(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101027
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/107 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61B3/107
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083937
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2018137124の分割
【原出願日】2018-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 永
(57)【要約】
【課題】角膜表面からの反射像からアーチファクトを除去する。
【解決手段】 本明細書に開示の眼科装置は、角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、パターン投影光の角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、撮影された撮影画像から、当該撮影画像に含まれるアーチファクトを除去する画像処理部を備える。パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で配置されると共に、第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでいる。画像処理部は、撮影された撮影画像内の各画素の輝度を当該画素から第1及び第2方向に拡張した近傍領域内の画素群の輝度の平均値とすることで、アーチファクトを除去する。平均値の算出は、第1方向については、画素の偏差の絶対値和を最小にするシフト位置までの範囲を平均化領域とし、第2方向については予め設定された範囲を平均化領域として実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、
前記投影部により投影された前記パターン投影光の前記角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された撮影画像から、当該撮影画像に含まれるアーチファクトを除去する画像処理部と、を備えており、
前記パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で第1の数だけ配置されると共に、前記第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでおり、
前記撮影画像は、前記複数のパターン光に対応する複数のパターン像を含んでおり、
前記画像処理部は、撮影された撮影画像内の各画素の輝度を当該画素から前記第1方向及び前記第2方向に拡張した近傍領域内の画素群の輝度の平均値とすることで、前記撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像を生成し、
前記修正画像は、所定の間隔で配置される第2の数の前記パターン光に対応する前記パターン像を含んでおり、
前記平均値の算出は、前記第1方向については、画素の偏差の絶対値和を最小にするシフト位置までの範囲を平均化領域とし、前記第2方向については予め設定された範囲を平均化領域として実行する、眼科装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記撮影部で撮影された前記撮影画像に含まれる複数のパターン像のそれぞれについて、当該パターン像と、当該パターン像に対応するアーチファクトが除去されたパターン像と、の間で位置ずれ及び/又は輝度変化が生じている変調箇所を特定し、
前記特定した変調箇所と、前記撮影画像とを重ね合わせた被検眼の画像を生成する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記画像処理部によって生成された被検眼の画像を表示する表示部をさらに備える、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
被検眼の角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、
前記投影部により投影された前記パターン投影光の前記角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、
前記角膜表面からの反射像を所定の時間間隔で前記撮影部に繰り返し撮影させる制御部と、
前記撮影部で撮影された撮影画像を処理する画像処理部と、を備えており、
前記パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で配置されると共に、前記第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでおり、
前記撮影画像は、前記複数のパターン光に対応する複数のパターン像を含んでおり、
前記画像処理部は、
前記撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とを比較することで、当該撮影画像内の前記パターン像の変調箇所を特定し、
前記特定した変調箇所を表示する変調箇所表示画像を生成する、眼科装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像について特定された前記変調箇所と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とに基づいて、被検眼の涙液層の状態を表示する擬似フルオレセイン画像を生成する、請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
