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特開2023-100989ねじ転造用の位置決めおよびクランプシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100989
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ねじ転造用の位置決めおよびクランプシステム
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/14 20060101AFI20230711BHJP
   B30B 15/02 20060101ALI20230711BHJP
   B21H 3/06 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
B21D37/14 J
B30B15/02 C
B21H3/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080259
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2021506649の分割
【原出願日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】62/723,246
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/801,966
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521051853
【氏名又は名称】ベイ マニュファクチャリング テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】519064469
【氏名又は名称】レヴィ、ケネス ロジャー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ、ケネス ロジャー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可動ダイまたは固定ダイの位置決めにおいて使用するためのダイ位置決めシステムを提供する。
【解決手段】異なる対のキーバーおよび/または組のキーディスクからのキーバーおよび/またはキーディスクを使用することは、ダイまたはダイホルダの高精度な角度付けも可能にする。キーディスクは、ダイとダイホルダとの間の、またはダイホルダとキーベースの間の任意の位置に、キーディスクインサートにより、保持され、および、(実現可能な場合、)ディスク後部支持体により、角度が付けられる。キーディスクインサートと、ダイまたはダイホルダとの間に配置されたキーバーは、ダイまたはダイホルダのさらなるずれを可能にする。キーバーおよびキーディスクの硬質のスタックされた構造は、ダイまたはダイホルダがその位置決めを徐々に、または急に失うことを妨げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のキーバーであって、前記1対のキーバーの各キーバーが、前記1対のキーバーの他のキーバーと同一である硬質の直方体構造を有する、1対のキーバーと、
1対のキーディスクインサートであって、各キーディスクインサートが、各キーディスクインサートを通って延在している少なくとも1つのディスク開口を有する、1対のキーディスクインサートと、
1組のキーディスクであって、前記1組のキーディスクの各キーディスクが、前記1組のキーディスクの他の複数のキーディスクと同一である、硬質の三次元構造を有しており、各キーディスクが、前記少なくとも1つのディスク開口の径に対して同じまたは小さい径を有する、1組のキーディスクと、
1組のディスク後部支持体であって、各ディスク後部支持体の前面が、非平面状の構造を有する後部支持体表面を備える、1組のディスク後部支持体と
を備える、ダイ位置決めシステム。
【請求項2】
各キーディスクインサートが、肉厚セクションと肉薄セクションとの間に段部構造を有しており、前記少なくとも1つのディスク開口が、前記肉薄セクションを通って延びており、および、各キーディスクが、前記肉薄セクションの厚さに対して同じまたは大きい厚さを有している、請求項1に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの後部支持体表面が、凸状構造、またはドーム状構造を有している、請求項1に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの後部支持体表面が、少なくとも1つのキーディスクの後部の係合面と相補的な、少なくとも部分的に球形の構造を有している、請求項1に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのディスク開口が捕捉磁石を含んでいる、請求項1に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項6】
