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  • 特開-情報記録媒体とその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101049
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】情報記録媒体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/243 20130101AFI20230712BHJP
   G11B 7/24018 20130101ALI20230712BHJP
   G11B 7/24035 20130101ALI20230712BHJP
   G11B 7/24038 20130101ALI20230712BHJP
   G11B 7/2578 20130101ALI20230712BHJP
   G11B 7/26 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G11B7/243
G11B7/24018
G11B7/24035
G11B7/24038
G11B7/2578
G11B7/26 531
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001369
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】槌野 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】冨田 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】児島 理恵
【テーマコード(参考)】
5D029
【Fターム(参考)】
5D029JA01
5D029JB05
5D029JB35
5D029KA07
5D029LA14
5D029LA19
5D029LB01
5D029LB07
5D029RA30
5D029RA46
(57)【要約】
【課題】再生耐久性が優れた情報記録媒体を提供する。
【解決手段】レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、3層以上の情報層を含み、前記3層以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層が前記レーザ光照射面から見て遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、前記第1誘電体膜が少なくともZnSを含み、前記記録膜が少なくともWと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む、情報記録媒体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、3層以上の情報層を含み、前記3層以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層が前記レーザ光照射面から見て遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、前記第1誘電体膜が少なくともZnSを含み、前記記録膜が少なくともWと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む、情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1情報層が、レーザ光照射面より最も遠くに位置する情報層である請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1情報層が、ポリカーボネートからなる基板を有し、前記第1誘電体膜が前記ポリカーボネート基板と接する、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1誘電体膜が、さらにSiOまたはTiOを30mol%以下で含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1情報層が、前記第1誘電体膜と前記記録膜と接する第2誘電体膜を有し、前記第2誘電体膜がZr、Zn、Sn、Si、In、Mg、Gaおよび酸素より選ばれる少なくとも一つの元素を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
情報記録媒体の製造方法であって、情報記録媒体が有する3以上の情報層の各々を形成する工程を含み、前記3以上の情報層のうちの少なくとも一つの情報層を形成する工程が、少なくとも、第1誘電体膜を形成する工程と、記録膜を形成する工程とを含み、前記第1誘電体膜を形成する工程が、少なくともZnSを含み、前記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Mnとを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む記録膜を形成し、前記第1誘電体膜を形成する工がRF電源を用いたスパッタリング、前記記録膜を形成する工程がDC電源を用いたスパッタリングにより実施される、情報記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記第1誘電体膜を形成する工程で形成する前記第1誘電体膜が、さらにSiOまたはTiOを30mol%以下で含む、請求項6に記載の情報記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学的手段によって情報を記録または再生する大容量な情報記録媒体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及や放送のデジタル化等により、デジタルデータの利用量が年々増加している。光学的情報記録媒体である光ディスクはデータの長期保存に適した信頼性の高い情報記録媒体として、増大する情報量と共に大容量化という進化を続けてきた。
【0003】
BDXL規格(BD:Blu-ray(登録商標) Disc)は2010年6月に策定された。この規格に準じた3層ディスク(3つの情報層を備える光ディスク)は、1情報層あたりの記録容量が33.4ギガバイト(GB)であり、片面で100GBという大容量のデータを保存できる。3層ディスクを構成する3つの情報層については、レーザ光の光源から最も遠いものが「L0層」と呼ばれ、次に遠いものが「L1層」と呼ばれ、レーザ光の光源に最も近いものが「L2層」と呼ばれる。
【0004】
例えば、データセンター向けに、追記型のBD-R XLディスクを用いた、最大約638テラバイト(TB)の大容量を実現できる光ディスクライブラリーが既に提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
BDXL規格とは異なる規格として、業務用光ディスク規格「アーカイバル・ディスク(Archival Disc)」が2014年3月に策定された(例えば、非特許文献2参照)。アーカイバル・ディスクは、BDよりも高い信頼性を有し、ランド・アンド・グルーブ記録方式の採用によって、より高い記録密度を有している。さらに、アーカイバル・ディスクは、基板の両面にディスク構造を備えているため、より大容量の記録媒体として提供される。アーカイバル・ディスク規格のロードマップは、ディスク1枚あたりの記録容量を順次増やすように策定されている。このロードマップによれば、具体的には、第1世代として300GBのシステムを、第2世代として500GBのシステムを、第3世代として1TBのシステムを開発する計画である。
【0006】
第2世代の500GBのアーカイバル・ディスクは、250GBの情報を保存できる3層ディスクが基板の両面に設けられて、1枚あたり500GBの情報の記録再生を可能にするものである(例えば、非特許文献3参照)。すなわち、このアーカイバル・ディスクにおいて、1情報層あたりの記録容量は83.4GBである。各情報層は、酸化物誘電体膜で酸化物記録膜を挟んだ簡素な構造である。記録膜にレーザ光を照射すると、記録膜が形状変化を生じて信号が記録される。このディスクを用いて、ペタバイト級の大容量を実現できる光ディスクライブラリーが既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/159561号
【特許文献2】特許第4210620号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】パナソニック株式会社、データアーカイバーLB-DH8シリーズカタログ、2016年9月
【非特許文献2】Archival Disc White Paper:Archival Disc Technology 1st Edition July 2015
【非特許文献3】Archival Disc White Paper:Archival Disc Technology 2st Edition July 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第3世代の1TB容量のアーカイバル・ディスクにおいては、第2世代の500GB容量から1情報層あたりの記録容量を83.4GBから166.7GBへと2倍に増やす必要がある。記録容量を増やす手法としては、情報層の数を増やす、最短の記録マークのサイズを小さくして一つの情報層における記録密度を高くする、また記録再生方式を2値記録から多値記録にするという方法がある。1TBアーカイバル・ディスクでは上記の技術を取り入れ大容量化を行うが、特に情報層を3層から4層に増やすことによる課題として、再生耐久性が挙げられる。
【0010】
再生耐久性は、予め最適なパワーのレーザ光で記録された記録マークに、再生パワーのレーザ光を連続照射することにより評価される。具体的には、100万回(100万パス)再生できる最大再生パワーとして定義され、100万パスの再生が可能か否かは、例えば、100万パス後の記録信号のエラーレートやd-MLSE値の悪化量で判断する。ここで、d-MLSEはアーカイバル・ディスクの、記録信号品質の評価指標であり、Distribution Derived-Maximum Likelihood Sequence Error Estimationの略号である。
【0011】
再生耐久性が課題になることを先に述べたが、多層情報記録媒体においては手前にある情報層をレーザが通過して奥にある情報層に到達そこからの反射により再生信号を得るため、同じレーザパワーで再生すると情報層が増えることにより、より奥の層より戻ってくる反射光量は低下する。反射光量の低下は再生信号のS/N低下を生じさせ、そのためエラーレート値が悪化する。そこでS/N悪化を抑制すべく、低下した光量分の再生パワーを上げる必要がある。
【0012】
再生パワーを上げることで、特にレーザ光照射面より最も奥に位置する情報層(L0層)に対して、熱負荷が大きくなる。この熱負荷が大きくなることにより、前述した再生耐久性が悪化することにあるが、この悪化するメカニズムにはいくつかの現象が挙げられる。一つは、熱負荷により形成された信号が歪み、信号品質が低下すること、一つは熱負荷により記録膜や誘電体膜の変質が生じそれがノイズ成分となり、信号品質が低下すること、一つは熱負荷により基板とそれ接する膜の界面に剥離が生じそれがノイズ成分となり、信号品質が低下することである。
【0013】
特に、情報記録媒体を安価で高い生産性で製造するには、基板材料はある程度限定されるため、前述した3つ目の悪化メカニズムである「基板とそれ接する膜の界面の剥離」を抑制するためには、膜材料や膜構成による解決が必要である。この剥離を抑制できる方法として、
(1)基板界面への熱負荷を抑制するため、熱を最も発生する記録膜からの熱拡散を抑えるよう、基板と記録膜に設けられた誘電体膜を低熱伝導化させる、
(2)基板とそれに接する誘電体膜の密着性を高める誘電体膜材料にする
ことを考えた。
【0014】
