(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100925
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】全血サンプルの安定化
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01N33/48 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078050
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020066388の分割
【原出願日】2015-07-31
(31)【優先権主張番号】62/034,481
(32)【優先日】2014-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/037,632
(32)【優先日】2014-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】サンドリン,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,キース
(72)【発明者】
【氏名】テシアー,シャノン
(72)【発明者】
【氏名】トナー,メーメット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血液サンプル、例えば、臨床血液サンプルを、使用の前に貯蔵または輸送のために安定化する方法。例示的適用として、それだけには限らないが、サイトカインおよびイムノアッセイのためのT細胞または好中球などの白血球サブタイプの濃縮;移植のための臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離、および癌検出および療法のための循環腫瘍細胞の選別が挙げられる。
【解決手段】全血のサンプルを安定化する方法であって、対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルにフィコール70を導入して、前記サンプルにおいて2~20%(w/v)フィコール70を生ずるステップを含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血のサンプルを安定化する方法であって、
対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルにフィコール70を導入
して、前記サンプルにおいて2~20%(w/v)フィコール70を生ずるステップを含
む方法。
【請求項2】
全血のサンプルを安定化する方法であって、
対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびに前記サンプルにカスパーゼ阻害剤お
よび任意選択で、保存料製剤を導入するステップを含む方法。
【請求項3】
全血のサンプルを安定化する方法であって、
対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルに保存料製剤を導入する
ステップを含み、前記保存料製剤は、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、
6.75mMのマンニトール、0.77mMのN-アセチル-L-システインおよび8.
5mMのNaClを含む、方法。
【請求項4】
全血のサンプルを安定化する方法であって、
対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルに血小板凝集抑制剤(P
I)を導入するステップを含む方法。
【請求項5】
全血のサンプルを安定化する方法であって、
対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびに前記サンプルに、
前記サンプルにおいて2~20%(w/v)フィコール70を生ずるためのフィコール
70、
カスパーゼ阻害剤、
48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.
77mMのN-アセチル-L-システインおよび8.5mMのNaClを含む保存料製剤
、および/または
血小板凝集抑制剤(PI)
のうちの1種または複数を導入するステップを含む方法。
【請求項6】
フィコール70が、前記サンプルにおいて少なくとも10%フィコール70を生ずるた
めに添加される、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPh((3S)-5-(2,6-ジフルオロフ
ェノキシ)-3-[[(2S)-3-メチル-2-(キノリン-2-カルボニルアミノ)
ブタノイル]アミノ]-4-オキソペンタン酸)、Z-VAD-FMK(メチル(3S)
-5-フルオロ-3-[[(2S)-2-[[(2S)-3-メチル-2-(フェニルメ
トキシカルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]-4-オキソペ
ンタノエート)、Q-VD(OMe)-OPh((S)-メチル5-(2,6-ジフルオ
ロフェノキシ)-3-((S)-3-メチル-2-(キノリン-2-カルボキサミド)ブ
タンアミド)-4-オキソペンタノエート)、またはBoc-D-fmk(メチル5-フ
ルオロ-3-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]-4-オキ
ソペンタノエート)である、請求項2または5に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルに、2~10μM、例えば、約5μMの最終濃度を達成するように十分な
カスパーゼ阻害剤が添加される、請求項2または5に記載の方法。
【請求項9】
前記保存料製剤が、24~48mMのHEPES、0.11~0.44mMのアデニン
、2.25~6.75mMのマンニトール、0.39~1.54mMのN-アセチル-L
-システイン、0~13.5mMのデキストロースおよび0~17mMのNalを含む、
請求項2または5に記載の方法。
【請求項10】
前記保存料製剤が、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMの
マンニトール、0.77mMのN-アセチル-L-システインおよび8.5mMのNaC
lを含む、請求項2、5または9に記載の方法。
【請求項11】
前記血液が、20~25℃で貯蔵のために安定化される、請求項3から8に記載の方法
。
【請求項12】
前記血液が、72~96時間貯蔵される、請求項1から11に記載の方法。
【請求項13】
前記PIが、チカグレロル、シロスタゾール、プラスグレル、ジピリダモール、プラス
グレル、チロフィバン、エプチフィバチド、クロピドグレルまたはKF38789である
、請求項4または5に記載の方法。
【請求項14】
前記PIが、0.01~100μg/mL、例えば、0.01~1μg/ml、例えば
、0.01~0.5μg/mLの最終濃度を達成するように前記サンプルに添加される、
請求項4、5または13に記載の方法。
【請求項15】
前記血液が、2~25℃で貯蔵のために安定化される、請求項4、5、13または14
に記載の方法。
【請求項16】
前記血液が、4℃で貯蔵のために安定化される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルを4℃で維持するステップを含む、請求項4、5または13から16に記
載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが、2~25℃で少なくとも24、36、48、72または96時間維持
または貯蔵される、請求項4、5または13~16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2014年8月15日に出願された米国仮特許出願番号第62/037,63
2号および2014年8月7日に出願された第62/034,481号の利益を主張する
。前記のものの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
合衆国政府の助成による研究または開発
本発明は、米国国立衛生研究所によって拠出された助成金第EB002503号および
同EB012493号のもと、政府の助成を受けて行われた。政府は、本発明において特
定の権利を有する。
【0003】
本発明は、貯蔵のために、血液サンプル、例えば、臨床血液サンプルを安定化するため
の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
末梢血は、診療所において最も頻繁に入手される組織であり、血液由来細胞の単離は、
血液学、輸血、免疫学、再生医療および腫瘍学において広く臨床的および科学的に重要な
ものである。マイクロエンジニアリングにおける最近の進歩は、細胞の純粋な集団を単離
することおよびハイスループット多次元アッセイを実施することにおける可能性を大きく
前進させた(1)。血液チップ(blood-on-a-chip)技術の急速に成長している分野は、
HIV疾患モニタリングのためのT細胞単離(2)およびサイトカイン分泌の多重化検出
