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特開2023-101110場所打ちコンクリート杭の構築方法および場所打ちコンクリート杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101110
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】場所打ちコンクリート杭の構築方法および場所打ちコンクリート杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20230712BHJP
   E02D 5/48 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E02D5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001487
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
(72)【発明者】
【氏名】染谷 怜
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】中西 義隆
(72)【発明者】
【氏名】大島 隆司
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA12
2D041BA22
2D041CA03
2D041CB01
2D041CB05
2D041DA01
2D041EA05
2D041EC01
(57)【要約】
【課題】傾斜の少ないコンクリート杭を構築する。
【解決手段】第1杭軸部用杭孔71を造成する第一工程s3と、中間拡径部用掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、中間拡径部用杭孔73を造成する中間拡径部造成工程s6と、第1杭軸部用杭孔71の先端位置より以深に杭軸部用小口径杭孔72を造成する杭軸部用小口径杭孔造成工程s4との双方を実行する第二工程と、大口径用掘削バケットを回転させながら杭軸部用小口径杭孔の周りの地盤を掘削し、当該杭軸部用小口径杭孔を誘導孔として中間拡径部用杭孔より以深に第2杭軸部用杭孔74を造成する第三工程s7と、拡底部用杭孔75を造成する第四工程s9と、第1杭軸部用杭孔71、中間拡径部用杭孔73、第2杭軸部用杭孔74および拡底部用杭孔75にコンクリートを打設する第五工程s12とを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭軸部の中間、及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、
大口径用掘削バケットを回転させて、地盤内の所定深さ位置まで第1杭軸部用杭孔を造成する第一工程と、
中間拡径部用掘削バケットを前記第1杭軸部用杭孔の先端深さ位置まで挿入した後、前記中間拡径部用掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、中間拡径部用杭孔を造成する中間拡径部造成工程と、前記大口径用掘削バケットよりも小径の小口径用掘削バケットを回転させて、前記第1杭軸部用杭孔の先端位置より以深に杭軸部用小口径杭孔を造成する杭軸部用小口径杭孔造成工程との双方を実行する第二工程と、
前記大口径用掘削バケットを回転させながら前記杭軸部用小口径杭孔の周りの地盤を掘削し、当該杭軸部用小口径杭孔を誘導孔として前記中間拡径部用杭孔より以深に第2杭軸部用杭孔を造成する第三工程と、
拡底部用杭孔掘削バケットを第2杭軸部用杭孔の先端に着底させた後、前記拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、拡底部用杭孔を造成する第四工程と、
前記第1杭軸部用杭孔、前記中間拡径部用杭孔、前記第2杭軸部用杭孔および前記拡底部用杭孔にコンクリートを打設する第五工程と、を含むことを特徴とする場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項2】
前記第三工程と前記第四工程との間に、前記第2杭軸部用杭孔の最下端に前記第2杭軸部用杭孔より小径の突起部用杭孔を造成する突起部用杭孔造成工程をさらに有し、
前記第四工程では、前記突起部用杭孔で前記拡底部用杭孔掘削バケットを位置決めした状態で、前記拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、前記拡底部用杭孔を造成する
ことを特徴とする請求項1に記載の場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項3】
杭軸部の中間、及び先端に拡径部を有する円形断面の場所打ちコンクリート杭であって、
前記杭軸部の中間に中間拡径部を有すると共に前記杭軸部の先端に拡底部を有するコンクリート杭本体と、
前記拡底部の中央下端に設けられる円柱状の突起部と、を備え、
前記突起部の外形寸法は、前記杭軸部の外形寸法以下とすることを特徴とする場所打ちコンクリート杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭軸部の中間、及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭の構築方法および場所打ちコンクリート杭に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭は、その軸部に拡径部を造成することにより、鉛直支持力、及び引抜き抵抗力を増加することができる。拡径部が造成されたコンクリート杭は、転倒モーメントが大きいことから、引抜き抵抗力が問題となる高層ビルや高層タワー等の基礎杭として好適である。また、拡径部を有したコンクリート杭は、杭の軸部の底部にある拡底部と、杭の軸部の途中位置にある中間拡径部との双方を備えることもある。
