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特開2023-100960コレステロールレベルを低下させるためのLDLR変異体および組成物中でのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100960
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】コレステロールレベルを低下させるためのLDLR変異体および組成物中でのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20230711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230711BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230711BHJP
   C12N 15/48 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230711BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230711BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z
C12N15/48
A61P3/06
A61K35/76
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078988
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2020074046の分割
【原出願日】2015-04-24
(31)【優先権主張番号】61/984,620
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/022,627
(32)【優先日】2014-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジエームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ラダー,ダニエル・ジエイ
(72)【発明者】
【氏名】ソマナサン,スリアンラヤン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改変されたヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)遺伝子を含んでなる発現カセットを有する組換えベクターを提供する。
【解決手段】本発明のベクターに含まれるhLDLR遺伝子は、(a)以下のアミノ酸置換:L318H、N295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dの1個若しくはそれ以上;または(b)以下のアミノ酸置換:K796、K809Rおよび/若しくはC818Aの1個若しくはそれ以上と組合せの(a)のいずれかのアミノ酸置換を含んでなる改変されたhLDLRをコードする。本ベクターを含有する製薬学的組成物、ならびにコレステロールの低下および/若しくは家族性高コレステロール血症の処置におけるそのための用途もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されたヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)遺伝子を含んでなる発現カセットを有する組換えベクターであって、前記hLDLR遺伝子が発現後にコレステロールを低下させる改変されたhLDLRをコードし、かつ、前記改変されたhLDLRが:(a)野生型hLDLR IDOL経路を妨害する1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換;および/または
(b)PCSK9経路を妨害することによりhLDLRの分解に抵抗性である1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換
を含んでなる、上記ベクター。
【請求項2】
改変されたhLDLRが、(a)配列番号1の番号付けに基づくN295、H306、V307、N309、D310および/若しくはL318の1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなる、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項3】
hLDLRが:配列番号1の番号付けに基づくN295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dから選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなる、請求項2に記載の組換えベクター。
【請求項4】
改変されたhLDLRが、場合によっては(a)のアミノ酸置換と組合せの、(b)配列番号1の番号付けに基づくL769R、K809Rおよび/若しくはC818Aの最低1個のアミノ酸置換を含んでなる、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項5】
ベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項1-4のいずれか1つに記載の組換えベクター。
【請求項6】
ベクターが、AAV8、rh64R1、AAV9若しくはrh10から選択されるキャプシドを含んでなるrAAVである、請求項1-5のいずれか1つに記載の組換えベクター。
【請求項7】
発現カセットが、肝細胞中の改変されたhLDLrの発現を特異的に指図するプロモーターを含んでなる、請求項1-6のいずれか1つに記載の組換えベクター。
【請求項8】
改変されたhLDLR遺伝子を含んでなる発現カセットを有するrAAVベクターであって、前記hLDLR遺伝子が、配列番号1の番号付けに基づくL318Dアミノ酸置換を含んでなる改変されたhLDLRをコードする、上記ベクター。
【請求項9】
改変されたhLDLRが、配列番号1の番号付けに基づくK809Rおよび/若しくはC818Aアミノ酸置換をさらに含んでなる、請求項8に記載のrAAVベクター。
【請求項10】
ベクターがAAV8、rh64R1、AAV9若しくはrh10から選択されるキャプシドを含んでなる、請求項8若しくは9に記載のrAAVベクター。
【請求項11】
発現カセットが、肝細胞中での改変されたhLDLrの発現を特異的に指図するプロモーターを含んでなる、請求項8-10のいずれか1つに記載のrAAVベクター。
【請求項12】
製薬学的に許容できる担体および請求項1-11のいずれか1つに記載の組換えベクターを含んでなる製薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1-6のいずれか1つに記載の組換えベクターをそれの必要な被験体に投与する
ことによる循環コレステロールレベルの低下方法であって、前記発現カセットが、該被験体での改変されたhLDLRの発現を指図する調節制御配列をさらに含んでなる、上記方法。
【請求項14】
請求項8-10のいずれか1つに記載のrAAVベクターをそれの必要な被験体に投与することによる循環コレステロールレベルの低下方法であって、前記発現カセットが、該被験体での改変されたhLDLRの発現を指図する調節制御配列をさらに含んでなる、上記方法。
【請求項15】
配列番号1の番号付けに基づくN295、H306、V307、N309、D310および/若しくはL318から選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸位置でhLDLRを改変することを含んでなる、hLDLRの循環半減期の増大方法。
【請求項16】
hLDLRが:配列番号1の番号付けに基づくN295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dから選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなるように改変されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
hLDLRが、配列番号1の番号付けに基づくK769R、K809Rおよび/若しくはC818Aアミノ酸置換を含んでなるようにさらに改変される、請求項15若しくは16に記載の方法。
【請求項18】
家族性高コレステロール血症を処置するためのレジメンでの使用のための請求項1-7のいずれか1つに記載の組換えベクター。
【請求項19】
家族性高コレステロール血症を処置するためのレジメンでの使用のための請求項8-11のいずれか1つに記載のrAAVベクター。
【請求項20】
(a)配列番号1の番号付けに基づくN295、H306、V307、N309、D310、L318および/若しくはL318の1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換;または
(b)配列番号1の番号付けに基づくK769R、K809Rおよび/若しくはC818Aの最低1個のアミノ酸置換と組合せの(a)のいずれかのアミノ酸置換
を含んでなる、合成若しくは組換えhLDLR。
【請求項21】
(a)の1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換が:配列番号1の番号付けに基づくN295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dから選択される、請求項20に記載の合成若しくは組換えhLDLR。
【請求項22】
請求項20若しくは21に記載の合成若しくは組換えhLDLRタンパク質および製薬学的に許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的形態で提出される資料の引用することによる組み込み
出願者は、ここに、これとともに電子的形態で提出される配列表資料を引用することにより組み込む。本ファイルは「14-7025PCT_ST25.txt」と表示される。
【0002】
連邦に支援される研究若しくは開発に関する声明
本研究は、国立保健研究所心・肺・血液研究所(National Institutes of Health,Heart.Lung and Blood Institute)からの助成金P01-HL059407-15により部分的に支援された。米国政府は本発明においてある種の権利を有しうる。
【背景技術】
【0003】
家族性高コレステロール血症(FH)は、低密度リポタンパク質の受容体(LDLR);その成熟形態で839アミノ酸を含有する一本鎖糖タンパク質の非存在を特徴とする常染色体性共優性障害である。非特許文献1。1つの異常な対立遺伝子、ヘテロ接合性HF(heFH)を伴う患者は血漿LDLの中程度の上昇を有しかつ未熟な冠動脈疾患(CAD)に苦しめられる一方、ホモ接合性FH患者(hoFH)は、生命を脅かす心血管系疾患(CVD)の早期発症をしばしばもたらす高い血清コレステロール(LDL-C>24mmol/L)を有する。非特許文献2。過剰な血清コレステロールを低下させるための現在の治療の選択肢は、LDLアフェレーシス[非特許文献3]およびコレステロール降下薬での処置を包含する。非特許文献4。同所肝移植は長期是正につながり得る[非特許文献5]とは言え、それは実質的な処置関連の罹病および死亡を伴う。
【0004】
アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を使用する肝に向けられる遺伝子治療は数種の代謝障害を安定に是正することが前臨床モデルで示されており、そして血友病AおよびB、オルニチントランスカルバミラーゼ欠乏症(OTC)ならびにα1アンチトリプシン(A1AT)欠乏症の処置のため臨床試験で現在追求されている。非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9]。最近、FHのヒト化マウスモデルにおける血清コレステロールレベルの是正におけるAAVに媒介される遺伝子治療の有効性が示された。非特許文献10。これらのマウスにおいて、ヒトLDLRを発現するAAV8(AAV8.hLDLR)の全身投与が第7日までに正常レベルへのコレステロールの低下につながり、それは1年にわたり持続しかつ既存のアテローム硬化症の退縮につながった。しかしながら、AAV8.LDLR形質導入は用量依存性であり、また、統計学的に有意の是正は1.5×1011GC/kg若しくはそれ以上のベクター用量でのみ達成された。臨床的遺伝子治療のため、ベクター用量を最小限にすることは、ベクター注入容量、毒性、免疫反応ならびに製造および商品の費用の制約を包含する多くの理由上きわめて重要である。
【0005】
肝LDLR発現は細胞内の複数の経路により調節される。すなわち、LDLR転写はステロール反応エレメント結合タンパク質(sterol response element binding protein)(SREBP)により調節され、また、HMGcoA還元酵素阻害剤(スタチン)は肝細胞内のコレステロール合成を阻害することによりSREBPを活性化する[非特許文献11]。
【0006】
プロタンパク質転換酵素スブチリシン ケキシン9型(PCSK9)が関わるLDLR調節の第二の経路が、ヒト遺伝子の高LDL-Cレベルを引き起こした機能獲得型変異[
非特許文献12]、および低LDL-Cレベルを引き起こした機能喪失型変異[非特許文献13]に基づいて発見された。PCSK9機能の喪失は心血管系疾患の88%低下を伴い、そしてPCSK9の阻害に基づく新たな分類のコレステロール降下薬の開発につながった[非特許文献14;非特許文献15]。FHを伴う患者はPCSK9の有意により高い血漿レベルを有する[非特許文献16]。
【0007】
LDLR調節の第三の経路は、IDOL(LDLRの誘導可能な分解物質(inducible degrader of LDLR))によるLDLRの分解を示したZelcherら、[非特許文献17]により発見された。E3ユビキチンリガーゼIDOLは肝X受容体(LXR)の活性化後に誘導され、そしてその後、受容体のユビキチン化および分解の媒介においてLDLRの細胞質側末端と相互作用した。さらに、低LDL-Cを伴う被験体のスクリーニングは、LDLRの分解を予防したIDOL中の機能喪失型変異を特定した[非特許文献18]。
【0008】
被験体、とりわけ家族性高コレステロール血症を有するものにおいてコレステロールを効果的に低下させるのに有用な組成物が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hussain MMら、Annu Rev Nutr.1999;19:141-172
【非特許文献2】Marais AD、Clin Biochem Rev.2004;25:49-68
【非特許文献3】McGowan MP.J Clin Lipidol.2013;7:S21-26
【非特許文献4】Hovingh GKら、Eur Heart J.2013;34:962-971
【非特許文献5】Raal FJ、2012;223:262-268
【非特許文献6】Wang Lら、Mol Genet Metab.2012;105:203-211
【非特許文献7】Brantly MLら、Proc Natl Acad Sci U S A.2009;106:16363-16368
【非特許文献8】Nathwani ACら、N Engl J Med.2011;365:2357-2365
【非特許文献9】Ward NJら、Blood.2011;117:798-807
【非特許文献10】Kassim SHら、PLoS One.2010;5:e13424
【非特許文献11】Blumenthal RS、Am Heart J.2000;139:577-583
【非特許文献12】Abifadel Mら、Nat Genet.2003;34:154-156
【非特許文献13】Cohen Jら、Nat Genet.2005;37:161-1653
【非特許文献14】Fitzgerald Kら、Lancet.2014;383:60-68
【非特許文献15】Giugliano RPら、Lancet.2012;380:2007-2017
【非特許文献16】Raal Fら、J Am Heart Assoc.2013;2:e000028
【非特許文献17】Zelcher Nら、Science.2009;325:100-104
【非特許文献18】Sorrentino Vら、Eur Heart J.2013;34:1292-1297
【発明の概要】
【0010】
PCSK9および/若しくはIDOL抵抗性により従来技術の「野生型」LDLRに比較して増大された有効性を有する、新規の操作されたヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)変異体が提供される。hLDLRのこれら操作された変異体は、適して、天然のhLDLRに比較してPCSK9および/若しくはIDOLに対する低下された親和性、増大された全身半減期を特徴とし、そしてコレステロールを低下させるのに有用である。これら変異体は、多数の経路を介して、およびとりわけ組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターのような組換えベクターにより媒介されるin vivo発現により、それの必要な被験体に送達し得る。
【0011】
いくつかの態様において、改変されたhLDLr遺伝子を含んでなる合成若しくは組換えベクターが提供される。いくつかの態様において、改変されたhLDLR遺伝子は発現後にコレステロールを低下させる改変されたhLDLRをコードする。いくつかの態様において、改変されたhLDLRは、野生型hLDLR IDOL経路を妨害する1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換、および/またはPCSK9経路を妨害することによりhLDLRの分解に抵抗性である1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなる。
【0012】
ある態様において、該合成若しくは組換えベクターは、アミノ酸位置N295、H306、V307、N309、D310、L318、L796、K809および/若しくはC818に1アミノ酸置換を含んでなる改変されたhLDLRをコードする。これらアミノ酸位置は配列番号1(シグナルペプチドを伴わないLDLR)の番号付けに基づく。特定の一態様において、1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換はN295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dであり、それらは野生型hLDLR IDOL経路を妨害するアミノ酸置換の例である。別の特定の態様において、1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換はL769R、K809Rおよび/若しくはC818Aであり、これらはPCSK9経路を妨害することによりhLDLRの分解に抵抗性であるアミノ酸置換の例である。別の特定の態様において、組換えベクターは、アミノ酸置換L7696R、K809Rおよび/若しくはC818A(配列番号1に基づく番号付け)の1個若しくはそれ以上と組合せのアミノ酸置換N295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dの1個若しくはそれ以上を含んでなる改変されたhLDLRをコードする。
【0013】
いくつかの態様において、本明細書に提供される組換えベクターは、改変されたhLDLRを含んでなる発現カセットを有する。いくつかの態様において、該発現カセットは、肝細胞中での改変されたhLDLRの発現を特異的に指図するプロモーターを含んでなる。
【0014】
いくつかの態様において、組換えベクターは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。いくつかの態様において、rAAVはAAV8、rh64R1、AAV9若しくはrh10から選択されるキャプシドを有する。特定の一態様において、改変されたhLDLR遺伝子を含んでなる発現カセットを有するrAAVベクターが提供され、ここで前記hLDLR遺伝子はL318Dアミノ酸置換を含んでなる改変されたhLDLRをコードする。特定の一態様において、改変されたhLDLRはさらにK809Rおよび/若しくはC818Aアミノ酸置換を含んでなる。特定の一態様において、rAAVベクターは、肝細胞中での改変されたhLDLrの発現を特異的に指図するプロモーターを含
んでなる発現カセットを含んでなる。
【0015】
ある態様において、hLDLR遺伝子は3個の置換:L318D/K809R/C818A(配列番号1に基づく番号付け)を有する改変されたhLDLrをコードする。置換の他の組合せを選択しうる。
【0016】
いくつかの態様において、製薬学的に許容できる担体および本明細書に記述されるところの組換えベクターを含んでなる製薬学的組成物が提供される。発現カセットを有する本明細書に記述される組換えベクターをそれの必要な被験体に投与することによる循環コレステロールレベルの低下方法もまた提供され、ここで前記発現カセットは、被験体における改変されたhLDLrの発現を指図する調節制御配列(regulatory control sequences)をさらに含んでなる。
【0017】
なお別の態様において、N295、H306、V307、N309、D310、L318、L7696、K809および/若しくはC818から選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸位置(配列番号1に基づく位置番号)でhLDLRを改変することを含んでなる、hLDLRの循環半減期の増大方法が提供される。特定の一態様において、hLDLRは、N295D、H306D、V307D、N309A、D310N、L318Hおよび/若しくはL318Dから選択される1個若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなるように改変される。別の特定の態様において、hLDLRは、K769R、K809Rおよび/若しくはC818Aアミノ酸置換を含んでなるようにさらに改変される。
【0018】
上述される組換えベクターは家族性高コレステロール血症を処置するためのレジメンで使用し得る。
【0019】
本発明の他の局面および利点は本発明の以下の詳細な記述から容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aおよび1Bは、hPCSK9調節を免れるLDLR変異体のin vitro評価の結果を提供する。野生型hLDLR若しくはLDLR変異体の1種を発現するプラスミドをhPCSK9と一緒にHEK293細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクション24時間(hr)後に、細胞をBODIPYTM-LDL[Molecular Probes]で2hrパルスし、そしてその後蛍光LDL陽性細胞についてフローサイトメトリーにより評価した。図1Aは、hLDLR若しくはhPCSK9と一緒のhLDLRでコトランスフェクトされた場合のBODIPYTM-LDL陽性細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。該実験は、無関係なプラスミド(偽似)で細胞をトランスフェクトすることにより対照した。図1Bは、hLDLRのみトランスフェクトされた細胞に関するhLDLRおよびhPCSK9でコトランスフェクトされた細胞中のBODIPY-LDL陽性細胞の倍数変化(fold change)を示す棒グラフである。図1Cは、mLDLRを発現するマウスモデルでのin vivo結果を示す棒グラフである。該結果はhPCSK9とmLDLRの間のある程度の相互作用を示す。