(3);外傷および火傷患者における好中球の遺伝子発現プロファイリング(4);CD
34+造血幹細胞の濃縮(5);母体血からの有核赤血球(RBC)の、最小限の侵襲性
での検出(6)ならびに癌診断のための稀な循環腫瘍細胞(7)および新薬の開発につな
がるような突然変異の同定(8)にわたる適用に拡大した。
【0005】
しかし、任意の組織と同様に、全血(WB)は、ex vivoでは急速に劣化する。
栄養分欠乏、酸化ストレス、浸透圧およびpHの変化ならびに毒性代謝副産物の蓄積など
の分解事象が、迅速に始まる。数時間以内に、好中球が活性化、酸化バーストならびに壊
死およびアポトーシスを起こす。血液沈殿は、物理的ストレスを引き起こし、付随的損傷
および交差活性化を加速する限定空間中に壊死細胞を機械的に圧縮することによって分解
を増悪する。血液サンプルの輸送は、制御されない振盪をもたらし、これは、溶血および
血小板活性化を誘導する。これらの損傷は、サンプル中の対象の細胞の生存力および機能
性に影響を及ぼすだけでなく、広範囲の適用において濃縮技術に非常に影響を与える。例
えば、表面抗原の脱落は、抗体ベースの選別を無効にする。赤血球の連銭形成によって、
稀な細胞が捕捉されてしまうことがある。特に、効率的な細胞選別に必須である微小流体
選別技術は、棘状赤血球(棘を形成する老化赤血球)、血小板活性化および凝固ならびに
細胞凝集によって損なわれる。
【0006】
全血のさらなる複雑な保存戦略のために、別の方法で生化学的反応および分解プロセス
を効率的に抑制し得る低体温温度範囲は、主に、低温誘導性血小板活性化のために不適合
であると考えられてきた。したがって、現代の輸血医学では、全血は、通常、室温で保存
され、24時間以内に特殊化された貯蔵のために種々の成分に分けられる(9)。配列決
定および発現プロファイリングなどの多数の臨床上関連するアッセイが、大きな医療セン
ターまたは診断検査施設において最良に実施されることを考えると、血液貯蔵および輸送
のロジスティックの不足が、次世代血液ベース医療技術の普及に厳しい制限を課す。
【0007】
全血の保存の改善から非常に恩恵を受けるであろう多数の適用の中に、固形腫瘍から脱
落し、血液を介して転移を広げることができる循環腫瘍細胞(CTC)の単離がある。先
端的微小流体技術は、癌患者の末梢血サンプルからのこれらの極端に稀な細胞(10億個
の血液細胞中に1個)の単離を可能にし、これらの細胞および診断、予後のためのその分
子指標の使用、新薬の開発につながるような突然変異の同定ならびに薬物スクリーニング
のための患者特異的モデルの作製において相当な進歩があった。しかし、これらの下流ア
ッセイは、分子情報および細胞機能を保持する、生存可能な、固定されていないCTCの
単離に決定的に依存する。血液の分解は、CTCの分子解析を制限するだけでなく、これ
らの極端に稀な細胞の正確な微小流体単離を妨げる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ex vivoでの全血の迅速な分解は、種々の次世代医療技術における血液由来細胞
の利用にロジスティックな制限を課す。いくつかの方法が本明細書において記載され、そ
の各々は、多数の臨床適用のために全血サンプルを保存するために単一でまたは組み合わ
せて使用され得る。例示的適用として、それだけには限らないが、サイトカインおよびイ
ムノアッセイのためのT細胞または好中球などの白血球サブタイプの濃縮;移植のための
臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離
、および癌検出および療法のための循環腫瘍細胞の選別が挙げられる。
【0009】
したがって、本発明は、全血のサンプルを安定化するための方法を提供する。本方法は
、対象から全血のサンプルを得るステップ、およびサンプルにフィコール70を導入して
、サンプルにおいて2~20%(w/v)フィコール70を生ずるステップを含む。
【0010】
また、全血のサンプルを安定化するための方法も提供される。本方法は、対象から全血
のサンプルを得るステップ、ならびにサンプルにカスパーゼ阻害剤および任意選択で、保
存料製剤を導入するステップを含む。
【0011】
また、全血のサンプルを安定化するための方法も提供される。本方法は、対象から全血
のサンプルを得るステップ、およびサンプルに保存料製剤を導入するステップを含み、こ
こで、保存料製剤は、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMの
マンニトール、0.77mMのN-アセチル-L-システインおよび8.5mMのNaC
lを含む。
【0012】
また、全血のサンプルを安定化する方法も提供される。本方法は、対象から全血のサン
プルを得るステップ、およびサンプルに血小板凝集抑制剤(PI)を導入するステップを
含む。
【0013】
また、全血のサンプルを安定化するための方法であって、対象から全血のサンプルを得
るステップ、ならびにサンプルに、サンプルにおいて2~20%(w/v)フィコール7
0を生ずるためのフィコール70、カスパーゼ阻害剤、48mMのHEPES、0.44
mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN-アセチル-L-シス
テインおよび8.5mMのNaClを含む保存料製剤および/または血小板凝集抑制剤(
PI)のうちの1種または複数を導入するステップを含む方法も提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、フィコール70は、サンプルにおいて少なくとも10%フィ
コール70を生ずるために添加される。
【0015】
いくつかの実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh((3S)-5-(
2,6-ジフルオロフェノキシ)-3-[[(2S)-3-メチル-2-(キノリン-2
-カルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]-4-オキソペンタン酸)、Z-VAD-F
MK(メチル(3S)-5-フルオロ-3-[[(2S)-2-[[(2S)-3-メチ
ル-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]プロパノイル]ア
ミノ]-4-オキソペンタノエート)、Q-VD(OMe)-OPh((S)-メチル5
-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-3-((S)-3-メチル-2-(キノリン-2
-カルボキサミド)ブタンアミド)-4-オキソペンタノエート)、またはBoc-D-
fmk(メチル5-フルオロ-3-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニ
ルアミノ]-4-オキソペンタノエート)である。いくつかの実施形態では、サンプルに
、2~10μM、例えば、約5μMの最終濃度を達成するように十分なカスパーゼ阻害剤
が添加される。
【0016】
いくつかの実施形態では、保存料製剤は、24~48mMのHEPES、0.11~0
.44mMのアデニン、2.25~6.75mMのマンニトール、0.39~1.54m
MのN-アセチル-L-システイン、0~13.5mMのデキストロースおよび0~17
mMのNalを含む。いくつかの実施形態では、保存料製剤は、48mMのHEPES、
0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN-アセチル-
L-システインおよび8.5mMのNaClを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、血液は、20~25℃で貯蔵のために安定化される。
【0018】
いくつかの実施形態では、血液は、例えば、20~25℃で72~96時間維持または
貯蔵される。
【0019】
いくつかの実施形態では、PIは、チカグレロル、シロスタゾール、プラスグレル、ジ
ピリダモール、プラスグレル、チロフィバン、エプチフィバチド、クロピドグレルまたは
KF38789である。
【0020】
いくつかの実施形態では、PIは、0.01~100μg/mL、例えば、0.01~
1μg/ml、例えば、0.01~0.5μg/mLの最終濃度を達成するようにサンプ
ルに添加される。
【0021】
いくつかの実施形態では、血液は、2~25℃で貯蔵のために安定化される。いくつか
の実施形態では、4℃で貯蔵のために安定化される。いくつかの実施形態では、本方法は
、サンプルを4℃で維持するステップを含む。サンプルが、2~25℃で少なくとも24
、36、48、72または96時間維持または貯蔵される、請求項4、5または13~1
6の方法。例えば、サンプルは、72時間(好中球安定化のために)および少なくとも9
6時間(赤血球安定化のために)保持され得る。
【0022】
本明細書において使用される場合、語句「サンプルに導入する」とは、サンプルに何か
を添加するまたはサンプルを何かに添加すること(例えば、サンプルを、添加剤をすでに
含むチューブ中に入れること)を意味し得る。
【0023】
本方法は、全血の微小流体評価および免疫系の機能を示し得る好中球遊走アッセイ(例
