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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100990
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】角膜修復のための生体接着剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/10 20060101AFI20230711BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 24/06 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230711BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230711BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A61L24/10
A61L24/00 100
A61L24/00 210
A61L24/00 240
A61L24/06
A61L27/22
A61L27/38 100
A61L27/40
A61L27/52
A61L27/54
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080509
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021083614の分割
【原出願日】2017-02-08
(31)【優先権主張番号】62/292,752
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】596114853
【氏名又は名称】マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カデムホセイニ アリ
(72)【発明者】
【氏名】アナビ ナスィーム
(72)【発明者】
【氏名】ダナ レーザ
(72)【発明者】
【氏名】ヘィルハー アフマド
(57)【要約】
【課題】角膜修復用接着剤において、既存品が有する欠点、例えば、角膜及び他の眼球組織に対する細胞傷害性、低い生体適合性;透過性の欠如、良好な視力の妨害及び角膜後面構造の視界の悪化;高い空隙率に起因する二次感染の危険;等を改善した新規角膜修復用接着剤を提供する。
【解決手段】メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物による。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物。
【請求項2】
メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
メタクリロイル置換ゼラチンが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
メタクリロイル置換ゼラチンが、8%~12%(w/v)または17%~23%(w/v)の濃度で存在する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)または約20%(w/v)の濃度で存在する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が0.1~2% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% w/vである、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
(i)エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vであるか、または(ii)エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
角膜細胞をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
治療剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルおよび薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物であって、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、30%~85%のメタクリロイル置換度および薬学的に許容される担体中5%~15%(w/v)の濃度を有する、前記組成物。
【請求項14】
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、(i)60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度を有するか、または(ii)60%~85%のメタクリロイル置換度および17%~25%(w/v)の濃度を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、(i)70%~80%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有するか、または(ii)70%~80%のメタクリロイル置換度および約20%(w/v)の濃度を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
以下の特徴:
(i)250~350 kPaまたは100~150 kPaのヤング係数;
(ii)5~50 kPaの弾性係数;
(iii)10~250 kPaの圧縮係数;
(iv)≧40 kPaの創傷閉鎖強度;
(v)≧100 kPaのせん断抵抗強度;および
(vi)≧15 kPaの破裂圧力
の少なくとも1つを有する、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
治療剤をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項18】
角膜細胞をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項19】
実質的に透過性である、請求項13記載の組成物。
【請求項20】
実質的に平滑な表面をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項21】
(a) メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに
(b) 該組成物を可視光に暴露する工程
を含む、角膜再建のための方法。
【請求項22】
メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
メタクリロイル置換ゼラチンが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
メタクリロイル置換ゼラチンが、8%~12%(w/v)または17%~23%(w/v)
の濃度で存在する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)または約20%(w/v)の濃度で存在する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である、請求項21記載の方法。
【請求項29】
エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が0.1~2% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% w/vである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
(i)エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vであるか、または(ii)エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、450~550 nmの範囲の波長を有する可視光に暴露される、請求項21記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、20~120秒間の期間、可視光に暴露される、請求項21記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が治療剤をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が角膜細胞をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が実質的に透過性である、請求項21記載の方法。
【請求項36】
角膜を縫合する工程を含まない、請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下で、2016年2月8日に出願された米国仮出願番号62/292,752の恩典を主張し、その内容の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
開示分野
本開示の分野は、角膜損傷および欠損を修復するのに使用される改善された組織接着剤に関する。これらの組織接着剤は、生体適合性であり、生分解性であり、透過性であり、角膜組織に強く接着し、角膜と同様の平滑な表面および生化学的特性を有する弾性バイオポリマーを含む。
【背景技術】
【0003】
背景
眼球外傷は、よく知られており、一般集団の失明のほぼ5%を占める1。裂創、構造的欠損および菲薄化を含む角膜損傷の修復のための現在の標準治療は、多くの場合、縫合、組織/パッチの移植、および/またはのりの適用を必要とする。しかし、これらの標準的手法は、(1)角膜縫合糸が、微生物の侵入および感染、炎症ならびに新血管形成の危険因子となり得る外来物質であること、(2)角膜縫合糸が、多くの場合、規則的または不規則な乱視を誘発し、それにより視力が低下すること、(3)角膜移植およびパッチ移植は、ドナー組織を必要とし、これは容易に入手可能でない場合があること、ならびに(4)同種組織を移植に使用することは、急性的に損傷し炎症した眼において免疫反応が起こる危険を高めること、を含む大きな欠点を伴うものである。したがって、現在の標準治療によって構造的な修復は十分であるとしても、視力面での結果は満足のいくものとならない場合が多い2,3。加えて、(5)より確実な治療を提供できるまで損傷した眼を一時的に処置するために現在利用可能なのり/接着剤技術のいずれかを適用することには、それ自体に特有の制約がある。
【0004】
角膜修復における現在の外科的アプローチの制約のいくつかを回避するため、角膜損傷の迅速な修復のための接着剤の使用が考慮され得る。しかし、現時点で、角膜欠損の充填に関して承認された接着剤はない。米国において唯一の承認されているシーラントであるReSure(登録商標)は、白内障手術の角膜切開部を封鎖するためのものであり、角膜欠損を充填するために設計されたものではなく、すぐに(通常3日未満で)剥がれ落ちてしまう4。欧州で使用されているシーラントであるOcuSeal(登録商標)もまた、角膜切開部を保護するために利用されるものであり、角膜欠損を充填するためのものではなく、これもまたすぐに剥がれ落ちる。この理由で、皮膚創傷の修復に関して承認されているシアノアクリレートのりが、現在、多くの眼科的状況、例えば角膜穿孔、近い将来の穿孔および進行性角膜菲薄化障害を処置するために「認可外品」として使用されている5,6。しかし、シアノアクリレートのりは、以下を含む、様々な大きな欠点を有している。
【0005】
(1)角膜および他の眼球組織に対する細胞傷害性を伴う、低い生体適合性(眼に入った場合、白内障形成および網膜症の危険がある)7~11、(2)透過性の欠如、良好な視力の妨害および角膜後面構造の視界の悪化、(3)高い空隙率に起因する二次感染の危険12、(4)その適用の制御の困難さ、のりが予期せず剥離する可能性、(5)さらなる感染の危険を付加するコンタクトレンズ装着を必要とする粗い表面、ならびに(6)角膜組織と融合しないこと。
【0006】
角膜修復のための既存の接着剤には大きな欠点があるので、以下の要求を満たすことができる角膜損傷の修復および再生のための接着剤に対する要望は満たされてない:(1)適用の簡単さ、(2)いかなる毒性、炎症または新血管形成も伴わない生体適合性、(3)可能な限り素早く視界を回復することが可能にする透過性、(4)角膜創傷を素早く封鎖する能力、(5)組織再生を促進するよう角膜細胞が生体接着剤と融合できること、(6)角膜に類似する生物力学的特性(剛性および弾性)、(7)良好な安定性および高い保持性を含む角膜組織に対する強い接着性、ならびに(8)包帯コンタクトレンズの必要性を減らし、微生物が接着する表面積を最小化する平滑な表面。
【0007】
メタクリロイル置換ゼラチンの光重合は、バイオ医薬用途のヒドロゲルを製造するための安価かつ技術的に簡単なアプローチである14,38~40。メタクリロイル置換ゼラチンの細胞適合性は、すでに証明されており、生きた生物に移植可能であることが示唆されている41~42。しかし、角膜修復材としてのその実際の機能は、未だ評価されていない。さらに、メタクリロイル置換ゼラチンの機械的特性は、完全に調査されておらず、それが角膜修復用の生体接着剤としての役割に適するかどうかは不明である。
【発明の概要】
【0008】
要旨
本発明の特定の局面は、メタクリロイルゼラチン(GelMA)プレポリマー、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物に関する。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、30%~85%、60%~85%または70%~80%のメタクリロイル置換度を有する。メタクリロイルゼラチンは、本明細書でメタクリロイル置換ゼラチンとも称される。
【0009】
いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、メタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比は、80:20~99:1、90:10~98:2または93:7~97:3である。
【0010】
いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、5%~25%(w/v)、17%~55%(w/v)、17%~23%(w/v)、5%~15%(w/v)、8%~12%(w/v)、約20%(w/v)または約10%(w/v)の濃度で存在する。
【0011】
いくつかの態様において、可視光活性化光開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン(Ivocerin(登録商標))、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
好ましくは、可視光活性化光開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.0125~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.1~2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.05~1.5% w/vである。
【0013】