図2図2A-2Cは、hPCSK9のin vivo過剰発現が野生型hLDLRを投与された動物における血清コレステロールの増大に至ることを示す研究からの結果を提供する。LDLR-/-、APOBEC-1-/-二重ノックアウト(DKO)マウス(n=4/群)に、5×1010GCの用量のAAV8.TBG.hLDLR若しくは5×1010GCのAAV9.hPCSK9ベクターと一緒のAAV8.TBG.hLDLRを静脈内投与した。ベクター投与前および30日後の動物からの血清を、総血清コレステロールおよびHDLコレステロールについて分析した。非HDLコレステロールレベルは総コレステロールからHDL成分を差し引くことにより決定した。図2Aは、hPCSK9とともに若しくは伴わずにhLDLRを受領した動物におけるベースラインレベルに関する第30日の非HDL血清コレステロールの変化パーセントを示す棒グラフである。図2Bは、hLDLR若しくはhLDLRおよびhPCSK9を受領したマウスからの血清中のhPCSK9発現の時間経過を示す線グラフである。hPCSK9発現はサンドイッチELISAを使用して評価した。ヒトにおける報告される参照平均hPCSK9レベルもまた該グラフ上に示す。図2Cは、hLDLR若しくはhPCSK9を伴うhLDLRで処置されるマウスにおけるhLDLR発現のイムノブロットである。群あたり2匹の代表動物からの総肝ライセートを4-12%勾配SDSゲル上で電気泳動し、そしてポリクローナル抗hLDLRヤギポリクローナル抗体でプロービングした。マウスチューブリン発現を負荷対照として使用した。全部の値は平均±SEMとして表す。***p<0.001。
図3図3Aおよび3Bは、hLDLR-L318Dで形質導入されたマウスがhPCSK9に媒介される調節に抵抗性であることを具体的に説明する。DKOマウス(n=4/群)を5×1010GCのAA9.hPCSK9と一緒に5×1010GCのAAV8.hLDLR若しくはhLDLR-L318Dで共形質導入した。ベクター投与前および30日後の動物からの血清を総コレステロールおよびHDLコレステロールについて評価した。図3Aは、hPCSK9と一緒にhLDLR若しくはhLDLR-L318Dを共投与されたDKOマウスにおけるベクター投与前に関する第30日の非HDL血清コレステロールレベルの変化パーセントを示す棒グラフである。図3Bは、4-12%SDS PAGEゲル上で電気泳動されかつhLDLR発現についてプロービングされた群あたり2動物からの総肝ライセートを示す。マウスチューブリン発現を負荷対照として使用した。全部の値は平均±SEMとして表す。***p<0.001。ns p>0.05。
図4図4A-4Dは、AAV8.hLDLR-K809R\C818Aがin vivoのhIDOLに媒介される調節を免れることを具体的に説明する。HEK293細胞を、hIDOLと一緒にhLDLR若しくはhLDLR-K809R\C818Aいずれかを発現するプラスミドで一過性にトランスフェクトした。24hr後に細胞をBODIPY-LDLで2hrパルスし、そしてその後フローサイトメーターを使用して蛍光LDL取り込みについて評価した。図4Aは、hIDOLと一緒にhLDLR若しくはhLDLR-K809R\C818AでトランスフェクトされたBODIPYTM-LDL陽性細胞パーセントを示す棒グラフである。図4Bは、1×1011GCのAAV9hPCSK9ベクターを全身投与されたLDLR+/-、Apobec-/-、Tg-hApoB100(LAHB)ヘテロ接合性FH(heFH)マウス(n=4)からのデータを示す線グラフである。ベクター投与後の非HDLコレステロールレベルの時間経過。図4Cは、AAV9.hIDOL 5×1010GCと一緒に3×109GCのAAV8.hLDLR若しくはAAV8.hLDLR-K809R\C818Aを全身投与されたホモ接合性FH(hoFH)DKOマウス(n=4\群)を示す棒グラフである。ベクター投与前および30日後の動物からの血清を総血清コレステロールについて評価した。投与前のベースラインレベルに関する30日の血清非HDLレベルの変化パーセント。全部の値は平均±SEMとして表す。***p<0.0001。*p<0.05。ns p>0.05。図4Dは、4-12%SDSゲル上で電気泳動されかつ抗hLDLR抗体を使用してプロービングされた、トランスフェクトされた細胞(図4A)の全細胞ライセートを提供する。チューブリン負荷対照と一緒のLDLRの成熟(M)およびプロセシングされた(P)形態のLDLRの場所を示す。
図5図5A-5Bは、3アミノ酸置換をコードするAAV8.hLDLR-L318D\K809R\C818A変異体がPCSK9およびIDOL双方に媒介される調節を免れることを具体的に説明する。図5Aは、DKOマウス(n=4)に3×109GCのhLDLR若しくはhLDLR-L318D\K809R\C818Aを静脈内投与した研究での結果を具体的に説明する。マウスの追加の群はAAV9.hIDOLの同時投与もまた受領した。総血清コレステロールレベルをベクター投与前および30日後に評価した。ベースラインに関する非HDLコレステロールの減少パーセント。群あたり2匹の代表動物からの総肝ライセートを、負荷対照としてのチューブリンと一緒にSDS PAGEゲル上で電気泳動しかつ抗hLDLR抗体を使用してプロービングした。図5Bは、AAV9.hPCSK9(5×1010GC)と一緒のAAV8.hLDLR(5×1010GC)若しくはhLDLR-L318D\K809R\C818Aの共投与後の結果を具体的に説明する。ベースラインに関する第30日の非HDLコレステロールの減少パーセントを、肝でのhLDLR発現のイムノブロットと一緒に示す。n ***p<0.001。
図6】DKOマウスでPCSK9調節を免れる変異体のhLDLR活性を具体的に説明する棒グラフである。DKOマウス(n=4/群)に、3×1010GCのAAV8.TBG.hLDLR若しくは9種のhPCSK9エスケープ変異体の1種を発現するAAV8ベクターを注入した。動物からの血清をベクター投与前および30日後に分析し、そしてベースラインと比較した第30日の日(day 30 day)の非HDLコレステロールの低下パーセントをSDと一緒に示す。
図7】AAV.hLDLRがより高用量で投与される場合にhIDOLに媒介される阻害を克服することを具体的に説明する棒グラフである。DKOマウス(n=4/群)に5×1010GCのAAV8.TBG.hLDLR若しくはAAV8.TBG.hLDLR-K809R\C818Aを投与した。マウスの追加の群は5×1010GCのAAV9.TBG.hIDOLのと一緒にhLDLRを受領した。ベースラインと比較した第30日の非HDLコレステロールレベルのパーセントをSDと一緒に示す。
図8】LDLR-/-、ApoBec-/-二重ノックアウト1マウスモデルでPCSK9調節を免れる変異体のhLDLR活性を具体的に説明する棒グラフである。DKOマウス(n=5/群)に、5×1010GCのAAV9.TBG.hPCSK9ベクターと一緒に、5×1010GCのAAV8.TBG.hLDLR若しくは9種のhPCSK9エスケープ変異体の1種を発現するAAV8ベクターを注入した(尾静脈)。動物からの血清をベクター投与前および30日後に分析した。ベースラインと比較した第30日の日(day 30 day)の非HDLコレステロールの低下パーセントをSDと一緒に示す。対照マウスはPCSK9の共投与を伴わずLDLRベクターのみを受領した(各対の左への棒)。
【0021】
[発明の詳細な記述]
本明細書に記述される新規の操作されたヒト低密度リポタンパク質受容体(hLDLR)変異体は、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)による分解を実質的に回避しかつ/若しくはLDLRの誘導可能な分解物質(inducible degrader of LDLR)(IDOL)による分解を実質的に回避するそれらの能力に少なくとも部分的により、天然のhLDLRと比較して増大された半減期およびコレステロールレベルの低下における増大された有効性を特徴とする。
【0022】
多数の経路を介する、およびとりわけrAAVベクターのような組換えベクターにより媒介されるin vivo発現による、それの必要な被験体へのこれら変異体の送達が記述される。それの必要な被験体におけるコレステロールレベルを低下させる、家族性高コレステロール血症を処置する、アテローム硬化症を処置する、未熟な冠動脈疾患のリスクを低下させる、および/若しくは心血管系疾患の早期発症を減少させるためのレジメンでのこれら変異体の使用方法もまた提供される。有利には、本明細書で提供される組成物は、これらの処置およびレジメンで複数の経路を同時に標的とするのに有用である。
【0023】
本明細書で使用されるところの家族性高コレステロール血症(FH)という用語は脂質代謝の遺伝性障害を指す。本明細書で別の方法で明記されない限り、ホモ接合性FH(hoFH)被験体およびヘテロ接合性FH(heFH)被験体双方がFHという用語内に包括される。
【0024】
本明細書で使用されるところの「コレステロールレベルを低下させる(こと)」という用語は、血清コレステロールレベルを減少させることおよび/若しくは(例えば血漿中の
)低密度リポタンパク質レベルを減少させることを包括しうる。アテローム硬化症を処置することは、プラークの数および/若しくは量を減少させることならびに/または動脈硬化プラークのさらなる蓄積を予防することを包含しうる。
【0025】
成熟「野生型」hLDLR(アイソフォーム1)のアミノ酸配列が便宜上配列番号1として本明細書で再現され、そして本明細書に提供されるアミノ酸変異の番号付けのための参照を提供する。本明細書に提供される配列の番号付けは成熟hLDLRタンパク質(839アミノ酸の一本鎖糖タンパク質)を指す一方、野生型hLDLRリーダー配列(配列番号2のアミノ酸1-21)を使用しうるか若しくは異種リーダー配列を本明細書に記述される構築物での使用のため選択しうることが理解されることができる。加えて、若しくは場合によっては、その配列が例えばhttp://www.uniprot.org/uniprot/P01130から入手可能である他のhLDLRアイソフォーム2、3、4、5および6の1種若しくはそれ以上、ならびに本明細書に記述されるアミノ酸置換を、これらのアイソフォーム中に組み込みうる(これらアイソフォームの配列が便宜上再現されている配列番号3-7もまた参照されたい)。以下の記述において、置換は(1文字記号により特定される第一のアミノ酸)-残基位置番号-(1文字記号により特定される第二のアミノ酸)としてもまた書くことができ、それにより第一のアミノ酸は置換されるアミノ酸でありかつ第二のアミノ酸はアイソフォーム1に準拠する指定される位置の置換するアミノ酸であり;しかしながら、慣習的アライメント段階により、アイソフォーム1の番号付けに関して本明細書で特定される該対応するアミノ酸残基は、本明細書で特定される他のアイソフォーム若しくはhLDLRタンパク質中に配置され得る。
【0026】