この(1)と(2)を満たす誘電体膜材料として、本発明者らはZnSを含む低熱伝導で高密着性の材料を見出した。本発明は、前述した悪化メカニズムにおける、基板とそれ接する膜の界面の剥離を抑制し、高い再生パワーでも優れた再生耐久性を有する情報層を提供する。これにより、多くの情報層が積層でき、テラバイト級の大容量な多層情報記録媒体を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る情報記録媒体は、レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、3層以上の情報層を含み、前記3層以上の情報層のうちの、少なくとも一つの情報層を第1情報層とし、前記第1情報層が前記レーザ光照射面から見て遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、および記録膜をこの順に含み、前記第1誘電体膜が少なくともZnSを含み、前記記録膜が少なくともWと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む、情報記録媒体である。
【0016】
また前記第1情報層が、ポリカーボネートからなる基板を有し、前記第1誘電体膜が前記ポリカーボネート基板と接する情報記録媒体である。
【0017】
また前記第1誘電体膜が、さらにSiOまたはTiOを30mol%以下で含む情報記録媒体である。
【0018】
本開示に係る情報記録媒体の製造方法は、情報記録媒体が有する3以上の情報層の各々を形成する工程を含み、前記3以上の情報層のうちの少なくとも一つの情報層を形成する工程が、少なくとも、第1誘電体膜を形成する工程と、記録膜を形成する工程とを含み、前記第1誘電体膜を形成する工程が、少なくともZnSを含み、前記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Mnとを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む記録膜を形成し、前記第1誘電体膜を形成する工がRF電源を用いたスパッタリング、前記記録膜を形成する工程がDC電源を用いたスパッタリングにより実施される、情報記録媒体の製造方法である。
【0019】
また前記第1誘電体膜を形成する工程で形成する前記第1誘電体膜が、さらにSiOまたはTiOを30mol%以下で含情報記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の情報記録媒体は、優れた再生耐久性の情報層、特にポリカーボネート基板を含むL0層を有し、大容量かつ高信頼性の多層情報記録媒体の実現を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1に係る情報記録媒体100の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本開示は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
実施の形態1として、レーザ光7を用いて情報の記録及び再生を行う情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その光学的情報記録媒体の断面を示す。本実施の形態の情報記録媒体100は、情報を記録および再生する情報層を、基板1を介して両側にそれぞれ4層ずつ(合計8層)設けており、カバー層5側よりレーザ光7を照射し、各情報層での情報の記録および再生が可能である多層光学的情報記録媒体である。レーザ光7は波長405nm付近の青紫色域のレーザ光である。
【0023】
情報記録媒体100は、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102を貼り合わせた、両面の情報記録媒体である。A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102は、それらの基板1の裏面(情報層を有する面とは逆側)にて貼り合わせ層6により貼り合わされている。A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102は各々、基板1上に中間分離層2、3および4などを介して、情報層として順次積層されたL0層10、L1層20、L2層30およびL3層40を有し、さらに、L3層40に接して設けられたカバー層5を有する。L1層20、L2層30およびL3層40は透過型の情報層である。
【0024】
L0層10は、レーザ光7から見て遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜11、第2誘電体膜12、記録膜13および第3誘電体膜14を、この順に含む。同様にL1層20は、第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23を、L2層30は、第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33を、L3層40は、第1誘電体膜41、記録膜42および第2誘電体膜43をこの順に含む。
【0025】
情報記録媒体100において、案内溝を基板1に形成した場合、本明細書においては、レーザ光7に近い側にある面を便宜的に「グルーブ」と呼び、レーザ光7から遠い側にある面を便宜的に「ランド」と呼ぶ。このグルーブとランドの両方に対応する位置で記録膜に、記録密度を高くしてピットを形成すれば(ランド-グルーブ記録)、1情報層あたりの容量を例えば166.7GBにすることができる。情報記録媒体100においては8つの情報層で情報の記録および再生が可能であるから、情報記録媒体100は1TBの容量を有するものとして提供できる。案内溝は、後述するとおり、中間分離層2、3および4にも形成してよい。特に、L1層20、L2層30およびL3層40において、ランド-グルーブ記録を実施する場合には、中間分離層2、3および4に案内溝を形成することが好ましい。
【0026】
3つの情報層の実効反射率は、L0層10、L1層20、L2層30およびL3層40の反射率と、L1層20、L2層30およびL3層40の透過率を各々調整することにより制御できる。本明細書中では、上記のとおり、4つの情報層を積層した状態で測った各情報層の反射率を、実効反射率と定義する。特に断りがない限り、「実効」と記載していなければ、積層しないで測った反射率を指す。また、反射率Rはグルーブ部の未記録状態での溝部反射率、反射率Rはランド部の未記録状態での溝部反射率を示す。
【0027】
本実施の形態では、一例として、L0層10の実効反射率Rが2.3%、実効反射率Rが2.4%、L1層20の実効反射率Rが2.5%、実効反射率Rが2.6%、L2層30の実効反射率Rが2.5%、実効反射率Rが2.6%、L3層40の実効反射率Rが2.6%、実効反射率Rが2.7%となるように設計した構成を説明する。
【0028】
L3層30の透過率が85%、L2層30の透過率が83%、L1層20の透過率が80%である場合、L0層10は反射率Rが7.5%、反射率Rが7.7%、L1層20は反射率Rが5.1%、反射率Rが5.3%、L2層30は反射率Rが3.5%、反射率Rが3.6%、L3層40は反射率Rが2.6%、反射率Rが2.7%となるように設計すれば、前述の実効反射率を得ることができる。ここでの透過率は記録膜が未記録状態であるときのグルーブ部およびランド部での平均値を示している。
【0029】
ここで、再生光量について説明する。再生光量は、各層の記録時の実効反射率と再生パワーの積を求め、これを100で除すことにより(記録時の実効反射率R(%)×再生パワーPr(mW)/100)、求めることができる。
【0030】
第2世代の500GBアーカイバル・ディスク(片側3つの情報層の情報記録媒体)においては、例えばL0層の実効反射率はRが3.0%、Rが3.1%であった。このことから4層の情報層101において、L0層10より3層の情報層と少なくとも同等の再生光量を得るためには、グルーブにおいては3.0/2.3≒1.3倍に再生パワーを上げないといけない。L0層から見たときの手前の層の透過率の合計(4層の情報層でいえばL1×L2×L3、3層の情報層でいえばL1×L2)は、おおよそでL3層分の約85%になっている、つまりその分だけL0層に到達する光のエネルギーは減衰しているが、それでもL0層への照射エネルギーは15%ぐらい高くなっている。
【0031】
また、1TB容量を実現するにあたり、トラックピッチだけでなく線方向の記録密度も高くしており、再生信号のS/Nを低下しないため、その分だけ再生パワーをより高くする必要がある。
【0032】
以下、基板1、中間分離層2、中間分離層3、中間分離層4、カバー層5および貼り合わせ層6の機能、材料および厚さについて説明する。
【0033】
基板1の材料として、例えばポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMA等の樹脂、あるいはガラスを用いることができるが、それらの中で特に安価で高い生産性を有するポリカーボネートが適している。基板1は透明であることが好ましいが、半透明であってもよく、特に透明性は限定されない。また、基板1の形状は特に限定されず、円盤状であってもよい。基板1は、例えば、厚さが約0.5mmであり、直径が約120mmである円盤状のものである。
【0034】
基板1のL0層10側の表面には、必要に応じてレーザ光7を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板1に形成した場合、前述した通り、レーザ光7に近い側の溝(面)を「グルーブ」と呼び、レーザ光7から遠い側の溝(面)を「ランド」と呼ぶ。溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は、例えば10nm以上50nm以下であってよい。ランド-グルーブ記録方式を採用し、かつ高い記録密度で記録する場合、クロストークの影響を低減するために、溝深さはより深く設計してよい。但し、溝を深くすると反射率は下がる傾向にある。クロストークを低減するとともに、反射率を維持できるよう、溝深さは20nm以上40nm以下であることが好ましい。実施の形態1ではランド-グルーブ間距離(グルーブの幅方向の中心と、当該グルーブに隣接するランドの幅方向の中心との間の距離)は、約0.18μmであるが、これに限定されるものではない。
【0035】
中間分離層2、3および4は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂等からなり、例えばアクリル系樹脂からなる。中間分離層2、3および4は、記録および再生に用いる波長λのレーザ光に対して光吸収が小さいものであると、レーザ光7を効率よくL0層10およびL1層20に到達させることができる。中間分離層2、3および4は、L0層10、L1層20、L2層30およびL3層40のフォーカス位置を区別するために設けられるものである。したがって、中間分離層2、3および4の厚さは、例えば、対物レンズの開口数(NA)とレーザ光の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上としてよい。焦点の光強度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)}で近似できる。また、L1層20、L2層30における裏焦点の影響を防ぐため、中間分離層2、中間分離層3、中間分離層4の厚さは異なる値としてよい。
【0036】
中間分離層2、3および4において、レーザ光7の入射側に凹凸の案内溝が形成されていてもよい。中間分離層2、3および4に設ける案内溝の段差、およびランド-グルーブ間距離は、基板1に設けられる案内溝に関して説明したとおりである。実施の形態1では、溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は30nm、ランド-グルーブ間距離は、約0.18μmとしているが、これらに限定されるものではない。
【0037】
カバー層5は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等からなる。カバー層5は、使用するレーザ光に対して光吸収が小さいものであってよい。あるいは、カバー層5は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いて形成してよい。これらの材料を使用する場合は、カバー層5は、シート状や薄板状であってよい。シート状や薄板状のカバー層5は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を接着剤として、L2層30における第2誘電体膜33に貼り合わせることにより形成してよい。カバー層5の厚さは、例えば、NA=0.91で良好な記録および再生が可能な厚さである40μm~80μm程度としてよく、特に、45μm~63μm程度としてよい。
