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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010103
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230113BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 27/00 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230113BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L21/88 J
H01L21/82 L
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L27/00 301B
H01L23/36 Z
H01L25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113963
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 隆之
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 慎二
【テーマコード(参考)】
5F033
5F038
5F048
5F064
5F136
【Fターム(参考)】
5F033GG02
5F033HH00
5F033HH07
5F033HH08
5F033HH11
5F033HH13
5F033HH14
5F033HH15
5F033HH18
5F033HH21
5F033HH32
5F033HH33
5F033JJ01
5F033JJ07
5F033JJ08
5F033JJ11
5F033JJ13
5F033JJ15
5F033JJ18
5F033JJ21
5F033JJ33
5F033KK00
5F033KK08
5F033KK11
5F033KK13
5F033KK14
5F033KK15
5F033KK18
5F033KK21
5F033KK32
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5F033MM01
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5F033MM05
5F033MM13
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5F033MM30
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5F033PP15
5F033PP26
5F033PP27
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5F033QQ11
5F033QQ13
5F033QQ47
5F033QQ48
5F033QQ73
5F033RR03
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR08
5F033SS15
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5F033VV05
5F033VV07
5F033VV10
5F033WW01
5F033XX22
5F038AC05
5F038AC10
5F038AC15
5F038CA05
5F038CA06
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5F038CD02
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5F038CD14
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5F038EZ13
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5F038EZ20
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5F048BA01
5F048BA15
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5F048CB02
5F048CB03
5F048CB04
5F064AA11
5F064AA13
5F064BB09
5F064BB13
5F064BB35
5F064CC23
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5F064EE15
5F064EE31
5F064EE32
5F064EE43
5F064EE52
5F136BA30
5F136DA13
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA23
5F136FA25
(57)【要約】
【課題】電源安定化と放熱性能の向上とを両立した半導体装置の提供。
【解決手段】本半導体装置は、基板と、前記基板上に配置された半導体チップと、を有し、前記基板は、前記半導体チップ側に開口する溝を備え、前記溝の内側に、絶縁層を介して所定パターンの配線部が設けられ、前記基板は前記半導体チップのグランド配線に接続され、前記配線部は前記半導体チップの電源配線に接続され、前記配線部は、前記基板の背面から露出していない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源グランド層と、
前記電源グランド層上に配置された半導体チップと、を有し、
前記電源グランド層は、
前記半導体チップ側に開口する溝を備えた基板と、
前記溝の内側に絶縁層を介して配置された所定パターンの配線部と、を含み、
前記基板は前記半導体チップのグランド配線に接続され、前記配線部は前記半導体チップの電源配線に接続され、
前記配線部は、前記基板の背面から露出していない、半導体装置。
【請求項2】
前記所定パターンは、平面視でメッシュ状のパターンである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板は、底部と、前記底部を囲む側壁部と、前記底部上の前記側壁部で囲まれた領域に互いに離隔して配置された複数の柱状部と、を有し、
各々の前記柱状部は、前記メッシュ状のパターンの開口部内に配置されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板と前記絶縁層と前記配線部との間でデカップリングキャパシタが形成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板と前記半導体チップのグランド配線との接続、及び前記配線部と前記半導体チップの電源配線との接続は、前記半導体チップに設けられた貫通電極により行われ、
前記基板又は前記配線部と接続される前記貫通電極の端面の面積の合計は、前記半導体チップの背面の面積の2%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板はシリコンから形成され、