複数対のキーバーであって、複数対のキーバーそれぞれの各キーバーが、対のキーバーのうちの他のキーバーと同一である硬質の直方体構造を有する、複数対のキーバーと、
少なくとも1対のキーディスクインサートであって、各キーディスクインサートが、各キーディスクインサートを通って延在している少なくとも1つのディスク開口を有する、少なくとも1対のキーディスクインサートと、
複数組のキーディスクであって、複数組のキーディスクそれぞれの各キーディスクが、前記組のキーディスクの他の複数のキーディスクと同一である、硬質の三次元構造を有しており、各キーディスクが、前記少なくとも1つのディスク開口の径に対して同じまたは小さい径を有する、複数組のキーディスクと、
少なくとも1組のディスク後部支持体であって、各ディスク後部支持体の前面が、非平面状の構造を有する後部支持体表面を備える、少なくとも1組のディスク後部支持体と
を備える、ダイ位置決めシステム。
【請求項7】
1対のキーバーの各キーバーの厚さが、別の対のキーバーの各キーバーの厚さに対して差を有している、請求項6に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項8】
1組のキーディスクの各キーディスクの厚さが、別の組のキーディスクの各キーディスクの厚さに対して差を有している、請求項6に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項9】
各対のキーバーおよび各組のキーディスクは、英数字の、および/または彩色された独自の表示により、印が付けられている、請求項6に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項10】
少なくとも1対のキーバー、前記少なくとも1対のキーディスクインサート、少なくとも1組のキーディスク、および前記少なくとも1組のディスク後部支持体は、前記ダイに角度を付けるために、ダイホルダとダイとの間に配置されている、請求項6に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項11】
少なくとも1対のキーバー、前記少なくとも1対のキーディスクインサート、少なくとも1組のキーディスク、および前記少なくとも1組のディスク後部支持体は、前記ダイホルダに角度を付けるため、または前記ダイホルダをずらすために、キーベースとダイホルダとの間に配置されている、請求項6に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項12】
複数の基準スペーサをさらに備え、前記複数の基準スペーサそれぞれが、前記少なくとも1組のディスク後部支持体のうちの1つのディスク後部支持体に、動作可能に接続されている、請求項11に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項13】
複数のドローボルトをさらに備え、前記複数のドローボルトそれぞれが、前記キーベースを通って、前記複数の基準スペーサの1つの内部に延在している、請求項12に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項14】
少なくとも1対のキーバーであって、前記1対のキーバーの各キーバーが、前記1対のキーバーの他のキーバーと同一である硬質の直方体構造を有する、少なくとも1対のキーバーと、
少なくとも1対のキーディスクインサートであって、各キーディスクインサートが、各キーディスクインサートを通って延在している少なくとも1つのディスク開口を有する、少なくとも1対のキーディスクインサートと、
少なくとも1組のキーディスクであって、前記1組のキーディスクの各キーディスクが、前記1組のキーディスクの他の複数のキーディスクと同一である、硬質の三次元構造を有しており、各キーディスクが、前記少なくとも1つのディスク開口の径に対して同じまたは小さい径を有する、少なくとも1組のキーディスクと、
少なくとも1組のディスク後部支持体であって、各ディスク後部支持体の前面が、非平面状の構造を有する後部支持体表面を備える、少なくとも1組のディスク後部支持体と、
ベーススライドに取り付けられた複数のローラベアリングと、
移動スライドに取り付けられた少なくとも1つのスライドレールであって、取り付けられた前記スライドは、動作ラインを有している、少なくとも1つのスライドレールと