【0038】
貼り合わせ層6は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂からなり、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102を接着させている。貼り合わせ層6の透明性は特に限定されず、透明であっても、半透明であってもよい。貼り合わせ層6にはレーザ光7を遮光する膜を設けてもよい。貼り合わせ層6の厚さは5μm~80μm程度であってよく、特に20μm~50μm程度であってよい。
【0039】
情報記録媒体100の厚さをBD規格の媒体と同等の厚さとする場合、中間分離層2、3および4ならびにカバー層5の厚さの総和は100μmに設定してよい。例えば、中間分離層2を約15.5μm厚、中間分離層3を約19.5μm厚、中間分離層4を約11.5μm厚、カバー層5を約53.5μm厚に設定してよい。
【0040】
次に各層の膜構成について説明する。
【0041】
まずL0層10の構成について説明する。L0層10は基板1の表面上に、少なくとも第1誘電体膜11、第2誘電体膜12、記録膜13および第3誘電体膜14がこの順に積層されることにより形成される。
【0042】
第1誘電体膜11は、本発明の特長となす膜であり、本発明の第1誘電体膜11は基板1との高い密着性を有し、また熱伝導が低いためレーザ光の吸収により記録膜13で生じた熱が基板1へ拡散を抑制するとこができ、L0層に優れた再生耐久性を与えることができる。
【0043】
また本発明の第1誘電体膜11は光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜11は、記録膜13への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜13中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。
【0044】
第1誘電体膜11は、基板1の表面上にスパッタで形成する。基板1は成形基板であり、ポリカーボネートが好ましく用いられる。ポリカーボネートは熱可塑性樹脂であって、光重合開始剤は含んでいない。また、低分子成分も少ないため、第1誘電体膜11のスパッタ中に、揮発する可能性がある成分が少ない。
【0045】
具体的に、第1誘電体膜11は、ZnS、またはそれを含む材料である。さらにSiOまたはTiOを30mol%以下で含むことで、ノイズを低減することがで、より高いS/Nを得ることができる。
【0046】
第1誘電体膜11の厚さは、例えば、3nm以上30nm以下であって、5nm以上20nm以下であることが、より基板1との密着性と熱拡散を両立することができ、好ましい。また、第1誘電体膜11の厚さが30nmを超えると、第1誘電体膜11の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0047】
第1誘電体膜11の組成は、例えば、X線マイクロアナライザー(XMA)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、EDS(エネルギー分散型X線分析)、またはラザフォード後方散乱分析法(RBS)で分析することができる。後述する第1誘電体膜21、31、41、第2誘電体膜12、23、33、43、記録膜13、22、32、42、および第3誘電体膜14も、同様にこれらの手法で含まれる元素、およびその組成を分析することができる。
【0048】
第1誘電体膜11は、例えばスパッタにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、第1誘電体膜11に含まれる誘電体は、スパッタ中の金属の欠損、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施の形態および他の実施の形態において、第1誘電体膜11に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。これは後述する第1誘電体膜21、31、41、第2誘電体膜12、23、33、43、および第3誘電体膜14についても同様である。
【0049】
第1誘電体膜11は、ZnとSから実質的に成っていて、さらにSiとOまたはTiOを含んでいてもよい。
【0050】
ここで「実質的に」という用語は、第1誘電体膜11が例えばスパッタにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は第1誘電体膜11に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。また、後述する第1誘電体膜21、31、41、第2誘電体膜12、23、33、43、および第3誘電体膜14についても同様に適用される。
【0051】
第2誘電体膜12の機能は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第2誘電体膜12は、記録膜13への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜13中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。
【0052】
第2誘電体膜12には例えば、Zr-Zn-Sn-O、Zr-Zn-Sn-Y-O、Zr-Zn-Sn-Mg-O、Zr-Zn-Sn-Ca-O、Zr-Zn-Sn-Ga-O、Zr-Zn-Sn-Al-O、Zr-Zn-Sn-Y-Ga-O、Zr-Zn-Sn-Mg-Ga-O、Zr-Zn-Sn-Ca-Ga-O、Zr-Zn-Sn-Y-Al-O、Zr-Zn-Sn-Mg-Al-O、Zr-Zn-Sn-Ca-Al-O、Zr-In-O、Zr-In-Si-O、Zr-In-Y-O、Zr-In-Mg-O、Zr-In-Ca-O、Zr-In-Y-Si-O、Zr-In-Mg-Si-O、Zr-In-Ca-Si-O、Ti―O、Nb-OTi-Nb-O等を用いてよい。また第2誘電体膜12には、上記の系にHfが含まれていてもよい。
【0053】
第2誘電体膜12の厚さは、例えば、3nm以上30nm以下であって、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。3nm未満であると、第1誘電体膜11と密着性が低下して、記録膜13への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。30nmを超えると、L0層10の反射率が低下することがある。
【0054】
本発明の記録膜13は、少なくともWと、Mnと、酸素とを含み、さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素を含む。
【0055】
記録膜13は、少なくともWと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光7の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜13を備えたL0層10は追記型のものとなる。
【0056】
記録膜13において、WおよびMnは、各々W-O、Mn-Oの酸化物の形態で存在していてよい。
【0057】
記録膜中のW-Oは透明な酸化物で、レーザ光が記録膜に照射された際に、酸素を発生して記録膜を膨張させる機能を有する。また、Wを含むターゲットを用いて記録膜をDCスパッタで形成する際に、ターゲット中のWは安定にDCスパッタを持続させる機能を有する。Wが無ければ、記録膜が膨張せず、記録マークの形成が困難になる。Wが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜を形成すると、Wは、記録膜中ではW-Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
【0058】
記録膜中のMn-Oは光吸収性を有する酸化物であり、レーザ光が記録膜に照射された際に、酸素を発生して記録膜を膨張させる機能を有する。Mn-Oが多いほど変調度は大きくなり、信号品質は向上する。Mn-Oが無ければ、品質のよい記録マークは形成できない。Mn-Oが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜を形成すると、Mn-Oは記録膜中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
【0059】
さらに、Cu、Zn、Nb、Ta、およびTiより選ばれる少なくとも一つの元素Mを含むことにより、高い導電率、大きな変調度、または高い反射率が得られる。
【0060】
記録膜13において、CuはCu-Oの酸化物の形態で存在していてよい。記録膜中のCu-Oは光吸収性を有する酸化物であり、記録膜にレーザ光を吸収させる役割を担う。また、ターゲット中のCuはターゲットに導電性を付与し、記録膜をDCスパッタで形成する際に、安定にDCスパッタを持続させる機能を有する。Cuが無いターゲットを用いると、DCスパッタが非常に困難になる。Cuが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜を形成すると、Cuは、記録膜中ではCu-Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物になる。
【0061】
記録膜13において、Znは、Zn-Oの酸化物の形態で存在していてよい。記録膜中のZn-Oは導電性を有する酸化物であり、これを含むターゲットを用いてDCスパッタにより記録膜を形成すると、DCスパッタの持続性がより安定する。また、Zn-Oの量を調整することで、記録膜の透過率や光吸収率を調整することができる。ただし、ターゲット中にZn-Oが含まれていなくてもDCスパッタは可能である。Zn-Oが含まれるターゲットを用いて、酸素を導入しながらスパッタにより記録膜を形成すると、Zn-Oは記録膜中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
【0062】
記録膜13において、Nb、Ta、およびTiは、Nb-O、Ta-OおよびTi-Oの酸化物の形態で存在していてよい。Nb、Ta、およびTiはそれぞれ、酸化数の異なる複数の酸化物を形成し得る。一般に酸素の多い酸化物は透明である。例えば、NbO(ニオブ2価)とNbO(ニオブ4価)は黒色であるが、Nb(ニオブ5価)は無色である。マグネリ相の酸化物Nb3n+18n-2も存在する。TaO(タンタル4価)は黒色であるが、Ta(タンタル5価)は無色である。TiO(チタン2価)は黒色、Ti(チタン3価)は黒紫色であるが、TiO(チタン4価)は無色である。そのため、記録膜13の透過率を高めることができる。TaはTa-Oとして存在した場合、記録マークを膨張させる機能に優れた材料である。またNb、Tiは、Nb-O、Ti-Oは高屈折率を有し反射率を高めることができる。
【0063】
記録膜13の膜厚は、15nm以上55nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜13が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されない。55nmを超えると、反射率が低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜13の厚さが55nmを超えると、記録膜13の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0064】
記録膜13の組成は、例えば、W-Mn-O、W-Cu-Mn-Zn-O、W-Cu-Mn-Nb-O、W-Cu-Mn-Nb-Zn-O、W-Cu-Mn-Nb-Ta-O、W-Cu-Mn-Nb-Ta-Zn-O、W-Cu-Mn-Ta-O、W-Cu-Mn-Ta-Zn-O、W-Cu-Mn-Ti-O、W-Cu-Mn-Ti-Zn-O、W-Cu-Mn-Ti-Ta-O、W-Cu-Mn-Ti-Ta-Zn-O、W-Mn-Nb-O、W-Mn-Nb-Zn-O、W-Mn-Nb-Ta-O、W-Mn-Nb-Ta-Zn-O、W-Mn-Ta-O、W-Mn-Ta-Zn-O、W-Mn-Ti-O、W-Mn-Ti-Zn-O、W-Mn-Ti-Ta-O、W-Mn-Ti-Ta-Zn-O等であってよい。
