(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101082
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】先受け鋼管打設位置誘導システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001444
(22)【出願日】2022-01-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】391066157
【氏名又は名称】ドリルマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518447821
【氏名又は名称】株式会社プライア
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏実
(72)【発明者】
【氏名】阪本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】長野 達朗
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA05
2D054AC20
2D054FA07
2D054GA13
2D054GA25
2D054GA49
2D054GA82
(57)【要約】
【課題】本発明は、測量やマーキングの作業に多大な労力や時間を必要以上に費やすことがないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度に先受けの打設位置や打設角度が設定できるAGF工法での鋼管打設位置誘導システムを提供する。
【解決手段】車両本体2から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃5つき先受け部材27を軸方向に揺動させる削岩機6と、該削岩機6の前記揺動をガイドするガイドセル4と、該ガイドセル4の長手方向で、前記切削刃5の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカ9と、前記自発光マーカ9からの光を取得する複数の近赤外線カメラ10と、前記複数の近赤外線カメラ10が取得した光から前記2つの自発光マーカ9の座標位置を計測する手段と、計測した2つの自発光マーカ9の座標位置を削岩機6の軸芯位置及び切削刃5の中心位置に補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離を計測し、該距離を補正係数にして、計測した2つの自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段と、を有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム
【請求項2】
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離を計測し、該距離を補正係数にして、計測した2つの自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段と、を有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム
【請求項3】
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、を有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項4】
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とする請求項3記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項5】
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル工事などで採用される例えば長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事などでは、切羽(掘削面)の岩盤が脆弱で不安定な場合に、補助工法の一部として、AGF工法(長尺鋼管先受け工法)が多く用いられている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)とは、トンネル掘削に先立ち、トンネル外周において、略アーチ状に地山改良部材、すなわち先受けを形成する工法を指標し、該先受けの形成に伴う先受け鋼管打設と地山改良材の注入により切羽前方の地山を補強するものである。すなわち、前記先受けの形成により、トンネル掘削時の地山の先行変位や地山の緩みを抑制し、トンネル前方および上部からの崩落を防止するなどトンネル掘削施工時の安全性の確保を企図した工法である。
【0003】
ここで、標準的なAGF工法としては、例えば1本あたり約3mの鋼管を、ドリルマシンの削岩機を用いて打ち込み、前記鋼管を継ぎ足しながら地山に約12mの長さで打設する先受け工法が知られている。
すなわち、前記先受け鋼管を切羽前方の天端アーチ部、例えば120°の範囲に亘り略半円形状に間隔をあけて複数本打設し補強域を構築するのである。
尚、略120°の範囲で間隔をあけて複数本の先受け鋼管の打設を行うため、トンネルの大きさによっては前記打設本数が変化するものとなる。
【0004】
しかしながら、アーチ状に等間隔で打設し、トンネル掘削部前方に均整の取れたアーチ形状を構成させるには非常に高い打設精度が求められる。その為、正確な打設位置及び正確な打設角度の設定が本工法の採用に当たって極めて重要な設定事項となる。
【0005】
しかして、従来では下記の様な方法で前記打設精度の管理が行われていた。例えば、ガイドセルにターゲットを設置し、該ターゲットをトータルステーションにて測量を行い、正しい位置や角度に誘導する方法である。また、簡易的な方法としては、事前に測量を行い打設位置にマーキングを行う。そして、マーキングされた場所を打設開始位置の目印とし、角度は勾配計などの計測機器を使用して位置や角度を管理していた。
しかしながら、前記従来の方法では、測量やマーキングの作業に多大な労力と多大な時間が費やされる。そのため作業効率が良好ではないとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、測量やマーキングの作業に多大な労力や時間を必要以上に費やすことがないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度に先受けの打設位置や打設角度が設定できるAGF工法での鋼管打設位置誘導システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く確実で高精度なAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離を計測し、該距離を補正係数にして、計測した2つの自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段と、を有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離を計測し、該距離を補正係数にして、計測した2つの自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段と、を有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなす切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、を有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とし、
または、
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測量やマーキングの作業に必要以上に労力や時間を費やすことないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度にAGF工法での長尺鋼管が打設できるとの効果を奏する。
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く、かつ確実で高精度にてAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるドリルマシンの構成を説明する説明図である。
【
図2】トンネル内に掘削する先受け部材の掘削位置、掘削の傾き、掘削の距離を正面図、側面図として表し説明する先受け部材打設計画図の説明図である。
【
図3】
図2の先受け部材打設計画図から先受け部材の打設位置の座標を算出する説明図である。
【
図4】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を説明する説明図である。
【
図5】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(1)である。
【
図6】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(2)である。
【
図7】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(3)である。
【
図8】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(4)である。
【
図9】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(5)である。
【
図10】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(6)である。
【
図11】PCの構成と通信状態を説明する説明図である。
【
図12】演算制御部の構成を説明する説明図である。
【
図13】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(1)である。
【
図14】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(2)である。
【
図15】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(3)である。
【
図16】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(4)である。
【
図17】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(5)である。
【
図18】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(6)である。
【
図19】PCとサーバコンピュータとの通信状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
山岳トンネル工事などで使用されるAGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、長尺の先受けを、先受け鋼管打設と注入材の注入により構築するもので、現場で通常使用されているドリルマシン1を利用して施工を行っている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、地質に応じた掘削システムが選定できるため適用地質の範囲が広く、効率の比較的良いとされる施工が可能となっている。また、地質や注入目的に応じた注入材・注入方式が選定できるとのメリットもある。
【0013】
本工法では、通常山岳トンネルで用いるドリルマシン1を用いて、比較的小口径の先受け鋼管につき先端に専用の切削ビットをつけて用い、二重管方式で掘削とパイプ挿入を同時に行うものである。
その後、先受け鋼管の外周面にあけた複数の孔より、地山側に所定の圧力で注入材を注入し、掘削線の外周部に鋼管が入った限定地山改良ゾーンを形成する。
【0014】
この切羽前方に構築された地山改良ゾーンにより、地山の先行変位を抑制し、さらに地山の緩み防止と施工の安全が図られるのである。
すなわち、山岳トンネル工事では、切羽(掘削面)天井部の岩盤が不安定な場合に、AGF工法を実施することでトンネルの前方および上部からの崩落を防止できる。
【0015】
ここで、標準的なAGF工法では、前述の如く、例えば切羽頂部120°の範囲に、先受け鋼管をトンネルの掘削作業に先行して打ち込み、岩盤を補強する。そして、1ヵ所につき、長さ約3mの先受け鋼管を例えば4本つないで約12mの長さにして先受けを構成し、これを打ち込む。
【0016】
しかるに先受け鋼管と注入材によって地山を先行補強するのであり、トンネル断面を拡幅しないで施工できる。また、先受け鋼管打設はトンネル施工で使用するドリルマシン1を使用することが出来、鋼管打設後には、打設した円筒状をなす鋼管の開口からウレタン系やセメント系の注入材を注入し、該注入材は前記鋼管外周面に設けられた複数の穴から地山側に流れ、もってトンネル前方地山が補強されるのである。
【0017】
図1に本発明の長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに使用されるドリルマシン1の構成を示す。
該ドリルマシン1は、車両本体2と、この車両本体2の前方から突設されたブーム3と該ブーム3に接続されたガイドセル4とその先端から突出揺動するロッド26と、該ロッド26を突出揺動させる削岩機6を有して構成されている。
【0018】
そして、ロッド26の先端には切削刃5が取り付けられた円筒状の鋼管で構成された先受け部材27が接続されることとなる。前記先受け部材27の1本の長さは約3m程度であり、この先受け部材27を4本繋げて12mの長さの先受け部材27が敷設されるものとなる。
図1では先受け部材27を4本繋げて12mの長さにした先受け部材27が描画されている。
【0019】
ここで、ブーム3は、車両本体2の前方から揺動可能にして動作できるよう取り付けられている。すなわち、ブーム3は、上下、左右など広角度に自在に揺動できる様油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。そして、ブーム3の先端側に接続された直線状のガイドセル4についても前記ブーム3の揺動に伴って、またガイドセル4自体も広角に揺動するよう油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。
【0020】
該ガイドセル4は、先端に切削刃5を備えた直線円筒管状の先受け部材27を取り付けたロッド26の前後方向の突出揺動をガイドするための部材であり、該ガイドセル4の先端側で先受け部材27の先端に取り付けられた例えばビット状をなす切削刃5が突出揺動してトンネル内周面を掘削し前記先受け部材27を打設するものとなる。
【0021】
すなわち、稼働制御された切削刃5、先受け部材27、ロッド26などによりトンネル地山の内周面に対し、所定の位置、所定の角度、かつ所定の深さで確実、正確に先受け部材27の打設が行えるよう構成されているのである。
【0022】
ところで、ブーム3については、車両本体2に複数本取り付けられている場合もあり、その場合、各ブーム3の各先端側において各々ガイドセル4が取り付けられ、該各々のガイドセル4についても、それらガイドセル4の先端側にビット状をなす切削刃5が取り付けられた先受け部材27及びロッド26が突出揺動して掘削し、トンネル地山の内周内に打設出来るよう取り付けられている。
【0023】
なお、
図14、
図15、
図17、
図18から理解されるように、ガイドセル4の例えば先端側側面からは自発光マーカ9が複数個突設され、該複数個の自発光マーカ9とこの自発光マーカ9から発光された光を認識する複数個の近赤外線カメラ10により後述するモーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアの測定データ、すなわち前記複数個の自発光マーカ9の座標位置が計測されるものとなっている。
【0024】
そしてこの測定データを用いてガイドセル4を通過する先受け部材27、ロッド26や切削刃5の軸方向中心部につき、ガイドセル4の長手方向に間隔をおいて突設された自発光マーカ9について、その位置(座標)を認識すべくPC11の演算制御部12で演算することで、ガイドセル4のリアルタイムでの可動範囲、すなわち先受け部材27先端に有する切削刃5が掘削する位置や掘削する深さ及び掘削の向きなどの情報が取得出来るように構成されるものとなっている(
