベルの結合を示し、例えば、突然変異に対してのみ、または基準配列に対し
てのみ、相当なレベルの結合を示す。
【0306】
幾つかの実施形態においては、結合は、後続反応、例えば、検出試薬または標的核酸を
含む後続反応を可能にする(または抑制する)。例えば、結合は、例えば核酸ポリメラー
ゼにより、核酸、例えば検出試薬への1以上のヌクレオチドの連結または付加を可能にし
うる。これは、突然変異体を基準体から識別するために使用されうる。幾つかの実施形態
においては、問合せ位置は検出試薬またはその標的結合部位の末端に、または末端に十分
に接近して位置し、その結果、ハイブリダイゼーションまたは化学反応、例えば検出試薬
への1以上のヌクレオチドの付加(例えば、DNAポリメラーゼによるもの)は、問合せ
位置または問合せ位置から1、2もしくは3ヌクレオチド以内のヌクレオチドにおいて検
出試薬と標的核酸との間に完全な一致(マッチ)が存在する場合にのみ生じ、あるいはそ
のような場合に、実質的に、より高い率で生じる。
【0307】
1つの実施形態においては、検出試薬は、核酸、例えばDNA、RNAまたは混合DN
A/RNA分子を含み、ここで、該分子またはその標的結合部位は問合せ位置に隣接し(
またはその側面に位置し)、それは、標的核酸における、本明細書に記載されている突然
変異と基準配列とを識別しうる。
【0308】
幾つかの実施形態においては、検出試薬結合部位は問合せ位置に隣接しており、例えば
、検出試薬またはその標的結合部位の5’または3’ヌクレオチドは、例えば、問合せ位
置から0(直接隣接)~1,000、500、400、200、100、50、10、5
、4、3、2または1ヌクレオチドで隣接している。幾つかの実施形態においては、反応
の結果は、突然変異体と基準配列とを識別することを可能にする問合せ位置におけるヌク
レオチドの種類によって変動する。例えば、問合せ位置における第1ヌクレオチドの存在
下では、第1反応が第2反応より優先される。例えば、連結またはプライマー伸長反応に
おいては、産物は、例えば電荷、配列、サイズまたは別の反応(例えば、制限切断)に対
する感受性において異なる。幾つかの実施形態においては、検出試薬は、問合せ位置を含
有する二本鎖の例えばPCR増幅による増幅を可能にする、ペアになった分子(例えば、
フォワードプライマーおよびリバースプライマー)を含む。そのような実施形態において
は、突然変異の存在は、問合せ位置を含む配列および問合せ位置に基準ヌクレオチドを有
する対応配列から生じる増幅産物の特性、例えばサイズ、配列、電荷または反応に対する
感受性における相違により決定されうる。幾つかの実施形態においては、特徴的な増幅産
物の存在または非存在は問合せ部位におけるヌクレオチドの種類を示し、したがって突然
変異の検出を可能にする。
【0309】
幾つかの実施形態においては、検出試薬またはその標的結合部位は問合せ位置に直接隣
接しており、例えば、検出試薬の5’または3’末端ヌクレオチドは問合せ位置に直接隣
接している。幾つかの実施形態においては、問合せ位置におけるヌクレオチドの種類は、
反応の性質、例えば、検出試薬を含む反応、例えば、検出試薬の一端の修飾を決定する。
例えば、問合せ位置における第1のヌクレオチドの存在下では、第1反応が第2反応より
優先される。例えば、問合せ位置における第1ヌクレオチド、例えば、突然変異に関連す
るヌクレオチドの存在は、第1反応、例えば、検出試薬への相補的ヌクレオチドの付加を
促進しうる。例えば、問合せ位置におけるAの存在は、例えば、第1比色標識を有するT
の取り込みを引き起こし、一方、問合せ位置におけるGの存在は、例えば、第2比色標識
を有するCの取り込みを引き起こす。1つの実施形態においては、該位置における第1ヌ
クレオチドの存在は第2核酸への検出試薬の連結をもたらす。例えば、第3核酸が、問合
せ位置における厳密な一致を有する場合には、第3核酸は、問合せ部位に十分に近い標的
核酸にハイブリダイズ可能であり、それは検出試薬に連結されるであろう。連結産物また
はその非存在の検出は問合せ部位におけるヌクレオチドの種類を示し、したがって、突然
変異の検出を可能にする。
【0310】
種々の読出しが用いられうる。例えば、突然変異体または基準配列への検出試薬の結合
の後に、検出試薬に関連した部分、例えば標識、例えば放射性または酵素標識の結合が生
じうる。幾つかの実施形態においては、標識は消光剤およびシグナリング剤を含み、ハイ
ブリダイゼーションは、例えば、それらの2つの要素の間の距離の変化をもたらし、例え
ば、該距離を増加させ、シグナリング剤の消光を解除する。幾つかの実施形態においては
、検出試薬は、反応混合物の他の成分からの分離を可能にする部分を含みうる。幾つかの
実施形態においては、結合は、例えば酵素による、例えばDNAポリメラーゼのヌクレア
ーゼ活性による、または制限酵素による、結合検出試薬の切断を可能にする。該切断は、
核酸の出現または消失により、あるいは検出試薬に付随するシグナリング剤と消光剤との
分離により検出されうる。幾つかの実施形態においては、結合は、更なる化学反応、例え
ば標識または分解(例えば制限酵素によるもの)に対して標的を保護し、あるいは該化学
反応に対して標的を感受性にする。幾つかの実施形態においては、検出試薬への結合は標
的核酸の捕捉、分離または物理的操作を可能にし、それにより特定(同定)を可能にする
。幾つかの実施形態においては、結合は検出試薬または標的の検出可能な局在化をもたら
すことが可能であり、例えば、結合は標的核酸を捕捉し、または第3の核酸の置換をもた
らしうるであろう。結合は、成分、例えば検出試薬における拡張または他のサイズ変化を
可能にして、突然変異体と基準配列との識別を可能にしうる。結合は、突然変異体を基準
配列から識別する、例えばPCRによる増幅産物の産生を可能にしうる。
【0311】
1つの実施形態においては、検出試薬または標的結合部位は、5~500、5~300
、5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、5~25、5~20、
5~15、または5~10ヌクレオチド長である。1つの実施形態においては、検出試薬
または標的結合部位は、10~500、10~300、10~250、10~200、1
0~150、10~100、10~50、10~25、10~20、または10~15ヌ
クレオチド長である。1つの実施形態においては、検出試薬または標的結合部位は、20
~500、20~300、20~250、20~200、20~150、20~100、
20~50、または20~25ヌクレオチド長である。1つの実施形態においては、検出
試薬または標的結合部位は、突然変異体と基準配列とを識別するのに十分な程度に長く、
100、200、300、400または500ヌクレオチド長未満である。
【0312】
本明細書中に記載されている突然変異タンパク質は、試薬、例えば基質、例えば触媒活
性または機能活性のための基質、または抗体(突然変異体および基準タンパク質と差次的
に反応するもの)との反応により、基準体、例えば非突然変異体または野生型タンパク質
から識別されうる。1つの態様においては、本発明は、所定レベルの突然変異荷重を有す
るおよび/または本明細書に記載の突然変異タンパク質を含むサンプルをそのような試薬
と接触させ、突然変異タンパク質がサンプル中に存在するかどうかを決定する方法を含む
【0313】
反応混合物または反応混合物の製造方法の実施形態の1つにおいては、検出試薬は、本
明細書に記載されている変異を含有する核酸に特異的なプローブもしくはプライマー、ま
たは本明細書に記載されている突然変異タンパク質に特異的な抗体を含む。反応混合物ま
たは反応混合物の製造方法の実施形態の1つにおいては、変異は、本明細書に記載されて
いる遺伝子、例えば表1に記載されている遺伝子、例えばNF1遺伝子またはLRP1B
遺伝子における体細胞変異である。
【0314】
核酸の調製物およびその使用
もう1つの態様においては、本発明は、サンプルの突然変異荷重または開示されている
変異の存在もしくは非存在を決定するのに有用な、本明細書に記載されている問合せ位置
を含有する新生物または腫瘍細胞核酸、例えばDNA、例えばゲノムDNAもしくはcD
NAまたはRNAの精製または単離調製物に関する。該核酸は問合せ位置を含み、そして
典型的には、問合せ位置の片側または両側に追加的な配列を含む。また、該核酸は、典型
的には該核酸の片側または両側に結合した異種配列、例えばアダプターまたはプライミン
グ配列を含有しうる。該核酸はまた、標識または他の部分、例えば、分離または局在化を
可能にする部分を含む。
【0315】
ある実施形態においては、核酸、例えばメラノーマサンプルに由来する核酸の精製また
は単離調製物は、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異、
(iv)CからTへの変化
の1以上を含む。
【0316】
幾つかの実施形態においては、該調製物は、サンプル、例えばメラノーマサンプルの突
然変異荷重を決定するために使用される。幾つかの実施形態においては、該調製物は、配
列決定装置内またはそのような装置において使用されるサンプルホルダー内に配置される
【0317】
幾つかの実施形態においては、該核酸は20~1,000、30~900、40~80
0、50~700、60~600、70~500、80~400、90~300、または
100~200ヌクレオチド長である(異種配列を伴う又は伴わない)。1つの実施形態
においては、該核酸は、40~1,000、50~900、60~800,70~700
、80~600、90~500、100~400、110~300、または120~20
0ヌクレオチド長である(異種配列を伴う又は伴わない)。もう1つの実施形態において
は、該核酸は、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~
600、50~500、50~400、50~300、または50~200ヌクレオチド
長である(異種配列を伴う又は伴わない)。幾つかの実施形態においては、該核酸は、配
列決定(例えば、化学的配列決定によるもの、または突然変異体と基準調製物との間のT
mにおける差を決定することによるもの)を可能にするのに十分な長さであるが、所望に
より、100、200、300、400または500ヌクレオチド長未満(異種配列を伴
う又は伴わない)である。そのような調製物は、サンプル、例えば新生物または腫瘍サン
プルからの核酸を配列決定するために使用されうる。1つの実施形態においては、該精製
調製物は、基体上に提供された核酸のin situ増幅により提供される。幾つかの実
施形態においては、該精製調製物は基体上で他の核酸、例えば他の増幅核酸とは空間的に
別個である。
【0318】
1つの実施形態においては、核酸の精製または単離調製物はメラノーマ、例えば進行性
メラノーマに由来する。そのような調製物は、メラノーマにおける突然変異荷重、および
/またはメラノーマにおける変異配列、例えば本明細書に記載されている変異の存在もし
くは非存在を決定するために使用されうる。