上述される「アミノ酸置換」という用語およびその同義語は、1アミノ酸の別の置換するアミノ酸での置換によるあるアミノ酸配列の改変を包括することを意図している。置換は保存的置換でありうる。それはまた非保存的置換でもありうる。2アミノ酸を指すことにおける保存的という用語は、該アミノ酸が当業者により認識される共通の特性を共有することを意味することを意図している。例えば、疎水性の非酸性側鎖を有するアミノ酸、疎水性の酸性側鎖を有するアミノ酸、親水性の非酸性側鎖を有するアミノ酸、親水性の酸性側鎖を有するアミノ酸、および親水性の塩基性側鎖を有するアミノ酸。共通の特性は、疎水性側鎖を有するアミノ酸、脂肪族の疎水性側鎖を有するアミノ酸、芳香族の疎水性側鎖を有するアミノ酸、極性の中性側鎖をもつアミノ酸、荷電している側鎖をもつアミノ酸、荷電している酸性側鎖をもつアミノ酸、および荷電している塩基性側鎖をもつアミノ酸でもまたありうる。天然に存在するおよび天然に存在しないの双方のアミノ酸は当該技術分野で既知であり、そして態様において置換するアミノ酸として使用されうる。アミノ酸の置換方法は当業者に公知であり、そして、限定されるものでないがアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の突然変異を挙げることができる。本明細書の「1若しくはそれ以上」への言及は、例えば1、2、3、4、5、6若しくはそれ以上の個別の態様を包括することを意図している。
【0027】
本明細書に記述されるところの、本明細書で提供されるhLDLR変異体は、野生型LDLRに特徴的なPCSK9分解を低下させるよう操作されている。一態様において、変異体は、天然のロイシン(Leu)が改変されている位置318のアミノ酸置換を有するヒトLDLRである。一例において、L318はヒスチジン(His、H)に改変される。しかしながら他の置換(例えばL318D)をこの位置で作成しうる。あるいは、若しくは加えて、PCSK9分解に抵抗性の他のhLDLR変異体を本明細書で同定されるもののなかから選択しうる。これらは例えばN295、H306、V307、N309および/若しくはD310(配列番号1に基づく位置番号)の置換を包含しうる。PCSK9分解に対する抵抗性の決定および/若しくは野生型hLDLRと比較した増大された循環半減期の測定方法は当該技術分野で既知であり、そして最低1種のこれらアッセイを下の実施例で具体的に説明する。
【0028】
加えて、本明細書に記述されるPCSK9抵抗性LDLR変異体は、IDOLによる分解に対する抵抗性を包含するようさらに操作しうる。この特徴を付与するための適する置換は位置K796(配列表中でK6と略称される)、K809およびC818での置換を包含する。本明細書に具体的に説明される置換はK809RおよびC818Aである。しかしながら他のIDOL抵抗性置換を選択しうる。IDOL分解に対する抵抗性の決定および/若しくは野生型hLDLRと比較した増大された循環半減期の測定方法は当該技術分野で既知であり、そして最低1種のこれらアッセイを下の実施例に具体的に説明する。
【0029】
上の変異体の1種若しくはそれ以上を組み込むhLDLRアイソフォーム1のアミノ酸配列に対する他の改変が本発明内に包括される。例えば、アイソフォーム2(配列番号3)、アイソフォーム3(配列番号4)、アイソフォーム4(配列番号5)、アイソフォーム5(配列番号6)およびアイソフォーム7(配列番号7)のいずれかのアミノ酸配列に対する対応する改変を利用しうる。これらアイソフォームは本明細書の配列表に再現される。別の例において、本明細書に記述されるhLDLR変異体はhLDLRリーダー配列を含有するよう操作しうる。あるいは、異種リーダー配列をhLDLR変異体のN末端に操作しうる。あるいは、本明細書に記述されるhLDLR変異体の治療的機能の1種若しくはそれ以上を保持しならびにPCSK9抵抗性および/若しくはIDOL抵抗性を特徴とする、本明細書に提供されるhLDLR変異体(リーダー配列を除外する)に対する約5%までの変異(該変異体配列に対する約95%同一性ないし約99.9%同一性、若しくは約97%ないし約98%同一性)を包含しうるなお他の変異を選択しうる。
【0030】
本記述の実施例の節において、多数の構築物が最初のin vitroスクリーニングにおいてPCSK9調節を免れた一方で、該研究はL318Dアミノ酸置換に焦点を当てた。本明細書に提供される変異体のなかで、L318D改変はin vitroおよびin vivo双方でPCSK9からの保護を付与することが示されている。本明細書に提供される実施例において、L318D(配列番号1に基づく位置番号、配列番号26のリーダー配列を伴う具体的に説明する構築物)が、PCSK9を過剰発現するマウスにおいて肝発現後に保護を付与し、そして血清コレステロールの有意の減少に至り;一方、野生型LDLRはより少なく効率的でありかつPCSK9によりより容易に分解された。
【0031】
下の実施例に具体的に説明されるとおり、K809R/C818A hLDLR二重変異体(配列番号1に基づく位置番号、配列番号36のリーダー配列を伴う具体的に説明する構築物]は、hIDOLを発現するマウスにおいて肝発現後に保護を付与しかつ血清コレステロールの有意の減少に至り;一方、野生型LDLRはより少なく効率的でありかつIDOLによりより容易に分解された。これらのデータは、従って、LDLR中のアミノ酸改変はin vivoのIDOLに媒介される抑制もまた克服し得ることを確立する。LDLR分解に至る因子は、阻害剤を除去するための基質の欠如により内因性受容体発現を欠く被験体でより高いことが期待される。FH被験体に存在することが知られている負の細胞調節経路の克服におけるLDLR変異体の有用性が本明細書に示される。ここに提示される知見は、FHのための遺伝子治療製品で有用である高レベルの阻害因子を発現するヒト化されたマウスモデルでのコレステロールの低下における、AAVにコードされる「機能獲得型」導入遺伝子の成功裏の使用を初めて示す。
【0032】
本明細書に提供されるhLDLRタンパク質変異体に加え、これらhLDLRタンパク質変異体をコードする核酸配列が提供される。これらの変異体のコーディング配列は、野生型核酸配列の部位特異的突然変異誘発を使用して生成しうる。別法として若しくは加えて、ウェブに基づく若しくは商業的に利用可能なコンピュータプログラム、ならびにサービスに基づく会社(service based companies)を使用して、アミノ酸配列をRNAおよび/若しくはcDNA双方を包含する核酸コーディング配列に戻
し翻訳しうる。例えば、EMBOSSによるbacktranseq、http://www.ebi.ac.uk/Tools/st/;Gene Infinity(http://www.geneinfinity.org/sms-/sms_backtranslation.html);ExPasy(http://www.expasy.org/tools/)を参照されたい。一態様において、該RNAおよび/若しくはcDNAコーディング配列を、ヒト細胞中での最適な発現のため設計する。
【0033】
コドン最適化されたコーディング領域は多様な異なる方法により設計し得る。この最適化は、オンラインで利用可能である方法、公開された方法、若しくはコドン最適化サービスを提供する会社を使用して実施しうる。1つのコドン最適化方法は、例えば米国特許出願第61/817,110号明細書(本明細書に引用することにより組み込まれる)に記述されている。簡潔には、該産物をコードする核酸配列を同義のコドン配列で改変する。適しては該産物の読み取り枠(ORF)の完全長を改変する。しかしながら、いくつかの態様において、ORFの1フラグメントのみを変えることができる。これらの方法の1つを使用することにより、該頻度をいずれの所定のポリペプチド配列にも適用し得、そして該ポリペプチドをコードするコドン最適化されたコーディング領域の核酸フラグメントを製造し得る。
【0034】
核酸配列の文脈における「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」若しくは「同一のパーセント」という用語は、対応のため整列される場合に同一である2配列中の塩基を指す。配列同一性比較の長さはゲノムの完全長、遺伝子コーディング配列の完全長、若しくは最低約500ないし5000ヌクレオチドのフラグメント、または所望のとおりにわたることができる。しかしながら、例えば最低約9ヌクレオチド、通常は最低約20ないし24ヌクレオチド、最低約28ないし32ヌクレオチド、最低約36ヌクレオチド若しくはそれ以上のより小さいフラグメント間の同一性もまた望ましいことができる。複数配列アライメントプログラムが核酸配列についてもまた利用可能である。こうしたプログラムの例は、インターネット上のウェブサーバーを通じてアクセス可能である「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」および「MEME」を包含する。こうしたプログラムの他の供給源は当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。上述されたプログラムに含有されるものを包含する、ヌクレオチド配列同一性を評価するのに使用し得る当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列はGCGバージョン6.1中のプログラムFastaTMを使用して比較し得る。FastaTMはクエリおよび検索配列の間の最良の重複の領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、GCGバージョン6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)に提供されるところのそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスについてのNOPAMファクター)を用いるFastaTMを使用して決定し得る。
【0035】
アミノ酸配列の文脈における「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」若しくは「同一のパーセント」という用語は、対応のため整列される場合に同一である2配列中の残基を指す。同一性パーセントは、あるタンパク質の完全長にわたるアミノ酸配列、ポリペプチド、約32アミノ酸、約330アミノ酸若しくはそれらのペプチドフラグメント、または対応する核酸配列コーディングシークエンサー(nucleic acid sequence coding sequencer)について容易に決定しうる。適するアミノ酸フラグメントは長さが最低約8アミノ酸であることができ、そして約700アミノ酸まででありうる。一般に、2種の異なる配列間の「同一性」、「相同性」若しくは「類似性」を指す場合、「同一性」、「相同性」若しくは「類似性」は「整列される」配列に関して決定される。「整列される」配列若しくは「アライメ
ント」は、参照配列と比較して欠けている若しくは付加的な塩基若しくはアミノ酸に対する是正をしばしば含有する複数の核酸配列若しくはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。アライメントは多様な公的若しくは商業的に利用可能な多配列アライメントプログラムのいずれかを使用して実施する。配列アライメントプログラム、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」および「Match-Box」プログラムがアミノ酸配列に利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変更し得る。あるいは、当業者は、少なくとも、参照されるアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性若しくはアライメントの水準を提供する別のアルゴリズム若しくはコンピュータプログラムを利用し得る。例えば、J.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.、“A comprehensive comparison of multiple sequence
alignments”、27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0036】
