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特開2023-1009冷菓、冷菓用液状組成物、及び冷菓の製造方法
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  • 特開-冷菓、冷菓用液状組成物、及び冷菓の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001009
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】冷菓、冷菓用液状組成物、及び冷菓の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/32 20060101AFI20221222BHJP
   A23G 9/20 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A23G9/32
A23G9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036492
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】63/211,564
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 央往
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GB21
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK05
4B014GK07
4B014GK08
4B014GK12
4B014GL06
4B014GL09
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP04
4B014GP13
4B014GP25
4B014GQ12
(57)【要約】
【課題】冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓及びその製造方法の提供。
【解決手段】オーバーランが0%を超える組織を含み、前記組織がベタインを含む、冷菓。ベタインを含む冷菓用液状組成物を調製し、前記冷菓用液状組成物を、凍結後の前記冷菓用液状組成物のオーバーランが0%を超えるように凍結して凍結物を得て、前記凍結物を成形する、冷菓の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーランが0%を超える組織を含み、
前記組織がベタインを含む、冷菓。
【請求項2】
前記ベタインがトリメチルグリシンである請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
前記組織が乳化剤をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の冷菓。
【請求項4】
前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項3に記載の冷菓。
【請求項5】
前記冷菓がみぞれである請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の冷菓。
【請求項6】
0%を超えるオーバーランを有する組織を含む冷菓用の液状組成物であって、
ベタインを含む、冷菓用液状組成物。
【請求項7】
前記ベタインがトリメチルグリシンである請求項6に記載の冷菓用液状組成物。
【請求項8】
乳化剤をさらに含む請求項6又は請求項7に記載の冷菓用液状組成物。
【請求項9】
前記乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項8に記載の冷菓用液状組成物。
【請求項10】
前記冷菓がみぞれである請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の冷菓用液状組成物。
【請求項11】
請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の冷菓用液状組成物を調製し、
前記冷菓用液状組成物を、オーバーランを付与してフリージングする、冷菓の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の冷菓用液状組成物を調製し、
前記冷菓用液状組成物と氷粒とを混合し、
前記氷粒と混合された前記冷菓用液状組成物を、オーバーランを付与してフリージングする、冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓、冷菓用液状組成物、及び冷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に冷菓は、原料液を調製し、その原料液をフリージングし、得られた部分凍結物を冷菓の形状に成形し、さらに冷却して硬化することによって製造される。冷菓がみぞれの場合には、原料液又は部分凍結物に氷粒が混合される。このような冷菓は、冷凍庫から取り出した直後は硬くて喫食しにくい場合がある。例えば、冷菓がカップに充填された形態の場合には、冷凍庫から取り出した直後はサジ通りが悪い場合がある。また、スティックが刺さったバー形態の場合には、冷凍庫から取り出した直後は硬くて歯がとおりにくい場合がある。このような場合、冷凍庫から取り出した後、温度が上がって柔らかくなるまで、そのまま待つことになる。そこで、冷凍庫から取り出した後、可及的速やかに喫食できる冷菓が消費者から望まれている。
【0003】
特許文献1には、サジ通りが良く軟らかいアイスクリームを製造する方法として、乳原料を脱塩した後に、酵素を添加して乳糖を分解する方法が記載されている。特許文献2には、複数種の部分凍結組成物を得る工程と、前記複数種の部分凍結組成物を混在させる工程と、該混在させた部分凍結組成物を一括的に凍結させる工程を有する方法が記載されている。
特許文献3には、ブドウ糖を配合して組織を柔らかくしたアイスクリームが記載されている。特許文献4には、ブドウ糖及びグリセリンを配合して組織を柔らかくしたアイスクリームが記載されている。
特許文献5には平均分子量が450以下のデキストリンを1重量%以上配合して硬度を低下させたアイスクリームが記載されている。
特許文献6には、冷菓基材に氷片を混合して氷片の大きさを調整することによってスプーン通りをよくする技術が記載されている。
一方、特許文献7には、パラチノースと、デキストリン又はデキストリン及び水溶性食物繊維を所定量含む冷菓用液状組成物が記載されている。また、この冷菓用液状組成物にベタインを配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/077739号
【特許文献2】特開2015-128423号公報
【特許文献3】特開昭56-23850号公報
【特許文献4】特開昭56-23851号公報
【特許文献5】特許第3427997号公報
【特許文献6】特開2000-316481号公報
【特許文献7】国際公開第2019/168002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された技術を実施するためには新たな設備が必要となるため、特許文献1や特許文献2の技術では、設備投資を抑制したいニーズに答えることができない。
特許文献3や特許文献4のように特定の甘味成分を配合して冷菓の組織を柔らかくする方法では、その甘味成分によって冷菓の味わいが影響されてしまい、製品設計の観点からみれば、冷菓の味わいを決める際の制約になってしまう。