特定された前記変調箇所が前記修正画像内の前記パターン像上に位置するときは、当該パターン像上にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成し、
特定された前記変調箇所が前記修正画像内の隣接する前記パターン像の間に位置するときは、当該隣接するパターン像の間にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成する、請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、所定の時間間隔で撮影された複数の撮影画像のそれぞれについて、前記変調箇所表示画像を生成する、請求項4~6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、眼科装置に関する。詳しくは、角膜表面に投影されたパターン投影光の角膜表面からの反射像を撮像する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜表面や角膜形状等を観察するために、角膜表面に光を投影し、そのパターン投影光の角膜表面からの反射像を撮影する眼科装置(例えば、ケラトメータ、角膜形状解析装置等)が知られている。この種の眼科装置では、通常、角膜表面にリング状の光(パターン投影光の一種)を投影し、そのパターン投影光の角膜表面からの反射像を観察・撮影・解析することで、角膜表面の状態や角膜形状等を測定している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角膜表面からの反射像を撮影した画像には、角膜表面の涙液層が不安定となることによる画像の乱れや、まつ毛の影等の混入による画像の乱れが含まれることがある。このような画像の乱れ(いわゆる、アーチファクト)が含まれていると、撮影した反射像の解析を適切に行うことができない。本明細書は、撮影した画像からアーチファクトを除去し、反射像の解析を好適に行うことができる眼科装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する眼科装置は、被検眼の角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、投影部により投影されたパターン投影光の角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、撮影部で撮影された撮影画像から、当該撮影画像に含まれるアーチファクトを除去する画像処理部と、を備えている。パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で第1の数だけ配置されると共に、第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでいる。撮影画像は、複数のパターン光に対応する複数のパターン像を含んでいる。画像処理部は、撮影された撮影画像内の各画素の輝度を当該画素から第1方向及び第2方向に拡張した近傍領域内の画素群の輝度の平均値とすることで、撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像を生成する。修正画像は、所定の間隔で配置される第2の数のパターン光に対応する前記パターン像を含んでいる。平均値の算出は、第1方向については、画素の偏差の絶対値和を最小にするシフト位置までの範囲を平均化領域とし、第2方向については、前記近傍領域内で画素の偏差の絶対値和を最小にするシフト位置までの範囲を平均化領域として、第2方向の各画素についての平均化領域の総平均として算出する。
【0006】
上記の眼科装置では、被検眼の角膜表面に、第1方向に所定の間隔で配置された複数のパターン光が投影される。このため、撮影画像に乱れがなければ、それらパターン光の反射像も第1方向に所定の間隔で配置されることになる。一方、涙液層の不安定化やまつ毛の影の混入は部分的に発生するため、一部のパターン像に乱れが生じても、他のパターン像には歪みが生じていないことが多い。また、歪みが生じたリング像も部分的に歪みが生じている場合が多い。上記の眼科装置では、撮影された撮影画像内の各画素の輝度を、当該画素から第1方向及び第2方向に拡張した近傍領域内の平均化領域画素群の輝度の平均値とする。これによって、撮影画像内のアーチファクトを好適に除去でき、パターン像を用いた解析を好適に行うことができる。
【0007】
上記の眼科装置において、投影されるパターンは、線分間隔が等しい同心円、間隔が等しい平行線分、同一の形状で満たされた図形群などから構成してもよい。この場合、パターンを構成する複数の線分を含む特定の領域を設定したときに、その特定領域を近傍にずらすことで容易に合同領域を特定することができる構成になるパターンを設定する。例えば、投影するパターンを同心円とする場合、中心から外側に等間隔で並ぶパターン方向(径方向)を第1方向とし、回転方向(周方向)を第2方向とすることができる。あるいは、投影するパターンを平行線分とする場合、等間隔でならぶ線分方向を第1方向とし、第1方向に直交する線分方向を第2方向とすることができる。あるいは、投影するパターンを同一形状で満たされた図形群とする場合、処理の複雑さを避けるために、図形を構成する線分単位で考え、各線分は近傍図形の該当線分と等間隔の平行線分であるものとする。よって同様に平行線分の並び方向を第1方向とし、これに直交する方向を第2方向とすることができる。この場合、複数の第1方向が存在することになる。また、画像処理部は、例えば、画像上のすべての画素について、この画素を中心とする第1方向の特定幅の小領域と、この特定の小領域を画素単位で第1方向にシフトさせて、この特定の小領域内とシフトさせた特定の小領域内の画素の偏差の絶対値和を最小にするシフト位置を見つけ、そのシフトさせた平均化領域で初めの小領域を置き換えてもよい。そして、上記の処理を第2方向について予め設定した範囲について、1画素ずつ離れた位置で同様に第1方向についてシフトさせた平均化領域を同定して、すべての領域から得られる平均値で初めの小領域の平滑化処理を行ってもよい。
