(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010090
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】床版交換装置
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230113BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20230113BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113925
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000159272
【氏名又は名称】吉永機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 雅之
(72)【発明者】
【氏名】染谷 行雄
(72)【発明者】
【氏名】大島 邦裕
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059GG39
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】床版の搬入から交換までの作業工程を短期化する床版交換装置を提供することを課題とする。
【解決手段】床版を積載可能な荷台21を有する車両20と、荷台21に立設された支持フレーム30と、車両20の前後方向に延在し、荷台21の上方において支持フレーム30に支持された走行レール33と、走行レール33に移動可能に取り付けられる走行体40と、走行体40から後方に向かって延在するアーム50とを備え、アーム50は、上下方向に傾動可能であり、走行体40を車両20の後部側に移動させたときにアーム50の先端部が荷台21の後方に位置し、走行体40を車両20の前部側に移動させたときにアーム50の先端部が荷台21の上方に位置することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版を積載可能な荷台を有する車両と、
前記荷台に立設された支持フレームと、
前記車両の前後方向に延在し、前記荷台の上方において前記支持フレームに支持された走行レールと、
前記走行レールに移動可能に取り付けられる走行体と、
前記走行体から後方に向かって延在するアームと、を備え、
前記アームは、上下方向に傾動可能であり、
前記走行体を前記車両の後部側に移動させたときに前記アームの先端部が前記荷台の後方に位置し
前記走行体を前記車両の前部側に移動させたときに前記アームの先端部が前記荷台の上方に位置することを特徴とする床版交換装置。
【請求項2】
前記アームは、左右方向に旋回可能であることを特徴とする請求項1に記載の床版交換装置。
【請求項3】
前記アームは、前記床版に接続される接続部を有し、
前記接続部は、左右方向に回転可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床版交換装置。
【請求項4】
前記アームの基端側は、前記走行体に回転可能に支持されており、
前記アームの先端側は、傾動用シリンダを介して前記走行体に支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の床版交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの補修工事では、コンクリート床版の劣化した部分を撤去して新たな床版を敷設する施工方法が行われている。既設床版を撤去して、新たな床版を架設する施工方法では、床版を移動させるために、クレーン車等の揚重車両を用いる場合がある。しかし、撤去した床版の搬出および新設床版の搬入のために別途運搬車両を用意する必要があり、例えば、道路幅を一車線しか封鎖できない場合や、狭隘部で作業を行う場合には、工事車両の出入りや移動の頻度が高くなってしまい、効率よく施工できない場合がある。
【0003】
クレーン車を用いずに床版の交換を行う方法として、橋軸方向に移動可能な門型の吊り装置を用いるものが知られている。例えば、特許文献1には、吊り装置によって撤去床版を吊り下げ、運搬車両まで移動して運搬車両の荷台に載置した後、新設床版を吊り装置に吊り下げて移動し、新しく設置するコンクリート床版の架け替え方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1に記載の発明は、運搬車両の荷台に吊り装置を積載して交換場所まで運搬した後、吊り装置を荷台から下ろして、床版の交換場所に設置する必要がある。また、作業終了後は床版交換装置を再度荷台に戻す必要があるため、作業に時間を要するという問題がある。さらに、撤去した床版の搬出および新設床版の搬入のために別途運搬車両を用意する必要がある。
【0006】
このような観点から、本発明は、床版の搬入・搬出や交換作業を効率よく行うことが可能な床版交換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の床版交換装置は、床版を積載可能な荷台を有する車両と、前記荷台に立設された支持フレームと、前記車両の前後方向に延在し、前記荷台の上方において前記支持フレームに支持された走行レールと、前記走行レールに移動可能に取り付けられる走行体と、前記走行体から後方に向かって延在するアームとを備え、前記アームは、上下方向に傾動可能であり、前記走行体を前記車両の後部側に移動させたときに前記アームの先端部が前記荷台の後方に位置し前記走行体を前記車両の前部側に移動させたときに前記アームの先端部が前記荷台の上方に位置することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、アームの先端部に床版(撤去床版または新設床版)を取り付けた状態でアームが車両の前後方向に移動でき、さらに、アームが傾動可能であるため、撤去床版を撤去位置から持ち上げ荷台上に積載する作業および荷台上に積載された新設床版を持ち上げ設置位置に下ろす作業を行うことができる。そのため、揚重車両と運搬車両を別々に用意する必要がなく、床版の搬入・搬出や交換作業を効率良く行うことができる。