特許文献1~4には、拡径部を有したコンクリート杭の構築方法や拡径バケット等の装置が開示されている。このようなコンクリート杭は、掘削バケットを用い所定の深度まで軸部用杭孔を掘り、拡径バケットを用い、軸部用杭孔の中間部に中間拡径部用杭孔を造成し、軸部用杭孔の先端部に拡底部用杭孔を造成するものである。特に、特許文献1には、中間拡径部用杭孔や拡底部用杭孔を造成するための拡径バケットが具体的に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159124号公報
【特許文献2】特開2012-167450号公報
【特許文献3】特開2003-227136号公報
【特許文献4】特開2014-177794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に記載のコンクリート杭では、鉛直支持力、及び引抜き抵抗力を大きくしたり、杭長を短くするために、拡径部の外径を大きくしたりする。しかしながら、杭径部の外径を大きくすると、杭芯が偏心するおそれがある。
このような観点から、本発明は、杭芯の偏心が少ないコンクリート杭を構築することができる場所打ちコンクリート杭の構築方法および場所打ちコンクリート杭を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、杭軸部の中間、及び先端に拡底部を有する場所打ちコンクリート杭の構築方法として、小口径の掘削バケットで先行掘削した後、掘削された小口径杭孔の上端高さ位置まで中間拡径用掘削バケットを挿入し、当該中間拡径用掘削バケットの拡径翼を回転させながら、拡げて、中間拡径部を構築し、その後、小口径杭孔を誘導孔として、大口径用掘削バケットを用いて杭の先端深さ位置まで杭軸部用杭孔を造成した後、杭孔底部において、拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら、拡げて、拡底部を構築することで、杭孔の偏心が低減されるために、杭芯の偏心量を低減できることに着眼し、本発明に至った。また、杭先端の拡底部用杭孔の中央最下端に突起部用杭孔を設け、その突起部用杭孔に、拡径翼に設けた突起部を差し込むことで、拡径翼の回転支点とし、回転軸を安定させて杭芯の偏心を抑制させた。
前記課題を解決するために、本発明の場所打ちコンクリート杭の構築方法は、杭軸部の中間、及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、大口径用掘削バケットを回転させて、地盤内の所定深さ位置まで第1杭軸部用杭孔を造成する第一工程と、中間拡径部用掘削バケットを前記第1杭軸部用杭孔の先端深さ位置まで挿入した後、前記中間拡径部用掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、中間拡径部用杭孔を造成する中間拡径部造成工程と、前記大口径用掘削バケットよりも小径の小口径用掘削バケットを回転させて、前記第1杭軸部用杭孔の先端位置より以深に杭軸部用小口径杭孔を造成する杭軸部用小口径杭孔造成工程との双方を実行する第二工程と、前記大口径用掘削バケットを回転させながら前記杭軸部用小口径杭孔の周りの地盤を掘削し、当該杭軸部用小口径杭孔を誘導孔として前記中間拡径部用杭孔より以深に第2杭軸部用杭孔を造成する第三工程と、拡底部用杭孔掘削バケットを第2杭軸部用杭孔の先端に着底させた後、前記拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、拡底部用杭孔を造成する第四工程と、前記第1杭軸部用杭孔、前記中間拡径部用杭孔、前記第2杭軸部用杭孔および前記拡底部用杭孔にコンクリートを打設する第五工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、杭軸部用小口径杭孔を造成してから大口径の第2杭軸部用杭孔を造成するので、杭孔の偏心が低減するので、杭芯の偏心を低減することができる。
また、前記第三工程(s7(図9))と前記第四工程(s9(図9))との間に、前記第2杭軸部用杭孔(74)の最下端に前記第2杭軸部用杭孔(74)より小径の突起部用杭孔(76)を造成する突起部用杭孔造成工程(s8)をさらに有し、前記第四工程(s9)では、前記第2杭軸部用杭孔の最下端に造成された前記第2杭軸部用杭孔より小径の突起部用杭孔で前記拡底部用杭孔掘削バケットを位置決めした状態で、前記拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、拡底部用杭孔を造成することが好ましい。
また、前記第二工程において、前記中間拡径部造成工程(s4(図11A))の後に、杭軸部用小口径杭孔造成工程(s5(図11A))を実行してもよい。このときには、前記第三工程(s6(図11B))では、前記杭軸部用小口径杭孔(72)の先端を突起部用杭孔(76)として残した状態で、第2杭軸部用杭孔(74)を造成し、前記第四工程(s8)では、前記突起部用杭孔で前記拡底部用杭孔掘削バケットを位置決めした状態で、前記拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら地盤を掘削し、前記拡底部用杭孔を造成しても良い。
また、前記第四工程では、前記第2杭軸部用杭孔よりも小径の突起部用杭孔を先端位置に造成し、該造成された突起部用杭孔で前記拡底部用杭孔掘削バケットを位置決めする。また、前記突起部用杭孔は、前記第二工程で造成された前記杭軸部用小口径杭孔の先端部であり、前記第四工程では、前記先端部の手前まで、前記第2杭軸部用杭孔を造成しても良い。