【0008】
上記の眼科装置では、画像処理部は、撮影部で撮影された撮影画像に含まれる複数のパターン像のそれぞれについて、当該パターン像と、当該パターン像に対応するアーチファクトが除去されたパターン像と、の間で位置ずれ及び/又は輝度変化が生じている変調箇所を特定してもよい。そして、特定した変調箇所と、撮影画像とを重ね合わせた被検眼の画像を生成してもよい。撮影された撮影画像において、アーチファクトが除去された修正画像と比較して、パターン像の位置ずれ及び/又は輝度変化が生じている箇所は、涙液層に乱れが生じている箇所とみなすことができる。このため、撮影された撮影画像に位置ずれ及び/又は輝度変化が生じている箇所を、その程度に応じて配色して重ね合わせると、涙液層の乱れの状態を容易に把握することができる。
【0009】
また、本明細書は、涙液層の経時的な変化を非侵襲で検査することができる眼科装置を開示する。本明細書に開示する他の眼科装置は、被検眼の角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、投影部により投影されたパターン投影光の角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、角膜表面からの反射像を所定の時間間隔で撮影部に繰り返し撮影させる制御部と、撮影部で撮影された撮影画像を処理する画像処理部と、を備えている。パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で配置されると共に、第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでいる。撮影画像は、複数のパターン光に対応する複数のパターン像を含んでいる。画像処理部は、撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とを比較することで、当該撮影画像内の前記パターン像の変調箇所を特定し、その特定した変調箇所を表示する変調箇所表示画像を生成する。
【0010】
この眼科装置では、被検眼の角膜表面からの反射像が所定の時間間隔で繰返し撮影される。すなわち、時間の経過に伴って涙液層の状態が変化すると、その変化に応じて反射像が変化し、その変化した反射像が所定の時間間隔で繰返し撮影される。したがって、所定の時間間隔で撮影された反射像を解析することで、涙液層の経時的な変化を検出することができる。ここで、涙液層に乱れが生じると、反射像に歪みや輝度変化が生じることから、撮影された画像と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とを比較することで、涙液層に乱れが生じている箇所(変調箇所)を特定することができる。この眼科装置では、所定の時間間隔で連続して撮影した各画像を、当該画像からアーチファクトを除去した修正画像と比較することで、涙液層の状態の経時的な変化を好適に検出することができる。また、角膜表面に投影された光の反射像を撮影するだけなので、非侵襲で涙液層の経時的な変化を検出することができる。
【0011】
本明細書に開示する他の眼科装置では、画像処理部は、撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像について特定された変調箇所と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とに基づいて、被検眼の涙液層の状態を表示する擬似フルオレセイン画像を生成してもよい。このような構成によると、擬似的なフルオレセイン画像を生成することで、ドライアイの診断を非侵襲で行うことができる。
【0012】
本明細書に開示する他の眼科装置では、画像処理部は、特定された変調箇所が修正画像内のパターン像上に位置するときは、当該パターン像上にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成してもよい。また、特定された変調箇所が修正画像内の隣接するパターン像の間に位置するときは、当該隣接するパターン像の間にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成してもよい。このような構成によると、涙液層が破綻した領域(ブレイク領域)を適切な位置に形成することができる。
【0013】
本明細書に開示する他の眼科装置では、画像処理部は、所定の時間間隔で撮影された複数の撮影画像のそれぞれについて、変調箇所表示画像を生成してもよい。このような構成によると、所定の時間間隔で変調箇所表示画像が生成され、涙液層の経時的な変化を視覚で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例に係る眼科装置の光学系の全体構成を示す模式図。
【
図2】
図1に示す眼科装置の制御系の構成を示すブロック図。
