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特開2023-101156振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101156
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230712BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001573
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正
(72)【発明者】
【氏名】西村 英高
(72)【発明者】
【氏名】田中 彬史
(72)【発明者】
【氏名】竹下 友祥
(72)【発明者】
【氏名】小川 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 領士
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。
【解決手段】振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、回転センサから回転信号が出力されると、回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を限界値に置き換え、回転信号のうち限界値未満の部分を回転信号のままとするカット回転信号を生成するカット回転信号生成部と、カット回転信号を、限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するオフセット回転信号生成部と、オフセット回転信号のうち回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出する第1フィルタと、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転センサから前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号を生成するカット回転信号生成部と、
前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するオフセット回転信号生成部と、
前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出する第1フィルタと、を備える、
振動監視装置。
【請求項2】
前記回転軸の回転中にリアルタイムに前記カット回転信号の大きさの平均値を算出する平均値算出部を、さらに備え、
前記オフセット回転信号生成部は、前記カット回転信号を、前記限界値から前記平均値を差し引いた分だけ前記限界値に近づくようにオフセットした前記オフセット回転信号を生成する、
請求項1に記載の振動監視装置。
【請求項3】
前記限界値及び前記回転信号のそれぞれは電圧値であり、
前記限界値は、前記回転信号の最大値より小さい、
請求項1又は2に記載の振動監視装置。
【請求項4】
前記第1フィルタによって抽出された前記振動信号のうち予め設定された遮断周波数よりも大きい信号を抽出する第2フィルタをさらに備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項5】
前記回転軸の第1回転数における前記振動信号を記憶する記憶部と、
前記第1回転数より大きい第2回転数における前記振動信号から前記記憶部に記憶されている前記第1回転数における前記振動信号を差し引く振動測定部と、をさらに備え、
前記第1回転数は30rpm以下である、
請求項1から4の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項6】
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力する出力装置をさらに備え、
前記第1フィルタは、前記フィルタ指令値に応じて前記通過帯域を設定する、
請求項1から5の何れか一項に記載する振動監視装置。
【請求項7】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転信号のパルスが発生するタイミングを検知する検知部と、
前記検知部が検知したタイミングの直前の前記回転信号の1つの波形を、前記直前の回転信号のパルスを含む前記1つの波形の前半部分を前記1つの波形の後半部分の逆位相に置き換えることで前記回転軸の振動波形として復元する振動波形復元部と、を備える、
振動監視装置。
【請求項8】
前記回転軸の外周面には、1つの溝が形成され、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面までの距離を前記回転信号として出力する、
請求項1から7の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の振動監視装置と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービンと、を備える、
過給機。
【請求項10】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号を生成するステップと、
前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するステップと、
前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出するステップと、を備える、
振動監視方法。
【請求項11】
前記回転軸の回転中にリアルタイムに前記カット回転信号の大きさの平均値を算出するステップをさらに備え、
前記オフセット回転信号を生成するステップでは、前記限界値から前記平均値を差し引いた分だけ前記カット回転信号を前記限界値に近づくようにオフセットする、
