(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100913
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】注射デバイスに取り付けられるデータ収集デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20230711BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61M5/315
A61M5/24 500
A61M5/315 550R
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077808
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2021149828の分割
【原出願日】2016-02-12
(31)【優先権主張番号】15155758.4
(32)【優先日】2015-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランク・エアプシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・オーブリー・プラムプトリ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・フレデリック・ヴィージイ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・バトラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】注射デバイスに取り付けられ薬剤投薬量情報を収集するデータ収集デバイスを提供する。
【解決手段】データ収集デバイス20であって:注射デバイス1に取り付けられるように構成される嵌合装置と;薬剤の送達中に、データ収集デバイス20に対する注射デバイス1の可動投薬量プログラム構成要素の動きを検出するように構成されるセンサ装置と;前記検出された動きに基づいて、注射デバイス1によって投与された薬剤投薬量を決定するように構成されるプロセッサ装置とを含む。プロセッサ装置は、薬剤投薬量が投与されてからの経過時間を監視し、使用者の記憶補助をもたらすように、薬剤投薬量(22a)および経過時間を表示するようにディスプレイ(22)を制御することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ収集デバイスであって:
注射デバイスに取り付けられるように構成される嵌合装置と;
薬剤の送達中に、データ収集デバイスに対する注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の動きを検出するように構成されるセンサ装置と;
前記検出された動きに基づいて、注射デバイスによって投与された薬剤投薬量を決定するように構成されるプロセッサ装置と
を含む、前記データ収集デバイス。
【請求項2】
センサ装置は、光学センサ、磁気センサ、静電容量センサおよび機械センサのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載のデータ収集デバイス。
【請求項3】
センサ装置は、光学エンコーダを含む、請求項2に記載のデータ収集デバイス。
【請求項4】
プロセッサ装置は、光学エンコーダからパルスを受けてからの期間を監視し、前記期間が所定の閾値を超えた場合に、前記薬剤投薬量を決定するように構成される、請求項3に記載のデータ収集デバイス。
【請求項5】
プロセッサ装置は、薬剤投薬量の投与についてのタイムスタンプ情報を取得し、決定された薬剤投薬量および前記タイムスタンプ情報を記憶するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項6】
プロセッサ装置は、決定された薬剤投薬量およびタイムスタンプ情報のログを他のデバイスに送信するように構成される、請求項5に記載のデータ収集デバイス。
【請求項7】
プロセッサ装置は、投与検出後の経過時間を監視し、決定された薬剤投薬量および経過時間を表示するようにディスプレイを制御するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項8】
薬剤投与装置であって:
薬剤投薬量が注射デバイスにプログラムされるときに動くように構成される可動構成要素、を含む注射デバイスと;
請求項1~7のいずれか1項に記載のデータ収集デバイスと
を含む、前記薬剤投与装置。
【請求項9】
薬剤投与装置であって:
薬剤投薬量が注射デバイスにプログラムされるときに動くように構成される可動投薬量プログラム構成要素、を含む注射デバイスと;
請求項3または4に記載のデータ収集デバイスと;
を含み、
ここで、可動投薬量プログラム構成要素は、複数の光バリアを含む、
前記薬剤投与装置。
【請求項10】