また、本発明の場所打ちコンクリート杭は、杭軸部の中間、及び先端に拡径部を有する円形断面の場所打ちコンクリート杭であって、前記杭軸部の中間に中間拡径部を有すると共に前記杭軸部の先端に拡底部を有するコンクリート杭本体と、前記拡底部の中央下端に設けられる円柱状の突起部と、を備え、前記突起部の外形寸法は、前記杭軸部の外形寸法以下とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、杭芯の偏心が少ないコンクリート杭を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る中間拡径部用掘削バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図である。
図2】第1実施形態に係る中間拡径部用掘削バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図3図2のIII-III矢視図であって、内側本体と軸体とアームの取り付け部の構成を説明する図である。
図4】(a)から(c)にかけて、拡径翼を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更する際の、内側本体の案内溝におけるアームの移動態様を説明する図である。
図5】拡径翼の平面図であって、(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。
図6】荷重伝達体を斜め上方から見た斜視図である。
図7】内管と外管との間で回転力を伝達する機能を説明する斜視図である。
図8】第1実施形態で使用される拡底部用杭孔掘削バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態である場所打ちコンクリート杭の構築方法を説明する説明図である。
図10】本発明の参考例である場所打ちコンクリート杭の杭孔造成方法を説明する説明図である。
図11A】本発明の第2実施形態の場所打ちコンクリート杭の杭孔造成方法を説明する説明図(1)である。
図11B】本発明の第2実施形態の場所打ちコンクリート杭の杭孔造成方法を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、小口径の掘削バケットで先行掘削した後、掘削された小口径杭孔の上端高さ位置まで中間拡径用掘削バケットを挿入し、当該中間拡径用掘削バケットの拡径翼を回転させながら、拡げて、中間拡径部を構築し、その後、小口径杭孔を誘導孔として、大口径用掘削バケットを用いて杭の先端深さ位置まで杭軸部用杭孔を造成した後、杭孔底部において、拡底部用杭孔掘削バケットの拡径翼を回転させながら、拡げて、拡底部を構築する場所打ちコンクリート杭の構築方法、及びその場所打ちコンクリート杭である。場所打ちコンクリート杭の構築方法は、第1実施形態は油圧ユニット56を有した中間拡径部用掘削バケット50を用いて中間拡径部82を構築する方法であり、第2実施形態は油圧ユニット56を有していない機械式の中間拡径部用掘削バケット59を用いる方法である。
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
後記する各実施形態の場所打ちコンクリート杭は、中間拡径部と拡底部との双方を設けた多段杭である。本実施形態の場所打ちコンクリート杭の構築方法は、地盤に中間拡径部用杭孔と拡底部用杭孔とを有した杭孔を造成する杭孔造成工程と、この杭軸用杭孔にコンクリートを打設する打設工程とを備える。
まず、中間拡径部用杭孔の造成のために使用される中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)と、拡底部用杭孔の造成のために使用される拡底部用杭孔掘削バケット69(図8)の構成を説明する。その後、本実施形態の杭孔造成工程について説明する。
【0010】
[実施形態に係る油圧機構を備えた機械式拡径バケット]
図1は、本発明の実施形態で使用される中間拡径部用掘削バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図である。図2は、その拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図1において、中間拡径部用掘削バケット50は、油圧ユニット56と、機械式拡径バケット59とを有する。油圧ユニット56は、荷重伝達体90と、荷重伝達体90の内部に配設される外管110と、外管110の内部に配設される内管95と、内管95の内部に配設される油圧ジャッキ94とを備える。機械式拡径バケット59は、油圧ユニット56に対して着脱可能に取り付けられている。
【0011】
内管95は、平面視円形の第一上蓋91と第一筒体92とを備えて構成され、第一上蓋91の上面91aにケリーバ30の下端が固定されている。油圧ジャッキ94は、シリンダ94aと、シリンダ94a内を摺動するピストンロッド94bとを備える。第一上蓋91の下面91bとシリンダ94aとがボルト接合により固定されている。外管110は、平面視円形の下蓋111と第二筒体112とを備える。下蓋111の上面111aとピストンロッド94bとがボルト接合により固定される。第二筒体112が第一筒体92の外周に配設される。
機械式拡径バケット59は、筒状の外側本体55と、外側本体55の内部に配設される筒状の内側本体54と、内側本体54の内部で摺動するとともに外管110に固定される軸体53と、軸体53に取り付けられているアーム52と、アーム52の先端に取り付けられている拡径翼51とを備える。
