(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101065
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】車両部品
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20230712BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230712BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20230712BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B60R13/08
B60R13/02 Z
G10K11/162
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001393
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】591243860
【氏名又は名称】日昌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西野 雅史
【テーマコード(参考)】
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BA05
3D023BB21
3D023BB22
3D023BB30
3D023BE05
5D061AA07
5D061AA22
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡素化することができると共に、軽量化することができる車両部品を提供する。
【解決手段】耐熱性のある芯鞘構造からなる繊維11素材のみで形成されると共に、外側に柔軟性のある柔軟部10bが設けられ、内側に硬化された硬化部10aが設けられてなり、
柔軟部10bは、少なくとも、車両との緩衝の役割を担い、
硬化部10aは、少なくとも、車両部品1の形状を保形する役割を担うこととなる。
また、硬化部10aは、鞘部11bに熱を加えて軟化させ、所定の圧力を加えることによって形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性のある繊維素材のみで形成されると共に、外側に柔軟性のある柔軟部が設けられ、内側に硬化された硬化部が設けられてなり、
前記柔軟部は、少なくとも、車両との緩衝の役割を担い、
前記硬化部は、少なくとも、車両部品の形状を保形する役割を担う車両部品。
【請求項2】
前記繊維素材は、芯鞘構造からなる請求項1に記載の車両部品。
【請求項3】
前記繊維素材の鞘部は、熱可塑性樹脂にて形成され、
前記硬化部は、前記鞘部の熱可塑性樹脂が少なくとも一部溶着されて形成されている請求項2に記載の車両部品。
【請求項4】
前記柔軟部には、スリットが形成されてなる請求項1~3の何れか1項に記載の車両部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外からの音、ロードノイズ、チッピング音、エンジン音等を遮断するために用いられる車両部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両部品として、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載の発明は、芯材にGF(グラスファイバー)とPP材を混合し、両面の表面部に厚みが50μ~500μのPPフィルム等の緩衝層を貼着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両部品は、2種類の素材を使用していることから、製造工程が複雑化するばかりか、車両部品自体の重量が重たくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、製造工程を簡素化することができると共に、軽量化することができる車両部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明によれば、耐熱性のある繊維(11)素材のみで形成されると共に、外側に柔軟性のある柔軟部(10b)が設けられ、内側に硬化された硬化部(10a)が設けられてなり、
前記柔軟部(10b)は、少なくとも、車両との緩衝の役割を担い、
前記硬化部(10a)は、少なくとも、車両部品(1)の形状を保形する役割を担うことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の車両部品(1)において、前記繊維(11)素材は、芯鞘構造からなることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明によれば、上記請求項2に記載の車両部品(1)において、前記繊維(11)素材の鞘部(11b)は、熱可塑性樹脂にて形成され、
前記硬化部(10a)は、前記鞘部(11b)の熱可塑性樹脂が少なくとも一部溶着されて形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明によれば、上記請求項1~3の何れか1項に記載の車両部品(1)において、前記柔軟部(10b)には、スリット(10b1)が形成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1の発明によれば、耐熱性のある繊維(11)素材のみで形成されており、さらに、外側には車両との緩衝の役割を担う柔軟部(10b)が設けられ、内側には車両部品(1)の形状を保形する役割を担う硬化部(10a)が設けられている。そのため、本発明によれば、1つの素材で、従来と同様の車両部品を製造することができることとなり、もって、製造工程を簡素化することができると共に、軽量化することができる。
【0013】