光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8% w/vである。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8% w/vである。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.05~0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.4~0.8% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.18~0.4% w/vである。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.4% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.4% w/vである。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.5~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.5~2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.5~1.5% w/vである。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.1 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.5% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.5% w/vである。
【0014】
いくつかの態様において、組成物はさらに、角膜細胞を含む。例示的な角膜細胞は、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0015】
いくつかの態様において、組成物はさらに、治療剤を含む。組成物に含める例示的な治療剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の特定の局面は、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲル、および薬学的に許容される担体を含む角膜再建用組成物に関し、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは30%~85%のメタクリロイル置換度、および薬学的に許容される担体中5%~25%(w/v)の濃度を有する。これらの組成物は、本明細書で架橋組成物とも称される。さらに、そのような組成物は、本明細書でGel-COREとも称される。
【0017】
いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度、または70%~80%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有する。いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、60%~85%のメタクリロイル置換度および17%~25%(w/v)の濃度、または70%~80%のメタクリロイル置換度および約20%(w/v)の濃度を有する。
【0018】
いくつかの態様において、架橋組成物は、190~260 kPaのヤング係数を有する。いくつかの態様において、架橋組成物は、110~140 kPaのヤング係数を有する。
【0019】
いくつかの態様において、架橋組成物は、5~50 kPaの弾性係数を有する。
【0020】
いくつかの態様において、架橋組成物は、5~320 kPaの圧縮係数を有する。いくつかの態様において、組成物は、5~160 kPaの圧縮係数を有する。さらなるいくつかの他の態様において、組成物は、125~175 kPaの圧縮係数を有する。
【0021】
いくつかの態様において、架橋組成物は、≧40 kPaの創傷閉鎖強度を有する。
【0022】
いくつかの態様において、架橋組成物は、≧10 kPaのせん断抵抗強度を有する。いくつかの態様において、架橋組成物は、≧100 kPaのせん断抵抗強度を有する。
【0023】
いくつかの態様において、架橋組成物は、≧15 kPaの破裂圧力を有する。
【0024】
いくつかの態様において、架橋組成物はさらに、治療剤を含む。いくつかの例示的な治療剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0025】
いくつかの態様において、架橋組成物はさらに、角膜細胞を含む。好ましい角膜細胞は、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの態様において、架橋組成物は、実質的に透過性である。
【0027】
いくつかの態様において、架橋組成物は、実質的に平滑な表面を含む。
【0028】
本発明の特定の局面は、メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに該組成物を可視光に暴露する工程を含む、角膜再建のための方法に関する。この方法のいくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、30%~85%、60%~85%または70%~80%のメタクリロイル置換度を有する。
【0029】
この方法のいくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、メタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比は、80:20~99:1、90:10~98:2または92:8~97:3である
【0030】
この方法のいくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、5%~25%(w/v)、17%~55%(w/v)、17%~23%(w/v)、5%~15%(w/v)、8%~12%(w/v)、約20%(w/v)または約10%(w/v)の濃度で存在する。
【0031】
この方法のいくつかの態様において、可視光活性化光開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン(Ivocerin(登録商標))、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
この方法のいくつかの態様において、可視光活性化光開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムの混合物を含む。光開始剤混合物のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.0125~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.1~2%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.05~1.5%(w/v)である。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8% w/vである。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8%(w/v)である。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.05~0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.4~0.8% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.18~0.4%(w/v)である。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.4%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.4%(w/v)である。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.5~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.5~2%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.5~1.5%(w/v)である。この方法のいくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.1 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.5%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.5%(w/v)である。
【0033】
概ね、任意の適当な波長の光が、本発明の方法において使用され得る。例えば、組成物は、450~550 nmの範囲の波長を有する可視光に暴露され得る。例えば、光への暴露は、任意の所望の期間行われ得る。例えば、組成物は、10~300秒間の期間、可視光に暴露され得る。いくつかの態様において、組成物は、20~120秒間または30~60秒間の期間、可視光に暴露され得る。いくつかの態様において、組成物は、60秒間~240秒間の期間、可視光に暴露され得る。いくつかの態様において、組成物は、約60秒間、約120秒間、約180秒間または約240秒間の期間、可視光に暴露され得る。いくつかの好ましい態様において、組成物は、約240秒間の期間、可視光に暴露され得る。
【0034】
この方法のいくつかの態様において、組成物はさらに、治療剤、好ましくは抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、角膜細胞、好ましくは上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、組成物は、実質的に透過性である。いくつかの態様において、この方法は、角膜を縫合する工程を含まない。
【0035】
この方法のいくつかの態様において、組成物は、本明細書に記載される角膜再建用組成物である。
[本発明1001]
メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物。
[本発明1002]
メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、本発明1001の組成物。
[本発明1004]
メタクリロイル置換ゼラチンが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、本発明1001の組成物。
[本発明1005]
メタクリロイル置換ゼラチンが、8%~12%(w/v)または17%~23%(w/v)の濃度で存在する、本発明1004の組成物。
[本発明1006]
メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)または約20%(w/v)の濃度で存在する、本発明1005の組成物。
[本発明1007]
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の組成物。
[本発明1008]
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である、本発明1001の組成物。
[本発明1009]
エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が0.1~2% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% w/vである、本発明1008の組成物。
[本発明1010]
(i)エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vであるか、または(ii)エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、本発明1009の組成物。
[本発明1011]
角膜細胞をさらに含む、本発明1001の組成物。
[本発明1012]
治療剤をさらに含む、本発明1001の組成物。
[本発明1013]
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルおよび薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物であって、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、30%~85%のメタクリロイル置換度および薬学的に許容される担体中5%~15%(w/v)の濃度を有する、前記組成物。
[本発明1014]
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、(i)60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度を有するか、または(ii)60%~85%のメタクリロイル置換度および17%~25%(w/v)の濃度を有する、本発明1013の組成物。
[本発明1015]
架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルが、(i)70%~80%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有するか、または(ii)70%~80%のメタクリロイル置換度および約20%(w/v)の濃度を有する、本発明1013の組成物。
[本発明1016]
以下の特徴:
(i)250~350 kPaまたは100~150 kPaのヤング係数;
(ii)5~50 kPaの弾性係数;
(iii)10~250 kPaの圧縮係数;
(iv)≧40 kPaの創傷閉鎖強度;
(v)≧100 kPaのせん断抵抗強度;および
(vi)≧15 kPaの破裂圧力
の少なくとも1つを有する、本発明1013の組成物。
[本発明1017]
治療剤をさらに含む、本発明1013の組成物。
[本発明1018]
角膜細胞をさらに含む、本発明1013の組成物。
[本発明1019]
実質的に透過性である、本発明1013の組成物。
[本発明1020]
実質的に平滑な表面をさらに含む、本発明1013の組成物。
[本発明1021]
(a) メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに
(b) 該組成物を可視光に暴露する工程
を含む、角膜再建のための方法。
[本発明1022]
メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、本発明1021の方法。
[本発明1023]
メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、本発明1021の方法。
[本発明1024]
メタクリロイル置換ゼラチンが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、本発明1021の方法。
[本発明1025]
メタクリロイル置換ゼラチンが、8%~12%(w/v)または17%~23%(w/v)
の濃度で存在する、本発明1021の方法。
[本発明1026]
メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)または約20%(w/v)の濃度で存在する、本発明1025の方法。
[本発明1027]
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1021の方法。
[本発明1028]
可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である、本発明1021の方法。
[本発明1029]
エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が0.1~2% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% w/vである、本発明1028の方法。
[本発明1030]
(i)エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vであるか、または(ii)エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、本発明1028の方法。
[本発明1031]
前記組成物が、450~550 nmの範囲の波長を有する可視光に暴露される、本発明1021の方法。
[本発明1032]
前記組成物が、20~120秒間の期間、可視光に暴露される、本発明1021の方法。
[本発明1033]
前記組成物が治療剤をさらに含む、本発明1021の方法。
[本発明1034]
前記組成物が角膜細胞をさらに含む、本発明1021の方法。
[本発明1035]
前記組成物が実質的に透過性である、本発明1021の方法。
