(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101080
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、多層体および透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20230712BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20230712BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20230712BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230712BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230712BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/3492
C08K5/101
B32B27/36 102
B32B27/18 A
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001441
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕隆
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA50
4F071AA81
4F071AA86
4F071AC10
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE05
4F071AE22
4F071AF02
4F071AF14
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AF53
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB03
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC16
4F100AK45A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA07A
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JG01D
4F100JK15A
4F100JL13C
4F100JN01
4F100JN30A
4J002CG011
4J002EH076
4J002EJ026
4J002EJ036
4J002EU186
4J002GC00
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、黄色味を示す指標であるYI(Yellowindex)値が低く、紫外線照射前後の色差が小さい樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物から形成されたフィルム、多層体および透明導電性フィルムの提供。
【解決手段】式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂100質量部に対し、分子量が500~2000である紫外線吸収剤を0.7~7.0質量部含む樹脂組成物であって、50μmの厚みにしたときのYI(Yellowindex)値が1.00以下である樹脂組成物。式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。
*-O-C
6H
5-(R
2)
n(COOR
1)(1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂100質量部に対し、分子量が500~2000である紫外線吸収剤を0.7~7.0質量部含む樹脂組成物であって、50μmの厚みにしたときのYI(Yellow index)値が1.00以下である樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤、および/または、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が多量体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が、式(UV1)または式(UV2)で表される化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
式(UV1)
【化2】
(式(UV1)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
1は2価の連結基であり、n1は2~5の整数であり、L
11は単結合またはn1価の連結基である。)
式(UV2)
【化3】
(式(UV2)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
2は2価の連結基であり、n2は2~5の整数であり、L
22は単結合またはn2価の連結基である。)
【請求項5】
前記樹脂組成物の粘度平均分子量が14,000~40,000である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物の粘度平均分子量が25,000~40,000である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物の粘度平均分子量が14,000以上25,000未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度(Tg)が114~138℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されたフィルム。
【請求項10】
前記フィルムの厚みが20~200μmである、請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記フィルムの表面粗さRaが0.7μm未満である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルムの表面粗さRaが0.1μm以下である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項13】
ヘイズが10%以下である、請求項9~12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムの波長543nmにおけるレターデーション(Re)が25.0nm以下である、請求項9~13のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項15】
単層フィルムである、請求項9~14のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載のフィルムと、少なくとも1層の他の層とを有する、多層体。
【請求項17】
前記他の層が粘着層を含む、請求項16に記載の多層体。
【請求項18】
保護層と、
粘着層と、
基材と、
電極層とをこの順で有する、透明導電性フィルムであって、
前記基材および保護層の少なくとも一方が、請求項9~15のいずれか1項に記載のフィルムである、透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、多層体および透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに、近年、その透明性を生かして、光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
ポリカーボネート樹脂の利用例の1つとして、透明導電性フィルムが挙げられる。
