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特開2023-100927肝細胞がん(HCC)およびその他のがんに対する免疫療法で使用するための新規ペプチドおよびペプチド組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100927
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】肝細胞がん(HCC)およびその他のがんに対する免疫療法で使用するための新規ペプチドおよびペプチド組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230711BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 14/82 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230711BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230711BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230711BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230711BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230711BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230711BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20230711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230711BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230711BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230711BHJP
   A61K 35/26 20150101ALI20230711BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230711BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230711BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/82
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6837 Z
C07K14/725
C07K16/18
C12N15/13
C12P21/08
C12P21/02 C
C12N15/115 Z
A61P35/00
A61P1/16
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/17
A61K35/76
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/26
A61K47/55
A61K47/62
A61P37/04
A61K31/7088
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078113
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2021052978の分割
【原出願日】2015-12-16
(31)【優先権主張番号】1423016.3
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/096,165
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1501017.6
(32)【優先日】2015-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインシェンク,トニ
(72)【発明者】
【氏名】メア,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーベ,アニタ
(72)【発明者】
【氏名】クッチャー,サラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの免疫療法で使用するためのペプチドの提供。
【解決手段】本発明は、特にがんの免疫療法で使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、及び細胞に関する。本発明は、単独の、またはその他の腫瘍関連ペプチドと併用される、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。ペプチドは、主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合し、またはペプチドそれ自体が、抗体、可溶性T細胞受容体、及びその他の結合分子の標的であり得る。具体的には、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスI及びクラスII分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためにワクチン組成物で使用され得て、または薬理的/免疫学的活性化合物及び細胞の開発標的とされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号300、および配列番号1~配列番号300と少なくとも88%相同的なその変異配列の群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドであって、前記変異体が、MHCと結合し、および/またはT細胞の前記変異ペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、前記ペプチドが完全長ポリペプチドでない、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子と結合する能力を有し、前記ペプチドが、MHCと結合した際にCD4および/またはCD8 T細胞によって認識される能力がある、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
そのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号300の群に記載の一続きのアミノ酸を含んでなる、請求項1または2に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項4】
前記ペプチドまたはその変異体が、好ましくは8~30、より好ましくは8~16、最も好ましくは8~100のアミノ酸の全長を有し、ペプチドが、配列番号1~配列番号300に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項5】
前記ペプチドが、修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項6】
前記ペプチドが、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質の一部である、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体をエンコードする核酸であって、任意選択的に異種プロモーター配列と結合する、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を発現する能力がある、発現ベクター。
【請求項9】
医療で使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体、請求項7に記載の核酸、または請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
請求項1~6に記載のペプチド、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載の発現ベクターを含んでなり、好ましくは樹状細胞などの抗原提示細胞である、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~6に記載のペプチドを提示しまたは請求項7に記載の核酸を発現する請求項10に記載の宿主細胞、または請求項8に記載の発現ベクターを培養するステップと、前記ペプチドまたはその変異体を前記宿主細胞またはその培養液から単離するステップとを含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を製造する方法。
【請求項12】
T細胞を、適切な抗原提示細胞の表面または抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面に発現される抗原負荷ヒトクラスIまたはII MHC分子に、前記T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり、生体外で接触させるステップを含んでなり、前記抗原が、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチドである、活性化Tリンパ球を製造するインビトロ法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する細胞を選択的に認識する、請求項12に記載の方法によって製造される活性化T細胞。
【請求項14】
請求項13で定義される活性T細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、その標的細胞が、請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する患者において、標的細胞を死滅させる方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体、好ましくはMHC分子と結合する請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を特異的に認識する、可溶性または膜結合抗体。任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【請求項16】
がんを治療するためのまたはがん治療薬の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項10に記載の細胞、請求項13に記載の活性化Tリンパ球、または請求項15に記載の抗体およびその他の結合分子の使用。
【請求項17】
前記がんが、最も好ましくは、APOB、FASN、COPA、好ましくはGLUL、GPAM、PLIN2,SLC16A1,SLC9A3R1、PCBD1、SEC16A、AKR1C4、ABCB11、HAL、CYP2E1、C4A、C4B、ALDH1L1、CRP、ACSL4、EEF2、HLTF、FBXO22、GALK1、TMCO1、TMEM33、ZNF318、IPO9、AMACR、C1QTNF3、CYP4F8、CYP4F3、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、MOCOS、A1CF、COL18A1、HPR、LBP、C19orf80、CFHR5、ITIH4、TMEM110、LARP4、LMF2、SLC10A5、SLC16A11、なおも好ましくはANKFY1、C12orf44、C16orf58、CPSF1、DCAF8、PEX19、DDX11、DDX12P、DECR2、NME4、DENND5B、DYM、EDC4、ERI3、FAM20A、FNDC3A、GPR107、GYG2、HEATR2、IFT81、KCTD3,SHKBP1、KIAA1324L、KLHL24、MARCH6、MBTPS2、MIR1279、CPSF6、NOC4L、NXF1、PANK2、PCNXL3、PIPSL、PSMD4、PSMD14、SLC35B1、TCP11L2、THNSL2、THOC2、TOMM5、TRAPPC6B、TRIM54、TRIM55、TRIM63、UGGT2、URB1、VPS54、WIZ、ZNF45、RFTN2、SCFD1、SERINC5、CCT7P2、CMAS、ANKS1A、C17orf70、CCT7、CDK5RAP2、CLPTM1、および配列番号1~配列番号300のペプチドがそれに由来する、別のタンパク質の過剰発現を示す、HCC、脳腫瘍、腎がん、膵臓がん、結腸または直腸がんまたは白血病およびその他の腫瘍の群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド変異体、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項10に記載の細胞、請求項13に記載の活性化Tリンパ球、または請求項15に記載の抗体を含有する医薬組成物を溶液または凍結乾燥形態で含んでなる容器;
(b)任意選択的に、前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)任意選択的に、配列番号1~配列番号346からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド、および
(d)任意選択的に、(i)前記溶液の使用、または(ii)前記凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書を含んでなるキット。
【請求項19】
(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(V)フィルター、(vi)針、または(V)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記ペプチドが配列番号1~配列番号300からなる群から選択される、請求項18または19に記載のキット。
【請求項21】

a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;
b)a)で同定されたペプチドを正常組織と比較した腫瘍中の免疫原性および/または過剰提示について予備選別されたペプチド貯蔵庫と比較するステップと;
c)前記患者において同定された腫瘍関連ペプチドと一致する、前記貯蔵庫からの少なくとも1つのペプチドを選択するステップと;and
d)ステップc)に基づいて、個別化ワクチンまたは化合物ベースのまたは細胞療法製品を製造するステップと
を含んでなる、個々の患者のための化合物ベースのおよび/または細胞療法のための個別化抗がんワクチンを製造する方法。
【請求項22】
前記TUMAPが、
a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に相当する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプル中で過剰発現または異常発現されるタンパク質を同定するステップと;and
a2)前記発現データを前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップと
によって同定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、前記溶出したリガンドを配列決定することで、MHCリガンドの配列が同定される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍サンプルの組織型に対応する前記正常組織が、前記同一患者から得られる、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記貯蔵庫に包含されるペプチドが、
aa.正常組織または組織群と比較して悪性組織で過剰発現される遺伝子を同定するステップを含んでなる、マイクロアレイまたは配列決定ベース発現プロファイリングなどの高度並列法によって、ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を実施するステップと;
ab.ステップaaで検出された、選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、ペプチドを選択するステップと;
ac.健常ドナーまたは前記患者からのヒトT細胞を使用する生体外免疫原性アッセイを含んでなる、前記選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導を判定するステップと;または
ba.質量分析法を使用して、前記腫瘍サンプルからHLAリガンドを同定するステップと;
bb.正常組織または組織群と比較して悪性組織で過剰発現される遺伝子を同定するステップを含んでなる、マイクロアレイまたは配列決定ベース発現プロファイリングなどの高度並列法によって、ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を実施するステップと;
bc.前記同定されたHLAリガンドを前記遺伝子発現データと比較するステップと;
bd.ステップbcで検出された、選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、ペプチドを選択するステップと;
be.ステップbdから選択されたTUMAPを腫瘍組織上で再検出し、健常組織上の検出の欠如またはまれな検出が、mRNAレベルにおける過剰発現の関連性を確認するステップと;
bf.健常ドナーまたは前記患者からのヒトT細胞を使用する生体外免疫原性アッセイを含んでなる、前記選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導を判定するステップと
に基づいて同定される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記貯蔵庫に包含される前記ペプチドの免疫原性が、生体外免疫原性アッセイ、個々のHLA結合についての患者免疫モニタリング、MHC多量体染色、ELISPOTアッセイおよび/または細胞内サイトカイン染色を含んでなる方法によって判定される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記貯蔵庫が、配列番号1~配列番号346からなる群から選択される複数のペプチドを含んでなる、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記個々の患者からの正常な対応する組織と比較して前記腫瘍サンプルに特有の少なくとも1つの変異を同定し、ワクチンに包含するために、または細胞療法を作成するために、前記変異と関連があるペプチドを選択するステップをさらに含んでなる、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの変異が、全ゲノム配列決定によって同定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
HLAリガンドと反応性である、可溶性または膜結合T細胞受容体であって、前記リガンドが配列番号1~配列番号300からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有する、T細胞受容体。
【請求項31】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~配列番号300と少なくとも88%と同一である、請求項30に記載のT細胞受容体。
【請求項32】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~配列番号300のいずれかからなる、請求項30または31に記載のT細胞受容体。
【請求項33】
前記T細胞受容体が可溶性分子として提供され、任意選択的に、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する、請求項30~32のいずれか一項に記載のT細胞受容体。
【請求項34】
請求項30~33のいずれか一項に記載のTCRをエンコードする核酸であって、任意選択的に異種プロモーター配列と結合する、核酸。
【請求項35】
請求項34に記載の核酸を発現する能力がある、発現ベクター。
【請求項36】
請求項34に記載の核酸、または請求項15に記載の抗体をコードする核酸、または請求項35に記載の発現ベクターを含んでなる、好ましくはT細胞またはNK細胞である、宿主細胞。
【請求項37】
請求項36に記載の宿主細胞を培養し、前記T細胞受容体を前記宿主細胞および/またはその培養液から単離するステップを含んでなる、請求項30~33のいずれか一項に記載のT細胞受容体を製造する方法。
【請求項38】
a)配列番号1~配列番号300からなる群から選択される、ペプチド;
b)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチド-MHC複合体と反応性のT細胞受容体;
c)a)に記載のペプチドと、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸1~80とを含んでなる融合タンパク質;
d)a)~c)のいずれかをコードする核酸、または前記核酸を含んでなる発現ベクター;
e)d)の発現ベクターを含んでなる宿主細胞;
f)抗原特異的様式でT細胞を活性化するのに十分な時間にわたり、T細胞を適切な抗原提示細胞の表面に発現されるa)に記載のペプチドと生体外で接触させるステップを含んでなる方法、ならびに自己または他の患者にこれらの活性化T細胞を移入する方法によって得られる、活性化Tリンパ球;
g)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチド-MHC複合体、および/またはa)に記載のペプチドを提示する細胞と反応性であり、例えば免疫活性化ドメインまたは毒素との融合によって潜在的に修飾される、抗体または可溶性T細胞受容体;
h)配列番号1~配列番号300からなる群から選択されるペプチドおよび/または配列番号1~配列番号300からなる群から選択されるペプチドとMHC分子の複合体を認識する、アプタマー;
i)a)~h)のいずれかに記載のコンジュゲートされまたは標識されたペプチドまたはスキャフォールド、および薬学的に許容可能な担体;および任意選択的に、薬学的に許容可能な賦形剤および/または安定剤
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分を含んでなる医薬組成物。
【請求項39】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体、好ましくはMHC分子と結合する請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を特異的に認識する、アプタマー。
【請求項40】
配列番号1、2、7、225、228、301、303、および312から選択される少なくとも1つのペプチド、好ましくは全てのペプチドを含んでなる、請求項38に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法で使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本発明は、がんの免疫療法に関する。本発明は、単独の、またはその他の腫瘍関連ペプチドと併用される、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。ペプチドは、主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合し、またはペプチドそれ自体が、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的にもなり得る。具体的には、本発明は、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスIおよびクラスII分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発標的として、使用され得る。
【背景技術】
【0002】
肝細胞がん(HCC)は、世界で最も頻度の高い腫瘍の1つであり、全世界で診断された全ての新規がん症例の約6%を占める。2012年には、全世界でHCCの約782,000の新規症例が出現し、男性では5番目に頻度が高く(554,000症例)、女性では9番目に頻度の高い(228,000症例)がんとなった。(http://globocan.iarc.fr)。HCCは、全ての成人原発性肝臓がんの80%を構成する、最も頻度の高い原発性肝臓悪性病変である。
【0003】
HCCの分布は地理的に異なり、発生率は性別に左右される。男性におけるHCCの年齢標準化発生率(ASR)は、東アジア(31.9)および東南アジア(22.2)で最大であり、南欧(9.5)および北米(9.3)では中程度で、北欧および南部中央アジア(3.7)で最低である。女性におけるHCCの発生率は、男性ASRより低い。女性における最大ASRは、東アジア(10.2)および西アフリカ(8.1)であり、最低は北欧(1.9)およびミクロネシア(1.6)である。
【0004】
HCCがある患者の全体的な予後は、芳しくない。HCCの5年相対生存率(5Y-RSR)は約15%であり、診断時の段階に左右される。がんが未だに肝臓に限定される限局性HCCでは、5Y-RSRは約28%である。がん(were the cancer)が近くのまたは離れた臓器にまで増殖している局所および遠隔HCCでは、5Y-RSRはそれぞれ7%および2%である。
【0005】
HCCの発生率は、いくつかのリスク因子に関連があり、硬変が最重要因子である。硬変は、アルコール乱用またはHBVまたはHCV感染症と並行して生じることが多いが、II型糖尿病のような代謝疾患によってもまた引き起こされ得る。その結果、健常肝臓組織が、がん発生リスクを高める瘢痕組織で置換される。
【0006】
疾病管理は、診断時の腫瘍段階、および肝臓の全体的な状態に左右される。可能であれば、肝臓の一部(部分肝切除)または臓器全体(肝切除)が、外科手術によって除去される。特に、小型または完全に切除可能な腫瘍がある患者は、肝臓移植の対象として認定される。
【0007】
外科手術が治療選択肢でなければ、異なるその他の治療法が目下利用可能である。腫瘍焼灼法では、プローブが肝臓内に注入されて、電波またはマイクロ波または寒冷療法によって腫瘍が破壊される。塞栓形成法では、機械的または化学的手段によって、腫瘍の血液供給がブロックされる。放射線療法では、腫瘍を破壊するために、高エネルギー電波が使用され得る。
【0008】
HCCに対する化学療法としては、全身療法のためのドキソルビシン、5-フルオロウラシル、およびシスプラチンの組み合わせ、そして肝動脈輸液のためのドキソルビシン、フロクスウリジン、およびマイトマイシンCの組み合わせが挙げられる。しかし、ほとんどのHCCは、化学療法薬に対して高耐性を示す(Enguita-German and Fortes,2014)。
【0009】
進行した切除不能HCCにおける治療の選択肢は、マルチチロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブに限定される(Chang et al.,2007;Wilhelm et al.,2004)。ソラフェニブは、生存期間を約3ヶ月間増大させることが確認された唯一の全身薬物であり、目下このような患者に対する唯一の実験的治療の選択肢に相当する(Chapiro et al.,2014;Llovet et al.,2008)。
【0010】
最近、HCCのための限定数の免疫療法治験が実施されている。免疫細胞のサブセットを活性化しおよび/または腫瘍免疫原性を増大させるために、サイトカインが使用されている(Reinisch et al.,2002;Sangro et al.,2004)。その他の試験は、腫瘍浸潤性リンパ球または活性化末梢血リンパ球の輸液に焦点を合わせている(Shi et al.,2004a;Takayama et al.,1991;Takayama et al.,2000)。
【0011】
これまでに、少数の治療用ワクチン接種治験が実行されている。Butterfield et al.は、α-フェトプロテイン(AFP)に由来するペプチドをワクチンとして、または生体外でAFPペプチドが負荷されたDCを使用して、2つの治験を実施した(Butterfield et al.,2003;Butterfield et al.,2006)。2つの異なる研究において、自己由来腫瘍溶解産物(Lee et al.,2005)、または肝芽細胞腫細胞株HepG2の溶解産物(Palmer et al.,2009)を用いて、自己由来樹状細胞(DC)が生体外パルス処理された。
これまでに、ワクチン接種治験は、臨床転帰の限定的改善のみを示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様では、本発明は、配列番号1~配列番号300、または配列番号1~配列番号300と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%相同的な(好ましくは、少なくとも80%または少なくとも90%同一の)その変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関し、その中で前記変異体は、MHCと結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、その中で前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0013】
本発明は、配列番号1~配列番号300、または配列番号1~配列番号300と少なくとも80%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは少なくとも80%または少なくとも88%同一の)その変異体からなる群から選択される配列を含んでなる、本発明のペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたはその変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0014】
続く表は、本発明によるペプチド、それらの各配列番号、およびそれらのペプチドの予期される起源(基礎)遺伝子を示す。表1の全てのペプチドはHLA-A02に結合し、表2のペプチドはHLA-A24対立遺伝子に結合する。表3のペプチドは、高い誤り率があるまたはアルゴリズムを使用して計算された、ハイスループットスクリーニングの結果としての広範なリストにおいて以前開示されているが、これまでがんとは全く関連付けられていない。それらは、HLA-A02に結合する。表4のペプチドは、本発明のその他のペプチドとの組み合わせで有用であってもよい、追加的なペプチドである。ペプチドは、A02に、または表示される場合は、A24に結合する。表5のペプチドは、さらに、それぞれの基礎ポリペプチドの過剰発現または過剰提示を伴う様々な悪性腫瘍の診断および/または治療において有用である。
【0015】
表1:HLA-A02本発明によるペプチド;S=ホスホセリン
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0016】
表2:本発明によるHLA-A24ペプチドと配列番号;S=ホスホセリン
【表2】
【0017】
表3:がん関連性が以前知られていない本発明による追加的なペプチド;S=ホスホセリン
【表3-1】
【表3-2】
【0018】
表4:例えば、個別化がん治療のために有用なペプチド;S=ホスホセリン
【表4-1】
【表4-2】
【0019】
本発明は、一般に、例えば、膵臓がん、結腸または直腸がん、腎がん、脳腫瘍、および/または白血病などの増殖性疾患の治療で使用される、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0020】
特に好ましいのは、配列番号1~配列番号300からなる群から選択される、本発明による単独または組み合わせのペプチドである。より好ましいのは、好ましくはA02結合のための配列番号1~配列番号124(表1を参照されたい)からなる群、および好ましくはA24結合のための、配列番号187~配列番号218(表2を参照されたい)からなる群から選択される、単独または組み合わせのペプチド、およびHCC、脳腫瘍、腎がん、膵臓がん、結腸または直腸がんまたは白血病、好ましくはHCCの免疫療法におけるそれらの使用である。
【0021】
以下の表5AおよびBに示されるように、本発明によるペプチドの多くはまた、その他の適応症のための免疫療法でも使用され得る。表は、測定された腫瘍サンプルの5%以上で過剰提示(特異的提示を含む)を示し、または腫瘍対正常組織の幾何平均比率が3より大きい測定された腫瘍サンプルの5%以上で提示される、追加的な腫瘍型で発見された、選択されたペプチドを示す。過剰提示は、最大提示がある正常サンプルと比較して、より高い腫瘍サンプル上の提示と定義される。それに対する過剰提示が試験された正常組織は、脂肪組織、副腎、血液細胞、血管、骨髄、脳、軟骨、食道、眼、胆嚢、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、神経、膵臓、甲状腺、腹膜、下垂体、胸膜、唾液腺、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、甲状腺、気管、尿管、膀胱であった。
【0022】
表5A:本発明によるペプチドと、その他のがん性疾患、特にその他の増殖性疾患における、それらの特定用途;S=ホスホセリン
【表5A-1】
【表5A-2】
【表5A-3】
【表5A-4】
【表5A-5】

表5B:本発明によるペプチドと、その他のがん性疾患、特にその他の増殖性疾患における、それらの特定用途;S=ホスホセリン
【表5B-1】
【表5B-2】
【表5B-3】
【表5B-4】
【表5B-5】
【表5B-6】

NSCLC=非小細胞肺がん、SCLC=小細胞肺がん、RCC=腎がん、CRC=結腸または直腸がん、GC=胃がん、HCC=肝臓がん、PC=膵臓がん、PrC=前立腺がん、白血病、BRCA=乳がん、MCC=メルケル細胞がん、OC=卵巣がん、NHL=非ホジキンリンパ腫、AML=急性骨髄性白血病、CLL=慢性リンパ球性白血病。
【0023】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号1、14、15、41、43、58、59、60、81、121、135、139、144、176、236、248、275、276、283、286、288、289、290、291、300、302、304、308、313、316、317、325、326、329、331、334、342、および343のいずれか1つに記載の本発明による少なくとも1つのペプチドの使用、好ましい一実施形態では、膵臓がんの併用治療における使用に関する。
【0024】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号6、15、16、22、26、30、34、36、47、59、65、69、70、77、80、81、88、121、123、125、127、133、137、139、169、172、176、181、186、221、223、229、230、231、232、233、234、236、237、238、244、247、249、250、251、255、260、261、266、269、271、274、275、282、285、289、290、291、293、297、301、302、304、306、310、313、316、317、319、327、328、329、330、331、332、334、および342に記載の本発明による少なくとも1つのペプチドの使用、好ましい一実施形態では結腸がんまたは腎がんの併用治療における使用に関する。
【0025】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号10、14、15、22、36、39、54、55、60、72、77、81、90、96、112、116、119、121、133、137、138、148、169、170、172、177、186、187、189、192、197、198、203、206、219、221、229、230、233、234、236、255、260、270、272、275、277、278、279、281、282、285、289、291、292、295、296、297、301、302、305、308、311、313、315、316、319、321、324、328、329、333、334、335、336、および346に記載の本発明による少なくとも1つのペプチドの使用、好ましい一実施形態では腎がんの併用治療における使用に関する。
【0026】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号14、15、16、17、36、39、47、51、54、65、88、101、123、125、133、134、135、137、141、147、161、166、169、176、179、184、186、187、189、191、192、193、194、195、196、197、199、203、206、208、214、220、221、224、229、230、231、234、238、239、244、245、250、251、255、258、259、260、268、269、270、271、272、278、279、282、295、297、302、304、305、306、309、310、311、312、313、316、317、319、321、325、327、328、329、330、331、332、333、334、336、337、338、339、340、342、343、344、345、および347に記載の本発明による少なくとも1つのペプチドの使用の使用、好ましい一実施形態では脳腫瘍の併用治療における使用に関する。
【0027】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号172、173、240、250、287、299、302、334、および335に記載の本発明による少なくとも1つのペプチドの使用、好ましい一実施形態ではCLLの併用治療における使用に関する。
