(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100985
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】右室及び/又は左室機能の改善のための吸入用一酸化窒素の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20230711BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230711BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230711BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P11/00
A61P9/12
A61K9/72
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080033
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2020512022の分割
【原出願日】2018-08-29
(31)【優先権主張番号】62/552,022
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/611,325
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520064528
【氏名又は名称】ベレロフォン パルス テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クイン,デボラ
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラッグ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】右室機能及び/若しくは左室機能を改善並びに/又は維持するための方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2日間有効量の吸入用一酸化窒素(iNO)をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法である。いくつかの方法は、肺高血圧症患者への吸入用一酸化窒素の長期投与に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右心室の機能を維持する又は改善する方法であって、少なくとも2日間有効量の吸入用一酸化窒素(iNO)をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が肺高血圧症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺高血圧症が肺動脈高血圧症(WHOグループI)、左心疾患に関連付けられる肺高血圧症(WHOグループ2)、肺疾患及び/又は慢性低酸素症に関連付けられる肺高血圧(WHOグループ3)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(WHOグループ4)又は不明多因子機構を有する肺高血圧(WHOグループ5)の1以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が肺動脈性肺高血圧症(WHOグループI)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が特発性肺線維症(IPF)又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連付けられるWHOグループ3肺高血圧症を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が肺移植待機リストに載っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が肺移植を受けたことがある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が換気-潅流(V/Q)ミスマッチを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記iNOが少なくとも1週間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記iNOが少なくとも2週間投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記iNOが少なくとも4週間投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記iNOが少なくとも3ヶ月間投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記iNOが少なくとも1日に6時間投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記iNOが少なくとも1日に12時間投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記iNOの有効量が毎時理想体重1kgあたり約10~約300マイクログラム(mcg/kg IBW/時)のNOの範囲にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量が約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲にある、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
右室機能を維持すること又は改善することが次のパラメータ:右室小面積変化(RVFAC)、三尖弁輪運動、三尖弁輪収縮期変動(TAPSE)、収縮期肺動脈圧(sPAP)、三尖弁環収縮期速度(TASV)、及びテイ指数の1以上を維持すること又は改善することを含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記iNOの投与が少なくとも1ミリメートル(mm)のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記iNOの投与が少なくとも2mmのiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記iNOの投与が少なくとも5%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記iNOの投与が少なくとも10%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
左室機能を維持する又は改善する方法であって、少なくとも2日間有効量の吸入用一酸化窒素(iNO)をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記患者が肺高血圧症を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記肺高血圧症が肺動脈高血圧症(WHOグループI)、左心疾患に関連付けられる肺高血圧症(WHOグループ2)、肺疾患及び/又は慢性低酸素症に関連付けられる肺高血圧(WHOグループ3)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(WHOグループ4)又は不明多因子機構を有する肺高血圧(WHOグループ5)の1以上を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が肺動脈性肺高血圧症(WHOグループI)を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が特発性肺線維症(IPF)又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連付けられるWHOグループ3肺高血圧症を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が肺移植待機リストに載っている、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記患者が肺移植を受けたことがある、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が換気-潅流(V/Q)ミスマッチを有する、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記iNOが少なくとも1週間投与される、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記iNOが少なくとも2週間投与される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記iNOが少なくとも4週間投与される、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記iNOが少なくとも3ヶ月間投与される、請求項22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記iNOが少なくとも1日に6時間投与される、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記iNOが少なくとも1日に12時間投与される、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記iNOの有効量が毎時理想体重1kgあたり約10~約300マイクログラム(mcg/kg