(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101145
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】通行量計測センサー
(51)【国際特許分類】
G06M 7/00 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
G06M7/00 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001554
(22)【出願日】2022-01-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
(72)【発明者】
【氏名】川上 稜
(72)【発明者】
【氏名】南山 偉明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 凌
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
(72)【発明者】
【氏名】矢野 あかり
(57)【要約】
【課題】発電可能なセンサーを用いながらも正確に歩行者の通過人数を計測可能な通行量計測センサーを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の通行量計測センサー10は、複数の発電素子50が平面上に配列されて床面に敷設される発電部100と、前記発電部100から生じた電圧を整流する整流部120と、前記整流部120で整流された電圧に基づいて前記発電部における発電の有無の信号を送信する送信部140と、を備え、前記整流部120は、倍電圧整流回路を備える
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電素子が平面上に配列されて床面に敷設される発電部と、
前記発電部から生じた電圧を整流する整流部と、
前記整流部で整流された電圧に基づいて前記発電部における発電の有無の信号を送信する送信部と、を備え、
前記整流部は、倍電圧整流回路を備えることを特徴とする、通行量計測センサー。
【請求項2】
前記送信部は、前記整流部を介して前記発電部から供給された電圧によって稼働可能な演算装置を備えることを特徴とする、請求項1記載の通行量計測センサー。
【請求項3】
前記発電部から生じた電圧を蓄える蓄電部をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の通行量計測センサー。
【請求項4】
前記発電素子1つの面積が9cm2以上10000cm2以下であることを特徴とする、請求項1~3いずれか記載の通行量計測センサー。
【請求項5】
前記発電素子は、接触帯電によって正負の電荷に帯電する異なる材料からなる帯電フィルム上に電極と基材を順に積層した2種類の部材の帯電フィルム側を対向させたものであることを特徴とする、請求項1~4いずれか記載の通行量計測センサー。
【請求項6】
前記基材、電極及び帯電フィルムの少なくともいずれかに、表面の粗さが0.5mm以上の凹凸が形成されていることを特徴とする、請求項5記載の通行量計測センサー。
【請求項7】
前記帯電フィルム1つあたりの大きさが、9cm2以上100cm2以下であることを特徴とする、請求項5又は6記載の通行量計測センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行量計測センサーに関し、特に歩行者の通行量を計測するためのセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
都市計画や店舗出店等に際して、一定のエリア内における歩行者の通行量(通過人数)の調査が行われる。歩行者の通過人数を計測する手段として、人を配置して目視による通過人数の計測の他、赤外線センサーやカメラによるモニタリングによる計測が挙げられる。しかし,赤外線センサーでは同時に複数人が並列して通過した場合に計測が出来ず、カメラによるモニタリングでは個人のプライバシーの問題から計測に適さない場所(例えばトイレや更衣室等)があり、設置することが困難な場合がある。
【0003】
これに対して近年、床に圧電センサーを組み込み、これを踏んだときの発電によって無線通信を送信して、歩行者の通行有無を検知するセンサー付きの床材が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献の技術では、足のステップイン(床に足を乗せるとき)とステップアウト(床から足を離すとき)の2度発電が行われることになり、1歩で2回の無線通信が送信されることで計測誤差が発生する。そのため、正確に歩行者の通過人数を計測することが困難であった。