図11、
図12参照)。
【0025】
モーションキャプチャ用の近赤外線カメラ10は、ドリルマシン1の例えば、操縦席上部に間隔をあけて複数個設置されており、ガイドセル4先端の稼働範囲を撮影範囲として撮影できるものとなっている。
【0026】
ここで、前記近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台あるいは奇数台を組み合わせてそれを交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉えるものとなる。
【0027】
すなわち、近赤外線カメラ10は、前記自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉え、これにより、例えば、ガイドセル4から突設された複数の自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、前記モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて認識した自発光マーカ9の位置から相対的にガイドセル4先端にある先受け部材27に取り付けられた切削刃5の座標位置などを計算していくのである。
【0028】
ここで、切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることが出来れば、確実に切削刃5の先端位置などの座標認識が出来る。しかし切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることは出来ない。掘削作業や先受け部材27の打設作業の邪魔になってしまい、また掘削作業や先受け部材27の打設作業により破損するからである。
【0029】
そこで、本発明では、前述したように、切削刃5の近傍位置、すなわちガイドセル4の側面などに複数個の自発光マーカ9を設置し、切削刃5との距離をいわゆるオフセット補正できるようにして、切削刃5の座標位置を認識するものとしている。詳細は後述する。
【0030】
本発明によるトンネル内周面への先受け部材27の打設作業につき説明する。
図2に示す様なトンネル内周面における先受け部材27の打設位置を示した先受け部材打設計画図などの打設計画図データを予め設定して用意しておく。
図2は先受け部材27の打設計画位置をトンネルの正面から見た正面図と側面図であり、例えばCADなどで描画形成した先受け部材打設計画図である。そして、前記
図2の先受け部材打設計画図からロックボルト座標位置を算出していく。すなわち、先受け部材打設計画図(例えばCAD図)からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していく。
【0031】
すると、
図3に示す様に(1)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は-5205mm、Z座標は3450mmと算出され、のみ先離れは、2113mm、表示角度は-132°と算出される。また、(2)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は3446mm、Z座標は4841mm、のみ先離れは、2113mm、表示角度は151°と算出される。
【0032】
なお、のみ先とは、トンネル地山の先端部にあたる掘削刃5の部分をいい、のみ先離れとは、掘削開始位置から掘削目標位置までの掘削刃5の離れ位置を、正面からみて2次元平面上で表した数値をいう。すなわち、
図3において、(1)の先受け部材27につき、2113mmと記載されている数値がのみ先離れの数値となる。換言すれば掘削する先受け部材27の掘削深さを示しているといえる。
【0033】
そして、上記算出された数値を基に例えば、CSVファイルを作成し、このCSVファイルのデータを描画アプリを用いてディスプレイ15上に描画された図に上書きする操作を行う。これにより前記作業用のディスプレイ15上に先受け部材27の打設位置が反映されるものとなる。
【0034】
図4は、ディスプレイ15上に描画された先受け部材27の打設位置を示したものであり、画面は例えば4分割されて表示されている。すなわち、左下の画面にはトンネルの正面図が描画されており、右下にはトンエルの正面図の拡大図、そして、左上の画面にはトンネルを上から見た平面図の拡大図、右上の画面はその側面図が示されて構成されている。
【0035】
図4において丸部分16は掘削を開始する位置を示している。そして、そこから延びる直線部分は先受け部材27の掘削方向の傾きと掘削深さを示したものである。
【0036】
そして、作業用のディスプレイ15上に表示された先受け部材27の打設計画図上においては、リアルタイムに稼働するガイドセル4先端に有する先受け部材27の切削刃5の実際の稼働位置をあわせて表示できる様構成されている。
【0037】
よって、この表示をディスプレイ15上で確認し、操作者は、ガイドセル4を稼働させ、切削刃5を有する先受け部材27を操作して先受け部材27の打設作業を行っていくのである。
【0038】
なお、先受け部材27の打設掘削位置誘導についてであるが、例えば山岳トンネルで用いられている先受け部材27は略円筒状をなす略3mの長さからなる鋼管を繋ぎ合わせられるよう形成されており、トンネルの形状や地山の強度によって前記繋ぎ合わせる長さが使い分けられている。通常は前記鋼管を繋ぎ合わせて例えば12mの長さの先受け部材27が打設される。
ここで、先受け部材27での掘削をドリルマシン1で行い、掘削すると同時に先受け部材27を挿入打設していく。
【0039】
本発明では、前述のごとく先受け部材27の打設位置は予め計画されて先受け部材打設計画図が作成されており、この先受け部材打設計画図を使用して正しい位置や向き(角度)に打設することによって、より先受け部材27の効果が発揮されることとなる。
したがって、ドリルマシン1で行う先受け部材27の打設位置と掘削方向及び掘削深さは正確確実なのである。
【0040】
本発明による先受け部材27の打設作業の手順は
図5乃至
図10に示すとおりである。
目標とする打設位置にガイドセル4を合わせる作業を行う。
図5、
図6のように正面図で打設開始位置と角度を合わせる。
【0041】
図5乃至
図10は白黒の図で示されているが、実際はカラーで表示されており、例えばディスプレイ15上では、先受け部材27の掘削計画位置(
図6において矢印の先にある直線)は青色で示され、ガイドセル4の実際の方向(矢印の基端側にある直線)は緑色で示される如きである。すなわち、色分け表示することでディスプレイ15上で容易に認識でき、掘削作業がしやすいように構成されている。
【0042】
そして、
図6、
図8、
図9、
図10に示すように、ディスプレイ15上の図を確認し、その後、所定の深さまでガイドセル4を押し込んで掘削、挿入打設作業を行うのである。
【0043】
しかるに、ガイドセル4の位置と姿勢を掘削計画図における位置と姿勢に合わせて打設作業を行うのであるが、本発明では、
図5乃至
図10に示すように、この打設位置(掘削すべき位置と傾きと掘削深さ)を打設計画図上に重ねて描画出来ると共に、前記打設位置(掘削すべき位置と掘削深さ)を平面的に描画して表せることができるのである。
すなわち、先受け部材27の掘削深さの描画方法は、直線の長さによって表すこととし、この直線の長さが掘削深さの長さとなっているのである。
【0044】
次に、自発光マーカ9の構成につき説明する。
本発明では自ら光る自発光マーカ9を用い、ガイドセル4先端側にある先受け部材27先端の切削刃5の位置の常時検出ができる構成としたものである。
【0045】
トンネル掘削時のトンネル内環境につき、現場によってはトンネル内部空間内に水滴や土埃などが多く浮遊していることがある。その場合、反射型のマーカを用いると、発光体より照射された光が反射型マーカに到達するまでに乱反射が起こる。すると、前記乱反射光により近赤外線カメラ10はマーカ位置を正確に捉えることが出来なくなる場合がある。
また反射型マーカの反射光は、近赤外線カメラ10で捉える時点で、輝度が低下して充分な精度が得られない。
そこで、本件発明者らはマーカ自体が近赤外光を発する自発光マーカ9を発明したものである。
【0046】
本発明での自発光マーカ9は、反射型と比べ光の経路が半分で済むため、輝度の低下を抑えられる。特に、空間内に水滴などが存在して乱反射が起こる場合、近赤外線カメラ10にはマーカが中心にぼやけて見えるため、半径が少し大きく検出されるが、依然マーカ中心位置を正確に検出することが可能なのである。なお、自発光マーカ9は取付位置付近に電源(例えば、充電式モバイルバッテリを使用する)があることが必要とされる。
【0047】
従って、自発光マーカ9の近傍位置には、バッテリー17などが納められたベースステーション18が設けられる。そして、自発光マーカ9とバッテリー17とは例えば有線で接続される(
図19参照)。
【0048】
トンネル内周面への先受け部材27の掘削作業に際しては、前述した様にこの自発光マーカ9を切削刃5近傍位置のガイドセル4の2カ所に間隔をあけて取り付ける(
図14、
図15など参照)。これにより確実な掘削作業が行えることとなる。
【0049】
すなわち、掘削作業時において、複数の近赤外線カメラ10によって少なくとも2カ所に取り付けられた自発光マーカ9の光を受光し、この受光した自発光マーカ9の相対位置からPC11にて前記自発光マーカ9の座標位置2点を計算する。
モーションキャプチャ技術には複数の手法が存在するが、本発明のモーションキャプチャ技術は光学式モーションキャプチャ技術である。
【0050】
この光学式キャプチャ技術の基本的な仕組みとしては、対象物(ここでは切削刃5近傍位置のガイドセル4上)に自発光マーカ9につき間隔をあけて2カ所に設置し、前記自発光マーカ9により、例えば目に見えない近赤外線光(波長850nm程度)を発光させ、該光を複数の近赤外線カメラ10により撮影するものである。
【0051】
なお、前記2カ所に設置する自発光マーカ9は、削岩機6に取り付けられたロッド26及び先受け部材27先端の切削刃5の軸方向中心軸線と、なるべく近接する位置するよう設置するものとする。後述する回転誤差があっても、その影響を少なくすることが求められるからである。
【0052】
上記のように2つの自発光マーカ9を設置すれば、削岩機6及び切削刃5、特に切削刃5の先端の座標位置を計測することが出来る。なお、前記したように自発光マーカ9の取付位置と切削刃5の軸方向中心線との距離が離れているが、該距離の長さをあらかじめ認識していわゆるオフセット補正するものとしてある。
【0053】
前記近赤外線カメラ10にて取得した画像はデータとしてPC11に転送され、該画像データはソフトウェア処理により、背景とマーカ光の輝度差を利用してマーカ部分の画像のみが抽出される。
そして、PC11に取り込まれた画像において、例えば、画面上の左上隅を原点として、各自発光マーカ9の重心座標をピクセル単位で各々測定する。これにより各々の自発光マーカ9の座標位置がほぼ認識できる。
【0054】
すなわち、複数台の近赤外線カメラ10にて自発光マーカ9からの光を同時撮影することで、ステレオビジョンの要領で視差を基に深さ方向の距離が認識され、深さ方向の位置も計算することができる。
各々の自発光マーカ9の座標位置に前述のオフセット補正をすることにより、切削刃5の先端位置の座標位置が認識できるものとなる。
【0055】
ここで、PC11は、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている(
図11参照)。
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有している(
図12参照)。
【0056】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32で平面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0057】
そして、操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである(
図5乃至
図10参照)。
【0058】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部22に送出され、記憶部22に保存される。また、保存されたデータは通信回線網25を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【0059】
ここで、本発明において自発光マーカ9を用いる手法は、ガイドセル4の長手方向に間隔をあけて2カ所に設置する場合につき説明した。
しかしながら、2カ所の設置であると、切削刃5が2つの自発光マーカ9の中心を結ぶ延長線を回転軸として回転したときの切削刃5の座標位置認識のずれを解決できない。
【0060】
自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に設置されたものではない。逆に、既に述べたように自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に決して設置出来ない。切削刃5の稼働の邪魔になるからであり、仮に設置したとしても稼働作業により破壊されてしまうからである。
【0061】
よって、自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としてあらかじめオフセット認識して計測するのである。この自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としての計測は、前記オフセット補正係数、すなわち自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離データが演算制御部12に入力されて行われる(
図13乃至
図18の「オフセット距離」を参照)。
【0062】
ところが、自発光マーカ9の2カ所の設置であると、前記自発光マーカ9の延長線上を回転軸として前記オフセット補正の距離を半径にした円周上のいずれの位置に切削刃5が位置するか認識できずに切削刃5の位置認識にずれが生じてしまうのである。
【0063】
すなわち、2つの自発光マーカ9のみを使用した場合、ガイドセル4の位置、切削刃5の位置は一意に決まらないことになる。なぜなら2つの自発光マーカ9の中心を通る直線を回転軸にして、切削刃5の中心と自発光マーカ9の設置位置との距離を半径とする円周上のどこかに目標座標があることになるからである(回転誤差)。
【0064】
しかしながら、実際の掘削作業においては、ガイドセル4の姿勢はおおよそ一定の範囲でのみ動作するため前述の回転誤差は掘削作業において許容範囲内と考えることができ、前記2点の自発光マーカ9の設置での運用が可能になっている。従って、2つの自発光マーカ9は、なるべく切削刃5の軸方向中心に近い箇所に取り付けることが好ましいのである。
【0065】
そこで、本件発明者らは、さらに掘削作業の正確性を期すべく、上記事態を解消すべく、自発光マーカ9を3カ所、あるいはそれ以上の箇所に設置する発明を創案した(
図17乃至
図19参照)。
【0066】
まず、自発光マーカ9を取り付ける取付杆19の各々の長さが異なるようにした3つの自発光マーカ9を使用し、これら3つの自発光マーカ9について間隔をあけてガイドセル4に取り付ける。
そして、前記した複数の近赤外線カメラ7で前記3つの自発光マーカ9を撮影し、モーションキャプチャによりこれら3つの自発光マーカ9の座標位置を測定する。
【0067】
なお、前記測定に際しては自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離をオフセット補正係数としてあらかじめ設定しておき、その上で演算制御部12で計測することは、前述した2つ自発光マーカの場合と同様である。
【0068】
すると、測定したそれぞれ3つの自発光マーカ9の座標位置からオフセット(補正係数)を考慮した目標座標が一意に計測することが出来るものとなる。
この場合であれば、自発光マーカ9の座標認識による目標座標が確実に認識でき、そのため前記した自発光マーカ9の2カ所設置による切削刃5の回転による位置認識のずれをも解消できる。従って、確実に掘削箇所に合致させられ、もって正確な掘削が出来る。なお、3つ以上自発光マーカ9を設置した場合でも同様の結果が得られる。