IBW/時)のNOの範囲にある、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記有効量が約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲にある、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
左室機能を維持すること又は改善することが次のパラメータ:左心室駆出率(LVEF)、左心室のサイズ、及び左心室早期拡張期弛緩速度の1以上を維持すること又は改善することを含む、請求項22~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
肺移植待機リスト上の患者において心臓機能を維持する又は改善する方法であって、少なくとも2日間有効量の吸入用一酸化窒素(iNO)を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記患者が肺高血圧症を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記肺高血圧症が肺動脈高血圧症(WHOグループI)、左心疾患に関連付けられる肺高血圧症(WHOグループ2)、肺疾患及び/又は慢性低酸素症に関連付けられる肺高血圧(WHOグループ3)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(WHOグループ4)又は不明多因子機構を有する肺高血圧(WHOグループ5)の1以上を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が肺動脈性肺高血圧症(WHOグループI)を有する、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者が特発性肺線維症(IPF)又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連付けられるWHOグループ3肺高血圧症を有する、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が換気-潅流(V/Q)ミスマッチを有する、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記iNOが少なくとも1週間投与される、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記iNOが少なくとも2週間投与される、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記iNOが少なくとも4週間投与される、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記iNOが少なくとも3ヶ月間投与される、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記iNOが少なくとも1日に6時間投与される、請求項39~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記iNOが少なくとも1日に12時間投与される、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記iNOの有効量が毎時理想体重1キログラムあたり約10~約300マイクログラム(mcg/kg IBW/時)のNOの範囲にある、請求項39~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記有効量が約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲にある、請求項39~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
心機能を維持すること又は改善することが(i)右室機能を維持すること若しくは改善すること又は(ii)左心室機能を維持すること若しくは改善することの1以上を含む、請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
右室機能を維持すること又は改善することが、次のパラメータ:右心室小面積変化(RVFAC)、三尖弁輪運動、三尖弁輪収縮期変動(TAPSE)、収縮期肺動脈圧(sPAP)、三尖弁環収縮期速度(TASV)、及びテイ指数の1以上を維持すること又は改善することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記iNOの投与が少なくとも1ミリメートル(mm)のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記iNOの投与が少なくとも2mmのiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記iNOの投与が少なくとも5%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記iNOの投与が少なくとも10%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する、請求項53~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
左室機能を維持すること又は改善することが、次のパラメータ:左心室駆出率(LVEF)、左心室のサイズ、及び左心室早期拡張期弛緩速度の1以上を維持すること又は改善することを含む、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年8月30日出願の米国仮出願第62/552,022号及び2017年12月28日出願の同第62/611,325号の優先権を主張するものであり、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明の原理及び実施形態は、一般に、吸入用一酸化窒素送達の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒトの心臓は、ヒトの循環系を通して血液を送り出すように共に働く4つのチャンバーを有する。これらのうち、2つのチャンバーは心室として知られており、左心室(LV)は全身循環に血液を送り出し、右心室(RV)は肺循環中に血液を送り出す。
【0004】
正常な心拍出量を維持するのに適切なRV機能の重要性は、十分に確立されている。RVの1つの役割は、肺のガス交換膜に不飽和化静脈血を送達するための、変化する循環及びローディング条件下での十分な肺の潅流圧の維持である。RVの別の役割は、組織及び臓器の鬱血を防ぐための低い全身静脈圧の維持である。
【0005】
加えて、RV機能は、臨床転帰の主要な決定因子であることが示されており、臨床研究及び治療法における成果を予測する可能性を有する。さらに、RV及びLVの相互依存性により、RV機能の改善はまた、LV機能の改善につながり得る。
【0006】
したがって、RV機能及び/又はLV機能を改善するための新しい治療法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、吸入用一酸化窒素(iNO)を使用して、RV機能を維持又は改善する方法に関する。この態様の様々な実施形態において、本方法は、少なくとも2日間、有効量のiNOを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0008】