【0065】
記録膜13中のWは、透明性の高いWOの形態で存在していてよい。記録膜13には、金属W、WO、WOとWOの中間の酸化物(W1849、W2058、W50148、W40119など)、またはマグネリ相(W3nー1)が含まれていてもよい。
【0066】
記録膜13の膜中のMnは、MnO、Mn、Mn、およびMnOから選ばれる少なくとも一つの酸化物の形態で存在していてよい。記録膜13には、金属Mnが含まれていてもよい。
【0067】
記録膜13中のCuは、CuOまたはCuOの形態で存在していてよい。記録膜13には、金属Cuが含まれていてもよい。
【0068】
記録膜13中のNbは、無色のNbまたはNbOの形態で存在していてよい。NbとNbOが混在していてもよい。記録膜13には、NbO、NbO、またはマグネリ相(Nb3n+18n-2)が含まれていてもよい。記録膜13には、金属Nbが含まれていてもよい。
【0069】
記録膜13中のTaは、無色のTaの形態で存在していてよい。記録膜13には、TaOが含まれていてもよい。記録膜13には、金属Taが含まれていてもよい。
【0070】
記録膜13中のTiは、無色のTiOまたはTiOの形態で存在していてよい。TiOとTiOが混在していてもよい。記録膜13には、TiO、Ti、Ti、またはマグネリ相(Ti2n-1)が含まれていてもよい。記録膜13には、金属Tiが含まれていてもよい。
【0071】
記録膜13中には、W、Cu、Mn、および元素Mから選択される2以上の金属を含む複合酸化物が存在してもよい。
【0072】
記録膜13の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Zn-Oである場合、記録膜13の系は、WO-CuO-MnO-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、WO-CuO-MnO-ZnO、WO-CuO-MnO-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、WO-CuO-Mn-ZnO、およびWO-CuO-MnO-ZnO等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0073】
記録膜13の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Nb-Oである場合、記録膜13の系は、WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-Mn-Nb、WO-CuO-MnO-Nb、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-MnO-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-Mn-NbO、WO-CuO-MnO-NbO等であってよい。ここに示した系において、Nbに代えてNbOが存在していてもよく、NbおよびNbOが混在していてもよい。あるいは酸化タングステン、酸化ニオブのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。さらに、ここに示した系において、ZnOを含んでもよい。
【0074】
記録膜13の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ta-Oである場合、記録膜13の系は、WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-Mn-Ta、WO-CuO-MnO-Ta、WO-CuO-MnO-TaO、WO-CuO-Mn-TaO、WO-CuO-Mn-TaO、WO-CuO-MnO-TaO、WO-CuO-MnO-TaO、WO-CuO-Mn-TaO、WO-CuO-Mn-TaO、およびWO-CuO-MnO-TaO等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0075】
記録膜13の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ti-Oである場合、記録膜13の系は、WO-CuO-MnO-TiO、WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-MnO-TiO、WO-CuO-MnO-TiO、WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-Mn-TiO、WO-CuO-MnO-TiO等であってよい。TiOに代えてTiOが存在していてもよく、TiOおよびTiOが混在していてもよい。あるいは酸化タングステン、酸化チタンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。さらに、ここに示した系において、ZnOを含んでもよい。
【0076】
記録膜13の組成が、例えば、W-Cu-Mn-Ta-Zn-Oである場合、記録膜13の系は、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-Mn-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-Ta-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-Mn-TaO-ZnO、WO-CuO-MnO-TaO-ZnO等であってよい。あるいは酸化タングステンのマグネリ相を含んでもよい。これらの系において、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。
【0077】
記録膜13に含まれる酸素の割合は、金属元素と酸素の原子数の合計を100原子%としたときに、60原子%以上80原子%以下であってよい。酸素の割合が60原子%未満であると、吸収率が高くなり、再生耐久性の悪化や、再生光量の低下が生じることがある。酸素の割合が80原子%を超えると、記録感度が悪くなりすぎて、記録に大きなパワーが必要になり、高速記録も困難になる。
【0078】
記録膜13は、W、Cu、Mn、酸素、および元素Mから実質的になっていてよい。ここで、「実質的に」という用語は、記録膜13が例えばスパッタにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は記録膜13に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、後述する記録膜22、32、42に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
【0079】
記録膜13は、例えばスパッタにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、記録膜13に含まれる酸化物は、スパッタ中の酸素および/または金属の欠損、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施の形態および他の実施の形態において、記録膜13に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。また、複合酸化物、混合酸化物、亜酸化物、および高酸化数酸化物を形成してよい。これは後述する記録膜22、32、42についても同様である。
【0080】
第3誘電体膜14の機能は、前述した第2誘電体膜12のそれと同様である。第3誘電体膜14の材料は、第2誘電体膜12と同様の材料を用いてよい。
【0081】
第3誘電体膜14の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜13への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L0層10の反射率が下がることがある。
【0082】
第1誘電体膜11、第2誘電体膜12、記録膜13、および第3誘電体膜14の具体的な厚さはマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜13が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部-未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
【0083】
次にL1層20の構成について説明する。L1層20は、中間分離層2の表面上に、少なくとも第1誘電体膜21、録膜22および第2誘電体膜23が積層されてもよい。
【0084】
第1誘電体膜21の機能は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜21は、記録膜22への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜22中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。第1誘電体膜21の材料は、前述したL0層10の第2誘電体膜12と同様の材料を用いてよい。
【0085】
第1誘電体膜21の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であることが好ましい。5nm未満であると中間分離層2と密着性が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。40nmを超えると、L1層20の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜21の厚さが40nmを超えると、第1誘電体膜21の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0086】
記録膜22の機能は、前述したL0層10の記録膜13と同様の働きを有する。記録膜22の材料は、前述したL0層10の記録膜13と同様の材料を用いることができ、少なくともWと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光7の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜22を備えたL1層20は追記型のものとなる。
【0087】
記録膜22の膜厚は、15nm以上55nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜22が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されない。55nmを超えると、反射率が低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜22の厚さが50nmを超えると、記録膜22の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0088】
第2誘電体膜23の機能は、前述したL0層10の第3誘電体膜14のそれと同様である。第2誘電体膜23の材料は、前述したL0層10の第3誘電体膜14と同様の材料を用いてよい。
【0089】
第2誘電体膜23の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L1層20の反射率が下がることがある。
【0090】
第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23の具体的な厚さはマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜13が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部-未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
【0091】