【0028】
同様に、上記のように表5Bに列挙されるペプチドは、好ましい一実施形態では示される疾患の併用治療のための基礎を形成し得る。
【0029】
したがって、本発明の別の態様は、好ましくは、HCC、脳腫瘍、腎がん、膵臓がん、結腸または直腸がん、および白血病の群から選択される増殖性疾患の併用治療のための本発明によるペプチドの使用に関する。
【0030】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子に、または長さ変異体などの伸長形態では、MHCクラスIIに、結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0031】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、(それぞれ)配列番号1~配列番号300に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0032】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む。
【0033】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体に(またはその配列中に)融合した、融合タンパク質の一部である。
【0034】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0035】
本発明は、本発明による核酸を発現する能力があるおよび/または発現する、発現ベクターにさらに関する。
【0036】
本発明は、疾患の治療で、および医療で、特に、がんおよび自己免疫/炎症性/免疫病理学的疾患をはじめとする疾患の治療で、使用される、本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0037】
本発明は、本発明によるペプチドに対する抗体、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体、およびこれらを製造する方法にさらに関する。
【0038】
本発明は、自己由来または同種異系T細胞に組み込まれた、T細胞受容体(TCR)、特に可溶性TCR(sTCR)、およびクローン化TCR、そしてこれらを製造する方法、ならびに前記TCRを有するまたは前記TCRと交差反応する、NK細胞またはその他の細胞を製造する方法にさらに関する。
【0039】
抗体およびTCRは、本発明によるペプチドの免疫療法用途の追加的な実施形態である。
【0040】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0041】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0042】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはIIMHC分子上に、抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0043】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号300を含有する、好ましくは、配列番号1~配列番号124、および配列番号187~配列番号218または変異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現する能力がありまたは発現する、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0044】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0045】
本発明は、本発明によって製造されるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0046】
本発明は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、本発明による、活性化Tリンパ球、T細胞受容体または抗体またはその他のペプチドおよび/またはペプチド-MHC結合分子の使用にさらに関する。好ましくは、薬剤は、がんに対して有効である。
【0047】
好ましくは、前記薬剤は、細胞療法用であり、可溶性TCRまたは抗体ベースのワクチンまたはタンパク質である。
【0048】
本発明は、前記がん細胞が、HCC、脳腫瘍、腎がん、膵臓がん、結腸または直腸がんまたは白血病、および好ましくはHCC細胞である、本発明による使用にさらに関する。
【0049】
本発明は、HCCの診断および/または予後診断で使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質および生物マーカーにさらに関する。本発明はまた、がん治療の文脈におけるこれらの新規標的の使用に関する。
【0050】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHC分子は、それぞれ、重鎖と、β-2-ミクログロブリン(MHCクラスI受容体)またはαおよびβ鎖(MHCクラスII受容体)とから、構成される。それらの三次元立体構造は結合溝をもたらし、それはペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される。MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見られる。それらは、主に内在性であるタンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質分解的切断から得られるペプチドを提示する。MHCクラスII分子は、大部分はプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に見られ、エンドサイトーシス中にAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外来性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なTCR(T細胞受容体)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、1:1:1の化学量論的量で存在することが良く知られている。
【0051】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答の誘導と維持に重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させるための医薬品の開発において、非常に重要である(Gnjatic S,et al.Survey of naturally occurring CD4+T cell responses against NY-ESO-1 in cancer patients:correlation with antibody responses.Proc Natl Acad Sci U S A.2003 Jul 22;100(15):8862-7)。腫瘍部位では、Tヘルパー細胞が、細胞毒性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境を維持してMortara L,et al.CIITA-induced MHC class II expression in mammary adenocarcinoma leads to a Th1 polarization of the tumor microenvironment,tumor rejection,and specific antitumor memory.Clin Cancer Res.2006 Jun 1;12(11 Pt 1):3435-43)例えば、CTL、NK細胞、マクロファージ、顆粒球などのエフェクター細胞を誘引する(Hwang ML,et al.Cognate memory CD4+ T cells generated with dendritic cell priming influence the expansion,trafficking,and differentiation of secondary CD8+ T cells and enhance tumor control.J Immunol.2007 Nov 1;179(9):5829-38)。
【0052】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などの、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者では、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが発見されている(Dengjel J,et al.Unexpected abundance of HLA class II presented peptides in primary renal cell carcinomas.Clin Cancer Res.2006 Jul 15;12(14 Pt 1):4163-70)。
【0053】
伸長された(より長い)本発明のペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を統合する上で、重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持し、それは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた、細胞傷害機能を含む。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0054】

例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であっても、インターフェロンγ(IFNγ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された。
【0055】
CD4 T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある(Braumuller et al.,2013;Tran et al.,2014)。
【0056】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは考えられなかった。しかしDengjel et al.は、いくつかのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から直接、同定することに成功した(国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0057】
腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それはそれぞれの腫瘍細胞で発現されて、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0058】
CD8およびCD4依存性の双方のタイプの応答は、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0059】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多形性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常は8~12アミノ酸残基長であり、通常は、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する、「結合モチーフ」を有する。
【0060】
MHCクラスI依存免疫反応では、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特有のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0061】
腫瘍関連抗原の現行の分類は、次の主要群を含んでなる:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る、これまでに同定された最初のTAAは、このクラスに属し、元々はがん精巣(CT)抗原と称されたが、それは、そのメンバーが組織学的に異なるヒト腫瘍で発現し、正常組織では、精巣の精母細胞/精原細胞のみに存在し、時として胎盤に存在するためであった。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織のT細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーまたはNY-ESO-1である。
【0062】
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有され;ほとんどは、メラノーマおよび正常なメラノサイトに見られる。これらのメラノサイト系関連タンパク質の多くは、メラニン生合成に関与し、したがって腫瘍特異的でないが、それでもなおがん免疫療法のために広く利用されている。例としては、メラノーマに対するチロシナーゼおよびMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
c)過剰発現されるTAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる腫瘍型で、ならびに多数の正常組織で、概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセシングされ潜在的に提示されるエピトープの多くは、T細胞認識閾値レベルに満たない可能性がある一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、先に確立された免疫寛容を破壊することで抗がん応答を引き起こし得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼまたはWT1である。
【0064】
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行に関連する。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型があるタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍(関連)エクソンに由来する場合に生じてもよい。
【0065】
e)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、腫瘍中で特異的でなく過剰発現もされないタンパク質から生じてもよいが、それでもなお、主に腫瘍中で活性の翻訳後プロセスによって、腫瘍関連抗原になる。このクラスの例は、改変グリコシル化パターンから生じて、腫瘍中にMUC1のような新規エピトープをもたらし、または腫瘍特異的であってもなくてもよい、分解中のタンパク質スプライシングなどの事象をもたらす。
【0066】
f)腫瘍ウイルスタンパク質:これらのTAAは、発がん過程で重要な役割を果たしてもよいウイルスタンパク質であり、それらは外来性である(ヒト由来でない)ため、T細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんで発現される、ヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0067】
タンパク質が、細胞傷害性Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、腫瘍細胞によって、健常組織と比較して過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、一腫瘍型に存在するだけでなく、高密度(すなわち、細胞あたりの各ペプチドのコピー数)で存在することも、さらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期制御またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に、由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、したがって(und)間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい。(Singh-Jasuja et al.,2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、エピトープが抗原のアミノ酸配列内に存在することが必須である。
【0068】
基本的に、MHC分子に結合できるあらゆるペプチドが、T細胞エピトープとして機能してもよい。生体外または生体内T細胞応答誘導のための必要条件は、対応するTCRがあるT細胞の存在、およびこの特定のエピトープに対する免疫寛容の不在である。
【0069】
そのため、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではないT細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、患者または健常者から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍および正常組織間の差次的転写プロファイル、または差次的ペプチド発現パターンの作成に基づく。
【0070】
しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株で過剰発現され、またはこのような組織または細胞株で選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。これは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRがあるT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本発明の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能性および/または増殖性T細胞がある、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが、重要である。このような機能性T細胞は、特異的抗原による刺激時にクローン増殖し得て、エフェクター機能を果たすことができるT細胞(「エフェクターT細胞」)と定義される。
【0071】
本発明によるTCRおよび抗体の場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。本発明によるTCRおよび抗体では、提示が決定的要素である。
【0072】
追加的ながん性疾患に対する治療用および診断用双方の用途は、本発明によるペプチドの基礎タンパク質(ポリペプチド)に関する、以下のより詳細な説明で開示される。
【0073】
COL18A1の差次的発現が、膀胱がん、ラブドイド腫瘍腫瘍、および卵巣がんで報告され、遺伝子内の特異的多形性は、散発性乳がんのリスクを増大させることが示された(Fang et al.,2013;Gadd et al.,2010;Peters et al.,2005;Lourenco et al.,2006)。
【0074】
COPA遺伝子発現およびRNA編集における変化は、肝細胞がんと関係があることが示され、実験的研究は、中皮腫細胞におけるCOPAの抗アポトーシス効果を明らかにした(Sudo et al.,2010;Qi et al.,2014;Wong et al.,2003)。
【0075】
CPB2の活性は、急性前骨髄球性白血病で有意に低下することが示された(Meijers et al.,2000)。
【0076】
肝臓で合成される急性期タンパク質であるCRPは、多様ながん型、特に腎細胞がんおよび多発性骨髄腫における予後マーカーであることが示された(Ljungberg,2007;Fassas and Tricot,2004)。
【0077】
CRYZは、腫瘍抑制因子p53の標的遺伝子である(Bansal et al.,2011)。それがコードするそのタンパク質、ζクリスタリンは、抗アポトーシス分子bcl-2のmRNAと直接相互作用して、T細胞急性リンパ球性白血病においてbcl-2の過剰発現を安定化することが示された(Lapucci et al.,2010)。
【0078】
CSRP2の過剰発現は、肝細胞がんの脱分化に関連する(Midorikawa et al.,2002)。
【0079】
CYB5Aは発がん性分子を解毒する酵素をコードし、膵臓がんの予後因子である(Blanke et al.,2014;Giovannetti et al.,2014)。
【0080】
CYP27A1の発現レベル増大は、子宮内膜がん、乳がん、および結腸直腸がんに関連する(Bergada et al.,2014;Nelson et al.,2013;Matusiak and Benya,2007)。
【0081】
CYP2E1の過剰発現が結腸直腸がんで報告され、特異的多形性は、膀胱および肺がんおよび乳がん細胞に関連する(Ye et al.,2014;Patel et al.,2014;Deng et al.,2014;Leung et al.,2013)。
【0082】
CYP2J2は酵素であり、それは食道、肺、乳房、胃、肝臓および結腸がんをはじめとする多様なヒトがんで過剰発現されることが示された(Jiang et al.,2005;Narjoz et al.,2014)。
【0083】
CYP4F8は、前立腺がんで高度に発現されることが示された(Vainio et al.,2011)。CYP4F2およびCYP4F3はどちらも膵臓導管腺がんで過剰発現し、卵巣がんではCYP4F2のみが過剰発現することが示された(Gandhi et al.,2013;Alexanian et al.,2012)。
【0084】
CYP4F11の発現は、NF-κBおよびp53によって制御されることが示された(Kalsotra et al.,2004;Bell and Strobel,2012;Goldstein et al.,2013)。
【0085】
CYPAF12の遺伝的変異は、膵臓がん患者におけるゲムシタビン応答と有意に関連する(Goldstein et al.,2013;Harris et al.,2014)。
【0086】
高レベルのDAP3は、胃がんにおける化学療法に対するより良い応答、および乳がんにおけるより良い臨床転帰と相関する一方で、他方では甲状腺膨大細胞腫瘍および侵襲性尾神経膠芽腫において、DAP3の過剰発現が報告された(Jia et al.,2014;Wazir et al.,2012;Jacques et al.,2009;Mariani et al.,2001)。
【0087】
PEX19はペルオキシソームバイオジェネシスに必須であるが、また、19ARFと直接相互作用して、究極的に、この因子の細胞質中の保持と、p53腫瘍抑制機能の不活性化とをもたらすことが示された(Sugihara et al.,2001)。
【0088】
DNAヘリカーゼのDEAHファミリーに属するDDX11は、進行性メラノーマで高度に発現される(Bhattacharya et al.,2012)。
【0089】
NME4はヌクレオシド二リン酸キナーゼであり、結腸および胃がん、ならびに骨髄異形成症候群で過剰発現され、後者の疾患は予後不良に関連する(Kracmarova et al.,2008;Seifert et al.,2005)。
【0090】
DENND5Bは、GDP-GTP交換因子の役割を果たし、Rab-GTPアーゼを活性化する(Yoshimura et al.,2010)。
【0091】
DIEXFは、腫瘍抑制因子p53の非プロテアソーム分解を媒介することがが示された(Tao et al.,2013)。
【0092】
DOCK7はグアニンヌクレオチド交換因子であり、それは神経膠芽腫で過剰発現し、活性化Rac-1によるHGFに応答して、神経膠芽腫細胞浸潤を増大させることが示された(Murray et al.,2014)。
【0093】
肝細胞がん細胞株では、化学療法剤誘導アポトーシス中にDRG2が下方制御され、DRG2の過剰発現は、これらの細胞におけるドキソルビシン誘導性アポトーシスを阻害することが示された(Chen et al.,2012a)。
【0094】
マイクロRNA生合成における2つの重要な酵素の1つであるDROSHAは、胃腸腫瘍、乳がん、および子宮頸がんをはじめとする、いくつかのがんで過剰発現されて、腫瘍細胞の増殖、コロニー形成、および遊走を促進するようである(Avery-Kiejda et al.,2014;Havens et al.,2014;Zhou et al.,2013b)。
【0095】
DUSP14遺伝子中のSNPは、改変メラノーマリスクに関連する(Yang et al.,2014a;Liu et al.,2013b)。
【0096】
全エクソーム配列決定研究は、膵臓の乳管内乳頭粘液性新生物がある患者のDYNC1H1遺伝子中の体細胞突然変異を明らかにした(Furukawa et al.,2011)。
【0097】
EEF2タンパク質は、肺、食道、膵臓、乳房、および前立腺がん、多形性神経膠芽細胞腫および非ホジキンリンパ腫で過剰発現して、がん細胞増殖において発がん性役割を果たすことが示された(Oji et al.,2014;Zhu et al.,2014a)。
【0098】
EFR3A遺伝子内の変異が、結腸直腸腺腫サンプル中で同定された(Bojjireddy et al.,2014;Zhou et al.,2013a)。
【0099】
EIF2B5は、翻訳開始因子Bの1つのサブユニットをコードする。この遺伝子中の単一ヌクレオチド多形性は、卵巣がんにおける生存期間に関連すると記載された(Goode et al.,2010)。
【0100】
真核生物翻訳開始因子3サブユニットAであるEIF3Aは、乳、肺、子宮頸部、食道、胃、および結腸がんで過剰発現され、細胞周期調節に関与することが示された(Dong and Zhang,2006)。
【0101】
EIF4Eは、乳、前立腺、肺、頭部、および頸部のがん腫をはじめとする最高30%のヒト悪性腫瘍で、ならびに多数の白血病およびリンパ腫で上昇する強力な発がん遺伝子である(Carroll and Borden,2013)。
【0102】
ELOVL2は、肝細胞がんで過剰発現することが示された(Jakobsson et al.,2006;Zekri et al.,2012)。
【0103】
EPRSは、結腸がんにおける腫瘍関連抗原であることが報告された、多機能性アミノアシルtRNAシンセターゼをコードする(Line et al.,2002)。
【0104】
EXOSC4プロモーター活性は、DNA低メチル化のために肝細胞がんにおいて増大する。EXOSC4は、効果的かつ特異的に、がん細胞増殖および細胞侵襲能力を阻害する(Drazkowska et al.,2013;Stefanska et al.,2014)。
【0105】
加水分解酵素FUCA2は、ヒト胃がん細胞へのH.ピロリ(H.pylori)付着に必須であることが分かった(Liu et al.,2009a)。
【0106】
GABRQは、GABAA受容体θサブユニットをコードする。GABAは、過剰発現されるGABAA受容体θサブユニットを通じて、ヒト肝細胞がん増殖を刺激することが示された(Li et al.,2012)。
【0107】
扁平上皮がんでは、GALNT2の過剰発現が、O-グリコシル化とGFR活性を改変することで、腫瘍細胞の侵襲性を高めることが報告された(Lin et al.,2014;Hua et al.,2012a;Wu et al.,2011)。
【0108】
高レベルのGGHは、抗葉酸、特にメトトレキサートに対する細胞耐性、および侵襲性乳がんおよび肺内分泌腫瘍における予後不良と連付けられている(Schneider and Ryan,2006;Shubbar et al.,2013;He et al.,2004)。
【0109】
GLULは、ヒト乳がん細胞および星細胞腫で過剰発現される(Zhuang et al.,2011;Collins et al.,1997;Christa et al.,1994;Cadoret et al.,2002)。
【0110】
GNPATは、転移性メラノーマにおける増殖阻害とアポトーシス誘導に関与することが報告された(Ofman et al.,2001;Qin et al.,2013)。
【0111】
GOLGA4の染色体領域中の欠失が子宮頸がんで報告され、GOLGA4とPDGFRBのインフレームmRNA融合が骨髄増殖性新生物で報告された(Senchenko et al.,2003;Hidalgo-Curtis et al.,2010)。
【0112】
GPAMはヒト乳がんで発現されて、それは細胞代謝の変化とより良い全生存期間に関連する(Brockmoller et al.,2012)。
【0113】
GPTの高い血清レベルは、胃腸がんリスクを増大させて、C型肝炎ウイルス誘導肝細胞がんにおける発がんと再発に関連することが報告された(Kunutsor et al.,2014;Tarao et al.,1997;Tarao et al.,1999)。
【0114】
GRB14は、乳がんにおいて上方制御されることが示されており、高度発現は、より良い無病および全生存期間と有意に関連した(Huang et al.,2013;Balogh et al.,2012)。
【0115】
GTF2H4遺伝子の単一ヌクレオチド多形性は、喫煙関連肺がんおよび乳頭腫ウイルス誘発子宮頸がんを発症するリスクを増大させることが報告された(Mydlikova et al.,2010;Buch et al.,2012;Wang et al.,2010)。
【0116】
異なる研究が、子宮頸がん、腎細胞がん、および膀胱がんの疾患進行における、HSPA2の重要な役割を示唆する遺伝子内多形性は、胃がんの発生と関係がある(Singh and Suri,2014;Ferrer-Ferrer et al.,2013;Garg et al.,2010a;Garg et al.,2010b)。
【0117】
HSPA8は、食道扁平上皮がんで過剰発現されることが示された。さらに、HSPA8は、多発性骨髄腫および結腸がんで過剰発現され、BCR-ABL1誘導性のHSPA8発現は、慢性骨髄性白血病において細胞生存を促進する(Dadkhah et al.,2013;Wang et al.,2013a;Chatterjee et al.,2013;Kubota et al.,2010;Jose-Eneriz et al.,2008)。
【0118】
MDN1は候補腫瘍抑制遺伝子であるとされ、ルミナールB型乳がんにおいて変異する(Cornen et al.,2014)。
【0119】
輸送およびゴルジ体構成タンパク質1(TANGO)としてもまた知られているMIA3は、腸および肝細胞がんで下方制御され、これらの実体において腫瘍抑制的役割を果たすことが報告された(Arndt and Bosserhoff,2007)。対照的に、口腔扁平上皮がんにおける研究は、腫瘍進行、転移形成、および臨床病期とMIA3発現の関連性を示唆して、MIA3の発がん作用を指し示す(Sasahira et al.,2014)。
【0120】
CPSF6は、乳房、結腸、肝臓、肺、食道、および甲状腺がんなどのいくつかの腫瘍型の転移性および侵襲性における有意差に関連する「転写準備状態遺伝子カセット」内の1遺伝子と同定された(Yu et al.,2008)。
【0121】
MPDZの低レベル発現は、乳がん患者における予後不良に関連することが報告された(Martin et al.,2004)。
【0122】
MAK10としてもまた知られているNAA35は、NatC補助サブユニットであるN(α)-アセチルトランスフェラーゼ35をコードする。食道扁平上皮がんがある患者では、分泌される融合タンパク質をコードし、分子マーカーとして潜在的に有用である、がん高度濃縮キメラGOLM1-MAK10 RNAが検出された(Zhang et al.,2013b)。
【0123】
NAV2は、一群の結腸がんで特異的に発現されることが示され、NAV2のアンチセンスオリゴヌクレオチドによる結腸がん細胞治療は、アポトーシスを誘導した(Ishiguro et al.,2002)。
【0124】
NCSTNの過剰発現は、エストロゲン受容体陰性乳がん患者における芳しくない全生存期間の徴候であり、高レベルのニカストリンおよびNotch4が、内分泌療法抵抗性乳がん細胞で検出され、それらの活性化は侵襲性挙動を究極的に駆動する(Sarajlic et al.,2014;Lombardo et al.,2014)。
【0125】
非小細胞肺がんでは、NKD1タンパク質は低下したが、NKD1 mRNAは上昇し、前者は、侵襲性増大および予後不良と相関する(Zhang et al.,2011)。NKD1 mRNAはまた、ヒト結腸腫瘍からの細胞中でも上昇することが分かった(Yan et al.,2001;Zhang et al.,2011)。
【0126】
食道がんでは、NUDCは、リンパ節転移に関連することが報告された一方で、前立腺がん細胞中のNUDCの過剰発現は、細胞分裂阻止をもたらす(Hatakeyama et al.,2006;Lin et al.,2004)。
【0127】
卵巣がんにおけるNotchシグナル伝達経路の役割を調査する研究は、がんとの比較で、腺腫におけるRFNG発現のより高い出現頻度を報告した(Gu et al.,2012;Hopfer et al.,2005)。
【0128】
RINT1は、多形性神経膠芽細胞腫における発がん遺伝子とされており、乳がんならびにリンチ症候群関連がんに見られる中程度に浸透性のがん感受性遺伝子とされている(Ngeow and Eng,2014;Quayle et al.,2012)。
【0129】
RORCの高度発現は、乳がんにおけるより長期の転移なし生存期間に関連することが分かった。RORC発現の減衰は、成長ホルモン分泌細胞腺腫中の腫瘍サイズ増大と関連し、ソマトスタチン療法に対する臨床的奏効を鈍らせた(Cadenas et al.,2014;Lekva et al.,2013)。
【0130】
RPL17は、薬物誘導性アポトーシスを抑制することで、多剤耐性を促進することが報告された(Shi et al.,2004b)。
【0131】
RPS29の発現増大が、胃および結腸直腸がんで報告された(Takemasa et al.,2012;Sun et al.,2005)。
【0132】
SAMM50は、β-バレルタンパク質のミトコンドリア外膜への組み込みにおいて機能する、ミトコンドリア外膜の選別組み込み装置(SAM)の構成要素をコードする。増殖促進キメラmRNA(SAMM50-PARVB)が、乳房および卵巣がん細胞で、そして乳房、胃、結腸、腎臓、および子宮がんからのいくつかのサンプルで検出された(Plebani et al.,2012)。
【0133】
SERPINF2は、線維素および様々なその他のタンパク質を分解する、プラスミンの主要阻害剤をコードする。プラスミン-α2-プラスミン阻害剤複合体の血漿レベルは、非小細胞肺がんにおける生存期間の予測因子であることが示され、前立腺がんがある患者の血中では、α2-抗プラスミンの低活性が観察された(Zietek et al.,1996;Taguchi et al.,1996)。
【0134】
SF3B3の過剰発現は、エストロゲン受容体陽性乳がんにおける、全生存期間および内分泌耐性と有意に相関する(Gokmen-Polar et al.,2014)。
【0135】
SHC1のタンパク質レベルは、前立腺、転移性乳房、卵巣、および甲状腺がん、そして異なるイソ型で上昇し、非ゲノムレベルにおけるステロイドの分裂促進シグナルを仲介する、主要アダプタータンパク質として機能すると考えられる(Alam et al.,2009;Rajendran et al.,2010)。
【0136】
AMACRは前立腺がんで高度に過剰発現されるので、この実体における生物マーカーとして利用される(Wu et al.,2014)。さらに、それは、腎細胞がん診断のための免疫組織化学的マーカーとして利用される(Ross et al.,2012)。
【0137】
実験データは、C1QTNF3発現が、ERK1/2シグナル伝達経路の活性化に随伴する骨肉腫腫瘍増殖における役割を有してもよく、それがPI3K/Aktシグナル伝達経路を通じて、低酸素/血清欠乏誘導性アポトーシスから間葉系幹細胞を保護する、新規抗アポトーシスアジポカインであることを示唆する(Hou et al.,2014;Akiyama et al.,2009)。
【0138】
GPC3は、ほとんどの肝細胞がんによって発現される。GPC3を標的化するHCCの2つの治療的アプローチ、ヒト化GPC3モノクローナル抗体と、2種のGPC3由来ペプチドからなるワクチンとが、目下、第II相臨床試験で試験されている。後者の研究で使用されるペプチドは、本文献で報告されるペプチドとは異なる。GPC3発現は、全ての卵黄嚢腫瘍、いくつかの肺扁平上皮がんおよび卵巣明細胞がん腫で同定されている(Filmus and Capurro,2013;Kandil and Cooper,2009)。
【0139】
MAGEB2は、精巣および胎盤で、そしてかなりの割合の様々な組織型の腫瘍、特に多発性骨髄腫および頭頸部扁上皮がんで発現されるので、それはがん精巣抗原に分類される(Pattani et al.,2012;van et al.,2011)。
【0140】
MAPKAPK5は、腫瘍抑制因子と、セリン/スレオニンキナーゼファミリーのメンバーとをコードする。MAPKAPK5は、結腸直腸がんで低発現されてmyc腫瘍性タンパク質の活性増大をもたらし、造血性がんのマウスモデルにおいて、発がん性ras活性を抑制することで、がん形成を低下させることが示された(Yoshizuka et al.,2012;Kress et al.,2011)。
【0141】
USP14の過剰発現は、上皮性卵巣、非小細胞肺および結腸直腸がんにおける、腫瘍細胞増殖の増大と予後不良に関連する(Wang et al.,2015;Wu et al.,2013a;Shinji et al.,2006)。