一態様において、本明細書に記述されるhLDLR変異体をコードする核酸配列(例えばLDLRバリアント遺伝子)は、例えば、パッケージング宿主細胞中でDNA若しくはRNAウイルスベクターを運搬するナノ粒子を生成するためおよび/または被験体中の宿主細胞への送達のためその上に運搬されているhLDLR配列を宿主細胞に移入するいずれかの適する遺伝要素、例えば裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、RNA分子(例えばmRNA)、エピソームなど中に操作される。一態様において、遺伝要素はプラスミドである。選択される遺伝要素は、トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含するいずれかの適する方法により送達しうる。こうした構築物を作成するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包含する。例えば、GreenとSambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)を参照されたい。
【0037】
本明細書で使用されるところの「発現カセット」は、hLDLR変異体コーディング配列、プロモーターを含んでなりかつそのための他の制御配列を包含しうる核酸分子を指し、このカセットは遺伝要素中に操作されることができかつ/若しくはウイルスベクターのキャプシド(例えばウイルス粒子)中にパッケージングされうる。典型的に、ウイルスベクターを生成するためのこうした発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルおよび本明細書に記述されるもののような他の発現制御配列により隣接されている本明細書に記述されるhLDLR配列を含有する。
【0038】
該発現カセットは典型的に発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含有する。本明細書に記述される具体的に説明するプラスミドおよびベクターは肝特異的プロモーターチロキシン結合グロブリン(TBG)を使用する。あるいは他の肝特異的プロモーターを使用しうる[例えば、肝特異的遺伝子プロモーターデータベース(The Liver Specific Gene Promoter Database)、コールドスプリングハーバー、http://rulai.schl.edu/LSPD、α1アンチトリプシン(A1AT);ヒトアルブミン Miyatakeら、J.Virol.、71:5124 32(1997)、humAlb;およびB型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.、3:1002 9(1996)を参照されたい]。TTRミニマルエンハンサー/プロモーター、αアンチトリプシンプロモーター、LSP(845nt)25(イントロンレスscAAVを必要とする)。より少なく望ましいとは言え、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーター
[例えば第WO 2011/126808号明細書および第WO 2013/04943号明細書を参照されたい]、若しくは生理学的合図に応答性のプロモーターのような他のプロモーターを、本明細書に記述されるベクターで使用し利用しうる。
【0039】
プロモーターに加え、発現カセットおよび/若しくはベクターは、他の適切な転写開始、終止、エンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を含有しうる。適するポリA配列の例は、例えばSV40、ウシ成長ホルモン(bGH)およびTKポリAを包含する。適するエンハンサーの例は、とりわけ、例えばαフェトプロテインエンハンサー、TTRミニマルプロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/α1ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)を包含する。
【0040】
これら制御配列はhLDLR遺伝子配列に「作動可能に連結されて」いる。本明細書で使用されるところの「作動可能に連結されている」という用語は、目的の遺伝子と隣接している発現制御配列および目的の遺伝子を制御するためにトランスで若しくは離れて作用する発現制御配列の双方を指す。
【0041】
発現カセットは、ウイルスベクターの製造のため使用されるプラスミド上で操作されうる。AAVウイルス粒子中に発現カセットをパッケージングするのに必要とされる最小配列はAAV 5’および3’ITRであり、それらはキャプシドと同一のAAV起源のもの若しくは異なるAAV起源のもの(AAVシュードタイプを製造するために)でありうる。一態様において、AAV2からのITR配列若しくはその欠失されたバージョン(ΔITR)を、便宜上および規制当局による承認を促進するために使用する。しかしながら他のAAV供給源からのITRを選択しうる。ITRの供給源がAAV2からでありかつAAVキャプシドが別のAAV供給源からである場合、生じるベクターはシュードタイピングされたと称することができる。典型的に、AAVベクターのための発現カセットは、AAV 5’ITR、hLDLRコーディング配列およびいずれかの制御配列ならびにAAV 3’ITRを含んでなる。しかしながらこれらのエレメントの他の構成が適することができる。D配列および末端解離部位(terminal resolution site)(trs)が欠失されている、ΔITRと称される5’ITRの短縮されたバージョンが記述されている。他の態様において、完全長のAAV 5’および3’ITRを使用する。
【0042】
「sc」という略称は自己相補型を指す。「自己相補型AAV」は、組換えAAV核酸配列により運搬されるコーディング領域が分子内二本鎖DNA鋳型を形成するよう設計されている発現カセットを有するプラスミド若しくはベクターを指す。感染に際して、第二の鎖の細胞に媒介される合成を待機するよりことむしろ、scAAVの2個の相補的半分が会合して、即座の複製および転写の準備ができている1個の二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成することができる。例えばD M McCartyら、“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”、Gene Therapy、(August 2001)、Vol 8、Number 16、1248-1254ページを参照されたい。自己相補型AAVは、例えば米国特許第6,596,535号明細書;同第7,125,717号明細書;および同第7,456,683号明細書(それらのそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている。
【0043】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、その中に標的細胞への送達のための核酸配列をパッケージングされるAAVタンパク質キャプシドを有するAAV DNアーゼ抵抗性粒子である。AAVキャプシドは、60個のキャプシドタンパク質サブユニット、VP1、VP2およびVP3から構成され、それらは選択されたAAVに依存しておよそ1:1:10ないし1:1:20の比で正十二面体の対称に配置される。例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh10、AAVrh64R1、AAVrh64R2、rh8を包含するAAV血清型を、AAVウイルスベクターのキャプシド(DNアーゼ抵抗性ウイルス粒子)の供給源として選択しうる[例えば米国特許出願公開第2007-0036760-A1号明細書;米国特許出願公開第2009-0197338-A1号明細書;第EP 1310571号明細書を参照されたい]。第WO 2003/042397号明細書(AAV7および他のサルAAV)、米国特許第7790449号明細書および米国特許第7282199号明細書(AAV8)、第WO 2005/033321号明細書および第US 7,906,111号明細書(AAV9)、ならびに第WO 2006/110689号明細書もまた参照されたい]、ならびにrh10[第WO 2003/042397号明細書]、またはなお発見されるはずである若しくはそれに基づく組換えAAVをAAVキャプシドの供給源として使用しうる。これら文書はAAVを生成するために選択することができる他のAAVもまた記述し、そして引用することにより組み込まれる。いくつかの態様において、ウイルスベクターでの使用のためのAAV capを、前述のAAV Capの1種若しくはそのコーディング核酸の突然変異誘発により(すなわち挿入、欠失若しくは置換により)生成し得る。いくつかの態様において、AAVキャプシドは前述のAAVキャプシドタンパク質の2種若しくは3種若しくは4種若しくはそれ以上からのドメインを含んでなるキメラである。いくつかの態様において、AAVキャプシドは、2若しくは3種の異なるAAVまたは組換えAAVからのVpl、Vp2およびVp3単量体のモザイクである。いくつかの態様において、rAAV組成物は前述のCapの1種以上を含んでなる。
【0044】
ビリオン中に発現カセットをパッケージングするため、ITRは遺伝子と同一の構築物中にシスで必要とされる唯一のAAV成分である。一態様において、複製(rep)および/若しくはキャプシド(cap)のためのコーディング配列がAAVゲノムから除去され、そしてAAVベクターを生成するためにトランスで若しくはパッケージング細胞株により供給される。例えば、上述されたとおり、シュードタイピングされたAAVはAAVキャプシドの供給源と異なる供給源からのITRを含有しうる。加えて、若しくは、あるいは、キメラAAVキャプシドを利用しうる。なお他のAAV成分を選択しうる。こうしたAAV配列の供給源は本明細書に記述されており、そして学究的、商業的若しくは公的供給源(例えばthe American Type Culture Collection、ヴァージニア州マナサス)から単離する若しくは得ることもまたできる。あるいは、AAV配列は、合成、または例えばGenBank(登録商標)、PubMed(登録商標)などのような文献若しくはデータベース中で入手可能であるような公表された配列への参照による他の適する手段により、得ることができる。
【0045】
被験体への送達に適するAAVウイルスベクターの生成および単離方法は当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号明細書;米国特許第7282199号明細書;第WO 2003/042397号明細書;第WO 2005/033321号明細書、第WO 2006/110689号明細書;および第US 7588772 B2号明細書を参照されたい]。ある1系において、産生体細胞株を、ITRならびにrepおよびcapをコードする構築物(1種若しくは複数)により隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。ある第二の系において、repおよびcapを安定に供給するパッケージング細胞株を、ITRにより隣接されている導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトする。これらの系のそれぞれ