次にL2層30の構成について説明する。L2層30は、中間分離層3の表面上に、少なくとも第1誘電体膜31、録膜32および第2誘電体膜33が積層されてもよい。
【0092】
第1誘電体膜31の機能は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜31は、記録膜32への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜32中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。第1誘電体膜31の材料は、前述したL0層10の第2誘電体膜12と同様の材料を用いてよい。
【0093】
第1誘電体膜31の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であることが好ましい。5nm未満であると中間分離層3と密着性が低下して、記録膜32への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。40nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜31の厚さが40nmを超えると、第1誘電体膜31の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0094】
記録膜32の機能は、前述したL0層10の記録膜13と同様の働きを有する。記録膜32の材料は、前述したL0層10の記録膜13と同様の材料を用いることができ、少なくともWと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光7の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜32を備えたL2層30は追記型のものとなる。
【0095】
記録膜32の膜厚は、15nm以上55nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜32が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されない。55nmを超えると、反射率が低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜32の厚さが50nmを超えると、記録膜32の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0096】
第2誘電体膜33の機能は、前述したL0層10の第3誘電体膜14のそれと同様である。第2誘電体膜33の材料は、前述したL0層10の第3誘電体膜14と同様の材料を用いてよい。
【0097】
第2誘電体膜33の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜32への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L2層30の反射率が下がることがある。
【0098】
第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33の具体的な厚さはマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜13が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部-未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
【0099】
次にL3層40の構成について説明する。L3層40は、中間分離層4の表面上に、少なくとも第1誘電体膜41、録膜42および第2誘電体膜43が積層されてもよい。
【0100】
第1誘電体膜41の機能は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜41は、記録膜42への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜42中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。第1誘電体膜41の材料は、前述したL0層10の第2誘電体膜12と同様の材料を用いてよい。
【0101】
第1誘電体膜41の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であることが好ましい。5nm未満であると中間分離層4と密着性が低下して、記録膜42への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。40nmを超えると、L3層40の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜41の厚さが40nmを超えると、第1誘電体膜41の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0102】
記録膜42の機能は、前述したL0層10の記録膜13と同様の働きを有する。記録膜42の材料は、前述したL0層10の記録膜13と同様の材料を用いることができ、少なくともWと、Mnと、酸素とを含むので、例えば、レーザ光7の照射によって酸素(O)が分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜42を備えたL3層40は追記型のものとなる。
【0103】
記録膜42の膜厚は、15nm以上55nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜42が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されない。55nmを超えると、反射率が低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜42の厚さが50nmを超えると、記録膜42の成膜に要する時間(スパッタ時間)が長くなり生産性が低下することがある。
【0104】
第2誘電体膜43の機能は、前述したL0層10の第3誘電体膜14のそれと同様である。第2誘電体膜43の材料は、前述したL0層10の第3誘電体膜14と同様の材料を用いてよい。
【0105】
第2誘電体膜43の厚さは、5nm以上30nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜42への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、30nmを超えると、L3層40の反射率が下がることがある。
【0106】
第1誘電体膜41、記録膜42および第2誘電体膜43の具体的な厚さはマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜13が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部-未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
【0107】
第1誘電体膜11、21、31、41、第2誘電体膜12、23、33、43、第3誘電体膜14、および記録膜13、22、32、42は、これらを構成する酸化物を混合したターゲットを用いて、RFスパッタまたはDCスパッタにより形成してよい。あるいは、これらの膜は、酸素を含まない合金ターゲットを用いて、酸素導入下でのRFスパッタ、または酸素導入下でのDCスパッタにより形成してよい。あるいはまた、各酸化物のターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、同時にRFスパッタまたはDCスパッタに付す方法で、これらの膜を形成してよい(マルチスパッタリング法)。RFスパッタとDCスパッタは同時に実施してもよい。さらに別の膜形成方法としては、金属の単体もしくは合金からなるターゲット、または酸化物のターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、必要に応じて酸素を導入しなら同時にRFスパッタする方法や、同時にDCスパッタする方法が挙げられる。あるいは、金属と酸化物を混合してなるターゲットを用い、酸素を導入しながら、RFスパッタまたはDCスパッタする方法により、これらの膜を形成してよい。
【0108】
実施の形態1の変形例においては、本実施の形態に示す情報記録媒体100において、いずれかの情報層の記録膜が、Te-O-PdまたはGe-Bi-O等の他の記録膜、すなわち本発明のW-O系記録膜以外の記録膜であってもよい。あるいは、他の変形例においては、必要に応じて、反射膜および上記において例示していない材料から成る誘電体膜を設けてもよい。本開示に係る技術の効果は、これらの変形例においても達成される。
【0109】
情報記録媒体100の記録方式は、線速度一定のConstant Linear Velocity(CLV)、回転数一定のConstant Angular Velocity(CAV)、Zoned CLVおよびZoned CAVのいずれであってよく、2値記録、または多値記録方式を使うことができる。
【0110】
本実施の形態の情報記録媒体100への情報の記録および再生は、対物レンズの開口数NAが0.91である光学系で実施してよく、あるいはNA>1の光学系で実施してよい。光学系としてはSolid Immersion Lens(SIL)、またはSolid Immersion Mirror(SIM)を使用してもよい。この場合、中間分離層2、3および4、ならびにカバー層5は5μm以下の厚さとしてよい。あるいは、近接場光を利用した光学系を用いてもよい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で説明した情報記録媒体100の製造方法を、実施の形態2として説明する。
【0111】
L0層10を構成する第1誘電体膜11、第2誘電体膜12、記録膜13および第3誘電体膜14は気相成膜法の一つであるスパッタリング法(スパッタ)により形成できる。
【0112】
まず、基板1(例えば、厚み0.5mm、直径120mm)を成膜装置内に配置する。
続けて、まず第1誘電体膜11を成膜する。このとき、基板1に螺旋状の案内溝が形成されているときは、この案内溝側に第1誘電体膜11を成膜する。
【0113】
第1誘電体膜11は、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタすることにより形成される。希ガスは、例えば、Arガス、Krガス、またはXeガスであるが、コスト面ではArガスが有利である。これはスパッタの雰囲気ガスを希ガスまたはその混合ガスとする、いずれのスパッタについてもあてはまる。また、第1誘電体膜11はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。
【0114】
続いて、第1誘電体膜11上に第2誘電体膜12を成膜する。第2誘電体膜12は、第2誘電体膜12の組成に応じたターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気でスパッタリングを実施することにより形成できる。また、第2誘電体膜12はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。第2誘電体膜12を形成するターゲットの比抵抗値は好ましくは1Ω・cm以下である。これによりDCスパッタ、またはパルスDCスパッタが可能になる。
【0115】
続いて、記録膜13を成膜する。記録膜13は、その組成に応じて、金属合金または金属-酸化物の混合物からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングを実施することにより形成できる。記録膜13の厚さが第1誘電体膜11などの誘電体膜より厚いので、生産性を考慮し、記録膜13は、RFスパッタリングより高い成膜レートが期待できるDCスパッタリング、またはパルスDCスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。記録膜13中に多くの酸素を含有させるため、雰囲気ガス中に多量の酸素ガスを混合することが好ましい。記録膜13はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。