1以上の実施形態において、患者は、肺高血圧症(PH)を有する。1以上の実施形態において、PHは、肺動脈高血圧症(PAH)(WHOグループI)、左心疾患に関連付けられるPH(WHOグループ2)、肺疾患及び/又は慢性低酸素症に関連付けられるPH(WHOグループ3)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(WHOグループ4)又は不明多因子機構を有するPH(WHOグループ5)の1以上を含む。
【0009】
1以上の実施形態において、患者は、PHの低い、中間の、又は高い確率を有する。
【0010】
1以上の実施形態において、患者はPAHを有する。
【0011】
1以上の実施形態において、患者は、特発性肺線維症に関連付けられるWHOグループ3のPH(PH-IPF)又は慢性閉塞性肺疾患に関連付けられるWHOグループ3のPH(PH-COPD)を有する。
【0012】
1以上の実施形態において、患者は、高山病からの肺水腫に関連付けられるPHを有する。
【0013】
1以上の実施形態において、患者は、サルコイドーシスに関連付けられるPHを有する。
【0014】
1以上の実施形態において、患者は、肺移植待機リストに載っている。
【0015】
1以上の実施形態において、患者は、肺移植を受けたことがある。
【0016】
1以上の実施形態において、患者は、換気-潅流(V/Q)ミスマッチを有する。
【0017】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1週間投与される。
【0018】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも2週間投与される。
【0019】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも4週間投与される。
【0020】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも3ヶ月間投与される。
【0021】
1以上の実施形態において、iNOは、1日に少なくとも6時間投与される。
【0022】
1以上の実施形態において、iNOは、1日に少なくとも12時間投与される。
【0023】
1以上の実施形態において、iNOの有効量は、1時間あたり理想体重1キログラムあたり約5~約300マイクログラムの範囲内にある(mcg/kg IBW/時)。
【0024】
1以上の実施形態において、有効量は、約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲内にある。
【0025】
1以上の実施形態において、RV機能の維持又は改善は、次のパラメータ:RV小面積変化(right ventricular fractional area change)(RVFAC)、三尖弁輪運動、三尖弁輪収縮期変動(tricuspid annular plane systolic excursion)(TAPSE)、収縮期肺動脈圧(sPAP)、三尖弁環収縮期速度(TASV)、及びテイ指数(Tei index)の1以上の維持又は改善を含む。
【0026】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも1ミリメートル(mm)のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0027】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも2mmのiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0028】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも5%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0029】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも10%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0030】
本発明の別の態様は、iNOを使用してLV機能を維持又は改善する方法に関する。この態様の様々な実施形態において、本方法は、少なくとも2日間、有効量のiNOを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0031】
1以上の実施形態において、患者はPHを有する。1以上の実施形態において、PHは、PAH、左心疾患に関連付けられるPH、肺疾患及び/又は慢性低酸素血症に関連付けられるPH、慢性血栓塞栓性肺高血圧症又は不明多因子機構を有するPHの1以上を含む。
【0032】
1以上の実施形態において、患者は、PHの低い、中間の、又は高い確率を有する。
【0033】
1以上の実施形態において、患者はPAHを有する。
【0034】
1以上の実施形態において、患者は、PH-IPF又はPH-COPDを有する。
【0035】
1以上の実施形態において、患者は、肺移植待機リストに載っている。
【0036】
1以上の実施形態において、患者は、肺移植を受けたことがある。
【0037】
1以上の実施形態において、患者は、V/Qミスマッチを有する。
【0038】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1週間投与される。
【0039】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも2週間投与される。
【0040】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも4週間投与される。
【0041】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも3ヶ月間投与される。
【0042】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1日に6時間投与される。
【0043】
1以上の実施形態において、iNOは、1日に少なくとも12時間投与される。
【0044】
1以上の実施形態において、iNOの有効量は、約5~約300mcg/kg IBW/時の範囲にある。
【0045】
1以上の実施形態において、有効量は、約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲にある。
【0046】
1以上の実施形態において、LV機能の維持又は改善は、次のパラメータ:LV駆出率(LVEF)、LVのサイズ、及びLV早期拡張期弛緩速度の1以上の維持又は改善を含む。
【0047】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの複数のパルスは、複数の呼吸にわたって患者に投与される。
【0048】
1以上の実施形態において、NOを含むガスは、複数の呼吸の少なくとも1回の呼吸で患者に投与されない。
【0049】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の最大期間は、約30、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5又は約6秒を超えない。
【0050】
1以上の実施形態において、連続的にスキップされる呼吸の最大数は、3回、2回、又は1回の呼吸を超えない。
【0051】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の平均期間は、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5又は約6秒を超えない。
【0052】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の平均期間は、約3回、約2.5回、約2回、約1.5回又は1回の呼吸を超えない。
【0053】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、又は約1000パルスが、患者に毎時投与される。
【0054】
本発明の別の態様は、肺移植待機リスト上の患者において心臓機能を維持又は改善するためのiNOの使用法に関する。この態様の様々な実施形態において、本方法は、少なくとも2日間、有効量のiNOを患者に投与することを含む。
【0055】
1以上の実施形態において、患者はPHを有する。1以上の実施形態において、PHは、PAH、左心疾患に関連付けられるPH、肺疾患及び/又は慢性低酸素血症に関連付けられるPH、慢性血栓塞栓性肺高血圧症又は不明多因子機構を有するPHの1以上を含む。
【0056】
1以上の実施形態において、患者はPAHを有する。