【0069】
ここで、前記複数の近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でブーム3及びガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台を各々交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、複数の近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9から発光された近赤外線光を捉えるものとなる。
【0070】
すなわち、近赤外線カメラ10が前記近赤外線光を捉え、これにより、例えば、切削刃5近傍位置に取り付けられた自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて自発光マーカ9の座標を認識する。そして、認識した座標から相対的に切削刃5の位置を計算し、順次計算される座標位置を認識しながら、切削刃5を稼働操作し、切削していくものとなる。
【0071】
次に、所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9を用いた構成について本件発明者らはさらに発明したので該新規発明の構成についても説明する。
なお、点滅型の自発光マーカ9をガイドセル4に取りつける個数については、2個でも構わないし、2個以上でも構わない。前述した自発光マーカ9の場合と同様である。
【0072】
トンネル空間内に複数のマーカが取り付けられた対象物、すなわちブーム3及びガイドセル4が複数存在する場合でこれら複数のブーム3及びガイドセル4が交差したり回転等の動きがある場合、前記ブーム3及びガイドセル4のどの位置にどのマーカが取り付けられているか判別できなくなることがある(これはマーカ入替り現象と称されている)。
【0073】
その場合、例えば、近赤外線カメラ10のフレームレートを考慮した同期機能を持つ所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9が効果を発揮するものとなる。本件発明者らは独自に本件発明に関するガイドセル4用に前記所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9及び点滅型の自発光マーカ9の輝度などの増幅回路を含むハードウェアを発明した(
図19参照)。
【0074】
各々の点滅型の自発光マーカ9の近傍位置にベースステーション18が設けられており、該ベースステーション18内には、例えばバッテリー17、同期信号受信器42、増幅回路40などが収納されている。
【0075】
また、ドリルマシン1側には同期信号送信器41が設けられ、該同期信号送信器41から各々の点滅型の自発光マーカ9側に同期信号が送信される。
そして、各々の点滅型の自発光マーカ9は、自己の同期信号を受信し、これにより独自の信号周期(点滅周期)による点滅が行えるのである。
【0076】
そして、PC11側では、各々の点滅型の自発光マーカ9についてそれぞれの信号周期で点滅することが認識できるものとなっており、それぞれの信号周期での点滅が、いわば各々の点滅型の自発光マーカ9のIDとなっているのである。よって、たとえ近赤外線カメラ10によって捉えられた自発光マーカ9がいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9から照射された光か目視などで判断ができない場合であっても、前記IDを検索することでいずれのガイドセル4に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判断できるものとなる。
【0077】
すなわち、本件発明者らが発明した点滅型の自発光マーカ9を用いることで、全ての点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返す。従って、異なる信号周期で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9は、その異なる信号周期での点滅の違いがそれぞれのID となり、このIDを認識することによりいずれのガイドセル4のいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判別できるものとなる。
【0078】
このように、検出された点滅型の自発光マーカ9がいずれの座標位置にある点滅型の自発光マーカ9であるかが一意に決まるため、マーカの入れ替わりを防ぐことが出来る。
【0079】
さらに詳細に説明すると、まず、本件発明の点滅型の自発光マーカ9に、例えば異なったパルス波形のパルス信号、すなわち、異なる信号周期で点滅を繰り返すパルス信号を振り分ける。
【0080】
これにより、それぞれの点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返すことができる。しかも、前記異なった信号周期の点滅が点滅型の自発光マーカ9のそれぞれのIDになるのである。そのIDを有する点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置をあらかじめ認識しておけば、たとえ、近赤外線カメラ10でいずれかの点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が目視などで判断できなくなっても、前記IDの違いにより点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が判断できることになるのである。
【0081】
このように、点滅型の自発光マーカ9の全てに、例えば異なった信号周期の点滅をIDにして振り分け、次いでそのラベリングを行う。これによりすべての点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が認識できる。
【0082】
ところで、点滅型の自発光マーカ9は、例えば取り付け位置近傍に設置されたバッテリーから電源供給を受け、それぞれの点滅型の自発光マーカ9を点滅させる。
この点滅に際しては、増幅回路40によって点滅型の自発光マーカ9の光源であるLEDの輝度を増幅させることもできる。この輝度向上により、さらに近赤外線カメラ10からの認識度を向上させることができる。
【0083】
図19は本発明の本発明の構成を含んだシステム概要図であり、図から理解されるように、それぞれの点滅型の自発光マーカ9の近傍位置には電源としてのバッテリー17、LEDの輝度を増幅させる増幅回路40及び同期信号送信器41からの同期信号を受信する同期信号受信器42が収納されたベースステーション18が設置されている。
【0084】
そして、前記同期信号送信器41と同期信号受信器42との信号の送受信によっていずれの取り付け位置にある点滅型の自発光マーカ9かが認識できるものとなっている。
【0085】
本発明の掘削システムは、前記したように、ドリルマシン1におけるガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を、いわゆるモーションキャプチャ技術を用いて、まず第一に、リアルタイムに前記ガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をドリルマシン1に搭載されたディスプレイ15に表示出来、該ディスプレイ15上の画像を確認しながら操作者がトンネル内周面に対する掘削作業が行える。さらに、第二に掘削作業を行っているトンネル内周面に対する大量の先受け部材277の掘削位置データについてリアルタイムにPC11等に記録、保存できるものとしている。
【0086】
よって、ドリルマシン1の操作者は、前記リアルタイムで取得されたガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をディスプレイ15上に描画された映像で確認しながら掘削作業を行えるものとなる。よって、従来、目視で確認した掘削作業においては、死角が存在することがあったが、ディスプレイ15上の確認作業に死角がほぼ存在することはないものとなった。
【0087】
ここで、
図3に内周面についての掘削計画図である正面図を示す。該正面図においては、ガイドセル4の代表2点から取得した座標をどのように描画するかも重要となる。
【0088】
本発明では前述のごとく、前記
図2の先受け部材27の掘削打設計画図(例えばCAD図)から先受け部材27の掘削打設座標位置を算出していくのである。すなわち、先受け部材27の掘削打設計画図からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していくのである(
図3参照)。
【0089】
一方、記録、保存に関しては、自発光マーカ9の2点の座標の変化を例えば、1秒単位で記録することもできる。例えば、PC11のハードドライブなど記憶部21に例えばCSV形式にて保存できるのである。
【0090】
なお、掘削時において、例えばガイドセル4に設けられた掘削距離測定部を構成する油圧シリンダの油圧データ(例えばガイドセル4や削岩機の揺動部材4として使用される油圧シリンダの油圧流量変化量)などをドリルマシン1(建機)から取得してPC11に転送することで、各先受け部材27の掘削距離を前記記憶部21に追加して保存することも出来る。この様に、掘削長さを表すのみ先離れの距離などについて別途前記の様に油圧データなどを介して計測することも出来る。
【0091】
以上において、本発明による使用状態の概略を説明する。
トンネルの内周面に対し、ドリルマシン1のガイドセル4を対向させて設置させる。所定の内周面に対し、掘削計画図が用意されている場合、該掘削計画図をディスプレイ15に写し出す。
【0092】
そして、該掘削計画図に描画された掘削位置、掘削の傾き、掘削長(のみ先離れの距離)に従ってガイドセル4を稼働させる。すなわち、ガイドセル4の操作者はディスプレイ15上でリアルタイムにガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を確認出来、その稼働動作を確認しながら先受け部材27の掘削が行える。
【0093】
ここで、PC11には、
図11に示す様に、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている。
【0094】
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、
図12に示すように、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有して構成されている。
【0095】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32でトンネルの正面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0096】
操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである。
【0097】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部21に送出され、記憶部21に保存される。また、保存されたデータは通信回線網23を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【符号の説明】
【0098】
1 ドリルマシン
2 車両本体
3 ブーム
4 ガイドセル
5 切削刃
6 削岩機
8 ガイド部材
9 自発光マーカ
10 近赤外線カメラ
11 PC
12 演算制御部
14 原点
15 ディスプレイ
16 丸部分
17 バッテリー
18 ベースステーション
19 取付杆
20 送信部
21 受信部
22 記憶部
23 入力部
24 サーバコンピュータ
25 通信回線網
26 ロッド
27 先受け部材
31 掘削計画図読み込み部
32 掘削計画図形成部
33 掘削位置等読み込み部
34 掘削位置等描画部
40 増幅回路
41 同期信号送信器
42 同期信号受信器
【手続補正書】
【提出日】2023-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記2つの自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項2】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記3つ以上取り付けられた自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項3】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて
複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記点滅型の自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項4】
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とする請求項3記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項5】
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル工事などで採用される例えば長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事などでは、切羽(掘削面)の岩盤が脆弱で不安定な場合に、補助工法の一部として、AGF工法(長尺鋼管先受け工法)が多く用いられている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)とは、トンネル掘削に先立ち、トンネル外周において、略アーチ状に地山改良部材、すなわち先受けを形成する工法を指標し、該先受けの形成に伴う先受け鋼管打設と地山改良材の注入により切羽前方の地山を補強するものである。すなわち、前記先受けの形成により、トンネル掘削時の地山の先行変位や地山の緩みを抑制し、トンネル前方および上部からの崩落を防止するなどトンネル掘削施工時の安全性の確保を企図した工法である。
【0003】
ここで、標準的なAGF工法としては、例えば1本あたり約3mの鋼管を、ドリルマシンの削岩機を用いて打ち込み、前記鋼管を継ぎ足しながら地山に約12mの長さで打設する先受け工法が知られている。
すなわち、前記先受け鋼管を切羽前方の天端アーチ部、例えば120°の範囲に亘り略半円形状に間隔をあけて複数本打設し補強域を構築するのである。
尚、略120°の範囲で間隔をあけて複数本の先受け鋼管の打設を行うため、トンネルの大きさによっては前記打設本数が変化するものとなる。
【0004】
しかしながら、アーチ状に等間隔で打設し、トンネル掘削部前方に均整の取れたアーチ形状を構成させるには非常に高い打設精度が求められる。その為、正確な打設位置及び正確な打設角度の設定が本工法の採用に当たって極めて重要な設定事項となる。
【0005】
しかして、従来では下記の様な方法で前記打設精度の管理が行われていた。例えば、ガイドセルにターゲットを設置し、該ターゲットをトータルステーションにて測量を行い、正しい位置や角度に誘導する方法である。また、簡易的な方法としては、事前に測量を行い打設位置にマーキングを行う。そして、マーキングされた場所を打設開始位置の目印とし、角度は勾配計などの計測機器を使用して位置や角度を管理していた。
しかしながら、前記従来の方法では、測量やマーキングの作業に多大な労力と多大な時間が費やされる。そのため作業効率が良好ではないとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、測量やマーキングの作業に多大な労力や時間を必要以上に費やすことがないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度に先受けの打設位置や打設角度が設定できるAGF工法での鋼管打設位置誘導システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く確実で高精度なAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記2つの自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記3つ以上取り付けられた自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて
複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記点滅型の自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とし、
または、
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測量やマーキングの作業に必要以上に労力や時間を費やすことないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度にAGF工法での長尺鋼管が打設できるとの効果を奏する。
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く、かつ確実で高精度にてAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるドリルマシンの構成を説明する説明図である。
【
図2】トンネル内に掘削する先受け部材の掘削位置、掘削の傾き、掘削の距離を正面図、側面図として表し説明する先受け部材打設計画図の説明図である。
【
図3】
図2の先受け部材打設計画図から先受け部材の打設位置の座標を算出する説明図である。
【
図4】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を説明する説明図である。
【
図5】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(1)である。
【
図6】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(2)である。
【
図7】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(3)である。
【
図8】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(4)である。
【
図9】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(5)である。
【
図10】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(6)である。
【
図11】PCの構成と通信状態を説明する説明図である。
【
図12】演算制御部の構成を説明する説明図である。
【
図13】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(1)である。
【
図14】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(2)である。
【
図15】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(3)である。
【
図16】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(4)である。
【
図17】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(5)である。
【
図18】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(6)である。
【
図19】PCとサーバコンピュータとの通信状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
山岳トンネル工事などで使用されるAGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、長尺の先受けを、先受け鋼管打設と注入材の注入により構築するもので、現場で通常使用されているドリルマシン1を利用して施工を行っている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、地質に応じた掘削システムが選定できるため適用地質の範囲が広く、効率の比較的良いとされる施工が可能となっている。また、地質や注入目的に応じた注入材・注入方式が選定できるとのメリットもある。
【0013】
本工法では、通常山岳トンネルで用いるドリルマシン1を用いて、比較的小口径の先受け鋼管につき先端に専用の切削ビットをつけて用い、二重管方式で掘削とパイプ挿入を同時に行うものである。
その後、先受け鋼管の外周面にあけた複数の孔より、地山側に所定の圧力で注入材を注入し、掘削線の外周部に鋼管が入った限定地山改良ゾーンを形成する。
【0014】
この切羽前方に構築された地山改良ゾーンにより、地山の先行変位を抑制し、さらに地山の緩み防止と施工の安全が図られるのである。
すなわち、山岳トンネル工事では、切羽(掘削面)天井部の岩盤が不安定な場合に、AGF工法を実施することでトンネルの前方および上部からの崩落を防止できる。
【0015】
ここで、標準的なAGF工法では、前述の如く、例えば切羽頂部120°の範囲に、先受け鋼管をトンネルの掘削作業に先行して打ち込み、岩盤を補強する。そして、1ヵ所につき、長さ約3mの先受け鋼管を例えば4本つないで約12mの長さにして先受けを構成し、これを打ち込む。
【0016】
しかるに先受け鋼管と注入材によって地山を先行補強するのであり、トンネル断面を拡幅しないで施工できる。また、先受け鋼管打設はトンネル施工で使用するドリルマシン1を使用することが出来、鋼管打設後には、打設した円筒状をなす鋼管の開口からウレタン系やセメント系の注入材を注入し、該注入材は前記鋼管外周面に設けられた複数の穴から地山側に流れ、もってトンネル前方地山が補強されるのである。
【0017】
図1に本発明の長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに使用されるドリルマシン1の構成を示す。
該ドリルマシン1は、車両本体2と、この車両本体2の前方から突設されたブーム3と該ブーム3に接続されたガイドセル4とその先端から突出揺動するロッド26と、該ロッド26を突出揺動させる削岩機6を有して構成されている。
【0018】
そして、ロッド26の先端には切削刃5が取り付けられた円筒状の鋼管で構成された先受け部材27が接続されることとなる。前記先受け部材27の1本の長さは約3m程度であり、この先受け部材27を4本繋げて12mの長さの先受け部材27が敷設されるものとなる。
図1では先受け部材27を4本繋げて12mの長さにした先受け部材27が描画されている。
【0019】
ここで、ブーム3は、車両本体2の前方から揺動可能にして動作できるよう取り付けられている。すなわち、ブーム3は、上下、左右など広角度に自在に揺動できる様油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。そして、ブーム3の先端側に接続された直線状のガイドセル4についても前記ブーム3の揺動に伴って、またガイドセル4自体も広角に揺動するよう油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。
【0020】
該ガイドセル4は、先端に切削刃5を備えた直線円筒管状の先受け部材27を取り付けたロッド26の前後方向の突出揺動をガイドするための部材であり、該ガイドセル4の先端側で先受け部材27の先端に取り付けられた例えばビット状をなす切削刃5が突出揺動してトンネル内周面を掘削し前記先受け部材27を打設するものとなる。
【0021】
すなわち、稼働制御された切削刃5、先受け部材27、ロッド26などによりトンネル地山の内周面に対し、所定の位置、所定の角度、かつ所定の深さで確実、正確に先受け部材27の打設が行えるよう構成されているのである。
【0022】
ところで、ブーム3については、車両本体2に複数本取り付けられている場合もあり、その場合、各ブーム3の各先端側において各々ガイドセル4が取り付けられ、該各々のガイドセル4についても、それらガイドセル4の先端側にビット状をなす切削刃5が取り付けられた先受け部材27及びロッド26が突出揺動して掘削し、トンネル地山の内周内に打設出来るよう取り付けられている。
【0023】
なお、
図14、
図15、
図17、
図18から理解されるように、ガイドセル4の例えば先端側側面からは自発光マーカ9が複数個突設され、該複数個の自発光マーカ9とこの自発光マーカ9から発光された光を認識する複数個の近赤外線カメラ10により後述するモーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアの測定データ、すなわち前記複数個の自発光マーカ9の座標位置が計測されるものとなっている。
【0024】
そしてこの測定データを用いてガイドセル4を通過する先受け部材27、ロッド26や切削刃5の軸方向中心部につき、ガイドセル4の長手方向に間隔をおいて突設された自発光マーカ9について、その位置(座標)を認識すべくPC11の演算制御部12で演算することで、ガイドセル4のリアルタイムでの可動範囲、すなわち先受け部材27先端に有する切削刃5が掘削する位置や掘削する深さ及び掘削の向きなどの情報が取得出来るように構成されるものとなっている(
図11、
図12参照)。
【0025】
モーションキャプチャ用の近赤外線カメラ10は、ドリルマシン1の例えば、操縦席上部に間隔をあけて複数個設置されており、ガイドセル4先端の稼働範囲を撮影範囲として撮影できるものとなっている。
【0026】
ここで、前記近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台あるいは奇数台を組み合わせてそれを交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉えるものとなる。
【0027】
すなわち、近赤外線カメラ10は、前記自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉え、これにより、例えば、ガイドセル4から突設された複数の自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、前記モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて認識した自発光マーカ9の位置から相対的にガイドセル4先端にある先受け部材27に取り付けられた切削刃5の座標位置などを計算していくのである。
【0028】
ここで、切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることが出来れば、確実に切削刃5の先端位置などの座標認識が出来る。しかし切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることは出来ない。掘削作業や先受け部材27の打設作業の邪魔になってしまい、また掘削作業や先受け部材27の打設作業により破損するからである。
【0029】
そこで、本発明では、前述したように、切削刃5の近傍位置、すなわちガイドセル4の側面などに複数個の自発光マーカ9を設置し、切削刃5との距離をいわゆるオフセット補正できるようにして、切削刃5の座標位置を認識するものとしている。詳細は後述する。
【0030】
本発明によるトンネル内周面への先受け部材27の打設作業につき説明する。
図2に示す様なトンネル内周面における先受け部材27の打設位置を示した先受け部材打設計画図などの打設計画図データを予め設定して用意しておく。
図2は先受け部材27の打設計画位置をトンネルの正面から見た正面図と側面図であり、例えばCADなどで描画形成した先受け部材打設計画図である。そして、前記
図2の先受け部材打設計画図からロックボルト座標位置を算出していく。すなわち、先受け部材打設計画図(例えばCAD図)からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していく。
【0031】
すると、
図3に示す様に(1)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は-5205mm、Z座標は3450mmと算出され、のみ先離れは、2113mm、表示角度は-132°と算出される。また、(2)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は3446mm、Z座標は4841mm、のみ先離れは、2113mm、表示角度は151°と算出される。
【0032】
なお、のみ先とは、トンネル地山の先端部にあたる掘削刃5の部分をいい、のみ先離れとは、掘削開始位置から掘削目標位置までの掘削刃5の離れ位置を、正面からみて2次元平面上で表した数値をいう。すなわち、
図3において、(1)の先受け部材27につき、2113mmと記載されている数値がのみ先離れの数値となる。換言すれば掘削する先受け部材27の掘削深さを示しているといえる。
【0033】
そして、上記算出された数値を基に例えば、CSVファイルを作成し、このCSVファイルのデータを描画アプリを用いてディスプレイ15上に描画された図に上書きする操作を行う。これにより前記作業用のディスプレイ15上に先受け部材27の打設位置が反映されるものとなる。
【0034】
図4は、ディスプレイ15上に描画された先受け部材27の打設位置を示したものであり、画面は例えば4分割されて表示されている。すなわち、左下の画面にはトンネルの正面図が描画されており、右下にはトンエルの正面図の拡大図、そして、左上の画面にはトンネルを上から見た平面図の拡大図、右上の画面はその側面図が示されて構成されている。
【0035】
図4において丸部分16は掘削を開始する位置を示している。そして、そこから延びる直線部分は先受け部材27の掘削方向の傾きと掘削深さを示したものである。
【0036】
そして、作業用のディスプレイ15上に表示された先受け部材27の打設計画図上においては、リアルタイムに稼働するガイドセル4先端に有する先受け部材27の切削刃5の実際の稼働位置をあわせて表示できる様構成されている。
【0037】
よって、この表示をディスプレイ15上で確認し、操作者は、ガイドセル4を稼働させ、切削刃5を有する先受け部材27を操作して先受け部材27の打設作業を行っていくのである。
【0038】
なお、先受け部材27の打設掘削位置誘導についてであるが、例えば山岳トンネルで用いられている先受け部材27は略円筒状をなす略3mの長さからなる鋼管を繋ぎ合わせられるよう形成されており、トンネルの形状や地山の強度によって前記繋ぎ合わせる長さが使い分けられている。通常は前記鋼管を繋ぎ合わせて例えば12mの長さの先受け部材27が打設される。
ここで、先受け部材27での掘削をドリルマシン1で行い、掘削すると同時に先受け部材27を挿入打設していく。
【0039】
本発明では、前述のごとく先受け部材27の打設位置は予め計画されて先受け部材打設計画図が作成されており、この先受け部材打設計画図を使用して正しい位置や向き(角度)に打設することによって、より先受け部材27の効果が発揮されることとなる。
したがって、ドリルマシン1で行う先受け部材27の打設位置と掘削方向及び掘削深さは正確確実なのである。
【0040】
本発明による先受け部材27の打設作業の手順は
図5乃至
図10に示すとおりである。
目標とする打設位置にガイドセル4を合わせる作業を行う。
図5、
図6のように正面図で打設開始位置と角度を合わせる。
【0041】
図5乃至
図10は白黒の図で示されているが、実際はカラーで表示されており、例えばディスプレイ15上では、先受け部材27の掘削計画位置(
図6において矢印の先にある直線)は青色で示され、ガイドセル4の実際の方向(矢印の基端側にある直線)は緑色で示される如きである。すなわち、色分け表示することでディスプレイ15上で容易に認識でき、掘削作業がしやすいように構成されている。
【0042】
そして、
図6、
図8、
図9、
図10に示すように、ディスプレイ15上の図を確認し、その後、所定の深さまでガイドセル4を押し込んで掘削、挿入打設作業を行うのである。
【0043】
しかるに、ガイドセル4の位置と姿勢を掘削計画図における位置と姿勢に合わせて打設作業を行うのであるが、本発明では、
図5乃至
図10に示すように、この打設位置(掘削すべき位置と傾きと掘削深さ)を打設計画図上に重ねて描画出来ると共に、前記打設位置(掘削すべき位置と掘削深さ)を平面的に描画して表せることができるのである。