【0116】
具体的には、記録膜13の成膜に際して合金ターゲットまたは混合物ターゲットを用いる場合、ターゲットの組成は、W-Cu-Mn-Nb、W-Cu-Mn-Zn、W-Cu-Mn-Mo、W-Cu-Mn-Ta、W-Cu-Mn-Ti、
W-Cu-Mn-Nb、W-Cu-Mn-ZnO、W-Cu-Mn-Mo、W-Cu-Mn-Ta、W-Cu-Mn-Ti、W-Cu-Mn-Ta、W-Cu-Mn-Ta-ZnO、
等であってよい。
【0117】
続いて、記録膜13上に第3誘電体膜14を成膜する。第3誘電体膜14は、第3誘電体膜14の組成に応じたターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気でスパッタリングを実施することにより形成できる。また、第3誘電体膜14はマルチスパッタリングを実施して形成してよい。第3誘電体膜14を形成するターゲットの比抵抗値は好ましくは1Ω・cm以下である。これによりDCスパッタ、またはパルスDCスパッタが可能になる。
【0118】
続いて、第3誘電体膜14上に中間分離層2を形成する。中間分離層2は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂(例えばアクリル系樹脂)をL0層10上に塗布しスピンコートした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。中間分離層2に案内溝を設ける場合、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂に密着させた状態でスピンコートした後に樹脂を硬化させ、さらにその後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がす方法で中間分離層2を形成してよい。また、中間分離層2は二段階で形成してよく、具体的には、厚みの大部分を占める部分を先にスピンコート法で形成し、次に案内溝を有する部分を、スピンコート法と転写用基板による転写との組み合わせにより形成してよい。
【0119】
続いて、L1層20を形成する。具体的には、まず、第1誘電体膜21を中間分離層2の上に形成する。第1誘電体膜21は、前述した第2誘電体膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、第1誘電体膜21上に記録膜22を形成する。記録膜22は、前述した記録膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、記録膜22上に第2誘電体膜23を形成する。第2誘電体膜23は、前述した第3誘電体膜14と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0120】
続いて、第2誘電体膜23上に中間分離層3を形成する。中間分離層3は、前述した中間分離層2と同様の方法で形成できる。
【0121】
続いて、L2層30を形成する。L2層30は、基本的には前述したL1層20と同様の方法で形成できる。まず、中間分離層3上に第1誘電体膜31を形成する。第1誘電体膜31は、前述した第2誘電体膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0122】
続いて、第1誘電体膜31上に記録膜32を形成する。記録膜32は、前述した記録膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、記録膜32上に第2誘電体膜33を形成する。第2誘電体膜33は、前述した第3誘電体膜14と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0123】
続いて、L3層40を形成する。L3層40は、基本的には前述したL1層20と同様の方法で形成できる。まず、中間分離層4上に第1誘電体膜41を形成する。第1誘電体膜41は、前述した第2誘電体膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0124】
続いて、第1誘電体膜41上に記録膜42を形成する。記録膜42は、前述した記録膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。続いて、記録膜42上に第2誘電体膜43を形成する。第2誘電体膜43は、前述した第3誘電体膜14と同様の方法で、得ようとする組成に応じたターゲットを用いて形成できる。
【0125】
いずれの誘電体膜および記録膜も、スパッタリング時の供給電力を10W~10kWとし、成膜室の圧力を0.01Pa~10Paとして形成してよい。
【0126】
続いて、第2誘電体膜43上にカバー層5を形成する。カバー層5は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を第2誘電体膜43上に塗布し、スピンコートした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。あるいは、カバー層5は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、もしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、またはガラスから成る円盤状の基板を貼り合わせる方法で形成してよい。具体的には、第2誘電体膜33に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を塗布し、塗布した樹脂に基板を密着させた状態でスピンコートを実施して樹脂を均一に延ばし、その後、樹脂を硬化させる方法でカバー層5を形成できる。
【0127】
なお、各層の成膜方法として、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相堆積法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)および分子線エピタキシー法(MBE法:Molecular Beam Epitaxy)を用いることも可能である。
【0128】
このようにしてA面情報記録媒体101を製造することができる。また必要に応じ、基板1およびL0層10に、ディスクの識別コード(例えば、BCA(Burst Cutting Area))が含まれるようにしてもよい。例えば、ポリカーボネート製の基板1に識別コードを付ける場合、基板1を成形した後に、COレーザなどを用いて、ポリカーボネートを溶解・気化することにより、識別コードを付けることができる。また、L0層10に識別コードを付ける場合、半導体レーザなどを用いて、記録膜13に記録を行う、または記録膜13を分解することによって、識別コードを付けることができる。L0層10に識別コードを付ける工程は、第3誘電体膜14の形成後、中間分離層2、3および4の形成後、カバー層5の形成後、または後述する貼り合わせ層6の形成後に実施してよい。
【0129】
同様にしてB面情報記録媒体102の製造も可能である。B面情報記録媒体102の基板1に案内溝を設ける場合、螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の基板1の案内溝のそれと逆向きでもよいし、または同じ向きでもよい。
【0130】
最後に、A面情報記録媒体101において基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面を塗布した樹脂に貼り付ける。その後、樹脂に光を照射して硬化させることにより、貼り合わせ層6を形成する。あるいは、遅行性硬化型の光硬化型樹脂をA面情報記録媒体101に均一に塗布した後に光を当て、その後、B面情報記録媒体102を貼り付けて、貼り合わせ層6を形成してもよい。このようにして、実施の形態1に係る、両面に情報層を有する情報記録媒体100を製造することができる。
【0131】
以上のように、本開示に係る技術の例示として、実施の形態を説明した。
【0132】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
次に、実施例を用いて本開示の技術を詳細に説明する。
【実施例0133】
本発明のより具体的な実施の形態について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
【0134】
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、L0層10を形成する。第1誘電体膜11としてZnSからなるターゲットを用いてZnSを6nm、第2誘電体膜12として(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて((ZrO25(SiO25(In50(mol%)を6nm、記録膜13として実質的にW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oからなるターゲットを用いてW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oを40nm、第3誘電体膜14として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0135】
ここで記録膜の表記に関して、元素比としては金属元素比(原子%)のみを記載した形で表記し、以降についても同様に表記する。例えば、W21Cu17Ta18ZnMn20Ti20(原子%)の酸化物であればW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oと表記する。
【0136】
波長405nmのレーザ光7において、L1層20、L2層30およびL3層40がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でRg≒7.5%、Rl≒7.7%である。
【0137】
第1誘電体膜11の成膜はAr雰囲気で、RF電源を用いて行った。第2誘電体膜12および第3誘電体膜14の成膜は、Ar雰囲気で、DC電源を用いて行った。記録膜13の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0138】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層2を形成する。中間分離層2は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層2が形成される。中間分離層2の厚みは約15.5μmである。
【0139】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成する。L1層20の第1誘電体膜21として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を16nm、記録膜22として本発明における実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを40nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を14nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0140】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30およびL3層40がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でRg≒5.1%、Rl≒5.3%、透過率が約80%である。
【0141】
また、第1誘電体膜21および第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0142】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層3を形成する。中間分離層3は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層3が形成される。中間分離層3の厚みは約19.5μmである。