図2に示すように、内側本体54には、その軸心方向L1に対して傾斜した方向(傾斜角度θ1)に開設されている案内溝54aが形成されている。この案内溝54aでアーム52が案内されることにより、拡径翼51は、閉姿勢51a(図1)と開姿勢51b(図2)とを形成するようになっている。
【0012】
図3に示すように、円筒状の軸体53には、その長手方向に直交する方向に延設して軸体53を貫通するキー52aが係合している。キー52aの両端には、それぞれ端部カバー52bが取り付けられている。端部カバー52bの一部は、内側本体54の有する案内溝54aに挿入されている。さらに、端部カバー52bには、ユニバーサルジョイント52cが取り付けられ、ユニバーサルジョイント52cには、連結部材52dが取り付けられている。
連結部材52dの先端は、機械式拡径バケット59(図2)が有する2つの拡径翼51に回動自在に取り付けられている。
【0013】
図4は、拡径翼を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更する際の、内側本体の案内溝におけるアームの移動態様を説明する説明図である。
図4(a)乃至図4(c)はいずれも、外径tの内側本体54の中央t/2において、アーム52を構成するキー52aが案内溝54aを貫通して紙面の前面に臨んでいる状態を示している。また、図4(a)は、拡径翼51が閉姿勢51a(図1)の際の案内溝54aに対するキー52aの位置を示す。図4(b)は、拡径翼51が閉姿勢51a(図1)から開姿勢51b(図2)に移行する移行途中を示す。さらに、図4(c)は、拡径翼51が開姿勢51b(図2)の際の案内溝54aに対するキー52aの位置を示す。
キー52aが係合する軸体53(図3)は、外管110の下蓋111を介して、油圧ジャッキ94のピストンロッド94bの伸長により下方に押し下げられる。図4(a)から図4(c)を順に見ることにより明らかなように、下方に押し下げられたキー52aは、その位置を内側本体54の中央位置であるt/2の位置に保持したまま、鉛直下方であるX2方向(図4(b))に移動する。
【0014】
図4(b)に示すように、キー52aがその側面視における位置を保持した状態で斜め方向に延設する案内溝54aに沿って下方にh1移動することにより、下方に移動するキー52aから案内溝54aの側面が受ける押圧力Sの水平方向成分S1により、内側本体54がX3方向に回動させられる。この際には、拡径翼51は途中まで開いた姿勢を形成する。
図4(c)に示すように、キー52aが案内溝54aに沿ってさらに下方にh2移動して案内溝54aの下端に到達すると、下方に移動するキー52aから案内溝54aの側面が受ける押圧力Sの水平方向成分S1により、拡径翼51は図2に示す完全に開いた状態である開姿勢51bを形成する。
このように、油圧ジャッキ94(図1)を動作させることにより、拡径翼51を閉姿勢51a(図1)から開姿勢51b(図2)にすることができる。また、図1に示すように、機械式拡径バケット59の重量は、荷重伝達体90にてZ1方向に支持され、荷重伝達体90がローラ99及び内管95を介して、内管95に固定されるケリーバ30にZ2方向に伝達される。そのため、拡径翼51の開閉に際して、地盤からの反力がない状態においても、油圧ジャッキ94を動作させた際の反力をケリーバ30に伝達させることにより、拡径翼51の開閉を実現することができる。
【0015】
図5は、拡径翼の平面図であって、(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。
図5(a)に示すように、2つの拡径翼51は、平面視円弧状であり、図示する閉姿勢51aの状態において、それぞれの拡径翼51の先端が翼ストッパ57に係合しており、図示する状態よりも拡径翼51がさらに内側に回動することが規制される。
一方、図5(b)に示すように、拡径翼51がX4方向に開いた図示する開姿勢51bの状態において、ケリーバ30(図1)の回転に応じてそれぞれの拡径翼51がY4方向に回転することにより、切削された土砂Dは、平面視円弧状の拡径翼51にて効果的に掬われながら、拡径翼51の回転方向に搬送される。
【0016】
また、図1において、軸体53は、外管110の有する下蓋111の下面111bに固定されている。さらに、外側本体55の下端には、円筒部58aと円錐部58bとからなる突起部58が形成されている。なお、突起部58は、開閉自在に取り付けられており、開放されることにより、外側本体55の内部に収容されている掘削土砂が搬出される。
図1において、荷重伝達体90は、平面視円形の第二上蓋97と第三筒体98とを備える。第二上蓋97の中心部には、ケリーバ30が挿通されるケリーバ用開口97aが形成されている。第二上蓋97は、内管95の第一上蓋91の上面91aにローラ99を介して載置される。また、機械式拡径バケット59の上部には、杭孔内における機械式拡径バケット59の姿勢制御を行うスタビライザ120が配設されており、第三筒体98は、接続部材115を介してスタビライザ120に固定される。
【0017】
図6は、図1に示す荷重伝達体90を斜め上方から見た斜視図である。
内管95の第一上蓋91の上面91aには、第一上蓋91の周方向に間隔を置いて複数のローラ99が回転自在に取り付けられている。また、荷重伝達体90の有する第二上蓋97には、複数のローラ99を介して第一上蓋91の上に載置されている。このように、複数のローラ99を介して第一上蓋91の上に第二上蓋97が載置されることにより、内管95に対して荷重伝達体90を回転自在に載置することができる。そのため、機械式拡径バケット59の重量を直接支持する荷重伝達体90が内管95に対して相対的に回転する際に、内管95と荷重伝達体90との間に過度の摩擦力が生じて双方が損傷することを抑制することができる。