【0142】
C4Aは、多嚢胞性卵巣症候群および子宮内膜がんの生物マーカーとされており、実験データは、C4ががん増殖を媒介し得ることを示唆する(Galazis et al.,2013;Rutkowski et al.,2010)。
【0143】
CAPZBは、ヒト乳頭腫ウイルス18陽性経口扁平上皮がんで過剰発現されることが報告され、前立腺がん感受性遺伝子座と同定された(Lo et al.,2007;Nwosu et al.,2001)。
【0144】
CFHR5遺伝子内の単一ヌクレオチド多形性は、濾胞性リンパ腫における無病生存期間に関連する(Charbonneau et al.,2012)。
【0145】
CLIP1は、エンドサイトーシス小胞を微小管に結合する、CAP-GLYドメイン含有リンカータンパク質1をコードする。この遺伝子は、ホジキン病および乳がんのリード・シュテルンベルク細胞で高度に発現され、乳がんおよび膵臓がん細胞の遊走および浸潤に関与するようである(Sun et al.,2013;Suzuki and Takahashi,2008;Li et al.,2014a;Sun et al.,2012)。
【0146】
CLUは、進行した新生物において腫瘍進行を阻害してもよい一方で、それは多数の治療的ストレッサーを抑制して転移を促進することで、腫瘍に有意な生存上の利点を提供してもよい。CLUは、前立腺がん発病において重要な役割を果たし、ERK1/2シグナル伝達およびMMP-9発現調節を通じて、ヒト腎細胞がん明細胞の攻撃的行動を制御して、肺がんの進行した段階において治療耐性を与えることが示されている(Trougakos,2013;Panico et al.,2009;Takeuchi et al.,2014;Wang et al.,2014)。
【0147】
融合遺伝子SEC16A-NOTCH1は、乳がんにおける最初の再発融合遺伝子として報告された(Edwards and Howarth,2012)。
【0148】
SHQ1遺伝子の反復する欠失が、前立腺および子宮頸がんで観察されており、SHQ1の腫瘍抑制的役割が暗示される(Krohn et al.,2013;Lando et al.,2013)。
【0149】
明細胞腎細胞がん腫および膀胱がんでは、高いSLC16A1発現は、芳しくない予後因子と関係して腫瘍進行を予測する。結腸直腸がんでは、SLC16A1遺伝子の単一ヌクレオチド多形性が、臨床転帰に影響を及ぼしてもよく、アジュバント化学療法に対する応答を予測するために使用され得る(Kim et al.,2015;Fei et al.,2014a;Fei et al.,2014a)。
【0150】
神経膠芽腫は、グルタミン酸を高レベルで放出することが示されており、それは、腫瘍細胞増殖を刺激して腫瘍浸潤を促進し、SLC1A2を下方制御してもよく、それはより高い腫瘍悪性度と相関して、グリア腫瘍進行におけるその潜在的役割が暗示される。さらに、胃がんでは、SLC1A2とCD44との融合遺伝子が検出されており、腫瘍増殖および生存に有利に働く、発がん促進代謝環境を確立する、遺伝子融合物のクラスに相当してもよい(Tao et al.,2011;deGroot et al.,2005)。
【0151】
SLC3A2の高度発現は、腫瘍増殖、生物学的悪性度、および胆道がんがある患者の生存と関係があり、PI3K/Akt経路を介する細胞増殖促進を通じて、非小細胞肺がん患者の予後不良に顕著に寄与する。さらに、SLC3A2の過剰発現は、インテグリンs1、インテグリンs3、およびFakと共に、結腸直腸がんの進行および肝臓転移に関連する(Kaira et al.,2014;Fei et al.,2014b;Sun et al.,2014)。
【0152】
SLC9A3R1ががん発生に関与する証拠は、肝細胞がん、シュワン細胞腫、神経膠芽腫、結腸直腸がん、そして特に乳がんに存在する(Saponaro et al.,2014)。
【0153】
NFYCは、胃がんおよび前立腺がん細胞中で、がん遺伝子の発現を促進することが報告されている(Zhang et al.,2014a;Gong et al.,2013)。
【0154】
THY1は、抗侵襲活性を有する、鼻咽頭がんにおける候補腫瘍抑制因子遺伝子である(Lung et al.,2010)。
【0155】
TIMM17Aは21T乳がん細胞で過剰発現され,乳がん組織中のmRNA発現は、腫瘍進行と相関する(Xu et al.,2010)。
【0156】
TMEM209は、肺がんで広範に発現される(Fujitomo et al.,2012)。
【0157】
ACK1チロシンキナーゼとしてもまた知られているTNK2は、多種多様なヒトがんにおいて、活性化、増幅または変異する。脱調節キナーゼは発がん性であり、その活性化は転移期への進行と関連がある。ACK1阻害剤は、前臨床試験で有望性を示している(Mahajan and Mahajan,2013)。
【0158】
TRIM55は、RINGジンクフィンガータンパク質をコードし、それは筋肉サルコメア構築中に、微小管、ミオシン、およびタイチンと一過性に結合し、サルコメアから核へのシグナル伝達にもまた関与する(Pizon et al.,2002)。
【0159】
Ufd1タンパク質のRNA干渉は、ヒドロキシカンプトテシン耐性結腸がん細胞株SW1116/HCPTをヒドロキシルカンプトテシンに感作させ得る(Chen et al.,2011a;Chen et al.,2011c)。
【0160】
結腸直腸がんでは、UGT1A1遺伝子がメチル化を通じて発現停止され、したがってイリノテカン(CPT-11)薬剤耐性および薬剤耐性逆転のための制御機構研究の標的点と見なされる(Xie et al.,2014)。
【0161】
UGT1A10は、胃および胆管組織で発現され(Strassburg et al.,1997)、その過剰発現は、抗腫瘍剤5-ジメチルアミノプロピルアミノ-8-ヒドロキシトリアゾロアクリジノンC-130の細胞毒性を顕著に増大させた(Pawlowska et al.,2013)。さらにUGT1A10は、非生体物質、変異原、および反応性代謝産物のグルクロン酸抱合を触媒し、したがって間接的抗酸化剤の役割を果たす。非生体物質(XRE)および抗酸化剤(ARE)応答要素が、UGT1A8、UGT1A9、およびUGT1A10プロモーターで検出された(Kalthoff et al.,2010)。
【0162】
UGT1A8は、主に胃腸管で発現され(Gregory et al.,2003)、mRNA発現は、化学抗がん剤スルフォラファン(SFN)による治療時に上方制御される(Wang et al.,2012)。
【0163】
UGT1A7ハプロタイプは、B型肝炎キャリアにおける、肝細胞がんのリスク増大と関係がある(Kong et al.,2008)。
【0164】
UGT1A6は、メトトレキサート耐性の乳がん細胞で過剰発現され(de Almagro et al.,2011)推定上の化学抗がん剤β-ナフトフラボンによって誘導される(Hanioka et al.,2012)。
【0165】
UGT1A9は、主に肝臓および腎臓で発現される(Gregory et al.,2003)。UGT1A9生殖細胞多形性は、前立腺切除後の前立腺がん再発の可能な予測因子である(Laverdiere et al.,2014)。
【0166】
UGT1A4プロモーターおよびコード領域多形性は、乳がん患者のためのアロマターゼ阻害剤であるアナストロゾールのグルクロン酸抱合に、変動性をもたらす(Edavana et al.,2013)。
【0167】
UPF1は、ナンセンス媒介mRNA分解(NMD)機構の一部であり、前立腺がん進行および転移における機能的役割を有してもよい(Yang et al.,2013)。さらにUPF1 RNAサーベイランス遺伝子は、一般に膵臓腺扁平上皮がん中で変異する(Liu et al.,2014)。
【0168】
UQCRBは、ミトコンドリア複合体IIIのサブユニットである。腫瘍細胞中のUQCRBの阻害は、低酸素誘導腫瘍血管新生を抑制する(Jung et al.,2013)。UQCRBの3’非翻訳領域内の2つのSNPは、結腸直腸がんの予後マーカー候補である(Lascorz et al.,2012)。
【0169】
USO1のコピー数変化は、結節性メラノーマと比較して、表在性拡散メラノーマにおける差次的遺伝子発現と相関する(Rose et al.,2011)。
【0170】
USP10およびSIRT6タンパク質発現の双方の有意な低下が、ヒト結腸がんで検出された(Lin et al.,2013)。
【0171】
UTP18はまた、翻訳を変化させストレス耐性および増殖を促進し、がんにおいて頻繁に増加して過剰発現される(Yang et al.,2014b)。
【0172】
VARS rs2074511多形性は、トリプルネガティブタイプの乳がんがある患者の生存期間と関連し、したがって早期乳がんがある患者の生存期間の予後因子と見なされてもよい(Chae et al.,2011)。
【0173】
ストレス誘導自食作用関連タンパク質であるVMP1はまた、発がん遺伝子KRASによっても誘導される(Lo Re et al.,2012)。VMP1は、化学療法剤に対する応答として、低分化型ヒト膵臓がんで過剰発現される(Gilabert et al.,2013)。VMP1の顕著な下方制御はヒトHCC組織で見られ、HCCの複数の腫瘍結節、莢膜形成の不在、静脈浸潤、および予後不良と綿密に相関する(Guo et al.,2012)。
【0174】
WDR26は、心筋細胞を酸化的ストレスから保護する(Feng et al.,2012)。
【0175】
ZC3H7Aは、マクロファージ活性化の制御因子として知られている、CCCHジンクフィンガータンパク質ファミリーのメンバーである(Liang et al.,2008)。ZC3H7Aは、膵臓導管腺がんの転移腫瘍において、機能性変異のより高い対立遺伝子頻度を有することが分かった(Zhou et al.,2012)。
【0176】
FASNは脂肪酸シンターゼであり、乳房、膵臓、前立腺、肝臓、卵巣、結腸、および子宮内膜がんをはじめとする、異なるがん型における脂質合成の促進に関与する(Wu et al.,2014;Zhao et al.,2013)。
【0177】
FGGは、肝細胞がんならびに前立腺、肺、および乳がん中で上方制御される(Vejda et al.,2002;Zhu et al.,2009)。
【0178】
FMO5は、優性肝臓特異的FMOであるモノオキシゲナーゼであり、それはエストロゲン受容体α陽性乳房腫瘍で上方制御される(Bieche et al.,2004;Zhang and Cashman,2006)。
【0179】
HADHA mRNAは、HCCの脱分化進行に伴って(Tanaka et al.,2013)、そしてエストロゲン受容体α陰性乳腺腫中で低下する(Mamtani and Kulkarni,2012)。
【0180】
HAL遺伝子の遺伝的多様性は、皮膚がんの発症における役割を有するかもしれない(Welsh et al.,2008)。
【0181】
HLTFは、ヘリカーゼおよびE3ユビキチンリガーゼ活性がある転写調節因子のSWI/SNFファミリーのメンバーであり、結腸、胃、子宮、膀胱、および肺腫瘍中の過剰メチル化によって不活性化されることが分かった(Debauve et al.,2008;Castro et al.,2010;Garcia-Baquero et al.,2014)。
【0182】
HDAC10は、ヒストンデアセチラーゼおよび転写調節因子である。HDAC10の発現は、隣接する組織と比較して、胃がん組織内で有意に低下した(Jin et al.,2014)。HDAC10は、子宮頸扁平上皮がんがあるヒト患者において、リンパ節転移と逆相関する(Song et al.,2013)。HDAC10は、悪性副腎皮質腫瘍中で過剰メチル化される(Fonseca et al.,2012)。HDAC10レベルは、慢性リンパ球性白血病において増大する(Wang et al.,2011)。HDAC10-589C>Tプロモーター多形性は、慢性HBV患者におけるHCC発生、ならびに慢性HBV患者におけるHCC加速と有意に関連した(Park et al.,2007)。クラスIIヒストンデアセチラーゼ遺伝子の発現低下は、肺がん患者における予後不良に関連する(Osada et al.,2004)。
【0183】
低いHIP1R発現は、びまん性大細胞リンパ腫患者における転帰不良と強く関連する(Wong et al.,2014)。
【0184】
HM13はシグナルペプチドペプチダーゼであり、結腸直腸腺腫中の細胞生存率に影響を及ぼした(Sillars-Hardebol et al.,2012)。
【0185】
悪性リンパ腫がある患者における血清HPRレベルは、非病的対照群よりも有意に高く、HPR発現は疾患進行と共に増大した(Epelbaum et al.,1998)。HPR発現は、乳がんの悪性度増大に平行し、HPR陽性乳がんは一次切除術後に再発する可能性が高く、より短い無病期間に関連する(Shurbaji et al.,1991)。
【0186】
HSD11B1遺伝子中の変異体(rs932335)は、結腸直腸がんおよび乳がんに関連する(Feigelson et al.,2008;Wang et al.,2013b)。
【0187】
アンドロゲン除去療法(ADT)を施された前立腺がん患者施されたからの組織中のHSD17B6発現は、未治療個人の組織よりも有意に高い(Ishizaki et al.,2013)。
【0188】
HSPE1は、タンパク質折りたたみおよび細胞シグナル伝達(NF-κBおよびWNTシグナル伝達)における機能がある、ミトコンドリアシャペロニンである。Hsp10レベルの増大は、大腸がん、子宮頚膣部がん、前立腺がん、マントル細胞リンパ腫、および漿液性卵巣がんの腫瘍細胞中で発見されている。気管支発がんでは、Hsp10のレベル低下が報告されている(David et al.,2013)。
【0189】
ヌードマウス側腹部に移植されパクリタキセルで処置された卵巣がん異種移植片は、未処理異種移植片と比較して、IDI1発現の低下を示した(Bani et al.,2004)。
【0190】
IGFBPL1はインスリン増殖因子の調節因子であり、乳がん細胞株において、異常な過剰メチル化によって下方制御される。IGFBPL1のメチル化は、より芳しくない全生存期間および無病生存と明らかに関連する(Smith et al.,2007)。
【0191】
アンドロゲン感受性ミクロソーム関連タンパク質IKBKAPは、前立腺上皮および神経細胞マーカーの発現を調節し、アンドロゲン受容体依存性機序を通じて増殖を減衰させ、LNCaP前立腺がん細胞中のアンドロゲン受容体媒介転写を同時制御した(Martinez et al.,2011)。
【0192】
INTS8は、隣接する非がん性組織から、胃がんを識別するマーカーパネルの一部である(Cheng et al.,2013)。
【0193】
IRS2由来ペプチドpIRS-21097-1105は、HLA-A2(+)メラノーマおよび乳房、卵巣、および結腸直腸がん腫上で報告された(Zarling et al.,2014)。IRS-21057DD遺伝子型およびD対立遺伝子は、HCCリスクと有意に関連した(Rashad et al.,2014)。
【0194】
ITGA7は、ラミニン-1受容体二量体インテグリンα-7/β-1のα鎖である。ITGA7は、悪性腫瘍の増殖抑制に重要な腫瘍抑制遺伝子である。変異解析は、前立腺がん、肝細胞がん、軟部組織平滑筋肉腫、および多形性神経膠芽細胞腫中のITGA7変異を明らかにした。ITGA7は、非転移性前立腺がんおよび平滑筋肉腫中で下方制御された(Tan et al.,2013)。
【0195】
ITIH4は、結腸、胃、卵巣、肺、腎臓、直腸、および前立腺をはじめとする、いくつかの腫瘍組織内で下方制御された(Hamm et al.,2008)。低い血清ITIH4レベルは、HBV-関連HCC患者において、より短い生存期間に関連する(Noh et al.,2014)。ITIH4血清濃度の有意な増大が乳がんで観察され、ITIH4の血清レベルは、外科手術後に有意に低下した(van,I et al.,2010)。
【0196】
FLT3の下流で作用するSHKBP1中においてミスセンス変異が同定され、受容体チロシンキナーゼは、約30%のAML症例で変異した(Greif et al.,2011)。SHKBP1は、異なる病期において、十分に分化した小腸神経内分泌腫瘍(WD-SI-NET)を分類するためのいくつかの可能なタンパク質生物マーカー候補の1つである(Darmanis et al.,2013)。
【0197】
KLB発現は、対応する非腫瘍組織と比較して、HCC組織内で上昇する(Poh et al.,2012)。
【0198】
LBP多形性rs2232596は、漢人における結腸直腸がんリスクの有意な増大に関連する(Chen et al.,2011b)。LBPは、卵巣がんにおける候補血清生物マーカーである(Boylan et al.,2010)。LBPは、小細胞肺がん患者における化学療法による処置後に、有意に低下した(Staal-vanden Brekel AJ et al.,1997)。
【0199】
LBR mRNA発現は、乳がんにおける、腫瘍悪性度およびNottingham Prognostic Indexと直接関連する(Wazir et al.,2013)。LBRは、甲状腺乳頭がん細胞で大量に発現されるが、タンパク質の異常な折り畳みがその免疫組織化学的反応性の欠如を説明して、核膜の異常な折り畳みに関連するかもしれない(Recupero et al.,2010)。
【0200】
LEPR調節不全は、結腸がん、肝細胞がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、乳がん、および肺がんをはじめとする多様な悪性細胞で報告されている(Ntikoudi et al.,2014;Surmacz,2013;Uddin et al.,2011)。
【0201】
LIG1単一ヌクレオチド多形性は、肺がん、子宮内膜がん、および神経膠腫リスクに関連する(Doherty et al.,2011;Lee et al.,2008;Liu et al.,2009b)。
【0202】
胃がん組織内のLRPPRC発現は、対合する対照組織内よりも有意に高い(Li et al.,2014b)。LRPPRCレベルは、前立腺腺がん(PCA)がある患者の予後診断マーカーの役割を果たし、LRPPRCレベルが高い患者は、外科手術後に、LRPPRCレベルが低い患者よりも短い期間生存する(Jiang et al.,2014)。LRPPRCは、肺腺がん、食道扁平上皮がん、胃、結腸、乳腺および子宮内膜腺がん、およびリンパ腫などの様々なタイプの腫瘍で大量に発現される(Tian et al.,2012)。
【0203】
MANEA発現は、前立腺がん細胞内のアンドロゲンによって制御される(Romanuik et al.,2009)。
【0204】
OPLAHは、肺、乳房、腎臓、結腸、および卵巣の正常および腫瘍組織で発現され、OPLAHレベルは、個々の患者の正常標本で腫瘍よりも有意に高い(Srivenugopal and Ali-Osman,1997)。
【0205】
ORM2グリコフォームは、原発性および続発性肝臓がんの識別に関する価値ある情報を提供する(Mackiewicz and Mackiewicz,1995)。血漿中のORM2レベルは、対照と比較して、結腸直腸がん罹患している患者で有意に上昇することが確認された(Zhang et al.,2012)。フコシル化グリコフォームORM2レベルは、対照と比較して、腺がん肺がん症例で有意により高かった(Ahn et al.,2014)。ORM2は、胆管細胞がんの早期診断のための推定上の生物マーカーである(Rucksaken et al.,2012)。
【0206】
テトラヒドロビオプテリンレベルの増大は、ヒト肝腫瘍細胞内で、PAH活性およびPAHタンパク質の増大をもたらす(McGuire,1991)。
【0207】
PARP14は、骨髄腫血漿細胞で高度に発現され、疾患進行および低生存率に関連する。PARP14は、JNK2依存性生存期間に深く関わる。PARP14は、NK1に結合して阻害することで、骨髄腫細胞の生存を促進することが分かった(Barbarulo et al.,2013)。
【0208】
PCレベルは、肝臓腫瘍および肺がんで上昇する(Chang and Morris,1973;Fan et al.,2009)。
【0209】
PCNTレベルの増大および中心体異常が、AML、CML、マントル細胞リンパ腫、乳がん、および前立腺がんをはじめとする、多様な血液悪性腫瘍および固形腫瘍で記載されている(Delaval and Doxsey,2010)。
【0210】
PIGNは、CIN(+)結腸直腸がんにおいて頻繁なコピー数損失を被る、がん染色体不安定性(CIN)抑制遺伝子である(Burrell et al.,2013)。
【0211】
PIPOX発現は、乳がんサブタイプに応じて変化し、HER-2タイプの腫瘍は発現上昇を示し、トリプルネガティブ乳がんサブタイプは発現低下を示す。腫瘍PIPOX陰性は、より短い無病生存と関連した(Yoon et al.,2014)。PIPOXは前立腺腫瘍中で低下し、サルコシンを代謝することで前立腺細胞発がんの可能性を低下させた(Khan et al.,2013)。
【0212】
PSMD4レベルの増大が、結腸がん、骨髄腫、および肝細胞がんで検出された(Arlt et al.,2009;Midorikawa et al.,2002;Shaughnessy,Jr. et al.,2011)。
【0213】
PLIN2は、対照と比較して、明細胞および乳頭腎細胞がんがある患者において顕著に増大する。PLIN2の術前尿濃度は、腫瘍のサイズと病期を反映する(Morrissey et al.,2014)。PLIN2発現は、正常組織および肺扁平上皮がんよりも、肺腺がん標本で有意により高い(Zhang et al.,2014b)。
【0214】
PLK4は、ヒトがんにおいて頻繁に、特に肝細胞がんで高い比率で、しかし結腸直腸がん、頭頸部がんでも、再配置または欠損を被る(Swallow et al.,2005)。PLK4は、乳がんで過剰発現される(Marina and Saavedra,2014)。
【0215】
QARSはアミノアシル-tRNAシンセターゼ(ARS)のメンバーであり、tRNAにグルタミンを装入する。ARS発現および多形性は、乳がんおよび神経膠芽腫に関連する(He et al.,2014b;Kim et al.,2012)。
【0216】
メチル化PMF1遺伝子は、膀胱がんがある患者の診断および予測生物マーカーである(Kandimalla et al.,2013)。
【0217】
甲状腺、前立腺、膵臓、精巣、子宮内膜/子宮、肝臓および腎がん、リンパ組織、膀胱腫瘍、ALLおよびCMLをはじめとする、いくつかのヒト腫瘍および血液悪性腫瘍はPON2を上方制御し、このような過剰発現は、異なる化学療法薬(イマチニブ、ドキソルビシン(doxorubicine)、スタウロスポリン、またはアクチノマイシン)に対する耐性を提供した(Witte et al.,2011)。
【0218】
PRKAR2Aは、タンパク質キナーゼAの制御サブユニットである。PRKAR2Aは、タキソールおよびタキソテールで処置された前立腺がん細胞株(cancercellsline)の生存期間を顕著に増大させた(Zynda et al.,2014)。PRKAR2Aは、肺腺がんで過剰発現される(Bidkhori et al.,2013)。
【0219】
PRPF6は、増殖制御に関連する遺伝子の優先的なスプライシングによって結腸がん増殖を駆動する、tri-snRNP(小型リボ核タンパク質)スプライソソーム複合体の構成要素である(Adler et al.,2014)。PRPF6は、肺腺がんで過剰発現される(Bidkhori et al.,2013)。
【0220】
PSMC4は、対応する隣接正常前立腺組織と比較して、前立腺がん細胞内で有意にかつ首尾一貫して上方制御された(Hellwinkel et al.,2011)。
【0221】
QPRT発現は、神経膠腫における悪性病変と共に増大し、再発性膠芽細胞腫中では、放射線化学療法後のQPRT発現は、予後不良に関連する(Sahm et al.,2013)。QPRTは、濾胞性甲状腺根粒の免疫組織化学的スクリーニングの潜在的マーカーである(Hinsch et al.,2009)。
【0222】
RABGGTBは、化学療法難治性びまん性大細胞リンパ腫で過剰発現される(Linderoth et al.,2008)。
【0223】
RAD21は、胃腸腫瘍、結腸直腸がん、進行した子宮内膜がん、前立腺がん、および乳がんで過剰発現される(Atienza et al.,2005;Deb et al.,2014;Porkka et al.,2004;Supernat et al.,2012;Xu et al.,2014)。
【0224】
RAD23Bは、乳がん進行において潜在的役割を有する(Linge et al.,2014)。 一塩基多型RAD23B rs1805329は、HCVがある日本人患者においてHCCの発症および再発と有意に関連した(Tomoda et al.,2012)。
【0225】
RASAL2は、エストロゲン受容体陽性乳がん、卵巣がんおよび肺がんにおいて腫瘍抑制機能がある、RAS-GTPアーゼ活性化タンパク質である(Li and Li,2014;Huang et al.,2014)。対照的に、RASAL2は、三種陰性乳がんにおいて発がん性であり、間葉浸潤および転移を駆動する(Feng et al.,2014a)。
【0226】
RNMTの枯渇は、肝臓がんをはじめとする(inclusing)異なるがん型において、効果的かつ特異的にがん細胞増殖および細胞侵襲能力を阻害する(Stefanska et al.,2014)。
【0227】
肺がん、胃がん、CML、およびAMLをはじめとする、いくつかのがんにおいて、キナーゼ活性上昇をもたらす、ROCK1の過剰発現またはROCK1遺伝子の変異が報告されている(Rath and Olson,2012)。
【0228】
RPL10Aはc-Myc標的遺伝子であり、肝実質細胞形質転換に寄与してもよい(Hunecke et al.,2012)。
【0229】
特に、骨髄性白血病または脊髄形成異常症における予後不良に関連するInv(3)およびt(3;3)切断点は、RPN1遺伝子の動原体および下流に位置する領域内にクラスター形成する(Wieser,2002)。
【0230】
RRBP1は、肺がんおよび乳がんで過剰発現される(Telikicherla et al.,2012;Tsai et al.,2013)。
【0231】
SCFD1発現は、胃がんと関連づけられるびらん性胃炎において増大する(Galamb et al.,2008)。
【0232】
ABCB1は、腸管、肝臓、腎臓、脳、および胎盤などの様々な臓器の正常細胞で発現されるP-糖タンパク質(P-gp)をコードする。P-gpの過剰発現および遺伝的多形は、結腸直腸がん、副腎に由来する腫瘍、肺がん、およびALLで検出されている(Zhang et al.,2013a;Fojo et al.,1987;Gervasini et al.,2006;Jamroziak et al.,2004)。
【0233】
ABCB10は、サブファミリーBのABC輸送体(MDR/TAP)をコードする。ABCB10は、KCP-4ヒト類表皮がん細胞のシスプラチン耐性に関与することが示された(Oiso et al.,2014)。
【0234】
ABCB11の発現は、薬剤耐性の最も高いがんの1つである膵臓導管腺がんにおいて、上方制御されることが示された。したがってそれは、このがんの概して芳しくない治療反応に寄与してもよい(Mohelnikova-Duchonova et al.,2013)。
【0235】
原発性ファロピウス管がん腫における上方制御されたABCC2の発現は、予後不良に関連する(Halon et al.,2013)。
【0236】
ABCC6は、緩和的化学療法に対する非応答者の結腸直腸がんにおいて、下方制御された(Hlavata et al.,2012)。対照的に、それは、ゲムシタビン耐性ヒトNSCLCA549細胞内で上方制御された(Ikeda et al.,2011)。
【0237】
ACACAの発現は、乳房、前立腺、および肝臓がんなどの多数のヒトがんにおいて上方制御され、がん細胞の脂質生成促進と相関することが示された。様々なACACA阻害剤は、細胞増殖抑制と、アポトーシスを通じた細胞死誘導とによって、がん細胞株の治療における治療的効果を示した(Zu et al.,2013)。
【0238】
ACLYは、乳房、肝臓、結腸、肺、および前立腺がんなどの様々な腫瘍で異常に発現されて、腫瘍病期および分化と逆相関する(Zu et al.,2012)。
【0239】
ACSL3は肺がんで過剰発現され、前臨床研究に基づけば、肺がんにおける有望な新規治療標的である(Pei et al.,2013)。上方制御されたACSL3の発現は、エストロゲン受容体特異的乳がんリスクの可能な生物マーカーの役割を果たし得る(Wang et al.,2013c)。
【0240】
ACSL4は、エストロゲン受容体陰性乳腺腫、およびアンドロゲン受容体陰性乳房および前立腺腫瘍で、過剰発現されるステロイドホルモン感受性喪失は、ACSL4発現の誘導と関連した(Monaco et al.,2010)。ACSL4上方制御の開始は、腺腫から腺がんへの形質転換中に起こることが示された(Cao et al.,2001)。
【0241】
ACSS3のメチル化は、神経芽細胞腫における古典的リスク因子、すなわち年齢、病期またはMYCN状態の少なくとも1つに関連することが分かった(Decock et al.,2012)。
【0242】
ADSSL1の欠失は、発がん性物質誘導性マウス原発性肺腺がん、マウスおよびヒト肺腺がん細胞株で頻繁に観察され、原発性マウス肺腫瘍におけるより大規模な染色体不安定性表現型に関連した(Miller et al.,2009)。
【0243】
AGFG2は、おそらく転移性再発がないままである、ホルモン受容体陰性または三種陰性乳がんの症例の同定における、14個の予測遺伝子候補の1つとして同定された(Yau et al.,2010)。
【0244】
AGTは、非常に強力な抗血管新生因子であり、生体外および生体内で抗腫瘍効果を生じることが示された(Bouquet et al.,2006)。遺伝子組換えマウスでは、ヒトAGTの過剰発現が肝臓がんの血管新生を低下させ、ひいては腫瘍進行を遅延させることが示された(Vincent et al.,2009)。
【0245】
AKR1C4は、ヒトアルドケト還元酵素系統群1メンバーC4をコードして、レチナールデヒドのレチノールへの還元を触媒する(Ruiz et al.,2011)。したがって、レチナールデヒドの枯渇は、レチノイン酸の生合成を下方制御し、腫瘍進行に有利に働くレチノイドシグナル伝達のブロックがそれに続く(Tang and Gudas,2011;Ruiz et al.,2012)
ALDH1L1の発現は、HCCおよび神経膠腫で下方制御されることが示された。これらのがんにおけるALDH1L1の下方制御は、芳しくない予後およびより侵襲性の表現型と関連した(Rodriguez et al.,2008;Chen et al.,2012b)
ALG3の発現は、食道扁平上皮がんおよび子宮頸がんで促進されることが示された(Shi et al.,2014;Choi et al.,2007)。食道扁平上皮がんでは、ALG3の発現増大はリンパ節転移と相関した(Shi et al.,2014)。
【0246】
ANKS1Aは、いくつかの結腸直腸がんの発症に関与することが知られている、Srcファミリーキナーゼの新規標的として同定された(Emaduddin et al.,2008)。
【0247】
APOA1は、血漿中の高密度リポタンパク質(HDL)の主要なタンパク質成分である、アポリポタンパク質A-Iをコードする。複数の動物腫瘍モデルにおいて、APOA1は、腫瘍形成における強力な免疫調節性役割を示し、先天性および適応性免疫過程を支持することで、腫瘍増殖および転移を抑制することが示された(Zamanian-Daryoush et al.,2013)。
【0248】
APOA2は、膵臓がん患者において有意に低下することが示される(Honda et al.,2012)。対照的に、APOA2の発現増大はHCCと関連した(Liu et al.,2007)。
【0249】
α-フェトプロテイン陰性HBV関連HCCでは、APOBは、HCC進行に関連し得る14個の示差的に発現されるタンパク質の1つであることが分かった(He et al.,2014a)。進行した乳がんでは、APOBは、患者のネオアジュバント化学療法に対する応答性および再発なしの生存期間を予測し得る、6個の示差的に発現されるタンパク質の1つであることが分かった(Hyung et al.,2011)。
【0250】
病期IIIの結腸直腸がん患者およびヒトメラノーマ細胞内では、AQP9は化学療法抵抗性の増大と関連した(Dou et al.,2013;Gao et al.,2012)。
【0251】
ARG1は、肝臓中のその他の転移性腫瘍からHCCを識別する上で、高感度かつ特異的マーカーであることが示された(Sang et al.,2013)。ARG1は、NSCLCにおける局所免疫抑制に寄与してもよい(Rotondo et al.,2009)。
【0252】
健常ドナーと比較して、慢性骨髄性白血病がある患者に由来する末梢白血球中では、リン酸化された、したがってより高活性形態のARSBタンパク質が増大することが分かった(Uehara et al.,1983)。
【0253】
卵巣がん細胞内では、ASNA1の下方制御は、化学療法薬シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、および亜ヒ酸塩に対する感受性を増大させることが示された(Hemmingsson et al.,2009)。
【0254】
ASPHは、様々ながんおよびがん細胞株で過剰発現されることが示された(Yang et al.,2010)。ASPH負荷樹状細胞による免疫化は、生体外で胆管細胞がん細胞に対する細胞毒性を生じ、肝臓内腫瘍増殖および転移を有意に抑制した(Noda et al.,2012)。
【0255】
ATP1A2は、神経膠芽腫で有意に上方制御される、31個のタンパク質中に見られた(Com et al.,2012)。対照的に、ATP1A2は、骨髄浸潤性転移性神経芽細胞腫においては、下方制御されることが示された(Morandi et al.,2012)。
【0256】
ATP1A3は、神経膠芽腫で有意に上方制御される、31個のタンパク質中に見られた(Com et al.,2012)。
【0257】
ATP6V1C1は、リソソーム内V-ATPアーゼ活性の制御を通じて、乳がん増殖および骨転移を促進してもよい。ATP6V1C1ノックダウンは、生体内で、マウス4T1乳腺腫瘍細胞種移植腫瘍の増殖、転移、および溶骨性病変を有意に阻害した(Feng et al.,2013)。ATP6V1C1は、口腔扁平上皮がんで過剰発現され、腫瘍細胞運動性と関連することが示された(Otero-Rey et al.,2008)。
【0258】
ATP7Bは、広く使用されている抗がん剤である、シスプラチンに対するがんの耐性に関連する(Dmitriev,2011)。
【0259】
AXIN2は、Wntシグナル伝達経路中のβカテニンの安定性制御においておそらく重要な役割を果たす、Axin(軸阻害)関連タンパク質2をコードする(Salahshor and Woodgett,2005)。さらに、AXIN2は、発がん遺伝子c-MYCの発現を抑制することが示された(Rennoll et al.,2014)。
【0260】
HCCでは、低いBAAT発現は、より高いBAAT発現がある患者と比較して、芳しくない生存期間と関連した(Furutani et al.,1996)。
【0261】
BHMTおよびBHMT2の転写物の強力な低下が、正常肝臓組織と比較して、HepG2細胞およびHCCサンプルで示された(Pellanda et al.,2012)。
【0262】
C12orf44は自食作用に必須であり、ULK1とAtg13-依存様式で相互作用することが示された(Mercer et al.,2009)。自食作用はがんにおいて二重の役割を有し、損傷を受けたタンパク質および細胞小器官の蓄積を予防することで腫瘍抑制因子として作用し、また確立した腫瘍の増殖を促進し得る細胞生存機序として作用する(Yang et al.,2011b)。
【0263】
C17orf70はファンコーニ貧血コア複合体の構成要素であり、複合体の安定性に必須である。ファンコーニ貧血コア複合体は、DNA損傷応答ネットワークにおいて中心的役割を果たす。ファンコーニ貧血コア複合体媒介DNA損傷応答は、乳がん感受性遺伝子産物、BRCA1およびBRCA2に関与する(Ling et al.,2007)。
【0264】
C19orf80は、肝細胞がん関連遺伝子TD26をコードして、HCC中でメチル化レベルが最大であり、対照組織内で最低である、5つの遺伝子座の1つであることが示された(Ammerpohl et al.,2012)。
【0265】
CCT7は、後期ヒト結腸直腸がんを有意に判別可能である、タンパク質サブネットワークの一部であることが分かった(Nibbe et al.,2009)。
【0266】
CDK6は、腫瘍抑制因子タンパク質Rbの活性を制御することが示されている。CDK6は、増殖を促進して血管新生を刺激することで、その腫瘍促進機能を発揮し得る(Kollmann et al.,2013)。CDK6の薬理学的阻害は、異常な白血病細胞の増殖分化を阻害することが示された(Placke et al.,2014)。
【0267】
CFHは、皮膚扁平上皮がん進行における役割を有してもよい(Riihila et al.,2014)。CFHは、様々ながん細胞における補体媒介溶解耐性に重要な役割を果たしてもよく、NSCLCで過剰発現されることが示され,それは芳しくない予後診断と関連した(Cui et al.,2011)。
【0268】
CLPTM1の不活性化変異が、前立腺がん細胞で発見された(Rossi et al.,2005)。
【0269】