請求項10に記載の振動監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動監視装置、過給機、及び振動監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非接触型変位計によって検出される信号を回転軸の回転パルス信号と回転軸の軸振動波形信号とに分離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-253493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、変位計から検出された回転軸の回転信号の生波形データを時系列データとして保存し、この保存された時系列データを時系列データから算出した閾値と比較することにより回転パルス信号と軸振動波形信号とに分離している。このため、回転軸の振動をリアルタイムに評価できておらず、回転軸の回転数の変化が大きい場合には回転軸の振動の評価が遅れる虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる振動監視装置、及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、前記回転センサから前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号を生成するカット回転信号生成部と、前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するオフセット回転信号生成部と、前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出する第1フィルタと、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号を生成するステップと、
前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するステップと、
前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の振動監視装置及び振動監視方法によれば、回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る振動監視装置を適用した過給機の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るマーカ部の構成を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る回転センサが出力する回転信号の波形図である。
図4】第1実施形態に係る処理装置の概略的な機能ブロック図である。
図5】第1実施形態に係るカット回転信号の波形図である。
図6】第1実施形態に係るオフセット回転信号の波形図である。
図7】第1実施形態に係る出力装置の概略的な機能ブロック図である。
図8】第1実施形態に係る第1フィルタの特性表を示す図である。
図9】第1実施形態に係る振動信号の波形図である。
図10】第2実施形態に係る処理装置の概略的な機能ブロック図である。
図11】第2実施形態に係る平均値を説明するための図である。
図12】第3実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図13】第4実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図14】第4実施形態に係る後処理装置の概略的な機能ブロック図である。
図15】第5実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図16】第5実施形態に係る振動波形復元部の動作を説明するための図である。
図17】本開示に係る振動監視方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による振動監視装置、過給機、及び振動監視方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<第1実施形態>
(過給機の構成)
図1は、第1実施形態に係る振動監視装置1を適用した過給機100の構成を概略的に示す図である。過給機100は、特に限定されないが、例えば、船舶に搭載され、エンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。本開示では、この排気ターボ過給機を例にして説明する。
【0012】
図1に例示するように、過給機100は、回転軸102と、圧縮機104と、タービン106と、第1実施形態に係る振動監視装置1と、を備える。回転軸102の軸線O方向における一端部(図1において左端部)には、圧縮機104が設けられている。回転軸102の軸線O方向における他端部(図1において右端部)には、タービン106が設けられている。回転軸102は、圧縮機104とタービン106とを連結している。
【0013】
圧縮機104は、吸気を圧縮して不図示のエンジンに供給する。タービン106は、エンジンから排出された排ガスがタービン106を通過する際に、排ガスのエネルギをタービン106の回転エネルギに変換する。そして、回転軸102は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。圧縮機104は、回転軸102が回転することで駆動する。
【0014】
第1実施形態では、図1に例示するように、回転軸102は、後述する回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるマーカ部108を含む。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間に設けられている。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間のうちタービン106側に設けられている。幾つかの実施形態では、マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104より回転軸102の一端側に設けられる。
【0015】
マーカ部108の構成例について説明する。図2は、第1実施形態に係るマーカ部108の構成を概略的に示す図である。図2に例示する形態では、回転軸102は、内側回転体110と、外側回転体112と、を含む。回転軸102の内側回転体110は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。外側回転体112は、内側回転体110が嵌め込まれる孔114が形成されている。言い換えると、外側回転体112は、内側回転体110の外周面を覆うように、内側回転体110に取り付けられている。外側回転体112は、孔114に嵌め込まれている内側回転体110が回転するとともに回転する。外側回転体112は、外周面116に形成される溝118を含む。溝118が非形成であるとき、外側回転体112の外周面116は円形状を有している。溝118は、この円形状の外周面116の一部117から軸線Oに向かって切り欠くことで形成される。図2に例示する形態では、外側回転体112は1つの溝118を含んでいる。このような外側回転体112がマーカ部108に相当する。幾つかの実施形態では、外側回転体112は複数の溝118を含む。幾つかの実施形態では、外側回転体112は2つの溝118を含み、一方の溝118は、軸線Oを挟んで他方の溝118とは反対側に位置している。外側回転体112は、軸線Oを中心として左右対称となるように、2つの溝118が形成されている。