特許文献5のようにデキストリンを配合する場合は、大量のデキストリンを配合することから冷菓の原料液の固形分が高くなる傾向がある。原料液の固形分が高くなると原料液の粘度が上昇するため、殺菌工程等が行いにくくなる問題が生じる。原料液の固形分を低くしようとすると、乳成分や脂肪の含量を落とさざるを得ないため、やはり風味が制約される。すなわち、特許文献5の技術も、製品設計の観点からみれば冷菓の味わいを決める際の制約になってしまう。
特許文献6のように冷菓基材に氷片を混合してその氷片の大きさを調節する方法は、氷片だけの効果にすぎず、冷菓基材そのものの効果ではないため、冷菓を軟らかくする点で十分とはいえず、より軟らかい冷菓が望まれる。
一方、特許文献7の冷菓用液状組成物は、家庭等で冷凍した後に溶かしながら容器から吸い出して飲食する態様や、可撓性容器に充填されたシャーベット状飲料を冷凍した後にもみほぐして飲用する態様のものである(特許文献7段落[0004]参照。)。すなわち、特許文献7の冷菓用液状組成物は、パウチ等の容器に充填された状態で凍結されるものであるため、その凍結物はオーバーランを有さないアイススラリーといえるものであり、一般的な冷菓とは異なる。また、特許文献7には、ベタインを配合することの効果について何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓、並びに冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓が得られる冷菓用液状組成物及び冷菓の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]オーバーランが0%を超える組織を含み、
前記組織がベタインを含む、冷菓。
[2]前記ベタインがトリメチルグリシンである[1]の冷菓。
[3]前記組織が乳化剤をさらに含む[1]又は[2]の冷菓。
[4]前記乳化剤がショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む[3]の冷菓。
[5]前記冷菓がみぞれである[1]乃至[4]のいずれかの冷菓。
[6]0%を超えるオーバーランを有する組織を含む冷菓用の液状組成物であって、
ベタインを含む、冷菓用液状組成物。
[7]前記ベタインがトリメチルグリシンである[6]の冷菓用液状組成物。
[8]乳化剤をさらに含む[6]又は[7]の冷菓用液状組成物。
[9]前記乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む[8]の冷菓用液状組成物。
[10]前記冷菓がみぞれである[6]乃至[9]のいずれかの冷菓用液状組成物。
[11][6]乃至[9]のいずれかの冷菓用液状組成物を調製し、
前記冷菓用液状組成物を、オーバーランを付与してフリージングする、冷菓の製造方法。
[12][10]の冷菓用液状組成物を調製し、
前記冷菓用液状組成物と氷粒とを混合し、
前記氷粒と混合された前記冷菓用液状組成物を、オーバーランを付与してフリージングする、冷菓の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓、並びに冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓が得られる冷菓用液状組成物及び冷菓の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】冷菓の硬度の測定方法を説明するための概略図である。
図2】冷菓の硬度の測定結果を示すグラフの一例である。
図3】冷凍庫から取り出した後の冷菓の温度の測定方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、以下の定義が適用される。
本発明における冷菓は、一般的な「冷菓」に分類されるものをいい、具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓を挙げることができる。アイスクリーム類とは、乳又は乳を原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0質量%以上を含むものをいう。なおこの場合は、はっ酵乳を含まない場合がある。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。一方、乳固形分3.0質量%未満のものは、アイスクリーム類ではなく、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。なお、後記する「みぞれ」も冷菓に包含される。
【0011】
「原料液」は、冷菓を形成する前の段階である液状のものであり、冷菓に配合される各種成分の一部又はすべてを含む。以下、凍結前の原料液を「冷菓用液状組成物」と表現することがある。
「組織」は、原料液が凍結されたものである。
「みぞれ」は、組織と氷粒とが混在している状態の冷菓である。組織と氷粒とが混在している状態としては、例えば、組織が連続相を形成し、その中で氷粒が分散相を形成している態様が例示できる。みぞれは、氷菓であってもよく、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)であってもよい。
【0012】
「オーバーラン」は、組織の中に空気が包含されている割合を示す指標であり、空気を含有させる前の容量(原料液の容量)に対する含有空気容量の百分率の値である。例えばオーバーランが100%の組織は、空気を含有させる前と同容量の空気を含む。
「フリージング」とは、低温で撹拌しながら氷結晶を増加させる操作を意味する。
「部分凍結物」は、氷結晶を含み、流動性を有するものを意味する。一般には、原料液をフリージングすると部分凍結物になる。
「硬化」とは、水分が凍結し流動性を失った状態になることを意味する。「硬化する」又は「硬化させる」とは、例えば-30~-35℃に冷却することによってそのような硬化の状態にすることである。一般には、部分凍結物を「硬化する」と組織になる。
「凍結点」は、特に断りのない限り、液状にした試料を雰囲気温度-25℃で冷却しながら品温を経時的に測定し、液体が固体になる際の発熱反応により温度が下降しないポイント(凝固点)における温度である。
脂肪の含有量(質量%)は、レーゼ・ゴットリーブ法により測定する。
固形分は、水分以外の成分である。固形分の含有量(質量%)は、原材料の水分の含有量(質量%)から算出する(算出式:100-水分の含有量(質量%)=固形分の含有量)。
「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0013】
組織中の気泡の平均径は、光学顕微鏡写真から得られる100個の気泡の直径のメジアン径である。気泡の直径のメジアン径は、冷菓を-15℃の冷凍室に載置し、-15℃の環境下で温度調整した光学顕微鏡を使用して組織の顕微鏡写真を撮像し、この顕微鏡写真の画像処理解析により100個の気泡の直径(単位:μm)を測定して求められる。
組織中の氷結晶の平均粒子径は、光学顕微鏡写真から得られる100個の氷結晶の円相当径のメジアン径である。氷結晶の円相当径のメジアン径は、冷菓を-15℃の冷凍室に載置し、-15℃の環境下で温度調整した光学顕微鏡を使用して組織の顕微鏡写真を撮像し、この顕微鏡写真の画像処理解析により100個の氷結晶それぞれの面積を測定し、その面積値をもとに、氷結晶を球円とみなしたときの断面の直径(円相当径)を算出して求められる。
氷粒の平均粒子径は、光学顕微鏡写真から得られる100個の氷粒の円相当径のメジアン径である。氷結晶の平均粒子径と同様の測定方法によって測定される。
【0014】