用量を注射デバイスにプログラムする間、可動投薬量プログラム構成要素がデータ収集デバイスに対して動かないように構成される、請求項8または9に記載の薬剤投与装置。
【請求項11】
可動構成要素は、プログラムされた用量の可視インジケーションをもたらす数字スリーブである、請求項8、9または10のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項12】
注射デバイスは、使い捨て注射デバイスであり、データ収集デバイスは、注射デバイスに解放可能に取り付けることができるように構成される、請求項8~11のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項13】
注射デバイスは、再使用可能注射デバイスであり、データ収集デバイスは、注射デバイスに恒久的に取り付けられるように構成される、請求項8~11のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項14】
注射デバイスは、注射ペンである、請求項8~13のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスに取り付けられ薬剤投薬量情報をそこから収集する、データ収集デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾病で、薬剤の注射による定期的な治療が必要とされている。そのような注射は、注射デバイスを用いて実行することができ、医療従事者または患者自身によって適用される。一例として、1型および2型の糖尿病は、例えば1日に1回または数回のインスリン用量の注射により、患者自身によって治療することができる。例えば、充填済みの使い捨てインスリンペンが注射デバイスとして使用可能である。あるいは、再使用可能なペンを使用することもできる。再使用可能なペンは、空の薬剤カートリッジを新しいものと交換することができる。どちらのペンも、各使用前に交換される1組の1回使い切りの針を装備することができる。次いで、例えば、投薬量ノブを回し、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、インスリンペンにおいて、注射予定のインスリン用量を手動で選択することができる。次いで、針を適当な皮膚部分に挿入し、インスリンペンの注射ボタンを押して、用量を注射する。例えばインスリンペンの誤った取り扱いを防ぐ、または既に適用された用量の経過を追うために、インスリン注射を監視することができるように、例えば注射済みのインスリン用量の情報など、注射デバイスの状態および/または使用に関する情報を測定することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様によれば、データ収集デバイスは、注射デバイスに取り付けられるように構成される嵌合装置と、薬剤の送達中に、データ収集デバイスに対する注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の動きを検出するように構成されるセンサ装置と、前記検出された動きに基づいて、注射デバイスによって投与された薬剤投薬量を決定するように構成されるプロセッサ装置とを含む。
【0004】
このやり方において、データ収集デバイスは、使用者によりなされる追加の操作に頼ることなく薬剤投薬量情報を収集することができ、薬剤投与の記録およびロギングの信頼性を向上させることができる。さらに、次の投薬量を注射ペンにプログラムするときに、その前の投与量を表示することは、使用者の記憶補助として働くことができる。
【0005】
センサ装置は、光学センサ、磁気センサ、静電容量センサおよび機械センサのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。例えば、センサ装置は、光学エンコーダ装置を含むことができる。プロセッサ装置は、パルスが光学エンコーダによって出力されてから経過した期間を監視し、前記期間が所定の閾値を超えた場合、前記薬剤投薬量を決定するように構成される。これは、注射ストロークの終了ポイントの確実な識別を可能にすることができる。あるいは、またはそれに加えて、センサ装置は、相対運動を検出する機械スイッチおよび/またはトラックを含むこともできる。
【0006】
プロセッサ装置は、薬剤投薬量の検出された投与についてのタイムスタンプ情報を取得し、例えば投与された注射のログを提供するように、決定された薬剤投薬量および前記タイムスタンプ情報を記憶するように構成される。この場合、データ収集デバイスは、場合により、記憶している薬剤投薬量およびタイムスタンプ情報を、通信リンクを介して、コンピュータなどの外部デバイスに送信することを可能にする出力インターフェースを含むこともできる。出力インターフェースは、有線または無線リンクを介して外部デバイスと
通信するように構成される。
【0007】