前記シリコンの体積は、前記シリコンと前記配線部との合計の体積に対して60%以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記配線部は金属層を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属層はポーラス状である、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記配線部は、前記半導体チップ側に位置する金属層、及び前記金属層の下層に位置するカーボン層を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
縦断面視で、前記カーボン層の面積は、前記カーボン層と前記金属層の合計の面積に対して10%以上である、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記カーボン層は、カーボンナノチューブ又はグラフェン片を含み、前記金属層は銅を含む、請求項9又は10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記電源グランド層と前記半導体チップとの間に、前記配線部の配線よりも高密度の配線を備えた接続配線部が配置されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
平面視で、前記電源グランド層上の異なる位置に複数の半導体チップが配置され、
前記電源グランド層と各々の前記半導体チップとの間に、前記配線部の配線よりも高密度の配線を備えた接続配線部が配置され、
各々の前記半導体チップ間は、前記接続配線部により接続されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記配線部は、平面視で、互いに絶縁された複数の系統に分割され、
それぞれの系統の前記配線部は、前記半導体チップの異なる系統の電源配線に接続される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記電源グランド層は、平面視で、前記半導体チップより大きい、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、一般に、世代が進むと集積度が上がり、それに伴う負荷容量低減と電源電圧低下によって回路規模当たりの消費電力が低下する。一方、集積度が上がった場合に、それに伴って発熱密度が下がるとは限らず、むしろ発熱密度は上昇する傾向にある。今後の半導体装置には、電源安定化と放熱性能の向上が求められる。
【0003】
従来の半導体装置として、例えば、シリコン基板を背面側から加工して、シリコン基板の背面側に電源用の金属配線を形成し、金属配線の下面をシリコン基板の背面から露出させた構造が知られている。この電源用の金属配線は、シリコン基板に設けられた貫通配線により、他の配線と接続される(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Sonoda, et al., in Proc. IEDM 2020 , 35.1, pp. 685-688, Dec. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構造の半導体装置では、ある程度の電源安定化は可能であるが、熱散逸機構を有していないため、放熱効果はあまり期待できない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、電源安定化と放熱性能の向上とを両立した半導体装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本半導体装置は、基板と、前記基板上に配置された半導体チップと、を有し、前記基板は、前記半導体チップ側に開口する溝を備え、前記溝の内側に、絶縁層を介して所定パターンの配線部が設けられ、前記基板は前記半導体チップのグランド配線に接続され、前記配線部は前記半導体チップの電源配線に接続され、前記配線部は、前記基板の背面から露出していない。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、電源安定化と放熱性能の向上とを両立した半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図2】電源グランド層を例示する平面図である。
図3】電源グランド層を例示する斜視図である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その4)である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その5)である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その6)である。
図10】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その7)である。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その8)である。
図12】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その9)である。
図13】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その10)である。
図14】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その11)である。
図15】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その12)である。
図16】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その13)である。
図17】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置を例示する断面図である。
図18】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図19】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図20】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図21】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置を例示する断面図である。
図22】第1実施形態の応用例1に係る半導体装置を例示する斜視図である。
図23】第1実施形態の応用例2に係る半導体装置を例示する平面図である。
図24】第1実施形態の応用例3に係る半導体装置を例示する平面図である。
図25】第1実施形態の応用例4に係る半導体装置を例示する平面図である。
図26】第1実施形態の応用例5に係る半導体装置を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[半導体装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。図1を参照すると、第1実施形態に係る半導体装置1は、電源グランド層10と、電源グランド層10上に絶縁層20を介して順次積層された半導体チップ30及び30とを有する。半導体チップ30及び30は、主面(電極パッド形成側の面)を同一方向に向けて積層されている。半導体装置1において、異なる層の半導体チップ同士は、貫通電極36の接続により、信号伝達および電力供給が可能である。電源グランド層10上に、3層以上の半導体チップを積層してもよい。また、電源グランド層10上に配置される半導体チップは、積層体には限定されず、1層であってもよい。或いは、平面視で、電源グランド層10上の異なる位置に複数の半導体チップを配置してもよい。この場合も、半導体チップは、積層体でも良いし、1層でも良いし、半導体チップの積層体と1層の半導体チップとが混在してもよい。