すなわち、先受け部材27の掘削深さの描画方法は、直線の長さによって表すこととし、この直線の長さが掘削深さの長さとなっているのである。
【0044】
次に、自発光マーカ9の構成につき説明する。
本発明では自ら光る自発光マーカ9を用い、ガイドセル4先端側にある先受け部材27先端の切削刃5の位置の常時検出ができる構成としたものである。
【0045】
トンネル掘削時のトンネル内環境につき、現場によってはトンネル内部空間内に水滴や土埃などが多く浮遊していることがある。その場合、反射型のマーカを用いると、発光体より照射された光が反射型マーカに到達するまでに乱反射が起こる。すると、前記乱反射光により近赤外線カメラ10はマーカ位置を正確に捉えることが出来なくなる場合がある。
また反射型マーカの反射光は、近赤外線カメラ10で捉える時点で、輝度が低下して充分な精度が得られない。
そこで、本件発明者らはマーカ自体が近赤外光を発する自発光マーカ9を発明したものである。
【0046】
本発明での自発光マーカ9は、反射型と比べ光の経路が半分で済むため、輝度の低下を抑えられる。特に、空間内に水滴などが存在して乱反射が起こる場合、近赤外線カメラ10にはマーカが中心にぼやけて見えるため、半径が少し大きく検出されるが、依然マーカ中心位置を正確に検出することが可能なのである。なお、自発光マーカ9は取付位置付近に電源(例えば、充電式モバイルバッテリを使用する)があることが必要とされる。
【0047】
従って、自発光マーカ9の近傍位置には、バッテリー17などが納められたベースステーション18が設けられる。そして、自発光マーカ9とバッテリー17とは例えば有線で接続される(
図19参照)。
【0048】
トンネル内周面への先受け部材27の掘削作業に際しては、前述した様にこの自発光マーカ9を切削刃5近傍位置のガイドセル4の2カ所に間隔をあけて取り付ける(
図14、
図15など参照)。これにより確実な掘削作業が行えることとなる。
【0049】
すなわち、掘削作業時において、複数の近赤外線カメラ10によって少なくとも2カ所に取り付けられた自発光マーカ9の光を受光し、この受光した自発光マーカ9の相対位置からPC11にて前記自発光マーカ9の座標位置2点を計算する。
モーションキャプチャ技術には複数の手法が存在するが、本発明のモーションキャプチャ技術は光学式モーションキャプチャ技術である。
【0050】
この光学式キャプチャ技術の基本的な仕組みとしては、対象物(ここでは切削刃5近傍位置のガイドセル4上)に自発光マーカ9につき間隔をあけて2カ所に設置し、前記自発光マーカ9により、例えば目に見えない近赤外線光(波長850nm程度)を発光させ、該光を複数の近赤外線カメラ10により撮影するものである。
【0051】
なお、前記2カ所に設置する自発光マーカ9は、削岩機6に取り付けられたロッド26及び先受け部材27先端の切削刃5の軸方向中心軸線と、なるべく近接する位置するよう設置するものとする。後述する回転誤差があっても、その影響を少なくすることが求められるからである。
【0052】
上記のように2つの自発光マーカ9を設置すれば、削岩機6及び切削刃5、特に切削刃5の先端の座標位置を計測することが出来る。なお、前記したように自発光マーカ9の取付位置と切削刃5の軸方向中心線との距離が離れているが、該距離の長さをあらかじめ認識していわゆるオフセット補正するものとしてある。
【0053】
前記近赤外線カメラ10にて取得した画像はデータとしてPC11に転送され、該画像データはソフトウェア処理により、背景とマーカ光の輝度差を利用してマーカ部分の画像のみが抽出される。
そして、PC11に取り込まれた画像において、例えば、画面上の左上隅を原点として、各自発光マーカ9の重心座標をピクセル単位で各々測定する。これにより各々の自発光マーカ9の座標位置がほぼ認識できる。
【0054】
すなわち、複数台の近赤外線カメラ10にて自発光マーカ9からの光を同時撮影することで、ステレオビジョンの要領で視差を基に深さ方向の距離が認識され、深さ方向の位置も計算することができる。
各々の自発光マーカ9の座標位置に前述のオフセット補正をすることにより、切削刃5の先端位置の座標位置が認識できるものとなる。
【0055】
ここで、PC11は、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている(
図11参照)。
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有している(
図12参照)。
【0056】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32で平面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0057】
そして、操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである(
図5乃至
図10参照)。
【0058】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部22に送出され、記憶部22に保存される。また、保存されたデータは通信回線網25を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【0059】
ここで、本発明において自発光マーカ9を用いる手法は、ガイドセル4の長手方向に間隔をあけて2カ所に設置する場合につき説明した。
しかしながら、2カ所の設置であると、切削刃5が2つの自発光マーカ9の中心を結ぶ延長線を回転軸として回転したときの切削刃5の座標位置認識のずれを解決できない。
【0060】
自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に設置されたものではない。逆に、既に述べたように自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に決して設置出来ない。切削刃5の稼働の邪魔になるからであり、仮に設置したとしても稼働作業により破壊されてしまうからである。
【0061】
よって、自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としてあらかじめオフセット認識して計測するのである。この自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としての計測は、前記オフセット補正係数、すなわち自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離データが演算制御部12に入力されて行われる(
図13乃至
図18の「オフセット距離」を参照)。
【0062】
ところが、自発光マーカ9の2カ所の設置であると、前記自発光マーカ9の延長線上を回転軸として前記オフセット補正の距離を半径にした円周上のいずれの位置に切削刃5が位置するか認識できずに切削刃5の位置認識にずれが生じてしまうのである。
【0063】
すなわち、2つの自発光マーカ9のみを使用した場合、ガイドセル4の位置、切削刃5の位置は一意に決まらないことになる。なぜなら2つの自発光マーカ9の中心を通る直線を回転軸にして、切削刃5の中心と自発光マーカ9の設置位置との距離を半径とする円周上のどこかに目標座標があることになるからである(回転誤差)。
【0064】
しかしながら、実際の掘削作業においては、ガイドセル4の姿勢はおおよそ一定の範囲でのみ動作するため前述の回転誤差は掘削作業において許容範囲内と考えることができ、前記2点の自発光マーカ9の設置での運用が可能になっている。従って、2つの自発光マーカ9は、なるべく切削刃5の軸方向中心に近い箇所に取り付けることが好ましいのである。
【0065】
そこで、本件発明者らは、さらに掘削作業の正確性を期すべく、上記事態を解消すべく、自発光マーカ9を3カ所、あるいはそれ以上の箇所に設置する発明を創案した(
図17乃至
図19参照)。
【0066】
まず、自発光マーカ9を取り付ける取付杆19の各々の長さが異なるようにした3つの自発光マーカ9を使用し、これら3つの自発光マーカ9について間隔をあけてガイドセル4に取り付ける。
そして、前記した複数の近赤外線カメラ7で前記3つの自発光マーカ9を撮影し、モーションキャプチャによりこれら3つの自発光マーカ9の座標位置を測定する。
【0067】
なお、前記測定に際しては自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離をオフセット補正係数としてあらかじめ設定しておき、その上で演算制御部12で計測することは、前述した2つ自発光マーカの場合と同様である。
【0068】
すると、測定したそれぞれ3つの自発光マーカ9の座標位置からオフセット(補正係数)を考慮した目標座標が一意に計測することが出来るものとなる。
この場合であれば、自発光マーカ9の座標認識による目標座標が確実に認識でき、そのため前記した自発光マーカ9の2カ所設置による切削刃5の回転による位置認識のずれをも解消できる。従って、確実に掘削箇所に合致させられ、もって正確な掘削が出来る。なお、3つ以上自発光マーカ9を設置した場合でも同様の結果が得られる。
【0069】
ここで、前記複数の近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でブーム3及びガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台を各々交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、複数の近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9から発光された近赤外線光を捉えるものとなる。
【0070】
すなわち、近赤外線カメラ10が前記近赤外線光を捉え、これにより、例えば、切削刃5近傍位置に取り付けられた自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて自発光マーカ9の座標を認識する。そして、認識した座標から相対的に切削刃5の位置を計算し、順次計算される座標位置を認識しながら、切削刃5を稼働操作し、切削していくものとなる。
【0071】
次に、所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9を用いた構成について本件発明者らはさらに発明したので該新規発明の構成についても説明する。
なお、点滅型の自発光マーカ9をガイドセル4に取りつける個数については、2個でも構わないし、2個以上でも構わない。前述した自発光マーカ9の場合と同様である。
【0072】
トンネル空間内に複数のマーカが取り付けられた対象物、すなわちブーム3及びガイドセル4が複数存在する場合でこれら複数のブーム3及びガイドセル4が交差したり回転等の動きがある場合、前記ブーム3及びガイドセル4のどの位置にどのマーカが取り付けられているか判別できなくなることがある(これはマーカ入替り現象と称されている)。
【0073】
その場合、例えば、近赤外線カメラ10のフレームレートを考慮した同期機能を持つ所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9が効果を発揮するものとなる。本件発明者らは独自に本件発明に関するガイドセル4用に前記所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9及び点滅型の自発光マーカ9の輝度などの増幅回路を含むハードウェアを発明した(
図19参照)。
【0074】
各々の点滅型の自発光マーカ9の近傍位置にベースステーション18が設けられており、該ベースステーション18内には、例えばバッテリー17、同期信号受信器42、増幅回路40などが収納されている。
【0075】
また、ドリルマシン1側には同期信号送信器41が設けられ、該同期信号送信器41から各々の点滅型の自発光マーカ9側に同期信号が送信される。
そして、各々の点滅型の自発光マーカ9は、自己の同期信号を受信し、これにより独自の信号周期(点滅周期)による点滅が行えるのである。
【0076】
そして、PC11側では、各々の点滅型の自発光マーカ9についてそれぞれの信号周期で点滅することが認識できるものとなっており、それぞれの信号周期での点滅が、いわば各々の点滅型の自発光マーカ9のIDとなっているのである。よって、たとえ近赤外線カメラ10によって捉えられた自発光マーカ9がいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9から照射された光か目視などで判断ができない場合であっても、前記IDを検索することでいずれのガイドセル4に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判断できるものとなる。
【0077】
すなわち、本件発明者らが発明した点滅型の自発光マーカ9を用いることで、全ての点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返す。従って、異なる信号周期で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9は、その異なる信号周期での点滅の違いがそれぞれのID となり、このIDを認識することによりいずれのガイドセル4のいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判別できるものとなる。
【0078】
このように、検出された点滅型の自発光マーカ9がいずれの座標位置にある点滅型の自発光マーカ9であるかが一意に決まるため、マーカの入れ替わりを防ぐことが出来る。
【0079】
さらに詳細に説明すると、まず、本件発明の点滅型の自発光マーカ9に、例えば異なったパルス波形のパルス信号、すなわち、異なる信号周期で点滅を繰り返すパルス信号を振り分ける。
【0080】
これにより、それぞれの点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返すことができる。しかも、前記異なった信号周期の点滅が点滅型の自発光マーカ9のそれぞれのIDになるのである。そのIDを有する点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置をあらかじめ認識しておけば、たとえ、近赤外線カメラ10でいずれかの点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が目視などで判断できなくなっても、前記IDの違いにより点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が判断できることになるのである。
【0081】
このように、点滅型の自発光マーカ9の全てに、例えば異なった信号周期の点滅をIDにして振り分け、次いでそのラベリングを行う。これによりすべての点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が認識できる。
【0082】
ところで、点滅型の自発光マーカ9は、例えば取り付け位置近傍に設置されたバッテリーから電源供給を受け、それぞれの点滅型の自発光マーカ9を点滅させる。
この点滅に際しては、増幅回路40によって点滅型の自発光マーカ9の光源であるLEDの輝度を増幅させることもできる。この輝度向上により、さらに近赤外線カメラ10からの認識度を向上させることができる。
【0083】
図19は本発明の本発明の構成を含んだシステム概要図であり、図から理解されるように、それぞれの点滅型の自発光マーカ9の近傍位置には電源としてのバッテリー17、LEDの輝度を増幅させる増幅回路40及び同期信号送信器41からの同期信号を受信する同期信号受信器42が収納されたベースステーション18が設置されている。
【0084】
そして、前記同期信号送信器41と同期信号受信器42との信号の送受信によっていずれの取り付け位置にある点滅型の自発光マーカ9かが認識できるものとなっている。
【0085】
本発明の掘削システムは、前記したように、ドリルマシン1におけるガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を、いわゆるモーションキャプチャ技術を用いて、まず第一に、リアルタイムに前記ガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をドリルマシン1に搭載されたディスプレイ15に表示出来、該ディスプレイ15上の画像を確認しながら操作者がトンネル内周面に対する掘削作業が行える。さらに、第二に掘削作業を行っているトンネル内周面に対する大量の先受け部材277の掘削位置データについてリアルタイムにPC11等に記録、保存できるものとしている。