【0319】
もう1つの態様においては、本発明は、
(a)本明細書に記載されている問合せ位置を含有する核酸、例えばDNA、例えばゲ
ノムDNAもしくはcDNA、またはRNAの精製または単離調製物を準備し、
(b)検出試薬または標的配列において、例えば化学結合、例えば共有または非共有化
学結合を切断または形成する方法により、該核酸を配列決定して、問合せ位置におけるヌ
クレオチドの種類(すなわち、ヌクレオチドが何であるか)を決定することを含む、本明
細書に記載されている変異に関する問合せ位置の配列を決定する方法に関する。該方法は
、本明細書に記載されている変異が存在するかどうかを決定することを可能にする。
【0320】
1つの実施形態においては、配列決定は、本明細書に記載されている変異を含む核酸を
、本明細書に記載されている検出試薬と接触させることを含む。
【0321】
1つの実施形態においては、配列決定は、突然変異体を基準配列から識別しうる物理的
特性、例えば、本明細書に記載されている変異を含む核酸の二本鎖形態の安定性、例えば
を決定することを含む。
【0322】
反応混合物および装置
1つの態様においては、本発明は、サンプルの突然変異荷重または開示されている変異
の存在もしくは非存在を決定するのに有用な、本明細書に記載されている問合せ位置を含
有する核酸、例えばDNA、例えばゲノムDNAもしくはcDNA、またはRNAと検出
試薬とを含有する反応混合物に関する。1つの実施形態においては、該核酸はメラノーマ
、例えば進行性メラノーマから得られ、またはそれに由来する。
【0323】
もう1つの態様においては、本発明は、サンプルの突然変異荷重または開示されている
変異の存在もしくは非存在を決定するのに有用な、本明細書に記載されている問合せ位置
を含有する核酸、例えばDNA、例えばゲノムDNAもしくはcDNA、またはRNAと
検出試薬とを含有する反応混合物であって、二本鎖の物理的または化学的特性、例えば安
定性、例えばTを決定するための装置内またはそのような装置における使用のためのサ
ンプルホルダー内に配置される反応混合物に関する。1つの実施形態においては、該装置
は熱量計である。1つの実施形態では、本明細書に記載されている変異を含む核酸は、メ
ラノーマ、例えば進行性メラノーマから得られ、またはそれに由来する。
【0324】
ある実施形態においては、本明細書に記載されている反応混合物は、
(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異、
(iv)CからTへの変化
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬、ならびに
(b)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異、
(iv)CからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルに由来する核酸を含む。
【0325】
本明細書に記載されている検出試薬は、サンプルの突然変異荷重またはサンプルにおけ
る開示されている変異の存在もしくは非存在を決定するために使用されうる。幾つかの実
施形態においては、サンプルは、メラノーマ、たとえば進行性メラノーマに由来する核酸
を含む。細胞は、新生物または腫瘍サンプル、例えば、新生物または腫瘍から採取された
生検;循環腫瘍細胞、例えば末梢血由来のもの;あるいは血液または血漿サンプルからも
のでありうる。1つの実施形態においては、該核酸は、例えばメラノーマ、例えば進行性
メラノーマに由来する。
【0326】
したがって、1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている変異を検出
しうる検出試薬を、本明細書に記載されている変異に関する問合せ位置を有する配列を含
むサンプルに由来する核酸と一緒にすることを含む、反応混合物の製造方法に関する。あ
る実施形態においては、該方法は、(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにお
ける体細胞変異、(ii)NF1遺伝子における体細胞変異、(iii)LRP1B遺伝
子における体細胞変異、または(iv)CからTへの変化の1以上を検出しうる1以上の
検出試薬を、(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異、(i
i)NF1遺伝子における体細胞変異、(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異
、または(iv)CからTへの変化の1以上を含む腫瘍細胞またはサンプル、例えばメラ
ノーマ細胞またはサンプルに由来する核酸と一緒にすることを含む。
【0327】
該反応混合物または該反応混合物の製造方法の実施形態の1つにおいては、検出試薬は
、標的核酸上の核酸配列(検出試薬結合部位)に相補的である核酸、例えばDNA、RN
Aまたは混合DNA/RNA分子を含み、ここで、検出試薬結合部位は問合せ位置と関連
づけて配置されており、その結果、検出試薬結合部位への検出試薬の結合は、本明細書に
記載されている突然変異配列または事象に関する突然変異体および基準配列の識別を可能
にする。
【0328】
該反応混合物または該反応混合物の製造方法の実施形態の1つにおいては、標的核酸配
列はメラノーマ、例えば進行性メラノーマ(本明細書に記載されているとおり)に由来す
る。該反応混合物または該反応混合物の製造方法の実施形態の1つにおいては、突然変異
は、置換、例えば本明細書に記載されている塩基置換を含む、本明細書に記載されている
変異である。
【0329】
本明細書に記載される変異は、突然変異および基準体と差次的に反応する酵素との反応
により、基準体、例えば非突然変異体または野生型配列から識別されうる。例えば、それ
らは、突然変異体および基準配列に対して異なる活性を有する制限酵素での切断により識
別されうる。例えば、本発明は、本明細書に記載されている変異を含む核酸をそのような
酵素と接触させ、突然変異体を基準配列から識別しうるその切断産物が存在するかどうか
を決定する方法を含む。
【0330】
1つの態様においては、本発明は、突然変異体と基準配列とを識別しうる制限酵素切断
産物の精製調製物を提供し、ここで、該切断産物の一方の末端は、突然変異体と基準配列
とを差次的に切断する酵素によって定められる。1つの実施形態においては、該切断産物
は問合せ位置を含む。
【0331】
突然変異ポリペプチドの検出
突然変異ポリペプチド(例えば、表1に記載されている遺伝子によりコードされるポリ
ペプチド、例えば、突然変異NF1ポリペプチドまたはLRP1Bポリペプチド)の活性
またはレベルも、発現ポリペプチドを検出または定量することにより検出および/または
定量されうる。突然変異ポリペプチドは当業者に公知の多数の手段のいずれかにより検出
および定量されうる。これらには、分析用生化学的方法、例えば電気泳動、キャピラリー
電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC
)、超拡散クロマトグラフィーなど、または種々の免疫学的方法、例えば流体もしくはゲ
ル沈降反応、免疫拡散(一次元または二次元)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(
RIA)、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウエ
スタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)などが含まれうる。当業者は公知タンパ
ク質/抗体検出方法を応用することが可能である。
【0332】
突然変異ポリペプチドを検出するためのもう1つの物質は、ポリペプチドに対応するポ
リペプチドに結合しうる抗体分子(例えば、検出可能な標識を有する抗体)である。抗体
を製造するための技術は本明細書に記載されている。プローブまたは抗体に関する「標識
(された)」なる語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち
、物理的に連結)することによるプローブまたは抗体の直接的標識、および直接的に標識
される別の試薬に対する反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を含むと意図され
る。間接的標識の例には、蛍光標識二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光標識
ストレプトアビジンで検出されうる、ビオチンでのDNAプローブの末端標識が含まれる
【0333】
もう1つの実施形態においては、抗体は、例えば、放射能標識、発色団標識、発蛍光団
標識または酵素標識により標識される。もう1つに実施形態においては、突然変異タンパ
ク質に特異的に結合する抗体誘導体(例えば、基質に結合した抗体、またはタンパク質-
リガンドペア(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンド
に結合した抗体)または抗体フラグメント(例えば、一本鎖抗体、単離抗体超可変領域な
ど)が使用される。
【0334】
細胞からの突然変異ポリペプチドは、当業者に公知の技術を用いて単離されうる。用い
られるタンパク質単離方法は、例えば、HarlowおよびLane(Harlowおよ
びLane,1988,Antibodies:A Laboratory Manua
l,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Co
ld Spring Harbor,New York)に記載されているものなどであ
りうる。
【0335】
電気泳動技術を用いてタンパク質を検出する手段は当業者によく知られている(全般的
には、R.Scopes(1982)Protein Purification,Sp
ringer-Verlag,N.Y.;Deutscher(1990)Method
s in Enzymology Vol.182:Guide to Protein
Purification,Academic Press,Inc.,N.Y.を参
照されたい)。
【0336】
もう1つの実施形態においては、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析を用いて
、サンプルにおけるポリペプチドの存在を検出および定量する。
【0337】
もう1つの実施形態においては、イムノアッセイを用いて、ポリペプチドを検出する。
本明細書中で用いるイムノアッセイは、アナライトに特異的に結合する抗体を使用するア
ッセイである。したがって、イムノアッセイは抗体へのポリペプチドの特異的結合の検出
により特徴づけられ、アナライトを単離し、標的化し、定量するための他の物理的または
化学的特性の利用とは対照的である。
【0338】
突然変異ポリペプチドは、多数の免疫学的結合アッセイのいずれかを用いて検出および