【0057】
1以上の実施形態において、患者は、PH-IPF又はPH-COPDを有する。
【0058】
1以上の実施形態において、患者は、高山病からの肺水腫に関連付けられるPHを有する。
【0059】
1以上の実施形態において、患者は、サルコイドーシスに関連付けられるPHを有する。
【0060】
1以上の実施形態において、患者は、V/Qミスマッチを有する。
【0061】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1週間投与される。
【0062】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも2週間投与される。
【0063】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも4週間投与される。
【0064】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも3ヶ月間投与される。
【0065】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1日に6時間投与される。
【0066】
1以上の実施形態において、iNOは、少なくとも1日に12時間投与される。
【0067】
1以上の実施形態において、iNOの有効量は、約5~約300mcg/kg IBW/時の範囲にある。
【0068】
1以上の実施形態において、有効量は、約30~約75mcg/kg IBW/時の範囲にある。
【0069】
1以上の実施形態において、心機能の維持又は改善は、(i)RV機能の維持若しくは改善又は(ii)LV機能の維持若しくは改善の1以上を含む。
【0070】
1以上の実施形態において、RV機能の維持又は改善は、次のパラメータ:RVFAC、sPAP、三尖弁輪運動、TAPSE、TASV、及びテイ指数の1以上の維持又は改善を含む。
【0071】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも1mmのiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0072】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも2mmのiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0073】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも5%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0074】
1以上の実施形態において、iNOの投与は、少なくとも10%のiNO投与の4週間後の患者群においてTAPSEの平均増加を提供する。
【0075】
1以上の実施形態において、LV機能の維持又は改善は、次のパラメータ:LVEF、LVのサイズ、及びLV早期拡張期弛緩速度の1以上の維持又は改善を含む。
【0076】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの複数のパルスは、複数の呼吸にわたって患者に投与される。
【0077】
1以上の実施形態において、NOを含むガスは、複数の呼吸の少なくとも1回の呼吸で患者に投与されない。
【0078】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の最大期間は、約30、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5又は約6秒を超えない。
【0079】
1以上の実施形態において、連続的にスキップされる呼吸の最大数は、3回、2回、又は1回の呼吸を超えない。
【0080】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の平均期間は、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5又は約6秒を超えない。
【0081】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続するパルス間の平均期間は、約3回、約2.5回、約2回、約1.5回又は1回の呼吸を超えない。
【0082】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、又は約1000パルスが、患者に毎時投与される。
【0083】
本発明のさらなる特徴は、以下の明細書及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】iNOの使用を評価する三部臨床試験の2a部の治療訪問スケジュールを示す。
【
図2】iNOの使用を評価する三部臨床試験の2b部の治療訪問スケジュールを示す。
【
図3】iNOの使用を評価する三部臨床試験の3a部の治療訪問用量滴定詳細を示す。
【
図4】iNOの使用を評価する三部臨床試験の3b部の治療訪問スケジュールを示す。
【
図5】ベースラインでの及び慢性iNO療法中のPH-COPD患者における6分間歩行距離(6MWD)の変化を示す。
【
図6】ベースラインでの、慢性iNO療法中の及び慢性iNO療法の中止後のPH-COPD患者におけるsPAPを示す。
【
図7】ベースラインでの、慢性iNO療法中の及び慢性iNO療法の中止後のPH-COPD患者におけるTAPSEを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載した構成又はプロセスの工程の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態及び様々な方法で実施又は実行することが可能である。
【0086】
驚くべきことに、長期iNO療法が、PH患者においてRV機能を維持及び/又は改善することが発見された。短期iNO療法は、心臓移植レシピエントにおけるRV障害の管理に使用されてきたが、長期iNO療法は、RV機能を維持又は改善すると示されたことはない。したがって、本発明の様々な実施形態は、長期iNO療法を用いてRV機能を維持及び/又は改善することに関する。
【0087】
RV機能の維持及び/又は改善は、多くの心エコー測定によって評価できる。RV機能を評価するための1つのそのような定量的アプローチは、TAPSEの測定である。TAPSEは、頂点に向かう横方向の三尖弁輪収縮期移動距離のレベルを測定することによって、RV収縮期機能を推定する。放射性核種血管造影法により評価されるように、TAPSEとRV駆出率の間の良好な相関関係が以前に確立され、このアプローチは再現性があり、心不全における予後の強力な予測因子であることが証明された[参考文献:Heart.2006 Apr;92(補遺1):i19~i26]。
【0088】
RV機能の維持及び/又は改善を評価するために使用され得る他の心エコー測定は、RVFAC、sPAP、三尖弁輪運動、TAPSE、TASV、及びテイ指数を含むが、これらに限定されない。
【0089】
したがって、1以上の実施形態において、iNO療法は、以下のパラメータ:TAPSE、RVFAC、sPAP、三尖弁輪運動、TAPSE、TASV、及びテイ指数の1以上を維持又は改善する。いくつかの実施形態において、パラメータの維持は、一定期間にわたってそのパラメータに変化がないことに対応する。いくつかの実施形態において、パラメータが経時的に未治療患者で悪化すると予想される(例えば、TAPSEが未治療PH患者で減少すると予想される)場合に、パラメータの維持はまた、未治療患者に期待される臨床的悪化よりも小さい規模であるパラメータの臨床的悪化を含む。
【0090】
1以上の実施形態において、iNO療法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30日間、1、2、3、4、5、6、7若しくは8週間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18若しくは24ヶ月間、又は少なくとも1、2、3、4又は5年間iNOを投与した後などの、一定期間にわたって、TAPSEを維持するか、又は増加させる。
【0091】
1以上の実施形態において、患者のTAPSEは、TAPSEが未治療患者で減少すると予想されるにもかかわらず、iNO療法中に変化しない。他の実施形態において、患者のTAPSEは、一定期間にわたって増加する。TAPSEの例示的な増加は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10mmの増加を含む。TAPSEの例示的な増加はまた、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65又は約70%の増加などの、パーセンテージで表すことができる。
