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  • 特開-電解コンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100998
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20230711BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20230711BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/15
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080791
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021133816の分割
【原出願日】2016-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2015189454
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(57)【要約】
【課題】耐電圧特性と耐熱性に優れ、低ESRを維持できる電解コンデンサを提供する。
【解決手段】誘電体層を有する陽極体と、前記陽極体の前記誘電体層に接触した固体電解質層と、電解液と、を備え、前記電解液は、溶媒および溶質を含み、前記溶媒は、グリコール化合物を含み、前記溶質は、酸成分と、塩基成分と、を含み、前記溶質は、質量比で、前記塩基成分よりも多くの前記酸成分を含み、前記酸成分は、ヒドロキシル基を2個以上有する第1芳香族化合物(ただし、ハイドロキノンを除く)を含み、前記溶質に含まれる前記第1芳香族化合物の割合が、20質量%以上である、電解コンデンサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を有する陽極体と、前記陽極体の前記誘電体層に接触した固体電解質層と、電解液と、を備え、
前記電解液は、溶媒および溶質を含み、
前記溶媒は、グリコール化合物を含み、
前記溶質は、酸成分と、塩基成分と、を含み、
前記溶質は、質量比で、前記塩基成分よりも多くの前記酸成分を含み、
前記酸成分は、ヒドロキシル基を2個以上有する第1芳香族化合物(ただし、ハイドロキノンを除く)を含み、
前記溶質に含まれる前記第1芳香族化合物の割合が、20質量%以上である、
電解コンデンサ。
【請求項2】
誘電体層を有する陽極体と、前記陽極体の前記誘電体層に接触した固体電解質層と、電解液と、を備え、
前記電解液は、溶媒および溶質を含み、
前記溶媒は、グリコール化合物を含み、
前記溶質は、酸成分と、塩基成分と、を含み、
前記溶質は、質量比で、前記塩基成分よりも多くの前記酸成分を含み、
前記酸成分は、ヒドロキシル基を有する第1芳香族化合物を含み、
前記第1芳香族化合物は、芳香環に直接結合するカルボキシル基を有さず、
前記溶質に含まれる前記第1芳香族化合物の割合が、28.8質量%以上、95.3質量%以下である、
電解コンデンサ。
【請求項3】
前記溶媒に含まれる前記グリコール化合物の割合が、50質量%以上である、
請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記グリコール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、分子量190~400のポリエチレングリコールの内の少なくとも1つを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記グリコール化合物は、エチレングリコールを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記電解液のpHが4以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記第1芳香族化合物が、カテコールおよびピロガロールよりなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記電解液に含まれる前記第1芳香族化合物の割合が、0.1~30質量%である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記電解液に含まれる前記溶質の割合が、2~32質量%である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記酸成分が、更に、カルボン酸を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
前記カルボン酸の一部が、前記塩基成分との塩に由来する、
請求項10に記載の電解コンデンサ。
【請求項12】
前記カルボン酸が、カルボキシル基を2個以上有する第2芳香族化合物を含む、
請求項10または請求項11に記載の電解コンデンサ。
【請求項13】
前記第2芳香族化合物が、o-フタル酸およびピロメリット酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項12に記載の電解コンデンサ。
【請求項14】
前記塩基成分は、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンよりなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項1~13のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項15】
前記固体電解質層は、導電性高分子と、高分子ドーパントと、を含む、
請求項1~14のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質層と電解液を有する電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
小型かつ大容量で低ESR(Equivalent Series Resistance)のコンデンサとして、誘電体層を形成した陽極体と、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成された固体電解質層と、電解液とを具備する、電解コンデンサが有望視されている。