例えば、タッチパネルのフィルムセンサー、電子ペーパーや色素増感型太陽電池、タッチセンサー等には、透明導電性フィルムが用いられている。透明導電性フィルム10は、例えば、
図1に示すように、電極層(透明導電膜)11と、基材12と、粘着層13と、保護フィルム14とから構成されるものが知られている。かかる透明導電性フィルムの基材や保護フィルムとして、ポリカーボネート樹脂を主成分とするフィルムが用いられることがある。
このような透明導電性フィルムの具体例としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、ポリカーボネート樹脂は、各種用途に用いられているが、紫外線が照射される場所での利用も多い。紫外線が照射される場所で利用される場合、ポリカーボネート樹脂の劣化防止のために紫外線吸収剤を配合することが考えられる。一般的に紫外線吸収剤を多く配合するほど、耐紫外線性は向上する傾向にあるが、黄色味を帯びやすい傾向にもある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、黄色味を示す指標であるYI(Yellow index)値が低く、紫外線照射前後の色差が小さい樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成されたフィルム、多層体および透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、分子量が所定の範囲の紫外線吸収剤を用いることにより、比較的多めの紫外線吸収剤を配合しても、YIの値を低くできることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂100質量部に対し、分子量が500~2000である紫外線吸収剤を0.7~7.0質量部含む樹脂組成物であって、50μmの厚みにしたときのYI(Yellow index)値が1.00以下である樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
<2>前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤、および/または、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記紫外線吸収剤が多量体である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記紫外線吸収剤が、式(UV1)または式(UV2)で表される化合物を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
式(UV1)
【化2】
(式(UV1)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
1は2価の連結基であり、n1は2~5の整数であり、L
11は単結合またはn1価の連結基である。)
式(UV2)
【化3】
(式(UV2)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
2は2価の連結基であり、n2は2~5の整数であり、L
22は単結合またはn2価の連結基である。)
<5>前記樹脂組成物の粘度平均分子量が14,000~40,000である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物の粘度平均分子量が25,000~40,000である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物の粘度平均分子量が14,000以上25,000未満である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記樹脂組成物の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度(Tg)が114~138℃である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されたフィルム。
<10>前記フィルムの厚みが20~200μmである、<9>に記載のフィルム。
<11>前記フィルムの表面粗さRaが0.7μm未満である、<9>または<10>に記載のフィルム。
<12>前記フィルムの表面粗さRaが0.1μm以下である、<9>または<10>に記載のフィルム。
<13>ヘイズが10%以下である、<9>~<12>のいずれか1つに記載のフィルム。
<14>前記フィルムの波長543nmにおけるレターデーション(Re)が25.0nm以下である、<9>~<13>のいずれか1つに記載のフィルム。
<15>単層フィルムである、<9>~<14>のいずれか1つに記載のフィルム。
<16><9>~<15>のいずれか1つに記載のフィルムと、少なくとも1層の他の層とを有する、多層体。
<17>前記他の層が粘着層を含む、<16>に記載の多層体。
<18>保護層と、粘着層と、基材と、電極層とをこの順で有する、透明導電性フィルムであって、前記基材および保護層の少なくとも一方が、<9>~<15>のいずれか1つに記載のフィルムである、透明導電性フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、黄色味を示す指標であるYI(Yellow index)値が低く、紫外線照射前後の色差が小さい樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成されたフィルム、多層体および透明導電性フィルムを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、透明導電性フィルムの層構成を示す断面模式図の一例である。
【
図2】実施例における熱賦形前後のレターデーション上昇率を測定するための金型を示す図である。
【
図3】実施例における耐薬品性を測定するためのひずみのかけかたを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、分子量(例えば、重量平均分子量および数平均分子量)は、特に述べない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書におけるフィルムおよび多層体は、それぞれ、シートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂100質量部に対し、分子量が500~2000である紫外線吸収剤を0.7~7.0質量部含む樹脂組成物であって、50μmの厚みにしたときのYI(Yellow index)値が1.00以下であることを特徴とする。
【化4】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
このような構成とすることにより、黄色味を示す指標であるYI(Yellow index)値が低く、紫外線照射前後の色差が小さい樹脂組成物が得られる。さらに、紫外線吸収剤を多めに配合していても、押出時のガス発生、ロール汚れおよびロール汚れ転写を効果的に抑制できる。
【0010】
<式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂を含む。式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を低くすることができる。
【化5】
(式(1)中、R
1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表す。R
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表す。nは0~4の整数を表す。*は、他の部位との結合部位である。)
【0011】