顕微鏡観察及び撮像において、光学顕微鏡及び画像処理システムとしては、例えば株式会社ヒラサワ製のKH-7700を、撮像を行う際の低温環境ボックスとしては、例えば株式会社ヒラサワ製の低温グローブボックス AXLL-900を、対物レンズとしては、例えば株式会社HIROX製のMX(G)-10C(350倍)を採用することができる。なお、顕微鏡観察及び撮像の条件としては-15℃環境下が望ましい。
【0015】
硬度は、直径4mmの円柱形のステンレス製の測定用治具を備えたテクスチャーアナライザーにより測定する。このテクスチャーアナライザーとしては英弘精機株式会社製のTA-XT Plusを使用する。
図1を参照して、冷菓の硬度の測定方法をより具体的に説明する。
硬度の測定に際しては、予め、冷菓12がカップ14に充填されたカップ入り冷菓10を作製し、このカップ入り冷菓10を測定に供する。
図1に示すように、カップ入り冷菓10を、測定台22の上に置き、カップ入り冷菓10の上方から下方に向かって、図示しないテクスチャーアナライザーに接続された測定用治具24(直径4mm円柱形、ステンレス製)を、1mm/秒の速度で降下させていく。このとき、測定用治具24の下端が冷菓12表面に接触した点からの測定用治具24の突刺し深度D(冷菓12表面からの貫入深さ)と、その突刺し深度Dにおける硬度(反発の強さ)を測定する。
なお、以下、特定の突刺し深度D(例えば、D=4mm)において測定された硬度の数値を「測定硬度」と記載することがある。
【0016】
図2は、硬度を測定した結果を示すグラフの一例である。
図2のグラフにおいて、縦軸は硬度(g)、横軸は測定用治具の突刺し深度D(mm)である。なお、図2の例においては、突刺し深度Dが4mmを超えたところで測定を終了している。
図2に示すように、突刺し深度Dが深くなるにつれて、硬度が大きくなる傾向がある。
図2のグラフにおいて、点線は、特定の突き刺し深度D(D=3mmおよびD=4mm)と、これらの突き刺し深度Dに対応する測定硬度との関係を示している。すなわち、図2の場合、突き刺し深度3mmにおける測定硬度は2326g、突き刺し深度4mmにおける測定硬度は3118gになる。
【0017】
〔冷菓〕
本発明の一態様に係る冷菓(以下、「本冷菓」とも記載する。)は、オーバーランが0%を超える組織を含む。組織については後で詳しく説明する。
本冷菓は、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスのいずれであってもよい。
【0018】
本冷菓の好ましい一実施形態は、みぞれである。冷菓のなかでは、みぞれがもっとも本発明の効果を享受できる。
みぞれは、組織に加えて、氷粒を含む。氷粒は、一般の冷菓においてフリーザー内で結晶化して生成する氷結晶とは別なものである。氷結晶は原料液中の水分が凍結したものであるが、氷粒は外部から原料液に混合したものである。従って、みぞれは、氷結晶以外の氷粒を含有する冷菓、と言いかえることもできる。
【0019】
みぞれは、例えば原料液を調製し、この原料液に氷粒を混合して原料混合液とし、この原料混合液をフリーザーに通過させてフリージングすることによって製造できる。このとき、原料液に氷粒を混合せずに原料液のみをフリーザーに通過させると、みぞれ以外の一般的な冷菓になる。ゆえに、原料液のみフリーザーを通過させてまず一般的な冷菓を製造し、その後、氷粒を混合してみぞれにすることもできる。
いずれにしても、みぞれにおいて、原料液が凍結した組織は、通常、原料液をフリーザーにそのまま通過させてフリージングした冷菓と同じであるから、一般的な冷菓に相当すると考えてよい。従って、みぞれは、一般的な冷菓と氷粒とが混在しているものといいかえることもできる。
【0020】
なお、一般にみぞれにおいては、フリージング工程の前に氷粒を混合することが多い。これは、フリージング工程によって撹拌作用が加えられ、氷粒と組織とがよく混ざるという利点があるためである。また、原料液に脂肪を含有するみぞれであれば、フリージング工程を経ることによって氷粒の外表面に脂肪凝集が発生していると推測される。フリージング工程においては、角ばった氷粒の鋭利な先端によって脂肪球が破壊されて脂肪凝集が促進され脂肪皮膜が形成されると考えられるためである。一般に、脂肪を含有するみぞれを極端に長く冷凍保存していると氷粒が肥大して食感や組織が変化してしまう場合があるが、脂肪被膜にはこのような氷粒の肥大を抑止する利点がある。また、脂肪皮膜は製造工程中の氷粒同士の合体を抑制するため、合体した氷粒の影響で配管がつまる等の製造工程上の問題を解消することができ、さらに合体した氷粒による食感や組織の悪化を抑止することができる利点もある。
【0021】
<組織>
組織は、ベタインを含む。
組織は、乳化剤をさらに含んでいてもよい。
組織は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ベタイン及び乳化剤以外の他の原料をさらに含んでいてもよい。
【0022】
(ベタイン)
ベタインは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物(分子内塩)である。ベタインは、食品添加物として使用可能なものであればよい。ベタインの例としては、アミノ酸のN-トリアルキル置換体が挙げられる。
アミノ酸のN-トリアルキル置換体において、アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン等のモノアミノモノカルボン酸(中性アミノ酸)が挙げられる。N-トリアルキル置換体におけるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、1が特に好ましい。ベタインは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ベタインとしては、経済性、安全性、入手容易性の点から、トリメチルグリシンが好ましい。
【0023】
組織中のベタインの含有量は、0質量%を超える量であればよいが、冷菓を軟らかくする効果を考えれば、組織の総質量に対し、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.104質量%以上、0.11質量%以上、0.12質量%以上、0.14質量%以上、0.15質量%以上、0.16質量%以上、0.18質量%以上、0.2質量%以上、0.2質量%超、0.24質量%以上、0.25質量%以上、0.26質量%以上、0.3質量%以上、0.32質量%以上、0.34質量%以上、0.35質量%以上、0.36質量%以上、0.38質量%以上、0.4質量%以上、0.416質量%以上、0.45質量%以上、0.5質量%以上、0.55質量%以上、0.6質量%以上、0.65質量%以上、0.7質量%以上、0.75質量%以上、又は0.8質量%以上が好ましい。
また、組織中のベタインの含有量は、風味の点では、組織の総質量に対し、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、2.0質量%未満、1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、又は1.0質量%以下が好ましい。
上記ベタインの含有量の下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。
【0024】
(乳化剤)
組織にオーバーランを付与する場合、より高いオーバーラン値が得られる点で、乳化剤を含むことが好ましい。原料液が脂肪を含有する場合にも乳化剤を含むことが好ましい。
乳化剤としては、食品に使用される一般的な乳化剤を使用することができ、例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等が挙げられる。乳化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