【
図3】角膜表面に形成される涙液層の時間的変化を測定するためのフローチャート。
【
図4】角膜表面からの反射像を撮影した画像(すなわち、原画像)の一例を示す図。
【
図5】
図4に示す原画像を極座標変換した極座標変換画像の一例を示す図。
【
図6】
図5に示す極座標変換画像の歪みを修正した修正画像の一例を示す図。
【
図7】修正画像に含まれる複数の反射像の各輝度を修正する処理を説明するための図(1)。
【
図8】修正画像に含まれる複数の反射像の各輝度を修正する処理を説明するための図(2)。
【
図9】修正画像に含まれる複数の反射像の各輝度を修正する処理を説明するための図(3)。
【
図10】修正画像に含まれる複数の反射像の各輝度を修正する処理を説明するための図(4)。
【
図11】撮影された原画像と、歪みが修正された基準画像との差分を示す差分画像の一例を示す図。
【
図12】
図11に示す差分画像から、反射像が変調した箇所を抽出した変調箇所抽出画像の一例を示す図。
【
図13】
図12で抽出された変調箇所を、撮影された原画像に重畳した変調箇所重畳画像の一例を示す図。
【
図14】変調箇所を再マッピングした画像の一部拡大図。
【
図15】撮影された原画像の一部を拡大して示す図。
【
図16】
図15に示す原画像から生成した疑似フルオレセイン染色画像を示す図。
【
図17】撮影された他の原画像の一部を拡大して示す図。
【
図18】
図17に示す原画像から生成した疑似フルオレセイン染色画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施例に係る眼科装置(角膜形状解析装置)について説明する。
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼Cの角膜に対向して位置決めされるコーン(01)と、コーン(01)の背面に配置された照明装置(02)(例えば、LED等)を備えている。コーン(01)は、内部が中空の円錐形状の筒体であり、透明樹脂によって形成されている。コーン(01)の内壁面には同心円状のパターンが印刷された透明フィルムが貼り付けられる一方で、コーン(01)の外壁面には光を反射する塗装が施されている。したがって、コーン(01)の背面に配置された照明装置(02)による照明光は、コーン(01)内で散乱し、内壁面に貼り付けられた透明フィルムによって光の一部が遮られ、被検眼Cの角膜に投影される。これによって、被検眼の角膜には、
図4に示すような同心円状のパターン光(リング光)が投影される。なお、コーン(01)によって所望のパターンを投影する方法としては、コーン(01)の内側に所望のパターンを直接切削し、その部分に遮光性の塗装を施す方法を採ることもできる。
【0016】
照明装置(02)の背面にはレンズ(03)及びハーフミラー(04)が配置される。ハーフミラー(04)には、固視灯点光源(06)の光がレンズ(05)を介して入射するようになっている。固視灯点光源(06)の光は、ハーフミラー(04)で反射され、レンズ(03)を透過してコーン(01)に入射する。コーン(01)に入射した光は、コーン(01)の中央開口部から被検眼Cの角膜に照射される。固視灯点光源(06)の光は、角膜観察時の固視灯として用いられ、コーン(01)によって形成される同心円状パターンの中心に位置するように調整される。また、被検眼Cの角膜表面で反射された光(すなわち、角膜表面に投影された同心円状パターンの光の反射像(リング像)と、固視灯の光の反射光の反射像)は、コーン(01)、レンズ(03)及びハーフミラー(04)を透過し、レンズ(07)によって焦点調整が行われた後にCCDカメラ(08)で観察される。
【0017】
なお、上述した眼科装置で角膜形状を正確に計測するためには、被検眼Cの角膜頂点を中心とする同心円状にリングパターンを投影することが好ましい。このためには、角膜形状計測時には固視灯点光源(06)を点灯し、その光を被検者に固視させる。検査者はCCDカメラ(08)で観察される固視灯点光源(06)の光が画像中央となるように、被検眼Cに対して光学系の位置を調整する。これによって、被検眼Cの角膜頂点を中心とする同心円状にリングパターンの光(リング光)を投影することができる。
【0018】
上述した眼科装置の制御系の構成について説明する。
図2に示すように、眼科装置の制御はコントローラ(12)によって行われている。コントローラ(12)は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータによって構成することができる。コントローラ12には、CCDカメラ(08)、撮影開始スイッチ(11)、入力装置(13)及びメモリ(10)が接続されている。撮影開始スイッチ(11)と入力装置(13)は検査者によって操作される。検査者が撮影開始スイッチ(11)を操作すると、コントローラ(12)は所定のプログラムを起動して、角膜表面に形成される涙液層の時間経過に伴う変化量を測定する。なお、CCDカメラ(08)によって撮影された画像データはコントローラ(12)に入力され、メモリ(10)等に記憶される。
【0019】
また、コントローラ(12)には、照明装置(02)、固視灯点光源(06)及び表示装置(09)が接続されている。コントローラ(12)は、照明装置(02)及び固視灯点光源(06)のON/OFFを行い、また、CCDカメラ(08)で撮影された画像等を表示装置(09)に表示する。
【0020】
次に、上述した眼科装置を用いて角膜表面に形成される涙液層の時間的変化を測定する手順について説明する。