えば、敗血症の診断における)などの臨床および実験室診断のためにサンプルにとって特
に有用である。
【0024】
特定の状況において使用するために本明細書に記載されるどの方法を選択するかは、い
くつかの因子に応じてなされ得る。例えば、患者サンプルを別の場所に、例えば、臨床検
査室に輸送することが望ましい場合には、冷蔵は選択肢ではなく、任意選択のカスパーゼ
阻害剤とともに最適化された保存料が選択され得る。輸送後に微小流体デバイスを使用し
て評価されるサンプルには、任意選択のカスパーゼ阻害剤とともに最適化された保存料が
選択され得、血小板凝集抑制剤も含まれる。
【0025】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語
は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるような同一の意味を有す
る。本発明において使用するための方法および材料は、本明細書に記載され、当技術分野
で公知のその他の適した方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は、単
に例示であって、制限であると意図されるものではない。本明細書に記載される、すべて
の刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよびその他の参考文献は、
その全文が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が支配す
る。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、および特許請
求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1A~B.(A)全血(左)および10%F70を含有する血液(右)での赤血球沈殿速度(ESR)の測定を示す代表的画像を示す図である。(B)72時間にわたる、全血(WB)および種々のF70濃度を有する血液における血液サンプルのESR(WB、n=11;0%F70、n=9;5%F70、n=8;10%F70、n=11;15%F70、n=9)。0%F70は、F70を含まないRPMI培地で処理された対照条件を表す。エラーバーは、平均の95%信頼区間(CI)を表す。
【
図2】
図2A~G.(A)せん断速度の関数としての血液サンプルの粘度(WB、n=5;5%F70、n=4;10%F70、n=5;15%F70、n=5)を示す図である。(B)種々のF70濃度の存在下での血液サンプルの密度を示す図である。(C)サンプルが20分間乱されないままであった場合、全血(WB)中のRBCは、自発的に凝集塊を形成する。RBC凝集は、5%F70の存在下で大きく阻害され、10%および15%F70の存在下で完全に防止される。スケールバーは、10μmを表す。(D)沈殿速度から算出した推定ESR値を示す図である。ここで、RBCは、4μmの半径(R)および1.1g/cm
3の密度を有する球形であると推定し、流体密度および粘度は、それぞれのF70条件における測定値を使用した。単細胞としての沈殿は、培地に関わらず極めて遅い(WB、10%F70および15%F70)。しかし、細胞凝集は、粒子の半径を効率的に増大し(すなわち、R×2、R×3など)、それによって、沈殿の速度を大幅に増大する。(E)バルク濃度の範囲でのフィコール70kDaまたは400kDaポリマーの存在下でのRBCの表面上の枯渇層の計算された厚みを示す図である。(F)バルク濃度の範囲のフィコール400kDaの最小相互作用エネルギーを示す図である。負のエネルギーは、RBC凝集を引き起こす引力を示す。フィコール70kDaによる相互作用エネルギーは、普遍的に、負ではなく、したがって示されていない。(G)RBCは、5%フィコール400kDaの存在下で直ちに凝集した。スケールバーは、10μmを表す。
【
図3】
図3A~B.(A)最大72時間WB中または10%F70中で貯蔵されたRBCの代表的な位相差画像を示す図である。棘状赤血球は、棘形成を含有するRBCである。スケールバーは、10μmを表す。(B)72時間にわたって種々のF70濃度中の貯蔵された血液サンプル中の棘状赤血球のパーセンテージ(WB、n=9;0%F70、n=8;5%F70、n=6;10%F70、n=7;15%F70、n=6)。エラーバーは、平均の95%信頼区間(CI)を表す。
【
図4】
図4A~F.(A)新鮮血液(0時間)および全血として、または10%F70中で72時間貯蔵された血液中の染色された好中球の高性能(100×)顕微鏡画像を示す図である。新鮮な好中球の核は、別個の分割された多葉性形態(0時間)を示し、これは、WBよりも10%F70において良好に提示される。スケールバーは、10μmを表す。(B)WBまたは10%F70中で72時間貯蔵した後の、Sytox Blueについて陽性に染まる(すなわち、膜が損なわれている)白血球または好中球のパーセンテージを示す図である。(C)WBまたは10%F70中で72時間貯蔵した後の、カスパーゼ-3/7活性について陽性に染まった白血球または好中球のパーセンテージを示す図である。(D)細胞質レムナントを伴う高度に分散された核材料が、貯蔵された血液において見られた。スケールバーは、10μmを表す。(E)好中球エラスターゼおよびヒストン-DNA複合体およびDAPIに対する抗体を用いて染色された健常な好中球(上部の列)および好中球細胞外トラップ(NET;下部の列)の免疫蛍光画像。明視野画像において単一RBCと比較してNETの大きな領域を注記する。スケールバーは、10μmを表す。(F)72時間貯蔵された血液サンプル中の好中球エラスターゼの定量化を示す図である。新鮮な血液サンプルでは、好中球エラスターゼが、37.8±16.5mU/1mLの血液のレベルで検出された(n=7)。陽性対照としての、酢酸ミリスチン酸ホルボール(NETの強力なインデューサー;n=7)を用いて刺激された新鮮全血は、レベルを81.4±64.4mU/mLに増大した。
【
図5】WBまたは10%F70において24、48および72時間貯蔵した後の、Sytox Blueについて陽性に染まる白血球のパーセンテージを示す図である(WB、n=10;10%F70、n=10)。48時間(p<0.05)および72時間(p<0.001)でのボンフェローニポストテストを用いる2元配置分散分析法で、WB中の白血球は、10%F70よりも有意に少なく生存可能であった。
【
図6-1】
図6A~C.(A)全血中の周囲条件下で貯蔵された赤血球の画像は、棘状赤血球(球形と推測される細胞)の形成を示す図である。(B)24~96時間の貯蔵期間後、サンプルは、棘状赤血球の数を低減し、本質的に赤血球を再生するために、2mMのアデノシンの存在下で37℃で4時間インキュベートされ得る。(C)患者全血中の赤血球の分解が、経時的に観察される図である(n=5)。CS-オリジナル製剤の有効性は、対照とほぼ同一であり、再生された赤血球を支持する能力が制限されている。改変タグチ表で条件18から製造された製剤は、72時間貯蔵した後に赤血球再生を支持する優れた能力を示し、これでは赤血球の96±1%は健常と思われる。
【
図6-2】
図6A~C.(A)全血中の周囲条件下で貯蔵された赤血球の画像は、棘状赤血球(球形と推測される細胞)の形成を示す図である。(B)24~96時間の貯蔵期間後、サンプルは、棘状赤血球の数を低減し、本質的に赤血球を再生するために、2mMのアデノシンの存在下で37℃で4時間インキュベートされ得る。(C)患者全血中の赤血球の分解が、経時的に観察される図である(n=5)。CS-オリジナル製剤の有効性は、対照とほぼ同一であり、再生された赤血球を支持する能力が制限されている。改変タグチ表で条件18から製造された製剤は、72時間貯蔵した後に赤血球再生を支持する優れた能力を示し、これでは赤血球の96±1%は健常と思われる。
【
図7】側方散乱v CD45散布図における白血球の分布が、予測される通りであり、細胞の各集団間で明確な区別を有することを示す図である。しかし、72時間周囲貯蔵した後、白血球集団は、シフトした。シフトされた細胞の大部分は、アポトーシスの/死滅した好中球であると後に決定された。
【
図8-1】
図8A~I.好中球を、新鮮な健常ドナー血液から単離し、培養培地(IMDM、20%FBS)に添加したことを示す図である。対照(培養培地のみ)および処理された(アポトーシス/壊死阻害剤+培養培地)。0、24、48、72および96時間、周囲貯蔵した後にサンプルを調べた。(A)新鮮好中球(B)96時間対照好中球および(C)96時間Q-VD-OPh処理した好中球の側方散乱対CD45発現。(D)対照および処理されたサンプルを、経時的にモニタリングして、CD45発現の変化を測定し、各条件下で、(E)死滅数および(F)アポトーシス好中球を同定する。96時間の貯蔵後に(G)新鮮好中球、(H)対照好中球から、および(I)96時間の貯蔵後にQ-VD-OPh処理した好中球から、Wright-Giemsa染色したスメアから明視野画像を撮像した。
【
図8-2】
