(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101031
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】O-メチルイソ尿素硫酸塩の改良された製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 273/00 20060101AFI20230712BHJP
C07C 275/70 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07C273/00
C07C275/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020070602
(22)【出願日】2020-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】亀川 尚登
(72)【発明者】
【氏名】足立 徹
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC57
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC31
4H006BE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医薬、農薬及び工業用薬品の中間体としての重要なO-メチルイソ尿素硫酸塩を、簡便な操作で製造する方法を提供する。
【解決手段】シアナミド、硫酸、及びメタノールを水の存在下で反応させて、式(2):
で表されるO-メチルイソ尿素硫酸塩を製造する方法であって、反応において、硫酸をシアナミドに対し2当量以上用い、かつ、以下の式で求められる硫酸濃度を65wt%以上になるように調整することを特徴とする方法。硫酸濃度=S/(S+W)×100(式中、S及びWは、それぞれ、反応における硫酸及び水の重量を表す)。本方法では、反応系中のO-メチルイソ尿素硫酸塩の溶解度が大幅に低下するので、濾過などによってO-メチルイソ尿素硫酸塩を容易に取り出せる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアナミド、硫酸、及びメタノールを水の存在下で反応させて、式(2):
【化5】
で表されるO-メチルイソ尿素硫酸塩を製造する方法であって、
前記反応において、前記硫酸を前記シアナミドに対し2当量以上用い、かつ、以下の式で求められる硫酸濃度を65wt%以上になるように調整することを特徴とする方法。
硫酸濃度=S/(S+W)×100
(式中、S及びWは、それぞれ、前記反応における前記硫酸及び前記水の重量を表す)
【請求項2】
メタノールと硫酸の混合溶液にシアナミド水溶液を滴下することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
-40℃~周囲温度の温度範囲で反応させて、反応系中にO-メチルイソ尿素硫酸塩を析出させることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬及び工業用薬品の中間体としての重要なO-メチルイソ尿素硫酸塩の改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
O-メチルイソ尿素硫酸塩の製造方法は、多くの文献、及び特許に開示されている。例えば非特許文献1に記載されている製造方法は尿素とジメチル硫酸を反応させて生成するO-メチルイソ尿素メチル硫酸塩を硫酸塩に塩交換する方法が開示されている。しかしながら、尿素とジメチル硫酸との反応は非常に大きな反応熱を発生するため、熱暴走の危険性がある。特許文献1には、高純度シアナミドを用い硫酸及びメタノールにてO-メチルイソ尿素硫酸塩を得る方法が開示されている。しかしながら、高純度シアナミドは高価な上、工業的に入手困難である。これに代わる方法として、特許文献2には、工業的に入手が容易なシアナミド水溶液を用い硫酸及びメタノールと反応し、O-メチルイソ尿素硫酸塩を含む反応混合物とし、O-メチルイソ尿素硫酸塩を単離する代わりにその一部を塩基で中和してO-メチルイソ尿素とし、残りのO-メチルイソ尿素硫酸塩と混合することで、より水、メタノール、硫酸への溶解度が低いO-メチルイソ尿素ヘミ硫酸塩として単離する方法が開示されている。しかしながら本方法は複雑な操作が必要な上、塩基条件下でO-メチルイソ尿素が分解することから、厳しい試剤量管理が要求される。また、特許文献3には工業的に入手が容易なシアナミド水溶液を用い硫酸及びメタノールと反応し、O-メチルイソ尿素硫酸塩を含む反応混合物とし、濃縮乾固で水及びメタノールを除去後、エタノールで晶析することでO-メチルイソ尿素メチル硫酸塩を単離する方法が開示されている。しかしながら、O-メチルイソ尿素硫酸塩を単離するために、工業的に操作困難な濃縮乾固による水除去が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許 2358904号明細書
【特許文献2】特開平04089466号公報
【特許文献3】中国特許101531620号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shanghai Huagong (2002),27(15-16),32-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、医薬、農薬及び工業用薬品の中間体としての重要なO-メチルイソ尿素硫酸塩を、簡便な操作で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水、メタノール、硫酸への溶解度が高いO-メチルイソ尿素硫酸塩は、水、メタノールおよび硫酸の混合物中において、硫酸及び水の合計重量に対する硫酸濃度が65wt%以上である場合に、当該混合物への溶解度が著しく低下することを見出した。これを新たな製造法に応用し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
シアナミド、硫酸、及びメタノールを水の存在下で反応させて、式(2):
【化1】
で表されるO-メチルイソ尿素硫酸塩を製造する方法であって、
前記反応において、前記硫酸を前記シアナミドに対し2当量以上用い、かつ、以下の式 で求められる硫酸濃度を65wt%以上になるように調整することを特徴とする方法。
硫酸濃度=S/(S+W)×100
(式中、S及びWは、それぞれ、前記反応における前記硫酸及び前記水の重量を表す)
[2]
メタノールと硫酸の混合溶液にシアナミド水溶液を滴下することを特徴とする前記項 目[1]記載の方法。
[3]
-40℃~周囲温度の温度範囲で反応させて、反応系中にO-メチルイソ尿素硫酸塩を析 出させることを特徴とする前記項目[1]又は[2]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩は、反応系に析出するので、ろ過などの慣用の手法により、簡便に単離することができる。
このように、本発明により、医薬、農薬及び工業用薬品の中間体としての重要なO-メチルイソ尿素硫酸塩を、複雑な操作やシアナミド水溶液などに含まれていた水の除去操作無しで容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、特許請求の範囲および明細書中において用いられる各用語は、特に断らない限り、当該技術分野において一般的に用いられる定義によるものとする。
【0010】
本発明において、シアナミドは以下の式(1)で表される化合物を意味し、シアナミド水溶液は当該シアナミドの水溶液を意味する。
【化2】
【0011】
本発明において、O-メチルイソ尿素硫酸塩とは、以下の式(2)で表される硫酸塩を意味する。
【化3】
【0012】
本明細書において、O-メチルイソ尿素ヘミ硫酸塩とは、以下の式(3)で表される硫酸塩を意味する。
【化4】
【0013】