【0092】
1以上の実施形態において、1週間のiNO療法は、少なくとも1mmの患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、1週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10mmである。
【0093】
1以上の実施形態において、1週間のiNO療法は、少なくとも5%の患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、1週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65又は約70%である。
【0094】
1以上の実施形態において、2週間のiNO療法は、少なくとも1mmの患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、2週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10mmである。
【0095】
1以上の実施形態において、2週間のiNO療法は、少なくとも5%の患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、2週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65又は約70%である。
【0096】
1以上の実施形態において、4週間のiNO療法は、少なくとも1mmの患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、4週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10mmである。
【0097】
1以上の実施形態において、4週間のiNO療法は、少なくとも5%の患者群におけるTAPSEの平均増加を提供する。様々な実施形態において、4週間のiNO療法後の患者群におけるTAPSEの平均増加は、少なくとも約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65又は約70%である。
【0098】
上記のように、RV機能及びLV機能の相互依存性により、RV機能の改善はまた、LVの機能を改善できる。そのため、iNO療法はまた、患者におけるLV機能を維持及び/又は改善するために使用できる。
【0099】
LV機能の維持及び/又は改善は、多くの心エコー測定によって評価できる。LV機能の維持及び/又は改善を評価するために使用できる心エコー測定は、LVEF、LVのサイズ、及びLV早期拡張期弛緩速度を含むが、これらに限定されない。
【0100】
したがって、1以上の実施形態において、iNO療法は、次のパラメータ:LVEF、LVのサイズ、及びLV早期拡張期弛緩速度の1以上を維持又は改善する。上記のように、いくつかの実施形態において、パラメータの維持は、一定期間にわたってそのパラメータに変化がないことに対応する。いくつかの実施形態において、パラメータが経時的に未治療患者で悪化すると予想される場合、パラメータの維持はまた、未治療患者について予想される臨床的悪化よりも小さい規模のパラメータの臨床的悪化を含む。
【0101】
1以上の実施形態において、患者又は患者群は、PHを有すると診断される。患者(複数可)は、心エコー検査、右心カテーテル法(RHC)などの技術を用いて、適切な基準に従って心臓病専門医、呼吸器専門医又は他の医師によって診断され得る。そのような基準の例は、少なくとも25mmHgの安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、又は2.9m/sより大きい三尖弁逆流速度、又は適切な医師により決定されるような要因の他の組合せを有する患者を含むが、これに限定されない。世界保健機関(WHO)は、PHの5つのカテゴリー:PAH(WHOグループ1);左心疾患と関連付けられるPH(WHOグループ2)、肺疾患及び/又は慢性低酸素症に関連付けられるPH(WHOグループ3)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(WHOグループ4)又は不明多因子機構を有するPH(WHOグループ5)を定義している。
【0102】
WHOグループ2の患者の例は、収縮期機能不全、拡張機能障害及び/又は弁膜疾患を有するものを含む。
【0103】
WHOグループ3の患者の例は、PH-COPD患者及びPH-IPF患者などの間質性肺疾患(ILD)を有するものを含む。WHOグループ3患者の他の例は、肺線維症と肺気腫の合併(CPFE)、慢性的高地曝露、又は睡眠呼吸障害若しくは発達疾患などの他の肺疾患を有するものを含む。COPD、ILD及び他の肺疾患は、米国胸部学会のガイドラインに記載のものなどの任意の適切な因子又は因子の組み合わせに応じて診断され得る。COPDを診断するための基準の例示的な一組は、慢性閉塞性肺疾患(GOLD)基準のグローバルイニシアチブである。少なくとも1つの実施形態において、患者はPH-COPDを有する。少なくとも1つの実施形態において、患者は、PH-IPFを有する患者などのPH及びILDを有する。少なくとも1つの実施形態において、患者は、高山病からの肺水腫に関連付けられるPHを有する。
【0104】
1以上の実施形態において、患者は、V/Qミスマッチを有する。
【0105】
WHOグループ5患者の例は、血液障害、肺の関与を有する全身障害(例えば、サルコイドーシス、ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ脈管筋腫症、神経線維腫症及び血管炎)、代謝障害(例えば、甲状腺障害及び糖原病)、並びに腫瘍閉塞又は腎不全などの他の疾患を有するものを含む。少なくとも1つの実施形態において、患者は、サルコイドーシスに関連付けられるPHを有する。
【0106】
1以上の実施形態において、患者又は患者群は、心エコー検査法又は他の適切な技術によって決定されるように、PHの低い、中間の、又は高い確率を有する。PHの確率を評価するための基準の例示的な一組は、肺高血圧症の診断及び治療のための2015 ESC/ERSガイドラインに記載されている。少なくとも1つの実施形態において、患者は、PHの低い心エコー確率を有する。少なくとも1つの実施形態において、患者は、PHの中間の心エコー確率を有する。少なくとも1つの実施形態において、患者は、PHの高い心エコー確率を有する。
【0107】
1以上の実施形態において、患者は肺移植待機リストに載っており、iNO療法が、肺移植前のRV及び/若しくはLV機能を維持又は改善するために使用される。他の実施形態において、患者は既に肺移植を受けたことがある。
【0108】
肺移植を必要とする患者は、評価され、各候補者の病気の重症度及び肺移植後のその患者の成功のチャンスを推定する肺割り当てスコア(lung allocation score)(LAS)を受け取る。より高いLASを有するものは、適合性のある肺が使用可能になった場合に、肺提供について優先度がより高い。心機能(例えば、RV及び/若しくはLV機能)の改善又は維持は、患者が肺移植を受けるのに十分に長く生き残る可能性を向上させる。さらに、心機能(例えば、RV及び/若しくはLV機能)の改善又は維持は、肺移植後の患者の予後を改善する。したがって、1以上の実施形態において、iNO療法を、肺移植リスト上の患者、特に、PHを有する肺移植リスト上の患者に提供できる。また、1以上の実施形態において、iNO療法は、患者のLASを決定するために使用される1以上の要因に影響を与える可能性があり、そのため、iNO療法は、患者のLASを変更し得る。
【0109】
iNOは、連続的に、又は一連のパルス、又は患者の肺へiNOを送達するための任意の他の適切な技術によって投与され得る。iNOの投与のための例示的なデバイスは、米国特許第5,558,083号、同第7,523,752号、同第8,757、148号、同第8,770,199号、同第8,893,717号、同第8,944,051号、米国特許出願公開2013/0239963号、同第2014/0000596号;及び同第2016/0106949号に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