【0018】
図7は、内管と外管との間で回転力を伝達する機能を説明する斜視図である。
内管95の第一筒体92の外周には、第一筒体92の軸心方向L2に延設する係合突起96が、第一筒体92の周方向であるR1方向に間隔を置いて複数設けられている。一方、外管110の第二筒体112の内周には、第二筒体112の軸心方向L2に延設する被係合突起113が複数設けられている。この被係合突起113は、2つで一組を成して複数組存在し、各組の被係合突起113の間に係合突起96が配設されている。
この構成により、外管110は、内管95に対して、軸心方向L2に沿ってY3方向に摺動自在であり、かつ、ケリーバ30の回転に応じて内管95がY4方向に回転した際には、係合突起96がその左右にあるいずれかの被係合突起113に係合自在となる。
【0019】
したがって、図2に示すように、ケリーバ30がY1方向に回転した際の回転トルクにより、内管95がY2方向に回転し、係合突起96と被係合突起113(図7)とが係合することにより外管110が内管95と係合してY3方向に回転する。さらに、外管110が回転することにより、外管110に固定されている軸体53が回転し、軸体53を構成要素とする機械式拡径バケット59の全体がY4方向に回転する。このように、ケリーバ30の回転トルクは、内管95及び外管110を介して機械式拡径バケット59に伝達される。
また、図2において、拡径翼51は、側面視三角形状の上方傾斜部翼51cと、側面視矩形状の立ち上がり部翼51dと、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼51eとが連続した側面視形状を有しており、各部の側端には複数の切削ビット51fが取り付けられている。なお、切削ビット51fは、全て、側端に固定されている固定ビットであってもよいし、固定ビットと、回転自在な回転ビットとの組み合わせ形態であってもよい。また、拡径翼51は、図示例のように下方傾斜部翼51eを具備せず、上方傾斜部翼51cと立ち上がり部翼51dが連続した側面視形状を有している形態などであってもよい。
【0020】
図2に示すように、油圧ジャッキ94を動作させた際の反力の一部は、シリンダ94aが固定されている内管95を介し、内管95の上方に載置されている荷重伝達体90を介してZ3方向で機械式拡径バケット59に伝達される。そのため、油圧ジャッキ94を動作させた際の過度な反力がケリーバ30に伝達されることが抑制される。
突起部58は、円筒部58aと円錐部58bとから構成されており、外側本体55の下部に設けられている。なお、円筒部58aの径φ3は外側本体55の径φ2と略同径とする。
【0021】
図8は、本発明の実施形態で使用される拡底部用杭孔掘削バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
拡底部用杭孔掘削バケット69は、外管110aと、内管95aと、軸体63と、内側本体64と、外側本体65と、拡径翼61と、突起部68とを備える。ここで、図7に示す外管110及び内管95と同様に、内管95aの外周には、複数の係合突起96(図7)が形成されており、外管110の内周には、複数の被係合突起113(図7)が形成されている。また、外管110aは、スタビライザ120を介して外側本体65に固定されている。内管95の上面には、ケリーバ30の下端が固定されており、内管95の下面には、軸体63が固定されている。
【0022】
ケリーバ30の回転に伴い、内管95が回転し、外管110及び外側本体65を介して拡径翼61が回転する。また、突起部68が孔底に固定され、内側本体64、外側本体65及び拡径翼61が鉛直方向に移動しない状態において、ケリーバ30が押し下げられると、軸体63及びキー62aも押し下げられる。これにより、内側本体64のX3方向(図4(b)(c))への回動と共に、アーム52によって拡径翼61が拡げられる。
突起部68は、突起部58(図1)と同様に、円筒部68aと円錐部68bとから構成される。つまり、拡底部用杭孔掘削バケット59は、中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)と、同様の構成であるが、油圧ユニット56を有していない。また、拡径翼61は、側面視三角形状の上方傾斜部翼61cと、側面視矩形状の立ち上がり部翼61dとを有しており、下方傾斜部翼51e(図1)に相当するものを有していない。
【0023】
(第1実施形態)
図9は、本発明の第1実施形態である場所打ちコンクリート杭の構築方法を説明する説明図である。
図9のステップs1では、地表GLから深さD2の深さまで直径φ1(例えば、φ1=3.2m)の円筒状のケーシング21を地面に挿入しつつ、全周回転掘削機を用いてケーシング21の内側を掘削する。図9のステップs2では、パワージャッキ(不図示)を用いて、基礎底レベル(深さD15(s11)の位置)よりも浅い深さD16までケーシング21を引き抜く。図9のステップs3(特許請求の範囲の「第一工程」)では、大口径用掘削バケット42(図11A(s1))によって、径φ2(例えば、φ2=3m)、深さD12の第1杭軸部用杭孔71が造成される。第1杭軸部用杭孔71は、軟弱層(例えばシルト層12)が堆積しているときは、その上端まで掘削する。
図9のステップs4(特許請求の範囲の「杭軸部用小口径杭孔造成工程」を含む「第二工程」)では、小口径用掘削バケット41(図11A(s2))によって、径φ3(φ3<φ2)(例えば、φ3=2.2m)の杭軸部用小口径杭孔72が造成される。ここで、杭軸部用小口径杭孔72の長さは、第2杭軸部用杭孔74よりもD13(例えば、D13=50cm)だけ短い。これは、杭先端部の支持層を荒らさないためである。
【0024】