本発明において使用するシアナミドとしては、市販のものや公知の手法によって製造されたもの、例えば、固体のシアナミド(高純度シアナミド)やシアナミド水溶液を用いることができるが、本発明の反応は水の存在下で行うため、好適には水を含有するシアナミド水溶液を用いることができる。シアナミド水溶液は、固体のシアナミド(高純度シアナミド)と比較して、熱暴走リスクが低く、安価で、工業的に入手が容易である点で、このようなシアナミド水溶液を用いることができる本発明は有利である。シアナミド水溶液の濃度は、25~75wt%が好ましく、入手がより容易な40~60wt%がより好ましい。
【0014】
本発明の反応に使用するメタノールは、使用量は特に制限されないが、多く用いるほど、反応系中に含まれる水によるシアナミドの加水分解を抑制する一方、少なく用いるほど、反応系中の溶媒が減ることでO-メチルイソ尿素硫酸塩の単離収率を上昇させる。そのため、メタノールの使用量は、シアナミドに対し、2~10当量が好ましく、3~5当量がより好ましい。
【0015】
本発明の反応に使用する硫酸は水を含有しても良い。反応及びO-メチルイソ尿素硫酸塩の単離収率向上の観点から、硫酸が含有する水は少ない方が良く、反応に使用する硫酸の濃度は、90wt%以上が好ましく、94wt%以上がより好ましく、96wt%以上が更に好ましく、98wt%以上が特に好ましい。
【0016】
反応選択性及びO-メチルイソ尿素硫酸塩の溶解度を減じる観点から、硫酸はシアナミドに対し2当量以上用い、かつ、以下の式で求められる硫酸濃度が65wt%以上になるように調整する。硫酸の使用量は、シアナミドに対して、2~8当量が好ましく、2~4当量がより好ましく、2~3当量が更に好ましい。以下の式で求められる硫酸濃度は、69wt%以上に調整することが好ましく、70wt%以上に調整することがより好ましく、76wt%以上に調整することが更に好ましく、81wt%以上に調整することがとりわけ好ましく、また、96wt%以下に調整することが好ましく、92wt%以下に調整することがより好ましい。
硫酸濃度=S/(S+W)×100
(式中、S及びWは、それぞれ、硫酸及び水の重量を表す)
【0017】
本発明の反応系に存在する水は、シアナミド水溶液が含有する水、又は硫酸が含有する水、又はメタノールが含有する水であってもよいし、あるいはシアナミド水溶液、硫酸、及びメタノール以外の他の添加物が含有する水であってもよい。あるいは、外部から添加した水であってもよい。
【0018】
本発明の反応はメタノールとシアナミド水溶液との混合溶液に硫酸を滴下することでも進行するが、シアナミド水溶液に含まれる水によるシアナミドの加水分解を抑制するため、メタノールと硫酸の混合溶液にシアナミド水溶液を滴下することが好ましい。
【0019】
本発明の反応系は、本発明の反応の進行やO-メチルイソ尿素硫酸塩の析出を阻害しない限り、シアナミド、メタノール、硫酸、及び水以外の溶媒や試薬などを含んでいてもよい。
【0020】
本発明の反応温度は、反応系からO-メチルイソ尿素硫酸塩が析出できる温度であれば特に制限されず、通常、-40℃~周囲温度、例えば25℃の範囲、好ましくは-15~10℃の範囲である。
【0021】
本発明の反応時間は、反応系からO-メチルイソ尿素硫酸塩が析出できる時間であれば特に制限は無いが、通常、10分間~50時間、好ましくは1時間~10時間の範囲である。
【0022】
特に、本発明の反応温度を、-40℃~25℃、好ましくは-15~10℃の範囲とすると、反応系からO-メチルイソ尿素硫酸塩の固体を良好に析出させることができる。当該固体を反応系からろ過するだけで、精製などの手間を掛けずとも、純度の高いO-メチルイソ尿素硫酸塩を容易に単離することができるので、有利である。
なお、当該固体の析出は、慣用の方法、例えば、種晶や貧溶媒の添加を組み合わせて行ってもよい。
当該固体の析出の時間は、十分な量の固体が沈殿する限り特に制限はないが、通常、1~24時間、好ましくは2~8時間の範囲である。
【0023】
本発明の製造方法では、O-メチルイソ尿素硫酸塩は、反応系から析出されるので、必要に応じて、慣用の手法、例えば濾過などによって、容易に単離することができる。
また、このように単離されたO-メチルイソ尿素硫酸塩を、必要に応じて、慣用の手法、例えば、カラムなどを用いて精製してもよい。
さらに、これらの単離や精製で得られたものを乾燥工程に付してもよい。
【実施例0024】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるべきものではない。
【0025】
[実施例1]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた0.5Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸200.2g(2mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ50wt%シアナミド水溶液84.1g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール29.5gで洗浄後、乾燥した。得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩の重量は134.6g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は98.5wt%であり、収率は77.0mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が16.9mol%分配しており、本反応収率は93.9mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は2当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は以下の式から算出されるとおり81.0wt%であった。
すなわち、シアナミド水溶液の含水量=(100-50)/100×84.1=42.1g、98.0wt%硫酸200.2gの硫酸含量=98.0/100×200.2=196.2g、及び含水量=(100-98.0)/100×200.2=4.0gより、反応系中の硫酸量196.2g、及び含水量=42.1+4.0=46.1gとなり、硫酸及び水の合計重量に対する硫酸濃度=196.2/(196.2+46.1)×100=81.0wt%と計算される。
同様に、以下の実施例及び比較例の硫酸濃度も算出される。
【0026】
[実施例2]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた1.0Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸300.2g(3mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ25wt%シアナミド水溶液168.2g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール20mLで洗浄後、乾燥した。得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩の重量は75.4g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は99.0wt%であり、収率は43.4mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が46.9mol%分配しており、本反応収率は90.3mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は3当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は69.0 wt%であった。
【0027】
