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  • 特開-消泡装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010094
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】消泡装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/02 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113939
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】岸 将男
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達博
【テーマコード(参考)】
4D011
【Fターム(参考)】
4D011BA02
(57)【要約】
【課題】小型の液体タンクであっても設置することが可能な消泡装置を提供するものである。
【解決手段】羽根車5と、ケーシング6と、入口7と、内壁部分6Aと、収容槽8と、電動機9とから本体部3を構成する。本体部3は液体タンク1と離間して配置する。入口7に接続する吸引流路19A、20Aを形成した筒状部材19、20をケーシング6に取付け、筒状部材20は吸引流路20Aの先端に開口する吸引口21を液体タンク1の液面T上に生じる泡Cと対向配置した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から径方向に延びる複数の羽根片を有する羽根車と、羽根車を内部に収容したケーシングと、ケーシングの羽根車に面した正面側で羽根車の中心部に向けて開口する入口と、羽根車の遠心作用による遠心力を受けて入口より羽根車の外周側へ移行された泡が破壊されるよう衝突する羽根車外周に有したケーシングの内壁部分と、ケーシングの内壁部分への衝突で泡消滅による液体を収容する収容槽と、ケーシングの背後から羽根車を回転駆動する電動機とから本体部を構成し、本体部を液体タンクと離間して配置し、入口に接続する吸引流路を形成した筒状部材をケーシングに取付け、筒状部材は吸引流路の先端に開口する吸引口を液体タンクの液面上に生じる泡と対向配置したことを特徴とする消泡装置。
【請求項2】
前記収容槽と前記液体タンクとの間を接続する排出流路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の消泡装置。
【請求項3】
前記本体部を液体タンクの垂直方向の上方に離間して配置し、前記筒状部材は垂直方向に傾斜して前記ケーシングに取付けたことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の消泡装置。
【請求項4】
前記筒状部材は前記入口と前記吸引口との間の長さ寸法を調整可能としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の消泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡を吸引することにより泡を破壊し消滅させる消泡装置に関し、特に、液体タンクに貯蔵する液の液面上に生じる泡を良好に消すことができる消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の消泡装置は、液体タンクの液面上に発生する泡は、回転翼(羽根車)の回転で吸引され、この泡は、回転翼の外周側に遠心作用で移行され、回転翼外周側に設けた複数の消泡壁のせん断応力により消滅している。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-22992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の消泡装置は、液体を貯蔵する液体タンクに本体ベースを直接取付け設置しているため、液体タンクが小型だと設置するためのスペースが確保できず、設置することができない問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、小型の液体タンクであっても設置することが可能な消泡装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