【0016】
尚、マーカ部108は、回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるのであれば、図2に例示する形態に限定されない。例えば、マーカ部108(外側回転体112)は、溝118に代わり、外周面116の一部117より径方向外側に向かって突出する突出部を含んでもよい。
【0017】
(第1実施形態に係る振動監視装置の構成)
図1に戻り、振動監視装置1の構成について説明する。図1に例示するように、振動監視装置1は、回転センサ2と、カット回転信号生成部4と、オフセット回転信号生成部6と、第1フィルタ8と、を含む。
【0018】
回転センサ2は、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。回転センサ2は、図2に示すように、回転軸102の外周面116に渦電流を発生させることで回転軸102の外周面116までの距離dを回転信号Aとして検出する渦電流式変位センサである。より具体的には、この回転センサ2は、高周波磁束を発生するコイルにより構成され、該コイルから発生した高周波磁束によって、ターゲット(測定対象)である回転軸102の外周面116に発生する渦電流の変化をコイルのインピーダンスの変化として検出する。即ち、回転センサ2は、回転軸102の回転に伴う距離dの変化をコイルのインピーダンスの変化として検出するもので、回転軸102の外周面116が最も回転センサ2に接近する際に最大の出力が得られる構成となっている。
【0019】
尚、回転センサ2は、渦電流式変位センサに限定されない。幾つかの実施形態では、回転センサ2は、レーザー光を照射するレーザーヘッドを備え、該レーザーヘッドから回転軸102の外周面116にレーザー光を照射して、このレーザー光の反射光によりレーザーヘッドから回転軸102の外周面116までの距離を検出するレーザー式変位センサである。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る回転センサ2が出力する回転信号Aの波形図である。第1実施形態では、回転センサ2は回転信号Aを電圧値として出力している。図3に示すように、回転信号Aは、上述した回転軸102のマーカ部108(外側回転体112)が溝118を含んでいるので、回転軸102の回転に伴って形成されるパルス波形を有する。即ち、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向する際に変位が大きくなる。一方で、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向していない際には、変位は小さい。第1実施形態では、マーカ部108は1つの溝118を有しているので、回転軸102の1回転中に1つのパルス(波形の変位が大きい部分120)が出現している。
【0021】
第1実施形態では、図1に例示するように、振動監視装置1は、カット回転信号生成部4とオフセット回転信号生成部6とを有する処理装置3と、出力装置7と、を含んでいる。
【0022】
処理装置3及び出力装置7のそれぞれは、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。処理装置3及び出力装置7のそれぞれは、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、処理装置3及び出力装置7のそれぞれが備える各機能部を実現する。幾つかの実施形態では、処理装置3及び出力装置7のうちの少なくとも一方は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。尚、第1実施形態では、カット回転信号生成部4及びオフセット回転信号生成部6のそれぞれは、共通の処理装置3に設けられているが、本開示はこの構成に限定されない。幾つかの実施形態では、カット回転信号生成部4及びオフセット回転信号生成部6のそれぞれは、互いに別の処理装置3に設けられる。
【0023】
処理装置3及び出力装置7のそれぞれは、回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2から出力される回転信号Aを取得できるようになっている。
【0024】
処理装置3が備えるカット回転信号生成部4及びオフセット回転信号生成部6のそれぞれについて説明する。図4は、第1実施形態に係る処理装置3の概略的な機能ブロック図である。図5は、第1実施形態に係るカット回転信号Bの波形図である。図6は、第1実施形態に係るオフセット回転信号Cの波形図である。
【0025】
カット回転信号生成部4は、回転センサ2から回転信号Aが出力されると、回転信号Aのうち予め設定された限界値Vu以上の部分を限界値Vu(上限値)に置き換え、回転信号Aのうち限界値Vu未満の部分を回転信号Aのままとするカット回転信号Bを生成する。
【0026】
第1実施形態では、図4に例示するように、カット回転信号生成部4は、回転センサ2から出力された回転信号Aを受信する。そして、図5に例示するように、カット回転信号生成部4は、受信した回転信号Aのうち限界値Vu以上の部分(図5における点線部分)を限界値Vuに置き換える。さらに、カット回転信号生成部4は、受信した回転信号Aのうち限界値Vu未満の部分を回転信号Aのままとすることで、カット回転信号Bを生成する。
【0027】
限界値Vuについて説明する。限界値Vuは回転信号Aの最大値より小さい値である。限界値Vuは、回転軸102とこの回転軸102を軸受けする軸受との間の隙間の大きさ、より具体的には外側回転体112の外周面116と軸受の軸受面との間の隙間の大きさ、を電圧値に換算したものであって、例えば、10Vである。このような限界値Vuを設定しておくことで、回転軸2が隙間以上の大きさで振動し軸受と接触している場合において、カット回転信号Bから回転軸102の軸振動成分がカットされることを防止できる。