図8A~I.好中球を、新鮮な健常ドナー血液から単離し、培養培地(IMDM、20%FBS)に添加したことを示す図である。対照(培養培地のみ)および処理された(アポトーシス/壊死阻害剤+培養培地)。0、24、48、72および96時間、周囲貯蔵した後にサンプルを調べた。(A)新鮮好中球(B)96時間対照好中球および(C)96時間Q-VD-OPh処理した好中球の側方散乱対CD45発現。(D)対照および処理されたサンプルを、経時的にモニタリングして、CD45発現の変化を測定し、各条件下で、(E)死滅数および(F)アポトーシス好中球を同定する。96時間の貯蔵後に(G)新鮮好中球、(H)対照好中球から、および(I)96時間の貯蔵後にQ-VD-OPh処理した好中球から、Wright-Giemsa染色したスメアから明視野画像を撮像した。
【
図9】
図9A~B.好中球の、2つの条件下-高栄養対照条件(IMDM+20%FBS)およびIMDM+20%培地中Q-VD-OPhでの貯蔵を示す図である。(A)fMLPに対する遊走反応は、Q-VD-OPhを用いて処理されたサンプルにおいて保存され(72時間貯蔵後)、新鮮な単離された好中球の遊走反応とほとんど区別できない。しかし、対照条件下では、遊走活性の大幅な喪失があった。(B)この好中球機能の保存はまた、その遊走速度によっても観察され、これでは、Q-VD-OPh処理されたサンプルは、新鮮な単離された好中球に対して匹敵する速度を維持した。
【
図10】温度の関数としての血小板活性化を示す図である。血小板を4~37°Cの範囲の温度で20分間インキュベートし(時点1)、37°Cで1時間加熱する(時点2)か、または5mM EDTAと組み合わせ(EDTAあり)、その後、血小板活性化表面マーカーについての染色およびイメージングフローサイトメトリーを行った。PAC-1は、GPIIb/IIIaの活性型であり、CD62Pの発現は、血小板脱顆粒のマーカーである。血小板活性化は、細胞表面活性化マーカーを発現する血小板のパーセントを評価することによって決定した。本発明者らのデータは、血小板の低温誘導性活性化は、2種の表面タンパク質、CD62/p-セレクチンおよびGPIIa/IIIaと関連しており、血小板活性化の最大の変化は、37から22℃の間で起こることを示す。
【
図11】種々の血小板凝集抑制剤の最適化/選択を示す図である。本発明者らは、チロフィバン、エプチフィバチド(Tocris)、クロピドグレル(Sigma)およびKF38789(Tocris)を含めたさまざまな血小板凝集抑制剤をさまざまな濃度で試験した。血小板を4または22℃で20分間インキュベートし、その後、血小板活性化表面マーカーについての染色およびイメージングフローサイトメトリーを使用する処理を行った。PAC-1およびCD62/p-セレクチンを含めた細胞表面マーカーを発現する血小板のパーセントを評価することによって血小板活性化を調べた。試験した血小板凝集抑制剤のうち、チロフィバンは、最も有望な結果を示し、低温処理された血小板は、0.01~0.5μg/mLの範囲の投与量で最小限にしか活性化されなかった。
【
図12-1】
図12A~I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1~0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2~5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC-1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板-白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板-白血球相互作用を完了できる。
【
図12-2】
図12A~I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1~0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2~5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC-1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板-白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板-白血球相互作用を完了できる。
【
図12-3】
図12A~I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1~0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2~5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC-1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板-白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板-白血球相互作用を完了できる。
【
図13】低温保存の間のRBC形態の保存を示す図である。ex vivo血液サンプルでは、棘状赤血球、別個の推定される形状を有するRBCが、一般に観察され、細胞ストレスの指標である。棘状赤血球カウントを、標準血液スメア、位相差イメージング(100×対物レンズを使用する)および実験条件あたり2つの画像(異なる視野から獲得された)にわたって100個のRBCをカウントすることを使用して得た。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵前に添加されたチロフィバン0.1~0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2~5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。全血低温貯蔵は、RBCの最大80%の形態を最大72時間保存し得る。本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、棘状赤血球形成に対して有害な効果を全く有さない。
【
図14】低温貯蔵の間のWBC活性化を示す図である。イメージングフローサイトメトリーを使用し、CD66bおよびCD11aを含めた活性化の細胞表面マーカーを使用してWBC活性化パーセントを決定した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1~0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2~5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。影付きのデータ点は、健常なドナーから集められたデータを示すのに対し、中白の丸は、癌患者から集められたデータを示す。WBC活性化は、室温貯蔵に対して比較されるように低温貯蔵において低減される。本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、WBCを活性化しない。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者において観察される。
【
図15】72時間の低温貯蔵の間のWBC生存力の保存を示す図である。低温貯蔵された対室温貯蔵されたWBCの生存力を、イメージングフローサイトメトリーによって生存(カルセインAMブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色を使用して評価した。生存細胞は、カルセイン陽性およびカスパーゼ陰性細胞と定義され、死滅細胞は、カスパーゼ陽性細胞と定義される。顆粒球を、低CD45および高CD16発現に基づいてゲート開閉し、顆粒球は、高CD45発現を示した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1~0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2~5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。低温で貯蔵されたWBCの生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好である。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、WBC生存力に対して効果はない。
【
図16】低温貯蔵の間のLNCaP生存力を示す図である。低温貯蔵された対室温貯蔵された稀な癌細胞の生存力を、イメージングフローサイトメトリーによって生存(カルセインAMブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色を使用して評価した。生存細胞は、カルセイン陽性およびカスパーゼ陰性細胞と定義され、死滅細胞は、カスパーゼ陽性細胞と定義される。LNCaP細胞を、EpCAM細胞表面マーカーを使用してゲート開閉した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1~0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2~5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。影付きのデータ点は、健常なドナーから集められたデータを示すのに対し、中白の丸は、癌患者から集められたデータを示す。低温で貯蔵された稀な細胞の生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好である可能性がある。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、稀な細胞の生存力に対して効果を有さない。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者において観察される。