【0003】
固体電解質層には、π共役系の導電性高分子が用いられている。一方、電解液には、電解コンデンサの耐電圧特性を高める観点から、エチレングリコールとγ-ブチロラクトンを含む溶媒を用いることが提案されている(特許文献1参照)。なお、火花電圧を上昇させるために、電解液に酸化防止剤を添加することなども提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/021333号 公報
【特許文献2】特開2006-114540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解コンデンサには、耐電圧特性の他に、低ESR、耐熱性なども要求される。耐電圧とともに耐熱性を向上させる観点からは、電解液の溶質に酸を含ませるとともに、グリコール化合物を電解液の溶媒に用いることが望ましいと考えられる。しかし、溶媒としてグリコール化合物を用いる場合、100℃以上で長期の負荷試験を行うと、初期は低ESRが発揮されるものの、期待されるよりも早期にESRが急激に増大する傾向がある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、耐電圧特性および耐熱性に優れ、低ESRを維持できる電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、誘電体層を有する陽極体と、前記陽極体の前記誘電体層に接触した固体電解質層と、電解液と、を備え、前記電解液は、溶媒および溶質を含み、前記溶媒は、グリコール化合物を含み、前記溶質は、酸成分と、塩基成分と、を含み、前記溶質は、質量比で、前記塩基成分よりも多くの前記酸成分を含み、前記酸成分は、ヒドロキシル基を有する第1芳香族化合物を含む、電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐電圧特性および耐熱性に優れ、低ESRを維持できる電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
図2】同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極体と、誘電体層に接触した固体電解質層と、電解液とを備える。電解液は、溶媒および溶質を含み、溶媒は、グリコール化合物を含み、溶質は、酸成分と、塩基成分と、を含む。ただし、溶質は、質量比で、塩基成分よりも多くの酸成分を含み、酸成分は、ヒドロキシル基を有する第1芳香族化合物を含む。
【0011】
溶媒がグリコール化合物を含むことで、固体電解質層に含まれる導電性高分子の配向性もしくは結晶性が高められる。これにより、固体電解質層の導電性が向上し、電解コンデンサのESRが低くなる。また、固体電解質層と誘電体層とのコンタクト性が向上し、耐電圧特性も向上する。導電性高分子は、グリコール化合物により膨潤すると考えられる。膨潤状態の導電性高分子は、再配列を起こしやすいため、配向性もしくは結晶性が向上するものと考えられる。
【0012】
上記構成によれば、電解コンデンサの耐熱性もしくは耐リップル性の向上も期待できる。グリコール化合物は、電解コンデンサから外部に揮散しにくいためである。電解液の揮散は、電解コンデンサのシール部で発生するが、グリコール化合物は、シール部を透過しにくいと考えられる。
【0013】
溶媒に含まれるグリコール化合物の割合は、50質量%以上であることが望ましく、60質量%以上であることがより望ましく、70質量%以上であることが更に望ましい。電解液がグリコール化合物を主溶媒として含むことで、電解コンデンサのESRを低減する効果と、耐熱性を向上させる効果が大きくなる。
【0014】
グリコール化合物は、少なくともエチレングリコールを含むことが望ましい。また、溶媒が複数種のグリコール化合物を含む場合、エチレングリコールがグリコール化合物の主成分であることが望ましい。エチレングリコールは、グリコール化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解しやすい。また、エチレングリコールは、熱伝導性が高く、リップル電流が発生したときの放熱性にも優れているため、耐熱性を向上させる効果も大きい。
【0015】
グリコール化合物に占めるエチレングリコールの割合は、30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上、更には70質量%以上であることがより望ましく、グリコール化合物は100質量%がエチレングリコールであってもよい。
【0016】
グリコール化合物は、エチレングリコール以外に、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、分子量190~400程度のポリエチレングリコールなどを含んでもよい。例えば、溶媒の3~25質量%が、分子量200~300のポリエチレングリコールであってもよい。これにより、電解コンデンサの耐熱性を更に向上させることができる。
【0017】
酸成分は、初期から電解液のpHを低下させ、導電性高分子からのドーパントの脱ドープを抑制する。導電性高分子からのドーパントの脱ドープは、固体電解質層の劣化の原因の1つと考えられる。固体電解質層が劣化すると、ESRが上昇するとともに、破壊耐電圧が低下する傾向がある。固体電解質層の劣化を抑制するためには、質量比で、塩基成分よりも酸成分を多く含むことが必要である。すなわち、酸成分の量は、塩基成分100質量部に対して、100質量部を超えることを要し、130質量部以上であることが望ましい。
【0018】
ただし、電解液が塩基成分よりも多くの酸成分を含む場合であっても、溶媒がグリコール化合物を含む場合には、長期的に導電性高分子を安定化させることは困難であり、期待されるよりも早期にESRが急激に増大する傾向がある。
【0019】
これに対し、溶質にヒドロキシル基を有する第1芳香族化合物を含ませることで、初期だけでなく、長期的に、電解コンデンサのESRを低く維持することができる。その理由は、第1芳香族化合物のヒドロキシル基には、導電性高分子を長期的に安定化させる作用があると考えられる。このような作用には、第1芳香族化合物のヒドロキシル基が弱酸性を示すことや、第1芳香族化合物のヒドロキシル基が安定であり、例えばエステル化反応などの副反応を進行させにくい点が関連していると考えられる。
【0020】