【0028】
幾つかの実施形態では、カット回転信号生成部4は、回転センサ2から回転信号Aが出力されると、回転信号Aのうち予め設定された上限値以上の部分を上限値に置き換え、且つ、回転信号Aのうち予め設定された下限値以下の部分を下限値に置き換える。そして、カット回転信号生成部4は、回転信号Aのうち上限値未満、且つ下限値より大きい部分を回転信号Aのままとするカット回転信号Bを生成する。
【0029】
オフセット回転信号生成部6は、カット回転信号Bを、限界値Vuに近づくようにオフセットしたオフセット回転信号Cを生成する。
【0030】
第1実施形態では、図4に例示するように、オフセット回転信号生成部6は、カット回転信号生成部4から出力されたカット回転信号Bを受信する。そして、図6に例示するように、オフセット回転信号生成部6は、受信したカット回転信号Bを予め設定されたオフセット量の分だけ限界値Vuに近づくようにオフセットする。オフセット量は、予め決められている固定値であってもよいし、所定の方法によって算出される算出値であってもよい。さらに、オフセット回転信号生成部6は、カット回転信号Bのオフセットにより、オフセット後のカット回転信号Bのうち限界値Vu以上の部分を限界値Vuに置き換えることで、オフセット回転信号Cを生成する。
【0031】
出力装置7について説明する。出力装置7は、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Dに対応するフィルタ指令値Eを出力する。図7は、第1実施形態に係る出力装置7の概略的な機能ブロック図である。図7に例示するように、出力装置7は、カウンタ部122と、表示部124と、フィルタ指令値出力部126と、を含む。
【0032】
カウンタ部122は、回転センサ2から出力された回転信号Aを受信する。そして、カウンタ部122は、単位時間当たりにおける回転信号Aに含まれるパルスの回数をカウントし、回転軸102の回転数Dを算出する。表示部124は、カウンタ部122が算出した回転軸102の回転数Dを、モニタのような表示装置に表示させる。尚、表示装置は、出力装置7に含まれてもよいし、出力装置7とは別体に設けられてもよい。
【0033】
フィルタ指令値出力部126は、カウンタ部122が算出した回転軸102の回転数Dに対応するフィルタ指令値Eを出力する。第1実施形態では、フィルタ指令値Eは、回転軸102の回転数Dを予め設定されている変換方法で変換した電圧値である。この変換方法は、後述する第1フィルタ8の特性に基づいて設定される。第1実施形態では、回転軸102の回転数Dが大きくなると、フィルタ指令値E(電圧値)も大きくなる。幾つかの実施形態では、回転軸102の回転数Dとフィルタ指令値Eとは互いに比例する。幾つかの実施形態では、フィルタ指令値Eは、回転軸102の回転数Dを予め設定されている変換方法で変換した電圧値である。
【0034】
第1フィルタ8は、オフセット回転信号Cのうち回転軸102の回転数Dに基づいて設定される通過帯域の信号を回転軸102の振動情報を取得可能な振動信号Fとして抽出する。
【0035】
第1実施形態では、図1に例示するように、第1フィルタ8は、処理装置3及び出力装置7のそれぞれと電気的に接続されており、処理装置3から出力されるオフセット回転信号Cと出力装置7から出力されるフィルタ指令値Eとのそれぞれを取得できるようになっている。そして、第1フィルタ8は、オフセット回転信号Cとフィルタ指令値Eとが入力されることで、振動信号Fを出力(抽出)する。この振動信号Fは、回転軸102の振動情報を取得可能な信号である。振動情報は、例えば、振動数、振動の大きさ、または振動の速度などである。
【0036】
第1フィルタ8は、フィルタ指令値E(電圧値)に応じて第1遮断周波数P1が設定されるように構成されている。第1フィルタ8は、処理装置3が出力したオフセット回転信号Cのうち、第1遮断周波数P1よりも小さいオフセット回転信号Cを通過させ、第1遮断周波数P1以上のオフセット回転信号Cを遮断する。つまり第1フィルタ8は、ローパスフィルタである。第1フィルタ8は、この第1遮断周波数P1よりも小さいオフセット回転信号Cを振動信号Fとして抽出する。このように、第1フィルタ8における信号の通過帯域(第1遮断周波数P1よりも小さい周波数帯)は、フィルタ指令値Eに応じて設定される。第1フィルタ8は、オフセット回転信号Cからフィルタ指令値Eに応じて設定される通過帯域の信号を振動信号Fとして抽出する。
【0037】
ここで、第1遮断周波数P1の設定について説明する。図8は、第1実施形態に係る第1フィルタ8の特性表を示す図である。図8において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図8において、電圧値(フィルタ指令値E)が0.01Vである場合の第1フィルタ8の特性をV1、電圧値が0.1Vである場合の第1フィルタ8の特性をV2、電圧値が1Vである場合の第1フィルタ8の特性をV3、電圧値が10Vである場合の第1フィルタ8の特性をV4で示している。
【0038】
デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、第1フィルタ8が抽出する振動信号Fは減衰している。図8に示すように、各電圧値(V1~V4)において、周波数が大きくなるほどデシベル値が減少しており、振動信号Fの減衰率が大きくなっている。より具体的には、第1フィルタ8に入力される電圧値が0.1Vである場合(図8におけるV2)、第1フィルタ8に入力されるオフセット回転信号Cのうち、1kHz以上のオフセット回転信号Cを遮断することで振動信号Fを抽出する。第1実施形態では、第1フィルタ8は、デシベル値が0となるように第1遮断周波数P1を設定する。例えば、第1フィルタ8は、電圧値が0.1Vである場合、第1遮断周波数を1kHzに設定する。
【0039】
図9は、第1実施形態に係る振動信号Fの波形図である。図9に示すように、オフセット回転信号Cから第1遮断周波数P1よりも小さいオフセット回転信号C(振動信号F)を抽出すると、回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号Zの波形と類似する。
【0040】
(第1実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