1以上の実施形態において、iNOは、NOを含有するシリンダー及び窒素(N2)などのキャリアガスを利用するNO送達装置によって投与される。例示的なNOシリンダー濃度は、約100ppm~約15,000ppmの範囲内の濃度、例えば、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,500、約2,000、約2,500、約3,000、約3,500、約4,000、約4,500、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9000、約10,000又は約15,000ppmの濃度を含むが、これらに限定されない。1以上の実施形態において、NOシリンダー濃度は、約4,880ppmである。
【0111】
1以上の実施形態において、NOは、ベッドサイド又は投与の時点で生成される。例えば、電極の存在下でのN2と酸素(O2)の反応、又は二酸化窒素(NO2)と還元剤の反応などの様々な化学反応を、NOを生成するために使用できる。
【0112】
1以上の実施形態において、iNOは、一連のパルスとして投与される。iNOは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約1.5、約2、約3、約4又は約5mLなどの特定のパルス容積を有し得る。パルス容積は、1回の呼吸から次の呼吸まで同じであってもよいし、又はパルス容積は、患者の呼吸速度及び/又は既に患者に送達されたiNOの量に応じて変化し得る。
【0113】
1以上の実施形態において、iNOの有効量は、約5~約300mcg/kg IBW/時の範囲にある。患者の理想体重は、患者の推定される肺の大きさと相関し、患者の性別及び身長の関数である。様々な実施形態において、iNOの用量は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65又は約70mcg/kg IBW/時である。
【0114】
1以上の実施形態において、nmol/呼吸、ng/呼吸又はmL/呼吸の一定の用量などのiNOの一定用量が、各呼吸で患者に送達される。例示的な用量は、呼吸あたり約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000又は約1,500nmolのNOを含む。
【0115】
1以上の実施形態において、iNOは、一定の濃度で連続的に投与される。例えば、iNOは、約1ppm~約100ppmの一定の濃度で投与され得る。様々な実施形態において、iNOの用量は、約1、約2、約3、約4、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95又は約100ppmである。
【0116】
1以上の実施形態において、所望量のガスが、患者の呼吸パターンに無関係である方法で、複数の呼吸にわたって患者に投与される。例えば、患者のiNO用量は、患者の呼吸パターン又は呼吸速度にかかわらず、所望の量が毎時間患者に送達されるように、mcg/kg IBW/時の単位で処方されてもよい。NO送達装置は、患者の処方箋を受け取るために、ダイヤル、ディスプレイ、タッチスクリーン又は他のユーザインターフェースなどの入力を有し得る。呼吸あたりのNOの量(例えば、nmol NO、ng NO、NOを含むガスmLなど)は、患者の現在の呼吸パターンに基づいて計算でき、かつそのNOの量は、次の呼吸で又は数回の呼吸で患者に送達され得る。NO送達装置は、患者の呼吸パターン又は呼吸速度(又は呼吸パターン若しくは呼吸数の変化)を監視し、再計算し、かつ/又は別の方法で、現在の呼吸又は後続の呼吸で送達されるNO含有ガスの量を調整できる。NO送達装置は、呼吸を監視し、計算し、又は別の方法で、送達されるNOの量を決定し、NOを含むガスを送達するためのNO送達装置(例えば、流量センサ、圧力センサ、バルブ、ガス導管など)の他の構成要素と連通するために、適切なソフトウェア及び/又はハードウェア(例えば、流量センサ、圧力センサ、プロセッサ、メモリなど)を有する制御システムを有してよい。呼吸あたりのNOの量は、毎呼吸後に計算及び/若しくは調整するか、又は毎分、10分ごと、10回の呼吸ごと、100回の呼吸ごとなどの一定の間隔で計算及び/又は調整ができる。
【0117】
1以上の実施形態において、iNOは、呼吸毎に患者に送達されず、少なくとも1回の呼吸が、iNO療法中にスキップされる。NOを含むガスの個々のパルス間の期間は、様々であるか、又は一定であり得る。様々な実施形態において、パルス間の最大期間、パルス間の最大平均期間及び/又は最小パルス頻度が設けられてよい。
【0118】
様々な状況が、特定の呼吸中にスキップされるiNOを生じさせ得る。例えば、iNOがn(nは1超である)回目の呼吸ごとに投与される、間欠投薬計画が利用され得る。様々な実施形態において、nは、約1.01、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又約10である。nが整数ではない(例えば、1.1又は2.5)場合に、nは複数の呼吸にわたる平均を表してよい。一例として、2.5回の呼吸ごとのiNOの投与は、iNOが5回の呼吸ごとに2回の呼吸の平均(すなわち、5/2=2.5)で投与されることを示す。同様に、1.1回の呼吸ごとのiNOの投与は、iNOが11回の呼吸ごとに10回の呼吸の平均(すなわち、11/10=1.1)で投与されることを示す。iNOが、n(nは1超である)回の呼吸ごとに投与される他の間欠投与計画について、同様の計算を行うことができる。
【0119】
1以上の実施形態において、所定の呼吸がスキップされる間欠投薬計画を利用してもよい。所定の呼吸のスキッピングは、他の呼吸ごとのスキッピング、3回の呼吸ごとのスキッピング、2回の連続呼吸のスキッピング、及び3回目の呼吸での送達などの所定のパターンに基づいてよい。所定のパターンは、nが1超、例えば、約1.01、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10であるなどの、n回目の呼吸ごとにNOを含むガスを送達することを含んでよい。
【0120】
1以上の実施形態において、1以上の呼吸は、一定期間内にスキップされる。例えば、1、2、3、4、5回などの呼吸が、1時間ごと、30分ごと、15分ごと、10分ごと、毎分、30秒ごとなどにスキップされ得る。いくつかの実施形態において、わずか1回ほどの呼吸が、iNO療法全体中にスキップされる。他の実施形態において、複数回の呼吸が、iNO療法中にスキップされる。
【0121】
1以上の実施形態において、ランダム呼吸がスキップされる間欠投薬計画を利用してもよい。ランダム呼吸のスキッピングは、ランダム数生成器に従って決定でき、かつ/又は患者の呼吸パターン、患者の呼吸速度、患者に送達されるiNOの量、患者のiNO処方などの現在の臨床状態に基づいてよく、かつ/又は最小パルス容積などのNO送達装置の設定に基づいてよい。
【0122】
1以上の実施形態において、NO送達装置は、最小パルス容積などの、呼吸で送達できるガスの最小量を有し得る。ガスのこの最小量は、ユーザにより設定されるか、又はNO送達装置の仕様により設定される最小閾値セットであり得る。1以上の実施形態において、特定の呼吸で患者に送達されるNOを含むガスの量が、呼吸あたりのガスの最小量(例えば、最小パルス容積)よりも少ない場合に、ガスの投与が、その呼吸についてスキップされる。1以上の実施形態において、呼吸がスキップされると、呼吸あたりのガスの新たな量が計算され、かつ/又はガスの量が引き継がれ、1以上のその後の呼吸で送達されるガスの量に加えられる。
【0123】
上記の例示的な状況に加えて、iNO療法中にスキップされる1以上の呼吸をもたらすことができる他の状況も、本開示に包含される。そのような状況は、薬物シリンダー若しくはカートリッジの変更又は切り替え;NO送達装置のパージ;LTOT、連続気道陽圧(CPAP)、バイレベル気道陽圧(BPAP)などの他の装置又は送達システムとの係合;無呼吸、空の薬物シリンダー/カートリッジ、空のバッテリーなどのNO送達装置アラーム条件;又はNO送達装置の障害状態(複数可)による呼吸のスキッピング又はiNO療法中の休止を含むが、これらに限定されない。
【0124】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続パルス間の最大期間が存在する。例えば、連続パルス間の期間は、変化してもよく、又は一定であってもよいが、ガスの連続パルス間の期間が長すぎるのを防ぐ上限が提供され得る。例示的な実施形態において、ガスの連続パルス間の最大期間は、約30、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5、又は約6秒を超えない。
【0125】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続パルス間の最大期間は、呼吸の最大数として提供される。例示的な実施形態において、連続スキップされる呼吸の最大数は、4、3、2、又は1回の呼吸を超えない。
【0126】