【0012】
図2は、電源グランド層を例示する平面図である。図3は、電源グランド層を例示する斜視図であり、半導体チップのグランド配線と接続される基板と、半導体チップの電源配線と接続される配線部とを分解して模式的に示している。なお、図1では、電源グランド層を図2及び図3よりも簡略化して描いている。
【0013】
図1図3を参照すると、電源グランド層10は、基板11と、配線部12とを含む。基板11は、導電性の板状体に半導体チップ30側に開口する溝115を形成した構造である。基板11は、底部111と、底部111を囲む枠状の側壁部112と、底部111上の側壁部112で囲まれた領域に互いに離隔して配置された複数の柱状部113とを有する。
【0014】
各々の柱状部113は、例えば、縦横に配列されて互いに離隔されている。各々の柱状部113の平面形状は、例えば、正方形であるが、長方形、円形等の任意の形状とすることができる。各々の柱状部113の上面は、側壁部112の上面と、ほぼ同一平面上にある。各々の柱状部113と側壁部112との隙間、及び隣接する柱状部113同士の隙間が溝115である。
【0015】
基板11の材料としては、例えば、シリコンやダイアモンドのような、比較的硬度の高い半導体材料を用いることが、強度を確保できる点で好ましい。基板11の厚さTは、例えば、100μm以上300μm以下である。底部111の厚さTは、例えば、10μm以上30μm以下である。隣接する柱状部113の間隔Sは、例えば、10μm以上30μm以下である。
【0016】
基板11がシリコンから形成される場合、シリコンの体積は、シリコンと配線部12との合計の体積に対して60%以下であることが好ましい。これにより、導体部による高い熱伝導性が得られる。
【0017】
配線部12は、基板11の溝115の内側に、図示しない絶縁層を介して配置されている。つまり、配線部12は、絶縁層により、基板11と絶縁されている。なお、基板11と配線部12との間に、絶縁層及びバリア層を設けてもよい。基板11と絶縁層と配線部12との間でデカップリングキャパシタが形成されている。これにより、半導体装置1の電源を安定化することができる。
【0018】
配線部12は、複数の開口部125を有する縦横に形成されたパターンであり、各々の開口部125内には基板11の柱状部113が配置されている。配線部12の上面は、基板11の側壁部112の上面、及び各々の柱状部113の上面と、ほぼ同一平面上にある。配線部12は、基板11の背面から露出していない。つまり、半導体装置1の背面は、基板11の底部111のみからなる。
【0019】
配線部12の複数の開口部125を有するパターンは、例えば、平面視でメッシュ状のパターンである。ここで、メッシュ状とは、交差する配線により複数の開口部125が形成される形状を指すものとする。交差する配線は、必ずしも直線でなくてもよい。また、交差する配線は、必ずしも直交していなくてもよい。なお、交差する配線が直線であって互いに直交する場合を、本願では特に格子状と称する。
【0020】
開口部125の平面形状は、柱状部113の平面形状に合わせて、例えば、正方形、長方形、円形等の任意の形状とすることができる。なお、図2の例では、配線部12は、左右方向に配置された直線状の複数の配線と、上下方向に配置された直線状の複数の配線とが交差する格子状に形成されており、各々の開口部125の平面形状ほぼ正方形である。
【0021】
配線部12の材料としては、例えば、銅のような、比較的電気伝導性と熱伝導性の高い金属材料を含むことが、電気的特性及び放熱性能を確保できる点で好ましい。配線部12の材料として、銅以外に、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属を用いてもよい。配線部12の厚さは、基板11の溝115の深さと同じである。隣接する柱状部113に挟まれた部分の幅は、隣接する柱状部113の間隔Sと同じであり、例えば、10μm以上30μm以下である。
【0022】
図1の説明に戻り、半導体チップ30は、絶縁層20を介して、電源グランド層10上に積層されている。また、半導体チップ30は、半導体チップ30上に積層されている。絶縁層20の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等あるいはハフニウム酸化膜などの高誘電体材料を用いることができる。絶縁層20の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。
【0023】
半導体チップ30及び30の各々は、基板31と、絶縁層32と、配線層33と、電極パッド34と、絶縁層35と、貫通電極36とを有する。半導体チップ30及び30の各々の基板31は薄化されており、各々の基板31の厚さは、例えば、0.2μm以上5μm以下である。
【0024】
半導体チップ30及び30において、基板31は、例えばシリコン、窒化ガリウム、炭化ケイ素等から構成されている。基板31の主面側には、図示しない半導体集積回路が形成されている。半導体集積回路は、例えば、ドレイン、ゲート、及びソースを有する電界効果型トランジスタを複数個含み、それぞれの電界効果型トランジスタは素子分離層により分離されている。
【0025】
絶縁層32は、基板31の一方の面上に形成されている。図1等では簡略化されているが、絶縁層32内には複数層の水平配線及び垂直配線を含む配線層33が銅等により形成されている。異なる層の水平配線同士は適宜垂直配線で接続されている。電極パッド34は、配線層33の最上層に位置し、下層の配線層33と電気的に接続されている。
【0026】
半導体チップ30及び30において、電極パッド34の上面には貫通電極36の一部が形成され、貫通電極36の上面は絶縁層32の表面に露出している。なお、電極パッド34と、貫通電極36の電極パッド34の上面に形成された部分とを合わせて、単に電極パッドと称する場合がある。
【0027】
電極パッド34の平面形状や電極パッド34の上面に形成された貫通電極36の平面形状は、例えば、矩形や円形等とすることができる。電極パッド34の平面形状が円形である場合、電極パッド34の直径は、例えば、3μm~10μm程度とすることができる。電極パッド34の上面に形成された貫通電極36の平面形状は、電極パッド34の平面形状よりも若干小さくなる。
【0028】
電極パッド34の材料は、例えば、銅である。電極パッド34は、複数の金属が積層された構造であってもよい。具体的には、例えば、電極パッド34として、Ti層やTiN層上にAu層、Al層、Cu層等を積層した積層体等を用いることができる。電極パッド34として、Ni層上にAu層を積層した積層体、Ni層上にPd層及びAu層を順次積層した積層体、Niの代わりにCo、Ta、Ti、TiN等の高融点金属からなる層を用い、同層上にCu層あるいはAl層を積層した積層体あるいはダマシン構造状の配線等を用いてもかまわない。
【0029】
