(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010098
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】包装袋用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230113BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20230113BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230113BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B65D30/02
B32B27/36
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113952
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐司
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064AB11
3E064BA24
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA07
3E064EA30
3E064HN05
4F100AK07B
4F100AK42A
4F100AK63B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100GB16
4F100JA04B
4F100JL11C
4F100JL12B
4F100JL16A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】再生PET、特に好ましくはメカニカルリサイクルPET(M-再生PET)を使用しながら、再生品特有の物性低下が緩和され、例えば耐衝撃性が改善された包装袋を作製可能な包装袋用積層フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の包装袋用積層フィルム10は、再生PET層1と、少なくともオレフィン系樹脂を含むシーラント層3とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエチレンテレフタレート層と、少なくともオレフィン系樹脂を含むシーラント層とを有する包装袋用積層フィルム。
【請求項2】
前記再生ポリエチレンテレフタレート層とシーラント層との間に接着剤層が存在している請求項1に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項3】
前記再生ポリエチレンテレフタレートが、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートである請求項1または2に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項4】
前記シーラント層は、オレフィン系樹脂として、プロピレン系樹脂、α-オレフィン・エチレン共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1~3の何れかに記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項5】
前記シーラント層は、プロピレン系樹脂と他のポリマー成分を含み、DSCによる1回目昇温曲線において、プロピレン系樹脂に由来する融点ピークと、前記他のポリマー成分由来の融点ピークとを有しており、該他のポリマー成分由来の融点ピークは、110~125℃の範囲にピークトップを有している請求項4に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項6】
前記他のポリマー成分が、α-オレフィン・エチレン共重合体である請求項5に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項7】
前記シーラント層は、オレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを含む請求項4に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項8】
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、共重合成分としてC4またはC6を含む請求項7に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~8の何れかの記載の包装袋用積層フィルムを、貼り合わせて得られる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ポリエチレンテレフタレート層を含む包装袋用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年における環境保護の重要性から、使用済みプラスチック成形体や成形体製造時に発生するプラスチック廃材などからプラスチックを再生し、再利用するリサイクル技術が種々検討されている。例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル重合によって得られるポリエチレンテレフタレートの再生品(再生PET)をフィルム等の用途に使用することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、ペットボトルからリサイクルされたポリエステルを50重量%以上95重量%以下の量で含むポリエステルフィルム或いは該ポリエステルフィルムを含む積層フィルムが開示されている。
【0004】