CMASは、シアル酸の活性化と、そのシチジン一リン酸ジエステルへの変換とを触媒する、シチジン一リン酸N-アセチルノイラミン酸シンセターゼをコードする。活性化シアル酸は、細胞分化における一般的な翻訳後修飾である、N-グリコシル化のために使用される。がん細胞表面のシアル酸糖の発現増大は、周知の腫瘍特性の1つである(Bull et al.,2014)。
【0270】
TF(トランスフェリン)受容体(TFR)は悪性細胞上で過剰発現され、TFとの相互作用を通じて細胞の鉄取り込みに重要な役割を果たすので、TFは最も広く使用されている腫瘍標的リガンドの1つである(Biswas et al.,2013)。TFRの発現レベルは、腫瘍病期またはがん進行と相関することが示唆されている(Tortorella and Karagiannis,2014)。
【0271】
TH1Lは、ヒト乳がんの増殖および浸潤制御において重要な役割を果たすかもしれず、ヒト乳がん治療のための潜在的標的であり得る(Zou et al.,2010)。
【0272】
THTPA加水分解は、Ndrg-1の抗増殖効果に関与するかもしれない。Ndrg-1は、乳房、結腸、前立腺、および膵臓がんにおいて浸潤と転移を低下させることが示されている(Kovacevic et al.,2008)。
【0273】
SMYD3は、メタロプロテイナーゼMMP-9のエピジェネティックな上方制御によって、がん浸潤を促進する(Medjkane et al.,2012)。SMYD3の発現は、正常なヒト組織の多くの型では検出不能であり、または非常に弱いのに対し、SMYD3の過剰発現は、胃、結腸直腸、肝細胞、前立腺、および乳がんの発症および進行と関連づけられている(Hamamoto et al.,2006;Liu et al.,2014;Liu et al.,2013a)。
【0274】
STAT2と腫瘍形成間の関連性が、STAT2が欠如している(Yue et al.,2015)、または脳内でIFN-αを恒常的に発現する(Wang et al.,2003)、遺伝子組換えマウスで観察された。
【0275】
TACC3は、卵巣がん、乳がん、扁平上皮がん、およびリンパ腫をはじめとする、多数のヒトがんで過剰発現される(Ma et al.,2003;Jacquemier et al.,2005;Lauffart et al.,2005)。
【0276】
SPBはまた、エストロゲン受容体α(ERα)の転写活性を抑制することが示される。SPBPの過剰発現は、ERα依存性乳房がん細胞株の増殖を阻害した(Gburcik et al.,2005)。細胞核内では、SPBPは比較的低い運動性を示し、高クロマチン密度領域に富み、それがクロマチン結合タンパク質であることを明らかに示唆する(Darvekar et al.,2012)。TCF20は、酸化的ストレスに対する細胞防衛プログラムに関与する、タンパク質の誘導を促進するために重要である(Darvekar et al.,2014)。
【0277】
C3は、炎症性腫瘍微小環境の顕著な要素であり(Rutkowski et al.,2010)、活性化は、腫瘍に成長上の利点を与え得る(Markiewski et al.,2008)。C3の酵素的切断は、炎症性メディエータおよび化学誘引物質アナフィラトキシンC3aと、C3bとの生成をもたらす(Sahu et al.,1998)。
【0278】
CLN3は、NT2神経細胞前駆細胞および少数のがん型における、抗アポトーシス遺伝子である(Zhu et al.,2014b)。それは、神経細胞および非神経細胞内で、細胞内輸送および制御に関与し(Rakheja et al.,2008;Getty and Pearce,2011)、それは、いくつかの重要なシグナル伝達経路に関与する(Persaud-Sawin et al.,2002)。CLN3mRNAおよびタンパク質は、乳房、結腸、悪性黒色腫、前立腺、卵巣、神経芽細胞腫、および多形性神経膠芽細胞腫をはじめとする、いくつかのがん細胞株で過剰発現されるが、肺または膵臓がん細胞株では過剰発現されない(Rylova et al.,2002)。
【0279】
SLC13A5は、7つのCIMPマーカー遺伝子の1つである。明細胞腎細胞がん腫(ccRCCs)のCIMP(CpGアイランドメチル化因子表現型)は、CpGアイランドにおけるDNAメチル化の蓄積、および芳しくない患者転帰によって特徴付けられる(Tian et al.,2014;Arai et al.,2012)。
【0280】
SLC35B2は、急性炎症におけるシアリルスルホ-Lexグリカン生合成の誘導中の協調転写調節(Huopaniemi et al.,2004)と、ヒト結腸直腸がん細胞株内の6-スルホラクトサミンエピトープの硫酸化(Kamiyama et al.,2006)とに関与する。結腸直腸がん細胞株ならびにヒト結腸直腸組織は、SLC35B2を発現する(Kamiyama et al.,2011)。
【0281】
PLOD1発現は、ヒト乳がん進行に関連する(Gilkes et al.,2013)。
【0282】
PRDX5は、多数の悪性腫瘍で上方制御され、(Urig and Becker,2006)PRDX5の阻害は腫瘍の開始および進行を予防し得て、PRDX5ががん治療のための有望な標的であることが示唆される。その高度に求核性かつアクセスしやすいセレノシステイン活性部位が、薬物設計のための最重要標的であるかもしれない(Liu et al.,2012)。
【0283】
肺末梢部におけるPSMD8の発現増大は、どの重要な細胞集団が侵襲性がんの発症に関与するかについて、潜在的情報を提供してもよい(Zhou et al.,1996)。
【0284】
SNRPD1は、悪性腫瘍中で上方制御される、コアスプライセオソームタンパク質である。
【0285】
SPTBN1の発現低下は、膵臓がんにおける予後悪化に関連する(Jiang et al.,2010)。
【0286】
SQSTM1は、その調節不全が骨パジェット病および腫瘍形成に関連する、NF-κBシグナル伝達、アポトーシス、およびNrf2活性化などの様々なシグナルトランスダクション経路のためのシグナル伝達ハブとして機能する(Komatsu et al.,2012)。
【0287】
PCNA発現は、肛門直腸悪性黒色腫における生存期間を予測する(Ben-Izhak et al.,2002)。PCNA内では、多数のグルタミンおよびアスパラギン酸残基上でメチルエステル基の異常なパターンを含有する、PCNA(caPCNA)のがん関連イソ型が同定された(Hoelz et al.,2006)。
【0288】
いくつかの腫瘍細胞株におけるSRP54の枯渇は、SRP構成要素の安定な低下について選択された細胞内においてさえも、成長停止または死滅などの顕性細胞表現型を生じなかった(Ren et al.,2004)。
【0289】
分子レベルでは、STAT1は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21Cip1の発現を増大させ、またはc-myc発現を低下させるその能力を通じて、IFN-γで処置されたマウスおよびヒト腫瘍細胞の双方の増殖を阻害する(Ramana et al.,2000)。STAT1の抗腫瘍活性は、マウスモデルにおいて血管新生および腫瘍転移を阻害するその能力によって、さらに支持される(Huang et al.,2002)。STAT1 mRNAレベルの増大は、ホルモン受容体陰性および三種陰性乳がんがある患者の転移性転帰のより良い予測に関連する、分子シグネチャの一部であることが示された(Yau et al.,2010)。
【0290】
濾胞性新生物からの微細針吸引サンプルは、悪性根粒が、良性疾患と比較してSTT3Aを過剰発現することを実証した(Patel et al.,2011)。
【0291】
メタ分析は、STXBP4/COX11 rs6504950多形性が、乳がんリスクと有意に相関することを示した(Tang et al.,2012)。
【0292】
本明細書で示されるようなアミノ酸配列からなるまたは本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較した際に、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が実質的に変化したり悪影響を受けたりすることなく交換される、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸を有し得る(アンカーモチーフについては、下記を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチド中では、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が、非修飾ペプチドと比較して実質的に変化したり悪影響を受けることなく、1つまたは2つのアミノ酸が、それらの保存的交換パートナー(以下を参照されたい)で交換され得る。
【0293】
本発明は、以下に記載されるような修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0294】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な、すなわち、樹状細胞に結合する抗体などの抗体に(またはその配列中に)融合した、融合タンパク質の一部である。
【0295】
本発明は、本発明によるペプチドをコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0296】
本発明は、本発明による核酸を発現する能力がある、発現する、および/または提示する、発現ベクターにさらに関する。
【0297】
本発明は、医療で使用するための、本発明によるペプチド、本発明による核酸、または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0298】
本発明は、下でさらに詳しく説明される抗体と、それらを製造する方法とにさらに関する。好ましいのは、本発明のペプチドに対して、および/またはそれらのMHCとの結合時の本発明のペプチドに対して、特異的な抗体である。好ましい抗体は、モノクローナルであり得る。
【0299】
本発明は、T細胞受容体(TCR)、特に、本発明によるペプチドを標的化する可溶性TCR(sTCR)および/またはそれらのペプチド-MHC複合体、およびそれらを製造する方法にさらに関する。
【0300】
本発明は、本発明によるペプチドおよび/またはそれらのペプチド-MHC複合体を標的化する抗体またはその他の結合分子と、それらを製造する方法とにさらに関する。
【0301】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞が樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0302】
本発明は、アプタマーにさらに関する。アプタマー(例えば、国際公開第2014/191359号パンフレット、およびその中で引用される文献を参照されたい)は、短い一本鎖核酸またはペプチド分子であり、それは、所定の三次元構造に折り畳まれて、特異的標的構造体を認識し得る。それらは、標的療法を開発するための適切な代案のようであった。アプタマーは、高い親和性および特異性で、多様な複合体標的と選択的に結合することが示されている。
【0303】
細胞表面に位置する分子を認識するアプタマーは、過去10年内に同定されており、診断および治療的アプローチを開発する手段を提供する。アプタマーは、毒性および免疫原性がほぼ皆無であることが示されているので、それらは生物医学的用途のための有望な候補である。確かに、例えば、前立腺特異的膜抗原認識アプタマーなどのアプタマーは、標的療法のために成功裏に用いられており、異種移植片生体内モデルにおいて機能できることが示されている。さらに、特異的腫瘍細胞株を認識するアプタマーが同定されている。
【0304】
DNAアプタマーは、様々ながん細胞、特に固形腫瘍に由来するものに対して広域スペクトル認識特性を示す一方で、非腫瘍形成性(tumourgenic)および主要健常細胞は認識しないように、選択され得る。同定されたアプタマーが、特異的腫瘍サブタイプを認識するだけでなく、むしろ一連の腫瘍と相互作用する場合、これは、アプタマーをいわゆる広域スペクトル診断薬および治療薬として応用可能にする。
【0305】
さらに、フローサイトメトリーによる細胞結合挙動の研究は、アプタマーがナノモル濃度範囲で、非常に良好な見かけの親和性を現すことを示した。
【0306】
アプタマーは、診断および治療目的で有用である。さらに、アプタマーの一部は腫瘍細胞に取り込まれ、したがって腫瘍細胞内へのsiRNAなどの抗がん剤の標的化送達のための分子ビヒクルとして機能し得ることが示され得る。
【0307】
アプタマーは、細胞SELEX(試験管内進化法)技術を使用して、細胞および組織などの複合体標的に対して、そして本発明による配列番号1~配列番号300のいずれかに記載の配列を含んでなり好ましくはそれからなるペプチドと、MHC分子との複合体に対して、選択され得る。
【0308】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチド複合体)を有する、特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導し得る。別の実施形態では、キャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を介して、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらのフラグメント、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー(apatmers)、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0309】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0310】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。それぞれのポリペプチドスキャフォールドは、例えば、国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景技術セクション、およびその中で引用される参考文献に記載される。
【0311】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞および/またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0312】
本発明は、T細胞を、適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトクラスIまたはII MHC分子に、前記T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり、生体外で接触させるステップを含んでなる、活性化Tリンパ細胞を製造するインビトロ法にさらに関し、前記抗原は本発明による少なくとも1つのペプチドである。本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、抗原が、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に負荷される方法にさらに関する。
【0313】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号300、またはその変異アミノ酸配列を含有する前記ペプチドを発現する能力がある発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0314】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、それは、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0315】
本発明は、本発明によるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0316】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による活性化T細胞の、薬剤としてのまたは薬剤の製造における使用にさらに関する。
【0317】
本発明は、前記薬剤が、ワクチン、細胞、例えば、細胞株、sTCR、およびモノクローナル抗体などの細胞集団である、本発明による使用にさらに関する。
【0318】
本発明は、薬剤が、がんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0319】
本発明は、前記がん細胞がHCCの細胞である、本発明による使用にさらに関する。
【0320】
本発明は、HCCの診断および/または予後診断で使用され得る、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質および生物マーカーにさらに関する。
【0321】
さらに本発明は、がん治療のためのこれらの新規標的の使用に関する。
【0322】
さらに、本発明は、プレスクリーニング腫瘍関連ペプチドのデータベース(本明細書で「貯蔵庫」とも称される)を使用して、個々の患者のための個別化抗がんワクチンを製造する方法に関する。
【0323】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識される抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を利用して腫瘍成長に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0324】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊する能力がある。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10のアミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0325】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。ペプチドは、好ましくは9アミノ酸長であるが、8アミノ酸長程度に短く、10、11、12、または13程度に長くあり得て、MHCクラスIIペプチド(本発明のペプチドの伸長変異体)の場合、それらは14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長程度に長くあり得る。
【0326】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。ペプチドは生体内で塩ではないので、本発明によるペプチドの塩は、それらの生体内の状態がペプチドと実質的に異なることに留意すべきである。
【0327】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチドペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。オリゴペプチドの長さは、その中で正しいエピトープまたはエピトープが保持されれば、本発明には重要でない。オリゴペプチドは、典型的に、長さが約30アミノ酸残基未満であり、長さが約15アミノ酸を超える。
【0328】
「本発明のペプチド」という用語は、上で定義される、配列番号1~配列番号300に記載のペプチドからなる、またはそれを含んでなる、ペプチドを含むものとする。
【0329】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一続きのアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは、本発明には重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0330】
このような分子をコードする、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導する能力があれば「免疫原性」である(したがって本発明内における「免疫原」である)。本発明では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導する能力がある分子であり、本発明では、T細胞応答を誘導する能力がある分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるのに使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0331】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC受容体に結合する短いペプチドを要して、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC/ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子へのペプチド結合は、典型的に8~14アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0332】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A01、HLA-A02、およびHLA-B07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0333】
表6:HLA-A02およびHLA-A24の発現頻度F、および最も高頻度のHLA-DR血清型。頻度は、ハーディ・ワインベルグ式、F=1-(1-Gf)を用いて、Mori et al.(Mori M,et al.HLA gene and haplotype frequencies in the North American population:the National Marrow Donor Program Donor Registry.Transplantation.1997 Oct 15;64(7):1017-27)から適応された、米国人母集団内のハプロタイプ頻度Gfから推定される。連鎖不均衡のために、A02のまたはA24と特定のHLA-DR対立遺伝子との組み合わせは、それらの単一頻度から予測されるよりも、豊富でありまたは低頻度であるかもしれない。詳細については、Chanock et al.(S.J.Chanock,et al(2004)HLA-A,-B,-Cw,-DQA1 and DRB1 in an African American population from Bethesda,USA Human Immunology,65:1223-1235)を参照されたい。
【表6-1】
【表6-2】
【0334】
本発明のペプチドは、好ましくは、本明細書に記載される本発明のワクチンに包含される場合、A02またはA24に結合する。ワクチンはまた、汎結合MHCクラスIIペプチドを含んでもよい。したがって、本発明のワクチンを使用して、A02陽性、A24陽性のどちらかである、またはA02およびA24について陽性である患者において、がんが治療され得る一方で、これらのペプチドの汎結合特性のために、MHCクラスIIアロタイプを選択する必要はない。
【0335】
例えば、A02およびA24ペプチドを1つのワクチンに組み合わせることは、MHCクラスI対立遺伝子のどちらかのみに対処するのと比較して、より高い百分率の任意の患者集団が治療され得る利点を有する。ほとんどの集団では、患者の50%未満が対立遺伝子のどちらかのみで対処される一方で、本発明のワクチンは、任意の関連集団において、少なくとも60%の患者を治療し得る。具体的には、様々な地域において、以下の百分率の患者が、これらの対立遺伝子の少なくとも1つについて陽性である:USA61%、西ヨーロッパ62%、中国75%、韓国77%、日本86%(www.allelefrequencies.netから算定された)。
【0336】
本明細書の用法では、DNA配列への言及は、一本鎖および二本鎖DNAの双方を含む。したがって、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその補体との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の補体を指す。「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の天然発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0337】
コード領域は、非変異型(「正常」)、変異型または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来する。
【0338】
好ましい実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0339】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNA断片は、cDNAフラグメントおよび短いオリゴヌクレオチドリンカーから構築され、または一続きのオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる合成遺伝子を提供する。
【0340】
本明細書の用法では「ペプチドコーディング(またはコードする)ヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの製造に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0341】
「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に由来してしたがって同一アミノ酸をコードする核酸配列をコードする任意の同等物の、天然翻訳産物であるポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0342】
コード配列に言及する場合、「フラグメント」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0343】
「DNA断片」という用語は、別々のフラグメントの形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内在性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用する標準生化学的方法によって、断片およびその構成ヌクレオチド配列を同定、操作、および回収できるようにする量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このような断片は、読み取り枠の形態で提供され、それは、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって、中断されていない。非翻訳DNA配列は、読み取り枠下流に存在してもよく、それはそこでコード領域の操作または発現を妨げない。
【0344】
「プライマー」という用語は、短い核酸配列を意味し、それはDNAの1本鎖と対合し得て、DNAポリメラーゼがそこでデオキシリボヌクレオチド鎖合成を開始する、遊離3’-OH末端を提供する。
【0345】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0346】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えば、それが天然起源であれば天然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同一ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得ておよび/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり得て、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないと言う意味で、なおも単離されている。
【0347】
本発明によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく;むしろ、それは相対的定義であることが意図され、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁への、出発原料または天然物質の精製が、明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが、明示的に検討される。
【0348】
本発明によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「富化形態」であってもよい。本明細書の用法では、「富化」という用語は、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍の物質濃度を意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化調製物もまた、検討される。本発明を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。
【0349】
「活性フラグメント」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター内で、例えば、ウサギまたはマウスのようなそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与すると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列であるフラグメントを意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物内でT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性フラグメント」はまた、生体外T細胞応答を誘導するのに使用されてもよい。
【0350】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「断片」、および「フラグメント」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列は、より大型の配列のサブセットを形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されるのであれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、断片またはフラグメントに相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、エンドヌクレアーゼのいずれかによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0351】
本発明によると、配列に言及する場合、「パーセント相同性」、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる、参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が、差異を構成して、
(iiii)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じるあらゆるギャップも塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0352】
比較配列とそれに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同一のまたはそれ以上のアライメントが存在すれば、その中に上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0353】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドは、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、アミノ酸鎖の末端に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物の間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0354】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0355】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するがサイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。高度に非保存的な置換は、酸性アミノ酸による極性アミノ酸の置換、または塩基性でさえあるアミノ酸の置換を伴うかもしれない。しかし化学効果は完全に予測可能でなく、遊離基置換は単純な化学的原理からは予測できない偶然の効果をもたらす可能性があるので、このような「過激な」置換でも、潜在的に無効であるとして却下し得ない。
【0356】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本発明の抗原性ペプチドに通常見られるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに非標準R基(すなわち、天然タンパク質の通常の20個のアミノ酸に見られる以外のR基)を保持するアミノ酸もまた置換目的で使用されて、本発明による免疫原および免疫原性ポリペプチドが製造されてもよい。
【0357】
2つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等またはそれ以上の抗原活性のあるペプチドをもたらすことが発見された場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。最大で、ペプチド内の4つ以下の位置が同時に置換される。
【0358】
本発明のペプチドは、最大4個のアミノ酸によって伸長させ得て、すなわち4:0~0:4の間のあらゆる組み合わせで、どちらかの末端に1、2、3または4個のアミノ酸が付加され得る。
【0359】
本発明による伸長の組み合わせは、表7から示され得る。
【表7】
【0360】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0361】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI拘束性CTLでは、エフェクター機能は、ペプチドパルス、ペプチド前駆体パルスまたは天然ペプチド提示標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0362】
好ましくは、本発明によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増大の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0363】
したがって本発明のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0364】
MHCクラスI分子は、主に内在性の細胞質または核タンパク質、DRIPS、およびより大型のペプチドのタンパク質分解的切断から得られる、ペプチドを提示する、核を有する大多数の細胞上に見られる。しかし、エンドソーム区画または外来性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見られる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される。
【0365】
CD8およびCD4依存性のどちらのタイプの応答も、共同して相乗的に抗腫瘍効果に寄与するので、CD8陽性T細胞(MHCクラスI分子)またはCD4陽性T細胞(MHCクラスII分子)のどちらかによって認識される腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発において重要である。したがってどちらかのクラスのMHC複合体へのペプチド結合を含有するペプチド組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0366】
がん治療に関連する重篤な副作用および費用を考慮すると、より良い予後診断法および診断法がぜひとも必要である。したがってがん全般、特にHCCのための生物マーカーに相当するその他の要素を同定する必要性がある。さらにがん全般、特にHCCの治療法で使用され得る要素を同定する必要性がある。
【0367】
本発明は、本発明のペプチドを過剰にまたは排他的に提示する、好ましくはCLLである、がん/腫瘍を治療するのに有用なペプチドを提供する。これらのペプチドは、原発性ヒトHCCサンプル上で、HLA分子によって天然に提示されることが、質量分析法によって示された。
【0368】
それにペプチドが由来する起源遺伝子/タンパク質(「完全長タンパク質」または「基礎タンパク質」とも称される)は、正常組織と比較してがんで高度に過剰発現されることが示されて、起源遺伝子の高度な腫瘍関連性が実証され、「正常組織」は、本発明との関連で、健康な肝細胞またはその他の正常組織細胞のどちらかを意味するものとする(実施例2を参照されたい)。さらに、ペプチドそれ自体が、腫瘍組織上で強力に過剰提示され、「腫瘍組織」は、本発明との関連で、HCCに罹患しているに患者由来するが、正常組織でないサンプルを意味するものとする(実施例1を参照されたい)。
【0369】
HLA結合ペプチドは、免疫系、具体的にはTリンパ球によって、認識され得る。T細胞は、例えば、誘導ペプチドを提示するHCC細胞などの、認識されたHLA/ペプチド複合体を提示する細胞を破壊し得る。
【0370】