半導体チップ30及び30において、基板31の背面にバリア層となる絶縁層が設けられてもよい。この場合、絶縁層の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。半導体チップ30及び30において、基板31の背面側に絶縁層(バリア層)を形成することにより、半導体チップが背面側から金属不純物により汚染されるおそれを低減できると共に、下層に半導体チップが配置される場合には、下層の半導体チップと絶縁できる。
【0030】
上下に隣接する半導体チップは、例えば接着層等を介さずに直接接合されるが、必要な場合(例えば、半導体集積回路の表面が平坦でない場合等)には接着層等を介して接合してもよい。
【0031】
半導体チップ301には、基板31及び絶縁層32を貫通し、さらに絶縁層20を貫通して電源グランド層10の基板11又は配線部12の上面を露出するビアホールが形成されており、ビアホールの内壁(側壁)には絶縁層35が設けられている。半導体チップ30には、基板31及び絶縁層32を貫通して半導体チップ30の貫通電極36の上面を露出するビアホールが形成されており、ビアホールの内壁(側壁)には絶縁層35が設けられている。絶縁層35の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層35の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。
【0032】
絶縁層35の内側は、貫通電極36で充填されている。各々の半導体チップの電極パッド34同士は、貫通電極36を介して直接電気的に接続されている。電極パッド34の上面に形成された部分を除く貫通電極36の平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。電極パッド34の上面に形成された部分を除く貫通電極36の平面形状が円形である場合、その直径は、例えば、0.3μm~5μm程度とすることができる。
【0033】
半導体チップ30において、半導体チップ30のグランド配線と接続されている貫通電極36の少なくとも一部は、絶縁層20を貫通して端面が電源グランド層10の基板11と電気的に接続されている。また、半導体チップ30の電源配線と接続されている貫通電極36の少なくとも一部は、絶縁層20を貫通して端面が電源グランド層10の配線部12と電気的に接続されている。
【0034】
基板11又は配線部12と接続される貫通電極36の端面の面積の合計は、半導体チップ30の背面の面積の2%以上であることが好ましい。これにより、半導体チップ30からの熱を電源グランド層10に十分に伝えることができる。また、基板11と半導体チップ30のグランド配線との接続、及び配線部12と半導体チップ30の電源配線との接続を低抵抗で確実に行うことできる。
【0035】
貫通電極36の材料は、例えば、銅である。貫通電極36は、複数の金属が積層された構造であってもよい。具体的には、例えば、貫通電極36として、Ti層やTiN層上にAu層、Al層、Cu層等を積層した積層体等を用いることができる。貫通電極36として、Ni層上にAu層を積層した積層体、Ni層上にPd層及びAu層を順次積層した積層体、Niの代わりにCo、Ta、Ti、TiN等の高融点金属からなる層を用い、同層上にCu層あるいはAl層を積層した積層体あるいはダマシン構造状の配線等を用いてもかまわない。
【0036】
[半導体装置の製造工程]
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明をする。図4図16は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図である。なお、ここでは、半導体チップの積層に所謂ウェハオンウェハの手法を用いる例を示すが、所謂チップオンウェハの手法を用いてもよい。ただし、前述のように、電源グランド層上に配置される半導体チップは、積層体には限定されず、1層であってもよい。或いは、平面視で、電源グランド層上の異なる位置に複数の半導体チップを配置してもよい。この場合も、半導体チップは、積層体でも良いし、1層でも良いし、半導体チップの積層体と1層の半導体チップとが混在してもよい。
【0037】
まず、図4に示す工程では、基板11を準備する。ここでは、一例として、基板11をシリコンウェハとする。シリコンウェハは、例えば円形であり、直径は、例えば6インチ(約150mm)、8インチ(約200mm)、12インチ(約300mm)等である。基板11の厚さは、例えば0.625mm(直径6インチの場合)、0.725mm(直径8インチの場合)、0.775mm(直径12インチの場合)等である。
【0038】
なお、基板11の表面は最終的には貫通電極とコンタクトするので、特に基板11の表面の不純物濃度が高いことが好ましく、1020cm-3以上にすることが好ましい。基板11の表面にイオン注入してもよい。基板11には、ホウ素などのP型不純物をドーピングしても良いが、N型不純物としてリンをドーピングすることが、後述の容量形成の点から好ましい。
【0039】
次に、図5に示す工程では、基板11に溝115を形成する。溝115は、例えばドライエッチング等により形成できる。ここでは、一例として、図3に示すようなメッシュ状の溝115を形成するものとする。溝115の幅は例えば20μm、深さは例えば180μmである。
【0040】
次に、図6に示す工程では、基板11の溝115内に、配線部12を形成する。具体的には、まず、プラズマCVD法等により、溝115の底面及び内壁面を被覆する絶縁層をシリコン酸化膜等により200nm程度の厚さで形成する。そして、絶縁層を被覆するように、銅等によりバリアメタル層を形成し、さらに窒化タンタルと銅との積層膜等によりシード層を形成する。バリアメタル層やシード層は、例えば、スパッタ法等により形成できる。そして、シード層から給電する電解めっき法により、シード層上に銅等からなる電解めっき層を、基板11の上面から突出するように形成する。その後、基板11の上面から突出する電解めっき層をCMP等により除去する。基板11の上面と、配線部12の上面とは、例えば、面一とすることができる。その後、適切な条件でアニールを行い、シンタリングすることが好ましい。以上により、基板11の溝115内に配線部12を有し、個片化されると電源グランド層10となる複数の領域を有する電源グランド層10Aが作製される。
【0041】
次に、図7に示す工程では、薄化されていない基板31を準備する。ここでは、一例として、基板31をシリコンウェハとする。基板31は、複数の製品領域Aと、各々の製品領域Aを分離するスクライブ領域Bとが画定されている。製品領域Aは、例えば、縦横に配列されている。スクライブ領域BにあるCは、ダイシングブレード等が基板31を切断する位置(以下、「切断位置C」とする)を示している。
【0042】
次に、図8に示す工程では、周知の方法により、基板31に、半導体集積回路、絶縁層32、配線層33、及び電極パッド34を形成する。これにより、個片化されると半導体チップ30となる複数の製品領域Aを有する半導体装置30Aが作製される。なお、図8では、半導体集積回路、配線層33、及び電極パッド34の図示は省略されている。
【0043】
次に、図9に示す工程では、半導体装置30Aの電極パッド形成側に接着層520を介してサポート基板510を接合する。サポート基板510としては、アライメント時に光が透過する基板を用いることが好ましく、例えば、石英ガラスの基板等を用いることができる。接着層520としては、例えば後述する図12に示す工程において加熱する温度で軟化する接着剤(200℃程度又はそれ以下で軟化する接着剤)を用いることができる。接着層520は、例えばスピンコート法によりサポート基板510の一方の面に形成できる。または、接着層520は、半導体装置30Aの素子面に形成しても良い。接着層520は、スピンコート法の代わりに、フィルム状の接着剤を貼り付ける方法等を用いてサポート基板510の一方の面及び半導体装置30Aの素子面の少なくとも一方に形成しても構わない。