【0086】
よって、ドリルマシン1の操作者は、前記リアルタイムで取得されたガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をディスプレイ15上に描画された映像で確認しながら掘削作業を行えるものとなる。よって、従来、目視で確認した掘削作業においては、死角が存在することがあったが、ディスプレイ15上の確認作業に死角がほぼ存在することはないものとなった。
【0087】
ここで、
図3に内周面についての掘削計画図である正面図を示す。該正面図においては、ガイドセル4の代表2点から取得した座標をどのように描画するかも重要となる。
【0088】
本発明では前述のごとく、前記
図2の先受け部材27の掘削打設計画図(例えばCAD図)から先受け部材27の掘削打設座標位置を算出していくのである。すなわち、先受け部材27の掘削打設計画図からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していくのである(
図3参照)。
【0089】
一方、記録、保存に関しては、自発光マーカ9の2点の座標の変化を例えば、1秒単位で記録することもできる。例えば、PC11のハードドライブなど記憶部21に例えばCSV形式にて保存できるのである。
【0090】
なお、掘削時において、例えばガイドセル4に設けられた掘削距離測定部を構成する油圧シリンダの油圧データ(例えばガイドセル4や削岩機の揺動部材4として使用される油圧シリンダの油圧流量変化量)などをドリルマシン1(建機)から取得してPC11に転送することで、各先受け部材27の掘削距離を前記記憶部21に追加して保存することも出来る。この様に、掘削長さを表すのみ先離れの距離などについて別途前記の様に油圧データなどを介して計測することも出来る。
【0091】
以上において、本発明による使用状態の概略を説明する。
トンネルの内周面に対し、ドリルマシン1のガイドセル4を対向させて設置させる。所定の内周面に対し、掘削計画図が用意されている場合、該掘削計画図をディスプレイ15に写し出す。
【0092】
そして、該掘削計画図に描画された掘削位置、掘削の傾き、掘削長(のみ先離れの距離)に従ってガイドセル4を稼働させる。すなわち、ガイドセル4の操作者はディスプレイ15上でリアルタイムにガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を確認出来、その稼働動作を確認しながら先受け部材27の掘削が行える。
【0093】
ここで、PC11には、
図11に示す様に、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている。
【0094】
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、
図12に示すように、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有して構成されている。
【0095】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32でトンネルの正面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0096】
操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである。
【0097】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部21に送出され、記憶部21に保存される。また、保存されたデータは通信回線網23を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【符号の説明】
【0098】
1 ドリルマシン
2 車両本体
3 ブーム
4 ガイドセル
5 切削刃
6 削岩機
8 ガイド部材
9 自発光マーカ
10 近赤外線カメラ
11 PC
12 演算制御部
14 原点
15 ディスプレイ
16 丸部分
17 バッテリー
18 ベースステーション
19 取付杆
20 送信部
21 受信部
22 記憶部
23 入力部
24 サーバコンピュータ
25 通信回線網
26 ロッド
27 先受け部材
31 掘削計画図読み込み部
32 掘削計画図形成部
33 掘削位置等読み込み部
34 掘削位置等描画部
40 増幅回路
41 同期信号送信器
42 同期信号受信器
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記2つの自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項2】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記3つ以上取り付けられた自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項3】
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて
複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記点滅型の自発光からの点滅する光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記点滅型の自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とする自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項4】
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とする請求項3記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【請求項5】
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自発光マーカを使用した掘削システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル工事などで採用される例えば長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事などでは、切羽(掘削面)の岩盤が脆弱で不安定な場合に、補助工法の一部として、AGF工法(長尺鋼管先受け工法)が多く用いられている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)とは、トンネル掘削に先立ち、トンネル外周において、略アーチ状に地山改良部材、すなわち先受けを形成する工法を指標し、該先受けの形成に伴う先受け鋼管打設と地山改良材の注入により切羽前方の地山を補強するものである。すなわち、前記先受けの形成により、トンネル掘削時の地山の先行変位や地山の緩みを抑制し、トンネル前方および上部からの崩落を防止するなどトンネル掘削施工時の安全性の確保を企図した工法である。
【0003】
ここで、標準的なAGF工法としては、例えば1本あたり約3mの鋼管を、ドリルマシンの削岩機を用いて打ち込み、前記鋼管を継ぎ足しながら地山に約12mの長さで打設する先受け工法が知られている。
すなわち、前記先受け鋼管を切羽前方の天端アーチ部、例えば120°の範囲に亘り略半円形状に間隔をあけて複数本打設し補強域を構築するのである。
尚、略120°の範囲で間隔をあけて複数本の先受け鋼管の打設を行うため、トンネルの大きさによっては前記打設本数が変化するものとなる。
【0004】
しかしながら、アーチ状に等間隔で打設し、トンネル掘削部前方に均整の取れたアーチ形状を構成させるには非常に高い打設精度が求められる。その為、正確な打設位置及び正確な打設角度の設定が本工法の採用に当たって極めて重要な設定事項となる。
【0005】
しかして、従来では下記の様な方法で前記打設精度の管理が行われていた。例えば、ガイドセルにターゲットを設置し、該ターゲットをトータルステーションにて測量を行い、正しい位置や角度に誘導する方法である。また、簡易的な方法としては、事前に測量を行い打設位置にマーキングを行う。そして、マーキングされた場所を打設開始位置の目印とし、角度は勾配計などの計測機器を使用して位置や角度を管理していた。
しかしながら、前記従来の方法では、測量やマーキングの作業に多大な労力と多大な時間が費やされる。そのため作業効率が良好ではないとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、測量やマーキングの作業に多大な労力や時間を必要以上に費やすことがないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度に先受けの打設位置や打設角度が設定できるAGF工法での鋼管打設位置誘導システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く確実で高精度なAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも2個取り付けられた自発光マーカと、
前記自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記2つの自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記2つの自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記2つの自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記2つの自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて少なくとも3個取り付けられた自発光マーカと、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカからの光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した光から前記3個以上取り付けられた自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記3個以上取り付けられた自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記3つ以上取り付けられた自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
トンネル外周面に、略アーチ状に先受けを形成すべく先受け部材での掘削と挿入を同時に行うと共に、挿入された先受け部材内に地山改良材の注入を行う掘削システムであって、
車両本体から揺動可能に突設され、円筒状をなし、外周面に複数の穴が設けられた切削刃つき先受け部材を軸方向に揺動させる削岩機と、該削岩機の前記揺動をガイドするガイドセルと、
該ガイドセルの長手方向で、前記切削刃の設置位置の近傍位置に間隔をあけて複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカと、
前記点滅型の自発光からの点滅する光を取得する複数の近赤外線カメラと、
前記複数の近赤外線カメラが取得した点滅する光から前記複数個取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置を計測する手段と、
前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と前記先受け部材の軸芯位置間の距離及び前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの取付位置と切削刃の中心位置間の距離が補正係数として入力され、該入力された補正係数の値と前記計測する手段で求められた前記複数取り付けられた点滅型の自発光マーカの座標位置の値が用いられて演算され、前記点滅型の自発光マーカの座標位置を削岩機の軸芯位置及び切削刃の中心位置に補正する補正手段とを有し、
複数の点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、異なる信号周期による点滅周期が与えられ、該信号周期の違いによりいずれのブームのガイドセルに取りつけられた点滅型の自発光マーカかが各々認識でき、
あらかじめ掘削データが表示された掘削計画図と前記座標認識された切削刃とをディスプレイ上に表示させ、切削刃による掘削作業が前記掘削計画図に沿って行える、
ことを特徴とし、
または、
前記点滅型の自発光マーカからの点滅する光は、増幅回路により光の輝度を増幅出来る、
ことを特徴とし、
または、
前記ガイドセルは、車両本体から複数本揺動可能に突設され、前記自発光マーカはそれぞれのガイドセルに取り付けられた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測量やマーキングの作業に必要以上に労力や時間を費やすことないため、極めて効率良く、かつ確実で高精度にAGF工法での長尺鋼管が打設できるとの効果を奏する。
すなわち、モーションキャプチャー技術を活用した掘削ナビゲーションシステムを使用し、極めて効率良く、かつ確実で高精度にてAGF工法での長尺鋼管を打設する技術を発明したのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるドリルマシンの構成を説明する説明図である。
【
図2】トンネル内に掘削する先受け部材の掘削位置、掘削の傾き、掘削の距離を正面図、側面図として表し説明する先受け部材打設計画図の説明図である。
【
図3】
図2の先受け部材打設計画図から先受け部材の打設位置の座標を算出する説明図である。
【
図4】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を説明する説明図である。
【
図5】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(1)である。
【
図6】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(2)である。
【
図7】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(3)である。
【
図8】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(4)である。
【
図9】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(5)である。
【
図10】ディスプレイ上に描画された先受け部材の打設位置を確認して先受け部材を掘削誘導する状態を説明する説明図(6)である。
【
図11】PCの構成と通信状態を説明する説明図である。
【
図12】演算制御部の構成を説明する説明図である。
【
図13】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(1)である。
【
図14】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(2)である。
【
図15】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(3)である。
【
図16】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(4)である。
【
図17】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(5)である。
【
図18】自発光マーカ中心部と切削刃中心部までの距離をオフ設置距離として説明する説明図(6)である。
【
図19】PCとサーバコンピュータとの通信状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
山岳トンネル工事などで使用されるAGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、長尺の先受けを、先受け鋼管打設と注入材の注入により構築するもので、現場で通常使用されているドリルマシン1を利用して施工を行っている。