そこで本発明は、発電可能なセンサーを用いながらも正確に歩行者の通過人数を計測可能な通行量計測センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本願発明者らは、以下の発明に至った。
【0007】
すなわち本発明の通行量計測センサーは、複数の発電素子が平面上に配列されて床面に敷設される発電部と、前記発電部から生じた電圧を整流する整流部と、前記整流部で整流された電圧に基づいて前記発電部における発電の有無の信号を送信する送信部と、を備え、前記整流部は、倍電圧整流回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の通行量計測センサーが上記構成であることによって、床面に敷設された発電部を歩行者が踏むことで発電されて、送信部から歩行者が通過したことを示す信号が送信される。このとき、発電部から生じた電圧は倍電圧整流回路を介して送信部に伝達されることで、足のステップインとステップアウトの2度の発電があっても、送信部には2度の発電の和の電圧が1度にまとめて印加されるため、送信部からの信号の送信は1度のみとなる。すなわち、歩行者の一歩ごとの情報が送信されるため、正確に歩行者の通過人数が計測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る通行量計測センサーの一例を示す模式的な図である。
【
図2】従来の通行量計測センサーの回路図の一例を示す模式的な図である。
【
図3】実施形態に係る通行量計測センサーの回路図の一例を示す模式的な図である。
【
図4】実施形態に係る発電素子の一例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0011】
図1に示す様に、本発明の通行量計測センサー10は、複数の発電素子50が平面上に配列されて床面に敷設される発電部100と、前記発電部100から生じた電圧を整流する整流部120と、前記整流部120で整流された電圧に基づいて前記発電部100における発電の有無の信号を送信する送信部140と、を備え、前記整流部は、倍電圧整流回路を備える。
【0012】
前記送信部140は、前記整流部120を介して前記発電部100から供給された電圧によって稼働可能な演算装置を備えることが好ましい。
【0013】
図2に示す様に、通行量計測センサー10は、前記発電部100から生じた電圧を蓄える蓄電部110をさらに備えることが好ましい。
【0014】
図4に示す様に、前記発電素子50は、接触帯電によって正負の電荷に帯電する異なる材料からなる帯電フィルム80上に電極70と基材60を順に積層した2種類の部材の帯電フィルム80側を対向させたものであることが好ましい。
【0015】
前記発電素子1つの面積が9cm2以上10000cm2以下であることが好ましい。
【0016】
前記基材60、電極70、帯電フィルム80の少なくともいずれかの表面に、粗さが0.5mm以上の凹凸が形成されていることが好ましい。
【0017】
前記帯電フィルム1つあたりの大きさが、9cm2以上100cm2以下であることが好ましい。
(実施形態1)
以下、各構成要件を、適宜図を参照して詳述する。
<発電部>
【0018】
本発明において発電部100とは、複数の発電素子50が平面上に配列されて床面に敷設されるものである。すなわち、床面に敷設された発電部100を歩行者が踏むことで電力が発生し、この電力を利用して歩行者の歩数が検知可能となる。発電部100は複数の発電素子50を備えるが、発電素子50の種類や形状、個数は特に限定されず、セラミックスを含む圧電素子、エラストマーに帯電材料が積層された摩擦発電素子、発電ゴム等の公知で任意の発電素子50を用いることができる。より好ましくは、摩擦発電素子を用いることが好ましい。摩擦発電素子を用いることで、面積あたりの発電力が高く、より正確に歩行者の通行量を計測することができる。
【0019】
発電素子の配列の形状は限定されず、一列に配列されていても、平面上に縦横ランダムに配列されていても、縦横にマトリックス状(格子状や碁盤目状)やハニカム形状に複数の発電素子が配列されていてもよい。好適には、発電素子が縦横にマトリックス状に配列されていることが好ましく、これにより歩行者が通過する際に、少なくとも複数配列された発電素子のうちのいずれかの発電素子を踏む確率が高くなるため、より確実に歩行者の通行量を計測することができる。