R1は、炭素数8~36のアルキル基、または、炭素数8~30のアルケニル基を表し、炭素数10以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数12以上のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましく、さらに炭素数14以上のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。これにより樹脂のガラス転移温度をより低くし、多層体の熱曲げ性を向上させることができる。また、R1は、炭素数22以下のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、炭素数18以下のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。これにより、他の樹脂との相溶性が向上する傾向にある。R1は、アルキル基であることが好ましい。アルキル基およびアルケニル基は、直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基またはアルケニル基であることがより好ましい。
本実施形態では、R1は、特に、ヘキサデシル基であることが好ましい。
また、R1は、メタ位、パラ位、オルト位のいずれに位置していてもよいが、メタ位またはパラ位に位置していることが好ましく、パラ位に位置していることがより好ましい。
【0012】
R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、または、フェニル基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子またはメチル基であることがより好ましい。
nは0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0013】
式(1)で表される末端構造は、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル等の末端封止剤を用いることによって、ポリカーボネート樹脂に付加することができる。これらの詳細は、特開2019-002023号公報の段落0022~0030の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造のポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される末端構造が1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂は、すべての末端構造が式(1)で表される末端構造ではない場合もある。通常は、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の末端構造の80%以上(好ましくは90%以上)が式(1)で表される末端構造である。
【0014】
本実施形態においては、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。また、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂の50モル%以上が式(1)で表される末端構造を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0015】
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂は、また、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態におけるビスフェノール型ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート構成単位が、末端構造を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0016】
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0017】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、17,000~40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が17,000以上であることにより、折れ曲がりに強くすることが可能になり、耐屈曲性に優れたフィルムが得られる。また、粘度平均分子量が40,000以下であることにより、フィルムのガラス転移温度を効果的に低くできる傾向にあり、熱賦形時のReの上昇を効果的に抑制できる。
前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、20,000以上であることがより好ましく、22,000以上であることがさらに好ましく、24,000以上であることが一層好ましく、さらには、30,000以上であってもよい。特に、30,000以上とすることにより、耐屈曲性がより向上する傾向にある。また、前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、38,000以下であることがより好ましく、さらには、35,000以下、特には30,000未満であってもよく、より特には28,000以下であってもよい。特に、粘度平均分子量を30,000未満、さらには28,000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂の粘度が低くなり、フィルター透過性が向上する傾向にある。フィルター透過性が向上すると、フィルム中の異物を少なくすることができる。
粘度平均分子量は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0018】
本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、142℃以下であることが好ましく、138℃以下であることがより好ましく、さらに132℃以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の熱曲げ成形性がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いる式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、118℃以上であることが好ましく、122℃以上であることがより好ましく、126℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、湿熱試験、高温試験などの耐環境試験の耐久性がより向上する傾向にある。
ガラス転移温度(Tg)は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0019】
その他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2019-035001号公報の段落0040~0073の記載、特開2018-103518号公報の段落0016~0043の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0020】
本実施形態のフィルムにおける式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂の割合は、フィルムの90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、透明性により優れるフィルムが得られる。前記実施形態のフィルムにおけるポリカーボネート樹脂の割合の上限は、99質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のフィルムは、ポリカーボネート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
<紫外線吸収剤>