酸成分は、第1芳香族化合物に加え、カルボン酸を含んでもよい。ただし、不十分な量のカルボン酸と第1芳香族化合物とを併用すると、第1芳香族化合物によるESRの上昇を抑制する効果が低下することがある。また、副反応の進行を抑制しつつ、初期特性と長期特性とをバランスよく向上させる観点からは、第1芳香族化合物が酸成分の相当な割合を占めることが望ましい。例えば、第1芳香族化合物の量は、酸成分の30~100質量%を占めることが望ましく、36~100質量%を占めることがより望ましい。
【0021】
電解液が第1芳香族化合物を含まない場合、ESRの上昇を抑制するためには、電解液に多量のカルボン酸を添加することが必要であり、少なくとも塩基成分の2倍以上の質量のカルボン酸が必要である。副反応の抑制、原料コストの低減などを考慮すると、多量のカルボン酸を用いる代わりに、第1芳香族化合物を用いることが望ましい局面も多い。
【0022】
第1芳香族化合物の芳香環は、電解液の粘度上昇を抑制する観点から、C6のベンゼン環またはC10のナフチル環であることが望ましい。また、第1芳香族化合物は、長期的安定性を有する点で、芳香環に直接結合するフェノール性のヒドロキシル基を1個以上有することが望ましく、例えばフェノール、ジブチルヒドロキシルトルエン、クレゾール、メトキシフェノール、オイゲノール、グアイアコール、チモール、カテコール、ピロガロールなどを用いることが好ましい。これらの中でも、フェノール性のヒドロキシル基を2個~4個有する2価~4価のフェノール性化合物が好ましい。より具体的には、第1芳香族化合物として、カテコールおよびピロガロールよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが更に好ましい。適度な酸性を呈する点で、ピロガロールが特に好ましく、第1芳香族化合物の90質量%以上がピロガロールであることが望ましい。
【0023】
フェノール性のヒドロキシル基を有する芳香族化合物であっても、芳香環に直接結合するカルボキシル基を有する化合物は、カルボキシル基が比較的強い酸性を示す。特に、水酸基に隣接するオルト位のカルボキシ基を有する化合物(例えばサリチル酸)は、強い酸性を示す。理由は明らかではないが、このような化合物を用いても、長期間にわたって導電性高分子を安定化させる効果を有さず、長期的にESRの上昇を抑制することは困難である。よって、第1芳香族化合物は、芳香環に直接結合するカルボキシル基を有さない化合物であることを要する。
【0024】
電解液に含まれる第1芳香族化合物の割合は、電解コンデンサの耐熱性をより高め、固体電解質層の劣化をより抑制する観点から、0.1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましい。また、同様の観点から、第1芳香族化合物の割合は、溶質全体の20~95質量%であることが望ましく、30~90質量%であることがより望ましい。
【0025】
電解液のpHは6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.8以下もしくは3.6以下であることが更に好ましい。電解液のpHを4以下とすることで、導電性高分子の劣化が更に抑制される。通常、pH4以下の領域では、陽極体が腐食すると考えられているが、上記電解液の場合、陽極体の腐食も抑制される。なお、pHは2.0以上であることがより好ましい。
【0026】
第1芳香族化合物と併用し得るカルボン酸としては、フェノール性水酸基を有さず、かつカルボキシル基を2個以上有する芳香族化合物(第2芳香族化合物)が好ましい。第2芳香族化合物のカルボキシル基は、比較的安定であり、副反応を進行させにくい。よって、第2芳香族化合物は、比較的長期間にわたって、導電性高分子を安定化させる効果を発現する。また、第2芳香族化合物は、電解液中で適度な酸性を呈することから、陽極体を腐食により損傷する可能性も低い。
【0027】
第2芳香族化合物の芳香環は、電解液の粘度上昇を抑制する観点から、C6のベンゼン環またはC10のナフチル環であることが望ましい。また、第2芳香族化合物は、適度な酸性を呈する点で、2価~4価のカルボン酸が好ましく、カルボキシル基が安定化されやすい点で、芳香環のオルト位に直接結合するカルボキシル基を少なくとも2個以上有することが更に望ましい。より具体的には、第2芳香族化合物としては、o-フタル酸およびピロメリット酸よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが更に好ましい。カルボキシル基が安定化されやすく、より長期間にわたって導電性高分子を安定化させる効果を発現する点で、o-フタル酸が特に好ましく、第2芳香族化合物の90質量%以上がo-フタル酸であることが望ましい。
【0028】
カルボン酸の一部は、塩基成分との塩に由来してもよい。すなわち、溶質の一部として、カルボン酸と塩基成分との塩を用いてもよい。このような塩を用いることで、カルボン酸の解離度を向上させる効果が得られる。例えば、カルボン酸の10質量%~50質量%は、塩基成分との塩に由来することが望ましい。
【0029】
塩基成分は、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。アミン成分、特に第1~3級アミンを用いることで、ESRを長期的に安定化する効果が高められる。第4級アミンを用いてもよいが、副反応をできるだけ抑制する観点からは、適度な塩基性を示す第1~3級アミンが望ましい。各アミンとして、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどを用いることができるが、分子量72~102の脂肪族アミンが、解離度が高い点で好ましい。
【0030】
第1~3級アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、4-ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、トリエチルアミン、モノエチルジメチルアミンなどの第3級アミンが特に好ましい。
【0031】
電解液に含まれる溶質の割合は、固体電解質層の劣化を長期的に抑制する効果が得られやすい点で、2~32質量%であることが望ましく、2~10質量%であることが更に望ましい。例えば、第1芳香族化合物と、塩基成分と、カルボン酸(もしくは第2芳香族化合物)と、の合計量は、電解液の2~32質量%であることが望ましく、2~10質量%であることが更に望ましい。