を備え、
前記複数のローラベアリングは、前記複数のローラベアリングそれぞれの回転の軸が前記動作ラインに対して直交しているように、前記ベーススライドに取り付けられ、
前記少なくとも1つのスライドレールは、前記複数のローラベラリングの少なくとも1つのローラベアリングが、前記少なくとも1つのスライドレールの上部内面に接触するように、かつ、前記複数のローラベライングの少なくとも1つの他のローラベアリングが、前記少なくとも1つのスライドレールの下部内面に接触するように、前記複数のローラベアリングの少なくとも2つを受容する、ダイ位置決めシステム。
【請求項15】
クランプ頂部、バックプレート、および前記スライドレールに取り付けられたクランプベースをさらに備え、ダイが、前記クランプ頂部と前記クランプベースとの間に取り外し可能に配置されている、請求項14に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項16】
前記クランプベースが、隆起したベース表面を備え、前記隆起したベース表面が、前記クランプベースの前方エッジに対して平行に延在している、請求項15に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項17】
クランプベース表面が、前記バックプレートと、前記隆起したベース表面との間に延在している、請求項16に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項18】
クランプベース表面が、前記クランプベースの前記前方エッジと、前記隆起したベース表面との間に延在している、請求項16に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項19】
前記バックプレートが、前記バックプレートの両側から側方に延在している複数のバックフランジを備えている、請求項15に記載のダイ位置決めシステム。
【請求項20】
各バックフランジが、前記少なくとも1対のキーディスクインサートの1つのキーディスクインサートの前記少なくとも1つのディスク開口と整合する少なくとも1つの後部支持体用開口を備えている、請求項19に記載のダイ位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、先願の同時係属中の、2018年8月27日付出願の米国仮特許出願第62/723,246号明細書、および2019年2月6日付出願の米国仮特許出願第62/801,966号明細書の利益を主張し、それらの開示内容はすべて、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示は、ねじ付き締結具の機械的なダイベースの製造のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ボルト、ねじ、および他のねじ付き締結具を製造するためのねじ転造は、ねじ山を形成するために、可動ダイと固定ダイとの間の、締結具ブランクの高速転造を必要とする。製造装置は、高速、多くの場合、1分間に何百回もの往復運動で、可動ダイを固定ダイに対して前後に往復運動させる。多くの異なるブランクおよびねじ山の構成が、1つの製造装置とともに使用され、1つの製造装置により、必要とされ得るので、数多くの異なるダイを同じ機械で交換可能に使用することが可能である。ダイを交換することは、ねじパターンを変更し得るが、ブランクの異なるサイズおよび形状に対応することは通常、装置のダイホルダの負担になる。そうしたホルダは通常、異なるブランクに対応するために、ダイの位置および角度付けを変えることが可能な調節機構を含む。
【0004】
すべての現行の製造装置は、複数のダイの表面間の圧力および距離と、場合によっては、複数のダイの一方または両方の角度付けとに対する調節を必要とする。業界の標準的な慣行は、複数のダイの表面を適切に位置決めするためにねじ付き調節部を使用する。オペレータは、良好な締結具を生産するための現行の調節手法に必要な適切な「感触」を習得するために数年の訓練を必要とし、多くの場合、長い訓練期間中に使用できない製品のバッチを生み出してしまう。さらに、そうした調節機構は、誤って、または生産の過程にわたって位置ずれし得る。さらに、可動ダイおよびそのそれぞれに対応する可動ダイホルダの高速往復運動、ならびに装置上の可動ダイホルダのカンチレバー式位置決めにより、可動ダイホルダは、それをずらす力を受け、時間および材料のさらなる浪費をもたらし得る。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本出願の目的は、長い高頻度使用期間にわたって少なくとも1つのダイ、およびその対応するダイホルダの正確で、容易に再現可能な位置決めを提供するダイ位置決めシステムを提供することである。