【0044】
次に、図10に示す工程では、図9に示す構造体を上下反転させる。そして、グラインダー等を用いて、半導体装置30Aの基板31の背面(主面とは反対側の面)を機械的に研削し、さらにCMP等で仕上げの研磨を行い、基板31の背面側を薄化する。薄化された基板31の背面側に、プラズマCVD法等により絶縁層を形成してもよい。
【0045】
薄化後の基板31の厚さは、例えば、0.2μm以上5μm以下である。基板31の厚さを0.2μm以上5μm以下とすることで、ビアホールの加工時間が大幅に短縮され、薄化でアスペクト比が緩和され埋め込み性やカバレッジが改善される。また、基板31から電源グランド層10までの熱の伝導性を向上できる。
【0046】
次に、図11に示す工程では、図6で作製した電源グランド層10Aの配線部12側に、プラズマCVD法等により絶縁層20を形成する。そして、半導体装置30Aの背面側を絶縁層20と対向する向きにし、サポート基板510と接合された半導体装置30Aを、絶縁層20を介して電源グランド層10A上に積層する。
【0047】
次に、図12に示す工程では、図11に示すサポート基板510及び接着層520を除去する。前述のように、接着層520として、図12に示す工程において加熱する温度で軟化する接着剤(200℃程度又はそれ以下で軟化する接着剤)を用いると好適である。これにより、電源グランド層10A上に、絶縁層20を介して、薄化された半導体装置30Aが積層された積層体が形成される。
【0048】
以降の図13~16では、図7に示す製品領域A(隣接する切断位置Cの間の領域)の1つの断面を参照しながら説明を行う。
【0049】
次に、図13に示す工程では、半導体装置30Aにビアホール30xを形成する。ビアホール30xは、半導体装置30Aの電極パッド34、絶縁層32、及び基板31を貫通し、さらに絶縁層20を貫通して、電源グランド層10Aの基板11又は配線部12の上面が露出するように形成する。ビアホール30xは、例えばドライエッチング等により形成できる。ビアホール30xは、例えば平面視円形であり、その直径は、例えば、0.3μm~5μm程度とすることができる。
【0050】
次に、図14に示す工程では、ビアホール30xの内壁面を被覆する絶縁層35を形成し、さらに絶縁層35の内側に貫通電極36を形成する。絶縁層35を形成するには、まず、例えば、プラズマCVD法等により、ビアホール30xの内壁面、並びにビアホール30x内に露出する基板11又は配線部12の上面を連続的に被覆する絶縁層を形成する。そして、ビアホール30xの内壁面を被覆する部分以外をRIE(Reactive Ion Etching)等により除去する。
【0051】
貫通電極36は、例えば、スパッタ法やめっき法を組み合わせてビアホール30x内に形成できる。具体的には、例えば、ビアホール30xの内壁面及びビアホール30x内に露出する基板11又は配線部12の上面を連続的に被覆するように、Cu等の金属を50nm~500nm程度スパッタ法により成膜して給電層を形成する。そして、給電層を経由して給電する電解めっき法により、ビアホール30x内をCu等の金属で充填し、絶縁層32の上面から突出する電解めっき層を形成する。そして、絶縁層32の上面から突出する電解めっき層をCMP等により除去する。ビアホール30x内に充填された電解めっき層の上面と、絶縁層32の上面とは、例えば、面一とすることができる。これにより、給電層上に電解めっき層が積層された貫通電極36を形成できる。
【0052】
次に、図15に示す工程では、図7及び図8と同様の工程により、個片化されると半導体チップ30となる複数の製品領域Aを有する半導体装置30Bを作製する。半導体装置30Bは、半導体装置30Aと同一構造である。次に、図9図12と同様の工程により、半導体装置30A上に半導体装置30Bを積層する。そして、図13及び図14と同様の工程により、半導体装置30Bに、ビアホール30x、絶縁層35、及び貫通電極36を形成する。半導体装置30Bの電極パッド34は、半導体装置30Bの貫通電極36を介して、半導体装置30Aの貫通電極36と電気的に接続される。
【0053】
次に、図16に示す工程では、グラインダー等を用いて、電源グランド層10Aの基板11の背面側を機械的に研削し、さらにCMP等で仕上げの研磨を行い、基板11の背面側を薄化する。基板11の厚さは、例えば、200μmとなる。
【0054】
次に、図16に示す構造体を切断位置Cで切断して、各々の製品領域を個片化する。これにより、半導体装置30Aから複数の半導体チップ30が形成され、半導体装置30Bから複数の半導体チップ30が形成される。また、電源グランド層10Aから、基板11及び配線部12を有する複数の電源グランド層10が形成される。すなわち、電源グランド層10上に絶縁層20を介して半導体チップ30及30が順次積層された半導体装置1(図1参照)が複数個完成する。
【0055】
このように、半導体装置1は、半導体チップ30側に開口する溝115を備えた基板11と、溝115の内側に絶縁層を介して配置された所定パターンの配線部12とを含む電源グランド層10を有し、配線部12は、基板11の背面から露出していない。そして、基板11は半導体チップ30のグランド配線に接続され、配線部12は半導体チップ30の電源配線に接続される。
【0056】
半導体装置1では、配線部12に良導体である銅等の金属を用いることより電源安定化が可能となり、電源安定化による低電圧化(≒低電力化)を実現できる。また、銅等の金属は良熱伝導体でもあるため、半導体装置1全体の発熱を均一化できる。また、半導体装置1の背面は、基板11のみから形成され、配線部12は基板11の背面から露出していない。そのため、基板11の背面から効率よく排熱できるため、半導体装置1の放熱性能を向上できる。すなわち、電源安定化と放熱性能の向上とを両立した半導体装置1を実現できる。
【0057】
また、半導体装置1の背面は、基板11のみから形成され、配線部12は基板11の背面から露出していないため、基板11の背面に金属製のヒートシンク等を容易に取り付けることができる。
【0058】
なお、図2等では、基板11の溝115に一体の配線部12を形成する例を示したが、これには限定されない。例えば、配線部12は、平面視で、互いに絶縁された複数の系統に分割されてもよい(例えば、後述の図26等参照)。この場合、それぞれの系統の配線部は、半導体チップの異なる系統の電源配線(例えば、互いに電源電圧の異なる電源配線)に接続することができる。
【0059】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、配線部の構造が異なる電源グランド層を有する半導体装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0060】
図17は、第1実施形態の変形例1に係る半導体装置を例示する断面図である。図17を参照すると、第1実施形態の変形例1に係る半導体装置1Aは、電源グランド層10が電源グランド層40に置換された点が半導体装置1(図1等参照)と相違する。
【0061】