それに加えて、または別法として、プロセッサ装置は、投与検出後の経過時間を監視し、決定された薬剤投薬量および経過時間を表示するようにディスプレイを制御するように構成される。そのような情報を表示することによって、データ収集デバイスは、使用者に対してさらなる記憶補助をもたらすことができる。
【0008】
上述したこの態様による装置のいずれにおいても、データ収集デバイスは、投薬量プログラム構成要素と一緒に動くように、投与予定の薬剤投薬量のプログラムのために使用者によって動かされる注射デバイスの投薬量プログラム構成要素に取り付け可能であってよい。そのような一実施形態では、データ収集デバイスは、使用者が投薬量プログラム構成要素を把持し動かすのではなく、データ収集デバイスを把持し動かすことで、薬剤投薬量を注射ペンにプログラムすることができるように構成される。そうしたプログラムを容易にするように、データ収集デバイスは、投薬量プログラム構成要素と比較すると、使用者の把持のためのより大きな接触面を提供するように構成される、または、使用者が薬剤投薬量をより簡単にプログラムできるようにすることができる他の構造を含むことができる。これは、使用者の器用さが制限されている場合に特に有用である。
【0009】
いくつかの実施形態では、データ収集デバイスは、注射デバイスに解放可能に取り付け可能である。他の実施形態では、データ収集デバイスは、注射デバイスに恒久的に取り付け可能である。
【0010】
この態様は、さらに、前記データ収集デバイスと注射デバイスを含む薬剤投与装置を提供する。そのような薬剤投与装置の一例は、薬剤投薬量が注射デバイスにプログラムされるときに動くように構成される可動投薬量プログラム構成要素を含む注射デバイスと、光学センサを含むデータ収集デバイスとを含むことができ、ここで、可動投薬量プログラム構成要素は、複数の光バリアを含む。
【0011】
薬剤投与装置は、用量を注射デバイスにプログラムする間、可動投薬量プログラム構成要素がデータ収集デバイスに対して動かないように構成される。そのような配置は、相対運動を薬剤の送達期間に制限することができ、したがって、注射デバイスにプログラムされている投薬量が、例えば投薬量のプログラミング中に増加しているか、または、例えば投薬量プログラミング中もしくは薬剤送達中に減少しているかどうかをプロセッサ装置が決定することが必要なくなる。投薬量レベルの増加と投薬量レベルの減少を必ずしも区別する必要のない一実施形態では、センサを複数は必要としない。したがって、センサ装置は、単一のセンサを用いて構成することができる。それによって、複数のセンサを有するセンサ装置と比較すると、装置が比較的単純になり、データ処理要件が少なくなる。
【0012】
注射デバイスおよびデータ収集デバイスは、データ収集デバイスを注射デバイスに取り付けるように協働する構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えばクリップ取り付けまたはスナップ嵌め取り付けをもたらすように、突起および凹部のうちの一方が注射デバイスに設けられ、突起および凹部のうちの他方がデータ収集デバイスの嵌合装置に設けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、注射デバイスは、使い捨て注射デバイスであり、データ収集デバイスは、注射デバイスに解放可能に取り付けることができるように構成される。他の実施形態では、注射デバイスは、再使用可能な注射デバイスであり、データ収集デバイスは、注射ペンに恒久的に取り付けられる。
【0014】
注射デバイスは、注射ペンであってよい。
【0015】
次に、添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態によるデータ収集デバイスと一緒に使用される注射デバイスの分解図である。
【
図2】
図1の注射デバイスに取り付けられている、一実施形態によるデータ収集デバイスの図である。
【
図3】
図2に示されるデータ収集デバイスのブロック図である。
【
図5】
図1の注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の斜視図である。
【
図6】一緒に取り付けられているときの
図3のデータ収集デバイスと
図1の注射デバイスの部分断面図である。
【
図7】
図3のデータ収集デバイスのセンサ装置が受けた光の強度のグラフである。
【
図8】
図7に示される受けた光の強度に基づいたセンサ装置の出力のグラフである。
【
図9】
図3のデータ収集デバイスからのデータが他のデバイスに送信されるシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、インスリン注射デバイスを参照して、本発明の実施形態を述べる。しかし、本発明は、そうした適用例に限定されず、他の薬剤を放出する注射デバイスに対しても同じく良好に用いることができる。
【0018】