本発明のペプチドは、T細胞応答を刺激する能力があり、および/または過剰提示されることが示されており、したがって抗体および/またはTCR、特に本発明によるTCR製造のために使用され得る(実施例3を参照されたい)。さらに、ペプチドは、それぞれのMHCと複合体化した場合、同様に、抗体および/またはTCR、特に本発明によるTCR製造のために利用され得る。それぞれの方法は、当業者に良く知られており、それぞれの参考文献にもまた見られる。したがって本発明のペプチドは、それによって腫瘍細胞を破壊し得る、患者における免疫応答を生じさせるのに有用である。患者における免疫応答は、理想的には免疫原性を増強する薬剤(すなわちアジュバント)との組み合わせで、記載されるペプチド、または適切な前駆体(例えば、伸長ペプチド、タンパク質、またはそれらのペプチドをコードする核酸)を患者に直接投与することで、誘導され得る。本発明の標的ペプチドは、正常組織上では同等のコピー数で提示されないので、このような治療的ワクチン接種から生じる免疫応答は、腫瘍細胞に対して高度に特異的であることが予測され得て、患者の正常細胞に対する望まれない自己免疫反応のリスクを防止する。
【0371】
好ましくは「医薬組成物」は、好ましくは医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0372】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドを含んでなる。(上記もまた参照されたい)。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性または塩基性塩を作成することで修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応を伴って、(典型的に、その中で薬剤の中性形態が中性NH2基を有する)遊離塩基から調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を用いて調製される。
【0373】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩として、ペプチドを含んでなる。
【0374】
特に好ましいのは、組成物および/また前記組成物の使用であり、組成物は、例えば、ワクチンの形態であり、配列番号1、2、7、225、228、301、303、および312に記載の配列を有するペプチド、または配列番号1、2、7、225、228、301、303、および312に記載の配列を有するペプチドに反応性のスキャフォールド、およびそれらとMHC分子との複合体を含んでなる。
【0375】
がんを治療するために有用であることに加えて、本発明のペプチドは、診断薬としてもまた有用である。ペプチドはHCCから生成されたので、そしてこれらのペプチドは正常組織には存在せずまたはより低レベルで存在すると判定されたので、これらのペプチドを利用してがんの存在を診断し得る。
【0376】
特許請求されるペプチドの血液サンプル中の組織生検上の存在は、がん診断において病理学者を補佐し得る。抗体、質量分析法またはその他の当該技術分野で公知の方法の手段による特定のペプチドの検出は、組織サンプルが悪性または炎症性または概して病的であることを病理学者に告げ得て、またはHCCの生物マーカーとして利用され得る。ペプチド基の存在は、病的組織の分類または下位分類を可能にし得る。
【0377】
患部組織検体上のペプチドの検出は、特にTリンパ球が作用機序に関与することが知られておりまたは予測される場合に、免疫系が関与する治療法の利点を判定できるようにする。MHC発現の喪失は、それによって感染悪性細胞が免疫監視を逃れる、十分に説明された機序である。したがってペプチドの存在は、この機序が、分析した細胞によって活用されていないことを示す。
【0378】
本発明のペプチドは、ペプチドまたはMHC分子と複合体化したペプチドに対するT細胞応答または抗体応答などの、これらのペプチドに対するリンパ球応答を分析するのに使用されるかもしれない。これらのリンパ球応答は、さらなる治療ステップを決定するための予後マーカーとして使用され得る。これらの応答はまた、例えば、タンパク質、核酸、自己材料のワクチン接種や、リンパ球の養子免疫伝達などの異なる手段によるリンパ球応答の誘導を目指す、免疫療法アプローチにおける代理マーカーとして使用され得る。遺伝子治療の設定では、副作用の評価において、ペプチドに対するリンパ球応答が考慮され得る。リンパ球応答のモニタリングはまた、例えば移植片対宿主病および宿主対移植片病の検出など、移植治療の経過観察検査のための有益な手段かもしれない。
【0379】
本発明のペプチドを使用して、MHC/ペプチド複合体に対する特異的抗体が作成され開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織のサイズと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0380】
したがってHLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、組換え抗体を製造する方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる、遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から、mRNA分子を単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示するファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;前記ファージディスプレイライブラリーから、少なくとも1つのファージを単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0381】
HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する抗体を提供することも、本発明のさらなる態様であり、その中で抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である。
【0382】
本発明のさらに別の態様は、HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を製造する方法に関し、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる、遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から、mRNA分子を単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示するファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;前記ファージディスプレイライブラリーから、少なくとも1つのファージを単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合可能な前記抗体を提示する。このような抗体および一本鎖クラスI主要組織適合性複合体を製造するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を製造するためのその他のツールは、本発明の目的で、全てその内容全体を参照によって明示的に援用する、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、およびCohen CJ,et al.Recombinant antibodies with MHC-restricted,peptide-specific,T-cell receptor-like specificity:new tools to study antigen presentation and TCR-peptide-MHC interactions.J Mol Recognit.2003 Sep-Oct;16(5):324-32.;Denkberg G,et al.Selective targeting of melanoma and APCs using a recombinant antibody with TCR-like specificity directed toward a melanoma differentiation antigen.J Immunol.2003 Sep 1;171(5):2197-207;およびCohen CJ,et al.Direct phenotypic analysis of human MHC class I antigen presentation:visualization,quantitation,and in situ detection of human viral epitopes using peptide-specific,MHC-restricted human recombinant antibodies.J Immunol.2003 Apr 15;170(8):4349-61で開示される。
【0383】
好ましくは、抗体は、20ナノモル濃度未満、好ましくは10ナノモル濃度未満の結合親和性で複合体に結合し、それは本発明の文脈で「特異的」と見なされる。
【0384】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を製造する方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから製造され得て、それらの親和性は、相補性決定領域を標的とする変異誘発によって増大され得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(米国特許第2010/0113300号明細書、Liddy N,et al.Monoclonal TCR-redirected tumor cell killing.Nat Med 2012 Jun;18(6):980-987)。ファージディスプレイにおいて、および薬剤としての実用において、T細胞受容体を安定化する目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αとβ鎖が連結され得る(Boulter JM,et al.Stable,soluble T-cell receptor molecules for crystallization and therapeutics.Protein Eng 2003 Sep;16(9):707-711.;Card KF,et al.A soluble single-chain T-cell receptor IL-2 fusion protein retains MHC-restricted peptide specificity and IL-2 bioactivity.Cancer Immunol Immunother 2004 Apr;53(4):345-357;およびWillcox BE,et al.Production of soluble alphabeta T-cell receptor heterodimers suitable for biophysical analysis of ligand binding.Protein Sci 1999 Nov;8(11):2418-2423)を参照されたいT細胞受容体は、標的細胞に対して特定の機能を果たすために、毒素、薬物、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、抗CD3ドメインなどのエフェクター細胞を動員するドメインと連結し得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞内で発現させ得る。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットにある。TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載される。さらなる製造法は、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0385】
さらに本発明のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断が確認され得る。
【0386】
過剰提示ペプチドを選択するために、中央値サンプル提示ならびに反復試験変動を示す、提示プロファイルが計算される。プロファイルは、関心のある腫瘍実体のサンプルを正常なサンプルのベースラインに並置させる。次に、線形混合効果モデルのp値を計算することで、これらの各プロファイルは過剰提示スコアに統合され得る(J.Pinheiro,et al.The nlme Package:Linear and Nonlinear Mixed Effects Models.2007)adjusting for multiple testing by False Discovery Rate(Y.Benjamini and Y.Hochberg.Controlling the False Discovery Rate:A Practical and Powerful Approach to Multiple Testing.Journal of the Royal Statistical Society.Series B(Methodological),Vol.57(No.1):289-300,1995)。
【0387】
質量分析法によるHLAリガンドの同定と相対的定量化のために、衝撃凍結サンプルからのHLA分子が精製されて、HLA関連ペプチドが単離された。単離ペプチドが分離され、オンラインナノエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験によって配列が同定された。得られたペプチド配列は、HCCサンプル(N=16個のA02陽性サンプル、13個のA02:01陽性サンプルを含む、N=15個のA24陽性サンプル)から記録された天然TUMAPの断片化パターンと同一配列の対応する合成標準ペプチドの断片化パターンとの比較によって確認された。ペプチドは、原発性腫瘍のHLA分子のリガンドとして直接、同定されたので、これらの結果は、31人のHCC患者から入手された原発性がん組織上における、同定されたペプチドの天然プロセッシングおよび提示の直接的証拠を提供する。
【0388】
発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.1(例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第2013-0096016号明細書を参照されたい)は、いくつかの異なる非がん性組織および臓器と比較した、がん組織上のHLA拘束性ペプチドレベルの直接的相対定量化に基づく、妥当な過剰提示ペプチドワクチン候補の同定と選択を可能にする。これは、有標データ解析パイプラインによる獲得LC-MSデータ処理、配列同定のためのアルゴリズム組み合わせ、スペクトルクラスタリング、イオン計数、滞留時間アライメント、電荷状態のデコンボリューションと正規化を使用した、無標識示差定量化の開発によって、達成された。
【0389】
各ペプチドおよびサンプルの誤差推定値を含む、提示レベルが確立された。非がん性の組織および臓器との比較で、腫瘍組織上で排他的に提示されるペプチド、および腫瘍内で過剰提示されるペプチドが、同定された。
【0390】
HCC組織サンプルからのHLAペプチド複合体は精製されてHLA結合ペプチドが単離され、LC-MSによって分析された(実施例を参照されたい)。本出願に含まれる全てのTUMAPは、このアプローチによって原発性HCCサンプル上で同定され、原発性HCC上におけるそれらの提示が確認された。
【0391】
複数のHCC腫瘍および正常組織上で同定されたTUMAPは、無標識LC-MSデータのイオン計数を使用して定量化された。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量に相関すると仮定する。様々なLC-MS実験におけるペプチドの全ての定量的シグナルは、中心傾向に基づいて正規化され、サンプル毎に平均化されて、提示プロファイルと称される棒グラフにマージされた。提示プロファイルは、タンパク質データベース検索、スペクトルクラスタリング、電荷状態デコンボリューション(除電)、および滞留時間アライメントおよび正規化のような、異なる解析法を統合する。
【0392】
本発明は、配列番号1~配列番号300からなる群から選択される配列、または配列番号1~配列番号300と少なくとも90%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチド、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異体に関し、前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0393】
本発明は、配列番号1~配列番号300からなる群から選択される配列、または、配列番号1~配列番号300と少なくとも90%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたは変異体は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0394】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0395】
本発明は、ペプチドが、配列番号1~配列番号300に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0396】
本発明は、ペプチドが(化学的に)修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0397】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなり、またはペプチドは、例えば樹状細胞特異的抗体などの抗体に(またその中に)融合する。
【0398】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関するが、ただしペプチドは完全(完全長)ヒトタンパク質でない。
【0399】
本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0400】
本発明は、本発明による核酸を発現する能力がある、発現ベクターにさらに関する。
【0401】
本発明は、医療、特にHCCの治療で利用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0402】
本発明は、本発明による核酸または本発明による発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0403】
本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0404】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはIIMHC分子上に、抗原が負荷される(where-in)、本発明による方法にさらに関する。
【0405】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号300、または前記異アミノ酸配列を含有する前記ペプチドを発現する能力がある発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0406】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による(ac-cording)核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における、使用にさらに関する。本発明は、薬剤が、がんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0407】
本発明は、薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0408】
本発明は、前記がん細胞が、HCC細胞であり、または膵臓がん、脳腫瘍、腎がん、結腸または直腸がん、または白血病などのその他の固形または血液学的腫瘍細胞である、本発明による使用にさらに関する。
【0409】
本発明は、HCCの診断および/または予後診断で使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質および生物マーカーにさらに関する。本発明はまた、がん治療のためのこれらの新規標的の使用に関する。
【0410】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。無処理または「完全」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、本発明による所望の特性(例えば、HCCマーカーポリペプチドの特異的結合、がんマーカー遺伝子を増大レベルで発現するHCC細胞への毒素の送達、および/またはHCCマーカーポリペプチドの活性阻害)のいずれかを示しさえすれば、フラグメント(例えば、CDRs、Fv、Fab、およびFcフラグメント)、またはこれらの免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子ヒト化バージョンのポリマーもまた含まれる。
【0411】

可能な場合は常に、本発明の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本発明の抗体は、周知の方法を使用して製造されてもよい。当業者は、本発明の抗体を製造するために、完全長CLLマーカーポリペプチドまたはそのフラグメントのどちらを使用してもよいことを理解するであろう。本発明の抗体を製造するために使用されるポリペプチドは、天然起源から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して製造されてもよい。
【0412】
例えば、配列番号1~配列番号300ポリペプチド(SEQ ID NO:1 to SEQ ID NO:300 polypeptide)に記載のペプチドなどの本発明によるペプチド、またはその変異体またはフラグメントをコードするcDNAは、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞)で発現され得て、その後、組換えタンパク質が精製され使用されて、本発明による抗体を製造するのに使用されるHCCマーカーポリペプチドと特異的に結合する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体製品が製造され得る。
【0413】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの生成が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性がある抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、それに対して抗体が使用される目的に従って、公知の方法によって、それらの所望の活性について試験される(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、免疫療法など;抗体の生成と試験のさらなるガイダンスについては、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988,new 2nd edition 2013)を参照されたい例えば、抗体は、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット、ホルマリン固定がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色において試験してもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0414】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体集団から入手される抗体を指し;すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、微量で存在してもよい可能な自然発生的変異を除いて同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントを明確に含み、その中では、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方で、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である(その内容全体を本明細書に援用する、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0415】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法では、マウスまたはその他の適切な宿主動物を免疫剤によって典型的に免疫化して、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0416】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなどの組換えDNA法によって製造されてもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブを使用して)。
【0417】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体フラグメント、特にFabフラグメントを生成するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載される。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位があるFabフラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りのFcフラグメントとを典型的に生成する。ペプシン処理は、F(ab’)2フラグメントおよびpFc’フラグメントをもたらす。
【0418】
抗体フラグメントは、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、フラグメントの活性が非修飾抗体または抗体フラグメントと比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合能力のあるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれにしても、抗体フラグメントは、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現と、発現したポリペプチドの試験によって同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体フラグメントをエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0419】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見られない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中では、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域である、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0420】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多く、それは典型的に「移入」可変領域から得られる。ヒト化は、齧歯類CDR群またはCDR配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、その中では、実質的に非損傷ヒト可変領域未満が、非ヒト生物種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中では、いくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位に由来する残基によって置換されている。
【0421】
免疫化されると、内在性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生できる、遺伝子組換え動物(例えばマウス)が用いられ得る。例えば、キメラおよび生殖細胞変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞変異マウスにおけるヒト生殖細胞免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー中でも生成され得る。
【0422】
本発明の抗体は、好ましくは薬学的に許容可能な担体中で、対象に投与される。典型的に、製剤を等張にするために、製剤中で適当量の薬理的に許容可能な塩が使用される。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路および濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0423】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0424】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような測定の実施は、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与すべき抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日あたり約1(μg/kg~最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。好ましくはHCCを治療するための抗体投与に続いて、治療用抗体の効力は、熟練した実務家に良く知られている様々な方法で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象中のがんのサイズ、数、および/または分布をモニターしてもよい。抗体投与不在下で起こる疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発症を予防する、治療的に投与された抗体は、がん治療のための有効な抗体である。
【0425】
発明の上記の表で言及されるペプチド、ひいてはそれらの基礎ポリペプチドは、HCCで高度に発現され、正常細胞では、かなり低レベルから極めて低いレベル発現されるので、以下の遺伝子のタンパク質産物からなる群から選択されるタンパク質の阻害、およびこれらのマーカーの発現または活性は、好ましくは、例えば、HCCを治療または予防するための治療ストラテジーに組み込まれてもよい。阻害のために、およびそれに対する抗体および/またはTCRのために好ましい、GLUL、GPAM、PLIN2、SLC16A1、SLC9A3R1、PCBD1、SEC16A、AKR1C4、ABCB11、HAL、CYP2E1、C4A、C4B、ALDH1L1、CRP、ACSL4、EEF2、HLTF、FBXO22、GALK1、TMCO1、TMEM33、ZNF318、IPO9、AMACR、C1QTNF3、CYP4F8、CYP4F3、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、MOCOS、A1CF、COL18A1、HPR、LBP、C19orf80、CFHR5、ITIH4、TMEM110、LARP4、LMF2、SLC10A5、およびSLC16A11;阻害のために、およびそれに対する抗体および/またはTCRのためになおも好ましい、ANKFY1、C12orf44、C16orf58、CPSF1、DCAF8、PEX19、DDX11、DDX12P、DECR2、NME4、DENND5B、DYM、EDC4、ERI3、FAM20A、FNDC3A,GPR107、GYG2、HEATR2、IFT81、KCTD3,SHKBP1、KIAA1324L、KLHL24、MARCH6、MBTPS2、MIR1279、CPSF6、NOC4L、NXF1、PANK2、PCNXL3、PIPSL、PSMD4、PSMD14、SLC35B1、TCP11L2、THNSL2、THOC2、TOMM5、TRAPPC6B、TRIM54、TRIM55、TRIM63、UGGT2、URB1、VPS54、WIZ、ZNF451、RFTN2、SCFD1、SERINC5、CCT7P2、CMAS、ANKS1A、C17orf70、CCT7、CDK5RAP2、CLPTM1、阻害のために、およびそれに対する抗体および/またはTCRのために最も好ましい、APOB、FASN、および/またはCOPA。
【0426】
アンチセンス療法の原理は、(転写または翻訳を介した)遺伝子発現の配列特異的抑制が、ゲノムDNAまたはmRNAと相補的アンチセンス種との間の細胞内部ハイブリダイゼーションによって達成されてもよいという仮説に基づく。このようなハイブリッド核酸二本鎖の形成は、標的腫瘍抗原エンコードゲノムDNAの転写、または標的腫瘍抗原mRNAのプロセッシング/輸送/翻訳および/または安定性を妨害する。
【0427】
アンチセンス核酸は、多様なアプローチによって送達され得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスRNAは、腫瘍細胞への取り込みを可能にする形態で、(例えば、静脈注射によって)対象に直接投与され得る。代案としては、アンチセンスRNA(またはRNAフラグメント)をコードする、ウイルスまたはプラスミドベクターが、生体内で細胞に導入され得る。アンチセンス効果はまた、センス配列によって誘導され得る;しかし表現型変化の程度は、極めて変わりやすい。効果的なアンチセンス療法によって誘導される表現型変化は、例えば、標的mRNAレベル、標的タンパク質レベル、および/または標的タンパク質活性レベルの変化によって評価される。
【0428】
具体例では、アンチセンス遺伝子治療によるHCCを標的化/マーカー機能の阻害は、アンチセンス腫瘍マーカーRNAの対象への直接投与によって達成されてもよい。アンチセンス腫瘍マーカーRNAは、任意の標準的な技術によって製造され単離されてもよいが、高効率プロモーター(例えば、T7プロモーター)の制御下にあるアンチセンス腫瘍マーカーcDNAを使用する生体外転写によって、最も容易に製造される。アンチセンス腫瘍マーカーRNAの細胞への投与は、下に記載される直接的な核酸投与法のいずれかによって実施され得る。
【0429】
上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質、最も好ましくはAPOB、FASN、および/またはCOPAの機能を阻害するための代案のストラテジーは、核酸(例えば、がん細胞またはその他の細胞に移入されて、細胞内抗体発現および分泌をもたらし得る、siRNA、またはまたは抗タンパク質抗体またはその一部をコードする核酸)タンパク質または小分子、またはこのタンパク質の発現、翻訳、および/または生物学的機能を標的化する任意のその他の化合物の使用を伴う。
【0430】
対象細胞への外来性DNA投与と取り込み(すなわち、遺伝子変換または形質移入)を含む上述の方法では、本発明の核酸は裸のDNAの形態であり得て、または核酸はHCCマーカータンパク質発現を阻害するために、核酸を細胞に送達するベクター内にあり得る。ベクターは、アデノウイルスベクター(Quantum Biotechnologies,Inc.(Laval,Quebec,Canada)などの市販の調製物であり得る。核酸またはベクターの細胞への送達は、多様な機構を介し得る。一実施例として、送達はリポソームを介し得て、リポフェクチン、リポフェクタミン(GIBCO-25 BRL,Inc.,Gaithersburg,Md.),SUPERFECT(Qiagen,Inc.Hilden,Germany)、およびTRANSFECTAM(Promega Biotec,Inc.,Madison,Wis.US)などの市販のリポソーム調製物、ならびに当該技術分野で標準的な手順に従って開発されたその他のリポソームが使用される。さらに、本発明の核酸またはベクターは、その技術がGenetronics,Inc.(San Diego,US.)から入手できる電気穿孔によって、ならびにSonoporation装置(ImaRx Pharmaceutical Corp.,Tucson,Arizona,US)の手段によって、生体内に送達され得る。一実施例として、ベクター送達は、組換えレトロウイルスゲノムをパッケージし得るレトロウイルスベクター系などのウイルス系を介し得る。次に組換えレトロウイルスを使用して細胞を感染させ、それによって感染細胞に、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質発現を阻害するアンチセンス核酸が送達され得る。改変核酸を哺乳類細胞に導入する正確な方法は、もちろん、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス性(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、偽型レトロウイルスベクターの使用をはじめとするその他の技術が、この手順のために一般的に利用可能である。リポソーム送達および受容体媒介およびその他のエンドサイトーシス機構などの物理的形質導入技術もまた、使用され得る。本発明は、これらのまたはその他の一般に使用される遺伝子導入方法のいずれかと併用され得る。
【0431】
抗体はまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、免疫シンチグラフィー(immunoscintiography)を使用して腫瘍が位置確認され得るように、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらのフラグメントは、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、親和性(Kd)は1×10μM未満である。