再生PETには、使用済み成形品や廃材などからの回収品を、分別、粉砕、洗浄、溶融状態でのろ過、有機溶媒による抽出、減圧下での熱処理などを経て得られるメカニカルリサイクルPET(M-再生PET)や、さらに解重合などを行って再生されるケミカルリサイクルPET(C-再生PET)がある。このような再生PETは、何れの方法で得られるにしろ、再生品に特有の物性低下が認められる。特にMR-PETは、大掛かりな解重合設備等を必要とせず、安価に得られるという利点があるものの、解重合が行われていないことに関連して、物性低下がCR-PETに比して大きい。従って、再生PET、特にMR-PETは、十分な耐衝撃性が得られず、落袋による破袋頻度が多く、包装袋用途への使用が難しく、包装袋用のフィルムとしての実用化が阻まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6150125号公報
【特許文献2】特許第6500629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、再生PET、特に好ましくはM-再生PETを使用しながら、再生品特有の物性低下が緩和され、例えば耐衝撃性が改善された包装袋を作製可能な包装袋用積層フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の包装袋用積層フィルムから得られる包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、再生ポリエチレンテレフタレート層(再生PET層)と、少なくともオレフィン系樹脂を含むシーラント層とを有する包装袋用積層フィルムが提供される。
【0008】
本発明の包装袋用積層フィルムにおいては、以下の態様が好適に採用される。
(1)前記再生PET層とシーラント層との間に接着剤層が存在していること。
(2)前記再生ポリエチレンテレフタレート(再生PET)が、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(M-再生PET)であること。
(3)前記シーラント層は、オレフィン系樹脂として、プロピレン系樹脂、α-オレフィン・エチレン共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択された少なくとも1種を含むこと。
(4)前記シーラント層は、プロピレン系樹脂と他のポリマー成分を含み、DSCによる1回目昇温曲線において、プロピレン系樹脂に由来する融点ピークと、前記他のポリマー成分由来の融点ピークとを有しており、該他のポリマー成分由来の融点ピークは、110~125℃の範囲にピークトップを有していること。
(5)前記他のポリマー成分が、α-オレフィン・エチレン共重合体であること。
(6)前記シーラント層は、オレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを含むこと。
(7)前記直鎖状低密度ポリエチレンは、共重合成分としてC4またはC6を含むこと。
【0009】
本発明によれば、また、上記の包装袋用積層フィルムを、貼り合わせて得られる包装袋が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装袋用積層フィルムは、再生PET層にシーラント層が積層されている層構成を有しているが、このシーラント層がオレフィン系樹脂を含んでいることが重要な特徴である。即ち、オレフィン系樹脂がシーラント層に含まれていることにより耐衝撃性が高められ、再生PETを含む積層フィルムにより耐衝撃性が改善され、落袋による破袋が有効に回避された包装袋を得ることができ、結果として石油由来のプラスチックの使用量を削減し、環境保護を実現することができる。
特に発明では、再生PETとしてM-再生PETを用いた場合にも大きな物性低下を回避することができ、これは本発明の大きな利点である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の包装袋用積層フィルムの基本層構造を示す概略側断面図。
【
図2】
図1の包装袋用積層フィルムを用いて形成された包装袋用積層体の層構造を示す概略側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、全体として10で示される本発明の包装袋用積層フィルムは、再生PET層1にシーラント層3が積層された基本構造を有しており、通常、再生PET層1とシーラント層3との間には、接着剤層5が設けられており、これにより再生PET層1とシーラント層3とが強固に接合されている。
このような基本層構造を有する包装袋用積層フィルム10は、包装袋の作製(製袋)に使用される。
図2において、このような包装袋(パウチ)は20で示されており、シーラント層3同士が対面するように配置してのヒートシールにより製袋される。
【0013】
再生PET層1;
既に述べたように、再生PETは、使用済みPET成形品やPET成形品製造時に生じるバリ等の廃材から再生処理することにより得られるものであり、本発明では、このような再生PETを使用しているため、省資源や環境保護を実現できるわけである。
本発明において、再生PETとしては、M-再生PET(メカニカルリサイクルPET)及びC-再生PET(ケミカルリサイクルPET)の何れでも使用することができるが、特にバージンのPETからの物性低下の大きいM-再生PETを使用することが、本発明の利点が最大限に発揮できる。
【0014】
かかるM-再生PETは、微量ではあるがコンタミを含み、さらには回収元の成形品の種類によっては、共重合成分(例えばイソフタル酸)を含むことから、バージンのPETに比して融点が低い。例えば、DSCによる2回目昇温曲線から算出される融点(ピークトップ)が250±5℃程度であり、同様にしてバージンのPETフィルムから算出される融点に比して2~3℃低い値を示す。
【0015】