【0006】
本発明の一実施形態は、1対のキーバー、1対のキーディスクインサート、1組のキーディスク、および1組のディスク後部支持体を含むダイ位置決めシステムである。1対のキーバーの各キーバーは、1対のキーバーの他のキーバーと同一である硬質の直方体構造を有する。各キーディスクインサートは、各キーディスクインサートを通って延在している、その少なくとも1つのディスク開口を有する。1組のキーディスクの各キーディスクは、1組のキーディスクの他の複数のキーディスクと同一である、硬質の三次元構造を有しており、各キーディスクは、ディスク開口の径に対して同じまたは小さい径を有する。各ディスク後部支持体の前面は、非平面状の構造を有する後部支持体表面を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、上記システムによる、複数対のキーバー、少なくとも1対のキーディスクインサート、複数組のキーディスク、および少なくとも1組のディスク後部支持体を含むダイ位置決めシステムである。
【0008】
本発明の別の実施形態は、上記システムによる、少なくとも1対のキーバー、少なくとも1対のキーディスクインサート、少なくとも1組のキーディスク、および少なくとも1組のディスク後部支持体を含むダイ位置決めシステムである。上記システムは、ベーススライドに取り付けられた複数のローラベアリング、および移動スライドに取り付けられた少なくとも1つのスライドレールも含む。取り付けられたスライドは動作ラインを有しており、複数のローラベアリングそれぞれの回転の軸が動作ラインに対して直交しているように複数のローラベアリングがベーススライドに取り付けられる。スライドレールは、少なくとも1つのローラベアリングがスライドレールの上部内面に接触し、および別のローラベアリングがスライドレールの下部内面に接触するように、複数のローラベアリングの少なくとも2つを受容する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a】ダイ位置決めシステムにおける使用のためのキーシステムおよびディスク調節アセンブリの一実施形態の斜視図を示す。
図1b】ダイ位置決めシステムにおける使用のためのキーシステムおよびディスク調節アセンブリの一実施形態の斜視図を示す。
図1c】使用中の、キーシステムおよびディスク調節アセンブリの実施形態の部分斜視図を示す。
図1d】使用中の、キーシステムおよびディスク調節アセンブリの実施形態の部分断面図を示す。
図2a】キーシステムおよびディスク調節アセンブリの別の実施形態の斜視図を示す。
図2b】使用中の、キーシステムおよびディスク調節アセンブリの実施形態の部分断面図を示す。
図3a】キーシステムおよびディスク調節アセンブリと、ともにまたは別個に使用し得る、ベアリングアセンブリの部分斜視図を示す。
図3b】キーシステムおよびディスク調節アセンブリと、ともにまたは別個に使用し得る、ベアリングアセンブリの断面図を示す。
図3c】キーシステムおよびディスク調節アセンブリと、ともにまたは別個に使用し得る、ベアリングアセンブリの分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明確性のために、すべての図面において、すべての部分に表記されている訳でないものとする。表記がないことは、開示がないとして解釈されるべきでない。
【0011】
本発明の説明では、特定の語は、簡潔性、明確性、および理解のために使用されている。不必要な限定が、従来技術での要求を超えてそこから適用されないものとするが、それは、そうした語が、説明の目的のみで使用されており、および、広く解釈されることが意図されているからである。
【0012】
本明細書に記載された異なるシステムおよび方法は、単独で、または他のシステムおよび方法との組み合わせで使用し得る。図面および出願書類において特定された寸法および材質は例示に過ぎず、および、請求項に記載の発明の範囲を限定することを意図するものでない。本出願の目的と整合していないいかなる他の寸法および材質も使用することが可能である。
【0013】
種々の均等案、代替案、および修正案が、添付された請求項の範囲内で考えられる。添付された請求項における各限定は、「means for」または「step for」との語がそれぞれの限定において明示的に記載されている場合にのみ、米国特許法第112条第6段落の下での解釈をもたらすことが意図されている。
【0014】