/または定量される(例えば、米国特許第4,366,241号、第4,376,110
号、第4,517,288号および第4,837,168号を参照されたい)。一般的な
イムノアッセイの総説としては、Asai(1993)Methods in Cell
Biology Volume 37:Antibodies in Cell Bi
ology,Academic Press,Inc.New York;およびSti
tes & Terr(1991)Basic and Clinical Immun
ology 7th Editionも参照されたい。
【0339】
スクリーニング方法
もう1つの態様においては、本発明は、所定レベルの突然変異荷重を有するおよび/ま
たは本明細書に記載されている変異を有する腫瘍を治療するために使用されうる物質に関
してスクリーニングするための方法またはアッセイに関する。
【0340】
該方法は、所定レベルの突然変異荷重を有するおよび/または本明細書に記載されてい
る変異を有する細胞または組織、例えば腫瘍細胞または組織を候補物質と接触させ、該細
胞または組織、例えば腫瘍細胞または組織に関連したパラメータにおける変化、例えば腫
瘍成長、血管新生、アポトーシスまたは転移における変化を検出することを含む。該方法
は、所望により、該パラメータの値を基準値と比較すること、例えば、該候補物質の存在
下の腫瘍サンプルから得られたパラメータの値を、該候補物質の非存在下の腫瘍サンプル
から得られたパラメータの値と比較することを含みうる。1つの実施形態においては、腫
瘍に関連したパラメータ、例えば腫瘍成長、血管新生、アポトーシスまたは転移における
変化が検出された場合に、候補物質が特定される。
【0341】
評価される典型的なパラメーターは、(i)細胞、例えば腫瘍細胞の活性における変化
、例えば、細胞の増殖、形態または腫瘍原性における変化;(ii)動物対象に存在する
腫瘍における変化、例えば、腫瘍のサイズ、外観、増殖;あるいは(iii)細胞、例え
ば腫瘍細胞の活性に関連した核酸またはポリペプチドまたはタンパク質のレベル、例えば
発現レベルにおける変化の1以上を含む。
【0342】
1つの実施形態においては、接触工程は、培養内の細胞、例えば、所定レベルの突然変
異荷重を有するおよび/または本明細書に記載されている変異を有する細胞において行う
。もう1つの実施形態においては、接触工程は、インビボで、細胞(対象に存在する腫瘍
細胞)、例えば動物対象(例えば、インビボ動物モデル)において行う。
【0343】
他の実施形態においては、細胞の活性における変化は、培養内の細胞、例えば、所定レ
ベルの突然変異荷重を有するおよび/または本明細書に記載されている変異を有する細胞
(例えば、哺乳類細胞、腫瘍細胞または細胞系、組換え細胞)において検出される。1つ
の実施形態においては、細胞は、所定レベルの突然変異荷重を有する腫瘍から単離された
細胞である。1つの実施形態においては、細胞は、本明細書に記載されている変異を含む
核酸を発現するように修飾された組換え細胞、例えば、本明細書に記載されている変異を
含む核酸でトランスフェクトされた組換え細胞である。トランスフェクト化細胞は、発現
された突然変異に応じた変化、例えば、増殖の増強、形態の変化、腫瘍原性の増強、およ
び/または形質転換表現型の獲得を示しうる。候補物質の存在下での細胞、例えば組換え
細胞の活性のいずれかにおける変化が検出可能である。例えば、候補物質の存在下での増
殖、腫瘍原性、形質転換形態の1以上における低減は、所定レベルの突然変異荷重を有す
るおよび/または本明細書に記載されている変異を有する腫瘍の治療における該物質の有
効性を示しうる。
【0344】
更に他の実施形態においては、動物対象(例えば、インビボ動物モデル)に存在する腫
瘍における変化を検出する。1つの実施形態においては、動物モデルは、腫瘍含有動物、
あるいは所定レベルの突然変異荷重を有するおよび/または本明細書に記載されている変
異を有する細胞(例えば、所定レベルの突然変異荷重を有するおよび/または本明細書に
記載されている変異を有する腫瘍原性細胞)を含む異種移植片である。候補物質を動物対
象に投与することが可能であり、腫瘍における変化を検出する。1つの実施形態において
は、腫瘍における変化は腫瘍成長、腫瘍サイズ、腫瘍量、生存の1以上を含み、これらを
評価する。腫瘍成長、腫瘍サイズ、腫瘍量の1以上における低減または生存率の増加は、
所定レベルの突然変異荷重を有するおよび/または本明細書に記載されている変異を有す
る腫瘍の治療において候補物質が有効であることを示す。
【0345】
ある実施形態においては、本明細書に記載されているスクリーニング方法が反復され、
および/または組合されうる。1つの実施形態においては、本明細書に記載されている細
胞ベースのアッセイにおいて評価される候補物質は動物対象において更に試験されうる。
【0346】
1つの実施形態においては、候補物質は、免疫チェックポイント分子のモジュレーター
、例えばインヒビター、例えばPD-1またはPD-L1のインヒビターである。1つの
実施形態においては、候補物質は、小分子化合物、核酸(例えば、アンチセンス、siR
NA、アプタマー、リボザイム、マイクロRNA)、または抗体分子(例えば、突然変異
DNAによりコードされるタンパク質に結合する完全抗体またはその抗原結合性フラグメ
ント、例えば、キメラ、ヒト化またはヒト抗体分子)である。候補物質は、ライブラリー
(例えば、インヒビターの市販ライブラリー)から入手可能であり、または理論的に設計
されうる。
【0347】
候補物質は、以下のものを含む当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法に
おける多数のアプローチのいずれかを用いて得られうる:生物学的ライブラリー;ペプト
イドライブラリー(酵素分解に抵抗性であるが、依然として生物活性である新規非ペプチ
ド骨格を有する、ペプチドの機能性を有する分子のライブラリー(例えば、Zucker
mann,R.N.ら(1994)J.Med.Chem.37:2678-85を参照
されたい);空間的にアドレス可能な平行固相または液相ライブラリー;デコンボリュー
ションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフ
ィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法。生物学的ライブラリー
およびペプトイドライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定され、残りの4
つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子の化合物ライブラリーに
適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:
145)。
【0348】
抗体を作製するためのファージディスプレイおよびコンビナトリアル法は当技術分野で
公知である(例えば、米国特許第5,223,409号、国際出願公開番号WO 92/
18619、WO 91/17271、WO 92/20791、WO 92/1567
9、WO 93/01288、WO 92/01047、WO 92/09690、WO
90/02809;Huseら(1989)Science 246:1275-12
81;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370-137
2;Clacksonら(1991)Nature 352:624-628;Garr
adら(1991)Bio/Technology 9:1373-1377;Hoog
enboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137;B
arbasら(1991)PNAS 88:7978-7982;Hawkinsら(1
992)J Mol Biol 226:889-896;Hayら(1992)Hum
Antibod Hybridomas 3:81-85;Gramら(1992)P
NAS 89:3576-3580;およびGriffthsら(1993)EMBO
J 12:725-734に記載されている)。
【0349】
キメラ抗体は当技術分野で公知の組換えDNA技術により製造されうる(国際出願公開
番号WO 86/01533、WO 87/02671、Cabillyら,米国特許第
4,816,567号;Betterら(1988 Science 240:1041
-1043);Liuら(1987)PNAS 84:3439-3443;Liuら,
1987,J.Immunol.139:3521-3526;Sunら(1987)P
NAS 84:214-218;Nishimuraら,1987,Canc.Res.
47:999-1005;Woodら(1985)Nature 314:446-44
9;およびShawら,1988,J.Natl Cancer Inst.80:15
53-1559を参照されたい)。
【0350】
ヒト化またはCDR移植抗体はCDR移植またはCDR置換(この場合、免疫グロブリ
ン鎖の、1つ、2つまたは全てのCDRが置換されうる)により製造されうる。例えば、
米国特許第5,225,539号;Jonesら,1986 Nature 321:5
52-525;Verhoeyanら,1988 Science 239:1534;
Beidlerら,1988 J.Immunol.141:4053-4060を参照
されたい。また、特定のアミノ酸が置換され、欠失し、または付加されたヒト化抗体も本
発明の範囲内である。ドナーからアミノ酸を選択するための基準はUS5,585,08
9に記載されている。抗体をヒト化するための他の技術は米国特許第5,693,761
号、第5,693,762号、欧州特許番号EP519596、Morrison,S.
L.,1985,Science 229:1202-1207、およびOiら,198
6,BioTechniques 4:214に記載されている。
【0351】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するト
ランスジェニックマウスを使用して製造されうる。関心のある抗原で免疫化されたこれら
のトランスジェニックマウスからの脾細胞を使用して、ヒトタンパク質由来のエピトープ
に対して特異的アフィニティを有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生させる
(例えば、国際出願公開番号WO 91/00906、WO 91/10741、WO
92/03918、WO 92/03917;Bruggemanら,1991 Eur
J Immunol 21:1323-1326;Bruggemanら,1993
Year Immunol 7:33-40;Tuaillonら,1993 PNAS
90:3720-3724;Lonberg,N.ら,1994 Nature 36
8:856-859;Green,L.L.ら,1994 Nature Genet.