本発明においては、上記の再生PET、例えばM-再生PETは、それ単独で再生PET層1の形成に使用することができるが、回収元のPET成形品によっては、溶融粘度が高く、押出成形等によるフィルムの成形が困難となることがある。このような場合には、適宜、フィルム形成に使用されるバージンのPET(或いはPET以外の他のポリエステル)をブレンドし、押出成形に適した物性に調整することもできる。この場合、再生PET以外のバージンポリマーの配合量が多くなるとリサイクル品の使用により省資源や環境保護を実現するという本発明の目的が損なわれるので、バージンポリマーの使用量はできるだけ少ない方が好ましく、例えばバージンポリマーの使用量は、再生PETに対して30質量%以下であることが好ましい。
【0016】
M-再生PETなどから形成される再生PET層1は、包装袋20(パウチ)の落袋強度、突き刺し強度、剛性を確保するために、一軸或いは二軸方向に延伸されていてもよい。延伸倍率は、過延伸によるフィルム破断が生じない程度であればよく、通常、2倍以上である。
また、このような再生PET層1の厚みは、最終的に形成される包装袋20に収容される内容物の種類や容量などに応じて適宜の範囲に設定されていればよく、一般的には、5~200μmの範囲から用途に応じた厚みに設定される。
【0017】
シーラント層3;
シーラント層3は、包装袋への成形(製袋)に際してのヒートシールための層であり、オレフィン系樹脂により形成される。
【0018】
このようなオレフィン系樹脂は、適宜の温度での加熱により溶融し、シーラント層3同士の熱接着が可能となるものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等を挙げることができる。また、非環状オレフィンと環状オレフィンとの非晶質乃至低結晶性の共重合体(COC)も使用することができる。本発明において、特に好適に使用されるオレフィン系樹脂は、プロピレン系樹脂、α-オレフィン・エチレン共重合体、及び直鎖状低密度ポリエチレンである。
上述したオレフィン系樹脂は、それぞれ単独で使用することもできるし、2種以上をブレンドして使用することもできる。
【0019】
即ち、オレフィン系樹脂のフィルムは、PETフィルムに比較して可撓性が高く、このようなオレフィン系樹脂をシーラント層3として再生PET層1に積層することにより、耐衝撃性が向上した包装袋20を得ることができ、再生PET、特にM-再生PETの使用範囲を拡大し、省資源、環境保護を実現できるわけである。
【0020】
上記のシーラント層3は、オレフィン系樹脂のフィルムを用いて形成されるが、その厚みは、シーラント層3同士の熱接着が可能な厚みであればよく、最終的に得られる包装袋20の用途や容量によっても異なるが、一般的には、5~200μm程度の範囲にあればよい。
【0021】
また、本発明において、レトルト殺菌や電子レンジ加熱などの耐熱性が要求される用途に使用される包装袋20を作製する場合には、耐熱性という点で所謂CPPフィルムを用いてシーラント層3を形成することが好適である。
【0022】
CPPフィルムは、無延伸ポリプロピレンフィルム或いはキャストPPフィルムと呼ばれ、ホモ或いはランダムポリプロピレンにより形成される。このようなポリプロピレンは、フィルムを形成し得るに足る分子量を有していればよい。
【0023】
上記のCPPフィルムには、必要により耐衝撃性を向上させるためにポリプロピレン以外の他のポリマー成分が配合されていてもよい。このような他のポリマー成分が配合されたCPPは、インパクトポリプロピレン(インパクトPP)と呼ばれ、特にホモ或いはランダムポリプロピレンのマトリックス中に、他のポリマー成分が分散された構造を有している。
【0024】
このような他のポリマー成分としては、熱可塑性エラストマー、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(EPBR)を挙げることができる。中でもエチレン・プロピレン共重合体(EPR)は、特に耐衝撃性を向上させる上で好適である。
【0025】
尚、CPPフィルム中の熱可塑性エラストマー成分含量は、ポリプロピレンによる耐熱性及びヒートシール性を損なわずに耐衝撃性を向上させるという観点から1~30質量%程度が好適である。このような熱可塑性エラストマー成分含量は、例えばフィルムを沸騰キシレン中に溶解させての抽出により測定することができる。
【0026】
さらに、上記のCPPフィルムには、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体といったプロピレン系樹脂が配合されていることが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が配合されていることが好ましい。LLDPEは、ポリプロピレンと熱可塑性エラストマー成分との相溶化剤として機能し、これにより、熱可塑性エラストマー成分の配合による耐衝撃性向上効果を最大限に高めることができる。
【0027】
上記のようなポリエチレン系樹脂が配合されているCPPフィルムは、DSCによる1回目昇温曲線において、プロピレン系樹脂に由来する融点ピークと、前記他のポリエチレン系樹脂由来の融点ピークとを有している。特に耐衝撃性の向上に好適な直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が配合されたCPPフィルムは、上記のDSCによる1回目昇温曲線において、融点ピーク(ピークトップ)を110~125℃の範囲に有している。
【0028】
上記の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、密度が0.860~0.925g/cm3の範囲にあり、例えば、ブテン-1(C4)、ヘキセン-1(C5)、4-メチルペンテン-1(C6)等のα-オレフィンを微量(数%程度)、エチレンに共重合させたことで低密度化されたものであり、分子の線形性が極めて高い。特にコモノマー成分としてC4或いはC6を含むものが好適である。