図1aおよび1bは、ダイ位置決めシステム100において使用するためのキーシステム110の一実施形態の斜視図を示す。各キーシステム110は、複数対のキーバー111、複数組のキーディスク112、および少なくとも1対のキーディスクインサート113を含む。図1aの例示的な実施形態では、システム100は、13対のキーバー111、15組のキーディスク112、および1対のキーディスクインサート113を含む。他の実施形態は、より多くの、またはより少ない数の、対のキーバー111、組のキーディスク112、および対のキーディスクインサート113を含んでいてもよい。
【0015】
各対のキーバー111の各キーバー111は、キーシステム110において、その対の中では同一の厚さを有するが、複数の他の対のキーバー111の厚さとは異なる、硬質の(solid)直方体である。複数対のキーバー111は通常、約0.01インチ単位で厚さが異なるが、他の単位も考えられる。各対のキーバー111は、識別、および他の複数対のキーバー111との分別のために英数字の、および/または彩色された表示により、キーシステム110内で独自に印が付けられ得る。
【0016】
各組のキーディスク112の各キーディスク112は、キーシステム110において、その組の中では同一の厚さを有するが、複数の他の組のキーディスク112の厚さとは異なる、硬質の三次元形状を有している。本図に示すキーディスク112は円柱状であるが、直方体、立方体、半球体、角柱、および/またはそれらのいずれかの組み合わせなどの他の三次元形状が、本出願の請求項によって想定され、および包含される。複数組のキーディスク112は通常、4つのキーディスク112を含むが、他の実施形態は、より多くの、またはより少ないキーディスク112を使用し得る。複数組のキーディスク112は通常、約0.001インチ単位で厚さが異なるが、他の間隔も考えられる。各組のキーディスク112は、識別、および他の複数組のキーディスク112との分別のために英数字の、および/または彩色された表示により、キーシステム110内で一意に印が付けられ得る。複数組のキーディスク112は、完全に使用されてもよいし、または、固定ダイDまたは可動ダイDに角度を付けるために、別の組のキーディスクと「混合し、および合わされ」てもよい。
【0017】
各キーディスクインサート113は、単一のキーディスク112を受容し、および保持するように設計された少なくとも1つのディスク開口114を含む。キー開口114は、キーディスク112よりも大きな径、およびキーディスク112の外周に一致する形状を有する。図1aおよび1bの例示的な実施形態では、各キーディスクインサート113は2つのディスク開口114を含むが、他の実施形態は、より多くの、またはより少ないキーディスク開口114を使用し得る。各キーディスクインサート113は、肉厚セクションと、肉薄セクションとの間に、段部構造を有する。肉薄セクションは、キーシステム110における各組のキーディスク112を使用して、適切なバイアシングを可能にするために、厚さが等しいか、または最薄の組のキーディスク112よりも薄い。肉厚セクションは、段部がキーディスクインサート113を所定の位置に保持して、ダイDおよびダイホルダHに対して、ダイホルダHの上に垂直方向に延在している。特定の実施形態では、少なくとも1つの捕捉磁石116を収容するために、少なくとも1つの磁石開口115が、各ディスク開口114の側壁を通って延在している。キーディスク112が強磁性またはフェリ磁性材料でできている場合があるので、捕捉磁石116は、ディスク開口114において所定の位置にキーディスク112を保持することを補助する。
【0018】
使用中、図1cおよび1dにおいて分かり得るように、ダイホルダH内の少なくとも1つの凹部は、ダイDとダイホルダHとの間の空間において1対のキーバー111および1対のキーディスクインサート113を受容する。キーディスクインサート113は、少なくとも1組のキーディスク112を保持する。図1dにおいて分かり得るように、上記1対のキーバー111の一方のキーバー111、および上記1対のキーディスクインサート113の一方のキーディスクインサート113が、ダイDの一方側の第1の端部に沿って延在している一方、上記1対のキーバー111の他方のキーバー111、および上記1対のキーディスクインサート113の他方のキーディスクインサート113は、ダイDの同じ側の第2の端部に沿って延在している。図1a~1dの実施形態では、ダイDの位置はそれにより、使用されるキーバー111を変更することにより、約0.01インチ単位で調節し、および、使用されるキーディスク112を変更することにより、約0.001インチ単位で調節することが可能である。
【0019】