【0143】
中間分離層3上にL2層30を形成する。第1誘電体膜31として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜32として本発明における実質的にW35Cu14Ta25Zn11Mn15-Oからなるターゲットを用いてW35Cu14Ta25Zn11Mn15-Oを40nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を17nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0144】
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L3層40がない場合のL2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でRg≒3.5%、Rl≒3.6%、透過率が約83%となるように設定した。
【0145】
また、第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0146】
続けて、L2層30上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層4を形成する。中間分離層4は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層4が形成される。中間分離層4の厚みは約11.5μmである。
【0147】
中間分離層4上にL3層40を形成する。第1誘電体膜41として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜42として本発明における実質的にW37Cu12Ta27Zn11Mn13-Oからなるターゲットを用いてW37Cu12Ta27Zn11Mn13-Oを40nm、第2誘電体膜43として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を23nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0148】
第1誘電体膜41および第2誘電体膜43の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L3層40の反射率が、記録膜32が未記録状態でRg≒2.6%、Rl≒2.7%、透過率が約85%となるように設定した。
【0149】
また、第1誘電体膜41および第2誘電体膜43の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜42の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0150】
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜43上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層5を約53.5μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0151】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、L0層10を形成する。第1誘電体膜11としてZnSからなるターゲットを用いてZnSを6nm、第2誘電体膜12として(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて((ZrO25(SiO25(In50(mol%)を6nm、記録膜13として実質的にW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oからなるターゲットを用いてW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oを40nm、第3誘電体膜14として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0152】
ここで記録膜の表記に関して、元素比としては金属元素比(原子%)のみを記載した形で表記し、以降についても同様に表記する。例えば、W21Cu17Ta18ZnMn20Ti20(原子%)の酸化物であればW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oと表記する。
【0153】
波長405nmのレーザ光7において、L1層20、L2層30およびL3層40がない場合のL0層10の反射率が、未記録状態でRg≒7.5%、Rl≒7.7%である。
【0154】
第1誘電体膜11の成膜はAr雰囲気で、RF電源を用いて行った。第2誘電体膜12および第3誘電体膜14の成膜は、Ar雰囲気で、DC電源を用いて行った。記録膜13の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0155】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層2を形成する。中間分離層2は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層2が形成される。中間分離層2の厚みは約15.5μmである。
【0156】
次に、中間分離層2上にL1層20を形成する。L1層20の第1誘電体膜21として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を16nm、記録膜22として本発明における実質的にW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oからなるターゲットを用いてW32Cu17Ta16Zn17Mn18-Oを40nm、第2誘電体膜23として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を14nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0157】
波長405nmのレーザ光6において、L2層30およびL3層40がない場合のL1層20の反射率が、記録膜22が未記録状態でRg≒5.1%、Rl≒5.3%、透過率が約80%である。
【0158】
また、第1誘電体膜21および第2誘電体膜23の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜22の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0159】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層3を形成する。中間分離層3は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層3が形成される。中間分離層3の厚みは約19.5μmである。
【0160】
中間分離層3上にL2層30を形成する。第1誘電体膜31として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜32として本発明における実質的にW35Cu14Ta25Zn11Mn15-Oからなるターゲットを用いてW35Cu14Ta25Zn11Mn15-Oを40nm、第2誘電体膜33として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を17nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0161】
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L3層40がない場合のL2層30の反射率が、記録膜32が未記録状態でRg≒3.5%、Rl≒3.6%、透過率が約83%となるように設定した。
【0162】
また、第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜32の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0163】
続けて、L2層30上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層4を形成する。中間分離層4は、まず母体の厚みを形成する紫外線硬化樹脂をスピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させる。次に、案内溝を転写する紫外線硬化樹脂をスピンコートし、その上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなるスタンパ基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、スタンパ基板を剥離することで、中間分離層4が形成される。中間分離層4の厚みは約11.5μmである。
【0164】
中間分離層4上にL3層40を形成する。第1誘電体膜41として実質的に(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnO)48.4(SnO24.7(ZrO23.7(MgO)2.1(Ga1.1(mol%)を15nm、記録膜42として本発明における実質的にW37Cu12Ta27Zn11Mn13-Oからなるターゲットを用いてW37Cu12Ta27Zn11Mn13-Oを40nm、第2誘電体膜43として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を23nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0165】
第1誘電体膜41および第2誘電体膜43の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、波長405nmのレーザ光6において、L3層40の反射率が、記録膜32が未記録状態でRg≒2.6%、Rl≒2.7%、透過率が約85%となるように設定した。
【0166】
また、第1誘電体膜41および第2誘電体膜43の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはパルスDC電源を用いて行った。記録膜42の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0167】
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜43上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層5を約53.5μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0168】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面と反対側の面に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面と反対側と合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層6を形成した。
【0169】
このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した。
【0170】
このディスクNo.を1-01とする。また比較例として、A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102の第1誘電体膜11に(ZrO15(SiO15(In70(mol%)を適用したディスクNo.比較例1-1を作製した。
【0171】
これらの1-01および比較例1-1において再生耐久性の評価を行った。再生耐久性の評価は自社作製における評価装置を用いて行った。
【0172】