図1は、薬剤送達デバイスの分解図である。この例では、薬剤送達デバイスは、Sanofi社のSoloSTAR(登録商標)インスリン注射ペンのような注射デバイス1である。
【0019】
図1の注射デバイス1は、充填済みの使い捨て注射ペンであり、ハウジング10を含み、針15が取り付けられるインスリン容器14を収容する。針は、内側ニードルキャップ16および外側ニードルキャップ17または他のキャップ18によって保護される。注射デバイス1から放出予定のインスリン用量は、投薬量ノブ12を回すことによってプログラムすることができ、または「ダイヤル設定」することができる。そして、現在プログラムされている用量は、例えば単位の倍数で、投薬量窓13を介して表示される。例えば、注射デバイス1は、ヒトインスリンを投与するように構成される場合、投薬量は、いわゆる国際単位(IU)で表示され、ここで、1IUは約45.5マイクログラムの生物学的等価物の純粋な結晶インスリン(1/22mg)である。インスリン類似体または他の薬剤を送達する注射デバイスにおいて他の単位を用いてもよい。選択された用量は、
図1の投薬量窓13に示されているものとは異なるようにしても良好に表示することができることに留意されたい。
【0020】
投薬量窓13は、ハウジング10におけるアパーチャの形であってよい。投薬量窓13によって、使用者は、投薬量ノブ12が回されると動くように構成される数字スリーブ70の限定された部分を見ることができ、したがって、現在プログラムされている用量の視覚インジケーションがもたらされる。投薬量ノブ12は、プログラム中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。
【0021】
この例では、投薬量ノブ12は、1つまたはそれ以上の構造71a、71b、71cを含み、それによって、本明細書において以下に述べるデータ収集デバイスの取り付けが容易になる。
【0022】
注射デバイス1は、用量ノブ12が回されることにより機械的なクリック音が発生し、使用者に音響フィードバックをもたらすように構成される。数字スリーブ70は、機械的に、インスリン容器14内のピストンと相互作用する。針15を患者の皮膚部分に刺し、注射ボタン11を押すと、ディスプレイ窓13に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から放出されることになる。用量の大部分は、実際は、注射ボタン11が押された後、注射デバイス1の針15が皮膚部分内にある時間の間とどまっているときに、患者の体内に注射される。インスリン用量の放出によって、やはりまた機械的なクリック音が発生する。しかし、そのクリック音は、投薬量ノブ12の使用のときに発生する音とは異なる。
【0023】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、投薬量ノブ12は、軸方向運動で、すなわち回転せずに、その初期位置の方に向かって逆戻りし、その間、数字スリーブ70は、回転してその初期位置に戻り、例えばゼロ単位の用量を表示する。
【0024】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるまたは注射デバイス1内の薬剤の使用期限(例えば最初の使用から28日)に達するまで、数回の注射処理に対して使用することができる。
【0025】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、例えば2単位のインスリンを選択し、針15を上向きにした状態で注射デバイス1を保持しながら注射ボタン11を押すことによって、インスリン容器14および針15から空気を除去する、いわゆる「プライムショット」を実行する必要がある場合がある。提示を簡潔にするために、以下では、放出量は注射用量に実質的に対応し、したがって、例えば、注射デバイス1から放出される薬剤量は使用者が受ける用量に等しいと仮定する。それでもやはり、放出量と注射用量との間の差(例えば損失)を考慮に入れる必要があることもある。
【0026】
図2は、例示的な一実施形態によるデータ収集デバイス20が取り付けられているときの、注射デバイス1の一方端の斜視図である。データ収集デバイス20は、ハウジング21と、投薬量情報22aを示すディスプレイ22とを含む。
【0027】
図3に示されるように、データ収集デバイス20は、さらに、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサを含むプロセッサ装置23と、それとともに、プロセッサ装置23によって実行されるソフトウェアを記憶することができるプログラムメモリ25および主メモリ24を含むメモリ装置24、25を含む。
【0028】
1つまたはそれ以上のセンサを含むセンサ装置26が提供される。この特定の例では、センサ装置26は、発光ダイオード(LED)などの光源26aと、光学トランスデューサなどの光検出器26bとを含む、光学エンコーダである。
【0029】