[本発明1036]
角膜を縫合する工程を含まない、本発明1021の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1Aは、その粗い表面および高い空隙率を示す、患者の角膜上のシアノアクリレートのりの光干渉断層撮影(OCT)画像である。図1Bは、その不透過性を示す、シアノアクリレートのりの細隙灯写真である。図1C~1Dは、その明瞭さおよび滑らかさを示す、ウサギ角膜欠損部へのエクスビボ適用後のGel-COREの細隙灯写真であり、図1EはOCT画像である。
図2図2Aは、GelMA中のアミン基の変換を決定するためのフルオロアルデヒドアッセイを示す反応スキームである。無水メタクリル酸(MA)修飾された物質における非修飾リジン残基とフルオロアルデヒド試薬の間の反応は、青色の蛍光誘導体を生じ、これらはそれぞれ340 nmおよび455 nmの波長で励起および発光極大を示す。図2Bは、GelMA試料中のアミン基の変換を示す棒グラフである。ゼラチンは、対照として使用されている。
図3図3A~3Eは、GelMA中のメタクリレート基の定量のためのFe(III)-ヒドロキサム酸アッセイを示す。図3Aは、メタクリレート基の分析に使用される反応を示す模式図である。工程(i)は、GelMA中のメタクリレート基が、塩基性条件下でヒドロキシルアミンと反応して等モル量のN-ヒドロキシメタクリルアミドを生成することを示す。工程(ii)は、N-ヒドロキシメタクリルアミドが、酸性条件下でFe(III)イオンと有色の錯体を形成することを示す。図3Bは、アセトヒドロキサム酸の添加前後のFe(III)溶液の写真を示す。色変化は、Fe(III)-アセトヒドロキサム酸錯体の形成を示す。図3Cは、Fe(III)-アセトヒドロキサム酸錯体(FeAHA)の正規化されたUV-Vis吸収スペクトルを示す。吸収ピークは、500 nmを中心とするものである。図3Dは、吸光度と標準FeAHA溶液系列のFeAHA濃度の間の検量線を示す。図3Eは、GelMA試料中のメタクリルアミドおよびメタクリレート基の算出量を示す。超GelMA、高GelMA、中GelMAおよび低GelMAは、それぞれ、反応物中20%(v/v)、8%(v/v)、5%(v/v)および0.5%(v/v)MAを用いて調製された試料を表す。
図4図4A~4Cは、本発明の例示的なエオシンYベースの光重合系を示す。図4Aは、TEAによって補助される、エオシンYの光誘導活性化によって開始されるラジカル生成反応の概要である。図4Bは、水溶液中pH 7.4でのエオシンYのUV-Visスペクトルを示す。図4Cは、エオシンYの活性化状態を示す、ヒドロゲル形成時の可視光暴露による色変化の画像を示す。
図5図5A~5Bは、調整可能な(図5Aおよび5B)機械的特性 - 応力 対 歪み(図5A)および引張係数 対 TEA濃度(図5B)を有する可視光架橋GelMAヒドロゲルを示す。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001)
図6図6A~6Bは、VC濃度(図6A)およびTEA濃度(図6B)が異なる調整可能な膨潤比を有する可視光架橋GelMAヒドロゲルを示す。
図7図7Aは、破裂圧力試験のための試料調製の概要を示す。図7Bは、破裂圧力試験セットアップの上面図を示す(ブタ腸は金属プレート間に設置される)。図7Cは、CoSealおよびEvicelと比較したGelMAヒドロゲルについての破裂圧力データを示す棒グラフである。GelMAは、実施例2および3のようにして作製した。
図8図8Aは、創傷閉鎖強度についての改定標準試験法の概要を示す(ASTM F2458-05)。図8Bは、異なるGelMA濃度および暴露時間で創傷閉鎖試験を用いたこのシーラントの接着強度を示す棒グラフである。GelMAは、実施例2および3のようにして作製した。
図9図9A~9Dは、ウサギ角膜へのGelMAのエクスビボ適用直後(図9Aおよび9B)ならびに11日後(図9Cおよび9D)の細隙灯写真(図9Aおよび9C)ならびにOCT画像(図9Bおよび9D)を示す。観察できるように、GelMAは優れた保持性を示す。
図10図10Aは、OCT画像化のために異なる角度で得られたライン走査を示す。図10Bは、中心および中心から1 mmの位置で測定された生体接着剤の厚みを示す画像である。
図11図11A~11Gは、角膜実質細胞を用いたGelMAの細胞適合性および拡散性のインビトロ評価を示す。図11A~11Cは、第1日(図11A)、第3日(図11B)および第7日(図11C)におけるGel-COREの表面に付着した角膜実質細胞の代表的な生/死画像を示す。図11D~11Fは、被包後第1日(図11D)、第3日(図11E)および第7日(図11F)の角膜実質細胞を含むFアクチン/DAPI染色GEL-COREの代表的画像を示す。図11Gは、7日間の培養にわたるGEL-COREにおける細胞生存率の定量を示す。
図12図12A~12Fは、ウサギにおける異なる角膜層:表層上皮(図12A)、基底上皮(図12B)、基底下神経(図12C)、間質前部角膜実質細胞(図12D)、間質後部角膜実質細胞(図12E)および内皮(図12F)のIVCM画像を示す写真である。
図13A図13Aは、エクスビボでの2つのウサギの眼の部分厚角膜欠損部へのGelMA適用後の細隙灯写真およびOCT画像である。青色光を120秒間用いて架橋されたブタGelMAで充填された3 mmの部分穿孔。
図13B図13Bは、エクスビボでの2つのウサギの眼の部分厚角膜欠損部へのGelMA適用後の細隙灯写真およびOCT画像である。青色光を120秒間用いて架橋されたブタGelMAで充填された3 mmの部分穿孔。
図14図14A~14Cは、本発明のいくつかの例示的なGelMAヒドロゲルの特性を示す。図14Aは、代表的な引張歪み/応力曲線を示す線グラフである。図14Bは、様々な光暴露時間およびGelMA濃度で作製されたGelMAヒドロゲルの引張係数を示す棒グラフである。図14Cは、様々な可視光暴露時間およびGelMA濃度を用いて架橋されたGelMAヒドロゲルの破壊強度を示す棒グラフである。
図15図15A~15Bは、本発明のいくつかの例示的なGelMAヒドロゲルの特性を示す。図15Aは、代表的な圧縮歪み/応力曲線を示す線グラフである。図15Bは、様々な光暴露時間およびGelMA濃度で作製されたGelMAヒドロゲルの圧縮係数を示す棒グラフである。
図16図16A~16Bは、異なる架橋条件下で形成された可視光架橋GelMAヒドロゲルにより封鎖された角膜のエクスビボ破裂圧力に関するセットアップ(図16A)および結果(図16B)を示す。図16Aは、生体接着剤を適用および光架橋した後の、直径2 mmの切開穿孔により外植されたウサギ角膜の漏出圧力を測定するための破裂圧力セットアップを示す概要である。可視光暴露時間(すなわち、1、2および4分間)を調整することにより、異なる破裂圧力を有するヒドロゲルが生成される(図16B)。GelMAの濃度は、20%(w/v)であった。
図17図17は、平滑性、透過性および保持性のエクスビボ評価を示す写真である。
図18図18は、優れた保持性を示す、ウサギ角膜へのGEL-COREのエクスビボ適用直後ならびに14および28日後の細隙灯写真およびOCT画像を示す写真である。
図19図19A~19Fは、ウサギの角膜欠損部への生体接着剤のインビボ適用を示す画像である。適用から1日後、生体接着剤は、透過性であり、平滑な表面を有し、角膜炎症を引き起こさなかった(図19A)。生体接着剤上には上皮の欠損部があり(図19B)、AS-OCTは、角膜への移植物の完全な接着を示した(図19C)。適用から1週間後、生体接着剤は、依然として透過性であり、細隙灯試験に基づき間質への浸潤を伴っていなかった(図19D)。生体接着剤上での上皮の遊走が、フルオレセイン染色(図19E)およびAS-OCT(矢印、図19F)で証明され、これらはまた生体接着剤と間質の間に隙間がないことを示した。
図20図20A~20Cは、50%深度の間質欠損を形成してから2週間後のウサギ角膜の代表的なH&E組織病理画像(200x)である(図20A、正常な損傷なしの角膜)。角膜欠損を、生体接着剤なしで治癒するよう放置すると、間質欠損を満たす有意な上皮過形成が観察された(図20B)。これに対して、間質欠損をGelMA生体接着剤で充填すると、このバイオ素材が上皮細胞によって覆われ、角膜によって維持され、欠損全体を満たした(図20C)。
図21図21は、GelMAプレポリマーならびに0、1、2および4分間を含む異なる可視光露出時間で形成されたGelMAヒドロゲル(20%(w/v))の1HNMRスペクトルを示すグラフである。
図22図22は、1HNMRスペクトルに基づく、異なる可視光暴露時間(1、2および4分間)で10および20%(w/v)プレポリマー濃度を用いることによって作製されたGelMAヒドロゲルの架橋度の定量を示す棒グラフである。
図23図23は、4℃のPBS中での18日間のインキュベート後の外植されたウサギの眼におけるGelMAのエクスビボ保持時間を示す棒グラフである。
図24図24A~24Dは、角膜損傷の迅速かつ長期的な修復のための接着剤の使用を示す模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本発明者らは、角膜適用のための生体接着性ヒドロゲルの特別の配合物である、角膜再建用メタクリロイルゼラチン(GelMA)ヒドロゲル(本明細書中以降、Gel-COREと称される)を開発し最適化した。Gel-COREを形成するため、加水分解されたコラーゲン由来であり、コラーゲンと類似の生物活性を維持している天然ポリマーであるゼラチンを使用した。ゼラチンを、メタクリロイル基によって化学的に官能化し、調整可能な機械的特性を有する光活性化・接着性ヒドロゲルであるGelMAを形成した。このヒドロゲルは、角膜に適用し、可視光により数秒内に光重合して高接着性ヒドロゲルを形成することができる。角膜適用に適した所望の生体接着性、生物活性および分解プロフィールを有する特別な配合物を開発した。
【0038】
生物医学目的で普及しているとはいえ、UV光架橋は、望ましくないDNA損傷および眼毒性をもたらす可能性があるため、潜在的な生物安全性の問題を抱えている。GelMAは、可視光への暴露を通じて架橋され角膜再建および修復のための弾性・生分解性のヒドロゲル(Gel-CORE)を生成することができる改変された天然細胞外マトリクス成分を含む。天然細胞外マトリクス成分は、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ、魚類等を含むがこれらに限定されない動物由来のゼラチンを含み得る。ゼラチンは、疾患(例えばC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス等)の伝染の危険を排除するよう、無菌防護施設内で動物から滅菌条件下で収集することができる点で有利である。
【0039】
GelMAのインサイチュー光重合は、技術的に困難な場所、例えば角膜への容易な送達を助け、封鎖したい組織が要求する形状に正確にしたがう生体接着剤の硬化を可能にし、これは、既製品、例えばスキャホールドまたはシートを上回る利点である。硬化中の生体接着剤と組織表面の物理的相互接続に加えて、ゼラチンは、欠損領域の組織と相互作用するさらなるオプションを提供する。ゼラチンは細胞表面受容体および細胞外マトリクスタンパク質に結合する複数のドメインを含んでいるので、角膜組織への生体接着剤の最初の連結ならびにその後の生体接着剤上での細胞付着および細胞成長が促進される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「メタクリロイルゼラチン」は、少なくとも1つのメタクリルアミド基および/または少なくとも1つのメタクリレート基で置換された遊離アミンおよび/または遊離ヒドロキシルを有するゼラチンと定義される。ゼラチンは、アミノ酸を含み、その一部がアミン(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン)またはヒドロキシル(例えば、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸)で終わる側鎖を有する。これらの末端アミンおよびヒドロキシルの1つまたは複数が、それぞれ、メタクリルアミドおよび/またはメタクリレート基を含むメタクリロイルゼラチンを生成するよう、メタクリロイル基で置換され得る。いくつかの態様において、光開始剤の存在下で可視光に暴露することによって、1つのゼラチン分子上のメタクリロイル基が、別のゼラチン分子上のメタクリロイル基と反応してメタクリロイルゼラチンを架橋し、ヒドロゲルを生成し得る。いくつかの態様において、ゼラチンは、メタクリル酸無水物、塩化メタクリロイル等を含むがこれらに限定されない適当な試薬とゼラチンを反応させることによってメタクリロイル基で官能化され得る。
【0041】
本発明の特定の例示的な態様は、光開始剤を含む。「光開始剤」は、本明細書で使用される場合、光に暴露された際にフリーラジカルに分解する任意の化合物または化合物の混合物を表す。好ましくは、光開始剤は、可視光に暴露された際にフリーラジカルを生成する。可視光光開始剤を励起するために有用な可視光の例示的な範囲は、緑色、青色、藍色および紫色を含む。好ましくは、可視光は、450 nm~550 nmの範囲の波長を有する。光開始剤の例は、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン(Ivocerin(登録商標))、それらの誘導体、それらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの態様において、光開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.0125~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.1~2%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.05~1.5%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.09~0.8%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.05~0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.4~0.8%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.18~0.4%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.4%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.4%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は0.5~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は0.5~2%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は0.5~1.5%(w/v)である。いくつかの態様において、エオシンYの濃度は約0.1 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度は約0.5%(w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度は約0.5%(w/v)である。
【0043】
Gel-COREの機械的特性は、メタクリロイル置換度、GelMA濃度、光開始剤の量および光暴露時間を変更することによってさまざまな用途向けに調整することができる。本明細書で使用される場合、メタクリロイル置換度は、メタクリロイル基で置換されたゼラチン中の遊離アミンまたはヒドロキシルの比率と定義される。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、20%~90%、30%~85%、50%~90%、60%~85%、65%~75%または70%~80%のメタクリロイル置換度を有する。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、メタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比は、80:20~99:1、90:10~98:2または93:7~97:3である