【0432】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオジン、およびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウム、およびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18、およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価で、列挙される方法の1つ以上によって検出可能であってもよい。これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に技術分野で十分承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【0433】
したがって上述したように、本発明は、配列番号1~配列番号300からなる群から選択される配列、または配列番号1~配列番号300と90%相同的であるその変異体、またはT細胞と前記ペプチドとの交差反応を誘導するその変異体を含んでなる、ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子または前記ペプチドの伸長バージョンをクラスIIに結合する能力を有する。
【0434】
本発明では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度(上の同一性百分率を参照されたい)を指す。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他の分析ツールが、公共データベースによって提供される。
【0435】
当業者は、特定のペプチドの変異型によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(Fong L,et al.Altered peptide ligand vaccination with Flt3 ligand expanded dendritic cells for tumor immunotherapy.Proc Natl Acad Sci USA.2001 Jul 17;98(15):8809-14;Zaremba S,et al.Identification of an enhancer agonist cytotoxic T lymphocyte peptide from human carcinoembryonic antigen.Cancer Res.1997 Oct 15;57(20):4570-7;Colombetti S,et al.Impact of orthologous melan-A peptide immunizations on the anti-self melan-A/HLA-A2 T cell cross-reactivity.J Immunol.2006 Jun 1;176(11):6560-7;Appay V,et al.Decreased specific CD8+ T cell cross-reactivity of antigen recognition following vaccination with Melan-A peptide.Eur J Immunol.2006 Jul;36(7):1805-14)。
【0436】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1~配列番号300からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様に、HLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で、置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が変化することを意味する。例えばペプチドは、それがHLA-A02または-DRなどの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、そのようにしてそれは、活性化CTLのTCRに結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。
【0437】
これらのT細胞は、引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義される同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。学術文献(Godkin A,et al.Use of eluted peptide sequence data to identify the binding characteristics of peptides to the insulin-dependent diabetes susceptibility allele HLA-DQ8(DQ 3.2).Int Immunol.1997 Jun;9(6):905-11)、およびデータベース(Rammensee H.et al.SYFPEITHI:database for MHC ligands and peptide motifs.Immunogenetics.1999 Nov;50(3-4):213-9)から誘導され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的に、アンカー残基であり、結合溝を構成するポリペプチド鎖の極性、電気物理的、疎水性、および空間特性によって画定されるHLA受容体の結合モチーフと適合する、コア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1~配列番号300に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異株がMHCクラスIまたはII分子に結合する能力を維持するかどうかを決定できるであろう。本発明の変異型は、活性化T細胞のTCRに結合する能力を維持して、それは引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義されるような同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。
【0438】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、別のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異体を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0439】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、別のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異体を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0440】
表8A:配列番号1、117、および246に記載のペプチドの変異体およびモチーフ:
【表8A-1】
【表8A-2】
【表8A-3】
【0441】
より長いペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は8~11アミノ酸長であるが、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質から、ペプチドプロセッシングによって生成することも可能である。実際のエピトープ側面に位置する残基は、プロセッシング中に実際のエピトープを曝露させるのに必要なタンパク質分解切断に、実質的に影響を及ぼさない残基であることが好ましい。
【0442】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14、すなわち8、9、10、11、12、13、14アミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合は、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。
【0443】
もちろん、本発明によるペプチドまたは変異型は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する。ペプチドまたは変異体のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0444】
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号に1~配列番号300に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0445】
「から本質的になる」は、本発明によるペプチドが、配列番号1~配列番号300のいずれかに記載の配列またはその変異体に加えて、MHC分子エピトープのエピトープとして機能するペプチドの一部を必ずしも構成しない、追加的なNおよび/またはC末端に位置するアミノ酸のひと配列を含有することを意味するものとする。
【0446】
それでもなお、これらの配列は、本発明によるペプチドの細胞への効率的な導入を提供する上で重要であり得る。本発明の一実施形態では、ペプチドは、例えば、NCBI、GenBank受入番号X00497に由来する、HLA-DR抗原関連不変鎖の80個のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質の一部である(p33、以下の「Ii」)。その他の融合物中では、本発明のペプチドは、本明細書に記載されるような抗体、またはその機能的部分に、特に抗体の配列中に、前記抗体によって特異的に標的化されるように融合し得て、または例えば、本明細書に記載されるような樹状細胞に対して特異的な抗体に、またはその中に融合し得る。
【0447】
さらにペプチドまたは変異型は、より強力な免疫応答を引き起こすために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するようにさらに修飾されてもよい。ペプチド配列のこのような最適化方法は当該技術分野で周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入が挙げられる。
【0448】
逆ペプチド結合中では、アミノ酸残基はペプチド(-CO-NH-)結合によって連結せず、ペプチド結合が逆転する。このようなレトロインベルソペプチド模倣剤は、例えば参照により本明細書に援用される、Meziere et al(1997)J.Immunol.159,3230-3237に記載されるものなどの、当該技術分野で公知の方法を使用して製造されてもよい。このアプローチは、側鎖の方向でなく骨格に関与する変化を含有する、擬ペプチド生成に関与する。Meziere et al(1997)は、MHC結合およびTヘルパー細胞応答のために、これらの擬ペプチドが有用であることを示す。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロ-インバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかにより高い耐性がある。
【0449】
非ペプチド結合は、例えば、-CH-NH、-CHS-、-CHCH-、-CH=CH-、-COCH-、-CH(OH)CH-、および-CHSO-である。米国特許第4,897,445号明細書は、標準手順によって合成されるポリペプチド、およびNaCNBHの存在下でアミノアルデヒドとアミノ酸を反応させることで合成される非ペプチド結合が関与する、ポリペプチド鎖中で非ペプチド結合(-CH-NH)を固相合成する方法を提供する。
【0450】
上述の配列を含んでなるペプチドは、それらのアミノおよび/またはカルボキシ末端に存在する追加的な化学基と共に合成されて、ペプチドの安定性、生物学的利用能、および/または親和性が向上されてもよい。例えば、カルボベンゾキシル、ダンシル、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水性基が、ペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシカルボニル基が、ペプチドのアミノ末端に配置されてもよい。さらに、疎水性基、t-ブチルオキシカルボニル、またはアミド基が、ペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。
【0451】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を改変させるように合成されてもよい。例えば、通常のL異性体でなく、ペプチドのアミノ酸残基の1つまたは複数のD異性体が使用されてもよい。なおもさらに、本発明のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つは、良く知られている非天然起源アミノ酸残基の1つで置換されてもよい。これらのような変化は、本発明のペプチドの安定性、生物学的利用能および/または結合作用の増大に役立ってもよい。
【0452】
同様に、本発明のペプチドまたは変異体は、ペプチド合成の前または後のどちらかに、特異的アミノ酸を反応させることで、化学的に修飾されてもよい。このような修飾の例は、当該技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に援用される、R.Lundblad,Chemical Reagents for Protein Modification,3rd ed.CRC Press,2005に要約される。アミノ酸の化学修飾としては、これに限定されるものではないが(although without limitation thereto)、アシル化、アミジン化、リジンのピリドキシル化、還元アルキル化、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、システインのシステイン酸への過ギ酸酸化によるカルボキシル基のアミド修飾およびスルフヒドリル修飾、水銀誘導体形成、その他のチオール化合物との混合ジスルフィド形成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化による修飾が挙げられるが、これに限定されるものではない(but is not limited to)。この点において、当業者は、タンパク質の化学修飾に関するより詳細な手順について、Chapter 15 of Current Protocols In Protein Science,Eds.Coligan et al.(John Wiley and Sons NY 1995-2000)を参照されたい。
【0453】
簡単に述べると、例えばタンパク質中のアルギニル残基の修飾は、付加体を形成するためのフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンなどの、隣接するジカルボニル化合物の反応に基づくことが多い。別の例は、メチルグリオキサールとアルギニン残基の反応である。システインは、リジンおよびヒスチジンなどのその他の求核性部位の同時の修飾なしに、修飾され得る。その結果、多数の試薬がシステイン修飾のために利用可能である。Sigma-Aldrichなどの会社のウェブサイト(http://www.sigma-aldrich.com)が、特定の試薬に関する情報を提供する。
【0454】
タンパク質中のジスルフィド結合の選択的還元もまた、一般的である。ジスルフィド結合は、生物医薬品の加熱処理中に形成されて酸化され得る。ウッドワード試薬Kを使用して、特定のグルタミン酸残基が修飾されてもよい。N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミドを使用して、リジン残基とグルタミン酸残基の間に分子内架橋が形成され得る。例えばジエチルピロ炭酸は、タンパク質中のヒスチジル残基修飾のための試薬である。ヒスチジンはまた、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを使用して修飾され得る。リジン残基およびその他のα-アミノ基の反応物は、例えば、ペプチドの表面への結合またはタンパク質/ペプチド架橋で有用である。リジンはポリ(エチレン)グリコールの付着部位であり、タンパク質のグリコシル化の主要な修飾部位である。タンパク質中のメチオニン残基は、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、およびクロラミンTによって修飾され得る。
【0455】
テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾールを使用して、チロシル残基が修飾され得る。ジチロシンの形成を通じた架橋は、過酸化水素/銅イオンによって達成され得る。
【0456】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシニミド、臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルまたは3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドール(BPNS-スカトール)が使用された。
【0457】
PEGによる治療用タンパク質およびペプチドの成功裏の修飾が、循環半減期の延長と関係することが多い一方で、タンパク質と、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびホルムアルデヒドとの架橋は、ハイドロゲル調製のために使用される。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、カリウムシアネートを用いたカルバミル化によって達成されることが多い。
【0458】
ペプチドが修飾されまたは非ペプチド結合を含む、ペプチドまたは変異型は、本発明の好ましい実施形態である。通常、ペプチドおよび変異体(少なくともアミノ酸残基の間にペプチド結合を含有するもの)は、Lukas et al.(Solid-phase peptide synthesis under continuous-flow conditions.Proc Natl Acad Sci U S A.May 1981;78(5):2791-2795)およびその中で引用される参考文献で開示されるようなFmocポリアミド型固相ペプチド合成で合成されてもよい。一時的なN-アミノ基保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の反復切断は、N、N-ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して実施される。側鎖官能基は、それらのブチルエーテル(セリン、スレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護されてもよい。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド官能基を保護するために、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル基が活用される。固相担体は、ジメチルアクリルアミド(主鎖単量体)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(架橋剤)、およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(官能化剤)の3つの単量体から構成される、ポリジメチルアクリルアミドポリマーをベースとする。使用されるペプチドと樹脂との切断可能な結合剤は、酸不安定性4-ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸誘導体である。逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介性共役手順を使用して付加される、アスパラギンおよびグルタミンを除く全てのアミノ酸誘導体は、それらのあらかじめ形成された対称的な無水物誘導体として添加される。全ての共役および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン(isotin)試験手順を使用してモニターされる。合成完了時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸での処理によって、ペプチドは樹脂担体から切断され、側鎖保護基が同時に除去される。一般に使用されるスカベンジャーとしては、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水が挙げられ、正確な選択は、合成されるペプチドの構成アミノ酸に左右される。ペプチドの合成のための固相法と溶液相法の組み合わせもまた、可能である(例えば、Bruckdorfer et al.,2004およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。
【0459】
トリフルオロ酢酸は真空蒸発によって除去され、引き続くジエチルエーテルとの磨砕は、粗製ペプチドをもたらす。存在する任意のスカベンジャーは、単純な抽出処置によって除去され、それは水相の凍結乾燥時に、スカベンジャーを含まない粗製ペプチドを与える。ペプチド合成のための試薬は、通常、例えば、Calbiochem-Novabiochem(Nottingham,UK)から入手できる。
【0460】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えばアセトニトリル/水勾配分離を使用する逆相高速液体クロマトグラフィーなどの技術の任意の1つまたは組み合わせによって、実施されてもよい。
【0461】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析、高速原子衝撃(FAB)質量分光分析、ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量分光分析を使用して実施されてもよい。
【0462】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはペプチド変異体をエンコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、単鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖があるポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本発明のなおもさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現する能力がある、発現ベクターを提供する。
【0463】
例えば、相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNA断片に、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターとDNA断片が連結されて、組換えDNA分子が形成する。
【0464】
1つまたは複数の制限酵素認識部位を含有する合成リンカーは、DNA断片をベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、International Biotechnologies Inc.New Haven,CN,USA.をはじめとするいくつかの供給元から、商業的に入手できる。
【0465】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki RK,et al.(Diagnosis of sickle cell anemia and beta-thalassemia with enzymatically amplified DNA and nonradioactive allele-specific oligonucleotide probes.N Engl J Med.1988 Sep 1;319(9):537-41)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば適切な制限酵素認識部位を改変することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0466】
次にDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を適切な宿主中で発現させて、本発明のペプチドまたは変異体を含んでなるポリペプチドが製造されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本発明のペプチドまたは変異体をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および製造のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0467】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0468】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクター中に挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される、適切な転写および翻訳制御調節ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような調節は、一般に発現ベクター内で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、宿主の全てがベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞内で選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御要素があるDNA配列を発現ベクター内に組み込むことを伴う。
【0469】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。
【0470】
次に本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞を培養してポリペプチドの発現を可能にし、次にそれを回収し得る。
【0471】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、システムは、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0472】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部と、ネオマイシンなどの耐性マーカーとがある、CMVまたはSV40プロモーターを含んでなる。一例は、Pharmacia,Piscataway,NJ,USAから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0473】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞内において、構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに上昇させる。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは、典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞内で、高レベルのDNA複製をもたらす。例えば、CMVベクターは、細菌細胞内のpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌内のアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用する精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞で使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0474】
別の実施形態では、本発明の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトに類似する)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって、共に連結または融合してもよく、またはそれらの間のいかなる追加的なペプチドもなしに連結してもよい。これらのコンストラクトはまた、がん治療のために使用され得て、MHCIおよびMHCIIの双方が関与する、免疫応答を誘導してもよいする。
【0475】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc.,Bethesda,MD,USAから入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、およびRockville,MD,USAの米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト線維芽および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎臓細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、例えば、Paulina Balbas and Argelia Lorence”Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression,Reviews and Protocols,”Part One,Second Edition,ISBN 978-1-58829-262-9の教科書、および当業者に知られているその他の文献にある。
【0476】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに左右される、周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69,2110,and Sambrook et al(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al(1986)Methods In Yeast Genetics,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NYに記載される。Beggs(1978)Nature 275,104-109の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞を形質移入するのに有用である、例えばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤などの試薬は、Stratagene Cloning Systems,or Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD 20877,USAから入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0477】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、上清タンパク質の存在は、抗体を使用して検出され得る。
【0478】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞は、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子内に負荷されてもよいように、本発明のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0479】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質がロードされたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、2010年4月20日に、米国食品医薬品局(FDA)によって認可された(シプロイセル-T)(Small EJ,et al.Placebo-controlled phase III trial of immunologic therapy with sipuleucel-T(APC8015)in patients with metastatic,asymptomatic hormone refractory prostate cancer.J Clin Oncol.2006 Jul 1;24(19):3089-94.Rini et al.Combination immunotherapy with prostatic acid phosphatase pulsed antigen-presenting cells(provenge)plus bevacizumab in patients with serologic progression of prostate cancer after definitive local therapy.Cancer.2006 Jul 1;107(1):67-74)。
【0480】
本発明のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる。ペプチドまたはその変異型を製造する方法を提供する。
【0481】
別の実施形態では、本発明のペプチド、核酸または発現ベクターは、医療で使用される。例えば、ペプチドまたはその変異型は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射のために調合されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c.、i.d.、i.p.、i.m.、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに左右される。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al Nature Medicine 18,1254-1261(2012))。
【0482】
本発明の別の態様は、生体外T細胞を適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトMHC分子に、T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり接触させるステップを含んでなる、活性化T細胞を製造するインビトロ法を含み、抗原は本発明によるペプチドである。好ましくは、抗原提示細胞と共に、十分な量の抗原が使用される。
【0483】
好ましくは、哺乳類細胞は、TAPペプチド輸送体のレベルまたは機能が皆無でありまたは低下している。TAPペプチド輸送体を欠く適切な細胞としては、T2、RMA-S、およびショウジョウバエ細胞が挙げられる。TAPは、抗原処理に関連する輸送体である。
【0484】
ヒトペプチド負荷欠損細胞株T2は、12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852,USAの米国微生物系統保存機関からカタログ番号CRL1992の下に入手でき;ショウジョウバエ細胞株Schneider株2は、カタログ番号CRL19863の下にATCCから入手でき;マウスRMA-S細胞株は、Karre et al.(Ljunggren,H.-G.,and K.Karre.1985.J.Exp.Med.162:1745)に記載される。
【0485】
好ましくは、移入前に、宿主細胞は、MHCクラスI分子を実質的に発現しない。刺激因子細胞が、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA3のいずれかなどのT細胞のための共刺激シグナルを提供する上で、重要な分子を発現することもまた好ましい。多数のMHCクラスI分子および共刺激因子分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLデータベースから公的に入手可能である。
【0486】
MHCクラスIエピトープが抗原として使用される場合、T細胞はCD8陽性T細胞である。
【0487】
抗原提示細胞が、このようなエピトープを発現するために形質移入される場合、好ましくは、細胞は、配列番号1~配列番号300、またはその変異アミノ酸配列を含有するペプチドを発現する能力がある発現ベクターを含んでなる。
【0488】
生体外でT細胞を製造するために、その他のいくつかの方法が使用されてもよい。例えば、自己由来腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLを製造するために使用され得る。Plebanski et al.(Induction of peptide-specific primary cytotoxic T lymphocyte responses from human peripheral blood.Eur J Immunol.1995 Jun;25(6):1783-7)は、T細胞の調製において自己由来末梢血リンパ球(PLB)を利用する。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自己由来T細胞の製造も可能である。B細胞もまた、自己由来T細胞の製造で使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己CTLの調製で使用されてもよい。S.Walter et al.2003(Cutting edge:predetermined avidity of human CD8 T cells expanded on calibrated MHC/anti-CD28-coated microspheres.J Immunol.2003 Nov 15;171(10):4974-8)は、これもまた選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法である、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用した、T細胞の生体外プライミングを記載する。本発明では、ビオチン:ストレプトアビジン生化学によって、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体を表面ポリスチレン粒子(ミクロビーズ)に共役することで、aAPCが製造された。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答を選択的に引き起こすことを可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性があるその他のタンパク質を保有すべきである。さらにこのようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0489】