【0020】
また、発電素子はそのままむき出しで配列されていてもよいが、発電素子同士は離間されて、一つの発電素子ごとにプレートやタイル等の公知の床板部材をその表面に載せて配列されていてもよい。1つあたりの発電素子が大きい場合には発電素子間を詰めてそのまま配列し、1つあたりの発電素子が小さい場合にはそれぞれの発電素子に床板部材を載せ、これら床板部材間を詰めて配列することで、隙間無く歩行者の一歩を検知することができる。また、発電素子を配列させて、これらを上から覆う様にゴムやシリコン等の任意の可撓性のシートを載せてもよい。この場合、発電素子がむき出しに配列された場合と同様のものとして、以降の説明では取り扱うものとする。
【0021】
発電素子がむき出しに配列された場合の1つの発電素子の大きさ、又はそれぞれの発電素子に床板部材を載せて配列された場合の1つの床板部材の大きさは限定されないが、9cm2以上10000cm2以下であることが好ましい。1つの発電素子の大きさが9cm2未満であると、多くの発電素子を配列しなければ、歩行者の通行を計測することができなくなり、非常に精密な構造を採る必要が生じ、歩行者の通行に対する強度が担保されないおそれがある。また、1つの発電素子(発電素子に床板部材が載せた場合は床板部材)の大きさが10000cm2以上となると、1つの床板部材を複数の歩行者が同時又はこれに近いタイミングで踏む可能性が高まり、正確に歩行者の数を計測することができないおそれがある。より好ましくは、900cm2以上10000cm2以下であることが好ましい。
【0022】
さらに、発電素子に床板部材を備える場合、少なくとも床板部材1辺の長さが30cm以上100cm以下の範囲であることが好ましい。人の歩幅は簡易的には身長cm×0.45より算出され、子供から大人まで一歩の歩幅は30cm~80cm程度である。すなわち、あらゆる歩行者の一歩を検知するためには少なくとも一辺が30cm以上の発電素子(発電素子に床板部材を載せた場合は当該床板部材の辺の長さ、以下同様)が備えられていることが好ましく、大人のみの歩行者の一歩を検知するためには少なくとも一辺が80cm以上の発電素子が備えられていることが好ましい。一方で発電素子の少なくとも一辺が100cmを超えると、1つの床板部材を複数の歩行者が同時又はこれに近いタイミングで踏む可能性が高まり、正確に歩行者の数を計測することができないおそれがある。
【0023】
また、歩行者が歩行する方向や人数、大人と子供の区別といった詳細な情報を収集する場合には、発電素子を縦横にマトリックス状に配列させることが好ましい。発電素子を縦横にマトリックス状又はハニカム形状に配列することで、1歩目から次の2歩目までも計測可能となり、その歩幅から歩行者の凡その身長が推定可能となる。また、縦横に配列される数が増えるほど、歩行者の通行量だけでなく、歩行者が向かう方向、歩幅に基づく歩行者の凡その身長、歩行者の歩行速度などの情報を推定することが可能となり、また自転車やカート、台車等が通った時のノイズと歩行者の通行量とを区別することが可能となる。
【0024】
また、発電素子そのものの形状や、発電素子に床板部材を載せる場合の床板部材の形状は特に限定されないが、平面視野においてそれぞれの発電素子又は発電素子に載せられた床板部材は略正方形又は略円形であることが好ましい。なお、ここでいう略正方形とは、全ての辺の長さが同一でそれぞれの内角も90度である正方形の他、正方形の四隅の角がR状に欠けたものであっても、それぞれの辺に曲線を組み合わせたものであってもよい。またここでいる略円形とは、真円であっても楕円であっても円の一部に直線を組み合わせたものであってもよい。
また好ましくは、発電素子間の隙間を詰めるようにして配列すると、足の小さい子供や、犬、猫等の動物にも適用できることが可能である。隙間なく並べる形状であれば、形状は特に限定されないが、格子状やハニカム形状を好適に採用することができる。
【0025】
また、発電素子の配列数も限定されないが、発電素子や発電素子に載せられた床板部材が詰められて敷設された状態で、例えば発電素子が平面上に1m2あたり4個以上400個以下であることが好ましい。例えば発電素子に床板部材を載せた場合の1つあたりの当該床板部材の大きさが2500cm2程度であれば1m2あたり最大4個、例えば25cm2程度であれば1m2あたり最大400個となる。また、発電素子に床板部材を載せずに配列する場合は、発電素子の種類によっては1m2あたり400個以上を配列することはできるが、これ以上の分解能を付与しても歩行者の通行量の計測には精度面でも過剰であり、故障や製造不良のリスクも生じることから上記範囲内とすることが好ましい。こうした発電素子の数(密度)は、歩行者の通行量の計測精度を高める場合には小さな発電素子を多く設置し、精度が低くてもよい場合であって構造をシンプルにしたい場合には発電素子を少なく設置することができる。