図3に示すように、まず、検査者は被検眼の前眼部の画像を撮影する(S10)。具体的には、検査者は固視灯点光源(06)を点灯し、被検者に固視灯を固視するよう指示する。固視灯点光源(06)が点灯されると、CCDカメラ(08)で観察される画像が表示装置(09)に表示される。次に、検査者は表示装置(09)に表示される被検眼の前眼部が画面上の中央に位置するように(すなわち、固視灯点光源(06)による反射光が角膜Cの中央に位置決めされるように)、被検眼Cに対して光学系の位置調整を行う。光学系の位置調整が終了すると、照明装置(02)を点灯し、被検眼Cの角膜表面に同心円状のリング光を投影する。次に、検査者は、被検者にいったん閉瞼させて均質な涙液層を角膜表面に形成させ、被検者が開瞼すると同時に撮影開始スイッチ(11)を操作する。これによって、コントローラ(12)は、CCDカメラ(08)を操作して、角膜表面からの反射像の撮影を行う。
【0021】
次に、コントローラ(12)は、CCDカメラ(08)で撮影した画像を解析する処理を行う(S12~S26)。すなわち、本実施例では、撮影開始スイッチ(11)が操作されてから10秒が経過するまで、1秒間に15枚のフレームレートで角膜表面からの反射像を撮影する。そして、撮影した画像のそれぞれに対してステップS12~S26の処理を実行する。
図4にはCCDカメラ(08)で撮影された画像(すなわち、原画像)の一例が示されている。なお、撮影開始スイッチ(11)が操作されてから10秒が経過する(すなわち、撮影処理が完了する)までは検査者には瞬目をしないように指示される。
【0022】
以下、ステップS12~S26の処理を詳細に説明する。まず、コントローラ(12)は、撮影した画像内のリング像の中心を認識し(S12)、その中心を原点として極座標変換を行う(S14)。本実施例では、周方向に1°ごと、半径方向に240ピクセルの画像に変換する。
図4に示すように、取得された画像には同心円状に複数のリング像が撮影されている。このため、リング像の中心を原点として極座標変換すると、
図5に示す画像(極座標変換画像)が得られる。
図5から明らかなように、極座標変換画像では、リング像は上下方向(y方向)に伸びる直線に変換される。リング像が直線状に伸びる像(以下、直線像ということがある)に変換されるため、ステップS16以降の処理を簡単に行うことができる。ただし、この画像は角膜表面からの反射画像であるため、乱視の程度や軸角度、また中心認識のずれによって三角関数で代表されるようなある方向に長軸と短軸をもつ曲線状になる場合もある。なお、ステップS12のリング像の中心認識には、例えば、最も中心に位置するリング像(すなわち、半径の最も小さなリング像)を用いて行うことができる。あるいは、原画像に固視灯の光が写っている場合は、固視灯の光を中心としてもよい。なお、ステップS12のリング像の中心は、公知の角膜形状解析(角膜トポグラフィ)を行うための中心と一致する必要はない。
【0023】
次に、コントローラ(12)は、ステップS14で極座標変換した画像の修正を行う(S16)。ステップS10で撮影された画像(
図4に示す原画像)には、不安定な涙液層によって画像(リング像)の乱れや、まつ毛の影の混入によるリング像の一部欠損が生じている。このため、ステップS14で得られた極座標変換画像の直線像にも乱れや一部欠損が生じている。例えば、
図5に示す画像には、不安定な涙液層による乱れが生じた領域(A,Cに示す領域)や、まつ毛の影の混入によるリング像の一部欠損が生じた領域(Bに示す領域)が含まれている。ステップS16では、極座標変換画像の直線像に生じている乱れや一部欠損等のアーチファクトを修正(除去)する。
【0024】
すなわち、極座標変換画像内の各画素の輝度を、当該画素から半径方向(第1方向の一例)及び周方向(第2方向の一例)に拡張した近傍領域内の類似度合いが高い複数の平均化領域内の画素群の輝度の平均をとることで、画像を復元する。本実施例では、被検眼Cの角膜表面に同心円状に配置された複数のリング光が照射される。このため、リング像に乱れや一部欠損が生じていなければ、極座標変換した直線像は上下方向(y方向)に伸びる略直線状の像となる。このため、半径方向(x方向)の位置が同一であれば、角度が変わっても近傍角度においてはリング間距離は大きく変化しないと考えられる。また、被検眼に乱視があったとしても、角度方向についてリング間距離が大きく変化することはないと考えられる。そこで、本実施例では、リング像に歪みや欠損が無い部分では、ほとんど変化することがない一方で、リング像に歪みや欠損がある部分では、歪みが補正されると共に、欠損が補填される。
【0025】
なお、平均値の算出は、単純な平均値ではなく、各画素の近傍で平均値を算出する範囲を変えながら最も誤差量の小さい平均化領域を特定する。すなわち、周方向の角度aで半径rの位置の輝度をP(a,r)とすると、数1に示す差分の絶対値|P(a,r+r’)-P(a,r+h+r’)|の和を最小にするhを求め、求めたhを用いて半径方向の加算範囲(すなわち、半径方向の平均化領域r+h-w~r+h+w)を設定する。さらに、角度範囲については予め設定された角度範囲だけ拡張する。このように設定された平均化領域内の平均値で置き換えることで、各画素の輝度を算出する。
【数1】
【0026】
図6に上記の手順で修正された修正画像が示されている。
図5と
図6の比較から明らかなように、修正画像では直線像の歪みが修正され、また、まつ毛の影による直線像の一部欠損も消失している。なお、修正画像においても、画像下部において直線像に歪みが残っている。これは修正前の画像(
図5)において直線像が大きく崩れているためであると考えられるが、実用上は問題ないレベルにまで修正されている。なお、