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂100質量部に対し、分子量が500~2000である紫外線吸収剤を0.7~7.0質量部の割合で含む。このような構成とすることにより、YI(Yellow index)値が低いポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、紫外線照射前後の色差が小さい樹脂組成物が得られる。
前記分子量が500~2000である紫外線吸収剤の分子量は、550以上であることが好ましく、590以上であることがより好ましく、800以上であることがさらに好ましく、900以上であることが一層好ましく、950以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、フィルム成形時のガスやロール汚れの発生を効果的に抑制できる。また、前記分子量が500~2000である紫外線吸収剤の分子量は、1800以下であることが好ましく、1600以下であることがより好ましく、1400以下であることがさらに好ましく、1200以下であることが一層好ましく、1100以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂との相溶性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の少なくとも1種が500~2000である紫外線吸収剤であり、紫外線吸収剤の少なくとも他の1種が上記好ましい範囲であることが好ましい。
【0022】
本実施形態で用いる紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が例示され、トリアジン系紫外線吸収剤、および/または、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤、および/または、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を用いることにより、成形時のロールの汚れの発生を効果的に抑制できる。
本実施形態で用いる紫外線吸収剤は、また、多量体であることが好ましい。多量体とは、一分子中に複数の紫外線吸収部位を有している紫外線吸収剤を言う。ここで、紫外線吸収部位同士は、非共役である。また、紫外線吸収部位は芳香環および二重結合、三重結合等と単結合が交互に繋がっている部分をまとめて一つの部位であることが好ましい。
【0023】
本実施形態で用いる紫外線吸収剤としては、式(UV1)または式(UV2)で表されるものが好ましい。
式(UV1)
【化6】
(式(UV1)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
1は2価の連結基であり、n1は2~5の整数であり、L
11は単結合またはn1価の連結基である。)
Rは、炭素数1~30の炭化水素基(好ましくは、炭素数1~30の脂肪族飽和炭化水素基)(但し、1つまたは2つ以上の酸素原子またはエステル基を含んでいてもよい)、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、より好ましくはフッ素原子または塩素原子)、あるいは、水酸基であることが好ましい。より好ましくは、Rは、炭素数1~30の直鎖または分岐のアルキル基、末端または鎖中に1つまたは2つ以上の酸素原子および/またはエステル基を含む炭素数1~30の直鎖または分岐のアルキル基、あるいは、水酸基である。さらに好ましくは、Rは、炭素数1~30の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1~30の直鎖または分岐のアルコキシ基、あるいは、水酸基である。ここで、炭素数1~30の炭化水素基(好ましくは脂肪飽和族炭化水素基)は、炭素数1~10の炭化水素基(好ましくは脂肪飽和族炭化水素基)であることが好ましい。
nは0~4の整数であることが好ましく、0~3の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることがさらに好ましく、0または1の整数であることが一層好ましく、0であってもよい。
L
1は、炭素数1~30の2価の脂肪族飽和炭化水素基、あるいは、炭素数1~30の2価の脂肪族飽和炭化水素基と、酸素原子および/またはエステル基との組み合わせからなる基が好ましい。2価の脂肪族飽和炭化水素基はアルキレン基が好ましい。
L
11は単結合またはn1価の連結基であり、n1価の連結基が好ましい。n1価の連結基は、炭素数1~30のn1価の脂肪族飽和炭化水素基、あるいは、炭素数1~30のn1価の脂肪族飽和炭化水素基と、酸素原子および/またはエステル基との組み合わせからなる基が好ましい。
n1は、2~4の整数であることが好ましく、3または4の整数であることがより好ましく、4であることがさらに好ましい。
なお、式(UV1)において、n1個存在する、カッコ内の構造はそれぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。好ましくは同一である。
式(UV1)で表される紫外線吸収剤としては、Uvinul 3030FF、BASF社製が例示される。
【0024】
式(UV2)
【化7】
(式(UV2)中、Rはそれぞれ独立に置換基であり、nはそれぞれ独立に0~5の整数であり、L
2は2価の連結基であり、n2は2~5の整数であり、L
22は単結合またはn2価の連結基である。)
R、nは、式(UV1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
L
2は、炭素数1~30の2価の脂肪族飽和炭化水素基、あるいは、炭素数1~30の2価の脂肪族飽和炭化水素基と、酸素原子および/またはエステル基との組み合わせからなる基が好ましい。2価の脂肪族飽和炭化水素基はアルキレン基が好ましい。
L
22は、単結合またはn2価の連結基であり、n2価の連結基が好ましい。n2価の連結基は、炭素数1~30のn2価の脂肪族飽和炭化水素基、あるいは、炭素数1~30のn2価の脂肪族飽和炭化水素基と、酸素原子および/またはエステル基との組み合わせからなる基が好ましい。
n2は、2~4の整数であることが好ましく、2または3の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
なお、式(UV2)において、n2個存在する、カッコ内の構造はそれぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。好ましくは同一である。
式(UV2)で表される紫外線吸収剤としては、LA-1000、ADEKA社製が例示される。
【0025】
その他、本実施形態では、後述する実施例に記載の紫外線吸収剤の他、LA-31(ADEKA社製)、Tinuvin 360(BASF社製)などが好ましく用いられる。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物における分子量が500~2000である紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.7質量部以上であり、0.8質量部以上であることが好ましく、0.9質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましく、1.8質量部以上であることが一層好ましく、2.5質量部以上であることがより一層好ましく、用途に応じては、4.0質量部以上、4.5質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、耐候性がより向上する傾向にある。