【0026】
また、発電素子は平面上に配列されることとは別に、複数の発電素子が高さ方向に積層されていてもよい。すなわち、2以上の発電素子が積み重ねられて1つの発電素子の様に構成されていてもよい。この場合、積層された発電素子を電気的に並列に接続することで、より安定して高い発電力を得ることができる。すなわち、後述する送信部を安定して起動することができる。発電素子を積層する場合の発電素子の数は特に限定されないが、例えば2以上10以下とすることが好ましく、歩行者が段差によってつまずく可能性も鑑みると2以上4以下であることが好ましい。送信部の起動電力に応じて適宜設定することができる。
<摩擦発電素子>
【0027】
発電部100の発電素子として摩擦発電素子を利用する場合には、例えば
図4に示す様に、接触帯電によって正負の電荷に帯電する異なる材料からなる帯電フィルム80上に、電極70、基材60を順に積層した2種類の部材の帯電フィルム80を対向させたものを用いることができる。この摩擦発電素子を踏むことで帯電フィルム80同士がそれぞれ正と負とで異なる極性に帯電し、電極から電力が取り出される。なお、この摩擦発電素子において、基材60、電極70、帯電フィルム80の少なくともいずれかに、表面の粗さが0.5mm以上の凹凸が形成されていることが好ましい。ここで表面の粗さとは、JIS B 0601:2001に従った十点平均粗さをいう。基材60、電極70、帯電フィルム80の少なくともいずれかが凹凸形状となっていることで、平坦な形状よりも発電量が増大する。すなわち、平坦な形状のものと同程度のサイズであっても凹凸が形成された形状の方が発電量も増すため、摩擦発電素子を重ねる数も低減することができ、段差によってつまずく可能性を低減することができる。 好ましくは、少なくとも基材60に凹凸形状を備え、より好ましくは基材60、電極70、帯電フィルム80の全ての層に凹凸形状が形成されていることが好ましい。また、帯電フィルム80に凹凸形状が形成されている場合は、対向する2つの帯電フィルム80はそれぞれが異なる凹凸パターン形状(エンボス形状)のものを用いることが好ましい。2つの帯電フィルム80が同じ凹凸形状であると、凹凸がかみ合い接触面積が荷重によって変化しにくいため,発電量が低下するおそれがある。また基材60を構成する材料に特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルム、シリコーンゴム等の可撓性の材料を好適に用いることができる。特に、凹凸状のエンボス形状を成型加工により容易に形成するためにポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いることが好ましい。また、電極70に、後述する金属箔を用いる場合、金属箔に凹凸形状を形成することで、凹凸の強度が増すため好ましい。また、基材の厚さは特に限定されないが、50μm以上10mm以下であることが好ましく、80μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0028】
さらに、摩擦発電素子を構成する帯電フィルムの1つあたりの大きさは、9cm2以上100cm2以下であることが好ましい。摩擦発電素子を構成する帯電フィルムの面積が100cm2よりも大きくなると、帯電フィルムに均一に圧力が加わらないために、電極に誘導される電荷量が平均化されトータルとして少なくなるおそれがあるためである。また、摩擦発電素子を構成する帯電フィルムの1つあたりの大きさが9cm2未満であると、発電に寄与する発電部の面積が小さすぎるために十分な発電量が得られず、多くの摩擦発電素子を重ねる必要が生じ、場合によっては歩行者がつまずくおそれがある。
好適には、発電素子として摩擦発電素子を用いる場合は、摩擦発電素子を構成する帯電フィルムの1つあたりの大きさが9cm2以上100cm2以下であり、且つそれぞれの摩擦発電素子の上に、1辺の長さが30cm以上100cm以下で、面積が900cm2以上10000cm2以下の床板部材を備えることが好ましい。これにより、精度よく且つ外部の電源も不要で、歩行者の通行量の計測を行うことができる。
【0029】