図6に示す修正画像では、角度方向0°、180°方向にあるリングの切り欠き部分が少しずれて補填されているが、これは欠落が始まる位置から外側にはデータが存在しないためである。また、上下の眼瞼によってデータが欠落している領域は修復する必要がないため、この部分の修復は行われていない。
【0027】
次に、コントローラ(12)は、ステップS16で修正された修正画像に基づいて、涙液層の状態を診断するための擬似的なフルオレセイン染色画像の生成を行う(S18~26)。フルオレセイン染色画像は、ドライアイ検査において一般的に使用され、涙液層が破綻する程度に応じて染色部分の輝度が低下する方向に変移するようになっている。一方、本実施例で撮影される同心円状のリング像は、涙液層が破綻する程度に応じてリング像の輝度低下やリング像の位置変位といった現象が生じる。これらの現象は同一の原因によって生じるため、リング像の輝度低下や位置変位を検出し、これらを染色部分の輝度低下に変換することで、撮影したリング像からフルオレセイン染色画像(すなわち、疑似フルオレセイン染色画像)を生成する。なお、ステップS18~26の処理は、撮影画像及びステップS16で修正した修正画像から上下の眼瞼にかからない領域を切り出し、その切り出した領域に対して実施している。
【0028】
フルオレセイン染色画像を生成するために、まず、コントローラ(12)は、ステップS16によって修正された修正画像の輝度補正を行い(S18)、また、ステップS16によって修正される前の極座標変換画像の輝度補正を行う(S20)。本実施例では、涙液層の不安定化によるリング像の輝度低下や位置変位を検出するために、ステップS16で修正された修正画像と、ステップS16で修正される前の極座標変換画像(以下、修正前画像ということがある)とを比較する。2つの画像を適切に比較するために、まず、各画像の輝度を補正する。
【0029】
具体的には、まず、ステップS16で修正された修正画像について、角度毎に、「半径方向の位置」と「輝度」との関係を示す輝度波形を取得し、その最大値と最小値を包括する包括直線を算出する(
図7参照)。ここで、修正画像用の包括直線に、修正前画像の上下限値が含まれるものと仮定し、修正前画像用の包括直線を作成する。すなわち、修正前画像の上下限値が修正画像の包括直線を超える場合は、修正前画像の上下限値を採用して、修正画像の包括直線を補正して修正前画像用の包括直線を作成する。また、ステップS16で修正された修正画像は、リング像の位置が正しい位置に修正されている。涙液層の乱れによるリング像の歪みがなければ、修正前画像のリング像の位置と修正画像のリング像の位置とは一致し、大きくずれていないと考えられる。このため、修正画像のピーク位置の近傍で修正前画像のリング像のピーク位置を検出する。このようにして作成された修正前画像用の包括直線を
図8に示す。
図7、8から明らかなように、一部のリング像については、修正前画像のピーク高さが修正画像のピーク高さよりわずかに高くなっている。
【0030】
次に、コントローラ(12)は、作成した包括直線を使用して、予め設定した輝度範囲(例えば、グレイレベル20~200(フルスパン:グレイレベル0~255))となるように輝度波形を拡張する。なお、輝度波形の拡張は、フルスパンより狭い範囲で行うことが好ましい。フルスパンより狭い範囲で拡張することで、計算過程において輝度が上下限値を超えてしまうことを防止することができる。
図9に修正画像の輝度波形を拡張したものを示し、
図10に修正前画像の輝度波形を拡張したものを示す。図から明らかなように、ステップS18,20の処理によって、各リング像のピーク高さが略同一となるように正規化されている。なお、
図10に示す修正前画像の輝度波形において、一部のリング像のピークが少し低くなっているが、これは涙液層の不安定さ等によるためである。
【0031】
次に、コントローラ(12)は、ステップS20で輝度補正した修正前画像からステップS18で輝度補正した修正画像を差し引くことで、変調箇所抽出画像を生成する(S22)。すなわち、涙液層の状態に全く変化がなければ、ステップS20で輝度補正した修正前画像のリング像の輝度及び位置は、ステップS18で輝度補正した修正画像のリング像の輝度及び位置と同一となる。逆に、涙液層の不安定化によってリング像の輝度及び位置が変化すると、それらが2つの画像の変調箇所となる。ステップS22では、2つの画像の差分をとることで、涙液層の変化した部分(変調箇所)を抽出する。
【0032】
図11にステップS20で輝度補正した修正前画像(原画像)と、ステップS18で輝度補正した修正画像(基準画像)との差分画像を示す。
図11に示すように、差分画像には、リング部分がホワイトまたはブラックの単色にプロットされている部分と、x方向にホワイト及びブラックのペアでプロットされた部分がある。ホワイト又はブラックの単色でプロットされた部分は、輝度変化によるものであって、リング像の位置変位は生じていない部分である。一方、ホワイト及びブラックのペアでプロットされた部分は、リング像の位置がx方向に変位した部分である。したがって、差分画像において各画素の輝度を予め設定された閾値と比較することで、ホワイト又はブラックにプロットされる部分を抽出でき、これらのパターンからリング像の輝度変化及び/又は位置変位が生じたか否かを判定することができる。
図12に、
図11に示す差分画像に基づいて、変調箇所を抽出した画像が示されている。
図12に示すように、涙液層の不安定化による変調が生じていることがうまく抽出されている。
【0033】
次に、コントローラ(12)は、ステップS22で生成した変調箇所抽出画像を直交座標へ変換して眼画像上にプロットする(S24)。ステップS24で生成した画像を