乳化剤としては、ベタインとの併用によって冷菓の硬度がより低くなる点で、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、グリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種と、他の乳化剤とを併用してもよい。
【0026】
乳化剤の含有量は、より高いオーバーラン値を得る効果、冷菓をより軟らかくする効果を考えれば、組織の総質量に対し、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.12質量%以上、0.14質量%以上、0.16質量%以上、0.18質量%以上、又は0.2質量%以上が好ましい。
また、組織中の乳化剤の含有量は、風味の点では、組織の総質量に対し、1.50質量%以下、1.00質量%以下、0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、0.60質量%以下、0.50質量%以下、0.45質量%以下、0.40質量%以下、0.35質量%以下、0.30質量%以下、又は0.25質量%以下が好ましい。
上記乳化剤の含有量の下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。
【0027】
(他の原料)
他の原料としては、例えば、甘味料、乳成分、卵成分、安定剤、植物油脂、その他の添加剤が挙げられる。
【0028】
本発明における甘味料は、冷菓に甘味を付与する原料を意味し、糖類及び糖類以外の甘味を付与する原料を含む概念である。
甘味料としては、冷菓の原料として公知のものを適宜使用することができる。具体例としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖)、水あめ、粉飴、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイド等の高甘味度甘味料が挙げられる。甘味料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
原料液における甘味料の含有量は、所望の甘味が得られるように設定される。
甘味料はパラチノースを含まなくてもよいが、パラチノースを含む場合、パラチノースの含有量は、風味の点から、組織の総質量に対して6質量%未満とすることが好ましい。
【0029】
乳成分の例としては、生乳、牛乳、クリーム、バター、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、チーズ、ホエイ、ホエイ蛋白濃縮物等の乳製品が挙げられる。乳成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
卵成分の例としては、卵黄、卵白、全卵、加糖卵、卵黄油が挙げられる。卵成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
卵黄は乳化作用を有するため、卵成分を含有させることで、乳化剤の使用量を低減することができる。あるいは乳化剤を使用しなくても良好な乳化状態を得ることができる。
【0031】
安定剤の例としては、ゼラチン、ペクチン、繊維素グルコール酸ナトリウム(カルボキシメチルセルロース)、グアガム、ローカストビーンガム、カラギナン、微結晶セルロース、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、マクロホモプシルガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、大豆多糖類が挙げられる。安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
植物油脂の例としては、パーム油、パーム核油、やし油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サンフラワー油が挙げられる。植物油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
その他の添加剤としては、冷菓における公知の成分を使用することができ、例えば、果汁、食塩、酸味料、香料、着色料、酒類、消泡剤、強化剤、酵素、酸化防止剤、調味料、その他の食品添加剤が挙げられる。
【0034】
組織は、0%を超えるオーバーランを有する。換言すれば、組織は気泡を含む。
組織のオーバーランは、2%以上、4%以上、6%以上、8%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、又は35%以上が好ましい。オーバーランが前記下限値以上であれば、軽いさっぱり感を特徴とした風味特性が得られ易い。
また、組織のオーバーランは、200%以下、190%以下、180%以下、160%以下、150%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、105%以下、100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、88%以下、86%以下、84%以下、82%以下、80%以下、78%以下、76%以下、74%以下、72%以下、70%以下、68%以下、66%以下、64%以下、62%以下、60%以下、58%以下、56%以下、54%以下、52%以下、50%以下、48%以下、46%以下、又は45%以下が好ましい。オーバーランが前記上限値以下であれば、濃厚感を特徴とした風味特性が得られ易い。
上記オーバーランの下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。
【0035】
組織中の気泡の平均径は、80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましく、40μm以下が最も好ましい。気泡の平均径の下限は特に限定されないが、例えば2μmである。気泡の平均径が前記上限値以下であれば、食感がより優れる傾向がある。
【0036】
組織中には、典型的には、氷結晶が存在する。
組織において、氷結晶の平均粒子径は、100μm未満が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、60μm以下が特に好ましく、50μm以下が最も好ましい。氷結晶の平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば1μmである。氷結晶の平均粒子径が前記上限値以下であれば、喫食した際の舌触りがより優れる傾向がある。
【0037】
組織の凍結点は、安定製造適性を考慮すると、さほど高くないほうが望ましく、例えば-2℃以下、好ましくは-2.5℃以下、より好ましくは-3℃以下、さらに好ましくは-3.5℃以下、特に好ましくは-4℃以下である。
なお、組織の凍結点は、原料液の凍結点と同じである。
【0038】
<氷粒>
氷粒は、どのようなものであってもよいが、大径の氷を砕いて細かくした砕氷であれば、氷粒の大きさを容易に調節することができるため好ましい。
氷粒に各種の成分を含有させて風味を呈する氷粒にしてもよい。
【0039】
氷粒の平均粒子径は、0.1mm(100μm)以上が好ましく、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、又は1.1mm以上がより好ましい。氷粒の平均粒子径の上限は、特に限定されないが、例えば30mm以下、25mm以下、20mm以下、18mm以下、16mm以下、14mm以下、12mm以下、10mm以下、又は8mm以下である。
【0040】
氷粒は、最も長い軸上での長さが1.0mmを超えていてもよく、最も長い軸上での長さが1.0mm以下であってもよく、それらが混在していてもよい。