また、電極70は帯電フィルムからの電力を取り出す材料であればよく、アルミニウム、鉄、銅、銀、金などの公知の導電性材料を用いることができる。その形状も特に限定されず、銀ペーストや銅ペーストといった導電性ペーストの他、銅箔又はアルミニウム箔といった金属箔を好適に用いることができる。より好まくは、アルミニウム箔が安価で柔軟性があり好ましい。またその厚さも限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。電極70と帯電フィルム80とは導電性接着剤により積層されていることが好ましい。
【0030】
帯電フィルム80は、それぞれが正に帯電する材料と負に帯電する材料とで異なるものを用いることができる。ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニルからなる群から選択される一種又は二種以上のフィルムを用いることができる。
<整流部>
【0031】
本発明において整流部とは、上述の発電部から生じた電圧を整流し、送信部に整流した電圧を伝達するものである。より具体的には、整流部には倍電圧整流回路を備え、当該倍電圧整流回路の例としては、半波倍電圧整流回路やベネット倍電圧整流回路が挙げられる。
【0032】
一般に発電素子によって発電した電圧を整流する回路には、
図2の従来の通行量計測センサー20で例示されるように、ダイオードを4つ組み合わせたブリッジ整流回路を備える整流部130が用いられるが、ステップインのときの発電と、ステップアウトのときの発電と、で併せて2回の発電が生じたときに、それぞれ1度ずつの計2度の電圧ピークが生じる。これをそのまま歩行者の一歩として検知した場合、1人1歩であるにも関わらず2人又は2歩として計測されているとみなされるおそれがある。そこで、
図1や
図3に示す様に、倍電圧整流回路を備える整流部120によって整流することで、ステップインのときの発電と、ステップアウトのときの発電とで2回の発電でも1度の電圧ピークに処理することができる。すなわち、歩行者の1歩を精度よく検知することができる。より好ましくは、整流部には半波倍電圧整流回路を用いることが好ましい。
また、整流部120には、発電部100からのノイズを低減するためにバイパスコンデンサを備えてもよい。
<送信部>
【0033】
本発明において送信部とは、上述の整流部で整流された電圧に基づいて発電部における発電の有無の信号を送信するものである。すなわち、歩行者の一歩によって生じた電圧を信号に変換するものとも換言される。送信部は、例えばマイコン等の、演算処理装置を好適に用いることができる。この演算処理装置によって発電部から整流部を介して受信した電圧から歩行者の一歩として計測する。計測した情報は、後述する様な表示部に信号を送信してもよいし、有線又は無線による通信によって別の演算処理装置に情報を送信してもよい。また、送信部は1つの演算処理装置により構成されていてもよいが、複数の演算処理装置により構成されていてもよい。例えば1つの発電素子と1つの演算処理装置とが1対となって、これらを複数組み合わせてもよいし、複数の発電素子を1つの演算処理装置にまとめて接続してもよい。使用方法により適宜選択することができる。
【0034】
また、送信部は、無線通信により別の演算処理装置、すなわち受信機に信号を送信可能に構成されていることが好ましい。これにより、液晶等の表示部を本発明の通行量計測センサーと分離することができ、歩行者が表示部等を踏んで破損してしまうことを防ぐことができる。
【0035】
また送信部は前記整流部を介して発電部から供給された電圧を電源として起動される様に構成されていることが好ましい。送信部が発電部とは異なる電源(例えば電池)に接続されて間欠起動又は常時起動しており、発電部から流れてくる電圧を読み取り可能としてもよいが、発電部以外に電源を備えていると、歩行者に踏まれて破損してしまうおそれもある。従って、送信部が発電部とは異なる電源は備えずに、歩行者が発電部を踏むことで発電し、生じた電圧によって送信部を起動する様に構成されていることが好ましい。送信部が発電部とは異なる電源は備えずに、発電部にて生じた電圧信号によって起動可能となっていることで、シンプルな回路となり、電池交換の手間もなく、また電源不要なために容易に設置や回収を行うことができる。
【0036】