第1実施形態によれば、回転センサ2から回転信号Aが出力されると、オフセット回転信号Cが生成され、このオフセット回転信号Cから振動信号Fがリアルタイムに抽出される。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号Bは、回転信号Aのうち限界値Vu以上の部分が限界値Vuに置き換えられている。このため、第1フィルタ8による振動信号Fの抽出において、回転信号Aのパルスの影響を抑制することができる。
【0041】
第1実施形態によれば、限界値Vuは回転信号Aの最大値より小さいので、回転信号Aのうち限界値Vu以上の部分を限界値Vuに置き換えたカット回転信号Bを生成するのが容易となり、回転信号Aのパルスの影響を抑制する効果を高めることができる。
【0042】
第1実施形態によれば、第1フィルタ8の通過帯域を回転軸102の回転数Dに応じて適切に設定することにより、回転軸102の回転に同期した回転信号Aから回転軸102の振動の評価に適した通過帯域の振動信号Fを抽出することができる(図9参照)。
【0043】
第1実施形態によれば、過給機100の回転軸102の回転信号Aから過給機100の回転軸102の振動をリアルタイムに評価可能な過給機100を提供することができる。第1実施形態によれば、回転軸102の外側回転体112の外周面116に1つの溝118が形成されている回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。
【0044】
尚、第1実施形態では、第1フィルタ8の通過帯域はフィルタ指令値Eに応じて設定されていたが、第1フィルタ8の通過帯域が回転軸102の回転数Dに基づいて設定されるのであれば、本開示はこの形態に限定するものではない。
【0045】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第2実施形態は、処理装置3が平均値算出部10をさらに備えている点で第1実施形態とは異なるが、それ以外の構成は第1実施形態で説明した構成と同じである。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0046】
(第2実施形態に係る振動監視装置の構成)
図10は、第2実施形態に係る処理装置3の概略的な機能ブロック図である。図10に例示するように、処理装置3は平均値算出部10をさらに備える。
【0047】
平均値算出部10は、回転軸102の回転中にリアルタイムにカット回転信号Bの大きさの平均値Gを算出する。第2実施形態では、図10に例示するように、カット回転信号生成部4から出力されるカット回転信号Bを受信する。そして、図11に例示するように、平均値算出部10は、移動平均法によって、特定の区間におけるカット回転信号Bの大きさの平均値Gを算出する。特定の区間は、例えば、パルス(図11において、点線で示すカット回転信号Bの波形の変位が大きい部分120)が出現したタイミングt1とこのパルスの1つ前のパルスが出現したタイミングt2との間の時間である。平均値算出部10は、タイミングt1において、タイミングt2からタイミングt1におけるカット回転信号Bの大きさの平均値Gを算出する。尚、図11に例示する形態では、回転軸102の回転数の変化が無い、もしくは非常に小さいため、平均値Gは一定の値となっている。尚、平均値算出部10による平均値Gの算出方法は、移動平均法に限定されない。
【0048】
オフセット回転信号生成部6は、カット回転信号生成部4から受信したカット回転信号Bを、限界値Vuから平均値Gを差し引いた分だけ限界値Vuに近づくようにオフセットしたオフセット回転信号Cを生成する。つまり、第2実施形態では、オフセット回転信号生成部6は、回転軸102の回転数の変化に対応するように、カット回転信号Bをオフセットするオフセット量を算出している。
【0049】
(第2実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
第2実施形態によれば、カット回転信号Bをオフセットする大きさ(オフセット量)は、回転軸102の回転中にリアルタイムに算出されるカット回転信号Bの平均値Gに対応しているので、回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号Bをオフセットする大きさが固定値である場合と比較して、より正確に回転軸102の振動を評価することができる。
【0050】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第3実施形態は、第2フィルタ12をさらに備えている点で第2実施形態とは異なるが、それ以外の構成は第2実施形態で説明した構成と同じである。第3実施形態において、第2実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。幾つかの実施形態では、振動監視装置1は、第1実施形態に係る振動監視装置1に第2フィルタ12を付加したものである。
【0051】
(第3実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
図12は、第3実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図12に例示するように、振動監視装置1は、第2フィルタ12をさらに備える。
【0052】
図12に例示する形態では、第2フィルタ12は、第1フィルタ8と電気的に接続されており、第1フィルタ8から出力(抽出)された振動信号Fが入力される。第2フィルタ12は、振動信号Fが入力されることで、振動信号Fのうち予め設定された第2遮断周波数P2よりも大きい振動信号F(以下、この振動信号Fを「整形済の振動信号F1」とする)を抽出する。つまり、第2フィルタ12はハイパスフィルタである。第2遮断周波数P2は、第1遮断周波数P1よりも小さい。第2遮断周波数P2は、固定値であってもよい。第2遮断周波数P2は、10Hz未満である。
【0053】
(第3実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
振動信号Fのうち第2遮断周波数P2より小さい振動信号Fには、回転軸102の振動情報以外の情報がふくまれていることがある。特に、第2遮断周波数P2を10Hz未満とすることで、回転軸102の回転同期振動の影響、他機器における外乱の影響を除去できる。第3実施形態によれば、第2フィルタ12は、振動信号Fのうち第2遮断周波数P2よりも大きい信号を整形済の振動信号F1として抽出するので、振動監視装置1の監視精度を高めることができる。
【0054】
<第4実施形態>