において、AAVビリオンが、ヘルパーアデノウイルス若しくはヘルペスウイルスへの感染に応答して産生され、汚染するウイルスからのrAAVの分離を必要とする。より最近、AAVを回収するためにヘルパーウイルスへの感染を必要としない系が開発された。すなわち、必要とされるヘルパー機能(すなわちアデノウイルスE1、E2a、VAおよびE4若しくはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52およびUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた該系によりトランスで供給される。これらのより新しい系において、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物への細胞の一過性トランスフェクションにより供給し得るか、若しくは、細胞を、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含有するように操作することができ、その発現を転写若しくは翻訳後レベルで制御し得る。なお別の系において、ITRおよびrep/cap遺伝子により隣接されている導入遺伝子を、バキュロウイルスに基づくベクターへの感染により昆虫細胞中に導入する。これら産生系に関する総説については、全般として、例えばZhangら、2009、“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production”、Human Gene Therapy 20:922-929(そのそれぞれの内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これらおよび他のAAV産生系の作成および使用方法は、以下の米国特許(そのそれぞれの内容はそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる):第5,139,941号明細書;第5,741,683号明細書;第6,057,152号明細書;第6,204,059号明細書;第6,268,213号明細書;第6,491,907号明細書;第6,660,514号明細書;第6,951,753号明細書;第7,094,604号明細書;第7,172,893号明細書;第7,201,898号明細書;第7,229,823号明細書;および第7,439,065号明細書にもまた記述されている。全般として、例えば、GriegerとSamulski、2005、“Adeno-associated virus as a gene therapy vector: Vector development,production and clinical applications、”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145;Buningら、2008、“Recent developments in adeno-associated virus vector technology、”J.Gene Med.10:717-733;および下に引用される参考文献(そのそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。本発明のいずれかの態様を構築するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包含する。例えば、GreenとSambrookら、Molecular Cloning:A
Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンの生成方法は公知であり、そして適する方法の選択は本発明に対する制限でない。例えばK.Fisherら、(1993)J.Virol.、70:520-532および米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。
【0046】
場合によっては、本明細書に記述されるhLDLR遺伝子はrAAV以外のウイルスベクターを介して送達しうる。こうした他のウイルスベクターは、遺伝子治療が用いられ得るに適するいかなるウイルスも包含しうる(限定されるものでないがアデノウイルス;ヘルペスウイルス;レンチウイルス;レトロウイルスなどを包含し得る)。適しては、これら他のベクターの1種が生成される場合、それは複製欠損ウイルスベクターとして製造される。
【0047】
「複製欠損ウイルス」若しくは「ウイルスベクター」は、目的の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスキャプシド若しくはエンベロープにパッケージングされている合成す
なわち人工ウイルス粒子を指し、そこでウイルスキャプシド若しくはエンベロープ内にまたパッケージングされているいかなるウイルスゲノム配列も複製欠損であり;すなわち、それらは子孫ビリオンを生成し得ないがしかし標的細胞を感染させる能力を保持する。一態様において、ウイルスベクターのゲノムは複製するために必要とされる酵素をコードする遺伝子を包含しない(該ゲノムは「臆病」であるように操作し得る、すなわち該人工ゲノムの増幅およびパッケージングのために必要とされるシグナルにより隣接されている目的の導入遺伝子のみを含有する)が、しかしこれら遺伝子は産生の間に供給されうる。従って、それは遺伝子治療での使用に安全と思われる。子孫ビリオンによる複製および感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下を除き発生し得ないからである。
【0048】
本明細書に記述される製薬学的組成物は、いずれかの適する経路若しくは多様な経路の組合せによるそれの必要な被験体への送達のため設計される。肝への直接送達(場合によっては静脈内を介して、肝動脈を介して、若しくは移植により)、経口、吸入、鼻内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および他の非経口投与経路。本明細書に記述されるウイルスベクターは単一組成物若しくは複数の組成物中で送達しうる。場合によっては、2種若しくはそれ以上の異なるAAVまたは複数のウイルスを送達しうる[例えば第WO 2011/126808号明細書および第WO 2013/049493号明細書を参照されたい]。別の態様において、複数のウイルスが異なる複製欠損ウイルス(例えばAAVおよびアデノウイルス)を含有しうる。
【0049】
複製欠損ウイルスは、遺伝子移入および遺伝子治療の応用での使用のため生理学的に許容できる担体と配合し得る。AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量化を製剤中に含有される用量の尺度として使用しうる。当該技術分野で既知のいかなる方法も、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定するのに使用し得る。AAV GC数のタイトレーションの一実施方法は後に続くとおりである。すなわち、精製されたAAVベクター試料を最初にDNアーゼで処理して、被包化されていないAAVゲノムDNA若しくは汚染するプラスミドDNAを製造工程から排除する。DNアーゼ抵抗性粒子をその後、キャプシドからゲノムを放出するため熱処理にかける。放出されるゲノムをその後、該ウイルスゲノムの特定領域(通常ポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブ組を使用するリアルタイムPCRにより定量化する。
【0050】
また、複製欠損ウイルス組成物を、ヒト患者について約1.0×109GCないし約1
.0×1015GC(体重が70kgの平均的被験体を処置するため)、および好ましくは1.0×1012GCないし1.0×1014GCの範囲にある複製欠損ウイルスの量を含有するように投薬量単位中に配合し得る。別の態様において該用量は約1.5×1011GC/kg未満である。例えば、AAVウイルスの用量は約1×109GC、約5×109GC、約1×1010GC、約5×1010GC若しくは約1×1011GCでありうる。別の例において、変異体を約0.001mgないし約10mg/kgの量で送達しうる。
【0051】
上述された組換えベクターは公表された方法に従って宿主細胞に送達しうる。生理学的に適合性の担体に好ましくは懸濁されているrAAVをヒト若しくはヒト以外の哺乳動物被験体に投与しうる。適する担体は、移入ウイルスが向けられる適応症を鑑み当業者により容易に選択されうる。例えば、1つの適する担体は、多様な緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)とともに配合されうる食塩水を包含する。他の例示的担体は、滅菌生理食塩水、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ラッカセイ油、ゴマ油および水を包含する。担体の選択は本発明の制限でない。
【0052】
場合によっては、本発明の組成物は、rAAVおよび/若しくは変異体ならびに担体(1種若しくは複数)に加え、保存剤若しくは化学的安定化剤のような他の慣習的製薬学的成分を含有しうる。適する例示的保存剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソ
ルビン酸、二酸化イオウ、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを包含する。適する化学的安定化剤はゼラチンおよびアルブミンを包含する。
【0053】
本明細書に記述されるウイルスベクターおよび他の構築物は、それの必要な被験体にLDLR変異体を送達するために、増大された半減期を有するLDLR変異体を被験体に供給するために、および/または上昇されたコレステロールレベル、上昇された高密度リポタンパク質(HDL)、上昇されたトリグリセリド、家族性高コレステロール血症、アテローム硬化症、冠動脈疾患、心血管系疾患および/若しくは別のリポタンパク質代謝性障害を処置するための医薬品を製造するために、使用しうる。
【0054】
1コースの処置は、場合によっては、同一ウイルスベクター(例えばAAV8ベクター)若しくは異なるウイルスベクター(例えばAAV8およびAAVrh10)の反復投与を必要としうる。本明細書に記述されるウイルスベクターを使用するなお他の組合せを選択しうる。場合によっては、本明細書に記述される組成物は、他の抗脂質薬(例えばスタチン類、モノクローナル抗体など)またはタンパク質に基づく治療(例えば本明細書に記述されるところの1種若しくはそれ以上のLDLR変異体を含有する組成物の送達を包含する)を必要とするレジメンで組合せうる。
【0055】
「ある(a)」若しくは「ある(an)」という用語は1若しくはそれ以上を指すことが留意されるべきである。であるから、「ある(a)」(若しくは「ある(an)」)、「1若しくはそれ以上」および「最低1つ」という用語は本明細書で互換性に使用される。
【0056】
「含んでなる(comprise)」、「含んでなる(comprises)」および「含んでなる(こと)(comprising)」という語は排他的によりはむしろ包括的に解釈されるべきである。「なる(consist)」、「なる(こと)(consisting)」という語およびその異形は包括的によりはむしろ排他的に解釈されるべきである。本明細中の多様な態様は「含んでなる(こと)」言語を使用して提示される一方、他の環境下で、関係する態様が「よりなる(こと)(consisting of)」若しくは「より本質的になる(こと)(consisting essentially
of)」言語を使用して解釈および記述されることもまた意図している。
【0057】
本明細書で使用されるところの「約」という用語は、別の方法で明記されない限り示される参照から10%の変動を意味している。
【0058】
本明細書で使用されるところの「調節」という用語若しくはその変形は、生物学的経路の1若しくはそれ以上の成分を阻害する組成物の能力を指す。
【0059】
「被験体」は、哺乳動物例えばヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、乳牛、ブタ、またはサル、チンパンジー、ヒヒ若しくはゴリラのようなヒト以外の霊長類である。