送信部が送信する信号の内容には特に限定されないが、例えば複数の発電素子を配列している場合には、通行量計測センサーの個体の識別番号の情報や、配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報や、整流部を介した発電素子からの電圧に関する情報が挙げられる。特に、小さな発電量でも短時間で信号の送信が出来る様に、通行量計測センサーの個体の識別番号の情報と、当該配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報を数値化した信号とすることが好ましい。また通信方式にも特に限定されないが、UDP通信(User Datagram Protocol)によって、通行量計測センサーの個体の識別番号の情報と配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報とをJavaScript Object Notation(JSON)の形式により送信することが、僅かな発電量でも高速で通信できるため好ましい。例えば識別番号の情報として0から255の10進数の正の整数を2進数化した値、カンマ(,)、配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報として0から255の10進数の正の整数を2進数化した値と、をまとめてJSON形式とすると、“0,0”、“0,1”、・・・、“0,255”、“1,0”、“1,1”、…、“1,255”、……“255,255”のいずれの組み合わせでも、3バイトに収まるため、通信時間が短時間で済む。また、配列数を256以上とする場合には、例えばアドレス情報として0~65535の10進数を2進数化した値としても1バイト増えるのみで済む。この他、後述する様な電圧に関連する情報等を組み合わせても、10バイト以下の非常に小さなデータ通信量で済むため、発電素子だけで電源を賄うことができる。
【0037】
また、送信部は、上述の整流部で整流された電圧に基づいて起動して信号を送信する他、電圧の値を読み取ってこの値を信号として送信可能に構成されていてもよい。すなわち、送信部には演算処理装置を備え、この演算処理装置にアナログデジタルコンバーター(ADC)が備わっていることで、整流部で整流された電圧の値を読み取ることができる。この電圧の値を送信部が信号として送信することで、発電部100でどれだけの発電が生じたのかが算出可能となり、この情報から歩行者の体重、すなわち子供であるか大人であるか、といった情報を収集することができる。この場合、演算処理装置を駆動するために発電部100とは別の電源を備えていることが好ましく、例えば公知の乾電池やボタン電池を採用することができる。
【0038】
また、演算処理装置によって処理される信号の種類は特に限定されず、所定時間内の歩行者の通行量(人数)、歩数、歩行者の通行方向、大人と子供を区別した通行量、時間帯別の歩行者の通行量(人数)、歩行者(侵入者)の有無、歩行者の通行量から試算される通路や施設の混雑度合い、等の任意の信号とすることができる。
【0039】
また無線通信とする場合は、800MHz帯(710~960MHz)、2.4GHz帯、5GHz帯の公知の通信手段を用いることができ、より好ましくは低消費電力での通信技術(LPWA)の研究開発及び実用化が盛んである、800MHz帯の通信手段を用いることが好ましい。
<その他の構成>
【0040】
図3に示す様に、通行量計測センサー10は、発電部100から生じた電圧を蓄える蓄電部110をさらに備えることが好ましい。蓄電部は、コンデンサーやキャパシタ等の公知で任意の蓄電機器を用いることができる。特に、発電部100と整流部120との間に、蓄電部110を備えることが好ましい。蓄電部110を備えることで、送信部140の起動に必要な電力を蓄えてから電力を出力することができる。
【0041】
また、通行量計測センサー10は、発電部100を密封して収容する収容部をさらに備えていてもよい。発電部100は湿気によって出力電圧が変動する可能性があるため、大気中の湿気を遮断する目的として収容部に発電部100を収容して密封することが好ましい。大気中の湿気を遮断することができて、且つ発電部100の発電が可能であればその材質や形状は問わないが、収容部は、樹脂フィルム、金属箔及び金属蒸着を備える樹脂フィルムからなる群から選択される一種又は二種以上の材料より構成されていることが好ましい。より好適には、金属箔の少なくとも発電部100に当接する側の面に樹脂層を備える積層体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、アルミニウム箔の両面に樹脂層を備えたアルミラミネートフィルムを用いることが好ましい。アルミニウム箔を備えることで防湿性が高く、両面に樹脂層を備えることで破れにくく、踏んでも容易に変形するために発電部100の発電を妨げず、且つアルミニウム箔の表面に樹脂層を備えることで発電部100とアルミニウムが直接接触してショートするおそれも低減される。
【0042】