また本実施形態の樹脂組成物における分子量が500~2000である紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7.0質量部以下であり、6.8質量部以下であることが好ましく、6.5質量部以下であることがより好ましく、6.4質量部以下であることがさらに好ましく、6.0質量部以下であることが一層好ましく、5.5質量部以下であることがより一層好ましく、用途に応じて、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、2.5質量部以下、1.5質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、YI値が低く、ガスやロール汚れの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は分子量が500~2000である紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、分子量500未満の紫外線吸収剤および分子量2000超の紫外線吸収剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、分子量500未満の紫外線吸収剤および分子量2000超の紫外線吸収剤を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、分子量500未満の紫外線吸収剤および分子量2000超の紫外線吸収剤の含有量が、分子量が500~2000である紫外線吸収剤の含有量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが一層好ましく、0.1質量%以下であることがより一層好ましい。
【0028】
<他の成分>
本実施形態のフィルムは、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂に加え、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。具体的には式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、エステル交換防止剤、離型剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの詳細は、特開2017-031313号公報、国際公開第2015/190162号、特開2019-002023号公報、特開2018-199745号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
上記他の成分の合計量は、含有する場合、樹脂組成物の0.001~5質量%であることが好ましく、0.001~2質量%であることがより好ましく、0.01~1質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物で用いられる離型剤の種類は特に定めるものではないが、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5,000のポリエーテル、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
離型剤の詳細は、国際公開第2015/190162号の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
離型剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましい。上限値としては、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂と、分子量が500~2000である紫外線吸収剤と、必要に応じ配合される他の成分の合計が100質量%となるように調整される。
【0031】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、制限はなく、公知の製造方法を広く採用することができる。
その具体例を挙げると、所定のポリカーボネート樹脂と所定の紫外線吸収剤と、必要に応じて配合されるその他の成分とを、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
【0032】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物はYIが低いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を50μmの厚みにしたときのYI(Yellow index)値が1.00以下である。このような低いYI値は、例えば、紫外線吸収部位の共役が広くない紫外線吸収剤を用いることによって達成される。例えば、多量体の紫外線吸収剤が例示される。また、紫外線吸収剤の含有量や他の添加剤の含有量を調整することによっても達成される。
前記YI値は、0.99以下であることが好ましく、0.90以下であってもよく、0.86以下であってもよく、0.80以下であってもよい。前記YI値の下限値は、通常、0が理想であり、0.01以上が実際的であり、0.1以上であっても十分に要求性能を満たす。また、ブルーイング剤などの青色着色剤などを含む場合、YI値が0未満となる場合もあり、この場合の下限は、例えば、-2以上であることが好ましく、-1以上であることがより好ましい。
YI値は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物は、50μmの厚みのフィルムに成形し、JIS D 0205に準拠して耐候性試験を100時間行った際の色差(ΔE)が1.00以下であることが好ましく、0.80以下であることがより好ましく、0.60以下であることが一層好ましく、0.50以下であることがより一層好ましく、0.40以下であることがさらに一層好ましく、さらには、0.30以下、0.25以下、0.20であってもよい。このような低色差は、例えば、共役の広い紫外線吸収剤を用いる、紫外線吸収剤の含有量を多くすることによって達成される。前記色差(ΔE)の下限値は0が理想であるが、0.01以上であっても十分に要求性能を満たす。
前記色差(ΔE)は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物の粘度平均分子量は、14,000~40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が14,000以上であることにより、得られるフィルムを折れ曲がりに強くすることが可能になり、耐屈曲性に優れたフィルムが得られる。また、粘度平均分子量が40,000以下であることにより、フィルムのガラス転移温度を効果的に低くできる傾向にあり、フィルムの熱賦形時のReの上昇を効果的に抑制できる。
前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、17,000以上であることが好ましく、19,000以上であることがより好ましく、21,000以上であることがさらに好ましく、さらには、25,000以上であってもよい。特に、25,000以上とすることにより、フィルムの耐屈曲性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物の粘度平均分子量は、40,000以下であることが好ましく、さらには、35,000以下、30,000以下、特には25,000未満であってもよく、より特には23,000以下であってもよい。特に、粘度平均分子量を25,000未満、さらには23,000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂の粘度が低くなり、フィルター透過性が向上する傾向にある。フィルター透過性が向上すると、フィルム中の異物を少なくすることができる。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物の粘度平均分子量の第一の例は、25,000~40,000である。
本実施形態の樹脂組成物の粘度平均分子量の第二の例は14,000以上25,000未満である。
粘度平均分子量は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0036】