【0060】
本明細書で使用されるところの「疾患」、「障害」および「状態」は、被験体における異常な状態を示すために互換性に使用される。
【0061】
本明細で別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、当業者によりおよび公表される本文への参照により普遍的に理解されると同一の意味するところを有し、それらは本出願で使用される用語の多くへの一般的手引きを当業者に提供する。
【0062】
以下の実施例は具体的に説明するのみでありかつ本発明を制限することを意図していない。
【0063】
実施例-
【実施例0064】
LDLR機能獲得型変異を発現するAAVベクターは家族性高コレステロール血症のマウスモデルで増大された有効性を示す
A.実験動物
全部の動物研究はペンシルベニア大学で施設内審査委員会(IRB)により承認された。LDLR-/-、APOBEC-1-/-二重ノックアウトマウス(DKO)およびLDLR-/-、APOBEC-1-/-ヒトApoB100トランスジェニック(LAHB)をペンシルベニア大学で飼養した。これらのマウスはhPCSK9を過剰発現する。この動物モデルにおける内因性マウスLDLR発現の非存在は、マウスLDLRからの妨害を伴わないhLDLR導入遺伝子発現の上昇を可能にする。hPCSK9の過剰発現はhPCSK9を発現するAAVベクター(AAV9.TBG.hPCSK9)を共投与することにより達成され、その製造法は本実施例のC部に記述される。
【0065】
6-8週齢雄性マウスに、100μLの総容量中でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈されたベクターを静脈内(尾静脈)に注入した。血清を後眼窩出血によりベクター投与前および後に収集した。研究の終了時に全部の動物を殺し、そして肝をベクターゲノムおよび導入遺伝子発現の分析のため収集した。動物からの血清試料を、MIRA分析装置(Roche)を使用して総コレステロール(Tc)、LDL、HDLおよび総トリグリセリド(Tg)について分析した。非HDLコレステロールはTcからTgを差し引くことにより得た。動物からの肝を収集しかつRIPA緩衝液を使用して均質化した。25μgの総肝ライセートを4-12%PAGEゲル上で電気泳動し、そしてポリクローナル抗hLDLR抗体でプロービングした。
【0066】
B.LDLR変異体
突然変異誘発のため標的とされたアミノ酸残基(配列番号1に基づく位置番号)は後に続くとおりであった:
【0067】
【表1】
【0068】
加えて、IDOLに媒介される分解を予防するLDLRのC末端細胞質ドメイン中のアミノ酸置換K809RおよびC818Aを選択した。
【0069】
C.ベクター
肝特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターから野生型hLDLR cDNAを発現するAAV8ベクターは以前に記述されており、そしてペンシルベニア大学ベクター中核施設(the Vector Core at the University of Pennsylvania)から得た。簡潔には、HEK293細胞をAdヘルパープラスミドと一緒にAAVシスおよびトランスプラスミドを使用して三重トランスフェクトした。AAV粒子を培養上清から精製し、そしてプライマーを使用してbGHポリアデニル化配列に対し定量化した。ベクター調製物を、動物への注入前に制限消化によるDNA構造およびエンドトキシン汚染(<20EU/mL)について分析した。野生型hLDLR cDNAを部位特異的突然変異誘発のための鋳型として使用して、製造元の推奨に従ってQuickchange XLキット(Stratagene)を使用してアミノ酸置換を導入した。
【0070】
本明細書に記述されるところのAAVベクターの製造のため使用されるプラスミドの配列を、付録として付けられる配列表に提供する。TBGプロモーターを有するプラスミド構築物を動物(マウス)研究で使用し;CBプロモーターを伴うものをin vitroスクリーニングのため使用した。
【0071】
hPCSK9およびhIDOLをコードするcDNA配列を購入し(Origene、メリーランド州)、クローン化し、そしてTBGプロモーターおよびウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナルの後ろでAAV9ベクターから発現させるためベクターに入れた(vectored)。TBGプロモーターからまた発現されるヒトα1アンチトリプシン(A1AT)を発現するAAV9ベクターを、無関係の導入遺伝子を必要とした研究で対照として使用した。
【0072】
【表2】
【0073】
D.in vitro LDLRアッセイ
6ウェルプレート中で増殖するHEK 293細胞を、hPCSK9若しくはhIDOLと一緒にhLDLRを発現するプラスミドで一夜トランスフェクトした。全部のcDNAをサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)の後ろにクローン化してHEK293細胞中で発現を得た。対照細胞はhLDLRおよび無関係の導入遺伝子(A1AT)を発現するプラスミドでトランスフェクトした。1種のベクターの用量がより低く滴定された研究で、無関係のプラスミドを添加して、プラスミドの総量が1実験ウェルから別のものまで異ならなかったことを確認した。翌日、細胞を4μg/mLの濃度のBODIPY-LDL(Invitrogen)でパルスした。細胞を2hr後に取り出し、そしてフローサイトメーター(FC500、Beckman Coulter)を使用して蛍光LDL取り込みについて評価した。
【0074】
E.イムノブロッティングおよび酵素結合免疫測定法
ヒトLDLRを発現する細胞若しくはマウス肝から調製された50μgの全細胞ライセートを、PVDFメンブレン(Invitrogen)に転写する前に4-12%勾配プレキャストミニゲル(Invitrogen)上で電気泳動した。抗hLDLRヤギポリクローナル抗体(Invitrogen)(1/1000希釈)、次いでアルカリホスファターゼに結合された二次抗ヤギ抗体(Invitrogen)を使用してメンブレンをプロービングした。マウス血清中のヒトPCSK9発現レベルを、製造元の説明書に従いELISAキット(R&D)を使用して分析した。
【0075】
F.統計学的解析
全部の実験はテューキーの事後検定を使用して評価される平均コレステロールレベルのペアワイズ集団差を伴う一元配置分散分析モデルを使用して解析した。しかしながら、C
57BL/6マウスにおけるPCSK9の影響を評価する実験については、線形混合効果モデルを使用して、同一マウスでの反復された測定間の相関を考慮に入れながらコレステロールレベルの集団差を評価した。同様に、AAVで形質導入されたhLDLRでのPCSK9の分析は共分散分析モデル化に頼り、後コレステロールレベル(post-cholesterol level)は前コレステロール(pre-cholesterol)レベルおよび群で逆行した。統計学的有意性は全部の実験について0.05水準で考慮した。
【0076】
結果
G.hLDLR中のアミノ酸置換はPCSK9抵抗性を付与する
PCSK9への潜在的に低下された結合を伴う9種のLDLR変異体(N295D、D299N、H306G、V307D、N309A、D310N、L311T、L318DおよびL318H 表1を参照されたい、配列番号1の番号付けに基づく位置番号)を、hPCSK9の存在若しくは非存在下の蛍光標識されたLDL(BODPIY-LDLTM)の取り込みについてのin vitroアッセイを使用して、HEK293細胞で最初にスクリーニングした。
【0077】
hLDLRおよびhPCSK9の低レベルの内因性発現を有するHEK293細胞での研究を実施した。外因性hPCSK9の供給源として、細胞をhLDLR構築物と一緒にhPCSK9を発現するプラスミドでコトランスフェクトした。偽似トランスフェクトされた細胞は、LDLRタンパク質を検出することに失敗したイムノブロッティングに基づき低レベルのLDLRを発現し(データは示されない);さらに、偽似トランスフェクトされた細胞はBODIPYTM-LDLの取り込みを示すことに失敗した(図1A)。対照的に、HEK293細胞中への野生型hLDLRの一過性トランスフェクションは、細胞の30%におけるBODIPYTM-LDLの内部移行につながり、これはhPCSK9とコトランスフェクトされた場合に18%に低下された(図1A)。hPCSK9と共発現される変異体構築物のなかで、D299NおよびL311Tアミノ酸置換のみが、BODIPYTM-LDL取り込みが野生型LDLRと類似の程度まで低下されたことにおいて、PCSK9に媒介される分解に対する何らかの保護を提供することに失敗した。全部の他のアミノ酸置換はPCSK9からの変動する程度の保護を提供したとは言え、いくつかの構築物は、野生型hLDLRと比較された場合にPCSK9の非存在下でBODIPYTM-LDL取り込みにおいてより少なく効率的であった。一例として、L318DおよびL318H置換は双方がhPCSK9分解に抵抗性であったとは言え、L318DのみがPCSK9の非存在下で正常なBODIPYTM-LDL取り込みを示した(図1B)。対照的に、L318H置換は低下された受容体活性につながり、そしてBODIPYTM-LDL取り込みはhPCSK9の非存在下で野生型hLDLRと比較した場合により低かった(30%対6%;hLDLR対hLDLR-L318H)。この理由上、hLDLR-L318Dベクターをマウスにおけるさらなるin vivo評価に選択した。
【0078】
H.マウスにおけるhPCSK9の過剰発現はAAVに発現されるhLDLRを下方制御する
マウスにおけるhLDLRの野生型およびL318Dの形態の活性を評価することは、外因性hLDLRタンパク質と内因性のマウスPCSK9タンパク質の間の潜在的な減少された相互作用により複雑であった。hoFH表現型(生殖系列妨害によってLDLRおよびAPOBEC-1を欠く)をもちかつhPCSK9を過剰発現する[肝特異的プロモーターTBGを介してhPCSK9を発現するAAV9ベクター(AAV9.hPCSK9)のi.v.注入後]完全にヒト化されたマウスモデルを創成した(本実施例のA部に記述されるLDLR-/-、ApoBec-/-二重ノックアウト(DKO)マウス。AAV9.hPCSK9ベクターの発現を、最初に、増大する用量のhPCSK9を受領したC57BL/6マウスで評価した。高用量ベクター(すなわち5×1010GC)で血清
非HDLコレステロールはおよそ2.5倍増大し(p=0.0015)、hPCSK9とmLDLRの間の何らかのレベルの相互作用を示す。図1Cを参照されたい。
【0079】
導入遺伝子に派生されるhLDLRに対するhPCSK9の影響を評価する前に、hoFH DKOマウスにAAV8.hLDLR単独を注入した。これらの動物において、通常飼料(chow diet)でのベースライン非HDLレベルは417±23mg/dlであり;これは5×1010GCのAAV8.hLDLRの投与後第7日までに減少した。非HDLレベルは安定化され、そして第30日までにわずか37±7mg/dlであり、これはベースラインレベルの9%であった(p=0.037、図2A)。次に、hPCSK9を発現するDKOマウスにおけるこのベクターの性能を、AAV8.hLDLRと一緒に等用量(5×1010GC)のAAV9.hPCSK9を共投与すること(i.v.)により評価した。ベクター投与後、hPCSK9の血清レベルは堅調に上昇し、そして第30日までにピークレベル(7500±3000ng/mL)に達した(図2B)。付随して、hPCSK9で共形質導入されたマウスにおける非HDLレベルは、hLDLRのみを受領した動物と比較した場合に有意により高かった(p=0.0008)(図2A)。AAV8.hLDLRはhPCSK9の非存在下で非HDLを10倍低下させ;しかしながら、この低下はhPCSK9の存在下でわずか2.5倍であった。総肝ライセートのイムノブロッティングは、PCSK9との共形質導入が肝での低下されたhLDLRタンパク質をもたらしたことを確認し(図2C);一方、hLDLRメッセンジャーRNAのレベルは実験群間で不変のままであった(データは示されない)。これらの知見は、受容体分解を増大させる細胞内区画中のLDLRを結合かつ封鎖するPCSK9の報告された作用様式[Wangら、J Lipid Res、2012;53:1932-1943]と一致する。hLDLR発現の低下は無関係の導入遺伝子を発現するAAV9ベクターで共形質導入された動物で観察されなかった。