7:13-21;およびMorrison,S.L.ら,1994 Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 81:6851-6855を参照されたい)。
【0352】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当技術分野において、例えば、DeWi
ttら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:690
9;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11
422;Zuckermannら(1994).J.Med.Chem.37:2678
;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(199
4)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら
(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;および
Gallopら(1994)J.Med.Chem.37:1233に見出されうる。
【0353】
化合物のライブラリーは溶液中(例えば、Houghten(1992)Biotec
hniques 13:412-421)またはビーズ上(Lam(1991)Natu
re 354:82-84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364
:555-556)、細菌上(Ladner,米国特許第5,223,409号)、胞子
上(Ladner,米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(Cullら(1
992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)
またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:
386-390;Devlin(1990)Science 249:404-406;
Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378-
6382;ならびにFelici(1991)J.Mol.Biol.222:301-
310;Ladner,前掲)で提示されうる。
【0354】
本発明の他の実施形態は以下のものを含む。
【0355】
本発明はまた、本明細書に記載されている変異を含む単離核酸分子または核酸分子の単
離調製物に関する。そのような核酸分子またはその調製物は、本明細書に記載されている
変異を含むことが可能であり、あるいは例えば配列の変異を検出するために使用されうる
【0356】
本発明はまた、本明細書に記載されている変異を含む、または該変異に隣接する、また
は該変異にハイブリダイズする、または該変異を特定するのに有用な、または該変異に基
づく、プローブ、プライマー、ベイトまたはライブラリーメンバーとして適した核酸分子
、例えば核酸断片に関する。ある実施形態においては、該プローブ、プライマーまたはベ
イト分子は、本明細書に記載されている変異、例えば、表1に記載されている遺伝子(例
えば、NF1遺伝子またはLRP1B遺伝子)における変異を含有する核酸分子の捕捉、
検出または単離を可能にするオリゴヌクレオチドである。
【0357】
該オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている変異を含む核酸分子または核酸分
子の断片に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含みうる。該核酸分子、例えば該オリゴ
ヌクレオチドと標的配列との間の配列同一性は、それらの配列が、標的配列の捕捉、検出
または単離を可能にするのに十分な程度に相補的である限り、厳密である必要はない。1
つの実施形態においては、核酸断片は、約5~25、例えば10~20、または10~1
5ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーである。他の実
施形態においては、核酸断片は、約100~300ヌクレオチド、130~230ヌクレ
オチド、または150~200ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドを含むベイトである
【0358】
1つの実施形態においては、核酸断片は、例えば、本明細書に記載されている変異、例
えば、表1に記載されている遺伝子(例えば、NF1遺伝子またはLRP1B遺伝子)に
おける変異を含む核酸分子を例えばハイブリダイゼーションにより特定または捕捉するた
めに使用されうる。例えば、核酸断片は、本明細書に記載されている変異を例えばハイブ
リダイゼーションにより特定または捕捉する際に使用されるプローブ、プライマーまたは
ベイトでありうる。
【0359】
本明細書に記載されているプローブまたはプライマーは例えばPCR増幅において使用
されうる。検出がPCRに基づく場合の1つの典型的な実施形態においては、突然変異の
増幅は、例えば、本明細書に記載されている変異に隣接した配列を増幅するために、プラ
イマーまたはプライマーペアを使用して行われうる。
【0360】
他の実施形態においては、核酸フラグメントは、本明細書に記載されている変異を含む
核酸分子にハイブリダイズすることにより該核酸分子の捕捉または単離を可能にするヌク
レオチド配列を含むベイトを含む。1つの実施形態においては、ベイトは溶液相ハイブリ
ダイゼーションに適している。他の実施形態では、ベイトは、ベイトにハイブリダイズし
た核酸とベイトとにより形成されるハイブリッドの捕捉および分離を、例えば結合体への
結合により可能にする結合体、例えばアフィニティタグを含む。
【0361】
他の実施形態においては、核酸断片は、本明細書に記載されている核酸分子を含むライ
ブラリーメンバーを含む。1つの実施形態においては、ライブラリーメンバーは、突然変
異、例えば、本明細書に記載されている変異をもたらす塩基置換を含む。
【0362】
核酸フラグメントは、例えば放射能標識、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識、酵
素標識、結合ペア標識で、検出可能な様態で標識可能であり、あるいはアフィニティタグ
、タグまたは識別子(例えば、アダプター、バーコードまたは他の配列識別子)を含みう
る。
【0363】
もう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている変異を含むポリペプ
チド(例えば、本明細書に記載されている変異を含む精製ポリペプチド)、その生物学活
性または抗原性断片、ならびに試薬(例えば、本明細書に記載されている変異を含むポリ
ペプチドに結合する抗体分子)、本明細書に記載されている変異を含むポリペプチドの活
性をモジュレーションするための方法、および本明細書に記載されている変異を含むポリ
ペプチドの検出に関する。
【0364】
もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドまたは断片は、本明細書に記載されて
いる変異を含有するペプチド、例えば免疫原性ペプチドまたはタンパク質である。そのよ
うな免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、本明細書に記載されている変異を含むポリペ
プチドまたはタンパク質に特異的な抗体を産生させるために使用されうる。他の実施形態
においては、そのような免疫原性ペプチドまたはタンパク質はワクチンの製造に使用され
うる。ワクチン製剤は他の成分、例えばアジュバントを含みうる。
【0365】
もう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている変異を含むポリペプ
チドに結合する抗体分子または本明細書に記載されているフラグメントに関する。幾つか
の実施形態においては、抗体は、突然変異ポリペプチド、例えば本明細書に記載されてい
る変異を含むポリペプチドから野生型ポリペプチドを識別しうる。抗体分子を製造するた
めの技術は当技術分野で公知であり、例えば、WO 2012/092426(発明の名
称:“Optimization of Multigene Analysis of
Tumor Samples”)(これを参照により本明細書に組み入れることとする
)に記載されている。
【0366】
本発明は、例えば、以下の番号付き段落のいずれかにおいて定義されうる。
【0367】
1.(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する
応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノ
ーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重(TMB)の尺度を含み、
(b)応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加に応
じて、療法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する
対象の治療方法。
【0368】
2.PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法を対象に投与し、それにより
対象を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法であって、
対象は、例えば応答状態の基準値と比較した場合の、応答状態の値の増加を示し、また
は該増加を示すことが確認されており、
応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
腫瘍突然変異荷重の尺度を含む、方法。
【0369】
3.対象のための療法に対する応答状態の値を得、それにより療法を選択することを含
む、メラノーマを有する対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療
法の選択方法であって、
応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加は、対象が
、療法に対する応答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又は
その可能性が高いことを示す、方法。
【0370】
4.(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する
応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノ
ーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定することを含む、メラノーマを有する対象の評価方法であって、
応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に対する応
答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高い
ことを示し、あるいは、
応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体である又は
その可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示す、
方法。
【0371】
5.腫瘍突然変異荷重の尺度が、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方
法。
【0372】
6.対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)のレベルの増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基
準数と比較した場合の、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞
変異)の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)の基準数と比較した場合の、表1に記載されている遺伝子
の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の数の増
加の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する、または対象のために
選択する、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【0373】
7.(a)対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおいて、以
下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存
在もしくは非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異
)の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(
例えば、1以上のCからTへの変化)の数
の1以上を決定し、
(b)以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)のレベルの増加、例えば、表1に記載されている遺伝子の所定セッ
トにおける体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の基準レベルと比較した場合のそ
の増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存
在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異
)の数の増加、例えば、LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞
変異)の基準数と比較した場合のその増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(
例えば、1以上のCからTへの変化)の数の増加、例えば、表1に記載されている遺伝子
の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば、1以上のCからTへの変化)の基準数
と比較した場合のその増加
の1以上に応じて、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法を対象に投与し
、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法。
【0374】
8.応答状態の基準値が療法に対する非応答体に関する応答状態の値である、請求項1
~7のいずれか1項記載の方法。
【0375】
9.腫瘍突然変異荷重の基準レベルと比較した場合の、対象からのサンプルにおける腫
瘍突然変異荷重のレベルの増加に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【0376】
10.腫瘍突然変異荷重の基準レベルが療法に対する非応答体からのメラノーマサンプ
ルまたはメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重のレベルである、請求項9記
載の方法。
【0377】
11.対象からのメラノーマサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する応答体として特定する
、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【0378】
12.対象からのサンプルが、以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較して減少した又は不変の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変
異のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の非存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較して類似した、同
じ又は減少した、LRP1B遺伝子における体細胞変異の数、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較して類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の所定セット
におけるCからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全てを示す場合に、対象を療法に対する非応答体として特定す
る、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【0379】
13.遺伝子の所定セットが、表1に記載されている遺伝子の少なくとも約50個以上
、約100個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上
または全てを含む、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【0380】
14.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルが、
療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける
、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルである、請求項
9~13のいずれか1項記載の方法。
【0381】
15.LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルが、療法に対する非応答体か
らのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける、LRP1B遺伝子にお
ける体細胞変異のレベルである、請求項6~14のいずれか1項記載の方法。
【0382】
16.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レベ