図9のステップs5(特許請求の範囲の「第二工程」)では、大口径用掘削バケット42(図11A(s1))によって、杭軸部用小口径杭孔72の上部が拡径される。つまり、矢印で示すように、第1杭軸部用杭孔71が延伸する。このとき、例えば、第1杭軸部用杭孔71は、シルト層12の下端からD14(例えば、1m)以上深く根入する。
図9のステップs6(特許請求の範囲の「中間拡径部造成工程」を含む「第二工程」)では、後記する参考例の図10(s2)で説明するように、中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)が第1杭軸部用杭孔71の下部に配設される。このとき、杭軸部用小口径杭孔72の上部には、突起部58(図1,2)が差し込まれる。これにより、中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)が位置決めされる。そして、中間拡径部用掘削バケット50の拡径翼51を回転させながら、拡げて、中間拡径径φ4(例えば、φ4=5.3m)の中間拡径部用杭孔73を造成する。つまり、本実施形態では、杭軸部用小口径杭孔造成工程(s4)の後で、中間拡径部造成工程(s6)が実行される。そして、拡径翼61を閉じて、中間拡径部用掘削バケット50を地上に引き上げる(不図示)。
図9のステップs7(特許請求の範囲の「第三工程」)では、大口径用掘削バケット42(図11A(s1))によって、杭軸部用小口径杭孔72の径がφ3からφ2(φ2>φ3)まで拡径される。大口径用掘削バケット42の先端は、杭軸部用小口径杭孔72の下端面よりも深さD13だけ下方まで到達させる。これにより、第2杭軸部用杭孔74が造成される。
上記のように、直径寸法の異なる2種類の掘削バケット(先行して掘削する小口径用掘削バケット41と、第1杭軸部用杭孔71を誘導孔とし、後行掘削時に用いる大口径用掘削バケット42)を用いて杭孔を造成する、2段堀りによって杭孔を造成する場所打ちコンクリート杭の構築方法である。また、前記2段堀りによる杭孔によって造成される場所打ちコンクリート杭である。
【0025】
図9のステップs8(特許請求の範囲の「突起部用杭孔造成工程」)では、小口径用掘削バケット41(図11A(s2))によって、径φ5(例えばφ5=φ3<φ2(例えば、φ5=φ3=2.2m))の突起部用杭孔76が造成される。ここで、φ5=φ3としたが、異なる太さにしても構わない。
図9のステップs9(特許請求の範囲の「第四工程」)では、後記する参考例の図10(s5)で説明するように、拡底部用杭孔掘削バケット69(図8)が第2杭軸部用杭孔74の底部に配設される。このとき、突起部用杭孔76には、突起部68(図8)が差し込まれる。これにより、拡底部用杭孔掘削バケット69が位置決めされる。そして、拡底部用杭孔掘削バケット69(図8図10(s6))の拡径翼61を回転させながら、拡げて、拡底径φ6(例えば、φ6=5.3m)の拡底部用杭孔75を造成する。このとき、突起部用杭孔76及び突起部68の組合せは、拡径翼61の回転支点になる。この回転支点により、杭芯の偏心が抑制される。そして、杭軸部用小口径杭孔72から拡底部用杭孔掘削バケット69が取り出される(不図示)。
【0026】
図9のステップs10では、拡底部用杭孔75の底さらいと、スライム除去とが行われる。ここで、突起部用杭孔76は、径φ7(例えば、φ7=3m)に拡径される。拡径によって、受け止めるスライムを増加させることができる。なお、スライムとは、掘削壁面を保護するのに使用したベントナイト泥水と掘土の粒子が混じって、孔底に沈殿したものである。
図9のステップs11では、拡底部から基礎底レベル(深さD15の位置)まで、鉄筋25を挿入し、さらに構真柱26を鉄筋の上部(つまり、基礎底レベルよりも深い位置)まで建て込む。つまり、鉄筋25の上部と構真柱26の下部とが重なる。
図9のステップs12(特許請求の範囲の「第五工程」)では、第1杭軸部用杭孔71、中間拡径部用杭孔73、第2杭軸部用杭孔74および拡底部用杭孔75にコンクリートを打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭100が構築される。場所打ちコンクリート杭100は、第1杭軸部81と、中間拡径部82と、第2杭軸部83と、拡底部84とが連続造成された鉄筋コンクリート製の場所打ち杭である。なお、拡底部84には、突起部85が含まれる。ここで、突起部85の外径φ7は、径φ5(例えばφ5=φ3<φ2)以上、第2杭軸部83の外径φ2以下である。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72の周りの地盤を掘削し、当該杭軸部用小口径杭孔を誘導孔として、径φ2まで拡径することにより、第2杭軸部用杭孔74が造成される。これにより、杭孔の偏心が低減する。また、杭軸部用小口径杭孔72の上部には、突起部58(図1,2)が差し込まれる。これが拡径翼51の回転支点になる。また、突起部用杭孔76には、突起部68(図8)が差し込まれる。これが拡径翼61の回転支点になる。回転支点による位置決めで回転軸が安定し、杭芯の偏心が抑制される。
【0028】
(第1実施形態の参考例)
前記第1実施形態では、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72の周りの地盤を掘削し、当該杭軸部用小口径杭孔を誘導孔として、径φ2まで拡径していた。径φ2の杭軸部用杭孔70を、1回で掘削する参考例を用いて、中間拡径部用杭孔73および拡底部用杭孔75の拡径について追加説明する。
図10は、本発明の参考例である場所打ちコンクリート杭の杭孔造成方法を説明する説明図である。図10を参照して、地表(GL)又は基礎底レベルから所定深さ(D1)の多段杭を埋設するための杭孔を造成する方法を説明する。