使用者が、ダイDの表面について、鉛直方向の、または水平方向の角度を付けたい場合、異なる組のキーディスク112を組み合わせることができる。鉛直方向の角度付けの場合、より厚いキーディスク112が通常、下方のディスク開口114内に配置されるが、反転も可能である。限定的でない例として、第1の組のキーディスク112が約0.031インチの厚さを有しており、および第2の組のキーディスク112が約0.041インチの厚さを有しており、ディスク開口114の中心点間の距離が約0.5インチである場合、上方のディスク開口114内により薄いキーディスク112を使用した場合に、ダイDの表面は鉛直線に対して約1.1度の角度付けを有する。ダイ位置決めシステム100内で使用することが可能なキーディスク112の所望の角度付けおよび数に応じて、いずれの数の異なる組のキーディスク112からのキーディスク112も使用して、ダイDの鉛直方向のおよび/または水平方向の角度付けが可能であることが想定される。
【0020】
各キーシステム110は、固定ダイまたは可動ダイDとともに使用することが可能である。大半の製造装置は、固定ダイおよび可動ダイDをいずれも含んでいるので、ダイD毎に1つずつ、すなわち2つのキーシステム110を使用し得る。上記例を再び参照すれば、角度付けを2倍にする、すなわち、可動ダイおよび固定ダイDのいずれについても、キーディスクインサート113内で、同様に差異化されたキーディスク112を設けることにより、約2.2度のテーパを有する締結具が得られることになる。
【0021】
図1b~1dに示すように、ディスク調節アセンブリ120は、キーシステム110を、いずれの角度においても安定化させることを可能にする。アセンブリ120内で、複数組のディスク後部支持体(disc backer)121が複数組のキーディスク112と相互作用して、キーディスク112がダイホルダHの平面に対して所定の角度で延在することを可能にする。図1bに示す実施形態が4つのディスク後部支持体121を含んでいる一方、より多くの、およびより少ないディスク後部支持体121を備えた組が同じ数のキーディスク112と相互作用することが想定される。
【0022】
ディスク後部支持体121は、キーディスク112の後ろに配置された非平面状の前面である後部支持体表面122を有する。図1bおよび1dに示す実施形態では、ディスク後部支持体121の前方の後部支持体表面122は、少なくとも3軸を中心とした、キーディスク112の少なくとも部分的な回転を可能にするドーム状の、凸状構造を有している。他の実施形態では、後部支持体表面122は、やはり、少なくとも3軸を中心とした、キーディスク112の少なくとも部分的な回転を可能にする、キーディスク112の後部の凹状係合面と相補的な、球形の、または少なくとも部分的に球形の、凸状構造を有する。後部支持体表面122が、キーディスク112の後部の凸状係合面と相補的な、球形の、または少なくとも部分的に球形の、凹状構造を有している逆の構造であってもよい。特定の他の実施形態では、後部支持体表面122は、2軸を中心とした、キーディスク112の少なくとも部分的な回転を可能にする、角度を付けた凸状構造を有する。これらの構造はすべて、ディスク後部支持体121がキーディスク112のエッジに力を加えることを妨げ、キーディスク112の変形を妨げる。
【0023】
図1cおよび1dはさらに、ダイ位置決めシステム100における使用のためのダイクランプアセンブリ130の一実施形態の斜視図および部分断面図それぞれを示す。クランプアセンブリ130では、クランプ頂部131は、クランプベース135にダイDを取り外し可能に固定する。クランプ頂部131とクランプベース135との間に延在しているバックプレート132は、両側に少なくとも2つの側方バックフランジ133を含む。各バックフランジ133は、キーディスクインサート113のディスク開口114と整合する少なくとも1つの後部支持体用開口134を含む。ディスク後部支持体121は、少なくとも部分的に、各後部支持体用開口134を通って延在している。キーディスク112がシステム100において使用される場合、各ディスク後部支持体121の前面における後部支持体表面122は、キーディスク112の後面に接触し、キーディスク112が、鉛直方向のバックプレート132に対して、調節可能な角度を有することを可能にし、キーバー111のより良好に支持された角度付けをもたらす。
【0024】
クランプベース135の上面の隆起したベース表面136はさらに、クランプ頂部131とクランプベース135との間の、ダイDについての角度付けを可能にすることにより、ダイDをクランプすることにおけるさらなる安定性を可能にする。隆起したベース表面136は、クランプベース135の前方エッジから後退するように平行に延在しているので、ダイDは、内側に、または外側に角度を付け得る。隆起したベース表面136は、第1のクランプベース表面137aの後方、かつ、第2のクランプベース表面137bの前方に延びている。クランプベース表面137aおよび137bはいずれも、隆起したベース表面136よりも低い位置にあるので、ダイDは、キーディスク112の配置に応じて、前方または後方の傾斜により、角度を付け得る。