本開示の第4実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第4実施形態は、記憶部14、及び振動測定部16をさらに備えている点で第3実施形態とは異なるが、それ以外の構成は第3実施形態で説明した構成と同じである。第4実施形態において、第3実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。幾つかの実施形態では、振動監視装置1は、第1実施形態に係る振動監視装置1、又は第2実施形態に係る振動監視装置1に記憶部14及び振動測定部16を付加したものである。
【0055】
図13は、第4実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図13に例示するように、振動監視装置1は、記憶部14と振動測定部16とを有する後処理装置15を含んでいる。後処理装置15は、第2フィルタ12と電気的に接続されており、第2フィルタ12から出力される整形済の振動信号F1を取得できるようになっている。
【0056】
このような後処理装置15は、上述した処理装置3及び出力装置7と同様に、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。後処理装置15は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、後処理装置15が備える各機能部(記憶部14、及び振動測定部16)を実現する。幾つかの実施形態では、後処理装置15は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。尚、第4実施形態では、後処理装置15は、処理装置3及び出力装置7とは別に設けられているが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、処理装置3が記憶部14と振動測定部16とを有する。
【0057】
図14は、第4実施形態に係る後処理装置15の概略的な機能ブロック図である。記憶部14は、回転軸102の第1回転数における整形済の第1振動信号F11(F1)を記憶する。第1回転数は30rpm以下である。振動測定部16は、第2フィルタ12から第1回転数より大きい第2回転数における第2振動信号F12(F1)を受信すると、記憶部14から第1振動信号F11を取得する。そして、振動測定部16は、第2振動信号F12から整形済の第1振動信号F11を差し引く。尚、第4実施形態では、記憶部14は整形済の第1振動信号F11を記憶していたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、記憶部14は第2フィルタ12による整形前の振動信号Fを記憶する。
【0058】
(第4実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
回転軸102が30rpm以下で回転していると、この回転によって発生する振動は非常に小さい。このため、回転軸が30rpm以下で回転している場合に抽出される整形済の第1振動信号F11は、回転軸102の振動情報が含まれない波形を形成するとみなすことができる。つまりは、第1振動信号F1の波形は、主に回転軸102の外周形状によって形成されている。第4実施形態によれば、第2回転数における第2振動信号F12から第1回転数における整形済の振動信号F11を差し引くことで、回転軸102の振動が主として形成する波形の振動信号F2を抽出(取得)することができる。
【0059】
<第5実施形態>
(第5実施形態に係る振動監視装置の構成)
本開示の第5実施形態に係る振動監視装置50について説明する。図15は、第5実施形態に係る振動監視装置50の構成を概略的に示す図である。図16は、振動波形復元部56の動作を説明するための図である。図15に例示するように、振動監視装置50は、回転センサ52と、検知部54と、振動波形復元部56と、を備える。第5実施形態に係る回転センサ52は、第1実施形態で説明した回転センサ2と同じ構成であるため、その説明は省略する。
【0060】
第5実施形態では、図15に例示するように、振動監視装置50は、検知部54と振動波形復元部56とを含む復元装置51を備える。復元装置51は、回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2から出力される回転信号Aを取得できるようになっている。このような復元装置51は、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。復元装置51は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、復元装置51が備える各機能部(検知部54及び振動波形復元部56)を実現する。幾つかの実施形態では、復元装置51は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。
【0061】
検知部54は、回転信号Aのパルスが発生するタイミング(以下、パルス発生タイミングt3とする)を検知する。検知部54は、回転センサ52から出力される回転信号Aを連続的に受信している。パルス発生タイミングt3は、回転信号Aの波形の変位が大きくなった(電圧値の変化量が所定量を超えた)タイミングである。
【0062】
振動波形復元部56は、図16の(a)に示すように、回転センサ52から出力される回転信号Aを連続的に受信している。そして、図16の(b)に示すように、振動波形復元部56は、検知部54がパルス発生タイミングt3を検知すると、パルス発生タイミングt3の直前の回転信号Aの1つの波形X1を取得する。そして、振動波形復元部56は、直前の回転信号Aのパルスを含む1つの波形X1の前半部分X11を1つの波形X1の後半部分X12の逆位相に置き換えることで回転軸102の振動波形として復元する。具体的には、振動波形復元部56は、図16の(c)に示すように、波形X1の前半部分X11を削除する。そして、図16の(d)に示すように、波形X1の後半部分X12の前端58に、波形X1の後半部分X12の逆位相である逆位相波形X13の後端60を接続させる。振動波形復元部56は、上述した図16の(a)~(d)の動作を、検知部54がパルス発生タイミングt3を検知する度に実施する。
【0063】
(第5実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