【0032】
カルボン酸の量は、塩基成分100質量部に対して、200質量部を超えることが好ましいが、カルボン酸が多すぎると、第1芳香族化合物を用いることのメリットが低減する。よって、カルボン酸の量は、塩基成分100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましい。
【0033】
また、カルボン酸もしくは第2芳香族化合物の量は、溶質全体の60質量%以下であることが望ましく、50質量%以下であることがより望ましい。これにより、副反応が抑制
され、例えば、長期間使用中の電解コンデンサ内での水分の増加量を低減することができる。
【0034】
溶媒は、グリコール化合物以外に、例えば、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物などを含むことができる。スルホン化合物としては、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを用いることができる。ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどを用いることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
固体電解質層は、モノマー、ドーパントおよび酸化剤などを含有する溶液を誘電体層に付与し、その場で、化学重合もしくは電解重合させる方法で形成してもよい。ただし、優れた耐電圧特性を期待できる点で、導電性高分子を誘電体層に付与する方法により、固体電解質層を形成することが好ましい。すなわち、固体電解質層は、液状成分と、液状成分に分散する導電性高分子とを含む高分子分散体(特に、導電性高分子と高分子ドーパントとを含む高分子分散体)を、誘電体層に含浸させ、誘電体層の少なくとも一部を覆う膜を形成した後、その膜から液状成分を揮発させることにより形成されたものであることが好ましい。上記電解液は、高分子分散体に含まれる導電性高分子の劣化の抑制に特に効果的であり、配向性の向上にも効果的である。
【0036】
高分子分散体に含まれる導電性高分子の濃度は、0.5~10質量%であることが好ましい。また、導電性高分子の平均粒径D50は、例えば0.01~0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、動的光散乱法による粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。このような濃度の高分子分散体は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、誘電体層に含浸されやすい。
【0037】
固体電解質層に含まれる導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。固体電解質層が、このような導電性高分子を含むことにより、耐電圧特性のさらなる向上が期待できる。
【0038】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【0039】
導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~100000である。
【0040】
導電性高分子からのドーパントの脱ドープを抑制する観点から、固体電解質層は高分子ドーパントを含むことが望ましい。高分子ドーパントとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのポリアニオンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が好ましい。
【0041】
高分子ドーパントの重量平均分子量は、特に限定されないが、均質な固体電解質層を形成しやすい点で、例えば1000~100000であることが好ましい。
【0042】
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0043】
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
【0044】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線とコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、電解液(図示せず)とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
【0045】
封止部材12は、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。ゴム成分としては、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ハイパロンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができる。封止部材12は、カーボンブラック、シリカなどのフィラーを含んでもよい。
【0046】
電解液の設計においては、シール部を形成する封止部材12を介した電解液の外部への揮散を考慮する必要がある。この点、本実施形態に係る上記電解液は、グリコール化合物を含むため、高温下でもシール部を透過しにくい。よって、耐熱性に優れた電解コンデンサが得られる。
【0047】
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、表面に誘電体層を有する陽極体21と陰極体22との間に、固体電解質層が形成されていないものをいう。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。
【0048】
陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
【0049】
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。誘電体層の表面の少なくとも一部に、導電性高分子を付着させることにより、固体電解質層が形成される。固体電解質層は、陰極体22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。固体電解質層が形成されたコンデンサ素子10は、電解液とともに、外装ケースに収容される。