評価機のレーザ光7の波長は405nm、対物レンズの開口数NAは0.91であり、グルーブおよびランドに情報の記録を行った。記録および再生の線速度は15.78m/で行った。5値の多値記録を行い、セル長を96.4nmとし、1情報層あたり166.7GB密度の記録を行った。5値記録とは、記録エネルギー(パワーとパルス幅)を5段階に変えて、記録の深さを5つのレベルで作成する記録の方式である。また再生光は2:1で高周波重畳(変調)されたレーザ光7を用いた。5値ランダム信号による記録を行い、信号品質はSER(imbol rror ate)として評価した。
【0173】
L0層10の再生耐久性の評価は、隣接するグルーブおよびランドにランダム信号を記録し、記録を行ったトラックの中央に位置するグルーブおよびその両隣接のランドのランダム信号を再生パワー5.3mW、線速度15.78m/sで再生し、グルーブおよびランドの繰り返しの再生回数が1回目と100万回目におけるグルーブのS/Nの変化量(=SERの変化量をデシベル換算したもの)により良否を判定した。また、L1層20、L2層30およびL3層40への記録は行っていない。
【0174】
また信号再生は3トラッククロストークキャンセル方式(対象となるグルーブと両隣接のランドの信号を再生し、クロストークキャンセル処理によりグルーブのSERを算出)によりSERを算出し、再生回数が1回目と100万回目のSER変化量をΔS/Nと定義し評価した。具体的には、ΔS/Nを、1.0dB未満を◎(非常に良好)、1.0dB以上1.5dB以下を○(良好)、1.5dBより大きいものを×(実用不可)とした。尚、ランドではなくグルーブ再生による評価を行ったのは、本実施例ではグルーブのほうが光吸収率が高く、再生耐久性が悪くなるためである。また、以下の実施例でも同様で、グルーブにおける再生耐久性の評価を行った。
【0175】
A面情報記録媒体における結果を表1に示す。
【0176】
【表1】
ディスクNo.1-01において、比較例1-1に対し再生耐久性が良好な結果が得られ、本発明における誘電体膜構成による再生耐久性向上の効果が確認できた。
【0177】
B面情報記録媒体における結果を表2に示す。
【0178】
【表2】
ディスクNo.1-01において、比較例1-1に対し再生耐久性が良好な結果が得られ、本発明における誘電体膜構成による再生耐久性向上の効果が確認できた。
(実施例2)L2層の記録膜で材料、組成検討
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の別の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体100の製造方法である。
【0179】
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。
【0180】
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
【0181】
第1誘電体膜11として、(ZnS)80(SiO20(mol%)および(ZnS)80(TiO20(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnS)80(SiO20(mol%)および(ZnS)80(TiO20(mol%)を6nm、第2誘電体膜12として(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて((ZrO25(SiO25(In50(mol%)を6nm、記録膜13として実質的にW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oからなるターゲットを用いてW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oを40nm、第3誘電体膜14として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0182】
波長405nmのレーザ光7において、L1層20、L2層30およびL3層40がない場合のL0層10の反射率が、第1誘電体膜11が(ZnS)80(SiO20(mol%)において、未記録状態でRg≒7.3%、Rl≒7.5%である。また、第1誘電体膜11が(ZnS)80(TiO20(mol%)において、未記録状態でRg≒7.7%、Rl≒7.9%である。
【0183】
第1誘電体膜11の成膜はAr雰囲気で、RF電源を用いて行った。第2誘電体膜12および第3誘電体膜14の成膜は、Ar雰囲気で、DC電源を用いて行った。記録膜13の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0184】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層2を形成する。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0185】
続けて、中間分離層2上にL1層20を形成する。L1層20の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0186】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層3を形成する。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0187】
続けて、中間分離層3上にL2層30を形成する。L2層30の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0188】
続けて、L2層30上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層4を形成する。中間分離層4の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0189】
続けて、中間分離層4上にL3層40を形成する。L3層40の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0190】
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜43上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層5を約53.5μm形成し、A面情報記録媒体101を作製した。
【0191】
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。
【0192】
基板1として実施例1と同様の基板を用いた。
【0193】
第1誘電体膜11として、(ZnS)80(SiO20(mol%)および(ZnS)80(TiO20(mol%)からなるターゲットを用いて(ZnS)80(SiO20(mol%)および(ZnS)80(TiO20(mol%)を6nm、第2誘電体膜12として(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて((ZrO25(SiO25(In50(mol%)を6nm、記録膜13として実質的にW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oからなるターゲットを用いてW21Cu17Ta18ZnMn20Ti20-Oを40nm、第3誘電体膜14として実質的に(ZrO25(SiO25(In50(mol%)からなるターゲットを用いて(ZrO25(SiO25(In50(mol%)を10nm、順次スパッタリング法により成膜した。
【0194】
波長405nmのレーザ光7において、L1層20、L2層30およびL3層40がない場合のL0層10の反射率が、第1誘電体膜11が(ZnS)80(SiO20(mol%)において、未記録状態でRg≒7.3%、Rl≒7.5%である。また、第1誘電体膜11が(ZnS)80(TiO20(mol%)において、未記録状態でRg≒7.7%、Rl≒7.9%である。
【0195】
第1誘電体膜11の成膜はAr雰囲気で、RF電源を用いて行った。第2誘電体膜12および第3誘電体膜14の成膜は、Ar雰囲気で、DC電源を用いて行った。記録膜13の成膜は、Ar+Oの混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。
【0196】
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層2を形成する。中間分離層2の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0197】
続けて、中間分離層2上にL1層20を形成する。L1層20の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0198】
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層3を形成する。中間分離層3の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0199】
続けて、中間分離層3上にL2層30を形成する。L2層30の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0200】
続けて、L2層30上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド-グルーブ間距離)0.18μm)の設けられた中間分離層4を形成する。中間分離層4の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0201】
続けて、中間分離層4上にL3層40を形成する。L3層40の構成および製造方法は実施例1と同様である。
【0202】
その後に紫外線硬化樹脂を第2誘電体膜43上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層5を約53.5μm形成し、B面情報記録媒体102を作製した。
【0203】
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が設けられた面と反対側に紫外線硬化樹脂を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面と反対側と合わせ、紫外線により樹脂を硬化させ、貼り合わせ層6を形成した。
【0204】
第1誘電体膜11に(ZnS)80(SiO20(mol%)を適用したものをディスクNo.2-01、(ZnS)80(TiO20(mol%)を適用したものをディスクNo.2-02とする。
【0205】
また比較例として、第1誘電体膜11に(ZnS)65(SiO35(mol%)を適用したものをディスク比較例2-1、(ZnS)65(TiO65(mol%)を適用したものをディスク比較例2-2とする。
【0206】
これらの1-301~1-321において、実施例1で説明したSER、再生耐久性の評価を行った。
【0207】
A面情報記録媒体における結果を表3に示す。
【0208】
【表3】
ディスクNo.2-01およびNo.2-02において1回目のSERが良好な結果が得られた。またZnSが少なくなる比較例2-1、比較例2-2において再生耐久性が悪化している。これはZnSの量が少なくなることで、基板1との密着性低下、または熱伝導率の増加による記録膜13からの熱拡散拡大により、再生耐久性が悪化したと考えられる。
【0209】
B面情報記録媒体における結果を表4に示す。
【0210】
【表4】
B面情報記録媒体においてもA面情報記録媒体と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本開示の情報記録媒体とその製造方法は、より高い再生光量を与える示す情報層を有するように構成されるので、高記録密度で情報を記録するのに適しており、大容量のコンテンツを記録する光ディスクに有用である。具体的にはアーカイバル・ディスク規格に準じて両面に4層の情報層を備える、次世代の光ディスク(例えば、記録容量1TB)に有用である。
【符号の説明】
【0212】
100 情報記録媒体
101 A面情報記録媒体
102 B面情報記録媒体
10 L0層
20 L1層
30 L2層
40 L3層
11、21、31、41 第1誘電体膜
12、23、33、43 第2誘電体膜
13、22、32、42 記録膜
14 第3誘電体膜
1 基板
2、3、4 中間分離層
5 カバー層
6 貼り合わせ層
7 レーザ光
図1