wi-fiもしくはBluetooth(登録商標)などの無線ネットワークを介して他のデバイスと通信する無線通信インターフェース、または、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、マイクロUSBコネクタを受けるソケットなどの有線通信リンクのためのインターフェースであってよい、出力装置27が設けられる。
【0030】
電源スイッチ28は、バッテリ29とともに設けられる。一実施形態では、電源スイッチ28は、データ収集デバイス20の電源を入れるまたは切ることによってディスプレイ22に加えられる圧力に応答するように構成される。
【0031】
図4は、注射デバイス1の注射ボタン11および投薬量ノブ12をより詳細に示している。この特定の実施形態では、注射ボタン11は、その上側面に、データ収集デバイス20の少なくとも一部分を受けるように構成されるキャビティ30を含む。この例では、キャビティ30の側壁は、アパーチャ31を含み、そこから数字スリーブ70の一部分が見える。
【0032】
図5は、数字スリーブ70を示している。この特定の実施形態では、キャスタレーション72は、数字スリーブ70の一方端に成形される。数字スリーブ70の一方端には、光源26aが発する光に対する光バリアとして働くことができるキャスタレーション72が設けられる。
【0033】
図5に示される特定の例では、12個のキャスタレーション72が設けられている。12個のキャスタレーションおよびそれらの間のギャップは、数字スリーブ70上に示される最大用量である24単位までの用量増分単位に対応するように、24個の「エッジ」をもたらすように選択された幅を有する。キャスタレーション72は、注射ボタン11の内面とは異なる反射率を有する材料を用いて形成する。
【0034】
数字スリーブ70は、投薬量ノブ12を用いて用量を注射デバイス1にプログラムするときに一方向に沿って螺旋状に回転し、注射デバイス1による薬剤用量の送達中に反対方向に螺旋状に回転するように配置される。
【0035】
図6は、データ収集デバイス20および注射デバイス1の部分断面図である。
【0036】
図6に示されるように、投薬量ノブ12およびデータ収集デバイス20のハウジング21は、協働構造71a、73aを含む。この特定の実施形態では、これらの構造は、データ収集デバイス20のハウジング21に設けられる突起73a、および投薬量ノブ12に設けられる戻り止め71aの形態をしている。
図1に示されるように、構造71a、71b、71cは、制限された範囲しか有さず、したがって、データ収集デバイス20は、投薬量ノブ12に取り付けられるとそれに対して回転することができない。
【0037】
データ収集デバイス20および投薬量ノブ12は、互いに対して回転することができないので、注射デバイス1に投薬量がプログラムされるとき、一緒になって動く。これは、より人間工学的な装置を提供することができる。なぜなら、データ収集デバイス20は、投薬量のプログラム中に使用者が把持し回転させることができるより大きな表面をもたらすことができるからである。あるいは、データ収集デバイス20は、その外面に、データ収集デバイス20、したがって投薬量ノブ12の回転を容易にする構造を備えることもできる。
【0038】
データ収集デバイス20が注射デバイス1に解放可能に取り付けられる配置において、協働構造71a、73aは、データ収集デバイス20の簡単な取り外しを可能にするクリップタイプの配置をもたらすことができる。そのような配置は、データ収集デバイス20を使い捨て注射デバイス1に使用する場合に有用である。なぜなら、それによって、データ収集デバイス20を注射デバイス1から取り外して再使用することができるようになる、または、データ収集デバイス20を自由自在に取り付け取り外そうとすることで使用者により大きな柔軟性をもたらすことを可能にするからである。
【0039】
あるいは、協働構造71a、73aは、例えば「スナップ嵌め」を用いて、データ収集デバイス20が注射デバイス1に恒久的に取り付けられるように構成することができる。他の実施形態では、データ収集デバイス20は、他のやり方、例えば接着で恒久的に取り
付けられる。そうした恒久的な取り付けは、注射デバイス1が再使用可能である場合に有用である。
【0040】
協働構造71a、73aの数および/または位置は、データ収集デバイス20が1つの特定位置においてのみ注射デバイス1に取り付けられるように構成される。この特定の例では、データ収集デバイス20のハウジング21は、アパーチャ74を含み、データ収集デバイス20が所定位置にあるとき、光源26aが発する光および光検出器26bが検出する光がそこを通過することができる。協働構造71a、73aは、
図6に示されるように、データ収集デバイス20が注射デバイス1に取り付けられているとき、データ収集デバイス20のハウジング21のアパーチャ74が、注射ボタン11のキャビティ30の側壁にあるアパーチャ31と位置合わせされるように、配置される。
【0041】