電源グランド層40は、基板11と、配線部42とを有する。基板11については、前述のとおりである。配線部42は、図示しない絶縁層やバリア層を介して、基板11の溝115内に配置されている。開口部145を含む配線部42は、例えば、図2と同様のパターンとすることができる。基板11及び配線部42の寸法関係については、基板11及び配線部12の寸法関係と同様とすることができる。
【0062】
配線部42は、第1層42A上に第2層42Bが積層された積層構造である。第1層42Aは、第2層42Bよりも熱を伝えやすい材料から形成されている。第1層42Aは、例えば、カーボンナノチューブやグラフェン片等を含むカーボン層である。第2層42Bは、例えば、銅層等の金属層である。言い換えれば、配線部42は、半導体チップ30側に配置された金属層、及び金属層の下層に位置するカーボン層を含む。
【0063】
例えば、第1層42Aをカーボン層とし、第2層42Bを銅層とした場合、カーボン層は、銅層よりも熱を伝えやすいため、配線部42を銅層のみから形成する場合と比べて放熱性能を高めることができる。ただし、配線部42の抵抗値及びコンタクト抵抗を下げるため、すべてをカーボン層とするのではなく、銅層も必要となる。つまり、配線部42がカーボン層と銅層の両方を有することで、熱抵抗の低減と電気抵抗の低減が可能となる。また、カーボン層を設けることで、銅の熱ひずみを緩和することが可能となる。
【0064】
なお、放熱性能を十分に高める観点から、図17の断面図に示すような縦断面視で、第1層42A(例えば、カーボン層)の面積は、配線部42の面積(例えば、カーボン層と金属層の合計の面積)に対して10%以上であることが好ましい。
【0065】
電源グランド層40を形成するには、例えば、図4及び図5と同様にして、図18に示すように溝115を有する基板11を作製し、図19に示すように基板11の溝115内に第1層42Aを形成する。具体的には、まず、溝115の底面及び内壁面を被覆する絶縁層を形成する。そして、絶縁層を被覆するように、バリアメタル層及びシード層を順次形成する。そして、溝115内の底面側にカーボンナノチューブやグラフェン片等を含む溶液を流し込み、溝115外に付着した溶液をふき取った後、溶剤を飛ばす。これにより、第1層42Aが形成される。
【0066】
次に、図20に示すように、溝115内の第1層42A上に第2層42Bを形成する。具体的には、図19の工程で形成したシード層から給電する電解めっき法により、シード層上に銅等からなる電解めっき層を、基板11の上面から突出するように形成する。その後、基板11の上面から突出する電解めっき層をCMP等により除去する。基板11の上面と、第2層42Bの上面とは、例えば、面一とすることができる。その後、適切な条件でアニールを行い、シンタリングすることが好ましい。以上により、基板11の溝115内に第1層42Aと第2層42Bが順次積層された配線部42を有し、個片化されると電源グランド層40となる複数の領域を有する電源グランド層40Aが作製される。
【0067】
なお、図19に示す工程で、カーボンナノチューブやグラフェン片等を含む溶液に金属ナノペーストを混合してもよい。金属ナノペーストとしては、例えば、銅ナノペーストが挙げられる。その後、図20の工程でシンタリングを行うと、例えば、銅ナノペースト中の銅粒子がシード層の銅とシンタリングされ、カーボン材料とのコンタクト抵抗を改善できる。
【0068】
また、図20に示す工程における第2層42Bの形成に、金属ナノペーストを用いてもよい。金属ナノペーストしては、例えば、銅ナノペーストが挙げられる。金属ナノペーストから形成された第2層42Bはポーラス状となるため、銅等の金属の熱ひずみを緩和することが可能となる。なお、シンタリングすることで表面の平坦性が失われる場合は、補完する目的でめっきやCMPを追加してもよい。
【0069】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、電源グランド層と半導体チップとの間に接続配線部が配置された半導体装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0070】
図21は、第1実施形態の変形例2に係る半導体装置を例示する断面図である。図21を参照すると、第1実施形態の変形例2に係る半導体装置1Bは、電源グランド層10と半導体チップ30との間に、接続配線部50が配置された点が半導体装置1(図1等参照)と相違する。
【0071】
接続配線部50は、絶縁層51と、配線層52とを有する。絶縁層51は例えばシリコン酸化膜から形成され、配線層52は例えば銅から形成される。配線層52は、絶縁層51の上面側に形成された配線と、この配線と接続され、絶縁層51を貫通する貫通配線とを含む。配線層52は、例えば、デュアルダマシン法により形成できる。配線層52の貫通配線の一部は電源グランド層10の基板11と電気的に接続され、貫通配線の他一部は電源グランド層10の配線部12と電気的に接続されている。
【0072】
図21では、配線層52は簡略化して描かれているが、配線層52は、配線部12の配線よりも高密度の配線を備えている。例えば、配線部12の配線幅が20μm程度である場合に、配線層52の最小配線幅をその1/40程度に形成すると、半導体チップ30と電源グランド層10とを直接接続することが困難な場合であっても、接続配線部50を介すことで、両者を容易に接続可能となる。なお、接続配線部50は、多層配線構造としてもよい。
【0073】
〈従来構造との比較〉
【0074】
【表1】
表1に示す仕様の従来構造1及び従来構造2と第1実施形態及び第2実施形態に関して、消費電力と面内温度差の比較検討を行った。なお、従来構造2は、非特許文献1に記載された構造である。
【0075】
従来構造1及び従来構造2の半導体装置は、シリコン基板を背面側から加工して、シリコン基板の背面側に銅配線を形成し、銅配線の下面をシリコン基板の背面から露出させた構造であり、銅配線の仕様は表1の通りである。つまり、従来構造1及び従来構造2の半導体装置は、第1実施形態及び第2実施形態の半導体装置と比べて配線厚が大幅に薄く、かつ第1実施形態及び第2実施形態の半導体装置の底部111に相当する部分を有していない。なお、表1の絶縁層は、シリコン基板と配線との間に形成される絶縁層である。
【0076】
表1に示す第1実施形態の半導体装置は、図1等に示す構造であるが、ここでは、基板11の材料をシリコン、基板11の厚さを200μm、底部111の厚さを20μmとしている。また、配線部12を銅層のみ、配線部12の配線幅及び配線間隔をそれぞれ20μm、配線厚を180μmとしている。また、絶縁層厚を0.2μmとしている。また、シリコンの体積は、シリコンと配線部との合計の体積に対して60%以下としている。また、シリコン又は配線部と接続される貫通電極の端面の面積の合計は、半導体チップの背面の面積の2%以上としている。
【0077】
表1に示す第2実施形態の半導体装置は、図17等に示す構造であるが、ここでは、基板11の材料をシリコン、基板11の厚さを200μm、底部111の厚さを20μmとしている。また、配線部12を銅層及びカーボン層、配線部12の配線幅及び配線間隔をそれぞれ20μm、配線厚を180μmとしている。また、絶縁層厚を0.2μmとしている。また、シリコンの体積は、シリコンと配線部との合計の体積に対して60%以下としている。また、シリコン又は配線部と接続される貫通電極の端面の面積の合計は、半導体チップの背面の面積の2%以上としている。また、図17の断面図に示すような縦断面視で、カーボン層の面積は、カーボン層と銅層の合計の面積に対して10%以上としている。