このような耐熱性のある繊維(11)素材としては、請求項2に記載のような芯鞘構造であることが好適である。また、このような繊維(11)素材を用いて、硬化部(10a)を形成するにあたっては、請求項3に記載のように、鞘部(11b)の熱可塑性樹脂の少なくとも一部を溶着することによって形成するのが好適である。
【0014】
請求項4の発明によれば、柔軟部(10b)には、スリット(10b1)が形成されているから、柔軟部(10b)の柔軟性を向上させることができ、もって、車両との緩衝性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る車両部品の平面図、(b)は(a)に示すX-X線拡大断面図、(c)は同実施形態に係る繊維の断面図である。
【
図2】同実施形態に係る車両部品を製造するための工程を示す説明図である。
【
図3】同実施形態に係る車両部品を製造するための他の工程を示す説明図である。
【
図4】同実施形態に係る車両部品の柔軟部にスリットを形成していること示す一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両部品の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0017】
本実施形態に係る車両部品は、車外からの音、ロードノイズ、チッピング音、エンジン音等を遮断するために用いられる。例えば、車両のエンジンルーム内に使用され、エンジンルーム内の音を吸音したり遮音したり、或いは、エンジンルーム内の熱が車内に入ってこないように遮熱したり、空気の流量を調整、或いは、空気の流れを制御(整流)したり等の役割を担うものである。このような車両部品は、
図1(a)に示すように、例えば、略台形状に形成されると共に、クリップ(図示せず)が設けられ、このクリップを車両に設けられている孔(図示せず)に取り付けることによって、車両に取り付け固定されるものである。
【0018】
この車両部品をより詳しく説明すると、
図1(a)に示すように、車両部品1は、略台形状に形成され、内側に硬化された硬化部10aが設けられ、この硬化部10aの外側を取り囲むように、柔軟性のある柔軟部10bが設けられている。なお、この硬化部10aが、車両部品1の形状を保形することとなり、もって、従来の芯材の役割を担うこととなる。また、柔軟部10bが、車両との緩衝の役割を担うこととなり、もって、従来の緩衝層の役割を担うこととなる。
【0019】
ところで、この硬化部10aの形状は、設置する場所に応じた形状にすれば良く、板状(フラット)であっても良いし、規則的あるいは不規則な三次元形状であっても良い。
【0020】
また、この硬化部10aの硬さは、1N以上が好ましい。これは、以下に示す測定方法に基づくものである。すなわち、硬化部10aを長さ150mm×幅25mm切り出し、試験片として測定温度25℃に設定された万能試験機(ミネベア製)の恒温槽に設置し、三点曲げ試験により、1mm変位の曲げ強度を測定した。その結果、硬化部10aの硬さは、1N以上が好ましいことが分かった。なお、三点曲げ試験では、万能試験機(ミネベア製)において、支点間距離を100mmとし、試験片の中央(長さ方向および幅方向中央)を、直径10mmの圧子で50mm/分の速度で押圧した。
【0021】
ところで、このような車両部品1は、
図1(c)に示す繊維11が、
図1(b)に示すように、複数、接着されて構成されることによって、1つの素材として形成されてなるものである。この繊維11は、耐熱性があり、
図1(c)に示すように、直径15~40μm、好ましくは20~35μm、さらに好ましくは25~35μmの芯鞘構造からなり、円形状の芯部11aと、芯部11aの外周を被覆(コーティング)する、芯部11aと同心円状の鞘部11bと、で構成されている。芯部11aは、例えば、融点260℃のポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)にて形成され、鞘部11bは、バインダの役割を担う熱可塑性樹脂繊維(例えば、融点200℃のポリエーテルサルフォン繊維(Co-PES))にて形成されている。
【0022】
かくして、このような芯鞘構造からなる繊維11の鞘部11bに熱を加えて、複数の繊維11の鞘部11b同士を熱溶着させれば、
図1(b)に示すように、繊維11同士が熱溶着することとなる。これによって、
図2に示すような、ロール状のシート材S1が形成されるか、或いは、
図3に示すような、矩形状のシート材S2が形成されることとなる。
【0023】
ところで、このようなシート材S1、S2は、繊維素材で構成されているため、柔軟性がある。さらには、シート材S1、S2は、繊維素材で構成されているため、多孔質構造となり、もって、通気性、保温性、吸音性、遮音性等の性能を有することとなる。また、鞘部11b同士が熱溶着によって接着していることから、強固に接着されるため、剛性に優れた構造体を形成することとなる。さらには、
図1(b)に示すように、切れ目のない連続繊維11から構成されるため、強度の高い不織布で形成されることとなる。またさらには、繊維11が、耐熱性があることから、シート材S1、S2も耐熱性があり、もって、シート材S1、S2は、遮熱の性能も有することとなる。
【0024】
かくして、
図1(a)に示す車両部品1は、このようなシート材S1、S2を用いて形成されることとなる。以下、この点について詳しく説明することとする。
【0025】
図2に示すような、ロール状のシート材S1が形成された場合、シート材S1の所定箇所の内側部分S1aに、上下方向から、赤外線ヒータHを用いて、熱を加える。これにより、内側部分S1aに位置する鞘部11bが軟化することとなる。なお、この際、非接触温度センサSEにて、赤外線ヒータHの温度管理がされている。
【0026】
次いで、
図2に示す上金型P1と下金型P2を用いて、熱を加えた内側部分S1aに所定の圧力を加える(プレスする)。そして、所定の圧力を加えられた(プレスされた)内側部分S1aは、熱が冷めることによって、硬化し、もって、