図6において矢印75で示されるように、光源26aが発する光は、このようにして、アパーチャ74、31を通り、注射ボタン11に入る。数字スリーブ70のキャスタレーション72がアパーチャ31から見える場合、光は、キャスタレーション72から反射され、アパーチャ31、74を通って戻ってくることになり、光検出器26bはその光を検出することができる。キャスタレーション72の反射率は、注射ボタン11の内面の反射率とは異なるので、光検出器26bが検出する光量は、キャスタレーション72がアパーチャ31からどの程度見えるかによって決まることになる。いくつかの実施形態では、センサ装置26は、アパーチャ74に入る迷光の影響を緩和するために、特定の偏光特性を有する光だけを発するおよび/または検出するように配置される。
【0042】
図7は、薬剤用量をプログラムし送達する間に光検出器26bが受ける光の強度の変化を示すグラフである。
図8は、この実施形態のセンサ装置26によって生成される出力を示すグラフである。
【0043】
上述したように、用量が注射デバイス1にプログラムされる間である、
図7および
図8の期間t1中、投薬量ノブ12および数字スリーブ70は、螺旋状に回転する。この特定の実施形態では、データ収集デバイス20は、投薬量ノブ12と一緒になって動くので、光検出器26bへと反射して戻る光の量は実質的に一定のままになるはずである。なぜなら、数字スリーブ70とデータ収集デバイス20との間の相対的な回転運動は、わずかしか、またはまったくないからである。
図7に期間t2として示される投薬量のプログラムの完了と注射の開始との間、数字スリーブ70、投薬量ノブ12およびデータ収集デバイス20は使用者によって動かされないので、反射する光の量は、やはりまた実質的に一定のままのはずである。
【0044】
したがって、
図8に示される、センサ装置26の出力は、期間t1およびt2中、実質的に一定である。期間t1およびt2中の実際の出力レベルは、キャスタレーション72がアパーチャ31から見えるかどうか、もしそうなら、アパーチャがキャスタレーション72によってどの程度覆われているかに応じて決まることになる。
【0045】
図7および
図8に期間t3として示される、薬剤の送達中、数字スリーブ70は、螺旋状に回転するが、投薬量ノブ12は回転せずに軸方向に動くだけである。したがって、数字スリーブ70は、データ収集デバイス20に対して回転する。
【0046】
期間t3中、数字スリーブ70のキャスタレーション72は、数字スリーブ70が投薬量ノブ12およびデータ収集デバイス20に対して回転するとき、アパーチャ31を横切って動き、
図7に示されるように、それに応じて、光検出器26bが受ける光の強度が変わることになる。この特定の例では、数字スリーブ70は、注射ボタン11の内面よりも反射性が高いので、
図7に示される最も高い光の強度レベルは、キャスタレーション72
がアパーチャ31を覆う量がその最大になる位置に対応する。
【0047】
期間t3中の光検出器26bの出力は、
図8に示されるように、受ける光の強度に基づいて、高レベルと低レベルとの間で切り替わることになる。キャスタレーション72のエッジは薬剤投薬量の増分単位に対応するので、プロセッサ装置23は、センサ装置26の出力における高レベルと低レベルとの間の移行の回数に基づいて、注射デバイスによって送達された薬剤の量を決定することができる。
【0048】
期間t3の長さは、投与される投薬量、および薬剤送達が完了したとみなされるときに基づいて決まることになる。薬剤送達が完了すると、数字スリーブ70は、投薬量ノブ12およびデータ収集デバイス20に対する回転をやめ、センサ装置26からの信号は、実質的に、一定レベルにとどまることになる。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサ装置23は、センサ装置24の出力における最終移行または最終パルスから経過した期間を監視するように配置される。経過期間が所定の閾値t4に達すると、薬剤送達が完了したとみなされ、プロセッサ装置23は、期間t3中のセンサ装置の出力において検出された移行の回数に基づいて、使用者に送達された薬剤用量の決定を進める。
図7および
図8に示される特定の例では、移行は8回である。移行は、キャスタレーションのエッジに対応し、したがってこの特定の実施形態では投薬量の増分単位に対応するので、決定薬剤用量は8単位になる。
【0050】
次いで、プロセッサ装置23は、主メモリ24に決定された薬剤用量を記憶する。プロセッサ装置23は、さらに、薬剤の送達を記録するログを使用者に提供するタイムスタンプ情報を記憶することができる。
【0051】
次いで、プロセッサ装置23は、バッテリの電力を保存しておくために、データ収集デバイス20の電源を切ることができる。
【0052】