氷粒は、最も長い軸上での長さの平均値が0.06mm~1.0mmであって、その氷粒の80%以上、好ましくは90%以上が0.06mm~1.0mmの範囲の長さあってもよく、最も長い軸上での平均値が0.06mm~0.6mmであって、その80%以上、好ましくは90%以上が0.06mm~0.6mmの範囲の長さにあってもよく、最も長い軸上での平均値が0.11mm~0.6mmであって、その80%以上、好ましくは90%以上が0.11mm~0.6mmの範囲の長さにあってもよい。
しかしながら、喫食する際に氷粒の食感がより感じやすくなることを重視するのであれば、氷粒の最も長い軸上での長さが1.0mmを超えることが好ましく、1.1mm以上、1.2mm以上、1.3mm以上、1.4mm以上、又は1.5mm以上がより好ましい。また、氷粒の長さの平均値が1.0mmを超えると好ましく、さらにその氷粒の80%以上、望ましくは90%以上が1.0mmを超えると好ましい。
【0041】
みぞれにおける氷粒の含有量は、組織と氷粒との合計質量に対し、0質量%を超える量である。仮に氷粒の含有量が0質量%であれば、みぞれではなく一般の冷菓になる。氷粒の含有量は、組織と氷粒との合計質量に対し、2質量%以上、4質量%以上、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、14質量%以上、16質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、22質量%以上、24質量%以上、26質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、32質量%以上、34質量%以上、36質量%以上、38質量%以上、40質量%以上、42質量%以上、44質量%以上、46質量%以上、又は47質量%以上が好ましい。
また、氷粒の含有量は、組織と氷粒との合計質量に対し、100質量%未満であり、99質量%以下、98質量%以下、96質量%以下、94質量%以下、92質量%以下、90質量%以下、88質量%以下、86質量%以下、84質量%以下、82質量%以下、80質量%以下、78質量%以下、76質量%以下、74質量%以下、72質量%以下、70質量%以下、68質量%以下、66質量%以下、64質量%以下、62質量%以下、60質量%以下、58質量%以下、56質量%以下、54質量%以下、52質量%以下、50質量%以下、49質量%以下、又は48質量%以下が好ましい。
特に、原料液と氷粒とを混合して原料混合液とした後にフリーザーにかける場合には、そのような原料混合液が流動性を保持していると取り扱いが容易になる。原料混合液の取り扱いをより容易にするためには、氷粒の含有量は、組織と氷粒との合計質量に対し、70質量%以下であることが好ましい。
上記氷粒の含有量の下限値及び上限値は適宜組み合わせることができる。
【0042】
本冷菓は、容器に収容されていてもよい。本冷菓を収容する容器は、加力しても形状が変化しにくい硬質の容器、又は加力して変形しても加力を止めると元の形状に復元する可撓性の容器が好ましい。このような容器の例としては、カップ形状の容器、紙箱、チューブ、軟包材の袋、缶、チューブ等が挙げられる。
本冷菓に、バーが挿入されていてもよい。
本冷菓は、スプーンその他の器具を使用して喫食される冷菓が好ましい。
【0043】
本冷菓は、組織が溶解しない程度の低温で輸送されることが好ましい。本冷菓を輸送する際の温度は、-20℃以下が好ましく、-22℃以下がより好ましく、-23℃以下がさらに好ましく、-24℃以下が特に好ましく、-25℃以下が最も好ましい。
【0044】
〔冷菓の製造方法〕
本冷菓は、例えば、ベタインを含む原料液(冷菓用液状組成物)を調製する工程(原料液調製工程)と、原料液に空気を混入してオーバーランを付与してフリージングする工程(フリージング工程)とを有する方法により製造できる。
本冷菓がみぞれである場合には、フリージング工程の前又は後に、氷粒混合工程を行おう。氷粒混合工程では、フリージング前の原料液又はフリージング後の部分凍結物と氷粒とを混合する。氷粒混合工程は、フリージング工程の前に行ってもよく、フリージング工程の後に行ってもよいが、フリージング工程の前に行うことが好ましい。
本冷菓がみぞれではない場合には、氷粒混合工程を省略する。
【0045】
<原料液調製工程>
原料液(冷菓用液状組成物)は、ベタインを含む。
原料液は、乳化剤をさらに含んでいてもよい。
原料液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ベタイン及び乳化剤以外の他の原料をさらに含んでいてもよい。
ベタイン、乳化剤、他の原料はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
原料液の総質量に対するベタインの含有量は、組織の総質量に対するベタインの含有量と同じである。乳化剤の含有量、他の原料の含有量も同様である。
【0046】
原料液は、ベタイン等の原料を水(又は湯)に添加し、混合することにより調製できる。混合には、一般的なミキサーを使用することができる。複数の原料を使用する場合、特定の原料を別々に水に溶解した上で混ぜ合わせてもよい。原料が水溶性の原料と油溶性の原料を含む場合、水溶性の原料を中心とする水相部と、油溶性の原料を中心とする油相部とを別々に調製し、両者を混合してもよい。この場合、必要に応じて予備的な均質化を行ってもよい。
得られた原料液は、殺菌することが好ましい。殺菌は、常法により行うことができる。殺菌の前又は後に、必要に応じて、均質化を行ってもよい。殺菌後は所定の温度まで冷却する。冷却後の温度は、例えば3.0~5.0℃である。
【0047】
<氷粒混合工程>
氷粒を混合するための装置は、原料液に氷粒を混合できるものであればいかなるものでも利用できる。
氷粒はあらかじめ殺菌した水を原料として調製することが好ましい。なお、本発明においては、氷粒と混合された原料液を「原料混合液」と表現することがある。
【0048】
<フリージング工程>
原料液又は原料混合液は、オーバーランを付与してフリージングする。
オーバーランを付与してフリージングするには、原料液又は原料混合液に空気を混ぜ込みながら冷却する。フリージングは、公知のフリーザーを用いて実施できる。フリージングの条件は、一般的な条件を適用できる。
フリージング工程では、典型的には、オーバーランが0%を超える部分凍結物を得て、部分凍結物を、その後の工程に供する。この場合の冷却温度は、例えば-4.5~-5.5℃である。
なお、フリージング工程でフリージングされる原料液又は原料混合液と、部分凍結物と、冷菓とは、質量基準の組成が同じである。また、部分凍結物のオーバーランと、冷菓のオーバーランとは同じである。
【0049】
<その後の工程>
フリージング工程の後、前記したように、氷粒混合工程を行ってもよい。この場合、部分凍結物と氷粒とが混合される。
フリージング工程の後、又はその後の氷粒混合工程の後、部分凍結物を成形する工程(成形工程)を行ってもよい。成形工程では、例えば、カップ入りの冷菓であれば、部分凍結物をカップに充填する。また、バー状の冷菓であれば、部分凍結物をモールドに充填し、必要に応じて木製その他製のバーをモールドに挿入する。チューブ入りの冷菓であれば、部分凍結物をチューブ材料に充填する。
成形工程の後、成形した部分凍結物を冷凍庫等に収納して低温で硬化させる工程(硬化工程)を行ってもよい。硬化させる際の温度は、例えば-30~-35℃である。
成形工程の後、又は硬化工程の後、必要に応じて、成形した部分凍結物又は硬化した部分凍結物を別途の容器や包材にて包装又は密封する工程を行ってもよい。
以上によって冷菓を得ることができる。
【0050】