【0029】
本発明において、上述した熱可塑性エラストマーやLLDPEを含むCPPは、フィルム成形性(押出成形性)等の観点から、MFR(メルトフローレート、230℃)が0.5~10g/10min程度の範囲にある。従って、上記のLLDPEは、フィルム成形性を損なわないようにするために、MFR(190℃)が1.0~15g/10minのものが好適であり、CPP中のLLDPE量が、20質量%以下、特に10質量%以下となるように濃度調整されていることが、ポリプロピレンによる耐熱性向上等の特性を損なわないようにする上で好ましい。
【0030】
上述した熱可塑性エラストマー成分を含むCPPフィルムを用いてシーラント層3が形成されている包装袋20では、高温でのシール強度が高く、電子レンジ加熱によるシール破壊が有効に防止され、電子レンジ加熱を有効に行うことが可能となり、またレトルト殺菌によってもシール強度が低下することはない。
【0031】
また、本発明において、レトルト殺菌のような熱処理が不要であり、シャンプーやリンスなどの液体製品の詰め替え用として使用される包装袋20を製袋するためには、シーラント層3を形成するオレフィン系樹脂フィルムとしては、耐熱性が要求されないため、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のフィルムが好適に使用される。かかるLLDPEの共重合成分としては、ブテン-1(C4)、4-メチルペンテン-1(C6)が好適に使用される。
【0032】
接着剤層5;
接着剤層5は、接着剤を用いて形成される層であり、この接着剤を用いて再生PET層1を形成するフィルムとシーラント層3を形成するフィルム5とが積層される。
【0033】
このような接着剤としては、所謂ドライラミネート接着剤、例えばウレタン系の接着剤やエポキシ系の接着剤など、公知のドライラミネート接着剤を使用することができる。
【0034】
例えば、ウレタン系のドライラミネート接着剤としては、イソシアネートと(メタ)アクリル化合物やポリエステルポリオールとの反応物からなるものを挙げることができる。この接着剤は、通常、アミン系触媒や金属触媒或いはリン酸変性化合物などの公知の硬化触媒を含んでいる。硬化触媒の量は、下地の樹脂の熱変形を伴わないような温度及び時間で緻密な硬化膜(接着層)が形成し得るように硬化触媒の種類に応じて設定される。
【0035】
また、エポキシ系接着剤は、分子中にエポキシ基を有する液状樹脂とエポキシ硬化剤とを含むものである。
分子中にエポキシ基を有する液状樹脂は、エピクロルヒドリンとフェノール化合物やアミン化合物、カルボン酸などとの反応によって得られるもの、ブタジエンなどの不飽和化合物を有機過酸化物などにより酸化することによって得られるものなどが代表的であり、何れのタイプのものも使用することができる。その具体例としては、ビスフェノールA型或いはビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
また、エポキシ硬化剤としては、アミン系、酸無水物、ポリアミドなど、公知のものを使用することができるが、特にメタフェニレンジアミンに代表される芳香族ポリアミンが好適である。
【0036】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、エポキシ樹脂が有するエポキシ当量に応じて、十分な硬化膜が形成されるように設定すればよい。
【0037】
上述したウレタン系或いはエポキシ系等のドライラミネート接着剤は、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系等の揮発性有機溶剤に溶解ないし分散された塗布液の形で前述したプロピレン樹脂系基材1の表面に塗布され、この後、乾燥して有機溶剤を揮散させた後、後述するヒートシール用フィルムを貼り付け、その後、加熱して硬化させることにより、ヒートシール用フィルムを接着固定することができる。
このようにして形成される接着層3の厚みは、通常、0.1~10μm程度である。
【0038】
上述したように、本発明の包装袋用積層フィルム10は、再生PET層1を形成するフィルムとシーラント層3を形成するフィルムとが接着剤層5により積層された構造を基本構造とし、シーラント層3同士を熱接着することにより包装袋20を作製する用途に使用されるが、このような基本構造及び用途が損なわれない範囲で種々の層構造を有することができる。
【0039】
例えば、ガスバリア性を高めるために、再生PET層1には、アルミ箔(AL)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのガスバリア性層が積層されていてもよい。このようなガスバリア性の層は、ドライラミネート等の接着剤を用いてガスバリア性樹脂フィルムを貼り付けることにより形成される。
【0040】
また、再生PET層1上に無機系被膜が設けられていてもよい。無機系被膜はコーティングにより形成されたものであってもよく、蒸着膜でもよい。また、蒸着膜は、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって成膜され、形成される無機質の蒸着膜であり、例えばケイ素酸化物やアルミニウム酸化物などの各種金属乃至金属酸化物により形成される。このような蒸着膜は、無機物で形成されていることから、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性樹脂に比較してより高い酸素バリア性を示す。
【0041】
さらには、突き刺し強度を高めるために、ドライラミネート接着剤を用いてポリアミド系樹脂の延伸フィルムが積層されていてもよい。