1以上の実施形態において、NOを含むガスの連続パルス間の平均期間は、約30、約25、約20、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8.5、約8、約7.5、約7、約6.5又は約6秒を超えないなどの、一定期間を超えない。再び、個々のパルス間の期間は、変化してよく、又は同じであり得る。
【0127】
1以上の実施形態において、連続スキップされる呼吸の平均数は、約3、約2.5、約2、約1.5、約1又は約0.5回の呼吸を超えない。
【0128】
1以上の実施形態において、パルス投与頻度は、時間あたりのパルスなどの所与の期間内のパルスの数として提供される。例えば、1以上の実施形態において、患者は、1時間あたりNOを含むガスを少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950又は約1,000パルスで投与される。
【0129】
より短い期間を使用してもよく、これらのパルス頻度は、同様に分あたり又は他の期間あたりのパルスで表すことができる。1以上の実施形態において、患者は、少なくとも約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、約14、約14.5、約15、約16、約17、約18、約19又は約20パルスで投与される。
【0130】
1以上の実施形態において、iNOは、毎日、一定期間投与される。例えば、iNOは、1日に少なくとも約1時間投与され得る。様々な実施形態において、iNOは、1日に少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約16、約18又は約24時間投与される。
【0131】
1以上の実施形態において、iNOは、特定の治療時間投与される。例えば、iNOは、少なくとも2日間投与され得る。様々な実施形態において、iNOは、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6若しくは約7日間、又は約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7若しくは8週間、又は約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18若しくは約24ヶ月間、又は1、2、3、4又は5年間投与される。
【0132】
1以上の実施形態において、患者はまた、長期酸素療法(LTOT)を受けている。様々な実施形態において、LTOTは、少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約16、約18又は約24時間投与される。様々な実施形態において、LTOTは、約0.5L/分~約10L/分、例えば、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10L/分などの用量で投与される。LTOTは、連続的に又はパルスを介して投与され得る。
【0133】
実施例
実施例1-PH-IPFを有する対象におけるRV機能に対する長期iNO療法の効果
研究計画
この研究は、LTOTのPH-COPD(1部)を有する対照、LTOTのPH-IPF(2部及び3部)(IK-7002-COPD-006;NCT02267655)を有する対象における機能的肺撮像パラメータに対するパルスiNOの効果を評価するための探索的三部臨床試験であった。この探索的研究の目的は、LTOTのPH-IPF(2部及び3部)を有する対象において、パルスNO送達装置を用いて短期iNO投与の関数としての機能的呼吸撮像パラメータの変化を測定するための高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)の有用性を検討することであった。この探索的研究における一次エンドポイントは、パルスiNO(1部)、iNO又はプラセボ(2a部)での投与後及び4週間のiNO治療(3b部)後の、HRCTによって測定される総肺容量(TLC)における肺葉血液量のベースラインからの変化である。
【0134】
2a部の二次エンドポイント(急性;プラセボ対iNO 75mcg/kg IBW/時)は、ボルグ(Borg)CR10脚疲労及び呼吸困難スケールにおける変化、呼吸アンケートにおける変化並びに右室機能及び左室機能における変化であった。
【0135】
2b部(慢性投与)の二次エンドポイントは、6MWTの開始時及び終了時の、ボルグCR10脚疲労及び呼吸困難スケール及びSpO2を用いた6MWTにおける変化、並びに75mcg/kg IBW/時の用量でのiNOの4週間の使用後及びiNOの中止の2週間後にアンケートを用いて評価した症状であった。
【0136】
3b部(慢性投与)の二次エンドポイントは、6MWTの開始時及び終了時の、ボルグCR10脚疲労及び呼吸困難スケール及びSpO2を用いた6MWTにおける変化、並びに30mcg/kg IBW/時の用量でのiNOの4週間の使用後にアンケートを用いて評価した症状であった。
【0137】
本試験での安全性エンドポイントは:
a.装置欠陥に関連するものを含む、治療出現有害事象(AE)の発生率及び重症度;
b.MetHbのレベルの発生率>7.0%;
c.治験研究薬の一時的な急性離脱に関連付けられるリバウンドPHによる可能性がある新たな症状(すなわち、急性離脱の20分以内に生じ、治験医療装置の誤動作又は故障に関連付けられるものを含む症状):全身動脈酸素飽和度の低下、低酸素血症、徐脈、頻脈、全身性低血圧、ほぼ失神、失神、心室細動、及び/又は心停止;
d.左心不全又は肺水腫の新たな症状若しくは悪化した症状;並びに
e.パルス酸素測定(SpO2)により動脈血の酸素飽和度によって測定される全身酸素における減少、すなわち、臨床的に有意であると治験責任医師によってみなされた低酸素又は酸素飽和度の減少、
であった。
【0138】
これは、LTOTのPH-IPF(2部及び3部)を有する対象において、パルスNO送達装置を用いてiNOの短期パルス投与の薬力学的効果を測定するためのHRCTの有用性を評価するための探索的臨床試験であった。
【0139】
2b部及び3b部において、6MWTの開始時及び終了時での、ボルグCR10脚疲労及び呼吸困難スケール及びSpO2による6MWTにおける変化、並びに症状アンケートを用いて、LTOTのIPFに関連付けられるPHを有する対象におけるパルスNO送達装置を用いて投与される長期パルスiNOの効果を評価した。
【0140】
研究の2部において、対象は重篤なPHを有する必要があったので、2部におけるPHを、2D心エコー図によりsPAP≧50mmHgと定義した。3部において、PHを心エコー図によりsPAP≧35mmHgと定義した(3部)。
【0141】
最初のプロトコルは、4人の対象が2部に登録されることを意図した。しかしながら、治験の2部の実施中に、2人の対象の登録後に、登録された2人のIPF患者は両方とも、75mcg/kg IBW/時の用量でのiNOの使用を中止した後に、PAPの急激な増加に苦しんだことに気づいた。一時的に補充を止めることを決めた。2人の対象のうち1人は、2b部における4週間の慢性的使用を完了した。
【0142】
修正において、合計2人の対象が3部に参加した。3部における用量は、2部の場合よりも低く、各対象は、治験責任医師によって決定される最適用量に滴定した。PAPの突然の揺れを防ぐために、iNOの用量を低下させた。用量を、所定の位置のRHCで監視した。治験者は、次の2人の対象の両方が安全に30mcg/kg IBW/時のiNO用量に滴定できることを見出した。この用量を、3部でこれらの2人の対象に使用した。
【0143】
2部で登録された2人の対象を、2a部について、75mcg/kg IBW/時の用量でNOシリンダー濃度(4,880ppm)を利用するiNO、又は75mcg/kg IBW/時の用量で設定されたプラセボを投与する2つのシーケンスの1つにランダム割り当てた。
図1は、2a部の治療訪問スケジュールを示す。
【0144】
2a部からの1人の患者を2b部に登録した。2b部中に、患者に、少なくとも12時間/日で4週間、75mcg/kg IBW/時の用量でNOシリンダー濃度(4,880ppm)を利用してiNOを投与する。2b部の治療訪問スケジュールを
図2にまとめる。
【0145】
2人の対象を3a部に登録し、それぞれに、全てLTOTで、5mcg/kg IBW/時、10mcg/kg IBW/時及び30mcg/kg IBW/時の用量でNOシリンダー濃度(4,880ppm)を利用するiNOの3種類の異なる用量を投与した。各用量について、PAP圧での変化及び心拍出量での変化をRHCによって評価した。治験者は、次の用量を続行するか又はしないかを、各投薬後に決めることができた。
図3は、3a部の治療訪問用量滴定の詳細を示す。
【0146】