以上説明したように、本冷菓は、従来技術と比べれば、冷凍庫から取り出した後、サジを使う場合にはサジ通りが良く、速やかに喫食することができる、という利点がある。
また、本冷菓は、従来技術と比べれば、新たな設備を必要としないため、設備投資を抑制したいニーズに答えることができる、という利点がある。
また、本冷菓は、従来技術と比べれば、軟らかくする目的で特定の甘味成分を配合する必要がないため、甘味成分によって味わいが影響されず、製品設計の観点からみて冷菓の味わいを決める際の制約がない、という利点がある。
また、本冷菓は、従来技術と比べれば、軟らかくする目的で大量のデキストリンを配合する必要がないため、原料液の固形分が高くなることがなく、原料液の粘度が上昇することがなく、殺菌工程等が行いにくくなる問題が生じない利点がある。しかも、原料液の固形分が高くなることがないため、乳成分や脂肪の含量を落とす必要がなく、風味が制約されることがないことから、やはり製品設計の観点からみて冷菓の味わいを決める際の制約がない、という利点もある。
また、本冷菓は、従来技術と比べれば、冷菓基材そのものの効果によって軟らかさが得られるため、効果的にかつ簡便に軟らかい冷菓として得ることができる、という利点がある。
【実施例0051】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれら実施例に限定されるものではない。「部」は「質量部」である。「wt%」は「質量%」である。
以下に示す各例において、ベタインは、市販のトリメチルグリシンを用いた。各例で用いた乳化剤及び消泡剤は以下のとおりである。
乳化剤A:プロピレングリコール脂肪酸エステル(PG脂肪酸エステル)を主成分とする乳化剤、HLB値=5。
乳化剤B:ショ糖脂肪酸エステル、HLB値=11、第一工業製薬株式会社製「DKエステル-F110。
乳化剤C:グリセリン脂肪酸エステル、HLB値=3、太陽化学社製「サンソフトNo.118M」。
消泡剤:モノグリセリン脂肪酸エステル、HLB値=6.2、理研ビタミン株式会社製「ポエムFB-28」。
【0052】
<予備試験>
[目的]
一般に冷菓は冷凍庫から取り出した後、室温に保持しておくと温度が上昇する。そこで、冷菓の冷凍庫から取り出した後の温度変化を確認するための予備試験を行った。冷菓としては、抹茶みぞれを採用した。
【0053】
[試料の調製]
表1の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれを以下の手順で作製した。
まず、表1の「原料液を100で計算した配合」に従って、後記する試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液(5.0℃)と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、53:47の質量比で混合し、フリーザーで、空気を混ぜながら-4.8℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは30%とした。得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃で120mL紙カップにすりきりいっぱいになるまで充填し、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0054】
【表1】
【0055】
[試験方法]
図3は、冷凍庫から取り出した後の冷菓の温度の測定方法を説明するための概略図である。
図3に示すように、温度測定は、-21℃の冷凍庫に入れたカップ入り冷菓10を取り出して室温環境(24.3℃、湿度47%)に置き、すぐさまカップ入り冷菓10の冷菓12に、温度計(株式会社佐藤計量器製作所製、SK-1260(本体)、SK-S104K(測定部・測定子))の測定子26の先端を突き刺した。測定子26を突き刺す深さは、測定子26の温度測定部が冷菓12の天面からおよそ3mmの位置に貫入する深さとした。測定子26を突き刺した直後(数秒以内。0min)、1分後(1min)、3分後(3min)、5分後(5min)の温度を記録した。
【0056】
[結果]
試料を室温環境に静置したときの温度の変化は下記のとおりとなった。
0min:-21.0℃
1min:-20.9℃
3min:-19.0℃
5min:-17.5℃
この試験の結果、冷菓を冷凍庫から取り出した後に温度が徐々に上昇していく様子が明らかになった。なお、冷菓は温度が上昇するにつれて軟らかくなると考えられている。
【0057】
<試験例1>
[目的]
試験例1は、冷菓の硬度に対するベタインの効果を確認するために行った。冷菓としては、練乳みぞれを採用した。
【0058】
[試料の調製]
表2の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれ1-1~1-3を得た。みぞれ1-1~1-2は比較例であり、みぞれ1-3は実施例である。
まず、表2の「原料液を100で計算した配合」に従って、各原料を溶解水に溶解し、85℃10分の条件で殺菌後、均質機で均質化(2段目5MPa、全圧15MPa)した。均質化した原料液を10℃以下まで冷却して原料液を得た。表中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す(以下、同様)。
この原料液と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、5.0℃にて、53:47の質量比で混合して原料混合液とし、フリーザー(カルピジャーニジャパン株式会社製、バッチ式フリーザーSEDL12/C)を使用してジャケット温度-30℃で空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは30%とした。得られた部分凍結物を、-3.7~-3.8℃で120mL紙カップにすりきりいっぱいになるまで充填し(以後、カップと充填条件は各実施例で共通。)、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
なお、充填及び硬化の前後で、オーバーランは変化しない。
【0059】
【表2】
【0060】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を前記の測定方法で測定した。硬度の測定は、試料を取り出してから1分後(1min)、3分後(3min)に行った。すべての測定が終了するまでサンプルは室温に放置し続けた(温度が上昇し、ゆっくり柔らかくなってくる)。試験例1において、室温は23℃であった。
硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
「突刺し4mm」は、突刺し深度Dが4mmの時点(測定用治具が4mm貫入した時点)の測定硬度である。以降においても同様である。
「1min」、「3min」はそれぞれ、試料を-21℃の冷凍庫から取り出してから1分後、3分後に測定した結果であることを意味する。以降においても同様である。
「『みぞれ1-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度(例えば1min経過時のみぞれ1-1~1-3の各測定硬度、3min経過時のみぞれ1-1~1-3の各測定硬度)のうち、みぞれ1-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0063】
[結果及び考察]
原料液にベタインを含有させたみぞれ1-3は、みぞれ1-1に比べ、硬度が20~30%程度低く、サジ通りがよく、喫食しやすくなっていた。
一方、ベタインの代わりにPG脂肪酸エステル含有乳化剤を含有させたみぞれ1-2は、みぞれ1-1に比べ、硬度が40~50%程度高かった。
【0064】