このようなポリアミド系樹脂としては、特に制限されず、種々のものを例示することができるが、一般的には、ナイロン6(NY)、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、芳香族ナイロン(例えばポリメタキシリレンアジパミド)、アモルファスナイロン(例えばナイロン6I/ナイロン6T)等が好適に使用される。また、同様の目的でブチレンテレフタレート系の延伸フィルムが積層されていてもよく、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好適に使用される。
【0042】
また、再生PET層1上には、印刷層を設けることもできる。
さらに、上述した各層には、各層の機能を損なわず且つ内容物の品質を損なわないことを条件として、各種の配合剤が配合されていてよい。代表的な配合剤は、これに限定されるものではないが、脱臭剤、酸化防止剤である。
【0043】
脱臭剤は、リサイクル材である再生PET(特にM-再生PET)が有することがある異臭を捕捉し、異臭による内容物のフレーバー性の低下を防止するものである。このような脱臭剤としては、シリカゲル等のシリカ系粒子やゼオライト等のケイ酸アルミニウム塩系粒子が代表的であるが、特に樹脂に対する分散性や脱臭力が強いことから、MFI型ゼオライト、特にシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3比)が80以上であるシリカリッチのMFI型ゼオライトが好適に使用される。このような脱臭剤は、再生PET層1よりも内側の層に配合される。
【0044】
酸化防止剤は、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類が代表的であり、従来から樹脂配合剤として使用されている。このような酸化防止剤は、特に再生PETの酸化によるさらなる劣化を防止するために、再生PET層1に配合されていることが好ましく、通常、再生PET100質量部当り0.1~0.3質量部程度の量で使用することが望ましい。
【0045】
また、本発明の包装袋用積層フィルム10は、上述の基本構造及び用途が損なわれない範囲で種々の機能性樹脂層を有することができる。機能性樹脂層としてはこれに限定されないが、ガスバリア性樹脂層,易引裂き性樹脂層、酸素吸収性樹脂層,水分吸収性樹脂層、UVバリア性樹脂層、可視光バリア性樹脂層、剛性樹脂層、耐衝撃性樹脂層、耐薬品性層、耐突刺性層、耐熱性層等を例示できる。また、再生PET層1、接着剤層5、シーラント層3に従来公知の樹脂用配合剤を公知の処方で配合することによって、これらの機能を兼ね備えさせることもできる。
【0046】
本発明の包装袋用積層フィルム10の積層構造の適当な例は、次の通りである。
例えば、各構造中のPET層の、少なくとも1層以上は再生PET層1とすることができる。また、各層は接着剤層5により積層されており、各構造の最右記載層はシーラント層3となる。
各層は記載素材を主たる原料とした共押出多層フィルムであってもよい。
また、上述の通り、各層上にはバリアコーティング層や印刷層を設けることもできる。
さらに、各層には従来公知の樹脂用配合剤を公知の処方で配合することによって、各種機能を兼ね備えさせることもできる。
二層構造:
PET/PE、PET/PP、
三層構造:
PET/Ny/PE、Ny/PET/PE、PET/PET/PE、PET/AL/PE、PET/EVOH/PE、PBT/PET/PE、PET/PBT/PE、PET/Ny/PP、Ny/PET/PP、PET/PET/PP、PET/AL/PP、PET/EVOH/PP、PBT/PET/PP、PET/PBT/PP、
四層構造:
PET/Ny/AL/PE、PET/AL/Ny/PE、PET/AL/PET/PE、PET/PET/AL/PE、Ny/AL/PET/PE、PET/EVOH/NY/PE、PET/PET/NY/PE、PET/NY/NY/PE、NY/PET/NY/PE、PET/PET/PET/PE、PET/Ny/AL/PP、PET/AL/Ny/PP、PET/AL/PET/PP、PET/PET/AL/PP、Ny/AL/PET/PP、PET/EVOH/NY/PP、PET/PET/NY/PP、PET/NY/NY/PP、NY/PET/NY/PP、PET/PET/PET/PP、
五層構造:
PET/AL/PET/Ny/PE、PET/AL/PET/Ny/PP、
六層構造:
PET/AL/PET/PET/Ny/PE、PET/AL/PET/PET/Ny/PP、
などである。
【0047】
製袋;
上述した種々の層を含む本発明の包装袋用積層フィルム10は、シーラント層3でのヒートシールによる貼り付けによって製袋し、包装袋(パウチ)20として使用する。
製袋は、公知の手段により行われる。例えば2枚の積層フィルム10を用いての3方シールにより、空パウチを作製し、開口部から内容物を充填し、最後に開口部をヒートシールにより閉じる。
また、1枚の積層フィルム10を折り返して両側端をヒートシールすることにより空パウチを作製することもできる。この場合、底部をヒートシールする必要はない。さらに、側部或いは底部専用の積層体を使用して空パウチを製造することもできる。このような方法は、パウチの容積を大きくし、あるいはスタンディング性を付与する上で有利である。
【0048】
このようにして本発明の包装用積層体10により製袋され、内容物が充填された包装袋20は、適宜の層構造を選択することにより、例えばレトルト処理(100~130℃での加熱水蒸気による殺菌処理)や電子レンジ加熱などが適用される用途に使用されることもできるし、シャンプーやリンスなどの液体詰め替え用のスタンディングパウチにも使用される。
このような本発明は、リサイクル品(再生PET)を使用しているにもかかわらず耐衝撃性に優れ、落袋による破袋を有効に回避することができる。また再生PETの使用により、省資源、環境保護を実現できる。
【符号の説明】
【0049】
1:再生PET層
3:シーラント層
5:接着剤層