T細胞の調製において、同種異系細胞もまた使用されてもよく、方法は、参照によって本明細書に援用される、国際公開第97/26328号パンフレットで詳述される。例えば、ショウジョウバエ細胞およびT2細胞に加えて、その他の細胞を使用して、CHO細胞、バキュロウイルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、ワクシニア感染標的細胞などの抗原が提示されてもよい。さらに植物ウイルスが使用されてもよく(例えば、外来性ペプチド提示のための高収率系としてのササゲモザイクウイルスの開発が記載される、Porta et al.(1994)Development of cowpea mosaic virus as a high-yielding system for the presentation of foreign peptides.Virology.1994 Aug 1;202(2):949-55)を参照されたい)
【0490】
本発明のペプチドに向けられた活性化T細胞は、治療法において有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、前述の本発明の方法によって入手できる活性化T細胞を提供する。
【0491】
上記方法によって製造される活性化T細胞は、配列番号1~配列番号300のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する、細胞を選択的に認識する。
【0492】
好ましくは、T細胞は、そのTCRを介して、HLA/ペプチド複合体と相互作用(例えば結合)することで、細胞を認識する。T細胞は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法で有用であり、患者には、有効数の活性化T細胞が投与される。患者に投与されるT細胞は、患者に由来して、上述のように活性化されてもよい(すなわちそれらは自己T細胞である)。代案としては、T細胞は、患者でなく別の個人に由来する。もちろん、個人が健常人であれば、それが好ましい。「健常人」によって、本発明者らは、個人が概して健康良好であり、好ましくは有能な免疫系を有して、より好ましくは容易に検査され検出され得る任意の疾患に罹患していないことを意味する。
【0493】
生体内では、本発明によるCD8陽性T細胞の標的細胞は、腫瘍細胞(これは時にMHCクラスIIを発現する)および/または腫瘍(腫瘍細胞)周囲の間質細胞であり得る(これも時にMHCクラスIIを発現する;(Dengjel et al.,2006))。
【0494】
本発明のT細胞は、治療用組成物の活性成分として使用されてもよい。したがって、本発明は、上で定義されるようなT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を患者において死滅させる方法もまた提供する。
【0495】
「異常発現」によって、本発明者らは、正常な発現レベルと比較して、ポリペプチドが過剰発現されること、または腫瘍がそれに由来する組織では遺伝子がサイレントであるが、腫瘍ではそれが発現されることもまた意味する。「過剰発現」によって、本発明者らは、ポリペプチドが、正常組織に存在するレベルの少なくとも1.2倍のレベルで;好ましくは正常組織に存在するレベルの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意味する。
【0496】
T細胞は、例えば、上で記載されるものなどの当該技術分野で公知の方法によって得られてもよい。
【0497】
T細胞のこのいわゆる養子免疫伝達のためのプロトコルは、当該技術分野で周知である。概説は、Gattinoni L,et al.Adoptive immunotherapy for cancer:building on success.Nat Rev Immunol.2006 May;6(5):383-93.Review.and Morgan RA,et al.Cancer regression in patients after transfer of genetically engineered lymphocytes.Science.2006 Oct 6;314(5796):126-9)にある。
【0498】
本発明の任意の分子、すなわちペプチド、核酸、抗体、発現ベクター、細胞、活性化T細胞、T細胞受容体またはそれをエンコードする核酸は、免疫応答を逃れた細胞によって特徴付けられる障害の治療に有用である。したがって本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において使用されてもよい。分子は、単独で、または本発明のその他の分子または既知の分子との組み合わせで、使用されてもよい。
【0499】
好ましくは、本発明の薬剤は、ワクチンである。それは、患者に直接、罹患臓器に、または全身的に、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.投与され、または生体外で患者またはヒト細胞株に由来する細胞に適用されて、それが引き続いて患者に投与され、または生体外で使用されて患者に由来する免疫細胞の亜集団が選択され、次にそれが患者に再投与されてもよい。核酸が、生体外で細胞に投与される場合、インターロイキン2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるように、細胞を形質移入することが有用なこともある。ペプチドは、実質的に純粋であり、または免疫刺激アジュバント(下記参照)と組み合わされ、または免疫賦活性サイトカインと併用され、または例えばリポソームなどの適切な送達系によって投与されてもよい。ペプチドはまた、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはマンナンなどの適切な担体に共役されてもよい(例えば、国際公開第95/18145号パンフレットを参照されたい)。ペプチドはまた、標識されてもよく、融合タンパク質であってもよく、またはハイブリッド分子であってもよい。その配列が本発明に記載されるペプチドは、CD4またはCD8 T細胞を刺激することが予測される。しかし、CD8 T細胞の刺激は、CD4 Tヘルパー細胞によって提供される援助の存在下で、より効率的である。したがって、CD8 T細胞を刺激するMHCクラスIエピトープでは、ハイブリッド分子の融合パートナーまたはセクションは、適切にはCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供する。CD4およびCD8刺激エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で同定されたものが含まれる。
【0500】
一態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号300に記載されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの追加的なペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個のペプチドとを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特異的TAAから誘導されてもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0501】
別の態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号300に記載されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの追加的なペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個のペプチドとを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特異的TAAから誘導されてもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0502】
ポリヌクレオチドは、実質的に純粋であり、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概説は、例えば、(Pascolo et al.,Human peripheral blood mononuclear cells transfected with messenger RNA stimulate antigen-specific cytotoxic T-lymphocytes in vitro.Cell Mol Life Sci.2005 Aug;62(15):1755-62)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または2つ以上のウイルス要素を含有するハイブリッドに基づくシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野で周知である。「遺伝子銃」などを通じた物理的送達もまた、使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチドまたはペプチド群は、例えば、上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0503】
本発明の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、免疫応答(例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって本発明の薬剤中で有用であると見なされる。適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンまたはフラジェリンに由来するTLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321、IL-2やIL-13やIL-21などのインターロイキン、インターフェロンαまたはβまたはそのペグ化誘導体、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOMs、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)[PLG]ベースおよびデキストラン微粒子、talactoferrin SRL172、Virosomesおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGF trap、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquila’s QS21 stimulon、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣物、およびRibi’s DetoxまたはQuilまたはSuperfosなどのその他の有標アジュバントが挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが、好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)が、以前記載されている(Allison and Krummel,1995 The Yin and Yang of T cell costimulation.Science.1995 Nov 10;270(5238):932-3)。サイトカインもまた、使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への遊走に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体を参照によって本明細書に具体的に援用する、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-12、IL-15、IL-23、IL-7、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連づけられている(Gabrilovich,1996 Production of vascular endothelial growth factor by human tumors inhibits the functional maturation of dendritic cells Nat Med.1996 Oct;2(10):1096-103)。
【0504】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を促進することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘発性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生または死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防的および治療的ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする、多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を促進し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進する、ミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの配合物、または類似配合物中で、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg,2006)。米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、Mologen(Berlin,Germany)製のdSLIM(二重ステムループ免疫修飾物質)であり、それは本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0505】
有用なアジュバントその他の例としては、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera);ポリ(I:C)などのdsRNAアナログおよびそれらの誘導体(例えばAmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGF Trap、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4などの免疫活性小型分子および抗体;免疫系の重要な構造体を標的にするその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGFβ、抗TNFα受容体);SC58175が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらは治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0506】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0507】
本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、およびインターフェロンαなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0508】
本発明による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、およびレシキモドなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312,Montanide ISA 206,Montanide ISA 50V,Montanide ISA-51,ポリICLC(Hiltonol(登録商標))および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0509】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、風味、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与され得る。このような組成物で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Ed.,2000,American Pharmaceutical Association and pharmaceutical pressから得られる。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。代表的調合物は、例えば、欧州特許第2112253号明細書にある。
【0510】
本発明は、がん、特に、HCCおよびその他の悪性腫瘍を治療するのに有用な薬剤を提供する。
【0511】
本発明は、
(a)溶液中のまたは凍結乾燥形態の上述の医薬組成物を含有する容器;
(b)任意選択的に、凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;および
(c)任意選択的に、(i)溶液の使用、または(ii)凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書
を含んでなるキットをさらに目的とする。
【0512】
キットは、(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(V)濾過、(vi)針、または(V)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなってもよい。容器は、好ましくは、ボトル、バイアル、シリンジまたは試験管であり;それは、多回使用容器であってもよい。医薬組成物は、好ましくは凍結乾燥される。
【0513】
本発明のキットは、好ましくは、適切な容器内の本発明の凍結乾燥製剤と、その再構成および/または使用のための取扱説明書とを含んでなる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。好ましくは、キットおよび/または容器は、容器上の、または容器に付随する、取扱説明を含み、それは再構成および/または使用上の指示を示す。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が、上述されるようなペプチド濃度に再構成されることを表示してもよい。ラベルは、製剤が皮下投与のために有用であり、または皮下投与用であることをさらに表示してもよい。
【0514】
製剤を収容する容器は、多回使用バイアルであってもよく、それは再構成製剤の反復投与(例えば2~6回の投与)を可能にする。キットは、適切な希釈剤(例えば、炭酸水素ナトリウム溶液)を含んでなる、第2の容器をさらに含んでなってもよい。
【0515】
希釈剤と凍結乾燥製剤の混合時に、再構成製剤中の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)であり、好ましくは3mg/mL/ペプチド(=1500μg)以下である。キットは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明が掲載されるパッケージインサートをはじめとする、商業的および使用者観点から望ましい、その他の物質をさらに含んでもよい。
【0516】
本発明のキットは、その他の構成要素(例えば、その他の化合物またはこれらのその他の化合物の医薬組成物)ありまたはなしで、本発明による医薬組成物製剤を含有する、単一容器を有してもよく、または各構成要素のための別個の容器を有してもよい。
【0517】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(例えばGM-CSF)、化学療法剤、天然物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管新生因子または阻害剤、アポトーシス誘発剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の同時投与と合わせて使用するためにパッケージされた、本発明の製剤を含む。キットの構成要素は、あらかじめ混合されていてもよく、または各構成要素は、患者への投与前に別個の異なる容器内にあってもよい。キットの構成要素は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは無菌水溶液中で、提供されてもよい。またキットの構成要素は、固体として提供されてもよく、それは、好ましくは別の異なる容器内に提供される、適切な溶媒の添加によって液体に変換されてもよい。
【0518】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体または液体を封入するその他のあらゆる手段であってもよい。通常、2つ以上の構成要素がある場合、キットは、第2のバイアルまたは別の容器を含有して、別々の投薬を可能にする。キットは、薬学的に許容可能な液体のための別の容器もまた、含有してもよい。好ましくは、治療用キットは、装置(例えば、1本または複数の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有して、本キットの構成要素である本発明の作用物質の投与を可能にする。
【0519】
本製剤は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内または経皮などの任意の許容できる手段による、ペプチド投与に適するものである。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくはi.d.投与であり、輸液ポンプによってもよい。
【0520】
本発明のペプチドは、HCCから単離されたので、本発明の薬剤は、好ましくはHCCを治療するために使用される。
【0521】
本発明は、予備スクリーニングTUMAPの貯蔵庫から選択される少なくとも1つのペプチドを含んでなる、医薬組成物を製造するステップを含んでなる、個々の患者のための個別化医薬品を製造する方法をさらに含み、医薬組成物で使用される少なくとも1つのペプチドは、個々の患者における適切さについて選択される。一実施形態では、医薬組成物はワクチンである。方法はまた、TCR単離などの下流用途、または可溶性抗体およびその他の治療選択肢のためのT細胞クローンを製造するのにも適応され得る。
【0522】
「個別化医薬品」は、能動的個別化がんワクチンおよび自己由来患者組織を使用する養子細胞療法をはじめとする、このような個々の患者の治療のためにのみ使用される、1人の個々の患者のために、特に調整された治療法を意味するものとする。
【0523】
本明細書の用法では、「貯蔵庫」という用語は、特定の腫瘍型における免疫原性および/または過剰提示について予備スクリーニングされている、一群のペプチドを指すものとする。「貯蔵庫」という用語は、ワクチンに含まれる特定のペプチドが、予備製造されて物理的設備内で貯蔵されることを暗示することは意図されないが、その可能性も検討される。ペプチドは、製造される各個別化ワクチンのために新規に製造されてもよく、または予備製造されて貯蔵されてもよいことが明示的に検討される。貯蔵庫(例えば、データベースの形態)は、様々なHLA-AHLA-BおよびHLA-C対立遺伝子があるHCC患者の腫瘍組織内で高度に過剰発現される、腫瘍関連ペプチドから構成される。それは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチドまたは伸長MHCクラスIペプチドを含有してもよい。いくつかのHCC組織から採取された腫瘍関連ペプチドに加えて、貯蔵庫は、HLA-A02およびHLA-A24標識ペプチドを含有してもよい。これらのペプチドは、TUMAPSによって誘導されるT細胞免疫の規模を定量様式で比較できるようにし、したがって抗腫瘍応答を引き起こすワクチンの能力について、重要な結論が導かれるようにする。第2に、それらは、患者において、「自己」抗原に由来するTUMAPに対するいかなるワクチン誘導T細胞応答も観察されない症例において、「非自己」抗原に由来する重要な陽性対照ペプチドとして機能する。第3に、それらは、患者の免疫能力状態に関する結論が導かれるようにしてもよい。
【0524】
貯蔵庫のためのTUMAPは、遺伝子発現解析、質量分析、およびT細胞免疫学(XPresident(登録商標))を組み合わせた、統合ゲノム機能解析アプローチを使用して同定される。アプローチは、高い割合の腫瘍上に真に存在するが、正常組織では皆無または最小限にのみ発現されるTUMAPだけが、さらなる分析のために選択されることを保証する。最初のペプチド選択のために、患者に由来するHCCサンプルおよび健常ドナーに由来する血液は、段階的アプローチで分析された:
1.悪性物質からのHLAリガンドは、質量分析法によって同定された
2.ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を使用して、一連の正常器官および組織と比較して悪性組織(HCC)中の遺伝子過剰発現が同定された
3.同定されたHLAリガンドは、遺伝子発現データと比較された。好ましくは、ステップ2で検出されるような選択的に発現または過剰発現される遺伝子によってコードされる、腫瘍組織上で過剰提示または選択的に提示されるペプチドは、多ペプチドワクチンのための適切なTUMAP候補と見なされた。
【0525】
4.同定されたペプチドのTUMAPとしての妥当性を支持する追加的な証拠を同定するために、文献調査が実施された
5.mRNAレベルでの過剰発現の関連性は、ステップ3からの選択されたTUMAPの腫瘍組織上における再検出と、健常組織における検出の欠如(またはまれな検出)によって確認された。
【0526】
6.選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導が可能かどうかを評価するために、健常ドナーならびにHCC患者からのヒトT細胞を使用して、生体外免疫原性アッセイが実施された。
【0527】
本発明によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、各HLA-A02および/またはHLA-A24陽性腫瘍が、抗原のいくつかを発現し、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーすることが期待されるように、特にデザインされた。2つのHLAクラスI対立遺伝子(A02およびA24)に対して特異的なペプチドサブセットのそれぞれについて、これは、基礎となる実験的分析に基づいて、独立して確実にされる。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「既製」使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的な生物マーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である。(Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0528】
一態様では、ペプチドを貯蔵庫に含める前に、免疫原性について予備スクリーニングする。制限を意図しない一例として、貯蔵庫に包含されるペプチドの免疫原性は、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体が負荷された人工抗原提示細胞による、健常ドナーからのCD8+T細胞の反復刺激を通じた、生体外T細胞プライミングを含んでなる方法によって判定される。
【0529】
この方法は、稀ながんに、そして稀な発現プロファイルがある患者にとって、好ましい。一定組成がある多重ペプチド混合物とは対照的に、現在開発されている貯蔵庫は、腫瘍中の抗原の実際の発現とワクチンとの顕著により高いマッチングを可能にする。多標的アプローチでは、各患者のために、選択された単一のまたは組み合わされた数種の「既製」ペプチドが利用される。理論上は、例えば50個の抗原性ペプチドのライブラリーからの5つの異なる抗原性ペプチドの選択に基づくアプローチは、それだけでおよそ1700万個の可能な医薬品(DP)組成物をもたらす。
【0530】
一態様では、ペプチドは、本明細書に記載される、または以下のような本発明による方法に基づく、個々の患者のためのそれらの適切さに基づいて、ワクチンへの包含のために選択される。
【0531】
患者の腫瘍材料および血液サンプルから、HLA表現型、トランスクリプトミクスおよびペプチドミクスデータが収集されて、「貯蔵庫」および患者に特有の(すなわち変異)TUMAPを含有する、各患者に対して最も適切なペプチドが同定される。患者腫瘍中で選択的にまたは過剰発現されて、可能であれば、患者の個々のPBMCと共に試験すると、強力な生体外免疫原性を示すペプチドが選択される。
【0532】
好ましくは、ワクチンに含まれるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で同定されたペプチドを上述のペプチド貯蔵庫と比較するステップと;(c)患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある、貯蔵庫(データベース)からの少なくとも1つのペプチドを選択するステップとを含んでなる方法によって同定される。例えば、腫瘍サンプルによって提示されるTUMAPは、(a1)腫瘍サンプルからの発現データを腫瘍サンプルの組織型に相当する正常組織サンプルからの発現データと比較して、腫瘍サンプル中で過剰発現または異常発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列に相関させて、腫瘍によって過剰発現または異常発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって同定される。好ましくは、MHCリガンドの配列は、腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、溶出したリガンドを配列決定することで同定される。好ましくは、腫瘍サンプルおよび正常組織は、同一患者から入手される。
【0533】
貯蔵庫(データベース)モデルを使用してペプチドを選択するのに加えて、またはその代案として、TUMAPを患者において新規に同定し、次に、ワクチンに含めてもよい。一実施例として、候補TUMAPは、(a1)腫瘍サンプルからの発現データを、腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織のサンプルからの発現データと比較して、腫瘍サンプル中で過剰発現または異常発現されるタンパク質を特定する;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列に相関させて、腫瘍によって過剰発現または異常発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定することで、患者において同定されてもよい。別の例として、個々の患者からの正常な対応組織と比較して、腫瘍サンプルに固有の変異を含有するタンパク質が同定されてもよく、特異的に変異を標的とするTUMAPが同定され得る。例えば、腫瘍のゲノム、そして対応する正常組織のゲノムは、全ゲノム配列決定によって配列決定され得る。遺伝子のタンパク質コード領域中の非同義の変異を発見するために、ゲノムDNAおよびRNAが腫瘍組織から抽出され、正常な非変異ゲノム生殖細胞DNAが末梢血単核細胞(PBMC)から抽出される。適用されるNGSアプローチは、タンパク質コード領域の再配列決定(エクソーム再配列決定)に限定される。この目的で、供給業者が提供する標的富化キットを使用して、ヒトサンプルからのエクソンDNAが捕捉され、例えばHiSeq2000(Illumina)による配列決定がそれに続く。それに加えて、遺伝子発現の直接定量化のため、そして変異遺伝子が患者の腫瘍で発現されることの検証のために、腫瘍mRNAが配列決定される。結果として得られる数百万の配列読み取りは、ソフトウェアアルゴリズムを通じて処理される。出力一覧は、変異および遺伝子発現を含む。PBMC由来生殖細胞の多様性と比較することで、腫瘍特異的体細胞突然変異を判定して、優先順位をつける。次に、新規に同定されたペプチドは、貯蔵庫について上述した免疫原性について試験され得て、適切な免疫原性を保持する候補TUMAPが、ワクチンへの包含のために選択される。
【0534】
例示的な一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)上述の方法(方法)によって、個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;b)a)で同定されたペプチドを、対応する正常組織との比較で腫瘍中の免疫原性および過剰提示について予備選別されたペプチドの貯蔵庫と比較するステップと;(c)患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある、貯蔵庫からの少なくとも1つのペプチドを選択するステップと;(d)任意選択的に、(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原を確認するステップとによって同定される。
【0535】
例示的な一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチド選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0536】
ひとたび個別化ペプチドベースのワクチンのためのペプチドが選択されたら、ワクチンが製造される。ワクチンは、好ましくは、33%DMSOに溶解された個々のペプチドからなる液体製剤である。
【0537】
製品に包含される各ペプチドは、DMSOに溶解される。単一ペプチド溶液の濃度は、製品に包含されるペプチドの数に応じて選択されなくてはならない。単一ペプチドDMSO溶液が等量で混合され、ペプチドあたり約2.5mg/mlの濃度で、製品に包含される全てのペプチドを含有する溶液が得られる。次に混合溶液を注射用水で1:3に希釈して、33%DMSO中でペプチドあたり0.826mg/mlの濃度を得る。希釈溶液は、0.22μmの無菌フィルターを通して濾過される。最終バルク溶液が得られる。
【0538】
最終バルク溶液はバイアルに充填されて、使用時まで-20℃で保存される。1本のバイアルは、0.578mgの各ペプチドを含有する700μLの溶液を含有する。この内、500μL(ペプチドあたりおよそ400μg)が、皮内注射のために適用される。
【0539】
ここで好ましい実施形態を記載する以下の実施例中で本発明を説明するが、それでもなお、これらには限定されないのものとする。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体を参照によって援用する。
【図面の簡単な説明】
【0540】