【0050】
≪電解コンデンサの製造方法≫
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
【0051】
(i)誘電体層を有する陽極体21を準備する工程
まず、陽極体21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0052】
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
【0053】
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層を形成する。形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
【0054】
通常、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21が準備される。
【0055】
(ii)陰極体22を準備する工程
陰極体22には、陽極体と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陰極体22の表面を粗面化してもよい。
【0056】
(iii)巻回体の作製
次に、陽極体21および陰極体22を用いて巻回体を作製する。
【0057】
まず、陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A、15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A、15Bを巻回体から植立させることができる。
【0058】
セパレータ23の材料は、例えば、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
【0059】
リードタブ15A、15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bの各々に接続されるリード線14A、14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
【0060】
次に、巻回された陽極体21、陰極体22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極体22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極体22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体21の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
【0061】
(iv)コンデンサ素子10を形成する工程
次に、高分子分散体を、誘電体層に含浸させ、誘電体層の少なくとも一部を覆う膜を形成する。高分子分散体は、液状成分と、液状成分に分散する導電性高分子とを含む。高分子分散体は、液状成分に導電性高分子が溶解した溶液でもよく、液状成分に導電性高分子の粒子が分散した分散液でもよい。次に、乾燥により、形成された膜から液状成分を揮発させることにより、誘電体層の少なくとも一部を覆う緻密な固体電解質層が形成される。高分子分散体は、液状成分中に均一に分布しているため、均一な固体電解質層を形成しやすい。これにより、コンデンサ素子10が得られる。
【0062】
高分子分散体は、例えば、液状成分に導電性高分子を分散させる方法、液状成分中で前駆体モノマーを重合させ、導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。好ましい高分子分散体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、すなわちPEDOT/PSSが挙げられる。なお、導電性高分子の酸化防止剤を添加してもよいが、PEDOT/PSSは、ほとんど酸化しないため、酸化防止剤を用いる必要はない。
【0063】
液状成分は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、1,4-ジオキサンなどのエーテル類などが例示できる。非プロトン性溶媒としては、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが例示できる。
【0064】
高分子分散体を誘電体層の表面に付与する方法としては、例えば、容器に収容された高分子分散体に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体のサイズにもよるが、例えば1秒~5時間、好ましくは1分~30分である。また、含浸は、減圧下、例えば10~100kPa、好ましくは40~100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。また、高分子分散体に浸漬させながら、巻回体または高分子分散体に超音波振動を付与してもよい。高分子分散体から巻回体を引上げた後の乾燥は、例えば50~300℃で行うことが好ましく、100~200℃で行うことがより好ましい。
【0065】
高分子分散体を誘電体層の表面に付与する工程と、巻回体を乾燥させる工程とは、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、誘電体層に対する固体電解質層の被覆率を高めることができる。このとき、誘電体層の表面だけでなく、陰極体22およびセパレータ23の表面にも固体電解質層が形成されてもよい。
【0066】
以上により、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質層が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、誘電体層の表面に形成された固体電解質層は、事実上の陰極材料として機能する。
【0067】
(v)コンデンサ素子10に電解液を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、電解液を含浸させる。これにより、誘電体層の修復機能に優れた電解コンデンサが得られる。コンデンサ素子10に電解液を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、容器に収容された電解液にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒~5分である。含浸は、減圧下、例えば10~100kPa、好ましくは40~100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