【0078】
【表2】
比較検討の結果を表2に示す。表2の消費電力比は、各半導体装置を600mVで動作させたときの消費電力を、従来構造1を100%として比較したものである。配線厚を厚くできる第1実施形態及び第2実施形態の半導体装置は、従来構造1及び従来構造2の半導体装置に比べて消費電力を低減できることがわかる。
【0079】
表2の面内温度差は、従来構造1の半導体装置で20℃の面内温度差がある場合に、従来構造2と第1実施形態及び第2実施形態の半導体装置では、面内温度差がどの程度になるかを計算したものである。第1実施形態の半導体装置では、従来構造1の半導体装置の半分程度の面内温度差に抑制できている。すなわち、配線厚の厚い銅配線と、シリコンに残した底部との効果により、面内温度差を大幅に抑制できる。配線部が銅層とカーボン層とを有する第2実施形態の半導体装置では、第1実施形態の半導体装置のさらに半分程度の面内温度差に抑制できる。すなわち、配線部がカーボン層を含む効果は大変に大きい。なお、面内温度差が10℃程度になると、半導体装置がDRAMであった場合に、DRAMのデータ保持時間の時間基準を守ることができ、リフレッシュ周期を変える等の特別な対応が不要となる。
【0080】
〈第1実施形態の応用例〉
第1実施形態の応用例では、電源グランド層と半導体チップとが積層された複数の積層体を熱的に結合した半導体装置の例を示す。なお、第1実施形態の応用例において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0081】
図22は、第1実施形態の応用例1に係る半導体装置を例示する斜視図である。図22を参照すると、第1実施形態の応用例1に係る半導体装置1Cは、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された積層体60と、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された積層体60とを有する。
【0082】
積層体60において、平面視で、半導体チップ30は電源グランド層10よりも大きく、半導体チップ30の一部は電源グランド層10の端部から突出している。また、積層体60において、半導体チップ30は電源グランド層10よりも大きく、半導体チップ30の一部は電源グランド層10の端部から突出している。
【0083】
積層体60と積層体60とは、電源グランド層10と電源グランド層10とが反対側を向き、かつ半導体チップ30の突出部と半導体チップ30の突出部とが接するように配置されている。半導体チップ30の突出部と半導体チップ30の突出部とが接する領域において、半導体チップ30と半導体チップ30とは電気的に接続されている。半導体チップ30と半導体チップ30との接続は、フェイストゥーフェイスでもフェイストゥーバックでもよい。
【0084】
積層体60の半導体チップ30は、例えば、電源電圧の比較的低いロジックチップである。また、積層体60の半導体チップ30は、例えば、電源電圧の比較的高いSRAM(Static RAM)チップである。
【0085】
半導体装置1Cでは、半導体チップ30と半導体チップ30が重なっている部分の面積よりも重なっていない部分の面積の方が大きく、重なっていない部分には電源グランド層を配置してる。そのため、半導体装置1Cに局所高温部(ホットスポット)が生じることを抑制し、半導体装置1C全体の発熱を均一化することが可能となる。また、各電源グランド層の面積を大きくしているため、放熱面積不足が解消され、各電源グランド層から効率よく放熱することが可能となる。
【0086】
図23は、第1実施形態の応用例2に係る半導体装置を例示する平面図である。図23を参照すると、第1実施形態の応用例2に係る半導体装置1Dは、5つの電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された1つの積層体60と、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された4つの積層体60とを有する。
【0087】
図23の矢印上側に示すように、積層体60において、電源グランド層10は5つ設けられている。1つの電源グランド層10は半導体チップ30の一方の面の中央部に積層され、半導体チップ30の一方の面の外周部は電源グランド層10の周囲に露出している。中央に配置された電源グランド層10から露出する半導体チップ30の一方の面の4つの角部には、半導体チップ30からはみ出るように、それぞれ電源グランド層10か配置されている。
【0088】
また、図23の矢印上側に示すように、積層体60において、平面視で、半導体チップ30は電源グランド層10よりも大きく、半導体チップ30の一部は電源グランド層10の端部から突出している。積層体60は、4つ準備されている。
【0089】
4つの積層体60図23の矢印上側のように配置し、上下を反転させて積層体60上に積層すると、図23の矢印下側に示す半導体装置1Dとなる。半導体装置1Dでは、各電源グランド層10から露出する半導体チップ30の一方の面と、各積層体60における半導体チップ30の突出部とが接するように配置されている。半導体チップ30の露出部と各半導体チップ30の突出部とが接する領域において、半導体チップ30と各半導体チップ30とは電気的に接続されている。半導体チップ30と半導体チップ30との接続は、フェイストゥーフェイスでもフェイストゥーバックでもよい。
【0090】
積層体60の半導体チップ30は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)チップやGPU(Graphics Processing Unit)チップである。また、積層体60の半導体チップ30は、例えば、SRAMチップである。すなわち、半導体装置1Dでは、例えば、MPUチップやGPUチップを中心に配置し、その周囲に4つのSRAMチップを配置している。逆に、SRAMチップを中心に配置し、その周囲に様々なプロセッサチップを配置しもよい。
【0091】
半導体装置1Dでも、半導体装置1Cと同様に、半導体チップ30と半導体チップ30が重なっている部分の面積よりも重なっていない部分の面積の方が大きく、重なっていない部分には電源グランド層を配置してる。そのため、半導体装置1Dに局所高温部(ホットスポット)が生じることを抑制し、半導体装置1D全体の発熱を均一化することが可能となる。また、各電源グランド層の面積を大きくしているため、放熱面積不足が解消され、各電源グランド層から効率よく放熱することが可能となる。
【0092】
図24は、第1実施形態の応用例3に係る半導体装置を例示する平面図である。図24を参照すると、第1実施形態の応用例3に係る半導体装置1Eは、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された1つの積層体60と、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された2つの積層体60とを有する。
【0093】
図24の矢印上側に示すように、積層体60において、電源グランド層10は半導体チップ30の一方の面の中央部に積層され、半導体チップ30の一方の面の両端部は電源グランド層10の両側に露出している。
【0094】