ルが、療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに
おけるCからTへの変化のレベルである、請求項6~15のいずれか1項記載の方法。
【0383】
17.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルが、表1
に記載されている遺伝子の所定セットを配列決定すること、例えば、表1に記載されてい
る遺伝子の所定セットのコード領域を配列決定することを含む方法により決定される、請
求項5~16のいずれか1項記載の方法。
【0384】
18.NF1遺伝子における体細胞変異の存在または非存在が、NF1遺伝子を配列決
定すること、例えば、NF1遺伝子のコード領域を配列決定することを含む方法により決
定される、請求項5~17のいずれか1項記載の方法。
【0385】
19.LRP1B遺伝子における体細胞変異の数が、LRP1B遺伝子を配列決定する
こと、例えば、LRP1B遺伝子のコード領域を配列決定することを含む方法により決定
される、請求項5~18のいずれか1項記載の方法。
【0386】
20.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数が、表
1に記載されている遺伝子の所定セットを配列決定することを含む方法により決定される
、請求項5~19のいずれか1項記載の方法。
【0387】
21.腫瘍突然変異荷重の尺度に応じて、以下のもの、すなわち、
(a)療法の改変用量を対象に投与すること、
(b)対象に対する療法のスケジュールまたは時間経過を改変すること、
(c)療法と組合される追加的物質を、例えば非応答体または部分応答体に投与するこ
と、あるいは
(d)対象におけるメラノーマの進行における時間経過を予後決定すること
の1つ、2つ、3つまたは全てを行うことを更に含む、請求項1~20のいずれか1項記
載の方法。
【0388】
22.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの決定が
、表1に記載されている遺伝子の約25個以上、例えば約50個以上、約100個以上、
約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上または全てにおける
体細胞変異のレベルの決定を含む、請求項5~21のいずれか1項記載の方法。
【0389】
23.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの決定が
、予め選択された単位当たり(例えば、遺伝子の所定セットのコード領域における、例え
ば、配列決定された遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり)の体細
胞変異の数の決定を含む、請求項5~22のいずれか1項記載の方法。
【0390】
24.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約
10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約
40倍または少なくとも約50倍の増加に応じて、療法を対象に投与する、または対象の
ために選択する、請求項1~23のいずれか1項記載の方法。
【0391】
25.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上、例えば約5
個以上、約10個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約
35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定に応じて
、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~24のいずれか1項
記載の方法。
【0392】
26.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.1個以上、例えば約
25個以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個
以上であるという決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、
請求項1~25のいずれか1項記載の方法。
【0393】
27.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3~約23.1個、例
えば約5~約20個、約10~約20個、または約15~約20個であるという決定に応
じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~26のいずれか
1項記載の方法。
【0394】
28.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約
10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約
40倍または少なくとも約50倍の増加が、対象が療法に対する応答体であることを示す
、請求項1~27のいずれか1項記載の方法。
【0395】
29.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較して類似した、同じ又は減少した、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける
体細胞変異のレベルが、対象が療法に対する非応答体であることを示す、請求項1~28
のいずれか1項記載の方法。
【0396】
30.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個以上、例えば約5
個以上、約10個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約
35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であるという決定が、対象
が療法に対する応答体、例えば完全応答体または部分応答体であることを示す、請求項1
~29のいずれか1項記載の方法。
【0397】
31.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3.3個未満であるという
決定が、対象が療法に対する非応答体であることを示す、請求項1~30のいずれか1項
記載の方法。
【0398】
32.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が遺伝子の所
定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約23.1個以上、例えば約
25個以上、約30個以上、約35個以上、約40個以上、約45個以上または約50個
以上であるという決定が、対象が療法に対する応答体、例えば完全応答体であることを示
す、請求項1~31のいずれか1項記載の方法。
【0399】
33.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が、表1に記
載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約2
3.1個未満であるという決定が、対象が療法に対する部分応答体または非応答体である
ことを示す、請求項1~32のいずれか1項記載の方法。
【0400】
34.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の数が、表1に記
載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異約3
.2(例えば、約3.3)~約20個、例えば約5~約20個、約10~約20個、また
は約15~約20個であるという決定が、対象が療法に対する部分応答体であることを示
す、請求項1~33のいずれか1項記載の方法。
【0401】
35.体細胞変異がNF1遺伝子のコード領域に存在するという決定に応じて、療法を
対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~34のいずれか1項記載の方
法。
【0402】
36.NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在が、対象が療法に対する応
答体である又はその可能性が高いこと、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が
高いことを示す、請求項1~35のいずれか1項記載の方法。
【0403】
37.(a)体細胞変異がNF1遺伝子のコード領域に存在する、および
(b)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルが、表1
に記載されている遺伝子の所定セットのコード領域におけるメガベース当たり体細胞変異
約35個以上、約38.5個以上、約40個以上、約45個以上または約50個以上であ

という決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~
36のいずれか1項記載の方法。
【0404】
38.(a)NF1遺伝子のコード領域における体細胞変異の存在、ならびに
(b)BRAF遺伝子における体細胞変異、NRAS遺伝子における体細胞変異を含む
、またはBRAF、NRASおよびNF1遺伝子に関して三重WT(野生型)であるメラ
ノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける表1に記載されている遺伝子の所
定セットにおける体細胞変異のレベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の
所定セットにおける体細胞変異のレベルの増加、例えば少なくとも約2倍、少なくとも約
3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加
の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~37
のいずれか1項記載の方法。
【0405】
39.LRP1B遺伝子における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上ま
たは約5個以上の体細胞変異の存在の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象
のために選択する、請求項1~38のいずれか1項記載の方法。
【0406】
40.LRP1B遺伝子における約1個以上、約2個以上、約3個以上、約4個以上ま
たは約5個以上の体細胞変異の存在が、対象が療法に対する応答体である又はその可能性
が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高いことを示す、請求項1~3
9のいずれか1項記載の方法。
【0407】
41.LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数と比較した場合の、LRP1Bに
おける体細胞変異の数の増加、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少な
くとも約2.8倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍または
少なくとも約5倍の増加の決定に応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する、請求項1~40のいずれか1項記載の方法。
【0408】
42.LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数が療法に対する非応答体からのメ
ラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおけるLRP1B遺伝子における体細
胞変異の数である、請求項41記載の方法。
【0409】
43.LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準数が体細胞変異0個または1個であ
る、請求項41または42記載の方法。
【0410】
44.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個以上、約25個以上
、約30個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変化の存在の決定に応
じて、療法を対象に投与する、または対象のために選択する、請求項1~43のいずれか
1項記載の方法。
【0411】
45.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける約20個以上、約25個以上
、約30個以上、約40個以上または約50個以上のCからTへの変化の存在の決定が、
対象が、PD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答体であること
を示す、請求項1~44のいずれか1項記載の方法。
【0412】
46.表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準数と
比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の
数の増加、例えば、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約12倍、少な
くとも約15倍または少なくとも約20倍の増加の決定に応じて、療法を対象に投与する
、または対象のために選択する、請求項1~45のいずれか1項記載の方法。
【0413】
47.CからTへの変化の基準数が療法に対する非応答体からのメラノーマサンプルま
たはメラノーマ由来サンプルにおけるCからTへの変化の数である、請求項46記載の方
法。
【0414】
48.CからTへの変化の基準数がCからTへの変化の約2個である、請求項46また
は47記載の方法。
【0415】
49.対象が、PD-1またはPD-L1のインヒビター以外の治療用物質または治療
方法を含む異なる療法を受けている、または受けたことがある、請求項1~48のいずれ
か1項記載の方法。
【0416】
50.以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定に応じて、前記の異なる療法を中断する、請求項4
9記載の方法。
【0417】
51.前記の異なる療法の中断の後、療法を投与する、請求項49または50記載の方
法。
【0418】
52.療法を、前記の異なる療法と組合せて投与する、請求項49または50記載の方
法。
【0419】
53.前記の異なる療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、放射免疫療法、腫瘍溶
解性ウイルス療法、外科手技またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項49~
52のいずれか1項記載の方法。
【0420】
54.前記の異なる療法が、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾロミド
(temozolomide)、インターロイキン2(IL-2)、インターフェロン、
イピリムマブ(ipilimumab)、BRAFインヒビター、MEKインヒビター、
タリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepve
c)、養子細胞移入またはそれらの任意の組合せの1以上を含む、請求項49~53のい
ずれか1項記載の方法。
【0421】
55.インターフェロンが組換えインターフェロンアルファ2bまたはペグインターフ
ェロンアルファ2bである、請求項54記載の方法。
【0422】
56.BRAFインヒビターがベムラフェニブ(vemurafenib)またはダブ
ラフェニブ(dabrafenib)である、請求項54記載の方法。
【0423】
57.MEKインヒビターがコビメチニブ(cobimetinib)またはトラメチ
ニブ(trametinib)である、請求項54記載の方法。
【0424】
58.養子細胞移入が修飾T細胞または修飾樹状細胞を含む、請求項54記載の方法。
【0425】
59.PD-1のインヒビターが抗PD-1抗体である、請求項1~58のいずれか1
項記載の方法。
【0426】
60.PD-1のインヒビターが、ニボルマブ(nivolumab)(ONO-45
38、BMS-936558またはMDX1106)、ペンブロリズマブ(pembro
lizumab)(MK-3475またはランブロリズマブ(lambrolizuma
b))、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011)、MEDI0680
(AMP-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、BGB-A3
17、SHR-1210(HR-301210、SHR1210またはSHR-1210
)、PF-06801591またはAMP-224から選択される、請求項59記載の方
法。
【0427】
61.PD-L1のインヒビターが抗PD-L1抗体である、請求項1~58のいずれ
か1項記載の方法。
【0428】
62.PD-L1のインヒビターが、アテゾリズマブ(atezolizumab)(
MPDL3280A、RG7446またはRO5541267)、YW243.55.S
70、MDX-1105、デュルバルマブ(durvalumab)(MEDI4736
)またはアベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)から選択される、
請求項61記載の方法。
【0429】
63.体細胞変異が、サイレント突然変異(例えば、同義変異)、癌表現型に関連して
いることが確認されていない体細胞変異、パッセンジャー変異(例えば、クローンの適応
度に対する検出可能な影響を有さない変異)、意義不明な変異体(VUS)(例えば、病
原性が確認可能でなく除外可能でもない変異)、点突然変異、コーディングショート(c
oding short)変異体(例えば、塩基置換またはインデル)、非同義一塩基変