本実施形態の記樹脂組成物の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度(Tg)は、114~138℃であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られるフィルムの耐屈曲性がより向上する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、得られるフィルムの熱賦形時のReの上昇をより効果的に抑制できる傾向にある。前記フィルムのガラス転移温度(Tg)は、116℃以上であることが好ましく、118℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、122℃以上であることが一層好ましく、用途に応じては、124℃以上、130℃以上であってもよい。また、前記フィルムのガラス転移温度は、137℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、133℃以下であることがさらに好ましく、130℃以下であることが一層好ましく、128℃以下であることがより一層好ましい。
ガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0037】
<フィルムの物性、特性>
本実施形態のフィルムは、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
本実施形態のフィルムの厚みは、20~200μmであることが好ましい。厚みを20μm以上とすることにより、フィルムの破断を効果的に抑制し、強度に優れたフィルムが得られる傾向にある。また、厚みを200μm以下とすることにより、フィルムの熱賦形時のReの上昇を効果的に抑制できるとともに、耐屈曲性をより向上させることができる。前記フィルムの厚みは、25μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。また、前記フィルムの厚みは、180μm以下であることが好ましく、160μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましく、140μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、70μm以下であることがさらに一層好ましく、60μm以下であることが特に一層好ましい。
【0038】
本実施形態のフィルムは、表面粗さRaが0.7μm未満であることが好ましい。このような構成とすることにより、透明性に優れたフィルムが得られる。前記表面粗さは、0.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.08μm以下であることがさらに好ましく、0.05μm以下であることが一層好ましく、0.02μm以下であることがより一層好ましい。前記フィルムの表面粗さRaの下限値は、0μmが理想であるが、0.0001μm以上が実際的であり、さらには0.001μm以上であっても十分に要求性能を満たすものである。
【0039】
本実施形態のフィルムは、波長543nmにおけるレターデーション(Re)が25.0nm以下であることが好ましく、15.0nm以下であることがより好ましく、11.0nm以下であることがさらに好ましく、9.0nm以下であることが一層好ましく、8.0nm以下であることがより一層好ましく、5.0nm以下であることがさらに一層好ましく、3.0nm以下であることがよりさらに一層好ましく、さらには、2.7nm以下、2.5nm以下、2.3nm以下、2.1nm以下であると好ましい。前記上限値以下とすることにより、虹ムラがより効果的に抑制される傾向にある。前記レターデーション(Re)の下限値は、0nmが理想であるが、0.01nm以上が実際的である。
【0040】
本実施形態のフィルムは、ヘイズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが一層好ましく、0.2%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、フィルムの透明性がより向上する傾向にある。前記フィルムのヘイズの下限値は、0%が理想であるが、0.001%以上が実際的である。
上記Ra、Reおよびヘイズは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0041】
<フィルムの製造方法>
本実施形態のフィルムは、公知の方法によって製造することができ、例えば、押出成形、キャスト成形が好ましい。押出成形の例としては、所定のポリカーボネート樹脂、所定の紫外線吸収剤、さらには、必要に応じて添加剤を加えた樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをポリッシングロール等で挟圧しながら、冷却、固化して製品とする方法が挙げられる。押出機は1軸でも2軸でもよく、またベント付き、ノンベントのいずれも使用できる。
【0042】
本実施形態のフィルムが多層体の場合も、公知の方法によって製造することができる。例えば、Tダイを用いた溶融押出時に、ダイ内部で積層しフィルム状に成形する、もしくはフィルム状に成形した後に積層することで多層フィルムを形成することができる。
【0043】
<用途>
本実施形態のフィルムは、単層フィルムとして用いることができる。また、本実施形態のフィルムは、上述の通り、本実施形態のフィルムと、少なくとも1層の他の層とを有する、多層体として用いることもできる。前記他の層としては、公知の層を採用でき、粘着層やハードコート層が例示され、粘着層を含むことが好ましい。もちろん、粘着層とハードコート層の両方を有していてもよい。
粘着層としては、ポリオレフィン樹脂層が例示される。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態のフィルムは、透明導電性フィルムの保護フィルムや基材として好ましく用いられる。特に、保護層と、粘着層と、基材と、電極層とをこの順で有する、透明導電性フィルムであって、基材および保護層の少なくとも一方(好ましくは少なくとも保護層)が、本実施形態のフィルムである、透明導電性フィルムとして好ましく用いられる。
また、上記透明導電性フィルムは、タッチパネルのフィルムセンサー、電子ペーパーや色素増感型太陽電池、タッチセンサー等に用いる透明導電性フィルムとして好ましく用いられる。
さらに、本実施形態のフィルムは、上記以外でも、熱賦形前後のレターデーションの変化率が小さく、耐屈曲性に優れ、透明性が高いことが求められる用途のフィルムに好ましく用いられる。例えば、飛散防止フィルムとして用いられる。
【実施例0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0045】
1.原料
<PC-1の合成例>
有機化学ハンドブックP143~150の記載に基づき、東京化成工業(株)製4-ヒドロキシ安息香酸と東京化成工業(株)製1-ヘキサデカノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)を得た。
9質量%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鉄住金化学社製ビスフェノールA(BPA)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15~25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、9質量%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメタン11kg、および、上記で得られたCEPB443g(1.22mol)をジクロロメタン10kgに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として10mlのトリエチルアミンを加え約40分間重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製された芳香族ポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することにより芳香族ポリカーボネート樹脂粉末(PC-1)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂粉末の粘度平均分子量(Mv)およびガラス転移温度(Tg)を測定した。粘度平均分子量:25500、Tg:130℃