AGF工法(長尺鋼管先受け工法)は、地質に応じた掘削システムが選定できるため適用地質の範囲が広く、効率の比較的良いとされる施工が可能となっている。また、地質や注入目的に応じた注入材・注入方式が選定できるとのメリットもある。
【0013】
本工法では、通常山岳トンネルで用いるドリルマシン1を用いて、比較的小口径の先受け鋼管につき先端に専用の切削ビットをつけて用い、二重管方式で掘削とパイプ挿入を同時に行うものである。
その後、先受け鋼管の外周面にあけた複数の孔より、地山側に所定の圧力で注入材を注入し、掘削線の外周部に鋼管が入った限定地山改良ゾーンを形成する。
【0014】
この切羽前方に構築された地山改良ゾーンにより、地山の先行変位を抑制し、さらに地山の緩み防止と施工の安全が図られるのである。
すなわち、山岳トンネル工事では、切羽(掘削面)天井部の岩盤が不安定な場合に、AGF工法を実施することでトンネルの前方および上部からの崩落を防止できる。
【0015】
ここで、標準的なAGF工法では、前述の如く、例えば切羽頂部120°の範囲に、先受け鋼管をトンネルの掘削作業に先行して打ち込み、岩盤を補強する。そして、1ヵ所につき、長さ約3mの先受け鋼管を例えば4本つないで約12mの長さにして先受けを構成し、これを打ち込む。
【0016】
しかるに先受け鋼管と注入材によって地山を先行補強するのであり、トンネル断面を拡幅しないで施工できる。また、先受け鋼管打設はトンネル施工で使用するドリルマシン1を使用することが出来、鋼管打設後には、打設した円筒状をなす鋼管の開口からウレタン系やセメント系の注入材を注入し、該注入材は前記鋼管外周面に設けられた複数の穴から地山側に流れ、もってトンネル前方地山が補強されるのである。
【0017】
図1に本発明の長尺鋼管先受け工法における先受け鋼管打設位置誘導システムに使用されるドリルマシン1の構成を示す。
該ドリルマシン1は、車両本体2と、この車両本体2の前方から突設されたブーム3と該ブーム3に接続されたガイドセル4とその先端から突出揺動するロッド26と、該ロッド26を突出揺動させる削岩機6を有して構成されている。
【0018】
そして、ロッド26の先端には切削刃5が取り付けられた円筒状の鋼管で構成された先受け部材27が接続されることとなる。前記先受け部材27の1本の長さは約3m程度であり、この先受け部材27を4本繋げて12mの長さの先受け部材27が敷設されるものとなる。
図1では先受け部材27を4本繋げて12mの長さにした先受け部材27が描画されている。
【0019】
ここで、ブーム3は、車両本体2の前方から揺動可能にして動作できるよう取り付けられている。すなわち、ブーム3は、上下、左右など広角度に自在に揺動できる様油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。そして、ブーム3の先端側に接続された直線状のガイドセル4についても前記ブーム3の揺動に伴って、またガイドセル4自体も広角に揺動するよう油圧シリンダなどの揺動部材が用いられて構成されている。
【0020】
該ガイドセル4は、先端に切削刃5を備えた直線円筒管状の先受け部材27を取り付けたロッド26の前後方向の突出揺動をガイドするための部材であり、該ガイドセル4の先端側で先受け部材27の先端に取り付けられた例えばビット状をなす切削刃5が突出揺動してトンネル内周面を掘削し前記先受け部材27を打設するものとなる。
【0021】
すなわち、稼働制御された切削刃5、先受け部材27、ロッド26などによりトンネル地山の内周面に対し、所定の位置、所定の角度、かつ所定の深さで確実、正確に先受け部材27の打設が行えるよう構成されているのである。
【0022】
ところで、ブーム3については、車両本体2に複数本取り付けられている場合もあり、その場合、各ブーム3の各先端側において各々ガイドセル4が取り付けられ、該各々のガイドセル4についても、それらガイドセル4の先端側にビット状をなす切削刃5が取り付けられた先受け部材27及びロッド26が突出揺動して掘削し、トンネル地山の内周内に打設出来るよう取り付けられている。
【0023】
なお、
図14、
図15、
図17、
図18から理解されるように、ガイドセル4の例えば先端側側面からは自発光マーカ9が複数個突設され、該複数個の自発光マーカ9とこの自発光マーカ9から発光された光を認識する複数個の近赤外線カメラ10により後述するモーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアの測定データ、すなわち前記複数個の自発光マーカ9の座標位置が計測されるものとなっている。
【0024】
そしてこの測定データを用いてガイドセル4を通過する先受け部材27、ロッド26や切削刃5の軸方向中心部につき、ガイドセル4の長手方向に間隔をおいて突設された自発光マーカ9について、その位置(座標)を認識すべくPC11の演算制御部12で演算することで、ガイドセル4のリアルタイムでの可動範囲、すなわち先受け部材27先端に有する切削刃5が掘削する位置や掘削する深さ及び掘削の向きなどの情報が取得出来るように構成されるものとなっている(
図11、
図12参照)。
【0025】
モーションキャプチャ用の近赤外線カメラ10は、ドリルマシン1の例えば、操縦席上部に間隔をあけて複数個設置されており、ガイドセル4先端の稼働範囲を撮影範囲として撮影できるものとなっている。
【0026】
ここで、前記近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台あるいは奇数台を組み合わせてそれを交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉えるものとなる。
【0027】
すなわち、近赤外線カメラ10は、前記自発光マーカ9が発光する近赤外線光を捉え、これにより、例えば、ガイドセル4から突設された複数の自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、前記モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて認識した自発光マーカ9の位置から相対的にガイドセル4先端にある先受け部材27に取り付けられた切削刃5の座標位置などを計算していくのである。
【0028】
ここで、切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることが出来れば、確実に切削刃5の先端位置などの座標認識が出来る。しかし切削刃5自体に自発光マーカ9を取り付けることは出来ない。掘削作業や先受け部材27の打設作業の邪魔になってしまい、また掘削作業や先受け部材27の打設作業により破損するからである。
【0029】
そこで、本発明では、前述したように、切削刃5の近傍位置、すなわちガイドセル4の側面などに複数個の自発光マーカ9を設置し、切削刃5との距離をいわゆるオフセット補正できるようにして、切削刃5の座標位置を認識するものとしている。詳細は後述する。
【0030】
本発明によるトンネル内周面への先受け部材27の打設作業につき説明する。
図2に示す様なトンネル内周面における先受け部材27の打設位置を示した先受け部材打設計画図などの打設計画図データを予め設定して用意しておく。
図2は先受け部材27の打設計画位置をトンネルの正面から見た正面図と側面図であり、例えばCADなどで描画形成した先受け部材打設計画図である。そして、前記
図2の先受け部材打設計画図からロックボルト座標位置を算出していく。すなわち、先受け部材打設計画図(例えばCAD図)からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していく。
【0031】
すると、
図3に示す様に(1)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は-5205mm、Z座標は3450mmと算出され、のみ先離れは、2113mm、表示角度は-132°と算出される。また、(2)で示された先受け部材27の座標位置は、原点14の位置からY座標は3446mm、Z座標は4841mm、のみ先離れは、2113mm、表示角度は151°と算出される。
【0032】
なお、のみ先とは、トンネル地山の先端部にあたる掘削刃5の部分をいい、のみ先離れとは、掘削開始位置から掘削目標位置までの掘削刃5の離れ位置を、正面からみて2次元平面上で表した数値をいう。すなわち、
図3において、(1)の先受け部材27につき、2113mmと記載されている数値がのみ先離れの数値となる。換言すれば掘削する先受け部材27の掘削深さを示しているといえる。
【0033】
そして、上記算出された数値を基に例えば、CSVファイルを作成し、このCSVファイルのデータを描画アプリを用いてディスプレイ15上に描画された図に上書きする操作を行う。これにより前記作業用のディスプレイ15上に先受け部材27の打設位置が反映されるものとなる。
【0034】
図4は、ディスプレイ15上に描画された先受け部材27の打設位置を示したものであり、画面は例えば4分割されて表示されている。すなわち、左下の画面にはトンネルの正面図が描画されており、右下にはトンエルの正面図の拡大図、そして、左上の画面にはトンネルを上から見た平面図の拡大図、右上の画面はその側面図が示されて構成されている。
【0035】
図4において丸部分16は掘削を開始する位置を示している。そして、そこから延びる直線部分は先受け部材27の掘削方向の傾きと掘削深さを示したものである。
【0036】
そして、作業用のディスプレイ15上に表示された先受け部材27の打設計画図上においては、リアルタイムに稼働するガイドセル4先端に有する先受け部材27の切削刃5の実際の稼働位置をあわせて表示できる様構成されている。
【0037】
よって、この表示をディスプレイ15上で確認し、操作者は、ガイドセル4を稼働させ、切削刃5を有する先受け部材27を操作して先受け部材27の打設作業を行っていくのである。
【0038】
なお、先受け部材27の打設掘削位置誘導についてであるが、例えば山岳トンネルで用いられている先受け部材27は略円筒状をなす略3mの長さからなる鋼管を繋ぎ合わせられるよう形成されており、トンネルの形状や地山の強度によって前記繋ぎ合わせる長さが使い分けられている。通常は前記鋼管を繋ぎ合わせて例えば12mの長さの先受け部材27が打設される。
ここで、先受け部材27での掘削をドリルマシン1で行い、掘削すると同時に先受け部材27を挿入打設していく。
【0039】
本発明では、前述のごとく先受け部材27の打設位置は予め計画されて先受け部材打設計画図が作成されており、この先受け部材打設計画図を使用して正しい位置や向き(角度)に打設することによって、より先受け部材27の効果が発揮されることとなる。
したがって、ドリルマシン1で行う先受け部材27の打設位置と掘削方向及び掘削深さは正確確実なのである。
【0040】
本発明による先受け部材27の打設作業の手順は
図5乃至
図10に示すとおりである。
目標とする打設位置にガイドセル4を合わせる作業を行う。
図5、
図6のように正面図で打設開始位置と角度を合わせる。
【0041】
図5乃至
図10は白黒の図で示されているが、実際はカラーで表示されており、例えばディスプレイ15上では、先受け部材27の掘削計画位置(
図6において矢印の先にある直線)は青色で示され、ガイドセル4の実際の方向(矢印の基端側にある直線)は緑色で示される如きである。すなわち、色分け表示することでディスプレイ15上で容易に認識でき、掘削作業がしやすいように構成されている。
【0042】
そして、
図6、
図8、
図9、
図10に示すように、ディスプレイ15上の図を確認し、その後、所定の深さまでガイドセル4を押し込んで掘削、挿入打設作業を行うのである。
【0043】
しかるに、ガイドセル4の位置と姿勢を掘削計画図における位置と姿勢に合わせて打設作業を行うのであるが、本発明では、
図5乃至
図10に示すように、この打設位置(掘削すべき位置と傾きと掘削深さ)を打設計画図上に重ねて描画出来ると共に、前記打設位置(掘削すべき位置と掘削深さ)を平面的に描画して表せることができるのである。
すなわち、先受け部材27の掘削深さの描画方法は、直線の長さによって表すこととし、この直線の長さが掘削深さの長さとなっているのである。
【0044】
次に、自発光マーカ9の構成につき説明する。
本発明では自ら光る自発光マーカ9を用い、ガイドセル4先端側にある先受け部材27先端の切削刃5の位置の常時検出ができる構成としたものである。
【0045】
トンネル掘削時のトンネル内環境につき、現場によってはトンネル内部空間内に水滴や土埃などが多く浮遊していることがある。その場合、反射型のマーカを用いると、発光体より照射された光が反射型マーカに到達するまでに乱反射が起こる。すると、前記乱反射光により近赤外線カメラ10はマーカ位置を正確に捉えることが出来なくなる場合がある。
また反射型マーカの反射光は、近赤外線カメラ10で捉える時点で、輝度が低下して充分な精度が得られない。
そこで、本件発明者らはマーカ自体が近赤外光を発する自発光マーカ9を発明したものである。
【0046】
本発明での自発光マーカ9は、反射型と比べ光の経路が半分で済むため、輝度の低下を抑えられる。特に、空間内に水滴などが存在して乱反射が起こる場合、近赤外線カメラ10にはマーカが中心にぼやけて見えるため、半径が少し大きく検出されるが、依然マーカ中心位置を正確に検出することが可能なのである。なお、自発光マーカ9は取付位置付近に電源(例えば、充電式モバイルバッテリを使用する)があることが必要とされる。
【0047】
従って、自発光マーカ9の近傍位置には、バッテリー17などが納められたベースステーション18が設けられる。そして、自発光マーカ9とバッテリー17とは例えば有線で接続される(
図19参照)。
【0048】
トンネル内周面への先受け部材27の掘削作業に際しては、前述した様にこの自発光マーカ9を切削刃5近傍位置のガイドセル4の2カ所に間隔をあけて取り付ける(
図14、
図15など参照)。これにより確実な掘削作業が行えることとなる。
【0049】
すなわち、掘削作業時において、複数の近赤外線カメラ10によって少なくとも2カ所に取り付けられた自発光マーカ9の光を受光し、この受光した自発光マーカ9の相対位置からPC11にて前記自発光マーカ9の座標位置2点を計算する。
モーションキャプチャ技術には複数の手法が存在するが、本発明のモーションキャプチャ技術は光学式モーションキャプチャ技術である。
【0050】
この光学式キャプチャ技術の基本的な仕組みとしては、対象物(ここでは切削刃5近傍位置のガイドセル4上)に自発光マーカ9につき間隔をあけて2カ所に設置し、前記自発光マーカ9により、例えば目に見えない近赤外線光(波長850nm程度)を発光させ、該光を複数の近赤外線カメラ10により撮影するものである。
【0051】
なお、前記2カ所に設置する自発光マーカ9は、削岩機6に取り付けられたロッド26及び先受け部材27先端の切削刃5の軸方向中心軸線と、なるべく近接する位置するよう設置するものとする。後述する回転誤差があっても、その影響を少なくすることが求められるからである。
【0052】
上記のように2つの自発光マーカ9を設置すれば、削岩機6及び切削刃5、特に切削刃5の先端の座標位置を計測することが出来る。なお、前記したように自発光マーカ9の取付位置と切削刃5の軸方向中心線との距離が離れているが、該距離の長さをあらかじめ認識していわゆるオフセット補正するものとしてある。
【0053】
前記近赤外線カメラ10にて取得した画像はデータとしてPC11に転送され、該画像データはソフトウェア処理により、背景とマーカ光の輝度差を利用してマーカ部分の画像のみが抽出される。
そして、PC11に取り込まれた画像において、例えば、画面上の左上隅を原点として、各自発光マーカ9の重心座標をピクセル単位で各々測定する。これにより各々の自発光マーカ9の座標位置がほぼ認識できる。
【0054】
すなわち、複数台の近赤外線カメラ10にて自発光マーカ9からの光を同時撮影することで、ステレオビジョンの要領で視差を基に深さ方向の距離が認識され、深さ方向の位置も計算することができる。
各々の自発光マーカ9の座標位置に前述のオフセット補正をすることにより、切削刃5の先端位置の座標位置が認識できるものとなる。
【0055】
ここで、PC11は、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている(
図11参照)。