また、図24の矢印上側に示すように、積層体60において、平面視で、半導体チップ30は電源グランド層10よりも大きく、半導体チップ30の一部は電源グランド層10の端部から突出している。積層体60は、2つ準備されている。
【0095】
2つの積層体60図24の矢印上側のように配置し、上下を反転させて積層体60上に積層すると、図24の矢印下側に示す半導体装置1Eとなる。半導体装置1Eでは、電源グランド層10から露出する半導体チップ30の一方の面と、各積層体60における半導体チップ30の突出部とが接するように配置されている。半導体チップ30の露出部と各半導体チップ30の突出部とが接する領域において、半導体チップ30と各半導体チップ30とは電気的に接続されている。半導体チップ30と半導体チップ30との接続は、フェイストゥーフェイスでもフェイストゥーバックでもよい。
【0096】
積層体60の半導体チップ30は、例えば、MPUチップやGPUチップである。また、積層体60の半導体チップ30は、例えば、SRAMチップである。すなわち、半導体装置1Eでは、例えば、MPUチップやGPUチップを中心に配置し、その両側に2つのSRAMチップを配置している。逆に、SRAMチップを中心に配置し、その両側に様々なプロセッサチップを配置しもよい。
【0097】
半導体装置1Eでも、半導体装置1Cと同様に、半導体チップ30と半導体チップ30が重なっている部分の面積よりも重なっていない部分の面積の方が大きく、重なっていない部分には電源グランド層を配置してる。そのため、半導体装置1Eに局所高温部(ホットスポット)が生じることを抑制し、半導体装置1E全体の発熱を均一化することが可能となる。また、各電源グランド層の面積を大きくしているため、放熱面積不足が解消され、各電源グランド層から効率よく放熱することが可能となる。
【0098】
図25は、第1実施形態の応用例4に係る半導体装置を例示する平面図である。図25を参照すると、第1実施形態の応用例4に係る半導体装置1Fは、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された1つの積層体60と、電源グランド層10と半導体チップ30とが積層された4つの積層体60とを有する。
【0099】
図25の矢印上側に示すように、積層体60において、電源グランド層10は半導体チップ30の一方の面の中央部に積層され、半導体チップ30の一方の面の外周部は電源グランド層10の周囲に露出している。
【0100】
また、図25の矢印上側に示すように、積層体60において、平面視で、半導体チップ30は電源グランド層10よりも大きく、半導体チップ30の一部は電源グランド層10の端部から突出している。積層体60は、4つ準備されている。
【0101】
4つの積層体60図25の矢印上側のように配置し、上下を反転させて積層体60上に積層すると、図25の矢印下側に示す半導体装置1Fとなる。半導体装置1Fでは、電源グランド層10から露出する半導体チップ30の一方の面と、各積層体60における半導体チップ30の突出部とが接するように配置されている。半導体チップ30の露出部と各半導体チップ30の突出部とが接する領域において、半導体チップ30と各半導体チップ30とは電気的に接続されている。半導体チップ30と半導体チップ30との接続は、フェイストゥーフェイスでもフェイストゥーバックでもよい。
【0102】
積層体60の半導体チップ30は、例えば、MPUチップやGPUチップである。また、積層体60の半導体チップ30は、例えば、SRAMチップである。すなわち、半導体装置1Fでは、例えば、MPUチップやGPUチップを中心に配置し、その周囲に4つのSRAMチップを配置している。逆に、SRAMチップを中心に配置し、その周囲に様々なプロセッサチップを配置しもよい。
【0103】
半導体装置1Fでも、半導体装置1Cと同様に、半導体チップ30と半導体チップ30が重なっている部分の面積よりも重なっていない部分の面積の方が大きく、重なっていない部分には電源グランド層を配置してる。そのため、半導体装置1Fに局所高温部(ホットスポット)が生じることを抑制し、半導体装置1F全体の発熱を均一化することが可能となる。また、各電源グランド層の面積を大きくしているため、放熱面積不足が解消され、各電源グランド層から効率よく放熱することが可能となる。
【0104】
図26は、第1実施形態の応用例5に係る半導体装置を例示する平面図である。図26を参照すると、第1実施形態の応用例5に係る半導体装置1Gは、1つの電源グランド層10と、1つの半導体チップ30と、6つの半導体チップ3010とを有する。
【0105】
半導体装置1Gでは、電源グランド層10は、互いに絶縁された4つの系統の配線部を有している。この場合、それぞれの系統の配線部は、半導体チップ30や半導体チップ3010の異なる系統の電源配線に接続することができる。
【0106】
4つの配線部は2行2列に配置され、半導体チップ30は左側の列に配置された2つの配線部の各々の一方の面に跨って配置されている。また、6つの半導体チップ3010は、右側の列に配置された2つの配線部の各々の一方の面に跨って配置されている。
【0107】
平面視で、半導体チップ30及び6つの半導体チップ3010は電源グランド層10よりも小さいため、電源グランド層10の一部は、半導体チップ30又は半導体チップ3010から露出している。半導体チップ30は、例えば、電源電圧の比較的低いロジックチップである。また、半導体チップ3010は、例えば、電源電圧の比較的高いSRAMチップである。
【0108】
このように、電源グランド層は、平面視で、搭載する半導体チップより大きくてもよい。このような構造とすることで、電源グランド層からの放熱効率を改善することができる。なお、半導体装置が図21に示すような接続配線部50を有する場合には、異なる半導体チップ間の接続を接続配線部50の配線を用いて行ってもよい。この場合、半導体チップ間の接続をパッケージ、あるいはシリコンインターポーザーの配線を介して行うより接続配線の容量が小さく、デバイス全体の消費電力を低減する効果がある。また、電源グランド層の半導体チップから露出する部分は、半導体装置に電源を供給するためのコンタクトとして用いてもよい。
【0109】
なお、第1実施形態の応用例において、電源グランド層上に配置される半導体チップは、1層には限定されず、積層体であってもよい。或いは、半導体チップの積層体と1層の半導体チップとが混在してもよい。
【0110】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0111】
例えば、上記実施形態では、平面視円形の半導体基板(シリコンウェハ)を用いた場合を例にとり説明を行ったが、半導体基板は平面視円形に限定されず、例えば平面視長方形等のパネル状のものを用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0112】
1,1A~1G 半導体装置
10,10A,10~10,40,40A 電源グランド層
11 基板
12 配線部
30~3010 半導体チップ
30A,30B 半導体装置
30x ビアホール
31 基板
32 絶縁層
33 配線層
34 電極パッド
35 絶縁層
36 貫通電極
42A 第1層
42B 第2層
50 接続配線部
51 絶縁層
52 配線層
60~60 積層体
111 底部
112 側壁部
113 柱状部
115 溝
125,145 開口部
510 サポート基板
520 接着層
図1
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