また本発明の通行量計測センサーは、歩行者の数を計測する目的のみならず、歩行者の有無を計測する目的にも用いることができる。すなわち、歩行者が少ない場所や、歩行者の通行が望ましくない場所に本発明の通行量計測センサーを設置して、歩行者が通ったときに検知することができる。例えば、屋外の通路や施設内の通路に本発明の通行量計測センサーを設置し、歩行者が少ないという結果が得られれば、その通路を閉鎖したり、もしくは歩行者が増える様に誘導する手立てを打ったりするといった判断材料とすることができる。また、店舗等の施設において従業員専用通路に通行量計測センサーを設置したり、住居において庭や廊下等に本発明の通行量計測センサーを設置したりすることで、歩行者の侵入を検知することができる。こうした用途において、歩行者の人数の計測よりも、歩行者が一人でも検知されればよく、送信部は、歩行者が一人でも検知されれば、アラーム発信機を作動させたり、警備員への通報を行う様に構成されていたりすることが好ましい。
【実施例0043】
(実施例1)
発電素子として、摩擦発電素子を用意した。摩擦発電素子は、エンボス加工を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)を5cm×5cmにカットし、その上に導電性不織布、帯電フィルムの順に接着し、1層の摩擦発電素子を作成した。次いで、それぞれの導電性不織布にリード線を接続した。なお、帯電フィルムにはそれぞれポリアミドフィルム及びポリイミドフィルムを用いた。この摩擦発電素子を4つ作成して重ね合わせ、それぞれの摩擦発電素子に接続されたリード線を並列接続した(4つの摩擦発電素子を積層して電気的に並列に接続したものを以降、「積層摩擦発電素子」という)。この積層摩擦発電素子を6つ用意し、これらを縦30cm×横40cm×厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上の中心付近に、それぞれ1cm離間させて縦2個×横3個のマトリックス状の配列にして配置して両面テープで設置した。これら積層摩擦発電素子から延びるリード線をプラス毎とマイナス毎にそれぞれまとめて接続し、その出力先に、
図1及び
図3の符号120に示す半波倍電圧整流回路を接続し、さらに半波倍電圧整流回路の出力先に、送信部となる928MHzの無線通信ユニット(EnOcean社製PTM430J)を接続した。このとき、無線通信ユニットの電源には積層摩擦発電素子からの出力を利用し、他に電池等の電源は接続しなかった。これにより通行量計測センサーを得た。
【0044】
また無線通信ユニットのレシーバー(EnOcean社製USB400J)を用意し、さらにコンピューターのUSB端子にレシーバーの出力端子を接続した。コンピューターには、レシーバーが無線通信ユニットからの信号を1度受信する度にこの信号の回数をカウントして、歩数に置き換えて表示するプログラムを組み込んだ。さらに性能の評価試験として、人がこの積層摩擦発電素子に足を乗せて踏み込み、再び足を離す動作(1歩の動作)を行って、コンピューターに表示された歩数を確認したところ、1歩と表示された。
【0045】
(実施例2)
エンボス加工を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)の大きさを7cm×7cmとした以外は、実施例1と同様にして通行量計測センサーを作製した。性能の評価試験を行ったところ、1歩と表示された。
【0046】
(実施例3)
エンボス加工を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)の大きさを10cm×10cmとした以外は、実施例1と同様にして通行量計測センサーを作製した。性能の評価試験を行ったところ、1歩と表示された。
【0047】
(実施例4)
実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層摩擦発電素子を6つ配列し、これをアルミニウム箔の両面をポリエチレンテレフタレートでラミネートした市販のアルミラミネートフィルムでくるみ、空気を抜きながらアルミラミネートフィルム端部をヒートシーラーにて密封した。なお、積層摩擦発電素子から延びるリード線は、まとめて外に取り出し、この隙間をシリコンパテによって塞いだ。同一の積層摩擦発電素子から延びるリード線のプラスとマイナスとをペアにして、それぞれ積層摩擦発電素子ごとに個別に半波倍電圧整流回路に接続した。さらに、それぞれの半波倍電圧整流回路の出力先に、送信部となる928MHzの無線通信ユニット(EnOcean社製PTM430J)を、積層摩擦発電素子ごとに個別に接続した。すなわち、6つの積層摩擦発電素子、6つの半波倍電圧整流回路と6つの送信部を、それぞれ積層摩擦発電素子1つに対して半波倍電圧整流回路1つ、送信部1つを個別に接続した。なお、このとき、無線通信ユニットの電源には摩擦発電素子からの出力を利用し、他に電池等の電源は接続しなかった。