【0009】
また、前記アームは、左右方向に旋回可能であることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、アームが旋回するため、車両の停車位置にずれが生じた場合でも、床版の搬入・搬出や交換作業を行うことができる。
【0011】
前記アームは、前記床版に接続される接続部を有し、前記接続部は、左右方向に回転可能であることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、吊り下げた床版を回転させることができるので、床版の向きを容易に調整することができる。
【0013】
前記アームの基端側は、前記走行体に回転可能に支持されており、前記アームの先端側は、傾動用シリンダを介して前記走行体に支持されていることが好ましい。本発明によれば、ワイヤーを用いて床版を昇降させる場合に比べて安定した状態で床版を上下に移動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る床版交換装置によれば、床版の搬入・搬出や交換作業を効率よく行うことが可能な床版交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る床版交換装置を示す側面図であって(a)は、走行体が前方にある図、(b)は走行体が後方にある図である。
【
図2】本実施形態に係る床版交換装置を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る床版交換装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の床版交換装置1は、トラクタ10と、車両20と、支持フレーム30と、走行体40と、アーム50と、を備えている。床版交換装置1は、クレーン等の揚重車両を使うことなく1台で床版の搬入・搬出や交換を行うための装置である。
【0018】
トラクタ10は、車両20をけん引する車両である。車両20は、トラクタ10の後方に接続されるトレーラーであり、床版を積載可能な荷台21を備えている。車両20の後部には、道路を走行可能な車輪が設けられており、車両20の前後には、車両20の側方に向かって張り出すアウトリガーが設けられている。本実施形態のアウトリガーは、車両20の自重以上の荷重(床版の積み下ろしに伴う荷重)がかかった際に反力を分散する目的で取り付けられているが、車両20を浮かせられるようにしてもよい。荷台21の形状は特に限定されるものではないが、前後方向の長さは、撤去床版Pと新設床版Qを同時に積載できる長さであることが好ましい。
【0019】
(支持フレーム30)
支持フレーム30は、荷台21の左右の縁部に立設された一対の支持構面部31,31と、支持構面部31,31の上部同士を繋ぐ梁材32(
図2参照)と、梁材32に支持された走行レール33とを備えている。支持構面部31は、例えば平面トラス構造体である。本実施形態の支持構面部は、上下の桁材(上弦材、下弦材)と、上下の桁材の間に配置された縦材(柱材、斜材)とを備えている。なお、
図1では、斜材の図示を一部省略している(前後に配置された斜材のみを図示している)。
図3に示すように、梁材32は、前後方向に間隔を空けて複数(本実施形態では6本)配置されている。走行レール33は、前後方向に延在している。本実施形態では、左右に間隔を空けて一対の走行レール33が配置されており、それぞれ各梁材32の下面に取り付けられている。走行レール33の前端は、荷台21の前端部よりも前方に位置しており、走行レール33の後端は、荷台21の後端部の上方に位置している。支持構面部31の構成部材、梁材32及び走行レール33、例えばH型鋼、レールI型鋼、フレーム角パイプ等の鋼材によって形成されている。
【0020】
(走行体40)
図2に示すように、走行体40は、鋼材を井桁状に組み合わせて形成した本体部44と、走行レール33,33に沿って移動するトロリ41と、本体部44に対して旋回する旋回体42と、本体部44と旋回体42との間に介設された旋回用シリンダ43とを備えている。トロリ41は、各走行レール33に前後一対ずつ(合計4つ)設けられている。トロリ41には、駆動トロリと従動トロリがある。駆動トロリは、走行レール33に係合するローラ41aをモータで駆動することにより走行レール33に沿って前後方向に移動するように構成される。走行体40の下端には、後述するアーム50が、旋回体42を介して回動自在に取り付けられている。
【0021】
図1に示すように、旋回体42は、鋼材を井桁状に組み合わせて形成されており、旋回ベアリングを介して本体部44に下面に取り付けられている。旋回用シリンダ43は、例えば、油圧シリンダである。旋回用シリンダ43の一端は、旋回体42に固定されており、旋回用シリンダ43の他端は本体部44に固定されている。旋回体42は、旋回用シリンダ43のロッドを進退させることで回動し、
図3に示すように、アーム50が左右方向へ回動する。
【0022】
(アーム50)
図1に示すように、アーム50は、接続部51と、軸部52と、腕部53と、傾動用シリンダ54と、を備えている。
【0023】