【0044】
本明細書で使用される場合、メタクリロイル置換ゼラチンの濃度は、メタクリロイル置換ゼラチンの重量を溶媒の容積で割ったもの(w/v)と定義され、比率で表される。溶媒は、薬学的に許容される担体であり得る。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、5%~25%(w/v)、17%~25%(w/v)、17%~23%(w/v)または約20%(w/v)の濃度で存在する。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、5%~15%(w/v)、8%~12%(w/v)または約10%(w/v)の濃度で存在する。いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、10~40%(w/v)、15%~35%(w/v)、20%~30%(w/v)または約5%、10%、15%、20%もしくは25%(w/v)の濃度で存在する。
【0045】
いくつかの態様において、メタクリロイル置換ゼラチンは、上記のメタクリロイル置換度のいずれかおよび上記濃度のいずれかの組み合わせ、例えば、50%~90%のメタクリロイル置換度および10%~40%(w/v)の濃度、60%~85%のメタクリロイル置換度および20%~30%(w/v)の濃度、70%~80%のメタクリロイル置換度および25%(w/v)の濃度、30%~85%のメタクリロイル置換度および5%~15%(w/v)の濃度、60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度、または70%~80%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有する。
【0046】
本発明の特定の例示的な態様は、薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、身体の1つの組織、臓器または部分から身体の別の組織、臓器または部分への関心対象の化合物の運搬または輸送に関与する薬学的に許容される物質、組成物または媒体を表す。例えば、担体は、液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは被包物質またはそれらの組み合わせであり得る。担体の各成分は、それが配合物の他の成分と適合しなければならず、かつ対象、例えばヒトへの投与に適合するという点で、「薬学的に許容される」ものでなければならない。それはまた、それが接触する可能性のある任意の組織または臓器と接触させて使用するのに適するものでなければならず、このことは、それが毒性、刺激性、アレルギー反応、免疫原性またはその治療上の利益を大きく上回る任意の他の合併症の危険を有していてはいけないことを意味する。薬学的に許容される担体の例は、例えば、水、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、HEPES、TES、MOPS等)、等張性生理食塩水、リンガー溶液、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、アルギン酸、エチルアルコール、およびそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒体を含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、pH緩衝溶液(例えば、PBS)または水であり得る。
【0047】
角膜細胞は、角膜組織の形成および治癒を促進するよう、生体接着剤内にまたは生体接着剤の表面上に組み込まれ得る。したがって、いくつかの態様において、GelMAまたはGel-CORE組成物はさらに、角膜細胞、好ましくは上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む。上皮および/または内皮細胞は、好ましくは、組成物の表面上に播種され、角膜実質細胞は、好ましくは、光重合の前に組成物中に混合される。
【0048】
角膜の治癒および再成長を促進するために、感染もしくは免疫反応を予防もしくは処置するために、角膜の血管形成を予防もしくは処置するために、眼圧上昇を処置するために、または全般的な眼の健康を促すために、本発明の組成物はさらに、治療剤を含み得る。治療剤の非限定的な例は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。抗菌剤の非限定的な例は、ペニシリン、セファロスポリン、ペネム、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、テトラサイクリン、リンコシド、キノロン、クロラムフェニコール、バンコマイシン、メトロニダゾール、リファンピン、イソニアジド、スペクチノマイシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、キトサン、アンサマイシン、ダプトマイシン、ニトロフラン、オキサゾリジノン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンBおよびクリンダマイシンを含む。抗真菌剤の非限定的な例は、アンホテリシンB、ナタマイシン、カンジシン(candicin)、フィリピン、ハマイシン、ナイスタチン、リモシジン、ボリコナゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン、エキノキャンディン、安息香酸、シクロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸およびポビドンヨードを含む。抗ウイルス剤の非限定的な例は、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、トリフルリジンおよびビダラビンを含む。抗アカントアメーバ剤の非限定的な例は、クロロヘキシジン、ポリヘキサメチレン ビグアナイド、プロパミジンおよびヘキサミジンを含む。抗炎症剤の非限定的な例は、コルチコステロイド;サリチレート、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、エノール酸誘導体、アントラニル酸誘導体、選択的cox-2阻害剤およびスルホンアニリドを含む非ステロイド系抗炎症薬;抗体(例えば、腫瘍壊死因子アルファ阻害剤)およびドミナントネガティブリガンド(例えば、インターロイキン1受容体アンタゴニスト)を含む生物製剤を含む。免疫抑制剤の非限定的な例は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、ミコフェノレート、シクロスポリン、タクロリムスおよびラパマイシンを含む。抗緑内障剤の非限定的な例は、プロスタグランジンアナログ、ベータブロッカー、アドレナリン作動薬、炭酸脱水素酵素阻害剤、副交感神経作用(縮瞳)剤を含む。抗血管内皮成長因子(抗VEGF)剤の非限定的な例は、ベバシズマブ、ラニビズマブおよびアフリベルセプトを含む。成長因子の非限定的な例は、上皮成長因子、血小板由来成長因子、ビタミンA、フィブロネクチン、アネキシンa5、アルブミン、アルファ2マクログロブリン、線維芽細胞成長因子b、インスリン様成長因子I、神経成長因子および肝細胞成長因子を含む。
【0049】
本発明の特定の局面は、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルおよび薬学的に許容される担体を含む角膜再建用組成物に関する。本明細書で使用される場合、「ヒドロゲル」は、コロイド状ゲルを形成する親水性ポリマー鎖網である。いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、20%~90%、40%~90%、30~85%、60%~85%、65%~75%または70%~80%のメタクリロイル置換度を有する。いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、薬学的に許容される担体中5%~15%(w/v)、8%~12%(w/v)、10%~40%(w/v)、15%~35%(w/v)、20%~30%(w/v)または約5%、10%、15%、20%もしくは25%(w/v)の濃度で存在する。いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、上記のメタクリロイル置換度のいずれかおよび上記の濃度のいずれかの組み合わせを有する。いくつかの態様において、架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲルは、60%~80%のメタクリロイル置換度および薬学的に許容される担体中10%~40%(w/v)の濃度、65%~75%のメタクリロイル置換度および20%~30%(w/v)の濃度、68%~72%のメタクリロイル置換度および25%(w/v)の濃度、30%~85%のメタクリロイル置換度および5%~15%(w/v)の濃度、60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度、または70%~80%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有する。
【0050】
Gel-COREの物理的特性(分解および機械的特性等)は、異なる目的に対して異なる生体接着剤組成物、例えば、異なる臨床状況に適した短いまたは長い保持時間を有する生体接着剤が作製され得るよう調整され得る。例えば、眼内物質、例えば虹彩が押し出された角膜外傷の場合、損傷した眼の一時的な封鎖のためにGel-COREを適用することが望まれ得る。短い保持時間のGel-COREもまた、角膜上皮欠損を有する患者において、上皮欠損を被覆するために使用され得る。これに対して、構造的欠損または重度の菲薄化を示す角膜の場合、Gel-COREは、長期間保持されるように配合され得る。現在利用可能なシーラント技術(例えば、シアノアクリレート)は、最終製品の特徴に関してそのような制御を提供しない。以下は、単独でまたは組み合わせとしてのいずれかで、角膜修復に適した生体接着組成物にとって望ましい物理的特性である。いくつかの態様において、組成物は、95~100 kPa、110~140 kPaまたは190~260 kPaのヤング係数を有する。いくつかの態様において、組成物は、5~10 kPa、10~20 kPa、25~80 kPa、5~50 kPa、5~28 kPa、10~22 kPaまたは14~18 kPaの弾性係数を有する。いくつかの態様において、組成物は、1~55 kPa、3~160 kPa、5~320 kPa、10~250 kPa、25~200 kPa、50~175 kPaまたは75~150 kPaの圧縮係数を有する。いくつかの態様において、組成物は、創傷閉鎖試験(ASTM F2458-05)を用いて測定される、≧40 kPa、≧50 kPa、≧60 kPa、≧70 kPa、≧80 kPa、≧90 kPaまたは≧100 kPaの創傷閉鎖強度を有する。いくつかの態様において、組成物は、重ねせん断試験(ASTM F2255-05)を用いて測定される、≧100 kPa、≧150 kPaまたは≧200 kPaのせん断抵抗強度を有する。いくつかの態様において、組成物は、破裂圧力試験(ASTM F2392-04)を用いて測定される、≧15 kPa、≧17 kPaまたは≧20 kPaの破裂圧力を有する。
【0051】
本発明の特定の局面は、
(a) メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに
(b) 該組成物を可視光に暴露する工程
を含む、角膜再建のための方法に関する。
【0052】
Gel-COREの機械的特性は、可視光への暴露時間を変更することによって様々な用途向けに調整することができる。理論にとらわれずに言うと、可視光暴露時間を長くすると、メタクリロイル置換ゼラチン中の架橋が増え、改善された機械的特性、例えば接着強度、せん断強度、圧縮強度、引張強度等を有するヒドロゲルが提供する。いくつかの態様において、組成物は、30秒間~6分間、1分間~5分間、2分間~4分間、または3分間の期間、可視光に暴露される。いくつかの態様において、組成物は、1分間未満、10~60秒以内、15~45秒間、20秒間または30秒間の期間、可視光に暴露される。いくつかの態様において、組成物は、20~120秒間または30~60秒間の期間、可視光に暴露される。いくつかの態様において、組成物は、60秒間~240秒間の期間、可視光に暴露され得る。いくつかの態様において、組成物は、約60秒間、約120秒間、約180秒間または約240秒間の期間、可視光に暴露され得る。
【0053】
いくつかの態様において、この方法は、角膜を縫合する工程を含まない。Gel-MA組成物を架橋するのに有用な可視光の例示的な範囲は、緑色、青色、藍色および紫色を含む。好ましくは、可視光は、450~550 nmの範囲の波長を有する。
【0054】
定義
利便性を考慮して、本明細書の詳細な説明、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語を、ここにまとめる。それ以外のことが示されていない限り、または文脈から暗示されていない限り、以下の用語およびフレーズは、以下に提供される意味を含む。それ以外のことが明示的に示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語およびフレーズは、その用語またはフレーズが属する分野においてそれらが獲得した意味を排除しない。定義は、特定の態様の説明を補助するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載の発明を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、文脈によりそれ以外のことが必要とされない限り、単数形の用語は複数形を包含し、複数形の用語は単数形を包含する。
【0055】
それ以外の定義がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に広く理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験には任意の公知の方法、装置および材料が使用され得るが、その観点で、方法、装置および材料が本明細書に記載されている。
【0056】
実施例を実施する以外では、またはそうでないことが示されていない限り、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表すすべての数値は、すべての例において、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。「約」という用語は、百分率を使用して本発明を説明するために使用される場合、±1%、±1.5%、±2%、±2.5%、±3%、±3.5%、±4%、±4.5%または±5%を意味する。
【0057】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を含む。同様に、「または、もしくは」という単語は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、「および、ならびに」を含むことが意図されている。
【0058】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、「含む(including)」または「含む(includes)」を意味し、それが有用であろうとなかろうと、指定されていない要素を含む余地を残しつつ、本発明にとって有用である組成物、方法、システムおよびそれらの各要素を参照するために使用される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、特定の態様に必要とされる要素を表す。この用語は、本発明の態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的に影響しない付加的要素の存在を許容する。
【0060】
「からなる」という用語は、その態様の説明の中で言及されていないあらゆる要素に対して排他的である、本明細書に記載される組成物、方法、システムおよびそれらの各要素を表す。