この試験結果により、冷菓の原料液にベタインを配合すると、冷菓の硬度が低下し、サジ通りがよく、喫食しやすくなることが確認された。また、その効果は、冷凍庫から取り出して1分後、3分後のいずれであっても得られることも確認された。
【0065】
<試験例2>
[目的]
試験例2は、ベタインの冷菓の硬度に対する効果を確認するために行った。冷菓としては、抹茶みぞれを採用した。
【0066】
[試料の調製]
表4の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれ2-1~2-3を以下の手順で作製した。みぞれ2-1~2-2は比較例であり、みぞれ2-3は実施例である。これらのみぞれにおいては、凍結点を調節するために、含水結晶ブドウ糖の含有量を調節した。
まず、表4の「原料液を100で計算した配合」に従って、試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液(5.0℃)と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、53:47の質量比で混合し、試験例1と同様に、フリーザーで、空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは30%とした。得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃でカップに充填し、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0067】
【表4】
【0068】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を、試験例1と同様の測定方法で測定した。試験例2において、室温は24℃であった。硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
「『みぞれ2-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、みぞれ3-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0071】
[結果及び考察]
原料液にベタインを含有させたみぞれ2-3は、みぞれ2-1に比べ、硬度が低く、サジ通りがよく、喫食しやすくなっていた。
一方、ベタインの代わりにPG脂肪酸エステル含有乳化剤を含有させたみぞれ2-2の硬度は、みぞれ2-3よりも高かった。
【0072】
上記のように、原料液にベタインを含有させると、試験例1と同じく、硬度が低くなった。一方で、ベタインの代わりにPG脂肪酸エステルを含有させると、対照(みぞれ2-1)と比較し、硬度が同程度となった。
一般に、同じ-20℃で硬度を測定した場合、凍結点が低いほうが硬度は低くなる(冷菓中の氷結晶が少なくなるので柔らかくなる)。しかしながら、PG脂肪酸エステルを含むみぞれ2-2は、みぞれ2-1よりも凍結点が低かったにもかかわらず、硬度が高くなった。一方、ベタインを含むみぞれ2-3は、みぞれ2-2よりも凍結点が高かったにもかかわらず、みぞれ2-2よりも硬度が低くなった。このように、みぞれ2-3は、凍結点が高いという点で不利であるにもかかわらず硬度が低下したことから、ベタインの効果が非常に優れていることが判明した。
この試験結果により、冷菓の原料液にベタインを配合した場合には、硬度が大きく低下し、サジ通りがよく、喫食しやすい冷菓が得られることが判明した。
【0073】
<試験例3>
[目的]
試験例3は、冷菓の硬度に対するベタインの含有量の影響を確認するために行った。冷菓としては、練乳みぞれを採用した。
【0074】
[試料の調製]
表6の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれ3-1~3-4を以下の手順で作製した。みぞれ3-1は比較例であり、みぞれ3-2~3-4は実施例である。これらのみぞれにおいては、凍結点を調節するために、含水結晶ブドウ糖の含有量を調節した。
まず、表6の「原料液を100で計算した配合」に従って、試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液(5.0℃)と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、52:48の質量比で混合し、試験例1と同様に、フリーザーで、空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは45%とした。得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃でカップに充填し、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0075】
【表6】
【0076】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を、試験例1と同様の測定方法で測定した。試験例3において、室温は24℃であった。硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。結果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
「『みぞれ3-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、みぞれ3-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0079】
[結果及び考察]
原料液にベタインを含有させたみぞれ3-2~3-4の硬度は、みぞれ3-1に比して低くなっていた。
【0080】
上記結果から、原料液のベタインの含有量について、以下のことが判明した。
(1)冷菓を冷凍庫から出して3分経過した場合(3min)については、ベタインを含有しさえすれば硬度低下の効果が得られる。
(2)冷菓を冷凍庫から出して1分経過した場合(1min)については、ベタインを含有しさえすれば硬度低下の効果がある程度は得られるが、ベタインは、原料液で0.2質量%を超える量又は冷菓全体で0.104質量%を超える量を含有すると好ましい。
【0081】
また、上記結果から、原料液のベタインの含有量について、以下のことが判明した。
(a)冷菓を冷凍庫から取り出した後に少々の時間(3分程度)が経過して喫食する条件であれば、原料液にベタインを0質量%超える量を含有させるか、冷菓全体でベタインを0質量%超える量を含有させれば、冷菓を軟らかくする効果を享受することができる。
(b)冷菓を冷凍庫から取り出してすぐに(1分程度で)喫食する条件であれば、原料液のベタインの含有量を0.2質量%を超える量にするか、冷菓全体のベタインの含有量を0.104質量%を超える量にすることが好ましい。
(c)原料液のベタインの含有量は、0.35質量%以上が好ましく、0.36質量%又はそれ以上がより好ましい。冷菓全体でのベタインの含有量は、0.18質量%以上が好ましく、0.19質量%又はそれ以上がより好ましい。
(d)ベタインの効果をより明確に享受するのであれば、原料液にベタインを0.8質量%以上含有させるか、冷菓全体で0.416質量%以上含有させることが好ましい。
【0082】
<試験例4>
[目的]
試験例4は、ベタインと好適に組み合わせることができる乳化剤を確認するために行った。冷菓としては、乳みぞれを採用した。
【0083】
[試料の調製]
表8の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれ4-1~4-4を以下の手順で作製した。みぞれ4-1は比較例であり、みぞれ4-2~4-4は実施例である。これらのみぞれにおいては、凍結点を調節するために、含水結晶ブドウ糖の含有量を調節した。