【0029】
図10のステップs1では、大口径用掘削バケット42を用いて、安定液22を注入しながら、軸部(杭軸部用杭孔70)の掘削が行われる。安定液22は、例えば、ベントナイトに水溶性ポリマ等を含んだものであり、地盤の崩壊を防止し、安全な工事を行うために使用される。また、掘削は、中間拡径部用杭孔73を造成するための深さを超えて、拡底部用杭孔75を造成する位置まで行われる。なお、地表GL付近では、円筒状のケーシング21を地盤に設置して、深さD2まで大口径用掘削バケット42を用いて掘削が行われる。
図10のステップs2では、中間拡径部用掘削バケット50を杭軸部用杭孔70の内部の所定深さに設置する。このとき、中間拡径部用掘削バケット50は、拡径翼51が閉じられた閉姿勢51aで、ケリーバ30で吊り下げられて杭軸部用杭孔70に挿入される。所定深さD3は、中間拡径部用掘削バケット50の下端部の位置であり、中間拡径部用杭孔73の下部よりも若干深いところである。
【0030】
図10のステップs3では、中間拡径部用掘削バケット50の拡径翼51を回転させながら徐々に拡げて開姿勢51bにする。これにより、中間拡径部用杭孔73が造成される。より具体的には、深さが固定されたケリーバ30を回転させることにより、拡径翼51を回転させる。また、油圧ジャッキ94は、軸体53を力F1で下方に押圧することにより、拡径翼51を閉姿勢(51a(s2))から開姿勢(51b(s3))まで拡げる。このとき、油圧ジャッキ94には、反力F2が加わる。ステップs2からステップs3において、拡径翼51が土砂を削り出し、中間拡径部用杭孔73が造成されると共に、土砂15が杭軸部用杭孔70の底に堆積する。なお、図示しないが、ステップs3が終了したら、中間拡径部用掘削バケット50の拡径翼51を閉姿勢51aにしたうえで、中間拡径部用掘削バケット50を引き上げる。
図10のステップs4では、再び、ケリーバ30に大口径用掘削バケット42を取り付け、堆積した土砂15を回収する。このとき、大口径用掘削バケット42は、深さD1(s1)よりも深さH4だけ深く掘削される。また、大口径用掘削バケット42の円錐状の下部形状により、杭軸部用杭孔70の底に円錐凹部70aが造成される。なお、中間拡径部用杭孔73は、拡径翼51(特に、立ち上がり部翼51d(図2))の形状で決まる立ち上がり高さH1を有する。
【0031】
図10のステップs5では、ケリーバ30の下端に固定された拡底部用杭孔掘削バケット60が杭軸部用杭孔70の底部に設置される。このとき、拡径翼61は、閉姿勢61aである。また、拡底部用杭孔掘削バケット69の突起部68が、円錐凹部70aに差し込まれる。これにより、拡底部用杭孔掘削バケット69の位置決めがなされ、杭芯(回転中心)の偏心が抑制される。
図10のステップs6では、拡底部用杭孔掘削バケット69を回転させつつ拡径翼61を拡げる。これにより、拡底部用杭孔75が造成される。具体的には、拡底部用杭孔掘削バケット69の突起部68が地底に到達しているので、ケリーバ30を押し下げることにより、軸体63(図8)を下降させ、拡径翼61を開姿勢61bまで拡げる。このとき、突起部68は、底部から反力F3を受ける。
その後、拡底部用杭孔75から拡底部用杭孔掘削バケット69が取り出される。そして、図示は省略するが、第1杭軸部用杭孔、中間拡径部用杭孔73、第2杭軸部用杭孔および拡底部用杭孔75にコンクリートを打設すると、場所打ちコンクリート杭が構築される。
【0032】
以上説明したように、本参考例では、拡底部用杭孔掘削バケット69の突起部68が、円錐凹部70aに差し込まれる(ステップs5)。これにより、拡底部用杭孔掘削バケット69を回転させるときに、突起部68が支点になる。つまり、拡底部用杭孔掘削バケット69の位置決めがなされ、杭芯の偏心が抑制される。
【0033】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、油圧ユニット56を有した中間拡径部用掘削バケット50を用いたが、油圧ユニット56を有していない機械式の中間拡径部用掘削バケット59(図1,2)を用いることもできる。
図11A図11Bは、本発明の第2実施形態の場所打ちコンクリート杭の杭孔造成方法を説明する説明図である。
図11Aのステップs1(特許請求の範囲の「第一工程」)では、前記第1実施形態の図9(s1)と同様に、径φ1のケーシング21が挿入され、さらに図9(s3,s7)と同様に、径φ2の大口径用掘削バケット42によって、径φ1の第1杭軸部用杭孔71が造成される。なお、第1杭軸部用杭孔71は、中間拡径部用杭孔73(s5)の下端まで掘削される。
図11Aのステップs2では、径φ3(φ3<φ2)の小口径用掘削バケット41によって、第1杭軸部用杭孔71の下端部に突起部用杭孔76が造成される。
【0034】
図11Aのステップs3では、外径φ3の機械式拡径バケット59が第1杭軸部用杭孔71の下端部まで挿入される。これにより、突起部58が突起部用杭孔76に差し込まれる。ここで、機械式拡径バケット59は、中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)から油圧ジャッキ94を削除したものである。つまり、ケリーバ30は、軸体53(図1,2)を吊り上げている。
図11Aのステップs4(特許請求の範囲の「中間拡径部造成工程」を含む「第二工程」)では、ケリーバ30を回転させつつ、押し下げることによって、機械式拡径バケット59の軸体53(図1,2)が回転しつつ、押し下げられる。これらのステップs3,s4が繰り返され、拡径翼51が回転しつつ、徐々に拡げられることにより、中間拡径部用杭孔73が造成される。