【0046】
<PC-2の合成例>
上記<PCー1の合成例>において、CEPBを348g(0.96mol)とし、他は同様に行った。粘度平均分子量:30500、Tg:136℃
【0047】
<PC-3の合成例>
上記<PCー1の合成例>において、CEPBを266g(0.73mol)とし、他は同様に行った。粘度平均分子量:37500、Tg:142℃
【0048】
<粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネート樹脂および樹脂組成物の粘度平均分子量は以下の方法で測定した。
溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
-4Mv
0.83から算出した。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0049】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ポリカーボネート樹脂および樹脂組成物のガラス転移温度は以下の通り測定した。
ポリカーボネート樹脂および樹脂組成物(ペレット)約10mgを下記DSC(示差走査熱量)の測定条件のとおりに、昇温および降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点を本発明におけるガラス転移温度(Tg、単位:℃)とした。
測定開始温度:30℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:250℃
降温速度:20℃/分
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
【0050】
<紫外線吸収剤(トリアジン系UV吸収剤)>
(B1)Tinuvin1600、BASF社製、分子量:606、構造式を以下に示す。
【化8】
(B2)LA-1000、ADEKA社製、分子量:1000、構造式を以下に示す。
【化9】
(B3)Tinuvin1577、BASF社製、分子量:426、構造式を以下に示す。
【化10】
(B4)Cyasorb UV-1164、サンケミカル株式会社、分子量:510、構造式を以下に示す。
【化11】
(B5)LA-F70、ADEKA社製、分子量:700、構造式を以下に示す。
【化12】
【0051】
<紫外線吸収剤(シアノアクリレート系UV吸収剤)>
(B6)Uvinul3030FF、BASF社製、分子量:1061、構造式を以下に示す。
【化13】
(B7)Uvinul3035、BASF社製、分子量:277、構造式を以下に示す。
【化14】
(B8)Uvinul3039、BASF社製、分子量:361、構造式を以下に示す。
【化15】
【0052】
<離型剤>
(C)グリセリンモノステアレート、理研ビタミン株式会社製、リケマールS-100A
【0053】
2.実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-14
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
表1~3に示す各成分を表に記載の添加量(表1~3の各成分は質量比で示している)となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、シリンダー温度270℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0054】
<フィルムの製造1>
上記ペレットを用いて、以下の方法でフィルムを製造した。
上記で得られたペレットを、バレル内径25mm、スクリューのL/D=30のベント付き二軸押出機(東洋精機社製、「ラボプラストミル」)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量4Kg/h、スクリュー回転数60rpmの条件で、溶融状に押し出し、第一ロールと第二ロールで圧着した後、冷却固化し、フィルムを作製した。シリンダーおよびTダイ温度は280℃とした。
最終的に得られるフィルムの厚み(単位:μm)の調整は、表1~表3に記載の値となるように、第一ロールおよび第二ロールのロール速度を変更して行った。
用いた第一ロールおよび第二ロールの詳細は以下の通りである。
・第一ロール:東洋精機社製、金属鏡面ロール
寸法:外径100mm×幅200mm
ロール温度:100~120℃
・第二ロール:東洋精機社製、金属鏡面ロール
寸法:外径100mm×幅200mm
ロール温度:100~120℃
【0055】
<押出時のガス発生の有無>
上記<フィルムの製造1>の際の押出機からの押出の際のガスの発生の有無を確認した。評価は5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:ガスの発生が認められなかった。
B:ガスの発生が認められた。
【0056】
<ロール汚れの有無>
上記<フィルムの製造1>の際のロールの汚れの有無を確認した。
A:ロール汚れの発生が認められなかった。
B:ロール汚れの発生が認められた。
【0057】
<ロール汚れ転写の有無>
上記<フィルムの製造1>の際の押出時に目視においてロールの汚れのフィルムへの転写の有無を確認した。評価は5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:ロール汚れがフィルムに転写していることが認められなかった。
B:ロール汚れがフィルムに転写していることが認められた。
【0058】
<初期色(YI)>
上記<フィルムの製造1>で得られたフィルムについてJIS Z 8781-4:2013、JIS K 7373:2006に準拠して色差計を用いてフィルムの初期YI値を測定した。
色差計は、SD7000(日本電色工業社製)を用いた。
【0059】
<ΔE>
上記<フィルムの製造1>で得られたフィルムについてJIS Z 8781-4:2013、JIS K 7373:2006に準拠して色差計を用いてフィルムのL1値、a1値、b1値を測定した。その後、JIS D 0205に準拠して、耐候性試験を100時間行った。その後、色差計を用いて耐候性試験後のフィルムのL2値、a2値、b2値を測定した。ここから、ΔE値を以下の式で求めた。
ΔE=((L2-L1)2+(a2-a1)2+(b2-b1)2))1/2
測定に際し、サンシャインウェザーメーターS-300を用いた。色差計は、SD7000(日本電色工業社製)を用いた。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
3.実施例2-1~2-5
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
表4に示すポリカーボネート樹脂と紫外線吸収剤(B2、LA-1000、ADEKA社製)(表4の各成分は質量比で示している)を、表4に示す含有量となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、シリンダー温度270℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
得られた樹脂組成物(ペレット)の粘度平均分子量(Mv)およびガラス転移温度(Tg)を上述の方法に従い測定した。
【0064】
<フィルター透過性>
上記ペレットを製造する際に、ベント付二軸押出機に目開き20μmのポリマーフィルターを取り付け、押出時の圧力が上限を超えて押出できなかった場合はB、押出可能だった場合はAとした。