【0025】
複数のキーバー111および複数のキーディスク112を使用する場合にダイDを堅固にクランプすることは特殊な幾何学形状を必要とし、テーパをもたらすシステム100において異なるキーディスク112および/またはキーバー111を有することによってもたらされる任意の角度でもシステム100が作動する。転造される部分の上部および底部における径の差および特殊な幾何学形状には、ダイDの上部と底部との間の距離調節が必要となる。複数のディスク後部支持体121は、固定した離間距離を有する。この距離が分かっていることで、部分毎の、キーディスク112および/またはキーバー111の正しい組み合わせの算出が可能となる。各ディスク後部支持体121の前方の後部支持体表面122は、キーディスク112がキーバー111およびダイDに対して、より効果的に傾斜し、および整列することを可能にする。
【0026】
クランプベース135上の隆起したベース表面136の隆起した中央の幾何学形状は、ダイDが堅固に締め付けられることを可能にする。クランプベース135の上面が平坦であった場合、ダイDは、クランプ頂部131によってクランプされると、まっすぐになる傾向を有することになる。この表面の左および右にクリアランスが要求される。異なる厚さのキーディスク112によってもたらされる角度が正または負であり得るので、隆起したベース表面136は、図1cにおいて分かるように、中央において隆起している。中央の隆起は、上部キーディスク112、または底部キーディスク112のいずれが最も厚いかに応じて、ダイDが上部から内側へ、または上部から外側へと傾斜することを可能にする。
【0027】
図2aは、キーシステム110との使用のためのディスク調節アセンブリ120の別の実施形態の斜視図を示す。ディスク調節アセンブリ120のこの実施形態は、前述のディスク後部支持体121を含み、ならびに、複数の基準スペーサ(datum spacer)123および複数のドローボルト124が追加されている。各基準スペーサ123は、ディスク後部支持体121の少なくとも一部を一方端で受容し、および、ねじ付きドローボルト124の少なくとも一部をその反対側のねじ付き端部を介して受容する。
【0028】
図2bは、使用中のディスク調節アセンブリ120の上記実施形態の断面図を示す。使用中、アセンブリ120のこの実施形態は、ダイDとダイホルダHとの間ではなく、キーベースKとダイホルダHとの間に配置される。その結果、ダイDのみの代わりに、ダイホルダH全体が、角度付けされており、および/または、ずれている。ダイホルダHは、隆起したベース表面136が図1cにおけるダイDの角度付けを可能にするやり方と同様に、ダイホルダHの適切な角度付けを可能にするダイホルダ載置部Hrによって支持される。ダイホルダ載置部Hrは図2bの実施形態において円形断面を有している一方、ダイホルダHの角度付けを可能にする他の断面構成が想定される。
【0029】
各基準スペーサ123は、キーベースK内の段付き穴部内に配置される。ドローボルト124は、キーベースKの後部から、穴部のより狭いセクションを通って、基準スペーサ123内に延び、キーベースK内の所定の位置に基準スペーサ123を保持する。基準スペーサ123は、ディスク後部支持体121とともに、穴部のより広いセクション内に配置される。ディスク後部支持体121の一部は、基準スペーサ123内に延びてキーベースK内の所定の位置にディスク後部支持体121を保持する。図2bの実施形態では、4つの基準スペーサ123が使用されている。他の実施形態は、より多くの、またはより少ない基準スペーサ123を有していてもよい。複数の基準スペーサ123は互いに平行に延びている。それらの複数の長手方向軸はXY平面およびYZ平面において平行である。
【0030】
キーシステム110およびディスク調節アセンブリ120の種々の実施形態は、既存のダイDおよび製造装置上へ/内部へと後付けし得る。特定の種類の締結具を作るために特定のダイおよび/または製造装置とともに使用される上記(複数)対のキーバー111および上記(複数)組のキーディスクインサート113からの英数字の、および/または彩色された表示の組み合わせは、組み合わせの標準化されたリストにおいて記録し、および提供し得る。特定の実施形態では、キーバー111およびキーディスクインサート113の一方は英数字の表示を有していてもよく、キーバー111およびキーディスクインサート113の他方は、より簡単な識別を容易にするために数字の表示を有していてもよい。特定の実施形態では、製造すべき締結具の種類は、使用すべきダイおよび/または製造装置とともに、コンピュータプログラムに入力し得る。ソフトウェアアルゴリズムは、上記情報を使用して、複数の既知の組み合わせから、既知の組み合わせを取り出し、または潜在的な複数の組み合わせを外挿する場合がある。