【0048】
また、実施例1と同様にして無線通信ユニットのレシーバー(EnOcean社製USB400J)を用意し、コンピューターには無線通信ユニットからの信号を1度受信する度にこの信号の回数をカウントして歩数に置き換えて表示する他、6つの送信部それぞれに固有値として割り当てられているモジュールIDを表示するプログラムを組み込んだ。さらに性能の評価試験として、人がこの積層摩擦発電素子に足を乗せて踏み込み、再び足を離す動作(1歩の動作)を行って、コンピューターに表示された歩数を確認したところ、1歩と表示されると共に、足を乗せた箇所の積層摩擦発電素子に接続された送信部のモジュールIDも表示された。これにより、どの部分を踏んだかを特定することができた。
【0049】
(実施例5)
摩擦発電素子は、PETフィルム(厚さ100μm)にアルミニウム箔(厚さ30μm)、帯電フィルムを積層させ、エンボス加工をし、これを5cm×5cmにカットし、1層の摩擦発電素子を作成した。次いで、それぞれのアルミニウム箔にリード線を接続した。なお、帯電フィルムにはそれぞれポリアミドフィルム及びポリイミドフィルムを用いた。この摩擦発電素子を4つ作成して重ね合わせ、それぞれの摩擦発電素子に接続されたリード線を並列接続し積層摩擦発電素子を得た。この積層摩擦発電素子を、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム上に6つ配列し、これをアルミニウム箔の両面をポリエチレンテレフタレートでラミネートした市販のアルミラミネートフィルムでくるみ、空気を抜きながらアルミラミネートフィルム端部をヒートシーラーにて密封した。なお、積層摩擦発電素子から延びるリード線は、まとめて外に取り出し、この隙間をシリコンパテによって塞いだ。同一の積層摩擦発電素子から延びるリード線のプラスとマイナスとをペアにして、それぞれ積層摩擦発電素子ごとに個別に半波倍電圧整流回路に接続した。さらに、それぞれの半波倍電圧整流回路の出力先に、送信部となる928MHzの無線通信ユニット(EnOcean社製PTM430J)を、積層摩擦発電素子ごとに個別に接続した。すなわち、6つの積層摩擦発電素子、6つの半波倍電圧整流回路と6つの送信部を、それぞれ積層摩擦発電素子1つに対して半波倍電圧整流回路1つ、送信部1つを個別に接続した。なお、このとき、無線通信ユニットの電源には摩擦発電素子からの出力を利用し、他に電池等の電源は接続しなかった。
【0050】
また、実施例1と同様にして無線通信ユニットのレシーバー(EnOcean社製USB400J)を用意し、コンピューターには無線通信ユニットからの信号を1度受信する度にこの信号の回数をカウントして歩数に置き換えて表示する他、6つの送信部それぞれに固有値として割り当てられているモジュールIDを表示するプログラムを組み込んだ。さらに性能の評価試験として、人がこの積層摩擦発電素子に足を乗せて踏み込み、再び足を離す動作(1歩の動作)を行って、コンピューターに表示された歩数を確認したところ、1歩と表示されると共に、足を乗せた箇所の積層摩擦発電素子に接続された送信部のモジュールIDも表示された。これにより、どの部分を踏んだかを特定することができた。
【0051】
(比較例1)
整流部の半波倍電圧整流回路を
図2に示すブリッジ整流回路に変更した以外は、実施例1と同様にして通行量計測センサーを作製し。性能の評価試験を行ったところ、2歩と表示された。
【0052】
以上の結果を表1に示す。コンピューターに表示された歩数を確認して、1歩としてカウントされたものを〇、カウントされずに0歩の表示のまま又は2歩以上としてカウントされたものを×として評価した。また、踏んだ位置の特定ができたものを〇、できなかったものを×として評価した。
【0053】
【0054】
以上の結果に示される様に、本発明の通行量計測センサーは、発電可能なセンサーを用いながらも正確に歩行者の通過人数を計測可能である。特に、発電可能なセンサー自体が電源となり、電池等の別の電源を必ずとも必要としないため容易に設置や撤去を行うことができる。
(その他の実施形態)
【0055】
上述の実施形態は本発明の例示であって、本発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本発明に含まれる。