図1(a)に示す硬化部10aとなる。一方、
図2に示す上金型P1と下金型P2を用いて、所定の圧力を加える(プレスする)と同時に、この内側部分S1aの外側を取り囲むように外側部分S1bを打ち抜くようにする。これによって、シート材S1は柔軟性があることから、この外側部分S1bが、
図1(a)に示す柔軟部10bとなり、もって、
図1(a)に示す車両部品1を形成することができる。
【0027】
一方、
図3に示すような、矩形状のシート材S2が形成された場合、シート材S2の所定箇所の内側部分S2aに、上下方向から、赤外線ヒータHを用いて、熱を加える。これにより、内側部分S2aに位置する鞘部11bが軟化することとなる。なお、この際、非接触温度センサSEにて、赤外線ヒータHの温度管理がされている。
【0028】
次いで、
図2に示す上金型P1と下金型P2を用いて、熱を加えた内側部分S2aに所定の圧力を加える(プレスする)。そして、所定の圧力を加えられた(プレスされた)内側部分S2aは、熱が冷めることによって、硬化し、もって、
図1(a)に示す硬化部10aとなる。一方、
図2に示す上金型P1と下金型P2を用いて、所定の圧力を加える(プレスする)と同時に、この内側部分S2aの外側を取り囲むように外側部分S2bを打ち抜くようにする。これによって、シート材S2は柔軟性があることから、この外側部分S2bが、
図1(a)に示す柔軟部10bとなり、もって、
図1(a)に示す車両部品1を形成することができる。
【0029】
ところで、
図1(a)に示す車両部品1を形成するにあたっては、
図2及び
図3に示すような方法に限らず、上金型P1,下金型P2,赤外線ヒータHに代え、上下方向から、上加熱プレートが組み込まれた上金型と、下加熱プレートが組み込まれた下金型を用いて、加圧すると共に熱を加える。又は、加熱ヒータが組み込まれた上金型と、加熱ヒータが組み込まれた下金型を用いて、加圧すると共に熱を加えても良い。これにより、内側部分S1aに位置する鞘部11bが軟化し、加圧された部分の熱が冷めることによって、硬化し、もって、
図1(a)に示す硬化部10aとなる。
【0030】
一方、矩形状のシート材S2が形成された場合も同様に、シート材の所定箇所の内側部分に、上下方向から、上加熱プレートが組み込まれた上金型と、下加熱プレートが組み込まれた下金型を用いて、加圧すると共に熱を加える。又は、加熱ヒータが組み込まれた上金型と、加熱ヒータが組み込まれた下金型を用いて、加圧すると共に熱を加えても良い。これにより、内側部分に位置する鞘部が軟化し、加圧された部分の熱が冷めることによって、硬化し、もって、
図1(a)に示す硬化部10aとなる。
【0031】
かくして、このように形成された車両部品1に、クリップ(図示せず)を設け、このクリップを車両に設けられている孔(図示せず)に取り付けるようにすれば、車両部品1を車両に取り付け固定して使用することができる。この際、硬化部10aが、車両部品1の形状を保形することとなるから、従来の芯材の役割を担うこととなる。また、柔軟部10bが、車両との緩衝の役割を担うこととなるから、従来の緩衝層の役割を担うこととなる。
【0032】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、車両部品1は、耐熱性のある芯鞘構造からなる繊維11素材のみで形成されており、さらに、この車両部品1は、外側には従来の緩衝層の役割を担う柔軟部10bを設け、内側には従来の芯材の役割を担う硬化部10aが設けられている。そのため、本実施形態によれば、1つの素材で、従来と同様の車両部品を製造することができることとなり、もって、製造工程を簡素化することができると共に、軽量化することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、車両部品1は、シート材S1、S2を用いて形成されているから、吸音性、遮音性の性能を有することから、吸音したり遮音したりすることができる。また、シート材S1、S2は耐熱性があるから、遮熱することができる。さらには、シート材S1、S2は、通気性があるから、空気の流量を調整することができる。すなわち、本実施形態の車両部品1は、1つの素材であっても、従来の車両部品と同様の性能を有することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、鞘部11bに熱を加えて軟化させ、所定の圧力を加える(プレスする)ことによって、硬化部10aを形成するようにしている。そのため、簡易な方法で硬化部10aを形成することができるため、製造工程をより簡素化することができる。なお、硬化部10aは、鞘部11bの熱可塑性樹脂が全て熱溶着されている必要はなく、一部、熱溶着しておけば良い。
【0035】
なお、本実施形態にて例示した車両部品は、あくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、車両部品1の形状はあくまで一例であり、どのような形状にしても良い。また、本実施形態においては、耐熱性のある芯鞘構造からなる繊維11素材を例にして説明したが、それに限らず、耐熱性のある繊維素材であれば、どのようなものでも良い。しかしながら、芯鞘構造からなる繊維素材を使用するのが好ましい。
【0036】
また、
図4に示すように、柔軟部10bの外周部に所定間隔置きに、スリット10b1を設けるようにしても良い。このようにすれば、柔軟部10bの折れ曲がり部分を複数のブロックに分けることができ、もって、ある箇所だけ折れ曲がるようにすることができる。しかして、このようにすれば、柔軟部10bの柔軟性が向上することとなるから、車両との緩衝性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両部品
10a 硬化部
10b 柔軟部
10b1 スリット
11 繊維
11a 芯部
11b 鞘部