【0061】
「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書で非限定的な例を示すために使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
【0062】
本発明の例示的な態様は、以下のサブパラグラフの1つまたは複数によって表され得る。
1. メタクリロイル置換ゼラチン(ゼラチンメタクリロイル)、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物。
2. メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1の組成物。
3. メタクリロイル置換ゼラチンが、60%~85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1または2の組成物。
4. メタクリロイル置換ゼラチンが、70%~80%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1~3のいずれか1つの組成物。
5. メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、パラグラフ1~4のいずれか1つの組成物。
6. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が90:10~98:2である、パラグラフ5の組成物。
7. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が92:8~97:3である、パラグラフ5または6の組成物。
8. ゼラチンメタクリロイルが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1~7のいずれか1つの組成物。
9. ゼラチンメタクリロイルが、17%~25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1~8のいずれか1つの組成物。
10. ゼラチンメタクリロイルが、17%~23%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1~9のいずれか1つの組成物。
11. ゼラチンメタクリロイルが、約20%の濃度で存在する、パラグラフ1~10のいずれか1つ記載の組成物。
12. ゼラチンメタクリロイルが、8%~12%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1~8のいずれか1つの組成物。
13. ゼラチンメタクリロイルが、約10%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ12の組成物。
14. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ1~13のいずれか1つの組成物。
15. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物を含む、パラグラフ1~14のいずれか1つの組成物。
16. エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.1~2% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% (w/v)である、パラグラフ15の組成物。
17. エオシンYの濃度が0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2~1.6% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09~0.8% (w/v)である、パラグラフ15または16の組成物。
18. エオシンYの濃度が0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2~1.6% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09~0.8% (w/v)である、パラグラフ15~17のいずれかの組成物。
19. エオシンYの濃度が0.05~0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.4~0.8% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.18~0.4% (w/v)である、パラグラフ15~18のいずれかの組成物。
20. エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.4% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% (w/v)である、パラグラフ15~19のいずれかの組成物。
21. エオシンYの濃度が0.5~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.5~2% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.5~1.5% (w/v)である、パラグラフ15または16の組成物。
22. エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% (w/v)であり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% (w/v)である、パラグラフ15、16または21のいずれかの組成物。
23. 角膜細胞をさらに含む、パラグラフ1~12のいずれか1つの組成物。
24. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ23の組成物。
25. 治療剤をさらに含む、パラグラフ1~24のいずれか1つの組成物。
26. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ25の組成物。
27. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルおよび薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物であって、架橋メタクリロイル置換ゼラチン(ゼラチンメタクリロイル)ヒドロゲルが、30%~85%のメタクリロイル置換度および薬学的に許容される担体中5%~25%(w/v)の濃度を有する、前記組成物。
28. 濃度が、5%~15%(w/v)である、パラグラフ27の組成物。
29. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、60%~85%のメタクリロイル置換度および8%~12%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27または28の組成物。
30. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、70%~8%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27~29のいずれかの組成物。
31. 濃度が、17%~25%である、パラグラフ27の組成物。
32. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、60%~85%のメタクリロイル置換度および/または17%~23%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27または28の組成物。
33. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、70%~80%のメタクリロイル置換度および/または約20%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27~29のいずれかの組成物。
34. 190~260 kPaまたは250~350 kPaのヤング係数を有する、パラグラフ27~33のいずれか1つの組成物。
35. 110~140 kPaまたは100~150 kPaのヤング係数を有する、パラグラフ27~33のいずれか1つの組成物。
36. 5~50 kPaの弾性係数を有する、パラグラフ27~35のいずれか1つの組成物。
37. 5~320 kPaまたは10~250 kPaの圧縮係数を有する、パラグラフ27~36のいずれか1つの組成物。
38. 5~160 kPaまたは125~175 kPaの圧縮係数を有する、パラグラフ27~37のいずれか1つの組成物。
39. ≧40 kPaの創傷閉鎖強度を有する、パラグラフ27~38のいずれか1つの組成物。
40. ≧45 kPaの創傷閉鎖強度を有する、パラグラフ27~38のいずれか1つの組成物。
41. ≧10 kPaまたは≧15 kPaの破裂圧力を有する、パラグラフ27~40のいずれか1つの組成物。
42. 治療剤をさらに含む、パラグラフ27~41のいずれか1つの組成物。
43. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ42の組成物。
44. 角膜細胞をさらに含む、パラグラフ27~43のいずれか1つの組成物。
45. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ44の組成物。
46. 実質的に透過性である、パラグラフ27~45のいずれか1つの組成物。
47. 実質的な平滑な表面を有する、パラグラフ27~46のいずれか1つの組成物。
48. (a) メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに
(b) 該組成物を可視光に暴露する工程
を含む、角膜再建のための方法。
49. メタクリロイル置換ゼラチンが、30%~85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48の方法。
50. メタクリロイル置換ゼラチンが、60%~85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48または49の方法。
51. メタクリロイル置換ゼラチンが、70%~80%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48~50のいずれか1つの方法。
52. メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20~99:1である、パラグラフ48~51のいずれか1つの方法。
53. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が90:10~98:2である、パラグラフ52の方法。
54. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が92:8~97:3である、パラグラフ52または53の方法。
55. メタクリロイル置換ゼラチンが、5%~25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48~54のいずれか1つの方法。
56. メタクリロイル置換ゼラチンが、17%~25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48~55のいずれか1つの方法。
57. メタクリロイル置換ゼラチンが、17%~23%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48~56のいずれか1つの方法。
58. メタクリロイル置換ゼラチンが、約20%の濃度で存在する、パラグラフ48~57のいずれか1つ記載の方法。
59. メタクリロイル置換ゼラチンが、8%~12%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48~55のいずれか1つの方法。
60. メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ59の方法。
61. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ48~60のいずれか1つの方法。
62. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムの混合物を含む、パラグラフ48~61のいずれか1つの方法。
63. エオシンYの濃度が0.0125~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.1~2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.05~1.5% w/vである、パラグラフ62の方法。
64. エオシンYの濃度が0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09~0.8% w/vである、パラグラフ62または63の方法。
65. エオシンYの濃度が0.025~0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2~1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09~0.8% w/vである、パラグラフ62~64のいずれかの方法。
66. エオシンYの濃度が0.05~0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.4~0.8% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.18~0.4% w/vである、パラグラフ62~65のいずれかの方法。
67. エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、パラグラフ62~66のいずれかの組成物。
68. エオシンYの濃度が0.5~0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.5~2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.5~1.5% w/vである、パラグラフ62または63の方法。
69. エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vである、パラグラフ62、63または68のいずれかの方法。
70. 組成物が、450~550 nmの範囲の波長を有する可視光に暴露される、パラグラフ48~69のいずれか1つの方法。
71. 組成物が、20~120秒間の期間、可視光に暴露される、パラグラフ48~70のいずれか1つの方法。
72. 組成物が、30~60秒間の期間、可視光に暴露される、パラグラフ48~71のいずれか1つの方法。
73. 組成物が治療剤をさらに含む、パラグラフ48~72のいずれか1つの方法。
74. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ73の方法。
75. 組成物が角膜細胞をさらに含む、パラグラフ48~74のいずれか1つの方法。
76. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ75の方法。
77. 組成物が実質的に透過性である、パラグラフ48~76のいずれか1つの方法。
78. 角膜を縫合する工程を含まない、パラグラフ48~77のいずれか1つの方法。
【0063】
本発明は、角膜の欠損および損傷の修復および再建のための改善された生体接着剤を提供することに注目されたい。ASTM標準試験にしたがい、本発明の架橋メタクリロイル置換ゼラチンヒドロゲル(Gel-CORE)は、角膜への適用に適した接着特性、すなわち、創傷閉鎖強度、せん断抵抗および破裂圧力を発揮することが示された。インビトロ実験は、Gel-COREが、角膜細胞に対して細胞適合性であり、適用後に細胞との融合を促進することを示した。ウサギにおけるインビボ実験は、Gel-COREが角膜の欠損を効果的に封鎖することができることを示した。本発明の生体接着剤は、コストが低く、製造が容易であり、使用が容易であり、そのため角膜修復に使用できる見込みのある物質であり、そして接着特性をさらに最適化する容易に調整可能なプラットフォームである点で有利である。