図13に示す。
図13に示すように、変調箇所が眼画像上にプロットされることで、眼のどの位置で涙液層の不安定化が生じているかを容易に把握することができる。なお、
図13に示す画像ではリング像が除去されていないが、リング像を除去した画像を生成してもよい。すなわち、撮影した画像からリング像を除去し、そのリング像を除去した画像上に変調箇所抽出画像を重畳してもよい。リング像を除去すると、虹彩や瞳孔の境界(エッジ)を認識し易くなるため、角膜上のどの位置で変調箇所が生じているかを認識し易くなる。
【0034】
次に、コントローラ(12)は、ステップS10で撮影した画像からフルオレセイン染色画像に相当する画像(以下、疑似フルオレセイン染色画像ということがある)を生成する(S26)。すなわち、ステップS24の処理によって、涙液層の変調箇所(修正前画像と修正画像との変調箇所)が特定されている。このため、涙液層が破綻した領域(変調箇所)の経時的変化を把握でき、例えば、隣接する破綻領域が結合する態様や、単独スポットが出現する態様を認識することができる。これらのデータと実際に撮影された眼画像を重畳することで、疑似フルオレセイン染色画像を生成する。すなわち、変調の程度に応じてフルオレセインに類似した色調で諧調の異なる表現を用いて、実際に撮影された眼画像に重畳して疑似フルオレセイン染色画像を生成する。
【0035】
ここで、ステップS26の疑似フルオレセイン染色画像を生成する手順の一例について、具体的に説明する。ステップS24の処理によって生成される画像内の変調箇所は、リング像に基づくものであるため、画像内に離散的に計測される。一方、実際のフルオレセイン染色画像は、涙液を染色したものであるため、滑らかにつながれた二次元像となる。このため、本実施例では、複数のリング像が投影されるドーナツ状の領域(最内周のリング像と最外周のリング像とで囲まれた領域)を複数の領域に分割し、この分割領域毎に変調箇所を再マッピングする。ドーナツ状の領域の分割は、周方向には等角度間隔となり、半径方向にはリング像が分割領域の中心を通過するように分割する。分割領域を十分に小さくすることで、疑似フルオレセイン染色画像(
図14参照)は実際のフルオレセイン染色画像に近似したものとなる。なお、半径方向及び周方向に細かく分割して補間処理を行うことで、画像の解像度を上げてもよい。
【0036】
また、
図15~18を用いて、実際に撮影されたリング像と、そのリング像から生成した疑似フルオレセイン染色画像の一例を対比して説明しておく。
図15に示すように、リング像を撮影した画像では、リング間にうっすらと明るいドット領域(図面の中央に示す領域A)が出現し、このドット領域Aの外側のリング像が外側に変位し、このドット領域の内側のリング像が内側に変位している。
図16に示す疑似フルオレセイン染色画像では、外側及び内側のリング像の変位に対応して、2本のリング像の間を中心に暗いブレイク領域Aが作成されている。このように、2本のリング像が外側・内側の対称方向に変位し、かつ、2本のリング像が形状的にはあまり変形していない場合、変調を受けているリング間を中心に暗いブレイク領域Aを作成するように、染色画像への変換を行う。
【0037】
図15に示す状態から時間が経過すると、
図17に示すように、上記したドット領域が下方に変位する。その結果、外側のリング像が下方に移動して元の位置に戻り、内側のリング像の形状そのものが崩れる(
図17に示す領域C)。ただし、崩れた内側のリング像の内側のエッジは残存している。また、図面の左上方には、新たに2本のリング像(
図17に示す領域A,B)に歪みが発生し、外側のリング像(
図17に示す領域A)は2本に分離している。
図18に示す疑似フルオレセイン染色画像の領域Cのように、出現時にリング像のエッジがほぼ外側、内側に対称にスロープを維持しながら、リング像の中心はあまり変位を受けない場合は、リング像上の解析点を中心に暗いブレイク領域を作成するように、染色画像への変換を行う。ブレイク領域の暗さは、ステップS24の解析プロット図での解析値に応じて決定する。また、新たに出現した2本のリング像の歪みに対応して暗いブレイク領域(
図18のA,Bに示す領域)が作成されている。ブレイク領域の暗さ(輝度)は、変調の程度に応じて調整されている。
図16,18から明らかなように、本実施例の眼科装置によると、実際のフルオレセイン染色画像と同等の疑似フルオレセイン染色画像が生成されている。このため、検査者は、表示装置(09)に表示される疑似フルオレセイン染色画像に基づいて、被検眼Cの涙液層の状態やドライアイ状態を判定することができる。
【0038】
次に、コントローラ(12)は、撮影開始スイッチ(11)が操作されてから予め設定された設定時間(例えば、10秒)が経過したか否かを判定する(S28)。撮影を開始してから10秒が経過したときは(S28でYES)、そのまま撮影処理を終了する。撮影を開始してから10秒が経過していないときは(S28でNO)、ステップS10に戻って、ステップS10からの処理を繰り返す。これによって、撮影を開始してから設定時間となるまで、所定の時間間隔でCCDカメラ(08)によって角膜表面からの反射像が撮影され、撮影された画像について擬似フルオレセイン染色画像が作成される。このため、涙液層が破綻した領域(変調箇所)の経時的変化を把握でき、例えば、隣接する破綻領域が結合する態様や、単独スポットが出現する態様を認識することができる。
【0039】