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有している(
図12参照)。
【0056】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32で平面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0057】
そして、操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである(
図5乃至
図10参照)。
【0058】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部22に送出され、記憶部22に保存される。また、保存されたデータは通信回線網25を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【0059】
ここで、本発明において自発光マーカ9を用いる手法は、ガイドセル4の長手方向に間隔をあけて2カ所に設置する場合につき説明した。
しかしながら、2カ所の設置であると、切削刃5が2つの自発光マーカ9の中心を結ぶ延長線を回転軸として回転したときの切削刃5の座標位置認識のずれを解決できない。
【0060】
自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に設置されたものではない。逆に、既に述べたように自発光マーカ9は切削刃5の軸方向中心線上に決して設置出来ない。切削刃5の稼働の邪魔になるからであり、仮に設置したとしても稼働作業により破壊されてしまうからである。
【0061】
よって、自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としてあらかじめオフセット認識して計測するのである。この自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離を補正係数としての計測は、前記オフセット補正係数、すなわち自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離データが演算制御部12に入力されて行われる(
図13乃至
図18の「オフセット距離」を参照)。
【0062】
ところが、自発光マーカ9の2カ所の設置であると、前記自発光マーカ9の延長線上を回転軸として前記オフセット補正の距離を半径にした円周上のいずれの位置に切削刃5が位置するか認識できずに切削刃5の位置認識にずれが生じてしまうのである。
【0063】
すなわち、2つの自発光マーカ9のみを使用した場合、ガイドセル4の位置、切削刃5の位置は一意に決まらないことになる。なぜなら2つの自発光マーカ9の中心を通る直線を回転軸にして、切削刃5の中心と自発光マーカ9の設置位置との距離を半径とする円周上のどこかに目標座標があることになるからである(回転誤差)。
【0064】
しかしながら、実際の掘削作業においては、ガイドセル4の姿勢はおおよそ一定の範囲でのみ動作するため前述の回転誤差は掘削作業において許容範囲内と考えることができ、前記2点の自発光マーカ9の設置での運用が可能になっている。従って、2つの自発光マーカ9は、なるべく切削刃5の軸方向中心に近い箇所に取り付けることが好ましいのである。
【0065】
そこで、本件発明者らは、さらに掘削作業の正確性を期すべく、上記事態を解消すべく、自発光マーカ9を3カ所、あるいはそれ以上の箇所に設置する発明を創案した(
図17乃至
図19参照)。
【0066】
まず、自発光マーカ9を取り付ける取付杆19の各々の長さが異なるようにした3つの自発光マーカ9を使用し、これら3つの自発光マーカ9について間隔をあけてガイドセル4に取り付ける。
そして、前記した複数の近赤外線カメラ7で前記3つの自発光マーカ9を撮影し、モーションキャプチャによりこれら3つの自発光マーカ9の座標位置を測定する。
【0067】
なお、前記測定に際しては自発光マーカ9の実際の設置位置から切削刃5の軸方向中心線までの距離をオフセット補正係数としてあらかじめ設定しておき、その上で演算制御部12で計測することは、前述した2つ自発光マーカの場合と同様である。
【0068】
すると、測定したそれぞれ3つの自発光マーカ9の座標位置からオフセット(補正係数)を考慮した目標座標が一意に計測することが出来るものとなる。
この場合であれば、自発光マーカ9の座標認識による目標座標が確実に認識でき、そのため前記した自発光マーカ9の2カ所設置による切削刃5の回転による位置認識のずれをも解消できる。従って、確実に掘削箇所に合致させられ、もって正確な掘削が出来る。なお、3つ以上自発光マーカ9を設置した場合でも同様の結果が得られる。
【0069】
ここで、前記複数の近赤外線カメラ10の設置位置及び設置画角の設定は、なるべく最小限のカメラ台数でブーム3及びガイドセル4の稼働を捉えるべく、例えば偶数台を各々交差させる向きであるいは交差させない向きで設置することなどが考えられる。
そして、複数の近赤外線カメラ10は、自発光マーカ9から発光された近赤外線光を捉えるものとなる。
【0070】
すなわち、近赤外線カメラ10が前記近赤外線光を捉え、これにより、例えば、切削刃5近傍位置に取り付けられた自発光マーカ9の座標を認識することが出来、該座標認識のデータをPC11に送出し、PC11では、前記演算制御部12において、モーションキャプチャ技術を応用したソフトウェアを用いて自発光マーカ9の座標を認識する。そして、認識した座標から相対的に切削刃5の位置を計算し、順次計算される座標位置を認識しながら、切削刃5を稼働操作し、切削していくものとなる。
【0071】
次に、所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9を用いた構成について本件発明者らはさらに発明したので該新規発明の構成についても説明する。
なお、点滅型の自発光マーカ9をガイドセル4に取りつける個数については、2個でも構わないし、2個以上でも構わない。前述した自発光マーカ9の場合と同様である。
【0072】
トンネル空間内に複数のマーカが取り付けられた対象物、すなわちブーム3及びガイドセル4が複数存在する場合でこれら複数のブーム3及びガイドセル4が交差したり回転等の動きがある場合、前記ブーム3及びガイドセル4のどの位置にどのマーカが取り付けられているか判別できなくなることがある(これはマーカ入替り現象と称されている)。
【0073】
その場合、例えば、近赤外線カメラ10のフレームレートを考慮した同期機能を持つ所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9が効果を発揮するものとなる。本件発明者らは独自に本件発明に関するガイドセル4用に前記所定間隔で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9及び点滅型の自発光マーカ9の輝度などの増幅回路を含むハードウェアを発明した(
図19参照)。
【0074】
各々の点滅型の自発光マーカ9の近傍位置にベースステーション18が設けられており、該ベースステーション18内には、例えばバッテリー17、同期信号受信器42、増幅回路40などが収納されている。
【0075】
また、ドリルマシン1側には同期信号送信器41が設けられ、該同期信号送信器41から各々の点滅型の自発光マーカ9側に同期信号が送信される。
そして、各々の点滅型の自発光マーカ9は、自己の同期信号を受信し、これにより独自の信号周期(点滅周期)による点滅が行えるのである。
【0076】
そして、PC11側では、各々の点滅型の自発光マーカ9についてそれぞれの信号周期で点滅することが認識できるものとなっており、それぞれの信号周期での点滅が、いわば各々の点滅型の自発光マーカ9のIDとなっているのである。よって、たとえ近赤外線カメラ10によって捉えられた自発光マーカ9がいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9から照射された光か目視などで判断ができない場合であっても、前記IDを検索することでいずれのガイドセル4に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判断できるものとなる。
【0077】
すなわち、本件発明者らが発明した点滅型の自発光マーカ9を用いることで、全ての点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返す。従って、異なる信号周期で点滅を繰り返す点滅型の自発光マーカ9は、その異なる信号周期での点滅の違いがそれぞれのID となり、このIDを認識することによりいずれのガイドセル4のいずれの位置に取り付けられた点滅型の自発光マーカ9であるかが判別できるものとなる。
【0078】
このように、検出された点滅型の自発光マーカ9がいずれの座標位置にある点滅型の自発光マーカ9であるかが一意に決まるため、マーカの入れ替わりを防ぐことが出来る。
【0079】
さらに詳細に説明すると、まず、本件発明の点滅型の自発光マーカ9に、例えば異なったパルス波形のパルス信号、すなわち、異なる信号周期で点滅を繰り返すパルス信号を振り分ける。
【0080】
これにより、それぞれの点滅型の自発光マーカ9は異なる信号周期で点滅を繰り返すことができる。しかも、前記異なった信号周期の点滅が点滅型の自発光マーカ9のそれぞれのIDになるのである。そのIDを有する点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置をあらかじめ認識しておけば、たとえ、近赤外線カメラ10でいずれかの点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が目視などで判断できなくなっても、前記IDの違いにより点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が判断できることになるのである。
【0081】
このように、点滅型の自発光マーカ9の全てに、例えば異なった信号周期の点滅をIDにして振り分け、次いでそのラベリングを行う。これによりすべての点滅型の自発光マーカ9の取り付け位置が認識できる。
【0082】
ところで、点滅型の自発光マーカ9は、例えば取り付け位置近傍に設置されたバッテリーから電源供給を受け、それぞれの点滅型の自発光マーカ9を点滅させる。
この点滅に際しては、増幅回路40によって点滅型の自発光マーカ9の光源であるLEDの輝度を増幅させることもできる。この輝度向上により、さらに近赤外線カメラ10からの認識度を向上させることができる。
【0083】
図19は本発明の本発明の構成を含んだシステム概要図であり、図から理解されるように、それぞれの点滅型の自発光マーカ9の近傍位置には電源としてのバッテリー17、LEDの輝度を増幅させる増幅回路40及び同期信号送信器41からの同期信号を受信する同期信号受信器42が収納されたベースステーション18が設置されている。
【0084】
そして、前記同期信号送信器41と同期信号受信器42との信号の送受信によっていずれの取り付け位置にある点滅型の自発光マーカ9かが認識できるものとなっている。
【0085】
本発明の掘削システムは、前記したように、ドリルマシン1におけるガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を、いわゆるモーションキャプチャ技術を用いて、まず第一に、リアルタイムに前記ガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をドリルマシン1に搭載されたディスプレイ15に表示出来、該ディスプレイ15上の画像を確認しながら操作者がトンネル内周面に対する掘削作業が行える。さらに、第二に掘削作業を行っているトンネル内周面に対する大量の先受け部材277の掘削位置データについてリアルタイムにPC11等に記録、保存できるものとしている。
【0086】
よって、ドリルマシン1の操作者は、前記リアルタイムで取得されたガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作をディスプレイ15上に描画された映像で確認しながら掘削作業を行えるものとなる。よって、従来、目視で確認した掘削作業においては、死角が存在することがあったが、ディスプレイ15上の確認作業に死角がほぼ存在することはないものとなった。
【0087】
ここで、
図3に内周面についての掘削計画図である正面図を示す。該正面図においては、ガイドセル4の代表2点から取得した座標をどのように描画するかも重要となる。
【0088】
本発明では前述のごとく、前記
図2の先受け部材27の掘削打設計画図(例えばCAD図)から先受け部材27の掘削打設座標位置を算出していくのである。すなわち、先受け部材27の掘削打設計画図からY座標、Z座標、のみ先離れ、表示角度を算出していくのである(
図3参照)。
【0089】
一方、記録、保存に関しては、自発光マーカ9の2点の座標の変化を例えば、1秒単位で記録することもできる。例えば、PC11のハードドライブなど記憶部21に例えばCSV形式にて保存できるのである。
【0090】
なお、掘削時において、例えばガイドセル4に設けられた掘削距離測定部を構成する油圧シリンダの油圧データ(例えばガイドセル4や削岩機の揺動部材4として使用される油圧シリンダの油圧流量変化量)などをドリルマシン1(建機)から取得してPC11に転送することで、各先受け部材27の掘削距離を前記記憶部21に追加して保存することも出来る。この様に、掘削長さを表すのみ先離れの距離などについて別途前記の様に油圧データなどを介して計測することも出来る。
【0091】
以上において、本発明による使用状態の概略を説明する。
トンネルの内周面に対し、ドリルマシン1のガイドセル4を対向させて設置させる。所定の内周面に対し、掘削計画図が用意されている場合、該掘削計画図をディスプレイ15に写し出す。
【0092】
そして、該掘削計画図に描画された掘削位置、掘削の傾き、掘削長(のみ先離れの距離)に従ってガイドセル4を稼働させる。すなわち、ガイドセル4の操作者はディスプレイ15上でリアルタイムにガイドセル4先端側に取り付けられた切削刃5の稼働動作を確認出来、その稼働動作を確認しながら先受け部材27の掘削が行える。
【0093】
ここで、PC11には、
図11に示す様に、送信部20、受信部21、演算制御部12、記憶部22、入力部23を有して構成されている。さらに、ディスプレイ15と接続されており、PC11の情報がディスプレイ15上に表示できるものとなっている。
【0094】
さらに、PC11はインターネット回線などの通信回線網23を介して外部のサーバコンピュータ24などと接続されており、該サーバコンピュータ24は、PC11の情報を受信し、該情報を記憶、保存できるものとなっている。
尚、演算制御部12は、
図12に示すように、掘削計画図読み込み部31、掘削計画図形成部32、掘削位置等読み込み部33、掘削位置等描画部34を有して構成されている。
【0095】
よって、例えば、前記サーバコンピュータ24から掘削計画図のデータをPC11が受信すると、演算制御部12の掘削計画図読み込み部31で読み込み、掘削計画図形成部32でトンネルの正面図が形成されて、ディスプレイ15に表示される。
【0096】
操作者は、ガイドセル4を稼働操作し、ディスプレイ15に表示された掘削位置等に基づいて掘削していく。すると、その掘削作業を掘削位置等読み込み部33がリアルタイムに読み取って、掘削位置等描画部34によって前記掘削計画図上に異なる色で描画し表示していくのである。
【0097】
そして、これらのデータはリアルタイムに記憶部21に送出され、記憶部21に保存される。また、保存されたデータは通信回線網23を介してサーバコンピュータ24へ送信され、そこで保存されると共に、記録として残すことが出来る。
【符号の説明】
【0098】
1 ドリルマシン
2 車両本体
3 ブーム
4 ガイドセル
5 切削刃
6 削岩機
8 ガイド部材
9 自発光マーカ
10 近赤外線カメラ
11 PC
12 演算制御部
14 原点
15 ディスプレイ
16 丸部分
17 バッテリー
18 ベースステーション
19 取付杆
20 送信部
21 受信部
22 記憶部
23 入力部
24 サーバコンピュータ
25 通信回線網
26 ロッド
27 先受け部材
31 掘削計画図読み込み部
32 掘削計画図形成部
33 掘削位置等読み込み部
34 掘削位置等描画部
40 増幅回路
41 同期信号送信器
42 同期信号受信器