【0064】
本明細書には好ましい態様が示され詳述されているが、本発明の精神から逸脱することなく様々な改変、付加、置換等を行うことができること、したがってそれらは添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれるとみなされることは、当業者に明らかであろう。さらに、すでに示されていない程度まで、本明細書に記載され例示されている様々な態様の任意の1つは、本明細書に開示される他の態様のいずれかに示される特徴を取り込むようさらに改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0065】
本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬等に限定されず、それらは変更され得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲はもっぱら特許請求の範囲によって定義される。
【実施例0066】
本開示は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これらは限定であるとみなされるべきでない。実施例は、例示を目的としたものにすぎず、いかなる様式においても、本明細書に記載される任意の局面を限定することは意図されていない。以下の実施例は、いかなる様式においても、本発明を限定するものではない。
【0067】
実施例1:Gel-COREの利点および用途
Gel-CORE生体接着剤は、以下の用途で使用され得る点で有利である。
【0068】
角膜欠損の充填:Gel-COREは、物理的損傷によってのみならず、様々な角膜炎症障害、例えば細菌性角膜炎および免疫介在性角膜融解の後にも起こる、角膜欠損および角膜菲薄化障害を埋め合わせすることができる。そのような例において、この生体接着剤は、危機的状況下で構造的サポートを提供するために使用される。加えて、長期的に見て、これは、生体接着剤内での角膜細胞の再生を可能にし、伝統的な処置様式、例えば角膜移植および組織パッチ移植の使用を必要としない間質置換技術として機能する。
【0069】
角膜の間質欠損および菲薄化の修復のための現在の標準治療は、組織/パッチ移植またはのりの適用を含む。角膜移植およびパッチ移植は、ドナー組織を必要とし、これらは入手可能でない場合がある。加えて、同種組織を移植に使用することは、免疫反応の危険を伴う。
【0070】
現時点で、角膜欠損を充填するための承認された接着剤はない。シアノアクリレートのりが、現時点で、多くの切迫した眼科的状況、例えば角膜穿孔、近い将来の穿孔および進行性角膜菲薄化障害を処置するために「認可外品」として使用されているが、それは、以下を含む、様々な大きな欠点を有している。
【0071】
i. 角膜および他の眼球組織に対する細胞傷害性を伴う、低い生体適合性(眼に侵入した場合、白内障形成および網膜症の危険がある)、
ii. 透過性の欠如、良好な視力の妨害および角膜後面構造の視界の悪化、
iii. 高い空隙率に起因する二次感染の危険、
iv. その適用の制御の困難さ、のりの予期せぬ剥離の可能性、
v. さらなる感染の危険を付加するコンタクトレンズ装着を必要とする粗い表面、ならびに
vi. 角膜組織と融合しないこと。
【0072】
これに対して、Gel-COREは、角膜修復および封鎖のために現在利用可能な接着剤と比較して様々な利点を有する。
【0073】
1. バイオセーフティー:Gel-COREは、その原材料が様々な医学的用途で使用されているコラーゲン由来の天然由来バイオポリマーであるゼラチンであるため、優れた生体適合性を有し、他の材料(例えば、シアノアクリレート製品)と比べて安全性の懸念をほとんど生じない。加えて、可視光活性化光開始剤を選択することによって、以前の配合におけるUV暴露に付随する潜在的ダメージが回避されるであろう。
【0074】
2. 調整可能な特性:Gel-COREの物理的特性(分解および機械的特性等)は、異なる目的に対して異なる生体接着剤組成物 - 異なる臨床状況に適した短いまたは長い保持時間を有する生体接着剤が製造され得るよう調整され得る。例えば、眼内物質、例えば虹彩が押し出された角膜外傷の場合、損傷した眼の一時的な封鎖のためにGel-COREを適用することが望まれ得る。これに対して、構造的欠損または重度の菲薄化を示す角膜の場合、Gel-COREは、長期間保持されるように配合され得る。現在利用可能なシーラント技術(例えば、シアノアクリレート)は、最終製品の特徴に関してそのような制御を提供しない。
【0075】
3. 透過性:ウサギ角膜を用いたエクスビボ実験において、Gel-COREは、50%深度の角膜損傷に対する投与および光重合の後に透過性であり、正常な角膜の輪郭を保持することができる平滑かつ凸状の表面を有することが示された(図1A~1E)。
【0076】
4. 可逆性:適用すると直ちに硬化するシアノアクリレートと異なり、Gel-COREは、硬化のために光の適用を必要とし、したがって必要な場合、誤った適用をやり直すことができる。
【0077】
5. 高い接着性および保持性:Gel-COREは、創傷閉鎖、重ねせん断、破裂圧力よびエクスビボ接着試験に基づき、組織に対して高い接着性を有する。加えて、エクスビボデータは、一貫して、Gel-COREが数日間保持され、本来の状態でかつ角膜に完全に付着した状態で維持されることを示している。
【0078】
6. 角膜組織の再生:角膜の封鎖に使用される他の接着剤(例えば、シアノアクリレート)と異なり、Gel-COREは、組織の封鎖および再生の両方を実現する。ヒト角膜実質細胞は、Gel-CORE内で成長することができる。Gel-COREは、角膜に強く付着し、組織が生理学的修復/再生を行っている間保持されるであろう。
【0079】
角膜、角膜縁または強膜の創傷の封鎖:そのような創傷に対する伝統的な処置は、縫合を含む。しかし、縫合は、以下を含む大きな欠点を伴うものである:1. 縫合糸は、微生物の侵入および感染、炎症ならびに新血管形成の危険因子となり得る外来物質であること、2. 角膜縫合糸は、多くの場合、規則的または不規則な乱視を誘導し、それにより視力が損なわれること。これらの欠点を回避するため、シーラントが創傷の封鎖に使用されている。唯一の承認されているシーラントであるReSure(登録商標)(米国)およびOcuSeal(登録商標)(欧州)は、白内障手術の角膜切開部を封鎖するためのものである。しかし、それらはすぐに剥がれ落ちてしまう。これに対して、角膜、角膜縁または強膜の創傷を強固に封鎖するGel-COREは、望まれるより長い期間の封鎖を提供するよう調整することができる。Gel-COREは、角膜創傷の封鎖のための接着性を提供し得る。そのような条件下で、それは、縫合を必要とせずに創傷を封鎖することができる。Gel-COREは、角膜縁または強膜創傷の閉鎖のための接着性を提供し得る。そのような条件下で、それは、縫合を必要とせずに創傷を封鎖することができる。
【0080】
角膜上皮欠損の被覆:角膜上皮欠損を有する患者に対する伝統的な処置は、眼帯、包帯コンタクトレンズおよびときに侵襲的手法を含む。しかし、これらの選択肢は、それらが患者にとって邪魔者となり得、かつ角膜感染の危険を高め得るという事実によって制限される。これらの例に対しては、対照的に、我々は、角膜上皮自体を再生しつつ角膜を保護する高速分解性のGel-CORE配合物を使用することができる。
【0081】
角膜または強膜の裂傷および眼内構造物の逸脱の例における眼内構造物の一時的保護:そのような例に対する唯一の利用可能な処置上の選択肢は、創傷を縫合すると同時に眼内構造物を外科的に位置直しすることであるが、これは設備を有する施設において熟練の外科医によって行われるべきものである。しかし、これは、外科的手順を遅らせることになり、それは患者を眼内感染にかかりやすくするであろう。これに対して、Gel-COREの使用は、感染を防ぎつつ角膜/強膜および眼内構造物のための一時的サポートを提供する。恒久的な修復は、その後、眼内感染の高い危険にさらすことなく行うことができる。Gel-COREは、治療剤(例えば、抗生物質等)を含有する生物製剤パッチが眼内構造物を被覆するため、虹彩/脈絡膜-網膜逸脱を伴う大規模な角膜/強膜損傷の例で使用することができる。そのような例において、それは、恒久的外科的手順が行われる前に眼内構造物を保護し、感染を防ぐ。
【0082】
深刻な菲薄化を伴うまたは伴わない角膜感染:角膜感染に対する現在の標準治療は、目薬の高頻度の点眼を含み、これは患者にとって面倒なことである。この欠点を回避するために、現在、徐放性の抗生物質を含むコンタクトレンズを用いたいくつかの研究が行われている。しかし、そのような技術は、角膜に対して構造的なサポートを提供しない。これに対して、Gel-COREは、抗生物質の長期的放出を提供するだけでなく、感染性角膜炎を伴う角膜に対する構造的サポートも提供することができる。Gel-COREは、角膜に対する構造的サポートに加えて抗生物質の長期的放出を提供する抗生物質含有パッチとして、深刻な菲薄化を伴うまたは伴わない角膜感染の例において使用することができる。
【0083】
炎症性角膜菲薄化:炎症性角膜菲薄化に対する現在の標準治療は、局所的または全身的抗炎症薬の使用を含む。深刻な菲薄化の場合、角膜間質欠損に関して上記されたような外科的手順が行われる。これに対して、Gel-COREは、角膜欠損に関して上記されたような構造的サポートを提供するだけでなく、抗炎症薬を徐々に放出する薬物リザーバとして機能し得、それによって追加の局所的または全身的治療薬の必要性を取り除くまたは減らす。したがって、Gel-COREは、この生体接着剤が透明であり、治療利用により数週間の間保持され得ることから、薬物送達のためのプラットフォームとして使用することができる。Gel-COREは、角膜に対する構造的サポートの提供に加えて、抗炎症薬の長期的放出を提供する抗炎症薬含有パッチとして、炎症性角膜菲薄化の例において使用することができる。
【0084】
屈折性角膜モデリング:角膜の屈折性モデリングのために、PermaVision(ReVision Optics)、Kamra(AcoFocus)、Flexivue Microlens(Presbia)およびRaindropインレー(Revision Optics)を含む様々な角膜内インプラントがこれまでに使用されてきたが、それらはすべて、角膜組織に対する完全な生体適合性の欠如に起因する沈着物形成またはかすみ発生を伴う。これに対して、Gel-COREは、これらの合併症を防ぐ高度の生体適合性を有する。加えて、Gel-COREでは、角膜細胞とこの生体材料の融合が起こり、これは他のインレーでは見られないことである。Gel-COREは、屈折異常(近視、遠視、乱視および老眼)を有する患者において角膜の屈折力を変化させる角膜モデリングのための角膜内インプラントとして使用することができる。
【0085】
移植における角膜組織の置換物:移植により角膜組織を交換するために、Boston Keratoprosthesis、オステオオデントケラトプロテーゼ(osteoodentokeratoprosthesis)、AlphaCorを含む様々な人工角膜が以前から使用されているが、それらは、これらの人工角膜に角膜細胞が融合されないという事実に悩まされている。これに対して、Gel-COREは、この生体材料へのネイティブ角膜細胞の高度の遊走および融合を示す。Gel-COREは、ドナー角膜組織の使用に代わる、表層角膜移植における角膜移植の置換物として使用することができる。Gel-COREはまた、(人工角膜と同様に)全層角膜移植における角膜組織の置換物として使用することもできる。
【0086】
実施例2:ゼラチンメタクリロイル(GelMA)プレポリマーの合成
GelMAは、以前に記載されたようにして合成した14。ゼラチンおよびメタクリル酸無水物の濃度は、本明細書に開示される範囲のメタクリロイル置換を有するGelMAを製造するよう変更され得る。例えば、10%(w/v)ブタゼラチン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させ、60℃で20分間加熱した。50℃で3時間、継続的攪拌下で8%(v/v)メタクリル酸無水物(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を滴下し、その後にPBSで希釈し、40~50℃で7日間、脱イオン水に対して透析した。滅菌ろ過および4日間の凍結乾燥の後、実験に使用するまでGelMAを-80℃で保管した。
【0087】
メタクリルアミド基の定量。生体材料、例えばGelMA中でのアミン基の変換は、従来通りプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルを用いて決定した13~14。しかし、ゼラチンは複雑な組成を有するポリペプチドの混合物なので、1H NMRスペクトルからメタクリルアミドおよびメタクリレート基の共鳴ピークを検出し区別することは実行可能でない場合がある。代替法として、フルオロアルデヒドアッセイ43は、アミン基の変換のより容易かつより正確な決定を可能にする。修飾タンパク質/ペプチド試料が、o-フタルアルデヒドおよび2-メルカプトエタノールを含むアッセイ溶液と混合されると、その材料内のすべての残存する一級アミン基が、青色に発光する蛍光種に変換される(図2A)。反応物に異なる量のMAを添加することによってそれらのメタクリロイル置換度が変化した4つの異なるGelMA配合物を調製した(表1)14。修飾度に依存して、得られたGelMA配合物を、それぞれ、超GelMA、高GelMA、中GelMAおよび低GelMAと称する。標準としてゼラチンを使用して、残存する一級アミン基の量を容易に取得することができる。得られたGelMA試料のアミン基の変換は、フルオロアルデヒドアッセイを用いて、それぞれ、超GelMAについては約93%、高GelMAについては約84%、中GelMAについては約65%、および低GelMAについては約24%と決定された(図2B)。アミン基の変換は、一定の反応温度および反応時間の下で添加されたMA量と正の相関関係にあることが明らかである。
【0088】
(表1)異なるGelMA試料の分子パラメータの概要
【0089】
メタクリレート基の定量。GelMAの調製に関する我々の以前の発表14において、アミン基由来の共鳴ピークの積分面積に基づく計算により、1H NMRスペクトルを使用してアミン基の変換を決定した。メタクリレート基の定量は、修飾ペプチドまたはタンパク質試料の1H NMRスペクトル中に識別可能なヒドロキシル基の共鳴ピークが存在しなかったために実施することができなかった。
【0090】
ここでは、Fe(III)-ヒドロキサム酸ベースのアッセイを用いて、異なるGelMA試料中のメタクリレート基の量を決定した(図3A~3E)。ヒドロキサム酸は、Fe(III)イオンと赤茶色の錯体を形成し、これがヒドロキサム酸種の定量試験として機能し得る(図3A)。このクラスの錯体は、約500 nmを中心とする吸収ピークを有する(図3Bおよび3C)。Fe(III)-ヒドロキサム酸錯体の形成は、ポリ(ビニルアルコール)中のエステル基残基の定量のような他の分析用途45と共に、リゾチームのアミン基およびヒドロキシル基と様々な異なるカルボン酸無水物の反応を定量するために使用されてきた44。アセトヒドロキサム酸(AHA)を、標準曲線を作成するための標準として使用し、アセトヒドロキサム酸とFe(III)イオンの錯体(FeAHA)が、N-ヒドロキシメタクリルアミドとFe(III)イオンのそれ(FeHMA)と類似の分光特性を有すると推定される44。過塩素酸鉄(III)を、希塩酸に溶解させてFe(III)イオン溶液を調製し、これを過剰量でアセトヒドロキサム酸溶液に添加し、1:1錯体を形成させた。Fe(III)およびヒドロキサム酸のモル比が20を超える場合に見かけの吸光係数がその最大に達することが報告されており、これはその比率に非依存的に維持されるであろう46。1.3 x 10-4~2.5 x 10-3 mol/Lの濃度を網羅する標準FeAHA溶液系列のUV-Vis吸収スペクトルをUV透過性マイクロプレート上で記録した。実際、AHA濃度の関数として吸光度をプロットし、線形最小二乗フィットを用いて分析すると、すばらしい直線性が達成された(図3D)。
【0091】