上述した説明から明らかなように、本実施例の眼科装置では、撮影された画像内のリング像の歪みや一部欠損が修正され、歪みや一部欠損のないリング像(すなわち、アーチファクトが除去された撮影画像)が取得される。このため、リング像を用いた解析(例えば、角膜形状解析、角膜曲率測定等)を精度良く行うことができる。
【0040】
また、本実施例では、各撮影時点で撮影された撮影画像からアーチファクトを除去した画像を取得し、そのアーチファクトを除去した画像と原画像とを比較して、リング像の位置ずれ等の変調箇所を検出する。このため、リング像の位置ずれ等を精度良く検出することができ、涙液層の状態を精度良く判断することができる。すなわち、撮影時点が異なる画像を比較してリング像の位置ずれを検出する場合、撮影時点が異なることによって被検眼Cがわずかに移動や回転等をしていると、リング像の位置ずれを正しく検出することができない。本実施例では、比較する2つの画像の撮影時点が同一となるため、上記のような問題が生じることはなく、リング像の位置ずれ等を精度良く検出することができる。
【0041】
また、本実施例の眼科装置では、被検眼Cの角膜表面から反射されたリング像を撮影した画像から擬似フルオレセイン画像を生成する。すなわち、非侵襲で撮影された画像に基づいて、侵襲検査で得られるフルオレセイン画像を生成する。このため、ドライアイ診療で一般的に行われているフルオレセイン染色によるブレークアップタイプ別診療を、非侵襲検査によって実施することができる。
【0042】
以上、本実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本明細書に開示の技術は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0043】
例えば、上述した実施例では、撮影した画像(原画像)に基づいてリング像の歪みを修正した修正画像を生成し、その修正画像と原画像とを比較することで変調箇所を抽出した。しかしながら、変調箇所の抽出は、開瞼直後に撮影した画像と、各撮影時点で撮影された画像とを比較して、変調箇所を抽出するようにしてもよい。開瞼直後は涙液層が安定しており、リング像に歪みが発生していない。このため、開瞼直後の撮影画像を基準画像として用いることによっても、リング像の位置ずれを検出することができる。
【0044】
また、上述した実施例では、被検眼の角膜表面に同心円状に配置された複数のリング光を投影したが、被検眼の角膜表面に投影するパターン光はリング光に限られない。例えば、縦線、横線、グリッドなど、ある間隔で形作られた任意のパターンで角膜表面を覆うパターン光を用いることができる。このようなパターン光を用いた場合でも、適当な分割領域を設定することで、その領域を近傍においてずらしても類似度の高い領域を容易に見つけることができる。このため、上述した実施例と同様の解析を行うことができる。
【0045】
また、上述した実施例では、撮影した画像を極座標変換し、極座標変換した画像を用いてその後の解析を行ったが、このような形態に限られない。例えば、撮影した画像をそのまま解析して、リング像の位置ずれ等を検出してもよい。
【0046】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
01:コーン
02:照明装置
03:レンズ
04:ハーフミラー
06:固視灯点光源
08:CCDカメラ
10:メモリ
12:コントローラ
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜表面にパターン投影光を投影する投影部と、
前記投影部により投影された前記パターン投影光の前記角膜表面からの反射像を撮影する撮影部と、
前記角膜表面からの反射像を所定の時間間隔で前記撮影部に繰り返し撮影させる制御部と、
前記撮影部で撮影された撮影画像を処理する画像処理部と、を備えており、
前記パターン投影光は、第1方向に所定の間隔で配置されると共に、前記第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数のパターン光を含んでおり、
前記撮影画像は、前記複数のパターン光に対応する複数のパターン像を含んでおり、
前記画像処理部は、
前記撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とを比較することで、当該撮影画像内の前記パターン像の変調箇所を特定し、
前記特定した変調箇所を表示する変調箇所表示画像を生成する、眼科装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記撮影部により撮影された撮影画像について、当該撮影画像について特定された前記変調箇所と、当該撮影画像からアーチファクトが除去された修正画像とに基づいて、被検眼の涙液層の状態を表示する擬似フルオレセイン画像を生成する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
特定された前記変調箇所が前記修正画像内の前記パターン像上に位置するときは、当該パターン像上にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成し、
特定された前記変調箇所が前記修正画像内の隣接する前記パターン像の間に位置するときは、当該隣接するパターン像の間にブレイク領域が形成された擬似フルオレセイン画像を生成する、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、所定の時間間隔で撮影された複数の撮影画像のそれぞれについて、前記変調箇所表示画像を生成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科装置。