中心から径方向に延びる複数の羽根片を有する羽根車と、羽根車を内部に収容したケーシングと、ケーシングの羽根車に面した正面側で羽根車の中心部に向けて開口する入口と、羽根車の遠心作用による遠心力を受けて入口より羽根車の外周側へ移行された泡が破壊されるよう衝突する羽根車外周に有したケーシングの内壁部分と、ケーシングの内壁部分への衝突で泡消滅による液体を収容する収容槽と、ケーシングの背後から羽根車を回転駆動する電動機とから本体部を構成し、本体部を液体タンクと離間して配置し、入口に接続する吸引流路を形成した筒状部材をケーシングに取付け、筒状部材は吸引流路の先端に開口する吸引口を液体タンクの液面上に生じる泡と対向配置したことを特徴とする消泡装置がそれである。
【0007】
この場合、前記収容槽と前記液体タンクとの間を接続する排出流路を設けてもよい。また、前記本体部を液体タンクの垂直方向の上方に離間して配置し、前記筒状部材は垂直方向に傾斜して前記ケーシングに取付けてもよい。また、前記筒状部材は前記入口と前記吸引口との間の長さ寸法を調整可能としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、羽根車と、ケーシングと、入口と、内壁部分と、収容槽と、電動機とから本体部を構成し、本体部を液体タンクと離間して配置し、入口に接続する吸引流路を形成した筒状部材をケーシングに取付け、筒状部材は吸引流路の先端に開口する吸引口を液体タンクの液面上に生じる泡と対向配置した。このため、液体タンクには本体部を設置しなくてよいから、小型の液体タンクであっても消泡装置を設置することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、収容槽と液体タンクとの間を接続する排出流路を設けた。このため、泡消滅による液体を液体タンク内へ良好に還流することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、本体部を液体タンクの垂直方向の上方に離間して配置し、筒状部材は垂直方向に傾斜してケーシングに取付けた。このため、ケーシングを液体タンクの垂直方向の上方から水平方向へずらして設置できるから、液体タンクの上方に障害物があっても設置を可能にでき、設置の自由度を増すことができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、筒状部材は入口と吸引口との間の長さ寸法を調整可能とした。このため、吸引口を液体タンクの液面に応じて最適位置に設定することができ、広範囲の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示した消泡装置の縦断面図である。
図2】他の実施形態を示した消泡装置の縦断面図である。
図3】さらに他の実施形態を示した消泡装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1はクーラント液等の液体を回収、貯蔵する液体タンクで、地面Dに設置している。2は消泡装置で、本体部3を液体タンク1の垂直方向(紙面上下方向)の上方に離間して配置している。4A、4Bは消泡装置2の脚部材で、略コ字状で2個備え、本体部3を液体タンク1の天板1Aに固定している。本体部3は羽根車5とケーシング6と入口7とケーシング6の内壁部分6Aと収容槽8と電動機9等から構成している。羽根車5は、円形のデイスク5Aの正面側に複数の羽根片5Bを中心から半径方向へ延びるように取付けると共に、半径方向の中心部には、入力軸5Cを取付けている。羽根車5の外周すなわち各羽根片5Bの半径方向外方端がケーシング6の内壁部分6Aと対向配置している。入力軸5Cは、ケーシング6を貫通してその背後に突出し、電動機9の図示しない出力軸に取付けている。
【0014】
電動機9は取付板10に複数のボルト部材11で着脱自在に取付けている。取付板10は下部に複数のボス12を介してケーシング6を溶接で取付けている。ケーシング6は、上部を閉塞して下部を開放した略円筒状で、内部には羽根車5を収装している。ケーシング6の下部には、複数のカラー部材13で間隙を有して円板状の基板14と収容槽8と脚部材4A、4Bとを複数のボルト部材15で取付けている。入口7は略円形で、基板14の径方向中心にケーシング6の羽根車5に面した正面側で羽根車5の中心部に向けて貫通形成している。基板14の上面には、円筒部材16を溶接で取付け、その上端に羽根車5の正面側で羽根片5Bと対向する略円形の板状部材17を溶接で取付けている。板状部材17には、入口7と同心で、入口7と略同径の第2入口18を形成している。
【0015】