【0068】
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A、14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0069】
次に、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0070】
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
【0071】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0072】
《実施例1~6》
本実施例では、定格電圧100V、定格静電容量15μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ(直径)8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
【0073】
(陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、誘電体層を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに60Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、(縦)6mm×(横)120mmとなるように裁断して、陽極体を準備した。
【0074】
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、(縦)6mm×(横)120mmとなるように裁断して、陰極体を準備した。
【0075】
(巻回体の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極体と陰極体とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極体の切断された端部に誘電体層を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
【0076】
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、高分子ドーパントであるポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水(液状成分)に溶かし、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながら、イオン交換水に溶かした硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。反応後、得られた反応液を透析し、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、約5質量%のPSSがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)を含む高分子分散体を得た。
【0077】
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、誘電体層の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を形成した。
【0078】
(電解液の含浸)
グリコール化合物としてエチレングリコール(EG)と、分子量約300のポリエチレングリコール(PEG)とを含み、第1芳香族化合物としてピロガロールを含む、表1に示す組成の電解液を調製し、減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液にコンデンサ素子を5分間浸漬した。なお、カルボン酸(o-フタル酸)の少なくとも一部は、塩基成分(トリエチルアミン)との塩(フタル酸トリエチルアミン)として添加した。
【0079】
【表1】
【0080】
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材(ゴム成分としてブチルゴムを含む弾性材料)をコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサ(A1~A6)を完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。電解コンデンサA1~A6は、それぞれ実施例1~6に対応する。
【0081】
《比較例1》
ピロガロールを用いず、かつ溶媒100質量部に対するo-フタル酸の量を4.2質量部に変更した表2に示す組成の電解液を用いたこと以外、実施例6と同様に電解コンデンサB1を作製し、同様に評価した。
【0082】
《比較例2》
溶媒100質量部に対するピロガロールの量を0.5質量部に変更し、かつo-フタル酸の量を1.6質量部に変更した表2に示す組成の電解液を用いたこと以外、実施例6と同様に電解コンデンサB2を作製し、同様に評価した。
【0083】
【表2】
【0084】
《実施例7~11》
溶媒の組成を表3に示すように変更したこと以外、実施例1と同様に電解コンデンサA7~11を作製し、同様に評価した。
【0085】
【表3】
【0086】
[評価]
得られた電解コンデンサについて、静電容量、ESR、破壊耐電圧(BDV)を測定した。破壊耐電圧(BDV)は、1.0V/秒のレートで昇圧しながら電圧を印加し、0.5Aの過電流が流れるときの電圧を測定した。
【0087】
更に、長期信頼性を評価するために、定格電圧を印加しながら125℃で5000時間保持し、ESRの増加率(ΔESR)を確認した。ΔESRは、初期値(X0)に対する5000時間保持後のESR(X)の比(X/X0)で示した。評価結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、誘電体層の少なくとも一部を被覆する固体電解質層と、電解液とを具備する、電解コンデンサに利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ
図1
図2