【
図17】
図17A~F.CTC-iChipによる低温貯蔵された血液の処理を示す図である。血小板凝集抑制剤は、新鮮な血液および低体温温度(4℃)のもとで3日間貯蔵された血液両方のCTC-iChip処理を可能にした。ここで、使用された血小板凝集抑制剤(PI)は、0.5μg/mLのチロフィバンまたは1μg/mLのチロフィバン+エプチフィバチド20μg/mL(貯蔵前に添加された)のいずれかであった。EDTA(2~5mM)を、iChip処理の15分前に血液サンプルに添加した。(A)血小板凝集抑制剤の非存在下での、重度の閉塞を表す画像。画像は、CTC-iChipの濾過アレイの第1段階におけるVybrant DyeCycle Green(Life Technologies)によるDNAの蛍光染色を示す。スケールバーは、100μmを表す。(B)標的容量(5~6mL)のパーセンテージとしてのCTC-iChipによって処理された総血液容量を示すプロット。データは、血小板凝集抑制剤カクテルと伴のおよび伴わない、新鮮なおよび貯蔵された血液を比較する。(C)血小板凝集抑制剤カクテルと伴のおよび伴わない、新鮮なおよび貯蔵された血液を比較する、CTC-iChipによって処理された全血の血液スループットまたは流速(mL/hr)を示す図である。(D)実際に処理された容量に基づいて算出された、iChip選別後に添加された循環腫瘍細胞(CTC)の回収率を示す図である。回収パーセンテージは、処理された血液容量にのみ基づいており、これは、(B)において示されるチップ閉塞の事象では大幅に低減された。したがって、CTCの絶対回収率はかなり低く、回収パーセンテージ×処理された容量によって算出され得る。(E)CTC-iChipによる、白血球の対数変換した枯渇倍数を示す図である。枯渇が高いほど、濃縮されたCTC集団がより純粋となる。4対数の枯渇は、10000倍の枯渇に変換でき、これは、5×106個の白血球/mLの血液を含有する通常の血液サンプルは、濃縮CTC生成物中に500個の白血球/1mLの処理された血液しか残さないことを意味する。(F)CTC生成物への赤血球(RBC)/血液1μLの持ち込みを示す図である。
【
図18】iChip選別後のCTCの培養物を示す図である。血液中に循環腫瘍細胞を添加し(2000~5000個細胞/mL)、CTC-iChipによって濃縮した。iChipから集めたCTC生成物をプレーティングし、培養した。Bright-Gloルシフェラーゼアッセイ系を使用して発光量によって細胞成長を定量した。発光シグナルを、iChip処理の直後に培養を開始した日である0日目のシグナルに対して正規化した。iChip処理を全く伴わない陽性対照を含めた。
【
図19】iChip選別後の単一細胞PCR(左)およびマスサイトメトリーを示す図である。(左)血液中にLNCaP細胞を添加し(2000個細胞/mL)、iChipによって単離し、単一細胞転写プロファイリングのために顕微操作した(参考文献30、Ozkumur 2013 Sci Transl Med)。示されるデータは、前立腺癌に特異的な遺伝子の平均発現を表す。各貯蔵条件において、4個の細胞を無作為に選択し、プロファイリングした。(右)LNCaP細胞を用いる同一実験から得た濃縮されたiChip生成物のマスサイトメトリー。上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現は、室温と比較して低温貯蔵においてより良好に保存された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全血の保存を改善することは、広範囲の臨床的および科学的適用への機会を開く。生存
可能な状態での保存は、輸血および組織再生などの適用のためだけでなく、固定の際に激
しく損なわれ得る高品質分子材料を必要とする診断試験のためにも重要である(19)。
いくつかの方法が本明細書に記載され、それらの各々は、多数の臨床適用のために全血サ
ンプルを保存するために単一でまたは組み合わせて使用され得る。例示的適用として、そ
れだけには限らないが、サイトカインおよびイムノアッセイのためのT-細胞または好中
球などの白血球サブタイプの濃縮、移植のための臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の
単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離ならびに癌検出および療法のための循環
腫瘍細胞の選別が挙げられる。
【0029】
方法1.流体相中で血液サンプルの安定化
精製された血液成分のために設計される保存溶液における進展にもかかわらず、全血の
保存における進歩は、比較的制限されており、血液沈殿の基本的な問題に対処する試みは
なされてこなかった。本明細書において示されるように、血液沈殿および関連する細胞分
解は、物理的安定化によって最小化され得る。
【0030】
血液沈降は、単純な物理学の点で理解され得る。種々の流体における単一球沈殿につい
て、球の重量は、浮力とストークの抗力によってバランスが保たれており、沈殿速度
【0031】
【0032】
[式中、
ρpは、球の密度であり、ρfは、流体の密度であり、μは、流体の粘度であり、gは
、重力であり、Rは、球の半径である]を示す。したがって、沈殿速度は、密度の差(球
と流体間)および半径の二乗に比例し、流体粘度に反比例する。この方程式は、赤血球凝
集(Rの増大)が赤血球沈殿速度(ESR)を増大する理由を説明する。
【0033】
本発明者らは、血液の懸濁された貯蔵を達成するために、その中性電荷および高親水性
のために高度に生体適合性である多糖フィコールを選択した。デキストランおよびポリエ
チレングリコール、例えば、デキストラン40kDaポリマーなどの同様の生理化学的特
性を有するポリマーも使用され得る。本発明者らは、室温で3日にわたる血液沈殿の防止
におけるフィコールポリマーの能力をまず試験し、関連機序を調査した。次いで、本発明
者らは、この処置が、通例の血液細胞濃縮法ならびに貯蔵中の血液細胞の形態、生存力お
よび種々の生物学的プロセスに対する物理的安定化の効果に影響を及ぼすか否かを研究し
た。
【0034】
血液へのフィコールポリマーの導入は、簡単であり、白血球濃縮のための一般的なアッ
セイと適合する。物理的安定化は、赤血球凝集、棘状赤血球形成を阻害し、白血球生存力
を維持し、好中球のNETosisを防止した。
【0035】
生物物理学的安定化の利益
RBC凝集の阻害は、処理および細胞保存の両方の点で血液サンプルにいくつかの利益
を付与する。第1に、最重要に、血液沈殿が、ほとんど完全に防がれ、これは、連続混合
の必要性を排除し、したがって、血液の反復される連続サンプリングを必要とする貯蔵お
よび輸送ならびに実験室アッセイを促進し得る。さらに、このアプローチは、低せん断粘
度を低下させることによって血液のレオロジー特性を改善する(
図2A)。全血では、R
BC凝集物を最初に分散させ、特徴的なせん断流動化(shear-thinning)挙動を引き起こ
すにはさらなるストレスが必要である(20、27)。F70の添加によって、低せん断
範囲で血液サンプルがより容易に流れることが可能となり(
図2A)、これは、特に、微
小流体適用において関連する。実際、臨床設定において血液灌流を改善するために小ポリ
マーが利用されてきた(28、29)。
【0036】
その単純性にもかかわらず、物理的安定化が、種々の種類の血液細胞の保存を劇的に改
善した。すべての血液細胞の総容量の99%を構成する赤血球は、F70の存在下でその
両凹形態を保持していた。この結果は、大きさベースの細胞選別(例えば、濾過)または
決定論的横置換法などの細胞の水力学的特性に頼る微小流体プロセスなどの適用に恩恵を
もたらすはずである(30)。白血球、特に、脆弱好中球は、優れた完全性およびアポト
ーシスの減少を示した。さらに、NET形成の阻害は、血液貯蔵において重要な意味を有
する。活性化された好中球は、好中球酵素と混合されたクロマチン繊維を放出して、NE
Tを形成することが知られている(31)。NETは、感染に対する防御となるが、血栓
形成(32)および自己免疫反応(33)も促進し得る。さらに、輸血のための貯蔵され
たRBCユニットにおけるNETの放出(17)は、輸血関連急性肺損傷を引き起こすと
示唆されている(34)。本発明者らは、DNA、好中球エラスターゼおよびミエロペル
オキシダーゼなどのNET成分の存在は、全血中のその他の細胞に付随的損傷を誘導し、
全血液サンプルの分解を加速すると仮定する。したがって、すべての血液細胞の保存は、
対象の細胞が非血液学的なものである適用においてでさえ重要である。例えば、稀な循環
腫瘍細胞(109個の血液細胞中に1個)の選別および解析は、癌の臨床管理のための非
侵襲性液体生検として大きな可能性を有する(35)。血液学的細胞の分解は、稀な循環