基板14の下面には、略円筒状の第1筒状部材19を溶接で取付け、第1筒状部材19には可撓性材料から形成した第2筒状部材20を弾性力で密着して外嵌して備えている。各筒状部材19、20は液体タンク1の天板1Aを挿通して液体タンク1の内部に延在している。第1筒状部材19には入口7に接続する第1吸引流路19Aを形成し、第2筒状部材20には第1吸引流路19Aに接続する第2吸引流路20Aを形成している。第2吸引流路20Aの先端には吸引口21を開口し、吸引口21は液体タンク1の液面T上に生じる泡Cと対向配置している。第2筒状部材20は第1筒状部材19へ外嵌する垂直方向の嵌合寸法を増減自在に設け、嵌合寸法の増減で入口7と吸引口21との間の長さ寸法を調整可能にしている。吸引口21は入口7と同心の略円形で、入口7より第1筒状部材19の肉厚寸法分だけ若干大径に形成している。
【0016】
収容槽8は、ケーシング6の内壁6Aへの泡の衝突で泡消滅により生じた液体を収容する。この液体はケーシング6の下部と基板14の間に複数のカラー13によって形成された間隙から収容槽8に流出する。収容槽8の下面には、略円筒状の第1排出流路部材22を溶接で取付け、第1排出流路部材22には可撓性材料から形成した第2排出流路部材23を弾性力で密着して外嵌して備えている。第2排出流路部材23は液体タンク1の天板1Aを挿通して液体タンク1の内部に延在し、先端を液体タンク1に貯蔵した液体に浸漬している。第1排出流路部材22には第1排出流路22Aを形成し、第2排出流路部材23には第2排出流路23Aを形成し、各排出流路22A、23Aにより収容槽8と液体タンク1との間を接続する。第2排出流路部材23は第1排出流路部材22へ外嵌する垂直方向の嵌合寸法を増減自在に設け、嵌合寸法の増減で収容槽8と第2排出流路部材23先端との間の長さ寸法を調整可能にしている。
【0017】
次に、かかる構成の作動を説明する。
電動機9により羽根車5を回転駆動すると、羽根車5の遠心作用により吸引口21から各吸引流路20A、19A、入口7、第2入口18を介してケーシング6内に空気が吸引され、この空気はケーシング6の下部と基板14との間の間隙から収容槽8に排出されて大気開放する。
【0018】
そして、液面T上に生じた泡Cは、各吸引流路20A、19A、入口7、第2入口18を経てケーシング6内へ導かれ、羽根車5に衝突する。この衝突で泡Cの一部は破壊されて消滅して、これにより生じる液滴は、残りの泡Cとともに、羽根車5での遠心作用により、遠心力を受け羽根車5の外周側へと移行され、ケーシング6の内壁部分6Aに衝突する。この衝突で、残りの泡Cは実質的にほぼ全部が破壊され消滅する。そして、泡Cの消滅で生じた液体は、ケーシング6の下部と基板14との間の間隙を流れて収容槽8に収容される。そして、収容槽8に収容した液体は、各排出流路22A、23Aを流れて液体タンク1内へ戻される。
【0019】
かかる作動で、羽根車5と、ケーシング6と、入口7と、内壁部分6Aと、収容槽8と、電動機9とから本体部3を構成し、本体部3を液体タンク1と離間して配置し、入口7に接続する吸引流路19A、20Aを形成した筒状部材19、20をケーシング6に取付け、筒状部材19、20は吸引流路19A、20Aの先端に開口する吸引口21を液体タンク1の液面T上に生じる泡Cと対向配置した。このため、液体タンク1には本体部3を設置しなくてよいから、小型の液体タンク1であっても消泡装置2を設置することができる。
【0020】
また、収容槽8と液体タンク1との間を接続する排出流路22A、23Aを設けた。このため、泡消滅による液体を液体タンク1内へ良好に還流することができる。
【0021】
また、筒状部材19、20は入口7と吸引口21との間の長さ寸法を調整可能とした。このため、吸引口21を液体タンク1の液面Tに応じて最適位置に設定することができ、広範囲の用途に適用することができる。
【0022】
図2は、本発明の他の実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
第1筒状部材24は、垂直方向に傾斜して基板14の下面に溶接で取付けている。第2筒状部材25は、可撓性材料から形成し、第1筒状部材24に弾性力で密着して外嵌して備えている。第1筒状部材24に形成した第1吸引流路24Aおよび第2筒状部材25に形成した第2吸引流路25Aは、第1筒状部材24および第2筒状部材25と同様に垂直方向に傾斜している。第2吸引流路20Aの先端に開口する吸引口26は、液体タンク1の液面Tに対して傾斜し、泡Cと対向配置している。
【0023】
本体部3を固定する2個の脚部材27A、27Bはそれぞれ相違する形状をしている。一方の脚部材27Aは、略L字状で、ボルト部材15によりカラー部材13を介してケーシング6に取付け、先端を地面Dに接地して固定している。他方の脚部材27Bは、一方の脚部材27Aより長さ寸法を短くした略L字状で、ボルト部材15によりカラー部材13を介してケーシング6に取付け、先端を液体タンク1の天板1Aに固定している。