第5実施形態によれば、検知部54によって回転信号Aのパルスが検知されると、振動波形復元部56によって回転軸102の振動波形が復元される。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。
【0064】
(振動監視方法)
図17は、本開示に係る振動監視方法のフローチャートである。図17に示すように、振動監視方法は、回転信号出力ステップS2と、カット回転信号生成ステップS4と、オフセット回転信号生成ステップS6と、抽出ステップS8と、を備える。
【0065】
回転信号出力ステップS2では、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。カット回転信号生成ステップS4では、回転信号Aが出力されると、回転信号Aのうち予め設定された限界値Vu以上の部分を限界値Vuに置き換え、回転信号Aのうち限界値Vu未満の部分を回転信号Aのままとするカット回転信号Bを生成する。オフセット回転信号生成ステップS6では、カット回転信号Bを、限界値Vuに近づくようにオフセットしたオフセット回転信号Cを生成する。抽出ステップS8では、オフセット回転信号Cのうち回転軸102の回転数Dに基づいて設定される通過帯域の信号を回転軸102の振動情報を取得可能な振動信号Fとして抽出する。
【0066】
図17に例示する形態では、振動監視方法は、平均値算出ステップS10をさらに備える。平均値算出ステップS10では、回転軸102の回転中にリアルタイムにカット回転信号Bの大きさの平均値Gを算出する。そして、上述したオフセット回転信号生成ステップS6では、限界値Vuから平均値Gを差し引いた分だけカット回転信号Bを限界値Vuに近づくようにオフセットしたオフセット回転信号Cを生成する。
【0067】
図17に例示する振動監視方法によれば、回転信号Aが出力されると、オフセット回転信号Cが生成され、このオフセット回転信号Cから振動信号Fがリアルタイムに抽出される。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号Bは、回転信号Aのうち限界値Vu以上の部分が限界値Vuに置き換えられている。このため、抽出ステップS8における回転信号Aのパルスの影響を抑制することができる。
【0068】
図17に例示する振動監視方法によれば、カット回転信号Bをオフセットする大きさは、回転軸102の回転中にリアルタイムに算出されるカット回転信号Bの平均値Gに対応しているので、回転軸102の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号Bをオフセットする大きさが固定値である場合と比較して、より正確に回転軸102の振動を評価することができる。
【0069】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0070】
[1]本開示に係る振動監視装置(1)は、
回転軸(102)の回転に同期した回転信号(A)を出力する回転センサ(2)と、
前記回転センサから前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値(Vu)以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号(B)を生成するカット回転信号生成部(4)と、
前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号(C)を生成するオフセット回転信号生成部(6)と、
前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数(C)に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号(F)として抽出する第1フィルタ(8)と、を備える。
【0071】
上記[1]に記載の構成によれば、回転センサから回転信号が出力されると、オフセット回転信号が生成され、このオフセット回転信号から振動信号が抽出される。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号は、回転信号のうち限界値以上の部分が限界値に置き換えられている。このため、第1フィルタによる振動信号の抽出における回転信号のパルスの影響を抑制することができる。
【0072】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記回転軸の回転中にリアルタイムに前記カット回転信号の大きさの平均値(G)を算出する平均値算出部(10)を、さらに備え、
前記オフセット回転信号生成部は、前記カット回転信号を、前記限界値から前記平均値を差し引いた分だけ前記限界値に近づくようにオフセットした前記オフセット回転信号を生成する。
【0073】
上記[2]に記載の構成によれば、カット回転信号をオフセットする大きさは回転軸の回転中にリアルタイムに算出されるカット回転信号の平均値に対応しているので、回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号をオフセットする大きさが固定値である場合と比較して、より正確に回転軸の振動を評価することができる。
【0074】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記限界値及び前記回転信号のそれぞれは電圧値であり、
前記限界値は、前記回転信号の最大値より小さい。
【0075】
上記[3]に記載の構成によれば、回転信号のうち限界値以上の部分が限界値に置き換えられたカット回転信号を生成するのが容易となり、回転信号のパルスの影響を抑制する効果を高めることができる。
【0076】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1フィルタによって抽出された前記振動信号のうち予め設定された遮断周波数(P2)よりも大きい信号を抽出する第2フィルタ(12)をさらに備える。
【0077】
振動信号のうち遮断周波数より小さい信号には、回転軸の振動情報以外の情報がふくまれていることがある。上記[4]に記載の構成によれば、第2フィルタは、振動信号のうち遮断周波数よりも大きい信号を抽出するので、振動監視装置の監視精度を高めることができる。
【0078】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記回転軸の第1回転数における前記振動信号を記憶する記憶部(14)と、