接続部51は、床版に接続可能な構成を備えている。本実施形態の接続部51は、床版に埋め込んだインサートに対してボルトにより固定される。接続部51は、軸部52を介して腕部53に回転可能に支持されている。
【0024】
腕部53は、通常時は荷台21の前後方向に沿って平行に延在している。腕部53は、鋼材を梯子状に組み合わせて形成されている。腕部53の基端部(前端部)は、旋回体42のブラケットにピンを介して連結されており、当該ピンを中心に上下に傾動(旋回)可能である。すなわち、アーム50の基端側は、走行体40に回転可能に支持されている。傾動用シリンダ54は、旋回体42と腕部53との間に介設されている。傾動用シリンダ54は、例えば油圧ジャッキである。傾動用シリンダ54の後端部は、旋回体42の前端部に接続されており、傾動用シリンダ54の前端部は、旋回体42の前方において腕部53に接続されている。すなわち、アーム50の先端側は、傾動用シリンダ54を介して走行体40に支持されている。腕部53は、傾動用シリンダ54のロッドを進退させることで上下に傾動する。また、
図1(a)に示すように、腕部53は、走行体40が走行レール33の後方側に位置するときには、荷台21よりも後ろ側に突出している。また、
図1(b)に示すように、走行体40が走行レール33の前方側に位置するときには、荷台21の上方に位置する。
【0025】
なお、走行体40およびアーム50を操作するコントローラは、有線式のものでもよいし、無線式のものでもよい。
【0026】
(床版の交換方法)
本実施形態の床版交換装置1を用いた床版の交換方法について
図1を参照しながら説明する。ここでは、撤去床版Pを撤去した後、新設床版Qを設置する工程について説明する。床版P,Qは、平面視矩形であり、前後方向の長さが、前後方向と直角方向の長さよりも短く形成されている。
【0027】
まず、撤去床版P上にアーム50を配置する。ここで、アーム50の位置が左右にずれている場合は、旋回用シリンダ43を駆動することで旋回体42を旋回(回動)させ、アーム50の先端を床版の中央部に位置させるとよい。次に、傾動用シリンダ54を駆動することで、アーム50の腕部53を下方向へ傾動させる。アーム50の接続部51を撤去床版Pに固定したら、腕部53を上方向へ傾動させる。その後、軸部52を中心に接続部51を90度回転させることで、撤去床版Pの長手方向が前後方向となる向きに調整する。
【0028】
その後、アーム50の先端に撤去床版Pを取り付けた状態のまま、走行体40を各トロリ41によって、走行レール33に沿って前方へと移動させる。撤去床版Pが荷台21の上方まで移動させたら、傾動用シリンダ54を駆動することで、アーム50を下方向へ傾動させて荷台21に撤去床版Pを積載する。その後、接続部51は撤去床版Pとの接続状態を解除する。
【0029】
続いて、走行体40を各トロリ41によって、走行レール33の前端部まで移動させる。その後、傾動用シリンダ54を駆動することで、アーム50の腕部53を下方向へ傾動させて、アーム50の接続部51を荷台21に積載されている新設床版Qに接続する。なお、新設床版Qは、長手方向が前後方向となる向きで荷台21に搭載されている。その後、アーム50の腕部53を上方向へ傾動させ、走行体40を走行レール33の後端部まで移動させる。
【0030】
新設床版Qを設置位置の上方に移動させたら、軸部52を中心に接続部51を90度回転させることで、新設床版Qの短手方向が前後方向となる向きに調整する。新設床版Qの方向を調整した後、傾動用シリンダ54を駆動することで、アーム50の腕部53を下方向へ傾動させて、撤去床版Pを取り除いた部分に新設床版Qを設置する。その後、接続部51は新設床版Qとの接続状態を解除する。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る床版交換装置1によれば、アーム50の先端部に床版(撤去床版Pまたは新設床版Q)を取り付けた状態でアーム50が車両20の前後方向に移動でき、さらに、アーム50が傾動可能であるため、撤去床版を撤去位置から持ち上げ荷台21上に積載する作業および荷台21上に積載された新設床版を持ち上げ設置位置に下ろす作業を行うことができる。そのため、揚重車両と運搬車両を別々に用意する必要がなく、床版の搬入・搬出や交換作業を効率良く行うことができる。
【0032】
また、アーム50は、走行体40に対して、旋回可能である。そのため車両20の停車位置にずれが生じた場合でも、床版の搬入・搬出や交換作業を行うことができる。
【0033】
また、アーム50は、床版に接続される接続部51を有し、接続部51は、左右方向に回転可能である。そのため、吊り下げた床版を回転させることができるので、床版の向きを容易に調整することができる。
【0034】
また、傾動用シリンダ54によりアームを傾動させる構成としたので、ワイヤーを用いて床版を昇降させる場合に比べて安定した状態で床版を上下に移動させることができる。
【0035】
また、梁材32及び走行レール33は、荷台21よりも前方へ突出している。これにより、床版を吊り下げた状態で、走行体40が荷台21よりも前方へ移動することができる。つまり、荷台の前部に床版を積載することが可能となる。
【0036】
以上、本願発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限らず各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 床版交換装置
10 トラクタ
20 車両
21 荷台
30 支持フレーム
31 支持構面部
32 梁材
33 走行レール
40 走行体
41 トロリ
42 旋回体
43 旋回用シリンダ
44 本体部
50 アーム
51 接続部
52 軸部
53 腕部
54 傾動用シリンダ
P 撤去床版
Q 新設床版