【0080】
I.LDLR-L318Dアミノ酸置換はヒトPCSK9に媒介される分解に対する抵抗性を付与する
類似の戦略を使用して、hPCSK9を過剰発現するDKOマウスにおけるhLDLR-L318Dの活性を評価し、そして該結果を野生型hLDLRで形質導入されたマウスと比較した。期待されたとおり、hLDLRでの形質導入は第30日までに血清コレステロールの劇的な低下をもたらし(ベースラインの10%);一方、hPCSK9との共形質導入は、ベースラインのわずか23%の非HDLコレステロールレベルを伴う低下されたhLDLR活性をもたらした(p<0.0001、図3A)。対照的に、L318D置換は、hLDLR-L318D若しくはhPCSK9と一緒のhLDLR-L318Dを受領した動物間の非HDLレベルの差違が統計学的に有意でなかった(10%対14%;p=0.1337)ことにおいて受容体分解を明らかに予防した。さらに、研究の終了時(第30日)に収集された肝のイムノブロッティングは、hLDLRタンパク質レベルがhPCSK9と一緒に野生型hLDLRを受領した動物でのみ有意に減少したが、しかしhLDLR単独を受領したものでしなかったことを示した(図3B)。しかしながら、hLDLR-L318Dの肝レベルはhPCSK9との共発現により影響されず、そしてhPCSK9の非存在下に野生型hLDLRで観察されたと同一であった(図3B)。観察された差違がmRNA発現の変化から生じなかったことを確認するため、hLDLR転写物を定量的PCRアッセイを使用して肝で分析した。これらの研究は、hLDLRタンパク質の減少より実質的により少なかった、野生型hLDLRで処置されたマウスにおける控えめのみの減少を示した(図3B)。
【0081】
J.hLDLR-K809R\C818AはhIDOL調節を免れる
LDLR発現は、IDOL;オキシステロールの細胞内濃度の増大後に肝X受容体(LXR)により転写的に上方制御されるE3ユビキチンリガーゼによる調節もまた受ける。活性化されたIDOLは受容体分解につながるLDLRの細胞質側末端領域と相互作用す
る[Zhang Lら、Arterioscler Thromb Vasc Biol.2012;32:2541-2546]。K809RおよびC818Aアミノ酸置換を含有するhLDLRを発現するAAV8ベクター(AAV8.hLDLR-K808R\C818A)を構築した。この構築物を最初にhIDOLの存在若しくは非存在下にHEK293細胞中で評価し;ヒトIDOLの供給源として、hIDOLを発現するプラスミドをhLDLRと共発現させた。期待されたとおり、野生型hLDLRのトランスフェクションは細胞の28%におけるLDL取り込みをもたらし;しかしながら、hLDLRと一緒のhIDOLのコトランスフェクションはLDL陽性細胞をわずか2%に劇的に低下させた(図4A)。K808R\C818Aアミノ酸置換は受容体活性に影響せず、また、LDLR-K809R\C818A構築物はIDOLの非存在下でLDLの内部移行において野生型hLDLRと同じくらい効率的であった(LDLR対LDLR-K809R\C818A、28%対22%)。しかしながら、該2構築物間の差違はhIDOLとコトランスフェクトした場合に出現したのであった。hLDLR-K809R\C818A構築物はhIDOLの影響に対しより抵抗性であり、野生型LDLRでの2%と対照的に蛍光LDLを取り込むおよそ14%の細胞をもたらした。全細胞ライセートのイムノブロッティングは、LDL取り込みの観察された差違が、hIDOLの存在下でhLDLRタンパク質の低下されたレベルと相関しかつhLDLR-K809R\C818Aとしなかったことをさらに確認した(図4A)。
【0082】
次に、ヒトIDOLを過剰発現するDKOマウスにおけるhLDLR-K809R\C818A構築物の活性を評価した。肝でヒトIDOLを過剰発現するマウスの表現型を、肝特異的プロモーターの制御下にヒトIDOLを発現するAA9ベクターを投与することにより創成した。パイロット研究で、内因性LDLR発現の調節におけるヒトIDOLの有効性を、LDLR発現についてヘテロ接合性のFHマウス(heFH)に5×1010GCのAAV9.hIDOLを投与すること(i.v.)によりマウスで評価した。マウスのこの系統(LAHBマウス)は、APOBEC-1が欠損、マウスLDLR+/-につい
てヘテロ接合性、およびより高い血清コレステロールにつながるヒトApoB100についてトランスジェニックである。AAV9.hIDOLの投与後、非HDLレベルは第7日までに増大しかつ第30日までに安定レベルに達した(p<0.0001、図4B)。これらの結果は、AAVに発現されるhIDOLがマウス肝において活性でありかつ内因性mLDLRの喪失を引き起こし得ることを確認した。次に、ベクターにコードされるhLDLRに対するhIDOLの過剰発現の影響がDKOマウスで示された。パイロット研究において、低用量hLDLRベクター投与のみがヒトIDOLにより有意に影響され;これゆえに、マウスに3×109GCのAAV8.hLDLRおよび5×1010GCのA
AV9.hIDOLを共投与した。この低用量で、hLDLRおよびhLDLR-K809\C818Aベクターは機能的に類似であり(p=0.9)、そしてhIDOLの非存在下で血清コレステロールの控えめな低下(ベースラインの20%)を誘発した(図4C)。しかしながら、hIDOLの共投与は野生型hLDLRの活性を除去し、そして是正は処置前のベースラインレベルで留まった非HDLコレステロールレベルで見られなかった(p=0.0248、図4C)。対照的に、hIDOLの存在若しくは非存在下でhLDLR-K809R\C818Aを受領したマウスにおける非HDLコレステロールレベルは同様であり(p>0.05)、hIDOLに対する改変された構築物のin vivo抵抗性を示した(図4C)。
【実施例0083】
hLDLR-L318D\K809R\C818AはPCSK9およびIDOL双方による調節を回避する
L318D、K809RおよびC818Aアミノ酸置換を単一ベクターにクローン化して、双方の経路による調節に抵抗性であるとみられる構築物を創成した。該ベクターを、IDOLエスケープ突然変異を評価する場合に低用量(3×109GC)で;若しくはP
CSK9エスケープ突然変異を評価する場合により高用量(5×1010GC)でDKOマウスに投与した。低用量で投与される場合、hLDLR-L318D\K809R\C818Aは、血清コレステロールの控えめな減少のみがいずれのベクター投与後にも実現された(図5A)ことにおいて野生型hLDLRと比較可能であった(p>0.05)。しかしながら、hIDOLの存在下で投与される場合、該変異体ベクターのみが、血清コレステロールレベルが野生型hLDLRおよびhIDOLで見られたものより有意により低い(p=0.0002)ままであったことにおいて、hIDOLに対する何らかの抵抗性を示した。肝試料のイムノブロッティングは、該変異体ベクターがhIDOLに媒介される分解に対しより抵抗性であったことを確認した(図5A)。ベクターをhPCSK9と一緒により高用量で投与した同時の研究において、該変異体タンパク質は、hPCSK9を過剰発現するマウスにおいて、対照野生型LDLRより血清コレステロールの低下において有意により良好に遂行した(p=0.0007、図5B)。肝のイムノブロット分析はhPCSK9の存在下で野生型hLDLRのほぼ完全な非存在を示し;対照的に、該変異体ベクターは保護されかつhPCSK9によりより少なく分解された。
【実施例0084】
家族性高コレステロール血症のマウスモデルにおけるhLDLR変異体の比較。
【0085】
PCSK9調節を回避することが期待された単一アミノ酸置換を運搬するhLDLRの一団を、LDLR-/-、APOBEC-/-二重ノックアウトマウス(DKO)に投与することによりスクリーニングした。動物に、3×1010GCのAAV8.TBG.hLDLR若しくはhPCSK9調節を回避することが期待されたhLDLR変異体の1種を静脈内に(i.v.尾静脈)注入した。非HDLコレステロールの血清レベルの低下を多様な構築物からの受容体活性を比較するための代理物として使用した。血清をベクター投与前および30日後に後眼窩出血により動物から収集し、そしてコレステロールレベルをMIRA分析装置(Roche)を使用して分析した。非HDLコレステロールレベルを、総コレステロールからHDL成分を差し引くことにより決定した。図6はベクター投与後の動物におけるベースラインを上回る非HDLレベルの減少パーセントを示す。
【0086】
本研究を、ベクターをより高用量で、すなわち変異体(L318D、N295D、H306G、V307D、N309A、D310N、L311T、L318H)のそれぞれについて5×1010GCのAAV8.TBGF.hLDLRを投与したことを除き、同一条件下で反復した。5×1010GCの野生型hLDLRの投与は独力でベースラインの非HDLコレステロールレベルの90%減少に至った(図8)。D299Nを除き、全部の他のhLDLR変異体は非HDLコレステロールの同様の低下もまた達成した。期待されたとおり、hPCSK9の共投与はhLDLRベクターの有効性を有意に低下させた。hPCSK9の過剰発現は変異体L318D、N295D、H306G、V307DおよびN309Aに対する最小限の影響のみ有した。さらに、第30日の肝のイムノブロッティングは、H306Gを除きこれら変異体が分解から有意に保護された(示されない)ことを確認した。
【実施例0087】
高用量AAV.hLDLR投与はin vivoのIDOL阻害を回避する。
【0088】
LDLR-/-、APOBEC-/-二重ノックアウトマウス(DKO)に、AAV8.TBG.hLDLR若しくはAAV8.TBG.K809R\C818Aを5×1010GCの用量で注入した。加えて、数群のマウスにヒトIDOLを発現する等量のAAV9ベクター(AAV9.TBG.hIDOL)を共投与して、hIDOLの存在下でhLDLR活性を評価した。非HDLコレステロールレベルをベクター投与前および30日後に分析した。ベクター投与後にベースラインと比較した第30日の非HDLコレステロール
パーセントを図7に示す。
【0089】
本明細で引用される全部の刊行物は、米国仮出願第62/022,627号、2014年7月9日出願および同第61/984,620号、2014年4月25日出願がそうであるように、引用することにより本明細書に組み込まれる。同様に、本明細書で参照されかつ付属として付けられる配列表中に出現する配列番号は引用することにより組み込まれる。本発明は特定の態様に関して記述された一方、改変が本発明の技術思想から離れることなくなされ得ることが認識されるであろう。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
以下の情報は数字見出し<223>にフリーテキストを含有する配列について提供される。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
【表12】
【0101】
【表13】
【0102】
【表14】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【外国語明細書】