使用者が電源スイッチ28を起動することでデータ収集デバイス20の電源が再び入れられると、プロセッサ装置23は、使用者の記憶を助けるように、決定された薬剤用量情報22aを表示するようにディスプレイを制御することができる。場合により、プロセッサ装置23は、決定された薬剤用量が送達されてからの経過時間を監視し、その経過時間情報も表示するようにディスプレイを制御することもできる。例えば、プロセッサ装置23は、ディスプレイ22を、決定された薬剤投薬量情報22aの表示と経過時間の表示との間で周期的に切り替えることができる。
【0053】
プロセッサ装置23は、さらに、決定された薬剤投薬量、および決定された場合のタイムスタンプ情報を、
図9に示されるように、コンピュータ40などの他のデバイスに送信することができる。上述したように、出力装置27は、無線通信リンクを用いて情報を送信するように構成される。あるいは、データ収集デバイス20は、コンピュータ40への情報のアップロードを可能にする有線接続41を用いてコンピュータ40に接続することができる。プロセッサ装置23は、情報をコンピュータ40に周期的に送信するように構成することができる。
【0054】
上記で詳細に述べた特定の実施形態は、本発明を実施する方法の単なる例示を目的とする。データ収集デバイス20および/または注射デバイス1の構造における多くの変形形態が考えられる。
【0055】
例えば、数字スリーブに設けられる構造がキャスタレーションの形である必要はなく、キャスタレーションおよびそれらの間のギャップの幅が、上述の実施形態のように個々の
投薬量の増分単位に正確に対応する必要もない。
【0056】
上述した実施形態は、光感知装置26を利用するが、光学センサに加えて、またはその代わりに、他のタイプのセンサを使用してもよい。例えば、感知装置は、ホール効果センサなどの磁気センサを含むことができる。そのような一例では、1つまたはそれ以上の磁石が数字スリーブに取り付けられ、したがって、数字スリーブがデータ収集デバイスに対して回転されると、磁界が変化することになる。他の例では、静電容量センサを使用することができ、その場合、数字スリーブに設けられる素子がデータ収集デバイスに設けられる2つのプレートの間の静電容量に影響を及ぼすことができる。他の例では、機械スイッチおよび/またはトラックを含む機械センサを、相対運動の検出に使用することができる。
【0057】
図3に示される実施形態は、センサを1つだけ含むが、センサ装置が1つまたはそれ以上のタイプの複数のセンサを含む他の実施形態も案出することができる。
【0058】
上述の実施形態では、注射ボタン11は、データ収集デバイス20の少なくとも一部を受ける中央キャビティ30を含んだが、他の実施形態では、データ収集デバイス20において必要なければ、注射ボタンから中央キャビティを省くことができる。
【0059】
図6に示される装置は、投薬量ノブ12にある戻り止め71aおよびデータ収集デバイス20のハウジング21にある突起73aの形の協働構造を含んだが、他のタイプの協働構造または取り付け方法を使用することもできる。
【0060】
上述の実施形態は、インスリン注射ペンからデータを収集することに関連して述べられているが、本発明の実施形態は、他の薬剤の注射の監視など、他の目的のために使用することもできることに留意されよう。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ収集デバイスであって:
注射デバイスに取り付けられるように構成される嵌合装置と;
薬剤の送達中に、データ収集デバイスに対する注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の動きを検出するように構成されるセンサ装置であって、前記検出された動きは、注射デバイスによって投与された薬剤投薬量を決定するために使用される、センサ装置と;
プロセッサ装置と
を含む、前記データ収集デバイス。
【請求項2】
センサ装置は、光学エンコーダを含む、請求項1に記載のデータ収集デバイス。
【請求項3】
光学式エンコーダは、光源と光検出器で構成される、請求項2に記載のデータ収集デバイス。
【請求項4】
プロセッサ装置は、光学エンコーダからパルスを受けてからの期間を監視し、前記期間が所定の閾値を超えた場合に、前記薬剤投薬量を決定するように構成される、請求項2または3に記載のデータ収集デバイス。
【請求項5】
プロセッサ装置は、薬剤投薬量の投与についてのタイムスタンプ情報を取得し、決定された薬剤投薬量および前記タイムスタンプ情報を記憶するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項6】
プロセッサ装置は、決定された薬剤投薬量およびタイムスタンプ情報のログを外部のデバイスに送信するように構成される、請求項5に記載のデータ収集デバイス。
【請求項7】
薬剤投薬量およびタイムスタンプ情報を外部のデバイスに送信可能な出力インターフェースを備え、出力インターフェースは、有線または無線リンクを介して外部のデバイスと通信可能に構成される、請求項6に記載のデータ収集デバイス。
【請求項8】