GelMA試料中のメタクリレート基の量を決定するため、メタクリレート基を検出可能なN-ヒドロキシメタクリルアミド化合物に変換するアミノ分解反応を用いた。詳細に、50 mg/mLのGelMA試料を、室温で10分間、ヒドロキシルアミン溶液で処理して、N-ヒドロキシメタクリルアミドを生成した。得られた溶液を塩酸で酸性化した後、過剰なFe(III)イオンを添加した。Fe(III)イオンの添加による色変化は、FeHMA錯体の形成を示し、これによりメタクリレート基の存在を確認した。インサイチューで形成されたFeHMA錯体の濃度を、UV-Vis吸収スペクトルから決定し、これを用いてGelMA試料中のメタクリレート基の量を計算することができた(図3E)。すべての試験されたGelMA試料において、メタクリレート基は、全メタクリロイル置換の10%以下であることが見出された。これらの結果は、アミン基がヒドロキシル基よりもずっと高い反応性を有し、GelMA中でメタクリルアミド基が優勢形態であることを示唆した(図3E)。
【0092】
実施例3:Gel-COREヒドロゲルの調製および材料特性
可視光活性化開始剤としてエオシンY(Sigma-Aldrich)を、共開始剤としてトリエタノールアミン(TEOA)(Sigma-Aldrich)を、触媒としてビニルカプロラクタム(VC)(Sigma-Aldrich)を用いることによって、可視光架橋性Gel-COREを作製した15、16。この架橋システムを用いて、GelMAにおけるメタクリロイル基の重合を、100 mW/cm2の青色光(450~550 nm、キセノン源)への暴露を通じて開始した(図4A~4C)。エオシンYは、水溶性キサンテン色素であり、角膜および強膜の主成分であるコラーゲンに対する一般的な染料である。この可視光システムは、幅広い用途において十分に確立された生体適合性の実績を有しており15~19、ポリエチレングリコール(PEG)ベースのシーラントであるFocalSeal(登録商標)(Genzyme Biosurgical, Cambridge, MA)において、ヒト身体での使用に関してFDAの承認が得られている。可視光架橋性Gel-COREヒドロゲルは、調整可能な物理的特性を示し(図5A~5B)、可視光架橋を用いてGel-COREヒドロゲルの弾性係数を5~28 kPaで調整することができた(図5A~5B)。加えて、その膨潤比を、7%~13%(w/w)で変更することができた(図6B)。
【0093】
ヒドロゲルを形成するために、異なるメタクリロイル修飾度(30%~85%)を有するGelMAを使用することができる14。次に、異なる濃度のGelMAプレポリマー溶液(5~15% w/v)を、エオシンY(0.1~0.5 mM)、TEOA(0.5~2% w/v)およびVC(0.5~1.5% w/v)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製することができる。配合されたGelMAプレポリマー溶液は、エオシンYの吸収スペクトルと一致する青色光に20~120秒間暴露することによって光架橋することができる(図4B)。GelMA濃度を変更することによって、エオシンY/TEOA/VC濃度および光暴露時間が、得られるヒドロゲルの物理的特性を変化させる。
【0094】
この配合物は、角膜の修復に使用されるものなので、Gel-COREヒドロゲルは、ネイティブの角膜と類似の弾性および剛性(ヤング係数:250~350 kPa)を有するべきである。ヒドロゲルの膨潤比は、この接着剤が角膜欠損部に適用された後もその形状を維持することを確実にするため、<20%の膨潤比を有するよう最適化されるべきである。特に、膨潤比は、封鎖される欠損部の形状、湾曲および平滑性に影響し得る。
【0095】
例えば、実施例2にしたがい製造された凍結乾燥GelMAを、10%(w/v)の濃度でPBSに溶解させた。0.1%(w/v)エオシンY、0.5%(w/v)トリエタノールアミンおよび0.5%(w/v)ビニルカプロラクタムの光開始剤混合物の添加および80℃での溶解の後、プレポリマー溶液を、可視光照射(450~550 nm、キセノン源、100 mW/cm2)によって光架橋しヒドロゲル(Gel-CORE)にした。
【0096】
別の例において、異なる濃度のGelMA(5、10、15、20%(w/v))を、材料特性について試験した。(実施例2で製造された)凍結乾燥GelMAを、1.875%(w/v)トリエタノールアミン(TEA)および1.25%(w/v)N-ビニルカプロラクタム(VC)を含むPBSに5、10、15、20%(w/v)の濃度となるよう溶解させた。エオシンYは、それとは別に、0.5 mMの濃度となるよう新しいDPBSに溶解させた。ヒドロゲルを調製するため、8μLのGelMA溶液を2μLのエオシンY溶液と混合し、次いでこの混合物を150μmスペーサーによって隔てられた2つのガラスカバースリップ間に置き、その後に450~550 nmの範囲の青色光(100 mW/cm2、Genzyme Biosurgery製キセノン源)に20秒間暴露した。
【0097】
Gel-CORE試料の機械的試験は、以前に公開されたようにして行った14。簡単に説明すると、プレポリマー溶液を、以下の形状を生じるよう光架橋した:圧縮試験用のディスク形(n=3~5;直径6 mmおよび高さ1.5 mm)ならびに引張試験用の立方形(n=7~10;幅3 mm、長さ14 mmおよび厚み1.5 mm)。このヒドロゲルを直接分析するか、または機械的試験システム5542(Instron, Norwood, MA, USA)で試験する前に4℃で24時間PBS中に保存した。圧縮試験および引張試験における歪み速度は、1 mm/分に設定した。試料の圧縮強度および極限引張強度は、ヒドロゲルの破裂または引き裂きの時点で決定した。圧縮係数および弾性係数は、0~0.5%の歪み速度で応力歪み曲線の勾配を測定することによって得た。
【0098】
膨潤特性を分析するため、Gel-COREヒドロゲル試料(n=5)を、1、2または3日間、PBS中で膨潤させた。実験の最後に、過剰な液体をティッシュペーパーで慎重に取り除き、湿重量を測定した。凍結乾燥後、試料の乾燥重量を測定し、その膨潤比を(湿重量 - 乾燥重量)/乾燥重量として計算した(図6Aおよび6B)。
【0099】
Gel-COREヒドロゲルのエクスビボ試験では、外植したウサギ角膜組織を使用した。最初に、GelMAプレポリマーを、外植した角膜上に作製した切開部に適用し、その後に、最適化された光暴露時間を用いて可視光に暴露することによって光架橋させた。次いで、破裂圧力を、角膜への空気膨張後に圧力センサを用いて測定した。例えば、ウサギ角膜を、Gel-CORE(10%(w/v)、プレポリマー濃度、5 mMエオシンY、および120秒間の暴露時間を用いて封鎖した。ウサギ角膜上に作製した切開部をGel-COREで隙間なく完全に封鎖し、この組織は、健常な眼の圧力の2倍にあたる、約3.5 kPa(26 mmHg)まで加圧することができた。好ましくは、Gel-CORE試料は、15 kPa(>110 mmHg)より高い破裂圧力20~21、>100 kPaの重ねせん断強度、>40 kPaの接着強度および光暴露時間<60秒間以内の光重合を有する。
【0100】
実施例4:Gel-COREの機械的特性のASTM標準インビトロ試験
破裂圧力
シーラントの破裂圧力試験は、ASTM標準F2392-04(外科用シーラントの破裂強度の標準試験法)から適合させた。試料調製前に、ブタ皮膚シート(40 mm * 40 mm)をPBSに浸した。2枚のTeflonシート(35 mm * 35 mm)の間に設置したブタ皮膚シートの中心に円形の欠損部(直径3 mm)を作製した。上側のTeflonシートには、ブタ皮膚シートの円形欠損部上に所望の接着剤を適用できるよう穴(直径10 mm)が設けられた(図7A)。GelMAの場合、プレポリマーを、可視光に照射した。その後、コラーゲンシートを取り出し、圧力検出・記録ユニットおよび試料に対する圧力が徐々に上昇するよう空気を適用するシリンジポンプからなる破裂圧力試験システムに設置した(図7B)。各々の試験された接着剤グループは、5つの試料を含んでいた。
【0101】
ブタ皮膚上の標準化された欠損部を被覆するシーラントに漸増する空気圧を適用し、その破裂圧力抵抗を試験した。各々のGelMA濃度は、Coseal(商標)よりも高い破裂圧力値を示した(図7C)。
【0102】
創傷閉鎖
GelMAならびに臨床的に確立されている外科用シーラントであるEvicel(登録商標)(Ethicon, Somerville, NJ, USA)、Coseal(商標)(Baxter, Deerfield, IL, USA)およびProgel(商標)の創傷閉鎖強度を、ASTM標準試験F2458-05(組織接着剤およびシーラントの創傷閉鎖強度の標準試験法)を参考にし、この標準法をより小さな試料サイズに適合するよう若干改変して試験した。簡単に説明すると、地元の食肉処理場から得た新しいブタ皮膚を、脂肪組織層を除去し、試料を5 mm * 15 mmの長方形の切片に切断することによって調製した。使用しない間、PBSに浸したガーゼによりブタ皮膚を湿った状態で維持した。使用前に、ブタ皮膚を、余分な液体を除去するようふき取りにより乾かし、皮膚片の各端部を、Krazyのり(Westerville, OH, USA)を用いて2枚のポリ(メチルメタクリレート)スライド(30 mm * 60 mm)で固定し、スライド間に6 mmの皮膚切片が入るようにした。次いでこのブタ皮膚片を、かみそり刃を用いて切断し(図8A)、シリンジを用いてワセリンを所望の接着剤適用領域の端部に適用した。その後、6 mm * 5 mm皮膚切片全体に40μlの接着剤を適用し、GelMAの場合は、可視光を照射した(図8A)。PBS中での1時間のインキュベート後、2枚のプラスチックスライドを、引張試験のために、Instronシステムのグリップに固定した(図8A)。シーラント試料の接着強度は、引き裂き時に決定した。各々の試験された接着剤グループは、4~7つの試料を含み、その結果が図8Bにまとめられている。引張試験により、弾性係数(5~50 kPaの範囲)および極限引張強度(試料を引き伸ばした後の破れた時点の応力)を測定した。
【0103】
実施例5:Gel-COREの分解性および保持性
Gel-COREを、3 mm >50%深度の角膜欠損部に適用した(0.01%(w/v)エオシンY、0.5%(w/v)TEAおよび0.5%(w/v)VCを含む10%(w/v)Gel-CORE溶液を使用した)。この溶液を青色光に120秒間暴露して、損傷した角膜上にヒドロゲル層を形成させた。この手順の後、眼を、4℃のPBS中で維持した。Gel-COREの経時的変化を、細隙灯生体顕微鏡検査およびOCTによる連続評価を用いて評価した。少なくとも11日間、この生体接着剤は、本来の状態を維持し(完全な厚みおよび拡散が保持され)、すべての試験した眼において角膜に完全に付着した状態で留まったことが見出された。細隙灯生体顕微鏡検査は、この期間、この生体接着剤が平滑な表面を有する透明な状態を維持し、形状または輪郭にいかなる生体顕微鏡的変化も見られないことを示した(図9Aおよび9C)。加えて、OCTは、Gel-COREの厚みまたは形状に変化がないことを確認した(図9Bおよび9D)。11日後、PBS中の角膜組織は、(PBS下での長期間の保管に起因する壊死から予想されたように)分解し始め、この時点で、角膜へのGel-COREの付着は、失われ始めた。
【0104】
ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、50%深度の角膜欠損を作製することによって使用した。ケタミンおよびキシラジンの筋内注射を用いてウサギの全身麻酔を行った後、3 mm生検用パンチにより右眼に円形の50%深度の角膜欠損を作製した。次に、外科用クレセントナイフを使用して、表層角膜切除を行った。表層を取り除いた後、外科手術用マイクロスポンジを用いて欠損部表面を乾かした。次いで、10μlの生体接着剤溶液を染み込ませて、角膜欠損部を満たした。次いで、マイクロスポンジを用いて、余分な溶液を取り除いた。この直後に、(FocalSeal Xenon Light Source, Genzyme, 100 w/cm2を用いて)120秒間の青色光の適用を行い、生体接着剤を架橋した。Gel-COREの分解性および保持性を、以下に記載されるようにして、1、2および4週目に、細隙灯生体顕微鏡検査およびOCTを用いて評価した。
【0105】
2つの評価項目を、4週間の追跡期間中に評価した:(i)(虹彩細部の視認性に基づく、Fantes格付け尺度22を用いた細隙灯生体顕微鏡検査により評価される)光学的分解の尺度となる生体接着剤の透過性;および(ii)(以下に記載されるように、OCTによって測定される)生体接着剤の厚み。
【0106】
保持性は、分解性および接着性という2つのパラメータの関数である。分解および/または準最適な接着のいずれも、ゲルの保持性を喪失させ得る。保持性を測定するために、以下に記載されるように、OCT技術を使用して、4週間の追跡期間の間、(i)角膜欠損部を被覆する生体接着剤の存在、および(ii)生体接着剤と角膜上皮または間質の間の任意の隙間の間隔を評価した。
【0107】
細隙灯生体顕微鏡検査およびOCT画像化は、1週間の追跡期間の間はウサギの両眼について、その後は手術した眼のみについて、全身麻酔下で行った。細隙灯試験では、Topcon Slit Lampシステムを使用した。25xの倍率でならびにスリットおよびブロードビームを用いて、生体接着剤の透過性を(Fantes格付け尺度を用いて)評価した。試験の際に、細隙灯写真も撮影した。光干渉断層撮影(OCT)も用いた:これは、インビボで角膜の高解像度断面画像を提供する非接触型の画像化法である。この実験では、3.9~7μmの軸分解能のスペクトラルドメインOCT(Spectralis, Heidelberg Engineering, GmbH, Germany)を使用した。ライン走査(8 mm長)を、0、45、90および135度で、中心角膜において行った(図10A)。独自のOCTソフトウェアを用いて、(手術した眼における)生体接着剤のおよび(手術していない他眼における)角膜の厚み(ミクロン)を、角膜の中心および中心から両方向に1 mm離れた位置で測定した(図10B)。加えて、生体接着剤と角膜組織の間の任意の隙間の間隔を、ミクロン単位で測定した。細隙灯およびOCTの結果を、2つの眼の間および異なる時点で比較し、角膜欠損部におけるGel-COREの経時的な分解性およびその保持性を決定した。予備データに基づくと、Gel-COREは、インビトロで少なくとも30日間インタクトな状態で維持することができる。
【0108】
実施例6:Gel-COREの生体適合性および融合性
角膜修復に最適な生体接着剤は、角膜細胞に非毒性であるだけでなく、細胞がこの生体材料に長期的に融合でき、かつ押し出しを防げるようにすることである。Gel-COREのインビトロ細胞適合性および融合能を、角膜実質細胞および角膜上皮細胞を含む、角膜における2つの最も豊富に存在する細胞型を用いることによって決定した。角膜実質細胞および角膜上皮細胞を、2Dおよび3D培養システムを用いて培養した。Gel-COREの生体適合性および融合能を、角膜細胞に対する生体接着剤の影響および生体接着剤への角膜細胞の遊走を経時的に調査することによってインビボで評価した。
【0109】
予備的実験において、角膜細胞に対するGel-COREの適合性が実証された(図11A~11G)。角膜実質細胞は、代表的なGel-CORE組成物中に取り込まれ、2D培養システムを用いた場合、≧95%細胞生存率が、ならびにGel-COREコンストラクト上またはGel-COREコンストラクト内のいずれかで成長させた場合、角膜実質細胞の増殖および遊走が、示された(図11G)。
【0110】
Gel-COREの細胞適合性および細胞融合のインビトロ評価。角膜に対するGel-COREのインビトロ細胞適合性を評価するため、以下の実験を行った。角膜細胞を、37℃の5%CO2加湿インキュベーターにおいて、培養培地(10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン・ストレプトマイシンおよび1%グルタミン酸を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM))中で培養した。上皮細胞をGel-CORE上に播種し上皮単層を形成させる2D培養システムを使用した。さらに、3D培養システムを使用して、Gel-CORE内に角膜実質細胞を被包し、角膜組織を形成させた。