【0024】
作動は、電動機9により羽根車5を回転駆動すると、羽根車5の遠心作用により吸引口26から吸引流路25A、24Aを介してケーシング6内に空気が吸引され、収容槽8に排出されて大気開放する。そして、液面T上に生じた泡Cは、各吸引流路25A、24A、入口7、第2入口18を経てケーシング6内へ導かれ、羽根車5に衝突する。この衝突で泡Cの一部は破壊されて消滅して、これにより生じる液滴は、残りの泡Cとともに、羽根車5での遠心作用により、遠心力を受け羽根車5の外周側へと移行され、ケーシング6の内壁部分6Aに衝突する。この衝突で、残りの泡Cは実質的にほぼ全部が破壊され消滅する。そして、泡Cの消滅で生じた液体は、収容槽8に収容される。そして、収容槽8に収容した液体は、各排出流路22A、23Aを流れて液体タンク1内へ戻される。
【0025】
この作動で、入口7に接続する吸引流路24A、25Aを形成した筒状部材24、25をケーシング6に取付け、筒状部材24、25は吸引流路24A、25Aの先端に開口する吸引口26を液体タンク1の液面T上に生じる泡Cと対向配置した。このため、一実施形態と略同様に、液体タンク1には本体部3を設置しなくてよいから、小型の液体タンク1であっても消泡装置2を設置することができる。
【0026】
また、一実施形態と略同様に、収容槽8と液体タンク1との間を接続する排出流路22A、23Aを設けたため、泡消滅による液体を液体タンク1内へ良好に還流することができる。
【0027】
また、筒状部材24、25は入口7と吸引口26との間の長さ寸法を調整可能とした。このため、一実施形態と略同様に、吸引口26を液体タンク1の液面Tに応じて最適位置に設定することができ、広範囲の用途に適用することができる。
【0028】
また、本体部3を液体タンク1の垂直方向の上方に離間して配置し、筒状部材24、25は垂直方向に傾斜してケーシング6に取付けた。このため、ケーシング3を液体タンク1の垂直方向の上方から水平方向へずらして設置できるから、液体タンク1の上方に障害物があっても設置を可能にでき、設置の自由度を増すことができる。
【0029】
図3は、本発明のさらに他の実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
収容槽8の下面には、径方向の対称位置から下方向に突出して2個の脚部材28A、28Bを一体形成している。各脚部材28A、28Bは同一形状で略L字状に形成し、先端を液体タンク1の天板1Aに固定している。
【0030】
作動は、一実施形態と略同様に、羽根車5の遠心作用により吸引口21からケーシング6内に吸引された空気は、ケーシング6の下部と基板14との間の間隙から収容槽8に排出されて大気開放する。液面T上に生じた泡Cは、ケーシング6内へ導かれて羽根車5に衝突し、一部は破壊されて消滅する。これにより生じる液滴は、残りの泡Cとともに、羽根車5での遠心作用により、遠心力を受け羽根車5の外周側へと移行され、ケーシング6の内壁部分6Aに衝突する。この衝突で、残りの泡Cは実質的にほぼ全部が破壊され消滅し、泡Cの消滅で生じた液体は、収容槽8に収容される。そして、収容槽8に収容した液体は、各排出流路22A、23Aを流れて液体タンク1内へ戻される。
【0031】
この作動で、一実施形態と略同様に、液体タンク1には本体部3を設置しなくてよいから、小型の液体タンク1であっても消泡装置2を設置することができる。また、収容槽8と液体タンク1との間を接続する排出流路22A、23Aを設けたため、泡消滅による液体を液体タンク1内へ良好に還流することができる。また、筒状部材19、20は入口7と吸引口21との間の長さ寸法を調整可能としたため、吸引口21を液体タンク1の液面Tに応じて最適位置に設定することができ、広範囲の用途に適用することができる。
【0032】
また、脚部材28A、28Bは収容槽8と一体形成した。このため、収容槽8と脚部材28A、28Bとの組付けを不要にでき、組付けの簡素化を図ることができる。
【0033】

なお、前述の各実施形態では、脚部材4A、4B、27A、27B、28A、28Bをそれぞれ2個設けたが、これに限らず、脚部材を1個設けたり、3個以上設けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】

1:液体タンク
2:消泡装置
3:本体部
5:羽根車
6:ケーシング
6A:内壁部分
7:入口
8:収容槽
9:電動機
19、24:第1筒状部材(筒状部材)
19A、24A:第1吸引流路(吸引流路)
20、25:第2筒状部材(筒状部材)
20A、25A:第2吸引流路(吸引流路)
21、26:吸引口
T:液面
C:泡
図1
図2
図3