腫瘍細胞に付随的損傷を引き起こすだけでなく、血液細胞の規定された生物学的および物
理的特性に頼る細胞選別技術に負に影響を及ぼす。
【0037】
本発明者らのプロトコールの容易な実施およびフィコールポリマーの有効性は、既存の
手順およびアッセイを改善する機会を提供し得る。例えば、免疫学的アッセイは、検体輸
送に相当するように24時間遅延して実施されることもある。細胞保存に先立つ最大48
時間の臍帯血の短期間貯蔵も、一般的に実施される。これらの時間枠内で、顆粒球(90
%超が好中球である)の分解は、T-細胞アッセイに負に影響を及ぼすとわかっている(
36、37)。フィコールの、特に短い時間枠内で好中球完全性を維持する能力(
図5)
は、同様の適用における直接使用を見出し得る。
【0038】
要約すると、少なくとも5%、10%または15%フィコール70を使用して細胞性分
解を最小化し、細胞傷害性分解生成物の放出を制限して、均一な懸濁液中で血液を安定化
することによって、本発明者らは、血液沈殿および再混合の悪循環を防止し、それによっ
て、サンプル貯蔵および輸送の基本的な機械的問題を対処した。
【0039】
方法2.最適化された保存料製剤
第2の方法では、任意選択で、カスパーゼ阻害剤を含む最適化された保存料製剤が開発
された。この製剤は、臨床サンプルに、また周囲(例えば、20~25℃)温度で維持さ
れるべきすべてのサンプルに特に適している。
【0040】
いくつかのカスパーゼ阻害剤は、当技術分野で公知であり、汎カスパーゼ阻害剤として
、Q-VD-OPh((3S)-5-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-3-[[(2
S)-3-メチル-2-(キノリン-2-カルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]-4
-オキソペンタン酸)、Z-VAD-FMK(メチル(3S)-5-フルオロ-3-[[
(2S)-2-[[(2S)-3-メチル-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)
ブタノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]-4-オキソペンタノエート)、Q-VD
(OMe)-OPh((S)-メチル5-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-3-((
S)-3-メチル-2-(キノリン-2-カルボキサミド)ブタンアミド)-4-オキソ
ペンタノエート)、またはBoc-D-fmk(メチル5-フルオロ-3-[(2-メチ
ルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]-4-オキソペンタノエート)が挙げ
られる。いくつかの実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、強力な抗ア
ポトーシス性特性を有する、スペクトルが広いカスパーゼ阻害剤である。
【0041】
保存料製剤は、例えば、以下に示されるCS-18であり得、例えば、2~10μM、
例えば、約5μM、24~48mM HEPES、0.11~0.44mMアデニン、2
.25~6.75mMマンニトール、0.39~1.54mM N-アセチル-L-シス
テイン、0~13.5mMデキストロースおよび0~17mM NaClのQ-VD-O
Phが挙げることができる。好ましい製剤として、48mM HEPES、0.44mM
アデニン、6.75mMマンニトール、0.77mM N-アセチル-L-システインお
よび8.5mM NaClがある。
【0042】
方法3.血小板凝集抑制を伴う低温貯蔵
第3の方法では、サンプルに血小板凝集抑制剤を添加し、その後、サンプルを冷却し、
低温、例えば、2~25℃で維持する。血小板凝集抑制剤は、血小板を、それだけには限
らないが、抗体ベースの細胞濃縮および微小流体血液細胞選別を含めた単離技術を干渉す
る活性化および凝集から防ぐ。シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アセチルサリチル
酸およびトリフルサル(Disgren));アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例え
ば、クロピドグレル(Plavix)、プラスグレル(Effient)、チカグレロル(Brilinta)
またはチクロピジン(Ticlid));ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾー
ル(Pletal));プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR-1)アンタゴニスト(例えば
、ボラパクサール(Zontivity));糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(例えば、ア
ブシキマブ(ReoPro)、エプチフィバチド(Integrilin)、ロキシフィバン(roxifiban
)、オルボフィバン(orbofiban)またはチロフィバン(Aggrastat));アデノシン再取
り込み阻害剤(例えば、ジピリダモール(Persantine));トロンボキサン阻害剤(例え
ば、トロンボキサンシンターゼ阻害剤またはテルトロバン(Terutroban)などのトロンボ
キサン受容体アンタゴニスト);またはP-セレクチン媒介性細胞間接着の阻害剤(例え
ば、KF38789(3-[7-(2,4-ジメトキシフェニル)-2,3,6,7-テ
トラヒドロ-1,4-チアゼピン-5-イル]-4-ヒドロキシ-6-メチル-2H-ピ
ラン-2-オン))を含めた、いくつかの血小板凝集抑制剤は、当技術分野で公知である
。好ましい実施形態では、血小板凝集抑制剤は、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤、
例えば、チロフィバン、ロキシフィバン(roxifiban)、オルボフィバン(orbofiban)、
エプチフィバチドまたはアブシキマブである。いくつかの実施形態では、0.01~10
0μg/ml、例えば、0.01~1μg/ml、例えば、0.01~0.5μg/mL
の範囲の投与量を得るために、血小板凝集抑制剤の十分な量がサンプルに添加される。
実施例
【0043】
本発明を、以下の実施例においてさらに記載するが、これらは、特許請求の範囲に記載
される本発明の範囲を制限しない。
【実施例0044】
全血保存における物理的安定化の役割
全血サンプルの保存を改善する試みにおいて、本発明者らは、この流体組織の貯蔵にお
ける基本的であるが、見落とされた態様、すなわち、血液沈殿に対処した。血液沈殿は、
機械的ストレスを誘導するだけでなく、血液細胞を圧縮し、活性化された、分解性白血球
によって引き起こされる付随的損傷を加速する。本発明者らは、ポリマーフィコール70
kDaは、主に、赤血球凝集を抑制することによって、72時間にわたって血液サンプル
を安定化し、血液沈殿を防ぐことを見出した。このアプローチは、赤血球溶解および免疫
磁気精製を含めた一般的な白血球濃縮技術と適合した。棘状赤血球形成および白血球生存
力およびアポトーシスを含めた尺度において沈殿した血液を比較した場合に、物理的安定
化は、細胞の優れた保存と関連していた。注目すべきことに、好中球の完全性は保存され
、好中球エラスターゼ-好中球細胞外トラップのマーカーの放出が大幅に低減した。この
研究は、血液沈殿は、生体材料を使用して防がれ得、さまざまな診断技術において意味を
有することを最初に示した。
【0045】
材料および方法
以下の材料および方法を実施例1において使用した。
血液サンプルおよびフィコールの添加
血液サンプルは、健常なボランティアから入手するか、またはResearch Bl
ood Components(Brighton、MA)から購入した。すべての血液
サンプルは、クエン酸デキストロース-A(ACD-A)チューブ(BD Vacuta
iner;8.5mL)中に入れ、4時間以内に使用した。
【0046】
全血(WB)を、何らかの改変を行わずに使用した。フィコール70kDa(GE H
ealthcare)ポリマーを血液中に導入するために、フィコール(20%、40%
および60%w/v)の濃縮された保存溶液を、10mM HEPES(Life Te
chnologies)を補充したRPMI 1640培地(フェノールレッド;Lif
e Technologiesを含まない)に溶解し、濾過滅菌し、1:3の容量比で全
血に添加した。例えば、5%F70を有する血液を調製するために、1部の20%フィコ
ールを3部のWBに添加し、使用前に10~15分間混合した(HulaMixer;L
ife Technologies)。0%F70サンプルについては、1部のRPMI
を3部のWBに添加し、結果として、75%血液容量画分が得られた。血液サンプルを、
室温で、乱されない、滅菌の気密性チューブ中に貯蔵した。
【0047】
赤血球沈殿速度アッセイ
赤血球沈殿速度(ESR)アッセイは、標準化されたWestergren方法(Di
spette 2;Fisherbrand)の寸法に一致するピペットを使用して、1
.3mLの全血またはフィコール血液を用いて実施した。ESRをミリリットルで、24