異体(SNV)、スプライス変異体の1以上を含む、請求項1~62のいずれか1項記載
の方法。
【0430】
64.変異(例えば、体細胞変異)が、転位(rearrangement)(例えば
、転座(トランスロケーション))、機能的変異または生殖細胞系列変異の1以上を含ま
ない、請求項1~63のいずれか1項記載の方法。
【0431】
65.体細胞変異がサイレント突然変異、例えば同義変異である、請求項1~64のい
ずれか1項記載の方法。
【0432】
66.体細胞変異が癌表現型に関連していることが確認されていない、請求項1~64
のいずれか1項記載の方法。
【0433】
67.体細胞変異がパッセンジャー変異、例えば、クローンの適応度に対する検出可能
な影響を有さない変異である、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0434】
68.体細胞変異が、意義不明な変異体(VUS)、例えば、病原性が確認可能でなく
除外可能でもない変異である、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0435】
69.体細胞変異が点突然変異である、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0436】
70.体細胞変異が、転位以外、例えば転座以外のものである、請求項1~64のいず
れか1項記載の方法。
【0437】
71.体細胞変異がコーディングショート変異体、例えば塩基置換またはインデルであ
る、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0438】
72.体細胞変異が非同義一塩基変異体(SNV)である、請求項1~64のいずれか
1項記載の方法。
【0439】
73.体細胞変異がスプライス変異体である、請求項1~64のいずれか1項記載の方
法。
【0440】
74.体細胞変異が機能的変異ではない、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0441】
75.変異が生殖細胞系列変異ではない、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【0442】
76.メモリーに機能的に接続された少なくとも1つのプロセッサを含む、メラノーマ
を有する対象を評価するための系であって、前記の少なくとも1つのプロセッサは、実行
されると、
(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答
状態の値を得、ここで、応答状態の値は、対象からのメラノーマサンプルまたはメラノー
マ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重の尺度を含み、
(b)対象を療法に対する応答体(例えば、完全応答体または部分応答体)または非応
答体として特定するように設計されており、
応答状態の基準値に等しい又はそれより大きな応答状態の値は、対象が療法に対する応
答体である又はその可能性が高い、あるいは対象が療法に応答する又はその可能性が高い
ことを示し、あるいは、
応答状態の基準値より小さな応答状態の値は、対象が療法に対する非応答体である又は
その可能性が高い、あるいは対象が療法に応答しない又はその可能性が高いことを示し、
それにより対象を評価する、系。
【0443】
77.腫瘍突然変異荷重の尺度が、対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち

(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)のレベル、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)の数
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の数
の1つ、2つ、3つまたは全ての決定結果を含む、請求項76記載の系。
【0444】
78.対象からのサンプルにおける以下のもの、すなわち、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異の基準レベルと比
較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異のレベルの
増加、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異の存在、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異の基準レベルと比較した場合の、LR
P1B遺伝子における体細胞変異の数の増加、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化の基準レ
ベルと比較した場合の、表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの
変化の数の増加
の1つ、2つ、3つまたは全てに応じて、療法を対象に投与する、または対象のために選
択する、請求項76または77記載の系。
【0445】
79.(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例
えば、1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)

(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬、
(b)メラノーマサンプルもしくはメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重
の決定における、および/または対象におけるメラノーマの治療における使用説明、なら
びに
(c)所望により含まれうる、PD-1もしくはPD-L1のインヒビターまたはその
組成物
を含むキット。
【0446】
80.(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含む、メラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸の精
製または単離調製物であって、
該調製物は、配列決定装置内またはそのような装置において使用されるサンプルホルダ
ー内に配置された該サンプルの腫瘍突然変異荷重を決定するために使用される、調製物。
【0447】
81.(a)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例
えば、1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬と、
(b)(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)
、または
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例
えば、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸とを含
む反応混合物であって、
該反応混合物は、配列決定装置内またはそのような装置において使用されるサンプルホ
ルダー内に配置された該サンプルの腫瘍突然変異荷重を決定するために使用される、反応
混合物。
【0448】
82.(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、
1以上の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を検出しうる1以上の検出試薬を、
(i)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおける体細胞変異(例えば、1以上
の体細胞変異)、
(ii)NF1遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、
(iii)LRP1B遺伝子における体細胞変異(例えば、1以上の体細胞変異)、ま
たは
(iv)表1に記載されている遺伝子の所定セットにおけるCからTへの変化(例えば
、1以上のCからTへの変化)
の1以上を含むメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルに由来する核酸と一緒
にし、それにより反応混合物を得ることを含む、反応混合物の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0449】
図1A図1Aは初期コホートにおける応答体と非応答体との比較における突然変異荷重を示す。
図1B図1Bは検証コホートにおける応答体と非応答体との比較における突然変異荷重を示す。
図1C図1Cは、高、中および低突然変異荷重を有する患者における無進行生存率を示す。
図1D図1Dは、高、中および低突然変異荷重を有する患者における全生存率を示す。
図2A図2Aは潜在的閾値の範囲にわたる突然変異荷重の特性を示す。垂直線は、局所的最高特性および臨床的関連性に基づいて選択された閾値を示す。
図2B図2Bは、3.3突然変異/MB(低突然変異荷重群)および23.1突然変異/MB(高突然変異荷重群)の突然変異荷重カットオフに関する受信者動作特性曲線(ROC)を示す。
図3A図3Aは応答体と非応答体との比較における皮膚/不明原発部位の腫瘍における突然変異荷重を示す。
図3B図3Bは応答体と非応答体との比較における非皮膚原発部位(先端、粘膜、ブドウ膜)の腫瘍における突然変異荷重を示す。
図3C図3Cは応答体と非応答体との比較における遺伝子増幅および欠失を示す。
図4A図4Aは、応答体と非応答体との比較において観察された突然変異の総数を示す。
図4B図4Bは、応答体と非応答体との比較において観察された、CからTへの変化の総数を示す。
図4C図4Cは、応答体と非応答体との比較において観察されたヌクレオチド変異のタイプを示す。
図4D図4Dは、BRAF突然変異、NRAS突然変異、NF1突然変異/喪失、および「三重WT」(BRAF、NRASおよびNF1に関する野生型として定義される)を有する患者の突然変異荷重を示す。BRAF非V600突然変異は、共存NF1突然変異を有する1名の患者を除いて、BRAFコホートに含まれていた。NRASQ61 突然変異および共存NF1突然変異を有する1名の患者はNRASコホートに含まれていた。
図5A図5Aは、ハイブリッド捕捉NGSパネルに含まれる315個の遺伝子を使用するTCGA皮膚メラノーマ(SKCM)サンプルにおける突然変異荷重が、全エクソーム配列決定により評価された突然変異と高度に相関していることを示している。
図5B図5Bは、全エクソーム配列決定(WES)を用いた場合の、TCGAにおける突然変異荷重群および生存率を示す。
図5C図5Cは、試験した315個の(FM)遺伝子を使用した場合の、TCGAにおける突然変異荷重群および生存率を示す。
図6図6は、サンプル当たりの算出突然変異荷重(上)、個々の突然変異、コピー数変異および臨床特性の色分けされたマトリックス(中)、個々のサンプルの突然変異スペクトル(下)を示す。
図7A図7Aは応答体と非応答体との比較における意義不明なLRP1B突然変異/変異体を示す。
図7B図7BはLRP1B突然変異の存在下および非存在下のメラノーマにわたる突然変異の総数を示す。
図7C図7CはLRP1B突然変異の数とメラノーマTCGAにおける全突然変異との関連性を示す。
図8A図8Aは応答体と非応答体との比較におけるT細胞受容体(TCR)クローン性を示す。
図8B図8Bは応答体と非応答体との比較におけるT細胞画分を示す。
図8C図8Cは、他の先行治療を伴わない抗PD-1/抗PD-L1治療の4ヶ月以内に得られたものとして定義される「理想」サンプルにおける応答体と非応答体との比較におけるTCRクローン性を示す。
図8D図8Dは、他の先行治療を伴わない抗PD-1/抗PD-L1治療の4ヶ月以内に得られたものとして定義されるこれらの「理想」サンプルにおけるT細胞画分を示す。
図9A図9Aは突然変異荷重とT細胞受容体(TCR)クローン性との相関性を示す。
図9B図9Bは突然変異荷重とT細胞画分との相関性を示す。
【0450】
実施例
実施例1:標的化次世代シーケンシングPD-1遮断に対する応答のマーカーを特定す

概要
プログラム死-1およびそのリガンド(PD-1/PD-L1)を遮断する治療用抗体
はメラノーマ患者のかなりの割合において持続的な応答を誘導する。この研究は、ハイブ
リッド捕捉に基づく次世代シーケンシング(NGS)パネルを使用して特定された突然変
異の数および/またはタイプがメラノーマにおける抗PD-1に対する応答と相関するか
どうかを判定することを追求した。
【0451】
抗PD-1/PD-L1治療患者からの保管(アーカイブ)メラノーマサンプルを使用
して、ハイブリッド捕捉に基づくNGSを236~315個の遺伝子に対して行い、2つ
の施設からの初期コホートおよび検証コホートに関してT細胞受容体受容体(TCR)配
列決定を行った。
【0452】
抗PD-1または抗PD-L1に応答した患者は、非応答体と比較して、初期コホート
(中央値45.6対3.9 突然変異/MB;P=0.003)および検証コホート(3
7.1対12.8 突然変異/MB;P=0.002)において、より高い突然変異荷重
を有していた。応答率、無進行生存期間(PFS)および全生存期間(OS)は、高突然
変異荷重群においては、中および低突然変異荷重群と比較して優れていた。NF1突然変
異を有するメラノーマは高い突然変異荷重(中央値62.7突然変異/MB)および高い
応答率(74%)を示したが、BRAF/NRAS/NF1野生型メラノーマはより低い
突然変異荷重を示した。これらの保管サンプルにおいては、TCRクローン性は応答を予
測しなかった。NGSプラットフォームにおける315個の遺伝子の突然変異数は、Ca
ncer Genome Atlasサンプルにおける全エクソーム配列決定により検出
されたものと強く相関したが、生存には関連していなかった。
【0453】
したがって、ハイブリッド捕捉に基づくNGSプラットフォームにより決定された突然
変異荷重は応答の可能性により患者を有効に層別化した。このアプローチは、抗PD-1
および/または抗PD-L1療法に対する応答の臨床的に実現可能な予測因子を提供しう
る。
【0454】
方法
患者
保護された健康情報をHIPAA(Health Insurance Portab
ility and Accountability Act)指針に従い精査した。I
RB承認プロトコールに基づき、患者およびサンプルを遡及的に選択した。全ての患者は
転移性メラノーマを有し、臨床試験の一部または標準治療として抗PD-1(ニボルマブ
またはペンブロリズマブ)または抗PD-L1(アテゾリズマブ)治療を開始した。全て
の患者は、放射線撮像により判定された評価可能な応答を示し、または更なるイメージン
グを妨げる急速な臨床経過を示した。断層撮像を研究プロトコールまたは標準治療ごとに
8~12週間隔で行った。医療記録および腫瘍画像の精査により、ベースライン特性、治
療応答、無進行生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を得た。患者がRECIS
T 1.1(Eisenhauer EAら,Eur J Cancer 2009;4
5:228-47;n=30)による古典的な部分応答もしくは完全応答、または少なく
とも12ヶ月間持続する非定型免疫関連応答(n=2)を示した場合には、患者を応答体
として分類し、あるいは患者が応答しなかった場合には、患者を非応答体として分類した
【0455】
ほとんどのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体は研究目的のみのための試
験に付された(n=40)。これらのサンプルは、分析時に評価可能な治療応答を示す利
用可能な残存FFPEを有する全ての患者のものを含んでいた。臨床目的(例えば、利用
可能な突然変異を特定するため;n=25)で試験して得られた抗PD-1/PD-L1
で治療した患者のものも含まれていた。ほとんどのサンプルは治療開始の12ヶ月前以降
に入手した(n=43)。他の検体は治療開始の12ヶ月前以前(n=15)または更に
は治療開始の直後(n=7)に入手した。利用可能な組織を有する全ての治療前サンプル
は厳密に研究目的でImmunoSeqに付された。
【0456】
次世代シーケンシング(NGS)、例えば標的化NGS、および癌ゲノムアトラス(T
CGA)分析
広範に検証され臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Imp
rovement Amendments)で認証された、ハイブリッド捕捉に基づくN
GSプラットフォーム(FoundationOne(登録商標),Foundatio
n Medicine,Cambridge MA)(Frampton GMら,Na
t Biotechnol 31:1023-31,2013)を使用して、DNA配列
決定を行った。初期コホート(n=32)を、236個の癌関連遺伝子からのエクソンお
よび19個の遺伝子のイントロンを評価する形態により配列決定した。第2の独立コホー
ト(n=33)を、315個の遺伝子からのエクソンおよび28個の遺伝子からのイント
ロンを評価する後続形態により配列決定した(以下、「検証コホート」と称される)。D
NA抽出および配列決定のための方法は既に広範に検証され、公開されている(Fram
ptonら,Nat Biotechnol 31:1023-31,2013)。
【0457】
全突然変異荷重を計算するために、表1に記載されている遺伝子を含む試験で検出され
た体細胞突然変異の数を定量化し、その値を、以下のアルゴリズムを使用して、エクソー
ム全体に外挿した。該試験で検出された全てのショート(short)変異改変、塩基置
換およびインデルも計数されたが、非コード変異は計数されなかった。公知の(COSM
ICデータベースにおける公知体細胞変異として存在するもの;cancer.sang
er.ac.uk/cosmic)および可能性のある(腫瘍抑制遺伝子におけるトラン
ケート化)機能状態を有する変異は計数されなかった。この補正は、突然変異荷重の上方
傾斜(upward skewing)を回避するために行われた。なぜなら、この試験
は、癌において反復的に突然変異することが知られている遺伝子を優先的にプロファイリ
ングするからである。dbSNPデータベース(www.ncbi.nlm.nih.g
ov/SNP)、ExACデータベース(2以上のカウントを有するもの)(exac.