まず、表8の「原料液を100で計算した配合」に従って、試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液(5.0℃)と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、53:47の質量比で混合し、試験例1と同様に、フリーザーで、空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは30%とした。得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃でカップに充填し、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0084】
【表8】
【0085】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を、試験例1と同様の測定方法で測定した。試験例4において、室温は24℃であった。硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。試験例4においては、みぞれ4-1の突刺し深度D=4mmでの測定硬度が測定限界を超過したため、突刺し深度D=3mmでの測定硬度も測定した。結果を表9に示す。
【0086】
【表9】
【0087】
「突刺し3mm」は、突刺し深度Dが3mmの時点(測定用治具が3mm貫入した時点)のデータである。
「『みぞれ4-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、みぞれ4-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0088】
[結果及び考察]
原料液にベタインを含有させたみぞれ4-2~4-4は、みぞれ4-1に比べ、硬度が低く、サジ通りがよく、喫食しやすくなっていた。特に、ベタインとともに乳化剤を含有させたみぞれ4-3~4-4は、みぞれ4-2よりも硬度が低くなる結果となった。
【0089】
上記結果から、冷菓の原料液にベタインとともに乳化剤を含有させると、硬度の低下効果がより発揮されることが判明した。
また、この場合の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、特にグリセリン脂肪酸エステルがより好ましいことが判明した。
【0090】
<試験例5>
[目的]
試験例5は、試験例4と同様に、ベタインと好適に組み合わせることができる乳化剤を確認するために行った。冷菓としては、乳みぞれを採用した。
【0091】
[試料の調製]
表10の「みぞれを100で計算した配合」のみぞれ5-1~5-3を以下の手順で作製した。みぞれ5-1は比較例であり、みぞれ5-2~5-3は実施例である。これらのみぞれにおいては、凍結点を調節するために、含水結晶ブドウ糖の含有量を調節した。
まず、表10の「原料液を100で計算した配合」に従って、試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液(5.0℃)と砕氷(最も長い軸上での長さ:1.5mm)とを、52:48の質量比で混合し、試験例1と同様に、フリーザーで、空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは45%とした。得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃でカップに充填し、-35℃の冷凍庫で一晩静置して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0092】
【表10】
【0093】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を、試験例1と同様の測定方法で測定した。試験例5において、室温は24℃であった。硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。結果を表11に示す。
【0094】
【表11】
【0095】
「『みぞれ5-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、みぞれ5-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。「『みぞれ5-2』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、みぞれ5-2の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0096】
[結果及び考察]
試験例5においても試験例4と同様の傾向が見られた。すなわち、原料液にベタインを含有させたみぞれ5-2~5-3は、みぞれ5-1に比べ、硬度が低く、喫食しやすくなっていた。特に、ベタインとともに乳化剤C(グリセリン脂肪酸エステル)を含有させたみぞれ5-3は、みぞれ5-2よりも硬度が低くなる結果となった。
【0097】
上記結果から、乳みぞれの場合においても、原料液にベタインとともに乳化剤を含有させると、硬度の低下効果がより発揮されることが判明した。
また、この場合の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、特にグリセリン脂肪酸エステルがより好ましいことが判明した。
【0098】
<試験例6>
[目的]
試験例6は、みぞれ以外の冷菓の硬度にベタインが与える影響を確認するために行った。冷菓としては、アイスクリーム(以下、単に「アイス」ともいう。)を採用した。
【0099】
[試料の調製]
表12に示す組成のアイス6-1~6-2を以下の手順で作製した。アイス6-1は比較例であり、アイス6-2は実施例である。
まず、表12に示す配合に従って、試験例1と同様の条件で原料液を調製した。
調製した原料液を、試験例1と同様に、フリーザーで、空気を混ぜながら-5.0℃まで冷却して部分凍結物を得た。オーバーランは45%とした。
得られた部分凍結物を、-4.4~-4.5℃でカップに充填し、-35℃の冷凍庫で2週間保管して硬化させた。その後、中心温度が-21℃になるように、-21℃の冷凍庫で温度調整した。
【0100】
【表12】
【0101】
[硬度の測定]
-21℃の冷凍庫で温度調整した試料を冷凍庫から取り出し、試料の硬度を、試験例1と同様の測定方法で測定した。試験例6において、室温は24℃であった。硬度測定は6回ずつ実施し、結果は平均値を採用した。結果を表13に示す。
【0102】
【表13】
【0103】
「『アイス6-1』を100としたときの硬さの割合」とは、測定のタイミングが同じ測定硬度のうち、アイス6-1の測定硬度を100%とした場合の各測定硬度の割合(百分率)を示す。
【0104】
[結果及び考察]
アイスクリームの場合においても、みぞれの場合と同様の傾向が見られた。すなわち、原料液にベタインを含有させたアイス6-2は、アイス6-1に比べ、硬度が低く、サジ通りがよく、喫食しやすくなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓、並びに冷凍庫から取り出した後、速やかに喫食できる冷菓が得られる冷菓用液状組成物及び冷菓の製造方法を提供できる。
本発明は、特に「みぞれ」に好適であるが、冷菓全般に広く応用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
10…カップ入り冷菓、12…冷菓、14…カップ、22…測定台、24…測定用治具、26…温度計の測定子
図1
図2
図3