【0065】
<フィルムの製造2>
上記で得られたペレットを用いて、以下の方法でフィルムを製造した。
上記で得られたペレットを、バレル直径32mm、スクリューのL/D=31.5のベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量10Kg/h、スクリュー回転数150rpmの条件で、溶融状に押し出し、第一ロールと第二ロールで圧着した後、冷却固化し、フィルムを作製した。シリンダーおよびTダイ温度は270℃とした。
最終的に得られるフィルムの厚み(単位:μm)の調整は、表4に記載の値となるように、第一ロールおよび第二ロールのロール速度を変更して行った。
用いた第一ロールおよび第二ロールの詳細は以下の通りである。
・第一ロール:持田商工社製、シリコーンゴムロール(IT68S-MCG)
寸法:外径260mm×幅600mm
ロール温度:50℃
・第二ロール:鏡面金属剛体ロール(表面:ハードクロム処理)
芯金寸法:外径250mm×幅600mm
ロール温度:120℃
【0066】
<表面粗さ(Ra)>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムについて、接触式表面粗さ計を用いて算術平均表面粗さRaを測定した。具体的には、JIS B0601:2001に準拠して、フィルムの第二ロールに接した面について、幅方向3点を測定し、その平均値を算出した。単位は、μmで示した。
測定装置は、ミツトヨ社製「サーフテストSJ-210」を用いた。
【0067】
<レターデーション(Re)>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムを50×150mmのサイズに切り出し、測定波長543nmにおけるレターデーションを測定した。単位は、nmで示した。
レターデーションの測定は、フォトニックラティス社製WPA-100を用いて行った。
【0068】
<熱賦形前後のレターデーション上昇率(ΔRe)>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムを50×150mmのサイズに切り出し、測定波長543nmにおけるレターデーションを測定した。測定結果についてフィルム短辺側端部から25mm、フィルム長辺側端部から25mmの位置から長手方向に100mmの長さについてライン解析し、その最大値を熱賦形前のレターデーションの最大値とした。油圧ジャッキ式プレス機に
図2に示す上金型21と下金型22を取り付けた。金型を130℃に加熱し、レターデーション測定後のフィルムを金型の上に乗せ上下の金型間の隙間が1mmの状態で1分間保持し、圧力0.5MPa、加圧時間1分の条件で熱賦形した。フィルムを取り出して23℃まで放冷したのち、熱賦形前と同様にレターデーションを測定し熱賦形後のレターデーション最大値を求め、以下の式により熱賦形前後のレターデーション上昇率(単位:%)を算出した。
レターデーション上昇率=[(熱賦形後のレターデーション最大値-熱賦形前のレターデーション最大値)/熱賦形前のレターデーション最大値]×100
レターデーションの測定は、フォトニックラティス社製WPA-100を用いた。
A:50%以下
B:50%超120%以下
C:120%超
【0069】
<耐薬品性>
上記で得られたペレットを、110℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した。その後、射出成形機により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル45秒の条件にてした3mmISO多目的試験片(JIS-K7139 タイプA1の厚みを4mmから3mmに変更)を成形した。
射出成形機としては、Sodick社製「PE-100」(商品名)を用いた。得られた試験片をオーブンで110℃、2時間の条件でアニール処理した。アニール処理した試験片を
図3に示すように0.45%のひずみをかけながら試験物質として2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパンを塗布し、オーブンで75℃、3時間保持したのち、23℃まで冷却した。
図3において、31は試験片を、Lは支点間距離を示す。
ひずみ[ε](%)は試験片のたわみ[s](mm)、試験片厚さ[h](mm)、支点間距離[L](mm)を用いて、以下の式から算出した。
ε=600sh/L
2
試験片のたわみ[s](mm)は
図3に示すI0(mm)とI(mm)を用いて、以下の式から算出した。
s=I0-I
試験サンプルを目視にて、下記の基準で評価判定した。評価は5人の専門家が行い多数決として判断した。
A:塗布面に薬傷が発生するが、試験片は破断しない。
B:試験片が破断した。
【0070】
<耐屈曲性>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムを75×25mmのサイズに切り出し、JIS C5016:1994に準拠して、FPC(フレキシブルプリント配線板)屈曲試験機を用いて、折曲げ面の曲率半径4.0mmにおける耐屈曲試験を行った。今回の耐屈曲試験では、2000回屈曲試験終了後の試験サンプルを目視にて、下記の基準で評価判定した。評価は5人の専門家が行い多数決とした。
FPC屈曲試験機としては、安田精機製作所社製「No.306FPC屈曲試験機」(商品名)を用いた。
S:フィルムの変形、クラックともに生じない。
A:フィルムがわずかに円弧状に変形するが、クラックが発生しない。
B:フィルムが円弧状に変形するが、クラックが発生しない。
C:フィルムが円弧状に変形し、クラックが発生したなど。
【0071】
<ヘイズ[%]>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムについて、ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0072】
<押出時のガス発生の有無>
上記<フィルムの製造2>の際の押出機からの押出の際のガスの発生の有無を確認した。評価は5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:ガスの発生が認められなかった。
B:ガスの発生が認められた。
【0073】
<ロール汚れの有無>
上記<フィルムの製造2>の際のロールの汚れの有無を確認した。
A:ロール汚れの発生が認められなかった。
B:ロール汚れの発生が認められた。
【0074】
<ロール汚れ転写の有無>
上記<フィルムの製造2>の際の押出時に目視においてロールの汚れのフィルムへの転写の有無を確認した。評価は5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:ロール汚れがフィルムに転写していることが認められなかった。
B:ロール汚れがフィルムに転写していることが認められた。
【0075】
<初期色(YI)>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムについてJIS Z 8781-4:2013、JIS K 7373:2006に準拠して色差計を用いてフィルムの初期YI値を測定した。
色差計は、SD7000(日本電色工業社製)を用いた。
【0076】
<ΔE>
上記<フィルムの製造2>で得られたフィルムについてJIS Z 8781-4:2013、JIS K 7373:2006に準拠して色差計を用いてフィルムのL1値、a1値、b1値を測定した。その後、JIS D 0205に準拠して、耐候性試験を100時間行った。その後、色差計を用いて耐候性試験後のフィルムのL2値、a2値、b2値を測定した。ここから、ΔE値を以下の式で求めた。
ΔE=((L2-L1)2+(a2-a1)2+(b2-b1)2))1/2
測定に際し、サンシャインウェザーメーターS-300を用いた。色差計は、SD7000(日本電色工業社製)を用いた。
【0077】