【0031】
図3a、図3b、および図3cは、キーシステム110およびディスク調節アセンブリ120とともに、または別個にシステム100において使用し得るベアリングアセンブリ140の斜視図、断面図、および拡大図それぞれを示す。ねじ付き締結具を製造するために使用するのがリニアベアリングの場合でも、他のベアリング手段の場合でも、上記装置が、鉛直方向に(破線によって表された、図3b中で分かり得るような、締結具の鉛直方向軸に沿って上または下に)振動しないことが重要である。締結具ブランク、特に、メートル法の、または英国の機械の締結具ブランクはすべて、一致した螺旋角度を有していなければならない。螺旋角度が少しでも変動する場合、締結具の性能が阻害される。当該技術分野では、これは不規則なねじ山と呼ばれている。これをさらに複雑にしているのは、リニアベアリングを含むすべてのベアリングが、動作するためのクリアランス(遊びとしても知られている)を必要とし、これが動作方向に対して直交する方向における不必要な振動をもたらし得るということである。ダイ位置決めシステム100の特定の実施形態では、ベアリングアセンブリ140は、往復運動する可動ダイホルダHを備えたリニアベアリングアセンブリAに直接加えて、これが起こることを阻止することが可能である。リニアベアリングと、ラックアンドピニオンシステムとを使用する場合、このさらなる安定性が、不規則なねじ山を阻止するための要件である。
【0032】
図3a、図3b、および図3cに示すように、リニアベアリングアセンブリAは、作動アセンブリAを構成するための3つの構成要素を含む。ベーススライドBは、機械基部に直接連結され、および静止している。ベーススライドBは固定ベアリングレールRsを含む。リニアベアリングアセンブリ140の場合、中央サブアセンブリCは、互いに対向している2組のリニアベアリングL1およびL2を含んでいる。中央サブアセンブリCは、ベーススライドBおよび移動スライドMと相互作用するピニオンギヤPによって位置的に制御される。移動スライドMは、さらなる移動ベアリングレールRmを含んでいる。
【0033】
少なくとも1つのベアリングアセンブリ140が、振動を阻止するためにリニアベアリングアセンブリAにおいて使用される。各ベアリングアセンブリ140はさらに、少なくとも3つの構成要素を含む。複数のローラベアリング141が、ベーススライドBまたは機械基部に直接取り付けられる。図3a~図3cに示す実施形態が少なくとも2つのローラベアリング141aおよび141bを含む一方、他の実施形態は、より多くのローラベアリング141を含んでいてもよい。少なくとも1つのスライドレール142が、可動スライドMに直接取り付けられる。ベーススライドB、中央サブアセンブリC、および移動スライドMが通常動作中の場合、ローラベアリング141aおよび141bは、スライドレール142を介して移動スライドMを直接支持し、移動スライドMが、いずれの鉛直方向に振動することも阻止する。ローラベアリング141は、ねじ山形成動作中に加えられる通常の製造速度および圧力で動作することが可能であるので、ローラベアリング141は、リニアベアリングアセンブリAの製造速度に影響を及ぼすものでない。
【0034】
ローラベアリング141およびスライドレール142は、既存のリニアベアリングアセンブリA上に後付けし得る。ローラベアリング141は、スライドレール142の内径よりも小さい径を有する。種々の実施形態では、ローラベアリング141は、ケージボールベアリング、円柱ローラベアリング、球形ローラベアリング、および/またはテーパローラベアリングを含み得る。特定の実施形態では、ローラベアリング141は、スライドレール142の上部内面およびスライドレール142の下部内面それぞれに沿って特定の支持体を設けるために互いに、鉛直方向にずれている。
【0035】
この明細書の記載は、実施例を使用して、ベストモードを含む本発明を開示し、および、さらに、いずれの当業者が本発明を新たに実施することも可能にするものとする。本発明の種々の実施形態は、ねじ付き締結具を製造することができるいずれの構成においても組み合わせ得る。いずれの寸法または他のサイズの記述も、例証の目的で備えており、および、請求項に記載の発明の範囲を限定することを意図するものでない。さらなる実施形態は、産業における使用のために必要に応じて寸法におけるわずかなばらつき、およびより大きなばらつきを含み得る。本発明の特許可能な範囲は、当業者が思いつく他の実施例を含み得る。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
【外国語明細書】