【0111】
2D培養においては、Gel-COREを、本明細書で詳述されているように可視光への暴露により構築した。次いで、このゲルに1 x 106~1 x 108細胞/mLの範囲の細胞密度の上皮細胞を播種し、14日間インキュベートした。培地を一日おきに交換した。細胞生存率を、カルセイン-AM/エチジウムホモダイマー生/死アッセイを使用することによって、第1、4、7および14日に評価した23。以前に説明されたように、アクチン/DAPI染色を用いて、細胞接着および拡散を評価した13,24-26。加えて、細胞の代謝活性を、第1、4、7および14日に、PrestoBlueアッセイを使用しその後にマイクロプレート分光光度計で吸光度を読み取ることによって評価した。加えて、第14日に、ヒドロゲル内への細胞の浸潤およびヒドロゲル内での成長を、組織学的分析によって調査した27~29。さらに、角膜上皮機能を維持する上でのその確認されている役割から、角膜上皮細胞におけるK12発現を分析した。上皮細胞は、ヒドロゲルの表面上で(ゲル内に浸透せずに)成長して、眼の保護に必要とされる高密度の細胞層を形成することが重要である。これらのインビトロ実験に基づき、Gel-COREは、非細胞傷害性であり(細胞生存率>90%)、細胞の代謝活性および接着を促進し、ゲル内への浸透が限定的であることが示された。
【0112】
3D培養においては、角膜実質細胞を、1 x 106~1 x 108細胞/mLの範囲の濃度でGelMAプレポリマー溶液と混合した。次いでこの混合物を光に暴露して細胞含有Gel-CORE接着剤を形成させた。次いでこのゲルをPBSで3回洗浄し、37℃の培養インキュベーターにおいて、培地中で14日間インキュベートした。細胞生存率(生/死アッセイ)、細胞接着および拡散(アクチン/DAPI)、増殖(Picogreenアッセイ)、コラーゲン沈着(Picrosirius Red)、ならびに角膜組織形成(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)を、第1、4、7および14日に評価した。これらの3D研究に基づき、Gel-COREは、細胞適合性であり、角膜組織形成を促進するであろうことが示された。
【0113】
角膜におけるGel-COREのインビボ生体適合性および融合能。ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、本明細書に記載されるように、50%深度角膜欠損を形成することによって使用した。ウサギを3グループに分けた:(i)Gel-COREグループ、このグループでは本明細書に記載されるように生体接着剤を使用して角膜欠損を充填した;(ii)シアノアクリレートグループ、このグループでは、穿孔を防ぐための角膜欠損の充填における標準治療(未承認ではあるが)であるシアノアクリレートのりを使用した。このために、10μlのシアノアクリレートのり(MSI-EpiDermGlu + Flex、Medisav Services, Canada)を適用して角膜欠損を充填し、その後ただちに柔らかい包帯コンタクトレンズを角膜上に設置した。(iii)対照グループ、このグループでは、角膜欠損を接着剤によって充填せず、1週間の間、予防用抗生物質(エリスロマイシン)軟膏を与えた。その後、ウサギを12週間追跡した。1、2、4および12週目に、Gel-COREの生体適合性および融合能ならびに角膜炎症および新血管形成の程度を、(以下に記載されるように)細隙灯生体顕微鏡検査およびIVCMを用いて評価し、他のグループと比較した。加えて、各時点で、グループあたり6匹のウサギを、組織学的(n=3)および免疫組織化学的評価(n=3)のための角膜の収集のために屠殺した。
【0114】
生体適合性評価のために、以下を評価項目とみなした:(i)(Fantes格付け尺度を用いて細隙灯生体顕微鏡検査によって評価される)接着剤/欠損周囲の角膜の透過性、ならびに(ii)(以下で詳述されるように、IVCM、組織学的染色および/または免疫組織化学染色によって測定される)生体接着剤周囲の角膜における上皮細胞、間質角膜実質細胞、炎症細胞および血管の密度。
【0115】
融合能の評価のために、以下を評価項目としみなした:(i)(Fantes格付け尺度を用いて細隙灯生体顕微鏡検査によって評価される)生体接着剤の透過性、(ii)(以下で詳述されるように、細隙灯生体顕微鏡検査、IVCMおよび組織学的染色により測定される)生体接着剤上での角膜上皮細胞の遊走の程度、ならびに(iii)(以下に記載される、IVCM、組織学的染色および/または免疫組織化学染色によって測定される)生体接着剤/角膜欠損領域内の間質角膜実質細胞、角膜神経、炎症細胞および血管の密度。
【0116】
細隙灯生体顕微鏡検査およびIVCMは、全身麻酔下で行った。本明細書に記載されるように、細隙灯試験および撮影を使用して、角膜および生体接着剤の透過性を評価した。加えて、生体接着剤上での上皮の遊走を評価するため、フルオレセイン染色を用いて細隙灯撮影を行い、生体接着剤上の角膜上皮欠損領域を、各時点でImage J's Measure Areaツールを用いて評価した。インビボ共焦点顕微鏡検査(IVCM)を用いて、同じウサギにおける経時的な細胞の変化および遊走を、この動物を屠殺せずに評価した。これは、生きた動物内の角膜から細胞レベルの高解像度画像を提供する非侵襲的画像化法である(図12A~12F)。この実験において、670 nmダイオードレーザーを用い、1μmの解像度を有するレーザー走査IVCM(Heidelberg Retina Tomograph 3 with Rostock Cornea Module, Heidelberg, Germany)を使用した。それは、400 x 400μmの角膜領域の画像を提供する。IVCMベースの読み取りのために、以下を走査し、試験した:(i)(生体接着剤、シアノアクリレートのりまたは対照グループにおいては元の欠損上の)1.5 mm中心角膜、および(ii)4分割した(上部、鼻部、下部、側部)、生体接着剤の周囲1 mmを取り囲む角膜組織。走査のために、1回のシークエンスあたり100枚の連続画像を自動的に取得するSequence Modeを使用した。手作業で進めることにより、各走査ですべての角膜層(上皮、間質および内皮)を画像化した。5ヵ所(中心、上部、鼻部、下部および側部)の各々において、2回のSequence Mode走査を行った。中心角膜における画像分析では、各走査において異なる深度から5枚の画像を無作為に選択した(計10枚の画像)。接着剤周囲の角膜における画像分析では、各角膜層(上皮、基底下層および間質)から無作為に選択される1枚の画像を、各々個々のシークエンス走査から選択した(1つの層あたり計8枚の画像)。分析のために、上皮細胞、基底下炎症細胞および間質角膜実質細胞の密度を、以前に記載されたように、Image Jソフトウェアを用いて盲検の観察者により測定した30~35。加えて、角膜神経の密度も、以前に報告されたようにNeuronJソフトウェアを用いて盲検の観察者により評価した30,36,37
【0117】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を用いた組織学的評価を、収集した角膜の凍結切片において行った。各角膜において、欠損/生体接着剤位置の両方およびその周囲の角膜組織を含む中心角膜から5つの切片を得た。画像分析では、すべての切片を盲検の観察者により評価させた。接着剤上での角膜上皮細胞の遊走を決定した。加えて、間質角膜実質細胞および炎症細胞の密度を、接着剤の縁部から200μmの周囲角膜の10ヵ所の無作為に選択された領域に加えて、接着剤内の(接着剤の中心および辺縁の両方における)10ヵ所の無作為に選択された領域において決定した。
【0118】
収集した角膜の凍結切片において、以下に対する抗体を用いて免疫組織化学染色も行った:βチューブリンIII(2G10 Ab;Abcam)、ベータ2(CD18)インテグリン(炎症細胞用L13/64;GeneTex)、およびCD31(血管用ポリクローナル抗CD31;Abcam)。これらの細胞の密度を、H&E染色について記載されたように、接着剤を適用したおよび周囲の角膜マトリクスの両方において盲検の観察者によって決定した。このために、接着剤内の10ヵ所の無作為に選択された領域および接着剤から200μm以内の周囲角膜の10ヵ所の無作為に選択された領域からの連続切片を分析に使用した。各測定で、平均および標準偏差(SD)を測定した。
【0119】
細隙灯、IVCM、組織学および免疫組織化学の結果を、各時点の3つのグループ間で比較し、角膜欠損の充填におけるGel-COREの生体適合性および融合能を決定した。Gel-COREグループと対照グループの間でのこれらの比較は、Gel-COREが、二次的治癒(これも対照として含まれる)から予想されたよりも多い炎症および組織損傷を引き起こしたのかそれとも少ないそれらを引き起こしたのかの決定を助けた。加えて、Gel-COREグループとシアノアクリレートグループの間の比較は、潜在的組織損傷が現在の標準治療用の接着剤と比較してGel-COREグループにおいて少ないかどうかを示した。各グループにおける、異なる時点の間の比較は、Gel-COREへの角膜細胞の融合が経時的に起こったかどうかおよび接着剤に起因する潜在的な組織損傷が経時的に弱まったかまたは悪化したかどうかを示した。
【0120】
実施例7:角膜間質欠損の急速かつ長期的修復のための新しい生体接着剤
その物理および接着特性を最適化するための生体接着剤の調整可能な特性の使用。データは、80~90%のメタクリロイル官能化度を有するGelMAプレポリマーが、光感作剤としてエオシンYを、開始剤としてトリエタノールアミン(TEOA)を、触媒としてビニルカプロラクタム(VC)を用いることによって効果的に架橋され、調整可能な物理的特性を有する安定なヒドロゲルを形成することができることを示している。架橋効率は光感作剤、開始剤および触媒の濃度に依存するので、これらの条件の体系的最適化が必須である。エオシンY、TEOAおよびVCの濃度を調整することによって、ネイティブの角膜と同等の引張および圧縮係数を有する配合物が生成されるよう、ヒドロゲルの重要な機械的特性を精密に制御することができる(図14A~14C、15Aおよび15B)。データに基づき、エオシンY(0.05 mM)、TEOA(0.4% w/v)およびVC(0.4% w/v)の最適濃度を、以下の実験で使用する。
【0121】
作製された生体接着剤の接着特性。標準的な破裂圧力試験を使用して、様々な可視光暴露時間で形成された20% w/v可視光架橋GelMAヒドロゲルの封鎖能力の総合評価を行った。このエクスビボ試験は、2mmの全層切開部を有するウサギ角膜の破裂圧力を測定するよう行った(図16Aおよび16B)。作製されたGelMAの破裂圧力は、健常な眼の約10倍の圧力である200 mmHgよりも高く、かつ市販の対照であるReSure(登録商標)の破裂圧力よりも有意に高かった(図16B)。
【0122】
平滑性、透過性および保持性のエクスビボ評価。外植されたウサギ角膜を用いてGelMA生体接着剤を評価するためのエクスビボ試験を実施した。生体接着剤を、ニュージーランドウサギの3 mm >50%深度の角膜欠損にエクスビボ適用した。このために、0.05 mMエオシンY、0.4% w/v TEOAおよび0.4% w/v VCを含む20% w/v GelMA溶液を使用した。この溶液を120秒間可視光に暴露し、角膜欠損上にヒドロゲル層を形成させ、これにより角膜間質への生体接着剤の強固な接着性が示された。加えて、この生体接着剤は、図17に示されるように、透過性であり、平滑な表面を有していた。
【0123】
この手順の後、眼を4℃のPBS中で維持した。生体接着剤における経時的変化を、細隙灯生体顕微鏡検査および前方部光干渉断層撮影(AS-OCT)による連続評価を用いて評価した。30日間の評価期間の間、生体接着剤は、すべての試験した眼において、本来の状態を維持し(厚みおよび拡散性が完全に保持され)、角膜に完全に付着した状態を維持したことが見出された。細隙灯生体顕微鏡検査は、この期間、この生体接着剤が平滑な表面を有する透明な状態を維持し、形状または輪郭にいかなる生体顕微鏡的変化も見られないことを示した(図18)。加えて、AS-OCTは、生体接着剤の厚みまたは形状に変化がないことを確認した。
【0124】
生体適合性および生体融合性のインビボ評価。ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、50%深度の角膜欠損を作製することによって使用した。ケタミンおよびキシラジンの筋内注射を用いた全身麻酔の後、右目に中心50%深度の角膜切り込みを作製し、その後に生体接着剤を適用した。光架橋の直後に、角膜欠損に対する生体接着剤の強固な接着が見られた。手術の1日後(図19A~19C)、生体接着剤は、透明であり、平滑な表面を有し、そして周囲の角膜は、透明であり、炎症を起こしていなかった。AS-OCTはまた、間質床への完全な接着を示した。手術1週間後(図19D~19F)、生体接着剤は依然として透明であり、生体接着剤上での角膜上皮の一定の遊走が見られた。
【0125】
手術実施2週間後の収集したウサギ角膜の組織学的評価は、生体接着剤上での上皮細胞の遊走および生体接着剤内への角膜実質細胞の遊走を示した(図20C)。加えて、予備的なIHC研究は、生体接着剤を用いずに治癒させた損傷角膜と比較して、GelMA生体接着剤で充填した角膜では、CD45+細胞の浸潤が20.9%減少したことを示した。
【0126】
実施例8:GelMAヒドロゲルの架橋
1HNMR分析。1HNMR分析を行い、1、2および4分間を含む様々な可視光暴露時間を用いることによって作製されたゼラチンメタクリロイル(GelMA)ヒドロゲルの架橋度を得た(図21)。1HNMR試験を実施するために、未架橋のGelMAプレポリマーおよび様々な可視光暴露時間で作製されたGelMAヒドロゲルを、重水素化DMSOに溶解させた。架橋度を定量するために、すべてのスペクトルをフェニルアラニンシグナル(δ=6.9~7.3 ppm)に対して正規化した。GelMA内のメタクリレート基のプロトンに関連するシグナルは、δ=5.30および5.64 ppmに位置するピークとして現れることが多数報告されている47,48。架橋度は、架橋プロセス後にメタクリレート化基内に残存するC=Cの比を表す次式により算出した:
【0127】
1HNMR結果。1HNMR分析に基づき、δ=5.30および5.64 ppmにおけるメタクリレート化基に関連するC=C結合の消失から架橋度を計算した。20%(w/v)GelMAヒドロゲルの架橋度は、それぞれ1分間の架橋時間における63.4±2.7から4分間における88.9±7.8に増加した(図22および表2)。さらに、10%(w/v)GelMA濃度では、1分間の反応時間後に、当初のメタクリレート化基の86.8±1.3が消費された(図22)。架橋度は、2分および4分後に、それぞれ90.7±0.2および92.9±2.2%であった。
【0128】
(表2)1HNMRスペクトルに基づく、様々な可視光暴露時間(1、2および4分間)で10%および20%(w/v)プレポリマー濃度を用いることによって作製されたGelMAヒドロゲルの架橋度の定量
【0129】
参照文献
【0130】
本願を通じて引用されている、参照文献、発行された特許、公開された特許出願および同時係属中の特許出願を含むすべての特許およびその他の刊行物は、説明および開示の目的で、例えば本明細書に記載される技術と組み合わせて使用され得るそのような刊行物に記載される方法論を説明および開示する目的で、明示的に参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、それらが本願の出願日より前に開示されていたために提供されるにすぎない。これに関するいかなる事情も、それらが先行発明であるためまたは何らかの他の理由で本発明者らがそのような開示よりも先の日付を主張する資格を有さないことの承認とはならない。日付に関する言及またはこれらの文献の内容に関する表示はすべて、出願人が入手し得た情報に基づいており、これらの文献の日付または内容が正確であることの承認とはならない。
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【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物。