3a部からの2人の患者を3b部に登録した。3b部中に、患者に、30mcg/kg IBW/時の用量でNOシリンダー濃度(4,880ppm)を利用するiNOを投与した。1人の対象は、装置に耐えられず、2週間後に治療を中止した。
図4は、3b部のための治療訪問スケジュールを示す。
【0147】
研究集団は、LTOTを投与されPHを有するIPFの確定診断を有する、40歳以上で80歳以下の対象(2部及び3部)からなった。合計4人の対象を登録した。
【0148】
研究は、2部及び3部についての以下の組み入れ基準を有した:
a.患者は、責任のある経験豊富な呼吸器内科医によって決定され、以下に基づくIPFの診断を有する;
i.HRCT:通常の間質性肺炎
ii.FVC:予測されるFVCの50~90%
b.心エコー図(2部)によるsPAP≧50mmHg及び心エコー図又は右心カテーテル法(3部)によるsPAP≧35mmHgとして定義されるPH。3a部において、スクリーニング訪問及び治療訪問を同じ日に行う場合、スクリーニング訪問前の12ヶ月以内からの心エコー図又はRHCによって文書化された結果が、適格性を評価するために利用可能であるべきである。
c.年齢≧40歳
d.3ヶ月以上の間、LTOTを受けている
e.妊娠の可能性のある女性は、治療前に尿妊娠検査が陰性でなければならない
f.手順又は評価を義務付けされた任意の調査の開始前に署名されたインフォームドコンセント
g.BMI≦35(3部のみ)。
【0149】
本研究は、2部及び3部について、以下の重要な除外基準を有した。以下の基準のいずれかを満たす対象は、登録の対象とはならなかった。
a.過去30日以内の進行中のIPF増悪又は悪化を伴う患者
b.軽度若しくはそれより大きい大動脈弁膜症(大動脈弁狭窄症若しくは逆流)、及び/又は中等度若しくはそれより大きい僧帽弁疾患(僧帽弁狭窄若しくは逆流)、又は僧帽弁置換術後の状態を含む、PHに寄与し得る臨床的に重大な心臓弁膜症
c.承認された特定のPH薬(ERA若しくはPDE-5阻害剤、又は経口、吸入、皮下、又は静脈内用のプロスタサイクリン若しくはプロスタサイクリンアナログ)の、スクリーニングの30日以内の使用又は現在の使用
d.研究への登録前の30日以内の治験薬又は装置の使用
e.治験者の意見において、対象を本研究に適さない候補者にする、任意の内在する医学的又は精神医学的状態。
【0150】
結果
上記の説明から分かるように、PH-IPFを有する患者にiNOでの急性及び慢性治療を施した。慢性期の間、血管拡張及び血行動態を評価した。慢性期の間、焦点は運動能力であった。急性期と慢性期の両方で、30及び75mcg/kg IBW/時のiNO用量を評価した。
【0151】
下の表1は、血管容積並びにsPAPに対するiNOの急性効果を示す。
【表1】
【0152】
表1から分かるように、血管容積の増加は、30mcg/kg IBW/時のiNO用量と比較して、75mcg/kg IBW/時のiNO用量についてはるかにより高い。しかしながら、sPAPに対する効果は、同様であるか、又は30mcg/kg IBW/時のより低いiNO用量に偏った。
【0153】
下の表2は、本治験における2人のPH-IPF対象からのTAPSE結果を示す。対象1に、4週間、75mcg/kg IBW/時の用量でパルスiNOを投与し、対象3に、4週間、30mcg/kg IBW/時の用量でパルスiNOを投与した。
【0154】
【0155】
表2から分かるように、これらの結果は、長期パルスiNO療法が両方のPH-IPF対象においてTAPSEを増加させたことを示す。TAPSEのこの増加は、RV機能の改善を示す。
【0156】
実施例2-PH-COPDを有する対象におけるRV機能に対する長期iNO療法の効果
この研究は、PH-COPD(パルス-COPD-007;NCT03135860)を有する対象におけるiNO療法のオープンラベルフェーズ1研究である。本研究の主要な結果は、iNOを有する総肺容量における肺葉血液量の変化及びHRCTによって測定されるiNOでの治療の4週間後のiNOでの肺葉血液量における変化である。
【0157】
対象は、慢性閉塞性肺疾患(GOLD)基準のグローバルイニシアチブによるCOPDの確定診断を有した。対象はまた、心エコー図によって測定されるsPAP≧38mmHg、気管支拡張後FEV1/FVC<0.7及び予測されるFEV1<60%を有した。全ての対象は、少なくとも40歳であり、研究登録前に、年間少なくとも10パックのタバコを喫煙する現在の喫煙者又は元喫煙者であった。全ての対象はまた、1日あたり少なくとも10時間、少なくとも3ヶ月間、LTOTを受けていた。
【0158】
PH-COPD対象は、少なくとも12時間/日、4週間、パルスiNO療法を受けた。iNOを、4,880ppmのNOシリンダー濃度を利用して投与した。
【0159】
下の表3は、この治験での4人のPH-COPD対象からのTAPSE結果を示す。これらの対象は、PH-COPDを有すると診断され、30mcg/kg IBW/時の用量でのiNOによる4週間の治療を受けた。結果は、RV機能と相関するTAPSEの増加を確認する。
【0160】
【0161】
表3から分かるように、これらの結果は、長期パルスiNO療法が、これらの対象においてTAPSEを増加させることを示し、TAPSEは第4の対象において変化しなかった。TAPSEにおけるこの増加は、3人の対象についてはRV機能の改善を示し、第4の対象についてはRV機能の維持を示す。総合的に、全4人の対象におけるTAPSEの25%の平均増加は、iNO療法がRV機能を改善及び/又は維持することを示す。
【0162】
さらなる分析を、30mcg/kg IBW/時の用量でのiNOでの4週間の治療を完了した7人のPH-COPD対象について行った。これらの患者についてのベースライン、急性及び慢性パラメータのまとめを下の表4に示す。6MWD及びsPAPの結果も、それぞれ
図5及び6に示す。
【0163】
【0164】
iNOの30mcg/kg/IBWは、6MWDの有意な増加(
図5)及び心エコー図(
図6)によって測定されるsPAPの減少をもたらした。
図5に示すように、2週間のiNO療法後の6MWDの変化は、+53.9メートル(p=0.02)である。同様に、4週間のiNO療法後の6MWDの変化は、+50.7メートル(p=0.04)である。文献において、6MWDにおける27~54メートルの改善は、患者の改善の知覚によって測定されるように、臨床的に有意であると考えられる。
【0165】
図6に示すように、ベースラインでのsPAPは60.3mmHgであった。4週間のiNO療法後に、sPAPは48.3mmHg[12.0mmHgの低下;19.9%の低下](p=0.02)であった。iNO療法を中止した4週間後に、sPAPは58.0mmHgに増加した。
【0166】
sPAPの減少は、
図7に示すように、TAPSEによって測定されるRV機能の改善における傾向と相関した。ベースラインTAPSEは18.8(N=6)であり、慢性iNO療法後のTAPSEは21.3(N=7)であり、iNO療法を中止した後のTAPSEは19.0(N=5)であった。これらの結果は、iNO療法はRV機能を改善及び/又は維持することをさらに確認する。
【0167】
本明細書の全体にわたって「一実施形態」、「ある実施形態」、「様々な実施形態」、「1以上の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書を通して、様々な箇所における「1以上の実施形態において」、「ある実施形態において」、「様々な実施形態において」、「一実施形態において」又は「実施形態において」などの語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を言及するものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0168】
本明細書において、特定の実施形態を参照して本開示を説明してきたが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解すべきである。様々な変更及び変形が、その趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示に対してなされ得ることは、当業者には明らかであろう。そのため、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある変更及び変形を含むことが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右心室の機能を維持する又は改善する方法であって、少なくとも2日間有効量の吸入用一酸化窒素(iNO)をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法。