broadinstitute.org)およびSGZ(somatic germli
ne zygosity)アルゴリズム(例えば、国際出願公開番号WO2014/18
3078および米国特許出願公開第2014/0336996号(それらの内容の全体を
参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているもの)を使用して、推定
生殖系列変異体を除外し、フィルター処理した。SGZアルゴリズムは、生殖系列変異株
を呼び出す可能性を更に低下させるために、60,000個を超える臨床検体のコホート
を使用して精密化された。メガベース(MB)当たり突然変異荷重を計算するために、計
数された突然変異の総数を、それぞれ236個の遺伝子および315個の遺伝子の形態に
関して0.91および1.25メガベースをカバーする該試験のコード領域標的領域で割
り算した。
【0458】
TCGA(臨床データを伴う263個を含む)からの345個の皮膚メラノーマ腫瘍サ
ンプルからの適合(matched)体細胞突然変異および臨床データを、癌ゲノムデー
タサーバー(Cancer Genome Data Server)-R(CGDS-
R)APIを使用して、CbioPortal(www.cbioportal.org
/public-portal)(これは、CGDSからデータを抽出するための機能の
セットを提供した)から検索した。TCGAを使用して、該試験において配列決定された
315個の遺伝子における非同義突然変異の数を、全エクソーム配列決定(WES)によ
り全コード遺伝子(n=20,022)により特定された全突然変異と比較した。生存デ
ータもこれらのサンプルに関して評価した。
【0459】
T細胞受容体の配列決定
TCR配列決定およびクローン性定量、ならびにT細胞画分の測定を、既に記載されて
いるとおりに(Adaptive Biotechnologies;Tumehら,N
ature 515:568-71,2014;Gerlingerら,J Patho
l,2013)、測定レベルImmunoSeq(商標)を使用して、治療前FFPE腫
瘍サンプルにおいて評価した。T細胞クローン性を以下のとおりに計算した。シャノンエ
ントロピーを、データセットにおける全ての生産的TCR配列のクローン量に関して計算
した。シャノンエントロピーを、ユニーク生産的TCR配列の数の対数で割り算すること
により正規化した。ついでこの正規化エントロピー値を反転させて(1-正規化エントロ
ピー)クローン性の計量値を得た。
【0460】
統計分析
マン・ホイットニーU検定を用いて、応答体と非応答体との間で突然変異荷重を比較し
た。ある範囲の値にわたる突然変異荷重の特性を計算し、ROC曲線を用いて、臨床的に
有意な値の範囲にわたって、低、中および高群の閾値を極大値から選択した。検証コホー
トにおける評価のために、初期コホートから最適な突然変異カットオフを特定するために
ROCを使用した。特定のゲノム変化を有する患者間の応答率を、χ検定を用いて比較
し、複数比較のためには補正しなかった。T細胞クローン性およびT細胞画分を、マン・
ホイットニーU検定を用いて、応答体と非応答体との間で比較した。TCGAサンプルに
おいては、315個の被検遺伝子において特定された突然変異数を、スピアマン検定(C
ancer Genome Atlas Network.Cell 2015;161
:1681-96)を用いて、全てのコード遺伝子(n=20,022)と相関させた。
TCGAにおける生存率も、WESおよび被検遺伝子により計算された突然変異荷重と相
関させ、Cox比例ハザードを用いて、突然変異荷重群間で比較した。PFSおよびOS
をカプラン・マイヤー法により評価し、無進行および/または生存の場合、患者は最後の
フォローアップ時に除外(打ち切り)された。高、中、低突然変異に関するPFSおよび
OSを、ログランク検定を用いて、突然変異群間で比較した。病期、年齢、性別および事
前のイピリムマブに関して調整された突然変異荷重の影響を評価するために、Cox比例
ハザード分析を行った。全ての分析は、GraphPad Prismバージョン6.0
5およびR統計コンピューティングパッケージバージョン3.2.1を使用して行った。
【0461】
結果
ハイブリッド捕捉に基づくNGSにより評価される突然変異荷重は抗PD-1または抗
PD-L1療法に対する応答と相関する
ハイブリッド捕捉に基づくNGSを、抗PD-1または抗PD-L1療法で治療された
患者からのサンプルにおいて行った(表3)。初期コホートにおいては、抗PD-1また
は抗PD-L1応答体における突然変異荷重は非応答体よりも有意に大きかった(中央値
45.6対3.9突然変異/MB;P=0.003、図1A)。検証コホートにおいても
同様の差異が観察された(中央値37.1対12.8突然変異/MB、P=0.002;
図1B)。結果は、治療開始から12ヶ月以内に得られた「最適」サンプルにおいて、他
のサンプルと比較して類似していた(表4)。
【表4】
【表5】
【0462】
治療(療法)に対する応答の可能性により患者を分類するために特定のカットオフが用
いられうるかどうかを評価した。初期コホートにおける最適化ROCを使用した場合、3
つの群への患者の層別化は、二元(バイナリー)カットオフ分類と比較して優れた予測能
力を有するようである(図2A~2B)。患者は高(>23.1突然変異/MB)、中(
3.3~23.1突然変異/MB)および低(<3.3突然変異/MB)突然変異荷重群
に分類された。これらの閾値を用いた場合、優れた客観的応答率(ORR)が高突然変異
荷重群において認められ、これに中および低群が続いた(82%対36%対10%の応答
率;χP=0.003、表5)。これらのカットオフを検証コホートに適用した。同様
に優れたORRが高突然変異荷重群において見出された(88%対29%対25%、χ
P=0.001)。ORRは、初期コホートおよび検証コホートを総計すると、ORRは
高突然変異荷重群(85%)で最大であり、これに中(29%)および低(14%)突然
変異荷重群が続いた(P<0.001)。
【表6】
【0463】
ついで他の臨床成績を評価した。両方のコホートにわたって、無進行生存期間(PFS
)は突然変異荷重と相関した。高突然変異荷重群においては、中および低群と比較して優
れたPFSが認められた(中央値に到達せず対89日対86日、P<0.001;図1C
)。全生存日数(OS)は同様のパターンを示した(中央値に到達せず対300日対37
5日、P<0.001;図1D)。特に、ORRは中突然変異荷重群においては低突然変
異荷重群より高いようであったが、PFSおよびOSはこれらの群間で類似していた。年
齢、性別、病期および事前のイピリムマブに関して調整されたCox比例ハザード分析を
用いた場合にも、高突然変異荷重は優れたOSおよびPFSに関連づけられた(PFSに
関しては、高対低HR、0.14、P<0.001;OSに関しては、HR、0.09、
P<0.001;表6~7)。
【表7】
【表8】
【0464】
非皮膚メラノーマ(先端(acral)サブタイプを含む)は皮膚由来のものより遥か
に少数の突然変異を、そしておそらく、免疫療法に対する、より低頻度の応答を有するが
、原発不明メラノーマの突然変異プロファイルは皮膚メラノーマに酷似している(Hod
is E,Watson IR,Kryukov GVら,Cell 150:251-
63,2012;Krauthammerら,Nat Genet 44:1006-1
4,2012;Postowら,Oncologist 18:726-32,2013
;Lukeら,Cancer,2013;Johnsonら,Oncologist 2
0:648-52,2015)。非皮膚メラノーマから交絡を排除するために、皮膚/原
発不明のメラノーマにおける突然変異荷重を別々に評価し、より高い突然変異荷重が応答
体において観察された(中央値39.0対14.4突然変異、P<0.001;図3A
。非皮膚メラノーマを有する患者における14名の患者(応答体は2名だけであったが)
の突然変異荷重における差は認められなかった(中央値4.5対2.2突然変異/MB、
P=0.714;図3B)。
【0465】
次に、特定のタイプのゲノム変化が応答と相関するかどうかを評価した。全ての特定さ
れた突然変異(公知または推定機能的重要性を有するものを含む)は治療に対する応答と
強く関連していた(中央値46.5対6.0突然変異変異、p<0.001;図4A)。
また、CからTへの変化(紫外線損傷に強く関連している)は応答体において、より多数
であることも判明した(中央値33.5対3.0変化、p<0.001;図4B)。ほと
んどの他のヌクレオチド変異体も、より低い頻度ではあるものの、応答体において、より
一般的に見出された(図4C)。これとは対照的に、遺伝子増幅および欠失は群間で類似
していた(図3C)。
【0466】
ついで、突然変異荷重が、特定の「ドライバー突然変異」により定められるサブセット
間で異なるかどうかを調べた。BRAF、NRAS、NF1および「三重WT」(野生型
)メラノーマの間で顕著な差異が観察された(それぞれ、中央値12.0対17.6対6
2.7対2.2突然変異/MB、p<0.001)(図4D)。NF1突然変異を有する
メラノーマは慢性紫外線損傷および高い突然変異荷重に既に関連づけられている(Can
cer Genome Atlas Network.Cell 161:1681-9
6,2015;Krauthammerら,Nat Genet 44:1006-14
,2012)。これとは対照的に、「三重WT」群は極めて低い突然変異荷重を有してい
た。
【0467】
ハイブリッド捕捉に基づくこのNGSパネルにおいて配列決定された236~315個
の遺伝子の突然変異荷重が、WESによる全ゲノム突然変異荷重の頑強な相関物として働
きうるかどうかを決定するために、345個の保管TCGAサンプルを評価した(Can
cer Genome Atlas Network.Electronic addr
ess imo,Cancer Genome Atlas N:Genomic Cl
assification of Cutaneous Melanoma.Cell
161:1681-96,2015)。これらの遺伝子において特定された突然変異の総