[実施例3]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた0.5Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸300.2g(3mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ50wt%シアナミド水溶液84.1g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール20mLで洗浄後、乾燥した。得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩の重量は108.8g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は99.4wt%であり、収率は62.8mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が31.2mol%分配しており、本反応収率は94.0mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は3当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は86.0wt%であった。
【0028】
[実施例4]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた1.0Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)256.3g(8mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸200.2g(2mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ50wt%シアナミド水溶液84.1g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール20mLで洗浄後、乾燥した。得られた結晶の重量は107.0g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は99.8wt%であり、収率は62.0mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が38.0mol%分配しており、本反応収率は100mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は2当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は81.0wt%であった。
【0029】
[実施例5]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた1.0Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸200.2g(2mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ75wt%シアナミド水溶液56.1g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール20mLで洗浄後、乾燥した。得られた結晶の重量は179.2g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は87.4wt%であり、収率は91.0mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が9.0mol%分配しており、本反応収率は100mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は2当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は91.6wt%であった。
【0030】
[実施例6]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた1.0Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol) 及び25wt%シアナミド水溶液168.2g(1mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸300.2g(3mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、-10℃に冷却したメタノール20mLで洗浄後、乾燥した。得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩の重量は31.0g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は98.8wt%であり、収率は17.8mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が52.5mol%分配しており、本反応収率は70.3mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は3当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は69.0%であった。
【0031】
[実施例7]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた0.5Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸200.2g(2mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ50wt%シアナミド水溶液84.1g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃の温度で4時間攪拌後に析出物を濾過、0℃に冷却したメタノール29.5gで洗浄後、乾燥した。得られたO-メチルイソ尿素硫酸塩の重量は134.6g、O-メチルイソ尿素硫酸塩純度は98.5wt%であり、収率は73.4mol%であった。また、濾洗液にはO-メチルイソ尿素が20.5mol%分配しており、本反応収率は93.9mol%であった。シアナミドに対する硫酸当量は2当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は81.0wt%であった。
【0032】
[比較例1]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた0.5Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)及び50wt%シアナミド水溶液84.1g(1mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸110.1g(1.1mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で14時間攪拌したが、O-メチルイソ尿素硫酸塩は析出しなかった。反応混合液中にはO-メチルイソ尿素が88.0mol%含まれていたことから、反応収率は88.0mol%であった。
シアナミドに対する硫酸当量は1.1当量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は70.9wt%であった。
【0033】
[比較例2]
撹拌装置、温度計及び空冷管を付けた0.5Lの3つ口セパラブルフラスコにメタノール(富士フイルム和光純薬(株)製試薬特級、水分0.0%)128.2g(4mol)を装入し、0℃に冷却した。98.0wt%硫酸200.2g(2mol)を0~10℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下し、混合した。そこへ25wt%シアナミド水溶液168.2g(1mol)を0~5℃の温度を保ちながら3時間かけて滴下した。滴下終了後、-10~-5℃の温度で4時間攪拌したが、O-メチルイソ尿素硫酸塩は析出しなかった。反応混合液中にはO-メチルイソ尿素が85.4mol%含まれていたことから、反応収率は85.4mol%であった。
シアナミドに対する硫酸当量は2量、硫酸及び水の合計重量に対し硫酸濃度は60.1wt%であった。