、48および72時間に記録した。
【0048】
レオロジー
スチール二重壁同心円筒構造を有するTA Instruments Discove
ry HR-3血流計を使用して、クエット流動測定を実施した。各実験に8.5mLの
サンプルを使用した。10年あたり5点で、0.1/s~1000/sの範囲のせん断速
度でデータ点を獲得した。
【0049】
血液細胞の形態評価
棘状赤血球の数え上げのために、サンプルを穏やかに混合し、その後、液滴(約10μ
L)をガラススライドに移し、スメアを引き、EVOS FL Cell Imagin
g System(Life Technologies)を使用して、位相差顕微鏡を
使用して40×で撮像した。サンプルあたり約100個の無作為のRBCをカウントし、
棘状赤血球をその明確な棘形成によって同定した。
【0050】
標準手順に従って、Wright-Giemsa染色を実施した。手短には、サンプル
の液滴(約10μL)を、ガラススライド上にスメアを引き、風乾し、100%メタノー
ル中で固定化し、Wright-Giemsa染色剤(Sigma)中に30秒間浸漬し
、その後、脱イオン水ですすいだ。Nikon Eclipse 90i顕微鏡でNik
on 100×Apo VC 100×/1.40オイル対物レンズを使用して、Nik
on DS-Ri1カラーカメラ(12ビット;1280×1024解像度)を用いて画
像を獲得した。
【0051】
白血球濃縮および収率定量
赤血球溶解を、赤血球溶解溶液(Miltenyi Biotec)を使用して実施し
た。溶解後、細胞を300×gで遠心沈殿させ、10mL RoboSepバッファー(
Miltenyi Biotec)で洗浄し、再度遠心沈殿させた、600μLのRob
oSepバッファーに再懸濁し、Beckman Z2コールターカウンターを使用して
カウントした。好中球濃縮を、EasySepヒト好中球濃縮キット(Stemcell
Technologies)を、製造業者のプロトコールに従って使用して実施した。
手短には、枯渇抗体カクテルを、濃縮された白血球(RBC溶解によって得られた)と混
合し、続いて、磁性粒子とともにインキュベートした。次いで、標識不含好中球が別のコ
ニカルチューブ中に流れるので、EasySep磁石を使用して不要な細胞を固定化した
。濃縮された好中球を再度遠心沈殿させ、1mLの、0.3%BSAおよび10mM H
EPESを含有するRPMI培地に再懸濁し、カウントし、イメージングフローサイトメ
トリーについて染色した。
【0052】
表面マーカーのイメージングフローサイトメトリーおよび細胞生存力
イメージングフローサイトメトリーを、40×対物レンズ、6つのイメージングチャネ
ルならびに405nm、488nmおよび642レーザーを備えたImageStrea
mX Mark IIイメージングフローサイトメーター(Amnis Corpora
tion)を使用して実施した。細胞生存力およびCD45発現の解析のために、RBC
溶解後、濃縮された白血球をHEPES緩衝生理食塩水中、0.1%BSAに再懸濁し、
適用可能な場合には、以下の抗体および染色剤を用いて染色した:DRAQ5(1μM;
Cell Signaling Technologies)、Sytox Blue(
1μM;Life Technologies)、CellEventカスパーゼ-3/
7緑色検出試薬(0.75μM;Life Technologies)、FITCコン
ジュゲートCD45抗体(1:500;クローン5B1;Miltenyi Biote
c)、PEコンジュゲートCD66b抗体(1:125;クローンG10F5;Stem
cell Technologies)およびPE-Cy7コンジュゲートCD16抗体
(1:200または1:333;クローン3G8;BD Biosciences)。単
細胞を核マーカーDRAQ5を使用してゲート開閉した。好中球をCD66bおよびCD
16の二重陽性によって同定した。濃縮後、好中球活性化の解析のために、DRAQ5(
1μM;Cell Signaling Technologies)、VioBlue
コンジュゲートCD45抗体(1:100;クローン5B1;Miltenyi Bio
tec)、Alexa Fluor 488コンジュゲートCD11b抗体(1:500
;クローンICRF44;Stemcell Technologies)、PEコンジ
ュゲートCD66b抗体(1:125;クローンG10F5;Stemcell Tec
hnologies)およびPE-Cy7コンジュゲートCD16抗体(1:333;ク
ローン3G8;BD Biosciences)を用いて細胞を染色した。
【0053】
NETの可視化のための免疫蛍光染色および顕微鏡観察
ポリ-L-リシンコーティングされたガラススライド上の血液スメアを、100%メタ
ノールで固定化し、風乾し、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定化し、室温で4時間
ブロッキングし、透過処理した(2%ヤギ血清+0.1%Triton X-100)。
次いで、スライドを、0.3%ウシ血清アルブミン中で抗好中球エラスターゼウサギpA
b(25μg/mL;Calbiochem)および抗H2A-H2B-DNAマウスm
Ab(クローン PL2-6;1μg/mL)とともに4℃で終夜インキュベートした。
次いで、スライドを、Alexa Fluor 488コンジュゲートヤギ抗ウサギIg
GおよびAlexa Fluor 555コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(両方とも
1:500;Life Technologies)とともに室温で45分間インキュベ
ートし、PBSですすぎ、DAPI(Vector Laboratories)を含む
VECTASHIELD封入剤を使用してマウントした。Nikon Eclipse
90i顕微鏡でNikon S Plan Fluor ELWD 60x/0.70対
物レンズを使用してQImaging Retiga 2000Rカメラを用いて画像を
獲得した。
【0054】
好中球エラスターゼの定量
血液サンプルを穏やかに混合し、血漿中へのNET内容物の放出のために37℃に4時
間加温し、PBSを用いて25%の最終血液容量画分に希釈し、その後、2000×gで
5分間遠心分離した。次いで、上清を注意深く、新しい遠心分離管に移し、さらなる処理
のために-80℃で貯蔵した。好中球エラスターゼのレベルを、好中球エラスターゼ活性
アッセイキット(Cayman Chemical Company)を、製造業者のプ
ロトコールに従って使用し、SpectraMax M5分光計(Molecular
Devices)を使用して定量した。NETosisの陽性対照として、新鮮全血に酢
酸ミリスチン酸ホルボール(100nM)を添加し、その後、インキュベートした。
【0055】
統計解析
数値データが、平均±標準偏差として報告されている。ペアワイズ比較は、マン・ホイ
ットニーの検定を使用した。本発明者らは、密度の比較のために、1元配置分散分析法を
使用し、直線傾向についてのポストテストを続けた。本発明者らは、WBおよびF70条
件を経時的に比較するために、2元配置分散分析法と、それに続いて、ペアワイズ比較の
ためのボンフェローニポストテストを使用した。すべての統計分析をPrism 5(G
raphPad)を用いて実施した。
【0056】
実施例1.1 血液の生物物理学的安定化
本発明者らは、Westergren方法において使用された標準化されたピペットを
用いてESRを定量化した(
図1A)。フィコールの非存在下では、全血は迅速に沈殿し
、24時間で62.6±26.5mmに達し、さらに、48および72時間で、それぞれ
、78.9±20.0および84.9±15.6mmに達した(
図1B)。フィコール7
0kDa(F70)を血液中に導入するために、本発明者らは、F70の濃縮された保存
溶液(RPMI培地に溶解した)を血液サンプルに1:3の比で混合し、その結果、最終
の示されたF70濃度(w/v)が得られた。5%、10%および15%F70の添加は
、すべての測定された時点でESRを大幅に低減した(
図1B;24、48および72時
間のWBと比較してp<0.0001)。印象的に、10%および15%F70は、72
時間にわたって沈殿をほぼ完全に防いだ(ESRは、それぞれ7.3±3.1mmおよび
4±1.6mmであった;
図1B)。本発明者らは、安定化効果は、添加された培地では
なく、F70によるものであったことを確認するために、全血を、RPMIを用いて同一
比で希釈することによってESRが変化しないことを見出した(0%F70、
図1B;す
べての時点でWBと比較してp>0.05)。
【0057】
本発明者らは、フィコールポリマーが全血を安定化した方法を理解するために、血液沈
殿に関連しているそのレオロジー特性、すなわち、粘度、密度および細胞凝集を特性決定
した。本発明者らは、0.1/s~1000/sの範囲のせん断速度で、血液サンプルで
クエット粘度測定をまず実施した。全血は、せん断流動化挙動を示し、粘度が、0.1/
sのせん断速度での51.9±18.9cPから1000/sのせん断速度での4.1±
0.4cPに低下した(
図2A)。15%F70の添加は、血液サンプルの低せん断粘度