プロセッサ装置は、投与検出後の経過時間を監視し、決定された薬剤投薬量および経過時間を表示するようにディスプレイを制御するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項9】
プロセッサ装置は、前記検出された動きに基づいて、注射デバイスによって投与される薬剤投薬量を決定するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項10】
プロセッサ装置は、薬剤の送達中にデータ収集デバイスに対する注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の検出された動き後の経過時間を監視し、決定された薬剤投薬量および経過時間を表示するようにディスプレイを制御するように構成される、請求項9に記載のデータ収集デバイス。
【請求項11】
前記センサ装置は、単一のセンサで構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項12】
投薬量情報を提示するためのディスプレイを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のデータ収集デバイス。
【請求項13】
電源スイッチとバッテリを備え、電源スイッチは、データ収集デバイスの電源を入れるまたは切ることによって、ディスプレイに加えられる圧力に応答するように構成される、請求項12に記載のデータ収集デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のデータ収集デバイスと、可動投薬量プログラム構成要素を含む注射デバイス(1)とを含む、薬剤投与装置。
【請求項15】
データ収集デバイスは、ユーザがデータ収集デバイスを把持して動かすことにより、注射デバイスに投薬量をプログラムすることができるように構成される、請求項14に記載の薬剤投与装置。
【請求項16】
注射デバイスは、注射デバイスに投薬量をプログラムするために回転するように構成された投薬量ノブ(12)を含む、請求項14または15に記載の薬剤投与装置。
【請求項17】
薬剤投薬量は、投薬量ノブを回転させることで注射デバイスにプログラムされ:
可動投薬量プログラム構成要素および投薬量ノブは、ハウジングに対して相対的に回転するように構成され、可動投薬量プログラム構成要素は、投薬量ノブに対して相対的に移動しない、請求項16に記載の薬剤投与装置。
【請求項18】
データ収集デバイスは、データ収集デバイス(20)が投与ノブに取り付けられているときに投薬量ノブ(12)に対するデータ収集デバイス(20)の回転が抑制されるように、注射デバイス(1)の投薬量ノブ(12)に取り付けられるように構成された嵌合装置を含む、請求項16または17に記載の薬剤投与装置。
【請求項19】
データ収集デバイスは、データ収集デバイス(20)が注射デバイス(1)に取り付けられているときに、データ収集デバイスに対する注射デバイスの可動投薬量プログラム構成要素の動きを検出するように構成されたセンサ装置(26)を含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項20】
注射デバイスは、データ収集デバイスの少なくとも一部を受けるように構成されたキャ
ビティを有する注射ボタンを含む、請求項14~19のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項21】
注射デバイスは、数字スリーブの一方端に成形されたキャスタレーションを有する数字スリーブを含み、このキャスタレーションは、光源が発する光に対する光バリアとして働くことができる、請求項14~20のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【請求項22】
数字スリーブは、用量を注射デバイスにプログラムするときに一方向に螺旋状に回転し、薬剤用量の送達中に反対方向に螺旋状に回転する、請求項21に記載の薬剤投与装置。
【請求項23】
薬剤投与装置であって:
薬剤投薬量が注射デバイスにプログラムされるときに動くように構成される可動構成要素、を含む注射デバイスと;
請求項1~13のいずれか1項に記載のデータ収集デバイスと
を含む、前記薬剤投与装置。
【請求項24】
薬剤投与装置であって:
薬剤投薬量が注射デバイスにプログラムされるときに動くように構成される可動投薬量プログラム構成要素、を含む注射デバイスと;
請求項2~4のいずれか1項に記載のデータ収集デバイスと;
を含み、
ここで、可動投薬量プログラム構成要素は、
複数の光バリアを含む、
前記薬剤投与装置。
【請求項25】
用量を注射デバイスにプログラムする間、可動投薬量プログラム構成要素がデータ収集デバイスに対して動かないように構成される、請求項23または24に記載の薬剤投与装置。
【請求項26】
可動構成要素は、プログラムされた用量の可視インジケーションをもたらす数字スリーブである、請求項23~25のいずれか1項に記載の薬剤投与装置。
【外国語明細書】