図11Aのステップs5で(特許請求の範囲の「杭軸部用小口径杭孔造成工程」を含む「第二工程」)は、小口径用掘削バケット41によって、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72が拡底部の深さまで造成される。つまり、本第2実施形態では、前記第1実施形態(図9のs4,s6)と異なり、中間拡径部用杭孔73を造成する中間拡径部造成工程(s4)の後に、杭軸部用小口径杭孔72を造成する杭軸部用小口径杭孔造成工程(s5)が実行される。
【0035】
図11Bのステップs6(特許請求の範囲の「第三工程」)では、大口径用掘削バケット42によって、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72を拡径することにより、径φ2(φ2>φ3)の第2杭軸部用杭孔74が造成される。このとき、杭軸部用小口径杭孔72の先端(杭底)を少し残し、第2杭軸部用杭孔74の底部に径φ3の凹部(突起部用杭孔76)を造成する。細い杭軸部用小口径杭孔72を造成してから、太い第2杭軸部用杭孔74を造成することにより、杭軸の偏心が少なくなる。
図11Bのステップs7では、ケリーバ30によって、外径φ3の拡底部用杭孔掘削バケット60が第1杭軸部用杭孔71及び中間拡径部用杭孔73を介して第2杭軸部用杭孔74の底部に配設される。このとき、ケリーバ30の先端は、拡底部用杭孔掘削バケット60の軸体63に固定される。また、突起部68(図8)が突起部用杭孔76に差し込まれる。
図11Bのステップs8(特許請求の範囲の「第四工程」)では、ケリーバ30を回転させつつ、押し下げる。すなわち、拡底部用杭孔掘削バケット60の軸体63を回転させつつ、押し下げる。これらのステップs7,s8が繰り返され、拡径翼61が回転しつつ、徐々に拡げられることにより、拡底部用杭孔75が造成される。
【0036】
図11Bのステップs9では、偏心ポンプ24によって、底部に沈殿しているスライムや土砂が吸い上げられる。このとき、ケリーバ30を底部に対して、平行に移動させたり、回転させたりして、底部全体を掃除する。なお、偏心ポンプ24は、図示しないが例えば、ポンプ部と、スライム又は土砂を撹拌するプロペラ状の撹拌部と、撹拌部の回転範囲及びポンプ部の吸込み口を覆うスカート部とを備えている。このスカート部が偏心した截頭円錐形状に形成されている。
図11Bのステップs10(特許請求の範囲の「第五工程」)では、第1杭軸部用杭孔71、中間拡径部用杭孔73、第2杭軸部用杭孔74及び拡底部用杭孔75の内部に鉄筋25が配設される。その後、第1杭軸部用杭孔71、中間拡径部用杭孔73、第2杭軸部用杭孔74及び拡底部用杭孔75にコンクリートが打設される。
【0037】
以上説明したように本実施形態によれば、油圧ジャッキ94を有していない機械式拡径バケット59を用いて、中間拡径部用杭孔73を造成することができる。また、第1杭軸部用杭孔71の底部に造成された突起部用杭孔76と、機械式拡径バケット59の突起部58とが回転支点になる。回転支点による位置決めで回転軸が安定する。
【0038】
[変形例]
(1)前記第1実施形態のステップs6~s9(図9)では、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72を造成し(s6)、拡径により径φ2(φ2>φ3)の第2杭軸部用杭孔74を造成し(s7)、先端部に径φ5=φ3の突起部用杭孔76を造成していた。それに代えて、第2実施形態のステップs5(図11A),s6(図11B)のように、最初から径φ3の杭軸部用小口径杭孔72及び突起部用杭孔76を掘削し、突起部用杭孔76の手前まで、杭軸部用小口径杭孔72を径φ2まで拡径することにより、第2杭軸部用杭孔74を造成しても構わない。
(2)前記第2実施形態のs3,s4(図11A)では、油圧ユニット56を有さない中間拡径部用掘削バケット59を使用したが、油圧ユニット56を有する中間拡径部用掘削バケット50(図1,2)を使用しても構わない。
(3)前記第2実施形態では、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72を造成し(s5(図11A))、杭軸部用小口径杭孔72の杭底を少し残し、拡径により、第2杭軸部用杭孔74を造成し、その底部に残した径φ3の杭軸部用小口径杭孔を突起部用杭孔76とした(s6(図11B))。これに代えて、前記第1実施形態のように、径φ3の杭軸部用小口径杭孔72の拡径により、径φ2の第2杭軸部用杭孔74を造成し(s7)、第2杭軸部用杭孔74の先端に径φ5=φ3の突起部用杭孔76を造成しても構わない。
(4)第1、第2実施形態で油圧ユニットを有する中間拡径バケット50の代わりに、油圧ジャッキを内包した中間拡径バケットを用いても構わない。
【符号の説明】
【0039】
30 ケリーバ
41 小口径用掘削バケット
42 大口径用掘削バケット
50 中間拡径部用掘削バケット
51,61 拡径翼
51a,61a 閉姿勢
51b,61b 開姿勢
53,63 軸体
54,64 内側本体
55,65 外側本体
56 油圧ユニット
58,68 突起部
59 機械式拡径バケット(機械式中間拡径部用掘削バケット)
69 拡底部用杭孔掘削バケット
70 杭軸部用杭孔
71 第1杭軸部用杭孔
72 杭軸部用小口径杭孔
73 中間拡径部用杭孔
74 第2杭軸部用杭孔
75 拡底部用杭孔
76 突起部用杭孔
80 杭軸部
81 第1杭軸部
82 中間拡径部
83 第2杭軸部
84 拡底部
85 突起部
90 荷重伝達体
94 油圧ジャッキ(油圧機構)
95,95a 内管
98 第三筒体
100 場所打ちコンクリート杭
110,110a 外管
112 第二筒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B