を増大し(WBと比較して、せん断速度≦0.398/sでp<0.01)、せん断流動
化プロフィールを保持した(
図2A)。対照的に、5%および10%F70は、全血の粘
度を大幅に変更しなかった(
図2A)。驚くべきことに、これらの両F70濃度は、低せ
ん断範囲において15%F70よりも低い粘度を示した(15%F70に対して5%につ
いて、せん断速度≦0.631/sでp<0.05;15%F70に対して10%につい
て、せん断速度≦0.251/sでp<0.01)。WB、5%F70、10%F70お
よび15%F70の密度は、それぞれ、1.047±0.009g/mL、1.051±
0.007g/mL、1.063±0.006g/mLおよび1.071±0.006g
/mLであった(
図2B;p<0.0001、直線傾向についてのポストテストを用いる
1元配置分散分析法)。
【0058】
密度のその増大は、最小限であり(15%F70について、わずか2.3%)、粘度の
変化は有意でない(5%および10%F70について)ことは、フィコールが、RBC凝
集を防止することによって全血を安定化することを示唆した。沈殿速度v
sに基づいたE
SR値の推定は、沈殿が、RBCが単細胞として沈殿する限り、全血においてでさえ最小
限である(10mm未満)ことを実証した(
図2D)。沈殿速度は、粒子半径の二乗につ
れて増減するので、RBC凝集は、ESRの増大に最も大きく貢献する(
図2D)。本発
明者らは、全血中のRBCが数分内に迅速に凝集するのに対し、F70の添加は凝集を大
きく抑制することを実験によって確認した(
図2C)。注目すべきことに、10%および
15%F70は、凝集を完全に防ぎ(
図2C)、これら2種の実験条件における推定ES
Rと実測ESR値の間の一致を十分に説明する。
【0059】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らはまた、安定化の機序を調査
した。全血における血液沈殿は、大きな血漿タンパク質の存在下で自発的RBC凝集によ
って駆動され、それらの中では、フィブリノゲン(約340kDa;水力学的半径約11
nm)が最も大規模に研究されている(20、21)。RBC凝集に関与する分子力は、
大きな水力学的半径(≫4nm)の高分子が、RBC表面付近から優先的に排除され、そ
れによって、浸透圧力(すなわち、枯渇力)を誘導し、これが、RBCの凝集をもたらす
とする(22、23)枯渇相互作用機序によって説明され得る(22)。この力は、両タ
ンパク質および非タンパク質ポリマーによって生じ得、白血球濃縮のためにRBC沈降を
加速するためによく使用される大きなヒドロキシエチルデンプン(130kDa超)およ
びフィコール400kDa(半径=10nm)の凝集効果を説明する。しかし、小ポリマ
ーが、代わりに、枯渇層において、この限局空間に浸透するその能力のために浸透圧力を
低減することによって(23、26)RBC凝集を抑制することはあまり理解されていな
い(24、25)。この枯渇モデルも、フィコールポリマーを用いる本発明者らの実験知
見と一致するか否かを理解するために、本発明者らは、NeuおよびMeiselman
による理論的定式化(22)に従って、70kDa(半径=5.1nm)または400k
Daフィコール(半径=10nm)の存在下でRBC間の相互作用エネルギーを計算した
。本明細書において、本発明者らは、浸透特性の計算にフィコール分子の球状の形態を考
慮して、RBC表面上の負に帯電した糖衣ならびにポリマー排除によって誘導される枯渇
力による静電反発力を考慮した。本発明者らは、より大きなフィコール400kDaは、
十分に厚い枯渇層をもたらして(
図2E)、総相互作用エネルギーを負の値(すなわち、
引力;
図2F)に低減することを見出した。対照的に、フィコール70kDaの存在下で
相互作用エネルギーは、一般に、非負値であった。本発明者らはまた、フィコール400
kDa(5%)は、RBC凝集につながることを実験によって確認した(
図2G)。
【0060】
実施例1.2 赤血球保存
本発明者らは、全血サンプルの物理的安定化が、赤血球の保存を改善するか否かを調べ
るために処理した。RBC老化の特有の特徴は、両凹円板形態の喪失および棘状赤血球と
呼ばれる棘形成の出現を特徴とする(
図3A)。本発明者らは、沈殿した全血またはフィ
コール安定化された血液における貯蔵の結果としての棘状赤血球のパーセンテージを定量
化した(
図3B)。全血における棘状赤血球レベルは、0時間での6.6±11.6%か
ら、それぞれ、24、48および72時間での52.2±25.4%、63.2±25.
9%および78.8±21.1%へ増大した。5%、10%または15%F70の添加は
、貯蔵後の棘状赤血球レベルを有意に低減した(
図3B;それぞれ、24、48および7
2時間でのWBに対して5%F70についてp<0.05、<0.01、<0.001;
それぞれ、24、48および72時間でのWBに対して10%または15%F70につい
て、p<0.001)。RPMIのみの添加(0%F70)は、予測されたように棘状赤
血球形成に対して全く効果がなかった(すべての時点でp>0.05)。
【0061】
実施例1.3 白血球濃縮方法との適合性
血液細胞が関与する多数のアッセイは、所望の集団を高純度で単離する濃縮ステップを
必要とする。本発明者らは、F70安定化された血液が、白血球濃縮のための一般的な技
術と適合するか否かを調べた。本発明者らは、F70が、RBCの通例の低張溶解に影響
を及ぼさず、全血サンプルと同等の白血球収率をもたらすことを見出した(WBの46.
7±1.8%対10%F70の43.9±1.9%、各n=3、p=0.2)。フローサ
イトメトリー解析は、白血球マーカー、CD45の発現に関して変更がないことを示し(
相対蛍光、WBの54±13×103対10%F70の56±21×103、各n=6、
p=1.0)、一般的な表面抗原ベースの濃縮技術との適合性を示唆した。本発明者らは
、全血と同等の、好中球濃縮のための免疫磁気ネガティブ選択アッセイおよび得られた収
率(WBの30.7%±8.2%対10%F70の29.2%±10.5%、各n=4、
p=0.89)ならびに純度(WBの99.0%±1.0%対10%F70の99.0%
±0.8%、各n=4、p=1.0)をさらに試験した。重要なことに、フィコールを用
いる処理は、好中球を活性化しなかった(CD11b相対蛍光、WBの123±36×1
03対10%F70の123±15×103、各n=4、p=0.89)。
【0062】
実施例1.4 白血球保存
物理的安定化が白血球保存を改善したか否かを試験するために、本発明者らは、Wri
ght-Giemsa染色された血液スメアで白血球の形態を観察し、フローサイトメト
リーを使用して細胞生存力をアッセイした。好中球およびそのそれぞれの多葉性核形態は
、全血において72時間の貯蔵後に崩壊の明確な兆候を示した。比較において、好中球形
態は、フィコール安定化された血液においてより良好に保存された(
図4A)。細胞死と
関連する事象を研究するために、本発明者らは、膜が損なわれた(Sytox Blue
)ならびにアポトーシス(カスパーゼ-3/7活性について陽性)細胞を同定する染色剤
を使用するイメージングフローサイトメトリーを実施した。全血において72時間貯蔵し
た後、白血球の28.2%±10.2%が、Sytoxについて陽性に染まり(
図4B)
、32.5%±13.1%がカスパーゼ活性について陽性であった(
図4C)。対照的に
、10%F70を用いて安定化された血液中の白血球は、最小限にしか損傷を受けなかっ
た(12.1%±3.5%膜損傷;WBと比較してp=0.0009;
図4B)およびか
なり少ないアポトーシスであった(13.2%±3.3%カスパーゼ陽性;WBと比較し
てp=0.0286;
図4C)。これらの保存の恩恵は、脆弱好中球で特に明らかであっ
た。全血では、好中球の41.8%±15.9%が膜が損傷しており(
図4B)、48.
3%±19.9%がカスパーゼ陽性であった(
図4C);これらの値を、フィコール安定
化された血液における、それぞれ、13.4%±4.5%(p<0.0001;
図4B)
および15.6%±4.5%(p=0.0286;
図4C)と比較した。Sytox陽性
細胞の93%超がまた、カスパーゼ活性について陽性に染まり、細胞の大部分がアポトー
シスによって死滅したことを示唆する。
【0063】
最近、好中球細胞外トラップ(NET)は、白血球除去されなかった(leukoreduced)
貯蔵された赤血球ユニットにおいて見出された(17)。好中球の明白な分解が、本発明
者らにNET形成を調査させた。本発明者らは、貯蔵されたサンプルから得られた血液ス
メアで、大きな領域に広がることが多い、高度に分散された核材料を観察し(
図4D)、
これは、NETの形成を示唆する。好中球特異的マーカー好中球エラスターゼならびにヒ
ストン-DNA複合体を用いる免疫蛍光染色(
図5B)によって、貯蔵された血液サンプ
ル中のNETの存在が確認された(
図4E)(18)。本発明者らは、NETosisの
程度を定量化するために、貯蔵後の好中球エラスターゼの血漿レベルをELISAを用い
て測定した。本発明者らは、72時間で10%F70と比較してWB中のエラスターゼに
おいて2.2倍の差を見出した(63.6±21.1mU/mL対29±11.2mU/
mL;p=0.0023;
図4F)。