数はこれらのサンプルにおける総エクソーム突然変異数と強く相関した(R=0.995
、p<0.001;図5A)。この相関性は、高い突然変異荷重を有するサンプルにおい
て特に頑強であるようであった。突然変異荷重が、選択されていない患者(抗PD-1/
PD-L1を受けていない)における結果の改善に関連しているかどうかを評価するため
に、評価可能な生存データ(n=263)を有するTCGAサンプルにおいて生存性を評
価した。試験した遺伝子(P=0.14)またはWES(P=0.06)を使用した場合
には、有意な相関は認められなかった。低、中および高突然変異荷重群に関しては、WE
S(中央値、OS 43.4月対103.0月対68.0月、P=0.001)および被
検遺伝子(中央値47.3対112.5月対61.5月、P=0.008)を使用した場
合のOSにおける差異。3つの突然変異荷重群を用いた場合、中突然変異荷重を有する患
者が最長の生存期間を示した(中対低に関してHR=2.1、P=0.008;図5B
5C)。
【0468】
特定の突然変異および抗PD-1または抗PD-L1療法に対する応答
次に、特定の癌関連遺伝子における突然変異を調べて、抗PD-1に対する応答に対す
るそれらの影響を評価した。この分析は、機能的であると予想された既に記載されている
変異に焦点を合わせており、特に示されていない限り、意義不明な変異体(VUS)は除
外された。応答体または非応答体において、より頻繁に変異していた幾つかの遺伝子が特
定された(表8、図6)。幾つかのゲノム変異は突然変異荷重と相関した。例えば、NF
1変異は応答体において、より一般的であったが(50%対21%、p=0.015;O
RR74%)、「三重WT」患者は、非応答群において、より多かった(13%対35%
、p=0.045)。より小さい数において、応答は、免疫療法応答(NRAS;Joh
nsonら,Cancer Immunol Res 3:288-95,2015)、
T細胞排除(CTNNB1;Sprangerら,Nature,523:231-5,
2015)またはPD-L1調節(MYC;Caseyら,Science 352:2
27-31,2016)に既に関連づけられている遺伝子変異と相関した。PTENの喪
失は(膠芽腫における)PD-L1発現および(メラノーマにおける)免疫抑制性サイト
カインプロファイルに関連づけられている(Pengら,Cancer Discov,
2015)。PTEN喪失を有する患者は共に応答しなかったが、応答体と非応答体とを
比較した際にPTEN不活性化突然変異の頻度に有意差が認められた(13%対15%、
p=0.76)。MYC増幅は非応答体において、より一般的であるようであったが、結
論はサンプルサイズにより制限された。BRCA2突然変異(VUSを含む)は、応答体
(32名中5名)においては、非応答体(33名中2名)と比べて一般的であるようであ
った。BRCA2突然変異を有するメラノーマは、これらの突然変異を欠いているものよ
り高い突然変異荷重を有していた(中央値68.2対15.9突然変異/MB;P=0.
028;Hugoら,Cell 165:35-44,2016)。
【表9】
【0469】
LRP1B突然変異および全突然変異荷重
LRP1Bにおける頻繁な突然変異が観察された。この推定腫瘍抑制因子は、一般脆弱
部位(common fragile site)(重大なゲノム不安定性の領域;Sm
ithら,Cancer Lett232:48-57,2006)と称される大きな1
.9MBの遺伝子である。仮説は、ここで検出された突然変異が、全突然変異荷重および
応答(全エクソン突然変異荷重の「バイオメーター」)に対する単一遺伝子代用物として
役立ちうるというものであった。応答体のうち11名の患者がLRP1B突然変異を有し
、一方、非応答体は1名であった(34%対3%、P=0.008)。VUSに拡張した
場合、応答者は平均で2.8個の突然変異/VUSを有し、一方、非応答者に関しては0
.9個であった(P=0.016;図7A)。応答体の75%が1個以上の突然変異/V
USを有し、一方、非応答体の38%がそれを有していた(p=0.002)。より大き
な集団を調べるために、TCGAの問合せを行った(Cancer Genome At
las Network.Cell 161:1681-96,2015)。LRP1B
突然変異を有するメラノーマは、LRP1B突然変異を欠くものよりも有意に多くの全突
然変異を有し(中央値542対219、p<0.001;図7B)、突然変異荷重は腫瘍
当たりのLRP1B突然変異の数と相関した(スピアマンのR=0.54、p<0.00
1;図7C)。これらのデータは、単一の頻繁突然変異遺伝子でさえもその配列決定がゲ
ノム全体の突然変異荷重についての洞察をもたらし、更に抗PD-1応答と相関すること
を示唆している。LRP1B突然変異が内因性免疫効果を有するかどうかは依然として不
明である。
【0470】
T細胞受容体(TCR)クローン性は臨床的利益または突然変異荷重と相関しない
ついで、T細胞浸潤およびクローン性が突然変異荷重と相関し、このアプローチの予測
能力を高めうるかどうかを、利用可能な腫瘍サンプル(n=42)においてTCR NG
Sを行うことにより調べた。TCR β鎖レパートリーのクローン性の増加(および多様
性の減少)は腫瘍特異的抗原集団の既存の浸潤を示している可能性があり、抗PD-1に
対する応答に関連づけられている(Tumehら,Nature 515:568-71
,2014)。TCRクローン性は抗PD-1に対する応答と相関しないことが観察され
た(中央値0.11対0.11、P=0.54;図8A)。更に、T細胞画分は応答と相
関しなかった(中央値0.13対0.09、P=0.11;図8B)。時間または介入療
法はTCRクローン性/T細胞浸潤を調節しうるため、インターバル治療を伴わない抗P
D-1療法の開始から4ヶ月以内に得られたサンプルの一部を評価した。この群(n=1
4)において、応答体間でクローン性およびT細胞画分を増加させる非統計的に有意な傾
向が観察された(図8C~8D;Tumehら,Nature 515:568-71,
2014)。また、T細胞クローン性およびT細胞画分は突然変異荷重と相関しなかった
図9A~9B)。
【0471】
この研究において、数百個の遺伝子のハイブリッド捕捉に基づくNGSプラットフォー
ムにより検出された突然変異数は抗PD-1/抗PD-L1からの利益と強く相関するこ
とが判明した。メラノーマにおける突然変異荷重と抗PD-1応答との間の関連性が示さ
れ、検証された。特に、患者を群(例えば、「高」、「中」および「低」突然変異荷重コ
ホート)に層別化することにより、進行性メラノーマおよびおそらくは他の癌における抗
PD-1/抗PD-L1に対する応答の臨床的に実現可能なマーカーが提供された。本研
究では、「中」突然変異荷重群と「低」突然変異荷重群との間で生存性の差は認められず
、このことは「閾値効果」の存在を示唆している可能性があり、応答および生存に対する
効果が「高」突然変異荷重群において最も顕著でありうることを示唆しているであろう。
【0472】
幾つかの遺伝子における変異は抗PD-1からの利益と相関した。ある遺伝的変化は免
疫微小環境に直接的な影響を及ぼしうるが、この知見は、他の変異が単に突然変異荷重(
例えば、NF1、LRP1BおよびBRCA2)の増加と相関し、または寄与しうること
を示唆している。
【0473】
要約すると、ハイブリッド捕捉に基づくNGSプラットフォームによって決定された進
行性メラノーマにおける突然変異荷重は2つの独立したコホートにおける抗PD-1また
は抗PD-L1療法に対する応答と強く相関した。これは「高」突然変異荷重群(これは
研究サンプルの40%以上を構成していた)で特に顕著であった。これらのデータは、こ
の厳密に検証されたアプローチによる突然変異荷重の試験が治療の意思決定を改善して、
高価な薬剤のより合理的な使用を可能にし、精密免疫療法のこの新時代を増進しうること
を示唆している。
【0474】
参照文献の援用
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許および特許出願の全体を、各個の刊行物
、特許または特許出願が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示され
ている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。矛盾する場合には、
本明細書における任意の定義を含む本出願が優先する。
【0475】
公的データベース、例えば、tigr.orgにおけるワールドワイドウェブ上でIn
stitute for Genomic Research(TIGR)により維持さ
れているもの、および/またはncbi.nlm.nih.gov.におけるワールドワ
イドウェブ上でNational Center for Biotechnology
Information (NCBI)により維持されているものにおける登録と相関
するアクセッション番号を参照する任意のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も、
それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0476】
均等物
当業者は、常套的な実験のみを用いて、本明細書に記載されている特定の実施形態に対
する多数の均等物を認識し、または確認しうるであろう。そのような均等物は以下の特許
請求の範囲に含まれると意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対象のためのPD-1またはPD-L1のインヒビターを含む療法に対する応答状態の値を得、ここで、応答状態の値は対象からのメラノーマサンプルまたはメラノーマ由来サンプルにおける腫瘍突然変異荷重(TMB)の尺度を含み、
(b)応答状態の値の増加、例えば、応答状態の基準値と比較した場合のその増加に応じて、療法を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む、メラノーマを有する対象の治療方法。
【外国語明細書】