前記第1回転数より大きい第2回転数における前記振動信号から前記記憶部に記憶されている前記第1回転数における前記振動信号を差し引く振動測定部(16)と、をさらに備え、
前記第1回転数は30rpm以下である。
【0079】
回転軸が30rpm以下で回転していると、この回転によって発生する振動は非常に小さい。このため、回転軸が30rpm以下で回転している場合に抽出される振動信号は、回転軸の振動情報が含まれない波形(回転軸自体によって形成される波形)を形成するとみなすことができる。上記[5]に記載の構成によれば、第2回転数における振動信号から第1回転数における振動信号を差し引くことで、回転軸の振動が主として形成する波形の信号を取得することができる。
【0080】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値(E)を出力する出力装置(7)をさらに備え、
前記第1フィルタは、前記フィルタ指令値に応じて前記通過帯域を設定する。
【0081】
上記[6]に記載の構成によれば、第1フィルタの通過帯域を回転軸の回転数に応じて適切に設定することにより、回転軸の回転に同期した回転信号から回転軸の振動の評価に適した通過帯域の信号を抽出することができる。
【0082】
[7]本開示に係る振動監視装置(50)は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサ(52)と、
前記回転信号のパルスが発生するタイミング(t3)を検知する検知部(54)と、
前記検知部が検知したタイミングの直前の前記回転信号の1つの波形(X1)を、前記直前の回転信号のパルスを含む前記1つの波形の前半部分(X11)を前記1つの波形の後半部分(X12)の逆位相に置き換えることで前記回転軸の振動波形として復元する振動波形復元部(56)と、を備える。
【0083】
上記[7]に記載の構成によれば、検知部によって回転信号のパルスが検知されると、振動波形復元部によって回転軸の振動波形が復元される。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。
【0084】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記回転軸の外周面(116)には、1つの溝(118)が形成され、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面までの距離(d)を前記回転信号として出力する。
【0085】
上記[8]に記載の構成によれば、外周面に1つの溝が形成されている回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。
【0086】
[9]幾つかの実施形態に係る過給機(100)は、
上記[1]から[8]の何れか1つに記載の振動監視装置と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機(104)と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービン(106)と、を備える。
【0087】
上記[9]に記載の構成によれば、過給機の回転軸の回転信号から過給機の回転軸の振動をリアルタイムに評価可能な過給機を提供することができる。
【0088】
[10]本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップ(S2)と、
前記回転信号が出力されると、前記回転信号のうち予め設定された限界値以上の部分を前記限界値に置き換え、前記回転信号のうち前記限界値未満の部分を前記回転信号のままとするカット回転信号を生成するステップ(S4)と、
前記カット回転信号を、前記限界値に近づくようにオフセットしたオフセット回転信号を生成するステップ(S6)と、
前記オフセット回転信号のうち前記回転軸の回転数に基づいて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として抽出するステップ(S8)と、を備える。
【0089】
上記[10]に記載の方法によれば、回転信号が出力されると、オフセット回転信号が生成され、このオフセット回転信号から振動信号が抽出される。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号は、回転信号のうち限界値以上の部分が限界値に置き換えられている。このため、振動信号を抽出するステップにおける回転信号のパルスの影響を抑制することができる。
【0090】
[11]幾つかの実施形態では、上記[10]に記載の方法において、
前記回転軸の回転中にリアルタイムに前記カット回転信号の大きさの平均値を算出するステップ(S10)をさらに備え、
前記オフセット回転信号を生成するステップでは、前記限界値から前記平均値を差し引いた分だけ前記カット回転信号を前記限界値に近づくようにオフセットする。
【0091】
上記[11]に記載の方法によれば、カット回転信号をオフセットする大きさは回転軸の回転中にリアルタイムに算出されるカット回転信号の平均値に対応しているので、回転軸の振動をリアルタイムに評価することができる。さらに、カット回転信号をオフセットする大きさが固定値である場合と比較して、より正確に回転軸の振動を評価することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 振動監視装置
2 回転センサ
4 カット回転信号生成部
6 オフセット回転信号生成部
7 出力装置
8 第1フィルタ
10 平均値算出部
12 第2フィルタ
14 記憶部
16 振動測定部
50 振動監視装置
51 復元装置
52 回転センサ
54 検知部
56 振動波形復元部
100 過給機
102 回転軸
104 圧縮機
106 タービン
116 外周面
118 溝
S2 回転信号出力ステップ
S4 カット回転信号生成ステップ
S6 オフセット回転信号生成ステップ
S8 抽出ステップ
S10 平均値算出ステップ

A 回転信号
B カット回転信号
C オフセット回転信号
D 回転数
E フィルタ指令値
F 振動信号
G 平均値
P1 第1遮断周波数
P2 第2遮断周波数
Vu 限界値
X1 波形
X11 波形の前半部分
X12 波形の後半部分
d 距離
t3 パルス発生タイミング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17