図1A】正常組織(暗灰色)およびHCC(淡灰色)中の様々なペプチドの過剰提示を示す。図1A)APOB、ペプチド:ALVDTLKFV(A02)(配列番号7)、左から右に、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、4食道、2胆嚢、3消化管、3心臓、16腎臓、4白血球サンプル、45肺、1リンパ節、1卵巣、7膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋(sceletal muscles)肉、1漿膜、3皮膚、4脾臓、7胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、および20肝臓の組織;図1B)ALDH1L1、ペプチド:KLQAGTVFV(A02)(配列番号:2)、左から右に、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、4食道、2胆嚢、3消化管、3心臓、16腎臓、4白血球サンプル、45肺、1リンパ節、1卵巣、7膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋(sceletal muscles)肉、1漿膜、3皮膚、4脾臓、7胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、および20肝臓の組織:図1C)C8B、ペプチド:AYLLQPSQF(A24)(配列番号200)、左から右に、2副腎腺、1動脈、4脳、1乳房、5結腸、1心臓、13腎臓、9肺、3膵臓、2直腸、3皮膚、1脾臓、12胃、1胸線、2子宮、および9肝臓をはじめとする組織:図1D)RAD23Bペプチド:KIDEKNFVV(配列番号:63)1漿膜、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸s、2胆嚢、3消化管、3心臓、12腎臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸s、3骨格筋、3皮、4脾臓、5胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、4食道;図1E)RAD23Bペプチド:KIDEKNFVV(配列番号63)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:5細胞株、1正常組織(1副腎)、16がん組織(2脳がん、4肝臓がん、5肺がん、1直腸がん、1膀胱がん、3子宮がん)(左から右に);図1F)RFNGRLPPDTLLQQV(配列番号92)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:1漿膜、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、2胆嚢、3消化管、3心臓、12腎臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋、3皮膚、4脾臓、5胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、4食道;図1G)RFNGペプチド:RLPPDTLLQQV(配列番号92)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:2細胞株、2正常組織(2副腎腺)、17がん組織(1脳腫瘍、1乳がん、1食道がん、5肝臓がん、4肺がん、1卵巣がん、1前立腺がん、2膀胱がん、1子宮がん)(左から右に);図1H)FLVCR1ペプチド:SVWFGPKEV(配列番号104)1漿膜、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、2胆嚢、3消化管、3心臓、12腎臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋、3皮膚、4脾臓、5胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、4食道;図1I)FLVCR1ペプチド:SVWFGPKEV(配列番号104)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:9細胞株、1正常組織(1小腸)、16がん組織(1脳腫瘍、1乳がん、5肝臓がん、5肺がん、1皮膚がん、1胃がん、1膀胱がん、1子宮がん)(左から右に);図1J)IKBKAPペプチド:LLFPHPVNQV(配列番号156)1漿膜、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、2胆嚢、3消化管、3心臓、12腎臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋、3皮膚、4脾臓、5胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、4食道;図1K)IKBKAPペプチド:LLFPHPVNQV(配列番号156)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:7細胞株、2初代培養、1正常組織(1結腸)、34がん組織(1骨髄がん、1乳がん、1結腸がん、2食道がん、2白血球性の白血病がん、4肝臓がん、11肺がん、3リンパ節がん、5卵巣がん、4膀胱がん)(左から右に);図1L)NKD1ペプチド:FLDTPIAKV(配列番号47)、1漿膜、1脂肪組織、3副腎腺、2動脈、2骨髄、7脳、3乳房、13結腸、2胆嚢、3消化管、3心臓、12腎臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、1末梢神経、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋、3皮膚、4脾臓、5胃、1精巣、2甲状腺、3甲状腺、2子宮、2静脈、4食道;図1M)NKD1ペプチド:FLDTPIAKV(配列番号47)、その上でペプチドが報告されたサンプルのみが示される:1その他の疾患(脳瘤)、2正常組織(1肺、1脾臓)、35がん組織(5脳がん、6結腸がん、1食道がん、6肝臓がん、9肺がん、1卵巣がん、1前立腺がん、4直腸がん、2胃がん)(左から右に)。
図1B】同上
図1C】同上
図1D】同上
図1E】同上
図1F】同上
図1G】同上
図1H】同上
図1I】同上
図1J】同上
図1K】同上
図1L】同上
図1M】同上
図2A】正常組織(暗灰色)および12のHCCサンプル(灰色)のパネル中において、HCCで高度に過剰発現されまたは排他的に発現される、本発明の起源遺伝子の代表的発現プロファイルを示す(正常な腎臓と比較した相対的発現)。図2A)APOB、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、1静脈の組織:図2B)AMACR、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、1静脈の組織:図2C)ALDH1L1、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、1静脈の組織:図2D)FGG、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、1静脈の組織:図2E)C8B、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、1静脈の組織:および図2F)HSD17B6、左から右に、1副腎、1動脈、1骨髄、1脳(全体)、1乳房、1結腸、1食道、1心臓、3腎臓、1白血球サンプル、1肝臓、1肺、1リンパ節、1卵巣、1膵臓、1胎盤、1前立腺、1唾液腺、1骨格筋、1皮膚、1小腸、1脾臓、1胃、1精巣、1胸線、1甲状腺、1膀胱、1子宮子宮頸部、1子宮、および1静脈をはじめとする組織:
図2B】同上
図2C】同上
図2D】同上
図2E】同上
図2F】同上
図3】ペプチド特異的多量体染色後の代表的フローサイトメトリー結果を示す。さらなる説明は、実施例4を参照されたい。
図4】ペプチド特異的多量体染色後の代表的フローサイトメトリー結果を示す。さらなる説明は、実施例4を参照されたい。
【実施例0541】
実施例1:細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの同定および定量化
組織サンプル
患者の腫瘍組織は、Universitatsklinik fur Allgemeine,Viszeral-und Transplantationschirurgie,Tubingen,Germany;Istituto Nazionale Tumori”Pascale”.Molecular Biology and Viral Oncology Unit,Via Mariano,Naples,Italy;Bio-Options Inc.,Brea,CA,USA;ProteoGenex Inc.,Culver City,CA,USA;Asterand Europe,Royston Herts,United Kingdomから得られた。全ての患者の告知に基づく同意書を外科手術前に得た。組織は外科手術の直後に衝撃凍結されて、TUMAPの単離まで-70℃未満で保存された。
【0542】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチド貯留は、わずかに修正されたプロトコル(Falk, K.,1991;Seeger,F.H.T.,1999)に従って、HLA-A02-特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体W6/32、CNBr活性化セファロース、酸処理、および限外濾過を使用して、固形組織からの免疫沈殿によって得られた。
【0543】
質量分析
得られたHLAペプチド貯留は、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquity UPL C system、Waters)によって、それらの疎水性に従って分離され、ESI源を装着したLTQ-velosおよびfusionハイブリッド質量分光計(ThermoElectron)内で溶出ペプチドが分析された。ペプチド貯留は、毎分400nLの流速を適用して、1.7μm C18逆相材料(Waters)で充填された、分析用融合シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)上に直接、挿入された。引き続いて、毎分300nLの流速で10%から33%へのBの二段階180分間二成分勾配を用いて、ペプチドが分離された。勾配は、溶媒A(水中の0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から構成された。nanoESI源への導入には、金被覆ガラス毛管(PicoTip、New Objective)が使用された。LTQ-Orbitrap質量分光計は、TOP5ストラテジーを使用してデータ依存モードで操作された。手短に述べると、スキャンサイクルは、Orbitrap(R=30000)内の高質量精度の完全スキャンで開始され、これもまたOrbitrap(R=7500)内の5種の最も豊富な前駆イオンのMS/MSスキャンがそれに続き、あらかじめ選択されたイオンは動的に除外された。タンデム質量スペクトルは、SEQUESTおよび追加的な手動調節によって解釈された。同定されたペプチド配列は、生じた天然ペプチド断片化パターンと、配列が同一の合成参照ペプチドの断片化パターンとの比較によって保証された。
【0544】
イオン計数によって、すなわちLC-MS特性の抽出および解析によって、無標識相対LC-MS定量化が実施された(Mueller et al.,2007a)。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその豊富さに相関すると仮定する。抽出された特性は、電荷状態デコンボリューションと滞留時間アライメントによって、さらに処理された(Mueller et al.,2007b;Sturm et al.,2008)。最終的に、全てのLC-MS特性が配列同定結果と相互参照されて、異なるサンプルの定量的データと、組織からペプチドへの提示プロファイルとが組み合わされた。定量的データは、技術的および生物学的複製内の変動を考慮した中心傾向に従って、二重様式で正規化された。このようにして、それぞれの同定されたペプチドが定量的データと関連付けられ得て、サンプルと組織の間の相対定量化が可能になる。さらに、ペプチド候補について得られた全ての定量的データが手動で検査され、データ整合性が確実にされて、自動解析の確度が確認された。各ペプチドについて、提示プロファイルが計算され、平均サンプル提示ならびに反復試験変動が示された。プロファイルは、CLLサンプルを正常組織サンプルのベースラインに並置する。
【0545】
代表的過剰提示ペプチドの提示プロファイルは、図1に示される。代表的ペプチドの提示スコアは、表8に示される。
【0546】
表8B:提示スコア。表は、正常組織パネルと比較して腫瘍上で非常に高度に過剰提示され(+++)、正常組織パネルと比較して腫瘍上で高度に過剰提示され(++)、正常組織パネルと比較して腫瘍上で過剰提示される(+)、ペプチドを列挙する。S=ホスホセリン
【表8B-1】
【表8B-2】
【表8B-3】
【表8B-4】
【表8B-5】
【表8B-6】
【0547】
実施例2:
本発明のペプチドをコードする遺伝子の発現プロファイリング
正常細胞と比較した腫瘍細胞上のペプチドの過剰提示または特異的提示は、免疫療法におけるその有用性にとって十分であり、いくつかのペプチドは、それらの起源タンパク質が正常組織にもまた存在するにもかかわらず、腫瘍特異的である。それでもなお、mRNA発現プロファイリングは、免疫療法のためのペプチド標的の選択において、安全性のレベルを高めることができる。特に、アフィニティ成熟TCRなどの高い安全性リスクがある治療の選択肢では、理想的な標的ペプチドは、腫瘍に特有で正常組織上には見られないタンパク質に由来する。
【0548】
RNA源および調製
外科的に除去された組織標本は、告知に基づく同意書が各患者から入手された後に、上述の通り提供された(実施例1を参照されたい)。腫瘍組織標本は、外科手術直後にスナップ凍結され、その後、液体窒素下で乳鉢と乳棒によって均質化された。全RNAは、これらのサンプルから、TRI試薬(Ambion,Darmstadt,Germany)を使用して調製され、RNeasy(QIAGEN,Hilden,Germany)による精製がそれに続き;どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って実施された。
【0549】
健常ヒト組織からの全RNAは、商業的に入手された(Ambion,Huntingdon,UK;Clontech,Heidelberg,Germany;Stratagene,Amsterdam,Netherlands;BioChain,Hayward,CA, USA).数人(2~123人)の個人からのRNAは、各個人からのRNAが等しく重み付けされるように混合された。
【0550】
全てのRNAサンプルの品質および量は、RNA 6000 Pico LabChipキット(Agilent)を使用して、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent,Waldbronn,Germany)上で評価された。
【0551】
マイクロアレイ実験
全ての腫瘍および正常組織RNAサンプルの遺伝子発現解析は、Affymetrix Human Genome(HG)U133AまたはHG-U133 Plus 2.0オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)によって実施された。全てのステップは、Affymetrixマニュアルに従って実施された。簡単に述べると、二本鎖cDNAは、マニュアルに記載されるようにして、SuperScript RTII(Invitrogen)およびオリゴdT-T7プライマー(MWG Biotech,Ebersberg,Germany)を使用して、5~8μgの全RNAから合成された。生体外転写は、U133Aアレイについては、BioArray High Yield RNA Transcript Labelling Kit(ENZO Diagnostics,Inc.,Farmingdale,NY,USA)を用いて、またはU133プラス2.0アレイでは、GeneChip IVT Labelling Kit(Affymetrix)を用いて実施され、cRNA断片化、ハイブリダイゼーション、そしてストレプトアビジン-フィコエリトリンとビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(Molecular Probes,Leiden,Netherlands)による染色がそれに続いた。画像は、Agilent 2500A GeneArray Scanner(U133A)またはAffymetrix Gene-Chip Scanner 3000(U133 Plus 2.0)でスキャンされ、全てのパラメータについてデフォルト設定を使用して、GCOSソフトウェア(Affymetrix)によってデータが解析された。正規化のために、Affymetrixによって提供される100個のハウスキーピング遺伝子が使用された。相対的発現値は、ソフトウェアによって与えられるシグナルlog比から計算され、正常な腎臓サンプルが自由裁量で1.0に設定された。HCC中で高度に過剰発現されまたは排他的に発現される本発明の起源遺伝子の代表的発現プロファイルは、図2に示される。さらなる代表的遺伝子の発現スコアは、表9に示される。
【0552】
表9:発現スコア。表は、正常組織パネルと比較して腫瘍中で非常に高度に過剰発現される(+++)、正常組織パネルと比較して腫瘍中で高度に過剰発現される(++)、または正常組織パネルと比較して腫瘍中で過剰発現される(+)、遺伝子からのペプチドを列挙する。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【0553】
実施例3:HLA-A02およびHLA-A24のUVリガンド交換/ペプチド結合
本発明によるT細胞ベースの治療法のための候補ペプチドは、それらのMHC結合能力(親和性)についてさらに試験された。個々のペプチド-MHC複合体は、UVリガンド交換によって生成され、UV感受性ペプチドはUV照射に際して切断されて、分析される関心のあるペプチドで交換された。ペプチド受容性MHC分子と効果的に結合して安定化し得るペプチド候補のみが、MHC複合体の分離を防止する。交換反応の収率を判定するために、安定化MHC複合体の軽鎖(β2m)の検出に基づくELISAが実施された。アッセイは、概して、Rodenko et al.(Rodenko B,Toebes M,Hadrup SR,van Esch WJ,Molenaar AM,Schumacher TN,Ovaa H.Generation of peptide-MHC class I complexes through UV-mediated ligand exchange.Nat Protoc.2006;1(3):1120-32.)に記載されるようにして実施された。
【0554】
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)が、PBS中の2μg/mlストレプトアビジンにより室温で一晩被覆されて、4回洗浄され、ブロック緩衝液を含有する2%BSA中で37℃で1時間ブロックされた。再折りたたみされたHLA-A0201/MLA-001単量体が、15~500ng/mlの範囲をカバーする標準物質の役割を果たした。UV交換反応のペプチド-MHC単量体は、ブロック緩衝液中で100倍に希釈された。サンプルは、37℃で1時間インキュベートされて、4回洗浄され、2ug/mlのHRP共役結合抗β2mと共に37℃で1時間インキュベートされ、再度洗浄されて、NHSOで停止させたTMB溶液で検出された。吸光は、450nmで測定された。抗体またはそれらのフラグメント、および/またはT細胞受容体またはそれらのフラグメントの生成および製造のためには、高い交換収率(好ましくは50%よりも高い、最も好ましくは高い75%よりも)を示す候補ペプチドが、MHC分子に対する十分な結合活性を示してMHC複合体の分離を防止することから、一般に好ましい。
【0555】
表10A:MHCクラスI結合スコア
<20%=+;20%-49%=++;50%-75%=+++;>=75%=++++
【表10A】
【0556】
表10B:MHCクラスI結合スコア
ペプチド配列に依存する、HLA-クラスI拘束性ペプチドのHLA-A02またはHLA-A24への結合は、ペプチド交換収率によって分類された:>10%=+;>20%=++;>50=+++;>75%=++++。S=ホスホセリン
【表10B-1】
【表10B-2】
【表10B-3】
【表10B-4】
【表10B-5】
【表10B-6】
【表10B-7】
【0557】
実施例4:
MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて調査を実施した。このようにして、本発明者らは、これまでに本発明の22個のHLA-A0201拘束性TUMAPの免疫原性を示し得て、これらのペプチドが、それに対するCD8+前駆T細胞がヒトに存在する、T細胞エピトープであることを実証した(表11)。
【0558】
CD8+T細胞の生体外プライミング
ペプチド-MHC複合体(pMHC)および抗CD28抗体を負荷した、人工抗原提示細胞による生体外刺激を実施するために、本発明者らは、最初に、告知に基づく同意後に、University clinics Mannheim,Germanyから得られた健常ドナーのCD8ミクロビーズ(Miltenyi Biotec,Bergisch-Gladbach,Germany)を使用した正の選択を通じて、新鮮HLA-A02白血球除去生成物からCD8+T細胞を単離した。
【0559】
PBMCおよび単離CD8+リンパ球またはPBMCは、10%熱不活性化ヒトAB血清(PAN-Biotech,Aidenbach,Germany),100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(Cambrex,Cologne,Germany),1mMピルビン酸ナトリウム(CC Pro,Oberdorla,Germany),20μg/mlゲンタマイシン(Cambrex)を添加した、RPMI-Glutamax(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)からなるT細胞培地(TCM)中で、使用時まで培養された。2.5ng/mlのIL-7(PromoCell,Heidelberg,Germany)および10U/mlのIL-2(Novartis Pharma,Nurnberg,Germany)もまた、この段階でTCMに添加した。
【0560】
pMHC/抗CD28被覆ビーズの作成、T細胞刺激、および読み取りは、高度に定義された生体外システム内で、刺激条件あたり4種の異なるpMHC分子と、読み取り条件あたり8種の異なるpMHC分子を使用して実施された。
【0561】
製造会社(Perbio,Bonn,Germany)が推奨する通りにスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3(Jung et al.,1987)を化学的にビオチン化した。使用されたビーズは、直径5.6μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(Bangs Laboratories,Illinois,USA)であった。
【0562】
陽性および陰性対照刺激のために使用されたpMHCは、それぞれ、A0201/MLA-001(修飾Melan-A/MART-1からのペプチドELAGIGILTV)、およびA0201/DDX5-001(DDX5からのYLLPAIVHI)であった。
【0563】
4×12.5ngの異なるビオチンpMHC存在下で、800,000個のビーズ/200μlが96ウェルプレート内で被覆され、洗浄されて、引き続いて200μlの容量中で、600ngのビオチン抗CD28が添加された。5ng/mlのIL-12(PromoCell)を添加した200μlのTCM中で、1×10のCD8+T細胞を2×8の洗浄被覆ビーズと、37℃で3日間にわたり同時インキュベートすることで、96ウェルプレート内で刺激が開始された。次に80U/mlのIL-2を添加した新鮮TCMで培地の半分を交換し、37℃で4日間にわたり培養が継続された。この刺激サイクルが、合計3回実施された。条件あたり8種の異なるpMHC分子を使用するpMHC多量体読み取りでは、5種の異なる蛍光色素への共役を包含するわずかな修正を加えて、以前記載されたような(Andersen et al.,2012)二次元コンビナトリアルコーディングアプローチが使用された。最後に、Live/dead近赤外染料(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)、CD8-FITC抗体クローンSK1(BD,Heidelberg,Germany)、および蛍光性pMHC多量体による細胞の染色によって多量体解析が実施された。解析では、適切なレーザーおよびフィルターを装着したBD LSRII SORP血球計数器が使用された。ペプチド特異的細胞は、全CD8+細胞の百分率として計算された。多量体解析の評価は、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Oregon,USA)を使用して実施された。特異的多量体+CD8+リンパ球の生体外初回刺激は、陰性対照刺激と比較することで(by by)検出された。1人の健常ドナーの少なくとも1つの評価可能生体外刺激ウェルが、生体外刺激後に、特異的CD8+T細胞株を含有することが認められれば、所与の抗原の免疫原性が検出された(すなわちこのウェルは、CD8+T細胞内に少なくとも1%の特異的多量体+を含有し、特異的多量体+細胞の百分率は、陰性対照刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0564】
HCCペプチドの生体外免疫原性
試験されたHLAクラスIペプチドでは、ペプチド特異的T細胞株の生成によって、生体外免疫原性が実証され得た。本発明の3種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の代表的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に図3および図4に示される。本発明からの22種のペプチドの結果は、表11Aに要約される。
【0565】
表11A:本発明のHLAクラスIペプチドの生体外免疫原性
出願人によって実施された本発明のペプチドの生体外免疫原性実験の代表的結果。<20%=+;20%~49%=++;50%~69%=+++;>=70%=++++
【表11A】
【0566】
表11B:本発明の追加的なHLAクラスIペプチドの生体外免疫原性
出願人によって実施された、本発明のHLA-A24拘束性ペプチドについての生体外免疫原性実験の代表的結果である。生体外免疫原性実験の結果が示される。陽性ウェルおよびドナーの百分率(評価可能内の)は、示されるように要約される1~20%=+;20%~49%=++;50%~69%=+++;>=70%=++++
【表11B】
【0567】
健康なHLA-A02+ドナーのペプチド特異的生体外CD8+T細胞応答の代表的結果(図3
CD8+T細胞は、抗CD28mAbと、それぞれ、IMA-APOB-002(配列番号7)ペプチド(A、右側パネル)またはIMA-APOB-003(B、右側パネル、配列番号1)、またはIMA-ALDH1L1-001(C、右側パネル、配列番号2)と複合体形成する、HLA-A02とで被覆された、人工APCを使用して初回刺激された。3サイクルの刺激後、A02/APOB-002(A)またはA02/APOB-003(B)、またはA02/ALDH1L1-001での2D多量体染色によって、ペプチド反応性細胞の検出が実施された。左側パネル(A、B、C)は、無関係のA02/ペプチド複合体によって刺激された細胞の対照染色を示す。生存一重細胞は、CD8+リンパ球についてゲートされた。ブーリアンゲートは、異なるペプチドに対して特異的な多量体によって検出された、擬陽性事象の除外を助けた。CD8+リンパ球の中の特異的多量体+細胞の頻度が示される。
【0568】
健康なHLA-A24+ドナーのペプチド特異的生体外CD8+T細胞応答の代表的結果(図4
CD8+T細胞は、それぞれIMA-KLHL24-001(配列番号190)ペプチド(A、右側パネル)またはIMA-APOB-006(B、右側パネル、配列番号218)と複合体形成する、抗CD28mAbおよびHLA-A24で被覆された人工APCを使用して初回刺激された。3サイクルの刺激後、A24/KLHL24-001(A)またはA24/APOB-006(B)での2D多量体染色によって、ペプチド反応性細胞の検出が実施された。左側パネル(AおよびB)は、無関係のA24/ペプチド複合体によって刺激された細胞の対照染色を示す。生存一重細胞は、CD8+リンパ球についてゲートされた。ブーリアンゲートは、異なるペプチドに対して特異的な多量体によって検出された、擬陽性事象の除外を助けた。CD8+リンパ球の中の特異的多量体+細胞の頻度が示される。
【0569】
実施例5:ペプチドの合成
全てのペプチドは、Fmocストラテジーを使用する、標準的な十分に確立された固相ペプチド合成を使用して合成された。個々のペプチドのアイデンティティーおよび純度は、質量分析法および分析用RP-HPLCによって判定された。ペプチドは、純度>50%の白色から灰白色の凍結乾燥物(トリフルオロ酢酸塩)として得られた。全てのTUMAPは、好ましくはトリフルオロ酢酸塩または酢酸塩として投与され、その他の塩形態もまた可能である。
【0570】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
【配列表】
2023100927000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチド薬学的に許容されるであって、前記ペプチドの遊離型は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスIの分子に結合する能力を有し、およびMHCに結合すると、CD8T細胞によって認識される、ペプチドの薬学的に許容される塩
【請求項2】
塩化物、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の形態で提供される、請求項1に記載のペプチドの薬学的に許容される塩。
【請求項3】
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、および非ホジキンリンパ腫(NHL)の少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における、配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つのがんのELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージングにおいて、MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチド特異的に認識する抗体であって、前記抗体が可溶性抗体もしくは膜結合抗体である、抗体、または
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つのがんのELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージングにおいて、MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体であって、前記抗体が可溶性抗体もしくは膜結合抗体であって、および前記抗体がモノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である、抗体
【請求項5】
HCC、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における、MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の使用、または
HCC、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における、MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の使用であって、前記抗体がモノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である、使用。
【請求項6】
HCC、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における、HLAリガンドと反応性であるT細胞受容体(TCR)の使用であって、前記リガンドが、配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるものであって、前記TCRが可溶性または膜結合性である、使用、または
HCC、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における、HLAリガンドと反応性であるT細胞受容体(TCR)の使用であって、前記リガンドが、配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるものであって、前記リガンドがペプチド-MHC複合体の一部であり、前記TCRが可溶性または膜結合性である、使用
【請求項7】
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断のための医薬の製造における活性化T細胞の使用であって、前記活性化T細胞が配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでなるポリペプチドを提示する細胞を選択的に認識する、使用。
【請求項8】
配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容される塩、
MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体、
HLAリガンドと反応性であるCRであって、前記リガンドが、配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるものであるTCR、
HLAリガンドと反応性であるTCRであって、前記リガンドが、MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるものであるTCR、および
配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでなるポリペプチドを提示する細胞を選択的に認識する活性化T細胞
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分を含んでなる肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療用または診断用医薬組成物。
【請求項9】
アジュバントをさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物、または
アジュバントをさらに含むものであって、該アジュバントがインターロイキンである、請求項8に記載の医薬組成物、または
アジュバントをさらに含むものであって、該アジュバントがインターロイキンであって、該インターロイキンがIL-2、IL-15またはこれらの組合せである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(a)請求項8に記載医薬組成物を溶液または凍結乾燥形態で含んでなる容器;および
(b前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器
を含んでなる、
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断に使用するためのキット、または、
(a)請求項8に記載の医薬組成物を溶液または凍結乾燥形態で含んでなる容器;
(b)前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;および、
(c)配列番号303を除く配列番号1~配列番号346からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド
を含んでなる、
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療または診断に使用するためのキット
【請求項11】
(d)(i)緩衝液、(ii)希釈剤、(iii)フィルター、(iv)針)シリンジ、および(vi)アジュバント、のうち1つまたは複数をさらに含、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容される塩、
MHC分子と複合体を形成した配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体、
HLAリガンドと反応性であるTCRであって、前記リガンドが、配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるものであるTCR、または
配列番号303に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでなるポリペプチドを提示する細胞を選択的に認識する活性化T細胞
を含む、
肝細胞がん(HCC)、メラノーマ、NSCLC、およびNHLの少なくとも1つの治療用または診断用の薬剤。
【請求項13】
個々の患者のための個別化された抗がんワクチンまたは化合物ベースおよび/または細胞療法製品を製造するための方法であって、
a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;
b)a)で同定されたペプチドを正常組織と比較した腫瘍中の免疫原性および/または過剰提示について予備選別されたペプチド貯蔵庫と比較するステップと;
c)前記患者において同定された腫瘍関連ペプチドと一致する、前記貯蔵庫からの少なくとも1つのペプチドを選択するステップと;および
d)ステップc)に基づいて、個別化ワクチンまたは化合物ベースのまたは細胞療法製品を製造するステップと
を含んでなり、
ここで、c)のステップで選択されるペプチドが配列番号303からなるペプチドである、方法。
【請求項14】
(1)前記TUMAPが、
a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に相当する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプル中で過剰発現または異常発現されるタンパク質を同定するステップと
a2)前記発現データを前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合するMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップと
によって同定される、
(2)前記腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、前記溶出したリガンドを配列決定することで、MHCリガンドの配列が同定される、
(3)前記腫瘍サンプルの組織型に対応する前記正常組織が、前記同一患者から得られる、
(4)前記貯蔵庫に包含される前記ペプチドの免疫原性が、生体外免疫原性アッセイ、MHC多量体染色、ELISPOTアッセイおよび/または細胞内サイトカイン染色を含んでなる方法によって判定される、
上記(1)~(4)からなる群から選択される1または複数の手段を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記個々の患者からの正常な対応する組織と比較して前記腫瘍サンプルに特有の少なくとも1つの変異を同定し、ワクチンに包含するために、または細胞療法を作成するために、前記変異と関連があるペプチドを選択するステップをさらに含み、前記少なくとも1つの変異が、全ゲノム配列決定によって同定される、請求項13または14に記載の方法。